JP6399352B2 - 白金族元素の分離回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、白金族元素(Platinum Group Metals:PGM)の分離回収方法に関し、更に詳しくは、比較的低濃度に白金族元素を含み、不純物元素が高濃度に共存する塩化物溶液から、クロロ錯体等の塩化物の形態としての白金族元素を、アミンを含有する合成樹脂を用いて選択的に吸着、溶離して、含まれる白金族元素を分離、回収する白金族元素の分離回収方法に関する。
白金族元素は、資源的に希少な元素であり、白金族元素を高品位で含有する白金族元素単独の鉱石としての産出は少ない。また、工業的に生産される白金族元素は、銅、ニッケル、コバルトなどの鉱石中に付随して存在しているものを、これら非鉄金属の製錬過程で副産物として精製分離することにより産出されるものである。
また、自動車排ガス処理触媒など各種の使用済み廃触媒などからリサイクルされる白金族元素の比率も高い。
この中で、非鉄金属製錬からの副産物として白金族元素を回収する場合は、製錬原料の中にごく微量含有されている白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、及びオスミウムなどの白金族元素が、その化学的性質から主金属である銅、ニッケルなどの硫化濃縮物及び粗金属の中に濃縮され、さらに選択浸出、電解精製など主金属を回収する工程で二次濃縮され、最終的に残滓等として白金族元素を含む貴金属濃縮物が分離される。
分離された貴金属濃縮物には、主金属である銅、ニッケルなどと共に、他の構成元素である金、銀等の貴金属、セレン、テルル等の16族(旧称:VI族)元素、ビスマス、アンチモン、ヒ素などの15族(旧称:V族)元素が、白金族元素に比べて高い含有量で共存するのが通常である。その後、金、銀の回収を経て、白金族元素の回収が行われるが、通常は一旦液中に浸出してから溶媒抽出、イオン交換法などで精製分離して回収する方法が行われている。
ところで、白金族元素を含む水溶液中の白金族元素濃度は、通常非常に低いことから、一次濃縮には溶媒抽出よりもイオン交換法が特に適している。また、白金族元素は通常塩化物水溶液に溶かして取り扱われ、塩化物水溶液中では白金族元素はクロロ錯体の陰イオンとして存在する。そのため陰イオン交換能力がある樹脂や吸着材により吸着、回収が可能である。
市販の陰イオン交換樹脂は、樹脂のスチレン、アクリルをベースとする基本骨格の炭素原子にアミノ基または第四アンモニウム基が直接結合しており、堅固な構造である。
そこで、陰イオンである白金族のクロロ錯体(例えば [MCl2−)は、樹脂中のアミン塩、または、第四アンモニウム塩を構成する陰イオンと交換することにより吸着される。
しかしながら、単純な陰イオン交換だけでは吸着力は弱く、実際には、隣接する炭素原子に連なって付いている複数のアミノ基で金属イオンを包み込むいわゆるキレート効果により吸着力を増大させている。
陰イオン交換樹脂の一種である、複数の種類のアミノ基を官能基とするポリアミン型アニオン交換樹脂は、アミノ基の密度が高いためキレート効果が高く、通常のアニオン交換樹脂より強い錯形成能力を有している。
また、一〜三級アミンを官能基として持つ陰イオン交換樹脂は、弱塩基性樹脂に相当するため、弱酸型の白金族のクロロ錯体(例えば[M(HO)Clなど)を吸着可能である。一方、塩化物溶液中で、陰イオンが不安定な銅等の多くの金属イオン、あるいは強酸型オキソ酸イオンを形成するヒ素、6価のセレンイオン、6価のテルルイオンなどは吸着しにくいという性質を有している。
したがって、この化学的性質を利用して、陰イオン交換樹脂は、不純物元素の存在下で白金族元素のみを選択的に吸着できる。
前記陰イオン交換樹脂を用いて白金族元素を含む水溶液から白金族元素を吸着する方法としては、多くの方法が知られているが、代表的な方法としては、下記のような例がある。
