以下、本発明に係る静電潜像形成方法、静電潜像形成装置、画像形成装置、および印刷物の生産方法の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
●画像形成装置●
まず、本発明に係る画像形成装置について説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を示す中央断面図である。同図には、本発明に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
レーザプリンタ1000は、感光体ドラム1030の周りに、帯電、露光、現像、転写、クリーニングという電子写真プロセスを実行するための装置が、感光体ドラム1030の回転方向に沿って上記の順に配置されている。
具体的には、帯電プロセスを実行する帯電装置1031、露光プロセスを実行する光走査装置1010、現像プロセスを実行する現像装置、転写プロセスを実行する転写装置1033、クリーニングプロセスを実行するクリーニングユニット1035を有する。転写装置1033とクリーニングユニット1035との間には、除電ユニット1034が配置されている。
現像装置は、トナーカートリッジ1036と、トナーカートリッジ1036から供給されるトナーを感光体ドラム1030の表面に付着させて感光体ドラム1030面の潜像をトナーによって可視化する現像ローラ1032を有している。
転写装置1033は、給紙トレイ1038から給紙コロ1037によって引き出される記録紙1040に、感光体ドラム1030面のトナー像を転写する。記録紙1040は、レジストローラ1039により先端が位置決めされ、感光体ドラム1030面のトナー像に同期して、定着装置1041に搬送される。定着装置1041」でトナー像が定着された1040は、排紙ローラ1042により排紙トレイ1043に送り出される。
レーザプリンタ1000は、通信制御装置1050と、プリンタ制御装置1060とを有する。
以上説明したレーザプリンタ1000の構成要素は、プリンタ筐体1044の内部の所定位置に収容されている。
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコンなどの情報処理装置)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置1060は、不図示のCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)とを有する。また、プリンタ制御装置1060は、RAM(Random Access Memory)と、A/D(Analog/Digital)変換器とを有する。プリンタ制御装置1060は、上位装置からの要求に応じて各部を統括的に制御するとともに、上位装置からの画像情報を光走査装置1010に送る。
ROMには、CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及びこのプログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されている。
RAMは、CPUの作業用の一時書き込み可能なメモリである。
A/D変換器は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。
感光体ドラム1030は、円柱状の部材の潜像担持体であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。感光体ドラム1030は、不図示の駆動機構により図1における矢印方向に回転される。
帯電装置1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。帯電装置1031には、例えばオゾン発生の少ない接触式の帯電ローラや、コロナ放電を利用するコロナチャージャを用いることができる。
図2は、画像形成装置のコロトロン型帯電装置を示す模式図である。また、図3は、画像形成装置のスコロトロン型帯電装置を示す模式図である。帯電装置1031は、図2に示すコロトロン型帯電装置であってもよいし、図3に示すスコロトロン型帯電装置であってもよいし、不図示のローラ型帯電装置であってもよい。
図1に戻り、光走査装置1010は、帯電装置1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、プリンタ制御装置1060からの画像情報に基づいて変調された光束により走査して露光する。光走査装置1010は、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した静電潜像を形成する。
光走査装置1010により形成された静電潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像装置の方向に移動する。光走査装置1010の詳細については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナー(現像剤)が格納されている。トナーは、トナーカートリッジ1036から現像ローラ1032に供給される。
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて、静電潜像を顕像化させる。ここで、トナーが付着した像(以下「トナー像」ともいう。)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写装置1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されている。
給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出す。記録紙1040は、感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写装置1033との間隙に向けて、給紙トレイ1038から送り出される。
転写装置1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。トナー像が転写された記録紙1040は、定着装置1041に送られる。
定着装置1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。トナーが定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次積層され、印刷物が製造される。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、帯電装置1031に対向する位置に戻る。
本発明に係る画像形成装置において、帯電装置と、露光装置としての光走査装置と、感光体と、画像パターンを光出力に変換するための画像処理部とにより、静電潜像が形成される。つまり、帯電装置と、光走査装置と、感光体と、画像処理部とは、本発明に係る静電潜像形成装置を構成する。
複写機やレーザプリンタといった電子写真方式における出力画像を得るためのプロセスは、以下のとおりである。電子写真方式では、帯電工程において潜像担持体の一つである感光体を均一に帯電させ、露光工程において感光体に光を照射して部分的に電荷を逃がす。このようにすることで、電子写真方式では、感光体に静電潜像を形成することができる。
●光走査装置の構成
次に、画像形成装置を構成する光走査装置1010の構成について説明する。
図4は、光走査装置1010の例を示す模式図である。同図に示すように、光走査装置1010は、光源11と、コリメートレンズ12と、シリンドリカルレンズ13と、ミラー14と、ポリゴンミラー15と、第1走査レンズ21とを備える。また、光走査装置1010は、第2走査レンズ22と、ミラー24と、同期検知センサ26と、走査制御装置(不図示)とを備える。
光走査装置1010は、光学ハウジング(不図示)の所定位置に組み付けられている。
なお、以下の説明において、感光体ドラム1030の長手方向(回転軸方向)に沿った方向をXYZ3次元直交座標系のY軸方向とし、ポリゴンミラー15の回転軸に沿った方向をZ軸方向とし、Y軸とZ軸の双方に垂直な方向をX軸方向とする。
以下の説明において、各光学部材の主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」とし、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」とする。
