(第1実施形態)
図1〜図8を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態のエジェクタ13は、図1の全体構成図に示すように、冷媒減圧手段としてエジェクタを備える蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置、すなわちエジェクタ式冷凍サイクル10に適用されている。さらに、このエジェクタ式冷凍サイクル10は、車両用空調装置に適用されて、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却する機能を果たす。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の冷却対象流体は、送風空気である。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)等を採用してもよい。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
まず、エジェクタ式冷凍サイクル10において、圧縮機11は、冷媒を吸入して高圧冷媒となるまで昇圧して吐出するものである。本実施形態の圧縮機11は、車両走行用の駆動力を出力するエンジン(内燃機関)とともにエンジンルーム内に配置されている。さらに、圧縮機11は、プーリ、ベルト等を介してエンジンから出力される回転駆動力によって駆動されるエンジン駆動式の圧縮機である。
より具体的には、本実施形態では、圧縮機11として、吐出容量を変化させることによって冷媒吐出能力を調整可能に構成された斜板式の可変容量型圧縮機を採用している。この圧縮機11では、吐出容量を変化させるための図示しない吐出容量制御弁を有している。吐出容量制御弁は、後述する制御装置から出力される制御電流によって、その作動が制御される。
圧縮機11の吐出口には、放熱器12の凝縮部12aの冷媒入口側が接続されている。放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と冷却ファン12dにより送風される車室外空気(外気)を熱交換させることによって、高圧冷媒を放熱させて冷却する放熱用熱交換器である。
より具体的には、放熱器12は、凝縮部12a、レシーバ部12b、および過冷却部12cを有する、いわゆるサブクール型の凝縮器として構成されている。
凝縮部12aは、圧縮機11から吐出された高圧気相冷媒と冷却ファン12dから送風された外気とを熱交換させ、高圧気相冷媒を放熱させて凝縮させる熱交換部である。レシーバ部12bは、凝縮部12aから流出した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を冷媒容器である。過冷却部12cは、レシーバ部12bから流出した液相冷媒と冷却ファン12dから送風される外気とを熱交換させ、液相冷媒を過冷却する熱交換部である。
冷却ファン12dは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風空気量)が制御される電動式送風機である。放熱器12の過冷却部12cの冷媒出口側には、エジェクタ13の冷媒流入口31aが接続されている。
エジェクタ13は、放熱器12から流出した過冷却状態の高圧液相冷媒を減圧させて下流側へ流出させる冷媒減圧手段としての機能を果たすとともに、高速度で噴射される冷媒流の吸引作用によって後述する蒸発器14から流出した冷媒を吸引(輸送)して循環させる冷媒循環手段(冷媒輸送手段)としての機能も果たす。
さらに、本実施形態のエジェクタ13は、減圧させた冷媒の気液を分離する気液分離手段としての機能も果たす。つまり、本実施形態のエジェクタ13は、気液分離機能付きエジェクタ(すなわち、エジェクタモジュール)として構成されている。
エジェクタ13の具体的構成については、図2〜図6を用いて説明する。なお、図2における上下の各矢印は、エジェクタ式冷凍サイクル10を車両用空調装置に搭載した状態における上下の各方向を示している。また、図3は、エジェクタ13の各冷媒通路を説明するための模式的な一部拡大断面図であって、図2と同一の機能を果たす部分には同一の符号を付している。
本実施形態のエジェクタ13は、図2に示すように、複数の構成部材を組み合わせることによって構成されたボデー30を備えている。
ボデー30は、ハウジングボデー31を有している。ハウジングボデー31は、円柱状あるいは角柱状の金属部材で形成されて、エジェクタ13の外殻を形成するものである。ハウジングボデー31の内部には、略円柱状の空間が形成されている。そして、この空間内にノズル32、ディフューザボデー33、気液分離用ボデー34等が固定あるいは収容されている。ハウジングボデー31は、樹脂で形成されていてもよい。
ハウジングボデー31には、取付穴301の他に、冷媒流入口31a、冷媒吸引口31b、液相冷媒流出口31c、気相冷媒流出口31dといった複数の冷媒流入出口が形成されている。取付穴301は、エジェクタ13を車両に搭載する際に、図示しないボルトを貫通させるための貫通穴である。
冷媒流入口31aは、放熱器12から流出した冷媒を流入させる冷媒流入口である。冷媒吸引口31bは、後述する蒸発器14から流出した冷媒を吸引する冷媒流入口である。液相冷媒流出口31cは、ボデー30の内部に形成された気液分離空間30fにて分離された液相冷媒を蒸発器14の冷媒入口側へ流出させる冷媒流出口である。気相冷媒流出口31dは、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒を圧縮機11の吸入口側へ流出させる冷媒流出口である。
