以下、本発明に係る画像形成方法とその画像形成方法を実行する本発明に係る画像形成装置との実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
●画像形成装置の構成
まず、本発明に係る画像形成装置の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置を示す中央断面図である。同図には、本発明に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
レーザプリンタ1000は、光走査装置1010と、感光体ドラム1030と、帯電装置1031と、現像装置1032と、転写装置1033と、除電ユニット1034と、クリーニングユニット1035と、トナーカートリッジ1036とを有する。
また、レーザプリンタ1000は、給紙コロ1037と、給紙トレイ1038と、定着装置1041と、排紙ローラ1042と、排紙トレイ1043と、通信制御装置1050と、プリンタ制御装置1060とを有する。
なお、以上のレーザプリンタ1000の構成要素は、プリンタ筐体1044の内部の所定位置に収容されている。
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコンなどの情報処理装置)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置1060は、不図示のCPU(Central
Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)とを有する。また、プリンタ制御装置1060は、RAM(Random Access Memory)と、A/D(Analog/Digital)変換器とを有する。ここで、プリンタ制御装置1060は、上位装置からの要求に応じて各部を統括的に制御するとともに、上位装置からの画像情報を光走査装置1010に送る。
ROMには、CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及びこのプログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されている。
RAMは、CPUの作業用の一時書き込み可能なメモリである。
A/D変換器は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。
感光体ドラム1030は、円柱状の部材の潜像担持体であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、不図示の駆動機構により図1における矢印方向に回転される。
帯電装置1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。ここで、帯電装置1031には、例えばオゾン発生の少ない接触式の帯電ローラや、コロナ放電を利用するコロナチャージャを用いることができる。
図2は、画像形成装置のコロトロン型帯電装置を示す模式図である。また、図3は、画像形成装置のスコロトロン型帯電装置を示す模式図である。ここで、帯電装置1031は、図2に示すコロトロン型帯電装置であっても良いし、図3に示すスコロトロン型帯電装置であっても良いし、不図示のローラ型帯電装置であっても良い。
光走査装置1010は、帯電装置1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、プリンタ制御装置1060からの画像情報に基づいて変調された光束により走査して露光し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した静電潜像を形成する。
光走査装置1010により形成された静電潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像装置1032の方向に移動する。なお、光走査装置1010の詳細については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナー(現像剤)が格納されている。トナーは、トナーカートリッジ1036から現像装置1032に供給される。
現像装置1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて、静電潜像を顕像化させる。ここで、トナーが付着した像(以下「トナー像」ともいう。)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写装置1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されている。
給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出す。記録紙1040は、感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写装置1033との間隙に向けて、給紙トレイ1038から送り出される。
転写装置1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。トナー像が転写された記録紙1040は、定着装置1041に送られる。
定着装置1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここでトナーが定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次積層される。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、帯電装置1031に対向する位置に戻る。
本発明に係る画像形成装置において、帯電装置と、露光装置としての光走査装置と、感光体と、画像パターンを光出力に変換するための画像処理部とにより、静電潜像が形成される。
図4は、感光体(OPC:Organic Photoconductor)の構成を示す模式図である。同図は、感光体に静電潜像を形成する方法の一例を示す。同図に示すように、感光体の構成は、導電性支持体(導電層)323aの上に電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)323b、電荷輸送層(CTL:Charge
Transport Layer)323cが形成されている。
感光体は、表面電荷が帯電している状態で露光されると、CGL323aの電荷発生材料(CGM:Charge Generation Material)によって、光が吸収される。CGL323aには、正負両極性のキャリアが発生する。
発生したキャリアは、電界によって、一方はCTLに、他方は導電層に、それぞれ注入される。CTLに注入されたキャリアは、電界によって、CTL内部を経てCTLの表面まで移動し、感光体表面の電荷と結合して消去する。これにより、感光体表面には、電荷分布すなわち静電潜像が形成される。
複写機やレーザプリンタといった電子写真方式における出力画像を得るためのプロセスは、以下のとおりである。すなわち、電子写真方式では、帯電工程において潜像担持体の一つである感光体を均一に帯電させる。また、電子写真方式では、露光工程において感光体に光を照射して部分的に電荷を逃がす。このようにすることで、電子写真方式では、感光体に静電潜像を形成することができる。
●光走査装置の構成
次に、画像形成装置の光走査装置1010の構成について説明する。
図5は、画像形成装置の光走査装置1010を示す模式図である。同図に示すように、光走査装置1010は、光源11と、コリメートレンズ12と、シリンドリカルレンズ13と、折り返しミラー14と、ポリゴンミラー15と、第1走査レンズ21とを備える。また、光走査装置1010は、第2走査レンズ22と、折り返しミラー24と、同期検知センサ26と、走査制御装置(不図示)とを備える。
ここで、光走査装置1010は、光学ハウジング(不図示)の所定位置に組み付けられている。
なお、以下の説明において、感光体ドラム1030の長手方向(回転軸方向)に沿った方向をXYZ3次元直交座標系のY軸方向とし、ポリゴンミラー15の回転軸に沿った方向をZ軸方向とし、Y軸とZ軸の双方に垂直な方向をX軸方向とする。
また、以下の説明において、各光学部材の主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」とし、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」とする。
