しかしながら、前述した従来のグリップヒーターの切換スイッチでは、グリップヒーターのオンオフの切り換えおよび温度の設定をUPスイッチとDOWNスイッチの押圧操作で行うため、操作が煩雑であるとともに、通電状態(設定温度)を認識しにくいという問題がある。このため、LEDによる表示を、オンオフの状態だけでなく、設定温度に応じても認識できるようにするために、複数のLEDを設置しようとすると、スペースおよび費用の上で問題が生じる。また、LEDを点滅させて設定温度に応じて点滅の速度を変更することもできるが、これによっても正確な設定温度は認識し難いという問題がある。さらに、フランジ部の表面に、LED、UPスイッチおよびDOWNスイッチを並べて配置するため、構造が複雑になるという問題もある。
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、設定温度の認識が容易になるとともに、操作がし易く、さらに構造が簡単になるグリップヒーターの切換スイッチを提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
前述した目的を達成するため、本発明に係るグリップヒーターの切換スイッチの構成上の特徴は、グリップヒーター(14)が備わったグリップ(10)と並んでハンドルシャフト(11)の外周面に取り付けられるグリップヒーターの切換スイッチ(20)であって、グリップの端部(16)に取り付けられた環状の固定部材(21,26)と、固定部材に設けられ、表面にグリップヒーターの作動状態を示す複数の表示部(w,r,y,g)が固定部材の円周方向に沿って施された表示形成部(23a)と、複数の表示部を覆うようにして固定部材に回転可能に取り付けられ、回転することにより、グリップヒーターの作動状態を切り換える操作部材(30)と、操作部材に設けられ、グリップヒーターの作動状態に応じた表示部だけを露出させる窓部(32)とを備えたことにある。
本発明に係るグリップヒーターの切換スイッチには、ハンドルシャフトを介して同軸に配置された固定部材と、操作部材とが備わっており、操作部材は固定部材に対して回転可能になっている。また、固定部材には、複数の表示部が施された表示形成部が備わっており、操作部材には、表示形成部に施された複数の表示部のうちの一つの表示部を露出させる窓部が備わっている。このため、操作部材の回転操作に応じて、グリップヒーターの作動状態、すなわち、オンオフの切り換えおよび温度の設定ができ、窓部にはその設定に応じた表示部を表示することができる。また、表示部としては、色、文字、図柄など一目で認識できるものを用いることができるため、表示部を視認し易くなる。さらに、窓部の幅は操作部材の幅によって制限されるが円周方向の長さはある程度長くすることができるため、窓部および表示部を大きくすることができ、これによっても表示部を視認し易くなる。
本発明に係るグリップヒーターの切換スイッチの他の構成上の特徴は、固定部材を、グリップの端部に取り付けられた環状基部(21a)と、環状基部とで操作部材を挟むように配置された環状板部(26a)と、環状基部と環状板部の少なくとも一方に設けられ、操作部材の内部を貫通して、環状基部と環状板部を組み付ける環状係合部(22,27)とで構成したことにある。本発明によると、操作部材を挟むようにして、環状基部と環状板部を環状係合部を介して組み付けることで、固定部材を組み付けることができるとともに、その固定部材に操作部材も組み付けることができるため、グリップヒーターの切換スイッチの組付けが容易になる。
本発明に係るグリップヒーターの切換スイッチのさらに他の構成上の特徴は、窓部にレンズ(35)を取り付けたことにある。この場合のレンズは、表面にシボ加工が施されたアクリル板で構成することが好ましい。これによると、レンズのシボによって反射防止ができるため、日光の反射によって表示部が見えにくくなることがなくなる。また、レンズは、窓部の周縁部に密着して防水効果を発揮できることが好ましい。
本発明に係るグリップヒーターの切換スイッチのさらに他の構成上の特徴は、固定部材と操作部材との一方に、複数の表示部に対応するように円周方向に沿って配置された複数の凹部(28b)を備えた曲面部(28)を形成し、固定部材と操作部材との他方に、操作部材を回転したときに、複数の凹部に接離可能に係合できる弾性押圧部(38)を設けたことにある。