さらに、本実施形態では、気液分離空間30fと液相冷媒流出口31cとを接続する液相冷媒通路30iの通路断面積を比較的小さい値に設定している。これにより、液相冷媒通路30iを蒸発器14に流入させる冷媒を減圧させるオリフィス(すなわち、減圧手段)として機能させている。
ノズル32は、円環状の金属部材で形成されて、図2に示すように、ハウジングボデー31の内部の上方側に配置されている。より詳細には、ノズル32は、円板状の金属部材で形成されたアッパーカバー32aの中心部に設けられた固定穴に、圧入等の手段で固定されている。
アッパーカバー32aは、ハウジングボデー31の上方側の開口部を閉塞する蓋部材である。従って、ノズル32は、アッパーカバー32aを介して、ボデー30に固定されている。なお、アッパーカバー32aとハウジングボデー31との間には、図示しないO−リング等のシール部材が配置されており、これらの部材の隙間から冷媒が漏れることはない。
ノズル32の内部には、冷媒流入口31aから流入した冷媒を旋回させる旋回空間30aが形成されている。旋回空間30aは、略円柱状の回転体形状に形成されている。旋回空間30aの中心軸は、後述する通路形成部材35の中心軸CLと同軸上に配置されている。なお、回転体形状とは、平面図形を同一平面上の1つの直線(中心軸)周りに回転させた際に形成される立体形状である。
また、アッパーカバー32aには、冷媒流入口31aと旋回空間30aとを接続する冷媒流入通路31eが形成されている。冷媒流入通路31eは、旋回空間30aの中心軸方向から見たときに旋回空間30aへ流入する冷媒を、旋回空間30aの外周側壁面に沿って流入させるように形成されている。これにより、冷媒流入通路31eから旋回空間30aへ流入した冷媒は、旋回空間30aの中心軸周りに旋回する。
ここで、旋回空間30a内で旋回する冷媒には遠心力が作用するので、旋回空間30a内では中心軸側の冷媒圧力が外周側の冷媒圧力よりも低下する。そこで、本実施形態では、エジェクタ式冷凍サイクル10の通常運転時に、旋回空間30a内の中心軸側の冷媒圧力を、飽和液相冷媒となる圧力、あるいは、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生じる)圧力となるまで低下させるようにしている。
このような旋回空間30a内の中心軸側の冷媒圧力の調整は、旋回空間30a内で旋回する冷媒の旋回流速を調整することによって実現することができる。さらに、旋回流速の調整は、例えば、冷媒流入通路31eの通路断面積と旋回空間30aの軸方向垂直断面積との面積比を調整すること等によって行うことができる。なお、本実施形態の旋回流速とは、旋回空間30aの最外周部近傍における冷媒の旋回方向の流速を意味している。
また、ノズル32の内部であって、旋回空間30aの冷媒流れ下流側には、旋回空間30aから流出した冷媒を減圧させて下流側へ流出させる減圧用空間30bが形成されている。減圧用空間30bは、2つの円錐台形状の空間の頂部側同士を結合させた回転体形状に形成されている。この減圧用空間30bの中心軸も、通路形成部材35の中心軸CLと同軸上に配置されている。
減圧用空間30bの内部には、通路形成部材35の頂部側が配置されている。通路形成部材35は、ボデー30の内周面と通路形成部材35の外周面との間に冷媒通路を形成するとともに、中心軸CL方向に変位することによって、冷媒通路の通路断面積を変化させる機能を果たすものである。
より具体的には、通路形成部材35は、樹脂製の円錐状部材で形成されている。通路形成部材35は、減圧用空間30bから離れるに伴って径が拡大する円錐状に形成されている。さらに、ノズル32の減圧用空間30bを形成する部位の内周面と通路形成部材35の頂部側(すなわち、鉛直方向上方側)の外周面との間に形成される冷媒通路としては、図3に示すように、先細部131および末広部132が形成される。
先細部131は、通路断面積が最も縮小した最小通路面積部30mよりも冷媒流れ上流側に形成されて、最小通路面積部30mに至るまでの通路断面積が徐々に縮小する冷媒通路である。末広部132は、最小通路面積部30mから冷媒流れ下流側に形成されて、通路断面積が徐々に拡大する冷媒通路である。
この末広部132では、径方向から見たときに減圧用空間30bと通路形成部材35が重合(オーバーラップ)しているので、冷媒通路の軸方向垂直断面の形状が円環状(すなわち、円形状から同軸上に配置された小径の円形状を除いたドーナツ形状)となる。さらに、末広部132における通路断面積は、冷媒流れ下流側に向かって徐々に拡大している。
本実施形態では、このように通路断面積を変化させることによって、減圧用空間30bの内周面と通路形成部材35の頂部側の外周面との間に形成される冷媒通路をラバールノズルとして機能するノズル通路13aとしている。そして、ノズル通路13aにて、冷媒を減圧させるとともに冷媒の流速を超音速となるように増速させ、ノズル通路13aの最下流部の冷媒噴射口から噴射している。
次に、アッパーカバー32aの下方側には、図2に示すように、ディフューザボデー33が配置されている。ディフューザボデー33は、円環状の金属部材で形成されている。
ディフューザボデー33の中心部には、表裏(上下)を貫通する貫通穴33aが形成されている。この貫通穴33aも回転体形状に形成されており、その中心軸が通路形成部材35の中心軸CLと同軸上に配置されている。また、ディフューザボデー33の上面側であって、貫通穴33aの外周側には、後述する駆動機構37を収容して固定するための溝部33bが形成されている。