光源11は、例えば2次元配列された複数の発光部(不図示)を有している。ここで、各発光部は、全ての発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等しくなるように配置されている。
ここで、光源11には、半導体レーザ(LD:Laser
Diode)や、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などを用いることができる。
図6は、光走査装置1010の光源の例を示す模式図である。同図において、光源11Aは、マルチビーム光源として、4個の半導体レーザが配列されて構成される半導体レーザアレイである。また、光源11Aは、コリメートレンズ12の光軸方向に対して垂直に配置されている。
図7は、光走査装置1010の光源の別の例を示す模式図である。同図において、光源11Bは、発光点がY軸方向とZ軸方向とを含む平面上に配置された、例えば波長780nmの垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)である。
光源11Bは、例えば、水平方向(主走査方向、Y軸方向)に3個、垂直方向(副走査方向、Z軸方向)に4個、計12個の発光点を有する。
なお、光源11Bは、光走査装置1010に適用する場合に、一つの走査線上を水平方向に配置した3つの発光点により走査することで、垂直方向の4本の走査線を同時に走査することもできる。
ここで、本実施の形態において、「発光部間隔」とは、2つの発光部の中心間距離をいう。
図5に戻り、コリメートレンズ12は、光源11から射出された光の光路上に配置され、光を平行光または略平行光に制御する。
シリンドリカルレンズ13は、ポリゴンミラー15の偏向反射面近傍に、コリメートレンズ12を通過した光をZ軸方向(副走査方向)にのみ集束する。
シリンドリカルレンズ13は、折り返しミラー14の反射面近傍に、主走査方向(Y軸方向)に長い線像として光源11から出射された光を結像させる。
折り返しミラー14は、シリンドリカルレンズ13を通過して結像した光をポリゴンミラー15に折り返す。
なお、光源11とポリゴンミラー15との間の光路上に配置されている光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。
ポリゴンミラー15は、感光体ドラム1030の長手方向(回転軸方向)に直交する回転軸まわりに回転する多面鏡である。ここで、ポリゴンミラー15の各鏡面は、偏向反射面である。
ポリゴンミラー15は、不図示の駆動用IC(Integrated
Circuit)によりモータ部に適切なクロックを与えることでモータを所望の速度で等速回転する。
ポリゴンミラー15は、モータ部により矢印方向に等速回転されると、偏向反射面で反射された複数の光ビームが、それぞれ偏向ビームとなって等角速度的に偏向される。
第1走査レンズ21と、第2走査レンズ22と、折り返しミラー24と、同期検知センサ26とは、走査光学系を構成する。走査光学系は、ポリゴンミラー15で偏向された光の光路上に配置される。
第1走査レンズ21は、ポリゴンミラー15で偏向された光の光路上に配置されている。
第2走査レンズ22は、第1走査レンズ21を介した光の光路上に配置されている。
折り返しミラー24は、長尺平面鏡であり、第2走査レンズ22を介した光の光路を、感光体ドラム1030に向かう方向に折り返す。
すなわち、ポリゴンミラー15で偏向された光は、第1走査レンズ21と、第2走査レンズ22とを介して感光体ドラム1030に照射され、感光体ドラム1030表面に光スポットを形成する。
感光体ドラム1030表面の光スポットは、ポリゴンミラー15の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に沿って移動する。ここで、感光体ドラム1030表面上の光スポットの移動方向(Y軸方向)が「主走査方向」であり、感光体ドラム1030の回転方向(Z軸方向)が「副走査方向」である。
同期検知センサ26は、ポリゴンミラー15からの光を受光し、受光光量に応じた信号(光電変換信号)を走査制御装置に出力する。ここで、同期検知センサ26の出力信号は、「同期検知信号」ともいう。
図5に示すように、光走査装置1010では、ポリゴンミラー15の1つの偏向反射面による走査で感光体ドラム1030の被走査面上の複数のラインを同時に走査する。各発光点の発光信号を制御する画像処理部内のバッファメモリには、各発光点に対応する1ライン分の印字データが蓄えられている。
印字データは、ポリゴンミラー15のそれぞれの偏向反射面ごとに読み出され、潜像担持体上の走査線上で印字データに対応して光ビームが点滅し、走査線に従って静電潜像が形成される。
図8は、画像形成装置の画像処理部を示すブロック図である。同図に示すように、画像処理部は、画像処理ユニット(IPU:Image Processing Unit)101と、コントローラ部102と、メモリ部103と、光書込出力部104と、スキャナ部105と、を備える。
コントローラ部102は、回転・リピート・集約・圧縮伸張などの処理を行ったあと再度IPUに出力する。
メモリ部103には、種々のデータを記憶するためのルックアップテーブルを用意しておく。
光書込出力部104は、制御ドライバにより点灯データに応じて、光源11の光変調を行い、感光体ドラム1030に静電潜像を形成する。ここで、光書込出力部104は、後述の階調処理部からの入力信号に基づいて記録紙に画像を形成する。
スキャナ部105は、画像を読み込み、この画像に基づいてRGB(Red
Green Blue)データなどの画像データを生成する。
図9は、画像処理部の画像処理ユニット101を示すブロック図である。同図に示すように、画像処理ユニット101は、濃度変換部101aと、フィルタ部101bと、色補正部101cと、セレクタ部101dと、階調補正部101eと、階調処理部101fと、を備えている。
濃度変換部101aは、ルックアップテーブルを用いてスキャナ部105からのRGBの画像データを濃度データに変換して、フィルタ部101bに出力する。
フィルタ部101bは、濃度変換部101aから入力される濃度データに対して、平滑化処理やエッジ強調処理等の画像補正処理を施して、色補正部101cに出力する。
色補正部101cは、色補正(マスキング)処理を施す。
セレクタ部101dは、画像処理ユニット101の制御下で、色補正部101cから入力される画像データに対して、C、M、Y、Kのいずれかを選択して、階調補正部101eに出力する。
階調補正部101eは、セレクタ部101dから入力されるC、M、Y、Kのデータに対して、予め格納されている。階調補正部101eには、入力データに対してリニアな特性が得られるγカーブを設定する。
階調処理部101fは、階調補正部101eから入力される画像データに対してティザ処理等の階調処理を施して、信号を光書込出力部104に出力する。
●静電潜像の特性の変化
以上説明したように、電子写真方式の画像形成装置では、潜像担持体としての感光体に静電潜像を形成し、現像手段によりトナーを付着させることで画像形成を行っている。
しかしながら、電子写真方式の画像形成装置で一般的に用いられる感光体は、画像形成プロセスを繰り返すことにより、感光体が経時的に劣化(以下「疲労」という。)して特性が変化する。
疲労の要因の代表的なものとしては、感光体の感度低下が挙げられる。感光体の感度低下が生じた場合には、画像品質に変化が生じてしまう。つまり、感光体の感度低下に対応することは、高安定な画像形成装置を実現する上での課題となっている。
また、感光体の特性変化による画像品質の劣化は、感光体の寿命に繋がる。つまり、感光体の感度低下に対応することは、感光体寿命を延長する上での課題ともなっている。
図10は、感光体の光減衰特性を示すグラフである。同図は、光疲労による感光体の感度低下として、初期状態と疲労後の光減衰特性を表したものである。ここで、光減衰特性とは、所定の露光エネルギー密度で露光したときの感光体の表面電位である。
図10では、感光体の疲労度合いによる光減衰特性の変化を比較するために、例えば電位低下が飽和領域に達する露光エネルギー密度である1.9μJ/cm2における感光体を露光したときの表面電位を比較する。ここで、初期状態での表面電位は−65Vであるのに対して、疲労1の状態での表面電位は−87V、疲労2の状態での表面電位は−129Vとなり、疲労が進むにつれて露光後の感光体の表面電位が上昇していることがわかる。
