JP6401844B1 - 紙葉分離搬送装置、及び紙葉取扱装置 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、入金部にセットされた紙幣束から紙幣を一枚ずつ受け入れる紙幣入金機、紙幣計数機、各種自動販売機、両替機等の紙幣取扱装置においては、重送が発生すると識別を含めた正確な入金処理、計数処理等が妨げられるため、重送防止機構が装備される。
重送防止機構としては、紙幣束の底部紙幣に接して回転する繰出しローラにより繰り出されてきた紙幣が重送状態にある時に二枚目以降の紙幣の通過を阻止する分離ローラ対を有したものがある。この分離ローラ対としては、給紙方向へ回転駆動されるフィードローラと、フィードローラの上側に配置されてフィードローラとニップする高摩擦材料からなるブレーキローラとから構成されたものがある。
特に、先端が不揃いな状態の紙幣束がセットされた場合や、世界各国の長さの異なる紙幣束から給紙された紙幣を分離する場合には、一枚目より先に二枚目以降の紙幣が分離ニップ部に侵入して重送が発生し易くなる為、一枚目を確実に先行させて分離部に繰り出す必要がある。
これまで一つのモータによって繰出しローラとフィードローラの駆動タイミングを切り替える技術は提案されてない。
なお、単一のモータにより繰出しローラとフィードローラを駆動するタイプとして、モータによりフィードローラを駆動すると共に、同じモータからの駆動力を繰出しローラに伝達して両ローラを常に同時に駆動するタイプはあったが、当然、二枚目の紙幣が一枚目に先行するタイプの重送に対処することはできていない。
特許文献3には、補助繰出しローラを用いない構成が開示されてはいるが、紙幣束を立てた状態にすることが必須であり、紙幣束を上下方向に積層するタイプが多い紙幣取扱装置にこの発明を適用するには制約が多くなる。
このような問題は、紙幣のみならず、有価証券、券類、投票用紙等々の他の紙葉を処理する装置においても同様に発生する。
繰出しローラ505により一枚目の紙幣だけが繰り出されて分離ニップ部N1を通過した場合には、図18(a)に示すように分離ニップ部に残留紙幣がない正常な状態となり、次回の紙幣繰出し、分離作業に支障が生じることがない。
しかし、モータを逆転させる戻し動作は、動作時間の遅延、制御の複雑化、検知センサの増設等をもたらすという問題があった。
<第一の実施形態>
[基本構成の説明]
図1は本発明の第一の実施形態に係る紙葉分離搬送装置の一例としての紙幣分離搬送装置の概略構成を示す正面図であり、図2(a)は同紙幣分離搬送装置の平面構成図であり、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。また、図3(a)(b)及び(c)は繰出しローラ、タイミングクラッチ、上流側タイミングプーリを繰出しローラ軸に組み付けた状態の正面側斜視図、(a)の構成から繰出しローラ軸を除去した状態を示す正面側斜視図、及び(b)の構成から正面側の繰出しローラの分割片を除去した状態を示す正面側斜視図であり、図4(a)(b)及び(c)は繰出しローラ、タイミングクラッチ、上流側タイミングプーリを繰出しローラ軸に組み付けた状態の背面側斜視図、(a)から繰出しローラ軸を除去した状態を示す背面側斜視図、及び(b)から正面側の繰出しローラの分割片を除去した状態を示す背面側斜視図である。また、図5乃至図9は繰出しローラの駆動によって発生した重送を解消する手順を説明する図である。図10(a)は戻しレバーが作動して残留紙幣を戻している状態を示す正面図であり、(b)は第1相対回転区間内における動作説明図、(c)は第2相対回転区間内における動作説明図である。図12は重送解消手順を示すフローチャートであり、図13(a)及び(b)は重送紙幣戻し機構を構成する戻しレバーとトルクリミッタの構成を示す斜視図、及び分解斜視図である。
なお、本明細書では紙葉の一例として紙幣を中心に説明するが、本装置は紙幣以外の紙葉の分離、搬送にも適用することができる。また、紙葉には、紙製シート以外にも樹脂製、その他の材料から成るシートも含む。
特に、本発明では、繰出し部20、及び分離部100に用いる駆動源として繰出しローラを直接駆動する単一の給紙モータ70だけを使用しつつ、二枚目の紙幣P2が一枚目の紙幣に先行した状態で分離部100に供給されることによって発生する分離不良を、駆動伝達遅延機構Dによる機械的な時差駆動を実現する構成によって繰出しローラと重送防止ローラ(フィードローラ)との駆動タイミングを異ならせることにより解消する。
繰出しローラ30は、紙幣搬送方向aに回転する際に紙幣積載部10内の最底部の(一枚目の)紙幣P1の下面に接してこれを繰出す手段である。
給紙モータ70からの駆動力は、出力ギヤ70a、従動ギヤ71、繰出しローラ軸21、平行ピン22を介して繰出しローラ30へ伝達される。
本例の繰出しローラ30は2つの分割片30a、30bから構成され、両分割片の間にタイミングクラッチ50、及び上流側タイミングプーリ60が配置されているがこれは一例に過ぎず、分割しない単体の繰出しローラを一方の分割片30aの位置に配置してもよい。後述するように繰出しローラ30が相対回転区間を介してタイミングクラッチ50、及び上流側タイミングプーリ60と順次連動して行く動作には、他方の分割片30bは直接関与しないので、特許請求の範囲、及び本明細書において繰出しローラ30とは、主として一方の分割片30aを指称する。
分離部100は、繰出しローラ軸21よりも紙幣搬送方向下流側において繰出しローラ軸21と並行に配置され、図示しない軸受により回転自在に支持されたフィードローラ軸101と、フィードローラ軸回りに回転し、搬送方向aへ回転した時に繰出しローラにより繰り出された一枚目の紙幣P1の下面に接してこれを搬送する分離ローラとしてのフィードローラ110と、フィードローラ110の上方に配置されてフィードローラとの間で紙幣を通過させる分離ニップ部N1を形成し、周面に高摩擦部を備えた分離ローラとしてのブレーキローラ(摩擦分離部材)130と、を備えている。ブレーキローラ130の軸部にはワンウェイクラッチ130aが配置されることにより、紙幣を戻す方向(反時計回り方向)への回転だけが可能となっている。
フィードローラ110は、2つの分割片110a、110bを平行ピン(固定具)102によりフィードローラ軸に固定した構成を有し、各分割片間には下流側タイミングプーリ120が平行ピン102によりフィードローラ軸に固定されている。
フィードローラ110は、繰出しローラ30の駆動力をタイミングクラッチ50、タイミングプーリ60、120、及びタイミングベルト125を介して伝達されることにより回転駆動が可能となる。ブレーキローラ130は紙幣搬送方向へは回転しない一方で、紙幣との接触による局部の摩耗を避けるために紙幣が通過するたびに紙幣搬送方向とは逆方向(紙幣戻し方向)へ所定のピッチで回動するように構成されている。
なお、本例ではフィードローラ軸101を回転自在に構成したが、回転不能にしたフィードローラ軸の軸回りに、予め一体化したフィードローラ、及び下流側タイミングプーリ120を回転自在に構成してもよい。
重送紙幣戻し機構260は、フィードローラの軸部101により該軸部に対して相対回転可能に軸支されることにより軸部を中心として往復動作する戻しレバー261と、フィードローラ軸部101と戻しレバーとの間に配置されて該軸部と該戻しレバーとの間のトルク差が一定値を越えない限り両部材101、261を正転方向へ一体回転させるトルクリミッタ265と、軸部101と戻しレバーとの一体回転方向とは逆の戻し方向へトルクリミッタよりも弱いバネ力で戻しレバーを付勢する戻しバネ(弾性付勢手段)270と、を備える。