さらに、ディフューザボデー33は、その外周側がハウジングボデー31の内部に圧入されることによって、ハウジングボデー31に固定されている。なお、ディフューザボデー33とハウジングボデー31との間には、図示しないシール部材が配置されており、これらの部材の隙間から冷媒が漏れることはない。
ディフューザボデー33の上面と、これに対向するアッパーカバー32aの底面との間には、冷媒吸引口31bから吸引した吸引冷媒(すなわち、後述する蒸発器14下流側冷媒)を流入させる吸引空間30cが形成されている。本実施形態では、ノズル32の下方側先端部がディフューザボデー33の貫通穴33aの内部まで延びているため、中心軸方向からみたときに、吸引空間30cは、図4に示すように、ノズル32の外周側に環状に形成されている。
吸引空間30cの内部には、吸引空間30cの形状を調整するための形状調整部材39が配置されている。ここで、本実施形態の吸引空間30cの詳細形状について説明する。まず、本実施形態のハウジングボデー31には、冷媒吸引口31bと吸引空間30cとを接続する吸引用流入通路31fが形成されている。
図4からも明らかなように、中心軸方向からみたときに、吸引用流入通路31fと取付穴301は、互いに平行に延びている。これは、エジェクタ13を車両に搭載する際の搭載性を考慮したものである。つまり、吸引用流入通路31fと取付穴301とを平行に配置することで、取付穴301に挿入されたボルトと冷媒吸引口31bに接続される冷媒配管あるいはジョイントが、互いに干渉してしまうことを抑制している。
さらに、吸引用流入通路31fの中心線31fCは、通路形成部材35の中心軸CLへ向かって延びていない。より詳細には、中心軸CL方向から見たときに、吸引用流入通路31fの長手方向(すなわち、中心線31fCの方向)は、冷媒吸引口31bから中心軸CLへ向かう方向に対して傾斜している。
従って、吸引用流入通路31fから吸引空間30c内へ流入する冷媒は、図4の太実線矢印に示すように、環状に形成された吸引空間30cを形成する壁面に沿って流れる。つまり、吸引用流入通路31fから吸引空間30c内へ流入した冷媒は、中心軸CL周りに旋回する旋回方向の速度成分を有している。
また、中心軸方向から見たときに(すなわち、図4の断面図において)、吸引空間30cの冷媒入口30jの周方向の中心点30kと、中心軸CLとを結ぶ線を、仮想線ALと定義する。さらに、中心軸CLを含む断面のうち仮想線ALに垂直な断面(すなわち、図4のV−V断面)を、基準断面と定義する。
この基準断面では、図5に示すように、吸引空間30cが占める領域のうち、中心軸CLよりも一方側の領域(図5では、右側の網掛けハッチング領域)を一方側領域Ar1と定義し、中心軸CLよりも他方側の領域(図5では、左側の破線ハッチング領域)を他方側領域Ar2と定義する。
本実施形態では、図5に示すように、一方側領域Ar1の中心軸CLに垂直な径方向の寸法と他方側領域Ar2の中心軸CLに垂直な径方向の寸法が、互いに異なっている。このため、一方側領域Ar1の一方側面積と他方側領域Ar2の他方側面積が、互いに異なっている。さらに、一方側領域Ar1の一方側面積が他方側領域Ar2の他方側面積よりも小さくなっている。
また、前述の如く、吸引用流入通路31fから吸引空間30c内へ流入する冷媒は、図4を用いて説明したように、吸引空間30cを形成する部位の壁面に沿って流れる速度成分を有している。本実施形態では、吸引用流入通路31fから吸引空間30c内へ流入する冷媒は、他方側領域Ar2よりも、一方側領域Ar1側に向かって流れやすい速度成分を有している。
従って、本実施形態の吸引空間30cでは、基準断面において、吸引用流入通路31fから吸引空間30c内へ流入する冷媒が流入しやすい一方側領域Ar1の一方側面積が、吸引用流入通路31fから吸引空間30c内へ流入しにくい他方側領域Ar2の他方側面積よりも小さく形成されている。
また、図2に示すように、ディフューザボデー33の貫通穴33aの内周面とノズル32の下方側先端部の外周面との間には、吸引空間30cと減圧用空間30bの冷媒流れ下流側とを連通させる断面円環状の吸引通路30dが形成されている。吸引通路30dの冷媒流出口は、ノズル通路13aの冷媒噴射口の外周側に環状に配置されている。
従って、本実施形態では、吸引用流入通路31f、吸引空間30cおよび吸引通路30dによって、冷媒吸引口31bから吸引された吸引冷媒を流通させる吸引用通路13bが形成されている。
さらに、ディフューザボデー33の貫通穴33aのうち、吸引通路30dの冷媒流れ下流側には、冷媒流れ方向に向かって徐々に広がる略円錐台形状に形成された昇圧用空間30eが形成されている。昇圧用空間30eは、上述したノズル通路13aから噴射された噴射冷媒と吸引用通路13bから吸引された吸引冷媒とを流入させる空間である。
昇圧用空間30eの内部には、通路形成部材35の下方側が配置されている。さらに、ディフューザボデー33の昇圧用空間30eを形成する部位の内周面と通路形成部材35の下方側の外周面との間に形成される冷媒通路は、冷媒流れ下流側に向かって通路断面積を徐々に拡大させる形状に形成されている。これにより、この冷媒通路では、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の速度エネルギを圧力エネルギに変換することができる。
