以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
まず、本発明の一実施形態に係る杭保持装置の構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1のA−A断面図である。なお、図2は、既製杭10を保持している状態の杭保持装置100の節受部材110を通り、かつ、連結部106、107を回避したA−A断面図となっている。
本発明の一実施形態に係る杭保持装置100は、杭本体12の外周面12cに環状凸部として節部18が設けられる節杭を含む既製杭10を杭孔50に建て込む際に、既製杭10を略鉛直方向に保持するために、杭孔50の開口部50aに設置して使用される。杭保持装置100は、図1に示すように、既製杭10の外周面12cの所定の部位に巻着されて、既製杭10を略鉛直方向に保持する略円筒形状の保持筒体102と、当該保持筒体102の底部側に設けられ、保持筒体102より外径が大きいフランジ部104とを備える。本実施形態では、杭保持装置100は、杭孔50の開口部50aに設置する際に、当該開口部50aの周囲に略U字型の杭受け台60を設けてから、当該杭受け台60にフランジ部104を載置させて、杭孔50の開口部50aに設置される。
なお、本実施形態では、杭保持装置100を杭受け台60に載置するために補助部材としてフランジ部104を設けたが、当該補助部材は、フランジ形状に限定されるものではなく、例えば、保持筒体102の外周面側に取り付けた縦リブ等でもよい。また、杭孔50が形成される地盤GNが安定している場合等には、杭受け台60を置かずに、直接、杭保持装置100のフランジ部104を開口部50aに載置してもよい。
保持筒体102は、節部18及びその直下付近を囲うように配設されて、既製杭10を略鉛直方向に支持する。本実施形態では、図2に示すように、保持筒体102の内周面側に底部102b側から頂部102a側に向けて一定の割合で拡径して形成されるテーパ面102cが設けられる。なお、本明細書中で言及する節部18の「直下」とは、杭本体12の外周面側に有する節部18の下側の空間部分を示すものとする。
また、本実施形態では、図2に示すように、保持筒体102の内周面となる支持側テーパ面102cに、当該内周面の内径の大きさを調整可能な円弧状の節受部材110が取り付けられる。節受部材110には、節杭12の節部18を嵌装する凹部110cが形成されている。凹部110cは、底部側から頂部側に向けて一定の割合で拡径して形成されるテーパ面となっている。
このように、保持筒体102の支持側テーパ面102cに複数の円弧状の節受部材110を取り付けることによって、1台の杭保持装置100で異なる杭本体12の外径を有する節杭10を安定して支持できる。すなわち、杭保持装置100の保持筒部102の内周面側に有する内周側端部に節受部材110を取り付けることによって、1台の杭保持装置100で節杭10の杭本体12の外径に対応して安定支持できる杭径の範囲を拡大できる。
また、保持筒体102の内周面側をテーパ面102cにすることにより、保持筒体102と節部18との間に節受部材110を配設するための広い空間を確保することができる。これにより、節受部材110の形状のバリエーションを増やせるので、節受部材110を節杭10の重量を効率よく保持筒体102に伝達する形状とすることができる。なお、節受部材110への節杭10の重量の伝達に関する詳細な説明については、後述する。
さらに、保持筒体102の内周面側に支持側テーパ面102cが設けられる構成となっているので、保持筒体102と節部18との間に広い空間が存在することとなり、節受部材110の着脱が容易となる。例えば、節杭10と保持筒体102との間に節受部材110を介在させた状態で節杭10を支持している状態から、当該節杭10を解放して杭孔50内に建て込む際に、節受部材110を保持筒体102から取り外す必要がある。
本実施形態では、保持筒体102は、支持側テーパ面102cを有する構成となっているため、節受部材110を取り外す際に、節杭10をわずかに持ち上げるだけで節受部材110を保持筒体102から取り外すことができる。このように、保持筒体102の内周面側をテーパ面102cにすることにより、節杭を建て込む際における作業性が向上する。なお、節受部材110の構成及び動作の詳細な説明については、後述する。
次に、本発明の一実施形態に係る杭保持装置100の詳細な構成について、図面を使用しながら説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置100の概略構成を示す平面図であり、図4(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置100の一接続部を開放した状態を示す平面図である。