言い換えれば、軸部101が給紙モータからの駆動力によって正転している間は戻しレバーは軸部に連れ回りし、この間は戻しバネ270の戻し力は効果を失っている。一方、給紙モータの停止によって軸部101が駆動を停止した状態では後述する駆動伝達遅延機構Dの作用によって軸部101は軽負荷になるため、戻しバネの戻し力が初めて発揮されて戻しレバーが戻し方向へ回動する。
更に言い換えれば、戻しレバー261は戻しバネ270によってフィードローラ110を逆転させる方向に常に引っ張られている。しかし、戻しバネ270の力はトルクリミッタ265の圧接バネ267の力よりも弱いため、フィードローラの正転と共に戻しレバーは戻しバネに抗して正転方向へ回転し、戻しレバー261がストッパ268と接することにより可動限界に達した後はトルクリミッタ265が滑りを起こすためフィードローラだけが正転する。
なお、ブレーキローラ130はワンウェイクラッチ130aにより戻し方向に軽負荷で回転できる構成である。従って、駆動伝達遅延機構Dの作用によって相対回転区間の分だけフィードローラ軸部101への駆動が断絶されて軽負荷になると、戻しバネ270の小さな力によってフィードローラとブレーキローラを戻し方向に回転させることができる。つまり、戻しレバーは戻しバネ270による直線的な戻し方向への付勢力を、軸部101を逆転させる方向への回転力に変換する手段である。
分離ニップ部N1と引出しローラ対のニップ部N2との間隔は、搬送対象となる各紙幣の搬送方向長よりも短い距離となるように設定されている。従って、給紙モータ70により繰出し部20と分離部100の駆動を停止した状態で、引出しローラ対が分離部100から送出されてきた一枚目の紙幣P1をニップして引出し搬送し、且つ分離ローラ対の分離ニップ部N1に紙幣後部が挟持されている期間中は、フィードローラ30、下流側タイミングプーリ120、タイミングベルト125、上流側タイミングプーリ60は、紙幣P1を介して引出しローラ対251a、251bからの搬送力を受けて搬送方向へ連れ回りする。紙幣P1の後端が分離ローラ対の分離ニップ部N1を抜けると同時にフィードローラ等への紙幣からの連れ回りによる駆動力伝達は終了する。
更に、駆動伝達遅延機構Dは、タイミングクラッチ50と上流側タイミングプーリ60との周方向位置関係を初期位置関係と終期位置関係との間で双方向に相対回転可能とし、且つ、上流側タイミングプーリに対するタイミングクラッチの位置関係が初期位置関係から終期位置関係に達するまでの間は上流側タイミングプーリに対して駆動力を伝達せず、終期位置関係に達した時以降に駆動力を伝達する構成を備える。
つまり、第1相対回転区間40と第2相対回転区間45の存在により、繰出しローラ30の駆動力はタイミングクラッチ50、タイミングプーリ60に対して直結して遅滞なく伝達される訳ではなく、各相対回転区間40、45により設定される空回り区間(駆動力が伝達されない区間)を経て断続的に、且つ遅延して伝達される。このため、繰出しローラが正転してから所定時間遅れてフィードローラが回転を開始する。繰出しローラ30による繰出し時に重送が発生して二枚目の紙幣P2の先端が一枚目に先行してブレーキローラ130と接した状態となったとしても、この断続的な駆動力の伝達による遅延によってフィードローラの回転開始タイミングが各相対回転区間の周方向長の合計分だけ遅れるため、フィードローラの回転開始前に一枚目の紙幣P1が二枚目紙幣P2に遅れてブレーキローラに先端を接触させた状態となる(図6の状態)。
紙幣の搬送力による正転を開始した上流側タイミングプーリ60が停止状態にあるタイミングクラッチ50に対して第2相対回転区間45の範囲内で回転(空転)を継続することにより上流側タイミングプーリ60とタイミングクラッチ50とが初期位置関係に復帰する。続いて、上流側タイミングプーリからの駆動力がタイミングクラッチに伝達されることによりタイミングクラッチが正転を再開し、停止状態にある繰出しローラ30に対して第1相対回転区間40の範囲内で回転(空転)を継続することによりタイミングクラッチ50と繰出しローラ30とが初期位置関係に復帰する。
本例では繰出し部20と分離部100との間の駆動伝達手段としてタイミングプーリ60、120、及びタイミングベルト125を用いているが、これは一例に過ぎず、複数のギヤの組合せから成るギヤ機構、プーリとワイヤーからなる機構等々、種々の駆動伝達機構を用いることができる。
更に、制御手段300は、一枚目の紙幣が分離部を通過した後も繰出しローラ30、フィードローラ110を連続して正転させることにより一枚目以降の後続紙幣を連続して(中断することなく)給送することができることは勿論である。即ち、一枚目の紙幣P1が引出しニップ部N2に達した時に繰出しローラの駆動を停止してフィードローラの回転を停止させることなく、連続して繰出しローラ、及びフィードローラを正転させることにより、二枚目以降の任意の紙幣を連続して一枚ずつ給送することができる。そして、任意の紙幣先端が引出しニップ部N2に達した時に繰出しローラ及びフィードローラの回転を停止させてから当該紙幣の搬送力を利用してフィードローラ30、中継伝達部材125、上流側タイミングプーリ60の正転を再開させることにより、第1及び第2相対回転区間40、45を初期位置関係に復帰させることもできる。
従って、紙幣束を構成する全ての紙幣の紙幣積載部からの給送を完了した時点、即ち最後の紙幣が引出しニップ部N2に達した時に繰出しローラ及びフィードローラの回転を停止させてから、引出しローラ対により引き出される当該最後の紙幣の搬送力を利用してフィードローラ30、中継伝達部材125、上流側タイミングプーリ60の正転を再開させることもできる。これにより、次の紙幣束がセットされた際には、第1、及び第2相対回転区間40、45が初期位置関係に復帰しているので、遅滞なくスムーズに給紙を開始できる。
なお、この重送防止機能は、一枚目と二枚目の紙幣との関係のみならず、二枚目と三枚目の紙幣との関係、三枚目と四枚目の紙幣との関係等々、前後位置関係にある全ての紙幣間においても当てはまることは勿論である。
以上のことは、後述する第二実施形態にも同様にあてはまることは勿論である。
タイミングクラッチ50は、停止状態にある上流側タイミングプーリ60に対して第2相対回転区間45の範囲で回転移動し、タイミングクラッチの回転角度が第2相対回転区間の終端部(搬送方向終端部)45bに達した時以降に上流側タイミングプーリ60に駆動を伝達開始して搬送方向へ一体回転開始することによりタイミングベルト125を介してフィードローラ110を搬送方向に回転駆動する。
紙幣P1からの連れ回り駆動力によって上流側タイミングプーリ60が搬送方向aへ回転駆動されると、第2相対回転区間45が有する第2の周方向遊びの範囲内で、停止状態にあるタイミングクラッチ50に対して上流側タイミングプーリ60が空回りする。上流側タイミングプーリ60が第2相対回転区間45が有する第2の周方向遊びの範囲内での空回りを終了すると、タイミングクラッチ50を搬送方向aへ回転駆動開始する。この第2の周方向遊びの範囲内での上流側タイミングプーリ60の空回りが終了した時点で、第2相対回転区間(上流側タイミングプーリとタイミングクラッチの周方向位置関係)は初期状態に復帰している。
フィードローラ停止後の紙幣による連れ回り量(復帰のためのタイミングプーリとタイミングクラッチの回転量)は、分離ニップ部N1よりも上流側に位置する紙幣の余長L1(図7)の長さによって決まる。