そこで、本実施形態では、図3に示すように、昇圧用空間30eを形成するディフューザボデー33の内周面と通路形成部材35の下方側の外周面との間に形成される冷媒通路を、噴射冷媒および吸引冷媒を混合して昇圧させるディフューザ(昇圧部)として機能するディフューザ通路13cとしている。このディフューザ通路13cの中心軸に垂直な断面形状も円環状に形成されている。
さらに、通路形成部材35のディフューザ通路13cを形成する部位には、ディフューザ通路13cを流通する冷媒の中心軸CL周りの旋回流れを促進する旋回促進手段である図示しない複数の整流板が配置されている。複数の整流板は、通路形成部材35の軸方向に広がる板状部材である。複数の整流板は、それぞれ旋回流れ方向に沿って湾曲した形状に形成されており、中心軸周りに等角度間隔で円環状に配置されている。
次に、通路形成部材35を変位させる駆動手段である駆動機構37について説明する。駆動機構37は、図6に示すように、圧力応動部材であるダイヤフラム371、キャン372、ホルダ373、プレート375等を有している。ダイヤフラム371、キャン372、ホルダ373、プレート375は、中心軸CL方向から見たときに、いずれもディフューザボデー33の溝部33bと重合する程度の大きさの円環状に形成されている。
さらに、本実施形態の駆動機構37は、キャン372とホルダ373との間にダイヤフラム371を挟み込むとともに、導入空間37b側にプレート375を収容した状態で、ホルダ373の外周側および内周側を、キャン372の外周側および内周側に、かしめ固定することによって形成されている。
キャン372は、ダイヤフラム371とともに、封入空間37aを形成する封入空間形成部材である。より具体的には、キャン372は、平板円環状の金属部材に、吸引空間30c側へ突出する円環状の突出部を形成したものである。従って、キャン372は、吸引空間30cの内壁面の一部を形成している。
さらに、キャン372の突出部の内部には、封入空間37aが形成されている。従って、封入空間37aは、中心軸CL周りに円環状に形成されている。また、本実施形態のキャン372の突出部の突出量は、全周に亘って、略一定に形成されている。
封入空間37aには、エジェクタ式冷凍サイクル10を循環する冷媒と同等の組成の感温媒体が封入されている。従って、本実施形態の感温媒体としては、R134aを主成分とする媒体(例えば、R134aとヘリウムとの混合媒体)を採用することができる。さらに、感温媒体の封入密度は、後述するようにサイクルの通常作動時に通路形成部材35を適切に変位させることができるように設定されている。
ホルダ373は、ダイヤフラム371とともに、導入空間37bを形成する導入空間形成部材である。より具体的には、ホルダ373は、平板円環状の金属部材に、ディフューザボデー33側へ突出する突出部を円環状に形成したものである。そして、突出部の内部に導入空間37bが形成されている。
ホルダ373の突出部の突出量は、全周に亘って、略一定に形成されている。さらに、ホルダ373の突出部は、ディフューザボデー33の溝部33b内に嵌め込まれて固定されている。導入空間37bは、図示しない連通路を介して、冷媒吸引口31bから吸引された吸引冷媒を流入させる空間である。
従って、封入空間37aに封入された感温媒体には、吸引空間30cへ流入した蒸発器14出口側冷媒の温度が、キャン372を介して伝達される。同時に、感温媒体には、導入空間37bへ流入した蒸発器14出口側冷媒の温度が、ダイヤフラム371を介して伝達される。
ダイヤフラム371は、封入空間37aの内圧と導入空間37bへ流入した蒸発器14出口側冷媒の圧力との圧力差に応じて変位する圧力応動部材である。従って、ダイヤフラム371は弾性に富み、かつ耐圧性および気密性に優れる材質で形成されていることが望ましい。
このようなダイヤフラム371としては、例えば、基布(ポリエステル)入りのEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)やHNBR(水素添加ニトリルゴム)等のゴム製の基材で形成されたものを採用することができる。
ダイヤフラム371の下方側(すなわち、導入空間37b側)には、図6に示すように、ダイヤフラム371の変位を通路形成部材35へ伝達するための、プレート375および複数の作動棒374(本実施形態では、3本)が配置されている。これらの複数の作動棒374は、ダイヤフラム371の変位を通路形成部材35へ適切に伝達するために、中心軸CL周りに等角度間隔で配置されていることが望ましい。
プレート375は、平板円環状の金属部材で形成されている。プレート375は、ダイヤフラム371の下方側の面に接触するように配置されている。また、複数の作動棒374は、中心軸CL方向に延びる円柱状の金属部材で形成されている。そして、その上方側端部がプレート375の下側面に接触し、下方側端部が通路形成部材35の最下方側のディフューザボデー33に対向する面に接触するように配置されている。
また、図2に示すように、通路形成部材35の底面は、後述する支持部材41に支持されたコイルバネ40の荷重を受けている。コイルバネ40は、通路形成部材35に対して、上方側(通路形成部材35が最小通路面積部30mにおける通路断面積を縮小する側)に付勢する荷重を加える弾性部材である。従って、通路形成部材35は、作動棒374から受ける荷重とコイルバネ40から受ける荷重が釣り合うように変位する。
より具体的には、蒸発器14出口側冷媒の温度(過熱度)が上昇すると、封入空間37aに封入された感温媒体の飽和圧力が上昇し、封入空間37aの内圧から導入空間37bの圧力を差し引いた圧力差が大きくなる。これにより、ダイヤフラム371が導入空間37b側へ変位して、通路形成部材35が作動棒374から受ける荷重が増加する。
