JP6401844B1 - 紙葉分離搬送装置、及び紙葉取扱装置 - Google Patents

紙葉分離搬送装置、及び紙葉取扱装置 Download PDF

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Abstract

【課題】単一のモータを使用しつつ、重送された紙葉中の一枚目の紙葉から順序通りに信頼性の高い分離作業を単純で安価な構成において実現する。【解決手段】繰出しローラ30により紙葉束から紙葉を一枚ずつ繰出す繰出し部20と、重送状態にある紙葉に分離作業を実施する分離部100と、分離部内に一部が残っている紙葉P1を引出し搬送する引出し搬送部250と、を備え、繰出し部は、繰出しローラと上流側伝達部材60との間に少なくとも一つの相対回転区間80を設けて駆動力の伝達を遅延させる駆動伝達遅延機構Dと、を備え、駆動伝達遅延機構は、繰出しローラと上流側伝達部材との周方向位置関係を初期位置関係と終期位置関係との間で双方向に相対回転可能とし、且つ、初期位置関係から終期位置関係に達するまでの間は、上流側伝達部材60に対して駆動力を伝達せず、終期位置関係に達した時以降に駆動力を伝達する構成を備える。【選択図】図1

Description

本発明は重送防止のための分離機能を備えた紙葉分離搬送装置、及び紙葉取扱装置に関する。
積層状態にある紙幣束から一枚ずつ取り出して給紙、搬送する機構を備えた紙幣取扱装置には、紙幣の重送を防止する重送防止機構が装備される。
例えば、入金部にセットされた紙幣束から紙幣を一枚ずつ受け入れる紙幣入金機、紙幣計数機、各種自動販売機、両替機等の紙幣取扱装置においては、重送が発生すると識別を含めた正確な入金処理、計数処理等が妨げられるため、重送防止機構が装備される。
重送防止機構としては、紙幣束の底部紙幣に接して回転する繰出しローラにより繰り出されてきた紙幣が重送状態にある時に二枚目以降の紙幣の通過を阻止する分離ローラ対を有したものがある。この分離ローラ対としては、給紙方向へ回転駆動されるフィードローラと、フィードローラの上側に配置されてフィードローラとニップする高摩擦材料からなるブレーキローラとから構成されたものがある。
ところで重送には、繰出しローラと接して繰り出される一枚目の紙幣が上側に位置する二枚目の紙幣に先行しつつ重なって分離ローラ対に搬送されるタイプと、二枚目の紙幣が一枚目紙幣に先行しつつ重なって分離ローラ対に搬送されるタイプがある。前者のタイプの重送では、先行する一枚目紙幣がフィードローラにより送出される一方で、後続の二枚目紙幣はブレーキローラにより前進を阻止されるので分離機能は正常に機能する。しかし、後者のタイプの重送にあっては、フィードローラの回転によって二枚目紙幣が先行して分離ローラ対の分離ニップ部に進入して送出される一方で、後続の一枚目の紙幣はブレーキローラとは接触せずに二枚目紙幣の下面に沿って分離ニップ部をすり抜けるため、二枚目紙幣と共に分離ニップ部を通過してしまう。
重送防止機構においては、繰出しローラと接する一枚目の紙幣を先行して分離ローラ対の分離ニップ部に送り込まなければ分離条件が成立しないが、紙幣束の積層状態等の状況によっては上記のように繰出しローラの回転時に一枚目に先行して二枚目紙幣が分離ニップ部に侵入し、結果として、二枚目の紙幣の通過を阻止する役割をするブレーキローラが機能することなく二枚共に分離ニップ部を通過する重送となり、分離失敗となる。
特に、先端が不揃いな状態の紙幣束がセットされた場合や、世界各国の長さの異なる紙幣束から給紙された紙幣を分離する場合には、一枚目より先に二枚目以降の紙幣が分離ニップ部に侵入して重送が発生し易くなる為、一枚目を確実に先行させて分離部に繰り出す必要がある。
このような重送を防止するためには繰出しローラが所定量回転することによる紙幣の繰出しが終了するまでフィードローラを駆動しないことが有効であるが、そのためには繰出しローラとフィードローラを別個のモータにより駆動する構成とした上で、両ローラの駆動タイミングを切り替える制御が必要となるが、小型、軽量、低コスト化を目指す場合には二個のモータや複雑な制御を必要とする構成は不利となる。
これまで一つのモータによって繰出しローラとフィードローラの駆動タイミングを切り替える技術は提案されてない。
なお、単一のモータにより繰出しローラとフィードローラを駆動するタイプとして、モータによりフィードローラを駆動すると共に、同じモータからの駆動力を繰出しローラに伝達して両ローラを常に同時に駆動するタイプはあったが、当然、二枚目の紙幣が一枚目に先行するタイプの重送に対処することはできていない。
特許文献1、特許文献2には、繰出しローラとは別に設けた補助繰出しローラにより紙幣間の長さを揃えるようにした発明が開示されているが、補助繰出しローラが別駆動源を必要とするため、複雑、大型化し、安価な構造とはならない。
特許文献3には、補助繰出しローラを用いない構成が開示されてはいるが、紙幣束を立てた状態にすることが必須であり、紙幣束を上下方向に積層するタイプが多い紙幣取扱装置にこの発明を適用するには制約が多くなる。
このような問題は、紙幣のみならず、有価証券、券類、投票用紙等々の他の紙葉を処理する装置においても同様に発生する。
次に、図18(a)(b)は従来の紙幣分離搬送機構の一例を示す図であり、紙幣束Pを積載する紙幣積載部500と、搬送方向aへ回転することにより紙幣束Pの底部の一枚目の紙幣P1を繰出す繰出しローラ505と、繰出しローラに対してタイミングベルト510を介して連結されて繰出しローラ505と一体回転するフィードローラ520と、フィードローラの直上位置に配置されてフィードローラ周面との間で分離ニップ部N1を形成するブレーキローラ525と、を備えている。
繰出しローラ505により一枚目の紙幣だけが繰り出されて分離ニップ部N1を通過した場合には、図18(a)に示すように分離ニップ部に残留紙幣がない正常な状態となり、次回の紙幣繰出し、分離作業に支障が生じることがない。
一方、一枚目の紙幣P1と共に二枚目以降の紙幣P2が重送された時に二枚目以降の紙幣がブレーキローラ525によって前進を阻止された状態で一枚目紙幣P1のみが分離ニップ部を正常に通過した場合には、次の紙幣の繰出し作業においては(b)に示したように前回の繰出し時に分離ニップ部に入り込んだ紙幣Pxや、ブレーキローラに先端を当接、近接させた状態にある紙幣Pyが分離部内に残留した状態でフィードローラの回転による分離作業が行われる。このため、残留紙幣が新たに繰り出された紙幣に先行して分離ニップ部内に進入したり、複数枚が同時に分離ニップ部に進入して分離作業に対する障害となり、重送状態で分離ニップ部を通過させる原因となる。
特許文献4には、紙幣堆積部上の紙幣束から紙幣を1枚ずつ分離して搬送路へと繰り出す紙幣分離動作を行っている間に分離した紙幣に搬送異常が発生した場合、紙幣分離動作を中止して搬送異常を起こした紙幣を紙幣堆積部に戻すためにモータを逆転させる構成が開示されている。
しかし、モータを逆転させる戻し動作は、動作時間の遅延、制御の複雑化、検知センサの増設等をもたらすという問題があった。
特開2010−143767公報 特開2004−155539公報 特開2009−263139公報 特開2016−170639公報
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、分離動作の遅延、制御の複雑化、検知センサの増設をもたらすことなく、重送紙葉に分離を施して一枚目の紙葉だけを下流側に通過させる作業が終わった後で、分離部に残留していた残りの紙葉を上流側に戻し搬送して次の分離作業における障害とならないようにした紙葉分離搬送装置、及び紙葉取扱装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、紙葉分離搬送装置は、繰出しローラにより紙葉束から紙葉を一枚ずつ繰出す繰出し部と、該繰出し部から繰出されてきた紙葉が重送状態にある時に一枚目の紙葉だけを先行して通過させて下流側に送出すると共に二枚目以降の紙葉の前進を阻止する分離部と、該分離部内に一部が残っている一枚目の紙葉を引出し搬送する引出し搬送部と、該繰出し部と前記分離部との間で駆動力を伝達する中継伝達部と、一枚目の紙葉が前記分離部を通過した後に該分離部に残留する二枚目以降の紙葉を上流側へ戻す重送紙葉戻し機構と、各種制御対象を制御する制御手段と、を備えた紙葉分離搬送装置であって、前記繰出し部は、繰出しローラ軸と、該繰出しローラ軸の軸回りに回転し、軸方向に沿って順次配列された前記繰出しローラ、及び上流側伝達部材と、前記繰出しローラを搬送方向に正転駆動する給紙モータと、前記繰出しローラと前記上流側伝達部材との間に少なくとも一つの相対回転区間を設けて正逆双方向への駆動力の伝達を遅延させる駆動伝達遅延機構と、を備え、前記分離部は、正転した時に前記繰出しローラにより繰り出された一枚目の紙葉面に接してこれを搬送するフィードローラと、該フィードローラとの間で分離ニップ部を形成し、二枚目以降の紙葉の前進を阻止する摩擦分離部材と、を備え、前記中継伝達部は、前記フィードローラと同軸状に隣接配置されて一体回転する下流側伝達部材と、前記上流側伝達部材と前記下流側伝達部材との間の駆動力伝達を中継する中継伝達部材と、を備え、前記重送紙葉戻し機構は、前記フィードローラの軸部により相対回転可能に軸支された戻しレバーと、前記フィードローラの軸部と前記戻しレバーとの間に配置されて該軸部と該戻しレバーとの間のトルク差が一定値を越えない限り該軸部と該戻しレバーを正転方向へ一体回転させるトルクリミッタと、該戻しレバーを戻し方向へ付勢する弾性付勢手段と、を備え、前記引出し搬送部は、前記分離ニップ部との距離が紙葉の搬送方向長よりも短い下流側位置に配置されて引出しニップ部を形成する引出し搬送部材と、該引出し搬送部材を駆動する引出し搬送モータと、を備え、前記駆動伝達遅延機構は、前記繰出しローラと前記上流側伝達部材との周方向位置関係を初期位置関係と終期位置関係との間で双方向に相対回転可能とし、且つ、前記上流側伝達部材に対する前記繰出しローラの位置関係が初期位置関係から終期位置関係に達するまでの間は前記上流側伝達部材に対して駆動力を伝達せず、終期位置関係に達した時以降に駆動力を伝達する構成を備え、前記制御手段は、前記フィードローラが正転することにより前記繰出しローラにより繰り出されていた前記一枚目の紙葉が前記引出しニップ部に達する適宜のタイミングで、前記給紙モータによる前記繰出しローラ、及び前記フィードローラの駆動を停止すると共に前記引出し搬送部材による紙葉の引出し搬送を実施することにより、一枚目の紙葉の搬送力を利用して前記フィードローラ、前記中継伝達部材、前記上流側伝達部材を正転し、正転する前記上流側伝達部材が停止状態にある前記繰出しローラに対して、前記紙葉後端部が前記分離ニップ部を通過するまで前記相対回転区間の範囲内で相対回転し、前記上流側伝達部材の相対回転終了時に前記繰出しローラと前記上流側伝達部材とが前記初期位置関係に復帰し、前記戻しレバーは、前記フィードローラの正転開始時に前記トルクリミッタの作用により前記フィードローラの軸部と一体回転することにより前記戻しバネに抗して正転方向へ所定角度回転した停止位置に達してからは前記軸部とスリップしつつ停止状態を維持し、前記一枚目の紙葉後端部が前記分離ニップ部を抜けると、前記戻しレバーが前記戻しバネの力により戻し方向へ回動すると共にフィードローラを戻し方向に回動させることにより、分離部に残留していた二枚目以降の紙葉を戻し方向へ移動させることを特徴とする。
本発明によれば、繰り出された紙葉に分離処理を施して一枚目の紙葉だけを下流側に通過させる作業が終わった時点で、分離部に残留する残りの紙葉を上流側に戻し搬送して次の分離作業における障害とならないようにすることができる。
本発明の第一の実施形態に係る紙葉分離搬送装置の一例としての紙幣分離搬送装置の概略構成を示す正面図である。 (a)は同紙幣分離搬送装置の平面構成図であり、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。 (a)(b)及び(c)は繰出しローラ、タイミングクラッチ、上流側タイミングプーリを繰出しローラ軸に組み付けた状態の正面側斜視図、(a)の構成から繰出しローラ軸を除去した状態を示す正面側斜視図、及び(b)の構成から正面側の繰出しローラの分割片を除去した状態を示す正面側斜視図である。 (a)(b)及び(c)は繰出しローラ、タイミングクラッチ、上流側タイミングプーリを繰出しローラ軸に組み付けた状態の背面側斜視図、(a)から繰出しローラ軸を除去した状態を示す背面側斜視図、及び(b)から正面側の繰出しローラの分割片を除去した状態を示す背面側斜視図である。 重送を解消する手順の説明図であり、(a)は紙幣分離搬送装置の要部正面図、(b)は第1相対回転区間内における動作説明図、(c)は第2相対回転区間内における動作説明図である。 重送を解消する手順の説明図であり、(a)は紙幣分離搬送装置の要部正面図、(b)は第1相対回転区間内における動作説明図、(c)は第2相対回転区間内における動作説明図である。 重送を解消する手順の説明図であり、(a)は紙幣分離搬送装置の要部正面図、(b)は第1相対回転区間内における動作説明図、(c)は第2相対回転区間内における動作説明図である。 重送を解消する手順の説明図であり、(a)は紙幣分離搬送装置の要部正面図、(b)は第1相対回転区間内における動作説明図、(c)は第2相対回転区間内における動作説明図である。 重送を解消する手順の説明図であり、(a)は紙幣分離搬送装置の要部正面図、(b)は第1相対回転区間内における動作説明図、(c)は第2相対回転区間内における動作説明図である。 (a)は戻しレバーが作動して残留紙幣を戻している状態を示す正面図であり、(b)は第1相対回転区間内における動作説明図、(c)は第2相対回転区間内における動作説明図である。 (a)及び(b)は重送紙葉戻し機構の構成を示す斜視図、及び分解斜視図である。 第一の実施形態の動作手順を示すフローチャートである。 (a)及び(b)は第二の実施形態に係る紙幣分離搬送装置1の要部構成を示す平面図、及び相対回転区間内における係合部と被係合部の動作を示す説明図(C−C断面図)である。 (a)(b)及び(c)は第二の実施形態において繰出しローラ、上流側タイミングプーリを繰出しローラ軸に組み付けた状態の正面側斜視図、(a)の構成から繰出しローラ軸を除去した状態を示す正面側斜視図、及び(b)の構成から正面側の繰出しローラの分割片を除去した状態を示す正面側斜視図である。 (a)(b)及び(c)は第二の実施形態において繰出しローラ、上流側タイミングプーリを繰出しローラ軸に組み付けた状態の背面側斜視図、(a)の構成から繰出しローラ軸を除去した状態を示す背面側斜視図、及び(b)の構成から正面側の繰出しローラの分割片を除去した状態を示す背面側斜視図である。 (a)(b)及び(c)は第二実施形態に係る紙幣分離搬送装置の繰出し部、及び分離部における中継伝達機構の他の構成例を示す平面図、正面図、及び斜視図である。 本発明の第一実施形態、及び第二実施形態に係る紙幣分離搬送装置を夫々適用可能な紙幣取扱装置の一例としての紙幣鑑別器の概略構成を示す断面図である。 (a)(b)は従来の紙幣分離搬送機構の一例を示す図である。
