以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
まず、本発明の一実施形態に係る杭保持装置の構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1のA−A断面図である。なお、図2は、既製杭10を保持している状態の杭保持装置100の連結部106、107を回避したA−A断面図となっている。
本発明の一実施形態に係る杭保持装置100は、杭本体12の外周面12cに環状凸部18が設けられる既製杭10を杭孔50に建て込む際に、既製杭10を略鉛直方向に保持するために、杭孔50の開口部50aに設置して使用される。杭保持装置100は、図1に示すように、既製杭10の外周面12cの所定の部位に巻着されて、既製杭10を略鉛直方向に保持する略円筒形状の保持筒体102と、当該保持筒体102の底部側に設けられ、保持筒体102より外径が大きいフランジ部104とを備える。本実施形態では、杭保持装置100は、杭孔50の開口部50aに設置する際に、当該開口部50aの周囲に略U字型の杭受け台60を設けてから、当該杭受け台60にフランジ部104を載置させて、杭孔50の開口部50aに設置される。
なお、本実施形態では、杭保持装置100を杭受け台60に載置するために補助部材としてフランジ部104を設けたが、当該補助部材は、フランジ形状に限定されるものではなく、例えば、保持筒体102の外周面側に取り付けた縦リブ等でもよい。また、杭孔50が形成される地盤GNが安定している場合等には、杭受け台60を置かずに、直接、杭保持装置100のフランジ部104を開口部50aに載置してもよい。
保持筒体102は、その内周面側に既製杭10の杭本体12の外周面12cに形成された環状凸部18と嵌装可能な環状凹部が形成され、当該環状凸部18を覆うように既製杭10に巻着されることによって、既製杭10を略鉛直方向に支持する。すなわち、保持筒体102は、杭本体12の環状凸部18が設けられる部位を環状凹部で囲って、既製杭10を略鉛直方向に保持する。本実施形態では、図2に示すように、環状凹部として、当該保持筒体102の内周面側に底部102b側から頂部102a側に向けて一定の割合で拡径して形成されるテーパ面102c(以下、支持側テーパ面102cという)が設けられる。
このように、本実施形態では、既製杭10を杭保持装置100で支持する際に、既製杭10の環状凸部18に設けられるテーパ面14(以下、杭側テーパ面14という)と、保持筒体102の内周面側に設けられる支持側テーパ面102cが互いに対向する構成となっている。このため、杭保持装置100で既製杭10を支持する際に、支持側テーパ面102cに対向する杭側テーパ面14に均等に荷重がかかり易くなる。従って、大径化に伴い重量化された既製杭10を杭孔50に建て込む際に、定位置に安定した状態で支持することが可能になる。
また、保持筒体102は、支持側テーパ面102cを有するため、杭側テーパ面14を有する既製杭10を杭保持装置100内で降下させると、既製杭10の中心位置と杭保持装置100の中心位置が一致する。このため、杭側テーパ面14を有する既製杭10を杭孔50に建て込む際には、常に既製杭10を定位置で支持することが可能になる。
さらに、本実施形態では、図2に示すように、保持筒体102の内周面、すなわち、内周側端部となる支持側テーパ面102cに、当該内周面の内径の大きさを調整可能な内径調整部材110が取り付けられる。具体的には、保持筒体102の支持側テーパ面102cの内径が縮径するように、内径調整部材110が取り付けられる。このように、杭保持装置100の保持筒部102の内周面側に複数の円弧状の内径調整部材110を取り付けることによって、1台の杭保持装置100で異なる杭本体12の外径に対応して安定支持できる杭径の範囲を拡大できる。なお、内径調整部材110の構成及び動作の詳細な説明については、後述する。
次に、本発明の一実施形態に係る杭保持装置100の詳細な構成について、図面を使用しながら説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置100の概略構成を示す平面図であり、図4(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置100の一接続部を開放した状態を示す平面図である。
