(第1実施形態)
図1Aから図8を用いて第1実施形態について説明する。
図1Aから図8に示すように、掘削孔530に杭520を建て込む際に、掘削孔530の地上開口部で杭520を略鉛直方向に保持するとともに、設計上の杭心位置に杭520の杭心を一致させる杭保持治具10及びその使用方法について説明する。
掘削孔530の開口部の外周に、施工前に設計等により定めた杭心位置(中心軸)C0を把握するための目印となる逃げ芯42,44,46(図4Aから図6参照)を配置する。
これにより、施工前に定めた杭心位置C0を、掘削孔530の掘削施工前から掘削施工後まで認識可能となる。
逃げ芯42,44,46は、掘削孔530に設置する杭保持治具10より外側に設けて、掘削後に逃げ芯42,44,46に基づいて杭保持治具10の中心軸が精度良く中心軸C0に一致するように据え付ける。
本実施形態に係る杭520は略円柱形状を有し、その中心軸C4に直交する断面がドーナツ状である。なお、杭520の形状は、これに限られない。
また、ロッド510は棒形状を有し、例えば、その中心軸C3に直交する断面がI形状(I型鋼)やH形状(H型鋼)であるなど、柱状であれば、種々の形状に形成することができる。
図1A及び図1Bに示すように、杭保持治具10は、杭打機500に接続されるロッド510と、当該ロッド510の外周に固定された嵌合体12と、掘削孔530の地上開口部を囲うように地面に載置される基台14とを有する。
基台14の中心軸をC1、嵌合体12の中心軸をC2とすると、嵌合体12を基台14に嵌合させると嵌合体12の中心軸C2と基台14の中心軸C1とは一致する。
図2A及び図2Bに示すように、嵌合体12は、略円盤状の環状体20を有する。嵌合体12の外縁は略円環状である。
環状体20は、内側のハブ22と、外側のリム24と、ハブ22とリム24とを接続する複数のスポーク26とを有する。環状体20は、例えば鋼材等により形成されている。
ハブ22は、円環状に形成され、例えば溶接やボルト止めにより、ロッド510に固定される。なお、ハブ22がロッド510に着脱可能であってもよい。
リム24は、円環状に形成され、上側から下側に向かうほど中心軸C2に近づく環状の傾斜面32を有する。傾斜面32は、上側から下側に向かって一定の割合で縮径して直線状に形成されるテーパ面である。なお、傾斜面32は、中心軸C2を含む面の断面において、曲線として形成されていることも好適である。
環状体20の天面34及び底面36は平行である。このため、傾斜面32の上端を含む面と下端を含む面とは平行である。
スポーク26はハブ22とリム24との間を中心軸C2に対して放射状に延び、両者を接続している。隣接するスポーク26間には、隙間(開口)28が形成されている。
スポーク26のうち、ロッド510に対する近位端が接続部としてロッド510に直接、接続されていてもよい。係る場合に、ハブ22を省略できる。
図3Aから図3Cに示すように、基台14は略C字状に形成されており、開口部58を有する。なお、基台14は、当該形状に限定されるものではなく、リング形状、矩形状に形成されていることも好適である。
基台14は、下側ブロック体52と、当該ブロック体52の上に設けられた上側ブロック体54と、移動機構56とを有する。
下側ブロック体52は、中心軸C1に沿って上側から下側に向かうほど中心軸C1に近づく下側傾斜面62を有する。
上側ブロック体54は、中心軸C1に沿って上側から下側に向かうほど中心軸C1に近づく上側傾斜面64を有する。上側傾斜面64は、嵌合体12の傾斜面を支持可能である。
下側ブロック体52と上側ブロック体54とが当接又は最も近接した状態では、下側傾斜面62と上側傾斜面64との間に隙間がほとんどなく、下側傾斜面62と上側傾斜面64との間は面一に形成されている。
具体的に、両傾斜面62、64は、基台14の上端部側から下端部側に向かって一定の割合で縮径して形成されるテーパ面として形成されている。すなわち、両傾斜面62、64の傾斜角度はそれぞれ略同一である。これにより、環状体20が基台14と嵌合した状態のときに、環状体20の傾斜面32が両傾斜面62、64に密接する。