本実施形態に係る杭保持装置100は、図3に示すように、保持筒体102は、略円弧形状の曲面板となる保持具片103を4つ環状に配列して連結することによって、略円筒形状に構成される。各保持具片103は、それぞれの両端部が互いに連結部106、107を介して、連結されている。
これら連結部106、107のうち、図3における紙面の左右両端側に有する支持固定用連結部106a、106cは、それぞれ回転用固定ピン105a、105cで連結されている。すなわち、支持固定用連結部106aは、保持具片103a、103bを回転可能に支持している。一方、支持固定用連結部106cは、保持具片103c、103dを回転可能に支持している。
これに対して、開閉用連結部106bは、着脱が可能な開閉用脱着ピン105bで支持されている。このため、開閉用連結部106bは、開閉用脱着ピン105bを外すと、図4(A)に示すように、保持具片103b、103cがそれぞれ支持固定用連結部106a、106cを中心に回転自在となって、開放されるようになる。すなわち、開閉用連結部106bは、開閉用脱着ピン105bの抜き差しによって着脱可能に構成され、既製杭10に杭保持装置100を着脱する際には、開閉用脱着ピン105bを外して、開閉自在となった保持具片103b、103cを動かせる。
一方、開閉用連結部106bに対向する固定用連結部107は、不図示のネジやボルト等の接続部材によって保持具片103a、103dを連結している。すなわち、固定用連結部107は、通常、保持具片103a、103dを連結した状態で固定している。しかしながら、開閉用連結部106bの開閉用脱着ピン105bが経年変化や摩耗等により、固定されて外れなくなった場合等の緊急時に杭保持装置100を既製杭10から外す際に、固定用連結部107のボルト等を外して、図4(B)に示すように、開閉自在となった保持具片103a、103dを動かす。すなわち、固定用連結部107は、ボルトやネジの脱着によって着脱可能に構成され、緊急時等における保持筒体102の開放手段となる。
このように、本実施形態では、保持筒体102を4つの保持具片103a、103b、103c、103dを連結部106、107で連結した構成としているので、保持筒体102の開閉が容易に行えるようになり、既製杭10に保持筒体102を装着し易くなる。このため、施工現場における既製杭10の建て込み作業の効率化が図れる。
また、本実施形態では、保持筒体102を4つの保持具片103a、103b、103c、103dを連結部106、107で連結した構成としている。そして、節受部材110は、各保持具片103a、103b、103c、103dのうち、互いに対向する配置となる保持具片103a、103cに取り付けられ、保持筒体102の内径を調整する。
なお、本実施形態では、4つの保持具片103a、103b、103c、103dから保持筒体102が構成されているが、保持具片103の数は、4つに限定されず、少なくとも3つ以上の保持具片103が環状に配列されて連結される構成となっていればよい。
また、節受部材110は、保持具片103の数に対応する数としてそれぞれ取り付けることとしても良いし、複数の保持具片103に対して1つの節受部材110を取り付けることとしても良い。節杭10を略鉛直方向に安定した状態で支持するためには、節受部材110は、保持具片103の数に応じて、少なくとも1対が互いに対抗する配置となるように取り付けることが好ましい。なお、節受部材110は、脱着作業の容易性を考慮すると円弧状のものを2つ以上準備することが好ましいが、これに限定されるものではなく、リング状のものを1つとしてもよい。
次に、本発明の一実施形態に係る杭保持装置に備わる節受部材の詳細な構成及び動作について、図面を使用しながら説明する。図5(A)乃至(C)は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置で節杭を保持した状態を示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る杭保持装置100は、図5(A)乃至(C)に示すように、保持筒体102の内周面側に節受部材110を取り付けることによって、1台の杭保持装置100で異なる杭本体12の外径に対応して、節杭10を安定して支持可能としたものである。
本実施形態では、節受部材110として、その内径方向の厚さが異なる調整部材111、112が使用される。具体的には、調整部材111は、図5(A)に示すように、節部径1200mmで外径1000mmの杭本体12を保持する場合に用いられる。一方、調整部材112は、図5(B)に示すように、調整部材111よりも内径方向の厚さが大きい構成となっており、節部径1000mmで外径800mmの杭本体12を保持する場合に用いられる。
