(第1実施形態)
図1〜図4を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態のエジェクタ13は、図1に示すように、冷媒減圧手段としてエジェクタを備える蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置、すなわちエジェクタ式冷凍サイクル10に適用されている。さらに、このエジェクタ式冷凍サイクル10は、車両用空調装置に適用されており、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却する機能を果たす。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の冷却対象流体は、送風空気である。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。この冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
エジェクタ式冷凍サイクル10の構成機器のうち、圧縮機11は、冷媒を吸入して高圧冷媒となるまで昇圧して吐出するものである。圧縮機11は、車両走行用の駆動力を出力するエンジン(内燃機関)とともにエンジンルーム内に配置されている。さらに、圧縮機11は、プーリ、ベルト等を介してエンジンから出力される回転駆動力によって駆動されるエンジン駆動式の圧縮機である。
より具体的には、本実施形態では、圧縮機11として、吐出容量を変化させることによって冷媒吐出能力を調整可能に構成された斜板式の可変容量型圧縮機を採用している。この圧縮機11では、吐出容量を変化させるための図示しない吐出容量制御弁を有している。吐出容量制御弁は、後述する制御装置から出力される制御電流によって、その作動が制御される。
圧縮機11の吐出口には、放熱器12の凝縮部12aの冷媒入口側が接続されている。放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と冷却ファン12dにより送風される車室外空気(外気)を熱交換させることによって、高圧冷媒を放熱させて冷却する放熱用熱交換器である。
より具体的には、放熱器12は、凝縮部12a、レシーバ部12b、および過冷却部12cを有する、いわゆるサブクール型の凝縮器として構成されている。
凝縮部12aは、圧縮機11から吐出された高圧気相冷媒と冷却ファン12dから送風された外気とを熱交換させ、高圧気相冷媒を放熱させて凝縮させる凝縮用の熱交換部である。レシーバ部12bは、凝縮部12aから流出した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を蓄える冷媒容器である。過冷却部12cは、レシーバ部12bから流出した液相冷媒と冷却ファン12dから送風される外気とを熱交換させ、液相冷媒を過冷却する過冷却用の熱交換部である。
冷却ファン12dは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風空気量)が制御される電動式送風機である。放熱器12の過冷却部12cの冷媒出口側には、エジェクタ13の冷媒流入口31aが接続されている。
エジェクタ13は、放熱器12から流出した過冷却状態の高圧冷媒を減圧させて下流側へ流出させる冷媒減圧手段としての機能を果たす。さらに、エジェクタ13は、高速度で噴射される噴射冷媒の吸引作用によって後述する蒸発器14から流出した冷媒を吸引(輸送)して循環させる冷媒循環手段(冷媒輸送手段)としての機能を果たす。
これに加えて、本実施形態のエジェクタ13は、減圧させた冷媒の気液を分離する気液分離手段としての機能も果たす。つまり、本実施形態のエジェクタ13は、気液分離部を一体化(モジュール化)させた気液分離機能付きエジェクタ(エジェクタモジュール)として構成されている。
エジェクタ13の具体的構成については、図2、図3を用いて説明する。なお、図2における上下の各矢印は、エジェクタ式冷凍サイクル10を車両用空調装置に搭載した状態における上下の各方向を示している。また、図3は、エジェクタ13の各構成部材、およびエジェクタ13の内部に形成された各冷媒通路等を説明するための模式的な一部拡大断面図であって、図2と同一の機能を果たす部分には同一の符号を付している。
本実施形態のエジェクタ13は、図2に示すように、複数の構成部材を組み合わせることによって構成されたボデー30を備えている。
より具体的には、ボデー30は、エジェクタ13の外殻を形成するハウジングボデー31を有している。ボデー30は、金属製(本実施形態では、アルミニウム合金製)の柱状部材で形成されている。さらに、ハウジングボデー31の内部には、略円柱状の空間が形成されている。そして、この空間の内部に、ノズル32、ディフューザボデー33、ロワーボデー34等が固定されている。なお、ハウジングボデー31は、樹脂にて形成されていてもよい。
ハウジングボデー31には、冷媒流入口31a、冷媒吸引口31b、液相冷媒流出口31c、気相冷媒流出口31dといった複数の冷媒流入出口が形成されている。
