以下、本発明にかかる画像評価装置、画像形成装置および画像評価方法の一実施形態について説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施例であるので、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明によって不当に限定されるものではない。また、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須の構成要件ではない。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる画像評価装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、画像評価装置1は、帯電手段の一例としての荷電粒子照射部10と、露光部20と、検出部30と、LED40と、試料設置部50とを備える。
荷電粒子照射部10は、荷電粒子ビームを感光体試料60に照射する。荷電粒子とは、電界や磁界の影響を受ける粒子を意味している。荷電粒子は、例えば、電子ビーム、イオンビーム等を含む。本実施形態では、荷電粒子ビームは、電子ビームである場合について説明する。
荷電粒子照射部10は、電子銃11と、サプレッサ電極(引き出し電極)12と、加速電極13と、コンデンサレンズ14と、ビームブランカ15と、走査レンズ16と、対物レンズ17とを含む。荷電粒子照射部10は、各部材が真空チャンバ10a内に配置されている。真空チャンバ10a内は、真空になっている。
電子銃11は、電子ビームを発生させる。サプレッサ電極12は、電子ビームを制御する。加速電極13は、電子ビームのエネルギーを制御する。コンデンサレンズ14は、電子銃11から発生された電子ビームを集束させる。ビームブランカ15は、電子ビームをON/OFFさせる。走査レンズ16は、ビームブランカ15を通過した電子ビームを走査させる。対物レンズ17は、走査レンズ16を通過した電子ビームを再び集束させる。それぞれのレンズ等には、図示しない駆動用電源が接続されている。なお、荷電粒子照射部10がイオンビームを発生する場合には、電子銃11の代わりに液体金属イオン銃などを用いる。
露光部20は、レーザ光源100を含む。露光部20は、試料設置部50に載置された感光体試料60上に、所望のビーム径、ビームプロファイルを生成することが可能となっている。レーザ光源100としては、LD(レーザ・ダイオード)などを用いることができる。露光部20は、LD制御部205によりレーザ光源100が制御され、適切な露光時間、露光エネルギーを感光体試料60に照射できるようになっている。感光体試料60上に静電潜像をライン状のパターンとして形成するために、露光部20の光学系にガルバノミラーやポリゴンミラーを用いたスキャニング機構を付けてもよい。
検出部30は、感光体試料60の1次反転荷電粒子や2次電子などを検出する。検出部30には、例えば、シンチレータ、光電子増倍管等を用いる。LED40は、感光体試料60の全体に光を照射することにより、感光体試料60の残留電荷を除去する。試料設置部50は、感光体試料60が載置される。
さらに、画像評価装置1は、ホストコンピュータ200(以下、コンピュータ200ともいう)を備える。コンピュータ200は、画像評価装置1の各部の動作を制御する。コンピュータ200は、検出部30の検出信号に基づいて信号処理を行う。すなわち、コンピュータ200は、生成手段221、形成手段222および評価手段223として機能するための各種プログラムを記憶手段に記憶している。
生成手段221は、レーザ光源100を駆動させる駆動電流波形を生成する。形成手段222は、生成した駆動電流波形によって駆動したレーザ光源100からのレーザ光を感光体試料60に照射し、感光体試料60に静電潜像を形成する。評価手段223は、計測した静電潜像に基づいて、レーザ光源100の発光特性の潜像形成能力を評価する。各手段における処理の詳細については、後述する。
なお、ここでは、評価に関する機能をソフトウェアの実装により実現する例を示したが、この限りではない。例えば、評価に関する機能が有する各機能部を、ハードウェアの実装により実現してもよい。以下に、画像評価装置1の制御および信号処理系統の例を説明する。
コンピュータ200は、荷電粒子制御部210を介して、加速レンズ制御部211、走査レンズ制御部212、および対物レンズ制御部213を制御する。すなわち、コンピュータ200は、これらの制御部を制御することで、加速電極13、走査レンズ16、および対物レンズ17を制御し、感光体試料60の表面に電子ビームを適正に照射させ、感光体試料60の表面を均一に帯電させている。
コンピュータ200は、LD制御部205を介して、露光部20を制御する。コンピュータ200は、レーザ光源100を制御し、また、図示しない光偏向器を制御する。コンピュータ200は、光偏向器の制御により、感光体試料60の表面をレーザ光で2次元走査させ、感光体試料60の表面に所望のパターンの静電潜像が形成される。
コンピュータ200による露光部20の制御については、後述する。さらに、コンピュータ200は、電子検出部201、信号処理部202、測定結果出力部203、および画像処理部204を制御する。コンピュータ200は、予め定められたプログラムを実行することで、それぞれの制御を行う。
電子検出部201は、検出部30の出力信号によって感光体試料60からの放出電子を検出する。信号処理部202は、電子検出部201からの検出信号を処理する。測定結果出力部203は、信号処理部202で処理された信号から測定結果を示す出力信号を出力する。画像処理部204は、測定結果出力部203からの出力信号を画像信号に変換し、変換した画像信号をコンピュータ200に出力する。
本実施形態では、電子検出部201と信号処理部202と測定結果出力部203とが計測手段として機能する場合について説明するが、この限りではない。計測手段は、1つのハードウェアにより実現してもよい。計測手段は、コンピュータ200によって実現してもよい。この場合、コンピュータ200は、計測手段として機能するためのプログラムを実行することにより、検出部30の出力信号に基づいて静電潜像を計測する。
コンピュータ200は、試料台制御部206を介して、試料設置部50の位置や高さを制御する。コンピュータ200は、LED制御部207を介してLED40を駆動させ、測定後の感光体試料60の残留電荷を消去する。
図2は、感光体試料の層構成、帯電および光照射の様子を示す模式図である。図2に示すように、感光体試料60は、導電層231の上に電荷発生層(CGL)232、電荷輸送層(CTL)233が形成されている。感光体試料60は、表面に電荷が帯電している状態で照射光234によって露光されると、電荷発生層232の電荷発生材料(CGM)によって、光が吸収され、正負両極性のチャージキャリアが発生する。チャージキャリアは、電界によって、一方は電荷輸送層233に、他方は導電層231に注入される。電荷輸送層233に注入されたキャリアは、電荷輸送層233中の移動方向235に示すように、電界によって電荷輸送層233の表面にまで移動し、感光体試料60の表面の電荷と結合して消滅する。これにより、感光体試料60の表面には、電荷分布が形成される。すなわち、感光体試料60の表面には、静電潜像が形成される。一般に、静電潜像は、文字や画像であるが、最小単位はドットである。
図3は、露光部による露光の様子を示す模式図である。露光部20は、レーザ光源(LD)100と、コリメートレンズ101と、アパーチャ102と、音響光学偏向素子103と、シリンダレンズ104と、光偏向器105と、走査レンズ106と、同期検知用ミラー107と、同期検知手段108とを含む。露光部20は、LD制御部205により適切な露光時間で、適切な露光エネルギーを感光体試料60に照射できるようになっている。
露光部20は、光学系にガルバノスキャナやポリゴンスキャナなどによる光偏向器105を用いることで、感光体試料60の表面にライン状のパターンを形成することができる。本実施形態では、ライン方向を主走査方向とする。また、露光部20は、音響光学偏向素子103を用いることで、図3に示すように、ポリゴンスキャナなどによる走査方向(主走査方向)に対し直交する副走査方向に光束を走査することを可能としている。
