図面を参照して実施例の電力変換装置を説明する。実施例の電力変換装置は、電気自動車に搭載されている。図1に実施例の電力変換装置2を含む電気自動車100の電力系のブロック図を示す。電力変換装置2は、バッテリ81の直流電力を、走行用モータ83a、83bを駆動する交流電力に変換するデバイスである。電気自動車100は、2個の走行用モータ83a、83bを備える。それゆえ、電力変換装置2は、2組のインバータ回路13a、13bを備える。なお、2個のモータ83a、83bの出力は、ギアボックス85で合成されて車軸86(即ち駆動輪)へと伝達される。
電力変換装置2は、バッテリ81の電圧を昇圧する電圧コンバータ回路12と、昇圧後の直流電力を交流に変換する2組のインバータ回路13a、13bを備えている。
電圧コンバータ回路12は、一方の端子に印加された電圧を昇圧して他方の端子に出力する昇圧動作と、他方の端子に印加された電圧を降圧して一方の端子に出力する降圧動作の双方を行うことが可能である。そのような電圧コンバータ回路は、双方向DC−DCコンバータ回路と称される。説明の便宜上、以下では、低電圧側(バッテリ側)の端子を入力端18と称し、高電圧側(インバータ回路側)の端子を出力端19と称する。また、入力端18の正極と負極を夫々、入力正極端18aと入力負極端18bと称する。出力端19の正極と負極を夫々、出力正極端19aと出力負極端19bと称する。「入力端18」、「出力端19」との表記は説明の便宜を図るためのものであり、先に述べたように、電圧コンバータ回路12は双方向DC−DCコンバータであるので、出力端19から入力端18へ電力が流れる場合がある。
電圧コンバータ回路12は、4個のトランジスタ6a、6b、7a、7b、リアクトル4、フィルタコンデンサ3、各トランジスタに逆並列に接続されているダイオードで構成されている。2個のトランジスタ6a、7aは直列に接続されており、残りの2個のトランジスタ6b、7bも直列に接続されている。前述したように、2個のトランジスタが直列に接続された回路を単に「直列接続」と称する場合がある。また、以下では、直列接続の高電位側のトランジスタ6a、6bを上アームトランジスタと称し、低電位側のトランジスタ7a、7bを下アームトランジスタと称することがある。
2組の直列接続は並列に接続されている。2組の直列接続の高電位側は出力正極端19aに接続されており、低電位側は出力負極端19bに接続されている。リアクトル4は、一端が入力正極端18aに接続されており、他端は、2組の直列接続のそれぞれの中点Qa、Qbに接続されている。フィルタコンデンサ3は、入力正極端18aと入力負極端18bの間に接続されている。入力負極端18bは、出力負極端19bと直接に接続されている。
4個のトランジスタ6a、6b、7a、7bは、後述する回路基板に実装された駆動回路で駆動される。駆動回路は、2個の上アームトランジスタ6a、6bに対して、同じタイミングでオンオフさせる上アームスイッチング指令信号を供給する。また、駆動回路は、2個の下アームトランジスタ7a、7bに対して、同じタイミングでオンオフさせる下アームスイッチング指令信号を供給する。即ち、2個の上アームトランジスタ6a、6bは同じタイミングで同じ動作をするように駆動され、2個の下アームトランジスタ7a、7bも同じタイミングで同じ動作をするように駆動される。前述したように、同じタイミングで同じ動作をすることを並列動作と称する。並列に接続された2組の直列接続を並列動作させることで、2組の直列接続はあたかも一つの直列接続のように動作するとともに、トランジスタの負荷を低減することができる。
先に述べたように、電圧コンバータ回路12は、昇圧動作と降圧動作の双方を行うことができる。下アームトランジスタ7a、7bが昇圧動作に関与し、上アームトランジスタ6a、6bが降圧動作に関与する。
図1において、符号8aが示す破線矩形の範囲の回路が、後述する半導体モジュール8aにて実現される。符号8bが示す破線矩形の範囲の回路が、後述する半導体モジュール8bにて実現される。半導体モジュールは、2個のトランジスタの直列接続と、各トランジスタに逆並列に接続されているダイオードを収容したパッケージである。半導体モジュール8aは、2個のトランジスタ6a、7aの直列接続と、各トランジスタに逆並列に接続されたダイオードを収容している。半導体モジュール8bは、2個のトランジスタ6b、7bの直列接続と、各トランジスタに逆並列に接続されたダイオードを収容している。