また、下側ブロック体52と上側ブロック体54とが当接又は最も近接した状態では、下側傾斜面62の下端62a及び上端62b、並びに、上側傾斜面64の下端64a及び上端64bは平行である。
なお、両傾斜面62、64は、中心軸C1に沿って上側から下側に向かうにつれて非線型的に中心軸C1に近づいていてもよい。
移動機構56は、下側ブロック体52と上側ブロック体54との間に支持されている。
図3Cに示すように、移動機構56は、下側ブロック体52に対して上側ブロック体54を中心軸C1に沿って所定の範囲内で上下に移動させることが可能である。すなわち、移動機構56は、嵌合体12が基台14に嵌合された状態で、上側ブロック体54を介して嵌合体12を中心軸C2(C1)に沿って上下に移動させることが可能である。
移動機構56で上側ブロック体54を移動させたとき、下側傾斜面62の下端62a及び上端62b、並びに、上側傾斜面64の下端64a及び上端64bが平行であることが好適である。移動機構56は、下側ブロック体52に対して上側ブロック体54を平行な状態から適宜に傾斜させてもよい。このため、下側傾斜面62の下端62a及び上端62b、並びに、上側傾斜面64の下端64a及び上端64bが平行でない場合もある。いずれにしても、移動機構56で下側ブロック体52に対して上側ブロック体54を移動させたとき、下側傾斜面62の上端62b及び上側傾斜面64の下端64aは、離間している。
移動機構56の一例としては、6つのジャッキが中心軸C1に対して60°ずつずらした位置に配置されている。ジャッキは、手動、電動、いずれでも良い。複数のジャッキを、単位時間あたり同一距離移動させることが好適である。単位時間あたりのジャッキのストロークを個々に調整し、下側ブロック体52に対して上側ブロック体54を傾斜させてもよい。
図4Aに示すように、ロッド510の外周に嵌合体12が固定された状態のとき、ロッド510の中心軸C3と嵌合体12の中心軸C2は一致する。
ロッド510の下端には、杭520の杭頭522に固定された回転金具523に係合可能な略L字状の凹溝514を有するキャップ(支持部材)512が固定されている。なお、キャップ512の代わりに、単なる平板が用いられてもよい。
(施工方法)
次に、杭打機500を用いて杭520を掘削孔530に沈設する(建て込む)施工方法について説明する。
まず、杭打機500にロッド510の上端(上端部)510aを接続する。次に、キャップ512の凹溝514に杭頭522の回転金具523を係合させて杭520を接続する。
ロッド510に杭520を吊り下げた状態のときに、ロッド510の中心軸C3と杭520の中心軸C4が一致する。
そして、杭打機500の駆動装置を降下させることでロッド510及び杭520を降下させる。
図5に示すように、環状体20が地表面付近に到達したら、杭520を囲うように基台14を地面上に配置する。基台14は、略C字形形状を有するため、掘削孔530に杭520を挿入した状態で掘削孔530の周囲に基台14を配置することができる。
基台14を設置する際は、基台14の中心軸C1と設計上の中心軸C0とを一致させるように設置する。以下で、基台14の中心軸C1を設計上の中心軸C0に一致させる方法について説明する。
図4A及び図4Bに示すように、杭孔を掘削する前に地面上に設定された設計上の中心軸C0を中心とする同心円上に複数の逃げ芯42,44,46が設けられている。逃げ芯42,44,46は、当該同心円の周方向に90°間隔で設けられている。
また、逃げ芯42,44,46は、掘削孔530の地上開口部に対して、基台14が配置される予定位置よりも外側に配置される。すなわち、逃げ芯42,44,46と掘削孔530との間に基台14が配置可能となるように、全ての逃げ芯位置を設定する。
そして、基台14を設置する際は、基台14の中心軸C1から各逃げ芯42,44,46までの距離が、設計上の中心軸C0から各逃げ芯42,44,46までの距離D0と一致する位置に基台14を配置する。
