図面を参照して実施例の半導体装置を説明する。実施例の半導体装置は、電気自動車に搭載されており、バッテリの電力を走行用モータの駆動電力に変換する電力制御装置である。図1に、電力制御装置2を含む電気自動車100の電力系のブロック図を示す。電気自動車100は、2個の走行用モータ83a、83bを備える。それゆえ、電力制御装置2は、2組のインバータ回路13a、13bを備える。なお、2個のモータ83a、83bの出力は、動力分配機構85で合成/分配されて車軸86(即ち駆動輪)へと伝達される。
電力制御装置2は、システムメインリレー82を介してバッテリ81と接続されている。電力制御装置2は、バッテリ81の電圧を昇圧する電圧コンバータ回路12と、昇圧後の直流電力を交流に変換する2組のインバータ回路13a、13bを備えている。
電圧コンバータ回路12は、一方の端子に印加された電圧を昇圧して他方の端子に出力する昇圧動作と、他方の端子に印加された電圧を降圧して一方の端子に出力する降圧動作の双方を行うことが可能ないわゆる双方向DC−DCコンバータである。説明の便宜上、以下では、低電圧側の端子を入力端18と称し、高電圧側の端子を出力端19と称する。また、入力端18の正極と負極を夫々、入力正極端18aと入力負極端18bと称する。出力端19の正極と負極を夫々、出力正極端19aと出力負極端19bと称する。「入力端18」、「出力端19」との表記は説明の便宜を図るためのものであり、先に述べたように、電圧コンバータ回路12は双方向DC−DCコンバータであるので、出力端19から入力端18へ電力が流れる場合がある。
電圧コンバータ回路12は、4個のトランジスタ6a、6b、7a、7b、リアクトル4、フィルタコンデンサ3、各トランジスタに逆並列に接続されているダイオードで構成されている。2個のトランジスタ6a、7aは直列に接続されており、残りの2個のトランジスタ6b、7bも直列に接続されている。前述したように、2個のトランジスタが直列に接続された回路を単純に直列接続と称する場合がある。また、以下では、直列接続の高電位側に位置するトランジスタ6a、6bを上アームトランジスタと称し、低電位側に位置するトランジスタ7a、7bを下アームトランジスタと称することがある。
2組の直列接続は並列に接続されている。2組の直列接続の高電位側は出力正極端19aに接続されており、低電位側は出力負極端19bに接続されている。リアクトル4は、一端が入力正極端18aに接続されており、他端は、2組の直列接続のそれぞれの中点Qa、Qbに接続されている。フィルタコンデンサ3は、入力正極端18aと入力負極端18bの間に接続されている。入力負極端18bは、出力負極端19bと直接に接続されている。
4個のトランジスタ6a、6b、7a、7bは、後述する回路基板に実装された駆動回路で駆動される。上アームトランジスタ6a、6bは、同じタイミングでオンとオフが切り換えられる。下アームトランジスタ7a、7bも、同じタイミングでオンとオフが切り換えられる。即ち、2個の上アームトランジスタ6a、6bは同じタイミングで同じ動作をするように駆動され、2個の下アームトランジスタ7a、7bも同じタイミングで同じ動作をするように駆動される。以下では、同じタイミングで同じ動作をすることを並列動作と称する。並列に接続された2組の直列接続を並列動作させることで、2組の直列接続はあたかも一つの直列接続のように動作する。
先に述べたように、電圧コンバータ回路12は、昇圧動作と降圧動作の双方を行うことができる。電圧コンバータ回路12の昇圧動作とは、バッテリ81の電圧を昇圧してインバータ回路13a、13bへ供給する動作である。電圧コンバータ回路12の降圧動作とは、インバータ回路13a、13bから入力される直流電力(モータ83a又は83bが発生する回生電力)を降圧する動作である。なお、降圧された回生電力はバッテリ81の充電に使われる。下アームトランジスタ7a、7bが昇圧動作に関与し、上アームトランジスタ6a、6bが降圧動作に関与する。
