JP6408344B2 - Iii族窒化物半導体エピタキシャル基板およびその製造方法、ならびにiii族窒化物半導体発光素子 - Google Patents

Iii族窒化物半導体エピタキシャル基板およびその製造方法、ならびにiii族窒化物半導体発光素子 Download PDF

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Description

本発明は、III族窒化物半導体エピタキシャル基板およびその製造方法に関し、特に、III族窒化物半導体発光素子の作製に供した際に、優れた発光特性および発光寿命特性を両立することが可能なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板に関するものである。また、本発明は、上記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を用いたIII族窒化物半導体発光素子に関する。
従来、Al、Ga、In等とNとの化合物からなるIII族窒化物半導体は、紫外光発光素子の材料として用いられている。中でも、Al組成比が50%以上のAlGaNからなるIII族窒化物半導体は、発光波長300nm以下の深紫外光発光素子(DUV−LED)の活性層(「発光層」とも称される。)として用いられている。
III族窒化物半導体は、高融点で窒素の乖離圧が高く、バルク単結晶成長が困難であり、異種のサファイア基板上にエピタキシャル成長させることによりIII族窒化物半導体層を形成することが通常である。
一般に、III族窒化物半導体層の結晶性が優れるほど、発光特性に優れたIII族窒化物半導体発光素子を作製することができる。しかし、このように形成されるIII族窒化物半導体層を有するエピタキシャル基板においては、サファイア基板とIII族窒化物半導体層との間に格子不整合が存在し、結晶性悪化の一因となっている。こうした格子不整合に起因する格子歪みを緩和するために、サファイア基板上にバッファとして機能させるためのAlN層をエピタキシャル成長させたAlNテンプレート基板が下地基板として用いられるようになってきた。近年、AlNテンプレート基板上に形成される活性層としてのIII族窒化物半導体層の結晶性および発光特性を改善するための種々の試みがなされている。
例えば、特許文献1では、III族窒化物半導体エピタキシャル基板を構成するサファイア単結晶基材の主面の結晶方位がc軸方向より0.02〜0.3度傾斜させたサファイア単結晶基材、すなわちオフ角が0.02〜0.3度のC面サファイア単結晶基材を用いることにより、その主面側に形成されるAl含有のIII族窒化物下地膜の結晶性を向上することができる。一方、C面サファイア単結晶基材のオフ角が0.3度を超えると、Al含有のIII族窒化物下地膜の結晶性が劣化する、というものである。特許文献1に記載されているように、これまでサファイア基板のオフ角としては、0.3度以下の小オフ角が好ましいと考えられてきた。
一方、特許文献2には、サファイア(0001)基板と、前記基板の(0001)面上に形成されたAlN層を含む下地構造部、及び、前記下地構造部の結晶表面上に形成された、n型AlGaN系半導体層のn型クラッド層と、AlGaN系半導体層を有する活性層と、p型AlGaN系半導体層のp型クラッド層を含む発光素子構造部を備えてなり、前記基板の(0001)面が0.6度以上3.0度以下のオフ角で傾斜し、前記n型クラッド層のAlNモル分率が50%以上である窒化物半導体紫外線発光素子が開示されている。
特許文献2によると、活性層からの発光波長が短い場合、サファイア基板のオフ角を、例えば特許文献1で用いられているオフ角範囲よりも大きく、すなわち0.6度以上3.0度以下とすることにより、活性層の発光特性を向上させることができる。なお、特許文献2に開示されているAlN層は、約1150〜1300℃の一般的な成長温度で結晶成長されたものである。
また、特許文献3には、主面に所定のオフ角が与えられてなる基材と、前記主面上にエピタキシャル形成された第1のIII族窒化物結晶からなる上部層と、を備え、前記上部層の形成温度よりも高い加熱温度で加熱処理されてなるエピタキシャル基板が記載されている。
特許文献3によると、上部層の形成温度よりも高い加熱温度で加熱処理することにより、上部層の結晶品質が向上され、このエピタキシャル基板を、III族窒化物結晶層の成長用下地基板として用いると、表面近傍の大部分が低転位領域となるIII族窒化物結晶層が得られる。
特開2004−142953号公報 国際公開第2013/021464号 特開2006−319107号公報
特許文献2では、約1150〜1300℃の一般的な成長温度で結晶成長させたAlN層を有するAlNテンプレート基板を用いる場合、オフ角を0.6度以上3.0度以下の高オフ角とすることにより、深紫外光を発光する活性層の発光特性を改善することができることを提案しているに留まる。特許文献3に提案されているように、AlNテンプレート基板のAlN層を成長温度よりも高温で加熱処理して低転移領域とした場合であっても、上記オフ角により、活性層の発光特性を改善できるか否かについては何ら考慮されていない。
本発明者は、AlNテンプレート基板のAlN層に対して熱処理を施してAlN層の結晶性を改善した場合の、その上に形成した窒化物半導体層からなる活性層の発光特性を良好とするためのオフ角について検討した。本発明者の実験結果によると、上記AlN層に熱処理を施して結晶性を改善した場合、特許文献1および特許文献2にそれぞれ開示されている0.3度未満の小オフ角および0.6度以上3.0度未満の高オフ角のいずれでもなく、0.46度〜0.54度の範囲の中程度のオフ角のサファイア基板を用いて作製したIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を用いた場合に、優れた発光特性が得られることがわかった。
ところが、本発明者がこのように発光特性を改善することのできるIII族窒化物半導体エピタキシャル基板についてより詳細に検討したところ、発光出力を増加することができても、発光素子としての寿命が短くなってしまう場合があることが新たに判明した。