冷媒流入口31aは、放熱器12から流出した冷媒を流入させる冷媒流入口である。冷媒吸引口31bは、蒸発器14から流出した冷媒を吸引する冷媒流入口である。液相冷媒流出口31cは、ボデー30の内部に形成された気液分離空間30fにて分離された液相冷媒を蒸発器14の冷媒入口側へ流出させる冷媒流出口である。気相冷媒流出口31dは、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒を圧縮機11の吸入口側へ流出させる冷媒流出口である。
ノズル32は、図2に示すように、ハウジングボデー31の内部の上方側に配置されている。ノズル32は、金属製(本実施形態では、ステンレス製)の円環状部材で形成されている。
より具体的には、ノズル32は、旋回空間形成部32aおよびノズル形成部32bを有している。旋回空間形成部32aは、その外径がハウジングボデー31内に形成された略円柱状の空間の内径と同程度の寸法に形成された円環状部である。ノズル形成部32bは、旋回空間形成部32aよりも小径に形成された円筒状部である。さらに、旋回空間形成部32aおよびノズル形成部32bは互いに同軸上に配置されている。
ノズル32は、旋回空間形成部32aの外周側がハウジングボデー31の内部に圧入されることによって、ハウジングボデー31に固定されている。旋回空間形成部32aとハウジングボデー31との間には、図示しないシール部材としてのO−リングが配置されており、これらの部材の隙間から冷媒が漏れることはない。
旋回空間形成部32aの内部には、冷媒流入口31aから流入した冷媒を旋回させる旋回空間30aが形成されている。旋回空間形成部32aの上方側には、円板状の金属プレート32cが配置されており、この金属プレート32cによって、旋回空間30aの上方側の開口部が閉塞されている。
旋回空間30aは、略円柱状に形成されており、旋回空間30aの中心軸は、後述する通路形成部材35の中心軸CLと同軸上に配置されている。もちろん、旋回空間30aは、円錐台と円柱とを結合させた回転体形状等に形成されていてもよい。なお、回転体形状とは、平面図形を同一平面上の1つの直線(中心軸)周りに回転させた際に形成される立体形状である。
冷媒流入口31aと旋回空間30aとを接続する冷媒流入通路31eは、旋回空間30aの中心軸方向から見たときに旋回空間30aへ流入する冷媒を、旋回空間30aの内壁面に沿って流入させるように形成されている。このため、冷媒流入通路31eから旋回空間30aへ流入した冷媒は、旋回空間30aの中心軸周りに旋回する。
ここで、旋回空間30a内で旋回する冷媒には遠心力が作用するので、旋回空間30a内では中心軸側の冷媒圧力が外周側の冷媒圧力よりも低下する。そこで、本実施形態では、エジェクタ式冷凍サイクル10の通常運転時に、旋回空間30a内の中心軸側の冷媒圧力を、飽和液相冷媒となる圧力、あるいは、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生じる)圧力となるまで低下させるようにしている。
このような旋回空間30a内の中心軸側の冷媒圧力の調整は、旋回空間30a内で旋回する冷媒の旋回流速を調整することによって実現することができる。さらに、旋回流速の調整は、例えば、冷媒流入通路31eの通路断面積と旋回空間30aの軸方向垂直断面積との面積比を調整すること等によって行うことができる。なお、本実施形態の旋回流速とは、旋回空間30aの最外周部近傍における冷媒の旋回方向の流速を意味している。
ノズル形成部32bの内部には、旋回空間30aから流出した冷媒を減圧させて下流側へ流出させる減圧用空間30bが形成されている。減圧用空間30bは、2つの円錐台形状の空間の頂部側同士を結合させた回転体形状に形成されている。この減圧用空間30bの中心軸も、通路形成部材35の中心軸CLと同軸上に配置されている。
減圧用空間30bの内部には、円錐状に形成された通路形成部材35の頂部側が配置されている。通路形成部材35は、ボデー30の内部に形成された冷媒通路内に配置された弁体部である。さらに、通路形成部材35は、中心軸CL方向に変位することによって、冷媒通路の通路断面積を変化させる機能を果たすものである。
より具体的には、通路形成部材35は、冷媒に対して耐性を有する樹脂(本実施形態では、ナイロン6またはナイロン66)にて形成されている。通路形成部材35の中心軸CLは、減圧用空間30bの中心軸と同軸上に配置されている。このため、通路形成部材35は、減圧用空間30bから離れるに伴って(すなわち、冷媒流れ下流側へ向かって)、外径が拡大する円錐形状に形成されている。
通路形成部材35の内部には、底面側から略円錐台状の空間が形成されている。つまり、通路形成部材35は、杯状に形成されている。さらに、通路形成部材35の内部空間には、シャフト35aが配置されている。シャフト35aは、金属製(本実施形態では、ステンレス製)の円柱状部材で形成されている。シャフト35aの中心軸は、通路形成部材35の中心軸CLと同軸上に配置されている。