光源11は、例えば2次元配列された複数の発光部を有している。各発光部は、全ての発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等しくなるように配置されている。
ここで、光源11には、半導体レーザ(LD:Laser Diode)や、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などを用いることができる。
図5は、光走査装置1010の光源の例を示す模式図である。同図において、光源11Aは、マルチビーム光源として、4個の半導体レーザが配列されて構成される半導体レーザアレイである。また、光源11Aは、コリメートレンズ12の光軸方向に対して垂直に配置されている。
図6は、光走査装置1010の光源の別の例を示す模式図である。同図において、光源11Bは、発光点がY軸方向とZ軸方向とを含む平面上に配置された、例えば波長780nmの垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)である。
光源11Bは、例えば、水平方向(主走査方向、Y軸方向)に3個、垂直方向(副走査方向、Z軸方向)に4個、計12個の発光点を有する。
光源11Bは、光走査装置1010に適用する場合に、一つの走査線上を水平方向に配置した3つの発光点により走査することで、垂直方向の4本の走査線を同時に走査することもできる。
以下の説明において、「発光部間隔」とは、2つの発光部の中心間距離をいう。
図4に戻り、コリメートレンズ12は、光源11から射出された光の光路上に配置され、光を平行光または略平行光に屈折する。
シリンドリカルレンズ13は、ポリゴンミラー15の偏向反射面近傍に、コリメートレンズ12を通過した光をZ軸方向(副走査方向)にのみ集束する。
シリンドリカルレンズ13は、ポリゴンミラー15の反射面近傍に、主走査方向(Y軸方向)に長い線像として光源11から出射された光を結像させる。
ミラー14は、シリンドリカルレンズ13を通過して結像した光をポリゴンミラー15に向けて反射する。
光源11とポリゴンミラー15との間の光路上に配置されている光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。
ポリゴンミラー15は、感光体ドラム1030の長手方向(回転軸方向)に直交する回転軸まわりに回転する多面鏡である。ポリゴンミラー15の各鏡面は、偏向反射面である。
ポリゴンミラー15は、不図示の駆動用IC(Integrated Circuit)が不図示のモータ部に適切なクロックを与えることで、所望の速度で等速回転する。
ポリゴンミラー15は、モータ部により矢印方向に等速回転されると、偏向反射面で反射された複数の光ビームが、それぞれ偏向ビームとなって等角速度的に偏向される。
第1走査レンズ21と、第2走査レンズ22と、ミラー24と、同期検知センサ26は、走査光学系を構成する。走査光学系は、ポリゴンミラー15で偏向された光の光路上に配置される。
第1走査レンズ21は、ポリゴンミラー15で偏向された光の光路上に配置されている。
第2走査レンズ22は、第1走査レンズ21を介した光の光路上に配置されている。
ミラー24は、長尺平面鏡であり、第2走査レンズ22を介した光の光路を、感光体ドラム1030に向かう方向に折り曲げる。
すなわち、ポリゴンミラー15で偏向された光は、第1走査レンズ21と、第2走査レンズ22とを介して感光体ドラム1030に照射され、感光体ドラム1030表面に光スポットを形成する。
感光体ドラム1030表面の光スポットは、ポリゴンミラー15の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に沿って移動する。ここで、感光体ドラム1030表面上の光スポットの移動方向が「主走査方向」であり、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
同期検知センサ26は、ポリゴンミラー15からの光を受光し、受光光量に応じた信号(光電変換信号)を走査制御装置に出力する。ここで、同期検知センサ26の出力信号は、「同期検知信号」ともいう。
図4に示すように、光走査装置1010では、ポリゴンミラー15の1つの偏向反射面による走査で感光体ドラム1030の被走査面上の複数のラインを同時に走査する。各発光点の発光信号を制御する画像処理部内のバッファメモリには、各発光点に対応する1ライン分の印字データが蓄えられている。
印字データは、ポリゴンミラー15のそれぞれの偏向反射面ごとに読み出され、潜像担持体としての感光体ドラム1030上の走査線上で印字データに対応して光ビームが点滅し、走査線にしたがって静電潜像が形成される。
●プリンタ制御装置・走査制御装置
次に、本発明に係る画像形成装置のプリンタ制御装置及び走査制御装置について説明する。
図7は、図1の画像形成装置を構成するプリンタ制御装置1060及び走査制御装置16を示すブロック図である。同図に示すように、プリンタ制御装置1060は、レーザプリンタ1000の各構成部を統括的に制御する制御部(不図示)、画像処理部1060a、露光量設定部1060b等を有している。
画像処理部1060aは、後述する画像処理が施された画像データ、オブジェクト情報を識別するタグデータ等を露光量設定部1060bに出力する。
露光量設定部1060bは、画像処理部1060aからの画像処理後の画像データの各露光画素の露光量の設定を行い、露光量設定後の画像データ、タグデータ等を走査制御装置16に出力する。
画像処理部1060aから露光量設定部1060bに送られる画像データは、白部(非露光画素群)と黒部(露光部)とが画素ごとに指定されている。
露光量設定部1060bについては、後に詳述する。
走査制御装置16は、露光量設定部1060bからの露光量設定後の画像データ、タグデータ等に基づいて、感光体ドラム1030の表面を走査して、感光体ドラム1030の表面に静電潜像を形成する。
走査制御装置16は、露光量設定部1060bからの画像データ及びタグデータ等を必要に応じて光源の駆動情報を生成し、駆動情報を用いて光源の各発光部を駆動する。
走査制御装置16は、基準クロック生成回路422、画素クロック生成回路425、光源変調データ生成回路407、光源選択回路414、書込みタイミング信号生成回路415、及び光源駆動回路420を有している。
図7における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
基準クロック生成回路422は、光源駆動制御部1019全体の基準となる高周波クロック信号を生成する。
画素クロック生成回路425は、主にPLL(Phase Locked Loop)回路からなる。画素クロック生成回路425は、同期信号s19と基準クロック生成回路422からの高周波クロック信号とに基づいて、画素クロック信号を生成する。
画素クロック信号は、周波数が高周波クロック信号と同一であり、位相が同期信号s19と一致している。
したがって、画素クロック生成回路425は、画素クロック信号に画像データを同期させることで、走査ごとの書込み位置を制御することができる。
生成された画素クロック信号は、駆動情報の1つとして光源駆動回路420に供給されるとともに、光源変調データ生成回路407にも供給される。光源変調データ生成回路407に供給された画素クロック信号は、書込みデータs16のクロック信号として使われる。
光源変調データ生成回路407は、本発明に係る画像形成装置の光源駆動部に相当する。光源変調データ生成回路407は、画像処理ユニット(IPU)などからの画像情報に基づいて、発光部毎の書込みデータs16を作成する。書込みデータs16は、駆動情報の1つとして、画素クロック信号のタイミングにより光源駆動回路420に供給される。
光源変調データ生成回路407は、本実施の形態に係る静電潜像形成方法による潜像を形成するために、画像処理ユニットからの画像パターン情報やタグ情報に基づいて画像データをPM+PWM信号による露光パターンに変換する。
光源選択回路414は、光源が発光部を複数含む場合に用いられる回路であり、走査光の像面が走査終端に達すると、次の走査の開始を検知するのに用いられる発光部を複数(例えば32個)の発光部から選択し、選択された発光部を指定する信号を出力する。この光源選択回路414の出力信号s14は、駆動情報の1つとして光源駆動回路420に供給される。なお、光源に単一の発光部を用いる場合には、光源選択回路414を設けなくても良い。