これらの調整部材111、112は、SS相当の材料から形成され、その外周端部が保持筒体102の支持側テーパ面102cと略平行な構成となっており、それぞれにテーパ面111a、112aが形成されている。すなわち、当該調整部材111、112のテーパ面111a、112aの径は、保持筒体102の支持側テーパ面102cの径と略同一となっている。
保持対象となる節杭10に設けられる節部18の下部に有するテーパ面18cは、杭本体12の外周面12cの所定の位置から杭本体12の上端部を有する方向に一定の割合で拡径して形成されている。すなわち、節部18の下部は、節杭10の底部側から頂部側へ向けて一定の割合で拡径して形成されるテーパ面18cを有している。
そして、調整部材111、112は、その内周端部が節部18の下部のテーパ面18cと略平行な構成となっており、それぞれにテーパ面111c、112cが形成されている。調整部材111のテーパ面111cの径は、杭本体12の外径1000mmよりも幾分広くなるように形成されている。一方、調整部材112のテーパ面112cの径は、杭本体12の外径800mmよりも幾分広くなるように形成されている。すなわち、調整部材111、112の各テーパ面111c、112cは、節受部材110を保持筒体102に取り付けた状態で、それぞれ節部18のテーパ面18cと略平行な構成となっている。
また、これらの調整部材111、112は、保持具片103(図3参照)のそれぞれの内周面側にボルト111dやナット等の接続部材で脱着可能となっている。なお、節受部材110の取り付け方は、事前にボルト111dやナット等の接続部材で固定して取り付ける以外に、例えば、杭孔50の開口部50aに設置した保持筒体102に節杭10を降ろす直前に節受部材110を差し込むように取り付けてもよい。このように、本実施形態では、厚さの異なる調整部材111、112を保持筒体102の支持側テーパ面102cにそれぞれ取り付けることによって、保持筒体102の内径を縮径する。
節受部材として調整部材111、112を使用する場合について、以下で具体的な例を用いて説明する。例えば、図5(A)に示すように、節部径1200mmで外径1000mmの節杭10を支持する場合には、調整部材111を保持筒体102のテーパ面102cに取り付ける。
また、図5(B)に示すように、節部径1000mmで外径800mmの節杭10を支持する場合には、調整部材112を保持筒体102のテーパ面102cに取り付ける。
このように、保持筒体102のテーパ面102cに調整部材111、112を着脱可能な構成とすることによって、節部18のテーパ面18cが調整部材111、112の内周側に有する凹部であるテーパ面111c、112cに当接される。このため、節部18の径が異なっても、1つの杭保持装置100で、これらの節杭10を安定して支持できるようになる。
また、本実施形態では、その内径方向の厚さが異なる複数の調整部材111、112を交換することによって、保持筒体102のテーパ面102cの内径を調整して、かつ節部18を係止可能としている。すなわち、節杭10の節部18の外径の大きさに適合した厚さを有する調整部材111、112を保持筒体102のテーパ面102cに取り付けることによって、1台の杭保持装置100で、これらの節杭10を安定して支持できる。
なお、節受部材110による保持筒体102の内径調整方法は、図5(A)及び(B)に開示した内容に限定されない。例えば、図5(C)に示すように、調整部材111と保持筒体102のテーパ面102cとの間に、内径調整部材120を設けることによって、保持筒体102の内径を調整してもよい。
内径調整部材120は、その内周面120c及び外周面120aが保持筒体102のテーパ面102cと略平行な構成となっている。また、内径調整部材120は、テーパ面102cにボルト等で着脱可能な構成となっている。内径調整部材120は、所望の内径方向の厚さを有しており、調整部材111と併用することにより、保持筒体102の内径を、調整部材112を用いた場合と同じ長さにすることができる。
具体的には、図5(A)に示すように、外径1000mmの杭本体12を支持する状態から、図5(C)に示すように、外径800mmの杭本体12を支持する状態に移行する際に、保持筒体102に調整部材111を取り付けた状態の内径を200mm小さくしなければならない。このような場合に、小さくする内径(200mm)の半分の長さである100mmの厚さの内径調整部材120を保持筒体102と調整部材111との間に介在させる。
このように、内径調整部材120を介在させることによって、保持筒体102の内径を所望の大きさに調整する。また、内径調整部材120は、その内径方向の厚さが略同一の複数の調整部材を介在させることによって、保持筒体102の内周面となるテーパ面102cの内径を所望の大きさに縮径してもよい。
次に、本発明の一実施形態に係る杭保持装置に備わる節受部材の詳細な構成について、図面を使用しながら説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置に備わる節受部材の詳細な構成を示す断面図である。