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
<第一の実施形態>
[基本構成の説明]
図1は本発明の第一の実施形態に係る紙葉分離搬送装置の一例としての紙幣分離搬送装置の概略構成を示す正面図であり、図2(a)は同紙幣分離搬送装置の平面構成図であり、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。また、図3(a)(b)及び(c)は繰出しローラ、タイミングクラッチ、上流側タイミングプーリを繰出しローラ軸に組み付けた状態の正面側斜視図、(a)の構成から繰出しローラ軸を除去した状態を示す正面側斜視図、及び(b)の構成から正面側の繰出しローラの分割片を除去した状態を示す正面側斜視図であり、図4(a)(b)及び(c)は繰出しローラ、タイミングクラッチ、上流側タイミングプーリを繰出しローラ軸に組み付けた状態の背面側斜視図、(a)から繰出しローラ軸を除去した状態を示す背面側斜視図、及び(b)から正面側の繰出しローラの分割片を除去した状態を示す背面側斜視図である。また、図5乃至図9は繰出しローラの駆動によって発生した重送を解消する手順を説明する図である。図10(a)は戻しレバーが作動して残留紙幣を戻している状態を示す正面図であり、(b)は第1相対回転区間内における動作説明図、(c)は第2相対回転区間内における動作説明図である。図12は重送解消手順を示すフローチャートであり、図13(a)及び(b)は重送紙幣戻し機構を構成する戻しレバーとトルクリミッタの構成を示す斜視図、及び分解斜視図である。
なお、本明細書では紙葉の一例として紙幣を中心に説明するが、本装置は紙幣以外の紙葉の分離、搬送にも適用することができる。また、紙葉には、紙製シート以外にも樹脂製、その他の材料から成るシートも含む。
紙幣分離搬送装置(紙葉分離搬送装置)1は、紙幣積載部(紙葉積載部)10に上下方向、或いは斜め上下方向へ重ねて積載された複数枚の紙幣から成る紙幣束Pから繰出しローラ30により最底部の紙幣P1から一枚ずつ繰出す過程で二枚目以降の紙幣が重なって搬送される重送が発生した場合に、分離ローラ対110、130によって一枚目の紙幣P1以外の紙幣(二枚目以降の紙幣)の前進を阻止しつつ一枚目の紙幣だけを下流側に搬送する構成を備えている。
特に、本発明では、繰出し部20、及び分離部100に用いる駆動源として繰出しローラを直接駆動する単一の給紙モータ70だけを使用しつつ、二枚目の紙幣P2が一枚目の紙幣に先行した状態で分離部100に供給されることによって発生する分離不良を、駆動伝達遅延機構Dによる機械的な時差駆動を実現する構成によって繰出しローラと重送防止ローラ(フィードローラ)との駆動タイミングを異ならせることにより解消する。
紙幣分離搬送装置1は、紙幣積載部10に積載された紙幣束Pから最底部の紙幣P1を一枚ずつ繰出す繰出し部20と、繰出し部20から繰出されてきた紙幣が重送状態にある時に一枚目の紙幣P1だけを通過させて下流側に送出すると共に二枚目以降の紙幣の前進を阻止する分離ニップ部N1を備えた分離部100と、分離部内に一部が残っている一枚目の紙幣P1を先端から引出し搬送する引出し搬送部250と、繰出し部と分離部との間で駆動力を伝達する中継伝達部200と、一枚目の紙幣が分離部100を通過した後に該分離部に残留する二枚目以降の紙幣を上流側へ戻すことにより、更に後続して繰出され、分離される紙幣の障害とならないようにするための重送紙幣戻し機構(重送紙葉戻し機構)260と、各種制御対象を制御する制御手段300と、を概略備えている。繰出し部20と分離部100は、給紙部15を構成している。引出し搬送部250の下流側には図示しない識別部、計数部、キャッシュボックス等が配置されている。
繰出し部20は、紙幣搬送方向と直交する方向へ延び、図示しない軸受部により回転自在に軸支された繰出しローラ軸21と、繰出しローラ軸21の軸回りに回転し、軸方向に沿って順次隣接配列された繰出しローラ(ピックアップローラ)30、タイミングクラッチ(クラッチ部材)50、及び上流側タイミングプーリ(上流側伝達部材)60と、繰出しローラ30を紙幣搬送方向(正転方向)aに駆動する給紙モータ(繰出しモータ)70と、繰出しローラ30とタイミングクラッチ50との間、タイミングクラッチ50と上流側タイミングプーリ60との間に夫々相対回転区間40、45を設けて正逆双方向への駆動力の伝達を遅延(断接)させる駆動伝達遅延機構Dと、紙幣積載部10上に紙幣束Pがセットされたことを検知する開始センサ(紙幣セット検知センサ)75と、を備えている。
繰出しローラ30、タイミングクラッチ50、及び上流側タイミングプーリ60は、共通の繰出しローラ軸21を中心として回転すると共に、互いに所定の周方向遊びの範囲内で相対回転可能に構成されている。繰出しローラ30が平行ピン22により繰出しローラ軸21に固定されて一体回転するのに対して、タイミングクラッチ50、及び上流側タイミングプーリ60は繰出しローラ軸21に対して夫々別個独立に相対回転可能に軸支されている。
繰出しローラ30は、紙幣搬送方向aに回転する際に紙幣積載部10内の最底部の(一枚目の)紙幣P1の下面に接してこれを繰出す手段である。
給紙モータ70からの駆動力は、出力ギヤ70a、従動ギヤ71、繰出しローラ軸21、平行ピン22を介して繰出しローラ30へ伝達される。
本例では繰出しローラ軸21に一体化された従動ギヤ71が給紙モータ70の出力ギヤ70aにより回転駆動され、且つ繰出しローラ軸に対して平行ピン22により繰出しローラ30(分割片30a、30b)の軸芯が固定されているが、これは一例であり、回転しない繰出しローラ軸の軸回りに繰出しローラを回転自在に組み付けても良い。この場合には、図示しないが、給紙モータの出力ギヤ70aにより繰出しローラに一体化した従動ギヤを駆動する構成となる。
本例の繰出しローラ30は2つの分割片30a、30bから構成され、両分割片の間にタイミングクラッチ50、及び上流側タイミングプーリ60が配置されているがこれは一例に過ぎず、分割しない単体の繰出しローラを一方の分割片30aの位置に配置してもよい。後述するように繰出しローラ30が相対回転区間を介してタイミングクラッチ50、及び上流側タイミングプーリ60と順次連動して行く動作には、他方の分割片30bは直接関与しないので、特許請求の範囲、及び本明細書において繰出しローラ30とは、主として一方の分割片30aを指称する。
タイミングクラッチ50、及び上流側タイミングプーリ60は、繰出しローラ軸21、及び繰出しローラ30(分割片30a)に対して夫々別個独立して相対回転可能に構成される。繰出しローラ30とタイミングクラッチ50は、所定の第1相対回転区間40(周方向遊び)の範囲内で相対的に正逆回転可能に構成されている。タイミングクラッチ50と上流側タイミングプーリ60は所定の第2相対回転区間45(周方向遊び)の範囲内で相対的に正逆回転可能に構成されている。
分離部100は、繰出しローラ軸21よりも紙幣搬送方向下流側において繰出しローラ軸21と並行に配置され、図示しない軸受により回転自在に支持されたフィードローラ軸101と、フィードローラ軸回りに回転し、搬送方向aへ回転した時に繰出しローラにより繰り出された一枚目の紙幣P1の下面に接してこれを搬送する分離ローラとしてのフィードローラ110と、フィードローラ110の上方に配置されてフィードローラとの間で紙幣を通過させる分離ニップ部N1を形成し、周面に高摩擦部を備えた分離ローラとしてのブレーキローラ(摩擦分離部材)130と、を備えている。ブレーキローラ130の軸部にはワンウェイクラッチ130aが配置されることにより、紙幣を戻す方向(反時計回り方向)への回転だけが可能となっている。
フィードローラ110とブレーキローラ130は、圧接摩擦ブレーキローラ方式の分離ローラ対(分離機構)を構成している。繰出しローラ30が正回転することにより繰り出された紙幣がフィードローラ110とブレーキローラ130が対向し圧接する分離点(分離ニップ部N1)に送り込まれ、二枚目以降の紙幣の前進を制止しつつ、一枚目の紙幣だけを二枚目紙幣から分離して前進方向へ送出する。
フィードローラ110は、2つの分割片110a、110bを平行ピン(固定具)102によりフィードローラ軸に固定した構成を有し、各分割片間には下流側タイミングプーリ120が平行ピン102によりフィードローラ軸に固定されている。
フィードローラ110は、繰出しローラ30の駆動力をタイミングクラッチ50、タイミングプーリ60、120、及びタイミングベルト125を介して伝達されることにより回転駆動が可能となる。ブレーキローラ130は紙幣搬送方向へは回転しない一方で、紙幣との接触による局部の摩耗を避けるために紙幣が通過するたびに紙幣搬送方向とは逆方向(紙幣戻し方向)へ所定のピッチで回動するように構成されている。
なお、本例では摩擦分離部材として回転しないブレーキローラを例示したが、これは一例であり、ブレーキローラに代えてフィードローラとは逆方向(紙幣戻し方向)へ小さいトルクで回転する摩擦ローラ(リタードローラ)を用いても良い。また、分離ニップ部N1では、フィードローラと摩擦分離手段が接触状態にあるとは限らず、非接触状態で近接している構成も含む。
なお、本例ではフィードローラ軸101を回転自在に構成したが、回転不能にしたフィードローラ軸の軸回りに、予め一体化したフィードローラ、及び下流側タイミングプーリ120を回転自在に構成してもよい。
中継伝達部200は、フィードローラ軸回りにフィードローラ110と一体回転する下流側タイミングプーリ(下流側伝達部材)120と、両タイミングプーリ120、60間に無端状に巻掛けられたタイミングベルト(中継伝達部材)125と、を有している。
重送紙幣戻し機構260は、フィードローラの軸部101により該軸部に対して相対回転可能に軸支されることにより軸部を中心として往復動作する戻しレバー261と、フィードローラ軸部101と戻しレバーとの間に配置されて該軸部と該戻しレバーとの間のトルク差が一定値を越えない限り両部材101、261を正転方向へ一体回転させるトルクリミッタ265と、軸部101と戻しレバーとの一体回転方向とは逆の戻し方向へトルクリミッタよりも弱いバネ力で戻しレバーを付勢する戻しバネ(弾性付勢手段)270と、を備える。
図2、図11に示すように、フィードローラ軸部101の端部寄り部位(Dカット部)には、戻しレバー261の基端部に設けた円形の挿通孔261aが相対回転可能に挿通されており、戻しレバーの基端部の内側面261bは軸部101のDカット部分に挿通固定された円盤状の摺動部材263により軸方向位置を規制された状態で摺動部材263と摺動的に接触している。一方、戻しレバーの基端部の他端面261cと、軸部101の端部に挿通されてEリング266aにより固定されたワッシャ266との間には圧接バネ267が配置されて戻しレバーの基端部を摺動部材263に所定の圧力で弾性的に押し付けている。
図11に示すように、トルクリミッタ265は、ワッシャ266、及び圧接バネ267から構成されており、圧接バネ267をワッシャ266と戻しレバー261との間に介在させることにより、摺動部材263(軸部101)と戻しレバーとのトルク差が圧接バネのバネ力によって決定される一定の限界値を越えない限りは両者を一体的に正転させる一方で、トルク差が限界値を超えた場合には摺動部材263(軸部101)に対して戻しレバーが相対回転することを許容する。圧接バネ267が戻しレバー基部を摺動部材263に押し付けるバネ力は、軸部101が給紙モータ70により正転駆動されている時には戻しレバー261が軸部101と連れ回りして正転することを許容する一方で、固定部に設けたストッパ268に戻しレバーが接触した時以降は正転を停止して正転中の軸部101と相対回転(スリップ)を開始するように設定されている。
一方、給紙モータの停止によって軸部101が正転を停止して軽負荷状態になった時には戻しレバー261に常時作用している戻しバネ270による戻し方向への付勢力により軸部101と共に戻しレバーは逆転する。
言い換えれば、軸部101が給紙モータからの駆動力によって正転している間は戻しレバーは軸部に連れ回りし、この間は戻しバネ270の戻し力は効果を失っている。一方、給紙モータの停止によって軸部101が駆動を停止した状態では後述する駆動伝達遅延機構Dの作用によって軸部101は軽負荷になるため、戻しバネの戻し力が初めて発揮されて戻しレバーが戻し方向へ回動する。
更に言い換えれば、戻しレバー261は戻しバネ270によってフィードローラ110を逆転させる方向に常に引っ張られている。しかし、戻しバネ270の力はトルクリミッタ265の圧接バネ267の力よりも弱いため、フィードローラの正転と共に戻しレバーは戻しバネに抗して正転方向へ回転し、戻しレバー261がストッパ268と接することにより可動限界に達した後はトルクリミッタ265が滑りを起こすためフィードローラだけが正転する。
なお、ブレーキローラ130はワンウェイクラッチ130aにより戻し方向に軽負荷で回転できる構成である。従って、駆動伝達遅延機構Dの作用によって相対回転区間の分だけフィードローラ軸部101への駆動が断絶されて軽負荷になると、戻しバネ270の小さな力によってフィードローラとブレーキローラを戻し方向に回転させることができる。つまり、戻しレバーは戻しバネ270による直線的な戻し方向への付勢力を、軸部101を逆転させる方向への回転力に変換する手段である。
引出し搬送部250は、分離ニップ部N1との距離L(図1)が紙幣の搬送方向長よりも短い下流側位置に配置されて引出しニップ部N2を形成する引出しローラ対(引出し搬送部材)251a、251bと、分離部100において分離されて送出されてきた一枚目の紙幣P1を検知する次点センサ253と、駆動側の引出しローラ251aを駆動する引出し搬送モータ255と、を備え、分離部100で一枚に分離されて下流に送出されてきた紙幣を引っ張り出して搬送する。
