JP6407154B2 - ホウ素ゼオライトをベースとする触媒の製造 - Google Patents

ホウ素ゼオライトをベースとする触媒の製造 Download PDF

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Description

本発明は、ゼオライト構造のホウ素含有ケイ酸塩をベースとする触媒の製造方法、ならびにその方法により得られる触媒に関する。
イソブテンは、化学産業において、多数の有機化合物を製造するための有用な出発原料である。イソブテンは、タイヤ産業ではブチルゴムの製造に使用され、ならびにポリイソブテン、特に潤滑剤添加物および燃料添加剤のための中間生成物、ならびに接着剤およびシーラントのための中間生成物を得るために使用される。さらに、イソブテンは、アルキル化剤として、特にtert−ブチル芳香族化合物の合成に、および中間生成物として、過酸化物の生成に使用される。さらに、イソブテンは、メタクリル酸およびそのエステルの前駆体として使用されることがある。ここで、Plexiglas(登録商標)の製造に使用されるメチルメタクリレートが例として挙げられる。イソブテンからのさらなる生成物は、分岐鎖状のC5アルデヒド、C5カルボン酸、C5アルコールおよびC5オレフィンである。したがって、イソブテンは、世界市場で需要が増している付加価値の高いものである。多くの適用に決定的であるのは、イソブテンの化学的純度である;ここで、99.9%までの純度が求められる。
原材料であるイソブテンは、石油ベンジン留分、製油所のFCC装置またはスチームクラッカーからのC4留分中に生じ、したがって、別のアルケンと、炭素原子数が同一の飽和炭化水素との混合物として存在している。C4カットの後処理では、第一段階でC4留分の約50%になるブタジエンが、抽出蒸留により分離されるか、または選択的水素化により反応して直鎖状ブテンになる。残留混合物、いわゆるラフィネート1は、50%までがイソブテンからなる。イソブテンおよび1−ブテンの物理的特性は、ほぼ同一であるため、蒸留法または抽出法によるイソブテンの効率のよい分離は不可能である。
物理的な分離法の代替案は、イソブテンの誘導体化である、それというのは、イソブテンが、残っているC4成分よりも高い反応性を有しているからである。誘導体を容易にラフィネート1から分離して、続いて再び所望の生成物であるイソブテンと誘導体化剤とに分解できることが前提条件である。ここで、重要な方法は、水と反応させてtert−ブタノールにして、メタノールと反応させてメチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)にすることである。Huelsプロセスによれば、前記MTBE合成は、液相において酸触媒作用により100℃未満の温度にて実施される。ここで、イオン交換体、例えば、スチレンおよびジビニルベンゼンのスルホン化コポリマーが、不均一触媒として使用される。前記合成に続いて、次のプロセス工程において、MTBEは、沸点の差が大きいため、前記C4カットから容易に蒸留分離することができ、続いて選択的に、生成物であるイソブテンとメタノールとに再分解することができる。前記副生成物のメタノールは、循環においてMTBE合成に返送されてよい。したがって、C4再生およびMTBE合成のための既存の設備は、前記MTBE分解のプロセス工程の分、拡張されてよい。
MTBEの分解は、吸熱性の平衡反応である。したがって、熱力学的平衡は、温度の上昇に伴って分解生成物の方向に移動する。圧力の上昇は、出発材料であるMTBEの方向に化学的平衡を移動させる。前記MTBE分解は、液相で均一に実施されてもよく、気相で不均一触媒作用により実施されてもよい。均一触媒の耐性が低く、かつ液相での平衡転化率が比較的低いため、MTBEを固体触媒で気相分解するのが好ましい。大気圧での気相反応では、すでに160℃超で、平衡転化率約95%が達成される。
工業的な運転では、下流プロセスにおいて、気体を圧縮するための費用を節約し、かつ冷却水による凝縮を同時に実施できるようにするために、絶対圧7bar、したがって予期される成分の蒸気圧を超える圧力が反応媒体において得られるように努力がなされる。前記MTBE分解は、酸性触媒の存在下に行われる。文献には、非晶質および結晶質のアルミノケイ酸塩、ならびにケイ素もしくはアルミニウムに担持されたリン酸の金属硫酸塩、およびイオン交換体樹脂の適用性が報告されている。しかし、前記酸性触媒作用によるMTBE分解の詳細な機構は、これまで文献において示されなかった。