これにより、基台14の中心軸C1と設計上の中心軸C0とが一致する場所に基台14を配置することができる。
基台14は、杭520のような重量物により大きな力が加えられても掘削孔530に対する位置が動かないように、アウトリガーで基台14の位置を保持したり、重機などにより保持する。
杭520を掘削孔530に沈設するにしたがって、嵌合体12が基台14に近づく。杭520を沈設する場合、杭打機500で杭520を下方に押圧しながらでも良いし、杭520を自由降下させても良い。また、杭打機500でロッド510を回転させながらでも良いし、無回転でも良い。
図6に示すように、杭520を降下させると環状体20の傾斜面32の一部と、基台14の上側傾斜面64の一部とが密接する。
係る場合に、嵌合体12の中心軸C2が基台14の中心軸C1に対してズレていても、基台14は地面G(掘削孔530)に固定されているため、嵌合体12が降下しながら、嵌合体12の中心軸C2が基台14の中心軸C1に向かって移動する。
そして、図7に示すように、嵌合体12が基台14に嵌合する。すなわち、環状体20の傾斜面32の全体を、基台14の上側傾斜面64及び下側傾斜面62に密接させる。このとき、嵌合体12の中心軸C2と基台14の中心軸C1とが一致する。すなわち、杭520の中心軸C4と、施工前に定めた設計上の杭心位置(中心軸C0)とが一致することとなる。
なお、本実施形態では、嵌合体12が降下しながら基台14の中心軸C1に向かう場合について説明したが、これに限定されるものではなく、杭打機500の駆動装置を旋回させて嵌合体12の中心軸C2を基台14の中心軸C1、すなわち設計上の中心軸C0に向かって移動させながらロッド510を降下させてもよい。
このように、杭保持治具10は、嵌合体12が基台14に嵌合される際に、嵌合体12の中心軸C2を基台14の中心軸C1に寄せることで、最終的に杭520の中心軸C4を設計上の中心軸C0に一致させる機能を有する。
嵌合体12が基台14に嵌合した状態で、杭頭522を設計で定められた高さ位置に設置できた場合には、杭打機500とロッド510の接続を解除する。そして、杭打機500は別の掘削孔の施工に用いる。
ところで、嵌合体12を基台14に嵌合しただけでは、杭頭522を設計で定められた高さ位置に設置できない場合には、図8に示すように、移動機構56を作動させて杭頭522の高さ位置を調整する。具体的には、移動機構56を伸縮させて上側ブロック体54を上下方向に移動させることで環状体20を介して杭頭522の高さ位置を調整する。このとき、移動機構56の複数のジャッキは単位時間あたり同一ストロークで伸縮する。このため、下側傾斜面62の下端62a及び上端62bに対して、上側傾斜面64の下端64a及び上端64bが平行な状態を維持しながら、相対的に上側に移動する。
複数のジャッキから構成される移動機構56は、高さを微調整可能なので、杭頭522を所望の高さ位置に正確に設置することができる。
掘削孔530の設計上の中心軸C0が鉛直方向に沿っていると仮定する。杭520の中心軸C4が掘削孔530の設計上の中心軸C0からずれている場合、杭520の杭心C2が掘削孔530の設計上の中心軸C0に合うように、移動機構56の1つ又は複数のジャッキのストロークを調整する。このように、移動機構56の複数のジャッキの一部のジャッキのストローク量を調整して、下側ブロック体52に対して上側ブロック体54の傾きを調整し、地面Gに対する環状体20の天面34及び底面36の傾きを調整することができる。したがって、逃げ芯42,44,46を用いて掘削孔530の設計上の中心軸C0を把握し続けながら杭保持治具10を用いることで、掘削孔530の設計上の中心軸C0と、杭520の杭心軸C4と、基台14の中心軸C1とを合わせることができる。
次に、杭520を掘削孔530内に設置した状態で、杭保持治具10を杭520から取り外す方法について説明する。
根固め部534により杭520を掘削孔530に対して固定した後、再び、杭打機500の駆動装置をロッド510に接続する。そして、ロッド510及びキャップ512を挿入時とは逆方向に回転させる。これにより、キャップ512の凹溝514と杭520の回転金具523との係合が解除される。