このため、蒸発器14出口側冷媒の温度が上昇すると、通路形成部材35は、最小通路面積部30mにおける通路断面積を拡大させる方向(図2では、下方側)に変位する。
一方、蒸発器14出口側冷媒の温度(過熱度)が低下すると、封入空間37aに封入された感温媒体の飽和圧力が低下し、封入空間37aの内圧から導入空間37bの圧力を差し引いた圧力差が小さくなる。これにより、ダイヤフラム371が封入空間37a側へ変位して、通路形成部材35が作動棒374から受ける荷重が減少する。
このため、蒸発器14出口側冷媒の温度が低下すると、通路形成部材35は、最小通路面積部30mにおける通路断面積を縮小させる方向(図2では、上方側)に変位する。
本実施形態の駆動機構37では、このように蒸発器14出口側冷媒の過熱度に応じて通路形成部材35を変位させることによって、蒸発器14出口側冷媒の過熱度が予め定めた基準過熱度KSHに近づくように、最小通路面積部30mにおける通路断面積を調整している。なお、作動棒374とディフューザボデー33との隙間には、O−リングが配置されており、作動棒374が変位してもこの隙間から冷媒が漏れることはない。
次に、ディフューザボデー33の下方側には、図2に示すように、気液分離用ボデー34が配置されている。気液分離用ボデー34は、円筒状の金属部材で形成されている。気液分離用ボデー34は、ボデー30の内部に、ディフューザ通路13cから流出した冷媒の気液を分離する気液分離空間30fを形成するものである。
気液分離空間30fは、略円筒状の回転体形状の空間として形成されており、気液分離空間30fの中心軸も、通路形成部材35の中心軸と同軸上に配置されている。気液分離空間30fでは、ディフューザ通路13cから流出した冷媒が中心軸周りに旋回することで生じる遠心力の作用によって冷媒の気液を分離している。
さらに、気液分離空間30fの内容積は、サイクルに負荷変動が生じてサイクルを循環する冷媒循環流量が変動しても、実質的に余剰冷媒を溜めることができない程度の容積になっている。
気液分離用ボデー34の軸中心部には、気液分離空間30fに対して同軸上に配置されて、上方側へ向かって延びる円筒状のパイプ34aが設けられている。このため、気液分離空間30fにて分離された液相冷媒は、パイプ34aの外周側に一時的に滞留して、液相冷媒流出口31cから流出する。
パイプ34aの内部には、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒をハウジングボデー31の気相冷媒流出口31dへ導く気相冷媒流出通路34bが形成されている。ハウジングボデー31の下方側には、ロワーカバー34dが配置されている。
ロワーカバー34dは、ハウジングボデー31の下方側の開口部を閉塞して、気液分離用ボデー34とともに気相冷媒流出通路34bを形成する蓋部材である。ロワーカバー34dは、円板状の金属部材で形成されている。なお、ロワーカバー34dとハウジングボデー31との間には、図示しないO−リング等のシール部材が配置されており、これらの部材の隙間から冷媒が漏れることはない。
さらに、パイプ34aの内部には、前述したコイルバネ40を支持する支持部材41が配置されている。コイルバネ40は、冷媒が減圧される際の圧力脈動に起因する通路形成部材35の振動を減衰させる振動緩衝部材としての機能も果たしている。
支持部材41は、ロワーカバー34dに螺合された調整ネジ41aに連結されている。調整ネジ41aは、支持部材41を中心軸方向(上下方向)に変位させることができる。従って、調整ネジ41aにて、コイルバネ40が通路形成部材35に付勢する荷重を調整することで、狙いの基準過熱度KSHを変更することができる。
また、気液分離用ボデー34の気液分離空間30fの底面を形成する部位には、気液分離空間30fと気相冷媒流出通路34bとを連通させるオイル戻し穴34cが形成されている。オイル戻し穴34cは、液相冷媒に溶け込んだ冷凍機油を、液相冷媒とともに気相冷媒流出通路34bを介して圧縮機11内へ戻すための連通路を形成している。
次に、エジェクタ13の液相冷媒流出口31cには、図1に示すように、蒸発器14の冷媒入口側が接続されている。蒸発器14は、エジェクタ13にて減圧された低圧冷媒と送風ファン14aから車室内へ送風される送風空気とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。
送風ファン14aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。蒸発器14の出口側には、エジェクタ13の冷媒吸引口31bが接続されている。さらに、エジェクタ13の気相冷媒流出口31dには圧縮機11の吸入側が接続されている。
次に、図示しない制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この制御装置は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。そして、上述の各種電気式のアクチュエータ11、12d、14a等の作動を制御する。
また、制御装置には、内気温センサ、外気温センサ、日射センサ、蒸発器温度センサ、出口側温度センサ、出口側圧力センサ等の複数の空調制御用のセンサ群が接続され、これらのセンサ群の検出値が入力される。