分離ニップ部N1と引出しローラ対のニップ部N2との間隔は、搬送対象となる各紙幣の搬送方向長よりも短い距離となるように設定されている。従って、給紙モータ70により繰出し部20と分離部100の駆動を停止した状態で、引出しローラ対が分離部100から送出されてきた一枚目の紙幣P1をニップして引出し搬送し、且つ分離ローラ対の分離ニップ部N1に紙幣後部が挟持されている期間中は、フィードローラ30、下流側タイミングプーリ120、タイミングベルト125、上流側タイミングプーリ60は、紙幣P1を介して引出しローラ対251a、251bからの搬送力を受けて搬送方向へ連れ回りする。紙幣P1の後端が分離ローラ対の分離ニップ部N1を抜けると同時にフィードローラ等への紙幣からの連れ回りによる駆動力伝達は終了する。
駆動伝達遅延機構Dは、繰出しローラ30とタイミングクラッチ50との周方向位置関係を初期位置関係と終期位置関係との間で双方向に相対回転可能とし、且つ、タイミングクラッチに対する繰出しローラの位置関係が初期位置関係から終期位置関係に達するまでの間はタイミングクラッチに対して駆動力を伝達せず、終期位置関係に達した時以降に駆動力を伝達する構成を備える。
更に、駆動伝達遅延機構Dは、タイミングクラッチ50と上流側タイミングプーリ60との周方向位置関係を初期位置関係と終期位置関係との間で双方向に相対回転可能とし、且つ、上流側タイミングプーリに対するタイミングクラッチの位置関係が初期位置関係から終期位置関係に達するまでの間は上流側タイミングプーリに対して駆動力を伝達せず、終期位置関係に達した時以降に駆動力を伝達する構成を備える。
駆動伝達遅延機構Dは、繰出しローラ30とタイミングクラッチ50との間に設けた第1相対回転区間40と、タイミングクラッチ50と上流側タイミングプーリ60との間に設けた第2相対回転区間45とから夫々得られる相対回転周方向長(空転周方向長)の合計によって、繰出しローラによる繰出しタイミングとフィードローラの駆動開始タイミングとの間に時間差を設けている。
つまり、第1相対回転区間40と第2相対回転区間45の存在により、繰出しローラ30の駆動力はタイミングクラッチ50、タイミングプーリ60に対して直結して遅滞なく伝達される訳ではなく、各相対回転区間40、45により設定される空回り区間(駆動力が伝達されない区間)を経て断続的に、且つ遅延して伝達される。このため、繰出しローラが正転してから所定時間遅れてフィードローラが回転を開始する。繰出しローラ30による繰出し時に重送が発生して二枚目の紙幣P2の先端が一枚目に先行してブレーキローラ130と接した状態となったとしても、この断続的な駆動力の伝達による遅延によってフィードローラの回転開始タイミングが各相対回転区間の周方向長の合計分だけ遅れるため、フィードローラの回転開始前に一枚目の紙幣P1が二枚目紙幣P2に遅れてブレーキローラに先端を接触させた状態となる(図6の状態)。
制御手段300は、フィードローラ110が正転することにより繰出しローラ30により繰り出されていた一枚目の紙幣P1が引出しニップ部N2に達する適宜のタイミング(次点センサ253による検知)で、給紙モータ70による繰出しローラの駆動を停止してフィードローラの回転を停止させると共に、引出しローラ対(引出し搬送部材)251a、251bによる紙幣の引出し搬送を実施することにより、一枚目の紙幣の搬送力を利用してフィードローラ30、中継伝達部材125、上流側タイミングプーリ60の正転を再開させる。なお、実際にはフィードローラの正転停止と正転再開との間には時間差がなく、フィードローラは中断することなく連続して回転する。
紙幣の搬送力による正転を開始した上流側タイミングプーリ60が停止状態にあるタイミングクラッチ50に対して第2相対回転区間45の範囲内で回転(空転)を継続することにより上流側タイミングプーリ60とタイミングクラッチ50とが初期位置関係に復帰する。続いて、上流側タイミングプーリからの駆動力がタイミングクラッチに伝達されることによりタイミングクラッチが正転を再開し、停止状態にある繰出しローラ30に対して第1相対回転区間40の範囲内で回転(空転)を継続することによりタイミングクラッチ50と繰出しローラ30とが初期位置関係に復帰する。
本例では繰出し部20と分離部100との間の駆動伝達手段としてタイミングプーリ60、120、及びタイミングベルト125を用いているが、これは一例に過ぎず、複数のギヤの組合せから成るギヤ機構、プーリとワイヤーからなる機構等々、種々の駆動伝達機構を用いることができる。
制御手段300は、オペレータによる停止スイッチの操作が行われた場合や、給紙中のジャム発生、センサによる異物検知、その他のエラー発生時には、給紙モータを停止させる機能や、スイッチ操作などによって稼動を再開させる機能を有する。
更に、制御手段300は、一枚目の紙幣が分離部を通過した後も繰出しローラ30、フィードローラ110を連続して正転させることにより一枚目以降の後続紙幣を連続して(中断することなく)給送することができることは勿論である。即ち、一枚目の紙幣P1が引出しニップ部N2に達した時に繰出しローラの駆動を停止してフィードローラの回転を停止させることなく、連続して繰出しローラ、及びフィードローラを正転させることにより、二枚目以降の任意の紙幣を連続して一枚ずつ給送することができる。そして、任意の紙幣先端が引出しニップ部N2に達した時に繰出しローラ及びフィードローラの回転を停止させてから当該紙幣の搬送力を利用してフィードローラ30、中継伝達部材125、上流側タイミングプーリ60の正転を再開させることにより、第1及び第2相対回転区間40、45を初期位置関係に復帰させることもできる。
従って、紙幣束を構成する全ての紙幣の紙幣積載部からの給送を完了した時点、即ち最後の紙幣が引出しニップ部N2に達した時に繰出しローラ及びフィードローラの回転を停止させてから、引出しローラ対により引き出される当該最後の紙幣の搬送力を利用してフィードローラ30、中継伝達部材125、上流側タイミングプーリ60の正転を再開させることもできる。これにより、次の紙幣束がセットされた際には、第1、及び第2相対回転区間40、45が初期位置関係に復帰しているので、遅滞なくスムーズに給紙を開始できる。
以上の構成を備えた紙幣分離搬送装置1は、繰出しローラ30による繰出し時に二枚目の紙幣P2が一枚目の紙幣P1に先行して分離ニップ部に給送されてブレーキローラ130に接してしまうことに起因して発生する重送を防止するために次の如き重送防止機構を備えている。
なお、この重送防止機能は、一枚目と二枚目の紙幣との関係のみならず、二枚目と三枚目の紙幣との関係、三枚目と四枚目の紙幣との関係等々、前後位置関係にある全ての紙幣間においても当てはまることは勿論である。
以上のことは、後述する第二実施形態にも同様にあてはまることは勿論である。
まず、繰出しローラ30はタイミングクラッチ50との間に設けられた第1相対回転区間40の周方向長、即ち「周方向遊び」の範囲内でタイミングクラッチ50と相対回転が可能であり、タイミングクラッチ50は上流側タイミングプーリ60との間に設けられた第2相対回転区間45の周方向長、即ち「周方向遊び」の範囲内で上流側タイミングプーリ60と相対回転が可能である。言い換えれば、タイミングクラッチ50が停止状態にある時に、繰出しローラ30が第1相対回転区間40の始端部(第1の始端部40a)から終端部(第1の終端部40b)に向かって回転移動する過程ではタイミングクラッチ50に対して繰出しローラからの駆動力は伝達されないが、繰出しローラ30が第1の終端部40bに達した時以降はタイミングクラッチ50に対して繰出しローラからの駆動力が伝達開始されて両部材は一体回転する。また、上流側タイミングプーリ60が停止状態にある時に、タイミングクラッチ50が第2相対回転区間45の始端部(第2の始端部45a)から終端部(第2の終端部45b)に向かって回転する過程ではタイミングプーリ60に対してタイミングクラッチ50からの駆動力は伝達されないが、タイミングクラッチ50が第2の終端部45bに達した時以降は上流側タイミングプーリ60に対してタイミングクラッチからの駆動力が伝達開始されて両部材は一体回転する。
なお、説明の便宜上、図5乃至図9において第1の始端部及び終端部40a、40b(第1相対回転区間40)を繰出しローラ30における特定の固定された周方向部位(周方向区間)として示し、第2の始端部及び終端部45a、45b(第2相対回転区間)をタイミングプーリ60における特定の固定された周方向部位(周方向区間)として示した。しかし、実際には給紙モータ70によって繰出しローラが繰出し動作を行って停止した後で、紙幣の余長Lによって連れ回り搬送される長さが一定とはならないため、各相対回転区間が回復した時点における第1始端部40aの位置がばらつく。このため、繰出しローラ上における第1相対回転区間の周方向位置、及びタイミングプーリにおける第2相対回転区間の周方向位置は一定になるとは限らない。
次に、繰出しローラ30は、搬送方向へ回転して紙幣束Pの最底部の一枚目の紙幣P1を分離ニップ部N1に向けて送り出す際に、停止状態にあるタイミングクラッチ50に対して第1相対回転区間40の範囲で回転移動し、繰出しローラ30の回転角度が第1相対回転区間40の第1の終端部40bに達した時以降にタイミングクラッチ50に駆動を伝達開始して搬送方向へ一体回転を開始する。
タイミングクラッチ50は、停止状態にある上流側タイミングプーリ60に対して第2相対回転区間45の範囲で回転移動し、タイミングクラッチの回転角度が第2相対回転区間の終端部(搬送方向終端部)45bに達した時以降に上流側タイミングプーリ60に駆動を伝達開始して搬送方向へ一体回転開始することによりタイミングベルト125を介してフィードローラ110を搬送方向に回転駆動する。
具体的には、繰出しローラ30の回転時には各相対回転区間40、45の存在によって駆動力が遮断された状態にあるためにフィードローラは回転を停止している。このため、繰出しローラの回転により二枚目の紙幣P2が一枚目の紙幣P1に先行して分離ニップ部N1に向けて繰り出される重送が発生した場合、先行する二枚目の紙幣はその先端がブレーキローラ130に接して前進を阻止された状態で停止する(図6(a))。この状態で各相対回転区間による駆動力遮断が解消されて繰出しローラからの駆動力によりフィードローラが回転を開始すると、一枚目の紙幣が二枚目の紙幣P2の下側を通過して分離ニップ部N1に進入して下流側へ送出されることができる。これにより、二枚目の紙幣が先行する重送が発生したとしても、分離ニップ部N1において二枚目紙幣の前進を阻止しつつ、一枚目の紙幣を先に通過させることができる。
次いで、一枚目の紙幣P1の先端が引出しローラ対のニップ部N2に進入したことが次点センサ253により検知されたタイミングで、制御手段300は、給紙モータ70から繰出しローラ軸21への駆動力を遮断して繰出しローラ30、タイミングクラッチ50、上流側タイミングプーリ60を停止させた状態にすると共に、引出しローラ対251a、251bの搬送方向aへの回転を実施して紙幣P1をニップして引出し搬送する。この引出し搬送の際には、紙幣P1の後端部が分離ローラ対によりニップされているため、フィードローラ110が紙幣に連れ回りして搬送方向へ回転し、この回転駆動力が停止状態にある下流側タイミングプーリ120、タイミングベルト125、上流側タイミングプーリ60に順次伝達される。
紙幣P1からの連れ回り駆動力によって上流側タイミングプーリ60が搬送方向aへ回転駆動されると、第2相対回転区間45が有する第2の周方向遊びの範囲内で、停止状態にあるタイミングクラッチ50に対して上流側タイミングプーリ60が空回りする。上流側タイミングプーリ60が第2相対回転区間45が有する第2の周方向遊びの範囲内での空回りを終了すると、タイミングクラッチ50を搬送方向aへ回転駆動開始する。この第2の周方向遊びの範囲内での上流側タイミングプーリ60の空回りが終了した時点で、第2相対回転区間(上流側タイミングプーリとタイミングクラッチの周方向位置関係)は初期状態に復帰している。
次いで、上流側タイミングプーリ60により搬送方向aへ回転駆動開始されたタイミングクラッチ50は、停止状態にある繰出しローラ30に対して第1相対回転区間40の周方向遊びの範囲内で空回りする。具体的には引出しローラ対251a、251bにより引き出されている紙幣がフィードローラを連れ回りさせている期間が終了するまでタイミングクラッチ50が第1相対回転区間40が有する第1の周方向遊びの範囲内で空回りし、空回りが終了した時点で第1相対回転区間(タイミングクラッチと繰出しローラとの周方向位置関係)は初期状態に復帰している。
フィードローラ停止後の紙幣による連れ回り量(復帰のためのタイミングプーリとタイミングクラッチの回転量)は、分離ニップ部N1よりも上流側に位置する紙幣の余長L1(図7)の長さによって決まる。
従って、搬送される各紙幣長が一定でない場合には、給紙ローラによるフィードローラの駆動停止時点から引出しローラ対によって引き出される紙幣長(余長L1)は一定とはならないため、第1相対回転区間が初期状態に復帰したとしても給紙ローラとタイミングクラッチの周方向位置関係が完全に最初の初期状態と完全一致するわけではない。従って、各相対回転区間の周方向遊びによる空転期間は、紙幣の長さの相違などの不確定要素を考慮して余裕をもって定めることが重要である。
次に、駆動伝達遅延機構Dを含めた更に具体的な重送防止機構の構成例、及び動作について詳細に説明する。
図2(a)、図3、図4に示すように、第1相対回転区間40は、繰出しローラ30とタイミングクラッチ50が図5(b)に示した初期の周方向位置関係にある時に、繰出しローラ30の本体31の一面31A(表面)に設けられた突起状の第1係合部32と、タイミングクラッチ50の本体51の対向面51B(裏面)に配置されて繰出しローラに対して正逆方向へ相対回転する過程で第1係合部32と係合したり離脱(係脱)する突起状の第1被係合部52との間に形成される周方向へ延びる遊び空間(空転区間)である。更に具体的には第1相対回転区間40は、図5(b)において停止状態にある第1被係合部52の前部52aに実線で示す第1係合部32の後部32bが接した状態(第1の始端部40a)から、図5(b)中に破線で示す第1係合部32の前部32aが第1被係合部52の後部52bに接した状態(第1の終端部40b)までに相当する周方向長を最大とする区間である。