従って、搬送される各紙幣長が一定でない場合には、給紙ローラによるフィードローラの駆動停止時点から引出しローラ対によって引き出される紙幣長(余長L1)は一定とはならないため、第1相対回転区間が初期状態に復帰したとしても給紙ローラとタイミングクラッチの周方向位置関係が完全に最初の初期状態と完全一致するわけではない。従って、各相対回転区間の周方向遊びによる空転期間は、紙幣の長さの相違などの不確定要素を考慮して余裕をもって定めることが重要である。
図2(a)、図3、図4に示すように、第1相対回転区間40は、繰出しローラ30とタイミングクラッチ50が図5(b)に示した初期の周方向位置関係にある時に、繰出しローラ30の本体31の一面31A(表面)に設けられた突起状の第1係合部32と、タイミングクラッチ50の本体51の対向面51B(裏面)に配置されて繰出しローラに対して正逆方向へ相対回転する過程で第1係合部32と係合したり離脱(係脱)する突起状の第1被係合部52との間に形成される周方向へ延びる遊び空間(空転区間)である。更に具体的には第1相対回転区間40は、図5(b)において停止状態にある第1被係合部52の前部52aに実線で示す第1係合部32の後部32bが接した状態(第1の始端部40a)から、図5(b)中に破線で示す第1係合部32の前部32aが第1被係合部52の後部52bに接した状態(第1の終端部40b)までに相当する周方向長を最大とする区間である。
なお、繰出しローラとタイミングクラッチの周方向位置関係が初期状態にある時に、第1係合部32が始端部40aと一致しているとは限らない。つまり、初期状態において第1係合部32と第1被係合部52とが離間していることもある。初期状態において第1係合部32と第1被係合部52とが離間していれば、第1相対回転区間は最大値よりも短くなるが、このように第1係合部32と第1被係合部52との位置関係が常に一定でないとしても、繰出しローラの回転開始から遅れて開始されるフィードローラの回転による紙幣分離動作に支障が生じないように繰出しローラの回転開始後のフィードローラの回転開始タイミングを適切に設定することは設計上困難ではない。
繰出しローラ30が搬送方向へ回転して紙幣積載部10内の最底部の一枚目の紙幣P1を分離ニップ部N1に向けて送り出す際に初期位置(第1の始端部40a)にあった第1係合部32が停止状態にある第1被係合部52の前部52aから離間する方向へ回転移動し、第1係合部32が周回してきて第1被係合部52の後部52bに当接した後で(第1の終端部40bに達した後で)第1被係合部52に駆動力を伝達してタイミングクラッチを搬送方向へ回転開始させる。
タイミングクラッチの第1被係合部52は、繰出しローラの第1係合部32と係合したり離脱することが可能な位置関係(係脱可能な位置関係)にあり、本例では第1被係合部52と第1係合部32との間に形成される第1相対回転区間40の周方向遊び角度は本例では最大250度である。また、タイミングクラッチの第2係合部53は、上流側タイミングプーリ60の第2被係合部62と係脱可能な位置関係にあり、本例では第2係合部53と第2被係合部62との間に形成される第2相対回転区間45の周方向遊び角度は本例では最大250度である。従って、第1、及び第2相対回転区間40、45の合計の最大周方向遊び角度は500度であり、繰出しローラの回転数に換算すると約1.4周分となる。
周方向遊び長が最大500度となる設計で給紙モータ70を駆動させると、繰出しローラ30とフィードローラ110との間に約1.4周分の周回遅れが発生する。この周回遅れ量は任意に設定可能であるが、紙幣長との関係で適切値に設定することにより、繰出しローラ30の繰出しによって先行して分離ニップ部N1に給紙された二枚目の紙幣P2がブレーキローラ130に先端を接した状態で停止してから所定の遅れをもってフィードローラが回転を開始して、一枚目の紙幣P1だけを分離ニップ部N1に送り込んで前進させることが可能となる。
次に本発明の第一の実施形態における紙幣分離搬送装置を構成する各部材の動作を紙幣の搬送タイミングとの関係で説明する。
図5乃至図9は繰出しローラの駆動によって発生した重送を解消する手順を説明する図であり、図5(a)、図6(a)、図7(a)、図8(a)、及び図9(a)は紙幣分離搬送装置の要部正面図、図5(b)、図6(b)、図7(b)、図8(b)、及び図9(b)は第1相対回転区間内における動作説明図(図2のA−A断面図)、図5(c)、図6(c)、図7(c)、図8(c)、及び図9(c)は第2相対回転区間内における動作説明図(図2のB−B断面図)である。図10は戻しレバーが作動して残留紙幣を戻している状態を示す正面図であり、図11(a)及び(b)は戻しレバー及びトルクリミッタの構成を示す斜視図、及び分解斜視図であり、図12は第一の実施形態の動作手順を示すフローチャートである。
この初期状態では、図5(b)に示すように第1係合部32の後部32bが第1被係合部52の前部52aと接した第1相対回転区間40の始端部40aにあり、且つ(c)に示すように第2係合部53の後部53bが第2被係合部62の前部62aと接した第2相対回転区間45の始端部45aにある。
図6(a)の状態においても、図5(a)と同様に軸部101及びフィードローラ110には正転方向への駆動力が加わっていないため、戻しレバー261は戻しバネ267により戻し方向へ回動した状態を維持している。
初期状態において給紙スイッチがオンされ、紙幣積載部10に紙幣束Pがセットされたことが開始センサ75によって検知されると、制御手段300は給紙モータ70、及び引出し搬送モータ255を搬送方向(正転方向)へ駆動開始する(図6、図12、ステップS2、S3、S4)。
この時に回転し始めるのは、繰出しローラ30と引出しローラ対251a、251bだけであり、第1、及び第2相対回転区間40、45の存在によって繰出しローラ30、及びタイミングクラッチ50が順次空回りしている期間は、上流側タイミングプーリ60、及びフィードローラ110は回転を停止している。
なお、ステップS4は一例であり、開始センサ75による紙幣束セット検知があった時に給紙モータ70のみを駆動開始し、一枚目の紙幣の先端が引き出しローラ対の引出しニップ部N2に到達したことを検知してから引出し搬送モータ255を駆動開始させるようにしてもよい。
この段階でも第1相対回転区間40の遊びがなくなるまで繰出しローラ30だけが空転するので、繰出しローラが紙幣P1の先端部を停止しているブレーキローラ130に押し付け続けることになるが、紙幣積載部10上の紙幣束Pの上面に対して何らの加圧力も付与されていないか、或いは僅かな加圧力しか付与されていないので、繰出しローラと一枚目紙幣P1との接触面には上からの押圧力に起因した強い摩擦搬送力が発生せず、ブレーキローラに対して紙幣が変形するまで押し込まれることはない。つまり、繰出しローラの搬送力によって紙幣P1の先端がブレーキローラに押し付けられたとしても、紙幣P1は戻り方向、及び上下方向へ自由に移動、変形できるのでダメージが先端に蓄積して変形することがない。また、紙幣積載部10上の紙幣束Pの上面に対して強い加圧力が付与されていなくても、紙幣自体が有する腰と積載された紙幣束の自重によって紙幣P1と繰出しローラとの間には必要最低限の繰出しのための摩擦力を確保することができる。
これを言い換えれば、繰出しローラ30が回転を開始した後では、第1相対回転区間の周方向遊びと第2相対回転区間の周方向遊びが順次なくなったタイミングでフィードローラは初めて回転を開始する。