以下の説明において、電位低下が飽和領域に達するのに充分な露光エネルギー密度で露光したときの露光後潜像電位をVL値と表す。また、以下の説明において、VL値の絶対値が高いものを高VL値、VL値の絶対値が低いものを低VL値と表す。さらに、以下の説明において、感光体の特性変動によりVL値が低VL値から高VL値に変化することを、VL値が上昇すると表す。
図11は、参考例における露光後電位の相違による潜像電位分布を示すグラフである。同図は、本発明に係る画像形成方法の参考例として、同一露光条件で露光したときの感光体の疲労前後における潜像電位の分布を計測したものである。また、同図において、低VL値とは感光体の使用初期状態を示し、高VL値とは感光体が疲労してVL値が上昇した状態を示す。
図11に示すように、低VL値の状態と高VL値の状態との電位分布を比較すると、VL値の相違により、電位深さと電位の幅が異なる。すなわち、高VL値の方が電位の深さが浅く、電位幅が狭くなっている。
ここで、電位深さは潜像深さに対応し、電位の幅は潜像径に対応する。また、最終的なトナー画像を考慮すると、潜像深さはトナー付着量に相関のあるパラメータであり、潜像径はトナー像の大きさに相関のあるパラメータである。すなわち、図11によれば、VL値が上昇する(感光体の疲労が進む)ことにより、最終画像のトナー付着量が薄くなり、トナー像の大きさが小さくなるため、画像品質に影響を与えることがわかる。
本発明に係る画像形成方法の参考例では、以上のようなVL値の変動による画像品質への影響に対して、VL値の変動量に対応して露光光量を制御することで画像への影響を補正する。
図12は、参考例における光源駆動部が生成する初期状態の光出力波形を示す模式図である。同図は、VL値=−65Vのときの画像形成部分(以下「画像部」ともいう。)の主走査方向における光出力波形を示す。
図13は、参考例における光源駆動部が生成する疲労状態の光出力波形を示す模式図である。同図は、VL値=−129Vのときの画像形成部分の主走査方向における光出力波形を示す。
なお、図12〜13では、帯電電位を−500V、光源の波長を655nm、解像度を600dpi、画像パターンを主走査方向に3ドットで副走査方向3ドットとした場合の結果を示す。
図14は、参考例における光源駆動部の光出力の相違による潜像深さと潜像径の相違を示す表である。同図は、図12,13のVL値における潜像深さと潜像径と積分光量比率と光出力分散量とを示す。
図14において、VL値の相違による潜像等価の判定を○と×で示す。また、図14において、潜像等価とは、感光体のVL値に影響されることなく、潜像深さと潜像径とがそれぞれ同等に形成されている状態を表している。ここで、高安定な画像品質を得るためには、感光体のVL値に関わらず、潜像深さの変動が2V以内であり、潜像径の変動が2μm以内であることが望ましい。
本実施の形態において、感光体のVL値が異なる2つの条件の間で潜像深さの差が2V以内であり、潜像径の差が2μm以内である場合を、潜像等価と定義する。また、本実施の形態において、潜像等価の場合の露光条件を、潜像等価露光条件と定義する。
参考例において、VL値=−129V時(疲労状態)の画像部への光出力を100%と設定した。また、VL値=−65V時(初期状態)の画像部への光出力は、VL値変動による潜像深さと潜像径との変動を補正するために、VL値=−129V時に対して78%で設定されている。
画像部への光出力値は、初期状態及び疲労状態ともに、光出力されている時間内で一定(以下「時間的に一定」ともいう。)である。つまり、画像部分を露光するときの積分光量の比率は、光出力されている時間内で一定であるため、疲労状態を100%とすると、初期状態では78%となる。
一方、図14に示すように、初期状態と疲労状態とを比較すると、潜像径は双方の状態で同等に形成されているものの、潜像深さは8Vの差(深さ不一致量)が生じてしまい一致していない。
以上説明した参考例によれば、光量調整のみを行う感光体への光出力の補正では、潜像深さと潜像径双方を補正するには不十分であることがわかる。つまり、光量調整のみを行う感光体への光出力の補正では、感光体の特性変動によりVL値が変動した場合に、VL値の変動前後で画像へのトナー付着量とトナー像の大きさを両立して補正することができなかった。
●潜像形成方法(1)
次に、本発明に係る画像形成方法の潜像形成方法の実施の形態について説明する。
本実施の形態における潜像形成方法では、感光体の露光後電位が変動することで生じる潜像深さの変動と潜像径の変動とを両立して補正するために、露光時間(露光位置)に対応して画像形成時の露光後電位に基づいて画像部への光出力を変化させて露光を行う。
具体的には、本実施の形態における潜像形成方法では、感光体の露光後電位を取得して、露光後電位が所定値を下回るか(疲労時に到達しているか)否かを判断する。本実施の形態における潜像形成方法では、露光後電位が所定値を下回る場合に、潜像担持体上の画像部を複数のエリアに分割し、複数のエリアそれぞれへの光出力値を決定することで、光出力値を複数の値で変化させる。
ここで、本実施の形態における潜像形成方法では、複数のエリアそれぞれへの光出力値を決定するにあたり、画像中心部から画像周辺部に近づくほど光出力値が強く(大きな値と)なるように設定して画像部の静電潜像を形成する。
図15は、本実施の形態における光源駆動部が生成する初期状態の光出力波形を示す模式図である。同図は、VL値=−65Vのときの画像部の主走査方向における光出力波形を示す。
図16は、本実施の形態における光源駆動部が生成する疲労状態の光出力波形を示す模式図である。同図は、VL値=−129Vのときの画像部の主走査方向における光出力波形を示す。
なお、図15〜16では、帯電電位を−500V、光源の波長を655nm、解像度を600dpi、画像パターンを主走査方向に3dotで副走査方向3dotとした場合の結果を示す。
本発明に係る画像形成方法では、取得したVL値が所定値である疲労時のVL値より低い場合に、感光体の疲労時に形成される潜像深さと潜像径とを光出力値の目標値として定める。また、本発明に係る画像形成方法では、この目標値に基づいて、複数のエリアのそれぞれについて異なる値となるように光出力値を決定する。
また、本発明に係る画像形成方法では、画像部の中心部より周辺部が大きな光出力値となるように複数のエリアそれぞれへの光出力値を決定する。
すなわち、本発明に係る画像形成方法では、高VL値(疲労状態)であるVL値=−129V時の潜像深さと潜像径とを目標値として、低VL値(初期状態)であるVL値=−65V時において、複数のエリアそれぞれについて異なる光出力値で露光を行う。
つまり、図16に示すように、本発明に係る画像形成方法では、疲労状態であるVL値=−129V時には画像部への光出力値が時間的に一定である。ここで、本発明に係る画像形成方法では、疲労状態であるVL値=−129V時の光出力値の比を100%とした。
そして、図15に示すように、本発明に係る画像形成方法では、初期状態であるVL値=−65V時にも疲労状態と同等の潜像深さと潜像径とを得るために、画像部を複数のエリアに分割し、分割した複数のエリアそれぞれにおける光出力値を異なる値に設定する。
ここで、本発明に係る画像形成方法では、初期状態であるVL値=−65V時にも疲労状態と同等の潜像深さと潜像径とを得るために、分割した複数のエリアについて、画像中心部のエリアの光出力値より画像周辺部のエリアの光出力値を大きく設定する。
例えば、図15において、露光する画像部の幅を1とする。このとき、本発明に係る画像形成方法では、画像周辺部にあたる画像部の露光開始時と露光終了時それぞれの2/8の距離について光出力値を117%として走査して露光する。
また、本発明に係る画像形成方法では、画像部の中心4/8の距離について光出力値を39%として走査して露光する。
図17は、参考例における光源駆動部の光出力の相違による潜像深さと潜像径の相違を示す表である。同図は、図15,16のVL値における潜像深さと潜像径と積分光量比率と光出力分散量とを示す。
ここで、図17において、図14と同様にVL値の相違による潜像等価の判定を○と×で示す。
なお、初期状態であるVL値=−65V時において、画像部を露光する積分光量は、疲労状態であるVL値=−129V時の積分光量を100%とすると78%となる。
図17に示すように、本発明に係る画像形成方法では、露光後電位が初期状態と疲労状態とで異なる値であっても、潜像深さと潜像径とについて両状態で等価の値が得られている。
以上説明したように、本発明の潜像形成方法によれば、感光体の露光後電位が変動しても、潜像深さと潜像径とを等価の値にすることで、品質の安定した画像を提供することができる。