次に、杭打機500を動かして、ロッド510を上側に移動させる。掘削孔530には、所望の位置に配置された杭520が残る。したがって、杭520の中心軸C4と、掘削孔530の設計上の中心軸C0とが一致した状態で、杭520が掘削孔530に固定されている。
ところで、下側ブロック体52に対して上側ブロック体54を上側に移動させた状態で杭520の位置を固定した場合、以下のようにして、回転金具523とキャップ512との係合を解除することが好適である。
杭打機500をロッド510に接続してロッド510及びキャップ512の高さ位置を維持した状態で、基台14の移動機構56を動かして、上側ブロック体54を下側ブロック体52に対して僅かに下げる。このとき、上側ブロック体54が下がり、ロッド510及び環状体20の高さ位置が維持されるので、上側ブロック体54と環状体20との嵌合が解除される。杭打機500を動作させてロッド510を、上側ブロック体54を下げた距離よりも小さい距離だけ下側に移動させる。杭520の杭頭522の回転金具523に対して、キャップ512の凹溝514が下がり、杭520とキャップ512とが離間する。杭打機500を動作させてロッド510を回転させることで、ロッド510に接続されたキャップ512と杭520との接続を解除する。このとき、上側ブロック体54と環状体20との間の摩擦、ロッド510に接続されたキャップ512の凹溝514と杭520に固定された回転金具523との間の摩擦が小さい。このため、掘削孔530に固定された杭520に中心軸C2の軸回りの負荷をかけることなく、ロッド510に接続されたキャップ512と杭520との係合を解除することができる。このように、掘削孔530に対して杭520を回転させる力が付与されないため、下側ブロック体52に対して上側ブロック体54を下側に移動させずにロッド510に接続されたキャップ512と杭520との係合を解除する場合に比べて、より早期に、ロッド510に接続されたキャップ512と杭520との係合を解除することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、設計上の中心軸C0に杭520の中心軸C4を一致させる杭保持治具10、及び、杭保持治具10を用いて杭520の位置を保持する施工方法を提供することができる。
具体的には、杭保持治具10の嵌合体12を用いることで、杭520の中心軸C4とロッド510の中心軸C3を一致させることができるとともに、ロッド510の中心軸C3と嵌合体12の中心軸C2を一致させることができる。
さらに、杭保持治具10の基台14を用いることで、設計上の中心軸C0と基台14の中心軸C1を一致させることができる。
そして、嵌合体12を基台14に嵌合させることで、嵌合体12の中心軸C2と基台14の中心軸C1を一致させることができる。
これにより、杭保持治具10を用いることにより、杭520の中心軸C4と設計上の中心軸C0を一致させることができる。
また、本実施形態によれば、杭520の杭頭522の位置を、基台14を使って適宜の距離だけ上下に動かして、地面Gに対する位置を調整することができる。
なお、本実施形態では、ロッド510と杭520との接続関係を、図4A及び図4Bを用いて説明した。ロッド510と杭520との接続関係は、図4A及び図4Bに示す構造に限られない。ロッド510の下方に杭520を接続することができ、ロッド510と杭520との接続状態を解除する際に、ロッド510を回転させずに済む構造であれば、適宜の構造が採用される。
(第1変形例)
図9A及び図9Bを用いて杭保持治具10の第1変形例について説明する。ここでは特に、基台14の変形例について説明する。
図9A及び図9Bに示す例えばバックホー600などの重機には、アタッチメント602を用いて、1対の爪604が取り付けられている。爪604は例えばフォークリフトで用いられるフォークのように形成されている。バックホー600を適宜に動かして、基台14の下側を支持し、基台14を掘削孔530に対して適宜の位置に移動させることができる。