特許文献1には、白金族元素を含む水溶液とポリオレフィン、フッ素化ポリエチレン、セルロース、ビスコースにチオ尿素、尿素、アミン、ポリアミンを放射線グラフト化により結合させた吸着材とを接触させ、吸着した白金族元素を強酸、塩、錯化剤により溶離する方法が記載されている。
特許文献2には、白金族元素と不純物元素を含む塩化物溶液から白金族元素を回収する方法において、塩化物溶液をポリアミン型アニオン交換樹脂と接触させて白金族元素を選択的に吸着させ、吸着処理後の樹脂を希塩酸、水で洗浄し、次いで、洗浄処理後の樹脂から白金族元素をチオ尿素、さらに必要に応じて塩酸で溶離させる方法が記述されている。
特許文献2の方法では、溶離に関しては、最適な溶離剤であるチオ尿素を用い、さらに60〜90℃の高温下で溶離を行うことにより、樹脂内でキレート効果により固定されやすい白金族元素を効果的に溶離することが可能であり、チオ尿素に次いで塩酸を用いて追加溶離することにより、溶離が特に困難とされるイリジウム、ルテニウム、ロジウムも溶離可能な方法が示されているものの、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムの三元素の溶離率に関しては、さらなる改善の余地があった。
特許文献3には、従来型の陰イオン交換樹脂・交換体よりも柔軟な構造を持つ、アミノ基を含むポリマーを他のポリマーとポリマーアロイ化した樹脂を使用した白金族元素の回収方法が記載されている。
この特許文献3に開示される方法では、一旦強く吸着した白金族元素や共存元素のクロロ錯体の溶離反応が進みやすい点で優れている。ただし、実用に耐え得る物理的・化学的安定性を備えたポリマーアロイとするためには、一定体積の樹脂内に含有するアミン量を制限せざるを得ず、その場合には白金族元素の吸着容量が制限される。
また、物理的にアミンを含むポリマーと他のポリマーを混合して製造されているため、使用するにつれて樹脂内のアミンが減少して白金族元素の吸着容量が減少するおそれがあった。
特許4198460号公報 特許4144311号公報 特開2014−181393号公報
本発明の目的は、上述のような従来技術の問題点に鑑み、塩化物水溶液中の白金族元素を高濃度の不純物元素の共存下において、高い選択性および吸着率で、かつ従来型の樹脂よりも高い吸着容量で白金族元素を吸着し、吸着された白金族元素を高い溶離率で溶離する、物理的にも化学的にも安定な方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、比較的低濃度の白金族元素を含む塩化物溶液に、アミノ基を含むポリマーと親水性ポリマーを化学結合させた構造を有する水に不溶な樹脂を吸着材に適用したところ、塩化物溶液中に高濃度の不純物元素が共存するにもかかわらず、白金族元素を選択的にかつ高い吸着容量で吸着できるだけでなく、従来の陰イオン交換樹脂よりも溶離率が大幅に向上した、物理的にも化学的にも安定な方法となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明は、少なくとも白金又はルテニウムの白金族元素と不純物元素を含む酸性溶液から前記白金族元素を回収する方法において、下記工程(1)〜(3)を順に経ることを特徴とする白金族元素の分離回収方法である。
(1)前記酸性溶液を、アミノ基を含むポリマーが親水性ポリマーと化学結合した構造を有する水に不溶な樹脂と接触させ、前記樹脂に前記酸性溶液に含まれる白金族元素を吸着させる吸着処理する第一の工程。
(2)前記第一の工程を経て白金族元素を吸着した樹脂を、洗浄処理する第二の工程。
(3)前記第二の工程を経た樹脂に、液温度が60〜90℃のチオ尿素を含有する水溶液を接触させ、前記樹脂に吸着した白金族元素を溶離処理する第三の工程。
本発明の第2の発明は、第1の発明の第一の工程における酸性溶液が、銀/塩化銀電極を規準(参照)電極とする酸化還元電位として、電位700〜1100mVに維持されることを特徴とする白金族元素の分離回収方法である。
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明において第二の工程における洗浄処理が、吸着処理後の樹脂に塩酸溶液と水を順次接触させて、吸着処理後の樹脂を洗浄する処理であることを特徴とする白金族元素の分離回収方法である。
