図面を参照して実施例の電動機制御装置を説明する。実施例の電動機制御装置2は、電気自動車100に搭載されている。図1と図2に、電動機制御装置2を含む電気自動車100の電力系のブロック図を示す。なお、図1と図2は同じ電動機制御装置2を示しているが、理解を助けるため、図1ではインバータ19を簡略化して描いてあり、図2では電圧コンバータ10を簡略化して描いてある。電気自動車100は、電動機制御装置2のほか、バッテリ9、システムメインリレー3、及び、走行用モータ90を備えている。以下では、説明を簡略化するため、走行用モータ90を単にモータ90と称する。
電動機制御装置2は、内部に電圧コンバータ10とインバータ19を備えている。バッテリ9が、システムメインリレー3を介して電圧コンバータ10の入力に接続されている。電圧コンバータ10の出力はインバータの入力に接続されている。インバータの出力はモータ90に接続されている。なお、電圧コンバータ10は、バッテリ9の電圧を昇圧してインバータ19に供給する昇圧機能と、インバータ19を介してモータ90から送られる回生電力を降圧してバッテリ9を充電する降圧機能の双方を有する双方向コンバータである。昇圧時と降圧時では、入力と出力が逆転するが、説明の便宜上、バッテリ9の側を「入力」と称し、インバータ19の側を「出力」と称する。また、電圧コンバータ10を以下では単にコンバータ10と称する。
まず、図1を参照して、コンバータ10の回路構成を説明する。バッテリ9は、システムメインリレー3を介してコンバータ10と接続されている。コンバータ10の入力正極12aがバッテリ9の正極に接続されており、入力負極12bがバッテリ9の負極に接続されている。なお、バッテリ9は、例えばリチウムイオン電池である。システムメインリレー3は、車両のメインスイッチが入れられると閉じられ、バッテリ9とコンバータ10が接続される。システムメインリレー3は、メインスイッチが切られると開かれ、バッテリ9がコンバータ10から切り離される。
コンバータ10は、フィルタコンデンサ14、リアクトル15、4個のトランジスタT1〜T4、各トランジスタに逆並列に接続されている還流ダイオードを備えている。コンバータ10が備える各トランジスタは、コレクタ電極からエミッタ電極への一方向のみ電流を流すことができるタイプであり、逆方向に電流を流すときのために、トランジスタをバイパスする還流ダイオードが備えられている。コンバータ10の入力負極12bと出力負極13bは、それらの間に何らの素子を介さずに、負極線NLにて直接に接続されている。リアクトル15は、コンバータ10の入力正極12aと出力正極13aの間に接続されている。フィルタコンデンサ14は、コンバータ10の入力正極12aと入力負極12bの間に接続されている。
第1トランジスタT1と第2トランジスタT2は、リアクトル15のインバータ側(インバータ側端子15b)と負極線NLの間に直列に接続されている。リアクトル15のバッテリ側端子15aは、コンバータ10の入力正極12aに接続されている。第1トランジスタT1は、第2トランジスタT2の高電位側に接続されている。なお、本明細書において、トランジスタの高電位側とは、トランジスタのコレクタ電極とエミッタ電極のうち、トランジスタがオフしているときに高電位に保持される側の電極を意味する。本実施例におけるトランジスタはコレクタからエミッタへ一方向にのみ電流が流れるタイプであるので、トランジスタの高電位側とは、コレクタ電極に相当する。第1トランジスタT1の高電位側が、リアクトル15のインバータ側端子15bに接続されており、第1トランジスタT1の低電位側が、第2トランジスタT2の高電位側に接続されている。第2トランジスタT2の低電位側は負極線NLに接続されている。本明細書において「トランジスタがオフする」とは、コレクタ電極とエミッタ電極の間を遮断することを意味する。「トランジスタがオフする」ことは、「トランジスタが開く」と別言されることもある。逆に「トランジスタがオンする」とは、コレクタ電極とエミッタ電極の間を導通させることを意味する。「トランジスタがオンする」ことは、「トランジスタを閉じる」と別言されることもある。
第3トランジスタT3は、リアクトル15のインバータ側(インバータ側端子15b)と出力正極13aとの間に接続されている。第4トランジスタT4は、リアクトル15のインバータ側(インバータ側端子15b)と、第1及び第2トランジスタT1、T2の直列接続の中点との間に接続されている。第3トランジスタT3と第4トランジスタT4も直列接続となる。第4トランジスタT4が第3トランジスタT3の低電位側に接続されている。図1に示すように、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4は並列接続となる。
コンバータ10の出力正極13aと出力負極13bの間には平滑化コンデンサ6が接続されている。平滑化コンデンサ6は、コンバータ10の出力電流の脈動を抑えるために接続されている。先に述べたように、スナバコンデンサ7は、トランジスタが発生するサージ電流を吸収するために備えられており、その容量は、平滑化コンデンサ6よりもはるかに小さい。
コンバータ10は、さらに、スナバコンデンサ7を備えている。スナバコンデンサ7は、第3、第4トランジスタT3、T4の直列接続と並列に接続されている。スナバコンデンサ7は、第1トランジスタT1、第3トランジスタT3、及び、第4トランジスタT4のスイッチング時のサージ電流を吸収するために接続されている。