図2に、半導体モジュールの斜視図を示す。後述するようにインバータ回路13a、13bの各々も、半導体モジュール8a、8bと同様の複数の半導体モジュールを備えている。以下では、複数の半導体モジュールのいずれかひとつを区別なく示すときには「半導体モジュール8」と称する。半導体モジュール8は、樹脂製の本体9の内部に2個の半導体チップ21a、21bを収容している。半導体チップ21a、21bは、夫々、トランジスタとダイオードの逆並列回路を実現している。半導体チップ21aと半導体チップ21bは直列に接続されている。この直列接続により、図1の符号8a、8bが示す回路が実現される。別言すれば、半導体モジュール8は、トランジスタとダイオードが逆並列に接続された2組の回路の直列接続を収容している。半導体モジュール8の本体9の一側面9aから3個のパワー端子が延びており、反対側の側面9bから制御端子25が延びている。3個のパワー端子は、2個のトランジスタの直列接続の高電位側の端子、低電位側の端子、中点の端子である。以下では、高電位側の端子を正極端子22と称し、低電位側の端子を負極端子23と称する。また、2個のトランジスタの直列接続の中点と導通している端子を中点端子24と称する。制御端子25は複数であり、半導体モジュール8に収容されているトランジスタのゲートと導通している信号線や、トランジスタを流れる電流を計測するセンサの信号線、及び、半導体チップ21a、21bの温度を計測するセンサの信号線などが含まれる。
図1に戻り、インバータ回路13a、13bについて概説する。なお、図1では、インバータ回路13a、13bの具体的な回路構成の図示は省略しており、半導体モジュール8c−8h(後述)を破線矩形で模式的に表すだけにとどめている。半導体モジュール8c−8hの各々が、一つの直列接続に対応する。
インバータ回路13aは、2個のトランジスタの直列接続を3組備えている。各トランジスタにはダイオードが逆並列に接続されている。従ってより詳しくは、インバータ回路13aは、トランジスタとダイオードが逆並列に接続された回路2個の直列接続を3組備えている。半導体モジュール8c、8d、8eが3組の直列接続に対応する。それゆえ、以下では、半導体モジュール8c−8eを用いてインバータ回路13aを説明する。3個の半導体モジュール8c−8eは並列に接続されている。3個の半導体モジュール8c−8eの高電位側(図2の正極端子22)と低電位側(図2の負極端子23)は、夫々、電圧コンバータ回路12の出力正極端19aと出力負極端19bに接続されている。夫々の半導体モジュールの中点端子24(図2参照)から交流が出力される。
インバータ回路13bはインバータ回路13aと同じ構成を備えている。即ちインバータ回路13bは、3個の半導体モジュール8f、8g、8hを備えており、夫々の中点端子から交流が出力される。インバータ回路13a、13bの夫々の交流出力は、モータ83a、83bに供給される。なお、出力正極端19aと出力負極端19bの間には、平滑コンデンサ5が接続されている。インバータ回路13a、13bの半導体モジュール8c−8hは、電圧コンバータ回路12の半導体モジュール8a、8bと同じ構造(即ち、図2に示した構造)を有している。
インバータ回路13a、13bの合計6個の半導体モジュール8c−8hは、全て、電圧コンバータ回路12の出力正極端19aと出力負極端19bに並列に接続されている。電圧コンバータ回路12の2個の半導体モジュール8a、8bも、出力正極端19aと出力負極端19bに接続されている。即ち、電力変換装置2が備える8個の半導体モジュール8a−8hは、それらの正極端子22が互いに接続されるとともに、それらの負極端子23も互いに接続される。
2個の半導体モジュール8を使って実現される電圧コンバータ回路12の説明を補足する。2個の半導体モジュール8の間はバスバと呼ばれる金属部材で接続される。バスバは、寄生インダクタンスを有する。すなわち、図1において、2個のトランジスタ6a、7aの直列接続の中点Qaと、2個のトランジスタ6b、7bの直列接続の中点Qbをつなぐ導電区間Pabに寄生インダクタンスが存在する。トランジスタのスイッチング動作に伴って発生するサージ電圧はインダクタンスに比例して大きくなる。2個の半導体モジュール8a、8bは、あたかも一つの直列接続のように機能するが、導電区間Pabの寄生インダクタンスによるサージ電圧の増大は、一つの直列接続では生じない課題である。すなわち、導電区間Pabの寄生インダクタンスによるサージ電圧の増大は、一つの直列接続の機能を2個の半導体モジュール8a、8bで並列化したことに伴って生じる課題である。電力変換装置2は、2個の半導体モジュール8a、8bの中点端子24の間の寄生インダクタンスを低減する構造を備えている。