本発明の第4の発明は、第3の発明おける塩酸溶液の塩素イオン濃度が、4mol/L未満であることを特徴とする白金族元素の分離回収方法である。
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明の第三の工程における溶離処理が、洗浄処理後の樹脂にチオ尿素を含有する水溶液を接触させた後、濃度が2mol/L以上の塩酸を、その樹脂に接触させることを特徴とする白金族元素の分離回収方法である。
本発明の第6の発明は、第1から第5の発明における酸性溶液が、白金、ルテニウムの群から選ばれる少なくとも1種の白金族元素と、銅、ニッケル、金、銀、セレン、テルル、ビスマス、アンチモン、ヒ素から選ばれる少なくとも1種の不純物元素を含む塩酸酸性もしくは塩化物溶液から構成されていることを特徴とする白金族元素の分離回収方法である。
本発明によれば、比較的低濃度に白金族元素を含む一方、高濃度に不純物元素を共存する塩化物溶液から、アミノ基を含むポリマーと親水性ポリマーを化学結合させた構造を有する水に不溶な樹脂を用いて、クロロ錯体等の塩化物の形態で存在する白金族元素を、選択的かつ高容量で吸着し、かつ高い溶離率で溶離することが、物理的・化学的に安定して出来るので、その工業的価値は極めて大きい。
実施例1における各吸着材(I〜III)のPtの吸着等温線を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のPt分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のPd分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のIr分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のRu分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のRh分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のAu分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のPb分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のSb分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のAs分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のSn分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のTe分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のBi分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のSe分配率[%]の推移を示す図である。 実施例2における各サイクル毎のCu分配率[%]の推移を示す図である。
以下に、本発明の白金族元素の回収方法、特に樹脂の選定、吸着、洗浄、溶離、及び白金族元素の回収の各工程について詳細に説明する。
(1)白金族元素の吸着材
本発明に用いる吸着材は、アミノ基を含むポリマーを親水性ポリマーに化学結合させた構造を有する水に不溶な樹脂(以降、「吸着材I:含アミン親水性樹脂」あるいは単に「樹脂」と表記)で、母体となる親水性ポリマーにアミノ基を含むポリマーを化学結合させているため、従来型のイオン交換樹脂と比較すると、樹脂内部でのイオン拡散性が高く、しかも、樹脂内のアミンが減少しにくい利点を有する。
また吸着時においては、従来の陰イオン交換樹脂、特にポリアミン型樹脂のように、金属のクロロ錯体と一時的にキレート効果による強い結合を形成し、不純物に対する高い選択性も類似であるが、溶離時においては、高い樹脂内イオン拡散性により、一旦吸着したクロロ錯体が速やかに樹脂粒子外へ放出されるため、結果的に溶離率が上昇すると考えられる。
