(第1実施形態)
図1〜図7を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態のエジェクタ13は、図1に示すように、冷媒減圧手段としてエジェクタを備える蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置、すなわちエジェクタ式冷凍サイクル10に適用されている。さらに、このエジェクタ式冷凍サイクル10は、車両用空調装置に適用されており、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却する機能を果たす。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の冷却対象流体は、送風空気である。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)等を採用してもよい。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
まず、エジェクタ式冷凍サイクル10において、圧縮機11は、冷媒を吸入して高圧冷媒となるまで昇圧して吐出するものである。本実施形態の圧縮機11は、車両走行用の駆動力を出力するエンジン(内燃機関)とともにエンジンルーム内に配置されている。さらに、圧縮機11は、プーリ、ベルト等を介してエンジンから出力される回転駆動力によって駆動されるエンジン駆動式の圧縮機である。
より具体的には、本実施形態では、圧縮機11として、吐出容量を変化させることによって冷媒吐出能力を調整可能に構成された斜板式の可変容量型圧縮機を採用している。この圧縮機11では、吐出容量を変化させるための図示しない吐出容量制御弁を有している。吐出容量制御弁は、後述する制御装置から出力される制御電流によって、その作動が制御される。
圧縮機11の吐出口には、放熱器12の凝縮部12aの冷媒入口側が接続されている。放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と冷却ファン12dにより送風される車室外空気(外気)を熱交換させることによって、高圧冷媒を放熱させて冷却する放熱用熱交換器である。
より具体的には、放熱器12は、凝縮部12a、レシーバ部12b、および過冷却部12cを有する、いわゆるサブクール型の凝縮器として構成されている。
凝縮部12aは、圧縮機11から吐出された高圧気相冷媒と冷却ファン12dから送風された外気とを熱交換させ、高圧気相冷媒を放熱させて凝縮させる熱交換部である。レシーバ部12bは、凝縮部12aから流出した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を冷媒容器である。過冷却部12cは、レシーバ部12bから流出した液相冷媒と冷却ファン12dから送風される外気とを熱交換させ、液相冷媒を過冷却する熱交換部である。
冷却ファン12dは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風空気量)が制御される電動式送風機である。放熱器12の過冷却部12cの冷媒出口側には、エジェクタ13の冷媒流入口31aが接続されている。
エジェクタ13は、放熱器12から流出した過冷却状態の高圧液相冷媒を減圧させて下流側へ流出させる冷媒減圧手段としての機能を果たすとともに、高速度で噴射される冷媒流の吸引作用によって後述する蒸発器14から流出した冷媒を吸引(輸送)して循環させる冷媒循環手段(冷媒輸送手段)としての機能も果たす。
さらに、本実施形態のエジェクタ13は、減圧させた冷媒の気液を分離する気液分離手段としての機能も果たす。つまり、本実施形態のエジェクタ13は、気液分離機能付きエジェクタ(すなわち、エジェクタモジュール)として構成されている。
エジェクタ13の具体的構成については、図2〜図7を用いて説明する。なお、図2における上下の各矢印は、エジェクタ式冷凍サイクル10を車両用空調装置に搭載した状態における上下の各方向を示している。また、図3は、エジェクタ13の各冷媒通路の機能を説明するための模式的な一部拡大断面図であって、図2と同一の機能を果たす部分には同一の符号を付している。
本実施形態のエジェクタ13は、図2に示すように、複数の構成部材を組み合わせることによって構成されたボデー30を備えている。
より具体的には、ボデー30は、角柱状あるいは円柱状の金属もしくは樹脂にて形成されて、エジェクタ13の外殻を形成するハウジングボデー31を有している。さらに、ハウジングボデー31の内部には、略円柱状の空間が形成されている。そして、この空間内にノズルボデー32、ディフューザボデー33が固定されている。
ハウジングボデー31には、冷媒流入口31a、冷媒吸引口31b、液相冷媒流出口31c、気相冷媒流出口31dといった複数の冷媒流入出口が形成されている。
冷媒流入口31aは、放熱器12から流出した冷媒を流入させる流入口である。冷媒吸引口31bは、蒸発器14から流出した冷媒を吸引する流入口である。液相冷媒流出口31cは、ボデー30の内部に形成された気液分離空間30fにて分離された液相冷媒を蒸発器14の冷媒入口側へ流出させる流出口である。気相冷媒流出口31dは、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒を圧縮機11の吸入口側へ流出させる流出口である。