基台14のうち、開口部58を閉塞する位置には、掘削土を掻く(平らに馴らす)治具68を着脱可能である。ここでは、治具68が下側ブロック体52に固定されているものとする。治具68は土を掻くエッジ68aを有する。このため、バックホー600を移動させると、治具68のエッジ68aにより掘削孔530の周囲の土を馴らし、掘削孔530の周囲を鉛直方向に直交する面に近づける。このため、治具68を取り付けた基台14を掘削孔530の周囲に適宜に移動させ、その基台14を掘削孔530の周囲に配置したとき、基台14の中心軸C1を鉛直軸に一致又は略一致させやすい。
(第2変形例)
図10A及び図10Bを用いて杭保持治具10の第2変形例について説明する。ここでは特に、嵌合体12の環状体20とロッド520との接続構造の変形例について説明する。
図10A及び図10Bに示すように、嵌合体12とロッド510からなるロッドアッセンブリ18において、ロッド510の外周面の一部には、ネジ511が切られている。環状体20のハブ22の内周面には、ネジ22aが切られている。そして、ロッド510のネジ511に対して、環状体20のハブ22のネジ22aが螺合している。
例えば図10Bに示すように、環状体20には、例えば鉄棒516が着脱可能である。鉄棒516は、環状体20に形成された図示しない凹孔又は貫通孔に嵌合させることができる。環状体20に鉄棒516を配置した状態で、ロッド510の中心軸C2の軸回りに鉄棒516を回転させることで、ロッド510の中心軸C2の軸回りに環状体20を回転させることができる。このため、ロッド510の中心軸C2に沿って環状体20を上下に移動させることができる。
ロッド510に対する環状体20の位置を調整した後、鉄棒516を取り外しておく。
このように、基台14の移動機構56で、下側ブロック体52に対して上側ブロック体54を移動させて、地面Gに対する杭520の杭頭522の距離を調整する他、杭520の杭頭522と環状体20との間の距離を適宜に設定して、地面Gに対する杭520の杭頭522の深さ位置を調整することができる。
(第3変形例)
図11Aから図11Cを用いて杭保持治具10の第3変形例について説明する。
ここでは、基台14に嵌合体12を嵌合させた後、杭520を掘削孔530に固定した状態で杭520の回転金具523に対してキャップ512の凹溝514の係合をより解除しやすくする基台14の例について説明する。
図11Aから図11Cに示す基台14は、下側ブロック体52、上側ブロック体54、移動機構56に加えて、フレーム72及びベアリング74,76,78を有する。ベアリング74,76,78は滑り軸受及び転がり軸受のいずれが用いられてもよい。
下側ブロック体52及び上側ブロック体54はそれぞれ円環状に形成されている。
フレーム72は、底を有する筒状に形成されている。フレーム72の底には、下側ブロック体52及び上側ブロック体54と共通の中心軸C1が規定される。フレーム72の底には、中心軸C1上に、杭520、キャップ512及びロッド510を通す開口72aが形成されている。
ベアリング74は、下側ブロック体52の下面とフレーム72の底との間に配設されている。ベアリング74には、スラスト軸受が用いられる。このため、ベアリング74は、フレーム72に対して下側ブロック体52を、中心軸C1の軸回りに回転可能である。ベアリング76,78は、ラジアル軸受が用いられる。このため、ベアリング76は、ベアリング74とともに、フレーム72に対して下側ブロック体52を、中心軸C1の軸回りに回転可能である。ベアリング78はフレーム72に対して上側ブロック体54を、中心軸C1の軸回りに回転可能である。
図11A中、基台14の下側ブロック体52、上側ブロック体54及びフレーム72を環状に描いた。図示しないが、図3Aに示すのと同様に、下側ブロック体52、上側ブロック体54及びフレーム72が略C字状であってもよい。
(施工方法)
