JP7535547B2 - 摩擦搬送装置、及び紙葉搬送装置 - Google Patents
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Description
センタリング装置、及びスキュー補正装置は、搬送通路上における紙幣の搬送位置や搬送姿勢を下流側に位置する識別装置による判定に適した状態に修正する。また、センタリング装置等は、識別装置の更に下流側に位置する紙幣収納部に積層される紙幣の整列状態のバラツキによる後段の各種処理の繁雑化、例えばソーターや集計装置への紙幣束のセットに先立つ整列作業の繁雑化を防止し、更に整列不良のままの紙幣束をソーター等にセットして処理を実施した場合におけるジャム発生を防止する。
ところで、金銭取扱い装置の挿入口から挿入された紙幣が斜行等を原因として搬送通路の側壁に当接しながら搬送されると、紙幣は側壁から離間する方向の反力を受けて搬送通路の中心軸に整合する方向に移動しようとするが、搬送ローラによる紙幣のニップ力が反力よりも強い場合には紙幣の先端角部等が側壁との接触、擦れにより折れ、潰れ等の変形を起こして搬送不良、識別不良を起こす虞がある。最悪の場合には紙幣の損傷が著しくなり使用不能に陥る。
しかしながら、球体の押圧力が弱く、紙葉との摩擦力が常に小さいため、スキューを起こしていない紙葉が搬送通路内の凹凸に接触した場合にもジャムが発生し易い。また、球体と紙葉との摩擦力が常に一定であるため返却搬送において充分な搬送グリップを確保できず、返却搬送不良が発生し易く不利である。更に、経時的に球体表面にゴミや汚れ等の異物が付着し易く、付着した異物により紙葉との摩擦力が増大して所期の調心機能が発揮されなくなる。
しかしながら、斜向ローラと紙幣との搬送グリップを低減させる構成を有しないため、斜向ローラと基準壁との協働により紙幣の方向、姿勢を調整する際に紙幣が基準壁に強く押し付けられつつ搬送されて変形したり、大きなダメージを受ける。即ち、クレジットカードやフィルム等の硬い媒体の整合には効果的であるものの、著しい折れ癖のある媒体や劣悪な紙幣、よれよれ、くしゃくしゃ、水濡れ等の“コシ”のない紙幣の搬送においては、基準壁への接触時に媒体の変形や状態の悪化を引き起こし、延いてはジャムが発生する恐れがある。
この摩擦搬送装置は優れたスキュー補正機能を有しているが、部品点数が多くなって構成が複雑化し、摩耗により駆動ローラの耐久性が低下するという問題がある。即ち、駆動ローラが従動ローラに対して軸方向へ移動する際の摩擦により駆動ローラの耐久性、耐摩耗性が低くなる。例えば、駆動ローラの周面が摩耗により1mm厚程度減縮した場合には搬送グリップの低下が著しくなる。
また、本発明は、紙葉の受取時には搬送グリップを弱めてスキュー補正を有利に行い、紙葉の返却時や待機時には搬送グリップが強い状態を維持して返却搬送や連続挿入防止を有利に行う摩擦搬送装置、及び紙葉搬送装置を提供することを目的とする。
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
[基本構造]
以下、本発明の摩擦搬送装置を備えた紙幣搬送装置の基本構成、動作原理、スキュー補正原理について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る紙葉搬送装置が備える搬送グリップ調整機構の構成を示す側面図であり、図2(a)(b)及び(c)は紙葉搬送路、及び摩擦搬送装置を簡略化して示す平面図、その側部縦断面図、及び摩擦搬送装置の要部正面図であり、図3(a)及び(b)は摩擦搬送装置を構成する搬送グリップ調整機構(駆動側ユニット、及び従動側ユニット)の一例を示す斜視図であり、図4はスキュー補正原理を示す紙葉搬送路、及び摩擦搬送装置の平面図であり、図5(a)及び(b)は駆動側ユニットと従動側ユニットの正面図であり、同図(a-1)及び(a-2)、並びに(a-3)はニップ部に紙幣が存在しない状態での駆動ローラの最上昇状態、及び駆動ローラの下降状態、並びに逆転時の状態を示し、同図(b-1)及び(b-2)、並びに(b-3)はニップ部に紙幣が存在する状態での正転時における駆動ローラの最上昇状態、及び駆動ローラの下降状態、並びに逆転時の状態を示している。
また、図6乃至図9は駆動ローラ、及び搬送グリップ調整機構GAが紙幣等の搬送媒体から搬送負荷を受けてどのような挙動をするかを各部のモーメントとの関係で示す模式図である。
なお、本例では紙葉の一例として紙幣を示すが、本装置は紙幣以外の紙葉、例えば有価証券、チケット等々の搬送におけるスキュー補正にも適用することができる。
図2に示すように、紙幣搬送装置1は、下部ユニット3と、下部ユニット3に対して軸部により開閉自在に支持された上部ユニット4とを備え、各ユニットが閉じている時に各ユニット間に紙幣搬送路10が形成される。
紙幣搬送装置1は、紙幣搬送路10(紙幣搬送面11)を搬送される紙幣Pに位置ズレ、スキュー等の搬送不良がある場合に搬送不良を自動的に補正するための摩擦搬送装置2を備えている。
本例では、駆動側ユニット20が下部ユニット3に配置され、従動側ユニット100が上部ユニット4に配置されているが、配置場所は逆であってもよい。
入口センサ15は紙幣搬送路10の入口から紙幣が挿入されたことを検知し、制御手段200はその検知タイミングで駆動モータ60を駆動して駆動側ユニット20を正転開始させる。駆動側ユニット20の駆動により一枚目の紙幣が紙幣搬送路10を内奧部へ向けて搬送され、当該紙幣の後端部が識別センサ17を通過すると駆動側ユニット20を停止させる。このため、二枚目の紙幣を駆動ローラと従動ローラのニップ部に差し込んでも搬送されることはない。駆動側ユニットの停止後も、識別センサ以降の搬送ローラ16a、16bを駆動することによりキャッシュボックスに向けて一枚目の紙幣を搬送する。キャッシュボックス収納検知手段によりキャッシュボックスに収納されたことが検知されると、制御手段200は駆動モータ60を一旦停止する。制御手段200は、キャッシュボックス内への一枚目の収納が完了したことが検知された時点で二枚目以降の搬送が可能な状態に移行させる。つまり、二枚目の紙幣が紙幣搬送路の入口に挿入されたことが入口センサ15により検知されることにより駆動側ユニット20を駆動再開させる。
紙幣搬送路10の終端部には図示しないキャッシュボックスと連通した排出口が位置している。
各搬送面の両側方に起立した側壁は、入口側搬送面11aの両側に配置された入口側側壁12と、中間搬送面11bの両側に配置されてテーパー状に幅間隔が漸減する中間側壁13と、奥部搬送面11cの両側に配置された奥部側壁14と、を有する。
なお、本例では、紙幣を受入れる入口側搬送面11aが幅広(86mm)で、奥部搬送面11cの幅が最も狭く(例えば、68mm)、中間搬送面11bがテーパー状に幅が漸減する構成となっている。これは紙幣をなだらかな傾斜面に沿って挿入し易くする配慮であり、紙幣先端の角部を傾斜した中間側壁13の壁面に沿って接触させながら搬送して搬送路中央に寄せることを可能としている。
なお、図示した紙幣搬送面11、及び側壁の構成は一例に過ぎず、搬送路全長が幅広の同一寸法であってもよいし、搬送路全長が幅狭の同一寸法であってもよい。或いは、入口の搬送路幅を可変にする可変ガイドを備えたタイプにも摩擦搬送装置2を適用することができる。