この時、図6(a)に示すように先端をブレーキローラに接触させた一枚目の紙幣P1の下面だけがフィードローラと接しているために、図7の段階でフィードローラが回転すると一枚目紙幣だけが分離ニップ部N1を通過し、二枚目以降の紙幣はブレーキローラで制止されるので、一枚目の紙幣を二枚目以降の紙幣から分離した上での正常な搬送が実現できる。
この段階では、図8(a)に示すように紙幣P1は分離ニップ部N1に中間部がニップされて余長Lの分だけが分離ニップ部N1を未通過の状態で残っているため、紙幣P1が引き抜かれるのに伴ってフィードローラが正転方向に供回りする(図12、ステップS10)。給紙モータ70の停止により上流側タイミングプーリ、タイミングクラッチ、及び繰出しローラが停止している状態で、図9(a)に示すようにフィードローラが更に紙幣P1と連れ回り、すなわち外部から回され続けることによって、上流側タイミングプーリ、タイミングクラッチが順次正転を再開し、図5、図6、図7に示した給紙モータの駆動による給紙、分離動作によって一旦喪失されていた第2及び第1相対回転区間45、40の各遊びが順次に回復して行くことになる(図12、ステップS11、S12)。
なお、図7(a)においてフィードローラ軸部101、及びフィードローラ110が正転を開始すると、それまで戻しバネ270によって戻し方向へ付勢されていた戻しレバー261がトルクリミッタ265の作用によりフィードローラ軸部101と連れ回りを開始し、その後、戻しレバーがストッパ268に接した位置で戻しレバーの基部が摺動部材263(フィードローラ軸部101)とスリップするためその位置で停止を続ける。
なお、遊びが回復した際の第1係合部32と第1被係合部52の位置関係は例示に過ぎず、図7(a)に示した紙幣の余長L1の長さによって両部の位置関係は一定ではないが、次の紙幣の給紙のために給紙モータが繰出しローラを正転させる際に必要とされる第1及び第2相対回転区間は充分に確保することができる。即ち、図9(b)の例では第1係合部32と第1被係合部52とは、図5(b)の初期状態とは異なり、若干離間した位置関係にある。従って、次の紙幣を給紙する際に繰出しローラ30が回転を開始する際の第1係合部32の初期位置は図示の位置となり、第1被係合部52の後部52bと接するまでの周回角度は250度に満たない角度となる。
なお、本実施形態では紙幣を繰り出すために繰出しローラ30が回転開始してから停止するまでの回転量、言い換えれば停止するタイミングは次点センサ253に紙幣先端が到達したタイミングとしているが、次点センサを省略する構成を採用するとすれば、繰り出された紙幣が分離部で分離を受けてから引出しローラ対に到達するのに要する時間を予め算出しておき、この時間に見合う分だけ繰出しセンサを回転させてから停止させるように構成することができる。
なお、相対回転区間の”遊び”が回復した時には第1係合部32と第1被係合部52とが常に接触した初期の状態に復帰するとは限らない。即ち、”遊び”が回復した時に第1係合部32と第1被係合部52とが若干離間していることもあり、この場合には次の給紙動作における余長Lにバラツキが発生するが、このバラツキを吸収できる程度に予め”遊び”の範囲を大きめに設定しておけば問題はない。
なお、次点センサ253を配置する位置は図示の例では引出しローラ対よりも離間した下流側にあるが、図示の位置よりも更に引出しニップ部N2に近づけてもよいし、引出しニップ部N2の上流側に配置してもよい。
なお、本例では一枚目の紙幣先端が引出しローラ対に達したタイミングで給紙モータを停止させてフィードローラを停止させると共に引出しローラ対により該紙幣を引き出して“遊び”を回復させてから、重送紙幣戻し機構260を作動させる制御を行っているが、これは一例に過ぎず、二枚目以降の後続紙幣が引出しローラ対に達する度に一枚毎に重送紙幣戻し機構260を作動させてもよい。或いは、フィードローラの連続回転によって複数枚の紙幣を連続給紙する過程で、任意の紙幣(例えば、6枚目の紙幣)の先端が引出しローラ対に達した段階で重送紙幣戻し機構260を作動させてフィードローラを当該紙幣に連れ回りさせて相対回転区間を初期状態に戻すようにしてもよい。更に、紙幣束を構成する全ての紙幣の給紙が完了して最後の紙幣先端が引出しローラ対に達した段階で上記手順によって重送紙幣戻し機構260を作動させるようにしてもよい。
以上のことは第二実施形態にも当てはまる。
戻しレバー261は、図5、図6に示したフィードローラ110が停止状態にあるときには戻しバネ270により戻し方向へ付勢されている。
次いで、戻しレバーは図7に示したフィードローラ110の正転開始時にトルクリミッタ265の作用により軸部101と一体回転することにより戻しバネ270に抗して正転方向へ所定角度回転してストッパ268との接触位置に達してからは、トルクリミッタの作用によりフィードローラ軸部101とスリップしつつ停止した状態を維持する。図8の状態においても、フィードローラの正転中に戻しレバーはストッパ268に接した状態を維持する。
次いで、図9のように一枚目の紙幣P1の後端部が分離ニップ部N1を抜けると、駆動伝達遅延機構Dの作用によりフィードローラは軽負荷で逆転可能となるため、図10に示すように戻しレバーが戻しバネの力により戻し方向へ回動すると共にフィードローラ軸部101を介してフィードローラを戻し方向に回動させることにより、先端を分離部に残留していた二枚目以降の紙幣P2を戻し方向へ移動させることができる。戻しバネにより紙幣を戻し方向へ移動させた後でも戻しレバーは紙幣投入口側に引っ張りきられた状態を維持する。
即ち、フィードローラの停止後に引出しローラ対251a、251bにより引き出された一枚目の紙幣P1が分離ニップ部N1を抜けると(図9)、フィードローラは外力から解放される。つまり、給紙モータ70からの駆動も停止し、且つフィードローラが逆転しても駆動伝達遅延機構Dによって負荷がかからないばかりか、ブレーキローラ130はその軸部に配置されたワンウェイクラッチ130aにより戻し方向には回転可能な為、フィードローラ軸部は無負荷、或いは軽負荷で逆転可能な状態となり、戻しバネ270の力で戻しレバーが戻し方向へ回動する(図10)。戻しレバーが戻った角度分だけ、フィードローラ、ブレーキローラも戻し方向に回転し、残留紙幣を投入口側に戻すことができる。トルクリミッタの圧接バネのバネ力も小さくて済むため、低コスト化を実現できる。
仮に、相対回転区間が存在しない場合には、戻しレバーを戻し方向へ回動させるのには所定以上の負荷がかかるのでその負荷に抗し得る程度に戻しバネの力を強くする必要があるが、その場合にはトルクリミッタを構成する圧接スプリング267を強くする必要も生じ、その結果フィードローラの正転駆動力も強くせねばならなくなる。つまり、相対回転区間が存在しない場合には、戻しレバー、フィードローラを戻し方向へ回転させることができなくなる。
なお、戻しレバーが図9(a)の状態から戻し方向へ回動して図10(a)の状態に移行すると、戻しレバーが戻った角度分だけフィードローラが戻し方向に回転するが、この際上流側タイミングプーリ60の第2被係合部62は図9(c)の位置から時計回り方向へ若干移動して図10(c)の位置(固定状態にある第2係合部53から若干離間した位置)となる。しかし、これらの図からも明らかなように上流側タイミングプーリ60が逆転する角度、即ち第2被係合部62が時計回り方向へ移動する距離は僅かであるため、“遊び”が回復した状態に実質的な影響を与えることはない。