樹脂内部のイオン拡散性は、母体となるポリマーの親水性が強い程増大すると考えられるが、親水性が強すぎると母体自体の酸や水への溶解度が高くなって樹脂自体の寿命短縮を招くことになるため、母体は水や酸に溶解しないことが重要である。
官能基であるアミンは、これを含むポリマーが母体のポリマーに化学結合されている。化学結合されていることにより、樹脂には物理的・化学的安定性が備わるので、樹脂の吸着容量を制限する必要がない。また、化学結合により、樹脂内のアミンが減少しにくくなっている。
このような特性を満たす含アミン親水性樹脂は、例えば、特開2014−111732号等の公報に記載されている公知の方法を用いて製造することができる。なお、母体となるポリマーは、親水性であれば特に制限はなく、セルロース系、アクリル酸系、スルホン酸系など、ヘテロ原子を有する公知のポリマーを使用できる。
(2)第一の工程(吸着工程)
本発明の第一の工程(吸着工程)は、上記(1)の含アミン親水性樹脂を使用し、白金族元素を含有する塩化物溶液から、白金族元素を選択的に吸着する工程である。この吸着工程は、既知のカラム式又はバッチ式で行える。
吸着工程における、白金族元素を含有する塩化物溶液の酸化還元電位(ORP)は、銀−塩化銀電極を参照電極に用いた場合の電位として、700〜1100mVの範囲が好ましく、より好ましくは、800〜1000mV、さらに好ましくは、850〜970mVである。
すなわち、白金族元素は、4価のイオンが最もクロロアニオン錯体を形成しやすいので、主要な白金族元素イオンが四価になる700mV以上であることが望ましく、1100mVを超えると樹脂の酸化劣化が懸念されるためである。
塩化物溶液の酸化還元電位は、吸着工程前の段階で、処理原液に酸化剤を添加して酸化還元電位が調整される。また、樹脂を充填したカラムに原液を連続的に通液して吸着操作を行う場合、吸着されている還元物質などにより、カラムからの流出液の電位が低下したときは、再度処理原液の電位を上記範囲に上昇させて通液することにより、吸着率を向上させることが好ましい。なお、本発明における酸化還元電位は、銀/塩化銀電極を規準(参照)電極に用いた場合の電位で表示した。
また、吸着工程での処理温度は、特に限定されないが、工業的に実現される室温から、樹脂の劣化を防止するため90℃以下の範囲で行うことが好ましい。
(3) 第二の工程(洗浄工程)
本発明の第二の工程の洗浄工程は、第一工程(吸着工程)での吸着処理後の含アミン親水性樹脂を、洗浄液を用いて洗浄する工程である。
吸着処理後の樹脂には、銅イオンなどのカチオン、及びセレン、テルルのオキソ酸イオンなどの強酸型陰イオンは殆ど吸着しないが、溶液が樹脂内部に物理的に含浸されて不純物成分が存在している。
したがって、第二の工程における溶離液として高い品質の白金族元素溶液を回収し、また、吸着後液と溶離液が混合して副反応が進行しないようにするため、溶離前にイオン交換樹脂を洗浄して物理的に含まれている含浸液を除去する必要がある。
洗浄に用いる溶液(洗浄液)としては、水が使用可能であるが、共存する不純物元素に加水分解しやすい元素が存在する場合は、塩酸を含有させた方が加水分解による沈澱生成を防止することができ効果的である。
しかし、塩酸濃度が過度に上昇するとイオン交換樹脂に吸着された白金族元素が溶離する割合が増加し、洗浄液中に白金族の損失となるので、洗浄液としては希塩酸が好ましく、その塩素イオン濃度は、4mol/L未満が好ましく、1mol/L以下が特に好ましい。
また、洗浄液として塩酸を使用した場合、次工程の溶離工程で塩酸と溶離液とが反応する恐れがあるため、水による再洗浄をおこなって、樹脂表面の残留塩酸分を置換除去しておくことが好ましい。
さらに、第二の工程における洗浄剤の液温は、特に限定されないが、工業的に実現される常温から樹脂の劣化を防止するため90℃以下の範囲で行うことが好ましい。
(4)第三の工程(溶離工程)