摩擦搬送装置2は、紙幣搬送路10の入口10aから、様々な位置、角度、方向から様々なイレギュラーな姿勢で利用者により挿入されたことにより搬送路の側壁等と接して正規の搬送方向と異なる方向への反力を受ける紙幣Pを連続的、非間欠的に搬送路内奥部に向けて導入、搬送する過程で、搬送路の中心軸CL、或いは側壁に整合させるように導入姿勢、搬送姿勢を補正する手段である。
駆動ローラ25は紙幣搬送面11に設けた開口から周面の一部を突出させており、搬送グリップ調整機構GA等の他の構成要素は紙幣搬送面の下方に配置されている。
駆動モータ60からの駆動力は駆動伝達部材62を介して入力ギヤ50に伝達され、入力ギヤ50は駆動ローラと同軸状に一体化された出力ギヤ52と噛合することにより駆動ローラを回転させる。また、揺動アーム30は入力ギヤ50の回転軸である揺動軸50aを中心として上下方向(正転方向、及び逆転方向)へ揺動可能な構成を備えている。揺動アーム30と入力ギヤ50とは相対回転する関係にある。
紙幣を受入れ方向へ搬送中に駆動ローラに紙幣から加わる搬送負荷が所定値を越えない場合には入力ギヤ50と出力ギヤ52の各周速が同等を維持するため、揺動アームは弾性付勢部材40によりストッパ部材55へ押し付けられた状態(初期状態、初期位置)を維持し、揺動しない。一方、駆動ローラ25に対して加わる紙幣からの搬送負荷が所定値を越えると、出力ギヤの周速が入力ギヤの周速を下回るため、周速の差の分だけ揺動アームが揺動する(初期位置から離脱する)。この点については図6、図7、及び図8を用いて詳細に説明する。
駆動モータ60からの駆動力を伝達する駆動伝達部材62、駆動伝達部材から伝達される駆動力を受けて回転する入力ギヤ50、及び駆動ローラ25と同軸状に一体化され入力ギヤと噛合して駆動力の伝達を受ける出力ギヤ52は、駆動伝達機構DMを構成している。
駆動モータ60は制御手段200により制御される。
揺動アーム30、弾性付勢部材40、駆動伝達機構DM、及び、揺動アームの上限位置(正転限界位置)を規定する手段としてのストッパ部材55(図6等を参照)は、搬送グリップ調整機構GAを構成している。
即ち、搬送路10は側壁12、13を備えており、搬送グリップ調整機構GAは、紙幣が搬送路に沿って受入れ方向へ搬送される過程で側壁と接して正規の紙幣搬送方向以外への所定値を越える外力を受けた場合に駆動ローラ25を従動ローラ102から離間する方向へ移動させることにより搬送グリップを低下させるように動作する。
低下した時の搬送グリップの値は、両ローラ25、102のニップ部による紙幣に対する拘束を解消、低減させることにより、側壁との協働により側壁からの外力を解消する方向へ変化させ得る値である。つまり、搬送不良状態にあった紙幣を正規の紙幣搬送方向と並行な搬送姿勢に修正したり、正規の搬送位置に対して幅方向移動するように、駆動ローラと従動ローラとの間で紙幣を横滑り(回転、その他の多様な方向へのスライドを含む)させることが可能な値である。
具体的には、搬送グリップ調整機構GAが作動していないために駆動ローラ25が初期位置にあるときの搬送グリップの値は、従動ローラとの間でニップした紙幣を確実に直進搬送できる程度の値に維持される。一方、搬送グリップ調整機構が作動して駆動ローラが従動ローラから離間する方向へ移動した時には初期位置にある時よりも搬送グリップが弱くなって紙幣が側壁から受ける反力によって容易に方向転換できるように設定されている。つまり、駆動ローラが初期位置にある時の搬送グリップは、紙幣からの負荷を受けた駆動ローラが下方へ移動(変位)を開始すると直ちに、応答性良くスキュー補正が可能となる程度の弱さに低下できるように、弾性付勢部材40によって予め所定の値に設定されている。
なお、搬送される紙幣Pに対して加わる正規の搬送方向以外への所定値を越える外力とは、側壁から紙幣が受ける反力、紙幣自体に形成された変形部に起因した搬送負荷、搬送路に設けた部品や凸部等の抵抗からの搬送負荷等々を含む。
駆動ローラ25は図示した構成例では外周面がストレートな円筒体であり、従動ローラ102は駆動ローラの外周面と対面する軸方向中央部102aがへこんだ、所謂鼓形状である。言い換えれば、従動ローラ102は軸方向両端縁に夫々所定の軸方向幅Wを有した突起(環状突条)102cを有することにより、軸方向中央部102aが凹所(環状溝部)となっている。軸方向中央部(凹所)102aの外周面は寸胴状の円筒面となっているため、図5(a-1)、(b-2)のように、グリップ強のときには円筒状の駆動ローラ25の外周面と密着して接触する。各突起102cは、内側傾斜面102c-1と外側傾斜面102c-2を有した山形である。内側傾斜面102c-1と外側傾斜面102c-2との間にはほぼ平坦な外周面を有した頂部102c-3が設けられている。
このため、図6(b)のように駆動ローラが初期位置にある時には駆動ローラの周面が従動ローラの軸方向中央部(凹所)102a内に嵌合して凹所外周面と接触している。紙幣Pは、駆動ローラ周面と軸方向中央部102aとの間に位置する幅方向中央部のみが強く加圧され、且つ突起102cに対応する紙幣の部位は強く加圧されておらず、全体として紙幣は逆U字状(逆凹状)に変形している(グリップ搬送状態)。一方、図7(c)のように搬送グリップ調整機構GAが作動している場合には、駆動ローラが退避位置(作動位置)にあるため駆動ローラ周面と凹所102aとの間に位置する紙幣Pは強く加圧されることなくほぼ平坦な状態となっている(ギャップ式搬送状態)。
なお、図示の実施形態では、駆動ローラ25と同じ軸方向幅を有した軸方向中央部102aの直ぐ両側に各突起102c(各内側傾斜面102c-1)が連続して形成されている。つまり、軸方向中央部102aの両端部と各突起102cとの間に隙間が存在していない。しかし、これは一例であり、軸方向中央部102aと、各突起102cとの間に、軸方向中央部102aと同径の短尺な円筒部(駆動ローラと接触しない部分)が存在していても差し支えない。
揺動アーム30は、軸部22と並行な入力ギヤ50の回転軸、つまり揺動軸50aを中心として駆動ローラを揺動させるようにその他部を軸支されている。揺動アームは入力ギヤに対して相対回転できるように入力ギヤの揺動軸50aにより軸支されている。駆動ローラは、揺動軸50aと軸部22とを結ぶ直線の長さを半径rとして揺動する。
アーム部材32は所定の間隔を隔てて対向配置された2つのアーム部材32a、32bから成り、2つのアーム部材32a、32bの基端部にはギヤ支持部材35が一体化されている。一方のアーム部材32aの基端部とギヤ支持部材35に跨がって入力ギヤの揺動軸50aが軸支されており、揺動軸には入力ギヤ50が回転自在に支持されている。また、一方のアーム部材32aの基端部とギヤ支持部材35との間に露出した揺動軸50aには弾性付勢部材40の中心部40aが挿通されて支持されている。
弾性付勢部材40は、駆動ローラ25が従動ローラ102に向けて付勢されるように揺動アーム30を時計回り方向(加圧方向)へ付勢する手段である。図3(b)等に示すように本実施形態では弾性付勢部材40はキックバネ(トーションバネ)であり、コイル状の中心部40aを入力ギヤの揺動軸50aに遊嵌され、一方の腕40bをギヤ支持部材35の適所に固定され、且つ他方の腕40cを揺動アームの基端部適所に固定(係止)されることにより他方の腕40cの拡開力を利用して揺動アームを時計回り方向、つまり駆動ローラを上昇させる方向へ付勢する。つまり、弾性付勢部材の荷重によりアーム部材32を図3(b)の時計回り方向(図3(a)の反時計回り方向)に付勢することにより駆動ローラの周面が従動ローラの周面に対向しつつ接近するように加圧する。弾性付勢部材40による駆動ローラの付勢方向、つまり駆動ローラの移動方向が軸部22の軸方向と非平行な方向、つまり軸部22の軸方向と交差(直交)する方向である点において、特許文献3の駆動ローラの付勢方向、移動方向とは大きく異なっている。