より具体的には、内気温センサは、車室内温度を検出する内気温検出手段である。外気温センサは、外気温を検出する外気温検出手段である。日射センサは、車室内の日射量を検出する日射量検出手段である。蒸発器温度センサは、蒸発器14の吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度検出手段である。出口側温度センサは、放熱器12出口側冷媒の温度を検出する出口側温度検出手段である。出口側圧力センサは、放熱器12出口側冷媒の圧力を検出する出口側圧力検出手段である。
さらに、制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種操作スイッチからの操作信号が制御装置へ入力される。操作パネルに設けられた各種操作スイッチとしては、車室内空調を行うことを要求する空調作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
なお、本実施形態の制御装置は、その出力側に接続された各種の制御対象機器の作動を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、制御装置のうち、各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の制御手段を構成している。
例えば、本実施形態では、圧縮機11の吐出容量制御弁の作動を制御することによって、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が吐出能力制御手段を構成している。もちろん、吐出能力制御手段を制御装置に対して、別体の制御装置で構成してもよい。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図7のモリエル線図を用いて説明する。まず、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)されると、制御装置が圧縮機11の電動モータ、冷却ファン12d、送風ファン14a等を作動させる。これにより、圧縮機11が冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。
圧縮機11から吐出された高温高圧冷媒(図7のa点)は、放熱器12の凝縮部12aへ流入し、冷却ファン12dから送風された外気と熱交換し、放熱して凝縮する。凝縮部12aにて凝縮した冷媒は、レシーバ部12bにて気液分離される。レシーバ部12bにて気液分離された液相冷媒は、過冷却部12cにて冷却ファン12dから送風された外気と熱交換し、さらに放熱して過冷却液相冷媒となる(図7のa点→b点)。
放熱器12の過冷却部12cから流出した過冷却液相冷媒は、エジェクタ13の減圧用空間30bの内周面と通路形成部材35の外周面との間に形成されるノズル通路13aにて等エントロピ的に減圧されて噴射される(図7のb点→c点)。この際、減圧用空間30bの最小通路面積部30mにおける通路断面積は、蒸発器14出口側冷媒(図7のh点)の過熱度が基準過熱度KSHに近づくように調整される。
そして、ノズル通路13aから噴射された噴射冷媒の吸引作用によって、蒸発器14から流出した冷媒(図7のh点)が、冷媒吸引口31bおよび吸引用通路13b(より詳細には、吸引空間30cおよび吸引通路30d)を介して吸引される。ノズル通路13aから噴射された噴射冷媒および吸引用通路13b等を介して吸引された吸引冷媒は、ディフューザ通路13cへ流入して合流する(図7のc点→d点、h1点→d点)。
ここで、本実施形態の吸引用通路13bは、冷媒流れ方向に向かって通路断面積が徐々に縮小する形状に形成されている。このため、吸引用通路13bを通過する吸引冷媒は、その圧力を低下させながら(図7のh点→h1点)、流速を増加させる。これにより、吸引冷媒と噴射冷媒との速度差を縮小し、ディフューザ通路13cにて吸引冷媒と噴射冷媒が混合する際のエネルギ損失(混合損失)を減少させている。
ディフューザ通路13cでは冷媒通路断面積の拡大により、冷媒の運動エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒が混合されながら混合冷媒の圧力が上昇する(図7のd点→e点)。ディフューザ通路13cから流出した冷媒は気液分離空間30fにて気液分離される(図7のe点→f点、e点→g点)。
気液分離空間30fにて分離された液相冷媒は、液相冷媒通路30iにて減圧されて(図7のg点→g1点)、蒸発器14へ流入する。蒸発器14へ流入した冷媒は、送風ファン14aによって送風された送風空気から吸熱して蒸発する(図7のg1点→h点)。これにより、送風空気が冷却される。
一方、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒は気相冷媒流出口31dから流出して、圧縮機11へ吸入され再び圧縮される(図7のf点→a点)。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、以上の如く作動して、車室内へ送風される送風空気を冷却することができる。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、ディフューザ通路13cにて昇圧された冷媒を圧縮機11へ吸入させている。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10によれば、蒸発器における冷媒蒸発圧力と圧縮機吸入冷媒の圧力が略同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも、圧縮機11の消費動力を低減させて、サイクルの成績係数(COP)を向上させることができる。