本発明によると、凹部と弾性押圧部を係合させることにより、操作部材の位置決めが正確にできるようになる。また、操作部材を回転操作するたびに凹部と弾性押圧部が係合してクリック感が生じるため、目視だけでなく触感によっても操作の手ごたえを感じることができるようになる。なお、本発明における凹部の形状は、円形、細長い線状などどのような形状でもよい。また、弾性押圧部の先端形状は、凹部に対して軽く係合できる球面、扇形などの曲面が備わっていることが好ましい。要は、弾性押圧部は、曲面部に対しては、摺動可能な曲面が当接することによって操作部材の回転移動を妨げず、凹部に係合するときには、操作部材の位置決めができるとともに、クリック感を生じさせるものであればよい。
本発明に係るグリップヒーターの切換スイッチのさらに他の構成上の特徴は、操作部材の外周面に、軸方向に延びる複数の凹部または凸部を円周方向に沿って形成して構成される滑り止め部(31a)を設けたことにある。本発明によると、操作部材を回転操作する際に、手が滑りにくくなるため、操作部材の操作がし易くなる。
本発明に係るグリップヒーターの切換スイッチのさらに他の構成上の特徴は、複数の表示部をフィルム(23b)に印刷された複数の色(w,r,y,g)で構成し、フィルムを表示形成部に貼り付けたことにある。本発明によると、表示形成部への複数の表示部の形成が容易になる。
本発明に係るグリップヒーターの切換スイッチのさらに他の構成上の特徴は、固定部材に、複数の表示部に対応するように円周方向に配置された複数の固定接点(25b,25c,25d,25e)を備えた基板(25a)を設けるとともに、操作部材に、操作部材を回転操作したときに、複数の固定接点のいずれかに接触する可動接点(36c,36d)を設け、可動接点が接触する固定接点に応じて、グリップヒーターのオンオフの切り換えおよび温度の設定ができるようにしたことにある。本発明によると、簡単な機構で、グリップヒーターの温度設定と、その設定温度の表示とを同時に行うことができる。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1ないし図3は、同実施形態に係るグリップヒーターの切換スイッチ20が取り付けられた自動二輪車のグリップ10を示している。以下の説明において、前後、左右、上下の各方向は、図1,2に基づいたものとし、図2における上方が前方で下方が後方、左右方向は図1,2の通りで、上下方向は図1の通りとする。グリップ10は、右端が開口し左端が閉塞した円筒形に形成されており、開口から内部にハンドルシャフト11の左端部側部分を挿し込むことによりハンドルシャフト11に取り付けられている。
このグリップ10は、ハンドルシャフト11に固定されるインナーグリップ12と、インナーグリップ12の外周側に設けられるアウターグリップ13とを備えており、インナーグリップ12とアウターグリップ13との間に、発熱被膜層と一対の電極板からなるヒーター14が設置されている。インナーグリップ12は樹脂の成形品からなり、アウターグリップ13は、ヒーター14を介してインナーグリップ12の外周側に成形されたゴムからなっている。ヒーター14は、配線保護チューブ15内に収容された電力供給用の配線15a(図4参照)によって、自動二輪車の車体に設置された制御装置を介して電源に接続されており、通電されることによって発熱する。
また、グリップ10の開口側端部には、フランジ状の連結部16が取り付けられており、配線15aは、連結部16の下部に形成された挿通穴(図示せず)を貫通して外部に延びている。連結部16は、切換スイッチ20が組み付けられる部分であり、その外周面における右端部の前後にそれぞれ位置決め用の突片16aが形成されている。また、連結部16の右端面における下部から前方にかけての部分には、下端が開放された凹部16bが形成されている。なお、ハンドルシャフト11の右端部側にもヒーターを備えたグリップがグリップ10と左右対称に取り付けられているが、このグリップには、一対の突片16aは備わっていなく、切換スイッチ20も取り付けられていない。このグリップのヒーターは電力供給用の配線によって制御装置に接続されており、グリップ10のヒーター14と一緒に電力が供給される。
切換スイッチ20は、グリップ10の右端部に取り付けられており、図4に示したように、カバー部材21、ケース部材26および操作部材30を備えている。カバー部材21は、ケース部材26とで本発明に係る固定部材を構成するもので、図5および図6に示したように、環状基部21aに、環状係合部22、ガイド部23、表示形成部23a、一対の固定部24および基板位置決め部25を形成して構成されている。環状基部21aは、中央にハンドルシャフト11を通すための挿通穴21bが形成された円形板状に形成されており、左側面における外周縁部に、左側に突出する突条21cが形成されている。この突条21cは、内部に連結部16の右端面部分を嵌合できる大きさに形成されている。