そこで、本発明の目的は、III族窒化物半導体発光素子の作製に供した際に、優れた発光特性および発光寿命特性を両立することが可能なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびその製造方法を提供することを目的とする。また、かかるIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を用いたIII族窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決する方途について鋭意検討した。例えば特開2002−124702号公報に記載されているように、III族窒化物系半導体発光素子において、結晶性を高める観点からすると、素子構造を構成するIII族窒化物半導体層のa軸歪みは、圧縮方向に小さいことが好ましいと通常考えられる。ここで、a軸が圧縮を立体的に受ければ、c軸は引張を受けることとなる。そのため、III族窒化物半導体層のa軸歪みが圧縮方向に小さいことが好ましいとは、III族窒化物半導体層のc軸歪みが引張方向に小さいことが好ましいと同義である。ところが、優れた発光特性および発光寿命特性を両立するためには、III族窒化物半導体発光素子を作製したときに、発光素子構造を構成するIII族窒化物半導体層の、圧縮方向のa軸歪み(換言すれば、引張方向のc軸歪み)を小さくするどころか、むしろ大きくする必要があることを本発明者らは知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)サファイア基板と、該サファイア基板の主面上に形成されたAlN層と、該AlN層上に形成された、少なくともAlを含むIII族窒化物積層体と、を有するIII族窒化物半導体エピタキシャル基板であって、前記III族窒化物積層体は、Al組成の異なる第1の層と第2の層とをこの順に有し、前記第1の層のAl組成比xが、前記第2の層のAl組成比yよりも大きく、前記サファイア基板の主面は、C面が0.46度以上0.54度以下のオフ角で傾斜した面であり、前記AlN層の(10−12)面のX線ロッキングカーブの半値幅が400秒以下であり、前記第2の層の(0002)面の2θ−ωスキャンX線回折ピークにより算出されるc軸歪み量が引張方向に0.66%以上であることを特徴とするIII族窒化物半導体エピタキシャル基板。
(2)前記第1の層がアンドープ層であり、前記第2の層が不純物ドープ層である上記(1)に記載のIII族窒化物半導体エピタキシャル基板。
(3)前記第1の層はAlxGa1-xN(0.6≦x<1)からなる、上記(1)または(2)に記載のIII族窒化物半導体エピタキシャル基板。
(4)前記第2の層はAlyGa1-yN(0.5≦y<x)からなる、上記(2)または上記(3)に記載のIII族窒化物半導体エピタキシャル基板。
(5)上記(2)〜(4)いずれかに記載のIII族窒化物半導体エピタキシャル基板と、該III族窒化物半導体エピタキシャル基板上に、発光層と、前記第2の層とは異なる伝導型の半導体層とをこの順に有するIII族窒化物半導体発光素子。
(6)前記発光層のピーク発光波長が300nm以下である、上記(5)に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
(7)C面が0.46度以上0.54度以下のオフ角で傾斜したサファイア基板の主面上に、AlN層をエピタキシャル成長させる第1工程と、前記AlN層を、前記第1工程における成長温度よりも高温で熱処理する第2工程と、該第2工程の後、前記AlN層上に、少なくともAlを含む、第1の層および第2の層をこの順に有するIII族窒化物積層体を形成する第3工程と、を含み、前記第3工程において、前記第2の層のAl組成比yを、前記第1の層のAl組成比xよりも小さくし、前記第2の層の(0002)面の2θ−ωスキャンX線回折ピークにより算出されるc軸歪み量を、引張方向に0.66%以上とすることを特徴とするIII族窒化物半導体エピタキシャル基板の製造方法。
本発明によれば、サファイア基板のオフ角と、III族窒化物積層体のサファイア基板反対側の第2の層のc軸歪み量と、を適切に制御したので、III族窒化物半導体発光素子の作製に供した際に、優れた発光特性および発光寿命特性を両立することが可能なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびその製造方法を提供することができる。また、かかるIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を用いたIII族窒化物半導体発光素子を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板の製造方法を説明するフローチャートである。 本発明の一実施形態に係るサファイア基板表面のオフ角を説明する模式図である。 サファイア単結晶の結晶構造を説明する模式図である。 (A)は、X線回折による2θ−ωスキャンを説明する模式図であり、(B)は、2θの角度と、c軸方向の歪みを説明する模式図である。 本発明の別の実施形態に係るIII族窒化物半導体発光素子を説明する模式図である。 参考実験例におけるIII族窒化物半導体発光素子の発光特性を示すグラフである。 実施例1および比較例1,2に係るIII族窒化物半導体発光素子の500時間経過後の残存光量を示すグラフである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、説明を省略する。また、図1,2および図5において、説明の便宜上、サファイア基板10および各層の縦横の比率を実際の比率から誇張して図示している。また、図の簡略化のため、図1および図5ではサファイア基板10のオフ角θを図示せず、代わりに図2にオフ角θを説明するための拡大模式図を示す。
(III族窒化物半導体エピタキシャル基板)
本発明の一実施形態に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1は、図1(E)に示すように、サファイア基板10と、サファイア基板10の主面上に形成されたAlN層20と、AlN層20上に形成された、少なくともAlを含むIII族窒化物積層体30とを有する。ここで、本発明の一実施形態に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1において、III族窒化物積層体30は、第1の層31および第2の層32をこの順に有し、第1の層31のAl組成比xが、第2の層32のAl組成比yよりも大きく、サファイア基板10の主面は、C面が0.46度以上0.54度以下のオフ角θで傾斜した面であり、AlN層20の(10−12)面のX線ロッキングカーブの半値幅が400秒以下であり、第2の層32の(0002)面の2θ−ωスキャンX線回折ピークにより算出されるc軸歪み量が引張方向に0.66%以上であることを特徴とする。かかる特徴を備えることにより、上記III族窒化物半導体エピタキシャル基板1をIII族窒化物半導体発光素子の作製に供した際に、優れた発光特性および発光寿命特性を両立することができる。なお、Al組成比xおよびyは、0<y<x<1の関係にある。以下、各構成の詳細を順に説明する。