コンバータ10の昇圧動作は、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4の役割である。第1トランジスタT1と第4トランジスタT4が同期してオン・オフすることで、それら2個のトランジスタはあたかも一つのトランジスタのように動作する。降圧動作は第3トランジスタT3の役割である。第2トランジスタT2は、第1トランジスタT1又は第4トランジスタT4が短絡故障を起こしたときにバッテリ9の短絡を防止するスイッチの役割を果たす。コンバータ10の各トランジスタとインバータ19の各トランジスタは、コントローラ8からの制御信号(PWM信号)によって駆動される。
昇圧動作について概説する。なお、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4が正常の間は、第2トランジスタT2はオンに保持されている。第2トランジスタT2の機能については後述する。昇圧動作時は、第3トランジスタT3に逆並列に接続されたダイオードを通じてリアクトル15から出力正極13aに電流が流れるので、第3トランジスタT3はオンとオフのいずれに保持されていてもよい。コントローラ8は、並列に接続された第1トランジスタT1と第4トランジスタT4を同期してオン・オフする。別言すると、コントローラ8は、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4を同位相でオン・オフする。そうすると、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4があたかも一つのトランジスタのように機能し、入力端12a、12bに供給された電圧が高められて出力端13a、13bに出力される。なお、コントローラ8は、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4を同期してオン・オフするが、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4でオンからオフに切り換えるタイミングを僅かに変えている。この点については後述する。
コンバータ10の出力端にインバータ19が接続されている。図2を参照してインバータ19の回路構成を説明する。なお、図2では、コンバータ10の入力正極12aと入力負極12bとの間に接続されているフィルタコンデンサの図示を省略している。コンバータ10の出力正極13aがインバータ19の正極に接続されており、出力負極13bがインバータ19の負極に接続されている。インバータ19は、2つのトランジスタTH、TLの直列接続の組を3セット備えている。各トランジスタにはダイオードが逆並列に接続されている。インバータ19のトランジスタも、コレクタ電極からエミッタ電極への一方向のみ電流を流すことができるタイプであり、逆方向に電流を流すときのために、トランジスタをバイパスする還流ダイオードが備えられている。
各直列接続の中点から交流が出力される。各直列接続の高電位側のトランジスタTHは上アームトランジスタと呼ばれ、低電位側のトランジスタTLは下アームトランジスタと呼ばれることがある。
図1、図2とともに図3を参照して、電動機制御装置2が備える多数のトランジスタを集約した積層ユニット30を説明する。図3に示すように、積層ユニット30は、複数のパワーカードPC1〜PC5と、スナバカードSCを、複数の冷却器32とともに積層したユニットである。各カードの積層方向の両側に冷却器32が位置するように積層されている。以下では、パワーカードPC1〜PC5のいずれか1つを示すときにはパワーカードPCxと称することにする。「PCx」の添え字「x」は1〜5のいずれかである。図3では、理解を助けるため、パワーカードPC3のみ、積層ユニット30から外して描き、幾つかの部品に符号を付してある。パワーカードPCxの構造に関する以下の説明では、図3のパワーカードPC3を参照されたい。
パワーカードPCxについて説明する。各パワーカードPCxは、2個のトランジスタチップTa、Tbと、2個のダイオードチップDa、Dbを樹脂製の本体44の中に埋設したデバイスである。本体44の表面には放熱板42と43が露出している。放熱板42、43は、本体内部でトランジスタチップTa、Tbの電極と導通している。放熱板42、43が絶縁板41aで覆われつつ、パワーカードPCxは冷却器32と積層される。本体44の反対側にも放熱板が露出しており、その放熱板が絶縁板41bで覆われつつ、パワーカードPCxは別の冷却器32と積層される。絶縁板41a、41bも、パワーカードPCxの一部である。
本体44の内部でトランジスタチップTaとダイオードチップDaは逆並列に接続されている。トランジスタチップTbとダイオードチップDbも逆並列に接続されている。トランジスタチップTaとTbは直列に接続されている。トランジスタチップTa、Tbは、共にコレクタ電極からエミッタ電極へ一方向のみに電流を流すことができるタイプであり、コレクタ電極が回路の高電位側に接続される。トランジスタチップTaがトランジスタチップTbの高電位側に接続している。トランジスタチップTa、Tbは、具体的には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のチップである。