図6に示すように、節受部材となる調整部材111、112の内側面となる下面Bから外側面となる上面Tまでの厚さHは、節部18のテーパ面18cの下端から上端までの長さN以上である。すなわち、節部18のテーパ面18cの上端及び下端からそれぞれ下方へ向かって直交する仮想線S1、S2を引いた場合に、これら仮想線S1からS2までの厚さ(=N)よりも大きくなるように形成される。
節杭10を保持筒体102で支持する際に、節部18が調整部材111、112に当接すると、節杭10の荷重の一部Fが調整部材111、112に作用する。その際に、この荷重の一部Fを保持筒体102に伝達するためには、調整部材111、112の厚さHが少なくとも仮想線S1からS2までの厚さ(=N)以上であることが望ましい。このため、本実施形態では、節受部材となる調整部材111、112の内側面Bから外側面Tまでの厚さNは、節部18のテーパ面18cの下端から上端までの長さ以上としている。
調整部材111、112の厚さHが、仮想線S1からS2までの厚さ(=N)よりも小さくなると、テーパ面18cを支持する面積が小さくなるため、節部18が破損するおそれが高くなる。また、節部18を調整部材111、112で支持した際に、テーパ面18cと平行な向きに作用する節杭10の荷重の一部によって調整部材111、112に作用する曲げ応力によって変形し易くなる。このため、調整部材111、112は、少なくともテーパ面18cとテーパ面102cと仮想線S1と仮想線S2とから囲まれる範囲で形成されていればよい。なお、本実施形態では、調整部材111、112は、保持筒体102に固定するボルト111dを挿通させるための延長部111f、112fが設けられる構成となっているが、調整部材111、112の構成は、これに限定されるものではない。
なお、異なる外径の節杭10を同一の杭保持装置100で保持する態様は、前述した一実施形態に限定されない。他の実施態様による杭保持装置200について、図面を使用しながら説明する。図7(A)及び(B)は、本発明の他の実施形態に係る杭保持装置でテーパ杭を保持した状態を示す説明図である。
図7(A)及び(B)に示すように、保持筒体102の内周面となるテーパ面102cに対して節受部材114の取り付ける位置を変更することによって、テーパ面102cの内径を調整可能な構成としてもよい。具体的には、外径1200mm向けの杭保持装置100によって、杭本体12の外径が1000mmの既製杭10を支持する場合には、図7(A)に示すように、外径1000mmの既製杭10を支持するためのアジャスターとなる節受部材114を保持筒体102のテーパ面102cに取り付ける。これに対して、当該杭保持装置100によって、杭本体12の外径が1100mmの既製杭10を支持する場合に、図7(B)に示すように、節受部材114を保持筒部102の頂部側にずらして取り付ける。
このように、図7(A)及び(B)に示すように、保持筒体102の内周面側に有するテーパ面102cのうち、杭本体12の外径の大きさに適合した内径となる位置に節受部材114を取り付けることによって、1台の杭保持装置100で杭本体12の異なる外径に対応させる。このため、異なる杭径に対応して、節杭10をがたつかせることなく安定支持できるようになる。
また、図7(A)及び(B)に示す実施態様では、節受部材114の内周面側に形成された凹部114cであるテーパ面に所定の範囲内のゴム硬度を有するウレタンゴム等からなる緩衝部材115が設けられる。異なる節径の節杭10を用いると、これに伴って杭本体12及び節部18の曲率が変化するため、外径1000mm用の節受部材114で外径1100mmの節杭10を支持すると当該節杭10の外周と節受部材114の外周との間に隙間が生じて、節杭10を支持する際にがたついて不安定になることが懸念される。このため、本実施形態では、節受部材114の凹部114cに緩衝部材115を設けることによって、かかる曲率の変化に対応して緩衝部材115が節部18に当接するようにしている。
このため、杭径が異なる節杭10を支持する場合における節杭10のがたつきを低減して、定位置における安定した保持が可能となる。特に、緩衝部材115のゴム硬度を50度以上100度未満の範囲内とすることによって、大径化に伴って重量化し節杭10を支持する際における節杭10への衝撃を確実に緩和し、かつ杭径が異なった節杭10を支持する場合における節杭10のがたつきを低減して、定位置における安定した保持が可能となる。
緩衝部材115は、ゴム硬度が50度以上100度未満の材質であればよく、例えば、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等のゴム系の材質や、ポリスチレン等の合成樹脂系の材質といった弾性材や緩衝材として使用されるものが適用される。本明細書中における「ゴム硬度」とは、ISO7619やJIS_K_6253の規格に基づいたデュロメータを計測器に用いて測定した弾性材や緩衝材の硬度をいう。