書込みタイミング信号生成回路415は、同期信号s1に基づいて書き込み開始のタイミングを求め、そのタイミング信号である出力信号s15を上記駆動情報の1つとして光源駆動回路420に出力する。
光源駆動回路420は、駆動情報に基づいて光源の各発光部の駆動電流(例えばパルス電流)を生成し、発光部に駆動電流を供給する。
画像形成装置1000では、画像部における主走査方向の位置に対応して(画像部の露光開始からの時間に対応して)光出力値を変化させながら露光を行う。図7に示す構成により、光源駆動回路420は、パルス幅変調と光量変調(PWM+PW変調)とを同時に実行することによって光源駆動電流を生成することができる。
光源駆動回路420は、光源変調データから得られた光源変調信号を電流に変換することができるため、画像形成装置1000では、光出力と点灯時間を同時に制御可能なPM+PWM変調信号を生成することができる。
図8は、画像形成装置1000の画像処理部の例を示すブロック図である。同図に示すように、画像処理部は、画像処理ユニット(IPU:Image Processing Unit)101と、コントローラ部102と、メモリ部103と、光書込出力部104と、スキャナ部105と、を備える。
図9は、画像処理部の画像処理ユニット101を示すブロック図である。同図に示すように、画像処理ユニット101は、濃度変換部101aと、フィルタ部101bと、色補正部101cと、セレクタ部101dと、階調補正部101eと、階調処理部101fと、を備えている。
濃度変換部101aは、ルックアップテーブルを用いてスキャナ部105からのRGBの画像データを濃度データに変換して、フィルタ部101bに出力する。
フィルタ部101bは、濃度変換部101aから入力される濃度データに対して、平滑化処理やエッジ強調処理等の画像補正処理を施して、色補正部101cに出力する。
色補正部101cは、色補正(マスキング)処理を施す。
セレクタ部101dは、画像処理ユニット101の制御下で、色補正部101cから入力される画像データに対して、C(Cyan)、M(Magenta)、Y(Yellow)、K(Key Plate)のいずれかを選択する。セレクタ部101dは、選択したC、Y、M、Kのデータを階調補正部101eに出力する。
階調補正部101eには、セレクタ部101dから入力されるC、M、Y、Kのデータが予め格納されている。階調補正部101eには、入力データに対してリニアな特性が得られるγカーブを設定する。
階調処理部101fは、階調補正部101eから入力される画像データに対してディザ処理等の階調処理を施して、信号を光書込出力部104に出力する。
図8に戻り、コントローラ部102は、画像データに対して回転・リピート・集約・圧縮伸張などの処理を行ったあと、処理後の画像データを再度IPUに出力する。
メモリ部103には、種々のデータを記憶するためのルックアップテーブルを用意しておく。
光書込出力部104は、制御ドライバにより点灯データに応じて、光源11の光変調を行い、感光体ドラム1030に静電潜像を形成する。光書込出力部104は、後述の階調処理部からの入力信号に基づいて静電潜像を形成する。形成された静電潜像は、上述の現像装置1032、転写装置1033などにより、記録紙に画像を形成する。
スキャナ部105は、画像を読み込み、この画像に基づいてRGB(Red Green Blue)データなどの画像データを生成する。
なお、画像処理ユニット101は、画像処理前の画像データ又は画像処理後の画像データ(濃度データ)を必要に応じてコントローラ部102に出力する。
●静電潜像計測装置の構成
次に、本実施の形態に係る静電潜像形成方法により形成された静電潜像の状態を確認することができる、静電潜像計測装置の構成について説明する。
図10は、静電潜像計測装置を示す中央断面図である。同図において、静電潜像計測装置300は、荷電粒子照射系400と、光走査装置1010と、試料台401と、検出器402と、LED403と、不図示の制御系と排出系と駆動用電源などを備えている。
荷電粒子照射系400は、真空チャンバ340内に配置されている。荷電粒子照射系400は、電子銃311と、引き出し電極312と、加速電極313と、コンデンサレンズ314と、ビームブランカ315と、仕切り板316とを有している。また、荷電粒子照射系400は、可動絞り317と、スティグメータ318と、走査レンズ319と、対物レンズ320とを有している。
以下の説明において、電子銃311の光線の進行方向をc軸方向とし、c軸方向に直交する面内において互いに直交する2つの方向をa軸方向及びb軸方向として説明する。
電子銃311は、荷電粒子ビームとしての電子ビームを発生させる。以下の説明において、電子銃311の電子ビームの進行方向を+c軸方向とする。
引き出し電極312は、電子銃311の+c軸側に配置され、電子銃311で発生された電子ビームを制御する。
加速電極313は、引き出し電極312の+c軸側に配置され、電子ビームのエネルギーを制御する。
コンデンサレンズ314は、加速電極313の+c軸側に配置され、電子ビームを集束させる。
ビームブランカ315は、コンデンサレンズ314の+c軸側に配置され、電子ビームの照射をオン(ON)/オフ(OFF)させる。
仕切り板316は、ビームブランカ315の+c軸側に配置され、中央に開口を有している。
可動絞り317は、仕切り板316の+c軸側に配置され、仕切り板316の開口を通過した電子ビームのビーム径を調整する。
スティグメータ318は、可動絞り317の+c軸側に配置され、非点収差を補正する。
走査レンズ319は、スティグメータ318の+c軸側に配置され、スティグメータ318を介した電子ビームをab面内で偏向する。
対物レンズ320は、走査レンズ319の+c軸側に配置され、走査レンズ319を介した電子ビームを収束させる。対物レンズ320を介した電子ビームは、ビーム射出開口部321を通過して試料323の表面に照射される。
各レンズ等には、不図示の駆動用電源が接続されている。
なお、荷電粒子とは、電界や磁界の影響を受ける粒子をいう。荷電粒子を照射するビームは、電子ビームに代えて、例えばイオンビームを用いてもよい。この場合は、電子銃に代えて、液体金属イオン銃などが用いられる。
試料323は、感光体であり、導電性支持体、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、及び電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を有している。
電荷発生層は、電荷発生材料(CGM:Charge Generation Material)を含み、導電性支持体の−c軸側の面上に形成されている。電荷輸送層は、電荷発生層の−c軸側の面上に形成されている。
試料323は、表面(−c側の面)に電荷が帯電している状態で露光されると、電荷発生層の電荷発生材料によって光が吸収され、正負両極性のチャージキャリアがそれぞれ発生する。このキャリアは、電界によって、一方は電荷輸送層に、他方は導電性支持体に注入される。
電荷輸送層に注入されたキャリアは、電界によって電荷輸送層の表面にまで移動し、表面の電荷と結合して消滅する。これにより、試料323の表面(−c側の面)には、電荷分布、すなわち、静電潜像が形成される。
光走査装置1010は、光源、カップリングレンズ、開口板、シリンドリカルレンズ、ポリゴンミラー、走査光学系などを有している。また、光走査装置1010は、ポリゴンミラーの回転軸に平行な方向に関して光を走査させるための走査機構(不図示)も有している。
光走査装置1010から出射された光は、反射ミラー372及び窓ガラス368を介して試料323の表面を照射する。
試料323の表面における光走査装置1010から射出される光の照射位置は、ポリゴンミラーでの偏向及び走査機構での偏向によって、c軸方向に直交する平面上の互いに直交する2つの方向に沿って変化する。このとき、ポリゴンミラーでの偏向による照射位置の変化方向は主走査方向であり、走査機構での偏向による照射位置の変化方向は副走査方向である。ここでは、a軸方向が主走査方向、b軸方向が副走査方向となるように設定されている。
このように、静電潜像計測装置300は、光走査装置1010から射出される光によって試料323の表面を2次元的に走査することができる。すなわち、静電潜像計測装置300は、試料323の表面に2次元的な静電潜像を形成することが可能である。