中点端子24の間のインダクタンスを低減する構造を説明する前に、図3、図4を参照して、電力変換装置2の全体のハードウエア構成を説明する。図3は、電力変換装置2の平面図である。図3は、カバーを外した電力変換装置2の平面図であり、ケース40の内部に収容された部品のレイアウトが示されている。図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図を示している。ケース40の中には、フィルタコンデンサユニット103、リアクトルユニット104、積層ユニット10、平滑コンデンサユニット105、回路基板50(図4にのみ表示)などが収容されている。
フィルタコンデンサユニット103の中に、図1で示したフィルタコンデンサ3に相当するコンデンサ素子が収容されている。リアクトルユニット104の中に、図1で示したリアクトル4に相当するリアクトルデバイスが収容されている。平滑コンデンサユニット105の中に、図1で説明した平滑コンデンサ5に相当するコンデンサ素子105a(図4参照)が収容されている。フィルタコンデンサ3、平滑コンデンサ5、リアクトル4には大電流が流れるため、それらに対応するハードウエアは体格が大きい。
平滑コンデンサユニット105に隣接して積層ユニット10が配置されている。積層ユニット10は、半導体モジュール8と冷却器44が交互に並ぶように、複数の半導体モジュール8と複数の冷却器44が積層されたユニットである。図3では右端の2個の冷却器だけに符号44を付しており、残りの冷却器の符号は省略している。また、図3では、左端の半導体モジュール8aと右端の半導体モジュール8hにのみ、正極端子、負極端子、中点端子を示す符号22、23、24を付しており、他の半導体モジュールにはそれらの符号を省略した。
積層ユニット10に積層されている各半導体モジュール8(8a−8h)の構造は、図2を参照して先に説明した通りである。積層ユニット10は、ケース40に設けられた支持壁43と、2本の支持柱45の間に挿入されている。図示を省略しているが、支持柱45と積層ユニット10の間には板バネが挿入されており、その板バネにより、積層ユニット10はその積層方向に加圧されつつ、ケース40に支持されている。積層方向の加圧によって半導体モジュール8と冷却器44の密着性が高まり、冷却性能が向上する。また、積層ユニット10の一端には冷媒供給管41と冷媒排出管42が接続されており、それらの管はケース40を貫通している。冷媒供給管41から供給された冷媒は各冷却器44に分配される。冷媒は各冷却器44の内部を通過する間に隣接する半導体モジュール8から熱を吸収する。冷却器44を通過した冷媒は、冷媒排出管42を通じて電力変換装置2の外へと排出される。
図1の回路図を参照して説明したように、全ての半導体モジュール8の高電位側(正極端子22)が互いに接続されるとともに、低電位側(負極端子23)が互いに接続される。そして、全ての半導体モジュール8の高電位側(正極端子22)と低電位側(負極端子23)の間に平滑コンデンサ5(平滑コンデンサユニット105)が並列に接続される。全ての半導体モジュール8の正極端子22は、正極バスバ31によって相互に接続されるとともに、平滑コンデンサユニット105の一方の電極に接続される。全ての半導体モジュール8の負極端子23は負極バスバ32によって相互に接続されるとともに、平滑コンデンサユニット105の他方の電極に接続される。なお、バスバとは、小さい内部抵抗で電力を伝える金属板(又は金属棒)を意味する。
半導体モジュール8c−8hはインバータ回路に用いられ、それらの中点端子24から交流が出力される。半導体モジュール8c−8hの中点端子24は、出力用バスバ33に接続されており、出力用バスバ33の一端は、電力変換装置2の出力端子46を構成している。
図1の回路図を参照して説明したように、半導体モジュール8a、8bは並列に接続され、電圧コンバータ回路12で用いられる。半導体モジュール8a、8bの正極端子22は正極バスバ31によって相互に接続されるとともに、他の半導体モジュール8c−8hと同様に平滑コンデンサユニット105の一方の電極に接続される。半導体モジュール8a、8bの負極端子23は、負極バスバ32によって相互に接続されるとともに、他の半導体モジュール8c−8hと同様に平滑コンデンサユニット105の他方の電極に接続される。
半導体モジュール8a、8bの中点端子24は、中点接続バスバ34によって相互に接続されるとともに、リアクトルユニット104の一方の端子に接続される。こうして、半導体モジュール8a、8bの正極端子22同士、負極端子23同士、中点端子24同士が接続される。リアクトルユニット104の他方の端子は、バスバ35により、フィルタコンデンサユニット103の一方の電極に接続される。バスバ35の一方の端は、電力変換装置2の入力端47(正極端)を構成している。フィルタコンデンサユニット103の他方の電極にはバスバ36が接続されており、そのバスバ36に一方の端が、入力端47(負極端)を構成している。