パワーカードPCxの本体44の一面に3個の端子Ox、Px、Nxが伸びている。図3ではパワーカードPC3にのみ、端子に符号(O3、P3、N3)を付しており、他のパワーカードには端子の符号を省略している。中間端子O3は、内蔵された2個のトランジスタチップTa、Tbの直列接続の中点の端子である。正極端子P3は、2個のトランジスタチップの直列接続の両端の端子のうち、パワーカードPC3が組み込まれる回路の高電位側に接続される端子である。負極端子N3は、2個のトランジスタチップの直列接続の両端の端子のうち、パワーカードPC3が組み込まれる回路の低電位側に接続される端子である。本体44には、上記端子O3、P3、N3のほか、各トランジスタチップTa、Tbのゲート電極と幾つかのモニタ用端子に通じる制御端子45が設けられている。
図3に示すパワーカードPC1〜PC5に内蔵されたトランジスタチップとダイオードチップは、図1におけるトランジスタとダイオードに相当する。ここで、各パワーカードPCのトランジスタチップTa、Tbと、図1の各トランジスタの関係を説明する。図1にて符号PC1が示す破線内の回路が、図3の第1パワーカードPC1に対応する。従って、第1パワーカードPC1に内蔵されたトランジスタチップTaが、図1の第1トランジスタT1に相当し、トランジスタチップTbが図1の第2トランジスタT2に相当する。図1にて符号PC2が示す破線内の回路が、図3の第2パワーカードPC2に対応する。第2パワーカードPC2に内蔵されたトランジスタチップTaが、図1の第3トランジスタT3に相当し、トランジスタチップTbが図1の第4トランジスタT4に相当する。同様に、図1にて符号PC3が示す破線内の回路が、図3の第3パワーカードPC3に対応する。図1にて符号PC4、PC5が示す破線内の回路が、図3の第4パワーカードPC4と第5パワーカードPC5に対応する。
また、図1、図2に示した符号Px、Nx、Ox(xは1〜5のいずれか)が、図3においてパワーカードPCxの一側面から伸びる正極端子Px、負極端子Nx、中間端子Oxに対応する。
スナバカードSCについて説明する。スナバカードSCは、パワーカードPCxと同じく、樹脂製の本体にスナバコンデンサを収容したカード型のパッケージである。本体のサイズはパワーカードPCxとほぼ同じである。図3に示すように、パワーカードPCは一側面から3本の端子P3、N3、O3(パワーカードPC3の場合)が伸びているが、スナバカードSCは、2本のコンデンサ端子CP、CNが一側面から伸びている。コンデンサ端子CP、CNは、スナバコンデンサ7の2つの電極の夫々に導通している。コンデンサ端子CP、CNは、図1を参照して説明したコンデンサ端子CP、CNに相当する。スナバカードSCは、2本の端子CP、CN以外には端子を有さない。図1にて符号SCが示す破線内の回路がスナバカードSCに対応する。
図1、図2の回路と、図3の各パワーカードPCxの関係をさらに説明する。コンバータ10の第1トランジスタT1と第2トランジスタT2の直列接続、及び、それらトランジスタに逆並列に接続されているダイオードは、パワーカードPC1に収容されている。また、第3トランジスタT3と第4トランジスタT4の直列接続、及び、それらトランジスタに逆並列に接続されているダイオードは、パワーカードPC2に収容されている。インバータ19の上アームトランジスタTHと下アームトランジスタTLの直列接続と各トランジスタのダイオードは一つのパワーカードに収容されている。インバータ19を構成する3セットの直列接続がパワーカードPC3〜PC5に対応する。
第1パワーカードPC1は、パワーカードの本体の内部で2個のトランジスタの直列接続の高電位側と電気的に接続されている正極端子P1、低電位側と電気的に接続されている負極端子N1、直列接続の中点と接続されている中間端子O1を備える。第2パワーカードPC2は、パワーカードの本体の内部で2個のトランジスタの直列接続の高電位側と電気的に接続されている正極端子P2、低電位側と電気的に接続されている負極端子N2、直列接続の中点と接続されている中間端子O2を備える。スナバカードSCは、本体の内部でスナバコンデンサ7の2つの電極の夫々と電気的に接続されているコンデンサ端子CP、CNを備える。第1パワーカードPC1の正極端子P1が第2パワーカードPC2の中間端子O2及びリアクトル15のインバータ側端子15bと接続されている。リアクトル15のバッテリ側端子15aは、コンバータ10の入力正極12aに接続されている。第1パワーカードPC1の中間端子O1は、第2パワーカードPC2の負極端子N2に接続されている。第1パワーカードPC1の負極端子N1は負極線NLに接続されている。第2パワーカードPC2の正極端子P2は、出力正極13aに接続されている。スナバカードSCのコンデンサ端子CPは第2パワーカードPC2の正極端子P2に接続されており、コンデンサ端子CNは第2パワーカードPC2の負極端子N2に接続されている。
インバータ19は3個のパワーカードPC3、PC4、PC5で構成されている。インバータ19は、コンバータ10から供給される直流を3相交流に変換して出力する。パワーカードPC3の中間端子O3からU相交流が出力され、パワーカードPC4の中間端子O4からV相交流が出力され、パワーカードPC5の中間端子O5からW相交流が出力される。インバータ19が出力する3相交流によりモータ90が駆動される。
図3を参照して、積層ユニット30の冷却構造を説明する。各パワーカードPCとスナバカードSCは、その両側に冷却器32が接している。隣接する冷却器32は、接続パイプ34a、34bで接続されている。積層ユニット30の端に位置する冷却器32には、冷媒供給管31aと冷媒排出管31bが接続されている。各冷却器32の内部は冷媒が通る流路になっている。冷媒供給管31aから供給された冷媒は、接続パイプ34aを通じて全ての冷却器32に分配される。冷媒は、各冷却器32の内部を通過する間に隣接するパワーカードPCとスナバカードSCから熱を吸収する。熱を吸収した冷媒は、接続パイプ34bと冷媒排出管31bを通じて積層ユニット30から排出される。