本発明の一実施形態に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1において、サファイア基板10の主面は、C面が0.46度以上0.54度以下のオフ角θで傾斜した面であることが肝要である。以下、本明細書においては、C面のかかる傾斜角度を単にサファイア基板10の「オフ角θ」と称する。詳細を後述するが、オフ角θを上記範囲とすることにより、III族窒化物半導体エピタキシャル基板1をIII族窒化物半導体発光素子の作製に供した際に、優れた発光特性を得ることができるからである。なお、オフ角θを設けるための傾斜方向の結晶軸方位は、m軸方向またはa軸方向のいずれでもよい。
ここで、図2は、主面10Aの拡大模式図である。最適なテラス幅Wは、サファイア基板上に形成されるIII族窒化物半導体層のAl組成比に依存し、主面10Aにおけるステップ高さHは、テラス幅W、オフ角θおよび軸方位に応じて適宜定まる。本実施形態において、例えばテラス幅Wを100〜200nm程度とすることができ、テラス幅Wが100nmの場合、ステップ高さHは0.80〜0.94nmとなる。なお、図3は一般的なサファイア単結晶の六方晶系の結晶構造であり、サファイア単結晶のa軸,m軸およびC面を図示する。なお、オフ角θ、テラス幅Wおよびステップ高さHは、X線回折測定または原子間力顕微鏡(AFM; Atomic Force Microscope)等によって測定される。サファイア基板10の厚さおよび幅等のその他の仕様は、III族窒化物半導体エピタキシャル基板1の用途に応じて、適宜設計すればよい。
なお、上記サファイア基板は常法に従い製造されたものを用いることができる。ただし、サファイア基板10のオフ角θは、サファイア基板の製造工程上、8%程度の不可避な誤差を伴う。そのため、本発明においては、オフ角θの値から8%以内の誤差範囲内の角度は、本発明範囲に含まれるものとする。また、サファイア基板10の厚さおよび幅等のその他の仕様は、AlNテンプレート基板1の用途に応じて、適宜設計すればよい。
次に、サファイア基板10上の主面上に形成されるAlN層20について説明する。本発明においては、AlN層20の(10−12)面のX線ロッキングカーブの半値幅を400秒以下とする。サファイア基板10上のAlN層20の結晶性を良好とすることにより、その上に形成されるIII族窒化物半導体層の結晶性を高め、発光出力を増大させるためである。
なお、AlN層20の厚みは任意である。限定を意図するものではないが、例えば0.2μm以上1.0μm以下とすることができ、0.3μm以上0.7μm以下とすることもできる。なお、AlN層20の表面は、サファイア基板10のオフ角θの影響を受けるため、原子サイズレベルの微視的には不均一な厚みとなり、図2と同様に傾斜面が形成されるが、説明の簡略化のために図1および図5では図示しない。また、本明細書においては、AlN層20の層厚とは、ウエハ中心におけるAlN層20の厚み(以降、中心層厚と記載する)を指すものとする。後述の各層についても、同様に傾斜面が形成されるが、中心層厚を各層の層厚とする。なお、前述のとおり、AlN層20がサファイア基板10上に形成されたものは、AlNテンプレート基板と称される。
ここで、AlN層20上に形成される少なくともAlを含むIII族窒化物積層体30は、図1(E)に示すように、少なくとも第1の層31および第2の層32をこの順に有し、第1の層31のAl組成比xが、第2の層32のAl組成比yよりも大きいことは、既述のとおりである。Al組成比xおよびyをこのようにするのは、AlN層20との格子定数差を小さくして、窒化物半導体層の結晶性を高めるためである。また、Al組成比xがAl組成比yよりも大きいため、c面内に適度な圧縮応力を加え、ドープ層の成長中にクラックが発生することを抑制することもできる。
第1の層31および第2の層32のAl組成比をそれぞれx(0<x<1),y(0<y<1)とすると、第1の層31の組成をAlxGa1-xNと表すことができ、第2の層32の組成をAlyGa1-yNと表すことができる。なお、III族元素としてAlとGaに対して5%以内の量のInを含んでいてもよい。その場合、第1の層31のIn組成比をx′(0<x′≦0.05)かつ0<x+x′<1とすれば、第1の層31の組成をAlxInx′Ga(1-x-x′)Nと表すことができる。同様に、第2の層32のIn組成比をy′(0<y′≦0.05),0<y+y′<1とすれば、第2の層32の組成をAlyIny′Ga(1-y-y′)Nと表すことができる。
なお、III族窒化物積層体30における第1の層31および第2の層32のいずれか又は両方は、複数層または傾斜層から構成されてもよい。複数層または傾斜層とは、TEM(Transmission Electron Microscope;透過型電子顕微鏡)観察やSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry;二次イオン質量分析法)等により、Al組成比や不純物量が異なる層の積層構造やAl組成比や不純物量の傾斜が確認できるものをいう。第1の層31が複数層からなる場合は、この複数層からなる層全体を第1の層31と称し、第2の層32についても同様である。傾斜層の場合も、同様に各層全体を指す。
ここで、第1の層31をアンドープ層とすることができる。第2の層32を不純物ドープ層とすることもできる。第1の層31をアンドープ層とし、かつ、第2の層32を不純物ドープ層とすることが好ましい。なお、アンドープ層とは、MgやSi等の特定の不純物を意図的には添加していない層であり、不可避的な不純物の混入はあってよい。本発明では、電気的にp型またはn型として機能せず、キャリア密度が小さいもの(例えば5×1016/cm3以下)をアンドープ層とする。また、第2の層32が不純物ドープ層である場合、n型不純物およびp型不純物のいずれがドープされてもよく、III族窒化物半導体エピタキシャル基板1を用いて作製するIII族窒化物半導体素子の目的に応じて適宜選択すればよい。p型不純物としては、Mg,Zn,Ca,Be,Mn等を例示することができ、n型不純物としては、Si,Ge,Sn,S,O,Ti,Zr等を例示することができる。ドーパント濃度は特に限定されず、p型またはn型として機能することのできるドーパント濃度であればよく、例えば1.0×1018atoms/cm3〜1.0×1020atoms/cm3とすることができる。
