JP6399352B2 - 白金族元素の分離回収方法 - Google Patents
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Description
また、自動車排ガス処理触媒など各種の使用済み廃触媒などからリサイクルされる白金族元素の比率も高い。
そこで、陰イオンである白金族のクロロ錯体(例えば [MCl6]2−)は、樹脂中のアミン塩、または、第四アンモニウム塩を構成する陰イオンと交換することにより吸着される。
しかしながら、単純な陰イオン交換だけでは吸着力は弱く、実際には、隣接する炭素原子に連なって付いている複数のアミノ基で金属イオンを包み込むいわゆるキレート効果により吸着力を増大させている。
また、一〜三級アミンを官能基として持つ陰イオン交換樹脂は、弱塩基性樹脂に相当するため、弱酸型の白金族のクロロ錯体(例えば[M(H2O)2Cl4]−など)を吸着可能である。一方、塩化物溶液中で、陰イオンが不安定な銅等の多くの金属イオン、あるいは強酸型オキソ酸イオンを形成するヒ素、6価のセレンイオン、6価のテルルイオンなどは吸着しにくいという性質を有している。
したがって、この化学的性質を利用して、陰イオン交換樹脂は、不純物元素の存在下で白金族元素のみを選択的に吸着できる。
特許文献1には、白金族元素を含む水溶液とポリオレフィン、フッ素化ポリエチレン、セルロース、ビスコースにチオ尿素、尿素、アミン、ポリアミンを放射線グラフト化により結合させた吸着材とを接触させ、吸着した白金族元素を強酸、塩、錯化剤により溶離する方法が記載されている。
特許文献2の方法では、溶離に関しては、最適な溶離剤であるチオ尿素を用い、さらに60〜90℃の高温下で溶離を行うことにより、樹脂内でキレート効果により固定されやすい白金族元素を効果的に溶離することが可能であり、チオ尿素に次いで塩酸を用いて追加溶離することにより、溶離が特に困難とされるイリジウム、ルテニウム、ロジウムも溶離可能な方法が示されているものの、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムの三元素の溶離率に関しては、さらなる改善の余地があった。
この特許文献3に開示される方法では、一旦強く吸着した白金族元素や共存元素のクロロ錯体の溶離反応が進みやすい点で優れている。ただし、実用に耐え得る物理的・化学的安定性を備えたポリマーアロイとするためには、一定体積の樹脂内に含有するアミン量を制限せざるを得ず、その場合には白金族元素の吸着容量が制限される。
また、物理的にアミンを含むポリマーと他のポリマーを混合して製造されているため、使用するにつれて樹脂内のアミンが減少して白金族元素の吸着容量が減少するおそれがあった。
(2)前記第一の工程を経て白金族元素を吸着した樹脂を、洗浄処理する第二の工程。
(3)前記第二の工程を経た樹脂に、液温度が60〜90℃のチオ尿素を含有する水溶液を接触させ、前記樹脂に吸着した白金族元素を溶離処理する第三の工程。
本発明に用いる吸着材は、アミノ基を含むポリマーを親水性ポリマーに化学結合させた構造を有する水に不溶な樹脂(以降、「吸着材I:含アミン親水性樹脂」あるいは単に「樹脂」と表記)で、母体となる親水性ポリマーにアミノ基を含むポリマーを化学結合させているため、従来型のイオン交換樹脂と比較すると、樹脂内部でのイオン拡散性が高く、しかも、樹脂内のアミンが減少しにくい利点を有する。
官能基であるアミンは、これを含むポリマーが母体のポリマーに化学結合されている。化学結合されていることにより、樹脂には物理的・化学的安定性が備わるので、樹脂の吸着容量を制限する必要がない。また、化学結合により、樹脂内のアミンが減少しにくくなっている。
本発明の第一の工程(吸着工程)は、上記(1)の含アミン親水性樹脂を使用し、白金族元素を含有する塩化物溶液から、白金族元素を選択的に吸着する工程である。この吸着工程は、既知のカラム式又はバッチ式で行える。
すなわち、白金族元素は、4価のイオンが最もクロロアニオン錯体を形成しやすいので、主要な白金族元素イオンが四価になる700mV以上であることが望ましく、1100mVを超えると樹脂の酸化劣化が懸念されるためである。
