JP6561919B2 - エジェクタ - Google Patents

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Description

本発明は、流体を減圧するとともに、高速度で噴射される噴射流体の吸引作用によって流体を吸引するエジェクタに関する。
従来、特許文献1に、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置に適用されるエジェクタが開示されている。この特許文献1のエジェクタでは、高圧冷媒を減圧させるノズル通路から噴射される噴射冷媒の吸引作用によって、ボデーに形成された冷媒吸引口を介して蒸発器から流出した冷媒を吸引する。そして、ディフューザ通路にて、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒を昇圧させて、圧縮機の吸入側へ流出させる。
より具体的には、特許文献1のエジェクタでは、ボデーの内部に形成された回転体形状の内部空間に、略円錐形状の通路形成部材を配置している。これにより、ボデーの内壁面と通路形成部材の円錐状側面との間に断面円環状の冷媒通路を形成している。そして、この冷媒通路のうち、冷媒流れ最上流側の部位をノズル通路として利用し、ノズル通路の冷媒流れ下流側の部位をディフューザ通路として利用している。
さらに、特許文献1のエジェクタは、通路形成部材を変位させて、冷媒通路(すなわち、ノズル通路およびディフューザ通路)の通路断面積を変化させる駆動機構を備えている。これにより、特許文献1のエジェクタでは、適用された冷凍サイクル装置の負荷変動に応じて冷媒通路の通路断面積を変化させ、サイクルを循環する循環冷媒流量に応じてエジェクタを適切に作動させようとしている。
より具体的には、通路形成部材には、円柱状のシャフトが設けられており、ボデーには、シャフトを摺動可能に支持する円筒状の支持部材が設けられている。さらに、支持部材の中心軸は、ボデーの内部空間の中心軸と同軸上に配置されている。これにより、特許文献1のエジェクタでは、駆動機構が通路形成部材を変位させる際に、通路形成部材を内部空間の軸方向に変位させるようとしている。
さらに、特許文献1のエジェクタは、通路形成部材に対して、軸方向の荷重を作用させて通路形成部材の振動を抑制する振動抑制部材であるコイルバネを有している。これにより、外部から振動が伝達された際等の防振性能を向上させようとしている。
特開2015−137565号公報
ところが、特許文献1のエジェクタのようにコイルバネにて通路形成部材に荷重を作用させる構成では、コイルバネが通路形成部材に対して軸方向の荷重を作用させるだけでなく、軸方向に垂直な方向の荷重(以下、横力と記載する。)も作用させてしまう。さらに、シャフトは支持部材に摺動可能に支持されているので、シャフトの外周面と支持部材の内周面との間には隙間が形成されてしまう。
このため、コイルバネが通路形成部材に対して横力を作用させると、ボデーの内部空間や支持部材の中心軸に対して、通路形成部材およびシャフトの変位方向が傾いてしまう。
そして、このような傾きが生じると、円環状に形成される冷媒通路の断面形状が周方向に不均一となってしまう。このため、駆動機構が通路形成部材を変位させた際の冷媒通路の通路断面積が不安定となってしまう。その結果、冷媒通路を流通する冷媒流量が不安定となってしまい、ノズル通路におけるエネルギ変換効率の低下を招いてしまう。
本発明は、上記点に鑑み、駆動機構から出力された駆動力に応じて、冷媒通路の通路断面積を精度良く変更可能なエジェクタを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置(10)に適用されるエジェクタであって、
高圧冷媒を流入させる流入空間(30a)、流入空間から流出した冷媒を減圧させる回転体形状の減圧用空間(30b)、減圧用空間の冷媒流れ下流側に連通して冷媒吸引口(31b)から吸引した冷媒を流通させる吸引用通路(13b)、および減圧用空間から噴射された噴射冷媒と吸引用通路を介して吸引された吸引冷媒とを流入させる昇圧用空間(30e)が形成されたボデー(30)と、少なくとも一部が減圧用空間の内部、および昇圧用空間の内部に配置された通路形成部材(35)と、通路形成部材を変位させる駆動力を出力する駆動機構(37)と、通路形成部材に摺動可能の支持する筒状の支持部材(39)と、を備え、
ボデーのうち減圧用空間を形成する部位の内周面と通路形成部材の外周面との間に形成される冷媒通路は、冷媒を減圧させて噴射するノズルとして機能するノズル通路(13a)であり、ボデーのうち昇圧用空間を形成する部位の内周面と通路形成部材の外周面との間に形成される冷媒通路は、噴射冷媒および吸引冷媒を混合させて昇圧させる昇圧部として機能するディフューザ通路(13c)であり、
支持部材の中心軸は、減圧用空間の中心軸(CL)と同軸上に配置されており、減圧用空間の軸方向に垂直な方向から見たときに、ボデーに形成されてノズル通路の通路断面積を最も縮小させる喉部(30m)は、支持部材のうち通路形成部材が摺動する摺動領域(39a)と重合する範囲内に配置されているエジェクタである。
これによれば、減圧用空間(30b)の軸方向に垂直な方向から見たときに、喉部(30m)が摺動領域(39a)と重合する範囲内に配置されているので、支持部材(39)の中心軸に対して通路形成部材(35)の中心軸が傾斜してしまう際の回転中心(CP)と喉部(30m)との距離を短縮化させることができる。
ここで、回転中心(CP)とは、支持部材(39)の中心軸上の点であって、摺動領域(39a)の軸方向中央点と定義することができる。
従って、駆動機構(37)が通路形成部材(35)を変位させる際に、減圧用空間(30b)および支持部材(39)の中心軸に対して、通路形成部材(35)の変位方向が傾いてしまっても、ノズル通路(13a)の断面形状が周方向に不均一となってしまう度合を小さくすることができる。
その結果、請求項1に記載の発明によれば、駆動機構(37)から出力された駆動力に応じて、ノズル通路(13a)の通路断面積を精度良く変更可能なエジェクタを提供することができる。そして、ノズル通路(13a)におけるエネルギ変換効率の低下を抑制することができる。