ここで、本発明の一実施形態に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1において、第2の層32の(0002)面の2θ−ωスキャンX線回折ピークにより算出されるc軸歪み量を、引張方向に0.66%以上とすることが肝要である。以下、その理由を説明する。
実施例における参考実験例において実験条件の詳細を説明するが、本発明者は、AlN層20の(10−12)面のX線ロッキングカーブの半値幅が400秒以下と、通常の成長温度で形成されるサファイア基板上のAlN層の結晶性よりも優れるIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1を用いた場合の、窒化物半導体発光素子の発光特性およびオフ角依存性を検討した。その結果、発光特性を高めるためには0.6度以上3.0度以下のオフ角範囲が適切であるとする特許文献2の教示に反して、サファイア基板のオフ角を0.46度〜0.54度とすることにより、窒化物半導体発光素子の発光出力を高めることができることが、本発明者の実験により判明した(詳細を後述する図6を参照)。本発明は理論に縛られるものではないが、本発明者はこの理由を以下のように考えている。
一般的に、微傾斜面でのエピタキシャル成長では、吸着原子の拡散距離がステップ幅程度になるとステップフロー成長となり、巨視的に平坦な結晶が得られる。AlN成長においては、Al原子の拡散距離が短いため、高オフ角の方が好ましい。一方、AlN層上のAlGaN成長においては、Ga原子の拡散距離が長く、ステップ端に取り込まれやすいため、ステップ端のAl組成が低くなる。そのため、AlN成長に適した1度以上のオフ角でAlGaN成長すると、Al組成の低い領域と高い領域とが発生する。この場合、各領域の発光波長は異なるため、発光波長の半値幅が広くなってしまう。また、発光素子の発光効率の観点では組成の設計が重要であるが、組成ムラが生じることで本来の発光効率が得られにくくなる。それに対して本発明においては、良好な結晶性を有するAlN層上にAlGaN層を形成するため、基板のオフ角をAlGaN成長にとって最適な0.46度〜0.54度とすることが可能になる。5%以内の量のInを含むAlInGaN成長の場合も同様である。
そこで、本発明者は、上記オフ角のサファイア基板を用いて作製したIII族窒化物半導体発光素子の発光特性をより詳細に検討した。すると、実施例において詳細を後述するが、第2の層32の(0002)面の2θ−ωスキャンX線回折ピークにより算出されるc軸歪み量によっては、発光特性は同程度であるものの、500時間経過後の発光残量が90%未満となってしまう場合があることが判明した(後述の図7参照)。500時間経過後の発光残量が90%未満と少なければ、発光寿命が短過ぎるために、発光素子として製品化することは困難である。本発明者がより詳細に検討したところ、III族窒化物半導体エピタキシャル基板1の第2の層32の上記c軸歪み量を引張方向に0.66%以上とすることにより、III族窒化物半導体発光素子の作製に供した際に、優れた発光特性および発光寿命特性を両立することができることが判明した。
ここで、第2の層32の(0002)面の2θ−ωスキャンx線回折ピークにより算出されるc軸歪み量について説明するにあたり、まず図4(A)を用いて2θ−ωスキャンについて説明する。c面の間隔をdとし、入射角をθとすると、隣接するc面での光路差は2dsinθであり、x線の波長をλとすれば、2dsinθ=nλとなる角度で回折ピークが現れる。したがって、面間隔dが広ければ、2θは低角となり、面間隔dが狭ければ、θは高角となる。図4(B)に示すように、C面内で圧縮応力を受けると、結晶はc軸方向に伸び、C面の間隔が広がる。したがって、圧縮応力を受ければ、面間隔が拡がり、2θは低角となる。逆に、引っ張り応力を受ければ、面間隔が狭まり、2θは高角となる。ここで、第2の層32の(0002)面2θ−ωスキャンx線回折ピークから、応力を受けた後のc軸方向の格子定数(c1)を求めることができる。また、応力が無い状態の格子定数(c0)は、無ひずみ状態のAlNの格子定数が4.9792Å、GaNの格子定数が5.1855Åであることが知られている。そして、第2の層32のAl組成比より、c軸歪み量δc(単位%)はベガード則に従い一次関数で算出され、応力を受けた後のc軸方向の格子定数(c1)と応力を受けないc軸方向の格子定数(c0)との差分から、δc=(c1−c0)/c1と算出することができる。なお、a軸方向の歪み量をδaとするとδa/δcの値がAlNで−1.9、GaNで−2.6(マイナスは歪の向きが逆であることを示す)と知られており、第2の層32のAl組成比よりδa/δcの値も一次関数によって計算されるため、c軸方向の歪み量δcが決まれば、a軸方向の歪み量δaを換算することができる。
前述のとおり、III族窒化物系半導体発光素子において、結晶性を高める観点からすると、素子構造を構成するIII族窒化物半導体層のc軸歪みは、引張方向に小さいことが好ましいと通常考えられる。しかしながら、優れた発光特性および発光寿命特性を両立するためには、第2の層32の上記c軸歪み量を引張方向に0.66%以上とする必要があることが本発明者により明らかとなった。c軸歪み量をこのようにするのは、以下の理由によると推測される。すなわち、AlNテンプレートの格子定数は小さく、その上にIII族窒化物結晶層であるAlGaN層を成長すると、AlGaN層はC面内で圧縮応力を受ける。また、サファイア基板の熱膨張係数はAlGaN層よりも大きく、結晶成長温度から室温への降温時に、AlGaN層はC面内で圧縮応力を受ける。したがって、AlGaN層はc軸方向に伸びた状態となる。これに対して、AlGaN層の成長時や降温時に貫通転位、面欠陥および点欠陥など各種の欠陥が発生すると、圧縮応力が欠陥部で緩和され、c軸方向への伸びが相対的に小さくなる。上記の欠陥が存在すると、欠陥を介して電流負荷が集中したり、欠陥が拡散、伸長したりして、発光効率の低下を促進させ、寿命を低減させる。したがって、測定されるAlGaN層のc軸方向歪み量としては、引張方向に大きいことが好ましいことになる。