そして、突条21cの前後には、それぞれ係合凹部21dが形成され、突条21cの下部には、円周方向の長さが係合凹部21dよりも少し長い凹部21eが形成されている。一対の係合凹部21dは、連結部16の一対の突片16aにそれぞれ係合でき、カバー部材21は、一対の係合凹部21dと一対の突片16aとの係合によって連結部16の右端面に位置決めされる。そして、連結部16の右端面における凹部16bを除いた部分と、その部分に接触する環状基部21aの左側面は接着によって固定される。また、環状基部21aにおける凹部21eの上方やや前方には、左右に貫通する略四角形の挿通穴21fが形成されている。
環状係合部22は、環状基部21aの右側面における挿通穴21bの周縁部から右方向に突出しており、軸方向が短い筒状に形成されている。この環状係合部22の内周面は、左側部分(環状基部21aに対応する部分)よりも右側部分の方が直径が大きくなっており、その境界部に段部22aが形成されている。また、環状基部21aの右側面における外周側には、円周に沿って環状の突起からなるガイド部23が形成されており、その右端面における上部から後部にかけての部分に右側に突出する表示形成部23aが形成されている。表示形成部23aは、ガイド部23に沿った円弧板状に形成されており、その上面には、フィルム23bが貼り付けられる。
フィルム23bの表面には、後方から前方に向かって複数の色、例えば、白w、赤r、黄y、緑gの色がそれぞれ印刷により施されている。このフィルム23bは、裏面に塗布された接着剤によって表示形成部23aに貼り付けられる。フィルム23bの白w、赤r、黄y、緑gはそれぞれ本発明の表示部を構成する部分で、ヒーター14への通電の有無および設定温度を示すものである。ここでは、白wは、ヒーター14に通電されていない状態を示し、赤rは設定温度が90℃、黄yは設定温度が70℃、緑gは設定温度が50℃であることを示すものとする。
一対の固定部24は、環状基部21aの右側面における環状係合部22とガイド部23の間に形成されており、一方の固定部24は、表示形成部23aの上端部の前方に配置され、他方の固定部24は、一方の固定部24と円周方向に180度の間隔を保って配置されている。この一対の固定部24は、カバー部材21にケース部材26を固定するためのもので、それぞれネジ挿通孔24aを備え、右側から見た形状が略扇状の突部で構成されている。ネジ挿通孔24aは、環状基部21aの左側面と、固定部24の右側面との間を貫通している。
基板位置決め部25は、環状基部21aにおける環状係合部22とガイド部23の間で、下方に位置する固定部24の前方近傍に配置されている。この基板位置決め部25は、環状基部21aから右側に突出する板状の基板位置決め部分と、基板位置決め部分の先端から前方に延びる板状の基板押さえ部分とで構成されている。また、環状基部21aの右側面における環状係合部22とガイド部23の間で、上方に位置する固定部24と基板位置決め部25との間には、右側から見た形状が円弧状に形成された基板25aが設置されている。この基板25aは、下端が基板位置決め部25によって支持され、上端が固定部24の近傍に設けられた基板位置決め部(図示せず)によって支持されている。
基板25aには、内周側に位置する長い円弧状の固定接点25bと外周側に位置する3つの短い固定接点25c,25d,25eが備わっている。固定接点25bは、グランドの電気接点であり、固定接点25c,25d,25eは、フィルム23bの赤r、黄y、緑gにそれぞれ対応するように配置された電気接点である。この基板25aの下部は、挿通穴21fに位置しており、各固定接点25b〜25eは、基板25aの裏面で制御用のハーネス25fの各配線にそれぞれ接続されている。このハーネス25fは、基板25aの裏面から延びて、挿通穴21f、連結部16の凹部16bおよび凹部21eを通って配線保護チューブ15内に収容されており、配線15aとともに制御装置に接続されている。