本実施形態に係る杭保持装置100は、図3に示すように、保持筒体102は、略円弧形状の曲面板となる保持具片103を4つ環状に配列して連結することによって、略円筒形状に構成される。各保持具片103は、それぞれの両端部が互いに連結部106、107を介して、連結されている。
これら連結部106、107のうち、図3における紙面の左右両端側に有する支持固定用連結部106a、106cは、それぞれ回転用固定ピン105a、105cで連結されている。すなわち、支持固定用連結部106aは、保持具片103a、103bを回転可能に支持している。一方、支持固定用連結部106cは、保持具片103c、103dを回転可能に支持している。
これに対して、開閉用連結部106bは、着脱が可能な開閉用脱着ピン105bで支持されている。このため、開閉用連結部106bは、開閉用脱着ピン105bを外すと、図4(A)に示すように、保持具片103b、103cがそれぞれ支持固定用連結部106a、106cを中心に回転自在となって、開放されるようになる。すなわち、開閉用連結部106bは、開閉用脱着ピン105bの抜き差しによって着脱可能に構成され、既製杭10に杭保持装置100を着脱する際には、開閉用脱着ピン105bを外して、開閉自在となった保持具片103b、103cを動かせる。
一方、開閉用連結部106bに対向する固定用連結部107は、不図示のネジやボルト等の接続部材によって保持具片103a、103dを連結している。すなわち、固定用連結部107は、通常、保持具片103a、103dを連結した状態で固定している。しかしながら、開閉用連結部106bの開閉用脱着ピン105bが経年変化や摩耗等により、固定されて外れなくなった場合等の緊急時に杭保持装置100を既製杭10から外す際に、固定用連結部107のボルト等を外して、図4(B)に示すように、開閉自在となった保持具片103a、103dを動かす。すなわち、固定用連結部107は、ボルトやネジの脱着によって着脱可能に構成され、緊急時等における保持筒体102の開放手段となる。
このように、本実施形態では、保持筒体102を4つの保持具片103a、103b、103c、103dを連結部106、107で連結した構成としているので、保持筒体102の開閉が容易に行えるようになり、既製杭10に保持筒体102を装着し易くなる。このため、施工現場における既製杭10の建て込み作業の効率化が図れる。
また、本実施形態では、保持筒体102を4つの保持具片103a、103b、103c、103dを連結部106、107で連結した構成としている。そして、内径調整部材110は、各保持具片103a、103b、103c、103dにそれぞれ取り付けられ、保持筒体102の内径を調整する。なお、本実施形態では、4つの保持具片103a、103b、103c、103dから保持筒体102が構成されているが、保持具片103の数は、4つに限定されない。そして、保持筒体102は、少なくとも3つ以上の保持具片103が環状に配列されて連結される構成となっていればよい。
また、内径調整部材110は、保持具片103の数に対応する数としてそれぞれ取り付けることとしても良いし、複数の保持具片103に対して1つの内径調整部材110を取り付けることとしても良い。なお、内径調整部材110は、脱着作業の容易性を考慮すると円弧状のものを2つ以上準備することが好ましいが、これに限定されるものではなく、リング状のものを1つとしてもよい。
次に、本発明の一実施形態に係る杭保持装置に取り付けられる内径調整部材110の設置状態について、図面を使用しながら説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置に取り付けられる内径調整部材110の設置状態を示す正面図であり、図6は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置に取り付けられる内径調整部材110の設置状態を示す断面図である。
図5及び図6に示すように、保持筒体102の内周側端部となる支持側テーパ面102cには、複数の内径調整部材110が取り付けられている。内径調整部材110は、水平断面が略円弧形状を有しており、支持側テーパ面102cに沿って周方向へ並列して設けられる。各内径調整部材110は、支持側テーパ面102cに形成されたボルト孔125に嵌合されるボルト126によって固定される。このように、各内径調整部材110を支持側テーパ面102cに取り付けることによって、保持筒体102の内周面の内径が所望の大きさとなるように縮径されて調整される。