また、異なる外径の節杭10を同一の杭保持装置100、200で保持する態様は、前述した各実施形態に限定されない。更に他の実施態様による杭保持装置300について、図面を使用しながら説明する。図8は、本発明の他の実施形態に係る杭保持装置に備わる節受部材の詳細な構成を示す断面図である。
図8に示すように、本実施形態では、保持筒体102cに取り付けられた節受部材となる調整部材111の内周側端部となるテーパ面111cに、内径調整部材である延設部材116を取り付ける。このように、延設部材116を取り付けることによって、1台の杭保持装置100で異なる杭径の節杭10を安定して支持できる。
延設部材116は、SS相当の材料から形成され、調整部材111のテーパ面111cにボルト116d等の接続部材で脱着可能である。なお、延設部材116の取り付け方は、事前にボルト116d等の接続部材で固定して取り付ける以外に、例えば、保持筒体102に節杭10を降ろす直前に延設部材116を差し込むように取り付けられるようにしてもよい。
延設部材116は、その外周端部が調整部材111のテーパ面111cと略平行な構成となっており、テーパ面116aが形成されている。すなわち、延設部材116のテーパ面116aの径は、調整部材111のテーパ面111cの径と略同一である。また、延設部材116は、その内周端部が節部18の下部のテーパ面18cと略平行な構成となって、テーパ面116cが形成されている。そして、延設部材116のテーパ面116cの径は、杭本体12の外径よりもやや広くなるように形成されている。このように、延設部材116を節受部材111のテーパ面111cに取り付けることによって、保持筒体102の内径を縮径する。
延設部材116を使用する場合について、具体的な例を用いて説明する。例えば、節部径1200mmで外径1000mmの節杭10を支持する場合(図5(A)参照)は、保持筒体102のテーパ面102cに外径1000mmの節杭支持用の調整部材111のみを取り付ける。そして、図8に示すように、節部径1000mmで外径800mmの節杭10を支持する場合には、当該調整部材111のテーパ面111cに延設部材116を取り付ける。このようにして、節部径1000mmで外径800mmの節杭10を支持できるようにしている。
なお、前述した各実施形態に係る杭保持装置100(200、300)は、既製杭として杭本体12の外周面12cに環状凸部として節部18を有する節杭10を保持する場合について取り上げているが、杭本体12の外周面12cに環状凸部として他の形状の既製杭を略鉛直方向に支持することも可能である。
例えば、節受部材110(図2参照)を保持筒体102のテーパ面102cから取り外すことによって、図9(A)に示すように、杭本体22の外周面側にテーパ面24を有する環状凸部28が設けられ、その杭本体22の外径が1200mmのテーパ杭20を支持することができる。
このように、テーパ杭20を杭保持装置100で支持する場合に、テーパ面24と保持筒体102のテーパ面102cとが互いに対向する構成となっている。このため、杭保持装置100でテーパ杭20を支持する際に、支持側テーパ面102cに対向する杭側テーパ面24に均等に荷重がかかり易くなる。したがって、大径化に伴い重量化された既製杭10を杭孔50に建て込む際に、定位置に安定した状態で支持することが可能になる。
また、図9(B)に示すように、保持筒体102のテーパ面102cに所望の内径方向の厚さを有する内径調整部材210を取り付けることによって、例えば、杭本体22の外径が1100mmのテーパ杭20を支持することができる。
さらに、図9(C)に示すように、環状凸部として杭本体32の外周面側に拡頭部38が設けられた拡頭杭30を支持する場合に、保持筒体102のテーパ面102cの頂部側に節受部材310をナット等の接続部材で取り付けて、拡頭杭30を支持することができる。また、保持筒体102の内周面側にテーパ面102cが設けられていることから、節受部材310の鉛直方向における設置位置を調整することによって、拡頭杭30の杭本体32の外径に対応して、安定した支持が可能となる。
このように、既製杭10、20、30に巻着される杭保持装置100の保持筒体102の内周面側の全周に亘ってテーパ面102cを設けている。また、保持筒体102のテーパ面102cに節杭10の節部18を係止可能な節受部材110や、保持筒体102の内径を所望の大きさに調整可能な内径調整部材120、210を取り付けられるようにしている。
このため、既製杭として節杭10を杭孔50に建て込むために、保持筒体102で略鉛直方向に支持する際に、テーパ面102cに所望の内径に調整された節受部材110を取り付けることによって、従来のようにワイヤを用いずに節杭10を略鉛直方向に安定させた状態で支持することができる。また、既製杭としてテーパ杭20を保持筒体102で支持する際に、テーパ面102cに既製杭10の外周面側に有する環状凸部28からの荷重が分散されて、均等にかかり易くした上で、所望の大きさの外径に対応したテーパ杭20の安定した支持が可能となる。