図3に示す例では、感光体試料60が、画像形成装置に用いられるドラム形状のものとして描かれている。しかし、図1に示す画像評価装置1における被検体としての感光体試料60は、実際に使用される感光体の一部又は同じ特性の平板状のものが用いられている。画像評価装置1の仕様によっては、実際の画像形成装置に用いられる態様の感光体を感光体試料とすることも可能である。
図4は、音響光学偏向素子の例を示す図である。図4に示すように、音響光学偏向素子103は、光学媒体の中に超音波を発生させて、進行するレーザ光を回折させる素子である。すなわち、入力信号を周波数変調してこれを音響光学偏向素子103に加えると、加えられる信号の周波数に応じて、レーザ光177の回折度合いが変わり、1次回折光の角度変調を行うことができる。音響光学偏向素子103には、機械的可動部がないため、これを用いることで高速な走査を実現することができる。
音響光学偏向素子103の一実施例について説明する。図4に示すように、音響光学偏向素子103には、超音波トランスデューサ94が接着されている。音響光学偏向素子103は、二酸化テルル(TeO2)やモリブデン酸鉛(PbMoO4)などの単結晶、ガラスから構成される。超音波トランスデューサ94に外部から電気信号を与えて超音波を発生させ、超音波を媒体中に伝播させると、音響光学偏向素子103内に周期的な屈折率の粗密を形成することができる。
図4に示す例では、周波数変換器95は、入力電圧信号に対応した周波数の信号に変換している。周波数変換器95は、例えば、周波数制御発振器(VCO)で構成することができる。RFアンプ96は、周波数変換器95で変換された信号を増幅して超音波トランスデューサ94に出力する。以下、周波数変換器95は、VCO95ともいう。VCO95で生成された信号は、RFアンプ96を経て超音波トランスデューサ94に加えられ、上記のように音響光学偏向素子103によってレーザ光177の角度変調が行われる。
音響光学偏向素子103中を通るレーザ光177は、ブラッグ回折により回折される。レーザ光177は、0次光の他に±1、2…の回折光を生じる。0次回折光と1次回折光との角度θ01は、空気中の光波長をλ、音響波基本周波数をfa、音響波速度をVaとすると、下記(1001)式で表される。
θ01=λ×fa/Va …(1001)
偏向角をΔθだけ変化させるためには、音響波基本周波数faを音響波周波数変調Δfa分だけシフトさせるとよい。この場合、Δθは、下記(1002)式で表される。
Δθ=λ×Δfa/Va …(1002)
音響光学偏向素子103は、VCO95およびRFアンプ96を用いて任意の駆動周波数で駆動されることで、レーザ光177を副走査方向に走査することができる。図5は、VCOに入力する電圧信号とVCOの出力周波数との関係を示す図である。図5において、横軸はVCO95に対する入力電圧[V]、縦軸はVCO95の出力周波数[MHz]をそれぞれ示している。図5に示すように、VCO95に適切な電圧信号を入力することで、VCO95の出力周波数は変化する。このため、音響光学偏向素子103は、所望の方向にレーザ光177を偏向させることができる。
露光部20に用いられている光偏向器105が駆動モータで回転駆動されることにより生じる振動や電磁波が電子ビームの軌道に影響を与えないように、露光部20は、真空チャンバ10aの外に配置することが好ましい。これによって、画像評価装置1は、露光部20を電子ビームの軌道から遠ざけることができ、測定結果に及ぼす外乱の影響を抑制することができる。この場合、レーザ光177は、真空チャンバ10aの外壁に設けられた透明な入射窓より入射させることが好ましい。
図6は、真空チャンバと露光部の結合部分の例を示す断面図である。図6に示すように、真空チャンバ10aは、鉛直軸に対して45度の角度で、外部の露光部20から真空チャンバ10a内部に向かってレーザ光177を入射可能な入射窓68が配置された構成となっている。図6において、露光部20は、図示されない光源、音響光学偏向素子103、光偏向器105、走査レンズ106、光ビームの光路を曲げるミラー172を有している。また、図6には描かれていないが、露光部20は、例えば、コリメートレンズ、アパーチャ、同期検知手段などを有している。
露光部20は、全体をカバーで覆い、以下に述べるように、真空チャンバ10a内部へ入射する外光(有害光)を遮光する構成にすることが好ましい。露光部20の主要部は、光学ハウジング69の上に配置され、上部はカバー171で覆われて遮光されている。光学ハウジング69は、水平方向の平行移動台83の上に取り付けられている。平行移動台83は、柱状の複数本の構造体82を介して除振台81の上に取り付けられている。走査ビームであるレーザ光177は、ミラー172でほぼ45度の角度で斜め下方に折り曲げられている。レーザ光177の進路の周りは、外部遮光筒173、内部遮光筒175、これら内外の遮光筒の接続部に介在するラビリンス部174によって遮光されている。
真空チャンバ10aは、除振台81の上に固定されている。試料設置部50は、真空チャンバ10a内に、水平面において直交2軸方向に移動可能に取り付けられている。試料設置部50には、被検体としての感光体試料60を載置することができ、この感光体試料60に対し真上から荷電粒子ビームを照射する荷電粒子照射部10は、真空チャンバ10a内に取り付けられている。荷電粒子照射部10の内部は、真空チャンバ10aと連通していて真空に保たれている。真空チャンバ10a内には、検出端部が感光体試料60に向けられた検出部30が配置されている。検出部30は、感光体試料60に静電潜像を形成した後、感光体試料60に荷電粒子ビームを照射することによって放出される電子ビームを検出する。
次に、以上のように構成されている本実施形態の画像評価装置1の動作および画像評価方法について説明する。
まず、画像評価装置1は、荷電粒子照射部10によって感光体試料60に電子ビームを照射させることで、感光体試料60の表面を均一に帯電させる。荷電粒子照射部10は、2次電子放出比が1となる加速電圧より高い電圧に、加速電極13の加速電圧を設定する。これにより、入射電子量は、放出電子量より上回るため電子が感光体試料60に蓄積され、チャージアップを起こす。この結果、感光体試料60は、マイナスの一様帯電を生じる。画像評価装置1は、加速電圧と照射時間を適切に行うことにより、所望の帯電電位を形成することができる。なお、画像評価装置1は、帯電電位が形成されたら、静電潜像が観察できるように入射電子量を1/100〜1/1000に下げる。
感光体試料60に所望の帯電電位が形成されたら、次に、画像評価装置1は、露光部20を用いた2次元走査により、感光体試料60を露光する。露光部20は、感光体試料60の表面に所望のビーム径およびプロファイルを形成するように調整されている。必要な露光エネルギーは、感光体試料60の特性によって決まるファクターであるが、通常、2〜10mJ/m2程度である。感度が低い感光体試料60では、必要露光エネルギーは十数mJ/m2となることもある。帯電電位や必要露光エネルギーは、感光体特性やプロセス条件に合わせて設定することが好ましい。
画像評価装置1は、例えば、レーザ光177のスポット径、デューティ、画周波数、書込密度、画像パターン等の条件設定を任意に行うことで、様々な条件での静電潜像を形成し、これを計測することが可能となる。
図7は、静電潜像による画像パターンの例を示す図である。図7において、X軸は主走査、Y軸は副走査の方向をそれぞれ示している。図7を参照しながら、画像評価装置1が形成する静電潜像の画像パターンの例を説明する。
画像パターン301は、1by1による静電潜像の画像パターンを示している。画像パターン302は、2by2による静電潜像の画像パターンを示している。画像パターン303は、1ドット格子による静電潜像の画像パターンを示している。画像パターン304は、副走査1ドットラインによる静電潜像の画像パターンを示している。画像パターン305は、副走査ピッチにむらのある1ドットラインによる静電潜像の画像パターンを示している。画像パターン305の副走査ピッチは、均一ではなく、異なるピッチとなっている。
画像評価装置1は、帯電と露光により、複数の画像パターン301〜305を含む様々なパターンで静電潜像を感光体試料60に形成する。画像評価装置1は、コンピュータ200がLD制御部205を制御することによって露光プロセスを実行する。