前記不均一触媒作用による気相分解の反応温度が高いため、イソブテンおよびメタノールの他に、いくつかの不所望の副生成物が生じる。メタノールの脱水は、不所望な反応生成物であるジメチルエーテル(DME)をもたらす。イソブテンは、二量化して、オリゴマーである2,4,4−トリメチル−1−ペンテン(TMP−1)および2,4,4−トリメチル−2−ペンテン(TMP−2)になる。触媒系によっては、さらなるオリゴマー化反応、例えば、三量体の形成が排除されない。さらに、イソブテンと水とが平衡反応してtert−ブタノール(TBA)になることが予期される。さらに、MTBEと水とが反応して直接TBAおよびメタノールになることが排除されない。
後続適用のためのイソブテンの純度に対する要求が高いため、前記不所望な副生成物の形成は可能な限り抑えらねばならない。ここで、焦点は、主に、イソブテンが後続反応してオリゴマーになること、およびメタノールが脱水してDMEになることを最小限に抑えるという目的にある、それというのは、副生成物の形成が、精製の費用を決定的に確定する一方、他方では、生成物であるイソブテンおよびメタノールに関する収率を低下させるからである。前記MTBE分解に使用される触媒は、不所望な成分の形成において決定的な役割を果たしている。
酸性の特性を有する多数の触媒は、エーテルの気相分解に関する文献に記載されている。複数の特許は、スルホン酸をエーテル分解のための触媒として特許請求の範囲に記載しており、主要成分であるイソブテンおよびメタノールに関する選択性は、転化率55%までで89.3%もしくは97.8%までであることを保証している。しかし、酸性の強い触媒、例えば、スルホン酸およびリン酸の使用が、イソブテンの選択性を急落させることが確認されている。
非晶質もしくは結晶質のアルミノケイ酸塩ならびに変性されたアルミノケイ酸塩は、多数の刊行物の対象である。アルミノケイ酸塩を使用する場合、通常、150〜300℃の反応温度および1〜7barの圧力が操作される。多くの特許は、非晶質または結晶質のアルミノケイ酸塩を特許請求の範囲に記載しており、このアルミノケイ酸塩は、0.1〜80%のアルミニウムの割合を有しており、それによって98%の転化率で、イソブテンもしくはメタノールに関する選択性は、99.8%もしくは99.2%までに達する。
さらに、アルミノケイ酸塩の他に、中程度の電気的陰性の元素、例えば、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、マンガン、ニッケル、ジルコニウムおよびホウ素の金属酸化物が、前記エーテル分解のために記載されている。さらに、前記触媒の酸性度に影響を及ぼすために、アルミノケイ酸塩に前記金属酸化物がドープされてよい。
あらゆる触媒系は、前記MTBEの分解に関して高活性(70%以上)を有することが明らかである。イソブテンおよびメタノールに関する選択性の比較において、前記材料間の相違を確認できる。ここで、固形物の組成、さらなるドーパントまたは表面性質との直接的な関連は認められない。
ゼオライトは、酸素原子により互いに結合している、[SiO4]および[AlO4]四面体からの三次元アニオン骨格を有する脱水された結晶質のアルミノケイ酸塩である。このゼオライト骨格は、多くの場合、チャンネルおよびキャビティからの高配向の結晶構造を形成している。前記アニオン骨格電荷の電荷補償のためにカチオンが用いられ、このカチオンは、交換することができる、もしくは可逆的に除去することができる。単位セルの化学組成は、以下の一般式により示される:
Figure 0006407154
前記式中、nは、カチオンMのイオン価を表しており、wは、単位セル1つあたりの水分子の数である。Si/Al比は、以下が成り立つ:y/xは1以上である。アルミニウムもしくはケイ素の、別の網目構造を形成する元素による同形置換は、変化に富んだ多様なゼオライト類似の材料をもたらす。この置換性を考慮すると、ゼオライトおよびゼオライト類似材料の一般式は以下の通りである:
Figure 0006407154