さらに、ノズル通路(13a)の断面形状が周方向に不均一となってしまう度合を小さくして、ノズル通路(13a)の通路断面積をより一層精度良く変更するためには、減圧用空間(30b)の軸方向に垂直な方向から見たときに、喉部(30m)と回転中心(CP)が重合するように配置されていることが望ましい。
ここで、「喉部(30m)と回転中心(CP)が重合するように配置されている」とは、喉部(30m)と回転中心(CP)が完全に一致するように配置されていることに限定されない。エジェクタ13のエネルギ変換効率の低下を抑制可能な範囲であれば僅かにずれていても重合するように配置されていることに含まれる。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの全体構成図である。 第1実施形態のエジェクタの軸方向断面図である。 図2のIII−III断面図である。 図2のIV部の拡大断面図である。 第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルにおける冷媒の状態の変化を示すモリエル線図である。 第2実施形態のエジェクタの拡大断面図である。
(第1実施形態)
図1〜図5を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態のエジェクタ13は、図1に示すように、冷媒減圧装置としてエジェクタを備える蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置、すなわち、エジェクタ式冷凍サイクル10に適用されている。このエジェクタ式冷凍サイクル10は、車両用空調装置に適用されており、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却する機能を果たす。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の冷却対象流体は、送風空気である。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒として、R134aを採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。この冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
エジェクタ式冷凍サイクル10の構成機器のうち、圧縮機11は、冷媒を吸入して高圧冷媒となるまで昇圧して吐出するものである。圧縮機11は、車両走行用の駆動力を出力するエンジン(内燃機関)とともにエンジンルーム内に配置されている。さらに、圧縮機11は、プーリ、ベルト等を介してエンジンから出力される回転駆動力によって駆動されるエンジン駆動式の圧縮機である。
より具体的には、本実施形態では、圧縮機11として、吐出容量を変化させることによって冷媒吐出能力を調整可能に構成された斜板式の可変容量型圧縮機を採用している。この圧縮機11では、吐出容量を変化させるための図示しない吐出容量制御弁を有している。吐出容量制御弁は、後述する制御装置から出力される制御電流によって、その作動が制御される。
圧縮機11の吐出口には、放熱器12の凝縮部12aの冷媒入口側が接続されている。放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と冷却ファン12dによって送風される車室外空気(外気)を熱交換させることによって、高圧冷媒を放熱させて冷却する放熱用熱交換器である。放熱器12は、エンジンルーム内の車両前方側に配置されている。
より具体的には、放熱器12は、凝縮部12a、レシーバ部12b、および過冷却部12cを有する、いわゆるサブクール型の凝縮器として構成されている。
凝縮部12aは、圧縮機11から吐出された高圧気相冷媒と冷却ファン12dから送風された外気とを熱交換させ、高圧気相冷媒を放熱させて凝縮させる凝縮用の熱交換部である。レシーバ部12bは、凝縮部12aから流出した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を蓄える冷媒容器である。過冷却部12cは、レシーバ部12bから流出した液相冷媒と冷却ファン12dから送風された外気とを熱交換させ、液相冷媒を過冷却する過冷却用の熱交換部である。
冷却ファン12dは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風空気量)が制御される電動式送風機である。放熱器12の過冷却部12cの冷媒出口側には、エジェクタ13の冷媒流入口31aが接続されている。
エジェクタ13は、放熱器12から流出した過冷却状態の高圧液相冷媒を減圧させて下流側へ流出させる冷媒減圧装置としての機能を果たす。さらに、エジェクタ13は、高速度で噴射される噴射冷媒の吸引作用によって後述する蒸発器14から流出した冷媒(すなわち、蒸発器14出口側冷媒)を吸引して輸送する冷媒輸送装置としての機能を果たす。
これに加えて、本実施形態のエジェクタ13は、減圧させた冷媒の気液を分離する気液分離器の機能も兼ね備えている。換言すると、本実施形態のエジェクタ13は、エジェクタと気液分離器とを一体化(すなわち、モジュール化)させた、気液分離機能付きエジェクタとして構成されている。エジェクタ13は、圧縮機11および放熱器12とともに、エンジンルーム内に配置されている。
エジェクタ13の具体的構成については、図2〜図4を用いて説明する。図2、図3は、エジェクタ13の軸方向断面図であり、図2は、図3のII−II断面図であり、図3は、図2のIII−III断面図である。また、図3における上下の各矢印は、エジェクタ13を車両に搭載した状態における上下の各方向を示している。
本実施形態のエジェクタ13は、図2、図3に示すように、複数の構成部材を組み合わせることによって形成されたボデー30を備えている。
より具体的には、ボデー30は、アッパーボデー311、ロワーボデー312、気液分離ボデー313等を有している。これらのアッパーボデー311、ロワーボデー312、気液分離ボデー313は、エジェクタ13の外殻を形成するとともに、内部に他の構成部材を収容するハウジングとしての機能を果たす。