次に、画像評価装置1は、静電潜像計測を行う。画像評価装置1は、上記のようにして静電潜像が形成された感光体試料60を電子ビームで走査し、放出される2次電子を検出部30によって検出する。画像評価装置1は、検出した2次電子を電子検出部201で電気信号に変換してコントラスト像を観察する。このとき、検出部30は、荷電粒子照射部10の走査レンズ16からの走査信号と同期を取ることで、各走査位置とその位置における2次電子検出量を関連付ける。このようにすると、画像評価装置1は、感光体試料60の帯電部が2次電子の検出量が多く、感光体試料60の露光部が2次電子の検出量が少ない明暗のコントラスト像を得ることができる。すなわち、画像評価装置1は、感光体試料60の暗の部分を露光による潜像部とみなすことができる。
感光体試料60の表面に電荷分布があると、感光体試料60の上方に位置する空間に、表面電荷分布に応じた電界分布が形成される。入射電子によって発生した2次電子は、この電界によって押し戻され、検出部30に到達する量が減少する。従って、電荷リーク箇所は、露光部が黒、非露光部が白となり、表面電荷分布に応じたコントラスト像を測定することができる。
図8Aは、荷電粒子(2次電子)を捕獲する検出部と感光体試料との間の空間における電位分布を、等高線で示したものである。感光体試料60の表面は、光減衰により電位が減衰した部分を除いては負極性に一様に帯電した状態であり、検出部30には正極性の電位が与えられている。このため、実線で示す電位等高線群においては、感光体試料60の表面から検出部30に近づくに従い電位が高くなる。従って、負極性に均一帯電している感光体試料60の部分である点Q1および点Q2で発生した2次電子el1、el2は、検出部30の正電位に引かれ、矢印G1や矢印G2で示すように変位し、検出部30によって捕獲される。
一方、図8Aにおいて、点Q3は、光照射されて負電位が減衰した部分であり、点Q3近傍では電位等高線の配列は、破線で示すように、点Q3を中心とした半円形の波紋状に広がる。この波紋状の電位分布では、点Q3に近いほど電位が高くなっている。換言すると、点Q3の近傍で発生した2次電子el3には、矢印G3で示すように、感光体試料60側に拘束する電気力が作用する。このため、2次電子el3は、破線の電位等高線で示すポテンシャルの穴に捕獲され、検出部30に向かって移動することができない。
図8Bは、ポテンシャルの穴の例を示す模式図である。図8Bにおいて、横軸は試料面、縦軸は電荷密度をそれぞれ示している。図8に示すように、検出部30により検出される2次電子の強度(2次電子数)は、強度の大きい部分が静電潜像の地の部分に対応し、強度の小さい部分が静電潜像の画像部に対応する。静電潜像の地の部分は、均一に負帯電している部分であり、例えば、図8Aの点Q1およびQ2に代表される部分である。静電潜像の画像部は、例えば、図8Aの点Q3に代表される部分である。
従って、信号処理部202は、2次電子の検出部30で得られる電気信号を、適当なサンプリング時間でサンプリングする。これにより、信号処理部202は、前述の如く、サンプリング時間をパラメータとして、表面電位分布(電位コントラスト像)V(X,Y)を「サンプリングに対応した微小領域」毎に特定できる。そして、信号処理部202は、上記表面電位分布V(X,Y)を2次元的な画像データとして構成する。信号処理部202は、これを測定結果出力部203、画像処理部204を経て、ディスプレイやプリンタなどのアウトプット装置で出力すれば、静電潜像が可視的な画像として得られる。
画像評価装置1は、例えば、検出部30によって捕獲される2次電子の強度を「明るさの強弱で表現」すれば、静電潜像の画像部分は暗く、地の部分は明るくコントラストがつき、表面電荷分布に応じた明暗像として表現(出力)することができる。もちろん、表面電位分布を知ることができれば、表面電荷分布も知ることができる。
画像評価装置1は、検出部30からの検出信号によって感光体試料60の電荷分布の状態を測定する場合に、露光条件を変えたときの静電潜像の状態を計測する。これにより、画像評価装置1は、感光体試料60の静電特性を把握することができる。
最後に、画像評価装置1は、LED40(図1参照)を点灯して感光体試料60の表面に光を照射し、感光体試料60の除電を行う。この結果、感光体試料60上に生成された帯電電荷は光を照射することで消失し、画像評価装置1は、次の計測に備える。
図9は、画像評価装置が実行する静電潜像の形成に係る処理の例を示すフローチャートである。
画像評価装置1は、ステップS1として、感光体試料60を帯電させる。詳細には、画像評価装置1は、荷電粒子照射部10によって電子ビームを感光体試料60に照射することで、感光体試料60に帯電電荷を生成する。画像評価装置1は、感光体試料60を帯電させると、ステップS2に進む。
画像評価装置1は、ステップS2として、露光部20による露光を行う。詳細には、画像評価装置1は、露光部20を制御して、所望の2次元露光パターンが形成されるように露光し、感光体試料60の表面に静電潜像の潜像パターンを形成し、ステップS3に進む。
画像評価装置1は、ステップS3として、感光体試料60に形成された静電潜像を計測する。詳細には、画像評価装置1は、潜像パターンが形成された感光体試料60に対して、荷電粒子照射部10によって電子ビームを照射する。画像評価装置1は、感光体試料60から放出される2次電子を検出部30によって検出することで、感光体試料60に形成された静電潜像を計測し、ステップS4に進む。
画像評価装置1は、ステップS4として、感光体試料60を除電する。詳細には、画像評価装置1は、LED制御部207を介してLED40の点灯を開始し、感光体試料60の除電が完了する予め定められた時間が経過すると、LED40の点灯を終了する。
次に、画像評価装置1が用いられる電子写真方式の画像形成装置における画像課題項目について説明する。画像課題項目としては、画像を構成するドットの再現性の指標である粒状度の改善が挙げられる。特に、ハイライト部で用いられる小径ドットでは、ドットの再現性が劣化しやすく、高品質な画像形成装置を提供するためには、そのような小径ドット形成においても、優れたドット再現性を有することが求められる。
画像形成装置では、帯電、露光、現像、転写、定着の各工程におけるプロセスクオリティが、最終的に出力される画像の品質に大きく影響を与える。中でも、露光プロセスにより感光体上に生じる静電潜像の状態は、トナー粒子の挙動に直接影響を及ぼす重要なファクターである。このため、露光により感光体上に形成される静電潜像の再現性を評価することは、高品質の画像を得ることができる画像形成装置を実現するうえで極めて重要である。
図10は、電流信号強度と光応答波形強度との関係を示す図である。図10に示すように、駆動電流波形300は、レーザ光源100をパルス発光させるための矩形波である。矩形波とは、矩形状であり時間が短いパルスを意味している。駆動電流波形300は、時間と電流信号の強度で定められる。本実施形態では、パルス幅Wの時間は、数ピコ秒〜数百ナノ秒である。
光応答波形310は、駆動電流波形300で駆動されたレーザ光源100が実際に発光した光を、例えば、フォトダイオードで測定した波形である。光応答波形310は、矩形とはならず、図10に示すように、立ち上がり部分が鈍った形状となる。なお、光応答波形310の測定に用いるフォトダイオードは、高速応答のものを用いることが好ましく、数ピコ秒の時間分解能を有するものが望ましい。
図11は、駆動電流波形のパルス幅と静電潜像との関係を示す図である。図11は、レーザ光源100への駆動電流波形300のパルス幅を変化させたときに、感光体上に形成される静電潜像の大きさを示している。図11に示すように、駆動電流波形300は、パルス幅W1、W2、W3の順にパルス幅が広くなるように変化している。レーザ光源100からのレーザ光は、駆動電流波形300のパルス幅が狭いほど、感光体上で発光する時間が短くなるので、それに応じて形成される静電潜像70は小さくなる。図11に示す例では、パルス幅W1の駆動電流波形300に対応した静電潜像70は、パルス幅W2の駆動電流波形300に対応した静電潜像70よりも小さくなる。
電子写真方式の画像形成装置では、図11に示したように、レーザ光源100への駆動電流波形300のパルス幅を変化させ、最終的な画像のドットサイズを制御するPWM変調方式(パルス幅変調方式)での露光が一般的である。但し、PWM変調方式では、駆動電流波形300の電流値は時間的に一定であり、画像形成装置の様々な画像課題項目に対して必ずしも好適な露光であるとはいえない。これに対し、本実施形態の画像評価装置1が、駆動電流波形300の電流値を時間的に段階変化させる露光方式を用いて評価を行う場合について、以下に説明する。