図18は、本実施の形態における露光後電位の相違による潜像電位分布を示すグラフである。同図に示すように、本発明に係る画像形成方法により感光体の初期状態と疲労状態の露光後電位(VL値)に対応して光出力値を決定するため、潜像電位分布は、初期状態(低VL値)と疲労状態(高VL値)とで同等になる。
つまり、本発明に係る画像形成方法によれば、VL値の変動による画像品質への影響が抑制されるため、安定的な画像形成を実現することができる。
●光源駆動部
次に、本発明に係る画像形成方法を実行する本発明に係る画像形成装置の光源駆動部について説明する。
図19は、画像形成装置の光源駆動部を示す回路図である。同図に示すように、光源駆動部410は、電流源201〜204とスイッチSW1〜SW4とメモリ205を有する。また、光源駆動部410は、画像処理回路407と接続している。
本発明に係る画像形成方法を実行する本発明に係る画像形成装置では、画像部における主走査方向の位置に対応して(画像部の露光開始からの時間に対応して)光出力値を変化させながら露光を行う。図19に示す構成により、光源駆動部は、パルス幅変調と光量変調(PWM+PW変調)とを同時に変調して光源駆動電流を生成することができる。
一般的に、電流波形は、バイアス電流(Ibi)と基本パターン電流(Iop)とオーバーシュート電流(Iov1、Iov2)とを加算することで生成される。
電流源201は、オーバーシュート電流Iov1を生成する。また、電流源202は、オーバーシュート電流Iov2を生成する。また、電流源203は、基本パターン電流Iopを生成する。さらに、電流204は、バイアス電流Ibiを生成する。
ここで、光源駆動部が生成する電流値は、画像処理回路407からの電流値制御信号により、電流源201〜204が制御されて決定される。
スイッチSW1〜SW4は、電流源201〜204に対応して設けられる。スイッチSW1〜SW4は、画像処理回路407からの光源変調信号により制御される。スイッチSW1〜SW4は、電流源201〜204の流れを制御して、光源駆動部410が生成するパルスのパターンを生成する。
メモリ205は、記憶部に相当し、光源駆動電流生成時に必要な情報が格納される。画像処理回路407は、メモリ205の情報を参照する。
光源駆動部410によれば、光源変調データから得られた光源変調信号を電流に変換することができるため、本発明に係る画像形成装置では、光出力と点灯時間を同時に制御可能なPM+PWM変調を生成することができる。
図20は、光源駆動制御部を示すブロック図である。同図に示すように、光源駆動制御部1019は、基準クロック生成回路422と、画素クロック生成回路425とを備える。また、光源駆動制御部1019は、画像処理回路407と、光源選択回路414と、書込みタイミング信号生成回路415と、同期タイミング信号発生回路417とを備える。
なお、図20における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
基準クロック生成回路422は、光源駆動制御部1019全体の基準となる高周波クロック信号を生成する。
画素クロック生成回路425は、主にPLL(Phase Locked
Loop)回路からなる。画素クロック生成回路425は、同期信号s19と基準クロック生成回路422からの高周波クロック信号とに基づいて、画素クロック信号を生成する。
ここで、画素クロック信号は、周波数が高周波クロック信号と同一であり、位相が同期信号s19と一致している。
したがって、画素クロック生成回路425は、画素クロック信号に画像データを同期させることで、走査ごとの書込み位置を揃えることができる。
ここで、生成された画素クロック信号は、駆動情報の1つとして光源駆動部410に供給されるとともに、画像処理回路407にも供給される。画像処理回路407に供給された画素クロック信号は、書込みデータs16のクロック信号として使われる。
光源選択回路414は、光源が複数の場合に用いる回路であり、選択された発光部を指定する信号を出力する。この光源選択回路414の出力信号s14は、駆動情報の1つとして光源駆動部410に供給される。
図21は、画像形成装置の各部の動作時期を示すタイミングチャートである。同図において、s19は同期検知センサ26からの出力信号(同期信号)を示す。また、s15は書込みタイミング信号生成回路415の出力信号(LGATE信号)を示す。また、s14は光源選択回路414の出力信号を示す。さらに、s16は画像処理回路407の出力である書込みデータを示す。
画像処理回路407は、画像処理ユニット(IPU)などからの画像情報に基づいて、発光部毎の書込みデータs16を作成する。書込みデータs16は、駆動情報の1つとして、画素クロック信号のタイミングにより光源駆動部410に供給される。
図22は、光源駆動部が生成する光出力波形の一例を示す模式図である。同図において、露光に用いる光出力波形(露光形式)として、従来露光と、センターパルス露光と、両サイドパルス露光とを示す。
ここで、従来露光とは、上述の光出力されている時間内で一定の光出力値を出力して露光する露光形式である。
また、センターパルス露光とは、画像部の周辺部より中心部が大きな光出力値となるように複数のエリアそれぞれへ異なる光出力値を出力して露光する露光形式である。
両サイドパルス露光とは、上述の画像部の中心部より周辺部が大きな光出力値となるように複数のエリアそれぞれへ異なる光出力値を出力して露光する露光形式である。
なお、図22に示す各露光形式では、画像部への積分光量の値を等しくして光出力波形の形状のみを変えている。また、図22に示す各露光形式では、従来露光の光出力を100%とした。
ところで、センターパルス露光と両サイドパルス露光とでは、画像部における光出力の拡散度合いが異なる。そこで、本実施の形態において、光出力の拡散度合いを表す指標として、以下の式(1)で定義される光出力分散量σという指標を用いる。
式(1)において、分割総数(32)をn、分割単位(1〜32)をi、走査座標(1〜8)をXとする。
式(1)によれば、図22に示した従来露光ではσ=1、センターパルス露光ではσ=0.79、両サイドパルス露光ではσ=1.18となる。すなわち、式(1)によれば、σの値が小さいほど、感光体に対して光出力が集中して露光されることがわかる。
図23は、光出力波形の一例における光出力分散量の算出結果を示す模式図である。同図は、図22に示した3つの露光方式の光出力波形について光出力分散量σを算出するために、光出力を25%ごとに、走査座標を1/8ごとに、それぞれ分割して光出力波形を表したものである。
なお、図23にセンターパルス露光方式と両サイドパルス露光方式の光出力波形の例を示したが、本発明に係る画像形成方法において光出力波形の形状はこれらに限定されない。例えば、本発明に係る画像形成方法において、上述の露光方式を光出力波形で特定せず、例えばσ<1となる場合をセンターパルス露光方式、σ>1となる場合を両サイドパルス露光方式と定義しても良い。
図24は、光出力分散量の相違による潜像深さの変化を示すグラフである。同図は、本発明に係る画像形成方法において、積分光量を一定に保ちつつ、光出力分散量σを0.22〜1.41の間で変化させて露光を行い、潜像深さの値の変化を測定した結果を示す。
また、図25は、光出力分散量の相違による潜像径の変化を示すグラフである。同図は、本発明に係る画像形成方法において、積分光量を一定に保ちつつ、光出力分散量σを0.22〜1.41の間で変化させて露光を行い、潜像径の値の変化を測定した結果を示す。
なお、図24,25は、それぞれ、σ=1である従来露光方式での測定値により規格化している。また、図中に記した近似式は、光出力分散量σによる潜像径と潜像深さの変動式である
図24,25に示すように、センターパルス露光方式では、σの値が小さくなるに従い従来露光方式に対して潜像深さが浅く、潜像径が小さく形成されることがわかる。ここで、図24において、センターパルス露光方式では、σに対する潜像深さの傾きは0.15である。また、図25において、センターパルス露光方式では、潜像径の傾きは、0.17である。
つまり、図24,25に示すように、センターパルス露光方式では、潜像深さ及び潜像径の両者がσの値の変化により、ほぼ同じ感度(傾き)で値が変化することがわかる。
一方、両サイドパルス露光方式では、σの値が大きくなるに従い従来露光方式に対して潜像深さが浅く形成される。ここで、両サイドパルス露光方式において、σの値による潜像径の変化は小さく、従来露光方式での潜像径に対して2〜4%程度大きな径で形成される。
すなわち、本発明に係る画像形成方法において、両サイドパルス露光方式を利用することにより、潜像径を大きく変えることなく、潜像深さのみを変化させることができる。