アッパーボデー311、ロワーボデー312、気液分離ボデー313は、金属製(本実施形態では、アルミニウム合金製)の中空部材で形成されている。アッパーボデー311、ロワーボデー312、気液分離ボデー313は、樹脂にて形成されていてもよい。
アッパーボデー311とロワーボデー312とを組み合わせることによって形成される内部空間には、後述するノズルボデー32、ディフューザボデー33等のボデー30の構成部材が固定されている。
アッパーボデー311には、冷媒流入口31a、冷媒吸引口31bといった複数の冷媒流入口が形成されている。冷媒流入口31aは、放熱器12から流出した高圧冷媒を流入させる冷媒流入口である。冷媒吸引口31bは、蒸発器14から流出した低圧冷媒を吸引する冷媒流入口である。
気液分離ボデー313には、液相冷媒流出口31c、気相冷媒流出口31dといった複数の冷媒流出口が形成されている。液相冷媒流出口31cは、気液分離ボデー313の内部に形成された気液分離空間30fにて分離された液相冷媒を蒸発器14の冷媒入口側へ流出させる冷媒流出口である。気相冷媒流出口31dは、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒を圧縮機11の吸入口側へ流出させる冷媒流出口である。
ノズルボデー32は、金属製(本実施形態では、ステンレス製)の円筒状部材で形成されている。ノズルボデー32は、図2、図3に示すように、アッパーボデー311のうちロワーボデー312側の底面に配置されている。ノズルボデー32は、アッパーボデー311に形成された穴部に圧入によって固定されており、アッパーボデー311とノズルボデー32との隙間から冷媒が漏れることはない。
ノズルボデー32の内部には、冷媒流入口31aから流入した冷媒を流入させる流入空間30aが形成されている。流入空間30aは、略円柱状の回転体形状に形成されている。流入空間30aの中心軸は、後述する減圧用空間30bの中心軸CLと同軸上に配置されている。さらに、図3から明らかなように、本実施形態の中心軸CLは略水平方向に延びている。なお、回転体形状とは、平面図形を同一平面上の1つの直線(中心軸)周りに回転させた際に形成される立体形状である。
また、アッパーボデー311には、冷媒流入口31aから流入した高圧冷媒を流入空間30a内へ導く冷媒流入通路31eが形成されている。冷媒流入通路31eは、流入空間30aの軸方向から見たときに、径方向に延びる形状に形成され、流入空間30aへ流入する冷媒を、流入空間30aの中心軸に向かって流入させるように形成されている。
ノズルボデー32の内部であって、流入空間30aの冷媒流れ下流側には、流入空間30aに連続するように形成されて、流入空間30aから流出した冷媒を減圧させて下流側へ流出させる減圧用空間30bが形成されている。
減圧用空間30bは、2つの円錐台形状の空間の頂部側同士を結合させた回転体形状に形成されている。ノズルボデー32には、減圧用空間30b(具体的には、後述するノズル通路13a)における通路断面積を最も縮小させる喉部30mが形成されている。
減圧用空間30bの内部には、円錐状に形成された通路形成部材35の頂部側が配置されている。通路形成部材35は、軸方向に変位することによって、エジェクタ13の内部に形成される冷媒通路の通路断面積を変化させる弁体部である。
通路形成部材35は、減圧用空間30bから離れるに伴って(すなわち、冷媒流れ下流側へ向かって)、外径が拡大する円錐状に形成されている。このため、ノズルボデー32の減圧用空間30bを形成する部位の内周面と通路形成部材35の頂部側の部位の外周面との間には、軸方向垂直断面の形状が円環状となる冷媒通路が形成される。なお、通路形成部材35のより詳細な構成については後述する。
この冷媒通路は、冷媒を等エントロピ的に減圧させて噴射するノズルとして機能するノズル通路13aである。ノズル通路13aでは、流入空間30a側から喉部30mへ向かって通路断面積が減少して、喉部30mから冷媒流れ下流側に向かって通路断面積が再び拡大する。つまり、ノズル通路13aでは、いわゆるラバールノズルと同様に通路断面積が変化する。
これにより、本実施形態のノズル通路13aでは、冷媒を減圧させるとともに、冷媒の流速を超音速となるように増速させて噴射することができる。
ディフューザボデー33は、アッパーボデー311の内部であって、ノズルボデー32よりも冷媒流れ下流側に配置されている。ディフューザボデー33は、金属製(本実施形態では、アルミニウム合金性)の円筒状部材で形成されている。
ディフューザボデー33は、その外周側がアッパーボデー311の内周側面に圧入されることによって、アッパーボデー311に固定されている。ディフューザボデー33の外周面とアッパーボデー311の内周面との間には、図示しないシール部材が配置されており、ディフューザボデー33とアッパーボデー311との隙間から冷媒が漏れることはない。
ディフューザボデー33の中心部には、軸方向に貫通する貫通穴33aが形成されている。貫通穴33aの中心軸は、流入空間30aや減圧用空間30bの中心軸CLと同軸上に配置されている。貫通穴33aは、冷媒流れ下流側に向かって断面積が拡大する略円錐台形状に形成されている。さらに、本実施形態では、ノズルボデー32の冷媒噴射口側の先端部が、ディフューザボデー33の貫通穴33aの内部まで延びている。
そして、ディフューザボデー33の貫通穴33aの内周面とノズルボデー32の筒状の先端部の外周面との間には、冷媒吸引口31bから吸引された冷媒を減圧用空間30b(すなわち、ノズル通路13a)の冷媒流れ下流側へ導く吸引用通路13bの下流側が形成されている。このため、軸方向から見たときに、吸引用通路13bの最下流部となる吸引冷媒出口は、冷媒噴射口の外周側に円環状に開口している。
ディフューザボデー33の貫通穴33aのうち、吸引用通路13bの冷媒流れ下流側には、冷媒流れ方向に向かって徐々に広がる略円錐台形状に形成された昇圧用空間30eが形成されている。昇圧用空間30eは、上述したノズル通路13aから噴射された噴射冷媒と吸引用通路13bから吸引された吸引冷媒とを流入させる空間である。
昇圧用空間30eの内部には、通路形成部材35の頂部よりも冷媒流れ下流側が配置されている。ディフューザボデー33の昇圧用空間30eを形成する部位の内周面と通路形成部材35の冷媒流れ下流側の外周面との間には、軸方向垂直断面の形状が円環状となる冷媒通路が形成される。