図1において、符号8aが示す破線矩形の範囲の回路が、後述する半導体モジュール8aに対応する。符号8bが示す破線矩形の範囲の回路が、後述する半導体モジュール8bに対応する。半導体モジュールは、2個のトランジスタの直列接続と、各トランジスタに逆並列に接続されているダイオードを収容したデバイスである。半導体モジュール8aは、2個のトランジスタ6a、7aの直列接続と、各トランジスタに逆並列に接続されたダイオードを収容している。半導体モジュール8bは、2個のトランジスタ6b、7bの直列接続と、各トランジスタに逆並列に接続されたダイオードを収容している。半導体モジュールについては後述する。
インバータ回路13a、13bについて概説する。なお、図1では、インバータ回路13a、13bの回路構成の図示は省略しており、半導体モジュール8c−8h(後述)を破線矩形で模式的に表すだけにとどめている。一つの半導体モジュールが一つの直列接続に対応する。
インバータ回路13aは、2個のトランジスタの直列接続を3組備えている。各トランジスタにはダイオードが逆並列に接続されている。半導体モジュール8c、8d、8eが3組の直列接続に対応する。それゆえ、以下では、半導体モジュール8c−8eを用いてインバータ回路13aを説明する。3個の半導体モジュール8c−8eは並列に接続されている。3個の半導体モジュール8c−8eの高電位側と低電位側は、夫々、電圧コンバータ回路12の出力正極端19aと出力負極端19bに接続されている。夫々の半導体モジュールの中点端子から交流が出力される。
インバータ回路13bはインバータ回路13aと同じ構成を備えている。即ちインバータ回路13bは、3個の半導体モジュール8f、8g、8hを備えており、夫々の中点端子から交流が出力される。インバータ回路13a、13bの夫々の交流出力は、モータ83a、83bに供給される。なお、出力正極端19aと出力負極端19bの間には、平滑コンデンサ5が接続されている。
インバータ回路13a、13bの合計6個の半導体モジュール8c−8hは、全て、電圧コンバータ回路12の出力正極端19aと出力負極端19bに並列に接続されている。電圧コンバータ回路12の2個の半導体モジュール8a、8bも、出力正極端19aと出力負極端19bに接続されている。即ち、電力制御装置2が備える8個の半導体モジュール8a−8hは、それらの高電位側が互いに接続されるとともに、それらの低電位側も互いに接続される。
電圧コンバータ回路12の説明を補足する。先に述べたように、上アームトランジスタ6a、6bは同じタイミングでオンとオフが切り換えられる。すなわち、2個の上アームトランジスタ6a、6bのゲートには同じタイミングのパルス信号(PWM信号)が加えられる。このとき、ゲートとエミッタの間の電圧が、2つの上アームトランジスタ6a、6bの間で異なるとゲート発振と呼ばれる現象が生じる。先に述べたように、図1の破線8a、8bは半導体モジュールを表す。そして、詳しくは後述するが、半導体モジュール内の導電経路は極めて短くインダクタンスが小さい(半導体モジュール内の構造は後に詳しく説明する)。一方、半導体モジュール間はバスバと呼ばれる細長金属板で接続される。バスバのインダクタンスは、半導体モジュール内の導電経路と比較すると大きい。すなわち、図1において、導電区間Pabのインダクタンスが中点QaとQbの間のインダクタンスに支配的な影響をおよぼす。中点QaとQbの間に電流が流れると、図1の符号Pabが示す区間のインダクタンスによって中点Qaと中点Qbの間に電位差が生じる。この電位差により、上アームトランジスタ6aのゲートエミッタ間電圧と上アームトランジスタ6bのゲートエミッタ間の電圧に差が生じる。この差が大きいとゲート発振が生じる。電力制御装置2では、半導体モジュール8aの直列接続の中点Qaと半導体モジュール8bの直列接続の中点Qbを接続する導電経路(図1の導電区間Pab)を物理的に二重にして、中点間のインダクタンスを小さくする。次に、中点間の導電経路の具体的態様を含む電力制御装置2のハードウエア構成について説明する。なお、ゲート発振は、並列動作する下アームトランジスタ7a、7bでも生じ得るが、2個のトランジスタの直列接続の上側のトランジスタ(即ち、上アームトランジスタ6a、6b)の方が、ゲート発振が生じ易い。それゆえ、電力制御装置2では、2組の直列接続の中点間のインダクタンスを低減する。