また、本発明に係る画像形成方法において、両サイドパルス露光方式を利用することにより、潜像径を用いて画像部の積分光量値を規定して、潜像深さを用いて光出力分散量σを規定することで、VL値変動時の潜像等価露光条件を導くことができる。
●本発明に係る画像形成方法のフローチャート
図26は、光源駆動部による光出力分散量と積分光量との算出処理を示すフローチャートである。同図において、以上説明した本発明に係る画像形成方法をフローチャートに示す。
まず、本発明に係る画像形成方法では、後述の静電潜像計測装置により、従来露光方式を用いて疲労状態の感光体を露光させ、それによって得られた潜像深さと潜像径とを計測する(S11)。ここで計測した潜像深さと潜像径は、初期状態の潜像深さと潜像径の目標値となる。
次に、本発明に係る画像形成方法では、静電潜像計測装置により、従来露光方式を用いて初期状態の感光体を露光させる。このとき、静電潜像計測装置では、その露光によって得られた潜像径が、S11によって得られた潜像径の目標値より所定の割合(例えば2〜4%程度)小さく形成されるような積分光量を求める(S12)。
次に、静電潜像計測装置では、S12で得られた積分光量により従来露光方式を用いて初期状態の感光体を露光させる。このとき、静電潜像計測装置では、その露光によって得られた潜像深さの計測を行い、S11で求めた潜像深さの目標値との深さ不一致量(差分)を求める(S13)。
次に、静電潜像計測装置では、初期状態の光出力分散量σによる潜像深さの変動式から、深さ不一致量を相殺することができる適切な光出力分散量σを求める(S14)。
●潜像形成方法(2)
次に、本発明に係る画像形成方法の別の潜像形成方法について説明する。以下の説明では、本潜像形成方法と先に説明した潜像形成方法との相違点のみを説明する。
以下の説明において、初期状態をVL値=−65V時として、疲労状態をVL値=−87V時として、初期状態と疲労状態との間での潜像深さと潜像径それぞれの値が等価となる光出力条件を求める。つまり、本潜像形成方法を実行する際の目標値は、疲労状態であるVL値=−87V時において形成される潜像深さと潜像径である。
図27は、本実施の形態に係る画像形成装置における光源駆動部が生成する初期状態の光出力波形を示す模式図である。同図は、VL値=−65Vのときの画像部の主走査方向における光出力波形を示す。
図28は、本実施の形態における光源駆動部が生成する疲労状態の光出力波形を示す模式図である。同図は、VL値=−87Vのときの画像部の主走査方向における光出力波形を示す。
すなわち、本発明に係る画像形成方法では、高VL値(疲労状態)であるVL値=−87V時の潜像深さと潜像径とを目標値として、低VL値(初期状態)であるVL値=−65V時において、複数のエリアそれぞれについて異なる光出力値で露光を行う。
つまり、図28に示すように、本発明に係る画像形成方法では、疲労状態であるVL値=−87時には画像部への光出力値が時間的に一定である。ここで、本発明に係る画像形成方法では、疲労状態であるVL値=−87V時の光出力値の比を100%とした。
そして、図27に示すように、本発明に係る画像形成方法では、初期状態であるVL値=−65V時にも疲労状態と同等の潜像深さと潜像径とを得るために、画像部を複数のエリアに分割し、分割した複数のエリアそれぞれにおける光出力値を異なる値に設定する。本実施の形態では、画像部を3つのエリアに分割し、分割した3つのエリアそれぞれにおける光出力値を異なる値に設定する。
ここで、本発明に係る画像形成方法では、初期状態であるVL値=−65V時にも疲労状態と同等の潜像深さと潜像径とを得るために、分割した3つのエリアについて、画像中心部のエリアの光出力値より画像周辺部のエリアの光出力値を大きく設定する。
例えば、図27において、露光する画像部の幅を1とする。このとき、本発明に係る画像形成方法では、画像周辺部にあたる画像部の露光開始時と露光終了時それぞれの1/8の距離について光出力値を101%として走査して露光する。
また、本発明に係る画像形成方法では、画像周辺部にあたる画像部の露光開始時と露光終了時それぞれの1/8の後の2/8の距離について光出力値を81%として走査して露光する。
また、本発明に係る画像形成方法では、画像部の中心2/8の距離について光出力値を61%として走査して露光する。
図29は、本実施の形態における光源駆動部の光出力の相違による潜像深さと潜像径の相違を示す表である。同図は、図27,28のVL値における潜像深さと潜像径と積分光量比率と光出力分散量とを示す。
ここで、図29において、図16,17と同様にVL値の相違による潜像等価の判定を○と×で示す。
なお、初期状態であるVL値=−65V時において、画像部を露光する積分光量は、疲労状態であるVL値=−87V時の積分光量を100%とすると81%となる。
また、先に説明した実施の形態と比較すると、光出力分散量σが1.07と小さい値になっている。すなわち、基準となる目標値のVL値と、計測した画像形成時のVL値との差が大きいほど、画像部の光出力分散量を大きくする必要があることがわかる。
また、図29に示すように、本発明に係る画像形成方法では、露光後電位が初期状態と疲労状態とで異なる値であっても、潜像深さと潜像径とについて両状態で等価の値が得られている。
以上説明したように、本発明の潜像形成方法によれば、感光体の露光後電位が変動しても、潜像深さと潜像径とを等価の値にすることで、品質の安定した画像を提供することができる。
●画像パターンと積分光量との関係
図30は、初期状態と疲労状態との潜像等価積分光量の相違を示すグラフである。図30において、VL値が変動した場合に潜像深さと潜像径とが等価となるときの、VL値ごと、及び画像パターンごとの画像部の積分光量の相違を示す。
図30において、VL値=−65V時に両サイドパルス露光方式を用いて、VL値=−87V時、VL値=−129V時の従来露光方式での潜像深さ・潜像径に合わせている。
図30において、VL値=−87V Targetと記したものは、基準となるVL値が−87Vであることを示している。
また、図30において、VL値=−129V Targetと記したものは、基準となるVL値が−129Vであることを示している。
また、図30の横軸方向において、画像パターンは、主走査方向に1ドットと副走査方向に1ドットのもの、主走査方向に2ドットと副走査方向に2ドットのもの、主走査方向に3ドットと副走査方向に3ドットのものの3種である。
上述したように、例えば3ドットの積分光量は、高VL値であるVL値=−129V時に合わせる場合には、VL値=-129V時の従来露光での積分光量を100%としたとき、78%である。
図30では、本発明に係る画像形成方法において、高VL値を目標値とすると、目標値と画像形成時のVL値との差が大きいほど、画像部の積分光量を小さくする必要があることを示している。
また、図30では、本発明に係る画像形成方法において、画像パターンによっても最適な積分光量が異なることから、ドットのサイズが大きいほど、画像部の積分光量を小さくする必要があることを示している。
以上説明したように、本発明に係る画像形成方法によれば、基準となるVL値(目標値)と画像形成時のVL値との差及び画像サイズに基づいて、画像部の積分光量を適切に設定することができる。
ところで、本発明に係る画像形成方法を実行する場合には、画像部の光出力分散量σ及び積分光量の最適値は、あらかじめ潜像計測実験等により求めておくことが望ましい。
図31は、露光後電位の変化による光出力分散量σの変化を示すグラフである。同図に示すように、本発明に係る画像形成方法を実行する場合には、VL値が感光体の疲労により変動した場合であっても基準となるVL値との間で潜像深さと潜像径が等価となる(最適な)光出力分散量σを求める。
図32は、露光後電位の変化による積分光量の変化を示すグラフである。同図に示すように、本発明に係る画像形成方法を実行する場合には、VL値が感光体の疲労により変動した場合であっても基準となるVL値との間で潜像深さと潜像径が等価となる(最適な)積分光量を求める。
本発明に係る画像形成方法では、VL値の変化と光出力分散量及び積分光量との関係を把握することにより、VL値変動の影響を補正するために必要な露光条件を求めることができる。
また、上述のように、光出力分散量σ及び積分光量の最適値は、画像パターンにより異なるため、図31、32に示した特性図を画像パターン毎に取得するのが望ましい。
なお、潜像計測実験より求めた光出力分散量σ及び積分光量の最適値は、画像処理回路407におけるメモリ205等にルックアップテーブルとして格納するのが望ましい。このようにすることで、画像処理回路407では、画像形成条件に対応した最適な設定値を呼び出すことができる。