タイミングクラッチ50はドーナツ状の本体51の裏面(繰出しローラとの対向面)51Bに突設された第1被係合部52と、本体51の表面(上流側タイミングプーリとの対向面)51Aに突設された第2係合部53と、を有している。本例では第1被係合部52、第2係合部53は本体51の周方向同一箇所に配置されているが、これは一例に過ぎず、異なった周方向位置に配置してもよい。
なお、繰出しローラとタイミングクラッチの周方向位置関係が初期状態にある時に、第1係合部32が始端部40aと一致しているとは限らない。つまり、初期状態において第1係合部32と第1被係合部52とが離間していることもある。初期状態において第1係合部32と第1被係合部52とが離間していれば、第1相対回転区間は最大値よりも短くなるが、このように第1係合部32と第1被係合部52との位置関係が常に一定でないとしても、繰出しローラの回転開始から遅れて開始されるフィードローラの回転による紙幣分離動作に支障が生じないように繰出しローラの回転開始後のフィードローラの回転開始タイミングを適切に設定することは設計上困難ではない。
図2(b)、図3、図4に示すように、第2相対回転区間45は、タイミングクラッチ50と上流側タイミングプーリ60が図5(c)に示した初期の周方向位置関係にある時に、タイミングクラッチ50の一面50Aに設けられた突起状の第2係合部53と、上流側タイミングプーリ60の本体61の対向面61Bに配置されてタイミングクラッチ50に対して正逆方向へ相対回転する過程で第2係合部53と係合したり係合解除する突起状の第2被係合部62との間に形成される周方向へ延びる遊び空間(空転区間)である。更に具体的には第2相対回転区間45は、図5(c)において停止状態にある実線で示す第2被係合部62の前部62aに第2係合部53の後部53bが接した状態(第2の始端部45a)から、図5(b)中に破線で示す第2係合部53の前部53aが第2被係合部62の後部62bに接した状態(第2の終端部45b)までに相当する周方向長を最大とする区間である。
繰出しローラ30、タイミングクラッチ50、上流側タイミングプーリ60が停止している初期状態(初期位置)では、図5(b)(c)に示すように第1係合部32は第1被係合部52の搬送回転方向(正転方向)前部52a側(第1の始端部40a)に位置しており、第2係合部53は第2被係合部62の搬送回転方向(正転方向)前部62a(第1の始端部45a)に位置している。
繰出しローラ30が搬送方向へ回転して紙幣積載部10内の最底部の一枚目の紙幣P1を分離ニップ部N1に向けて送り出す際に初期位置(第1の始端部40a)にあった第1係合部32が停止状態にある第1被係合部52の前部52aから離間する方向へ回転移動し、第1係合部32が周回してきて第1被係合部52の後部52bに当接した後で(第1の終端部40bに達した後で)第1被係合部52に駆動力を伝達してタイミングクラッチを搬送方向へ回転開始させる。
タイミングクラッチ50の停止時に初期位置(第2の始端部45a)にあった第2係合部53が回転開始する当初は、第2被係合部62の前部62aから離間する方向へ移動し、第2係合部53が周回してきて第2被係合部62の後部62bに当接した後で(第2の終端部45bに達した後で)第2被係合部62に駆動力を伝達して上流側タイミングプーリ60を回転開始させて、繰出しローラからの搬送方向への駆動力をタイミングプーリに伝達することによりタイミングベルトを介してフィードローラを搬送方向に回転駆動する。
タイミングクラッチの第1被係合部52は、繰出しローラの第1係合部32と係合したり離脱することが可能な位置関係(係脱可能な位置関係)にあり、本例では第1被係合部52と第1係合部32との間に形成される第1相対回転区間40の周方向遊び角度は本例では最大250度である。また、タイミングクラッチの第2係合部53は、上流側タイミングプーリ60の第2被係合部62と係脱可能な位置関係にあり、本例では第2係合部53と第2被係合部62との間に形成される第2相対回転区間45の周方向遊び角度は本例では最大250度である。従って、第1、及び第2相対回転区間40、45の合計の最大周方向遊び角度は500度であり、繰出しローラの回転数に換算すると約1.4周分となる。
周方向遊び長が最大500度となる設計で給紙モータ70を駆動させると、繰出しローラ30とフィードローラ110との間に約1.4周分の周回遅れが発生する。この周回遅れ量は任意に設定可能であるが、紙幣長との関係で適切値に設定することにより、繰出しローラ30の繰出しによって先行して分離ニップ部N1に給紙された二枚目の紙幣P2がブレーキローラ130に先端を接した状態で停止してから所定の遅れをもってフィードローラが回転を開始して、一枚目の紙幣P1だけを分離ニップ部N1に送り込んで前進させることが可能となる。
[重送紙幣の分離動作説明]
次に本発明の第一の実施形態における紙幣分離搬送装置を構成する各部材の動作を紙幣の搬送タイミングとの関係で説明する。
図5乃至図9は繰出しローラの駆動によって発生した重送を解消する手順を説明する図であり、図5(a)、図6(a)、図7(a)、図8(a)、及び図9(a)は紙幣分離搬送装置の要部正面図、図5(b)、図6(b)、図7(b)、図8(b)、及び図9(b)は第1相対回転区間内における動作説明図(図2のA−A断面図)、図5(c)、図6(c)、図7(c)、図8(c)、及び図9(c)は第2相対回転区間内における動作説明図(図2のB−B断面図)である。図10は戻しレバーが作動して残留紙幣を戻している状態を示す正面図であり、図11(a)及び(b)は戻しレバー及びトルクリミッタの構成を示す斜視図、及び分解斜視図であり、図12は第一の実施形態の動作手順を示すフローチャートである。
図5(a)に示した初期状態では繰出しローラ30とタイミングクラッチ50が初期の周方向位置関係にある。この初期状態では給紙モータ70は停止しており、同図(b)に示すように繰出しローラ30とタイミングクラッチ50との間には、第1相対回転区間40の周方向遊びが周方向長(角度)分、本例では最大250度確保された状態にある。また、同図(c)に示すようにタイミングクラッチ50と上流側タイミングプーリ60との間には、第2相対回転区間45の周方向遊びが周方向長(角度)分、本例では最大250度確保された状態にある。従って、繰出しローラ30と上流側タイミングプーリとの間には最大で合計500度の周方向長遊びが確保されていることになる。
図5(a)の初期状態では軸部101及びフィードローラ110には正転方向への駆動力が加わっていない状態で停止しているため、トルクリミッタ265よりも弱いバネ力を有した戻しバネ267の力により戻しレバー261は戻し方向へ回動した状態を維持している。
この初期状態では、図5(b)に示すように第1係合部32の後部32bが第1被係合部52の前部52aと接した第1相対回転区間40の始端部40aにあり、且つ(c)に示すように第2係合部53の後部53bが第2被係合部62の前部62aと接した第2相対回転区間45の始端部45aにある。
図6(a)の状態においても、図5(a)と同様に軸部101及びフィードローラ110には正転方向への駆動力が加わっていないため、戻しレバー261は戻しバネ267により戻し方向へ回動した状態を維持している。
図示しない給紙スイッチがオン、或いは図示しないホストマシンからの操作開始信号により、給紙動作が開始される(図12、ステップS1)。
初期状態において給紙スイッチがオンされ、紙幣積載部10に紙幣束Pがセットされたことが開始センサ75によって検知されると、制御手段300は給紙モータ70、及び引出し搬送モータ255を搬送方向(正転方向)へ駆動開始する(図6、図12、ステップS2、S3、S4)。
この時に回転し始めるのは、繰出しローラ30と引出しローラ対251a、251bだけであり、第1、及び第2相対回転区間40、45の存在によって繰出しローラ30、及びタイミングクラッチ50が順次空回りしている期間は、上流側タイミングプーリ60、及びフィードローラ110は回転を停止している。
なお、ステップS4は一例であり、開始センサ75による紙幣束セット検知があった時に給紙モータ70のみを駆動開始し、一枚目の紙幣の先端が引き出しローラ対の引出しニップ部N2に到達したことを検知してから引出し搬送モータ255を駆動開始させるようにしてもよい。
繰出しローラ30が正転を開始すると、紙幣束Pの最下部の一枚目の紙幣P1が繰り出されるが、図5(a)に示すように紙幣束Pを構成する各紙幣の先端が不揃いで、二枚目P2以降の紙幣が一枚目の紙幣P1より搬送方向前方に突出していることがある。この状態で繰出しローラが正転して二枚目以降の紙幣が一枚目の紙幣と重なって送出されると、二枚目以降の紙幣が一枚目の紙幣に先行して分離ニップ部N1に達し易い。重送時に先端が一枚目紙幣P1よりも先行している二枚目紙幣P2は分離ニップ部N1の手前、具体的にはブレーキローラ130の周面に接してそれ以上の前進を制止された状態となる(図6(a))。また、二枚目紙幣に続いて一枚目の紙幣P1も図6(a)に示すようにはブレーキローラ130の周面に接してそれ以上の前進を制止された状態となる。
この段階でも第1相対回転区間40の遊びがなくなるまで繰出しローラ30だけが空転するので、繰出しローラが紙幣P1の先端部を停止しているブレーキローラ130に押し付け続けることになるが、紙幣積載部10上の紙幣束Pの上面に対して何らの加圧力も付与されていないか、或いは僅かな加圧力しか付与されていないので、繰出しローラと一枚目紙幣P1との接触面には上からの押圧力に起因した強い摩擦搬送力が発生せず、ブレーキローラに対して紙幣が変形するまで押し込まれることはない。つまり、繰出しローラの搬送力によって紙幣P1の先端がブレーキローラに押し付けられたとしても、紙幣P1は戻り方向、及び上下方向へ自由に移動、変形できるのでダメージが先端に蓄積して変形することがない。また、紙幣積載部10上の紙幣束Pの上面に対して強い加圧力が付与されていなくても、紙幣自体が有する腰と積載された紙幣束の自重によって紙幣P1と繰出しローラとの間には必要最低限の繰出しのための摩擦力を確保することができる。
繰出しローラ30の第1係合部32が第1相対回転区間40の始端部40aから終端部40b(第1被係合部52の後部52b)までの回転移動を終了して周方向遊びがなくなると、第1係合部32はタイミングクラッチ50の第1被係合部52に接してタイミングクラッチを正転開始する(図12、ステップS5)。図6(b)は、始端部40aにあった第1係合部32が正転方向へ周回移動して終端部40bを通過した後の状態を示しており、この段階では既に第1係合部32が第1被係合部52を押圧開始していることにより繰出しローラとタイミングクラッチが正転方向へ一体回転を開始している。タイミングクラッチは第2相対回転区間45の遊びがなくなるまで繰出しローラ30と共に空転するので、フィードローラ110は依然として停止している。
図6(c)、図7(c)に示すように第1終端部40bに相当する第2相対回転区間の第2始端部45aから正転を開始した第2係合部53は第2相対回転区間の周方向遊び範囲の第2終端部45bを通過する際に上流側タイミングプーリの第2被係合部62の後部62bに接触してこれを正転方向へ押圧開始するので、上流側タイミングプーリが正転を開始する(図12、ステップS6)。即ち、第2相対回転区間の始端部45aから正転を開始したタイミングクラッチ50の第2係合部53が第2相対回転区間の終端部45bまでの回転移動を終了して周方向遊びがなくなると、第2係合部53が上流側タイミングプーリ60の第2被係合部62に接して上流側タイミングプーリを駆動開始するので、この段階で初めてタイミングベルト125、下流側タイミングプーリ120からフィードローラ110に駆動力が伝達されてフィードローラが正転を開始する(図7(a)、図12、ステップS7)。
これを言い換えれば、繰出しローラ30が回転を開始した後では、第1相対回転区間の周方向遊びと第2相対回転区間の周方向遊びが順次なくなったタイミングでフィードローラは初めて回転を開始する。
この時、図6(a)に示すように先端をブレーキローラに接触させた一枚目の紙幣P1の下面だけがフィードローラと接しているために、図7の段階でフィードローラが回転すると一枚目紙幣だけが分離ニップ部N1を通過し、二枚目以降の紙幣はブレーキローラで制止されるので、一枚目の紙幣を二枚目以降の紙幣から分離した上での正常な搬送が実現できる。
次いで、図7(a)に示すように分離されて分離ニップ部N1を通過した一枚目の紙幣P1の先端が引出しローラ対のニップ部N2を通過し、図8(a)のように次点センサ253により検知されると、制御手段300は給紙モータ70を停止させる(図12、ステップS8、S9)。このため、繰出しローラ30、フィードローラ110は停止し、引出し搬送モータ255によって駆動されている引出しローラ対251a、251bが紙幣P1を分離ニップ部N1から引張り出すことになる。
この段階では、図8(a)に示すように紙幣P1は分離ニップ部N1に中間部がニップされて余長Lの分だけが分離ニップ部N1を未通過の状態で残っているため、紙幣P1が引き抜かれるのに伴ってフィードローラが正転方向に供回りする(図12、ステップS10)。給紙モータ70の停止により上流側タイミングプーリ、タイミングクラッチ、及び繰出しローラが停止している状態で、図9(a)に示すようにフィードローラが更に紙幣P1と連れ回り、すなわち外部から回され続けることによって、上流側タイミングプーリ、タイミングクラッチが順次正転を再開し、図5、図6、図7に示した給紙モータの駆動による給紙、分離動作によって一旦喪失されていた第2及び第1相対回転区間45、40の各遊びが順次に回復して行くことになる(図12、ステップS11、S12)。
即ち、図8(a)の状態では、第1係合部32、第1被係合部52は同図(b)に示すように回転を停止し、第2係合部53は同図(c)に示すように回転を停止している。この状態でフィードローラが紙幣P1の余長Lからの駆動により回転を続けると、第2被係合部62が停止状態にある第2係合部53の前部53aから離れる正転方向へ回転を続ける遊びの回復動作を開始する。この遊びの回復動作中は、タイミングクラッチに駆動が伝わらない状態にあるためほぼ軽負荷である。従って、引出しローラ対のみで容易に紙幣を引張出すことができ、紙幣を引き裂くなど損傷させることもない。