杭520を掘削孔530に固定した状態で、杭520に固定された回転金具523とキャップ512の凹溝514との係合を解除する例について説明する。
杭打機500にロッド510の上端510aに接続する。このとき、基台14には、嵌合体12が嵌合され、根固め部534が適宜に硬化している。ここで、嵌合体12の環状体20と下側ブロック体52及び上側ブロック体54との間が接触し、これらの間に摩擦力が働いている。
この状態で、ロッド510を中心軸C2の軸回りに回転させる。ロッド510に固定した嵌合体12の環状体20がロッド510とともに中心軸C2の軸回りに回転すると、ベアリング74,76,78により、嵌合体12の環状体20とともに、下側ブロック体52及び上側ブロック体54がフレーム72に対して一緒に中心軸C1,C2の軸回りに回転する。したがって、環状体20と、基台14の下側ブロック体52及び上側ブロック体54との間に、摺動による摩擦が生じるのが抑制される。
ロッド510が回転すると、ロッド510とともに、ロッド510の下端に接続したキャップ512が回転する。しかしながら、杭520の杭先端位置524が根固め部534に固定されているため、杭520が掘削孔530に対して固定された状態が維持される。したがって、杭520に固定された回転金具523と、キャップ512の凹溝514との係合が解除される。
基台14をこのように形成することにより、嵌合体12と、基台14の下側ブロック体52及び上側ブロック体54との間の摺動による摩擦を軽減しながら、ロッド510に接続されたキャップ512の凹溝514と、杭520の杭頭522に固定された回転金具523との係合を解除することができる。
(第2実施形態)
図12Aから図14Bを用いて、第2実施形態について説明する。この実施形態は各変形例を含む第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図12A及び図12Bに示すように、環状体20は、六角形など、多角形の外形を有する。環状体20は、天面34と底面36とが平行である。天面34の図心(重心)C2aと、底面36の図心(重心)C2bとを結んだ仮想線を、中心軸(図心軸)C2とする。環状体20の外周面の環状の傾斜面32は、中心軸C2に沿って上側から下側に向かうほど中心軸C2に近づく。
図13A及び図13Bに示すように、基台14の上側傾斜面64及び下側傾斜面62も、環状体20を受ける形状を有する。下側傾斜面62及び上側傾斜面64は、それぞれ、中心軸C1に沿って上側から下側に向かうほど中心軸C1に近づく。
図13A中、基台14は略C字状に形成されているが、環状であってもよい。
次に、図14A及び図14Bを用いて、杭520とロッド510の下端に接続されたキャップ512との接続状態について説明する。
キャップ512及び杭520の杭頭522には、それぞれネジ穴512a,522aが形成されている。杭頭522の杭頭522のネジ穴522aはコンクリートで形成されていてもよいし、杭頭522に金属鋼材が固定され、ネジ穴522aが金属鋼材に形成されていてもよい。
ネジ穴512a,522aに対し、少なくとも下端部にネジ518aが付されたPC鋼棒などの棒材518が螺合されている。このため、ロッド510のキャップ512に、杭520が固定されている。棒材518の上端は、環状体20のスポーク26間の隙間28を通して、嵌合体12よりも上側にある。
(施工方法)
次に、ロッドアッセンブリ18を用いて、杭520を掘削孔530に沈設する施工方法について、簡単に説明する。
ロッド510の適宜の位置に、環状体20を配置する。環状体20は図1A及び図1Bに示すように、ロッド510に固定してもよく、図10A及び図10Bに示すように、中心軸C2に対する位置を調整可能であってもよい。
掘削孔530の周囲を囲うように、基台14を配置する。例えば逃げ芯42,44,46(図4Aから図6参照)等を用いて、掘削孔530の設計上の中心軸C0に基台14の中心軸C1を極力一致させる。