図3に示すように、スナバカードSCは、第1パワーカードPC1と第2パワーカードPC2の間に配置されている。図3では図示を省略しているが、各パワーカードPCx(xは1〜5)の端子Px、Nx、Ox(xは1〜5)とスナバカードSCのコンデンサ端子CP、CNはバスバと呼ばれる細長金属板で接続される。図3における符号37は電動機制御装置2のケースの一部を示しており、符号36はケース37に設けられた支柱を示しており、符号35は板バネを示している。積層ユニット30は、ケース37の内壁と支柱36の間に挟まれており、板バネ35によって積層方向に加圧されている。
次に、図4〜図6を参照して、電動機制御装置2のケース37の内部の部品レイアウトとバスバの配索について説明する。図4に電動機制御装置2の内部レイアウトを示す平面図(全体図)を示す。図4は複雑であるので、図4のうち、符号IV−Bが示す範囲、即ち、インバータ部分のみを示した図が図5である。図4のうち、符号IV−Cが示す範囲、即ち、コンバータ部分のみを示した図が図6である。電動機制御装置2のケース37には、積層ユニット30、コンデンサユニット62、リアクトルユニット61が収容されている。ケース37にはそのほか、各トランジスタを制御するための回路基板が収容されるがその図示は省略している。
先に述べたように、積層ユニット30は、ケース37の側壁と支柱36の間に収容されている。積層ユニット30の積層方向の一端はケース37の側壁の肉厚部分37aに当接している。積層ユニット30の積層方向の他端は、支柱36と対向しており、他端と支柱36の間に板バネ35が介挿されている。積層ユニット30は板バネ35によって積層方向に加圧されている。この加圧により、冷却器と各カードの密着性が高まり、効率的な冷却が実現されている。積層ユニット30の一端に設けられた冷媒供給管31aと冷媒排出管31bは、ケース37の外へと伸びている。冷媒供給管31aと冷媒排出管31bには、不図示の冷媒循環装置から伸びているパイプが接続される。
図4と図5を参照して、インバータ部分、即ち、パワーカードPC3〜PC5の各端子とバスバの配索を説明する。PC3〜PC5の中間端子O3〜O5の夫々にバスバ51が接続している。先に述べたように、中間端子O3〜O5は、3相交流を出力する端子である。バスバ51の一端が中間端子O3〜O5に接続されている。バスバ51の他端は、コネクタ39に位置している。コネクタ39に、モータ90から伸びるパワーケーブルが接続される。コネクタ39に位置している3本のバスバ51の他端が、モータ90と電動機制御装置2とを電気的に接続するパワーケーブルの接続端子63を構成している。
PC3〜PC5の負極端子N3〜N5の夫々にバスバ53の一端が接続している。バスバ53の他端は、コンデンサユニット62の負極端子62bに接続している。PC3〜PC5の正極端子P3〜P5の夫々にバスバ52が接続している。バスバ52の一端は、コンデンサユニット62の正極端子62aに接続している。コンデンサユニット62は、図1、図2の平滑化コンデンサ6に相当する。図2に示されているように、パワーカードPC3〜PC5は、平滑化コンデンサ6と並列に接続されている。その並列接続をハードウエアで実現しているのが、図5に示すバスバ52と53である。また、図1に示されているように、コンデンサユニット62の正極端子62aは、コンバータ10の出力正極13aに相当し、負極端子62bは出力負極13bに相当する。
図4と図6を参照して、コンバータ部分、即ち、第1パワーカードPC1、第2パワーカードPC2、スナバカードSC、リアクトルユニット61の各端子とバスバの配索を説明する。なお、リアクトルユニット61が図1のリアクトル15に相当する。図6の符号61aが図1のバッテリ側端子15aに対応し、図6の符号61bが図1のインバータ側端子15bに対応する。
第1パワーカードPC1の正極端子P1がバスバ71によって第2パワーカードPC2の中間端子O2と接続されている。正極端子P1は、また、バスバ78によってリアクトルユニット61の一方の端子61b(図1のインバータ側端子15b)と接続されている。リアクトルユニット61の他方の端子61a(図1のバッテリ側端子15a)は、バスバ79の一端に接続されている。バスバ79の他端は、バッテリと電動機制御装置2とをつなぐパワーケーブルが接続されるコネクタ38に位置している。コンデンサユニット62の負極端子62bからバスバ77が伸びており、そのバスバ77の一端もコネクタ38に位置している。コネクタ38には、バッテリ9から伸びるパワーケーブルが接続される。コネクタ38に位置しているバスバ79の端部とバスバ77の端部が、コンバータ10の入力端に相当する。リアクトルユニット61から伸びるバスバ79の端部が、図1に示す入力正極12aに対応し、コンデンサユニット62の負極端子62bから伸びるバスバ77の端部が、図1に示す入力負極12bに対応する。
第1パワーカードPC1の中間端子O1は、バスバ69によってスナバカードSCの一方のコンデンサ端子CNに接続しており、そのコンデンサ端子CNは、バスバ72によって第2パワーカードPC2の負極端子N2と接続している。第2パワーカードPC2の負極端子N2は、バスバ75によってコンデンサユニット62の負極端子62bに接続している。