ところで、光走査装置1010は、ポリゴンミラーの駆動モータにより生じる振動や電磁波が電子ビームの軌道に影響を与えないように、真空チャンバ340の外に設けられている。これにより、測定結果に及ぼす外乱の影響を抑制することができる。
検出器402は、試料323の近傍に配置され、試料323からの2次電子を検出する。
LED403は、試料323の近傍に配置され、試料323を照明する光を射出する。LED403は、測定後に試料323の表面に残留している電荷を消去するために用いられる。
走査光学系を保持する光学ハウジングは、走査光学系全体をカバーで覆い、真空チャンバ内部へ入射する外光(有害光)を遮光するようにしてもよい。
走査光学系において、走査レンズは、fθ特性を有しており、光偏光器が一定速度で回転しているときに、光ビームが像面に対して略等速に移動する構成となっている。また、走査光学系において、ビームスポット径も略一定に走査することができるように構成されている。
静電潜像計測装置300では、走査光学系が真空チャンバに対して離れて配置されるので、ポリゴンスキャナ等の光偏向器を駆動する際に発生する振動が直接真空チャンバ340に伝播されることによる影響は少ない。
走査光学系を保持する不図示の構造体にダンパなどの防振手段を設けることで、さらに高い防振効果を得ることができる。
走査光学系を設けることにより、静電潜像計測装置300では、感光体の母線方向に対して、ラインパターンを含めた任意の潜像パターンを形成することができる。
所定の位置に潜像パターンを形成するために、光偏向手段からの走査ビームを検知する同期検知センサ26を有してもよい。
試料の形状は、平面であっても曲面であってもよい。
図11は、真空チャンバの例を示す中央断面図である。同図に示すように、真空チャンバは、鉛直軸に対して45°の位置に、外部から真空チャンバ内部に光源からの光を入射させるためのガラス窓326が設けられている。真空チャンバの外部には、光走査装置1010が配置されている。
光走査装置1010は、光源、光偏向器としてのポリゴンミラー、走査レンズ、および同期検知手段等を有している。光走査装置1010を保持する光学ハウジングは、光走査装置1010全体をカバーで覆い、真空チャンバ内部へ入射する外光(有害光)を遮光してもよい。
●静電潜像計測の方法
次に、静電潜像計測の方法について説明する。
図12は、加速電圧と帯電との関係を示す模式図である。まず、静電潜像計測にあたり、静電潜像計測装置300では、感光体の試料323に電子ビームを照射させる。
図12に示すように、加速電極313に印加される電圧である加速電圧|Vacc|として、試料323での2次電子放出比が1となる電圧よりも高い電圧が設定される。このように加速電圧を設定することにより、試料323では、入射電子の量が放出電子の量よりも上回るため電子が試料323に蓄積され、チャージアップを起こす。この結果、静電潜像計測装置300では、試料323の表面をマイナス電荷で一様に帯電させることができる。
図13は、加速電圧と帯電電位との関係を示すグラフである。同図に示すように、加速電圧と帯電電位との間には、一定の関係がある。このため、静電潜像計測装置300では、加速電圧と照射時間を適切に設定することにより、試料323の表面に、画像形成装置1000における感光体ドラム1030と同様な帯電電位を形成することができる。
なお、照射電流の大きいほうが、短時間で目的の帯電電位に到達することができるため、ここでは照射電流を数nAとしている。
その後、静電潜像計測装置300では、静電潜像が観察できるように、試料323における入射電子量を1/100倍〜1/1000倍にする。
静電潜像計測装置300では、光走査装置1010を制御して、試料323の表面を2次元的に光走査し、試料323に静電潜像を形成する。なお、光走査装置1010は、試料323の表面に所望のビーム径及びビームプロファイルの光スポットが形成されるように調整されている。
静電潜像の形成に必要な露光エネルギーは、試料の感度特性によって決まるが、通常、2〜10mJ/m2程度である。感度が低い試料では、必要な露光エネルギーは10mJ/m2以上になる場合がある。つまり、帯電電位や必要な露光エネルギーは、試料の感光特性やプロセス条件に合わせて設定される。静電潜像計測装置300の露光条件は、画像形成装置1000に合わせた露光条件と同様に設定されている。
そこで、このような場合には、静電場の環境や電子軌道をあらかじめ計算しておき、その計算結果に基づいて検出結果を補正することにより、静電潜像のプロファイルを高精度に求めることができる。
図14は、試料面上の2次電子による電位分布を示す模式図である。同図において、荷電粒子を捕獲する検出器402と、試料323との間の空間における電位分布とを、等高線で説明図的に示す。
試料323の表面は、光減衰により電位が減衰した部分を除いては負極性に一様に帯電した状態であり、検出器402には正極性の電位が与えられている。そのため、実線で示される電位等高線群においては、試料323の表面から検出器402に近づくにしたがい電位が高くなる。
したがって、図14において、負極性に均一帯電している部分であるQ1点やQ2点で発生した2次電子e11、e12は、検出器402の正電位に引かれ、矢印G1や矢印G2で示されるように変位し、検出器402に捕獲される。
一方、図14において、Q3点は光照射されて負電位が減衰した部分であり、Q3点近傍では電位等高線の配列は破線で示されるように、Q3点を中心とした半円形の波紋状に広がる。この波紋状の電位分布では、Q3点に近いほど電位が高くなっている。
換言すると、Q3点の近傍で発生した2次電子e13には、矢印G3で示すように、試料323側に拘束する電気力が作用する。このため、2次電子e13は、破線の電位等高線で示されるポテンシャルの穴に捕獲され、検出器402に向かって移動することができない。
図15は、試料面上の2次電子による電荷分布を示す模式図である。同図において、ポテンシャルの穴が模式的に示されている。
すなわち、検出器402により検出される2次電子の強度(2次電子数)の大きい部分は、「静電潜像の地の部分(均一に負帯電している部分、図14における点Q1やQ2に代表される部分)」に対応する。検出器402により検出される2次電子の強度(2次電子数)の小さい部分は、「静電潜像の画像部(光照射された部分、図14における点Q3に代表される部分)」に対応する。
したがって、検出器402の出力から得られる電気信号を適当なサンプリング時間でサンプリングすれば、サンプリング時刻Tをパラメータとして、表面電位分布(電位コントラスト像)V(a,b)は、「サンプリングに対応した微小領域」ごとに特定できる。
そして、表面電位分布V(a,b)を2次元的な画像データとして構成し、これを不図示の表示装置で表示する、あるいは不図示のプリンタで印刷すれば、静電潜像は、可視的な画像として得ることができる。
静電潜像について、例えば、捕獲される2次電子の強度を「明るさの強弱で表現」すれば、静電潜像の画像部分は暗く、地の部分は明るくコントラストがつき、表面電荷分布に応じた明暗像として表現(出力)することができる。また、静電潜像について、表面電位分布を知ることができれば、表面電荷分布も知ることができる。
なお、静電潜像について、表面電荷分布や表面電位分布のプロファイルを求めることにより、静電潜像をさらに高精度に測定することが可能である。
図16は、光走査装置1010による潜像画像パターンの例を示す模式図である。同図に示すように、光走査装置による潜像画像パターンとしては、いわゆる1ドット孤立パターンや1ドット格子パターンと称されるものが挙げられる。
図17は、光走査装置1010による潜像画像パターンの別の例を示す模式図である。同図に示すように、光走査装置による潜像画像パターンとしては、いわゆる2ドット孤立パターンと称されるものが挙げられる。
図18は、光走査装置1010による潜像画像パターンのさらに別の例を示す模式図である。同図に示すように、光走査装置による潜像画像パターンとしては、いわゆる2by2パターンと称されるものが挙げられる。
図19は、光走査装置1010による潜像画像パターンのさらに別の例を示す模式図である。同図に示すように、光走査装置による潜像画像パターンとしては、いわゆる2ドットラインパターンと称されるものが挙げられる。
なお、光走査装置による潜像画像パターンは、上述のものに限定されず、様々なパターンを形成することができる。
