JP5483912B2 - 杭係止装置および杭係止方法 - Google Patents

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Description

本発明は、掘削孔内に吊り下げた杭の上端部を地上に係止する杭係止装置および、このような杭係止装置を用いた杭係止方法に関する。
従来より、地中に杭を施工する工法として、杭の外径と同じかやや大きな径の孔を予め掘削し、この掘削孔内に杭を挿入する、いわゆるプレボーリング工法が知られている。
ここで、掘削孔内への杭の挿入にあたっては、掘削孔内に吊り下げた杭の上端部を地上に係止して上杭を接続する必要があり、杭の係止手段として、ワイヤロープを用いて係止する手段や、端板を用いる手段などが、広く用いられている。
ワイヤロープを用いる杭の係止手段は、杭径や杭長に応じた本数・ワイヤ径のワイヤロープを杭に巻き付け、これを簪に引っ掛けて係止する手段である(例えば、非特許文献1参照。)。
また、端板を用いる杭の係止手段は、杭端面に端板をボルトナットで固定し、その端板に台付けワイヤロープを取り付けて杭を吊り込み、簪で係止する手段である(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−166241号公報
「既製コンクリート杭の施工管理」、社団法人コンクリートパイル建設技術協会、2006年4月、p.434
ワイヤロープを用いる杭の係止手段は、杭径・杭長が大きくなるとワイヤロープ径が太く重量が重くなるのでワイヤロープを杭に巻き付ける作業が至難となり熟練作業者を要する。また、人力による締付力が弱くなるため杭に巻き付けたワイヤロープから杭が滑り落ちるおそれがあり、安全性と作業性に劣る。
また、端板を用いる杭の係止手段は、端板に台付けワイヤロープを取り付けて杭を吊り上げたり吊り下げるときに、杭端面に端板を固定するボルトナットに大きな力が作用して、ボルトナットのねじ山が潰れてしまうことが多々発生する。そのため、一般に、この係止手段は使い回しの効かない専用品とされており、大変コスト高である。
本発明は、上記事情に鑑み、作業性に優れるとともに低コスト化が図られた杭係止装置および杭係止方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成する本発明の杭係止装置は、
掘削孔内に吊り下げた杭の上端部を地上に係止する装置であって、杭を簪上に係止するフランジを備えたリング状部材と、このリング状部材と杭外周との間に介装される楔部材とからなり、
上記リング状部材は、円周方向に複数分割され、各分割部を切線方向に一体に結合する結合部材を備え、内周面は杭長手方向に傾斜した円錐テーパ状の内面を備え、かつ、吊手を備え、
上記楔部材は、杭の外周面に接する円筒面と上記リング状部材の内周面に接する円錐テーパ面を備えた多数個の円弧楔片であることを特徴とする。
本発明の杭係止装置は、リング状部材と杭外周との間に楔部材を介装することによって杭に取り付けられる装置であるため、作業性に優れている。また、本発明の杭係止装置は、繰り返し利用が可能であるため、経済的であり、低コスト化に大きく寄与する。
ここで、本発明の杭係止装置において、上記楔部材は、ほぼ杭外周面を覆う個数の円弧楔片であり、これらを連結する環状連結体を備えたことが好ましい。
このような好ましい形態によれば、杭係止装置を確実に杭に取り付けることができる。また、このような環状連結体を備えた杭係止装置によれば、杭係止装置の取り外し時に円弧楔片が離散してしまうことが防止されるため、作業性に優れている。
さらに、本発明の杭係止装置のうちの環状連結体を備えた杭係止装置において、その環状連結体は、円弧楔片を杭の外周面に密着させる環状スプリングであることが好ましい。
このような環状スプリングを備えた杭係止装置によれば、杭係止装置の取り外し時に円弧楔片が離散してしまうことが容易に防止されるため、より一層作業性に優れている。
また、上記目的を達成する本発明の杭係止方法は、内面が円錐テーパを有するリング状部材を円周方向に複数分割しておき、1個の分割部材の外周面を下にして台木の上に載置し、等しい円錐テーパ面を有する複数の円弧楔片を円錐テーパ面を当接させてその分割部材の内周面上に並べ、これら複数の円弧楔片上に杭軸をほぼ水平にして杭の長手方向一端側を載置し、次いで他の分割部材を上記分割部材に結合してリング状部材を形成し、この他の分割部材と上記杭の外周面との間に他の複数の円弧楔片を打ち込み装入するとともに、円弧楔片同士を環状連結体で連結し、上記リング状部材に備えられた吊手を用いて杭を鉛直に吊り上げ、予め地盤を掘削してなる掘削孔内にその杭を吊り下げ、簪上にリング状部材を載置することによりその杭の上端部を地上に係止する。