以上のとおり、本発明に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1は、III族窒化物半導体発光素子の作製に供した際に、優れた発光特性および発光寿命特性を両立することができる。
ここで、第1の層31の組成をAlxGa1-xN(0.6≦x<1)とすることが好ましく、第2の層32をAlyGa1-yN(0.5≦y<x)とすることがより好ましく、y<xかつ0.5≦y≦0.75とすることがさらに好ましい。かかる組成とすることで、本発明の効果を確実に得ることができる。
さらに、本発明の効果を確実に得るためには、第1の層31の層厚を、1μm以上の厚みとすることが好ましい。第1の層31の層厚が厚くなるほど、AlNテンプレートからの圧縮応力を吸収し、第2の層32が緩和しにくくなるためである。また、第1の層31の層厚を、例えば0.03〜4μmとすることができ、第2の層32の層厚を、0.5〜10μmとすることができる。
なお、第2の層32のc軸歪み量を引張方向に0.66%以上とすることにより、本発明の一実施形態に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1をIII族窒化物半導体発光素子の作製に供した際に、優れた発光特性および発光寿命特性を両立することができることは既述のとおりである。ここで、限定を意図しないものの、AlNテンプレート上にコヒーレント成長させる観点では、圧縮方向のc軸歪み量の上限を1.03%とすることができる。また、本発明の効果を確実に得るためには、引張方向のc軸歪み量を0.66〜0.89%とすることが好ましく、0.66〜0.82%とすることがより好ましく、0.66〜0.76%とすることがさらに好ましい。この場合に、下限を0.67%とすることも好ましく、0.68%とすることも好ましい。
また、AlN層の(10−12)面のX線ロッキングカーブの半値幅に関して、X線ロッキングカーブの半値幅が小さいほど結晶性に優れるため、300秒以下とすることが好ましく、200秒以下とすることがより好ましく、理想的には0秒である。なお、限定を意図しないものの、工業的な生産を考慮すると、半値幅の下限を10秒とすることができる。
(III族窒化物半導体エピタキシャル基板の製造方法)
次に、これまで説明してきた本発明に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1を製造する方法の一実施形態について説明する。図1(A)〜(E)は、本発明の一実施形態に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1の製造方法フローチャートである。図1に示すように、本発明の一実施形態に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1の製造方法は、C面が0.46度以上0.54度以下のオフ角で傾斜したサファイア基板10の主面上に、AlN層をエピタキシャル成長させる第1工程(図1(A),(B))と、AlN層20を、前記第1工程における成長温度よりも高温で熱処理する第2工程(図1(C))と、該第2工程の後、AlN層20上に、少なくともAlを含む、第1の層31および第2の層32をこの順に有するIII族窒化物積層体30を形成する第3工程(図1(E))と、を含む。ここで、第3工程において、第2の層32のAl組成比yを、第1の層31のAl組成比xよりも小さくし、第2の層32の(0002)面の2θ−ωスキャンX線回折ピークにより算出されるc軸歪み量を、引張方向に0.66%以上とする。図1(E)は、この製造方法によって得られたIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1の模式断面図である。以下、各工程の詳細を順に説明する。
<第1工程>
第1工程では、まず、図1(A)に示すように、既述のサファイア基板10を用意する。次に、図1(B)に示すように、サファイア基板10上にAlN層20をエピタキシャル成長させる。AlN層20は、例えば、有機金属気相成長(MOCVD: Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法や分子線エピタキシ(MBE: Molecular Beam Epitaxy)法、スパッタ法などの公知の薄膜成長方法により形成することができる。
なお、AlN層20の成長温度としては、1270℃以上1350℃以下が好ましく、1290℃以上1330℃以下がより好ましい。この温度範囲であれば、続く第2工程における熱処理後のAlN層20の結晶性を確実に向上することができる。また、チャンバ内の成長圧力については、限定を意図しないが、例えば5Torr〜20Torrとすることができ、より好ましくは、8Torr〜15Torrとすることができる。
また、アンモニア(NH3)ガスなどのV族元素ガスと、トリメチルアルミニウム(TMA)ガスなどのIII族元素ガスの成長ガス流量を元に計算されるIII族元素に対するV族元素のモル比(以降、V/III比と記載する)については、限定を意図しないが、V/III比を例えば130〜190の範囲とすることができ、より好ましくはV/III比を140〜180の範囲とすることができる。なお、成長温度および成長圧力に応じて最適なV/III比が存在するため、成長ガス流量を適宜設定することが好ましい。
<第2工程>
続く第2工程では、上述のようにして得られた、サファイア基板10上のAlN層20に対して、第1工程における成長温度よりも高温で熱処理を施す。この熱処理は、公知の熱処理炉を用いて行うことができる。かかる熱処理を行うことにより、AlN層の(10−12)面のX線ロッキングカーブの半値幅を400秒以下とすることができる。
第2工程においては、AlN層20の結晶性を向上させために、第1工程における成長温度よりも高温で熱処理を施せばよいが、熱処理の際の加熱温度を1580℃以上1730℃以下とすることが好ましい。これは、1580℃以上であれば、転位密度を十分に減らすことができ、1730℃以下であれば、表面のAlNの一部の分解による表面が粗れる現象を抑制することができるためである。また、熱処理温度を1600℃以上1700℃以下とすることにより、AlN層20の結晶性をより確実に向上することができる。
また、本工程における加熱時間は、3時間以上12時間以下とすることが好ましい。3時間以上の加熱処理により、転位密度を十分に減らすことができる。また、12時間以下の熱処理時間であれば、表面のAlNの一部の分解による表面が粗れる現象を抑制することができる。AlN層20の結晶性を確実に向上させるためには、熱処理時間を4時間以上10時間以下とすることがより好ましい。