検出器402での検出対象は、試料323からの2次電子に限定されるものではない。例えば、入射電子ビームが試料323の表面に到達する前に、試料323の表面近傍で反発された電子(以下「1次反発電子」ともいう。)を検出器402が検出してもよい。
図20は、グリッドメッシュ配置による測定例を示す中央断面図である。同図に示すように、グリッドメッシュ配置による測定例では、試料台401と試料323との間に絶縁部材404と導電部材405を設け、導電部材405に±Vsubの電圧が印加されるようになっている。
試料323の下側の導電部材405には、電圧±Vsubを印加できる電圧印加部が接続されている。また、試料323の上側には、入射電子ビームが試料電荷の影響を受けることを抑制するために、グリッドメッシュ325が配置されている。
以上のように構成することで、検出器402では、1次反発電子が検出される。
検出器402には、検出器402に対向して導電板324やサイドグリッドが設けられてもよい。
一般的に加速電圧は正で表現することが一般的であるが、Vaccは負であるため、加速電圧を負(Vacc<0)で表現する。
また、試料323の電位ポテンシャルをVp(<0)とする。
電位とは単位電荷が持つ電気的な位置エネルギーであるため、入射電子は、電位0(V)では加速電圧Vaccに相当する速度で移動する。
すなわち、電子の電荷量をeとし電子の質量をmとすると、電子の初速度v0は、mv02/2=e×|Vacc|で表される。ここで、真空中ではエネルギー保存の法則により、加速電圧の働かない領域では電子は等速で運動する。
試料323に接近するに従い、電位が高くなり、電子は、試料323の電荷によりクーロン反発の影響を受けて速度が遅くなる。したがって、一般的に以下のような現象が起こる。
図21は、|Vacc|≧|Vp|のときの入射電子の挙動を示す模式図である。同図に示すように、|Vacc|≧|Vp|のときは、入射電子の速度は減速されるものの、試料323に到達する。
図22は、|Vacc|<|Vp|のときの入射電子の挙動を示す模式図である。同図に示すように、|Vacc|<|Vp|のときは、入射電子の速度は試料323の電位ポテンシャルの影響を受けて徐々に減速し、試料323に到達する前に速度が0となって、反対方向に進む。
空気抵抗の無い真空中では、エネルギー保存の法則がほぼ成立する。したがって、入射電子のエネルギーを変えたときの試料323表面上でのエネルギー、すなわちランディングエネルギーがほぼ0となる条件を計測することで、試料323表面の電位を計測することができる。
入射電子が試料323に到達したとき発生する2次電子と1次反発電子とでは、検出器402に到達する量が大きく異なるので、明暗のコントラストの境界より識別することができる。
走査電子顕微鏡などには、反射電子の検出器があるが、この場合の反射電子とは、一般的に試料の物質との相互作用により、入射電子が後方背面に反射(散乱)され、試料表面から飛び出す電子のことを指す。
反射電子のエネルギーは入射電子のエネルギーに匹敵する。反射電子の速度ベクトルは試料の原子番号が大きいほど大きいとされる。また、反射電子は、試料の組成の違い、及び表面の凹凸などを検出するのに利用される。
これに対して、1次反発電子は、試料表面の電位分布の影響を受けて試料表面に到達する前に反転する電子のことであり、反射電子とは全く異なる。
図23は、潜像深さの計測結果の例を示す模式図である。同図において、静電潜像を計測した結果の一例が示されている。Vthは、VaccとVsubとの差(=Vacc−Vsub)である。
また、電位分布V(a,b)は、各走査位置(a,b)でランディングエネルギーがほぼ0となるときのVth(a,b)から求めることができる。Vth(a,b)は、電位分布V(a,b)と一意的な対応関係があり、電荷分布がなだらかであれば、Vth(a,b)は近似的に電位分布V(a,b)と等価となる。
図23(A)におけるVthと静電潜像の中心からの距離との関係を示す曲線は、試料表面の電荷分布によって生じた表面電位分布の一例である。
ここで、Vaccは−1800Vとしている。静電潜像の中心では、電位が約−600Vであり、静電潜像の中心から離れるにつれて、電位がマイナス側に大きくなる。静電潜像の中心から75μmを超える周辺領域の電位は、約−850Vになっている。
図23(B)は、Vsub=−1150Vに設定したときの検出器402の出力を画像化した図である。このとき、Vth=−650Vである。
また、図23(C)は、Vsub=−1100Vに設定したときの検出器402の出力を画像化した図である。このとき、Vth=−700Vである。
1次反発電子を検出して静電潜像のプロファイルを求める方法では、VaccまたはVsubを変えながら、試料表面を電子ビームで走査させ、Vth(a,b)を計測することにより、試料の表面電位情報を得ることができる。1次反発電子を検出して静電潜像のプロファイルを求める方法を用いることにより、従来困難であった、静電潜像のプロファイルをミクロンオーダーで可視化することができる。
1次反発電子を検出して静電潜像のプロファイルを求める方法では、入射電子のエネルギーが極端に変化するため、入射電子の軌道がずれて、走査倍率が変化する、あるいは歪曲収差を生じる場合がある。
このような場合には、静電場の環境や電子軌道をあらかじめ計算しておき、その計算結果に基づいて検出結果を補正することにより、静電潜像のプロファイルを高精度に求めることができる。
以上説明したように、静電潜像計測装置300を用いることにより、静電潜像における電荷分布、表面電位分布、電界強度分布、及び試料表面に直交する方向に関する電界強度を、それぞれ高精度に求めることができる。
●静電潜像形成方法●
次に、本発明に係る静電潜像形成方法の実施の形態について説明する。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法において、潜像形成に用いる光出力波形は、ライン画像やベタ画像を含む画像部に対して、目標とする画像濃度を得るのに必要な光出力値で所定時間だけ感光体を露光させる波形である。
なお、画像部とは、複数の画素で構成され、画像パターンにおいてトナーを付着させて画像を形成するための部分である。また、非画像部とは、画像パターンにおいてトナーを付着させず画像を形成しない部分である。
以下の説明において、目標とする画像濃度を「目標画像濃度」という。また、以下の説明において、目標画像濃度を得るために必要な所定光出力値を「目標露光出力値」あるいは「基準光出力値」という。また、以下の説明において、目標画像濃度を得るために目標露光出力値で画像部の画素全体を露光させる所定時間を、「目標露光時間」という。
以下の説明において、目標露光出力値で目標露光時間だけ露光させる露光方法を、「標準露光」という。さらに、以下の説明において、ベタ画像(solid image)とは、線画像に比較して大面積の画像部をいう。
さらに、以下の説明において、目標露光出力値より強い光出力値で目標露光時間より短い露光時間だけ感光体を露光させることを、「時間集中露光」という。時間集中露光では、例えば、1画素を露光する際に、1画素分の目標露光出力値に3画素分の目標露光出力値を加算した合計4画素分の光出力値を1画素分の露光時間で露光する。
なお、以下の説明において、時間集中露光のことをTC(Time Concentration)露光ともいう。
図24は、参考例における静電潜像形成方法の例を示す模式図である。同図に示すように、参考例の標準露光による静電潜像形成方法による露光(以下「露光方式1」という。)は、ライン画像やベタ画像を含む1ドットの画像部に対して、上述の通り目標露光出力値で目標露光時間だけ感光体を露光させる波形である。ここで、目標露光出力値を100%の光出力値とし、目標露光時間をDuty比100%とする。
図25は、本発明に係る静電潜像形成方法の例を示す模式図である。同図に示すように、本実施の形態における時間集中露光による露光方法(以下「露光方式2」という。)は、目標露光出力値の200%の光出力値で目標露光時間に対してDuty比50%で感光体を露光させる。ここで、画像部の幅を1とすると、露光させる区間の幅は4/8画素である。
図26は、本発明に係る画像形成方法の別の例を示す模式図である。同図に示すように、本実施の形態における時間集中露光による露光方法(以下「露光方式3」という。)は、目標露光出力値の400%の光出力値で目標露光時間に対してDuty比25%で感光体を露光させる。画像部の幅を1とすると、露光させる区間の幅は2/8画素である。