本発明の第二の工程の洗浄工程は、第一工程(吸着工程)での吸着処理後の含アミン親水性樹脂を、洗浄液を用いて洗浄する工程である。
したがって、第二の工程における溶離液として高い品質の白金族元素溶液を回収し、また、吸着後液と溶離液が混合して副反応が進行しないようにするため、溶離前にイオン交換樹脂を洗浄して物理的に含まれている含浸液を除去する必要がある。
また、洗浄液として塩酸を使用した場合、次工程の溶離工程で塩酸と溶離液とが反応する恐れがあるため、水による再洗浄をおこなって、樹脂表面の残留塩酸分を置換除去しておくことが好ましい。
本発明の第三の工程は、第二の工程で洗浄処理されたイオン交換樹脂から白金族元素を溶離剤(溶離液)を用いて脱着する溶離工程である。使用する溶離剤としては、例えばチオ尿素の水溶液が効果的に使用できる。
そのチオ尿素水溶液の濃度は限定されないが、水への溶解度や樹脂内に僅かに残存した酸により分解されても溶離への影響を防げること、さらに経済性などを配慮すると、2.5〜10重量%程度の濃度とすることが好ましい。
吸着された元素の内、一部の金属錯体は樹脂中で水酸化物やポリマーに変化しており、これらはチオ尿素では溶離困難であるが、塩酸により水酸化物やポリマーが分解し、また、新たにクロロ錯体を形成する。塩酸濃度が高いほどクロロ錯体を形成しやすくなり、かつ、クロロ錯体が樹脂へ吸着するよりも水溶液に存在しやすくなるため、溶離率を高めることができる。
また、チオ尿素溶離後、直ちに塩酸を使用すると、両者が混合して一部のチオ尿素が分解するため、樹脂を水で洗浄後、塩酸を使用することが望ましい。
金属イオンの分析法はICP発光分析法及びICP質量分析法により定量分析した。
・吸着材I:含アミン親水性樹脂。
具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体とビニルアルコール系重合体とを8:1の比率で混合し、加熱・融解することにより製造した母体樹脂を、ジエチレントリアミンと化学的に結合させて製造されたものである。
・吸着材II:含アミンポリマーアロイ。
具体的には、エチレン含有量44mol%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と重量平均分子量15000のポリアリルアミンとをN品位6.2%になるように調合し、加熱、溶融することにより製造された、アミノ基を含むポリマーを他のポリマーとポリマーアロイ化したものである。
・吸着材III:市販のポリアミン型アニオン交換樹脂。
具体的には、住友化学工業株式会社製のPurolite A−830Wである。
さらに、試験用の原液としては、80g/Lの塩化水素が溶存した、表1に示す組成である水溶液を用いた。なお、この水溶液の総塩素濃度は132g/Lであった。
これらの吸着後液と吸着後樹脂の白金元素分析結果を図1の吸着等温線として示す。
本発明で利用する含アミン親水性樹脂(吸着材I)は、含アミンポリマーアロイや市販のポリアミン型アニオン交換樹脂と比較して高い吸着容量を持つことがわかる。
吸着材としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体とビニルアルコール系重合体を9:1の比率で混合し、加熱・融解することにより製造した母体樹脂を、ジエチレントリアミンと化学的に結合させて製造した含アミン親水性樹脂を使用した。
使用する前に、粒径400〜700μmの粒子を篩を用いて選別し、選別後の樹脂100gを1Lの2mol/L塩酸で処理することにより、樹脂の末端の官能基をCl型とし、水洗後、吸引濾過により脱水処理したCl型の含アミン親水性樹脂を準備した。
原液として、表1に示す組成及び塩化物イオン濃度132g/L、塩酸濃度80g/Lの水溶液100mlを用いた。
まず、原液に、亜塩素酸ナトリウムを添加して、酸化還元電位を1011mV(銀/塩化銀電極規準、以下同じ)に調整した後、上記(1)で準備したCl型の含アミン親水性樹脂10g(乾燥重量)を投入し、25℃にて1時間攪拌混合した。混合の途中、酸化還元電位は945〜1014mVを維持した。