杭打機500を動かしてロッド510を下げ、掘削孔530に対して杭520を入れていく。必要に応じて、杭打機500を用いてロッド510、嵌合体12及び杭520を中心軸C2の軸回りに回転させる。環状体20の傾斜面32を、基台14の上側傾斜面64及び下側傾斜面62に嵌合可能な向きに配置する。
基台14に対して嵌合体12を嵌合させる。嵌合体12が基台14に嵌合される際、上端510aが杭打機500に接続され下端に杭520が接続されるロッド510の中心軸C2を基台14の中心軸C1に寄せ、基台14の中心軸C1にロッド510の中心軸C2を合わせる。このように、杭保持治具10を用いることで、掘削孔530の設計上の中心軸C0に、杭520の中心軸C4を合わせることができる。
必要に応じて、移動機構56を用いて、下側ブロック体52に対して上側ブロック体54を上側に移動させる。このため、掘削孔530に対して杭520の杭頭522の位置を調整する。
そして、第1実施形態で説明したのと同様に、掘削孔530に対して杭520が固定された後、杭520とロッド510との接続を解除し、掘削孔530に対して杭520を残す場合について説明する。
ここでは、基台14及び環状体20の外形がそれぞれ略六角形であり、基台14に環状体20が嵌合している。このため、第1実施形態で説明した場合よりもロッド510を回転させるのに大きな力が必要である。したがって、基台14に対して環状体20を回転させにくい。このため、杭520に対してロッド510の下端のキャップ512を回転させずに、杭520に対してキャップ512を分離可能とすることが好適である。
図14Aに示す棒材518のうち、環状体20よりも上側の位置で、棒材518に回転力を付与して、図14Bに示す、棒材518とネジ穴512a,522aとの螺合解除を行う。
ロッド510のキャップ512と杭520との接続は、杭520のネジ穴522aに対して棒材518の螺合が解除された時点で解除される。このため、ロッド510を上側に動かすと、杭520に負荷をかけずに、キャップ512が杭520の杭頭522から離される。
したがって、ロッド510を回転させなくても、棒材518と、杭520の杭頭522及びキャップ512との螺合を解除することで、キャップ512と杭520の杭頭522とを着脱可能である。そして、杭打機500を動かしてロッド510を中心軸C2に沿って上側に移動させる。
したがって、杭520とロッド510との接続/接続解除を図14A及び図14Bに示す構造を用いることで、掘削孔530に対して杭520が固定された後、杭520とロッド510との接続を解除し、掘削孔530に対して杭520を残すことができる。
本実施形態によれば、掘削孔530の設計上の中心軸C0に杭520の中心軸(杭心)C2を合わせ易くする、杭保持治具10、及び、杭保持治具10を用いて杭520の位置を保持する施工方法を提供することができる。
ここでは、嵌合体12及び基台14が六角形など、多角形である場合を例にして説明したが楕円等であってもよい。このため、嵌合体12及び基台14の外縁は略楕円状であってもよい。このため、嵌合体12及び基台14の外観は、円形以外であってもよい。
なお、図14A及び図14Bに示す構造は、第1実施形態において、杭520とロッド510とを接続/接続解除する構造として用いることができる。
(第3実施形態)
図15A及び図15Bを用いて、第3実施形態について説明する。この実施形態は各変形例を含む第1及び第2実施形態の変形例であって、第1及び第2実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図15A及び図15Bに示すように、基台14は、掘削孔530を囲うように地面Gに載置される。基台14は、円筒状(円環状)に形成されている。基台14は、内側に内周面82を有する筒状体80を有する。筒状体80の内周面82は、上方から下方に向かって基台14の中心軸C1に近づき、中心軸C1に対する径が小さくなる。筒状体80の内周面82は、上側から下側に向かって一定の割合で縮径して形成されるテーパ面として形成されていることが好適である。