前記式中、MおよびM’は、交換可能な、もしくは交換不可能なカチオンを表しており、Nは、非金属カチオンを表しており、(aq)pは、強く結合した水を表し、qYは、水も含むソルビン酸分子を表し、(OH)2aは、網目構造破損箇所のヒドロキシ基を表す。電荷補償がプロトンにより行われる場合、ゼオライト特性に応じて、弱い酸性度ないし強い酸性度を有する、プロトン交換されたゼオライトが存在している。前記特性および大きい比表面積(100m2/gより大きい)を有する定義された細孔系は、ゼオライトを酸性触媒作用による、形状選択性の、不均一な反応のための触媒としてあらかじめ定めている。分子直径の大きさの順序になっている前記細孔開口部の寸法は、選択的な吸着剤としてのゼオライトの特別な適性を引き起こし、そのため「分子ふるい」という用語が確立している。
天然ゼオライトおよびゼオライト類似物質に対しては、IZAによって「Atlas of Zeolite Structure Types」において、ホスト骨格の位相を基とする命名法が提案され、IUPACにより許可された。したがって、多くの場合の合成ゼオライトは、3文字の構造コードを組み合わせることにより命名されている。例として、SOD(Sodalith)、LTA(Zeolith A)、MFI(Pentasil Zeolith)、FAU(Zeolith X、Zeolith Y、Faujasit)、BEA(Zeolith Beta)およびMOR(Mordenit)の構造型が挙げられる。
MFI構造型のゼオライトは、いわゆる「中程度の細孔の(mittelporig)」ゼオライトである。この構造型の利点は、「狭細孔の」構造型(SOD、LTA)および「広細孔の」構造型(FAU、BEA、MOR)と比べて均一なチャンネル構造であることである。前記MFI構造型は、結晶質で、微細孔のアルミノケイ酸塩の系列に含まれており、その現象において、きわめて形状選択性で温度安定性のゼオライトであるが、酸度の高いゼオライトでもある。しかし、酸度の強いゼオライトをMTBE分解のための触媒として使用することは、前述の通り、イソブテンの選択性を急落させる。
先行技術において、MTBEの分解における触媒としてのホウ素ゼオライトの使用に関する証明は多少ある:
例えば、DE2953858C2は、MTBE分解における触媒としての「ボラライト」の使用を記載している。このボラライトは、ホウ素で変性されたシリカ(Kieselsaeure)であり、ゼオライト構造を有する、多孔性の結晶構造を有するケイ素およびホウ素の複酸化物(Doppeloxide)である。前記ボラライトの構造型についての記載はない。その製造は、pH値9〜14にて熱水条件下に行われる。
EP0284677A1からは、窒素を含む油、例えば、シェールオイルを分解するための触媒の製造方法が公知であり、この触媒は、ゼオライト構造のホウ素を含む結晶質の材料をベースとしている。考えられるゼオライト構造として、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ベータおよびNu−1が挙げられる。この製造は、塩基性環境で行われる。MTBEを分解するための前記触媒の適性は、詳しく説明されていない。
先行技術を踏まえて、本発明の課題は、新規の触媒であって、形状選択性および温度安定性であるだけでなく、さらに制御して調整可能な酸性度も有しており、その結果、MTBEを分解することを特徴とする、つまり、MTBEの高活性の分解の他に、主要生成物であるイソブテンおよびメタノールへの高い選択性を同時に保証する前記触媒を準備することである。
前記課題は、本発明によれば、請求項1に記載のゼオライト構造のホウ素−ケイ酸塩をベースとする触媒の製造方法により、もしくは前記方法により得られる触媒により解決される。
ケイ酸塩は、オルトケイ酸Si(OH)4の塩およびエステルおよびその縮合性生物である。本発明の範囲における「ホウ素含有ケイ酸塩」(略して:「ホウ素ケイ酸塩」)は、ホウ素を酸化物の形態で含むケイ酸塩である。「ゼオライト構造」とは、ゼオライトに相当する形態であると理解される。「ゼオライト類似」という概念は、同義に用いられる。よく知られている定義によれば、ゼオライトは、アルミノケイ酸塩の群、つまり、アルミニウムを酸化物の形態で含むケイ酸塩に含まれる。ここに記載されるホウ素ケイ酸塩は、その形態に関してゼオライトに相当するため、以下に略して「ホウ素ゼオライト」とも表される。しかし、「ホウ素ゼオライト」の概念の使用は、前記材料が、必ずしもアルミニウムを含む必要があることを意味するのではない。本発明によるホウ素ゼオライトは、(不純物または微量成分は別として)むしろアルミニウムを含んでいないのが好ましい。