図12Aは、第1の駆動電流波形と静電潜像との関係を示す図である。図12Bは、第2の駆動電流波形と静電潜像との関係を示す図である。図12Cは、第3の駆動電流波形と静電潜像との関係を示す図である。図12A〜12Cは、時間軸(横軸)方向がレーザ光による露光走査方向となっている。
図12A〜12Cに示すように、駆動電流波形P1、P2、P3は、基本パターン電流Iopと、複数のオーバーシュート電流Iovとを含む。基本パターン電流Iopは、画像データに基づいた時間幅での露光を行うための供給電流である。レーザ光は、感光体試料60上を走査しながら静電潜像70を形成するが、感光体試料60上である距離を走査するための時間は、ポリゴンミラーの回転速度や走査レンズ系の構成等の光走査装置の仕様により求まる。本実施形態における基本パターン電流Iopのパルス幅は、このような画像データと光走査装置の仕様に基づいた時間幅である。図12A〜図12Cに示す例では、基本パターン電流Iopのパルス幅は、任意の画素密度における1画素(画像データ)の形成に必要な時間幅となっている。
複数のオーバーシュート電流Iovは、基本パターン電流Iopに対して一定電流を加算する役割を持つ電流である。オーバーシュート電流Iovは、レーザ光源100が出射するレーザ光の発光特性を変化させる電流である。オーバーシュート電流Iovの立ち上がりタイミングおよび立ち下りタイミングは、基本パターン電流Iopの時間幅を所定数で分割したタイミング毎に可能である。図12Aから12Cに示す例では、基本パターン電流Iopのパルス幅が1画素に相当し、分割数が8である場合、オーバーシュート電流Iovの時間幅は、1/8画素等の1画素単位での時間幅の設定が可能となっている。
本実施形態では、基本パターン電流Iopの時間幅を8分割した場合について説明するが、これに限定されない。基本パターン電流Iopの時間幅に対する分割数は、8分割よりも小さな分割数としたり、8分割よりも大きな分割数としてもよい。また、基本パターン電流Iopの信号強度とオーバーシュート電流Iovの信号強度は、独立に設定してもよい。
画像評価装置1は、このような基本パターン電流Iopと相異なる複数のオーバーシュート電流Iovを加算することで、信号強度が時間的に段階変化する電流波形を生成する。そして、画像評価装置1は、生成した駆動電流波形を用いてレーザ光源100を駆動することで、レーザ光源100の発光強度を時間的に段階変化する露光走査を行う。
図12Aに示す例では、画像評価装置1は、基本パターン電流Iopの先端および後端にパルス幅の異なる2つのオーバーシュート電流Iov1、Iov2を加算して、駆動電流波形P1を形成している。基本パターン電流Iopの先端および後端とは、基本パターン電流Iopの立ち上がり側および立ち下がり側を意味している。駆動電流波形P1は、基本パターン電流Iopの先端側では段階的に信号強度が減少し、後端側では段階的に信号強度が増加する電流波形を示している。
オーバーシュート電流Iov1は、基本パターン電流Iopの立ち上がりと同期して所定の強度で電流信号が立ち上がり、2/8画素を経過したタイミングで電流信号が立ち下がる。その後、オーバーシュート電流Iov1は、基本パターン電流Iopにおける4/8画像が経過したタイミングで電流信号が前記所定の強度で立ち上がる。オーバーシュート電流Iov1は、2/8画素を経過したタイミング、すなわち、基本パターン電流Iopの立ち下がりと同期して電流信号が立ち下がる。
オーバーシュート電流Iov2は、基本パターン電流Iopの立ち上がりと同期して所定の強度で電流信号が立ち上がり、1/8画素を経過したタイミングで電流信号が立ち下がる。その後、オーバーシュート電流Iov2は、基本パターン電流Iopにおける6/8画像が経過したタイミングで電流信号が前記所定の強度で立ち上がる。オーバーシュート電流Iov2は、1/8画素を経過したタイミング、すなわち、基本パターン電流Iopの立ち下がりと同期して電流信号が立ち下がる。
基本パターン電流Iopと2つのオーバーシュート電流Iov1、Iov2とが加算されて生成された駆動電流波形P1は、基本パターン電流Iopの先端寄りで信号強度が3段階に減少し、後端寄りで信号強度が3段階に増加している。なお、オーバーシュート電流Iov1、Iov2は、同じ電流信号強度でもよいし、異なる電流信号強度でもよい。
画像評価装置1は、このような駆動電流波形P1を用いてレーザ光源100を駆動することで、1画素の露光走査の中で、レーザ光源100の発光強度が露光開始側で3段階に減少し、露光終了側で3段階に増加する露光走査を実現することができる。
画像評価装置1は、駆動電流波形P1を用いてレーザ光源100を駆動させると、露光中央部に対して露光開始側と露光終了側でレーザ光源100の発光強度が強くなる。このため、静電潜像70は、露光開始側と露光終了側が中央部よりも大きく感光体試料60に形成される。
図12Bに示す例では、画像評価装置1は、基本パターン電流Iopの後端にパルス幅の異なる2つのオーバーシュート電流Iov1、Iov2を加算して、駆動電流波形P2を形成している。駆動電流波形P2は、基本パターン電流Iopの後端側では段階的に信号強度が増加する電流波形を示している。
オーバーシュート電流Iov1は、基本パターン電流Iopの立ち上がりから6/8画素を経過したタイミングで電流信号が立ち上がり、2/8画素を経過したタイミング、すなわち、基本パターン電流Iopの立ち下がりと同期して電流信号が立ち下がる。
オーバーシュート電流Iov2は、基本パターン電流Iopの立ち上がりから7/8画素を経過したタイミングで電流信号が立ち上がり、1/8画素を経過したタイミング、すなわち、基本パターン電流Iopの立ち下がりと同期して電流信号が立ち下がる。
基本パターン電流Iopと2つのオーバーシュート電流Iov1、Iov2とが加算されて生成された駆動電流波形P2は、基本パターン電流Iopの先端寄りで信号強度が一定となり、後端寄りで信号強度が3段階に増加している。
画像評価装置1は、このような駆動電流波形P2を用いてレーザ光源100を駆動することで、1画素の露光走査の中で、レーザ光源100の発光強度が露光終了側で3段階に増加する露光走査を実現することができる。
画像評価装置1は、駆動電流波形P2を用いてレーザ光源100を駆動させると、露光開始側から中央部までのレーザ光源100の発光強度に対して、露光終了側でレーザ光源100の発光強度が強くなる。このため、静電潜像70は、中央部から露光終了までの部分が露光開始から中央部までよりも大きく感光体試料60に形成される。
図12Cに示す例では、画像評価装置1は、基本パターン電流Iopの中央部にパルス幅の異なる2つのオーバーシュート電流Iov1、Iov2を加算して、駆動電流波形P3を形成している。駆動電流波形P3は、基本パターン電流Iopの中央部に向かって段階的に信号強度が増加し、中央部から後端に向かって段階的に信号強度が減少する電流波形を示している。
オーバーシュート電流Iov1は、基本パターン電流Iopの立ち上がりから2/8画素を経過したタイミングで電流信号が立ち上がり、4/8画素を経過したタイミングで電流信号が立ち下がる。
オーバーシュート電流Iov2は、基本パターン電流Iopの立ち上がりから3/8画素を経過したタイミングで電流信号が立ち上がり、2/8画素を経過したタイミングで電流信号が立ち下がる。
基本パターン電流Iopと2つのオーバーシュート電流Iov1、Iov2とが加算されて生成された駆動電流波形P3は、基本パターン電流Iopの中央部に向かって信号強度が3段階に増加し、中央部から後端に向かって信号強度が3段階に減少している。
画像評価装置1は、このような駆動電流波形P3を用いてレーザ光源100を駆動することで、1画素の露光走査の中で、レーザ光源100の発光強度が露光中心に向かって3段階に増加し、その後3段階に減少する露光走査を実現することができる。
画像評価装置1は、駆動電流波形P3を用いてレーザ光源100を駆動させると、露光中央部に対して露光開始側および露光終了側でレーザ光源100の発光強度が弱くなる。このため、静電潜像70は、露光中央の部分が露光開始側および露光終了側よりも大きく感光体試料60に形成される。