このシャフト35aの一端側は、通路形成部材35にインサート成形されている。これにより、通路形成部材35とシャフト35aが一体化されている。一方、シャフト35aの中央部には、圧入等の手段によってディスク35bが連結されている。ディスク35bは、金属製(本実施形態では、アルミニウム合金製)の円板状部材で形成されている。
ディスク35bは、後述する駆動機構37の作動棒374の下方側の端部と接触している。これにより、ディスク35bには、駆動機構37から出力された駆動力が伝達される。そして、ディスク35bが、駆動機構37から出力された駆動力を受けて変位すると、シャフト35aおよび通路形成部材35も、ディスク35bと一体となって変位する。
通路形成部材35の頂部側(すなわち、鉛直方向上方側)の外周面とノズル32の減圧用空間30bを形成する部位の内周面との間には、旋回空間30aから流出した冷媒が流通する冷媒通路が形成されている。この冷媒通路としては、図3に示すように、先細部131および末広部132が形成されている。
先細部131は、先細部131および末広部132のうち通路断面積が最も縮小した最小通路面積部30mよりも冷媒流れ上流側に形成されて、最小通路面積部30mに至るまでの通路断面積が徐々に縮小する冷媒通路である。末広部132は、最小通路面積部30mから冷媒流れ下流側に形成されて、通路断面積が徐々に拡大する冷媒通路である。
この末広部132では、径方向から見たときに減圧用空間30bと通路形成部材35が重合(オーバーラップ)しているので、冷媒通路の軸方向垂直断面の形状が円環状(すなわち、円形状から同軸上に配置された小径の円形状を除いたドーナツ形状)となる。さらに、末広部132における通路断面積は、冷媒流れ下流側に向かって徐々に拡大している。
本実施形態では、このような通路形状によって減圧用空間30bの内周面と通路形成部材35の頂部側の外周面との間に形成される冷媒通路をラバールノズルとして機能するノズル通路13aとしている。そして、このノズル通路13aにて、冷媒を減圧させるとともに、冷媒の流速を超音速となるように増速させて噴射している。
また、図2、図3に示すように、ノズル32のノズル形成部32bの外周側、かつ、旋回空間形成部32aの底面側には、通路形成部材35を変位させる駆動機構37が配置されている。この駆動機構37の詳細構成については後述する。
次に、ディフューザボデー33は、略円筒状の金属部材で形成されている。ディフューザボデー33は、図2に示すように、ハウジングボデー31の内部であって、ノズル32の下方側に配置されている。ディフューザボデー33の中心部には、表裏(上下)を貫通する貫通穴33aが形成されている。この貫通穴33aも回転体形状に形成されており、その中心軸が通路形成部材35の中心軸CLと同軸上に配置されている。
さらに、ディフューザボデー33は、その外周側がハウジングボデー31の内部に圧入されることによって、ハウジングボデー31に固定されている。なお、ディフューザボデー33とハウジングボデー31との間には、図示しないシール部材としてのO−リングが配置されており、これらの部材の隙間から冷媒が漏れることはない。
ディフューザボデー33の中心側とノズル32のノズル形成部32bの外周側との間には、冷媒吸引口31bから吸引された冷媒を減圧用空間30b(ノズル通路13a)の冷媒流れ下流側へ導く吸引用通路13bが形成されている。本実施形態では、ノズル形成部32bの下方側先端部が、ディフューザボデー33の貫通穴33aの内部まで延びているため、吸引用通路13bは、中心軸周りに環状に形成されている。
また、ディフューザボデー33の貫通穴33aのうち、吸引用通路13bの冷媒流れ下流側には、冷媒流れ方向に向かって徐々に広がる略円錐台形状に形成された昇圧用空間30eが形成されている。昇圧用空間30eは、上述したノズル通路13aから噴射された噴射冷媒と吸引用通路13bから吸引された吸引冷媒とを流入させる空間である。
昇圧用空間30eの内部には、通路形成部材35の下方側が配置されている。ディフューザボデー33の昇圧用空間30eを形成する部位の内周面と通路形成部材35の下方側の外周面との間には、ノズル通路13aから噴射された噴射冷媒と吸引用通路13bを介して吸引された吸引冷媒とを流入させる冷媒通路が形成されている。
この冷媒通路は、冷媒流れ下流側に向かって通路断面積を徐々に拡大させる形状に形成されている。これにより、この冷媒通路では、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の速度エネルギを圧力エネルギに変換することができる。
そこで、本実施形態では、図3に示すように、昇圧用空間30eを形成するディフューザボデー33の内周面と通路形成部材35の下方側の外周面との間に形成される冷媒通路を、噴射冷媒および吸引冷媒を混合して昇圧させるディフューザ(昇圧部)として機能するディフューザ通路13cとしている。このディフューザ通路13cの中心軸に垂直な断面形状も円環状に形成されている。