この冷媒通路は、噴射冷媒と吸引冷媒とを混合させて昇圧させる昇圧部として機能するディフューザ通路13cである。ディフューザ通路13cでは、冷媒流れ下流側に向かって通路断面積を徐々に拡大させる。これにより、ディフューザ通路13cでは、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の速度エネルギを圧力エネルギに変換することができる。
次に、通路形成部材35の詳細構成について説明する。通路形成部材35は、冷媒に対して耐性を有する樹脂製(本実施形態では、ナイロン6またはナイロン66製)の円錐状部材で形成されている。通路形成部材35の内部には、その底面側から略円錐台状の空間が形成されている。つまり、通路形成部材35は、杯状(すなわち、カップ状)に形成されている。
通路形成部材35の底面側は、コイルバネ36aからの荷重を受けている。コイルバネ36aは、通路形成部材35に対して、流入空間30a側へ向かう方向(すなわち、ノズル通路13a等の通路断面積を縮小させる方向)の荷重を作用させる弾性部材である。コイルバネ36aは、ロワーボデー312に固定された固定部材36に支持されている。
固定部材36は、金属製(本実施形態では、アルミニウム合金製)の円筒状部材で形成されている。コイルバネ36aの荷重は、固定部材36に配置された調整ネジ36bによって調整することができる。
一方、通路形成部材35の頂部側には、図4の拡大図に示すように、円柱状の挿入穴35aが形成されている。挿入穴35aの中心軸は、通路形成部材35の中心軸と同軸上に配置されている。挿入穴35aには、支持部材39の筒状部391が挿入されている。支持部材39は、通路形成部材35を摺動可能に支持して、通路形成部材35の変位方向が減圧用空間30bの中心軸CL方向に対して傾いてしまうことを抑制するものである。
より具体的には、支持部材39は、金属(本実施形態では、ステンレス)で形成れている。支持部材39は、筒状に形成された筒状部391および円板状に形成された固定部392を有している。そして、筒状部391の先端側が通路形成部材35の挿入穴35aに挿入されていることによって、通路形成部材35が支持部材39に摺動可能に支持されている。
このため、本実施形態では、支持部材39の筒状部391の外周面のうち、挿入穴35aの内周面と摺動し得る領域が摺動領域39aとなる。
さらに、図4に示すように、中心軸CLに垂直な方向から見たときに、喉部30mは、摺動領域39aと重合する範囲内に位置付けられている。より詳細には、中心軸CLに垂直な方向から見たときに、喉部30mは、通路形成部材35の中心軸が支持部材39の筒状部391の中心軸に対して傾いてしまう際の回転中心CPと重合するように配置されている。
ここで、回転中心CPは、支持部材39の中心軸上の点であって、摺動領域39aの軸方向中央点と定義することができる。また、喉部30mが回転中心CPと重合するとは、中心軸CLに垂直な方向から見たときに、喉部30mと回転中心CPが完全に一致していることに限定されず、後述するようにエジェクタ13のエネルギ変換効率の低下を抑制可能な範囲であれば僅かにずれていても重合するように配置されていることに含まれる。
固定部392は、筒状部391の通路形成部材35側の反対側の端部に形成されており、径方向に拡がる円板状部材である。固定部392は、ノズルボデー32とともに、アッパーボデー311に形成された穴部に圧入によって固定されている。この際、固定部392は、支持部材39の筒状部391の中心軸がノズルボデー32の減圧用空間30bの中心軸CLと同軸上に配置されるように固定されている。
このため、理想的には、筒状部391に支持される通路形成部材35の中心軸は、減圧用空間30bの中心軸CLと同軸上に配置することができる。ところが、実際には、支持部材39の筒状部391の外周面と通路形成部材35の挿入穴35aの内周面との間には隙間が存在するので、通路形成部材35の変位方向が、筒状部391の中心軸に対して傾いてしまうこともある。
筒状部391の内部には、シャフト38が配置されている。シャフト38は、金属製(本実施形態では、支持部材39と同じステンレス製)の円柱状部材で形成された作動棒である。シャフト38は、駆動機構37から出力された駆動力を通路形成部材35に伝達する機能を果たす。本実施形態では、筒状部391の内径よりもシャフト38の外径が小さく形成されている。従って、筒状部391とシャフト38が摺動することはない。
シャフト38の通路形成部材35側の先端部は、通路形成部材35の挿入穴35aの底面に接触している。一方、シャフト38の通路形成部材35側の反対側の先端部は、図2、図3に示すように、駆動機構37に連結されている。シャフト38のうち、通路形成部材35の頂部側と駆動機構37側の先端部との間には、太径部38aが設けられている。
太径部38aの外周側に形成された円環状の溝には、シール部材としてのO−リングが配置されている。従って、太径部38aの外周面とアッパーボデー311の内周面との隙間から冷媒が漏れることはない。これにより、駆動機構37とシャフト38との連結部が配置される空間(後述する導入空間37b)は、通路形成部材35の頂部側の減圧用空間30bに連通することなく区画されている。
駆動機構37は、通路形成部材35を軸方向に変位させる駆動力を出力するものである。換言すると、駆動機構37は、通路形成部材35を軸方向に変位させることによって、ノズル通路13a等の通路断面積を変化させるものである。
より具体的には、駆動機構37は、図2、図3に示すように、アッパーボデー311の外側であって、シャフト38の軸方向の延長線上に配置されている。駆動機構37は、ダイヤフラム371、アッパーカバー372、ロワーカバー373等を有している。
アッパーカバー372は、ダイヤフラム371とともに、封入空間37aの一部を形成する封入空間形成部材である。アッパーカバー372は、金属(本実施形態では、ステンレス)で形成されたカップ状部材である。
封入空間37aは、温度変化に伴って圧力変化する感温媒体が封入された空間である。より詳細には、封入空間37aは、エジェクタ式冷凍サイクル10を循環する冷媒と同等の組成の感温媒体が予め定めた封入密度となるように封入された空間である。