図13Aは、駆動電流波形を生成するレーザ光源駆動回路の例を示す模式図である。図13Bは、レーザ光源駆動回路による駆動電流波形の生成例を示す図である。
図13Aに示すように、レーザ光源駆動回路110は、信号強度が時間的に変化する駆動電流波形を生成し、生成した駆動電流波形の電流をレーザ光源100に出力する。レーザ光源駆動回路110は、バイアス電流源111と、基本パターン電流源112と、2つのオーバーシュート電流源113および114とを含む。レーザ光源駆動回路110は、各電流源からの電流を選択的に加算した和電流を、駆動電流波形の電流としてレーザ光源100に出力する。
バイアス電流源111は、レーザ発振の応答性を向上させる役割でレーザ発振閾値電流程度の固定電流を生成する。なお、本実施形態では、オーバーシュート電流源113および114が2つある場合について説明するが、これに限定されず、オーバーシュート電流源の数は2つを超えてもよい。
レーザ光源駆動回路110は、これらの電流源と各電流源に対応するスイッチを有している。レーザ光源駆動回路110がレーザ光源100に出力する電流量は、FPGA(集積回路)120からのDAC信号よる各電流源の制御により決定される。また、生成される駆動電流波形の波形形状は、FPGA120からの変調信号201Sでスイッチを操作することで決定される。変調信号201Sの立ち上りのタイミングは、ここでは図示していないが、遅延回路を用いることで制御する。遅延回路としては、例えば、抵抗とコンデンサ等からなるローパスフィルターで遅延させ、その後、波形整形した信号を用いるなどの手段がある。この場合、フィルタ定数の変更により遅延量を変更することができる。
画像評価装置1は、レーザ光源駆動回路110を用い、その制御パラメータをコンピュータ200によって与えることで、図12A〜図12Cに示したような複数の駆動電流波形の生成を実現する。電流信号の信号強度、立ち上がりおよび立ち下りのタイミング等の制御パラメータは、例えば、コンピュータ200の画面上でこれらの数値を入力し実行させる構成が好ましい。本実施形態では、レーザ光源駆動回路110は、LD制御部205に含まれる場合について説明するが、これに限定されず、例えば、レーザ光源100に組み込まれてもよい。
図13Bに示す例では、バイアス電流源111は、FPGA120によって強度Ibiで立ち上がっている。基本パターン電流源112は、駆動電流波形の立ち上がりタイミングに、FPGA120によって所定のパルス幅に対応した第1駆動時間の間、基本パターン電流Iopを出力する。オーバーシュート電流源113は、駆動電流波形の立ち上がりタイミングに、FPGA120によって第1駆動時間よりも短い第2駆動時間の間、オーバーシュート電流Iov1を出力する。オーバーシュート電流源114は、駆動電流波形の立ち上がりタイミングに、FPGA120によって第1駆動時間よりも短くかつオーバーシュート電流源113の駆動時間よりも長い駆動時間の間、オーバーシュート電流Iov2を出力する。レーザ光源駆動回路110は、これらの電流を加算することで、基本パターン電流Iopの先端寄りが段階的に信号強度を減少する駆動電流波形でレーザ光源100を駆動させる。
感光体試料60に形成される静電潜像70の大きさは、レーザ光源100からのレーザ光(露光ビーム)の発光強度に応じて変化するが、発光強度を所定比率変化させたときに、静電潜像70の大きさの変化率が小さいほど静電潜像70の形成が安定しているといえる。これは、感光体試料60の性質に依存しており、この変化率から潜像形成の安定性を推定することが可能となる。
図14は、レーザ光の信号強度を3段階に変化させた場合の静電潜像を示す図である。図14において、レーザ光源100の発光強度は、発光強度(1)、(2)、(3)の順に大きくなっている(発光強度(1)<発光強度(2)<発光強度(3))。静電潜像71は発光強度(1)、静電潜像72は発光強度(2)、静電潜像73は発光強度(3)でそれぞれ形成されている。画像評価装置1は、静電潜像71、72、73の面積S1、S2、S3および円相当径d1、d2、d3をそれぞれ求める。以下において、静電潜像71、72、73を区別しない場合、適宜、静電潜像70という。
図14に示すように、静電潜像71、72、73は、理想的な円形とはならず、多少歪んだ形状となることから、これを円形で近似したときの直径を円相当径dと定義する。静電潜像70の面積を面積Sとすると、半径rは、面積Sをπで除算した値の平方根である(r=√(S/π))。このため、直径は、2rとなり、この直径を円相当径とする。
ここで、静電潜像72に対応した円相当径d2を用いて、その空間周波数Fを求めると、空間周波数Fは、1/(2×d2)となる。次に、静電潜像72に関して、先に示した発光強度の変化に対する静電潜像形成の安定性をS1/S3等により定義する。
図15は、静電潜像の面積、空間周波数および静電潜像の形状の安定性を求める例を示す図である。図15に示すように、画像評価装置1は、駆動電流波形を変化させることで、レーザ光源100の発光強度を6段階に変化させて静電潜像70を形成および測定し、静電潜像面積、空間周波数および静電潜像形成の安定性を求める。以下、静電潜像面積は、潜像面積ともいう。
図15に示す例では、画像評価装置1は、6段階に変化させた静電潜像70の潜像面積S1、S2、S3、S4、S5、S6と、空間周波数F1、F2、F3、F4、F5、F6とを求めている。この場合、画像評価装置1は、対象の静電潜像70の前後の静電潜像70に着目し、安定性を求める。例えば、画像評価装置1は、潜像面積の変化率S1/S3、S2/S4、S3/S5、S4/S6を算出し、算出した値が判定条件を満たしている場合に安定していると判定し、算出した値が判定条件を満たしていない場合に安定していないと判定する。
図16は、潜像形成の安定性と空間周波数との関係を示す図である。図16は、レーザ光源100の発光強度を10%毎に変化させて潜像形成の安定性を画像評価装置1が測定した結果の例を示している。詳細には、図16は、画像評価装置1がレーザ光源100の発光強度を段階的に変化させて複数点で潜像形成の安定性の測定を行い、適切な近似式で近似した曲線を示している。図16において、横軸は空間周波数F[cycle/mm]、縦軸は潜像形成の安定性をそれぞれ示している。
図16に示すように、潜像形成の安定性は、空間周波数に依存しており、空間周波数が高くなるほど、すなわち、静電潜像70が小径であるほど潜像形成の安定性が悪くなることがわかる。この結果、高解像度の画像形成を行うためには、このような潜像形成の安定性の空間周波数特性が高空間周波数領域まで高い値を示している必要がある。
本実施形態の画像評価装置1は、潜像形成の安定性が所定値となるときの空間周波数に対応する潜像円相当径を潜像解像力RPと定義して、露光の潜像形成能力を評価する。本実施形態では、潜像形成の安定性が0.8となるときの潜像円相当径を潜像解像力RPとして説明する。なお、潜像解像力RPは、潜像形成の安定性の空間周波数特性を適切な近似式で近似し、その近似式を用いて求めてもよい。
このような潜像解像力RPの評価を、駆動電流波形の信号強度が一定である場合と、時間的に段階変化する場合とを比較した測定例を参照して、以下に説明する。
図17は、潜像解像力の評価に用いる駆動電流波形の例を説明するための図である。図17において、横軸は時間、縦軸は電流信号強度をそれぞれ示している。
図17に示すように、本実施形態の駆動電流波形は、Type1、Type2、Type3の駆動電流波形を含む。以下において、Type1、Type2、Type3の駆動電流波形は、Type1、Type2、Type3ともいう。
Type1は、駆動電流波形の信号強度が時間的に一定の駆動電流波形である。Type1は、信号強度が基本パターン電流Iopで形成されている。
Type2は、基本パターン電流Iopの後端側で段階的に信号強度が増加する駆動電流波形である。詳細には、Type2は、基本パターン電流Iopの後端側にパルス幅の異なる2つのオーバーシュート電流Iov1およびIov2が加算された駆動電流波形である。オーバーシュート電流Iov1は、基本パターン電流Iopの立ち上がりから4/8画素を経過した時間タイミングで信号が立ち上がり、4/8画素を経過した時間タイミングで信号が立ち下がる。オーバーシュート電流Iov2は、基本パターン電流Iopの立ち上がりから6/8画素を経過した時間タイミングで信号が立ち上がり、2/8画素を経過した時間タイミングで信号が立ち下がる。本実施形態では、基本パターン電流Iopとオーバーシュート電流Iov1およびIov2との信号強度比率は、例えば、1:1:14である。