まず、半導体モジュールの構造を説明する。なお、図1に示したように、電力制御装置2は、8個の半導体モジュール8a−8hを備える。複数の半導体モジュール8a−8hは同じ構造を有している。以下では、複数の半導体モジュール8a−8hのいずれか一つを区別なく示すときには「半導体モジュール8」と表記する。
図2に、半導体モジュール8の斜視図を示す。図3に、半導体モジュール8の内部構造を示す斜視図を示す。半導体モジュール8は、2個のトランジスタチップ21a、21bと、2個のダイオードチップ22a、22bを封止している本体9と、一部が本体9に埋設されている金属板24、25、26、27、28を備えている。トランジスタチップ21aと21bは、図1の回路図における上アームトランジスタ6aと下アームトランジスタ7aに対応する。ダイオードチップ22a、22bは、図1の回路図においてトランジスタ6a、7aに逆並列に接続されているダイオードに対応する。
半導体モジュール8の本体9は、樹脂で作られている。本体9は平板型であり、その一方の平坦面9cに放熱部25a、27aが露出している。図2では隠れて見えないが、反対側の平坦面9dには放熱部24a、26aが露出している。平坦面9c、9dは、複数の半導体モジュール8と冷却器41(後述)が積層される積層ユニットにおいて、冷却器41と対向する面である。
平坦面9cに隣接する第1側面9aから、正極端子24b、負極端子28b、中点端子26bが延びている。第1側面9aとは反対側の第2側面9bから、ゲート端子29と吊りリード24c、26cが延びている。図3は樹脂の本体9を取り去った斜視図である。図3によく示されているように、放熱部24a、正極端子24b、吊りリード24cは一枚の金属板24で作られている。放熱部26a、中点端子26b、吊りリード26cも、一枚の金属板26で作られている。別言すれば、放熱部24a、正極端子24b、吊りリード24cは、それぞれ、一枚の金属板24の一部であり、放熱部26a、中点端子26b、吊りリード26cは、それぞれ、一枚の金属板26の一部である。
なお、吊りリード24c、26cは、第2側面9bの長手方向の両端の夫々から延びている。吊りリード24c、26cは、半導体モジュール8の製造工程において、製造装置が半導体モジュールを把持するために設けられている。吊りリード24c、26cは、元々、他のデバイスと電気的接続を行うための部位ではない。
トランジスタチップ21a、21bは、NPN型の絶縁ゲートバイポーラトランジスタであり、コレクタからエミッタに向かう方向が電流の順方向となる。トランジスタチップ21a、21bは、扁平なチップであり、一方の面にコレクタ電極が露出しており、他方の面にエミッタ電極とゲート電極が露出している。ダイオードチップ22a、22bも扁平なチップであり、一方の面にアノード電極が露出しており、他方の面にカソード電極が露出している。次に、本体9の内部におけるチップと金属板の接合関係についてより詳しく説明する。以下、説明の便宜上、図3においてX軸の正方向を「上」と表現し、X軸の負方向を「下」と表現する。
トランジスタチップ21aは、そのコレクタ電極が下を向きエミッタ電極が上を向くように、金属板24の放熱部24aの上に配置される。トランジスタチップ21aのコレクタ電極が放熱部24aに接合される。ダイオードチップ22aは、そのカソード電極が下を向きアノード電極が上を向くように、金属板24の放熱部24aの上に配置される。ダイオードチップ22aのカソード電極が放熱部24aに接合される。
トランジスタチップ21aのエミッタ電極には導電性のスペーサ23aが接合され、ダイオードチップ22aのアノード電極には導電性のスペーサ23bが接合される。スペーサ23aと23bの上に、金属板25の放熱部25aが接合される。以上の接合により、トランジスタチップ21aとダイオードチップ22aが逆並列に接続される。トランジスタチップ21aのゲート電極には、ボンディングワイヤ30を介してゲート端子29が接合される。なお、図では4本の端子をまとめて「ゲート端子」と称しているが、ゲート電極と接続されているのは4本のうちの1本であり、他の3本は、温度センサの信号端子などである。本明細書では、ボンディングワイヤ30でチップと接続される4本の同タイプの端子をまとめて「ゲート端子」と称している。