吸着処理後、吸引濾過にて樹脂を分離し、濾液(吸着後液)の成分分析を行った。
(2)の工程で回収した吸着処理後の樹脂と、100mlの1mol/Lの塩酸とを25℃にて10分間攪拌しながら混合後、吸引濾過して樹脂と吸着後酸洗液とを分離し、濾液(吸着後酸洗液)の成分分析を行った。
塩酸洗浄後の樹脂は、さらに脱イオン水100mlと10分間攪拌しながら混合し、やはり吸引濾過にて樹脂を濾液と分離、回収し、分離した濾液(溶離前水洗液)の成分分析を行った。
(3)の工程で回収した洗浄後の樹脂と、2.5%チオ尿素水溶液を混合し、80℃に昇温した後、1時間攪拌混合した。
混合物は吸引濾過にて樹脂を分離し、濾液(溶離回収(80℃)液)の成分分析を行った。
水洗後の樹脂は、2mol/Lの濃度の塩酸100mlと10分間攪拌して混合し、樹脂内部の水を塩酸に置換し、吸引濾過後に得た酸置換液の成分分析を行った。
また、各サイクルの各工程で発生した水溶液の分析値から含有する元素の重量を求め、表1の原液100ml中に存在する元素重量に対する比率(分配:%)を求めた。
その結果を図2〜15に示す。
なお、図2〜15において、「A」は吸着後液、「B」は吸着後酸洗液、「C」は溶離前水洗液、「D」は溶離回収液(80℃)、「E」は溶離後水洗液、「F」は酸置換液である。
また、RuとRhについては、図5と図6に示すように、従来型の陰イオン交換樹脂を用いた場合と同等程度の50〜60%をチオ尿素のみで回収できた。
図7に示すように、Auはチオ尿素のみで70〜80%を回収できた。
分配を図8に示すPbは、一時的に吸着されるものの最終的には75%以上を樹脂外へ回収できた。
表3に、有価金属の回収率を実施例2と特許文献3の発明(従来例)と比較したものを示す。
表3によれば、従来よりも高い回収率で白金族元素を回収できることが明らかである。
また、従来よりも高い回収率で金を回収できることも明らかである。吸着率が高いため、回収率も高くすることができた。
Claims (6)
- 少なくとも白金又はルテニウムの白金族元素と不純物元素を含む酸性溶液から前記白金族元素を回収する方法において、
下記(1)〜(3)の工程を順に経ることを特徴とする白金族元素の分離回収方法。
(記)
(1)前記酸性溶液を、アミノ基を含むポリマーが親水性ポリマーと化学結合した構造を有する水に不溶な樹脂と接触させ、前記樹脂に前記酸性溶液に含まれる白金族元素を吸着させる吸着処理する第一の工程。
(2)前記第一の工程を経て白金族元素を吸着した樹脂を、洗浄処理する第二の工程。
(3)前記第二の工程を経た樹脂に、液温度が60〜90℃のチオ尿素を含有する水溶液を接触させ、前記樹脂に吸着した白金族元素を溶離処理する第三の工程。 - 前記第一の工程における酸性溶液が、銀/塩化銀電極を規準(参照)電極とする酸化還元電位として、電位700〜1100mVに維持されることを特徴とする請求項1記載の白金族元素の分離回収方法。
- 前記第二の工程における洗浄処理が、前記吸着処理後の樹脂に塩酸溶液と水を順次接触させて樹脂を洗浄する処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の白金族元素の分離回収方法。
- 前記塩酸溶液の塩素イオン濃度が、4mol/L未満であることを特徴とする請求項3記載の白金族元素の分離回収方法。
- 前記第三の工程における溶離処理が、前記洗浄処理後の樹脂にチオ尿素を含有する水溶液を接触させた後、濃度が2mol/L以上の塩酸を前記樹脂に接触させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の白金族元素の分離回収方法。
- 前記酸性溶液が、
白金、ルテニウムの群から選ばれる少なくとも1種の白金族元素と、
銅、ニッケル、金、銀、セレン、テルル、ビスマス、アンチモン、ヒ素から選ばれる少なくとも1種の不純物元素を含む塩酸酸性もしくは塩化物溶液から構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の白金族元素の分離回収方法。
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