さらに、熱処理を行う雰囲気としては、窒素ガス雰囲気中が好ましい。これは、ピンホールを含めたIII族窒化物の分解を抑制するために、雰囲気中に窒素元素が存在する必要があるためである。なお、窒素ガス雰囲気は、窒素ガス以外にはアルゴンなど希ガスを含んでいてもよい。AlNの蒸気圧は比較的低いため常圧でもよく、圧力は特に限定されない。
<第3工程>
続く第3工程では、AlN層20上に、第1の層31および第2の層32をこの順に有する、少なくともAlを含むIII族窒化物積層体30を形成する。すなわち、図1(D),(E)に示すように、AlN層20上にまず、第1の層31を形成し、次いで第2の層32を形成する。第2の層32のAl組成比yを、第1の層31のAl組成比xよりも小さくし、第2の層32の(0002)面の2θ−ωスキャンX線回折ピークにより算出されるc軸歪み量を引張方向に0.66%以上とする。AlN層20と同様に、第1の層31および第2の層32の形成にあたっては、常法に従いエピタキシャル成長させることができる。
なお、本第3工程において、第2の層32の(0002)面の2θ−ωスキャンX線回折ピークにより算出されるc軸歪み量を、引張方向に0.66%以上とするためには、第1の層のAl組成比xを第2の層のAl組成比yより大きくした上で、例えば、第1の層31の組成比および層厚と、第2の層32の組成比および層厚との関係を、適宜調整してもよい。他にも、各層に超格子層や組成傾斜層を導入してもよい。また、各層の成長温度および成長速度、ならびにV/III比等の成長条件を変更することにより、上記歪み量を微調整することもできる。一般的には、成長温度および成長速度のいずれかまたは両方を上げることにより歪み量を大きくすることができ、また、V/III比を下げることによっても歪み量を大きくすることができる。
以上のようにして、本発明に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1の製造方法を提供することができる。なお、上記製造方法は、本発明に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1の製造方法の一実施形態に過ぎず、他の製造方法により、本発明に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1を製造してもよいことは、もちろんである。
本発明の一実施形態に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1は、例えば発光素子、レーザーダイオード、トランジスタなど、任意の半導体素子に用いることができ、III族窒化物半導体発光素子の作製に供した際に、優れた発光特性および発光寿命特性を両立することができるため、特に好適である。図5は、本発明に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板1を用いて作製したIII族窒化物半導体発光素子100の一実施形態であるである。
(III族窒化物半導体発光素子)
すなわち、本発明の別の実施形態に係るIII族窒化物半導体発光素子100は、III族窒化物半導体エピタキシャル基板1上に活性層40と、不純物ドープ層である第2の層32とは異なる伝導型の半導体層50とをこの順に有する(図5)。
活性層40は、Al組成比の異なるAlGaNからなる障壁層41および井戸層42を含んでもよい。また、半導体層50は、AlGaNからなるブロック層51、クラッド層52およびGaN層53を含んでもよい。例えば第2の層32が、n型不純物をドープされたn型AlGaNである場合、半導体層50はp型となる。さらに、第2の層32および半導体層50には、それぞれの伝導型に対応する電極61,62が設けられていてもよい。III族窒化物半導体発光素子100の仕様に応じて、各層の組成、層厚等を適宜定めることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<参考実験例>
(参考例1)
図1に示したフローチャートに従って、参考例1に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびIII族窒化物半導体発光素子を作製した。まず、サファイア基板(直径2インチ、厚さ:430μm、面方位:(0001)、m軸方向オフ角θ:0.1度、テラス幅:100nm、ステップ高さ:0.20nm)を用意した(図1(A))。次いで、MOCVD法により、上記サファイア基板上に中心膜厚0.60μm(平均膜厚0.61μm)のAlN層を成長させ、AlNテンプレート基板とした(図1(B))。その際、AlN層の成長温度は1300℃、チャンバ内の成長圧力は10Torrであり、V/III比が163となるようにアンモニアガスとTMAガスの成長ガス流量を設定した。V族元素ガス(NH3)の流量は200sccm、III族元素ガス(TMA)の流量は53sccmである。なお、AlN層の膜厚については、光干渉式膜厚測定機(ナノスペックM6100A;ナノメトリックス社製)を用いて、ウエハ面内の中心を含む、等間隔に分散させた計25箇所の膜厚を測定した。
次いで、上記AlNテンプレート基板を熱処理炉に導入し、10Paまで減圧後に窒素ガスを常圧までパージすることにより炉内を窒素ガス雰囲気とした後に、炉内の温度を昇温してAlNテンプレート基板に対して熱処理を施した(図1(C))。その際、加熱温度は1650℃、加熱時間は4時間とした。
次いで、MOCVD法により、第1の層として、Al0.7Ga0.3Nからなる層厚1μmのアンドープAl0.7Ga0.3N層(以下、「アンドープ層」とする。)を形成した。次に、第1の層上に第2の層として、Al0.62Ga0.38Nからなり、Siドープした層厚2μmのn型Al0.62Ga0.38N層(以下、n型層とする。)を上記AlN層上に形成し、参考例1に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製した(図1(D),(E))。なお、SIMS分析の結果、n型層のSi濃度は1.0×19atoms/cm3である。
さらに、上記参考例1に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を用いて、III族窒化物半導体発光素子を作製した。具体的には、まず、n型層上に、Al0.55Ga0.45Nからなる層厚12nmの障壁層およびAl0.45Ga0.55Nからなる層厚3nmの井戸層を交互に3組繰り返して積層した活性層を形成した。