次に、本発明の一実施形態に係る杭保持装置に備わる内径調整部材の詳細な構成及び動作について、図面を使用しながら説明する。図7(A)乃至(C)は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置でテーパ杭を保持した状態を示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る杭保持装置100は、保持筒体102の内周面側に内径調整部材110を取り付けることによって、1台の杭保持装置100で異なる杭径の既製杭10を安定して支持できる。
本実施形態では、内径調整部材110として、その内径方向の厚さが異なる調整部材111、112が使用される。具体的には、調整部材111は、外径1100mmの杭本体12を保持する場合に用いられ、調整部材112は、調整部材111の内径方向の厚さよりも長くて、外径1000mmの杭本体12を保持する場合に用いられる。
それぞれの調整部材111、112の外径は、保持筒体102の支持側テーパ面102cの径と略同一である。一方、調整部材111の内径は、外径1100mmの杭側テーパ面14の径と略同一である。また、調整部材112の内径は、外径1000mmの杭側テーパ面14の径と略同一である。すなわち、これらの調整部材111、112の各内周面111c、112cは、それぞれ保持筒体102の支持側テーパ面102cと略平行な構成となっている。また、これらの調整部材111、112は、SS相当の強度の強い材料から形成される。
また、各調整部材111、112は、保持具片103(図3参照)のそれぞれの内周面側にボルトやナット等の接続部材で脱着可能となっている。なお、内径調整部材110の取り付け方は、事前にボルトやナット等の接続部材で固定して取り付ける以外に、例えば、杭孔50の開口部50aに設置した保持筒体102に既製杭10を降ろす直前に内径調整部材110を差し込むように取り付けてもよい。
このように、本実施形態では、内径調整部材110として、厚さの異なる調整部材111、112を保持筒体102の支持側テーパ面102cにそれぞれ取り付けることによって、保持筒体102の内径を所望の大きさとなるように縮径させる。すなわち、保持筒体102の内周側端部となる支持側テーパ面102cに内径調整部材110を取り付けることによって、1台の杭保持装置100で異なる外径の既製杭10を安定して支持できるように、支持可能な杭径の範囲を拡大している。
内径調整部材110として、調整部材111、112を使用しない場合及び使用する場合について、以下で具体的な例を用いて説明する。
例えば、図7(A)に示すように、外径1200mmの既製杭10を杭保持装置100で支持する場合には、既製杭10の杭側テーパ面14をそのまま支持側テーパ面102cに当接させる。すなわち、保持筒体102の支持側テーパ面102cに調整部材111、112を取り付けずに、既製杭10を杭保持装置100で保持する。
一方、図7(B)に示すように、外径1100mmの既製杭10を杭保持装置100で支持する場合には、保持筒体102の支持側テーパ面102cに調整部材111を取り付ける。
さらに、図7(C)に示すように、外径1000mmの既製杭10を杭保持装置100で支持する場合には、保持筒体102の支持側テーパ面102cに調整部材112を取り付ける。
このように、保持筒体102の内周側端部となる支持側テーパ面102cに、内径保持部材110として調整部材111、112を着脱可能な構成とすることによって、杭側テーパ面14が支持側テーパ面102c、又は調整部材111の内周面111c若しくは調整部材112の内周面112cの何れかに当接される。このため、既製杭10の杭本体12の外径が異なっても、1つの杭保持装置100でこれらの外径が異なる既製杭10を安定して支持できる。
換言すると、本実施形態では、内径調整部材110として、その内径方向の厚さが異なる複数の調整部材111、112を交換することによって、保持筒体102の内周側端部となる支持側テーパ面102cの内径を調整可能としている。すなわち、既製杭10の杭本体12の外径の大きさに適合した厚さを有する調整部材111、112を保持筒部102の内周面側に有する支持側テーパ面102cに取り付けることによって、1台の杭保持装置100で、外径の異なる既製杭10を安定して支持できるようになる。