本発明による方法により変性されたホウ素ゼオライトは、MTBEをイソブテンとメタノールに分解するための活性触媒および選択的触媒であることが明らかになった。この結果は、ごくわずかなオリゴマー化率(C8選択性0.0025%まで)、およびこれまでに観察された最も低いDME選択性(0.2%まで)で転化率90%までを有している触媒である。
したがって、本発明の対象は、以下の工程を含む、ホウ素ケイ酸塩をベースとする触媒の製造方法である:
a)少なくとも1種のゼオライト構造を有するホウ素含有ケイ酸塩を含む水性懸濁液を準備する工程、
b)pH値を1〜5に調整するために酸を添加する工程、
c)前記懸濁液を撹拌する工程、
d)得られた固形物を単離する工程、
e)前記固形物を任意に洗浄する工程、
f)前記固形物を焼成する工程。
本発明による方法では、MFI構造型のホウ素ゼオライトが使用されるのが特に好ましい、それというのは、このホウ素ゼオライトは、多数の利点をもたらすからである。ゼオライトの酸性度は、ヘテロ原子のケイ素骨格への組み込の影響を以下の通り受けやすいことが公知である:
Figure 0006407154
それによれば、ホウ素を含むゼオライトは、アルミニウムおよびケイ素のみを含むゼオライトよりもはるかに酸性が低いゼオライトである。これは、期待通りではない、それというのは、ホウ素は、アルミニウムよりも高い電子陰性度を有しているからである。
本発明による方法によれば、Si/B比は、幅広い範囲で変化してよく、それによって触媒作用による性質を調整するための多くの可能性を提供する。さらに、MFI構造型ゼオライトは、均一なチャンネル構造を有しており、それによって、きわめて形状選択性および温度安定性であることを特徴としている。寸法(Dimensionierung)が小さいため、前記構造型のゼオライトは、特に耐コークス性であることが推定される。
本発明による方法の範囲において、工程a)の少なくとも1種のゼオライトが、2〜4、好ましくは2.3〜3.7、特に好ましくは3のSiO2/B23モル比を有しているのが有利である。
上述の通り、本発明によるホウ素ゼオライトは、厳密な意味においてゼオライトではない、それというのは、前記ホウ素ゼオライトはアルミニウムを含んでいないからである。前記ホウ素ゼオライトが、アルミニウムを含んでいないか、またはせいぜい不純物の形態で、または微量成分としてアルミニウムを有しているのが好ましい。0.1質量%未満のアルミニウム含有量は許容されうる。
しかし、本発明による触媒のホウ素含有量が1質量%未満であることが決定的である。過剰に多いホウ素含有量は、副生成物形成を促進することがある。ホウ素含有量は、さらに0.5質量%未満であるのが好ましく、0.3質量%であるのが殊に好ましい。前記懸濁液中に準備されたホウ素含有ケイ酸塩が、過剰に多いホウ素含分を有している場合、この含分は、酸処理により減らすことができる。すなわち、Alと比べて、Bは、酸によってきわめて良く洗浄除去することができる。例えば、酸処理により、未処理のケイ酸塩のホウ素含有量を1質量%から約0.1質量%に下げることができる。したがって、前記懸濁液中に含まれるケイ酸塩は、少なくとも酸の添加後に、前記範囲のホウ素含分を有しているのが望ましい。
前記触媒特性のためには、工程a)のホウ素ケイ酸塩が、300m2/g〜500m2/g、好ましくは330〜470m2/g、特に好ましくは370〜430m2/gのBET法で測定される表面積を有する場合に有利である。
固形体化学で用いることができる多数の方法のうち、熱水合成は、本発明による方法で使用されるゼオライトの特に好適な合成である。それに加えて、ゼオライト合成のさらなる方法が考えられる。前記ゼオライト合成に必須の出発材料は、以下の4つのカテゴリーに分類することができる:T原子の供給源(ホウ素もしくはケイ素供給源)、構造規定剤、鉱化剤、および溶媒。
ゼオライト合成で頻繁に使用されるケイ素供給源は、シリカゲル、熱分解法シリカ、シリカゾル(コロイド状に溶解されたSiO2)およびアルカリ金属ケイ酸塩である。よく知られているホウ素供給源は、ホウ酸またはアルカリホウ酸塩である。
前記構造規定化合物は、構造を統制する特性を有しており、かつ生じたゼオライト構造を合成の間に安定させるものである。構造規定剤は、一般に、一価または多価の無機または有機カチオンである。水の他に、塩基(NaOH)、塩(NaCl)または酸(HF)が、無機カチオンもしくはアニオンとして使用される。ゼオライト合成の場合に考慮される有機化合物は、特に、アルキルアンモニウム水酸化物またはアリールアンモニウム水酸化物である。