本発明の第三の工程は、第二の工程で洗浄処理されたイオン交換樹脂から白金族元素を溶離剤(溶離液)を用いて脱着する溶離工程である。使用する溶離剤としては、例えばチオ尿素の水溶液が効果的に使用できる。
溶離剤にチオ尿素水溶液を用いる場合、チオ尿素は、白金族元素と強力かつ安定した錯形成能力があるため、その広い濃度範囲で溶離が可能である。
そのチオ尿素水溶液の濃度は限定されないが、水への溶解度や樹脂内に僅かに残存した酸により分解されても溶離への影響を防げること、さらに経済性などを配慮すると、2.5〜10重量%程度の濃度とすることが好ましい。
また、第三の工程での溶離温度は、常温でも行えるが、樹脂の溶離反応は拡散律速であり、高い温度ほど溶離が迅速に行われるので、工業的には、60℃以上で溶離することが望ましい。しかしながら90℃を超えると樹脂の劣化が促進され、分解する懸念も高まるため、溶離工程の液温度は60〜90℃の範囲とすることが好ましい。
さらに第三の工程においては、樹脂を充填したカラムに溶離剤を通液した際、流出開始初期に白金族元素を含有する濃厚な液が得られ、その後急激に白金族元素の濃度が低下し、mg/Lオーダーの液がしばらく流出する状態となる。この後半の液を次回の溶離液として使用すれば経済的かつ高濃度の溶離液を得ることが可能である。
イリジウムなどの特にチオ尿素で溶離が不十分な元素は、塩酸により追加溶離することにより、さらに回収率を高めることができる。
吸着された元素の内、一部の金属錯体は樹脂中で水酸化物やポリマーに変化しており、これらはチオ尿素では溶離困難であるが、塩酸により水酸化物やポリマーが分解し、また、新たにクロロ錯体を形成する。塩酸濃度が高いほどクロロ錯体を形成しやすくなり、かつ、クロロ錯体が樹脂へ吸着するよりも水溶液に存在しやすくなるため、溶離率を高めることができる。
したがって、2mol/L以上の塩酸を使用することが望ましい。
また、チオ尿素溶離後、直ちに塩酸を使用すると、両者が混合して一部のチオ尿素が分解するため、樹脂を水で洗浄後、塩酸を使用することが望ましい。
以下に、本発明の実施例、比較例について説明するが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではない。
金属イオンの分析法はICP発光分析法及びICP質量分析法により定量分析した。
次に挙げる3種の吸着材について、白金元素の吸着等温線試験を実施した。
・吸着材I:含アミン親水性樹脂。
具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体とビニルアルコール系重合体とを8:1の比率で混合し、加熱・融解することにより製造した母体樹脂を、ジエチレントリアミンと化学的に結合させて製造されたものである。
・吸着材II:含アミンポリマーアロイ。
具体的には、エチレン含有量44mol%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と重量平均分子量15000のポリアリルアミンとをN品位6.2%になるように調合し、加熱、溶融することにより製造された、アミノ基を含むポリマーを他のポリマーとポリマーアロイ化したものである。
・吸着材III:市販のポリアミン型アニオン交換樹脂。
具体的には、住友化学工業株式会社製のPurolite A−830Wである。
なお、吸着材I、II、IIIはそれぞれ、使用する前に、粒径400〜700μmの粒子を篩を用いて選別し、選別後の樹脂100gを1Lの2mol/L塩酸で処理することにより、樹脂の末端の官能基をCl型とし、水洗後、吸引濾過により脱水処理するという前処理を施した。
さらに、試験用の原液としては、80g/Lの塩化水素が溶存した、表1に示す組成である水溶液を用いた。なお、この水溶液の総塩素濃度は132g/Lであった。
次に、具体的な吸着等温線試験の手順としては、まず始めに、原液に、亜塩素酸ナトリウムを添加して、酸化還元電位を1012mV(銀/塩化銀電極規準、以下同じ)に調整した。その調整後の液に、前処理を施した吸着材I〜IIIの何れかを投入し、25℃にて1時間攪拌混合した。混合の途中、酸化還元電位は945〜1014mVを維持した。このときの、吸着材と原液との混合量比を、それぞれの吸着材毎に表2に示す。