第1パワーカードPC1の負極端子N1は、バスバ76によってコンデンサユニット62の負極端子62bに接続している。なお、図1、図2、図4〜図6から明らかなとおり、コンデンサユニット62の負極端子62bとこれに接続されているバスバ(バスバ76、バスバ77など)は、図1の回路上の負極線NLに相当する。即ち、第1パワーカードPC1の負極端子N1は、負極線NLに接続している。
第2パワーカードPC2の正極端子P2は、バスバ73によってスナバカードSCの他方のコンデンサ端子CPと接続されている。第2パワーカードPC2の正極端子P2は、また、バスバ74によって、コンデンサユニット62の正極端子62aと接続されている。先に述べたように、コンデンサユニット62の正極端子62aはコンバータ10の出力正極に相当するから、第2パワーカードPC2の正極端子P2は、バスバ74を介してコンバータ10の出力正極(図1の出力正極13a)に接続されていることになる。
図6に示されているように、パワーカードPCxは、中間端子Ox、負極端子Nx、正極端子Pxがこの順で並んでいる。別言すれば、積層ユニット30の積層方向からみて、負極端子Nxが中央に位置し、中間端子Oxと正極端子Pxが両側に位置する。第1パワーカードPC1と第2パワーカードPC2は、端子の並び順が互いに逆方向となるように積層されている。スナバカードSCは第2パワーカードPC2と隣り合う位置に配置されている。スナバカードSCは、コンデンサ端子CP、CNが、第2パワーカードPCの正極端子P2と負極端子N2と対向するように位置している。この端子配置により、図6に示されているように、複数のバスバが交差することなく配索されている。
第1パワーカードPC1、第2パワーカードPC2、及び、スナバカードSCの配置のいくつかの別の例を図7〜図9に示す。図7〜図9では、理解を助けるために、第1パワーカードPC1、第2パワーカードPC2、及び、スナバカードSCだけを示しており、カードの間に挟まれる冷却器の図示は省略している。また、バスバも省略しており、接続すべき端子を太線で結んで接続関係を示してある。太線がバスバに相当する。
図7〜図9の端子の接続関係は、図6における端子の接続関係と同じである。ただし、端子の並びや、カードの積層順が異なる。図7と図8は、バスバ(太線)が交差する箇所が1箇所ある。図9はバスバが交差する箇所が3箇所ある。図6のバスバ配索が最も単純であり、次いで、図7、図8のバスバ配索が単純である。図9のバスバ配索は複雑であり、好ましくない。図6のバスバ配索を可能にしたレイアウトは上記した通りである。図7と図8のバスバ配索は、次の共通点を有する。積層ユニット30の積層方向からみて、負極端子Nxが中央に位置し、中間端子Oxと正極端子Pxが両側に位置する。第1パワーカードPC1と第2パワーカードPC2は、端子の並び順が同じ方向となるように積層されている。スナバカードSCは第2パワーカードPC2と隣り合う位置に配置されている。スナバカードSCは、コンデンサ端子CP、CNが、第2パワーカードPCの正極端子P2と負極端子N2と対向するように位置している。一方、図9のバスバ配索は、スナバカードSCが第2パワーカードPC2と隣り合うように配置されていないために、バスバの配索が複雑化している。
スナバコンデンサ7は、第1トランジスタT1、第3トランジスタT3、第4トランジスタT4が発するサージ電流を吸収するために備えられている。サージ電流は高周波電流であり、インダクタンスの小さい経路に流れ易い。図6に示されているように、第3トランジスタT3と第4トランジスタT4を収容している第2パワーカードPC2とスナバカードSCは隣接配置されており、第2パワーカードPC2とスナバカードSCを接続するバスバ72とバスバ73は短くて済む。バスバが短い方がバスバのインダクタンスが小さくなる。図6の配置は、バスバのレイアウトが単純化されるだけでなく、スナバコンデンサとトランジスタの間のバスバが短くなり、サージ電流をスナバコンデンサに誘導し易くなっている。図7、図8のレイアウトも同様に、スナバカードSCと第2パワーカードPC2の間のバスバが短くて済むので同様の効果が期待できる。
次に、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4の相違について説明する。繰り返すが、第1トランジスタT1は第2トランジスタT2の高電位側に接続しており、第4トランジスタT4は第3トランジスタT3の低電位側に接続しており、それゆえ、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4は並列接続となっている。一般に、トランジスタ(スイッチング素子)は、スイッチング時間が短いほど、オン抵抗が大きくなる傾向がある。即ち、スイッチング素子の選択に当たっては、高速性を優先すれば、定常損失が犠牲となり、定常損失を優先すれば高速性が犠牲となる。実施例のコンバータ10は、特性の異なるトランジスタを並列に接続し、それらを一つのトランジスタとして機能させることで、高速性と低損失性の両立を図っている。実施例のコンバータ10においては、第4トランジスタT4は第1トランジスタT1よりもスイッチング時間が短い。また、第1トランジスタT1は第4トランジスタT4よりもオン抵抗が小さい。