図27は、本発明に係る画像形成方法のさらに別の例を示す模式図である。同図に示すように、本実施の形態における時間集中露光による露光方法(以下「露光方式4」という。)は、目標露光出力値の800%の光出力値で目標露光時間に対してDuty比12.5%で感光体を露光させる。画像部の幅を1とすると、露光させる区間の幅は1/8画素である。
以上説明した露光方式2〜4では、露光方式1と比較してパルス幅が狭い。つまり、露光方式2〜4では、露光方式1と同じ光量で露光させると形成される潜像が小さくなるため、潜像形成時の積分光量が同等となるようにパルス幅に応じて光量を制御している。
時間集中露光による露光方式2〜4では、標準露光による露光方式1と比較して、短いパルス幅で強い光量により露光が行われる。
以上の説明では、露光方式2〜4は、いずれも積分光量が一定となるように光出力値を設定しているが、本発明に係る静電潜像形成方法における光出力値は、これに限定されるものではない。
画像形成装置は、画像形成の高速化の要求が高まるとともに、オンデマンドプリンティングシステムとして簡易印刷に用いられるようになり、画像の高品質化、高精度化も求められている。
露光方式1を行う画像形成装置において、高画質化を実現する方法として、露光のビームサイズを小さくすることにより、小さな静電潜像を形成して解像力を高める方法がある。
しかしながら、ビームサイズを小さくして各像高を揃えることは、高コストの要因となる。画像形成装置全体のコストにおいてビームサイズを小さくするコストが占める割合も高くなっている。このため、露光のビームサイズを小さくしなくても、微小な静電潜像を形成することが求められている。
また、電子写真方式の画像形成装置による画像形成の課題としては、微小サイズ文字の再現性が挙げられる。特に、1200dpiの場合に2,3ポイントに相当する微小サイズの文字、特に白抜けとなる微小サイズの反転文字を認識できる出力画像を形成することが求められている。
電子写真方式の画像形成装置では、帯電、露光、現像、転写、定着の各工程における結果の成否が、最終的に出力される画像の品質に大きく影響を与える。中でも、露光プロセスにより感光体上に生じる静電潜像の状態は、トナー粒子の挙動に直接影響を及ぼす重要な要素である。そのため、画像形成装置において、露光プロセスにより感光体上に形成される静電潜像を改善することが、高品質の画像を形成する上で極めて重要である。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法は、画像パターン内の画像を形成する画像部の狭い範囲を強い光で集中して露光させる。このようにすることで、本実施の形態に係る静電潜像形成方法は、ビーム径サイズより小さい(ビーム径のサイズの影響が無視できない)微小サイズの出力画像パターンの忠実性を向上させるとともに、画像パターンを所望の画像濃度に調整することができる。
すなわち、本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、微小サイズの画像パターン形成と所望の画像濃度とを両立した出力画像を形成することができる。
また、本実施の形態に係る静電潜像形成方法は、エッジ検出や文字情報認識など特別な処理を行わずに、任意の画像パターンに容易に適用することができる。
したがって、本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、画像データを光源変調データに変換する際にコンピュータからオブジェクト情報を取得することができない場合であっても画像パターンを生成することができる。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、画像データと光源変調データとを文字ごとに対応させることなく微小サイズの画像パターン形成と所望の画像濃度とを両立した出力画像を形成することができる
本実施の形態に係る静電潜像形成方法は、PM(Phase Modulation)変調とPWM(Pulse Width Modulation)変調とを組み合わせたPM+PWM変調を利用する。そして、本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、最大光出力を意図的に強めた時間集中露光を用いることにより、露光時の画像パターンの積分光量を標準露光と同じ値にすることもできる。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、深い潜像を形成することで画像パターンの画像濃度を変えずに画像パターンの解像力を高めることができる。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法は、画像パターンに含まれる画像部と非画像部との境界にある画像部内の1以上の画素(画素群)が非露光の画素となるように光出力値を設定する。ここで、画像パターンに含まれる画像部と非画像部との境界にある画像部内の非露光の画素群を、非露光画素群という。また、本実施の形態に係る静電潜像形成方法は、非露光画素群に隣り合う(非露光画素群の近傍の)画素群への光出力値を、非露光画素群への光出力値を加算した光出力値で露光する。
このようにすることで、本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、高画質な画像パターンを形成することができる。
●露光パターンの形成例
次に、本実施の形態に係る静電潜像形成方法による、露光パターンの形成例を説明する。以下の説明において、特に言及しない限り画像パターンにおける主走査方向の画素についての露光時間と露光する際の光出力値の制御について説明する。
図28は、画像パターンの一部分を所定光出力値で露光する場合の露光パターンの例を示す模式図である。同図には、本実施の形態に係る静電潜像形成方法による露光パターンの比較例として、所定光出力値(目標露光出力値=100%)を一定区間露光することで画像パターンの1走査部を画像部411として形成している例を示す。画像パターンにおいて、画像部411ではない非画像部412は、露光されない。
図29は、画像パターンの非画像部との境界画素を高出力露光画素群として露光する場合の露光パターンの例を示す模式図である。同図に示すように、本実施の形態に係る静電潜像形成方法では、画像部411を構成する画素の非画像部412との境界にある画素群のうち、画像部411の端部(エッジ部)を非露光画素群441として露光しない。
一方、本実施の形態に係る静電潜像形成方法では、画像部411を構成する画素のうち、非露光画素群441との境界にある画素群を高出力露光画素群443とする。そして、本実施の形態に係る静電潜像形成方法では、その画素群を露光するのに必要な所定光出力値(目標露光出力値)と非露光画素群441を露光するのに必要な光出力値とを加算した光出力値(積分エネルギー)で時間集中露光(TC露光)する。
ここで、高出力露光画素群443は、TC画素ともいう。また、TC画素に加算された積分エネルギーは、TC積分エネルギーともいう。
図29において、画像部411の端部は、目標露光出力値の200%の光出力値で露光される。本実施の形態において、TC画素に非露光画素群441の積分エネルギーの全てまたは一部が加算された際の光出力値と目標露光出力値との比を「TC○○%」と表記し、以降この値をTC値という。図29の画像パターンは、高出力露光画素群443が「TC200%」で露光されている。
図30は、画像パターンの非画像部412との境界画素を高出力露光画素群443として露光する場合の露光パターンの別の例を示す模式図である。同図に示すように、本実施の形態に係る静電潜像形成方法では、画像部411のエッジ部のシャープ性を向上させるために、主走査方向の2画素を非露光画素群441とすればよい。この場合に、高出力露光画素群443(TC画素)は、非露光画素群441の画素数に対応して画像部411と非露光画素群441との境界の2画素とすればよい。
非露光画素群441と高出力露光画素群443とを2画素とした場合には、高出力露光画素群443への光出力値は、目標露光出力値の300%(TC300%)となる。