Type3は、基本パターン電流Iopの信号強度が0であり、オーバーシュート電流Iov1のみで生成される駆動電流波形である。Type3は、駆動電流波形の生成に基本パターン電流Iopが用いられていないが、基本パターン電流Iopの時間幅は、画像エータに基づき算出される。このため、Type1および2と同様に、オーバーシュート電流Iov1の立ち上がりタイミングおよび立ち下がりタイミングは、基本パターン電流Iopの時間幅を所定数で分割したタイミング毎に可能である。オーバーシュート電流Iov1は、基本パターン電流Iopの立ち上がりタイミングから7/8画素を経過した時間タイミングで信号が立ち上がり、1/8画素を経過した時間タイミングで信号が立ち下がる。
画像評価装置1は、前述したように発光強度を段階的に所定比率変化させたときの静電潜像70を計測し、計測結果に基づいて潜像解像力RPを評価する。しかし、レーザ光源100に入力される電流値とレーザ光源100の射出光強度との関係は、発振遅延等の光源発振特性の影響により必ずしも比例関係が成立しない。また、発振遅延等の光源発振特性は、駆動電流波形の波形形状により変わる。
本実施形態では、画像評価装置1は、下記(1003)式で定義される積分光量算出式を用いて積分光量Eを算出することで、発光強度の所定比率変化を行う。
E=α×SIop×Wop+β×SIov1×Wov1+γ×SIov2×Wov2+δ …(1003)
SIop、SIov1およびSIov2は、基本パターン電流Iop、オーバーシュート電流Iov1およびIov2のそれぞれの信号強度を示す。Wop、Wov1およびWov2は、基本パターン電流Iop、オーバーシュート電流Iov1およびIov2のそれぞれのパルス幅を示す。δは、駆動電流波形の波形形状毎に求められる光量補正定数を表す。
α、βおよびγは、基本パターン電流Iop、オーバーシュート電流Iov1およびIov2の光量係数を示す。光量係数とは、各電流の信号強度と発光光量の相関関係をグラフ化したときの傾きである。この光量係数は、1つの電流源から生成される電流を用いて光源を駆動し、駆動電流の信号強度を変えながら光源の積分光量Eを例えばフォトダイオードで測定し、駆動電流の信号強度と積分光量Eの関係を直線近似することで求められる。
図18Aは、駆動電流波形と光応答波形強度との第1の関係例を示す図である。図18Bは、駆動電流波形と光応答波形強度との第2の関係例を示す図である。
図18Aおよび18Bに示す2つの駆動電流波形は、基本パターン電流Iop、オーバーシュート電流Iov1およびIov2のそれぞれの信号強度と、パルス幅とは等しいが、波形形状が異なっている。基本パターン電流Iop、オーバーシュート電流Iov1およびIov2のパルス幅は、パルス幅Wop、Wov1およびWov2となっている。パルス幅Wopは、第1時間幅である。パルス幅Wov1およびWov2は、第2時間幅である。
図18Aに示す駆動電流波形は、前述のType2の駆動電流波形であり、基本パターン電流Iopの後端側にオーバーシュート電流Iov1およびIov2が加算されている。これに対し、図18Bに示す駆動電流波形は、基本パターン電流Iopの先端側にオーバーシュート電流Iov1およびIov2が加算されている。以下、図18Bに示す駆動電流波形は、Type4ともいう。
図18Aおよび18Bに示すレーザ光源100の光応答波形を比較すると、先端側にオーバーシュート電流Iov1およびIov2が加算されているType4の方がType2よりも発光強度のピークが低くなり、積分光量Eは小さくなる。これは、レーザ光源100の発振遅延量の違いから生じるもので、発振遅延量が大きいType4では、駆動電流に応じた発光が行われる前に駆動電流の立ち下がりを迎えるために生じる。
発振遅延量の違いは、オーバーシュート電流Iov2による発光に至るまでにレーザ光源100に与えられている電流信号の違いにより生じる。Type2の駆動電流波形では、オーバーシュート電流Iov2による発光に至るまでに基本パターン電流Iopとオーバーシュート電流Iov1とにより電流信号が与えられていることから、発振遅延量がType4の駆動電流波形と比べて小さくなる。
光量補正定数δは、このような波形形状による光源発振特性の違いから生じる積分光量の差分を補正する係数である。光量補正定数δは、上述の光量算出式において、α、β、γがわかっていれば、ある発光条件での積分光量をフォトダイオードで検出して算出することで求めることができる。
波形形状のタイプは、Type1、Type2、Type3およびType4の4種類に分けることができる。Type1は、図12Aに示した両サイドパルスタイプである。Type2は、図12Bに示した片側パルスタイプ(後端パルスタイプ)である。Type3は、図12Cに示したセンターパルスタイプである。Type4は、図18Bに示した片側パルスタイプ(先端パルスタイプ)である。これらの波形形状において、それぞれの光量補正定数δを求めることで、波形形状毎の光量算出式を導出することができる。このため、画像評価装置1は、予め波形形状毎の光量算出式を求めておけば、所望の光量に応じた、各電流の信号強度とパルス幅とを求めることができる。
図19Aは、Type毎の潜像形成の安定性と空間周波数との関係を示す図である。図19Bは、Type毎の潜像解像力の評価結果を示す図である。図19Aおよび19Bを参照しながら、画像評価装置1が潜像解像力RPの評価を実施した結果を以下に説明する。
本実施形態では、画像評価装置1は、感光体試料60上でのビームスポット径を70×90[μm]に設定し、600dpi 1ドットの潜像を形成し、レーザ光源100の発光強度を10%毎に段階変化させながら評価を行った。また、感光体試料60の帯電電位は、−500[V]に設定した。
図19Aおよび19Bに示すように、潜像形成の安定性の周波数特性は、Type1<Type2<Type3の順序で、高い空間周波数領域での特性に差異がある。潜像形成の安定性が0.8となるときの空間周波数に対する潜像円相当径を潜像解像力RPとして、画像評価装置1は、潜像解像力RPを比較する。画像評価装置1は、RP(Type1)=80.1[μm]、RP(Type2)=71.3[μm]、RP(Type3)=46.7[μm]と算出する。そして、画像評価装置1は、Type3の駆動電流波形でのレーザ走査による潜像形成が、小径潜像を形成する上で好適な露光条件であると判定する。
Type1と比較して、Type2およびType3で潜像解像力RPが向上するのは、時間的に短い時間での露光であり、感光体試料60上でのレーザ光の走査を考えると、空間的に狭い領域に強い光量で露光するためである。このような露光により、空間的に広い領域に弱い光量で露光する場合と比較して、潜像電界強度が急峻になり、小さい静電潜像70であっても安定的に形成することが可能となる。
本実施形態における画像評価装置1は、前述した画像評価方法を用いて、信号強度が時間的に段階変化するような駆動電流波形を生成し、レーザ光源100を駆動して潜像解像力RPを評価することで、駆動電流波形毎の潜像解像力RPを評価することができる。
図20は、画像評価装置が実行する画像評価処理手順の例を示すフローチャートである。図20示す処理手順は、コンピュータ200が予め定められたプログラムを実行することで、実現される。
図20に示すように、画像評価装置1は、ステップS11として、感光体試料60を帯電させ、ステップS12に進む。画像評価装置1は、ステップS12として、駆動電流波形を生成する。詳細には、画像評価装置1は、信号強度が時間的に段階変化するType1〜4の駆動電流波形を生成し、その後ステップS13に進む。
画像評価装置1は、ステップS13として、感光体試料60上に静電潜像70を形成する。詳細には、画像評価装置1は、生成した駆動電流波形によって駆動したレーザ光源100からのレーザ光を感光体試料60に照射して感光体試料60に静電潜像70を形成する。本実施形態では、画像評価装置1は、Type1〜4の駆動電流波形毎にレーザ光源100を駆動させ、Type1〜4に対応した静電潜像70を感光体試料60上に形成すると、ステップS14に進む。