さらに、本実施形態では、気液分離空間30fと液相冷媒流出口31cとを接続する液相冷媒通路に、蒸発器14へ流入させる冷媒を減圧させる減圧手段としてのオリフィス30iを配置している。
次に、ノズルボデー32は、円環状の金属部材で形成されて、図2に示すように、ハウジングボデー31の内部の上方側に配置されている。より具体的には、ノズルボデー32は、ハウジングボデー31内に形成された略円柱状の空間の内径と同程度の径の大径部32a、および大径部32aよりも径の小さい円筒状に形成された小径部32bを同軸上に結合させた形状に形成されている。
さらに、ノズルボデー32は、大径部32aの外周側がハウジングボデー31の内部に圧入されることによって、ハウジングボデー31に固定されている。なお、大径部32aとハウジングボデー31との間には、シール部材としてのO−リングが配置されており、大径部32aとハウジングボデー31との隙間から冷媒が漏れることはない。
大径部32aの内部には、冷媒流入口31aから流入した冷媒を旋回させる旋回空間30aが形成されている。また、大径部32aの上方側には、円板状の金属プレート32cが配置されており、この金属プレート32cによって、旋回空間30aの上方側の開口部が閉塞されている。
旋回空間30aは、略円柱状に形成されており、旋回空間30aの中心軸は、後述する通路形成部材35の中心軸CLと同軸上に配置されている。もちろん、旋回空間30aは、円錐台と円柱とを結合させた回転体形状等に形成されていてもよい。なお、回転体形状とは、平面図形を同一平面上の1つの直線(中心軸)周りに回転させた際に形成される立体形状である。
冷媒流入口31aと旋回空間30aとを接続する冷媒流入通路31eは、旋回空間30aの中心軸方向から見たときに旋回空間30aへ流入する冷媒を、旋回空間30aの内壁面に沿って流入させるように形成されている。これにより、冷媒流入通路31eから旋回空間30aへ流入した冷媒は、旋回空間30aの中心軸周りに旋回する。
ここで、旋回空間30a内で旋回する冷媒には遠心力が作用するので、旋回空間30a内では中心軸側の冷媒圧力が外周側の冷媒圧力よりも低下する。そこで、本実施形態では、エジェクタ式冷凍サイクル10の通常運転時に、旋回空間30a内の中心軸側の冷媒圧力を、飽和液相冷媒となる圧力、あるいは、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生じる)圧力となるまで低下させるようにしている。
このような旋回空間30a内の中心軸側の冷媒圧力の調整は、旋回空間30a内で旋回する冷媒の旋回流速を調整することによって実現することができる。さらに、旋回流速の調整は、例えば、冷媒流入通路31eの通路断面積と旋回空間30aの軸方向垂直断面積との面積比を調整すること等によって行うことができる。なお、本実施形態の旋回流速とは、旋回空間30aの最外周部近傍における冷媒の旋回方向の流速を意味している。
また、小径部32bの内部には、旋回空間30aから流出した冷媒を減圧させて下流側へ流出させる減圧用空間30bが形成されている。減圧用空間30bは、2つの円錐台形状の空間の頂部側同士を結合させた回転体形状に形成されている。この減圧用空間30bの中心軸も、通路形成部材35の中心軸CLと同軸上に配置されている。
さらに、減圧用空間30bの内部には、通路形成部材35の頂部側が配置されている。通路形成部材35は、ボデー30の内部に冷媒通路を形成するとともに、中心軸CL方向に変位することによって、冷媒通路の通路断面積を変化させる機能を果たすものである。
より具体的には、通路形成部材35は、冷媒流れ下流側に向かって徐々に広がる略円錐形状の金属部材あるいは樹脂部材で形成されており、その中心軸CLが旋回空間30aや減圧用空間30bの中心軸と同軸上に配置されている。つまり、通路形成部材35は、減圧用空間30bから離れるに伴って断面積が拡大する円錐状に形成されている。
さらに、ノズルボデー32の減圧用空間30bを形成する部位の内周面と通路形成部材35の頂部側(すなわち、鉛直方向上方側)の外周面との間に形成される冷媒通路としては、図3に示すように、先細部131および末広部132が形成される。
先細部131は、通路断面積が最も縮小した最小通路面積部30mよりも冷媒流れ上流側に形成されて、最小通路面積部30mに至るまでの通路断面積が徐々に縮小する冷媒通路である。末広部132は、最小通路面積部30mから冷媒流れ下流側に形成されて、通路断面積が徐々に拡大する冷媒通路である。
この末広部132では、径方向から見たときに減圧用空間30bと通路形成部材35が重合(オーバーラップ)しているので、冷媒通路の軸方向垂直断面の形状が円環状(すなわち、円形状から同軸上に配置された小径の円形状を除いたドーナツ形状)となる。さらに、末広部132における通路断面積は、冷媒流れ下流側に向かって徐々に拡大している。
本実施形態では、このような通路形状によって減圧用空間30bの内周面と通路形成部材35の頂部側の外周面との間に形成される冷媒通路をラバールノズルとして機能するノズル通路13aとしている。そして、このノズル通路13aにて、冷媒を減圧させるとともに、冷媒の流速を超音速となるように増速させて噴射している。