なお、図7(a)においてフィードローラ軸部101、及びフィードローラ110が正転を開始すると、それまで戻しバネ270によって戻し方向へ付勢されていた戻しレバー261がトルクリミッタ265の作用によりフィードローラ軸部101と連れ回りを開始し、その後、戻しレバーがストッパ268に接した位置で戻しレバーの基部が摺動部材263(フィードローラ軸部101)とスリップするためその位置で停止を続ける。
反時計回り方向へ周回してきた第2被係合部62が停止状態にあるタイミングクラッチの第2係合部の後部53bに到達してこれを駆動し始めるとタイミングクラッチが回転を開始するため、図8(b)のように第1係合部32の前部32aと接する位置にあった第1被係合部52が前部32aから離間する方向へ移動を開始する。第1被係合部52が反時計回り方向へ周回している期間中に図9(a)に示すように紙幣P1の後端が分離ニップ部N2を通過した時点でタイミングクラッチは回転を停止する。図9(b)及び(c)はタイミングクラッチの停止により各相対回転区間40、45の周方向遊びが回復した際の各係合部、被係合部の位置関係を示している。
図9(a)のように引出しローラ対による紙幣の引出しにより分離ニップ部N1を紙幣後端が通過した時点で引出しが終了し、本紙幣分離搬送装置による一枚目の繰出し、分離、下流への搬送作業が終了する。この段階で、フィードローラ30に対する正転方向への駆動力が喪失すると共に、各相対回転区間40、45の周方向遊びが回復しているため、フィードローラ30、及び軸部101は逆転が自由な状態にある。このため、戻しバネ270が戻しレバーを戻し方向へ引きつける力が、圧接バネ265が戻しレバーを摺動部材263と圧接させるに打ち勝って戻しレバーが軸部101(フィードローラ)と共に戻し方向へ回動する。このため、図9に示すように分離ニップ部N1に入り込んでいた残留紙幣P2は、図10に示すように分離ニップ部N1から抜け出して上流側へ戻され、次の紙幣を繰出す際の支障とならない位置まで退避する。分離ニップ部NIに入り込まないまでも、先端をブレーキローラ130に当接、或いは近接させていた残留紙幣も同様に逆転するフィードローラにより下流側へ戻される。
なお、遊びが回復した際の第1係合部32と第1被係合部52の位置関係は例示に過ぎず、図7(a)に示した紙幣の余長L1の長さによって両部の位置関係は一定ではないが、次の紙幣の給紙のために給紙モータが繰出しローラを正転させる際に必要とされる第1及び第2相対回転区間は充分に確保することができる。即ち、図9(b)の例では第1係合部32と第1被係合部52とは、図5(b)の初期状態とは異なり、若干離間した位置関係にある。従って、次の紙幣を給紙する際に繰出しローラ30が回転を開始する際の第1係合部32の初期位置は図示の位置となり、第1被係合部52の後部52bと接するまでの周回角度は250度に満たない角度となる。
図9(b)の時点で、図8において給紙モータ70を停止させた際の分離ニップ部N1から紙幣後端までの長さL1分だけ各相対回転区間45、40が形成する周方向の“遊び”が回復しており、この“遊び”を利用して繰出しローラ駆動タイミングにフィードローラの駆動タイミングの遅れを作ることができ、引き続き後続の紙幣に対して繰出し、分離動作を繰り返すことが可能となる。
なお、本実施形態では紙幣を繰り出すために繰出しローラ30が回転開始してから停止するまでの回転量、言い換えれば停止するタイミングは次点センサ253に紙幣先端が到達したタイミングとしているが、次点センサを省略する構成を採用するとすれば、繰り出された紙幣が分離部で分離を受けてから引出しローラ対に到達するのに要する時間を予め算出しておき、この時間に見合う分だけ繰出しセンサを回転させてから停止させるように構成することができる。
即ち、繰出しローラによる給紙動作によって一旦喪失した相対回転区間による”遊び”を回復するために、引出しローラ対251a、251bによって引き出す紙幣の長さは、フィードローラ110の停止時に分離ニップ部N1から後方に残っている紙幣の余長Lに相当する。例えば、繰出しローラ30が1.4周分回転することで90mmだけ紙幣が分離ニップ部N1に向けて送出された時点で相対回転区間の”遊び”が喪失すると仮定した場合、紙幣の余長Lが90mmであればフィードローラが周方向長90mm分だけ紙幣に連れ回りすることにより”遊び”を回復することができる。
紙幣長によって余長Lは異なるが、上記の例では次点センサ253が紙幣先端を検知したタイミングで給紙モータ70を停止せずに、紙幣の余長Lが約90mmとなる繰出しローラの回転量に達した時に給紙モータを止めるように制御する。
なお、相対回転区間の”遊び”が回復した時には第1係合部32と第1被係合部52とが常に接触した初期の状態に復帰するとは限らない。即ち、”遊び”が回復した時に第1係合部32と第1被係合部52とが若干離間していることもあり、この場合には次の給紙動作における余長Lにバラツキが発生するが、このバラツキを吸収できる程度に予め”遊び”の範囲を大きめに設定しておけば問題はない。
また、フィードローラが必要以上に紙幣との連れ回りにより回転し続けると繰出しローラが回転を開始して次の紙幣が繰り出されてしまうが、紙幣後端が分離ニップ部N1を通過終了するタイミングと各相対回転区間との関係を適正に設定して各相対回転区間の合計周方向長の範囲でフィードローラが停止するように構成すれば問題はない。
なお、次点センサ253を配置する位置は図示の例では引出しローラ対よりも離間した下流側にあるが、図示の位置よりも更に引出しニップ部N2に近づけてもよいし、引出しニップ部N2の上流側に配置してもよい。
なお、本例では一枚目の紙幣先端が引出しローラ対に達したタイミングで給紙モータを停止させてフィードローラを停止させると共に引出しローラ対により該紙幣を引き出して“遊び”を回復させてから、重送紙幣戻し機構260を作動させる制御を行っているが、これは一例に過ぎず、二枚目以降の後続紙幣が引出しローラ対に達する度に一枚毎に重送紙幣戻し機構260を作動させてもよい。或いは、フィードローラの連続回転によって複数枚の紙幣を連続給紙する過程で、任意の紙幣(例えば、6枚目の紙幣)の先端が引出しローラ対に達した段階で重送紙幣戻し機構260を作動させてフィードローラを当該紙幣に連れ回りさせて相対回転区間を初期状態に戻すようにしてもよい。更に、紙幣束を構成する全ての紙幣の給紙が完了して最後の紙幣先端が引出しローラ対に達した段階で上記手順によって重送紙幣戻し機構260を作動させるようにしてもよい。
以上のことは第二実施形態にも当てはまる。
[重送紙幣戻し機構260の動作説明]
戻しレバー261は、図5、図6に示したフィードローラ110が停止状態にあるときには戻しバネ270により戻し方向へ付勢されている。
次いで、戻しレバーは図7に示したフィードローラ110の正転開始時にトルクリミッタ265の作用により軸部101と一体回転することにより戻しバネ270に抗して正転方向へ所定角度回転してストッパ268との接触位置に達してからは、トルクリミッタの作用によりフィードローラ軸部101とスリップしつつ停止した状態を維持する。図8の状態においても、フィードローラの正転中に戻しレバーはストッパ268に接した状態を維持する。
次いで、図9のように一枚目の紙幣P1の後端部が分離ニップ部N1を抜けると、駆動伝達遅延機構Dの作用によりフィードローラは軽負荷で逆転可能となるため、図10に示すように戻しレバーが戻しバネの力により戻し方向へ回動すると共にフィードローラ軸部101を介してフィードローラを戻し方向に回動させることにより、先端を分離部に残留していた二枚目以降の紙幣P2を戻し方向へ移動させることができる。戻しバネにより紙幣を戻し方向へ移動させた後でも戻しレバーは紙幣投入口側に引っ張りきられた状態を維持する。
本発明では、図8、図9に示したように紙幣が引き出されることによりフィードローラが正転する際に分離部に飛び出した状態での残留紙幣が発生し易くなるが、駆動伝達遅延機構Dの作用によりフィードローラは軽負荷で逆転可能となることと、戻しレバーによる戻し作用(フィードローラを逆転させる作用)によって残留紙幣を効率的に退避位置に戻すことが可能となる。
即ち、フィードローラの停止後に引出しローラ対251a、251bにより引き出された一枚目の紙幣P1が分離ニップ部N1を抜けると(図9)、フィードローラは外力から解放される。つまり、給紙モータ70からの駆動も停止し、且つフィードローラが逆転しても駆動伝達遅延機構Dによって負荷がかからないばかりか、ブレーキローラ130はその軸部に配置されたワンウェイクラッチ130aにより戻し方向には回転可能な為、フィードローラ軸部は無負荷、或いは軽負荷で逆転可能な状態となり、戻しバネ270の力で戻しレバーが戻し方向へ回動する(図10)。戻しレバーが戻った角度分だけ、フィードローラ、ブレーキローラも戻し方向に回転し、残留紙幣を投入口側に戻すことができる。トルクリミッタの圧接バネのバネ力も小さくて済むため、低コスト化を実現できる。
このような作用、効果は、相対回転区間40、45による空転区間が存在することにより、一枚目の紙幣がフィードローラを離脱した後にフィードローラに対する負荷を低減できることに要因があり、戻しバネの小さな力で戻しレバーを戻し方向へ回動させることが可能となる。
仮に、相対回転区間が存在しない場合には、戻しレバーを戻し方向へ回動させるのには所定以上の負荷がかかるのでその負荷に抗し得る程度に戻しバネの力を強くする必要があるが、その場合にはトルクリミッタを構成する圧接スプリング267を強くする必要も生じ、その結果フィードローラの正転駆動力も強くせねばならなくなる。つまり、相対回転区間が存在しない場合には、戻しレバー、フィードローラを戻し方向へ回転させることができなくなる。
なお、戻しレバーが図9(a)の状態から戻し方向へ回動して図10(a)の状態に移行すると、戻しレバーが戻った角度分だけフィードローラが戻し方向に回転するが、この際上流側タイミングプーリ60の第2被係合部62は図9(c)の位置から時計回り方向へ若干移動して図10(c)の位置(固定状態にある第2係合部53から若干離間した位置)となる。しかし、これらの図からも明らかなように上流側タイミングプーリ60が逆転する角度、即ち第2被係合部62が時計回り方向へ移動する距離は僅かであるため、“遊び”が回復した状態に実質的な影響を与えることはない。
即ち、上記した戻しレバーの一連の動作によりフィードローラが所定量逆転してから停止するまでの逆回転量は僅かであるために第1被係合部52と第2係合部53と第2被係合部62の位置関係は、ほぼ図9(b)(c)に示した“遊び”の回復時と比しても実質的に同じ相対的位置関係の範囲内にあると言える。このため、次の給紙時には図10(b)(c)に示した初期状態とほぼ同じ状態からスタートすることができる。
以上のことは第二実施形態にも当てはまる。
[第一実施形態の作用、効果のまとめ]
本発明の紙幣分離搬送装置1では、繰出しローラ30による繰出し動作開始の後に、所定の時間差をもってフィードローラ110を回転開始させるために、繰出しローラとフィードローラとの間の駆動伝達経路に、相対回転区間40、45を形成するためのタイミングクラッチ50、上流側タイミングプーリ60を介在させる。即ち、繰出しローラとタイミングクラッチとの間には第1相対回転区間40を設け、タイミングクラッチと上流側タイミングプーリとの間には第2相対回転区間45を設ける。これにより給紙モータを回転させて繰出しローラが回転しても、各相対回転区間の合計に相当する周方向への“遊び”が無くなるまでフィードローラには駆動伝達がなされず停止している。フィードローラの停止期間中に繰出しローラが回転することにより一枚目紙幣P1を繰り出してブレーキローラ130に押し当てて先端を揃える。
紙幣先端がブレーキローラに接した状態で繰出しローラ、タイミングクラッチ、タイミングプーリが正転を続けることにより各相対回転区間により形成される“遊び”が無くなると、フィードローラが繰出しローラ等と共に回転して紙幣分離が開始される。
制御手段300は、分離された紙幣P1の先端部が次点センサ253に到達して検出されると、給紙モータ70を停止させる。
紙幣P1は給紙モータ70とは別の引出し搬送モータ255により駆動される引出しローラ対251a、251bの引出しニップN2により引き出されて搬送が継続される。分離ニップ部N1にニップされた紙幣の位置と紙幣の後端部までの余長L1が引出しローラによって引き出し完了するまでの期間中にフィードローラが紙幣に連れ回りすることにより、喪失していた各相対回転区間40、45の“遊び”が回復する。
一枚目紙幣P1の繰出し、分離、引出し動作完了時に“遊び”が回復して繰出しローラ、タイミングクラッチ、タイミングプーリの周方向位置関係が初期状態に復帰する為、二枚目以降の紙幣の繰出しを開始する場合にも同一の動作が単純な制御で繰り返し行える。
本発明の紙幣分離搬送装置1によれば、繰出し開始前の段階で紙幣束Pを構成する各紙幣の先端が不揃いな状態にあることにより、一枚目の紙幣の繰出しを開始した際に二枚目の紙幣が一枚目に先行して分離ニップ部N1に到達したとしても、両紙幣の先端をフィードローラ、或いはブレーキローラに当接させて揃えてから紙幣分離を行う為、二枚目紙幣が一枚目に先行して分離ニップ部を通過する重送を防止して信頼性の高い、安定した紙幣分離が行える。
また、この一連の繰出し、分離の動作は駆動伝達遅延機構Dの純粋に機械的な構成のみによって実現され、モータの正逆駆動を微細なタイミングで切り替えるような複雑な制御を必要としない。これにより高速処理、高耐久化が可能となる。しかも、駆動伝達遅延機構Dは、単純で簡素な構造であり安価に製造できる。
戻しレバー261は、給紙モータによってフィードローラ110が正転駆動されている期間はトルクリミッタ265の作用によりフィードローラ軸部101に追従して正転方向へ回動するが、ストッパ268と接した時点で正転を停止しつつ、フィードローラ軸部とスリップを開始する。その後も戻しレバーの駆動源であるフィードローラが回転し続けるが、戻しレバーはトルクリミッタにより駆動が断絶されストッパ接触位置で停止し続ける。