トランジスタチップ21bは、そのコレクタ電極が下を向きエミッタ電極が上を向くように、金属板26の放熱部26aの上に配置される。トランジスタチップ21bのコレクタ電極が放熱部26aに接合される。ダイオードチップ22bは、そのカソード電極が下を向きアノード電極が上を向くように、金属板26の放熱部26aの上に配置される。ダイオードチップ22bのカソード電極が放熱部26aに接合される。トランジスタチップ21bのエミッタ電極には導電性のスペーサ23cが接合され、ダイオードチップ22bのアノード電極には導電性のスペーサ23dが接合される。スペーサ23cと23dの上に、金属板27の放熱部27aが接合される。以上の接合により、トランジスタチップ21bとダイオードチップ22bが逆並列に接続される。トランジスタチップ21bのゲート電極には、ボンディングワイヤ30を介してゲート端子29が接合される。
金属板25の放熱部25aの縁から接続部25bが延びており、金属板26の放熱部26aの縁から接続部26dが延びている。接続部25bと接続部26dが接合される。この接合により、トランジスタチップ21a、21bが直列に接続される。即ち、図1に示した上アームトランジスタ6aと下アームトランジスタ7aの直列接続が実現される。このように半導体モジュール8の内部では上アームトランジスタ6aと下アームトランジスタ7aが短い距離でしかも大きな金属板で接続されるので、2個のトランジスタ間のインダクタンスは小さい。
金属板27の放熱部27aの縁から接続部27bが延びており、この接続部27bには、金属板28の接続部28aが接続される。放熱部24a、26aと、放熱部25a、27aの間が樹脂で満たされて本体9が形成される。本体9は、トランジスタチップ21a、21bとダイオードチップ22a、22bを封止する。金属板24、25、26、27、28の一部が本体9に埋設され、残部が本体から露出する。本体9から露出した部分が、放熱部と端子を形成する。放熱部24aの縁から延びており、本体9から露出する正極端子24bが2個のトランジスタの直列接続の高電位側の端子となる。放熱部26aの縁から延びており本体9から露出する中点端子26bが2個のトランジスタの直列接続の中点の端子となる。金属板28の一部であって本体9から露出する負極端子28bが、2個のトランジスタの直列接続の低電位側の端子となる。
金属板24(放熱部24a、正極端子24b、吊りリード24c)、金属板26(放熱部26a、中点端子26b、吊りリード26c)、金属板28(負極端子28b)、及び、ゲート端子29は、もともと、一枚のリードフレームの一部である。図4にリードフレーム31の斜視図を示す。半導体モジュールの製造工程において、図4のリードフレーム31の上にトランジスタチップ21a、21b、ダイオードチップ22a、22bが接合され、夫々のチップの上にスペーサ23a−23dの夫々が接合される。そして、スペーサ23a、23bの上に金属板25が接合され、スペーサ23c、23dの上に金属板27が接合される。なお、図4の放熱部24a、26aに示した破線矩形は、トランジスタチップ21a、21b、ダイオードチップ22a、22bの接合箇所を示している。リードフレームと金属板とチップとスペーサを接合した後、リードフレーム31と金属板25、27の間の空間が樹脂で充填され、本体9が形成される。本体9が形成された後、図4に示す複数の破線CLでリードフレーム31が切断され、正極端子24b(金属板24)、負極端子28b(金属板28)、中点端子26b(金属板26)、ゲート端子29が分離する。吊りリード24c、26cは、リードフレーム31の一部が本体9の側に残った部位である。