次に、ディフューザボデー33は、略円筒状の金属部材で形成されている。さらに、ディフューザボデー33は、図2に示すように、ハウジングボデー31の内部であって、ノズルボデー32の下方側に配置されている。
より具体的には、ディフューザボデー33の中心部には、表裏(上下)を貫通する貫通穴33aが形成されている。この貫通穴33aも回転体形状に形成されており、その中心軸が通路形成部材35の中心軸CLと同軸上に配置されている。また、ディフューザボデー33の上面側であって、貫通穴33aの外周側には、後述する駆動機構37の一部を構成する円環状の溝部33bが形成されている。
さらに、ディフューザボデー33は、その外周側がハウジングボデー31の内部に圧入されることによって、ハウジングボデー31に固定されている。なお、ディフューザボデー33とハウジングボデー31との間には、シール部材としてのO−リングが配置されており、ディフューザボデー33とハウジングボデー31との隙間から冷媒が漏れることはない。
ディフューザボデー33の上面とこれに対向するノズルボデー32の大径部32aの底面との間には、冷媒吸引口31bから吸引した冷媒を流入させる吸引空間30cが形成されている。本実施形態では、ノズルボデー32の小径部32bの下方側先端部が、ディフューザボデー33の貫通穴33aの内部まで延びているため、吸引空間30cは、中心軸方向からみたときに、断面円環状に形成される。
さらに、貫通穴33aの内周面と小径部32bの下方側先端部の外周面との間には、吸引空間30cと減圧用空間30bの冷媒流れ下流側とを連通させる吸引通路30dが形成される。従って、本実施形態では、図3に示すように、吸引空間30cおよび吸引通路30dによって、冷媒吸引口31bから吸引された吸引冷媒(後述する蒸発器14下流側冷媒)を流通させる断面円環状の吸引用通路13bが形成されている。
また、ディフューザボデー33の貫通穴33aのうち、吸引通路30dの冷媒流れ下流側には、冷媒流れ方向に向かって徐々に広がる略円錐台形状に形成された昇圧用空間30eが形成されている。昇圧用空間30eは、上述したノズル通路13aから噴射された噴射冷媒と吸引用通路13bから吸引された吸引冷媒とを流入させる空間である。
昇圧用空間30eの内部には、通路形成部材35の下方側が配置されている。さらに、ディフューザボデー33の昇圧用空間30eを形成する部位の内周面と通路形成部材35の下方側の外周面との間に形成される冷媒通路は、冷媒流れ下流側に向かって通路断面積を徐々に拡大させる形状に形成されている。これにより、この冷媒通路では、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の速度エネルギを圧力エネルギに変換することができる。
そこで、本実施形態では、図3に示すように、昇圧用空間30eを形成するディフューザボデー33の内周面と通路形成部材35の下方側の外周面との間に形成される冷媒通路を、噴射冷媒および吸引冷媒を混合して昇圧させるディフューザ(昇圧部)として機能するディフューザ通路13cとしている。このディフューザ通路13cの中心軸に垂直な断面形状も円環状に形成されている。
次に、通路形成部材35を変位させる駆動手段である駆動機構37について説明する。駆動機構37は、図4に示すように、圧力応動部材であるダイヤフラム371、ディフューザボデー33に形成された環状の溝部33b、この溝部33bの開口部を閉塞する蓋部材372等によって構成されている。
ダイヤフラム371および蓋部材372は、いずれも軸方向から見たときに、溝部33bと略同等の環状に形成されている。そして、図5に示すように、溝部33bの内部にダイヤフラム371が収容された状態で、蓋部材372が、かしめ等の手段によって、溝部33bの開口部を閉塞するようにディフューザボデー33に固定されている。
これにより、ダイヤフラム371の内周側縁部と外周側縁部は、ディフューザボデー33と蓋部材372との間に挟み混まれて固定されている。このため、蓋部材372と溝部33bとの間に形成される空間は、ダイヤフラム371によって上下の2つの空間に仕切られている。
ダイヤフラム371によって仕切られた2つの空間のうち上方側(すなわち、吸引空間30c側)の空間は、蒸発器14出口側冷媒(具体的には、蒸発器14から流出した冷媒)の温度変化に伴って圧力変化する感温媒体が封入される封入空間37aである。
封入空間37aには、エジェクタ式冷凍サイクル10を循環する冷媒と同等の組成の感温媒体が封入されている。従って、本実施形態の感温媒体は、R134aを主成分とする流体であって、例えば、R134aとヘリウムとの混合流体を採用することができる。さらに、感温媒体の封入密度は、後述するようにサイクルの通常作動時に通路形成部材35を適切に変位させることができるように設定されている。
一方、ダイヤフラム371によって仕切られた2つの空間のうち下方側の空間は、図2に示すように、ディフューザボデー33に形成された連通路33cを介して、蒸発器14出口側冷媒を導入させる導入空間37bである。
従って、封入空間37aに封入された感温媒体には、吸引空間30cへ流入した蒸発器14出口側冷媒の温度が、蓋部材372を介して伝達される。さらに、封入空間37aに封入された感温媒体には、導入空間37bへ流入した蒸発器14出口側冷媒の温度が、ダイヤフラム371を介して伝達される。