先に述べたように、コントローラ8は、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4を同期してオン・オフし、2つのトランジスタをあたかも一つのトランジスタのように機能させる。ここで、2つのトランジスタの特性の相違がもたらす効果を説明する。第4トランジスタT4のスイッチング時間は第1トランジスタT1のスイッチング時間よりも短い。従って、両者を同時にオフからオンに切り換えると、第4トランジスタT4が第1トランジスタT1よりも先にオンする。即ち、第4トランジスタT4が第1トランジスタT1よりも先に導通する。第1トランジスタT1と第4トランジスタT4の並列接続を一つのトランジスタと見なしたときの応答性は、第4トランジスタT4のスイッチング時間に依存する。なお、オンからオフへの切り換えの応答性についての詳細は後述する。コンバータ10の昇圧時の応答性は、第1トランジスタT1のスイッチング時間よりも第4トランジスタT4のスイッチング時間に依存する。一方、第1トランジスタT1のオン抵抗は第4トランジスタT4のオン抵抗よりも小さい。従って、第4トランジスタT4と第1トランジスタT1の双方がオンした後は、第1トランジスタT1に、第4トランジスタT4よりも多くの電流が流れる。第4トランジスタT4と第1トランジスタT1の両者がオンしている間のコンバータ10の損失は、第4トランジスタT4のオン抵抗よりも第1トランジスタT1のオン抵抗に大きく依存する。なお、厳密にいえば、コンバータ10の損失は第4トランジスタT4のオン抵抗にも影響を受けるが、第1トランジスタT1により多くの電流が流れるので、コンバータ10の損失の大きさに与える影響は、第4トランジスタT4のオン抵抗よりも第1トランジスタT1のオン抵抗の方が大きい。結果として、コンバータ10は、第4トランジスタT4の高い応答性と、第1トランジスタT1の低い定常損失の両方の利点を享受することができる。
第1トランジスタT1と第4トランジスタT4の特性が逆であっても上記の利点を期待することができる。ただし、図6で示したように、第4トランジスタT4を収容している第2パワーカードPC2とスナバカードSCを接続するバスバ72、73は、ほかのいずれのバスバよりも短い。図6のレイアウトによると、第4トランジスタT4とスナバコンデンサ7の間のインダクタンスを、第1トランジスタT1とスナバコンデンサ7の間のインダクタンスよりも小さくすることができる。トランジスタはスイッチング速度が短いほどサージ電流が大きくなる。そして、スナバコンデンサまでの電流経路のインダクタンスが小さいほど、サージ電流をよく通すことができ、サージ電流の影響を抑えることができる。図6のレイアウトを有する電動機制御装置では、第4トランジスタT4にスイッチング速度の短いトランジスタを適用することで、サージ電流を効果的に抑制することができる。
先に述べたように、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4をオン・オフする指令信号はコントローラ8が供給する。本実施例における指令信号はLOWレベルの電圧とHIGHレベルの電圧の繰り返しで構成されるパルス列の信号である。コントローラ8は、LOWレベルの電圧の継続時間とHIGHレベルの電圧の継続時間を適宜に調整したパルス列の信号をトランジスタに供給する。この指令信号はPWM信号と呼ばれている。本実施例では、パルス列において電圧がLOWレベルからHIGHレベルに変化する立ち上がりエッジが、トランジスタをオフからオンに切り換える指令に相当する。パルス列において電圧がHIGHレベルからLOWレベルに変化する立ち下りエッジが、トランジスタをオンからオフに切り換える指令に相当する。以下では、PWM信号の一つのパルスに着目してトランジスタの切り換え動作を説明する。
オフからオンに切り換える場合、同じタイミングで電圧がLOWレベルからHIGHレベルに立ち上がるパルス信号を第1トランジスタT1と第4トランジスタT4に供給すればよい。そうすると、第4トランジスタT4が第1トランジスタT1よりも先にオンする。一方、オンからオフに切り換える場合に同じタイミングでHIGHレベルからLOWレベルに立ち下がるパルス信号を第1トランジスタT1と第4トランジスタT4に与えると、第1トランジスタT1がスイッチング速度の短い第4トランジスタT4よりも後にオフすることになり、第4トランジスタT4の高速性が活用できない。そこで、コントローラ8は、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4に同じタイミングで立ち上がるパルス信号を供給した後、第4トランジスタT4に与える立ち下りエッジのタイミングよりも前のタイミングで立ち下がるパルス信号を第1トランジスタT1に供給する。即ち、コントローラ8は、第4トランジスタT4と第1トランジスタT1を共にオフからオンに切り換えた後、第4トランジスタT4をオンからオフに切り換え始めるタイミングよりも前のタイミングで第1トランジスタT1をオンからオフに切り換え始める。なお、以下では、トランジスタをオフからオンに切り換える信号(パルス信号において電圧がLOWレベルからHIGHレベルに変化する立ち上がりエッジ)をオン指令信号と称する。また、トランジスタをオンからオフに切り換える信号(パルス信号において電圧がHIGHレベルからLOWレベルに変化する立ち下がりエッジ)をオフ指令信号と称する。コントローラ8は、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4にオン指令信号を供給した後、第4トランジスタT4にオフ指令信号を供給するのに先立って第1トランジスタT1にオフ指令信号を供給する。このときのタイムチャートを図10に示す。