図4に示されているように、積層ユニット10の下方に回路基板50が配置されている。回路基板50には、全ての半導体モジュール8の制御端子25が接続されている。回路基板50には、各半導体モジュール8に収容されているトランジスタを駆動する駆動回路51が実装されている。なお、先に述べたように、半導体モジュール8a、8bに収容されている上アームトランジスタ6aと6bは、同じタイミングでオンとオフが切り換えられる。同様に半導体モジュール8a、8bに収容されている下アームトランジスタ7a、7bも同じタイミングでオンとオフが切り換えられる。回路基板に実装されている駆動回路51が、半導体モジュール8a、8bに収容されているトランジスタに、それらを駆動する指令信号を供給する。より具体的には、駆動回路51は、2個の半導体モジュール8a、8bの各々の上アームトランジスタ6a、6bに対して同じタイミングでオンオフさせる高電位側スイッチング指令信号を供給するとともに、各々の下アームトランジスタ7a、7bに対して同じタイミングでオンオフさせる低電位側スイッチング指令信号を供給する。なお、駆動回路51は、他の半導体モジュール8c−8hに収容されているトランジスタに対しても指令信号を供給する。
2個の半導体モジュール8a、8bの中点端子同士を接続している中点接続バスバ34について説明する。図5は、中点接続バスバ34とその周辺を拡大した斜視図である。図6は、中点接続バスバ34と2個の中点端子24の位置関係を示す図である。図6(A)は平面図であり、図6(B)は、図6(A)のBB線における断面を示しており、図6(C)は図6(A)のCC線における断面を示している。図6では、半導体モジュール8a、8bの一部を仮想線で示してある。また、図5では、中点端子24a、24b以外のパワー端子に接続されているバスバは図示を省略している。なお、説明の便宜上、図5及び図6では、半導体モジュール8aの中点端子を符号24aで表し、半導体モジュール8bの中点端子を符号24bで表す。なお、中点端子24a、24bの一方を区別なく示すときには、中点端子24と称する。
先に述べたように、中点接続バスバ34は、半導体モジュール8a、8bの中点端子24同士を相互に接続するとともに、それらの中点端子24をリアクトルユニット104の一方の端子に接続する。中点接続バスバ34の中点端子側の先端は、3個の枝部34a、34b、34cに枝分かれしている。説明の便宜上、3個の枝部34a−34cがつながっている部分を共通の基部34d、あるいは、単に基部34dと称する。3個の枝部34a、34b、34cは、共通の基部34dから平行に延びている。先に述べたように、バスバは、細長金属板で作られており、3個の枝部34a−34cの夫々も板状である。図5に示されているように、半導体モジュール8a、8bの中点端子24a、24bも平板状である。2個の中点端子24a、24bは平行に延びている。別言すれば、2個の中点端子24a、24bは、幅広面が対向するように並んでいる。平行に延びている3個の枝部34a−34cのうち、一方の側の枝部34aは一方の中点端子24aと接続されており、他方の側の枝部34bは他方の中点端子24bと接続されている。中点端子24と中点接続バスバ34(枝部34a、34b)は、溶接により接続されている。
3個の枝部34a−34cのうち、中央の枝部34cは、中点端子24a、24bの各々から距離を隔てつつ、幅広面が2個の中点端子24a、24bの間に拡がるように、2個の中点端子24a、24bの間に延びている。即ち、中央の枝部34cは、直接には中点端子24a、24bのいずれにも触れていない。図中の座標系を用いて表現すれば以下の通りである。半導体モジュール8a、8bは、図中座標系のX方向に並んでおり、中点端子24a、24bは、Z方向に延びている。中点接続バスバ34の先端の3個枝部34a−34cはY方向に延びており、中央の枝部34cは、その幅広面がXY平面に広がるように、2個の中点端子24a、24bの間に延びている。