画像評価装置1は、ステップS14として、静電潜像70を計測する。詳細には、画像評価装置1は、潜像パターンが形成された感光体試料60に対して、荷電粒子照射部10によって電子ビームを照射する。画像評価装置1は、感光体試料60から放出される2次電子を検出部30によって検出することで、感光体試料60に形成されたType1〜4毎の静電潜像70を計測し、ステップS15に進む。
画像評価装置1は、ステップS15として、潜像形成能力を評価する。詳細には、画像評価装置1は、前述したようにType1〜4毎の潜像解像力RPを算出し、算出した潜像解像力RPと上記の露光条件とに基づいて潜像形成能力を評価する。そして、画像評価装置1は、ステップS16として、感光体試料60を除電し、図20に示す処理手順を終了する。
このように、画像評価装置1は、基本パターン電流Iopに対して、基本パターン電流Iopの時間幅を所定数で分割したタイミング毎に一定電流を加算できる少なくとも2つのオーバーシュート電流Iov1およびIov2を加算して光源駆動電流を生成する。このため、画像評価装置1は、露光走査の開始側や終了側等の任意の時間タイミングで光源の発光強度が段階的に変化する露光走査を実現でき、かつ、その際の光源発光特性の潜像形成能力を評価することができる。従って、画像評価装置1の評価結果を駆動電流波形に反映させることで、高解像度かつドットばらつきの小さい高品質な画像形成を可能にすることができる。
画像評価装置1は、任意の時間タイミングでレーザ光源100の発光強度が段階的に変化する露光走査において、潜像解像力RPを評価することで、小径の静電潜像70の安定的な形成に対するレーザ光源100の発光特性の優劣を評価することができる。さらに、画像評価装置1は、任意の時間タイミングでレーザ光源100の発光強度が段階的に変化する露光走査において、潜像解像力RPを定量的に評価することができる。
画像評価装置1は、時間的に短い時間での露光を行うことで、空間的に狭い領域に強い光量で露光することができ、空間的に広い領域に弱い光量で露光するときと比較して潜像電界強度が急峻になり小さい潜像であっても安定的に形成することが可能となる。また、画像評価装置1は、露光終了側にオーバーシュート電流Iov1およびIov2を段階的に設けることで、潜像形成に支配的な信号に至るまでに電流信号が光源に与えられている。このため、画像評価装置1は、レーザ光源100の発振遅延が小さく、またレーザ光源100の温度条件等の発光条件も安定的であり、発光特性のばらつきが小さい。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、画像評価装置1は、信号強度が時間的に変化するような駆動電流波形での露光に関して潜像解像力RPの評価を行ったが、同様に、潜像形成ばらつきを評価することができる。本実施形態の画像評価装置1は、レーザ光源100による露光ビームの二次元走査が可能であり、2次元的に潜像を形成したときの潜像形成ばらつきを求める。
図21Aは、感光体試料に2次元的な静電潜像を形成した場合の例を示す図である。図21Bは、駆動電流波形毎の潜像形成ばらつきを説明するための図である。図21Aに示すように、画像評価装置1は、レーザ光源100によって感光体試料60上に2次元的にドット状の複数の静電潜像70を形成している。そして、画像評価装置1は、各静電潜像70の円相当径を計測し、円相当径ばらつきの優劣を評価する。
潜像形成ばらつきは、例えば、各静電潜像70の円相当径の標準偏差を平均値で除算することで求めることができる。なお、本実施形態では、円相当径を用いるが、静電潜像面積等の潜像の大きさを表す他の指標を用いてもよい。
画像評価装置1は、このような潜像形成ばらつきの評価を、前述したType1〜Type4の駆動電流波形による発信信号でレーザ光源100を駆動させて行う。なお、潜像形成ばらつきは、静電潜像70の大きさに依存する。このため、画像評価装置1は、静電潜像70の大きさが一定に近づくように、各波形形状で発光される積分光量を設定することが好ましい。
画像評価装置1は、感光体試料60上でのビームスポット径を70×90[μm]に設定し、600dpi 1by3の二次元パターン潜像を形成し、Type1〜Type4毎に評価を行った。また、感光体試料60の帯電電位は、−500[V]に設定した。図21Bに示すように、平均潜像円相当径は、Type1が60.9[μm]、Type2が66.4[μm]、Type3が65.7[μm]、Type4が65.1[μm]である。図21Bに示すように、円相当径の標準偏差は、Type1が3.66[μm]、Type2が3.13[μm]、Type3が3.32[μm]、Type4が3.85[μm]である。
図21Bに示すように、円相当径ばらつき(潜像径ばらつき)は、Type1が6.01[%]、Type2が4.71[%]、Type3が5.05[%]、Type4が5.91[%]である。この結果により、Type2の駆動電流波形でのレーザ走査による潜像形成が、ばらつきの小さい潜像形成をする上で好適な露光条件であることが分かる。
Type1と比較して、Type2〜Type4は潜像径ばらつきが向上している。このため、前述の潜像解像力RPと同様に、感光体試料60上でのレーザ光の走行を考えると、空間的に広い領域に弱い光量で露光するときと比較して、空間的に狭い領域に強い光量で露光を行う方が潜像形成能力を向上できるといえる。
さらに、潜像形成ばらつきの評価として、Type2とType4との駆動電流波形でレーザ光源100を駆動したときの露光について考える。Type2とType4とは、前述の通り基本パターン電流Iop、オーバーシュート電流Iov1およびIov2のそれぞれの信号強度、パルス幅は等しいが、波形形状が異なる。Type2は、基本パターン電流Iopの後端側のみにオーバーシュート電流Iov1およびIov2が加算されているのに対し、Type4は、その先端側のみにオーバーシュート電流Iov1およびIov2が加算されている。
潜像径ばらつきは、Type2が4.71[%]、Type4が5.91[%]であり、Type2の駆動電流波形でのレーザ走査による潜像形成の方がばらつきの小さい潜像形成を実現できることがわかる。
Type2の駆動電流波形では、オーバーシュート電流Iov1およびIov2がある露光終了側が潜像形成に支配的な信号であり、Type4の駆動電流波形では、露光開始側がそれに相当する。一般的な画像形成装置に用いられるLD光源は、入力信号に対応する駆動電流がLDに印加されてもレーザ発振が可能な濃度のキャリアが生成されるまでにある程度の時間を要するため、発振遅延が生じる。この発振遅延は、LD素子の温度変化などに伴いばらつきが生じやすい。これに対し、時間的に信号強度が増加していく波形形状であるType2では、潜像形成に支配的な信号に至るまでに電流信号が与えられているため発振遅延が小さいと考えられる。また、LD素子の温度条件等の発光条件も安定的であり、発光特性のばらつきも小さいと考えられる。
このように、本実施形態における画像評価装置1は、画像評価方法を用いて、駆動電流の信号強度が時間的に段階変化するような駆動電流波形を生成する。そして、画像評価装置1は、レーザ光源100を駆動して潜像形成ばらつきを評価することで、潜像形成ばらつきに対するレーザ光源100の発光特性の優劣を評価することができる。
(第3の実施形態)
前述した潜像解像力RPの評価および潜像形成ばらつきの評価によると、Type2として示した駆動電流波形による露光走査の潜像形成ばらつきが最も小さい。また、Type2は、潜像解像力RPに関しても駆動電流波形の信号強度が時間的に一定である場合(Type1)と比較して向上した。
電子写真方式の画像形成装置において、このような駆動電流波形を用いて露光走査を行うことで、高解像度かつドットばらつきの小さい高品質な画像を形成することができる。第3の実施形態では、前述した画像評価装置1を含む画像形成装置の例について説明する。