操作部材30は、リング状本体31に、窓部32、プレート支持部33およびバネ支持部34を形成しで構成されている。リング状本体31は、外径がカバー部材21の外径と略同じで、内径がガイド部23の外径よりも僅かに長く、軸方向(左右方向)の長さが7.8mmに設定されており、カバー部材21に組み付けられたときに、ガイド部23を内部に位置させた状態でガイド部23の外周面に対して円周方向に摺動可能になる。また、リング状本体31の外周面における窓部32を除いた部分には、左右方向から見た形状が円弧状になって軸方向に延びる複数の凹部が円周方向に一定間隔で形成されており、この複数の凹部によって滑り止め部31aが構成される。
窓部32は、リング状本体31の外周面から突出した四角枠状に形成されており、内部には、リング状本体31の内周面に貫通する窓穴32aが形成されている。窓穴32aは、左右方向の長さが6mmで、リング状本体31の円周方向に沿った長さが4.7mmに設定されている。そして、窓部32におけるリング状本体31の内周面側には、レンズ35が取り付けられる。レンズ35は、アクリルからなっており、窓穴32aに嵌め込める大きさに形成され、表面にシボ加工が施された四角板状のレンズ本体35aと、レンズ本体35aの上下(前後)に形成された一対の取付片35bとで構成されている。レンズ35は、レンズ本体35aを窓穴32a内に位置させて一対の取付片35bをリング状本体31の内周面に接着またはネジ止めすることによって窓部32に取り付けられる。
プレート支持部33は、リング状本体31の内周面における右側端部から左側端部近傍の部分にかけて形成されており、左右方向から見た形状が略扇状の突部で構成されている。リング状本体31の内周面における左側端部とプレート支持部33の左側面との間の距離は、ガイド部23の左右方向の厚み(突出長さ)よりも長くなっており、これによって、操作部材30をカバー部材21に組み付けたときに、ガイド部23がリング状本体31の内部に入ることが妨げられない。
また、プレート支持部33の左側面には、リング状本体31の径方向に長い矩形の凹部33aが形成されており、その凹部33aの底面中央には円形の凹部33bが形成され、凹部33aの底面における長手方向の両端には、それぞれ逃がし孔33cが形成されている。一対の逃がし孔33cは凹部33aの底面の両縁部に沿うとともに互いに対向して配置されており、プレート支持部33の右側面に貫通している。また、プレート支持部33の先端内面には、リング状本体31と同軸になるように湾曲した摺動面33dが形成されている。
プレート支持部33の凹部33aと一対の逃がし孔33cには、導電性を備えた金属からなるコンタクトプレート36が設置され、凹部33bには、コンタクトプレート36を外部に付勢するコイルバネ37が設置される。コンタクトプレート36は、長方形の突出面部36aと、突出面部36aの長手方向の両端から右側に突出した一対のガイド片36bを備えており、突出面部36aの表面には、一対の可動接点36c,36dが形成されている。プレート支持部33は、図7に示したように、一対のガイド片36bを凹部33aから一対の逃がし孔33c内に入れ、突出面部36aを外部に向けた状態で凹部33aに設置され、凹部33bに設置されたコイルバネ37によって、外部側に付勢される。また、一対のガイド片36bを一対の逃がし孔33c内に入れたことにより突出面部36aは、凹部33aから進退可能になる。
バネ支持部34は、リング状本体31の内周面に、プレート支持部33と対向して設けられており、基端がリング状本体31によって閉塞され、先端が開口した筒状に形成されている。このバネ支持部34内には、弾性押圧部材38が設置される。弾性押圧部材38は、コイルバネ38aの先端に球形の押圧部38bを設置して構成されており、コイルバネ38aをバネ支持部34の内部に入れ、押圧部38bの一部を外部に突出させた状態でバネ支持部34に設置されている。
このように構成された操作部材30は、図8に示したように、プレート支持部33を基板25aに対向させるとともに、リング状本体31の内部にガイド部23を位置させて、カバー部材21に組み付けられる。これによって、コンタクトプレート36の可動接点36cは、基板25aの固定接点25bに接触し、可動接点36dは基板25aにおける固定接点25c〜25eが設けられた外周部分に接触する。また、窓部32のレンズ35は、フィルム23bに対向する。図8のように、コンタクトプレート36が設置されたプレート支持部33が基板25aの上部に対向しているときには、レンズ35は、フィルム23bの白wに対向し、図8の状態から操作部材30が時計周り方向に回転して、コンタクトプレート36が下方に移動していくと、レンズ35は、順次赤r、黄y、緑gの順に対向していく。