本発明の杭係止方法は、本発明の杭係止装置を用いる方法であるため、作業性に優れるとともに低コスト化が図られる。
本発明によれば、作業性に優れるとともに低コスト化が図られた杭係止装置および杭係止方法が提供される。
本発明の実施例である杭係止装置の概略構成図である。 図1に示す杭係止装置の拡大平面詳細図である。 図2に示す線B−Bに沿った縦断面図である。 図2,図3に示すリング状部材を円周方向に2分割してなる第1分割部材の平面図である。 図4に示す第1分割部材を分割端面側から見た正面図である。 図2,図3に示す楔部材を構成する円弧楔片の平面図である。 図6に示す円弧楔片のC−C矢視図である。 第1分割部材の内周面上に6個の円弧楔片を並べる工程を説明する斜視図である。 第1分割部材の内周面上に6個の円弧楔片を並べる工程を説明する立面図である。 6個の円弧楔片上に杭を載置する工程を説明する立面図である。 リング状部材および楔部材を形成する工程を説明する図である。 クレーンで杭を吊り上げる工程を説明する正面図である。 掘削孔内に杭を吊り下げる工程を説明する正面図である。 杭の上端部を地上に係止する工程を説明する正面図である。 杭と上杭との継手接続工程を説明する正面図である。 杭に取り付けた杭係止装置を取り外す工程を説明する正面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施例である杭係止装置100の概略構成図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す線A−Aに沿った縦断面図である。また、図2は、図1に示す杭係止装置100の拡大平面詳細図であり、図3は、図2に示す線B−Bに沿った縦断面図である。尚、図2,図3には簪4の図示が省略されている。また、図4は、図2,図3に示すリング状部材110を円周方向に2分割してなる第1分割部材111の平面図であり、図5は、図4に示す第1分割部材111を分割端面側から見た正面図である。また、図6は、図2,図3に示す楔部材120を構成する円弧楔片121の平面図であり、図7は、図6に示す円弧楔片121のC−C矢視図である。
図1に示す杭係止装置100は、予め地盤1を掘削してなる掘削孔2内に吊り下げた杭3の上端部を地上に係止する装置である。
この杭係止装置100は、図2,図3に示すように、杭3の外周を囲繞するリング状部材110と、リング状部材110と杭3外周との間に介装される楔部材120とから構成されている。
リング状部材110は、杭3を簪4で係止するためフランジ11を下部に備えている。また、このリング状部材110は、リング状部材110の上面1101に溶接されて突出した吊手12を備えている。また、このリング状部材110の内周面1102は、杭3の長手方向に傾斜した円錐テーパ状に形成されている。また、このリング状部材110は、円周方向に2分割される部材であって、第1分割部材111および第2分割部材112で構成されている。これら第1分割部材111および第2分割部材112それぞれの分割部1111,1121は、切線方向に一体に結合する結合部材を備えている。
結合部材としては、例えば総ねじPC鋼棒13やねじ付異形PC鋼棒等が用いられ、その本数は杭径を考慮して決定される。例えば、杭径が700mm〜900mmの場合には3本の総ねじPC鋼棒13を用い、杭径が1000mm〜1200mmの場合には4本の総ねじPC鋼棒13を用いることが好ましい。
楔部材120は、ほぼ杭3の外周面31を覆う個数(ここでは12個)の円弧楔片121で構成されている。また、これら12個の円弧楔片121それぞれは、杭3の外周面31に接する円筒面1211とリング状部材110の内周面1102に接する円錐テーパ面1212を備えている。そして、各円弧楔片121の円筒面1211は、滑り止めのための凹凸が形成されているとともに、焼き入れ加工されている。尚、この円筒面1211の滑り止め加工は、例えば、凹凸が形成されたシート状物を貼ることによる滑り止め加工であってもよい。また、この楔部材120は、これら12個の円弧楔片121を連結して各円弧楔片121を杭3の外周面31に密着させる環状コイルスプリング122を備えている。
このように、外周面31を覆う個数の円弧楔片121で楔部材120が構成されているため、杭係止装置100を確実に杭3に取り付けることができる。また、このような環状コイルスプリング122を備えているため、杭係止装置の取り外し時に円弧楔片が離散してしまうことが防止される。
尚、ここでは、楔部材120が12個の円弧楔片121で構成された例を挙げて説明したが、12個には限られず、この個数は、例えば杭径や作業取り扱い性を考慮して決定される。例えば、杭径が1200mmの場合には、12個の円弧楔片とすると、円弧楔片1個あたりの重量が約36kgとなり扱い辛いため、円弧楔片1個あたりの重量が約25kgとなる16個の円弧楔片とすることが好ましい。