図31は、画像パターンの非画像部412との境界画素を高出力露光画素群443として露光する場合の露光パターンのさらに別の例を示す模式図である。同図に示すように、本実施の形態に係る静電潜像形成方法では、主走査方向の3画素を非露光画素群441としてもよい。この場合に、高出力露光画素群443(TC画素)は、非露光画素群441の画素数に対応して画像部411と非露光画素群441との境界の3画素とすればよい。
非露光画素群441と高出力露光画素群443とを3画素とした場合には、高出力露光画素群443への光出力値は、目標露光出力値の400%(TC400%)となる。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法において、非露光画素群441の画素数は、高出力露光画素群443への光出力値に制約がない場合であればビームサイズを超えない最大値まで増やすことができる。
非露光画素群441の画素数は、画像パターンの状況に応じて設定してよい。例えば、画像部411のエッジ部のシャープ性や白抜け文字の再現性などの画像品質の要求に応じて、図29に示したように非露光画素群441を1画素とし、高出力露光画素群443を1画素にすればよい。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法において、非露光画素群441は、画像の対称性が崩れないように、画像パターンの両端から同じ画素数だけ設けてもよい。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法によるTC露光は、必ずしも画像パターン全体に用いなくてもよい。
図32は、画像パターンの非画像部との境界画素を高出力露光画素群として露光する場合の露光パターンの別の例を示す模式図である。図32(A)に示すように、この例では、画像パターンの画像部501の画素数が18画素、非露光画素群541の画素数の上限が4画素に設定されている。
以上の例において、光出力値に制約がない場合は、図32(B)に示すように非露光画素群541を4画素として、高出力露光画素群543を画像部501の端部の1画素とする。このとき、高出力露光画素群543への光出力値は、非露光画素群541への光出力値を高出力露光画素群543に全て加算できるため、TC500%となる。
一方、以上の例において、光出力値に例えばTC200%という制約がある場合には、図32(C)に示すように4画素の非露光画素群541の光出力値を、4画素の高出力露光画素群543に分散して加算する。この場合に、高出力露光画素群543の1画素あたりの光出力値は、TC200%となり、制約された光出力値の条件を満足することができる。
図33は、画像パターンの非画像部との境界画素を高出力露光画素群として露光する場合の露光パターンのさらに別の例を示す模式図である。
先に説明した図32の例では、画像部501の画素数が18画素と十分に大きいため、光出力値の上限に制約されずに非露光画素群541の画素数を最大値である4画素にすることができた。
しかし、画像部の画素数によっては、非露光画素群541の画素数を最大値にすることができない場合がある。図33(A)に示すように、この例では、画像パターンの画像部601の画素数が10画素、非露光画素群641の画素数の上限が4画素に設定されている。
高出力露光画素群643の光出力値に制約がない場合には、図33(B)に示すように非露光画素群641の画素数を最大4画素として、非露光画素群641を露光する光出力値を1画素の高出力露光画素群643に全て加算することができる。このとき、高出力露光画素群643の光出力値は、TC500%となる。
しかし、光出力値にTC200%という制約がある場合には、図33(C)に示すように、非露光画素群641と高出力露光画素群643の画素数が2画素となる。
図32と図33の例より、非露光画素群の画素数がビームサイズを超えない最大値まで増やせるか否かは、画像パターンにおける画像部の画素数と光出力値の上限値に依存することがわかる。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法では、画像部の画素数をL、非露光画素群の画素数をn、高出力露光画素群の画素数をx、光出力値の上限値をYとしたとき、露光パターンが一意に定まるように一般化することができる。
図34は、本実施の形態に係る静電潜像形成方法による露光パターンの例を示す模式図である。図34(A)に示すように、画像部701の画素数がLの画像において、画素数nの非露光画素群741を設けて本実施の形態に係る静電潜像形成方法のTC露光を適用する場合を考える。
ここで、Yの違いにより、図34(B)に示すように非露光画素群の光出力値が画素数xの高出力露光画素群743に等しく加算される場合と、図34(C)に示すように内側の1画素の高出力露光画素群にのみ他より少ない光出力値が加算される場合が考えられる。図34(C)の場合には、画像部701の端部から内側に向かって光出力値が単調減少している。
図34(B)と(C)の条件を満たす、高出力露光画素群743の積分エネルギーを式で表すと、
(Y−100)・x≧100n ・・・(1)
となる。式(1)は、高出力露光画素群743の光出力値の総和は、非露光画素群741を露光した場合の光出力値の総和に相当することを示している。
また、画素数に関する式は、
2・(n+x)≦L ・・・(2)
である。
(1)より、
X≧100/(Y−100)・n ・・・(3)
となる。
また、(2)より、
x≦(L/2)−n ・・・(4)
となる。
そして、(2)、(4)より、
100/(Y−100)・n≦x≦(L/2)−n
よって、
100/(Y−100)・n≦(L/2)−n
{100/(Y−100)+1}・n≦L/2
n≦L/2・(Y−100)/Y ・・・(5)
以上より、式(5)を満たすnの最大値が非露光画素群741の画素数となる。
また、高出力露光画素群743の画素数はできるだけ少ない方が画像部のエッジ部のシャープ性を向上させることができるので、式(3)を満たすxの最小値が高出力露光画素群743の画素数となる。
式(5)により定まる非露光画素群741の画素数nは、エッジ部のシャープ性を向上させるにはできるだけ大きい方が望ましいが、非露光画素群741のサイズがビームサイズを超えると、静電潜像が適切に形成されない。このため、非露光画素群741の画素数nは、非露光画素群741の画素数の最大値N以下(n≦N)にしなければならない。
図35は、本実施の形態に係る静電潜像形成方法による露光パターンの別の例を示す模式図である。図35に示す画像パターンについて、本実施の形態に係る静電潜像形成方法のTC露光における非露光画素群841の画素数xと高出力露光画素群843の画素数nを、式(3)と式(5)から求める。
図35(B)に示す例において、ビーム径が85μmの場合は、1200dpiにおいて4dotに相当する。このビームサイズまで非露光画素群841を設けることが可能だとすると、オフ画素最大値Nは4となる。また、画像パターンの画像部801の画素数Lを18、高出力露光画素群843の光出力値YをTC200%とする。
式(5)より、n≦4.5となるため、これを満たすnの整数の最大値は4である。この数値を式(3)に代入すると、x≧4となるので、これを満たすxの整数の最小値は4である。高出力露光画素群843に加算される光出力値の合算値(積分エネルギー)は4×100=400で、高出力露光画素群843の画素数が4画素であるため、各TC画素に光出力値が等しく100%加算される。
図35(C)に示す例において、高出力露光画素群843の光出力値YをTC170%とすると、式(5)より、n≦3.64となるため、これを満たすnの整数の最大値は3である。この数値を式(3)に代入すると、x≧4。28となるので、これを満たすxの整数の最小値は5である。
高出力露光画素群843に加算される光出力値の合算値(積分エネルギー)は、3×100=300で、高出力露光画素群843の画素数が5画素である。このため、各TC画素に光出力値を等しく70%加算すると、合算値は350%となってしまい、上述の積分エネルギー300%を上回ってしまう。
そこで、図35(C)の露光パターンでは、各TC画素に等しく光出力値を加算せず、TC画素のうち4画素には光出力値を70%ずつ加算し、残り1画素に20%を加算する。このようにすることで、図35(C)の露光パターンでは、高出力露光画素群743の光出力値の総和が非露光画素群741を露光した場合の光出力値の総和となる。
仮に、光出力値に制約がなければY→∞であるので、式(5)はn≦L/2となる。この場合には、nの値はビームサイズを超えない非露光画素群841の最大値N以下という制約があるので、nの値にはNの値が適用される。