前記鉱化剤は、核形成および結晶形成に必要となる遷移状態の形成を触媒作用する。これは、溶液工程、沈降工程または結晶化工程により行われる。さらに、前記鉱化剤は、溶解度を高め、それによって前記溶液中の成分の濃度を高める。鉱化剤として、水酸化物イオンが使用されてよく、それによって、ゼオライト合成のための理想的なpH値に調整することができる。OH濃度の上昇に伴って、ケイ素種の縮合が減少する一方、アルミニウムアニオンの縮合は常に一定である。したがって、pH値が高い場合、アルミニウムが豊富なゼオライトの形成が促進され、ケイ素が豊富なゼオライトは、pH値が比較的低い場合に形成されるのが好ましい。アルミニウムをほとんど含まないホウ素ケイ酸塩の場合、pH値9〜11は、1質量%未満の過剰に少ないホウ素の含有量をもたらす。ゼオライト合成で多くの場合に使用される溶媒は、水である。
前記ゼオライトの合成の場合、反応性のT原子供給源、鉱化剤、構造規定剤および水が混合され、ここで、懸濁液が生じる。前記合成ゲルのモル組成は、反応生成物に影響を及ぼすための重要な要因である:
Figure 0006407154
前記式中、MおよびNは、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを表しており、Rは、有機の構造規定剤を表している。さらに、係数a〜eは、二酸化ケイ素1モルに対するモル比を示している。
前記係数に関して、以下の値であるのが好ましい:
Figure 0006407154
前記懸濁液を、オートクレーブに移して、アルカリ性条件、自生圧、および100〜250℃の温度に、数時間ないし複数週間さらす。熱水条件下に、前記合成溶液を過剰飽和させ、これによって、核形成およびそこで始まる結晶成長が開始する。前記核形成の他に、前記ゼオライト合成では、結晶化の温度および時間が開始に決定的である。前記結晶化が動的プロセスであるため、形成された結晶は、再び溶解されて変換される。オストワルドの段階則に相応して、まずエネルギーの最も高い種が形成し、続いてエネルギーが乏しい種の形成が段階的に行われる。結晶化時間は、特に、ゼオライト構造にも左右される。MFI構造型のゼオライトの場合、本発明によれば、結晶化は36時間後に終了する。
前記熱水合成に続いて、前記構造規定剤が、400〜600℃の気流における焼成により除去される。ここで、有機物が燃焼されて、二酸化炭素、水および酸化窒素になる。
前記ホウ素ケイ酸塩を変性するために、工程b)において酸処理が実施され、ここで、ホウ素含有量が減少に至る。これは、ゼオライトの活性を上昇させる、もしくは所望の活性中心の選択的な製造をもたらす。さらに、前記骨格のさらなる安定化が観察される。
酸処理の場合、塩酸、リン酸、硫酸、酢酸、硝酸およびシュウ酸の使用が可能である。ここで、ホウ素含有量の減少の程度は、特に、使用される酸、その濃度および前記処理の温度による。本発明の範囲では、塩酸およびリン酸が、硫酸および硝酸と比べて、すでに濃度が低い場合にホウ素を抽出することが判明した。したがって、本発明の好ましいさらなる実施態様では、工程b)におけるpH値の調整は、塩酸またはリン酸を添加することによって行われる。
本発明の範囲において、工程c)の前記懸濁液を撹拌する工程は、最高80℃で行われることが有利であることがさらに判明した。したがって、本発明の好ましいさらなる実施態様は、工程c)による前記懸濁液を撹拌する工程が、最高80℃で行われることが企図される。しかし、最高撹拌温度は使用される酸による。HClが80℃の温度を必要とする一方、H3PO4では、すでに25℃にて優れた結果が達成された。したがって、リン酸を使用する場合、最高撹拌温度は25℃であるのが望ましい。最低撹拌温度0℃を可能な限り下回らないのが望ましい、それというのは、凍結した水は撹拌を妨げるからである。
前記撹拌時間は、少なくとも6時間、好ましくは少なくとも12時間、特に好ましくは少なくとも24時間である。実際は、撹拌時間は、約36時間までであってよい。
工程d)の固形物を単離する工程は、いずれの任意の方法により行われてよい。ここで、粒径に応じて、真空ろ過もしくは加圧ろ過が考えられる。
精製のために、前記固形物は、さらなる工程において、場合により繰り返し水で洗浄されてよい。
骨格で発生した欠陥は、高い焼成温度で、クリストバル石の発生下にシラノール縮合により修復させることが可能である。本発明による方法の範囲において、工程f)の前記固形物を焼成する工程は、好ましくは最高500℃、特に好ましくは最高400℃、殊に好ましくは最高350℃の温度で行われる。