次に、リング状部材110の、杭3の長手方向に傾斜した円錐テーパ状に形成されている内周面1102のテーパ角θや、楔部材120を構成する12個の円弧楔片121それぞれの、リング状部材110の内周面1102に接する円錐テーパ面1212のテーパ角θについて説明する。尚、ここでは、杭径が1200mm、杭長が70mの杭を例に挙げて説明する。また、この杭を掘削孔内に吊り下げて上端部を地上に係止したとき、20mが地上に出て、50mが泥水中に入るものとする。
杭径が1200mm、杭長が70mの杭の総重量は、(式1)に示すように、882.77kNである。
126.11kN/10m×7=882.77kN・・・・・(式1)
また、この杭を掘削孔内に吊り下げて上端部を地上に係止したときの、泥水中に50m入ることを考慮した場合の重量Pは、(式2)に示すように、632.77kNである。以下、この重量を700kNとしてテーパ角θを計算する。
P=882.77kN−50kN/10m×5=632.77kN・・・・・(式2)
テーパ角θが10°の場合は、(式3)に示すように、水平力Hが3970kNである。
H=P/tanθ=700kN/0.1763=3970kN・・・・・(式3)
テーパ角θが15°の場合は、(式4)に示すように、水平力Hが2612kNである。
H=P/tanθ=700kN/0.2679=2612kN・・・・・(式4)
テーパ角θが20°の場合は、(式5)に示すように、水平力Hが2612kNである。
H=P/tanθ=700kN/0.364=1923kN・・・・・(式5)
テーパ角θが30°の場合は、(式6)に示すように、水平力Hが1212kNである。
H=P/tanθ=700kN/0.57735=1212kN・・・・・(式6)
テーパ角θが35°の場合は、(式7)に示すように、水平力Hが1000kNである。
H=P/tanθ=700kN/0.7002=1000kN・・・・・(式7)
上述したように、杭径が1200mmの場合には4本の総ねじPC鋼棒を用いる。32mmの径を有する総ねじPC鋼棒1本あたりの引張荷重は、一般に、869kN以上とされている。従って、32mmの径を有する4本の総ねじPC鋼棒の引張荷重は、3476kN以上である。
従って、テーパ角θの使用限界角度は、15°〜35°であり、テーパ角θの最適角度は20°〜30°である。
本実施例の杭係止装置100は、リング状部材110と杭3の外周との間に楔部材120を介装することによって杭3に取り付けられる装置であるため、作業性に優れている。また、本実施例の杭係止装置100は、繰り返し利用が可能であるため、経済的であり、低コスト化に大きく寄与する。
次に、図8〜図16を参照して、掘削孔2内に吊り下げた杭3の上端部を、本実施形態の杭係止装置100を用いて地上に係止し、その後杭3と上杭6との継手接続作業を行い、継手接続作業の完了後、杭係止装置100を取り外すといった、本発明の杭係止方法の実施例を含む一連の工程を説明する。
図8は、第1分割部材111の内周面1102上に6個の円弧楔片121を並べる工程を説明する斜視図であり、図9はこの工程を説明する立面図である。
内面が円錐テーパを有するリング状部材110を円周方向に2分割しておく。
リング状部材110を円周方向に2分割してなる第1分割部材111および第2分割部材112のうちの第1分割部材111を、第1分割部材111の外周面1112を下にして台木5の上に載置する。ここで、リング状部材110の内周面1102、即ち第1分割部材111および第2分割部材112それぞれの内周面1102は、上述したように、杭3の長手方向に傾斜した円錐テーパ状に形成されている。
等しい円錐テーパ面1212(図7参照)を有する、ほぼ杭3の外周面31n半周分を覆う個数(ここでは6個)の円弧楔片121を、第1分割部材111の内周面1102に円錐テーパ面1212を当接させて、内周面1102を覆うように、第1分割部材111の内周面1102上に並べる。
図10は、6個の円弧楔片121上に杭3を載置する工程を説明する立面図である。
クレーンで杭3を吊り込み、6個の円弧楔片121上に、杭軸をほぼ水平にして杭3の長手方向一端側を載置する。
図11は、リング状部材110および楔部材120を形成する工程を説明する図であって、図11(a)は立面図であり、図11(b)は、図11(a)に示す線D−Dに沿った縦断面図である。