半導体モジュール8の構造をまとめると以下の通りである。半導体モジュール8は、本体9と、本体9から延びている正極端子24b、中点端子26b、負極端子28b、吊りリード24c、26c、ゲート端子29を備えている。本体9は、2個のトランジスタチップ21a、21b(トランジスタ6a、7a)の直列接続を収容している。本体9は、また、2個のダイオードチップ22a、22bを収容している。正極端子24bは、本体9の内部で、2個のトランジスタの直列接続の高電位側と導通しており、本体9の第1側面9aから本体9の外へ延びている。第1側面9aは、後述する積層ユニットにおいて冷却器41と対向する平坦面9c、9dに隣接する側面である。中点端子26bは、本体9の内部で2個のトランジスタの直列接続の中点と導通しており、第1側面9aから本体9の外へ延びている。負極端子28bは、本体9の内部で2個のトランジスタの直列接続の低電位側と導通しており、第1側面9aから本体9の外へ延びている。ゲート端子29は、本体9の内部でトランジスタのゲート電極と導通しており、本体9の第2側面から本体9の外へ延びている。第2側面は、第1側面の反対側の側面である。吊りリード24cは、本体9の内部で、2個のトランジスタの直列接続の高電位側と導通しており、第2側面9bから本体9の外へ延びている。吊りリード26cは、本体9の内部で、2個のトランジスタの直列接続の中点と導通しており、第2側面9bから本体9の外へ延びている。吊りリード24cと正極端子24bは、放熱部24aとともに一枚の金属板24で作られている。吊りリード26cと中点端子26bは、放熱部26aとともに、一枚の金属板26で作られている。別言すれば、吊りリード24cと正極端子24bは一枚の金属板24の一部であり、吊りリード26cと中点端子26bは一枚の金属板26の一部である。なお、半導体モジュール8a、8bの吊りリード26cは、他の吊りリード(半導体モジュール8a、8bの吊りリード24c、及び、半導体モジュール8c−8hの吊りリード24cと26c)よりも長くなっている。この点については後述する。
次に、図5−図7を参照して、電力制御装置2のハードウエア構成を説明する。なお、前述したように、電力制御装置2は、8個の半導体モジュール8を採用しており、それらの半導体モジュール8は全て、上記した構造を有している。
図5に、電力制御装置2の平面図を示す。図5は、カバーを外した電力制御装置2の平面図であり、ケース90の内部に収容された部品のレイアウトが示されている。図6は、図5のVI−VI線に沿った断面図を示している。ケース90の中には、フィルタコンデンサユニット103、リアクトルユニット104、積層ユニット40、平滑コンデンサユニット105、回路基板50などが収容されている。
フィルタコンデンサユニット103の中に、図1で示したフィルタコンデンサ3に相当するコンデンサ素子が収容されている。リアクトルユニット104の中に、図1で示したリアクトル4に相当するリアクトルデバイスが収容されている。平滑コンデンサユニット105の中に、図1で説明した平滑コンデンサ5に相当するコンデンサ素子105a(図6参照)が収容されている。フィルタコンデンサ3、平滑コンデンサ5、リアクトル4には大電流が流れるため、それらに対応するハードウエアは体格が大きい。
平滑コンデンサユニット105に隣接して積層ユニット40が配置されている。積層ユニット40は、複数の冷却器41と複数の半導体モジュール8a−8hが積層されたユニットである。図5では右端の冷却器だけに符号41を付しており、残りの冷却器の符号は省略している。また、図5では、左端の半導体モジュール8aと右端の半導体モジュール8hにのみ、正極端子、中点端子、負極端子を示す符号24b、26b、28bを付しており、他の半導体モジュールにはそれらの符号を省略した。
積層ユニット40では、複数の冷却器41が平行に配置されており、隣り合う冷却器41の間に半導体モジュール8a−8hの夫々が挟まれている。半導体モジュール8a−8hの構造は先に説明した通りであり、その本体には2個のトランジスタチップの直列接続が収容されている。