一枚目の紙幣P1が分離ニップ部N1を通過した後はフィードローラは外力から解放される。つまり、給紙モータ70からの駆動も停止し、且つ相対回転区間の存在によって逆回転時の負荷が軽減されるばかりか、ブレーキローラ130はワンウェイクラッチ130aにより戻し方向bには回転可能な為、戻しバネ270の力で戻しレバーが戻し方向へ回動する。戻しレバーが戻った角度分だけ、フィードローラ、ブレーキローラが逆転して残留紙幣を戻すことができる。つまり、相対回転区間45を構成する第2被係合部62は図10(c)に示すように停止状態にある第2係合部53に対して戻し方向bへの相対回転は自由であり、相対回転区間40を構成する第被係合部52は図10(b)に示すように停止状態にある第1係合部32に対して戻し方向bへの相対回転が自由である。このため、戻しバネ270によって戻しレバーを介してフィードローラが逆転する際の負荷が極めて小さい状態となっている。
<第二の実施形態>
図13(a)及び(b)は第二の実施形態に係る紙幣分離搬送装置1の要部構成(繰出し部20)を示す平面図、及び相対回転区間内における係合部と被係合部の動作を示す説明図(C−C断面図)である。図14(a)(b)及び(c)は繰出しローラ、上流側タイミングプーリを繰出しローラ軸に組み付けた状態の正面側斜視図、(a)の構成から繰出しローラ軸を除去した状態を示す正面側斜視図、及び(b)の構成から正面側の繰出しローラの分割片を除去した状態を示す正面側斜視図である。図15(a)(b)及び(c)は繰出しローラ、上流側タイミングプーリを繰出しローラ軸に組み付けた状態の背面側斜視図、(a)の構成から繰出しローラ軸を除去した状態を示す背面側斜視図、及び(b)の構成から正面側の繰出しローラの分割片を除去した状態を示す背面側斜視図である。
なお、第一実施形態の繰出し部20と同一部分には同一符号を付して説明する。また、分離部100、引出し搬送部250の構成は第一実施形態とほぼ同様であるため図示を省略した。従って、分離部100、引出し搬送部250の構成、動作は、図1、図2、図5乃至図10の対応部分を参照しつつ説明する。
第二の実施形態に係る紙幣分離搬送装置1が第一の実施形態と異なる点は、タイミングクラッチ50を省略して繰出しローラ軸21上に繰出しローラ30と上流側タイミングプーリ(上流側伝達部材)60を互いに相対回転可能に配置するとともに、繰出しローラと上流側タイミングプーリとを相対回転区間80を介して隣接配置した構成にある。
即ち、第二の実施形態に係る紙幣分離搬送装置1は、繰出しローラ30により紙幣束Pから紙幣を一枚ずつ繰出す繰出し部20と、繰出し部20から一枚目紙幣と共に二枚目以降の紙幣が重なって繰り出される重送が行われている時に繰出しローラと接する一枚目の紙幣P1だけを通過させて下流側に送出すると共に二枚目以降の紙幣の前進を阻止する分離ニップ部N1を備えた分離部100と、分離部内に一部が残っている一枚目の紙幣P1を先端から引出し搬送する引出し搬送部250と、繰出し部20と分離部100との間で駆動力を伝達する中継伝達部200と、各種制御対象を制御する制御手段300と、を備える。
繰出し部20は、図13、図14に示すように紙幣搬送方向と直交する繰出しローラ軸21と、繰出しローラ軸の軸回りに回転し、軸方向に沿って順次配列された繰出しローラ30、及び上流側タイミングプーリ(上流側伝達部材)60と、繰出しローラを搬送方向(反時計回り方向)aに正転駆動する給紙モータ(繰出しモータ)70と、繰出しローラ30と上流側タイミングプーリ60との間に相対回転区間80を設けて正逆双方向への各駆動力の伝達を夫々遅延(断接)させる駆動伝達遅延機構Dと、を備える。
分離部100は、図1等に示すように正転した時に繰出しローラ30により繰り出された一枚目の紙幣P1の面に接してこれを搬送するフィードローラ(分離ローラ)110と、フィードローラとの間で分離ニップ部を形成し、二枚目以降の紙幣の前進を阻止する摩擦分離部材(ブレーキローラ)130と、を備える。分離ローラ130の軸部には図示しないワンウェイクラッチ130aが配置されることにより、紙幣を戻す方向(反時計回り方向)への回転が可能となっている。
中継伝達部200は、図1等に示すようにフィードローラと同軸状に隣接配置されてフィードローラと一体回転する下流側タイミングプーリ(下流側伝達部材)120と、上流側タイミングプーリと下流側タイミングプーリ120との間の駆動力伝達を中継するタイミングベルト(中継伝達部材)125と、を備える。
引出し搬送部250は、図1等に示すように分離ニップ部N1との距離Lが紙幣の搬送方向長よりも短い下流側位置に配置されて引出しニップ部N2を形成する引出しローラ対(搬送部材)251a、251bと、次点センサ253と、引出しローラ対を駆動する引出し搬送モータ255と、を備える。
図13、図14に示す駆動伝達遅延機構Dは、繰出しローラ30と上流側タイミングプーリ60との周方向位置関係を初期位置関係と終期位置関係との間で双方向に相対回転可能とし、且つ、上流側タイミングプーリに対する繰出しローラの位置関係が初期位置関係から終期位置関係に達するまでの間は、上流側タイミングプーリ60に対して駆動力を伝達せず、終期位置関係に達した時以降に駆動力を伝達する構成を備える。
なお、ここで初期位置関係とは図13(b)において被係合部62に対して係合部33が符号33−1で示した初期位置にある状態を意味し、終期位置関係とは同図において被係合部62に対して係合部33が符号33−2で示した終期位置にある状態を意味する。
制御手段300は、図7、図8に示すようにフィードローラ110が正転することにより繰出しローラ30により繰り出されていた一枚目の紙幣P1が引出しローラ対の引出しニップ部N2に達する適宜の(最適な)タイミングで、給紙モータ70による繰出しローラの駆動を停止すると共に引出しローラ対による紙幣の引出し搬送を実施することにより、一枚目の紙幣の余長Lの搬送力を利用してフィードローラ110、中継伝達部材125、上流側タイミングプーリ60を正転させる。
正転する上流側タイミングプーリ60は、停止状態にある繰出しローラ30に対して紙幣後端部が分離ニップ部N1を通過するまで相対回転区間80の範囲内で相対回転して分離ニップ部通過後に停止し、上流側タイミングプーリの相対回転終了時には繰出しローラと上流側タイミングプーリとが初期位置関係に復帰する(図9(a)参照)。
次に、図14、図15に基づいて駆動伝達遅延機構Dの具体的な構成と動作について説明する。
駆動伝達遅延機構Dが備える相対回転区間80は、繰出しローラ30に設けられた係合部33と、上流側タイミングプーリ60に設けられて繰出しローラに対して正逆方向へ相対回転する過程で係合部33と係合したり、離脱する被係合部62との間に形成される。
繰出しローラ30、上流側タイミングプーリ60が停止している初期状態では、図13(b)中に破線で図示したように係合部33は符号33−1で示した被係合部62の正転方向前側(前部62a側)に位置している。繰出しローラが正転して一枚目の紙幣を分離ニップ部に向けて送り出す際に初期状態にあった係合部33が停止状態にある被係合部62の前部62aから離間する方向(図13(b)の反時計回り方向)へ回転移動し、係合部33が周回してきて図13(b)中に破線(符号33−2)で図示したように被係合部62の後部62bに当接した後で被係合部62に駆動力を伝達して上流側タイミングプーリを正転開始させて、中継伝達部材125を介してフィードローラ110を正転駆動する。
制御手段300は、繰出しローラ30により繰り出されていた一枚目の紙幣P1が引出しローラ対の引出しニップ部N2に確実に達したことが判明してから、給紙モータ70による繰出しローラの駆動を停止すると共に引出しローラ対による紙幣の搬送を実施することにより、分離ニップ部100よりも上流側に残された紙幣の余長L1による搬送力を利用してフィードローラ、中継伝達部材125、上流側タイミングプーリ60を正転させる。これにより、上流側タイミングプーリの被係合部62が停止状態にある繰出しローラの係合部33と接触、或いは近接する位置まで回転して停止したときに上流側タイミングプーリ及び繰出しローラの初期位置関係への復帰が完了する。
本実施形態でも図示しないフィードローラの軸部101に戻しレバー261、トルクリミッタ265が設けられると共に、戻しバネ270によって戻しレバーを戻し方向へ付勢する重送紙幣戻し機構260の構成が採用されている。重送紙幣戻し機構260による残留紙幣を戻すための作用、効果の説明は第一実施形態と重複するため説明を省略する。
<第二実施形態の駆動伝達機構の変形例>
図16(a)(b)及び(c)は第二実施形態の変形例に係る紙幣分離搬送装置の繰出し部20における中継伝達機構の他の構成例を示す平面図、正面図、及び斜視図である。
上記第一、第二実施形態では繰出し部20と分離部100との間での駆動力を伝達する中継伝達機構としてタイミングプーリとタイミングベルトから成る構成を採用したが、これは一例に過ぎない。
図16は中継伝達機構を複数のギヤから構成した例を示している。
繰出し部20において、給紙モータ70の出力軸に一体化された出力ギヤ70aは、繰出しローラ30の軸部35に対して同一軸心状に固定された従動ギヤ71と噛合している。繰出しローラは分割片30a、30bから構成されており、一方の分割片30aには駆動伝達遅延機構Dを構成する係合部33が上流側伝達部材としての上流側伝達ギヤ150に向けて突設されている。上流側伝達ギヤ150の対向面には周回移動する過程で係合部33と係合したり離脱する被係合部152が突設されている。係合部33と被係合部152の間には相対回転区間80が形成される。
分離部100において、フィードローラ軸101にはフィードローラ110が軸芯を固定されており、フィードローラ軸101の端部には伝達部材としての下流側伝達ギヤ155の軸芯が固定されている。
上流側伝達ギヤ150と下流側伝達ギヤ155との間には中継伝達部材としての複数の中間ギヤ140が配置されている。
本実施形態は、第二実施形態における上流側タイミングプーリ、下流側タイミングプーリ、タイミングベルトに代えて、上流側伝達ギヤ150、下流側伝達ギヤ155、中間ギヤ160を用いたものであり、駆動伝達遅延機構Dを構成する係合部33、及び被係合部152の挙動に変わりはないため重複した説明は省略する。
本実施形態でも、図示しないが、フィードローラ110の軸部101に戻しレバー261、トルクリミッタ265が設けられると共に、戻しバネ270によって戻しレバーを戻し方向へ付勢する重送紙幣戻し機構260の構成が採用されている。重送紙幣戻し機構260による残留紙幣を戻すための作用、効果の説明は第一実施形態と重複するため説明を省略する。
<本発明の紙幣分離搬送装置の適用例>
図17は本発明の第一実施形態、及び第二実施形態に係る紙幣分離搬送装置1を夫々適用可能な紙幣取扱装置の一例としての紙幣鑑別器の概略構成を示す断面図である。
紙幣鑑別器(紙葉鑑別器)400は、筐体401の前面上部に設けた入金口402に設けた入金トレイ403と、入金口402の内部に設けられた搬送路405に沿って順次配置された紙幣分離搬送装置1、及び紙幣の真贋を判定する鑑別部410と、鑑別部により真正であると判定された紙幣を筐体の前面下部に設けられた真正紙幣トレイ420へ仕分け搬送し、偽紙幣であると判定された紙幣を偽紙幣トレイ421へ仕分け搬送する仕分け搬送部415と、制御手段425と、を備えている。
紙幣鑑別器400は、紙幣入金機、紙幣計数機、各種自動販売機、両替機等のように物品やサービスを提供する紙幣取扱装置とは異なり、紙幣の真贋を識別することだけを目的とした小型軽量の装置であり、例えば銀行の外貨両替窓口や、空港の外貨の両替場等に設置されて簡易、迅速に識別処理を行う装置である。紙幣鑑別器400は、所定枚数、例えば50枚の紙幣束を入金トレイ403にセットして、紙幣分離搬送装置1によって自動的に一枚ずつに給紙、分離してから、CIS(Contact Image Sensor)を備えた鑑別部410において真券と偽造の疑いのある紙幣を判定する。次いで、仕分け搬送部415において、真正紙幣と偽紙幣を夫々紙幣を真正紙幣トレイ420と偽紙幣トレイ421へ仕分け搬送する。
入金トレイ403にセットされた紙幣束を構成する各紙幣の先端が不揃いの状態であっても、紙幣分離搬送装置1は繰出し部20により繰り出された紙幣の先端を分離ローラ対に一旦当接させて先端を揃えてから分離作業を行うので、二枚目の紙幣が一枚目に先行して送出されるタイプの重送をも防止することができる。
また、重送紙幣戻し機構260の作用により、一枚目の紙幣の繰出し、分離が終了した後で分離部に残留する紙幣を次の紙幣の繰出し、分離に障害となることがない位置まで後退させることが可能となる。
なお、本発明の紙幣分離搬送装置は、紙幣識別機のみならず、紙幣入金機、紙幣計数機、各種自動販売機、両替機等のように物品やサービスを提供する他の紙幣取扱装置にも適用することができる。
<本発明の構成、作用、効果のまとめ>
第1の本発明に係る紙葉分離搬送装置は、繰出しローラ30により紙葉束Pから紙葉を一枚ずつ繰出す繰出し部20と、繰出し部20から繰出されてきた紙葉が重送状態にある時に繰出しローラと接する一枚目の紙葉P1だけを通過させて下流側に送出すると共に二枚目以降の紙葉の前進を阻止する分離部100と、該分離部内に一部が残っている一枚目の紙葉P1を引出し搬送する引出し搬送部(紙葉引き出し手段)250と、繰出し部と分離部との間で駆動力を伝達する中継伝達部200と、一枚目の紙葉が前記分離部を通過した後に該分離部に残留する二枚目以降の紙葉を上流側へ戻す(次の分離作業に支障のない退避位置へ戻す)重送紙葉戻し機構260と、各種制御対象を制御する制御手段300と、を備える。更に、繰出し部は、紙葉搬送方向と直交する繰出しローラ軸21と、該繰出しローラ軸の軸回りに回転し、軸方向に沿って順次配列された繰出しローラ30、及び上流側伝達部材60と、繰出しローラを搬送方向に正転駆動する給紙モータ70と、繰出しローラと上流側伝達部材との間に少なくとも一つの相対回転区間80(40、45)を設けて正逆双方向への駆動力の伝達を遅延(断続)させる駆動伝達遅延機構Dと、を備える。分離部100は、正転した時に繰出しローラにより繰り出された一枚目の紙葉面に接してこれを搬送するフィードローラ110と、該フィードローラとの間で分離ニップ部N1を形成し、二枚目以降の紙葉の前進を阻止する摩擦分離部材(ブレーキローラ)130と、を備える。中継伝達部200は、フィードローラと同軸状に隣接配置されて一体回転する下流側伝達部材120と、上流側伝達部材と下流側伝達部材120との間の駆動力伝達を中継する中継伝達部材125と、を備える。重送紙葉戻し機構260は、フィードローラの軸部により相対回転可能に軸支された戻しレバー261と、フィードローラの軸部と戻しレバーとの間に配置されて該軸部と該戻しレバーとの間のトルク差が一定値を越えない限り該軸部と該戻しレバーを正転方向へ一体回転させるトルクリミッタ265と、該戻しレバーを戻し方向へ付勢する弾性付勢手段270と、を備える。引出し搬送部250は、分離ニップ部との距離が紙葉の搬送方向長よりも短い下流側位置に配置されて引出しニップ部を形成する引出し搬送部材(引出しローラ対)201a、201bと、該引出し搬送部材の一方を駆動することにより給紙モータにより駆動されていないフィードローラを搬送方向へ回転する引出し搬送モータ205と、を備える。駆動伝達遅延機構Dは、繰出しローラと上流側伝達部材との周方向位置関係を初期位置関係と終期位置関係との間で双方向に相対回転可能とし、且つ、上流側伝達部材に対する繰出しローラの位置関係が初期位置関係から終期位置関係に達するまでの間は、上流側伝達部材60に対して駆動力を伝達せず、終期位置関係に達した時以降に駆動力を伝達する構成を備える。制御手段は、フィードローラが正転することにより繰出しローラにより繰り出されていた一枚目の紙葉が引出しニップ部に達する適宜のタイミングで、給紙モータによる繰出しローラの駆動を停止すると共に引出し搬送部材による紙葉の引出し搬送を実施することにより、一枚目の紙葉の搬送力を利用してフィードローラ、中継伝達部材125、上流側伝達部材を正転し、紙葉引き出し手段によりフィードローラを搬送方向へ回転させる。