●検出部の構成
次に、本発明に係る画像形成装置の電位取得部と電位判定部とに相当する、検出部の構成を説明する。本発明に係る画像形成装置において、画像形成時における感光体のVL値は、例えば、画像形成装置の機内に搭載される各種センサにより検出する。
図33は、本発明に係る画像形成装置の画像形成部を示す模式図である。図33において、感光体のVL値を検出する検出部の一例を備える画像形成部150を示す。
画像形成部150は、感光体ドラム151と、帯電チャージャ152と、転写チャージャ156と、定着ローラ157と、クリーニングブレード158と、除電用光源159と、表面電位センサ160とを有する。また、画像形成部は、トナー付着量センサ161と、湿度センサ162と、温度センサ163と、プロセスカウンター164とを有する。
なお、符号153は光走査装置からの露光ビームを、符号154はトナーを、符号155は記録紙を、それぞれ示す。
画像形成部150の処理について、上述した電子写真プロセスに対応させて説明する。
画像形成部150では、帯電チャージャ152により感光体ドラム151の帯電が行われた後に露光用光源153により露光が行われ、形成された静電潜像にトナー154を静電的に付着させることにより現像が行われる。
現像後、画像形成部150では、感光体ドラム151上のトナー像を転写チャージャ156により記録紙1040に転写させることにより転写が行われる。
転写後、画像形成部150では、感光体ドラム151上の残留トナーがクリーニングブレード158によって除去されることによりクリーニングが行われる。
クリーニング後、トナー像が転写された記録紙1040が定着ローラ157に送られることにより定着が行われる。
ここで、画像形成時における感光体ドラム151のVL値を検出する方法として、画像形成装置内に搭載した表面電位センサ160を用いる方法が挙げられる。
つまり、表面電位センサ160は、画像形成を行う前に、任意のタイミングで帯電し電位低下が飽和領域に達するのに充分な露光エネルギー密度で露光する感光体の表面電位を測定する。このようにすることで、表面電位センサ160は、感光体のVL値を検出することができる。
また、画像形成時における感光体のVL値を検出する別の方法として、画像形成装置内に搭載したトナー付着量センサ161を用いる方法が挙げられる。
つまり、トナー付着量センサ161は、画像形成を行う前に、任意のタイミングで例えばベタ画像などを画像形成し、そのときの感光体上のトナー付着量をトナー付着量センサ161で測定する。トナー付着量は帯電電位と露光後電位の電位差により変化するため、測定したトナー付着量から感光体のVL値を検出することができる。
また、画像形成時における感光体のVL値を検出するさらに別の方法として、湿度センサ162と温度センサ163とプロセスカウンター164とを用いる方法が挙げられる。
プロセスカウンター164は、画像形成に至るまでの画像形成プロセスをカウントする。プロセスカウンター164は、例えば、感光体の初期状態から画像形成プロセスの実施回数や感光体走行距離などをカウントし、これらの情報から感光体のVL値を推定する。
ここで、一般的に感光体は、画像形成プロセスを繰り返すことにより疲労して経時的に特性が変化する。このため、感光体の疲労特性をあらかじめ把握しておくことで、本発明に係る画像形成装置では、カウンター情報から画像形成時の感光体のVL値を推定することができる。
なお、感光体の特性は周囲環境の湿度や温度で変動する。このため、プロセスカウンター164により感光体のVL値を推定する場合には、湿度センサ162と温度センサ163とを用いて湿度や温度の情報を取得することで、より精度の高いVL値の推定を行うことができる。
以上の方法により検出した感光体のVL値の情報は、画像処理回路407に送信される。
本発明に係る画像形成装置では、画像形成時にメモリ205のルックアップテーブルを参照して画像形成条件に対応した最適な露光条件を読み込んで露光を行うことで、感光体のVL値変動による画像への影響を補正することができる。よって、本発明に係る画像形成装置によれば、安定した潜像形成及び画像形成が実現することができる。
また、従来の画像形成装置では、感光体の特性変化による画像品質の劣化が感光体の寿命に影響していた。これに対して、本発明に係る画像形成装置では、感光体の特性変化が生じた際にも、露光条件で画像への影響を補正することができるため、感光体の長寿命化を実現することができる。
また、従来の画像形成装置では、感光体の特性変化による画像品質の劣化を抑制するために、感光体開発においてVL値の変動を抑制する様々な対策が講じられることで、コストアップの要因となっていた。これに対して、本発明に係る画像形成装置では、感光体の特性変化が生じた際にも、露光条件で画像への影響を補正することができるため、感光体開発のコスト低減を実現することができる。
●静電潜像計測装置の構成
次に、静電潜像計測装置の構成について説明する。
図34は、静電潜像計測装置を示す中央断面図である。
静電潜像計測装置300は、荷電粒子照射系400と、光走査装置1010と、試料台401と、検出器402と、LED403と、制御系6と、不図示の排出系及び駆動用電源などを備えている。
荷電粒子照射系400は、真空チャンバ340内に配置されている。ここで、荷電粒子照射系400は、電子銃311と、引き出し電極312と、加速電極313と、コンデンサレンズ314と、ビームブランカ315と、仕切り板316とを有している。また、荷電粒子照射系400は、可動絞り317と、スティグメータ318と、走査レンズ319と、対物レンズ320とを有している。
なお、以下の説明において、各レンズの光軸方向をc軸方向とし、c軸方向に直交する面内における互いに直交する2つの方向をa軸方向及びb軸方向として説明する。
電子銃311は、荷電粒子ビームとしての電子ビームを発生させる。
引き出し電極312は、電子銃311の−c側に配置され、電子銃311で発生された電子ビームを制御する。
加速電極313は、引き出し電極312の−c側に配置され、電子ビームのエネルギーを制御する。
コンデンサレンズ314は、加速電極313の−c側に配置され、電子ビームを集束させる。
ビームブランカ315は、コンデンサレンズ314の−c側に配置され、電子ビームの照射をオン(ON)/オフ(OFF)させる。
仕切り板316は、ビームブランカ315の−c側に配置され、中央に開口を有している。
可動絞り317は、仕切り板316の−c側に配置され、仕切り板316の開口を通過した電子ビームのビーム径を調整する。
スティグメータ318は、可動絞り317の−c側に配置され、非点収差を補正する。
走査レンズ319は、スティグメータ318の−c側に配置され、スティグメータ318を介した電子ビームをab面内で偏向する。
対物レンズ320は、走査レンズ319の−c側に配置され、走査レンズ319を介した電子ビームを収束させる。対物レンズ320を介した電子ビームは、ビーム射出開口部321を通過して試料323の表面に照射される。
各レンズ等には、不図示の駆動用電源が接続されている。
なお、荷電粒子とは、電界や磁界の影響を受ける粒子をいう。ここで、荷電粒子を照射するビームは、電子ビームに代えて、例えばイオンビームを用いても良い。この場合は、電子銃に代えて、液体金属イオン銃などが用いられる。
試料323は、感光体であり、図4に示した、導電性支持体323a、電荷発生層(CGL)323b、及び電荷輸送層(CTL)323cを有している。
電荷発生層(CGL)323bは、電荷発生材料(CGM)を含み、導電性支持体323aの+c側の面上に形成されている。電荷輸送層(CTL)323cは、電荷発生層(CGL)323bの+c側の面上に形成されている。
試料323は、表面(+c側の面)に電荷が帯電している状態で露光されると、電荷発生層(CGL)323bの電荷発生材料(CGM)によって光が吸収され、正負両極性のチャージキャリアがそれぞれ発生する。このキャリアは、電界によって、一方は電荷輸送層(CTL)323cに、他方は導電性支持体323aに注入される。
電荷輸送層(CTL)323cに注入されたキャリアは、電界によって電荷輸送層(CTL)323cの表面にまで移動し、表面の電荷と結合して消滅する。これにより、試料323の表面(+c側の面)には、電荷分布、すなわち、静電潜像が形成される。
図34に戻り、光走査装置1010は、光源、カップリングレンズ、開口板、シリンドリカルレンズ、ポリゴンミラー、走査光学系などを有している。また、光走査装置1010は、ポリゴンミラーの回転軸に平行な方向に関して光を走査させるための走査機構(不図示)も有している。