積層ユニット40は、ケース90に設けられた支持壁89と、2本の支持柱87の間に挿入されている。図示を省略しているが、支持柱87と積層ユニット40の間には板バネが挿入されており、その板バネにより、積層ユニット40はその積層方向に加圧されつつ、ケース90に支持されている。積層方向の加圧によって半導体モジュール8と冷却器41の密着性が高まり、冷却性能が向上する。また、積層ユニット40の一端には冷媒供給管91と冷媒排出管92が接続されており、それらの管はケース90を貫通している。冷媒供給管91から供給された冷媒は全ての冷却器41に分配される。冷媒は各冷却器41の内部を通過する間に隣接する半導体モジュール8から熱を吸収する。冷却器41を通過した冷媒は、冷媒排出管92を通じて電力制御装置2の外へと排出される。半導体モジュール8は平板型(カード型)であり、それぞれの平坦面(図2で示した平坦面9c、9d)が冷却器41によって冷却される。先に示したように、半導体モジュール8の平坦面9c、9dには、内部のトランジスタチップの電極と導通している放熱部が露出している。内部のトランジスタチップの電極と導通している放熱部が冷却器41に接することで、各半導体モジュール8に収容されているトランジスタチップが効率よく冷却される。
図1の回路図を参照して説明したように、全ての半導体モジュール8の高電位側(正極端子24b)が互いに接続されるとともに、低電位側(負極端子28b)が互いに接続される。そして、全ての半導体モジュール8の高電位側(正極端子24b)と低電位側(負極端子28b)の間に平滑コンデンサ5(平滑コンデンサユニット105)が並列に接続される。図5、図6に示されているように、全ての半導体モジュール8の正極端子24bは、バスバ43によって相互に接続されるとともに、平滑コンデンサユニット105の一方の電極に接続される。全ての半導体モジュール8の負極端子28bはバスバ42によって相互に接続されるとともに、平滑コンデンサユニット105の他方の電極に接続される。なお、バスバとは、小さい内部抵抗で電力を伝える金属板を意味する。
半導体モジュール8c−8hはインバータ回路に用いられ、それらの中点端子26bから交流が出力される。半導体モジュール8c−8hの中点端子26bは、別のバスバを介して電力制御装置2の出力端子93に接続される。
図1の回路図を参照して説明したように、半導体モジュール8a、8bは並列に接続され、電圧コンバータ回路で用いられる。半導体モジュール8a、8bの正極端子24bはバスバ43によって相互に接続され、負極端子28bはバスバ42によって相互に接続されている。半導体モジュール8a、8bの中点端子26bは、バスバ44によってリアクトルユニット104の一方の端子に接続される。こうして、半導体モジュール8a、8bの正極端子24b同士、負極端子28b同士、中点端子26b同士が接続される。リアクトルユニット104の他方の端子は、電力制御装置2の入力端94の正極に接続される。入力端94の正極(バスバ45)と負極の間にフィルタコンデンサユニット103が接続される。
先に述べたように、半導体モジュール8aの中点端子26bと半導体モジュール8bの中点端子26bとの間の部分のインダクタンスが大きいと、半導体モジュール8aと8bを並列動作させたときにゲート発振が生じ得る。
図6に示されているように、回路基板50は、半導体モジュール8aの第2側面9bに対向するように、積層ユニット40に隣接して配置されている。回路基板50には、半導体モジュール8aのゲート端子29が接続されている。なお、全ての半導体モジュール8のゲート端子29が回路基板50に接続されている。回路基板50には、各半導体モジュール8に収容されているトランジスタ(トランジスタチップ)を駆動する駆動回路が実装されている。なお、先に述べたように、半導体モジュール8aに収容されたトランジスタチップ21aと半導体モジュール8bに収容されたトランジスタチップ21aは、同じタイミングでオンとオフが切り換えられる。従って回路基板50には、並列動作させる半導体モジュール8a、8bの夫々のトランジスタチップ21aに同じ駆動信号を供給する駆動回路が実装されている。半導体モジュール8aのトランジスタチップ21bと半導体モジュール8bのトランジスタチップ21bについても同様である。