正転する上流側伝達部材が停止状態にある繰出しローラに対して、紙葉後端部が分離ニップ部を通過するまで相対回転区間の範囲内で相対回転して分離ニップ部通過後に停止し、上流側伝達部材の相対回転終了時には繰出しローラと上流側伝達部材とが初期位置関係に復帰する。
戻しレバー261は、フィードローラの正転開始時にトルクリミッタ265の作用によりフィードローラの軸部と一体回転することにより戻しバネに抗して正転方向へ所定角度回転した停止位置に達してからは軸部とスリップしつつ停止状態を維持する。この際、戻しレバーはトルクリミッタの作用により、フィードローラ軸部に対して滑りを起こして空回りする。
一枚目の紙葉後端部が分離ニップ部N1を抜けると、フィードローラは軽負荷で逆転可能となり、戻しレバーが戻しバネの力により戻し方向へ回動すると共にフィードローラ軸部を介してフィードローラを戻し方向に回動させることにより、分離部に残留していた二枚目以降の紙葉を戻し方向へ移動させる。
複数のモータにより繰出しローラとフィードローラを個別に駆動することなく、単一のモータを用いつつ、純粋に機械的な構成によって、繰出しローラが所定の角度回転するまでフィードローラの回転を開始させないことにより、二枚目以降の紙葉が一枚目に先行して分離ニップ部を通過することを阻止することができる。
即ち、長さが異なる紙葉が混在している場合等、先端が不揃いな状態の紙葉束からの繰出し、分離作業において、重送された紙葉の先端を摩擦分離部材130、或いはフィードローラ110に接触させることにより先端を揃えつつ、常に一枚目の紙葉を二枚目に先行させて分離ニップ部N1に突入させて安定した分離を実現する。そのために、フィードローラではなく繰出しローラを給紙モータにより直接駆動し、フィードローラについては駆動力の伝達タイミングに時差を設けるクラッチ機構(駆動伝達遅延機構D)を介して間接的に駆動力を伝達するようにした。このため、繰出しローラの駆動をフィードローラに先行させることが可能となった。しかも一つのモータで繰出しローラとフィードローラを駆動するシンプルな機械的な構成とすることができた。
フィードローラが駆動を開始した時点では駆動伝達遅延機構を構成する相対回転区間の”遊び”が一旦喪失しているが、フィードローラと摩擦分離部材との分離ニップ部の上流側に余長部分が残っている紙葉が引出し搬送部材によって引き出される際におけるフィードローラ、上流側伝達部材の空回りが完了した時点で相対回転区間の”遊び”は復活する。このため、駆動モータを格別に制御することなく次の紙葉の繰出し、分離作業を再開することができる。
また、従来は積載部の紙葉束を上から加圧して平坦化することにより、巻き上がったり、反り上がったカール癖を強く押え込んで給紙し易くしていた。これに対して本発明では、紙葉束を積極的に加圧しない。紙葉束を加圧し過ぎると、先端を摩擦分離部材130、或いはフィードローラに当接させた状態にある紙葉に対して繰出しローラからの繰出し力を加え続けた時に紙葉がしわくちゃに潰れて給紙不能な状態になる。紙葉束を加圧しないか、最小限の軽い負荷で加圧しつつ、なでる程度の軽い繰出し力により繰出しを行うことにより、紙葉の潰れを防ぎつつ繰出しを行うことができ、且つ分離部において紙葉が潰れを起こすことを防止できる。つまり、繰出し位置にある紙葉束を積極的に加圧しなくても、紙葉束の自重と、紙葉の腰によって、正常な繰出しと、繰出し後の潰れを防止できる。
給紙モータにより繰出し動作を開始した繰出しローラにより繰り出された紙葉先端が分離部に達するまでの繰出しローラの回転数は、繰出しローラの径、繰出しローラから分離部までの距離、一回の繰出し量のバラツキ、紙葉長のバラツキ等を考慮して決定される。フィードローラは紙葉の先端が分離部に到達するタイミングで回転させるが、繰出しローラの駆動開始後にフィードローラが駆動を開始するタイミングは駆動伝達遅延機構Dが形成する相対回転区間の周方向長、紙葉長等により決定される。また、分離ニップ部N1から引出しニップ部N2までの距離Lは、紙葉の余長L1によってフィードローラが連れ回りすることによって一旦喪失された相対回転区間の周方向遊びが回復できるように設定する。フィードローラが停止した後でプルローラ対によって引き出される紙葉長が短か過ぎると周方向遊びが充分に回復できず、同紙葉長が長すぎると周方向遊びの回復後も紙葉を引き出し続けることとなり紙葉に過大なテンションを加えて破断させる原因となる。
また、駆動伝達遅延機構Dが備えた相対回転区間による空回り期間(周方向遊び長)を長く設定したい場合には複数の相対回転区間を繰出しローラと上流側伝達部材との間に設けることが有効である。具体的には、繰出しローラと上流側伝達部材との間に第三の回転部材としてのクラッチ部材を設けて、繰出しローラとクラッチ部材、クラッチ部材と上流側伝達部材との間に夫々相対回転区間を設けることができる。
また、本発明によれば、分離動作の遅延、制御の複雑化、検知センサの増設をもたらすことなく、重送紙葉に分離を施して一枚目の紙葉だけを下流側に通過させる作業が終わった時点で、分離部に残留していた残りの紙葉を上流側に戻し搬送して次の分離作業における障害とならないようにすることができる。
即ち、紙葉束から一枚ずつ繰り出された紙葉を分離部を通過させる行程では、分離部通過後に残りの紙幣が分離ニップ部内や手前に残ることが多い。この状態のままで次の給紙を行うと、二枚が重送状態で通紙される事態が発生する。従って、一枚目が分離部を通過した後は、後続の全ての紙葉が分離ニップ部、各分離ローラから充分に下流側に離間した理想的な状態から繰出しをスタートする必要がある。
本発明では、駆動伝達遅延機構Dが形成する相対回転区間の合計周方向長に相当する空転区間があるからこそ、フィードローラの停止後に小さい戻しバネ力で戻しレバーを戻すことができる。つまり、相対回転区間の存在により、フィードローラと給紙モータとの駆動が切れている期間を形成できるので、弱い戻しバネ力による簡易な戻しレバー構造と、バネ力の弱いトルクリミッタ構造を用いつつ、低コストで重送紙葉戻し機構260を構築できる。
第2の本発明に係る紙葉分離搬送装置では、摩擦分離部材は、ブレーキローラ軸により軸支されたブレーキローラ130であり、該ブレーキローラは、前記ブレーキローラ軸との間に配置されたワンウェイクラッチ130aにより正転方向には回転しない一方で、紙葉戻し方向には回転するように構成されていることを特徴とする。
ブレーキローラ130はワンウェイクラッチ130aにより戻し方向に軽負荷で回転できる。従って、駆動伝達遅延機構Dの作用によってフィードローラ軸部101が軽負荷になると、戻しバネ270の小さな力によってフィードローラとブレーキローラを戻し方向に回転させて残留紙幣を戻すことができる。
第3の本発明に係る紙葉分離搬送装置では、相対回転区間80は、繰出しローラに設けられた係合部33と、上流側伝達部材60に設けられて繰出しローラに対して正逆方向へ相対回転する過程で係合部と係合・離脱する被係合部62との間に形成され、繰出しローラ、上流側伝達部材が停止している初期状態では、係合部は被係合部の正転方向前側に位置しており、繰出しローラが正転して一枚目の紙葉を分離ニップ部N1に向けて送り出す際に初期状態にあった係合部33が停止状態にある被係合部62の前部から離間する方向へ回転移動し、係合部が周回してきて被係合部の後部に当接した後で被係合部に駆動力を伝達して上流側伝達部材を正転開始させて繰出しローラからの搬送方向への駆動力を上流側伝達部材に伝達することにより中継伝達部材を介してフィードローラを正転駆動する。更に、制御手段300は、繰出しローラにより繰り出されていた一枚目の紙葉が引出し搬送部材の引出しニップ部に達してから、給紙モータによる繰出しローラの駆動を停止すると共に引出し搬送部材による紙葉の搬送を実施することにより、分離ニップ部よりも上流側に残された紙葉の余長による搬送力を利用してフィードローラ、中継伝達部材125、上流側伝達部材を正転させることにより、上流側伝達部材の被係合部が停止状態にある繰出しローラの係合部と接触、或いは近接する位置まで回転して停止したときに上流側伝達部材及び繰出しローラの初期位置関係への復帰が完了することを特徴とする。
駆動伝達遅延機構Dを繰出しローラと上流側伝達部材の二部品から構成する場合には、繰出しローラに設けた係合部33と上流側伝達部材に設けた被係合部62との間に相対回転区間80を形成する。相対回転区間80を延長する要請を満たすためには、繰出しローラと上流側伝達部材との間にクラッチ部材を配置して相対回転区間の数を増設することが有効である。
第4の本発明に係る紙葉分離搬送装置では、繰出しローラと上流側伝達部材との間に位置する繰出しローラ軸の部位に、クラッチ部材が繰出しローラ、及び上流側伝達部材に対して相対回転可能に(且つ同軸状に)軸支されている。
この発明では、相対回転区間80は、繰出しローラとクラッチ部材との間に形成される第1相対回転区間40と、クラッチ部材と上流側伝達部材との間に形成される第2相対回転区間45と、から構成されていることを特徴とする。
相対回転区間80の長さは、繰出しローラと上流側伝達部材との間にクラッチ部材を配置して相対回転区間の数を増設することにより任意自在に延長することができる。
第5の本発明に係る紙葉分離搬送装置では、第1相対回転区間40は、繰出しローラ30に設けられた第1係合部32と、クラッチ部材50に設けられて繰出しローラに対して正逆方向へ相対回転する過程で第1係合部32と係合・離脱する(係脱する)第1被係合部52との間に形成され、第2相対回転区間45は、クラッチ部材に設けられた第2係合部53と、上流側伝達部材60に設けられてクラッチ部材に対して正逆方向へ相対回転する過程で第2係合部と係合・離脱する第2被係合部62との間に形成され、繰出しローラ、クラッチ部材、上流側伝達部材が停止している初期状態では、第1係合部は第1被係合部の正転方向前側に位置し、第2係合部は第2被係合部の正転方向前側に位置しており、繰出しローラが正転して一枚目の紙葉を分離ニップ部に向けて送り出す際に初期状態にあった第1係合部が停止状態にある第1被係合部の前部から離間する方向へ回転移動し、第1係合部が周回してきて第1被係合部の後部に当接した後で該第1被係合部に駆動力を伝達してクラッチ部材を正転開始させ、初期位置にある該第2係合部が正転する際には第2被係合部前部から離間する方向へ回転移動し、第2係合部が周回してきて第2被係合部の後部に当接した後で第2被係合部に駆動力を伝達して上流側伝達部材を搬送方向へ回転開始させて、クラッチ部材からの正転方向への駆動力を上流側伝達部材に伝達することにより中継伝達部材を介してフィードローラを正転駆動する。制御手段300は、繰出しローラにより繰り出されていた一枚目の紙葉が引出し搬送部材の引出しニップ部に達するタイミングで給紙モータによる繰出しローラの駆動を停止すると共に、引出し搬送部材により該紙葉を引出し搬送することにより、分離ニップ部よりも上流側に残された紙葉の余長による搬送力を利用してフィードローラ、中継伝達部材、上流側伝達部材を正転させることにより、上流側伝達部材の第2被係合部が停止状態にあるクラッチ部材の第2係合部と接するまで回転してから第2係合部、及び第1被係合部に駆動を伝達開始して、第1被係合部が繰出しローラの第1係合部と接触、或いは近接する位置まで回転して停止した時にクラッチ部材、及び繰出しローラの初期位置関係への復帰が完了することを特徴とする。
駆動伝達遅延機構Dを繰出しローラ30とクラッチ部材50と上流側伝達部材60の三部品から構成する場合には、繰出しローラに設けた第1係合部33とクラッチ部材に設けた第1被係合部51との間に第1相対回転区間40を形成すると共に、クラッチ部材に設けた第2係合部53と上流側伝達部材に設けた第2被係合部62との間に第2相対回転区間45を形成することにより、相対回転区間80の合計周方向遊び長を延長することができる。
第6の本発明に係る紙葉分離搬送装置では、制御手段300は、繰出しローラ、フィードローラ、及び引出し搬送部材の正転駆動を、一枚目の紙葉が分離部を通過した以降も連続することにより紙葉の連続給紙が可能であることを特徴とする。
フィードローラによる紙葉の分離は、フィードローラを連続的に正転させることにより二枚目以降の紙葉に対しても連続して実施することができ、全ての紙葉の給紙、分離が終了する前に給送を停止することも可能であるし、全ての紙葉の給紙、分離が終了するまで連続給紙することもできる。
フィードローラの正転停止後にフィードローラが紙葉に連れ回りすることにより相対回転区間の”遊び”が復活する。
フィードローラの停止、引出し搬送部材による紙葉の引出し(”遊び”の復活)は、紙葉を一枚分離、通過させる度に実施しても良いし、複数枚の紙葉に対する分離、通過を連続させた段階で実施してもよい。
第7の本発明に係る紙葉分離搬送装置では、制御手段300は、二枚目以降の任意の紙葉が引出し搬送部材に達したタイミングで給紙モータによる繰出しローラの正転駆動を停止すると共に引出し搬送部材による任意の紙葉の引出し搬送を実施することにより、任意の紙葉の搬送力を利用してフィードローラ、中継伝達部材、上流側伝達部材を正転させることを特徴とする。