光走査装置1010から出射された光は、反射ミラー372及び窓ガラス368を介して試料323の表面を照射する。
試料323の表面における光走査装置1010から射出される光の照射位置は、ポリゴンミラーでの偏向及び走査機構での偏向によって、c軸方向に直交する平面上の互いに直交する2つの方向に沿って変化する。このとき、ポリゴンミラーでの偏向による照射位置の変化方向は主走査方向であり、走査機構での偏向による照射位置の変化方向は副走査方向である。ここでは、a軸方向が主走査方向、b軸方向が副走査方向となるように設定されている。
このように、静電潜像計測装置300は、光走査装置1010から射出される光によって試料323の表面を2次元的に走査することができる。すなわち、静電潜像計測装置300は、試料323の表面に2次元的な静電潜像を形成することが可能である。
ところで、光走査装置1010は、ポリゴンミラーの駆動モータにより生じる振動や電磁波が電子ビームの軌道に影響を与えないように、真空チャンバ340の外に設けられている。これにより、測定結果に及ぼす外乱の影響を抑制することができる。
検出器402は、試料323の近傍に配置され、試料323からの2次電子を検出する。
LED403は、試料323の近傍に配置され、試料323を照明する光を射出する。LED403は、測定後に試料323の表面に残留している電荷を消去するのに用いられる。
なお、走査光学系を保持する光学ハウジングは、走査光学系全体をカバーで覆い、真空チャンバ内部へ入射する外光(有害光)を遮光するようにしても良い。
走査光学系において、走査レンズは、fθ特性を有しており、光偏光器が一定速度で回転しているときに、光ビームが像面に対して略等速に移動する構成となっている。また、走査光学系において、ビームスポット径も略一定に走査することができるように構成されている。
静電潜像計測装置300では、走査光学系が真空チャンバに対して離れて配置されるので、ポリゴンスキャナ等の光偏向器を駆動する際に発生する振動が直接真空チャンバ340に伝播されることによる影響は少ない。
なお、走査光学系を保持する不図示の構造体にダンパなどの防振手段を設けることで、さらに高い防振効果を得ることができる。
走査光学系を設けることにより、静電潜像計測装置300では、感光体の母線方向に対して、ラインパターンを含めた任意の潜像パターンを形成することができる。
なお、所定の位置に潜像パターンを形成するために、光偏向手段からの走査ビームを検知する同期検知センサ26を有しても良い。
また、試料の形状は、平面であっても曲面であっても良い。
●静電潜像計測の方法
次に、静電潜像計測の方法について説明する。
図35は、加速電圧と帯電との関係を示す模式図である。まず、静電潜像計測にあたり、静電潜像計測装置300では、感光体の試料323に電子ビームを照射させる。
ここで、図35に示すように、加速電極313に印加される電圧である加速電圧|Vacc|として、試料323での2次電子放出比が1となる電圧よりも高い電圧が設定される。このように加速電圧を設定することにより、試料323では、入射電子の量が放出電子の量よりも上回るため電子が試料323に蓄積され、チャージアップを起こす。この結果、静電潜像計測装置300では、試料323の表面をマイナス電荷で一様に帯電させることができる。
図36は、加速電圧と帯電電位との関係を示すグラフである。同図に示すように、加速電圧と帯電電位との間には、一定の関係がある。このため、静電潜像計測装置300では、加速電圧と照射時間を適切に設定することにより、試料323の表面に、画像形成装置1000における感光体ドラム1030と同様な帯電電位を形成することができる。
なお、照射電流の大きいほうが、短時間で目的の帯電電位に到達することができるため、ここでは照射電流を数nAとしている。
その後、静電潜像計測装置300では、静電潜像が観察できるように、試料323における入射電子量を1/100倍〜1/1000倍にする。
静電潜像計測装置300では、光走査装置500を制御して、試料323の表面を2次元的に光走査し、試料323に静電潜像を形成する。なお、光走査装置500は、試料323の表面に所望のビーム径及びビームプロファイルの光スポットが形成されるように調整されている。
ところで、静電潜像の形成に必要な露光エネルギーは、試料の感度特性によって決まるが、通常、2〜10mJ/m2程度である。なお、感度が低い試料では、必要な露光エネルギーは10mJ/m2以上になる場合がある。つまり、帯電電位や必要な露光エネルギーは、試料の感光特性やプロセス条件に合わせて設定される。ここで、静電潜像計測装置300の露光条件は、画像形成装置1000に合わせた露光条件と同様に設定されている。
図37は、試料面上の2次電子による電位分布を示す模式図である。同図において、荷電粒子を捕獲する検出器402と、試料323との間の空間における電位分布とを、等高線で説明図的に示す。
ここで、試料323の表面は、光減衰により電位が減衰した部分を除いては負極性に一様に帯電した状態であり、検出器402には正極性の電位が与えられている。そのため、実線で示される電位等高線群においては、試料323の表面から検出器402に近づくに従い電位が高くなる。
従って、図37において、負極性に均一帯電している部分であるQ1点やQ2点で発生した2次電子el1、el2は、検出器402の正電位に引かれ、矢印G1や矢印G2で示されるように変位し、検出器402に捕獲される。
一方、図37において、Q3点は光照射されて負電位が減衰した部分であり、Q3点近傍では電位等高線の配列は破線で示されるように、Q3点を中心とした半円形の波紋状に広がる。この波紋状の電位分布では、Q3点に近いほど電位が高くなっている。
換言すると、Q3点の近傍で発生した2次電子el3には、矢印G3で示すように、試料323側に拘束する電気力が作用する。このため、2次電子el3は、破線の電位等高線で示されるポテンシャルの穴に捕獲され、検出器402に向かって移動することができない。
図38は、試料面上の2次電子による電荷分布を示す模式図である。同図において、ポテンシャルの穴が模式的に示されている。
すなわち、検出器402により検出される2次電子の強度(2次電子数)の大きい部分は、「静電潜像の地の部分(均一に負帯電している部分、図37における点Q1やQ2に代表される部分)」に対応する。検出器402により検出される2次電子の強度(2次電子数)の小さい部分は、「静電潜像の画像部(光照射された部分、図37における点Q3に代表される部分)」に対応する。
したがって、検出器402の出力から得られる電気信号を適当なサンプリング時間でサンプリングすれば、サンプリング時刻Tをパラメータとして、表面電位分布(電位コントラスト像)V(a,b)は、「サンプリングに対応した微小領域」ごとに特定できる。
そして、表面電位分布V(a,b)を2次元的な画像データとして構成し、これを不図示の表示装置で表示する、あるいは不図示のプリンタで印刷すれば、静電潜像は、可視的な画像として得ることができる。
静電潜像について、例えば、捕獲される2次電子の強度を「明るさの強弱で表現」すれば、静電潜像の画像部分は暗く、地の部分は明るくコントラストがつき、表面電荷分布に応じた明暗像として表現(出力)することができる。また、静電潜像について、表面電位分布を知ることができれば、表面電荷分布も知ることができる。
なお、静電潜像について、表面電荷分布や表面電位分布のプロファイルを求めることにより、静電潜像をさらに高精度に測定することが可能である。
図39は、走査光学系による潜像画像パターンの例を示す模式図である。同図に示すように、走査光学系による潜像画像パターンとしては、いわゆる1ドット孤立パターンや1ドット格子パターンと称されるものが挙げられる。
図40は、走査光学系による潜像画像パターンの別の例を示す模式図である。同図に示すように、走査光学系による潜像画像パターンとしては、いわゆる2ドット孤立パターンと称されるものが挙げられる。
図41は、走査光学系による潜像画像パターンのさらに別の例を示す模式図である。同図に示すように、走査光学系による潜像画像パターンとしては、いわゆる2by2パターンと称されるものが挙げられる。
図42は、走査光学系による潜像画像パターンのさらに別の例を示す模式図である。同図に示すように、走査光学系による潜像画像パターンとしては、いわゆる2ドットラインパターンと称されるものが挙げられる。
なお、走査光学系による潜像画像パターンは、上述のものに限定されず、様々なパターンを形成することができる。