本実施例の電力制御装置2では、中点端子26bと導通している吊りリード26cは、正極端子24bと導通している吊りリード24cよりも長くなっており、回路基板50に接続している。なお、半導体モジュール8bの吊りリード26cも長くなっており、回路基板50に接続している。半導体モジュール8c−8hでは、吊りリード26cは長くなっておらず、回路基板50に接続していない。
図7に、積層ユニット40と回路基板50とリアクトルユニット104のアセンブリの斜視図を示す。なお、リアクトルユニット104と電力制御装置2の入力端94(図5参照)の正極を接続するバスバ45は途中から図示を省略している。
図7において符号51は、回路基板50の上に形成されたプリント配線である。半導体モジュール8aから延びる吊りリード26cと半導体モジュール8bから延びる吊りリード26cは、回路基板50に接続されているとともに、その回路基板50の上で、プリント配線51を介して相互に接続されている。また、半導体モジュール8aの中点端子26bと半導体モジュール8bの中点端子26bは、バスバ44に接続されている。即ち、実施例の電力制御装置2では、図1に示す導電区間Pabが、バスバ44を経由する従来の導電経路に加えて、吊りリード26cとプリント配線51を経由する導電経路の二重になっている。即ち、従来よりも導電経路を太くすることにより、2つの直列接続の中点間を電流が流れ易くなり、その結果、中点間のインダクタンスが小さくなる。
回路基板50には、複数の駆動回路52が実装されている。夫々の駆動回路52は、夫々のゲート端子29に対応している。半導体モジュール8aのための駆動回路52aと半導体モジュール8bのための駆動回路52bは、それらの半導体モジュール8a、8bを並列動作させる。別言すれば、回路基板50は、半導体モジュール8a、8bを並列動作させる駆動回路52a、52bを備えている。
本実施例の電力制御装置2(半導体装置)は、並列に動作する直列接続の中点同士を、2つの導電経路で接続する。一つは、中点端子26b同士を接続するバスバ44であり、もう一つは、中点端子26bと導通している吊りリード26cと、回路基板50上のプリント配線51である。なお、中点端子26bと吊りリード26cは一枚の金属板26の一部である。実施例の電力制御装置2では、並列に動作する直列接続の中点同士を2つの導電経路で接続することによって、中点間のインダクタンスを抑制する。中点間のインダクタンスを抑制することで、ゲート発振が生じ難くなる。
また、実施例の電力制御装置2では、もともと存在した吊りリード26cと回路基板50を活用して、直列接続の中点同士を接続する。実施例の技術は電力制御装置2がもともと有していた部品を活用して中点間のインダクタンスを低減する。従って実施例の技術は、中点間のインダクタンスを低コストで低減することができる。
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例では電圧コンバータ回路で2つの直列接続が並列動作を行う。そして、その2つの直列接続の中点間のインダクタンスを低減する。本明細書が開示する技術は、電圧コンバータ回路以外に適用することもできる。例えば、インバータ回路において2組の直列接続を並列動作させる場合に、その2組の夫々の直列接続を収容している2個の半導体モジュールの中点に接続する吊りリード同士を接続してもよい。
実施例の電力制御装置2では、積層ユニット40に含まれるすべての半導体モジュール8が吊りリード24c、26cを備えている。並列動作させる半導体モジュールのみが回路基板50と接続される吊りリードを備えていればよく、並列動作に関わらない半導体モジュールの吊りリードは製造後に除去されていてもよい。あるいは、積層ユニット40には、吊りリードを必要としない製造工程で作られた半導体モジュールが混在していてもよい。
また、本明細書が開示した技術は、2組の直列接続を並列動作させる場合に限られず、3組以上の直列接続を並列動作する場合にも適用できる。例えば、3組の直列接続を3個の半導体モジュールで実現し、3個の半導体モジュールを並列動作させる場合、3個の半導体モジュールの吊りリード同士を回路基板上で相互に導通させてもよい。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。