以上の説明から明らかなように、本実施形態の蓋部材372は、封入空間形成部材としての機能を果たしている。さらに、本実施形態の蓋部材372、ダイヤフラム371、封入空間37a、および導入空間37bは、いずれも通路形成部材35の中心軸CL周りに、環状に配置されている。そして、駆動機構37のうち、少なくともダイヤフラム371および蓋部材372は、吸引用通路13b内に配置されている。
また、ダイヤフラム371は、封入空間37aの内圧と導入空間37bへ流入した蒸発器14出口側冷媒の圧力との圧力差に応じて変位する圧力応動部材である。従って、ダイヤフラム371は弾性に富み、かつ熱伝導率が小さく、かつ耐圧性および気密性に優れる材質で形成されていることが望ましい。
このようなダイヤフラム371としては、例えば、基布(ポリエステル)入りのEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)やHNBR(水素添加ニトリルゴム)等のゴム製の基材で形成されたものを採用することができる。
さらに、本実施形態のダイヤフラム371の封入空間37a側の面には、図5、図6に示すように、封入空間37a内へ向かって突出する突出部371aが形成されている。この突出部371aは、封入空間37a内の感温媒体が凝縮した際に、液体となった感温媒体が移動してしまうことを妨げる移動抑制手段である。
本実施形態の突出部371aは、ダイヤフラム371と同じ材質で、ダイヤフラム371に一体成形されている。さらに、本実施形態の突出部371aは、図6に示すように、中心軸CL方向から見たときに、ダイヤフラム371の略全域に亘って網目状に形成されている。
また、ダイヤフラム371の下方側(導入空間37b側)には、図4に示すように、ダイヤフラム371の変位を通路形成部材35へ伝達するための、プレート部材373および複数の作動棒374(本実施形態では、3本)が配置されている。これらの複数の作動棒374は、ダイヤフラム371の変位を通路形成部材35へ適切に伝達するために、中心軸CL周りに等角度間隔で配置されていることが望ましい。
プレート部材373は、円環状かつ平板状の金属部材で構成されており、ダイヤフラム371の下方側(導入空間37b側)の面に接触するように配置されている。また、複数の作動棒374は、中心軸CL方向に延びる円柱状の金属部材で構成されており、その上方側端部がプレート部材373の下側面に接触し、下方側端部が通路形成部材35の最下方側のディフューザボデー33に対向する面に接触するように配置されている。
作動棒374の上方側端部および下方側端部は、曲面形状(本実施形態では、半球形状)に形成されており、プレート部材373および通路形成部材35に対する接触位置や接触角度が変更可能となっている。これにより、本実施形態では、感温媒体の圧力のばらつき等によって、作動棒374の中心軸が通路形成部材35の中心軸CLに対して傾いてしまうことを抑制している。
また、図2に示すように、通路形成部材35の底面は、後述する支持部材41に支持されたコイルバネ40の荷重を受けている。コイルバネ40は、通路形成部材35に対して、上方側(通路形成部材35が最小通路面積部30mにおける通路断面積を縮小する側)に付勢する荷重を加える弾性部材である。従って、通路形成部材35は、作動棒374から受ける荷重とコイルバネ40から受ける荷重が釣り合うように変位する。
より具体的には、蒸発器14出口側冷媒の温度(過熱度)が上昇すると、封入空間37aに封入された感温媒体の飽和圧力が上昇し、封入空間37aの内圧から導入空間37bの圧力を差し引いた圧力差が大きくなる。これにより、ダイヤフラム371が導入空間37b側へ変位して、通路形成部材35が作動棒374から受ける荷重が増加する。
このため、蒸発器14出口側冷媒の温度が上昇すると、通路形成部材35は、最小通路面積部30mにおける通路断面積を拡大させる方向(鉛直方向下方側)に変位する。
一方、蒸発器14出口側冷媒の温度(過熱度)が低下すると、封入空間37aに封入された感温媒体の飽和圧力が低下し、封入空間37aの内圧から導入空間37bの圧力を差し引いた圧力差が小さくなる。これにより、ダイヤフラム371が封入空間37a側へ変位して、通路形成部材35が作動棒374から受ける荷重が減少する。
このため、蒸発器14出口側冷媒の温度が低下すると、通路形成部材35は、最小通路面積部30mにおける通路断面積を縮小させる方向(鉛直方向上方側)に変位する。
本実施形態の駆動機構37では、このように蒸発器14出口側冷媒の過熱度に応じて通路形成部材35を変位させることによって、蒸発器14出口側冷媒の過熱度が予め定めた基準過熱度KSHに近づくように、最小通路面積部30mにおける通路断面積を調整している。なお、作動棒374とディフューザボデー33との隙間には、O−リングが配置されており、作動棒374が変位してもこの隙間から冷媒が漏れることはない。
次に、ハウジングボデー31の内部に形成された空間のうち、通路形成部材35の下方側には、図2に示すように、ディフューザ通路13cから流出した冷媒の気液を分離する気液分離空間30fが形成されている。この気液分離空間30fは、略円柱状の回転体形状の空間として形成されており、気液分離空間30fの中心軸も、通路形成部材35の中心軸CLと同軸上に配置されている。