従って、本実施形態の感温媒体としては、R134aを主成分とする媒体(例えば、R134aとヘリウムとの混合媒体)を採用することができる。さらに、感温媒体の封入密度は、後述するようにサイクルの通常作動時に通路形成部材35を適切に変位させることができるように設定されている。
ロワーカバー373は、ダイヤフラム371とともに、導入空間37bを形成する導入空間形成部材である。ロワーカバー373は、アッパーカバー372と同様の金属部材で形成されている。導入空間37bは、アッパーカバー372に形成された連通路311bを介して、冷媒吸引口31bから吸引された吸引冷媒を導入させる空間である。
アッパーカバー372およびロワーカバー373は、かしめ等により外周縁部同士が固定されている。さらに、ダイヤフラム371の外周側部は、アッパーカバー372とロワーカバー373との間に挟持される。これにより、ダイヤフラム371が、アッパーカバー372とロワーカバー373との間に形成される空間を封入空間37aと導入空間37bとに仕切っている。
ダイヤフラム371は、封入空間37aの内圧と吸引用通路13bを流通する吸引冷媒の圧力との圧力差に応じて変位する圧力応動部材である。従って、ダイヤフラム371は弾性に富み、かつ耐圧性および気密性に優れる材質で形成されていることが望ましい。そこで、本実施形態では、ダイヤフラム371として、ステンレス(SUS304)製の金属薄板を採用している。
ダイヤフラム371の導入空間37b側には、金属(本実施形態では、アルミニウム合金)で形成された円板状のプレート部材374が接触するように配置されている。さらに、プレート部材374には、シャフト38の先端部が連結されている。従って、本実施形態のシャフト38および通路形成部材35は、駆動機構37から受ける荷重とコイルバネ36aから受ける荷重との合計荷重が釣り合うように変位する。
より具体的には、蒸発器14出口側冷媒の温度(過熱度SH)が上昇すると、封入空間37aに封入された感温媒体の飽和圧力が上昇し、封入空間37a内の内圧から導入空間37b内の内圧を差し引いた圧力差が大きくなる。これにより、ダイヤフラム371が導入空間37b側へ変位して、シャフト38が駆動機構37から受ける荷重が増加する。従って、蒸発器14出口側冷媒の温度(過熱度SH)が上昇すると、通路形成部材35は、喉部30mにおける通路断面積を拡大させる方向に変位する。
一方、蒸発器14出口側冷媒の温度(過熱度SH)が低下すると、封入空間37aに封入された感温媒体の飽和圧力が低下し、封入空間37a内の内圧から導入空間37b内の内圧を差し引いた圧力差が小さくなる。これにより、ダイヤフラム371が封入空間37a側へ変位して、シャフト38が駆動機構37から受ける荷重が減少する。従って、蒸発器14出口側冷媒の温度(過熱度SH)が低下すると、通路形成部材35は、喉部30mにおける通路断面積を縮小させる方向に変位する。
つまり、本実施形態の駆動機構37は、機械的機構で構成されており、蒸発器14出口側冷媒の過熱度SHに応じて、ダイヤフラム371が通路形成部材35を変位させるそして、蒸発器14出口側冷媒の過熱度SHが予め定めた基準過熱度KSHに近づくように、喉部30mにおける通路断面積を調整している。
この基準過熱度KSHは、調整ネジ36bによってコイルバネ36aの荷重を調整することによって、変更することができる。
また、本実施形態では、駆動機構37の外周側に、駆動機構37を覆うカバー部材375を配置している。これにより封入空間37a内の感温媒体がエンジンルーム内の外気温の影響を受けてしまうことを抑制している。
次に、図2、図3に示すように、ロワーボデー312の冷媒流れ下流側には、混合冷媒流出口31gが形成されている。混合冷媒流出口31gは、ディフューザ通路13cから流出した気液混合状態の冷媒を気液分離ボデー313内に形成された気液分離空間31f側へ流出させる冷媒流出口である。混合冷媒流出口31gの通路断面積は、ディフューザ通路13cの最下流部の通路断面積よりも小さく形成されている。
気液分離ボデー313は、円筒状に形成されている。気液分離ボデー313の内部には、気液分離空間30fが形成されている。気液分離空間30fは、略円筒状の回転体形状の空間として形成されている。気液分離ボデー313および気液分離空間30fの中心軸は上下方向に延びている。このため、気液分離ボデー313と気液分離空間30fと中心軸は、中心軸CLに直交している。
さらに、気液分離ボデー313は、ロワーボデー312の混合冷媒流出口31gから気液分離空間30f内へ流入した冷媒が、気液分離空間30fの外周側の壁面に沿って流入するように配置されている。これにより、気液分離空間30fでは、冷媒が中心軸周りに旋回することで生じる遠心力の作用によって、冷媒の気液を分離している。
気液分離ボデー313の軸中心部には、気液分離空間30fに対して同軸上に配置されて、上下方向へ延びる円筒状のパイプ313aが配置されている。そして、気液分離ボデー313の底面側の筒状側面には、気液分離空間30fにて分離された液相冷媒を気液分離空間30fの外周側壁面に沿って流出させる液相冷媒流出口31cが形成されている。さらに、パイプ313aの下方側端部には、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒を流出させる気相冷媒流出口31dが形成されている。
気液分離空間30f内のパイプ313aの根元部(すなわち、気液分離空間30f内の最下方側の部位)には、気液分離空間30fとパイプ313a内に形成された気相冷媒通路とを連通させるオイル戻し穴313bが形成されている。オイル戻し穴313bは、液相冷媒に溶け込んだ冷凍機油を、液相冷媒とともに気相冷媒通路を介して圧縮機11内へ戻すための連通路である。
エジェクタ13の液相冷媒流出口31cには、図1に示すように、蒸発器14の冷媒入口側が接続されている。蒸発器14は、エジェクタ13にて減圧された低圧冷媒と送風ファン14aから車室内へ送風される送風空気とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。