なお、内径調整部材110による保持筒体102の内径調整方法は、図7(A)乃至(C)に開示した内容に限定されない。内径調整部材110による内径調整方法の他の態様について、図面を使用しながら説明する。図8(A)乃至(C)は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置でテーパ杭を他の態様で保持した状態を示す説明図である。また、図9(A)乃至(C)は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置でテーパ杭を更に他の態様で保持した状態を示す説明図である。
図8(A)乃至(C)に示す実施態様では、内径調整部材110として、その内径方向の厚さが略同一の複数の調整部材113、114を着脱する。これらの調整部材113、114を保持筒体102の内周側端部となる支持側テーパ面102cに着脱することによって、保持筒体102の支持側テーパ面102cの内径を所望の大きさに調整する。
本実施形態では、調整部材113の外径は、保持筒体102の内径、すなわち支持側テーパ面102cの径と略同一である。また、調整部材113の内径は、外径1100mmのテーパ杭10の杭側テーパ面14の径と略同一である。
一方、調整部材114の外径は、外径1100mmのテーパ杭10の杭側テーパ面14の径と略同一である。また、調整部材114の内径は、外径1000mmのテーパ杭10の杭側テーパ面14の径と略同一である。
すなわち、これらの調整部材113、114の各内周面113c、114cは、それぞれ保持筒体102の支持側テーパ面102cと略平行な構成となっている。そして、外径1100mmの既製杭10を保持する場合には、内径調整部材110として、調整部材113が用いられ、外径1000mmの既製杭10を保持する場合には、内径調整部材110として、双方の調整部材113、114が用いられる。
内径調整部材110として、調整部材113、114を使用しない場合及び使用する場合について、以下で具体的な例を用いて説明する。
例えば、図8(A)に示すように、外径1200mmの既製杭10を杭保持装置100で支持する場合には、既製杭10の杭側テーパ面14をそのまま支持側テーパ面102cに当接させる。すなわち、内径調整部材110として、保持筒体102の支持側テーパ面102cに調整部材111、112を取り付けずに、既製杭10を杭保持装置100で保持する。
一方、図8(B)に示すように、外径1100mmの既製杭10を杭保持装置100で支持する場合には、内径調整部材110として、保持筒体102の支持側テーパ面102cに調整部材113を取り付ける。
さらに、図8(C)に示すように、外径1000mmの既製杭10を杭保持装置100で支持する場合には、内径調整部材110として、調整部材113の内周面113cに調整部材114を取り付ける。
このように、図8(A)乃至(C)に示す実施態様では、内径調整部材110が杭本体12の外径の大きさに適合した厚さとなるように、保持筒体102の支持側テーパ面102cに調整部材113、114を取り付ける。このようにして、杭本体12の外径が異なっても、1台の杭保持装置100で、これらの既製杭10を安定して支持できる。
また、図9(A)乃至(C)に示す実施態様では、内径調整部材110として保持筒体102の支持側テーパ面102cに取り付ける調整部材115の鉛直方向における高さ位置を略鉛直方向へ移動させて変更することによって、保持筒体102の内径を所望の大きさに調整する。
具体的には、図9(A)に示すように、外径1100mmの既製杭10を杭保持装置100で支持する場合には、内径調整部材110として、保持筒体102の内周側端部となる支持側テーパ面102cに外径1100mmのテーパ杭用の調整部材115を取り付ける。すなわち、調整部材115として、前述した一実施形態の杭保持装置100の保持筒体102に取り付ける調整部材111と同じ仕様のものを取り付ける。
これに対して、図9(B)に示すように、外径1200mmの既製杭10を杭保持装置100で支持する場合には、調整部材115の上部が保持筒体102よりも上方に突出するように、即ち、調整部材115の内径が拡がるように調整部材115を内周側端部となる支持側テーパ面102cに取り付ける。換言すると、内径調整部材110として、保持筒体102の頂部側に外径1100mmのテーパ杭用の調整部材115をずらして取り付ける。
さらに、図9(C)に示すように、外径1000mmの既製杭10を杭保持装置100で支持する場合には、調整部材115の下部が保持筒体102よりも下方に突出するように、即ち、調整部材115の内径が狭くなるように調整部材115を内周側端部となる支持側テーパ面102cに取り付ける。換言すると、内径調整部材110として、保持筒体102の底部側に外径1100mmのテーパ杭用の調整部材115をずらして取り付ける。