さらに、気液分離空間30fでは、ディフューザ通路13cから流出した冷媒を中心軸CL周りに旋回させて、遠心力の作用によって冷媒の気液を分離する。また、この気液分離空間30fの内容積は、サイクルに負荷変動が生じてサイクルを循環する冷媒循環流量が変動しても、実質的に余剰冷媒を溜めることができない程度の容積になっている。
気液分離空間30fの中心部には、気液分離空間30fに対して同軸上に配置されて、上方側へ向かって延びる円筒状のパイプ31fが設けられている。そして、気液分離空間30fにて分離された液相冷媒は、パイプ31fの外周側に一時的に滞留して、液相冷媒流出口31cから流出する。
パイプ31fの内部には、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒をハウジングボデー31の気相冷媒流出口31dへ導く気相冷媒流出通路31gが形成されている。さらに、パイプ31fの内部には、前述したコイルバネ40を支持する支持部材41が配置されている。
このコイルバネ40は、冷媒が減圧される際の圧力脈動に起因する通路形成部材35の振動を減衰させる振動緩衝部材としての機能も果たしている。さらに、支持部材41は、支持部材41を中心軸方向(上下方向)に変位させる調整ねじ41aに連結されている。従って、調整ねじ41aにて、コイルバネ40が通路形成部材35に付勢する荷重を調整することで、狙いの基準過熱度KSHを変更することができる。
エジェクタ13の液相冷媒流出口31cには、図1に示すように、蒸発器14の冷媒入口側が接続されている。蒸発器14は、エジェクタ13にて減圧された低圧冷媒と送風ファン14aから車室内へ送風される送風空気とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。
送風ファン14aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。蒸発器14の出口側には、エジェクタ13の冷媒吸引口31bが接続されている。さらに、エジェクタ13の気相冷媒流出口31dには圧縮機11の吸入側が接続されている。
次に、図示しない制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この制御装置は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。そして、上述の各種電気式のアクチュエータ11、12d、14a等の作動を制御する。
また、制御装置には、内気温センサ、外気温センサ、日射センサ等の複数の空調制御用のセンサ群が接続され、これらのセンサ群の検出値が入力される。
より具体的には、内気温センサは、車室内温度を検出する内気温検出手段である。外気温センサは、外気温を検出する外気温検出手段である。日射センサは、車室内の日射量を検出する日射量検出手段である。蒸発器温度センサは、蒸発器14の吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度検出手段である。出口側温度センサは、放熱器12出口側冷媒の温度を検出する出口側温度検出手段である。出口側圧力センサは、放熱器12出口側冷媒の圧力を検出する出口側圧力検出手段である。
さらに、制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種操作スイッチからの操作信号が制御装置へ入力される。操作パネルに設けられた各種操作スイッチとしては、車室内空調を行うことを要求する空調作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
なお、本実施形態の制御装置は、その出力側に接続された各種の制御対象機器の作動を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、制御装置のうち、各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の制御手段を構成している。
例えば、本実施形態では、圧縮機11の吐出容量制御弁の作動を制御することによって、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が吐出能力制御手段を構成している。もちろん、吐出能力制御手段50aを制御装置に対して、別体の制御装置で構成してもよい。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図7のモリエル線図を用いて説明する。まず、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)されると、制御装置が圧縮機11の電動モータ、冷却ファン12d、送風ファン14a等を作動させる。これにより、圧縮機11が冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。
圧縮機11から吐出された高温高圧冷媒(図7のa点)は、放熱器12の凝縮部12aへ流入し、冷却ファン12dから送風された外気と熱交換し、放熱して凝縮する。凝縮部12aにて凝縮した冷媒は、レシーバ部12bにて気液分離される。レシーバ部12bにて気液分離された液相冷媒は、過冷却部12cにて冷却ファン12dから送風された外気と熱交換し、さらに放熱して過冷却液相冷媒となる(図7のa点→b点)。