送風ファン14aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。蒸発器14の冷媒出口側には、エジェクタ13の冷媒吸引口31bが接続されている。さらに、エジェクタ13の気相冷媒流出口31dには圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、図示しない制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この制御装置は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。そして、上述の各種電気式のアクチュエータ11、12d、14a等の作動を制御する。
また、制御装置には、内気温センサ、外気温センサ、日射センサ、蒸発器温度センサ、吐出圧力センサ等の複数の空調制御用のセンサ群が接続され、これらのセンサ群の検出値が入力される。
より具体的には、内気温センサは、車室内温度を検出する内気温検出部である。外気温センサは、外気温を検出する外気温検出部である。日射センサは、車室内の日射量を検出する日射量検出部である。蒸発器温度センサは、蒸発器14の吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度検出部である。吐出圧力センサは、放熱器12出口側冷媒の圧力を検出する出口側圧力検出部である。
さらに、制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種操作スイッチからの操作信号が制御装置へ入力される。操作パネルに設けられた各種操作スイッチとしては、車室内空調を行うことを要求する空調作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
なお、本実施形態の制御装置は、その出力側に接続された各種の制御対象機器の作動を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、制御装置のうち、各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の専用の制御部を構成している。
例えば、本実施形態では、圧縮機11の吐出容量制御弁の作動を制御することによって、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が吐出能力制御部を構成している。もちろん、吐出能力制御部を、制御装置に対して別体の制御装置で構成してもよい。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図5のモリエル線図を用いて説明する。まず、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)されると、制御装置が圧縮機11の吐出容量制御弁、冷却ファン12d、送風ファン14a等を作動させる。これにより、圧縮機11が冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。この際、制御装置は、エジェクタ式冷凍サイクル10の熱負荷の増加に伴って、圧縮機11の冷媒吐出能力を増加させる。
圧縮機11から吐出された高温高圧冷媒(図5のa点)は、放熱器12の凝縮部12aへ流入し、冷却ファン12dから送風された外気と熱交換し、放熱して凝縮する。凝縮部12aにて凝縮した冷媒は、レシーバ部12bにて気液分離される。レシーバ部12bにて気液分離された液相冷媒は、過冷却部12cにて冷却ファン12dから送風された外気と熱交換し、さらに放熱して過冷却液相冷媒となる(図5のa点→b点)。
放熱器12の過冷却部12cから流出した過冷却液相冷媒は、エジェクタ13の減圧用空間30bの内周面と通路形成部材35の外周面との間に形成されるノズル通路13aにて等エントロピ的に減圧されて噴射される(図5のb点→c点)。この際、ノズル通路13aの減圧用空間30bの喉部30mにおける通路断面積は、蒸発器14出口側冷媒(図5のh点)の過熱度が基準過熱度KSHに近づくように調整される。
さらに、ノズル通路13aから噴射された噴射冷媒の吸引作用によって、蒸発器14から流出した冷媒(図5のh点)が、冷媒吸引口31bおよび吸引用通路13bを介して吸引される。ノズル通路13aから噴射された噴射冷媒および吸引用通路13bを介して吸引された吸引冷媒は、ディフューザ通路13cへ流入して合流する(図5のc点→d点、h1点→d点)。
ここで、本実施形態の吸引用通路13bの最下流部は、冷媒流れ方向に向かって通路断面積が徐々に縮小する形状に形成されている。このため、吸引用通路13bを通過する吸引冷媒は、その圧力を低下させながら(図5のh点→h1点)、流速を増加させる。これにより、吸引冷媒と噴射冷媒との速度差を縮小し、ディフューザ通路13cにて吸引冷媒と噴射冷媒が混合する際のエネルギ損失(混合損失)を減少させている。
ディフューザ通路13cでは通路断面積の拡大により、冷媒の運動エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒が混合されながら混合冷媒の圧力が上昇する(図5のd点→e点)。ディフューザ通路13cから流出した冷媒は気液分離空間30fにて気液分離される(図5のe点→f点、e点→g点)。
気液分離空間30fにて分離された液相冷媒は、エジェクタ13から蒸発器14へ至る冷媒流路を流通する際に圧力損失を伴って蒸発器14へ流入する(図5のg点→g1点)。蒸発器14へ流入した冷媒は、送風ファン14aによって送風された送風空気から吸熱して蒸発する(図5のg1点→h点)。これにより、送風空気が冷却される。
一方、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒は気相冷媒流出口31dから流出して、圧縮機11へ吸入され再び圧縮される(図5のf点→a点)。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、以上の如く作動して、車室内へ送風される送風空気を冷却することができる。
この際、エジェクタ式冷凍サイクル10では、ディフューザ通路13cにて昇圧された冷媒を圧縮機11へ吸入させている。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10によれば、蒸発器における冷媒蒸発圧力と圧縮機吸入冷媒の圧力が略同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも、圧縮機11の消費動力を低減させて、サイクルの成績係数(COP)を向上させることができる。