筒状体80の下端の内径Dは、ロッド510の外径よりも大きく形成されているとともに、キャップ512の外径、さらには杭520の杭頭522の外径よりも大きく形成されている。このため、筒状体80の上側から下側に杭520を通すことができる。
嵌合体12は、基台14の筒状体80の内周面82に嵌合される複数のクサビ状部材92,94を有する。すなわち、複数のクサビ状部材92,94は、ロッド510の外周面と基台14の筒状体80の内周面82との間に嵌合される。
クサビ状部材92は、基台14の筒状体80の内周面82に嵌合される傾斜面92aと、ロッド510の外周面に当接される内周面92bとを有するハーフパイプ状である。クサビ状部材92は、上端部側から下端部側に向かって基台14の中心軸C1に近づく環状の傾斜面92aを有する。クサビ状部材92は、内周面92bがロッド510の外周面に当接した状態で、傾斜面92aが筒状体80の内周面82と嵌合可能である。同様に、クサビ状部材94は、基台14の筒状体80の内周面82に嵌合される傾斜面94aと、ロッド510の外周面に当接される内周面94bとを有するハーフパイプ状である。クサビ状部材94は、上端部側から下端部側に向かって基台14の中心軸C1に近づく環状の傾斜面94aを有する。クサビ状部材94は、内周面94bがロッド510の外周面に当接した状態で、傾斜面94aが筒状体80の内周面82と嵌合可能である。
第3実施形態において、杭520とロッド510とを接続/接続解除する構造として、第2実施形態で説明した図14A及び図14Bに示す構造を用いることができる。
(施工方法)
次に、ロッドアッセンブリ18を用いて、杭520を掘削孔530に沈設する施工方法について、簡単に説明する。
掘削孔530の周囲を囲うように、基台14を配置する。逃げ芯(図4Aから図6参照)42,44,46を用いて施工前に定めた中心軸C0に基台14の中心軸C1を極力一致させる。
杭打機500を動かしてロッド510を下げ、基台14の筒状体80及び掘削孔530に対して杭520を入れていく。必要に応じて、杭打機500を用いてロッド510及び杭520を中心軸C2の軸回りに回転させる。
杭打機500によってロッド510の上下動を防止し、杭520の杭頭522を所望の位置に保持した状態で、クサビ状部材92,94を基台14の筒状体80の内周面82に嵌合する。基台14は掘削孔530に対して動かないように配置している。このため、クサビ状部材92,94が基台14の筒状体80の内周面82に嵌合していくにつれて、ロッド510の中心軸C2が基台14の中心軸C1に寄せられ、基台14の中心軸C1にロッド510の中心軸C2が合わせられる。
地面Gに対するクサビ状部材92,94の上端の高さは、適宜の測定器を用いて計測できる。クサビ状部材92,94は、基台14の筒状体80の内周面82に対する嵌合量が最も大きくなったときであっても、クサビ状部材92,94の間には、隙間が形成されている。隙間を通して、キャップ512とクサビ状部材92,94の上端との間の距離を測ることができる。このため、地面Gに対する杭520の杭頭522の深さ位置を測定できる。
杭頭522の深さを調整する場合、杭打機500を動かして、基台14に対してロッド510を上側に移動させるとともにクサビ状部材92,94と筒状体80との間の嵌合を解除する。そして、上述したように、杭打機500を動かして杭520の杭頭522の深さ位置を所望の位置に配置し、クサビ状部材92,94を筒状体80に嵌合させる。
杭頭522の位置の測定の結果、杭頭522が地面Gに対して所望の深さ位置にあるとされた場合、杭520とロッド510との接続を解除し、杭打機を動かして、掘削孔530に対して杭520を残す。
本実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態で説明したのと同様に、施工前に定めた中心軸C0に杭520の杭心(中心軸C2)を合わせ易くする、杭保持治具10、及び、杭保持治具10を用いて杭を保持する施工方法を提供することができる。
本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。