図3(a)、図12、図13等に示すように従動ローラ102は、その軸部102bを保持部材103により正逆回転自在に支持されている。保持部材103はその後方に位置する軸106により上下方向へ揺動自在に支持されることにより、従動ローラ102を紙幣搬送面11(駆動ローラ)と近接した下限位置から上方に退避させることができる。また、図示しないストッパ構造により保持部材103は所定の下限位置を越えて下方へ突出できない一方で、弾性部材107(コイルバネ)により下限位置に向けて付勢されている。この弾性部材107の付勢力は、駆動側ユニット20に設けた弾性付勢部材40の荷重よりも充分に強く設定されており、ニップ部を通過する紙幣からの搬送負荷程度で従動ローラが下限位置から浮き上がることはほぼない。駆動ローラと従動ローラのニップ部に対してプラスチックカード等の硬質の異物が無理に挿入された場合のように、所定以上の力で上方に押し込まれた場合にのみ、弾性部材に抗して従動ローラが浮上(退避)することにより破損等のダメージを受けることが防止される。
なお、従動ローラ102、保持部材103、軸106、ストッパ構造、弾性部材107は、従動側ユニット100を構成している。
なお、本実施形態では、一つの搬送路10上に駆動側ユニット20と従動側ユニット100を一組配置した例を示したが、幅方向に沿って複数組配置してもよい。駆動ローラの直径、幅方向厚さ等の自由度が高く、これらを対象機種の使用条件に応じて最適な状態に調整、設定することができる。
揺動アーム30を構成するアーム部材32は上昇時に装置本体側に設けたストッパ部材55(位置決め部)と接することによりそれ以上の上昇を阻止される。このため、アーム部材32に軸支された駆動ローラ25もストッパ部材55により最上昇位置を規定される。即ち、ストッパ部材55は、揺動アーム、及び駆動ローラの上限位置(正転揺動限界位置)を規定する手段である。
受入れ方向に搬送されている紙幣が側壁などからの反力を受けていない場合であっても紙幣が紙幣搬送路を進む以上、何らかの搬送負荷は常に発生しているが、この時の搬送負荷は充分に小さく、弾性付勢部材40から揺動アーム30に加わる時計回り方向(正転揺動方向)への荷重が搬送負荷を上回る。このため、揺動アームは下降せず、駆動ローラは初期位置を維持しながら正転し、充分な搬送グリップを維持しながら紙幣を正規の搬送方向へ直進させる。
なお、ここでは、弾性付勢部材の一方の腕40cの長さ(揺動軸50aの中心点Cから腕40cと並行に伸びた線の長さ)をL1、腕40cからアーム部材32に加わる上昇方向(時計回り方向)への荷重をF1とし、中心点Cから搬送路10までの最短距離をL2、紙幣に対する搬送負荷をF2とし、中心点Cからアーム部材32がストッパ部材55と接触している部位cpまでの距離をL3、アーム部材32に対してストッパ部材55から下降方向へ加わる負荷(ストッパ部材からの反力)をF3として説明する。
紙幣受入れ時の搬送方向は右方向である。
各モーメントF1×L1(弾性付勢部材から揺動アームに働くモーメント)、F2×L2(搬送負荷に関わるモーメント)、F3×L3(揺動アームとストッパ部材との接点cpに働くモーメント)がつり合うための関係は、基本式:F1×L1=F2×L2+F3×L3で表される。
この時、アーム部材32の上端部はストッパ部材55の下面と接してそれ以上上方へ揺動することができない。駆動ローラ25は紙幣搬送面11上に一部を突出させた状態となっている。
この待機状態において、紙幣搬送路10の入口から紙幣が挿入されると、駆動ローラの直前に位置する入口センサ15が紙幣を検知し、この検知信号に基づいて制御手段200が駆動モータ60を駆動して搬送プーリ16a、16bにより紙幣を排出口からキャッシュボックスへ搬送する。当該紙幣がキャッシュボックスに収納されたことがキャッシュボックス収納検知手段により検知されると、制御手段は駆動伝達機構DMを停止させる。
先行する紙幣がキャッシュボックスに収納されたことによる処理完了が確認されるまでは駆動伝達機構DMは駆動可能な状態にならない。このため、先行する紙幣の処理中に後続紙幣を入口から入れようとしても駆動伝達機構DMは駆動されない。この時に停止している駆動ローラと従動ローラのニップ部に無理に紙幣を挿入しようとしても駆動ローラは弾性付勢部材40の力により上限位置に押し付けられていて搬送グリップが低下することがないため、挿入は不可能となる(後述する図13の状態)。
このように本実施形態の摩擦搬送装置2では、駆動伝達機構DMが停止している時には後続紙幣の挿入が不可能となり、ジャム、その他のトラブルを未然に防止することができる。
図示の状態での入力ギヤ50の周速Vaは一定であり、駆動ローラ25(出力ギヤ52)の周速Vbと同等である。周速Vaと周速Vbが同等である限り、入力ギヤ50に対する駆動ローラ25(出力ギヤ)の位置に変化はなく、駆動ローラと従動ローラ102との位置関係にも変化はない。つまり、アーム部材が図示の初期位置を維持している限り、入力ギヤ50の周速Vaと出力ギヤ52の周速Vbは一定、且つ同等である。
この状態では駆動ローラによる紙送グリップは、紙幣の安定搬送に適した値、つまり駆動ローラが正転した時に紙幣を直進方向へ安定して送出できる程度の値である。
以上の挙動は、以下のように説明することができる。
まず、弾性付勢部材から揺動アームに働くモーメント(F1×L1)≧搬送負荷に関わるモーメント(F2×L2)であるとき、搬送グリップ調整機構GAは駆動ローラを下降させる方向へ作動しない(このとき、F1×L1=F2×L2+F3×L3)。
次に、搬送負荷が所定値を越えて増大してF2’になったことにより、F1×L1<F2’×L2となると、搬送グリップ調整機構GAが駆動ローラを下降させる方向へ作動し始める(図7(c))。
更に、搬送負荷F2’が低下してF2”になったことにより図7(c)の状態から図7(d)の状態に移行して、F1’×L1=F2”×L2になると、搬送グリップ調整機構GAによる駆動ローラの下降動作が停止する。
搬送グリップ調整機構GAの作動原理を駆動ローラ25と入力ギヤ50の周速との関係で説明すると、以下の通りとなる。
駆動ローラ25は図6(b)に示したような正常搬送時には周速Vbで正転しているが、図7(c)のように紙幣に対して反力が働いて搬送負荷F2が所定値を越えた状態(F2’)になると、駆動ローラ(入力ギヤ50)の周速Vbが低下してVb’となり、入力ギヤ50の周速Va(一定)との間に回転速度差が生じる。駆動ローラの周速Vb’が入力ギヤ50の周速Vaよりも低下しているので、より回転速度が速い入力ギヤ50に連れられて揺動アーム30が反時計回り方向へ揺動するため駆動ローラが下方に移動し始める。駆動ローラが下降する速度をVcとすると、駆動ローラの周速Vb’=Va-Vcの関係となる。駆動ローラは、入力ギヤと駆動ローラの周速の差分だけ従動ローラから離間する方向へ移動する。すると、両ローラ25、100間に隙間が生まれるので搬送負荷F2が低下する。
搬送グリップ調整機構GAの作動により搬送負荷F2が低下すると図7(d)に示すように、低下した搬送負荷F2”と、弾性付勢部材40からの荷重F1’とが釣り合う位置まで揺動アーム、及び駆動ローラが下方へ揺動してその位置で停止する。
図7(d)に示すように揺動アーム30の下降が停止すると、各モーメントF1’×L1=F2”×L2となり、周速Vb=Vaとなる。