このように、本実施態様では、内径調整部材110として、1つの外径対応用の調整部材115を杭保持装置100の頂部側又は底部側にずらして支持側テーパ面102cに取り付けることで、当該調整部材115の内径を杭本体12の外径の大きさに適合させる。このようにして、1台の杭保持装置100で杭本体12の異なる外径に対応して支持できるようになる。このため、異なる杭径に対応しても、既製杭10を安定して支持できる。
また、本実施態様では、調整部材115の内周面115cに所定の範囲内のゴム硬度を有するウレタンゴム等からなる緩衝部材120が設けられる。調整部材115の内周面115cの曲率は、例えば、外径1100mmの既製杭10の環状凸部18の曲率と一致した構成となっている。すなわち、この場合では、調整部材115の内周面115cの曲率は、外径1200mmや1000mmの既製杭10の環状凸部18の曲率と一致しない。
このため、外径1200mmや1000mmの既製杭10を調整部材115で支持すると、当該既製杭10の杭側テーパ面14と調整部材115の内周面115cとの間に部分的に隙間が生じる。すなわち、杭側テーパ面14と調整部材115の内周面115cとの間に片当たりが生じる。しかしながら、調整部材115と既製杭10との間に介在された緩衝部材120がこの隙間に圧密されるため、既製杭10の杭側テーパ面14の全体を支持することができるようになる。
特に、緩衝部材120のゴム硬度を50度以上100度未満の範囲内とすることによって、大径化に伴って重量化した既製杭10を支持する際における既製杭10への衝撃を確実に緩和し、かつ杭径が異なった既製杭10を支持する場合における既製杭10の片当たりを無くして、安定した支持ができる。
このように、本実施形態では、調整部材115の内周面115cに緩衝部材120を設けることによって、かかる曲率の変化に対応して緩衝部材120が環状凸部18に当接するようにしている。このため、外径が異なる既製杭10を支持する場合においても当該既製杭10を安定して支持できる。
緩衝部材120は、ゴム硬度が上記範囲内の材質であればよく、例えば、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等のゴム系の材質や、ポリスチレン等の合成樹脂系の材質といった弾性材や緩衝材として使用されるものが適用される。本明細書中における「ゴム硬度」とは、ISO7619やJIS_K_6253の規格に基づいたデュロメータを計測器に用いて測定した弾性材や緩衝材の硬度をいう。
なお、本実施形態の杭保持装置100は、環状凸部18として杭側テーパ面14を有する既製杭10を保持する場合について取り上げているが、環状凸部18の形状は、杭側テーパ面14に限定されるものではなく、環状凸部18の形状に対応した内径調整部材110を併用することによって、他の態様の既製杭にも適用可能である。以下で環状凸部18の形状が異なる場合について説明する。
例えば、図10(A)に示すように、環状凸部である節部28を有する節杭20を支持する場合には、内径調整部材110として外径1000mmのテーパ杭用の調整部材116の頂部側に節受部材212がナット等の接続部材により取り付けられる。すなわち、調整部材116として、前述した一実施形態の杭保持装置100の保持筒体102に取り付ける調整部材112と同じ仕様のものを取り付ける。
節受部材212の内周面212cは、調整部材116を保持筒体102の支持側テーパ面102cに取り付けた状態で、節部28の下部の杭側テーパ面28cと略平行な構成となっている。また、節受部材212の内周面212cの最下端による内径は、杭本体22の外径と略同一である。節受部材212の外周面212bの外径は、調整部材116の内周面116cの径と略同一である。そして、これらの調整部材116、212は、SS相当の材料から形成される。
保持筒体102で節杭20を保持する際には、節部28の杭側テーパ面28cが節受部材212の内周面212cに当接することで、節杭20を支持することができるようになる。また、節受部材212の鉛直方向における設置位置の変更や内径方向の厚さの調整、及び調整部材116の内径方向の厚さを調整することによって、節杭20の杭本体22の外径に対応して、安定した支持ができるようになる。