即ち、上記した戻しレバーの一連の動作によりフィードローラが所定量逆転してから停止するまでの逆回転量は僅かであるために第1被係合部52と第2係合部53と第2被係合部62の位置関係は、ほぼ図9(b)(c)に示した“遊び”の回復時と比しても実質的に同じ相対的位置関係の範囲内にあると言える。このため、次の給紙時には図10(b)(c)に示した初期状態とほぼ同じ状態からスタートすることができる。
以上のことは第二実施形態にも当てはまる。
本発明の紙幣分離搬送装置1では、繰出しローラ30による繰出し動作開始の後に、所定の時間差をもってフィードローラ110を回転開始させるために、繰出しローラとフィードローラとの間の駆動伝達経路に、相対回転区間40、45を形成するためのタイミングクラッチ50、上流側タイミングプーリ60を介在させる。即ち、繰出しローラとタイミングクラッチとの間には第1相対回転区間40を設け、タイミングクラッチと上流側タイミングプーリとの間には第2相対回転区間45を設ける。これにより給紙モータを回転させて繰出しローラが回転しても、各相対回転区間の合計に相当する周方向への“遊び”が無くなるまでフィードローラには駆動伝達がなされず停止している。フィードローラの停止期間中に繰出しローラが回転することにより一枚目紙幣P1を繰り出してブレーキローラ130に押し当てて先端を揃える。
紙幣先端がブレーキローラに接した状態で繰出しローラ、タイミングクラッチ、タイミングプーリが正転を続けることにより各相対回転区間により形成される“遊び”が無くなると、フィードローラが繰出しローラ等と共に回転して紙幣分離が開始される。
紙幣P1は給紙モータ70とは別の引出し搬送モータ255により駆動される引出しローラ対251a、251bの引出しニップN2により引き出されて搬送が継続される。分離ニップ部N1にニップされた紙幣の位置と紙幣の後端部までの余長L1が引出しローラによって引き出し完了するまでの期間中にフィードローラが紙幣に連れ回りすることにより、喪失していた各相対回転区間40、45の“遊び”が回復する。
一枚目紙幣P1の繰出し、分離、引出し動作完了時に“遊び”が回復して繰出しローラ、タイミングクラッチ、タイミングプーリの周方向位置関係が初期状態に復帰する為、二枚目以降の紙幣の繰出しを開始する場合にも同一の動作が単純な制御で繰り返し行える。
また、この一連の繰出し、分離の動作は駆動伝達遅延機構Dの純粋に機械的な構成のみによって実現され、モータの正逆駆動を微細なタイミングで切り替えるような複雑な制御を必要としない。これにより高速処理、高耐久化が可能となる。しかも、駆動伝達遅延機構Dは、単純で簡素な構造であり安価に製造できる。
一枚目の紙幣P1が分離ニップ部N1を通過した後はフィードローラは外力から解放される。つまり、給紙モータ70からの駆動も停止し、且つ相対回転区間の存在によって逆回転時の負荷が軽減されるばかりか、ブレーキローラ130はワンウェイクラッチ130aにより戻し方向bには回転可能な為、戻しバネ270の力で戻しレバーが戻し方向へ回動する。戻しレバーが戻った角度分だけ、フィードローラ、ブレーキローラが逆転して残留紙幣を戻すことができる。つまり、相対回転区間45を構成する第2被係合部62は図10(c)に示すように停止状態にある第2係合部53に対して戻し方向bへの相対回転は自由であり、相対回転区間40を構成する第被係合部52は図10(b)に示すように停止状態にある第1係合部32に対して戻し方向bへの相対回転が自由である。このため、戻しバネ270によって戻しレバーを介してフィードローラが逆転する際の負荷が極めて小さい状態となっている。
図13(a)及び(b)は第二の実施形態に係る紙幣分離搬送装置1の要部構成(繰出し部20)を示す平面図、及び相対回転区間内における係合部と被係合部の動作を示す説明図(C−C断面図)である。図14(a)(b)及び(c)は繰出しローラ、上流側タイミングプーリを繰出しローラ軸に組み付けた状態の正面側斜視図、(a)の構成から繰出しローラ軸を除去した状態を示す正面側斜視図、及び(b)の構成から正面側の繰出しローラの分割片を除去した状態を示す正面側斜視図である。図15(a)(b)及び(c)は繰出しローラ、上流側タイミングプーリを繰出しローラ軸に組み付けた状態の背面側斜視図、(a)の構成から繰出しローラ軸を除去した状態を示す背面側斜視図、及び(b)の構成から正面側の繰出しローラの分割片を除去した状態を示す背面側斜視図である。
なお、第一実施形態の繰出し部20と同一部分には同一符号を付して説明する。また、分離部100、引出し搬送部250の構成は第一実施形態とほぼ同様であるため図示を省略した。従って、分離部100、引出し搬送部250の構成、動作は、図1、図2、図5乃至図10の対応部分を参照しつつ説明する。
即ち、第二の実施形態に係る紙幣分離搬送装置1は、繰出しローラ30により紙幣束Pから紙幣を一枚ずつ繰出す繰出し部20と、繰出し部20から一枚目紙幣と共に二枚目以降の紙幣が重なって繰り出される重送が行われている時に繰出しローラと接する一枚目の紙幣P1だけを通過させて下流側に送出すると共に二枚目以降の紙幣の前進を阻止する分離ニップ部N1を備えた分離部100と、分離部内に一部が残っている一枚目の紙幣P1を先端から引出し搬送する引出し搬送部250と、繰出し部20と分離部100との間で駆動力を伝達する中継伝達部200と、各種制御対象を制御する制御手段300と、を備える。
分離部100は、図1等に示すように正転した時に繰出しローラ30により繰り出された一枚目の紙幣P1の面に接してこれを搬送するフィードローラ(分離ローラ)110と、フィードローラとの間で分離ニップ部を形成し、二枚目以降の紙幣の前進を阻止する摩擦分離部材(ブレーキローラ)130と、を備える。分離ローラ130の軸部には図示しないワンウェイクラッチ130aが配置されることにより、紙幣を戻す方向(反時計回り方向)への回転が可能となっている。
引出し搬送部250は、図1等に示すように分離ニップ部N1との距離Lが紙幣の搬送方向長よりも短い下流側位置に配置されて引出しニップ部N2を形成する引出しローラ対(搬送部材)251a、251bと、次点センサ253と、引出しローラ対を駆動する引出し搬送モータ255と、を備える。
なお、ここで初期位置関係とは図13(b)において被係合部62に対して係合部33が符号33−1で示した初期位置にある状態を意味し、終期位置関係とは同図において被係合部62に対して係合部33が符号33−2で示した終期位置にある状態を意味する。
正転する上流側タイミングプーリ60は、停止状態にある繰出しローラ30に対して紙幣後端部が分離ニップ部N1を通過するまで相対回転区間80の範囲内で相対回転して分離ニップ部通過後に停止し、上流側タイミングプーリの相対回転終了時には繰出しローラと上流側タイミングプーリとが初期位置関係に復帰する(図9(a)参照)。
駆動伝達遅延機構Dが備える相対回転区間80は、繰出しローラ30に設けられた係合部33と、上流側タイミングプーリ60に設けられて繰出しローラに対して正逆方向へ相対回転する過程で係合部33と係合したり、離脱する被係合部62との間に形成される。