図7(d)の状態では駆動ローラと紙幣との搬送グリップが充分に低下しているため、ニップ部を通過する紙幣は搬送を中断されることなく側壁からの反力等の外力により、その方向、姿勢、搬送位置を自由に変えることができる。
図7(d)において、斜行、位置ズレ等の不正常な搬送姿勢で挿入されてきた紙幣が側壁に接触することにより該紙幣に対して正規の搬送方向とは異なる方向への反力が僅かでも加わった場合には、駆動ローラ25が弾性付勢部材40による付勢に抗して直ちに下方へ変位する。このため、従動ローラ102との関係において紙幣に対する駆動ローラの搬送グリップが低下し、紙幣を側壁から離間させる方向(側壁から紙幣が受けるダメージを低下させる方向)への姿勢修正が可能となる。
このように駆動ローラの正転時に駆動ローラに所定値を越えた搬送負荷F2’がかかると、駆動ローラを介して揺動アームを反時計回り方向、即ち揺動アームをストッパ部材から離間させる方向へ揺動させる力が発生する。
これを別の例で単純化して説明すると、入力ギヤが時計回り方向(受入れ方向)へ回転している時に駆動ローラを指で押さえて回転(自転)を停止させると、入力ギヤ50の外周に沿って駆動ローラ(出力ギヤ52)は下降方向へ公転を開始する。また、正転している駆動ローラを指で押さえることにより半分の周速まで減速させた場合には、駆動ローラが入力ギヤ50の外周に沿って下降方向へ公転する速度は半分となる。
紙幣がニップ部を通過すると搬送負荷F2がゼロ(F2”’=0)になるため、搬送負荷F2を弾性付勢部材の荷重F1’が上回り、(d)の下降位置にあった揺動アーム、駆動ローラが上昇して揺動アームがストッパ部材55に当接して上昇を停止する(F1’×L1>F2”’×L2)。搬送負荷F2がゼロになった時、揺動アームが上昇する速度Vc’の分だけ駆動ローラの周速Vb’が入力ギヤの周速Vaよりも速くなる。この速度差(Va=Vb-Vc’)により揺動アームは上昇する。つまり、この速度差により出力ギヤ52は入力ギヤ50の外周に沿って時計回り方向へ公転する。
挿入されてきた紙幣一枚ごとに(a)乃至(e)の動作を繰り返すことにより、スキュー補正のために一旦停止するなどの間欠動作による処理速度の低下をもたらすことなく、スキュー補正しながらの連続した給送が可能になる。
なお、制御手段200は、入口センサ15が紙幣の挿入を検知した時点で駆動モータ60の正転駆動を開始して駆動側ユニット20を駆動開始するが、紙幣が両ローラ25、102のニップ部を通過した後に所定のタイミングで駆動側ユニットへの駆動伝達を停止させる。その後も駆動モータ60は、駆動伝達部材62を介して搬送ローラ16a、16b等の搬送手段を駆動し続けることにより当該紙幣をキャッシュボックスに向けて搬送する。制御手段は、当該紙幣がキャッシュボックスに収納されたことが確認されるまでは駆動側ユニット20を駆動可能な状態としない。このため、図8(e)のように先行する紙幣がニップ部を通過した後であっても、この先行紙幣がキャッシュボックスに収納される前の段階では、後続の紙幣を紙幣搬送路に挿入して入口センサ15が後続紙幣を検知したとしても駆動側ユニット20が搬送動作を開始しないため、受入れ動作は行われない。
返却時は揺動アーム30はストッパ部材55に押し付けられたまま、負荷がどのように大きくなっても揺動アームは揺動しないので、各周速はVb=Vaのままを維持する。
即ち、一旦受入れた紙幣を返却する際には入力ギヤ50は受入れ時とは逆に時計回り方向へ回転し、駆動ローラ25(出力ギヤ52)は反時計回り方向へ回転する。この逆転時に駆動ローラ25に搬送負荷-F2(受入れ時に加わる搬送負荷F2とは逆方向=揺動アームを持ち上げる方向への加重)がかかると、駆動ローラの周速Vbが減速しようとするため、搬送負荷が働いて揺動アームがストッパ部材55に強く押し付けられる。この時、揺動アームは、弾性付勢部材40による荷重F1と搬送負荷-F2とを併せた強い力でストッパ部材に押し付けられる。このときのストッパ部材55からの反力をF3’とすると、各モーメントの関係は、F1×L1=-F2×L2+F3’×L3となっている。
仮に、逆転している駆動ローラを指等により強い力で加圧しても駆動ローラを容易に下降させることはできない。
以上のように駆動ローラの逆転時に駆動ローラと従動ローラとの間に位置する紙幣に対して所定以上の搬送負荷が加わった場合には、出力ギヤが揺動アームをストッパ部材に圧接させる方向へ揺動させ、逆送方向への搬送負荷と弾性付勢部材の弾性付勢力により搬送グリップが増強される。このため、確実な返却搬送が可能になる。
このように返却時には駆動ローラは下降せず、搬送グリップを低下させることがないので、返却時におけるジャムリスクを低減させることができる。
次に、既述のように弾性付勢部材40のばね圧は、紙幣Pからの負荷により駆動ローラが下方へ変位を開始すると直ちに応答性良くスキュー補正が可能となる程度の弱さに低下するように弱めに設定されている。このように弱いばね圧の弾性付勢部材により後続紙幣の挿入を阻止することができる原理を図9により説明する。
即ち、図9に示した停止中の駆動ローラ25と従動ローラ102とのニップ部に無理に紙幣を押し込もうとすると、紙幣から駆動ローラ25に対して紙幣の受入れ時と同方向への荷重-F2’が発生する。このときのストッパ部材55からの反力をF3”とすると、各モーメントの関係は、F1×L1=-F2’×L2+F3”×L3となる。このため、図8(f)に示した返却時と同様に駆動ローラには従動ローラに向けて移動しようとする力(上昇させる方向に働くモーメントF2’×L2)が追加的に働く。このため、搬送グリップが低下することがなくなり、駆動伝達機構DMの停止時には紙幣が挿入しにくくなる。
図10(a)及び(b)はスキュー発生状態の紙幣搬送路の平面図、及び要部拡大図であり、図11(a)乃至(e)はスキュー状態で紙幣搬送路に進入した紙幣が前進する過程でスキュー補正を受ける手順を説明する紙幣搬送路の平面図であり、図12は駆動側ユニットのスキュー補正動作手順等を示す説明図であり、(a)は駆動ローラが従動ローラと最接近した状態で正転しているグリップ強の状態を示しており、(b)は正転駆動する駆動ローラ間が従動ローラから離間したグリップ弱の状態を示しており、(c)は駆動ローラが従動ローラと最接近した状態で逆転しているグリップ強の状態を示している。
紙幣受入れ前の待機時には、駆動ローラ25は圧縮バネからなる弾性付勢部材40からの荷重を受けて最上昇位置(最接近位置、初期位置)にあり、且つ外周面を従動ローラ102の外周面に強い力で接触(圧接)させた状態にある(図5(a-1)、図11(a))。なお、ストッパ部材55により揺動アームの上昇位置が規制されることにより、駆動ローラが従動ローラに接する圧力は所定値を越えないように規定されている。
摩擦搬送装置2が待機状態にある時に図4、図11(b)のように入口10aから右方向へ傾斜した姿勢にある紙幣を挿入すると、入口センサ15が紙幣Pを検知し、図5(b-1)のように駆動モータ60が入力ギヤ50を介して出力ギヤ52のギヤ部に対して矢印で示す正転方向への駆動力を伝達して駆動ローラ25を矢印方向で示す正方向へ回転させる。正回転する駆動ローラの周面と紙幣面との強い搬送グリップ力により紙幣Pが紙幣搬送路10の内部へ搬送される(図6(b)を参照)。この時点では搬送グリップ調整機構GAが作動していないため、紙幣と駆動ローラとの間に滑りは発生していない。