図10を参照して第1トランジスタT1と第4トランジスタT4に供給するオン指令信号とオフ指令信号を説明する。図10(A)は、コントローラ8が第1トランジスタT1に供給する指令信号のタイムチャートである。図10(B)は、指令信号を受けた第1トランジスタT1の動作を表すタイムチャートである。図10(C)は、コントローラ8が第4トランジスタT4に供給する指令信号のタイムチャートである。図10(D)は、指令信号を受けた第4トランジスタT4の動作を表すタイムチャートである。なお、図10は、パルス列で表されるPWM信号の1パルスを抜き出したタイムチャートを表している。また、図10(B)と図10(D)の縦軸はトランジスタに流れる電流を示しているが、並列に接続された第1トランジスタT1と第4トランジスタT4を流れる電流は、図10(B)と図10(D)のようにはならない。図10(B)と図10(D)は、トランジスタの動作の説明のため、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4の夫々に流れる電流が、相手のトランジスタの動作の影響を受けないという仮定でのタイムチャートを表していることに留意されたい。
コントローラ8は、時刻t10で同じタイミングで立ち上がるオン指令信号を第1トランジスタT1と第4トランジスタT4に与える。すなわち、コントローラ8は、同じタイミングで第1トランジスタT1と第4トランジスタT4をオフからオンに切り換え始める。高速な第4トランジスタT4は、ターンオン時間Ton4の遅れを伴って時刻t11にオフからオンへの切り換えが完了する。一方、低速な第1トランジスタT1は、ターンオン時間Ton1の遅れを伴って時刻t12にオフからオンへの切り換えが完了する。時刻t11で第4トランジスタT4のコレクタ電極からエミッタ電極へ電流が流れ始めるので、昇圧時の立ち上がりのスイッチング時間は、第1トランジスタT1のターンオン時間Ton1に関わらずに、第4トランジスタT4のターンオン時間Ton4に依存して定まる。
なお、スイッチング時間とは、厳密には、ターンオン遅れ時間、立ち上がり時間、ターンオフ遅れ時間、立下り時間で定義される。ここでは、ターンオン遅れ時間と立ち上がり時間を合わせてターンオン時間と称し、ターンオフ遅れ時間と立下り時間を合わせてターンオフ時間と称する。
第1トランジスタT1のターンオフ時間はToff1である。このターンオフ時間Toff1は、第4トランジスタT4のターンオフ時間Toff4よりも長い。そこで、コントローラ8は、時刻t30に第4トランジスタT4にオフ指令信号を供給するのに先立って、時刻t20に、第1トランジスタT1にオフ指令信号を供給する。即ち、コントローラ8は、第4トランジスタT4をオンからオフに切り換え始めるタイミングよりも早いタイミングで、第1トランジスタT1をオンからオフに切り換え始める。以下、オンからオフに切り換えることをオフ動作と称する。時刻t20と時刻t30の差は、第1トランジスタT1のターンオフ時間Toff1と第4トランジスタT4のターンオフ時間Toff4の差に基づいて決定される。なお、図10の場合、時刻t20と時刻t30の差は、第1トランジスタT1のターンオフ時間Toff1と第4トランジスタT4のターンオフ時間Toff4の差より僅かに長い間隔に設定されている。第4トランジスタT4よりも先にオフ動作を開始する第1トランジスタT1は、時刻t21にオフ動作が完了する。一方、第4トランジスタT4は、時刻t30にオフ動作を開始して時刻t31にオフ動作を終了する。第1トランジスタT1が時刻t20にオフ動作を開始しても、第4トランジスタT4がまだオン状態であるので、電流は第4トランジスタT4を通じて流れ続ける。第1トランジスタT1が完全にオフした時刻t21でも第4トランジスタT4を通じて電流が流れ続ける。即ち、第4トランジスタT4と第1トランジスタT1の並列接続を一つのトランジスタとみなしたときのターンオフ時間は、第4トランジスタT4のターンオフ時間Toff4に依存して定まる。第1トランジスタT1と第4トランジスタT4の並列接続が実現する昇圧用の一つの仮想的なトランジスタのスイッチング時間は、第1トランジスタT1のスイッチング時間に関わらずに、第4トランジスタT4のスイッチング時間(ターンオン時間Ton4とターンオフ時間Toff4)に依存する。すなわち、コンバータ10は、第4トランジスタT4のスイッチング時間の高速性を享受することができる。
先に述べように、図10のタイムチャートは、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4の夫々に流れる電流が、相手のトランジスタの動作の影響を受けないという仮定で描かれている。実際には、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4が共にオンした後は、オン抵抗の低い第1トランジスタT1に、第4トランジスタT4よりも多くの電流が流れる。オン抵抗の低い第1トランジスタT1により多くの電流が流れるので、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4の並列接続を仮想的な一つのトランジスタと見なした場合の定常損失は、第4トランジスタT4のオン抵抗よりも第1トランジスタT1のオン抵抗により大きく依存する。即ち、コンバータ10は、第1トランジスタT1の低いオン抵抗のメリットを享受する。こうして、コンバータ10は、高速応答性と低損失性の両立を実現している。