繰出しローラ30、上流側タイミングプーリ60が停止している初期状態では、図13(b)中に破線で図示したように係合部33は符号33−1で示した被係合部62の正転方向前側(前部62a側)に位置している。繰出しローラが正転して一枚目の紙幣を分離ニップ部に向けて送り出す際に初期状態にあった係合部33が停止状態にある被係合部62の前部62aから離間する方向(図13(b)の反時計回り方向)へ回転移動し、係合部33が周回してきて図13(b)中に破線(符号33−2)で図示したように被係合部62の後部62bに当接した後で被係合部62に駆動力を伝達して上流側タイミングプーリを正転開始させて、中継伝達部材125を介してフィードローラ110を正転駆動する。
本実施形態でも図示しないフィードローラの軸部101に戻しレバー261、トルクリミッタ265が設けられると共に、戻しバネ270によって戻しレバーを戻し方向へ付勢する重送紙幣戻し機構260の構成が採用されている。重送紙幣戻し機構260による残留紙幣を戻すための作用、効果の説明は第一実施形態と重複するため説明を省略する。
図16(a)(b)及び(c)は第二実施形態の変形例に係る紙幣分離搬送装置の繰出し部20における中継伝達機構の他の構成例を示す平面図、正面図、及び斜視図である。
上記第一、第二実施形態では繰出し部20と分離部100との間での駆動力を伝達する中継伝達機構としてタイミングプーリとタイミングベルトから成る構成を採用したが、これは一例に過ぎない。
図16は中継伝達機構を複数のギヤから構成した例を示している。
繰出し部20において、給紙モータ70の出力軸に一体化された出力ギヤ70aは、繰出しローラ30の軸部35に対して同一軸心状に固定された従動ギヤ71と噛合している。繰出しローラは分割片30a、30bから構成されており、一方の分割片30aには駆動伝達遅延機構Dを構成する係合部33が上流側伝達部材としての上流側伝達ギヤ150に向けて突設されている。上流側伝達ギヤ150の対向面には周回移動する過程で係合部33と係合したり離脱する被係合部152が突設されている。係合部33と被係合部152の間には相対回転区間80が形成される。
上流側伝達ギヤ150と下流側伝達ギヤ155との間には中継伝達部材としての複数の中間ギヤ140が配置されている。
本実施形態でも、図示しないが、フィードローラ110の軸部101に戻しレバー261、トルクリミッタ265が設けられると共に、戻しバネ270によって戻しレバーを戻し方向へ付勢する重送紙幣戻し機構260の構成が採用されている。重送紙幣戻し機構260による残留紙幣を戻すための作用、効果の説明は第一実施形態と重複するため説明を省略する。
図17は本発明の第一実施形態、及び第二実施形態に係る紙幣分離搬送装置1を夫々適用可能な紙幣取扱装置の一例としての紙幣鑑別器の概略構成を示す断面図である。
紙幣鑑別器(紙葉鑑別器)400は、筐体401の前面上部に設けた入金口402に設けた入金トレイ403と、入金口402の内部に設けられた搬送路405に沿って順次配置された紙幣分離搬送装置1、及び紙幣の真贋を判定する鑑別部410と、鑑別部により真正であると判定された紙幣を筐体の前面下部に設けられた真正紙幣トレイ420へ仕分け搬送し、偽紙幣であると判定された紙幣を偽紙幣トレイ421へ仕分け搬送する仕分け搬送部415と、制御手段425と、を備えている。
入金トレイ403にセットされた紙幣束を構成する各紙幣の先端が不揃いの状態であっても、紙幣分離搬送装置1は繰出し部20により繰り出された紙幣の先端を分離ローラ対に一旦当接させて先端を揃えてから分離作業を行うので、二枚目の紙幣が一枚目に先行して送出されるタイプの重送をも防止することができる。
なお、本発明の紙幣分離搬送装置は、紙幣識別機のみならず、紙幣入金機、紙幣計数機、各種自動販売機、両替機等のように物品やサービスを提供する他の紙幣取扱装置にも適用することができる。
第1の本発明に係る紙葉分離搬送装置は、繰出しローラ30により紙葉束Pから紙葉を一枚ずつ繰出す繰出し部20と、繰出し部20から繰出されてきた紙葉が重送状態にある時に繰出しローラと接する一枚目の紙葉P1だけを通過させて下流側に送出すると共に二枚目以降の紙葉の前進を阻止する分離部100と、該分離部内に一部が残っている一枚目の紙葉P1を引出し搬送する引出し搬送部(紙葉引き出し手段)250と、繰出し部と分離部との間で駆動力を伝達する中継伝達部200と、一枚目の紙葉が前記分離部を通過した後に該分離部に残留する二枚目以降の紙葉を上流側へ戻す(次の分離作業に支障のない退避位置へ戻す)重送紙葉戻し機構260と、各種制御対象を制御する制御手段300と、を備える。更に、繰出し部は、紙葉搬送方向と直交する繰出しローラ軸21と、該繰出しローラ軸の軸回りに回転し、軸方向に沿って順次配列された繰出しローラ30、及び上流側伝達部材60と、繰出しローラを搬送方向に正転駆動する給紙モータ70と、繰出しローラと上流側伝達部材との間に少なくとも一つの相対回転区間80(40、45)を設けて正逆双方向への駆動力の伝達を遅延(断続)させる駆動伝達遅延機構Dと、を備える。分離部100は、正転した時に繰出しローラにより繰り出された一枚目の紙葉面に接してこれを搬送するフィードローラ110と、該フィードローラとの間で分離ニップ部N1を形成し、二枚目以降の紙葉の前進を阻止する摩擦分離部材(ブレーキローラ)130と、を備える。中継伝達部200は、フィードローラと同軸状に隣接配置されて一体回転する下流側伝達部材120と、上流側伝達部材と下流側伝達部材120との間の駆動力伝達を中継する中継伝達部材125と、を備える。重送紙葉戻し機構260は、フィードローラの軸部により相対回転可能に軸支された戻しレバー261と、フィードローラの軸部と戻しレバーとの間に配置されて該軸部と該戻しレバーとの間のトルク差が一定値を越えない限り該軸部と該戻しレバーを正転方向へ一体回転させるトルクリミッタ265と、該戻しレバーを戻し方向へ付勢する弾性付勢手段270と、を備える。引出し搬送部250は、分離ニップ部との距離が紙葉の搬送方向長よりも短い下流側位置に配置されて引出しニップ部を形成する引出し搬送部材(引出しローラ対)201a、201bと、該引出し搬送部材の一方を駆動することにより給紙モータにより駆動されていないフィードローラを搬送方向へ回転する引出し搬送モータ205と、を備える。駆動伝達遅延機構Dは、繰出しローラと上流側伝達部材との周方向位置関係を初期位置関係と終期位置関係との間で双方向に相対回転可能とし、且つ、上流側伝達部材に対する繰出しローラの位置関係が初期位置関係から終期位置関係に達するまでの間は、上流側伝達部材60に対して駆動力を伝達せず、終期位置関係に達した時以降に駆動力を伝達する構成を備える。制御手段は、フィードローラが正転することにより繰出しローラにより繰り出されていた一枚目の紙葉が引出しニップ部に達する適宜のタイミングで、給紙モータによる繰出しローラの駆動を停止すると共に引出し搬送部材による紙葉の引出し搬送を実施することにより、一枚目の紙葉の搬送力を利用してフィードローラ、中継伝達部材125、上流側伝達部材を正転し、紙葉引き出し手段によりフィードローラを搬送方向へ回転させる。
戻しレバー261は、フィードローラの正転開始時にトルクリミッタ265の作用によりフィードローラの軸部と一体回転することにより戻しバネに抗して正転方向へ所定角度回転した停止位置に達してからは軸部とスリップしつつ停止状態を維持する。この際、戻しレバーはトルクリミッタの作用により、フィードローラ軸部に対して滑りを起こして空回りする。
複数のモータにより繰出しローラとフィードローラを個別に駆動することなく、単一のモータを用いつつ、純粋に機械的な構成によって、繰出しローラが所定の角度回転するまでフィードローラの回転を開始させないことにより、二枚目以降の紙葉が一枚目に先行して分離ニップ部を通過することを阻止することができる。