また、本実施形態のエジェクタ13では、駆動機構37を備えているので、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて通路形成部材35を変位させて、ノズル通路13aの通路断面積(喉部30mにおける通路断面積)、およびディフューザ通路13cの通路断面積を調整することができる。
これにより、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて、内部に形成された冷媒通路(具体的には、ノズル通路13aおよびディフューザ通路13c)の通路断面積を変化させて、エジェクタ式冷凍サイクル10を循環する循環冷媒流量に応じて、エジェクタ13を適切に作動させることができる。
また、本実施形態のエジェクタ13では、弾性部材であるコイルバネ36aを有しているので、外部から伝達される振動や冷媒が減圧される際の圧力脈動に起因する通路形成部材35の振動を減衰させることができる。これにより、エジェクタ13全体としての防振性能を向上させることができる。
ところで、本実施形態のように、振動抑制部材としてのコイルバネ36aを有するエジェクタ13では、コイルバネ36aが、通路形成部材35に対して、中心軸CL方向の荷重を作用させるだけでなく、中心軸CL方向に垂直な荷重(すなわち、横力)も作用させてしまう。さらに、支持部材39の筒状部391の外周面と通路形成部材35の挿入穴35aの内周面との間には隙間が存在する。
このため、前述の如く、通路形成部材35の変位方向が、支持部材39の筒状部391の中心軸方向(すなわち、中心軸CL方向)に対して傾いてしまうことがある。
このような傾きが生じると、円環状に形成されるノズル通路13a等の冷媒通路の断面形状が周方向に不均一となってしまう。このため、駆動機構37が通路形成部材35を変位させた際のノズル通路13aの喉部30mにおける通路断面積が不安定となってしまう。その結果、ノズル通路13aを流通する冷媒流量が不安定となってしまう。
これに対して、本実施形態のエジェクタ13では、中心軸CLに垂直な方向から見たときに、喉部30mが摺動領域39aと重合する範囲内に配置されているので、回転中心CPと喉部30mとの距離を短縮化させることができる。
従って、駆動機構37が通路形成部材35を変位させる際に、減圧用空間30bの中心軸および支持部材39の筒状部391の中心軸に対して、通路形成部材35の変位方向が傾いてしまっても、ノズル通路13aの断面形状が周方向に不均一となってしまう度合を小さくすることができる。
その結果、本実施形態のエジェクタ13によれば、駆動機構37が出力した駆動力に応じて、ノズル通路13aの喉部30mの通路断面積を精度良く変化させることができる。さらに、ノズル通路13aにて冷媒の圧力エネルギを速度エネルギに変換する際のエネルギ変換効率の低下を抑制することもできる。
ここで、ノズル通路13aの喉部30mにおける通路断面積は、ノズル通路13aを流通する冷媒流量を決定付ける最小通路断面積となる。従って、ノズル通路13aの喉部30mにおける冷媒通路の断面形状が周方向に不均一になってしまう度合を縮小できることは、エジェクタ13を流通する冷媒流量を安定させるため有効である。
さらに、本実施形態のエジェクタ13では、中心軸CLに垂直な方向から見たときに、喉部30mと回転中心CPが重合するように配置されているので、ノズル通路13aの断面形状が周方向に不均一になってしまう度合を効果的に縮小させて、ノズル通路13aの喉部30mにおける通路断面積をより一層精度良く変更することができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図6に示すように、通路形成部材35、シャフト38および支持部材39の配置態様を変更した例を説明する。なお、図6は、第1実施形態で説明した図4に対応する図面であって、第1実施形態と同一もしくは均等の部分には同一の符号を付している。
具体的には、本実施形態のシャフト38は、通路形成部材35にインサート成形されていることによって、通路形成部材35の一部として一体化されている。この際、シャフト38の中心軸は、通路形成部材35の中心軸と同軸上に配置されるように一体化されている。そして、シャフト38が支持部材39に挿入されていることによって、シャフト38が支持部材39に摺動可能に配置されている。
このため、本実施形態では、支持部材39の筒状部391の内周面のうち、シャフト38の外周面と摺動し得る領域が摺動領域39aとなる。さらに、本実施形態では、筒状部391の内周面の内径が変化していることによって、支持部材39の通路形成部材35側に摺動領域39aが形成されている。
また、本実施形態では、通路形成部材35の挿入穴35aの内径よりも支持部材39の筒状部391の外径が小さく形成されている。従って、筒状部391の外周面と挿入穴35aの内周面が摺動することはない。その他のエジェクタ13の構成は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ13においても、中心軸CLに垂直な方向から見たときに、喉部30mが摺動領域39aと重合する範囲内に配置されるので、回転中心CPと喉部30mとの距離を短縮化させることができる。その結果、第1実施形態と同様に、駆動機構37が出力した駆動力に応じて、ノズル通路13aの喉部30mの通路断面積を精度良く変化させることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態において、支持部材39の摺動領域39aを形成する面、および摺動領域39aと摺動する面(通路形成部材の挿入穴35aの内周面、あるいはシャフト38の外周面)のいずれか一方に、他方に向かって突出して接触する複数の突起部を形成してもよい。
例えば、第1実施形態では、支持部材39の筒状部391の外周面に複数の突起部を形成して、この突起部を通路形成部材の挿入穴35aの内周面に接触させるようにしてもよい。これによれば、摺動部位における接触面積を減らして、摺動部における摩擦力を低減することができる。