一般的な電子写真プロセスの概要について説明する。電子写真プロセスは、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、定着の各工程により行われる。現像は、暗所において帯電器を用い、光半導体である感光体の表面を帯電させる。露光は、帯電させた感光体に光照射を行い、光が照射された部分の電荷が除去されてこれにより静電潜像を形成する。現在、デジタル機器においてはネガが主流である。現像は、静電潜像とは逆極性に帯電させた微小粒子であるトナーを静電潜像に対して静電的に付着させる。転写は、記録媒体である記録紙を現像後のトナー像に重ね、記録紙の裏側に配置された帯電器によりトナーの帯電極性とは逆極性の電荷を記録紙に与え、静電力によりトナーを記録紙に転写する。クリーニングは、転写されずに感光体に残った残留トナーをブレードや磁気ブラシ等のクリーナを用いて除去する。定着は、熱ローラ定着機に記録紙を送り、熱と圧力とにより記録紙に付着しているトナーを定着させる。上述の帯電、露光、現像、転写、クリーニング、定着の各工程を行う電子写真装置の一例を以下に説明する。
図22は、電子写真装置の例を説明するための模式図である。図22に示すように、電子写真装置150は、感光体(OPC)151と、帯電チャージャ152と、露光用光源153と、転写チャージャ156と、定着ローラ157と、クリーニングブレード158と、除電用光源159とを含む。
電子写真装置150は、帯電チャージャ152により感光体151の帯電を行った後に、露光用光源153により露光を行い、形成された静電潜像にトナー154を静電的に付着させることにより現像を行う。現像後、電子写真装置150は、感光体151上のトナー像を転写チャージャ156によって記録紙155に転写させることにより転写を行い、感光体151上の残留トナーがクリーニングブレード158によって除去することによりクリーニングを行う。電子写真装置150は、トナー像が転写された記録紙155が定着ローラ157に送られることにより定着を行う。定着工程において、トナー154は、主として記録紙155等の紙に定着されるが、オーバヘッドプロジェクタ(OHP)シート等の高分子材料に対して定着を行う場合もある。
上述の現像工程は、いくつかの方式に分類され、方式により使用される現像剤およびトナーが分類される。先ず方式には乾式と湿式とがあり、現在では高速性に勝る点で乾式が主流である。乾式に用いられる現像剤としてはトナーのみを有する1成分現像剤とトナーとキャリアとを有する2成分現像剤とがある。1成分現像剤および2成分現像剤に用いられるトナーには、非磁性トナーと磁性トナーとがある。トナーは、その大部分がポリマーにより構成され、着色剤等を含む場合もあり、その大きさは数μm〜十数μmである。キャリアは、鉄粉等の金属系材料から構成され、その大きさは数十μm〜数百μmである。
感光体151は、光導電材料(Photoconductor)である。感光体151は、低コストであり加工性が良好である点から有機電子写真感光体(OPC:Organic Photoconductor)が主に採用されている。一般的に、OPCは、多層構造であり、導電性支持体(導電層)の上に中間層を設け、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)と電荷輸送層(CTL:Charge Transfer Layer)とが積層されている。この構成(順層構成)では、負帯電方式となり、CGLとCTLとの積層順を逆にした構成では正帯電方式となる。また、感光体151は、電荷発生と電荷輸送とを混合させた材料を用いた単層感光体も含む。中間層は、電荷リーク等の防止のために設けられている。上述した層構成、帯電および光照射の様子は、前述した図2の模式図と同様である。
電子写真装置150は、表面を帯電させたOPCに光を照射すると、CGLにおいて光が吸収され正負電荷が発生する。この正負の電荷は、表面の電界により一方の電荷がCTLに、他方の電荷が導電性支持体にそれぞれ注入される。CTLに注入された電荷は、CTLを通り感光体の表面に到達し、表面に存在する電荷を打ち消す。そして、電子写真装置150は、照射する光を2次元的に走査させ、文字や画像のパターンを形成する。このパターンに応じて上述した電荷発生や移動が起こり、表面の電荷が打ち消される。これが静電潜像である。一般的にCGLの厚みはサブ[μm]程度であり、CTLの厚みは数十[μm]程度である。静電潜像は文字や画像であるが、最小単位はドットである。
図23は、光走査装置の例を説明するための模式図である。図23に示すように、光走査装置130は、レーザ光源131と、コリメートレンズ132と、シリンドリカルレンズ133と、第1のミラー134と、ポリゴンミラー135と、第1の走査レンズ136と、第2の走査レンズ137と、第2のミラー138とを含む。なお、本実施形態の光走査装置130は、感光体139を走査光学系に含んでもよい。
ポリゴンミラー135は、図示しない駆動手段によって回転軸1351を中心に1万[rpm]前後から数万[rpm]の高速で回転駆動され、入射される光を走査する。ポリゴンミラー135による走査方向が主走査方向であり、これは感光体139の長手方向に相当する。感光体139は、図示しない駆動手段によって回転軸1391を中心に回転駆動され、この回転方向が副走査方向となる。感光体139上には、ポリゴンミラー135からの光照射により静電潜像1392が形成される。
光走査装置130は、レーザ光源131とコリメートレンズ132との間には図示しない開口(アパーチャ)が設けられている。レーザ光源131は、例えば、波長(λ)が780[nm]の垂直面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surcafe Emitting Laser)や波長(λ)が655[nm]の端面発光レーザ等を含むが、波長はこれに限定されない。
以上の構成を含む画像形成装置は、前述した潜像形成能力および潜像形成ばらつきの少なくとも一方の評価に基づいて決定された駆動電流波形でレーザ光源を駆動する。画像形成装置は、例えば、図23に示す光走査装置130に搭載されたレーザ光源駆動手段141と露光条件メモリ142とを含む。レーザ光源駆動手段141は、例えば、画像形成装置のコントローラによって制御される。露光条件メモリ142は、例えば、基本パターン電流Iop、オーバーシュート電流Iov1およびIov2のパルス幅、信号強度等の駆動電流波形の制御パラメータ等の情報を記憶する記憶手段である。そして、画像形成装置は、画像形成時に露光条件メモリ142が記憶している前記情報に基づいて、レーザ光源駆動手段141によってレーザ光源131を駆動する。
駆動電流波形としては、基本パターン電流Iopの後端にパルス幅の異なる少なくとも2つのオーバーシュート電流Iov1およびIov2が加算されることが好ましい。さらに、少なくとも2つのオーバーシュート電流Iov1およびIov2のパルス幅は、基本パターン電流Iopのパルス幅の半分より小さいものが好ましい。
このような駆動電流波形による露光走査では、レーザ光源131の時間的な発光強度特性は、露光走査の終端側にパルス幅の異なる少なくとも2つのオーバーシュートが加算されたものである。さらに、露光走査では、少なくとも2つのオーバーシュートのパルス幅は、露光走査に用いた時間幅の半分よりも小さくなる露光を実現できる。ここでのオーバーシュートとは、オーバーシュート電流により加算された光強度を意味している。このような露光走査により、高解像度かつドットばらつきの小さい高品質な画像形成が可能な画像形成装置を実現できる。
なお、上記の本実施形態の画像形成装置は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用することができる。さらに、画像形成装置は、例えば、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等のいずれにも適用することができる。
本実施形態では、画像評価装置1は、コンピュータ200によって潜像形成能力を評価する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、画像評価装置1は、コンピュータを用いずに、ROM等に組み込まれたプログラムをCPUなどの制御装置で実行する装置として構成されてもよい。
本実施形態では、画像評価装置1は、1つのレーザ光源100を駆動させる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、画像評価装置1は、複数の発光点が一直線状に並んだマルチビーム光源、VCSEL(面発光レーザ)等をレーザ光源として用いてもよい。この場合、画像評価装置1は、複数の発光点毎に駆動電流波形を生成して駆動させる。
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。