放熱器12の過冷却部12cから流出した過冷却液相冷媒は、エジェクタ13の減圧用空間30bの内周面と通路形成部材35の外周面との間に形成されるノズル通路13aにて等エントロピ的に減圧されて噴射される(図7のb点→c点)。この際、減圧用空間30bの最小通路面積部30mにおける通路断面積は、蒸発器14出口側冷媒(図7のh点)の過熱度が予め定めた所定値に近づくように調整される。
そして、ノズル通路13aから噴射された噴射冷媒の吸引作用によって、蒸発器14から流出した冷媒(図7のh点)が、冷媒吸引口31bおよび吸引用通路13b(より詳細には、吸引空間30cおよび吸引通路30d)を介して吸引される。ノズル通路13aから噴射された噴射冷媒および吸引用通路13b等を介して吸引された吸引冷媒は、ディフューザ通路13cへ流入して合流する(図7のc点→d点、h1点→d点)。
ここで、本実施形態の吸引用通路13bは、冷媒流れ方向に向かって通路断面積が徐々に縮小する形状に形成されている。このため、吸引用通路13bを通過する吸引冷媒は、その圧力を低下させながら(図7のh点→h1点)、流速を増加させる。これにより、吸引冷媒と噴射冷媒との速度差を縮小し、ディフューザ通路13cにて吸引冷媒と噴射冷媒が混合する際のエネルギ損失(混合損失)を減少させている。
ディフューザ通路13cでは冷媒通路断面積の拡大により、冷媒の運動エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒が混合されながら混合冷媒の圧力が上昇する(図7のd点→e点)。ディフューザ通路13cから流出した冷媒は気液分離空間30fにて気液分離される(図7のe点→f点、e点→g点)。
気液分離空間30fにて分離された液相冷媒は、オリフィス30iにて減圧されて(図7のg点→g1点)、蒸発器14へ流入する。蒸発器14へ流入した冷媒は、送風ファン14aによって送風された送風空気から吸熱して蒸発する(図7のg1点→h点)。これにより、送風空気が冷却される。
一方、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒は気相冷媒流出口31dから流出して、圧縮機11へ吸入され再び圧縮される(図7のf点→a点)。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、以上の如く作動して、車室内へ送風される送風空気を冷却することができる。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、ディフューザ通路13cにて昇圧された冷媒を圧縮機11へ吸入させている。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10によれば、蒸発器における冷媒蒸発圧力と圧縮機吸入冷媒の圧力が略同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも、圧縮機11の消費動力を低減させて、サイクルの成績係数(COP)を向上させることができる。
また、本実施形態のエジェクタ13によれば、旋回空間30aにて冷媒を旋回させることで、旋回空間30a内の旋回中心側の冷媒圧力を、飽和液相冷媒となる圧力、あるいは、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生じる)圧力まで低下させることができる。これにより、旋回中心軸の外周側よりも内周側に気相冷媒が多く存在するようにして、旋回空間30a内の旋回中心線近傍はガス単相、その周りは液単相の二相分離状態とすることができる。
このように二相分離状態となった冷媒がノズル通路13aへ流入することで、ノズル通路13aの先細部131では、円環状の冷媒通路の外周側壁面から冷媒が剥離する際に生じる壁面沸騰および円環状の冷媒通路の中心軸側の冷媒のキャビテーションによって生じた沸騰核による界面沸騰によって冷媒の沸騰が促進される。これにより、ノズル通路13aの最小通路面積部30mへ流入する冷媒が、気相と液相が均質に混合した気液混合状態となる。
そして、最小通路面積部30mの近傍で気液混合状態の冷媒の流れに閉塞(チョーキング)が生じ、このチョーキングによって音速に到達した気液混合状態の冷媒が末広部132にて加速されて噴射される。このように、壁面沸騰および界面沸騰の双方による沸騰促進によって、気液混合状態の冷媒を音速となるまで効率よく加速できることで、ノズル通路13aにおけるエネルギ変換効率を向上させることができる。
また、本実施形態のエジェクタ13では、駆動機構37を備えているので、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて通路形成部材35を変位させて、ノズル通路13aの通路断面積(最小通路面積部30mにおける通路断面積)、およびディフューザ通路13cの通路断面積を調整することができる。これにより、サイクルを循環する冷媒の循環流量に応じて、最小通路面積部30mにおける通路断面積等を適切に変化させて、エジェクタ13を適切に作動させることができる。
さらに、本実施形態の駆動機構37では、駆動機構37がハウジングボデー31の内部に配置されているので、封入空間37a内の感温媒体が外気温の影響を受けにくい。従って、蒸発器14出口側冷媒の過熱度を、より一層、精度良く基準過熱度KSHに近づけることができる。