また、コンタクトプレート36の可動接点36cは、固定接点25bに接触しながら移動し、可動接点36dは、基板25aにおける固定接点25cの上方部分から、固定接点25c,25d,25eに断続的に接触しながら移動する。すなわち、基板25aの固定接点25b〜25eは、ヒーター14の作動停止状態と、作動時の温度を設定するもので、可動接点36cが固定接点25bに接触し、可動接点36dが固定接点25c,25d,25eのいずれにも接触していないときには、固定接点25bと固定接点25c,25d,25eの間は導通されず、ヒーター14は作動を停止した状態に維持される。このとき、窓部32には、白wが表示される。
また、可動接点36cが固定接点25bに接触し、可動接点36dが固定接点25cに接触しているときには、コンタクトプレート36を介して固定接点25bと固定接点25cが導通され、これによって、ヒーター14の温度を90℃に設定する信号がハーネス25fを介して制御装置に送信される。このとき、窓部32には、赤rが表示される。さらに、可動接点36cが固定接点25bに接触し、可動接点36dが固定接点25dに接触しているときには、コンタクトプレート36を介して固定接点25bと固定接点25dが導通され、これによって、ヒーター14の温度を70℃に設定する信号がハーネス25fを介して制御装置に送信される。このとき、窓部32には、黄yが表示される。
そして、可動接点36cが固定接点25bに接触し、可動接点36dが固定接点25eに接触しているときには、コンタクトプレート36を介して固定接点25bと固定接点25eが導通され、これによって、ヒーター14の温度を50℃に設定する信号がハーネス25fを介して制御装置に送信される。このとき、窓部32には、緑gが表示される。制御装置は、受信した信号に応じてヒーター14の作動を制御し、ヒーター14は発熱する。
ケース部材26は、前述したように、カバー部材21に組み付けられて本発明に係る固定部材を構成するもので、図9および図10に示したように、環状板部26aに、環状係合部27、凹凸曲面部28および一対の筒状ネジ部29を形成して構成されている。環状板部26aは、中央にハンドルシャフト11を通すための挿通穴26bが形成された円形板状に形成されており、カバー部材21の環状基部21aと略同形同大になっている。環状係合部27は、環状板部26aの左側面における挿通穴26bの周縁部から左側に突出する軸方向が短い筒状に形成されている。この環状係合部27の外周面は、右側部分よりも左側部分の方が直径が小さくなっており、その境界部に段部27aが形成されている。
凹凸曲面部28は、環状板部26aの左側面に、環状係合部27の基端側部分の外周に沿って形成されており、外周面に5つの高さの低い略三角形の凸部28aを形成することによって、その凸部28a間に、本発明に係る凹部としての4つの凹部28bが形成されている。この凹部28bには弾性押圧部材38の押圧部38bが係合できる。また、一対の筒状ネジ部29は、環状板部26aの左側面における環状係合部27の近傍に形成されており、一方の筒状ネジ部29は、凹凸曲面部28の近傍に配置され、他方の筒状ネジ部29は、一方の筒状ネジ部29と円周方向に180度の間隔を保って配置されている。筒状ネジ部29は、ともに、基端が環状板部26aに閉塞され、先端が開口しており、内部にはネジ穴29aが形成されている。
このように構成されたケース部材26は、操作部材30が組み付けられたカバー部材21に固定される。すなわち、ケース部材26の環状係合部27は、カバー部材21の環状係合部22と嵌合でき、環状係合部27を環状係合部22内に挿し込んだときに、環状係合部27の先端小径部分が環状係合部22の小径部分に嵌合するとともに、環状係合部27の基端大径部分が環状係合部22の大径部分に嵌合して、段部27aが段部22aに対向する。また、ケース部材26は、一対の筒状ネジ部29が、一対の固定部24に対向するようにカバー部材21に組み付けられ、一対の固定部24のネジ挿通孔24aにそれぞれビス17を通し、そのビス17を一対の筒状ネジ部29のネジ穴29aに螺合させることによりカバー部材21に固定される。
そのとき、図11に示したように、弾性押圧部材38の押圧部38bが凹凸曲面部28の凹部28bに係合する。また、環状係合部22の外周面は、プレート支持部33の先端に形成された摺動面33dに摺接しており、これによって、操作部材30は、カバー部材21に対してもケース部材26に対しても摺動可能になる。なお、図11は、切換スイッチ20の内部を示した説明図であるが、構造を分かりやすくするために、隠れた部分も実線で表している。