一方、図10(B)に示すように、環状凸部として杭本体32の外周面側に拡頭部38が設けられた拡頭杭30を支持する場合には、調整部材116の頂部側に節受部材312をナット等の接続部材で取り付けて、拡頭杭30を支持することができる。また、保持筒体102の内周面側に支持側テーパ面102cが設けられていることから、節受部材312の鉛直方向における設置位置の変更や調整部材116の内径方向の厚さを調整することによって、拡頭杭30の杭本体32の外径に対応して、安定した支持が可能となる。
上述した各実施態様では、既製杭10、節杭20、拡頭杭30の外周面12cにそれぞれ環状凸部18、28、38を設けるとともに、杭保持装置100の保持筒体102に支持側テーパ面102cを設けている。また、保持筒体102にその内径を所望の大きさに調整可能な内径調整部材110として各調整部材111、112、113、114、115、116、緩衝部材120及び節受部材212、312等を取り付けられる構成となっている。
このため、既製杭10、節杭20、拡頭杭30を保持筒体102で支持する際に、保持筒体102の支持側テーパ面102cに既製杭10の環状凸部18、28、38からの荷重が分散されて、均等にかかり易くした上で、所望の大きさの外径に対応した既製杭10の安定した支持が可能となる。
すなわち、大径化、重量化された既製杭としてテーパ杭10、節杭20、拡頭杭30を保持筒体102で支持する際に、定位置での安定した保持状態を維持することができる。換言すると、既製杭としてテーパ杭10、節杭20、拡頭杭30を杭孔50に建て込む過程において、杭保持装置100でこれらテーパ杭10、節杭20、拡頭杭30を保持する際に、各既製杭10、20、30がぶれることなく、より安定した状態で定位置にテーパ杭10、節杭20、拡頭杭30を略鉛直方向に保持することができる。
このため、従来のように杭の継ぎ足しをする際における杭保持にワイヤを使わないため、既製杭としてテーパ杭10、節杭20、拡頭杭30を継ぎ足しながら杭孔50に建て込む作業の効率が上がると同時に、かかる作業における安全性も向上する。また、下杭に上杭を継ぎ足して連結する際に、環状凸部18、28、38を有する下杭が支持側テーパ面102cを有する保持筒体102によって定位置に保持されるので、下杭と上杭を精度よく連結できる。
また、保持筒体102の内周面側の支持側テーパ面102cに所望の大きさに内径を調整可能な内径調整部材110を取り付けることによって、テーパ杭10、節杭20、拡頭杭30の杭本体12、22、32の外径に対応できる。このため、テーパ杭10、節杭20、拡頭杭30ががたつくことなく安定した杭保持が実現されるようになる。
さらに、内径調整部材110を取り付けることによって、1台の杭保持装置100で保持対象となる既製杭としてテーパ杭10、節杭20、拡頭杭30の外径の適用範囲が拡大される。このため、杭の形状や外径が異なるものに対して、それぞれに適合した杭保持装置100を事前にそれぞれ用意する必要がなくなるので、維持・管理する上でコスト的にも労力的にも手間を低減することができる。
また、本実施形態の杭保持装置100では、内径調整部材110として各種形状及び厚さの調整部材111、112、113、114、115を保持筒体102の内周側端部となる支持側テーパ面102cに取り付けることによって、1台の杭保持装置100で保持対象となる既製杭10の種類と外径の適用範囲が拡大される。このため、1台の杭保持装置100で、使用箇所に適応した杭形状及び杭径の既製杭10、20、30をより安定した状態で保持して、継ぎ足せるようになる。
例えば、地盤の支持層では、より大きな先端支持力を確保するために、径の大きな節杭20等を使用し、支持層から地表に至るまでの間には、材料コストを低減した上で杭保持装置100を使用して、ワイヤを用いずに上杭と下杭を連結するワイヤレスでの杭の継ぎ足しを可能とするために、径の小さいテーパ杭10を使用し、地表側では、より耐震性を確保するために、径の大きな拡頭杭30を使用するような場合でも、1台の杭保持装置100で杭保持が可能となる。このため、1台の杭保持装置100でワイヤレスによる杭保持で各種の既製杭10、20、30を継ぎ足しながら、杭孔50に建て込む作業の効率と安全性を向上させた上で、既製杭10のトータル材料コストの削減等も実現される。
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、杭保持装置の構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。