フィードローラが駆動を開始した時点では駆動伝達遅延機構を構成する相対回転区間の”遊び”が一旦喪失しているが、フィードローラと摩擦分離部材との分離ニップ部の上流側に余長部分が残っている紙葉が引出し搬送部材によって引き出される際におけるフィードローラ、上流側伝達部材の空回りが完了した時点で相対回転区間の”遊び”は復活する。このため、駆動モータを格別に制御することなく次の紙葉の繰出し、分離作業を再開することができる。
また、本発明によれば、分離動作の遅延、制御の複雑化、検知センサの増設をもたらすことなく、重送紙葉に分離を施して一枚目の紙葉だけを下流側に通過させる作業が終わった時点で、分離部に残留していた残りの紙葉を上流側に戻し搬送して次の分離作業における障害とならないようにすることができる。
本発明では、駆動伝達遅延機構Dが形成する相対回転区間の合計周方向長に相当する空転区間があるからこそ、フィードローラの停止後に小さい戻しバネ力で戻しレバーを戻すことができる。つまり、相対回転区間の存在により、フィードローラと給紙モータとの駆動が切れている期間を形成できるので、弱い戻しバネ力による簡易な戻しレバー構造と、バネ力の弱いトルクリミッタ構造を用いつつ、低コストで重送紙葉戻し機構260を構築できる。
ブレーキローラ130はワンウェイクラッチ130aにより戻し方向に軽負荷で回転できる。従って、駆動伝達遅延機構Dの作用によってフィードローラ軸部101が軽負荷になると、戻しバネ270の小さな力によってフィードローラとブレーキローラを戻し方向に回転させて残留紙幣を戻すことができる。
駆動伝達遅延機構Dを繰出しローラと上流側伝達部材の二部品から構成する場合には、繰出しローラに設けた係合部33と上流側伝達部材に設けた被係合部62との間に相対回転区間80を形成する。相対回転区間80を延長する要請を満たすためには、繰出しローラと上流側伝達部材との間にクラッチ部材を配置して相対回転区間の数を増設することが有効である。
この発明では、相対回転区間80は、繰出しローラとクラッチ部材との間に形成される第1相対回転区間40と、クラッチ部材と上流側伝達部材との間に形成される第2相対回転区間45と、から構成されていることを特徴とする。
相対回転区間80の長さは、繰出しローラと上流側伝達部材との間にクラッチ部材を配置して相対回転区間の数を増設することにより任意自在に延長することができる。
駆動伝達遅延機構Dを繰出しローラ30とクラッチ部材50と上流側伝達部材60の三部品から構成する場合には、繰出しローラに設けた第1係合部33とクラッチ部材に設けた第1被係合部51との間に第1相対回転区間40を形成すると共に、クラッチ部材に設けた第2係合部53と上流側伝達部材に設けた第2被係合部62との間に第2相対回転区間45を形成することにより、相対回転区間80の合計周方向遊び長を延長することができる。
フィードローラによる紙葉の分離は、フィードローラを連続的に正転させることにより二枚目以降の紙葉に対しても連続して実施することができ、全ての紙葉の給紙、分離が終了する前に給送を停止することも可能であるし、全ての紙葉の給紙、分離が終了するまで連続給紙することもできる。
フィードローラの正転停止後にフィードローラが紙葉に連れ回りすることにより相対回転区間の”遊び”が復活する。
フィードローラの停止、引出し搬送部材による紙葉の引出し(”遊び”の復活)は、紙葉を一枚分離、通過させる度に実施しても良いし、複数枚の紙葉に対する分離、通過を連続させた段階で実施してもよい。
フィードローラによる連続正転中に適宜のタイミング、即ち二枚目以降の任意の紙葉(例えば、100枚の紙葉束中の10枚目の紙葉)の分離を終了した段階で正転を停止することも可能である。フィードローラの正転停止後にフィードローラが任意の紙葉に連れ回りすることにより相対回転区間の”遊び”が復活する。
任意の紙葉とは、オペレータがスイッチ操作などによって給紙を中断した時点で引出し搬送部に達している紙葉は勿論、ジャム発生、異物検知、その他のエラー等が検知されたことによって給紙が自動的に中断された時点で引出し搬送部に達している紙葉を含む。
フィードローラとブレーキローラによって紙葉を連続的に分離することにより紙葉積載部上の全ての紙葉の給送を終了した段階でフィードローラの正転を停止することも勿論可能である。フィードローラの正転停止後にフィードローラが最後の紙葉に連れ回りすることにより相対回転区間の”遊び”が復活する。
この紙葉取扱装置400は、紙葉識別機、紙葉入金機、紙葉計数機、各種自動販売機、両替機等の紙葉取扱装置にも適用することにより、シンプル、安価な構成でありながら、二枚目紙葉が一枚目に先行して分離部に給紙されることにより発生する重送を効果的に防止することができる。
Claims (9)
- 繰出しローラにより紙葉束から紙葉を一枚ずつ繰出す繰出し部と、該繰出し部から繰出されてきた紙葉が重送状態にある時に一枚目の紙葉だけを先行して通過させて下流側に送出すると共に二枚目以降の紙葉の前進を阻止する分離部と、該分離部内に一部が残っている一枚目の紙葉を引出し搬送する引出し搬送部と、該繰出し部と前記分離部との間で駆動力を伝達する中継伝達部と、一枚目の紙葉が前記分離部を通過した後に該分離部に残留する二枚目以降の紙葉を上流側へ戻す重送紙葉戻し機構と、各種制御対象を制御する制御手段と、を備えた紙葉分離搬送装置であって、
前記繰出し部は、繰出しローラ軸と、該繰出しローラ軸の軸回りに回転し、軸方向に沿って順次配列された前記繰出しローラ、及び上流側伝達部材と、前記繰出しローラを搬送方向に正転駆動する給紙モータと、前記繰出しローラと前記上流側伝達部材との間に少なくとも一つの相対回転区間を設けて正逆双方向への駆動力の伝達を遅延させる駆動伝達遅延機構と、を備え、
前記分離部は、正転した時に前記繰出しローラにより繰り出された一枚目の紙葉面に接してこれを搬送するフィードローラと、該フィードローラとの間で分離ニップ部を形成し、二枚目以降の紙葉の前進を阻止する摩擦分離部材と、を備え、
前記中継伝達部は、前記フィードローラと同軸状に隣接配置されて一体回転する下流側伝達部材と、前記上流側伝達部材と前記下流側伝達部材との間の駆動力伝達を中継する中継伝達部材と、を備え、
前記重送紙葉戻し機構は、前記フィードローラの軸部により相対回転可能に軸支された戻しレバーと、前記フィードローラの軸部と前記戻しレバーとの間に配置されて該軸部と該戻しレバーとの間のトルク差が一定値を越えない限り該軸部と該戻しレバーを正転方向へ一体回転させるトルクリミッタと、該戻しレバーを戻し方向へ付勢する弾性付勢手段と、を備え、
前記引出し搬送部は、前記分離ニップ部との距離が紙葉の搬送方向長よりも短い下流側位置に配置されて引出しニップ部を形成する引出し搬送部材と、該引出し搬送部材を駆動する引出し搬送モータと、を備え、
前記駆動伝達遅延機構は、前記繰出しローラと前記上流側伝達部材との周方向位置関係を初期位置関係と終期位置関係との間で双方向に相対回転可能とし、且つ、前記上流側伝達部材に対する前記繰出しローラの位置関係が初期位置関係から終期位置関係に達するまでの間は前記上流側伝達部材に対して駆動力を伝達せず、終期位置関係に達した時以降に駆動力を伝達する構成を備え、
前記制御手段は、前記フィードローラが正転することにより前記繰出しローラにより繰り出されていた前記一枚目の紙葉が前記引出しニップ部に達する適宜のタイミングで、前記給紙モータによる前記繰出しローラの駆動を停止すると共に前記引出し搬送部材による紙葉の引出し搬送を実施することにより、一枚目の紙葉の搬送力を利用して前記フィードローラ、前記中継伝達部材、前記上流側伝達部材を正転し、