ところで、本実施形態の封入空間37a内の感温媒体には、蓋部材372およびダイヤフラム371を介して、蒸発器14出口側冷媒の温度が伝達される。このため、封入空間37a内の感温媒体には、温度分布が生じる。さらに、封入空間37a内の感温媒体は、封入空間37a内の最も温度が低くなる最冷部から凝縮を開始する。
このため、本実施形態のように車両に搭載されたエジェクタ式冷凍サイクル10に適用されるエジェクタ13では、車両とともにエジェクタ13全体が傾斜してしまうと、凝縮した感温媒体が重力の作用によって封入空間37a内を移動してしまうおそれがある。
さらに、本実施形態のエジェクタ13のように、封入空間37aが通路形成部材35の外周側に円環状に配置されていると、封入空間37aの外径が拡大しやすい。このため、上述した温度分布が生じやすくなる。さらに、エジェクタ13全体が傾斜した際に、封入空間37aの最上部と最下部との高低差が大きくなりやすい。このため、凝縮した感温媒体が最冷部から離れた部位へ移動してしまいやすい。
そして、凝縮した感温媒体が封入空間37a内で最冷部よりも温度の高い部位へ移動してしまうと、温度の高い部位へ移動した冷媒が沸騰する。この沸騰による圧力上昇によって最冷部では再び感温媒体が凝縮する。さらに、凝縮した感温媒体が、最冷部から離れた部位へ移動するといった現象が繰り返される。
このような感温媒体の沸騰と凝縮との繰り返しは、封入空間37a内の圧力変動を招いてしまう。そして、このような圧力変動が生じてしまうと、ダイヤフラム371を適切に変位させることができなくなってしまう。すなわち、冷媒通路の通路断面積を適切に変化させることができなくなってしまう。
これに対して、本実施形態のエジェクタによれば、ダイヤフラム371に移動抑制手段としての突出部371aが形成されているので、エジェクタ13が傾斜しても、封入空間37a内で凝縮した感温媒体の移動を抑制することができる。従って、封入空間37a内の感温媒体の圧力変動を抑制することができる。
その結果、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて、ノズル通路13aおよびディフューザ通路13cといったエジェクタ13の内部に形成される冷媒通路の通路断面積を適切に変化させることができる。
また、本実施形態では、ダイヤフラム371および突出部371aを、いずれもゴムで形成しているので、ダイヤフラム371および突出部371aを一体成形にて、容易に形成することができる。
また、本実施形態では、中心軸CL方向から見たときに網目状に形成された突出部371aを採用した例を説明したが、突出部371aの形状はこれに限定されない。凝縮した感温媒体の移動を抑制することができれば、例えば、中心軸CL方向から見たときに径方向に延びる複数の直線によって放射線状に形成されていてもよい。
(第2実施形態)
本実施形態では、図8に示すように、第1実施形態に対して、ダイヤフラム371の突出部371aを廃止し、封入空間37a内に移動抑制手段としての多孔質材375を配置した例を説明する。なお、図8は、第1実施形態で説明した図5に対応する図面である。また、図8では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
本実施形態の多孔質材375は、複数の細孔を有する発泡樹脂で形成されている。この多孔質材375では、凝縮した感温媒体を細孔内に染みこませることによって、凝縮した感温媒体が封入空間37a内で最冷部から離れた部位へ移動してしまうことを抑制することができる。さらに、多孔質材375は、ダイヤフラム371の変形を妨げないように、その一部がダイヤフラム371の表面に接着等の手段で固定されている。
その他のエジェクタ13およびエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ13では、第1実施形態と同様に、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて、内部に形成される冷媒通路の通路断面積を適切に変化させることができる。
また、本実施形態では、多孔質材375として、発泡樹脂を採用した例を説明したが、多孔質材はこれに限定されない。凝縮した感温媒体の移動を抑制可能な程度の細孔が形成されていれば、多孔質材として、例えば、発泡ゴム、発泡金属、焼結金属、フェルト等を採用してもよい。なお、フェルトとは、圧縮等の手段によって繊維を縮絨させてシート状に形成したものである。
(第3実施形態)
本実施形態では、図9に示すように、第1実施形態に対して、ダイヤフラム371の突出部371aの形成範囲を変更した例を説明する。なお、図9は、第1実施形態で説明した図6に対応する図面である。
本実施形態の突出部371aは、中心軸CL方向から見たときに、ダイヤフラム371の一部に配置されている。より詳細には、本実施形態の突出部371aは、封入空間37aのうち、吸引空間30cの冷媒吸引口31bに最も近い部位を含む一部の領域であって、凝縮した感温媒体の移動を抑制可能な範囲に形成されている。
その他のエジェクタ13およびエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ13では、第1実施形態と同様に、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて、内部に形成される冷媒通路の通路断面積を適切に変化させることができる。