図6(A)に示すように、中央の枝部34cは、その幅広面を平面視したときに、両側の枝部34a、34bと、基部34dで3方を囲まれる。一方の枝部34aは中点端子24aと接続されており、他方の枝部34bは他方の中点端子24bと接続されている。先に述べたように中央の枝部34cは中点端子24a、24bのいずれとも接触はしていないが、基部34dを通じて中点端子24a、24bと同電位となっている。先に述べたように、半導体モジュール8a、8bは並列動作する。従って理想的には、中点接続バスバ34を介して一方の半導体モジュール8a(8b)から他方の半導体モジュール8b(8a)へは電流が流れない。しかし、現実の半導体モジュールには固体差に起因した固有の抵抗値があるため、中点接続バスバ34を介して一方の半導体モジュール8a(8b)から他方の半導体モジュール8b(8a)へと電流が流れ得る。例えば、図6(A)に示すように、半導体モジュール8aの中点端子24aから半導体モジュール8bの中点端子24bへと電流が流れる場合、中点端子24a、枝部34a、基部34d、枝部34b、中点端子24bの順に電流が流れる。即ち、図6(A)にて符号Iabの矢印が示すように、中点端子間を流れる電流は、中央の枝部34cの幅広面を平面視したときに枝部34cを囲むように流れる。その電流に起因して枝部34cには渦電流が発生する。図6(A)において符号Iedが示す矢印線が渦電流を示している。渦電流Iedは、中点端子24aから中点端子24bへ流れる電流Iabに起因して発生する磁束を抑える方向に流れる。磁束の抑制は、すなわち、枝部34a、基部34d、枝部34bで構成される中点端子間の導電経路のインダクタンスが低減されることを意味する。即ち、2個の中点端子24a、24bの間に延びる枝部34cは、中点端子24a、24b同士をつなぐ導電経路のインダクタンスを低減する。その結果、2個の半導体モジュール8a、8bのトランジスタのスイッチング動作に起因するサージ電圧が、中点端子をつなぐバスバの寄生インダクタンスによって増大することが抑制される。
図7―図9を参照して、実施例の中点接続バスバ34の枝部の構造と、その変形例と、参考例を説明する。図7(A)は、実施例の中点接続バスバ34の先端付近の展開図であり、図7(B)は中点接続バスバ34の先端付近の斜視図である。図8(A)は、変形例の中点接続バスバ134の先端付近の展開図であり、図8(B)は中点接続バスバ134の先端付近の斜視図である。図9(A)は、参考例の中点接続バスバ234の先端付近の展開図であり、図9(B)は中点接続バスバ234の先端付近の斜視図である。先に述べたように、中点接続バスバ34(134、234)の枝部がつながっている共通部分を基部34d(134d、234d)と称する。
図7(A)に示すように、折り曲げ前の中点接続バスバ34では、中点接続バスバ34の先端の基部34dから3方に枝部34a−34cが延びている。3個の枝部34a−34cは、基部34dから同じ方向に直角に曲げられ、3個の枝部34a−34cが平行になる。そうして、図7(B)に示す形状が得られる。
図8(A)に示すように、変形例の中点接続バスバ134は、バスバ本体の先端がT字形状を成しており、その横棒部分に相当する基部134dから3個の枝部134a−134cが平行に延びている。変形例の中点接続バスバ134は、基部134dの両端を同じ方向に折り曲げることで、図8(B)に示す形状が得られる。
図9(A)に示すように、参考例の中点接続バスバ234は、バスバ本体の先端がL字に屈曲しており、そのL字の横棒部分に相当する基部234dから3個の枝部234a−234cが平行に延びている。基部234dの2か所を直角に折り曲げることで、図9(B)に示す形状が得られる。図8の中点接続バスバ134と図9の中点接続バスバ234は、3個の枝部134a−134c(234a−234c)と基部134d(234d)の幾何学的関係が同じであり、基部134d(234d)に対するそれ以外のバスバ部分の接続箇所が相違する。
図7、図8のいずれの中点接続バスバ34(134)も、先端が、基部から平行に延びる3個の枝部に枝分かれしており、中央の枝部34c(134c)は、幅広面が両側の枝部の間に拡がるように延びている。平板状の中央の枝部34c(134c)を平面視したときに、両側の枝部34aと34b(134aと134b)と基部34d(134d)が中央の枝部34c(134c)の三方を囲んでいる。中点接続バスバ34(134)を2個の半導体モジュール8a、8bの中点端子24a、24bに接続すると、一方の中点端子24a(24b)から他方の中点端子24b(24a)に電流が流れるときに中央の枝部34c(134c)に渦電流が発生し、中点端子24a、24bの間のバスバの寄生インダクタンスが低減される。
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例のトランジスタ6a、7a(6b、7b)が2個のスイッチング素子の一例に相当する。実施例の電力変換装置2では、電圧コンバータ回路において2個の半導体モジュールを並列に接続し、それらを並列動作させる。本明細書が開示する技術は、インバータの一相を生成する直流接続を2個の半導体モジュールで並列化した構成にも適用することができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。