駆動ローラ25は弾性付勢部材40によって上方(搬送グリップ増大方向)へ付勢されているが、搬送負荷により駆動ローラ(出力ギヤ52)と入力ギヤ50との間に回転速度差が僅かでも発生した場合には搬送グリップ調整機構GAが作動して弾性付勢部材による付勢に抗して駆動ローラを下方へ移動させる力、即ち搬送負荷F2’が発生する(図7(c)参照)。つまり、揺動アームを上昇方向に回転させようとするモーメントF1×L1が、下降方向に回転させようとするモーメントF2×L2に負けて下降(回転)する。なお、図中、cは揺動アームの移動方向、Vcは当該方向に移動する速度を示している。
紙幣の左端縁Pbと入口側端部11dとの接触により発生する反力fbと搬送グリップとの関係も、反力faと搬送グリップとの関係と同様である。
なお、搬送グリップ調整機構GAは作動時に搬送グリップを低下させる役割を果たすだけであり、紙幣の搬送方向を矯正するのはあくまで側壁等からの反力である。
即ち、駆動ローラ25と紙幣Pとの搬送グリップが反力fa、fbよりも大きい状態(図5(b-1)、図12(a))において、側壁面からの反力fa、fbが紙幣Pを介して駆動ローラ25に続けて加わると、反力fa、fbは駆動ローラの回転負荷として作用し、紙幣Pの搬送速度と駆動ローラの回転はともに減速する。
つまり、駆動ローラ25と紙幣Pとの間に強い摩擦抵抗があるため、駆動ローラの回転速度は減速した紙幣と共に低下する。この際、出力ギヤ52と入力ギヤ50との間の回転速度差に起因して揺動アーム30が下降するため駆動ローラも下降を開始する(図5(b-2)、図12(b)、図7(c))。
搬送グリップが低下し始めた図7(c)の状態では、駆動ローラの面上を紙幣Pが搬送路中央部へ向けて滑り出して搬送負荷を逃がす。搬送負荷の変化に応じて駆動ローラの下方への移動量が変化する。
紙幣Pに作用する搬送グリップが側壁から受ける反力fa、fbよりも小さくなって紙幣が滑り出すと駆動ローラ25の下方への移動は停止する(図7(d))。
図5(b-2)の駆動ローラが下降を停止した状態では、図7(d)で説明したように駆動ローラは入力ギヤ50と等速で正回転する(Vb=Va)。
紙幣Pはそれ自体の「コシ」(こわさ、剛度)により駆動ローラ25と従動ローラ102に対して常に接点を持つため、搬送グリップが弱く、且つ駆動ローラ25が下方へ退避しても連続的に搬送力を受けることができる。
紙幣Pが正規の位置や姿勢に整合され、側壁面への接触がなくなり反力を受けなくなると、駆動ローラ25は弾性付勢部材40の押圧力により上方へ移動して元の位置に戻る。
紙幣Pの返却時や待機時は、搬送グリップ調整機構GAが非作動状態にあって駆動ローラ25は初期位置から下方へ移動しない構造であるため、強い搬送グリップによって紙幣Pを返却することができ、且つ連続挿入を防止することができる。
なお、図11では紙幣を入口10aから斜めに挿入した結果として紙幣の先端右角部が中間側壁13に接触する場合を例示したが、紙幣の挿入姿勢が非スキュー状態、即ち正規の搬送方向と並行な場合であっても、先端右角部が中間側壁13と接する程度に搬送路の右寄り(或いは、左寄り)に偏って挿入された場合には紙幣が側壁から受ける反力が発生するため、搬送グリップ調整機構GAが作動して紙幣を搬送路の幅方向中心部へ向けて幅方向へ移動させる挙動を示す。
つまり、本発明の摩擦搬送装置2は紙幣がスキュー状態で挿入された場合に限らず、紙幣の先端角部がテーパー状の側壁13に接する状態で挿入される全ての場合に、搬送グリップ調整機構GAが作動して幅方向の搬送位置を補正することができる。
次に、紙幣Pの返却時における駆動ローラの逆転動作について説明する。
紙幣の受入れ時に搬送グリップ調整機構GAを作動させて紙幣の搬送位置、搬送姿勢を正規の状態に修正するには駆動ローラと紙幣との搬送グリップを弱くする必要がある一方で、一旦導入した紙幣にジャム等が発生した場合にこれを返却するために駆動ローラを逆回転させる際に、搬送グリップが弱いと返却搬送のための力が弱くなるというジャム対策上の問題があった。つまり、一旦導入した紙幣の搬送位置、姿勢を正しく修正するためには搬送グリップを弱くしたい一方で、返却に対しては充分に強い搬送グリップが欲しいという二律背反の要請があったが、従来はこのような要請をシンプル、低コストな構成で満たす技術は開発されていなかった。
本発明によればこのような二律背反の要請をシンプル、低コストな構成で満たすことが可能となる。特に、本発明では、駆動ローラの正転時、及び逆転時いずれの場合にも連続的、非間欠的な搬送を行うことができる点が特徴的である。
入口10aから挿入された紙幣Pを識別センサ17が識別した結果(偽造、汚損、変形、ジャム等)から制御手段200が受入れ不能であると判定した場合等、エラーが発生すると、制御手段200は駆動モータ60により入力ギヤ50、出力ギヤ52、及び駆動ローラ25を逆転させてリジェクト紙幣を入口10aに戻す操作を行う。返却時の挙動についての図8(f)にて説明したように、当初は搬送負荷-F2(揺動アームを持ち上げる方向への加重)が発生していないため、揺動アーム30はストッパ部材55に押し付けられており揺動アームは下降しない。この時、入力ギヤ50の周速Vaと出力ギヤ52の周速Vbとの関係はVa=Vbである。返却のために駆動ローラ25の逆転が開始されると、駆動ローラ25に搬送負荷-F2がかかり駆動ローラの周速Vbが減速しようとするため(Vb<Va)、搬送負荷が作用して揺動アームはストッパ部材55に強く押し付けられる。この押し付け力と弾性付勢部材40からの荷重との協働により駆動ローラは搬送グリップが強となる最上昇位置を維持し続け、外部から回転負荷を受けても従動ローラから離間する方向へ移動しない。紙幣Pを入口10aに向けて逆搬送する際は、駆動ローラは従動ローラ102との間で紙幣Pを充分な搬送グリップにより挟持して戻し搬送することができる。
この際、駆動ローラ25は下降しないため、強い搬送グリップを維持しながら返却を有利に行うことができる。つまり、駆動ローラが返却のために逆転する時には、紙幣の有無や搬送状態にかかわらず搬送グリップは低下しない。
次に、待機時における紙幣等の挿入防止(二枚連続挿入防止)について説明する。
図13は先行して挿入された一枚目の紙幣が処理中であるために二枚目の紙幣を受入れない待機状態における摩擦搬送装置の状態を示す正面図である。図13では後続の紙幣Pが駆動ローラと従動ローラとの間に形成される逆U字状の隙間に入り込めない状態を示している。
紙幣搬送装置1は自動販売機、両替機等の紙幣取扱装置に装備されるものであり、入金された紙幣は識別センサ17による識別を経てキャッシュボックス内に収納される。紙幣取扱装置にあっては、入口10a付近に配置される駆動ローラ25と搬送ローラ16aを単一の駆動モータ60により駆動することにより構成をシンプル化し、且つコストを低下させたいという要請がある。しかし、単一の駆動モータを用いたタイプにおいては、一枚目の紙幣に対する収納処理が完了する前に図示しない搬送路内部の紙幣検知センサ(紙葉検知センサ)により後続の紙幣の挿入が検知されると、駆動ローラと搬送ローラを共に逆転させて両紙幣を一括して返却せざるを得ないという不具合が生じる。そのような不具合に対処するには、先行紙幣の収納処理完了前には後続の紙幣の挿入を一律に阻止する必要が生じる。
これに対して本発明の摩擦搬送装置2を備えた紙幣搬送装置1(紙幣取扱装置)によれば、駆動ローラの停止後に二枚目の紙幣が連続挿入されようとしても、停止状態にある駆動ローラ25と従動ローラ102との接点におけるグリップ(ニップ力)が挿入を阻止する程度に強くなっているために取り込みを防止することができる。このように本発明では摩擦搬送装置2が自動的なグリップ調整機能を備えているため、一枚目の紙幣が駆動ローラを通過した後で直ちに駆動ローラの駆動を停止することによって後続紙幣の挿入を阻止することができる。