前記固形物を焼成する工程は、原則的に気流中で行われてよい。したがって、本発明のさらなる実施態様は、工程f)の前記固形物を焼成する工程を気流中で行うことにある。
骨格中に発生した欠陥を、高い焼成温度にて、シラノール縮合により修復させることは、焼成工程の間に水または酸素の非存在が、不活性ガス、例えば、窒素の供給により保証されることによってさらに回避することができる。
したがって、本発明のさらなる実施態様では、工程f)の前記固形物を焼成する工程は、純粋な窒素流中で行われる。
空気も窒素も焼成雰囲気として好適であるため、前記焼成は、有利には、いずれの窒素を含む雰囲気中で実施されてもよいことが一般に推測できる。したがって、本発明のさらなる実施態様は、窒素を含む雰囲気中での焼成を企図している。「窒素を含む雰囲気」は、窒素を分子の形態で含むガスまたは混合ガスであると理解される。したがって、前記焼成は、分子の窒素ガス(N2)の存在下、または窒素の他にさらなる分子種類、例えば水素(H2)を含むガスの存在下に実施されてよい。
過剰の酸を除去するために、得られた固形物は、室温に冷却した後、場合により複数回蒸留水で洗浄されてよい。最後に、前記焼成は、窒素流もしくは気流中で繰り返される。
したがって、本発明の好ましいさらなる実施態様は、上述の方法でもあり、ここで、工程f)で得られた固形物は水で洗浄され、続いて工程f)が繰り返される。
前記焼成の終了後、得られた固形物をメタノールで処理することが考えられる。ここで、前記固形物は、静止しているメタノールに浸漬されるか、または流れているメタノールによって浸水される。メタノールは、前記2つの場合、液状、気体状または液状/気体状に混合されていてよい。前記固形物のメタノールによる処理は、前記触媒の初期活性を低下させるものであり、これは、工業的使用において有利であることが明らかになっている。前記ホウ素ケイ酸塩をベースとする触媒のメタノール処理は、アルミノケイ酸塩をベースとする触媒のメタノール処理と類似に行われ、この処理は、本願の時点では、公開前のドイツ特許出願DE102012215956に記載されている。前記出願の内容は、その点において明確に参照される。メタノールの代わりに、前記固形物を別の好ましくは一価アルコール、例えば、エタノールで処理してもよい。
本発明の特に好ましい実施態様では、工程a)の(不純物または微量成分は別として)アルミニウムを含んでいないホウ素ケイ酸塩は、約3のSiO2/B23モル比、0.5質量%未満のホウ素含有量、および約405m2/gのBET法で測定される表面積を有しており、工程b)のpH値を調整する工程は、リン酸または塩酸の添加により行われ、工程c)の前記懸濁液を撹拌する工程は、20〜80℃で、少なくとも24時間行われ、および工程d)の前記固形物を単離する工程は、真空ろ過または加圧ろ過により行われ、前記固形物は、工程e)において水で洗浄されて、工程f)の前記固形物を焼成する工程は、最高350℃の温度で窒素流または気流中で行われる。
本発明による方法により変性されたホウ素ゼオライトは、MTBEの分解における触媒として、転化率90%でDMEおよびC8に関して低い選択性を有しており、それによって、MTBE分解における工業的な適用性に対する大きな可能性を示すものである。
したがって、本発明の対象は、上述の製造法により得られる、MFI型のゼオライト構造を有するホウ素含有ケイ酸塩を含む触媒でもある。
本発明による方法により得られるゼオライト中のホウ素の割合が1質量%未満である場合に、転化率90%でDMEおよびC8に関する特に低い選択性が達成される。さらに、ホウ素含有量が0.5質量%未満であるのが特に好ましい。
本発明による方法によって、MTBEを分解するための触媒として、ごくわずかなDME選択性およびC8選択性を高活性と同時に有する、ゼオライト構造のホウ素含有ケイ酸塩を得ることができる。
以下の例は、本発明を具体的に説明するものである。

本発明による方法に使用される、MFI構造型のホウ素を含むゼオライトの製造
別形1)
TPAOH(テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド)90g、コロイドケイ素の形態のSiO2(Sigma Aldrich社LUDOX AS 40)117g、H3BO3(ホウ酸)10g、および蒸留水901gを、ビーカーで懸濁液に加工する。作成した溶液を、さらに5時間撹拌する。この間に、pH値は9.3〜9.6になる。続いて、前記合成溶液を、PTFE被覆を有するBuechi(登録商標)のダブルジャケット撹拌反応器に移して、24時間、185℃にて自生圧下に撹拌する。熱水合成の後、前記懸濁液中の固形物を真空ろ過により得る。残留しているフィルターケーキを、繰り返し蒸留水で洗浄して、続いて焼成する。前記固形物の焼成は、マッフル炉にて窒素流(200ml/min)で行われる。昇温速度は、1℃/minであり、終了温度500℃を5時間維持する。