また、本実施形態のエジェクタ13によれば、旋回空間30aにて冷媒を旋回させることで、旋回空間30a内の旋回中心側の冷媒圧力を、飽和液相冷媒となる圧力、あるいは、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生じる)圧力まで低下させることができる。これにより、旋回中心軸の外周側よりも内周側に気相冷媒が多く存在するようにして、旋回空間30a内の旋回中心線近傍はガス単相、その周りは液単相の二相分離状態とすることができる。
このように二相分離状態となった冷媒がノズル通路13aへ流入することで、ノズル通路13aの先細部131では、円環状の冷媒通路の外周側壁面から冷媒が剥離する際に生じる壁面沸騰および円環状の冷媒通路の中心軸側の冷媒のキャビテーションによって生じた沸騰核による界面沸騰によって冷媒の沸騰が促進される。これにより、ノズル通路13aの最小通路面積部30mへ流入する冷媒が、気相と液相が均質に混合した気液混合状態となる。
そして、最小通路面積部30mの近傍で気液混合状態の冷媒の流れに閉塞(チョーキング)が生じ、このチョーキングによって音速に到達した気液混合状態の冷媒が末広部132にて加速されて噴射される。このように、壁面沸騰および界面沸騰の双方による沸騰促進によって、気液混合状態の冷媒を音速となるまで効率よく加速できることで、ノズル通路13aにおけるエネルギ変換効率を向上させることができる。
また、本実施形態のエジェクタ13では、駆動機構37を備えているので、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて通路形成部材35を変位させて、ノズル通路13aの通路断面積(最小通路面積部30mにおける通路断面積)、およびディフューザ通路13cの通路断面積を調整することができる。これにより、サイクルを循環する冷媒の循環流量に応じて、最小通路面積部30mにおける通路断面積等を適切に変化させて、エジェクタ13を適切に作動させることができる。
ところで、本実施形態のように、ノズル通路13aの冷媒流れ上流側に旋回空間30aが配置されるエジェクタ13では、ノズル通路13aから噴射される噴射冷媒も、旋回方向の速度成分を有していると考えられる。さらに、噴射冷媒の旋回方向の速度成分は、気液分離空間30fにおける気液分離性能を向上させるために活用できると考えられる。
そこで、本発明者らは、従来技術のエジェクタ13のノズル通路13aから噴射される噴射冷媒の流れ形態を解析的に確認した。その結果、ノズル通路13aから噴射される噴射冷媒の速度成分のうち、旋回方向の速度成分の大きさは軸方向の速度成分の10分の1以下程度であることが確認された。つまり、噴射冷媒の旋回方向の速度成分は、比較的小さいことが確認された。
このため、吸引用通路13bから流出して噴射冷媒に合流する吸引冷媒が、比較的大きな旋回方向の速度成分を有していると、速度差の大きい流体同士を合流させる際に生じる混合損失が発生してしまう。このような混合損失は、エジェクタ13のエネルギ変換効率を低下させてしまう原因となる。
これに対して、本実施形態では、図5を用いて説明したように、基準断面において吸引空間30cが占める領域のうち、一方側領域Ar1の一方側面積と他方側領域Ar2の他方側面積とを、互いに異なる面積としている。より具体的には、吸引用流入通路31fから吸引空間30c内へ流入する吸引冷媒が流入しやすい一方側領域Ar1の一方側面積を、吸引用流入通路31fから吸引空間30c内へ流入しにくい他方側領域Ar2の他方側面積よりも小さくしている。
従って、吸引用流入通路31fから吸引空間30c内へ流入する冷媒のうち、他方側領域Ar2へ流入する冷媒の流量を、一方側領域Ar1へ流入する冷媒の流量よりも多くすることができる。このため、吸引用流入通路31fから吸引空間30c内へ流入する冷媒が一方側領域Ar1へ流入しやすい旋回方向の速度成分を有していても、図8の説明図に示すように、吸引空間30c内の冷媒の旋回方向の速度成分を打ち消すことができる。
より詳細には、一方側領域Ar1から流入した冷媒の一部と他方側領域Ar2から流入する冷媒の一部とを衝突させることによって、吸引空間30c内の冷媒の旋回方向の速度成分を打ち消すことができる。
その結果、本実施形態のエジェクタ13では、吸引用通路13bから流出する冷媒が通路形成部材35の中心軸CL周りに旋回してしまうことを抑制することができる。つまり、本実施形態の吸引用通路13bの通路形状は、吸引用通路13bから流出する冷媒が通路形成部材35の中心軸CL周りに旋回することを抑制する形状に形成されている。
従って、本実施形態のエジェクタ13によれば、噴射冷媒と吸引冷媒とを混合させる際のエネルギ損失(混合損失)を抑制することによって、エジェクタのエネルギ変換効率の低下を抑制することができる。なお、図8は、図5に対応する図面であって、吸引用通路13b(具体的には、吸引用流入通路31fおよび吸引空間30c)を流通する冷媒の流線を模式的に示した説明図である。
また、本実施形態では、吸引空間30cの内部に形状調整部材39を配置しているので、一方側領域Ar1の径方向寸法と他方側領域Ar2の径方向寸法とを容易に変更することができる。従って、吸引用通路13bの通路形状を、容易に、吸引用通路13bから流出する冷媒が通路形成部材35の中心軸CL周りに旋回することを抑制する形状とすることができる。