駆動ローラが駆動を停止している待機時には、紙幣の有無や搬送状態にかかわらず従動ローラとの接点におけるグリップは強い状態を維持する。
この待機状態では、駆動ローラ25と従動ローラ102は停止状態にあって夫々の外周面の頂点が近接している。また、停止時の駆動ローラは最上昇位置にあって従動ローラとの間に強いグリップを保つため、駆動ローラが回転しない限りは二枚目の紙幣Pの挿入を効果的に防止することができる。
駆動停止時に駆動ローラと従動ローラとのニップ部に紙幣を挿入することを困難化している主たる要因は、駆動ローラを付勢する弾性付勢部材40のばね圧である。従って、駆動ローラ、及び従動ローラの外周面の形状は待機時の搬送グリップを強くするための要素としては副次的なものであり、図示した形状に限定されるものではない。
制御手段200は、ステップS5において駆動ローラ25への駆動力の伝達を停止させた後も駆動モータ60を駆動して駆動伝達機構DMを介して搬送プーリ16a、16bを正転させて紙幣の搬送を継続する。その後、キャッシュボックスに紙幣が収納されたことが検知された時点で駆動モータを停止させる(ステップS6、S7)。
次に、紙幣よりも硬質、短尺、厚肉なカード等の板状媒体が誤挿入された場合の返却動作について説明する。
紙幣受入れ時には搬送負荷の増大に応じて搬送グリップ調整機構GAが作動することにより駆動ローラ25は下降する。
一方、カードの受入れ時には、紙幣とカードを区別できないため、カードであっても入口センサ15がONして受け入れる。カードが駆動ローラと従動ローラのニップ部を通過する際に、搬送負荷に応じて搬送グリップ調整機構GAが作動して駆動ローラは下降するが、搬送グリップは変動しない。
即ち、紙幣よりも厚く、且つ硬質のカード媒体がニップ部に挿入されて入口センサ15がONしてカードを搬入開始した場合、図14の摩擦搬送装置によるカード搬送時の正面図(グリップ強)に示すように、駆動ローラはカードを介して従動ローラ102と強くニップし、その状態を維持する。そのため、搬送グリップは変動せず(ギャップ式搬送には移行せず)、駆動ローラはカードを介して従動ローラ102とニップし続けるため、搬送グリップは変動せず、強いグリップ状態を維持する。図14中に丸で示した三箇所の部位がグリップ搬送箇所である。
なお、カードの受入れ時、及び返却時にもこれらのグリップ搬送箇所により強いグリップを維持する。
なお、搬送グリップ調整機構GA(揺動アーム)の下降限界位置を規定するために図示しない下降ストッパが設けられており、揺動アーム30を下降ストッパに当接させることにより下降を停止させる。
以上を言い換えると、カードを受け入れ搬送する際に、搬送グリップ調整機構GAは搬送負荷に応じて下降動作するものの、カードが硬いため従動ローラとの強いニップ(グリップ搬送)は維持される(ギャップ式搬送にならない)。更に、揺動アームの下降限界を規定する下降ストッパの存在により搬送グリップ調整機構GAの下降量には限界がありカードが厚いため従動ローラが持ち上がる。
即ち、図6(a)の待機状態にある時に、カード等の硬い媒体Mが紙幣搬送路10内部に誤挿入され入口センサ15が挿入を検知し受入れ搬送されると、図示しないポジションセンサ、又は紙葉検知センサによる長さ検知により、制御手段200は返却動作に移行して駆動モータ60を逆転動作させて入力ギヤ50を介して駆動ローラを逆転させる。
駆動ローラの逆転時に駆動ローラが下降せずに搬送グリップが強い状態を維持できる理由は、図8(f)で説明したように逆転時には弾性付勢部材40による荷重F1と搬送負荷-F2とにより、搬送グリップが強となる位置に揺動アームを押さえ付けているからである。
返却搬送時は従動ローラ102が弾性部材107の付勢に抗して、カード媒体の厚み分だけ持ち上がり、強い搬送グリップにより返却を効果的に実施することができる。
カードは紙幣に比して撓みが少ないので、本実施形態ではカードをニップする際には従動ローラ102の方を浮上させるようにした。この際、弾性部材107により従動ローラを駆動ローラに対して付勢することにより搬送グリップを強くしているので、駆動ローラを逆転することにより確実にカードを返却することができる。
(適用例1)
図16(a)乃至(e)は本発明の摩擦搬送装置を幅広で一定幅の紙幣搬送路に適用した場合のスキュー補正手順を示す要部平面図である。
本発明の摩擦搬送装置2は、図2(a)に示したように幅寸法が一定でない紙幣搬送路10(紙幣搬送面11)以外にも、幅寸法が一定の紙幣搬送路に対しても適用して、スキューして挿入された紙幣の位置、角度、姿勢を正規の状態に修正することができる。
図16の例では、紙幣搬送路10の幅寸法L1が86mmであり、搬送される紙幣の幅寸法L3は66mmである。
この幅広の紙幣搬送路10に摩擦搬送装置2を適用した場合にも、図2等に示した幅寸法が一定でない紙幣搬送路に適用した場合と同様の動作原理、手順によって紙幣の位置、角度、姿勢が修正されて一方の側壁(或いは、中心軸CL)に整合した状態での搬送状態を得ることができる。
また、紙幣Pの返却時や待機時には、搬送グリップが強い状態を維持することにより、返却搬送や挿入防止を効果的に実現できる。
次に、図17(a)乃至(e)は本発明の摩擦搬送装置を幅狭で一定幅の紙幣搬送路に適用した場合のスキュー補正手順を示す要部平面図である。
図17の例では、紙幣搬送路10の幅寸法L2が68mmであり、搬送される紙幣の幅寸法L3は66mmである。
この幅狭の紙幣搬送路10に摩擦搬送装置2を適用した場合にも、図2等に示した幅が異なる紙幣搬送路に適用した場合と同様の動作原理、手順によって紙幣の位置、角度、姿勢が修正されて搬送路中心部、或いは左側壁に整合した状態での搬送状態を得ることができる。
また、紙幣Pの返却時や待機時には、搬送グリップが強い状態を維持することにより、返却搬送や挿入防止を効果的に実現できる。
《第2の実施形態》
次に、図18は本発明の第2の実施形態(変形実施形態)に係る従動ローラ102の構成を説明する外観斜視図であり、図19(a)及び(b)はこの従動ローラを用いた摩擦搬送装置2の紙幣受入れ時(搬送グリップ強)の正面図、及び側面図であり、図20(a)及び(b)はこの従動ローラを用いた摩擦搬送装置2の紙幣受入れ時(搬送グリップ無し)の正面図、及び側面図である。
なお、従動ローラ102の構成を除いた摩擦搬送装置2の他の構成要素、即ち、搬送グリップ調整機構GAの構成、主たる作用、効果は、第1の実施形態と変わりがないため、第1の実施形態との相違点のみを説明する。
変形実施形態に係る従動ローラ102は、駆動ローラ25の周面と接する軸方向中央部102aを含む主たる外周面102Aが寸胴状の円筒体となっている。つまり、第1の実施形態に係る従動ローラのように軸方向中央部102aの軸方向両端部に突起102cを有していない。本例では、主たる外周面102Aの軸方向両外側に外径が漸減するテーパー面102Bが設けられているが、これは一例であり、軸方向全長を円筒状としてもよいし、テーパー面102Bに相当する端部を切除した構成としてもよい。
つまり、本発明の摩擦搬送装置2に適用可能な従動ローラ102は、少なくとも駆動ローラの外周面と接する軸方向中央部102aが円筒体(寸胴の円筒体)であればよい。従って、第1の実施形態のように軸方向両端部に突起102cを備えた構成であってもよいし、変形実施形態のように主たる外周面102A全体が寸胴の円筒体であってもよい。