次いで、結合部材を用いて第2分割部材112を第1分割部材111に結合してリング状部材110を形成する。具体的には、第1分割部材111の分割部1111に配設された結合部材の一例としての総ねじPC鋼棒13と、第2分割部材112の分割部1121に配設された結合部材の一例としての総ねじPC鋼棒13とを連結することによって、第1分割部材111および第2分割部材112それぞれの分割部1111,1121を切線方向に一体に結合する。
第2分割部材112と杭3の外周面31との間に他の6個の円弧楔片121を打ち込み装入して、ほぼ杭3の外周面31を覆う楔部材120を形成する。また、楔部材120を構成する円弧楔片121同士を環状コイルスプリング122で連結する。そして、楔部材120を構成する各円弧楔片121をハンマで叩き込み、噛み合い度合いを確認する。一般に、杭は厳密には真円ではないが、このように、各円弧楔片121をハンマで叩き込むことによって、確実な噛み合いを得ることができる。
図12は、クレーンで杭3を吊り上げる工程を説明する正面図である。
リング状部材110に備えられた吊手12を用いてクレーンで杭3を鉛直に吊り上げる。
図13は、掘削孔2内に杭3を吊り下げる工程を説明する正面図である。
予め地盤1を掘削してなる掘削孔2内に杭3を吊り下げる。
図14は、杭3の上端部を地上に係止する工程を説明する正面図である。
簪4上にリング状部材110を載置することにより杭3の上端部を地上に係止する。
図15は、杭3と上杭6との継手接続工程を説明する正面図である。
次に、杭3と上杭6との継手接続作業を行う。ここで、杭接続のために吊り込んでくる上杭6の吊り装置部についても、上述した本実施形態の杭係止装置100を使用する。尚、上杭6に杭係止装置100を取り付ける手順については、上述した杭3に杭係止装置100を取り付ける手順と同様であるので、説明を省略する。
図16は、杭3に取り付けた杭係止装置100を取り外す工程を説明する正面図である。
継手接続作業の完了後、杭3に取り付けた杭係止装置100を取り外すために、クレーンまたは杭打ちやぐらで杭3を引き上げる。尚、この時の引き上げ量は、杭係止装置100のリング状部材110と簪4とが離間する程度でよい。
次に、杭3に取り付けた杭係止装置100のリング状部材110を下方に向かって軽打し、あるいはそのリング状部材110を構成する第1分割部材111および第2分割部材112それぞれの分割部1111,1121を結合している総ねじPC鋼棒13を緩め、リング状部材110と楔部材120との間の噛み合いを緩める。
次に、杭3に取り付けた杭係止装置100の円弧楔片121を全数抜き取って外し、杭3に取り付けた杭係止装置100のリング状部材110の総ねじPC鋼棒13を取り外し、杭3に取り付けたリング状部材110を2分割して杭3から取り外す。
1 地盤
2 掘削孔
3 杭
31 外周面
4 簪
5 台木
6 上杭
100 杭係止装置
110 リング状部材
1101 上面
1102 内周面
111 第1分割部材
112 第2分割部材
1111,1121 分割部
1112 外周面
11 フランジ
12 吊手
13 総ねじPC鋼棒
120 楔部材
121 円弧楔片
1211 円筒面
1212 円錐テーパ面
122 環状コイルスプリング

Claims (3)

  1. 掘削孔内に吊り下げた杭の上端部を地上に係止する装置であって、杭を簪上に係止するフランジを備えたリング状部材と、該リング状部材と杭外周との間に介装される楔部材とからなり、
    前記リング状部材は、円周方向に複数分割され、各分割部を切線方向に一体に結合する結合部材を備え、内周面は杭長手方向に傾斜した円錐テーパ状の内面を備え、かつ、吊手を備え、
    前記楔部材は、杭の外周面に接する円筒面と前記リング状部材の内周面に接する円錐テーパ面を備えた、ほぼ杭外周面を覆う個数の円弧楔片であり、これらを連結する環状連結体を備えたことを特徴とする杭係止装置。
  2. 前記環状連結体は、円弧楔片を杭の外周面に密着させる環状スプリングであることを特徴とする請求項記載の杭係止装置。
  3. 内面が円錐テーパを有するリング状部材を円周方向に複数分割しておき、1個の分割部材の外周面を下にして台木の上に載置し、等しい円錐テーパ面を有する複数の円弧楔片を円錐テーパ面を当接させて該分割部材の内周面上に並べ、該複数の円弧楔片上に杭軸をほぼ水平にして杭の長手方向一端側を載置し、次いで他の分割部材を前記分割部材に結合してリング状部材を形成し、該他の分割部材と前記杭の外周面との間に他の複数の円弧楔片を打ち込み装入するとともに、円弧楔片同士を環状連結体で連結し、前記リング状部材に備えられた吊手を用いて杭を鉛直に吊り上げ、予め地盤を掘削してなる掘削孔内に該杭を吊り下げ、簪上にリング状部材を載置することにより該杭の上端部を地上に係止する杭係止方法。
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