また、凹凸曲面部28の凹部28bの間隔は、フィルム23bの各表示部および基板25aの固定接点25b〜25eの配置に対応しており、これらの凹凸曲面部28、フィルム23bおよび基板25aは、固定部材に備わって移動しない部分である。そして、図11のように、押圧部38bが凹凸曲面部28の最下部の凹部28bに係合しているときに、コンタクトプレート36の可動接点36cは固定接点25bに接触し、可動接点36dは固定接点25c,25d,25eのいずれにも接触しない。この場合、窓部32には、白wが表示される。
その状態から、操作部材30を、図11の状態での反時計周り方向に回転して、押圧部38bを凹凸曲面部28の下から2番目の凹部28bに係合させると、コンタクトプレート36の可動接点36cは固定接点25bに接触したまま、可動接点36dは固定接点25cに接触する。この場合、窓部32には、赤rが表示される。さらに、操作部材30を図11の反時計周り方向に回転させていくと、押圧部38bは順次上方の凹部28bに係合していき、可動接点36cは固定接点25bに接触したまま、可動接点36dが固定接点25d,25eに接触していくとともに、窓部32には、黄y、緑gが表示されていく。
このように構成された切換スイッチ20を操作する場合には、まず、自動二輪車のメインキーをオンにするとともに、操作部材30を回転して、任意の温度に設定する。このとき、窓部32に表示される表示部の色から設定温度を確認することができる。これによって、グリップ10とハンドルシャフト11の右側に設けられたグリップの両方が加熱され、冬季、寒冷地などで自動二輪車を走行させる場合でも寒気から手が保護されて心地よく運転することができる。また、操作部材30を回転操作する際に、弾性押圧部材38の押圧部38bと凹凸曲面部28の凹部28bとの係合により、操作部材30は設定された各位置に正確に位置決めされるとともに、操作部材30を回転するたびに、押圧部38bが凸部28aを乗り越えるためクリック感が生じる。
以上のように、本実施形態に係る切換スイッチ20では、カバー部材21とケース部材26からなる固定部材に対して、操作部材30を回転操作することにより、ヒーター14のオンオフの切り換えおよび温度の設定ができ、窓部32にはその設定に応じた白w、赤r、黄y、緑gの色からなる表示部を表示することができる。このように、表示部を一目で認識できる色で構成したため、表示部の視認が容易になる。また、窓部32には、表面にシボ加工が施されたアクリル板からなるレンズ35を取り付けたため、これによって、反射が防止され、さらに表示部を視認し易くなる。
また、本実施形態では、固定部材をカバー部材21とケース部材26で構成し、このカバー部材21とケース部材26を、それぞれ操作部材30内を貫通する環状係合部22,27で組み付けるようにしたため、固定部材の組み付けが容易になるとともに、その固定部材に操作部材30も同時に組み付けることができるため、切換スイッチ20の組付けが容易になる。さらに、操作部材30の外周面に、滑り止め部31aを形成したため、操作部材30を回転操作する際に、手が滑りにくくなるため、操作部材30の操作がし易くなる。
本発明に係るグリップヒーターの切換スイッチは、前述した実施形態に限るものでなく、本発明の技術的範囲内で適宜変更することができる。例えば、前述した実施形態では、表示部を、フィルム23bに印刷された白w、赤r、黄y、緑gの色で構成しているが、この表示部としては、一目で認識できるものであれば文字、図柄などでもよい。また、フィルム23bを用いず、表示形成部23aに直接印刷してもよい。さらに、表示形成部23aは、カバー部材21でなく、ケース部材26に設けてもよい。また、レンズ35をガラスで構成してもよい。
さらに、前述した実施形態では、ケース部材26に、5つの凸部28aと4つの凹部28bが交互に形成された凹凸曲面部28を形成し、操作部材30に弾性押圧部38を設けているが、ケース部材26に弾性押圧部38を設け、操作部材30に凹凸曲面部28を形成してもよい。また、凸部28aは形成せず、円形の穴で凹部を構成してもよい。さらに、前述した実施形態では、切換スイッチ20を自動二輪車に設けているが、本発明に係るグリップヒーターの切換スイッチは、自動二輪車の他、雪上車、水上滑走艇などに用いることもできる。さらに、グリップヒーターの切換スイッチを構成する各部材の形状についても適宜変更が可能である。