吸着処理後、吸引濾過にて樹脂を分離し、濾液(吸着後液)の白金元素濃度を分析するとともに、分離した樹脂を水洗した後、樹脂の白金元素品位も分析した。
これらの吸着後液と吸着後樹脂の白金元素分析結果を図1の吸着等温線として示す。
本発明で利用する含アミン親水性樹脂(吸着材I)は、含アミンポリマーアロイや市販のポリアミン型アニオン交換樹脂と比較して高い吸着容量を持つことがわかる。
Figure 0006399352
Figure 0006399352
(1)吸着材
吸着材としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体とビニルアルコール系重合体を9:1の比率で混合し、加熱・融解することにより製造した母体樹脂を、ジエチレントリアミンと化学的に結合させて製造した含アミン親水性樹脂を使用した。
使用する前に、粒径400〜700μmの粒子を篩を用いて選別し、選別後の樹脂100gを1Lの2mol/L塩酸で処理することにより、樹脂の末端の官能基をCl型とし、水洗後、吸引濾過により脱水処理したCl型の含アミン親水性樹脂を準備した。
(2)吸着工程
原液として、表1に示す組成及び塩化物イオン濃度132g/L、塩酸濃度80g/Lの水溶液100mlを用いた。
まず、原液に、亜塩素酸ナトリウムを添加して、酸化還元電位を1011mV(銀/塩化銀電極規準、以下同じ)に調整した後、上記(1)で準備したCl型の含アミン親水性樹脂10g(乾燥重量)を投入し、25℃にて1時間攪拌混合した。混合の途中、酸化還元電位は945〜1014mVを維持した。
吸着処理後、吸引濾過にて樹脂を分離し、濾液(吸着後液)の成分分析を行った。
(3)洗浄工程
(2)の工程で回収した吸着処理後の樹脂と、100mlの1mol/Lの塩酸とを25℃にて10分間攪拌しながら混合後、吸引濾過して樹脂と吸着後酸洗液とを分離し、濾液(吸着後酸洗液)の成分分析を行った。
塩酸洗浄後の樹脂は、さらに脱イオン水100mlと10分間攪拌しながら混合し、やはり吸引濾過にて樹脂を濾液と分離、回収し、分離した濾液(溶離前水洗液)の成分分析を行った。
(4)溶離工程
(3)の工程で回収した洗浄後の樹脂と、2.5%チオ尿素水溶液を混合し、80℃に昇温した後、1時間攪拌混合した。
混合物は吸引濾過にて樹脂を分離し、濾液(溶離回収(80℃)液)の成分分析を行った。
また、さらに溶離後の樹脂は、濾過器内で25℃の水100mlにて掛水法で洗浄、吸引脱水し、樹脂は25℃の水100mlを加えて10分間攪拌混合し、この混合物を吸引濾過し、再び濾過器内で25℃の水50mlにて掛水法で洗浄、吸引することにより洗浄した。各水洗浄液は合併し、溶離後水洗液として成分分析を行った。
水洗後の樹脂は、2mol/Lの濃度の塩酸100mlと10分間攪拌して混合し、樹脂内部の水を塩酸に置換し、吸引濾過後に得た酸置換液の成分分析を行った。
以上の(2)〜(4)の吸着〜溶離工程を1サイクルとし、このサイクルを計4回反復した。
また、各サイクルの各工程で発生した水溶液の分析値から含有する元素の重量を求め、表1の原液100ml中に存在する元素重量に対する比率(分配:%)を求めた。
その結果を図2〜15に示す。
なお、図2〜15において、「A」は吸着後液、「B」は吸着後酸洗液、「C」は溶離前水洗液、「D」は溶離回収液(80℃)、「E」は溶離後水洗液、「F」は酸置換液である。
従来型の陰イオン交換樹脂でも吸着、溶離が良好なPt、Pdについては、図2(Pt)、図3(Pd)に示すように、「D」の溶離回収液に各サイクル毎に80%を超える分配率でPt、Pdが回収されており、含アミン親水性樹脂を使用する本発明の方法により、問題なく、かつ、再現性良く吸着溶離できている。
一方、従来型の陰イオン樹脂を用いた場合に特に溶離が困難であったIrについても、図4に示すように、チオ尿素溶離後に塩酸溶離(置換)を併用する方法を用いて、60%近く回収ができた。