すなわち、大径化、重量化された既製杭10、20、30を杭保持装置100の保持筒体102で支持する際に、定位置での安定した保持状態を維持することができる。換言すると、既製杭10、20、30を杭孔50に建て込む過程において、杭保持装置100で既製杭10、20、30を保持する際に、既製杭10、20、30がぶれることなく、より安定した状態で定位置に既製杭10、20、30を略鉛直方向に保持することができる。
このため、従来のように杭の継ぎ足しをする際における杭保持にワイヤを使うことなく、既製杭10、20、30を継ぎ足しながら杭孔50に建て込む作業の効率が上がると同時に、かかる施工作業における安全性も向上される。また、テーパ杭20からなる下杭に上杭を継ぎ足して連結する際に、テーパ面24が設けられる環状凸部28を備える下杭がテーパ面102cを備える保持筒体102によって定位置に保持されるので、下杭と上杭を精度よく連結できる。
特に、節受部材110を保持筒体102に着脱可能とすることによって、本来は、大きな支持力を確保するために設けられた節部18を、杭孔50に節杭10を建て込む際における杭保持装置100による杭保持に利用できるようになる。このため、節杭10の杭孔50への建て込みをワイヤレスで行えるようになる。
また、保持筒体102の内周面側のテーパ面102cに内径方向に所望の厚さを有する節受部材110を取り付けることによって、節杭10の杭本体12の外径に対応でき、また、内径方向に所望の厚さを有する内径調整部材210を取り付けることによって、テーパ杭20の杭本体22の外径に対応できる。このため、節杭10やテーパ杭20ががたつくことなく安定した杭保持が実現されるようになる。
さらに、節受部材110や内径調整部材210を着脱可能とすることによって、1台の杭保持装置100で保持対象となる既製杭10、20、30の環状凸部の形状や外径の適用範囲が拡大される。このため、杭の形状や外径が異なるものに対して、それぞれに適合した杭保持装置100を事前にそれぞれ用意する必要がなくなるので、杭保持装置100を維持・管理する上でコスト的にも労力的にも手間を低減することができる。
特に、地盤強度が弱い場所や地震が頻繁に発生する場所において大きい支持力を得るために使用される節杭10を建て込む施工現場では、杭孔50の深い支持層等では、大きな支持力を確保するために、節杭10が建て込まれ、その後、地表に近づくにつれて、建て込む既製杭を節杭10からテーパ杭20への切替が必要な場合がある。このような場合に、本実施形態の杭保持装置100を用いて、節受部材110や内径調整部材210を着脱することによって、1台の杭保持装置100でこれらの既製杭10、20を略鉛直方向に支持できるので、既製杭10、20を建て込む際の作業効率が向上する。
その際に、杭径が1000mmの場合に、テーパ杭20の環状凸部28の外周面側に突出する高さが5mm程度であるのに対して、節杭10の節部18の外周面側に突出する高さは、50mmと環状凸部28の当該高さよりも格段に大きい値に設計される。このため、節受部材110を保持筒体102取り付けても、その内側をテーパ杭20が通り抜けられる程度の大きさの節受部材110を取り付けることによって、節受部材110を保持筒体102に事前に取り付けた状態でテーパ杭20と節杭10の継ぎ足し作業が行えるようになる。すなわち、連結させる下杭がテーパ杭20で上杭が節杭10の場合において、事前に節受部材110を保持筒体102に取り付けてから、その後に当該節受部材110を取り外す必要がなくなるので、下杭に上杭を継ぎ足す作業の効率が向上する。
また、地盤の支持層では、より大きな先端支持力を確保するために、径の大きな節杭10を使用し、支持層から地表に至るまでの間には、材料コストを低減した上でワイヤレスでの杭保持による杭の継ぎ足しを可能とするために、径の小さいテーパ杭20を使用し、地表側では、より耐震性を確保するために、径の大きな節杭20や拡頭杭30を使用するような場合でも、節受部材110、310や内径調整部材210を取り付けることによって、1台の杭保持装置100で杭保持が可能となる。このため、1台の杭保持装置100でワイヤレスでの杭保持による各種の既製杭10、20、30を継ぎ足しながら、杭孔50に建て込む作業の効率と安全性を向上させた上で、既製杭10、20、30のトータル材料コストの削減等も実現される。
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、杭保持装置の構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。