別形2)
TPABr(テトラプロピルアンモニウムブロミド)79g、NaOH 6g、SiO2(Sigma Aldrich社LUDOX AS 30)72g、H3BO3 4gおよび蒸留水524gを、ビーカーで懸濁液に加工する。pH値は、12.57になる。続いて、前記合成溶液を撹拌反応器に移して、24時間、165℃にて自生圧下に撹拌する。熱水合成後、前記懸濁液中の固形物を加圧ろ過により得る。残留しているフィルターケーキを、繰り返し蒸留水で洗浄して、続いて焼成する。前記固形物の焼成は、マッフル炉において気流中(200ml/min)で行われる。昇温速度は、1℃/minであり、終了温度450℃を8時間維持する。イオン交換のために、微細な粉末5gを、3パスで、2時間にわたり室温で、NH4Cl 0.1モルおよびNH4OH 1モルからなる溶液で処理する。絶えず撹拌して、pH値は、10〜11になる。イオン交換が終了した後、前記固形物を、再び加圧ろ過により前記懸濁液から分離させる。続いて、NH4OH 1モルのフィルターケーキを、拡散洗浄する。最後の工程において、得られた固形物を、マッフル炉内で気流中(200ml/min)で焼成する(昇温速度:1℃/min;終了温度:450;時間:8時間)。
ホウ素ゼオライトをベースとする触媒の本発明による製造
例1:
別形2により製造された固形物3gを、蒸留水300mlと一緒に、ガラス製ダブルジャケット容器に移す。続いて、HCl 0.01モルを添加して、目標設定に応じて、pH値を1〜5に調整できるようにする。前記溶液は、マグネットスターラーを使用して、全処理時間にわたり撹拌して、接続された温度計(熱媒油:エチレングリコール)で20〜80℃に温度調整する。24時間後、前記懸濁液を、周囲温度に冷却して、粒径に応じて、真空ろ過または加圧ろ過によってろ過する。そこから得られた固形物を、繰り返し蒸留水で洗浄して、最後の工程で、マッフル炉内で窒素流もしくは気流中(200ml/min)で350℃(昇温速度:7℃/min)にて5時間焼成する。
例2:
別形1により製造された固形物3gを、蒸留水300mlと一緒に、ガラス製ダブルジャケット容器に移す。続いて、85%のH3PO4を添加して、目標設定に応じて、pH値を1〜5に調整できるようにする。前記溶液を、マグネットスターラーを使用して、全処理時間全体にわたり、室温で撹拌する。24時間後、前記固形物を粒径に応じて真空ろ過または加圧ろ過によりろ過し、蒸留水で洗浄して焼成する。この焼成は、マッフル炉内で窒素流もしくは気流中(200ml/min)で350℃(昇温速度:7℃/min)にて行う。過剰なH3PO4を除去するために、前記試料を室温に冷却後、複数回交互に蒸留水で洗浄してろ過する。最後に、350℃(昇温速度:7℃/min)にて窒素流もしくは気流中での前記焼成を繰り返す。
本発明により製造された、MTBEを分解するための触媒の使用:
前記反応成分を、分離された装入物から、量もしくは圧力を調整して、蒸発器によって触媒床に運ぶ。前記反応生成物の分析は、オンラインガスクロマトグラフィーを用いて行う。
200〜230℃の反応温度、ならびに0.005〜5h-1の空間速度(WHSV)の変化によって、10〜100%の転化率を調整する。
例1によるホウ素ゼオライトは、MTBE分解に関して高活性を示しており、転化率90%でDME(0.2%)およびC8(0.004%)に関して低い選択性を示している。
例2によるホウ素ゼオライトは、MTBE分解に関して高活性を示しており、転化率90%でDME(0.4%)およびC8(0.015%)に関して低い選択性を示している。

Claims (21)

  1. MFI型ゼオライト構造と1質量%未満のホウ素含有量を有するホウ素含有ケイ酸塩をベースとする、メチル−tert−ブチルエーテルをイソブテンとメタノールへ分解する触媒の製造方法であって、以下の工程
    a)少なくとも1種のMFI型ゼオライト構造を有するホウ素含有ケイ酸塩を含む水性懸濁液を準備する工程、
    b)pH値を1〜5に調整するために酸を添加する工程、
    c)前記懸濁液を撹拌する工程、