ところで、検出器402での検出対象は、試料323からの2次電子に限定されるものではない。例えば、入射電子ビームが試料323の表面に到達する前に、試料323の表面近傍で反発された電子(以下、「1次反発電子」ともいう)を検出器402が検出しても良い。
図43は、グリッドメッシュ配置による測定例を示す中央断面図である。同図に示すように、グリッドメッシュ配置による測定例では、試料台401と試料323との間に絶縁部材404と導電部材405を設け、導電部材405に±Vsubの電圧が印加されるようになっている。
以上のように構成することで、検出器402では、1次反発電子が検出される。
なお、検出器402に対向して導電板が設けられても良い。
ところで、一般的に加速電圧は正で表現することが一般的であるが、Vaccは負であるため、加速電圧を負(Vacc<0)で表現する。
また、試料323の電位ポテンシャルをVp(<0)とする。
電位とは単位電荷が持つ電気的な位置エネルギーであるため、入射電子は、電位0(V)では加速電圧Vaccに相当する速度で移動する。
すなわち、電子の電荷量をeとし電子の質量をmとすると、電子の初速度v0は、mv02/2=e×|Vacc|で表される。ここで、真空中ではエネルギー保存の法則により、加速電圧の働かない領域では電子は等速で運動する。
試料323に接近するに従い、電位が高くなり、電子は、試料323の電荷によりクーロン反発の影響を受けて速度が遅くなる。従って、一般的に以下のような現象が起こる。
図44は、|Vacc|≧|Vp|のときの入射電子の挙動を示す模式図である。同図に示すように、|Vacc|≧|Vp|のときは、入射電子の速度は減速されるものの、試料323に到達する。
図45は、|Vacc|<|Vp|のときの入射電子の挙動を示す模式図である。同図に示すように、|Vacc|<|Vp|のときは、入射電子の速度は試料323の電位ポテンシャルの影響を受けて徐々に減速し、試料323に到達する前に速度が0となって、反対方向に進む。
空気抵抗の無い真空中では、エネルギー保存の法則がほぼ成立する。したがって、入射電子のエネルギーを変えたときの試料323表面上でのエネルギー、すなわちランディングエネルギがほぼ0となる条件を計測することで、試料323表面の電位を計測することができる。
ここで、入射電子が試料323に到達したとき発生する2次電子と1次反発電子とでは、検出器402に到達する量が大きく異なるので、明暗のコントラストの境界より識別することができる。
なお、走査電子顕微鏡などには、反射電子の検出器があるが、この場合の反射電子とは、一般的に試料の物質との相互作用により、入射電子が後方背面に反射(散乱)され、試料表面から飛び出す電子のことを指す。
ここで、反射電子のエネルギーは入射電子のエネルギーに匹敵する。反射電子の速度ベクトルは試料の原子番号が大きいほど大きいとされる。また、反射電子は、試料の組成の違い、及び表面の凹凸などを検出するのに利用される。
これに対して、1次反発電子は、試料表面の電位分布の影響を受けて試料表面に到達する前に反転する電子のことであり、反射電子とは全く異なる。
図46は、潜像深さの計測結果の例を示す模式図である。同図において、静電潜像を計測した結果の一例が示されている。ここで、Vthは、VaccとVsubとの差(=Vacc−Vsub)である。
また、電位分布V(a,b)は、各走査位置(a,b)でランディングエネルギがほぼ0となるときのVth(a,b)から求めることができる。ここで、Vth(a,b)は、電位分布V(a,b)と一意的な対応関係があり、電荷分布がなだらかであれば、Vth(a,b)は近似的に電位分布V(a,b)と等価となる。
図46(A)におけるVthと静電潜像の中心からの距離との関係を示す曲線は、試料表面の電荷分布によって生じた表面電位分布の一例である。
ここで、Vaccは−1800Vとしている。静電潜像の中心では、電位が約−600Vであり、静電潜像の中心から離れるにつれて、電位がマイナス側に大きくなる。静電潜像の中心から75μmを超える周辺領域の電位は、約−850Vになっている。
図46(B)は、Vsub=−1150Vに設定したときの検出器402の出力を画像化した図である。このとき、Vth=−650Vである。
また、図46(C)は、Vsub=−1100Vに設定したときの検出器402の出力を画像化した図である。このとき、Vth=−700Vである。
そこで、1次反発電子を検出して静電潜像のプロファイルを求める方法では、VaccまたはVsubを変えながら、試料表面を電子ビームで走査させ、Vth(a,b)を計測することにより、試料の表面電位情報を得ることができる。1次反発電子を検出して静電潜像のプロファイルを求める方法を用いることにより、従来困難であった、静電潜像のプロファイルをミクロンオーダーで可視化することができる。
なお、1次反発電子を検出して静電潜像のプロファイルを求める方法では、入射電子のエネルギーが極端に変化するため、入射電子の軌道がずれて、走査倍率が変化する、あるいは歪曲収差を生じる場合がある。
そこで、このような場合には、静電場の環境や電子軌道をあらかじめ計算しておき、その計算結果に基づいて検出結果を補正することにより、静電潜像のプロファイルを高精度に求めることができる。
以上説明したように、静電潜像計測装置300を用いることにより、静電潜像における電荷分布、表面電位分布、電界強度分布、及び試料表面に直交する方向に関する電界強度を、それぞれ高精度に求めることができる。
●本発明の効果●
以上説明したように、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、感光体の露光後電位が変動することで生じる静電潜像の変動を補正することができるため、最終画像でのトナー像の付着量、大きさの変動を抑制することができる。
また、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、潜像径を大きく変えることなく、潜像深さのみを独立して調整することができる。つまり、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、潜像深さと潜像径とを両立して補正することができる。
また、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、感光体の使用初期状態から目標値とした疲労時に至るまでの画像形成において、潜像深さと潜像径との変動を抑制することができる。
また、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、感光体の露光後電位が変動することで生じる潜像深さと潜像径との変動を両立して補正するための光出力波形の波形形状を得ることができる。
また、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、感光体の露光後電位が変動することで生じる潜像深さと潜像径との変動を両立して補正する光出力波形の積分光量を得ることができる。
また、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、感光体の露光後電位が変動することで生じる潜像深さと潜像径との変動を両立して補正する光出力波形の積分光量を、画像パターンの形状などに影響されることなく得ることができる。
また、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、感光体の露光後電位が変動することで生じる静電潜像の変動を補正することができる。つまり、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、最終画像でのトナー像の付着量と大きさの変動とを抑制することができる。
また、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、画像形成時において、画像形成時の露光後電位に応じた最適な光出力条件を読み出すことができる。
また、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、画像形成時において、画像パターンに応じた最適な光出力条件を読み出すことができる。
また、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、静電潜像での評価から得られた好適な露光条件を画像形成装置にフィードバックすることができる。つまり、本発明に係る画像形成方法と本発明に係る画像形成装置によれば、画像の高安定化に優れた走査光学系を提供することができるため、高安定な画像を提供することができる。