以上の構成において、紙幣を受入れるために駆動ローラ25が正転すると、当初は図19のように駆動ローラが上昇して従動ローラの軸方向中央部と圧接しているために強いグリップで紙幣を引き込むが、駆動ローラ25に対して紙幣搬送時に発生する搬送負荷が加わると、図20のように駆動ローラが下降する。第1実施形態と異なるのは、図20の状態になると搬送グリップが無くなる点である。言い換えれば、第1実施形態では搬送グリップが強と、搬送グリップが弱の2つの状態があり、駆動ローラの下降量に応じて搬送グリップが漸減していた。これに対して変形実施形態では搬送グリップは強の状態か無の状態の何れかであり、「駆動ローラの下降量に応じて搬送グリップが低下する」という中間状態が存在しない。
これは第1実施形態においては、紙幣受入れのための正転時に駆動ローラが退避してグリップが低下する状態においても図5(b-2)に示すように突起102cが常に紙幣と接して微弱な搬送グリップを生成していることに起因している。
一方、変形実施形態では従動ローラに突起102cが存在しないため、図20に示すように駆動ローラの退避時には瞬間的に紙幣と従動ローラとの間の抵抗がゼロか、或いは著しく低下した状態に移行するため搬送グリップが発生しない。この状態では、図5の場合における逆U字状に変形した紙幣とは異なって、紙幣Pはほぼ直線状を維持している。
図20のように搬送グリップが無くなると搬送負荷が各ローラに伝わらないため、直ちに図19の状態に戻る。そして、図19の状態になると、再び発生した搬送負荷の影響により図20の状態となる。つまり、駆動ローラが紙幣を幅寄せ、スキュー補正等している間は、図19の状態→図20の状態→図19の状態→図20→・・・と、小刻みに搬送グリップ強と搬送グリップ無しの状態を繰り返すことになる。
なお、図20においては図示説明の都合上、駆動ローラ25と従動ローラ102の外周面間の隙間を誇張して大きく描いているが、実際には搬送グリップが存在しない図20の状態で発生する隙間は、微小、且つ一瞬しか出現しない。このため、幅寄せ中の実際の紙幣の動き、搬送状態は滑らか、且つ連続的なものとなり、紙幣がガタガタと間欠搬送されることがない。
図20に示したように、搬送グリップが低下することにより紙幣は正規の搬送方向以外の方向への横滑り、回転等が可能になり、側壁等からの反力を利用して正規の搬送方向、及び正規の搬送位置への幅寄せ、軌道修正、正規の搬送姿勢への矯正(スキュー補正)を受けることが可能となる。これらの矯正、補正のための動作は紙幣搬送の中断や間欠搬送や大きな振動を伴わないので、連続して迅速で、且つ静音化した搬送を継続することができる。勿論、側壁等への過剰な力による圧接による紙幣へのダメージも抑えることができる。
つまり、図6乃至図17において説明した第1実施形態についての主たる作用、効果は、本変形実施形態においてもそのままあてはまる。
なお、紙幣の返却時、及び待機時には、図19に示した搬送グリップ強の状態が維持される。
第1、及び第2の実施形態に係る紙幣搬送装置1によれば、摩擦搬送装置2が備えた搬送グリップ調整機構GAの作用により、紙幣搬送路10の入口10aから様々な位置や角度、様々な姿勢で挿入される紙幣Pを、連続的に搬送しながら位置、角度、及び姿勢を修正して紙幣搬送路10の中心軸、或いは左右何れかの側壁に沿った位置、姿勢に整合させることができる。この際、紙幣の角部、その他の部位が側壁に強く押圧されて潰れることを防止できる。
即ち、搬送グリップ調整機構GAは、入口10aから挿入された紙幣Pが側壁から反力を受けている場合には、駆動ローラと紙幣との間の搬送グリップを自動的に弱めてスキュー補正を効率的に行い、紙幣Pの返却時や待機時には、搬送グリップが強い状態にして返却搬送や挿入防止を有利に行うことができる。
駆動ローラ25が従動ローラ102から離間する方向は、駆動ローラの軸方向、つまり軸部22の軸方向と交差(直交)する方向であり、駆動ローラは軸方向位置を変化させることなく従動ローラの周面との間の距離を変化させる。なお、駆動ローラの軸方向位置が、搬送グリップ調整機能を低下させない程度に変化する場合には、その程度の変位は許容される。
駆動ローラ(揺動アーム30)を従動ローラに向けて進退させる原理、つまり搬送グリップ調整機構の作動原理を各モーメントとの関係で要約すると次の通りである。
即ち、駆動ローラが正転することにより紙幣が正規の搬送方向に沿って正常に搬送されている状態においては、揺動アーム30は弾性付勢部材40により従動ローラに向けて押圧され、駆動ローラが従動ローラに圧接している。この時、弾性付勢部材からの荷重(モーメント)L1×F1を紙幣の搬送時に発生する搬送負荷(モーメント)L2×F2が上回らない限り、揺動アームは従動ローラから離間する方向へ移動しない。一方、ニップ部を通過する紙幣に正規の搬送方向とは異なる方向への反力が加わることにより弾性付勢部材からの荷重L1×F1を紙幣の搬送時に発生する搬送負荷L2×F2が上回ると、揺動アームが下降して搬送グリップ調整機構が作動し、駆動ローラが従動ローラから離間する。
紙幣後端が駆動ローラと従動ローラのニップ部を通過した後は、駆動ローラは原位置に戻る。
なお、駆動ローラが退避方向へ移動する際には常に限界位置まで移動する訳ではなく、搬送負荷の値によっては限界位置の手前で移動を停止する。要するに弾性付勢部材40による軸方向内側へのバネ付勢による荷重と搬送負荷とが釣り合う位置で駆動ローラは移動を停止する。
また、紙幣Pを紙幣搬送路10の中心軸CL、或いは何れか一方の側壁面に整合するようにその位置、角度、姿勢を修正(方向転換)することにより識別センサ17による鑑別精度を高めることができる。
また、摩擦搬送装置2を通過してキャッシュボックス内に順次集積される紙幣の整列性を高めることができるので、作業者が手作業によりキャッシュボックスから紙幣を取り出して行う次段の作業、例えばソーターや計数機にセットする作業を行う際に、改めて紙幣束を揃える手間が省ける。また、ソーター等にセットされる紙幣束は常に整列されているので、処理中のジャム発生を防止できる。
また、搬送路10の側壁は平坦面でありガイドローラを設けていないので、部品点数の少ない単純で簡素な構造となり、安価に製造することができ、機械的強度を高くすることができる。平坦な側壁にはジャム発生の要因となる凹凸部が存在しない。また、非間欠的な連続駆動によるため、搬送される紙幣がばたつくことがなくなり、安定した搬送が可能となる。
紙幣搬送面の幅、即ち側壁間の幅が固定されたタイプのみならず、側壁間の幅を変化させることができる可変幅タイプにも摩擦搬送装置2は適用してスキュー補正機能等を発揮することができる。
第1の本発明に係る摩擦搬送装置2は、搬送路10(搬送面11)に沿って搬送される紙葉の一面に搬送駆動力を伝える駆動側ユニット20と、駆動側ユニットに駆動力を供給する駆動モータ60と、駆動側ユニットと対向配置されて該紙葉の他面と接して従動回転する従動ローラ102(軸方向位置が固定)と、駆動ローラ25と紙葉との搬送グリップを調整する搬送グリップ調整機構GAと、を備える。
駆動側ユニット20は、正規の紙葉搬送方向と直交する軸部22を中心として(軸部回りに)回転する(正逆回転する)少なくとも一つの駆動ローラ25と、軸部22を一部に備え、且つ駆動ローラを(軸部22と交差、直交する方向へ)揺動させることにより従動ローラ102との距離を変化させて搬送グリップを変化させるように他部を揺動軸50aにより軸支された揺動アーム30と、揺動アームを介して駆動ローラを従動ローラへ向けて弾性付勢する弾性付勢部材40と、を備える。