(2)エジェクタ13を構成する各構成部材の材質、固定態様等は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、通路形成部材35として、樹脂製のものを採用した例を説明したが、通路形成部材35として、金属製のものを採用してもよい。
(3)エジェクタ式冷凍サイクル10を構成する各構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
例えば、上述の実施形態では、圧縮機11として、エンジン駆動式の可変容量型圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機11として、電磁クラッチの断続により圧縮機の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機を採用してもよい。さらに、固定容量型圧縮機構と電動モータとを備え、電力を供給されることによって作動する電動圧縮機を採用してもよい。電動圧縮機では、電動モータの回転数を調整することによって、冷媒吐出能力を制御することができる。
また、上述の実施形態では、放熱器12として、サブクール型の熱交換器を採用した例を説明したが、凝縮部12aのみからなる通常の放熱器を採用してもよい。さらに、通常の放熱器とともに、この放熱器にて放熱した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を蓄える受液器(レシーバ)を一体化させたレシーバ一体型の凝縮器を採用してもよい。
また、駆動機構37は、上述の実施形態で説明したものに限定されない。例えば、感温媒体として温度によって体積変化するサーモワックスを採用してもよい。駆動機構として、形状記憶合金性の弾性部材を有して構成されたものを採用してもよい。さらに、駆動機構として、電動モータやソレノイド等の電気的機構によって通路形成部材35を変位させるものを採用してもよい。
また、上述の実施形態では、冷媒としてR134aを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R1234yf、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用することができる。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。さらに、冷媒として二酸化炭素を採用して、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成してもよい。
(4)上述の実施形態では、本発明に係るエジェクタ式冷凍サイクル10を、車両用空調装置に適用した例を説明したが、エジェクタ式冷凍サイクル10の適用はこれに限定されない。例えば、据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用してもよい。
また、上述の実施形態では、本発明に係るエジェクタ13を備えるエジェクタ式冷凍サイクル10の放熱器12を冷媒と外気とを熱交換させる室外側熱交換器とし、蒸発器14を送風空気を冷却する利用側熱交換器としている。これに対して、蒸発器14を外気等の熱源から吸熱する室外側熱交換器として用い、放熱器12を空気あるいは水等の被加熱流体を加熱する利用側熱交換器として用いてもよい。
10 エジェクタ式冷凍サイクル(冷凍サイクル装置)
13 エジェクタ
30 ボデー
30b 減圧用空間
30m 喉部
35 通路形成部材
37 駆動機構
39 支持部材
39a 摺動領域
CP 回転中心

Claims (4)

  1. 蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置(10)に適用されるエジェクタであって、
    高圧冷媒を流入させる流入空間(30a)、前記流入空間から流出した冷媒を減圧させる回転体形状の減圧用空間(30b)、前記減圧用空間の冷媒流れ下流側に連通して冷媒吸引口(31b)から吸引した冷媒を流通させる吸引用通路(13b)、および前記減圧用空間から噴射された噴射冷媒と前記吸引用通路を介して吸引された吸引冷媒とを流入させる昇圧用空間(30e)が形成されたボデー(30)と、
    少なくとも一部が前記減圧用空間の内部、および前記昇圧用空間の内部に配置された通路形成部材(35)と、
    前記通路形成部材を変位させる駆動力を出力する駆動機構(37)と、
    前記通路形成部材を摺動可能に支持する筒状の支持部材(39)と、を備え、
    前記ボデーのうち前記減圧用空間を形成する部位の内周面と前記通路形成部材の外周面との間に形成される冷媒通路は、冷媒を減圧させて噴射するノズルとして機能するノズル通路(13a)であり、
    前記ボデーのうち前記昇圧用空間を形成する部位の内周面と前記通路形成部材の外周面との間に形成される冷媒通路は、前記噴射冷媒および前記吸引冷媒を混合させて昇圧させる昇圧部として機能するディフューザ通路(13c)であり、
    前記支持部材の中心軸は、前記減圧用空間の中心軸(CL)と同軸上に配置されており、
    前記減圧用空間の軸方向に垂直な方向から見たときに、前記ボデーに形成されて前記ノズル通路の通路断面積を最も縮小させる喉部(30m)は、前記支持部材のうち前記通路形成部材が摺動する摺動領域(39a)と重合する範囲内に配置されているエジェクタ。
  2. 前記支持部材の中心軸上の点であって、前記摺動領域の軸方向中央点を回転中心(CP)と定義し、
    前記減圧用空間の軸方向に垂直な方向から見たときに、前記喉部(30m)および前記回転中心(CP)が重合するように配置されている請求項1に記載のエジェクタ。
  3. 前記通路形成部材には、前記支持部材が挿入される挿入穴(35a)が形成されており、
    前記摺動領域では、前記支持部材の外周面と前記挿入穴の内周面が摺動するように配置されている請求項1または2に記載のエジェクタ。
  4. 前記通路形成部材は、前記駆動機構に連結される円柱状の作動棒(38)を有し、
    前記摺動領域では、前記支持部材の内周面と前記作動棒の外周面が摺動するように配置されている請求項1または2に記載のエジェクタ。
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