別の例として、パターン画素数L=24、光出力値の上限Y=150%の場合には、n≦4となるため、非露光画素群の画素数nは4画素になる。このとき、画像のシャープ性を向上させるために非露光画素群の画素数の最大値N=3という条件がある場合には、n≦N という条件から、非露光画素群の画素数nは3となる。この例において、白抜き文字のエッジ部にTC露光を適用する場合には、非露光画素群の画素数の最大値Nは2とすると潜像解像力が向上しやすいため、n≦Nより非露光画素群の画素数nは2となる。
●静電潜像形成方法のフローチャート
図36は、本実施の形態に係る静電潜像形成方法のフローチャートである。画像形成装置1000は、所定の走査方向(例えば主走査方向)で画像パターンを検出する(S101)。
画像形成装置1000は、画像パターンの画像部の画素数Lを特定する(S102)。
画像形成装置1000は、本実施の形態に係る静電潜像形成方法により露光するにあたり、光出力値の上限値Yがあるか否かを判断する(S103)。
光出力値の上限値Yがない場合には(S103:NO)、画像形成装置1000は、非露光画素群の画素数の最大値Nを非露光画素群の画素数n(n=N)として、S107の処理に進む(S104)。
光出力値の上限値Yがある場合には(S103:YES)、画像形成装置1000は、光出力値の上限値をYとして(S105)、式(5)に基づいて非露光画素群の画素数nの最大値を求める(S106)。
画像形成装置1000は、以上のS104またはS106の処理により、非露光画素群の画素数(オフ画素数)nを決定する(S107)。
画像形成装置1000は、式(3)に基づいて、高出力露光画素群の画素数の最小値xを求める(S108)。画像形成装置1000は、求められた最小値xにより、高出力露光画素群の画素数(TC画素数)を決定する(S109)。
画像形成装置1000は、式(1)に基づいて、高出力露光画素群の積分エネルギーがn・100=x・(Y−100)であるか否かを判断する(S110)。
高出力露光画素群の積分エネルギーがn・100=x・(Y−100)ではない場合には(S110:NO)、画像形成装置1000は、TC画素の端部から(x−1)の画素は各々光出力値の上限値Yで露光する。また、画像形成装置1000は、TC画素の内側(中心寄り)の1画素は、n・100−(x−1)・(Y−100)となる積分エネルギーを加算する(S111)。
高出力露光画素群の積分エネルギーがn・100=x・(Y−100)である場合には(S110:YES)、またはS111の処理後、画像形成装置1000は、その積分エネルギーで露光パターンを決定する(S112)。
なお、本実施の形態に係る静電潜像形成方法において、非露光画素群の画素数やTC画素の画素数は、画素サイズに依らずに決定できる。
また、以上の説明において、本実施の形態に係る静電潜像形成方法を主走査方向における露光時間制御について適用した例を示したが、積分エネルギーを光出力と画素数の積算とみなした場合、副走査方向についても同様の効果が得られる。
●ライン画像の形成例
次に、本実施の形態における静電潜像形成方法により、ライン画像を形成する例について説明する。なお、以下の説明において、図中のY軸方向(主走査方向)を横方向とし、Z軸方向(副走査方向)を縦方向とする。また、以下の説明では、幅が異なるラインが混在した画像パターンに対して、光出力値の上限値YをTC200%としてTC露光を行う。
図37は、線幅の異なるラインパターンと露光パターンの例を示す模式図である。図37(A)に示すように、線幅の異なるラインパターンの例は、幅18画素のラインの間に幅4画素のラインが存在する。図37(B)は、線幅の異なるラインパターンの幅18画素のラインの露光パターンを示す。図37(C)は、幅4画素のラインの露光パターンを示す。
図38は、線幅の異なるラインパターンに本実施の形態に係る静電潜像形成方法を適用した場合の露光パターンの例を示す模式図である。図38(A)に示すように、本実施の形態に係る静電潜像形成方法を適用した線幅の異なるラインパターンの例を示す。図38(B)は、線幅の異なるラインパターンの幅10画素のラインの露光パターンを示す。図38(C)は、幅2画素のラインの露光パターンを示す。
図36に示したフローチャートによれば、図37(B)に示した幅18画素のラインの露光パターンは、図38(B)に示すように非露光画素群の画素数が4、高出力露光画素群の画素数が4となる。また、図37(C)に示した幅4画素のラインは、図38(C)に示すように非露光画素群の画素数が1、高出力露光画素群の画素数が1となり、TC露光を行うことができる。
●対角強調した露光パターンの形成例
次に、本実施の形態における静電潜像形成方法により、対角強調した露光パターンを形成する例について説明する。
図39は、本実施の形態に係る静電潜像形成方法により対角強調した露光パターンの例を示す模式図である。図39(A)は本実施の形態に係る静電潜像形成方法を実行する前の露光パターンであり、図39(B)は本実施の形態に係る静電潜像形成方法を実行した後の露光パターンである。
図40は、本実施の形態に係る静電潜像形成方法により対角強調した露光パターンの別の例を示す模式図である。図40(A)は本実施の形態に係る静電潜像形成方法を実行する前の露光パターンであり、図40(B)は本実施の形態に係る静電潜像形成方法を実行した後の露光パターンである。
図39と図40に示すように、画像部の画素が、対角方向に隣り合う画素位置にある場合は、積分エネルギーを一定にすることにこだわらず、例外的に強調露光を行ってもよい。
●効果●
以上説明したように、本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法では、非露光画素群との境界にある画素群を高出力露光画素群として、その画素群を露光するのに必要な所定光出力値と前記非露光画素群を露光するのに必要な光出力値とを加算した光出力値で露光する。このため、本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、画像部の端部(エッジ部)が明瞭な高品質(解像力の高い)潜像を形成することができる。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、非露光画素群が、主走査方向における画像パターン内の露光部の両端の画素群であるため、解像力の高い潜像を形成できる。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、非露光画素群の画素数は、画像パターンを構成する画素数と画像パターンにおいて非露光画素群を構成する画素数の最大値と非露光画素群の画素数とに基づいて決定されるため、解像力の高い潜像を形成できる。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法では、画像パターンを構成する画素数をL、画像パターンにおいて非露光画素群を構成する画素数の最大値をN、としたとき、
非露光画素群の画素数nは、
n≦L/2・(Y−100)/Y かつ n≦N
を満たす整数の最大値として決定される。このため、本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、解像力の高い露光パターンを一意に決定できる。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法では、光出力値の上限値をY、非露光画素群の画素数をn、としたとき、
高出力露光画素群の画素数xは、
x≧100/(Y−100)・n
を満たす整数の最小値として決定される。このため、本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、解像力の高い露光パターンを一意に決定できる。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、高出力露光画素群の光出力値は、画像パターンの両端の画素から画像パターンの中心に向かって減少するため、エッジ部をシャープにする効果を最大限に発揮することができる。
本実施の形態に係る静電潜像形成方法によれば、高出力露光画素群の光出力値の総和は、非露光画素群を露光した場合の光出力値の総和に相当するため、積分エネルギーが一定となり消費電力を増やさずに潜像解像力を向上できる。