搬送グリップ調整機構GAは、正転する駆動ローラ25により搬送路10を搬送される紙葉から駆動ローラに加わる搬送負荷が所定値を越えて変化した時に(紙葉に対して正規の搬送方向以外への所定値を越える外力が加わった時に)、弾性付勢部材からの弾性付勢力に抗して駆動ローラを従動ローラ102から離間する方向へ退避させて搬送グリップを低下させるように構成されていることを特徴とする。
本発明では、センサによる検知やソフト制御を必要とせずに、メカ的な機構のみにより自動的に駆動ローラと紙葉との摩擦力(搬送グリップ)を変動させる構成を実現する。
搬送グリップの低下によりニップ部からの拘束がなくなる、或いは拘束が低下したことにより紙葉は正規の搬送方向以外の方向への横滑り、回転等が可能になり、側壁等からの反力を利用して正規の搬送方向、及び正規の搬送位置への幅寄せ、軌道修正、正規の搬送姿勢への矯正(スキュー補正)を受けることが可能となる。これらの矯正、補正のための動作は紙幣搬送の中断や間欠搬送を伴わないので、連続した迅速な搬送を継続することができる。
特許文献3との関係では、本願発明によれば、部品点数が少なく、小型化が可能となる。また、駆動ローラは上下方向へ移動するだけであり、特許文献3の摩擦搬送装置のように従動ローラに対して駆動ローラが軸方向へ移動して摺擦することがないので、両ローラの摩耗による耐久性の低下を防止できる。また、本願発明では駆動ローラ、従動ローラの直径、幅と複数配置等の設計自由度が高くなる。
紙葉が横滑りする結果、紙葉の搬送姿勢を側壁との協働により側壁からの外力を解消する方向へ変化させることにより正規の紙葉搬送方向と並行となるように修正しつつ紙葉を搬送路の中心軸又は一方の側壁へ寄せるスキュー補正を行うことができる。
これによれば、駆動ローラに加わる負荷の増大に敏感に反応して揺動アームが退避する構成を構築することができる。
逆送方向への搬送負荷と弾性付勢部材の弾性付勢力により搬送グリップが増強される。
市場で稼動する紙葉取扱装置に対して正規の紙幣以外の異物が挿入されてきた場合には、異物に起因して発生するエラーやジャムにより装置が停止しないように挿入後の早い段階で確実に排出することがユーザーによって求められている。本発明は、そのような市場要求を満たすことができる。
第5の本発明に係る摩擦搬送装置2では、従動ローラ102は、少なくとも駆動ローラ25の外周面と接する軸方向中央部102aが円筒体(軸方向径が一定)である。
駆動ローラの外周面と接触しない軸方向中央部の他の部分は突起(突条)102cであってもよいし、図19、図20に示した変形実施形態のように非突起部であってもよい。つまり、軸方向中央部102aを含む主たる外周面102Aが寸胴状の円筒体であってもよい。
第1の実施形態に係る従動ローラは軸方向中央部102aの両外側に突起102cを有しているために、搬送グリップが強の状態と弱の状態との間で、駆動ローラの下降量に応じて搬送グリップが漸減する。一方、変形実施形態では突起を有していないため、搬送グリップが強の状態と無の状態とが交互に小刻みに発生し、幅寄せ中の実際の紙幣の動き、搬送状態は滑らか、且つ連続的なものとなる。
本発明に係る紙葉搬送装置は、請求項1乃至5の何れか一項に記載の摩擦搬送装置と、搬送路10に紙葉が進入したことを検知する紙葉検知センサ15と、駆動モータを制御する制御手段200と、を備え、制御手段は、紙葉検知センサからの紙葉進入検知信号に基づいて駆動源を作動させて駆動ローラ25を正転させることを特徴とする。
各種自動販売機、両替機、金銭払出し機等の紙葉搬送装置は、上記全ての摩擦搬送装置が備えるスキュー発生時の搬送グリップ低下によるスキュー補正機能、搬送グリップ上昇による返却能力、及び紙葉挿入阻止能力を夫々高めることができる。
Claims (3)
- 紙葉を搬送する搬送ローラを備えた紙葉搬送路と、前記搬送ローラよりも上流側に配置されて前記紙葉搬送路に沿って搬送される紙葉の一面に搬送駆動力を伝える駆動側ユニットと、該駆動側ユニットに駆動力を供給する駆動モータと、前記駆動側ユニットと対向配置されて該紙葉の他面と接して従動回転する単一の従動ローラと、搬送グリップ調整機構と、を備え、
前記駆動側ユニットは、正規の紙葉搬送方向と直交する軸部を中心として回転し、前記紙葉搬送路の幅方向中央部に位置すると共に前記従動ローラと外周面で接する単一の駆動ローラと、前記軸部を一部に備え、且つ該駆動ローラを揺動させることにより前記従動ローラとの距離を変化させて搬送グリップを変化させるように他部を揺動軸により軸支された揺動アームと、該揺動アームを介して前記駆動ローラを前記従動ローラへ向けて弾性付勢する弾性付勢部材と、を備え、
前記搬送グリップ調整機構は、
正転する前記駆動ローラにより前記紙葉搬送路を搬送される前記紙葉から前記駆動ローラに加わる搬送負荷が所定値を越えて増加した時に、前記弾性付勢部材からの付勢力に抗して前記駆動ローラを前記従動ローラから離間する方向へ退避させて前記搬送グリップを低下させるように構成されており、
前記搬送グリップ調整機構は、前記揺動アームと、前記弾性付勢部材と、前記揺動軸回りに回転自在に軸支されて前記駆動モータからの駆動力を受けて回転する入力ギヤと、前記駆動ローラと同軸状に一体化され前記入力ギヤと噛合して駆動力の伝達を受ける出力ギヤと、前記揺動アームの上限位置を規定するストッパ部材と、を備え、
前記駆動ローラに加わる負荷の増減に応じて前記出力ギヤは前記入力ギヤの外周を公転可能であり、
前記駆動ローラの逆転時に該駆動ローラと前記従動ローラとの間に位置する前記紙葉に対して所定以上の搬送負荷が加わった場合には、前記出力ギヤが前記揺動アームを前記ストッパ部材に圧接させる方向へ揺動させ、
前記駆動ローラは、外周面がストレートな円筒体であり、
前記従動ローラは、少なくとも前記駆動ローラの外周面と接する軸方向中央部が円筒体であり、
前記搬送路は側壁を備えており、
前記搬送グリップ調整機構は、
正転する前記駆動ローラにより前記搬送路を搬送される過程で前記紙葉が前記側壁と接して前記正規の紙葉搬送方向以外への前記所定値を越える外力を受けた場合に前記搬送グリップを低下させ、
低下した時の前記搬送グリップの値は、前記紙葉の搬送姿勢を前記側壁との協働により前記側壁からの外力を解消する方向へ変化させることにより前記正規の紙葉搬送方向と並行となるように修正することができるように、前記駆動ローラと前記従動ローラとの間で前記紙葉を横滑りさせながら、且つ前記紙葉と前記側壁との接触部を中心として回転させつつ、無停止で前記正規の紙葉搬送方向へ連続搬送させることが可能な値であることを特徴とする摩擦搬送装置。 - 前記従動ローラは、円筒体である前記軸方向中央部の両端縁に夫々所定の軸方向幅を有した環状突条を有することにより前記軸方向中央部が環状溝部となっていることを特徴とする請求項1に記載の摩擦搬送装置。
- 請求項1、又は2に記載の摩擦搬送装置と、
前記搬送路に紙葉が進入したことを検知する紙葉検知センサと、前記駆動モータを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記紙葉検知センサからの紙葉進入検知信号に基づいて前記駆動モータを作動させて前記駆動ローラを正転させることを特徴とする紙葉搬送装置。
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