その後、活性層上に、Al0.68Ga0.32Nからなり、Mgドープした層厚40nmのp型ブロック層、Al0.4Ga0.6Nからなり、Mgドープした層厚50nmのp型クラッド層およびGaNからなり、Mgドープした層厚180nmのp型GaN層を順に形成し、参考例1に係るIII族窒化物半導体発光素子を作製した。なお、SIMS分析の結果、Mgのドーパント濃度は、この順にそれぞれ1.0×1018atoms/cm3、5.0×1018atoms/cm3、2.0×1019atoms/cm3である。
(参考例2)
参考例1におけるサファイア基板のオフ角を0.35度に変えた以外は、参考例1と同じ条件で、参考例2に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびIII族窒化物半導体発光素子を作製した。
(参考例3)
参考例1におけるサファイア基板のオフ角を0.5度に変えた以外は、参考例1と同じ条件で、参考例3に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびIII族窒化物半導体発光素子を作製した。
(参考例4)
参考例1におけるサファイア基板のオフ角を1度に変えた以外は、参考例1と同じ条件で、参考例4に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびIII族窒化物半導体発光素子を作製した。
(参考例5)
参考例1におけるサファイア基板のオフ角を2度に変えた以外は、参考例1と同じ条件で、参考例5に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびIII族窒化物半導体発光素子を作製した。
(参考例6)
参考例1においてAlNテンプレート基板に施した熱処理を行わなかった以外は、参考例1と同じ条件で、参考例6に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびIII族窒化物半導体発光素子を作製した。
(参考例7)
参考例2においてAlNテンプレート基板に施した熱処理を行わなかった以外は、参考例2と同じ条件で、参考例7に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびIII族窒化物半導体発光素子を作製した。
(参考例8)
参考例3においてAlNテンプレート基板に施した熱処理を行わなかった以外は、参考例3と同じ条件で、参考例8に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびIII族窒化物半導体発光素子を作製した。
(参考例9)
参考例4においてAlNテンプレート基板に施した熱処理を行わなかった以外は、参考例4と同じ条件で、参考例9に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびIII族窒化物半導体発光素子を作製した。
(参考例10)
参考例5においてAlNテンプレート基板に施した熱処理を行わなかった以外は、参考例5と同じ条件で、参考例10に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびIII族窒化物半導体発光素子を作製した。
<参考評価>
(参考評価1:AlN層の結晶性評価)
参考例1において、AlNテンプレート基板を形成し熱処理を施した直後のX線ロッキングカーブのAlN層の(10−12)面の半値幅を、X線回折装置(D8 DISCOVER AUTOWAFS;Bruker AXS社製)を用いて2θ−ωスキャンによって評価したところ、281秒であった。参考例2〜5についても同様の測定を行った。結果を表1に示す。また、AlNテンプレート基板に対して熱処理を施していない参考例6については、AlN層を形成した直後のX線ロッキングカーブの(10−12)面の半値幅を測定したところ、1404秒であった。参考例7〜10についても同様の測定を行った。結果を表1に示す。
(参考評価2:n型層の結晶性評価)
参考例1に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板のn型層のX線ロッキングカーブの(10−12)面の半値幅を、参考評価1と同様に評価したところ、450秒であった。参考例2〜10についても同様の測定を行った。結果を表1に示す。
(参考評価3:シート抵抗の評価)
参考例1に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板のn型層のシート抵抗(Rsh)を、非接触式シート抵抗測定器(RS−25;Lehighton社製)により測定したところ、53Ω/□であった。参考例2〜10についても、同様の測定を行った。結果を表1に示す。
(参考評価4:発光特性の評価)
参考例1のIII族窒化物半導体発光素子をフリップチップ型に実装して、発光特性を評価した。すなわち、まずp型GaN層上にマスクを形成してドライエッチングによるメサエッチングを行い、n型層を露出させた。次いで、p型GaN層上には、Ni/Auからなるp型電極を形成し、露出したn型層上には、Ti/Alからなるn型電極を形成した。なお、p型電極のうち、Niの厚みは50Åであり、Auの厚みは1500Åである。また、n型電極のうち、Tiの厚みは200Åであり、Alの厚みは1500Åである。最後に、550℃でコンタクトアニール(RTA:Rapid Thermal Annealing)を行った。こうして作製したフリップチップ型のIII族窒化物半導体発光素子を、積分球により電流20mAのときの発光出力Po(mW)を測定したところ、0.97mWであった。また、ピーク発光波長の半値幅(FWHM)を測定したところ、8.7nmであった。参考例2〜10についても、同様に評価し、発光出力および半値幅を測定した。結果を表1に示す。ただし、参考例6〜10の半値幅は評価することができなかったので、表中、"−"と表記している。また、参考例1〜5について、サファイア基板のオフ角に対する発光出力および半値幅の関係を図6に示す。
Figure 0006408344
表1および図6から、AlN層の結晶性が高品質な場合には、オフ角が0.5度である参考例3が、最も高い発光出力を示すことが分かった。従って、オフ角の範囲を0.46度〜0.54度とすることにより、発光出力を高めることができることが分かった。
<実験例>
(実施例1)