また、RuとRhについては、図5と図6に示すように、従来型の陰イオン交換樹脂を用いた場合と同等程度の50〜60%をチオ尿素のみで回収できた。
図7に示すように、Auはチオ尿素のみで70〜80%を回収できた。
一方、不純物に関しては、下記の通りである。
分配を図8に示すPbは、一時的に吸着されるものの最終的には75%以上を樹脂外へ回収できた。
図13に分配を示すBiは、回を重ねる度に吸着率が下がるとともに溶離率が向上し、4サイクル目では75%が樹脂外へ回収できた。
Sbは図9に示すように吸着自体が抑制され、2サイクル目以降は80%以上をPGMと分離できた。
図11に分配を示すSnは、従来型の陰イオン交換樹脂を用いた方法ではSbと似た挙動となり樹脂内に蓄積するが、本発明の方法では、ほぼ100%がPGMから分離され回収できた。
図10、図12、図14、図15に示すように、As、Te、Se、Cuについては吸着自体がほとんどなく、選択的に白金族元素から分離できた。
以上のように、表1に示す不純物としてCu、Se、As、Teを含んだ白金族水溶液から、含アミン親水性樹脂を利用する本発明の方法により、白金族元素と主なマトリックス成分とをシャープに分離することができ、かつ、吸着された白金族を樹脂から効率よく溶離回収可能であることが確認できた。
また、反復使用しても、白金族の吸着率および回収率を高く維持することが確認できた。
表3に、有価金属の回収率を実施例2と特許文献3の発明(従来例)と比較したものを示す。
表3によれば、従来よりも高い回収率で白金族元素を回収できることが明らかである。
また、従来よりも高い回収率で金を回収できることも明らかである。吸着率が高いため、回収率も高くすることができた。
Figure 0006399352

Claims (6)

  1. 少なくとも白金又はルテニウムの白金族元素と不純物元素を含む酸性溶液から前記白金族元素を回収する方法において、
    下記(1)〜(3)の工程を順に経ることを特徴とする白金族元素の分離回収方法。
    (記)
    (1)前記酸性溶液を、アミノ基を含むポリマーが親水性ポリマーと化学結合した構造を有する水に不溶な樹脂と接触させ、前記樹脂に前記酸性溶液に含まれる白金族元素を吸着させる吸着処理する第一の工程。
    (2)前記第一の工程を経て白金族元素を吸着した樹脂を、洗浄処理する第二の工程。
    (3)前記第二の工程を経た樹脂に、液温度が60〜90℃のチオ尿素を含有する水溶液を接触させ、前記樹脂に吸着した白金族元素を溶離処理する第三の工程。
  2. 前記第一の工程における酸性溶液が、銀/塩化銀電極を規準(参照)電極とする酸化還元電位として、電位700〜1100mVに維持されることを特徴とする請求項1記載の白金族元素の分離回収方法。
  3. 前記第二の工程における洗浄処理が、前記吸着処理後の樹脂に塩酸溶液と水を順次接触させて樹脂を洗浄する処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の白金族元素の分離回収方法。
  4. 前記塩酸溶液の塩素イオン濃度が、4mol/L未満であることを特徴とする請求項3記載の白金族元素の分離回収方法。
  5. 前記第三の工程における溶離処理が、前記洗浄処理後の樹脂にチオ尿素を含有する水溶液を接触させた後、濃度が2mol/L以上の塩酸を前記樹脂に接触させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の白金族元素の分離回収方法。
  6. 前記酸性溶液が、
    金、ルテニウムの群から選ばれる少なくとも1種の白金族元素と、
    銅、ニッケル、金、銀、セレン、テルル、ビスマス、アンチモン、ヒ素から選ばれる少なくとも1種の不純物元素を含む塩酸酸性もしくは塩化物溶液から構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の白金族元素の分離回収方法。
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