また、本実施形態のエジェクタ13では、エジェクタ13の搭載性を向上させるために、吸引用流入通路31fの長手方向(すなわち、中心線31fCの方向)を、冷媒吸引口31bから中心軸CLへ向かう方向に対して傾斜させている。このようなエジェクタ13では、吸引用流入通路31fから吸引空間30c内へ流入する吸引冷媒が、中心軸CL周りに旋回しやすい。
従って、本実施形態のエジェクタ13のように、吸引用通路13bの通路形状が、吸引用通路13bから流出する冷媒の旋回流れを抑制可能な形状になっていることは、エジェクタ13の搭載性を悪化させることなく、エネルギ変化効率を低下させることができる点で有効である。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図9、図10に示すように、一方側領域Ar1の中心軸CL方向の寸法を、他方側領域Ar2の中心軸CL方向の寸法よりも小さくすることによって、一方側面積を他方側面積よりも小さくした例を説明する。なお、図9、図10は、それぞれ第1実施形態で説明した図2、図5に対応する図面であって、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。
より具体的には、本実施形態では、キャン372の突出部の突出量(すなわち、通路形成部材35の中心軸CL方向の高さ寸法)が全周に亘って一定に形成されておらず、突出量が変化している。そして、キャン372のうち一方側領域Ar1(図10では、右側の網掛けハッチング領域)の内壁面を形成する部位の形状と、他方側領域Ar2(図10では、左側の破線ハッチング領域)の内壁面を形成する部位の形状が異なっている。
これにより、本実施形態では、一方側領域Ar1の一方側面積を、他方側領域Ar2の他方側面積よりも小さくしている。その他のエジェクタ13およびエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ13においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができ、噴射冷媒と吸引冷媒とを混合させる際のエネルギ損失(混合損失)を抑制することによって、エジェクタのエネルギ変換効率の低下を抑制することができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、ゴム製のダイヤフラム371を採用した例を説明したが、本発明に適用可能なダイヤフラムはこれに限定されない。例えば、金属(具体的には、SUS304)の薄板で形成された金属製ダイヤフラムを採用してもよい。また、上述の実施形態で説明した、ゴム製のダイヤフラム371に、感温媒体の透過性の低い樹脂製のバリア膜を設けてもよい。
(2)上述の実施形態では、ダイヤフラム371が、封入空間37a内の感温媒体の圧力と導入空間37b内の冷媒の圧力との圧力差に応じて変位する、いわゆる外部均圧方式の駆動機構37を採用した例を説明したが、駆動機構37の形式はこれに限定されない。例えば、ダイヤフラムが、封入空間37a内の感温媒体の圧力、蒸発器入口側冷媒圧力等に応じて変位する、いわゆる内部均圧方式の駆動機構を採用してもよい。
(3)エジェクタ式冷凍サイクル10を構成する各構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
例えば、上述の実施形態では、圧縮機11として、エンジン駆動式の可変容量型圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機11として、電磁クラッチの断続により圧縮機の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機を採用してもよい。さらに、固定容量型圧縮機構と電動モータとを備え、電力を供給されることによって作動する電動圧縮機を採用してもよい。電動圧縮機では、電動モータの回転数を調整することによって、冷媒吐出能力を制御することができる。
また、上述の実施形態では、放熱器12として、サブクール型の熱交換器を採用した例を説明したが、凝縮部12aのみからなる通常の放熱器を採用してもよい。さらに、通常の放熱器とともに、この放熱器にて放熱した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を蓄える受液器(レシーバ)を一体化させたレシーバ一体型の凝縮器を採用してもよい。
また、上述の実施形態では、冷媒としてR134aあるいはR1234yf等を採用可能であることを説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、HFO−1234ze、HFO−1234zd等を採用することができる。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
(4)上述の実施形態では、本発明に係るエジェクタ式冷凍サイクル10を、車両用空調装置に適用した例を説明したが、エジェクタ式冷凍サイクル10の適用はこれに限定されない。例えば、据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用してもよい。
また、上述の実施形態では、本発明に係るエジェクタ13を備えるエジェクタ式冷凍サイクル10の放熱器12を冷媒と外気とを熱交換させる室外側熱交換器とし、蒸発器14を送風空気を冷却する利用側熱交換器としている。これに対して、蒸発器14を外気等の熱源から吸熱する室外側熱交換器として用い、放熱器12を空気あるいは水等の被加熱流体を加熱する利用側熱交換器として用いてもよい。