参考例3(オフ角0.5度)における第1の層としてのアンドープ層の層厚を2μmに変えた以外は、参考例3と同様にして、実施例1に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製した。次いで、参考例1と同様に、活性層、p型ブロック層、p型クラッド層およびp型GaN層を形成し、実施例1に係るIII族窒化物半導体を作製した。
(比較例1)
参考例3と同じ条件で、実施例1に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製した。次いで、参考例3と同様に、活性層、p型ブロック層、p型クラッド層およびp型GaN層を形成し、比較例1に係るIII族窒化物半導体発光素子を作製した。
(比較例2)
参考例3におけるn型層の層厚を1.5μmに変えた以外は、参考例3と同様にして、比較例2に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製した。次いで、参考例3と同様に、活性層、p型ブロック層、p型クラッド層およびp型GaN層を形成し、比較例2に係るIII族窒化物半導体発光素子を作製した。
<評価>
(評価1:c軸歪み量の測定)
実施例1に係るIII族窒化物半導体エピタキシャル基板のn型層の(0002)面のX線回折ピークを、参考評価1において用いたX線回折装置により2θ−ωスキャンによって評価し、2θのピーク値を求め、c軸の格子定数を求めた。次いで、ベガード則による無ひずみ状態でのc軸格子定数から、c軸歪み量(%単位)を求めたところ、歪み量は引張方向に0.687%(+0.687%)であった。比較例1,2についても同様にc軸歪み量を測定した。結果を表2に示す。表中、「+(プラス)」の記号は引張方向の歪みであることを意味し、「−(マイナス)」の記号は、圧縮方向の歪みであることを意味する。
(評価2:発光特性評価)
参考評価4と同様に、実施例1に係るIII族窒化物半導体発光素子をフリップチップ型に実装して、発光出力および発光中心波長の評価を行った。実施例1に係るIII族窒化物半導体発光素子を積分球により電流20mAのときの発光出力Po(mW)を測定したところ、2.5mWであった。また、III族窒化物半導体発光素子の寿命特性を測定するために、500時間経過後の残存光量を測定したところ、初期の光量に対して91%であった。比較例1,2についても同様に発光出力および500時間経過後の残存光量を測定した。結果を表2に示す。また、評価1により得られたc軸歪み量に対する500時間経過後の残存光量を示すグラフを図7に示す。なお、順方向電圧(Vf)についても表2に併せて示す。
Figure 0006408344
図7および表2から、c軸歪み量が引張方向に0.66%以上である場合に、500時間経過後の残存光量90%以上を満足できることが分かった。また、表2から、オフ角が同じであれば、c軸歪み量に関わらず同程度の発光出力が得られることが分かった。
本発明によれば、III族窒化物半導体発光素子の作製に供した際に、優れた発光特性および発光寿命特性を両立することが可能なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板およびその製造方法を提供することができる。また、かかるIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を用いたIII族窒化物半導体発光素子を提供することができる。
1 III族窒化物半導体エピタキシャル基板
10 サファイア基板
10A サファイア基板の主面
20 AlN層
30 III族窒化物積層体
31 第1の層(アンドープ層)
32 第2の層(不純物ドープ層)
40 活性層
50 半導体層
100 III族窒化物半導体発光素子

Claims (7)

  1. サファイア基板と、該サファイア基板の主面上に形成されたAlN層と、該AlN層上に形成された、少なくともAlを含むIII族窒化物積層体と、を有するIII族窒化物半導体エピタキシャル基板であって、
    前記III族窒化物積層体は、第1の層および第2の層をこの順に有し、
    前記第1の層のAl組成比xが、前記第2の層のAl組成比yよりも大きく、
    前記サファイア基板の主面は、C面が0.46度以上0.54度以下のオフ角で傾斜した面であり、
    前記AlN層の(10−12)面のX線ロッキングカーブの半値幅が400秒以下であり、
    前記第2の層の(0002)面の2θ−ωスキャンX線回折ピークにより算出されるc軸歪み量が引張方向に0.66%以上であることを特徴とするIII族窒化物半導体エピタキシャル基板。
  2. 前記第1の層がアンドープ層であり、前記第2の層が不純物ドープ層である、請求項1に記載のIII族窒化物半導体エピタキシャル基板。
  3. 前記第1の層はAlxGa1-xN(0.6≦x<1)からなる、請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体エピタキシャル基板。
  4. 前記第2の層はAlyGa1-yN(0.5≦y<x)からなる、請求項2または3に記載のIII族窒化物半導体エピタキシャル基板。
  5. 請求項2〜4いずれか1項に記載のIII族窒化物半導体エピタキシャル基板と、
    該III族窒化物半導体エピタキシャル基板上に、発光層と、前記第2の層とは異なる伝導型の半導体層とをこの順に有するIII族窒化物半導体発光素子。
  6. 前記発光層のピーク発光波長が300nm以下である、請求項5に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  7. C面が0.46度以上0.54度以下のオフ角で傾斜したサファイア基板の主面上に、AlN層をエピタキシャル成長させる第1工程と、
    前記AlN層を、前記第1工程における成長温度よりも高温で熱処理する第2工程と、
    該第2工程の後、前記AlN層上に、少なくともAlを含む、第1の層および第2の層をこの順に有するIII族窒化物積層体を形成する第3工程と、を含み、
    前記第3工程において、前記第2の層のAl組成比yを、前記第1の層のAl組成比xよりも小さくし、前記第2の層の(0002)面の2θ−ωスキャンX線回折ピークにより算出されるc軸歪み量を、引張方向に0.66%以上とすることを特徴とするIII族窒化物半導体エピタキシャル基板の製造方法。
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