    d)得られた固形物を単離する工程、
    e)前記固形物を任意に洗浄する工程、
    f)前記固形物を焼成する工程
    を含む前記方法。
  2. 前記懸濁液中に含まれるケイ酸塩が、2〜4のSiO2/B23モル比を有していることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記懸濁液中に含まれるケイ酸塩が、2.3〜3.7のSiO2/B23モル比を有していることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. 前記懸濁液中に含まれるケイ酸塩が、アルミニウム含有量を0.1質量%未満有しており、またはアルミニウムを含んでいないことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記懸濁液中に含まれるケイ酸塩が、少なくとも前記酸の添加後に、ホウ素含有量を1質量%未満有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記懸濁液中に含まれるケイ酸塩が、少なくとも前記酸の添加後に、ホウ素含有量を0.5質量%未満有していることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  7. 前記工程a)のケイ酸塩が、300m2/g〜500m2/gのBET法で測定される表面積を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記工程a)のケイ酸塩が、330m2/g〜470m2/gのBET法で測定される表面積を有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
  9. 前記工程b)のpH値を調整する工程が、塩酸の添加により行われることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記工程b)のpH値を調整する工程が、リン酸の添加により行われることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記工程c)の前記懸濁液を撹拌する工程が、最高80℃で行われることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記工程c)の前記懸濁液を撹拌する工程が、最高25℃で行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
  13. 前記工程c)の前記懸濁液を撹拌する工程が、少なくとも24時間行われることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記工程d)の固形物を単離する工程が、真空ろ過または加圧ろ過により行われることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記工程e)における固形物が、水で洗浄されることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記工程f)の前記固形物を焼成する工程が、最高500℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載方法。
  17. 前記工程f)の前記固形物を焼成する工程が、最高350℃の温度で行われることを特徴とする、請求項16に記載方法。
  18. 前記工程f)の前記固形物を焼成する工程が、窒素を含む雰囲気中で行われることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記工程f)の前記固形物を焼成する工程が、純粋な窒素流中または気流中で行われることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
  20. 前記工程f)で得られた固形物が、水で洗浄され、続いて工程f)が繰り返されることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
  21. 前記焼成された固形物が、メタノールで処理されることを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
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