フィードローラによる連続正転中に適宜のタイミング、即ち二枚目以降の任意の紙葉(例えば、100枚の紙葉束中の10枚目の紙葉)の分離を終了した段階で正転を停止することも可能である。フィードローラの正転停止後にフィードローラが任意の紙葉に連れ回りすることにより相対回転区間の”遊び”が復活する。
任意の紙葉とは、オペレータがスイッチ操作などによって給紙を中断した時点で引出し搬送部に達している紙葉は勿論、ジャム発生、異物検知、その他のエラー等が検知されたことによって給紙が自動的に中断された時点で引出し搬送部に達している紙葉を含む。
第8の本発明に係る紙葉分離搬送装置では、制御手段300は、繰出しローラ、フィードローラ、及び引出し搬送部材を連続して正転させることにより紙葉束中の最後の紙葉が引出し搬送部材に達したタイミングで、給紙モータによる繰出しローラの正転駆動を停止すると共に引出し搬送部材による最後の紙葉の引出し搬送を実施することにより、最後の紙葉の搬送力を利用してフィードローラ、中継伝達部材、上流側伝達部材を正転させることを特徴とする。
フィードローラとブレーキローラによって紙葉を連続的に分離することにより紙葉積載部上の全ての紙葉の給送を終了した段階でフィードローラの正転を停止することも勿論可能である。フィードローラの正転停止後にフィードローラが最後の紙葉に連れ回りすることにより相対回転区間の”遊び”が復活する。
第9の本発明に係る紙葉取扱装置は、第1乃至第7の何れかの紙葉分離搬送装置を備えたことを特徴とする。
この紙葉取扱装置400は、紙葉識別機、紙葉入金機、紙葉計数機、各種自動販売機、両替機等の紙葉取扱装置にも適用することにより、シンプル、安価な構成でありながら、二枚目紙葉が一枚目に先行して分離部に給紙されることにより発生する重送を効果的に防止することができる。
1…紙幣(紙葉)分離搬送装置、10…紙幣(紙葉)積載部、15…給紙部、20…繰出し部、21…繰出しローラ軸、22…平行ピン、D…駆動伝達遅延機構、30…フィードローラ、30a…分割片、30b…分割片、31…繰出しローラ本体、31A…繰出しローラ本体の一面、32…第1係合部、32a…前部、32b…後部、33…係合部、35…軸部、40…第1相対回転区間、40a…始端部、40b…終端部、45…第2相対回転区間、45a…始端部、45b…終端部、50…タイミングクラッチ(クラッチ部材)、50A…一面、51…タイミングクラッチ本体、51B…対向面、52…第1被係合部、52a…前部、52b…後部、53…第2係合部、53a…前部、53b…後部、60…上流側タイミングプーリ(上流側伝達部材)、61…上流側タイミングプーリ本体、61B…対向面、62…第2被係合部、62a…前部、62b…後部、70…給紙モータ、70a…出力ギヤ、71…従動ギヤ、75…開始センサ、80…相対回転区間、100…分離部、101…フィードローラ軸、102…平行ピン、110…フィードローラ、110a、110b…分割片、120…下流側タイミングプーリ(下流側伝達部材)、125…タイミングベルト(中継伝達部材)、130…ブレーキローラ、130a…ワンウェイクラッチ、150…上流側伝達ギヤ、152…被係合部、155…下流側伝達ギヤ、160…中間ギヤ、200…中継伝達部、250…引出し搬送部、251a、251b…引出しローラ(引出し搬送部材)、253…次点センサ、255…引出し搬送モータ、261…戻しレバー、263…摺動部材、265…トルクリミッタ、266…ワッシャ、267…圧接バネ、268…ストッパ、270…戻しバネ、300…制御手段、400…紙幣(紙葉)鑑別器(紙葉取扱装置)、401…筐体、402…入金口、403…入金トレイ、410…鑑別部、415…仕分け搬送部、420…真正紙幣トレイ、421…偽紙幣トレイ

Claims (9)

  1. 繰出しローラにより紙葉束から紙葉を一枚ずつ繰出す繰出し部と、該繰出し部から繰出されてきた紙葉が重送状態にある時に一枚目の紙葉だけを先行して通過させて下流側に送出すると共に二枚目以降の紙葉の前進を阻止する分離部と、該分離部内に一部が残っている一枚目の紙葉を引出し搬送する引出し搬送部と、該繰出し部と前記分離部との間で駆動力を伝達する中継伝達部と、一枚目の紙葉が前記分離部を通過した後に該分離部に残留する二枚目以降の紙葉を上流側へ戻す重送紙葉戻し機構と、各種制御対象を制御する制御手段と、を備えた紙葉分離搬送装置であって、
    前記繰出し部は、繰出しローラ軸と、該繰出しローラ軸の軸回りに回転し、軸方向に沿って順次配列された前記繰出しローラ、及び上流側伝達部材と、前記繰出しローラを搬送方向に正転駆動する給紙モータと、前記繰出しローラと前記上流側伝達部材との間に少なくとも一つの相対回転区間を設けて正逆双方向への駆動力の伝達を遅延させる駆動伝達遅延機構と、を備え、
    前記分離部は、正転した時に前記繰出しローラにより繰り出された一枚目の紙葉面に接してこれを搬送するフィードローラと、該フィードローラとの間で分離ニップ部を形成し、二枚目以降の紙葉の前進を阻止する摩擦分離部材と、を備え、
    前記中継伝達部は、前記フィードローラと同軸状に隣接配置されて一体回転する下流側伝達部材と、前記上流側伝達部材と前記下流側伝達部材との間の駆動力伝達を中継する中継伝達部材と、を備え、
    前記重送紙葉戻し機構は、前記フィードローラの軸部により相対回転可能に軸支された戻しレバーと、前記フィードローラの軸部と前記戻しレバーとの間に配置されて該軸部と該戻しレバーとの間のトルク差が一定値を越えない限り該軸部と該戻しレバーを正転方向へ一体回転させるトルクリミッタと、該戻しレバーを戻し方向へ付勢する弾性付勢手段と、を備え、
    前記引出し搬送部は、前記分離ニップ部との距離が紙葉の搬送方向長よりも短い下流側位置に配置されて引出しニップ部を形成する引出し搬送部材と、該引出し搬送部材を駆動する引出し搬送モータと、を備え、
    前記駆動伝達遅延機構は、前記繰出しローラと前記上流側伝達部材との周方向位置関係を初期位置関係と終期位置関係との間で双方向に相対回転可能とし、且つ、前記上流側伝達部材に対する前記繰出しローラの位置関係が初期位置関係から終期位置関係に達するまでの間は前記上流側伝達部材に対して駆動力を伝達せず、終期位置関係に達した時以降に駆動力を伝達する構成を備え、
    前記制御手段は、前記フィードローラが正転することにより前記繰出しローラにより繰り出されていた前記一枚目の紙葉が前記引出しニップ部に達する適宜のタイミングで、前記給紙モータによる前記繰出しローラの駆動を停止すると共に前記引出し搬送部材による紙葉の引出し搬送を実施することにより、一枚目の紙葉の搬送力を利用して前記フィードローラ、前記中継伝達部材、前記上流側伝達部材を正転し、
    正転する前記上流側伝達部材が停止状態にある前記繰出しローラに対して、前記紙葉後端部が前記分離ニップ部を通過するまで前記相対回転区間の範囲内で相対回転し、前記上流側伝達部材の相対回転終了時に前記繰出しローラと前記上流側伝達部材とが前記初期位置関係に復帰し、
    前記戻しレバーは、前記フィードローラの正転開始時に前記トルクリミッタの作用により前記フィードローラの軸部と一体回転することにより前記戻しバネに抗して正転方向へ所定角度回転した停止位置に達してからは前記軸部とスリップしつつ停止状態を維持し、
    前記一枚目の紙葉後端部が前記分離ニップ部を抜けると、前記戻しレバーが前記戻しバネの力により戻し方向へ回動すると共に前記フィードローラを戻し方向に回動させることにより、前記分離部に残留していた二枚目以降の紙葉を戻し方向へ移動させることを特徴とする紙葉分離搬送装置。
  2. 前記摩擦分離部材は、ブレーキローラ軸により軸支されたブレーキローラであり、該ブレーキローラは、前記ブレーキローラ軸との間に配置されたワンウェイクラッチにより正転方向には回転しない一方で、紙葉戻し方向には回転するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉分離搬送装置。
  3. 前記相対回転区間は、前記繰出しローラに設けられた係合部と、前記上流側伝達部材に設けられて前記繰出しローラに対して正逆方向へ相対回転する過程で前記係合部と係合したり離脱する被係合部との間に形成され、
    前記繰出しローラ、前記上流側伝達部材が停止している初期状態では、前記係合部は前記被係合部の正転方向前側に位置しており、
    前記繰出しローラが正転して一枚目の紙葉を前記分離ニップ部に向けて送り出す際に初期状態にあった前記係合部が停止状態にある前記被係合部の前部から離間する方向へ回転移動し、前記係合部が周回してきて前記被係合部の後部に当接した後で前記被係合部に駆動力を伝達して前記上流側伝達部材を正転開始させて前記中継伝達部材を介してフィードローラを正転駆動し、
    前記制御手段は、前記繰出しローラにより繰り出されていた前記一枚目の紙葉が前記引出し搬送部材の引出しニップ部に達してから、前記給紙モータによる繰出しローラの駆動を停止すると共に前記引出し搬送部材による紙葉の搬送を実施することにより、前記分離ニップ部よりも上流側に残された一枚目の紙葉の余長による搬送力を利用して前記フィードローラ、前記中継伝達部材、前記上流側伝達部材を正転させて、前記上流側伝達部材の被係合部が停止状態にある前記繰出しローラの係合部と接触、或いは近接する位置まで回転して停止したときに前記上流側伝達部材、及び前記繰出しローラの前記初期位置関係への復帰を完了させることを特徴とする請求項1、又は2に記載の紙葉分離搬送装置。
  4. 前記繰出しローラと前記上流側伝達部材との間に位置する前記繰出しローラ軸の部位に、クラッチ部材が前記繰出しローラ、及び前記上流側伝達部材に対して相対回転可能に軸支されており、
    前記相対回転区間は、前記繰出しローラと前記クラッチ部材との間に形成される第1相対回転区間と、前記クラッチ部材と前記上流側伝達部材との間に形成される第2相対回転区間と、から構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の紙葉分離搬送装置。
  5. 前記第1相対回転区間は、前記繰出しローラに設けられた第1係合部と、前記クラッチ部材に設けられて前記繰出しローラに対して正逆方向へ相対回転する過程で前記第1係合部と係合したり離脱する第1被係合部との間に形成され、
    前記第2相対回転区間は、前記クラッチ部材に設けられた第2係合部と、前記上流側伝達部材に設けられて前記クラッチ部材に対して正逆方向へ相対回転する過程で前記第2係合部と係合したり離脱する第2被係合部との間に形成され、
    前記繰出しローラ、前記クラッチ部材、及び前記上流側伝達部材が停止している初期状態では、前記第1係合部は前記第1被係合部の正転方向前側に位置し、前記第2係合部は前記第2被係合部の正転方向前側に位置しており、
    前記繰出しローラが正転して一枚目の紙葉を前記分離ニップ部に向けて送り出す際に初期状態にあった前記第1係合部が停止状態にある前記第1被係合部の前部から離間する方向へ回転移動し、前記第1係合部が周回してきて前記第1被係合部の後部に当接した後で該第1被係合部に駆動力を伝達して前記クラッチ部材を正転開始させ、
    初期位置にある前記第2係合部が正転する際には前記第2被係合部前部から離間する方向へ回転移動し、前記第2係合部が周回してきて前記第2被係合部の後部に当接した後で前記第2被係合部に駆動力を伝達して前記上流側伝達部材を搬送方向へ回転開始させて、前記クラッチ部材からの正転方向への駆動力を前記上流側伝達部材に伝達することにより中継伝達部材を介してフィードローラを正転駆動し、
    前記制御手段は、前記繰出しローラにより繰り出されていた前記一枚目の紙葉が前記引出し搬送部材の引出しニップ部に達するタイミングで前記給紙モータによる前記繰出しローラの駆動を停止すると共に、前記引出し搬送部材による該紙葉の引出し搬送を実施することにより、前記分離ニップ部よりも上流側に残された紙葉の余長による搬送力を利用して前記フィードローラ、前記中継伝達部材、前記上流側伝達部材を正転させて、前記上流側伝達部材の前記第2被係合部が停止状態にある前記クラッチ部材の前記第2係合部と接するまで回転してから前記第2係合部、及び前記第1被係合部に駆動を伝達開始して、前記第1被係合部が前記繰出しローラの前記第1係合部と接触、或いは近接する位置まで回転して停止した時に前記クラッチ部材、及び繰出しローラの初期位置関係への復帰を完了させることを特徴とする請求項4に記載の紙葉分離搬送装置。
  6. 前記制御手段は、前記繰出しローラ、前記フィードローラ、及び前記引出し搬送部材の正転駆動を、前記一枚目の紙葉が前記分離部を通過した以降も連続することにより後続紙葉の連続給紙が可能であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の紙葉分離搬送装置。
  7. 前記制御手段は、二枚目以降の任意の紙葉が前記引出し搬送部材に達したタイミングで前記給紙モータによる前記繰出しローラ、及び前記フィードローラの正転駆動を停止すると共に前記引出し搬送部材による前記任意の紙葉の引出し搬送を実施することにより、該任意の紙葉の搬送力を利用して前記フィードローラ、前記中継伝達部材、前記上流側伝達部材を正転させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の紙葉分離搬送装置。
  8. 前記制御手段は、前記繰出しローラ、前記フィードローラ、及び前記引出し搬送部材を連続して正転させることにより前記紙葉束中の最後の紙葉が前記引出し搬送部材に達したタイミングで前記給紙モータによる前記繰出しローラ、及び前記フィードローラの正転駆動を停止すると共に前記引出し搬送部材による前記最後の紙葉の引出し搬送を実施することにより、前記最後の紙葉の搬送力を利用して前記フィードローラ、前記中継伝達部材、前記上流側伝達部材を正転させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の紙葉分離搬送装置。
  9. 請求項1乃至8の何れか一項に記載の紙葉分離搬送装置を備えたことを特徴とする紙葉取扱装置。
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