その理由は、封入空間37aのうち、吸引空間30cの冷媒吸引口31bに最も近い部位は、蒸発器14出口側冷媒のうち最も温度の低い冷媒と熱交換するからである。そのため、当該部位は、感温媒体の温度が最も低くなる最冷部となるからである。
さらに、突出部371aが凝縮した感温媒体の移動を抑制可能な範囲に形成されているので、突出部371aをダイヤフラム371の全域に配置することなく、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
もちろん、第2実施形態で説明した移動抑制手段としての多孔質材375についても、本実施形態と同様に封入空間37a内の一部の領域に配置することで、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、ゴム製のダイヤフラム371を採用した例を説明したが、本発明に適用可能なダイヤフラムはこれに限定されない。例えば、金属(具体的には、SUS304)の薄板で形成された金属製ダイヤフラムを採用してもよい。
金属製ダイヤフラムに移動抑制手段としての突出部を固定する際には、別部材として形成された突出部を接着等の手段で固定してもよい。もちろん、上述の実施形態で説明したゴム製のダイヤフラム371に別部材として形成された突出部を接着等の手段で固定してもよい。
また、上述の第2実施形態では、ゴム製のダイヤフラム371の一部に多孔質材375を接着して固定した例を説明したが、多孔質材375の固定手段はこれに限定されない。例えば、多孔質材として発泡ゴムを採用し、ダイヤフラム371の封入空間37a側の面に、この発泡ゴムを一体成形してもよい。
また、上述の実施形態で説明した、ゴム製のダイヤフラム371に、感温媒体の透過性の低い樹脂製のバリア膜を設けてもよい。
(2)上述の実施形態では、移動抑制手段である突出部371aおよび多孔質材375を、ダイヤフラム371に一体化あるいは固定した例を説明したが、これは上述の実施形態のように、ダイヤフラム371が封入空間37aの底面を形成している場合に有効である。
例えば、蓋部材372あるいはディフューザボデー33の溝部33bが、封入空間形成部材として、封入空間37aの底面を形成している場合には、蓋部材372あるいは溝部33bに、突出部371aおよび多孔質材375を一体化あるいは固定してもよい。
(3)上述の実施形態では、ダイヤフラム371が、封入空間37a内の感温媒体の圧力と導入空間37b内の冷媒の圧力との圧力差に応じて変位する、いわゆる外部均圧方式の駆動機構37を採用した例を説明したが、駆動機構37の形式はこれに限定されない。例えば、ダイヤフラムが、封入空間37a内の感温媒体の圧力に応じて変位する、いわゆる内部均圧方式の駆動機構を採用してもよい。
(4)エジェクタ式冷凍サイクル10を構成する各構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
例えば、上述の実施形態では、圧縮機11として、エンジン駆動式の可変容量型圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機11として、電磁クラッチの断続により圧縮機の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機を採用してもよい。さらに、固定容量型圧縮機構と電動モータとを備え、電力を供給されることによって作動する電動圧縮機を採用してもよい。電動圧縮機では、電動モータの回転数を調整することによって、冷媒吐出能力を制御することができる。
また、上述の実施形態では、放熱器12として、サブクール型の熱交換器を採用した例を説明したが、凝縮部12aのみからなる通常の放熱器を採用してもよい。さらに、通常の放熱器とともに、この放熱器にて放熱した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を蓄える受液器(レシーバ)を一体化させたレシーバ一体型の凝縮器を採用してもよい。
また、上述の実施形態では、冷媒としてR134aあるいはR1234yf等を採用可能であることを説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、HFO−1234ze、HFO−1234zd等を採用することができる。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
(5)上述の実施形態では、本発明に係るエジェクタ式冷凍サイクル10を、車両用空調装置に適用した例を説明したが、エジェクタ式冷凍サイクル10の適用はこれに限定されない。例えば、据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用してもよい。
また、上述の実施形態では、本発明に係るエジェクタ13を備えるエジェクタ式冷凍サイクル10の放熱器12を冷媒と外気とを熱交換させる室外側熱交換器とし、蒸発器14を送風空気を冷却する利用側熱交換器としている。これに対して、蒸発器14を外気等の熱源から吸熱する室外側熱交換器として用い、放熱器12を空気あるいは水等の被加熱流体を加熱する利用側熱交換器として用いてもよい。