正転する前記上流側伝達部材が停止状態にある前記繰出しローラに対して、前記紙葉後端部が前記分離ニップ部を通過するまで前記相対回転区間の範囲内で相対回転し、前記上流側伝達部材の相対回転終了時に前記繰出しローラと前記上流側伝達部材とが前記初期位置関係に復帰し、
前記戻しレバーは、前記フィードローラの正転開始時に前記トルクリミッタの作用により前記フィードローラの軸部と一体回転することにより前記戻しバネに抗して正転方向へ所定角度回転した停止位置に達してからは前記軸部とスリップしつつ停止状態を維持し、
前記一枚目の紙葉後端部が前記分離ニップ部を抜けると、前記戻しレバーが前記戻しバネの力により戻し方向へ回動すると共に前記フィードローラを戻し方向に回動させることにより、前記分離部に残留していた二枚目以降の紙葉を戻し方向へ移動させることを特徴とする紙葉分離搬送装置。 - 前記摩擦分離部材は、ブレーキローラ軸により軸支されたブレーキローラであり、該ブレーキローラは、前記ブレーキローラ軸との間に配置されたワンウェイクラッチにより正転方向には回転しない一方で、紙葉戻し方向には回転するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉分離搬送装置。
- 前記相対回転区間は、前記繰出しローラに設けられた係合部と、前記上流側伝達部材に設けられて前記繰出しローラに対して正逆方向へ相対回転する過程で前記係合部と係合したり離脱する被係合部との間に形成され、
前記繰出しローラ、前記上流側伝達部材が停止している初期状態では、前記係合部は前記被係合部の正転方向前側に位置しており、
前記繰出しローラが正転して一枚目の紙葉を前記分離ニップ部に向けて送り出す際に初期状態にあった前記係合部が停止状態にある前記被係合部の前部から離間する方向へ回転移動し、前記係合部が周回してきて前記被係合部の後部に当接した後で前記被係合部に駆動力を伝達して前記上流側伝達部材を正転開始させて前記中継伝達部材を介してフィードローラを正転駆動し、
前記制御手段は、前記繰出しローラにより繰り出されていた前記一枚目の紙葉が前記引出し搬送部材の引出しニップ部に達してから、前記給紙モータによる繰出しローラの駆動を停止すると共に前記引出し搬送部材による紙葉の搬送を実施することにより、前記分離ニップ部よりも上流側に残された一枚目の紙葉の余長による搬送力を利用して前記フィードローラ、前記中継伝達部材、前記上流側伝達部材を正転させて、前記上流側伝達部材の被係合部が停止状態にある前記繰出しローラの係合部と接触、或いは近接する位置まで回転して停止したときに前記上流側伝達部材、及び前記繰出しローラの前記初期位置関係への復帰を完了させることを特徴とする請求項1、又は2に記載の紙葉分離搬送装置。 - 前記繰出しローラと前記上流側伝達部材との間に位置する前記繰出しローラ軸の部位に、クラッチ部材が前記繰出しローラ、及び前記上流側伝達部材に対して相対回転可能に軸支されており、
前記相対回転区間は、前記繰出しローラと前記クラッチ部材との間に形成される第1相対回転区間と、前記クラッチ部材と前記上流側伝達部材との間に形成される第2相対回転区間と、から構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の紙葉分離搬送装置。 - 前記第1相対回転区間は、前記繰出しローラに設けられた第1係合部と、前記クラッチ部材に設けられて前記繰出しローラに対して正逆方向へ相対回転する過程で前記第1係合部と係合したり離脱する第1被係合部との間に形成され、
前記第2相対回転区間は、前記クラッチ部材に設けられた第2係合部と、前記上流側伝達部材に設けられて前記クラッチ部材に対して正逆方向へ相対回転する過程で前記第2係合部と係合したり離脱する第2被係合部との間に形成され、
前記繰出しローラ、前記クラッチ部材、及び前記上流側伝達部材が停止している初期状態では、前記第1係合部は前記第1被係合部の正転方向前側に位置し、前記第2係合部は前記第2被係合部の正転方向前側に位置しており、
前記繰出しローラが正転して一枚目の紙葉を前記分離ニップ部に向けて送り出す際に初期状態にあった前記第1係合部が停止状態にある前記第1被係合部の前部から離間する方向へ回転移動し、前記第1係合部が周回してきて前記第1被係合部の後部に当接した後で該第1被係合部に駆動力を伝達して前記クラッチ部材を正転開始させ、
初期位置にある前記第2係合部が正転する際には前記第2被係合部前部から離間する方向へ回転移動し、前記第2係合部が周回してきて前記第2被係合部の後部に当接した後で前記第2被係合部に駆動力を伝達して前記上流側伝達部材を搬送方向へ回転開始させて、前記クラッチ部材からの正転方向への駆動力を前記上流側伝達部材に伝達することにより中継伝達部材を介してフィードローラを正転駆動し、
前記制御手段は、前記繰出しローラにより繰り出されていた前記一枚目の紙葉が前記引出し搬送部材の引出しニップ部に達するタイミングで前記給紙モータによる前記繰出しローラの駆動を停止すると共に、前記引出し搬送部材による該紙葉の引出し搬送を実施することにより、前記分離ニップ部よりも上流側に残された紙葉の余長による搬送力を利用して前記フィードローラ、前記中継伝達部材、前記上流側伝達部材を正転させて、前記上流側伝達部材の前記第2被係合部が停止状態にある前記クラッチ部材の前記第2係合部と接するまで回転してから前記第2係合部、及び前記第1被係合部に駆動を伝達開始して、前記第1被係合部が前記繰出しローラの前記第1係合部と接触、或いは近接する位置まで回転して停止した時に前記クラッチ部材、及び繰出しローラの初期位置関係への復帰を完了させることを特徴とする請求項4に記載の紙葉分離搬送装置。 - 前記制御手段は、前記繰出しローラ、前記フィードローラ、及び前記引出し搬送部材の正転駆動を、前記一枚目の紙葉が前記分離部を通過した以降も連続することにより後続紙葉の連続給紙が可能であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の紙葉分離搬送装置。
- 前記制御手段は、二枚目以降の任意の紙葉が前記引出し搬送部材に達したタイミングで前記給紙モータによる前記繰出しローラ、及び前記フィードローラの正転駆動を停止すると共に前記引出し搬送部材による前記任意の紙葉の引出し搬送を実施することにより、該任意の紙葉の搬送力を利用して前記フィードローラ、前記中継伝達部材、前記上流側伝達部材を正転させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の紙葉分離搬送装置。
- 前記制御手段は、前記繰出しローラ、前記フィードローラ、及び前記引出し搬送部材を連続して正転させることにより前記紙葉束中の最後の紙葉が前記引出し搬送部材に達したタイミングで前記給紙モータによる前記繰出しローラ、及び前記フィードローラの正転駆動を停止すると共に前記引出し搬送部材による前記最後の紙葉の引出し搬送を実施することにより、前記最後の紙葉の搬送力を利用して前記フィードローラ、前記中継伝達部材、前記上流側伝達部材を正転させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の紙葉分離搬送装置。
- 請求項1乃至8の何れか一項に記載の紙葉分離搬送装置を備えたことを特徴とする紙葉取扱装置。
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