次に、第2トランジスタT2の役割を説明する。第2トランジスタT2は、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4のいずれかが短絡故障を生じた場合の緊急スイッチの役割を果たす。なお、短絡故障とは、トランジスタがオン状態に固定され、指令信号ではオフできなくなる状態を意味する。コントローラ8は、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4が正常の間は、第2トランジスタT2を常にオンに保持し、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4のいずれかが短絡故障を生じた際に第2トランジスタT2をオンからオフに切り換える。第2トランジスタT2がオフに切り換わると、第1トランジスタT1あるいは第4トランジスタT4の短絡故障にも関わらず、バッテリ9の短絡が回避される。このとき、コンバータ10は、昇圧動作を行うことができないが、コンバータ10の出力正極13aと出力負極13bの間にはバッテリ9の出力電圧に保持された直流が出力される。即ち、この場合、バッテリ9の出力電圧レベルの直流がインバータ19に供給される。インバータ19は、バッテリ9の出力電圧レベルの直流を交流に変換してモータ90に出力することができる。電気自動車100は、当初の性能は出せないが、バッテリ9の電力で走行を継続することができる。
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例の第1トランジスタT1が第1スイッチング素子の一例に相当し、第2トランジスタT2が第2スイッチング素子の一例に相当する。実施例の第3トランジスタT3が第3スイッチング素子の一例に相当し、第4トランジスタT4が第4スイッチング素子の一例に相当する。実施例のパワーカードPC1が第1パワーカードの一例に相当し、パワーカードPC2が第2パワーカードの一例に相当する。実施例に登場したトランジスタは、電力の変換に用いられるパワートランジスタであり、制御信号を生成するTTLレベルのトランジスタとは異なることに留意されたい。
図10のタイミングチャートでは、コントローラ8は、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4を同じタイミングでオフからオンに切り換え始める。コントローラ8は、第1トランジスタT1をオフからオンに切り換え始めるのに僅かに先立って第4トランジスタT4をオフからオンに切り換え始めてもよい。
コントローラ8は、第4トランジスタT4をオンからオフに切り換え始めるのに先立って第1トランジスタT1をオンからオフに切り換え始める。図10のタイムチャートでは、コントローラ8は、時刻t20に立ち下がるオフ指令信号を第1トランジスタT1に供給し、時刻t30に立ち下がるオフ指令信号を第4トランジスタT4に供給した。時刻t20と時刻t30の差は、第1トランジスタT1のターンオフ時間と第4トランジスタT4のターンオフ時間の差に基づいて決定された。時刻t20と時刻t30の差は、第1トランジスタT1のターンオフ時間と第4トランジスタT4のターンオフ時間の差よりは大きく、第1トランジスタT1のターンオフ時間よりは短いことが好ましい。
コントローラ8は、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4に同じタイミングで立ち下がるオフ指令信号を与えてもよい。この場合、オンからオンに切り換わるときには第4トランジスタT4の高速性は享受できなくなるが、オフからオンに切り換わるときには第4トランジスタT4の高速性を享受できる。実施例のごとく、第4トランジスタT4よりも先に第1トランジスタT1をオンからオフに切り換え始めることが望ましいが、同じタイミングで第1トランジスタT1と第4トランジスタT4をオンからオフに切り換え始めても、次善の効果を得ることができる。
実施例のトランジスタへの指令信号はPWM信号であった。この場合、PWM信号のパルスの立ち下がりエッジがオフ指令信号に相当する。従って、コントローラ8は、第1トランジスタT1と第4トランジスタT4に同位相のパルス列信号を供給する。コントローラ8は、第4トランジスタT4に供給するパルス列における立ち下りタイミングよりも早いタイミングで立ち下がるパルス列の信号を第1トランジスタT1に供給する。トランジスタへの指令信号はPWM以外の信号であってもよい。
実施例では、スイッチング素子としてコレクタからエミッタに向けて一方向にのみ電流を通すトランジスタを用いた。それゆえ、各トランジスタには還流ダイオードが逆並列に接続されている。コンバータとインバータのスイッチング素子として、例えば電界効果トランジスタのような、双方向に電流を流すことのできるデバイスを採用してもよい。その場合、還流ダイオードは無くてもよい。
実施例は電気自動車の電動機制御装置を例に本発明を説明した。本明細書が開示する電動機制御装置は、電気自動車に搭載される電動機制御装置以外の電動機制御装置に適用することも好適である。例えば、本明細書が開示する電動機制御装置は、ロボットに適用されてもよい。特に、ロボットの関節を駆動するモータのための制御装置に適用するとよい。関節駆動のモータも大出力であるため、電動機制御装置が備えるスイッチング素子は大きなサージ電流を発生するからである。また、例えば移動ロボットは、搭載したバッテリでモータを駆動する。移動ロボットでは、エネルギ効率の観点から電動機制御装置は小型であることが望ましい。また、移動ロボットも、スイッチング素子が短絡故障を生じてもモータ駆動を継続できることが望ましい。本明細書が開示する電動機制御装置は、短絡対策用のデバイスを空間効率よく組み込んでいるので移動ロボットに好適である。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。