さらに、ディフューザボデー33の底面側であって、かつ、通路形成部材35の底面側には、第1支持プレート331および第2支持プレート332が配置されている。第1支持プレート331および第2支持プレート332は、いずれも金属製(本実施形態では、アルミニウム合金製)の円板状部材で形成されている。
第1支持プレート331は、通路形成部材35の底面とディスク35bの上面との間に配置されている。第1支持プレート331は、外周側に配置された複数の第1柱部331aによってディフューザボデー33の底面に固定されている。従って、ディフューザ通路13cから流出した冷媒は、各第1柱部331aの間に形成される通路を介して、後述する気液分離空間30f側へ流入する。
第1支持プレート331の上面と通路形成部材35の内側面との間には、第1コイルバネ333が配置されている。第1コイルバネ333は、通路形成部材35に対して、中心軸CL方向上方側(ノズル通路13aの最小通路面積部30mの通路断面積を縮小させる側)に付勢する荷重をかける第1弾性部材である。
第2支持プレート332は、第1支持プレート331よりも外径の小さい円板状部材で形成されている。第2支持プレート332は、ディスク35bの下面側に配置されている。第2支持プレート332は、外周側に配置された複数の第2柱部332aによって第1支持プレート331の底面に固定されている。第2柱部332aは、ディスク35bに形成された貫通穴を貫通している。
つまり、ディスク35bは、中心軸CLに垂直な方向から見たときに、第1支持プレート331の下面と第2支持プレート332の上面との間で、中心軸CL方向に変位可能に配置されている。
第2支持プレート332とシャフト35aの他端部に配置されたバネ受け部35cとの間には、第2コイルバネ334が配置されている。第2コイルバネ334は、通路形成部材35に対して、中心軸CL方向下方側(ノズル通路13aの最小通路面積部30mの通路断面積を拡大させる側)に付勢する荷重をかける第2弾性部材である。バネ受け部35cは、シャフト35aの他端側の端部に形成されたネジ部に螺合されている。
従って、通路形成部材35、シャフト35a、およびディスク35bは、第1コイルバネ333および第2コイルバネ334の合計荷重を受けている。さらに、この合計荷重は、バネ受け部35cの位置を変化させることによって調整することができる。
次に、駆動機構37について説明する。駆動機構37は、通路形成部材35を変位させることによって、ノズル通路13aの最小通路面積部30m等の冷媒通路断面積を変化させるものである。
駆動機構37は、図3に示すように、ダイヤフラム371、アッパープレート372、ロワープレート373、作動棒374、プレート375、感温筒376等を有している。ダイヤフラム371、アッパープレート372、ロワープレート373は、中心軸CL方向から見たときに、いずれも略円環状に形成されている。
アッパープレート372は、ダイヤフラム371とともに、封入空間37aの一部を形成する封入空間形成部である。アッパープレート372は、金属(本実施形態ではアルミニウム合金)で形成された平板円環状部材である。アッパープレート372のダイヤフラム371側の面には、円環状の凹み部が形成されている。そして、この凹み部の内部に封入空間37aの一部が形成されている。
封入空間37aは、温度変化に伴って圧力変化する感温媒体が封入された空間である。より詳細には、封入空間37aは、エジェクタ式冷凍サイクル10を循環する冷媒と同等の組成の感温媒体が予め定めた封入密度となるように封入された空間である。
従って、本実施形態の感温媒体としては、R134aを主成分とする媒体(例えば、R134aとヘリウムとの混合媒体)を採用することができる。さらに、感温媒体の封入密度は、後述するようにサイクルの通常作動時に通路形成部材35を適切に変位させることができるように設定されている。
ロワープレート373は、ダイヤフラム371とともに、導入空間37bを形成する導入空間形成部である。ロワープレート373は、アッパープレート372と同様の金属部材で形成されている。導入空間37bは、吸引冷媒(具体的には、後述する蒸発器14から流出した冷媒)を導入させる空間である。導入空間37bは、中心軸CL周りに円環状に形成されている。
ロワープレート373は、アッパープレート372の凹み部内に、圧入あるいはかしめ等の手段によって固定されている。この際、ダイヤフラム371の外周側縁部および内周側縁部が、アッパープレート372とロワープレート373との間に挟み込まれる。これにより、ダイヤフラム371が、凹み部内に保持固定されるとともに、凹み部内の空間を封入空間37aと導入空間37bとに仕切る。
ダイヤフラム371は、封入空間37aの内圧と吸引用通路13bを流通する吸引冷媒の圧力との圧力差に応じて変位する圧力応動部材である。従って、ダイヤフラム371は弾性に富み、かつ耐圧性および気密性に優れる材質で形成されていることが望ましい。
このようなダイヤフラム371としては、例えば、基布(ポリエステル)入りのEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)やHNBR(水素添加ニトリルゴム)等のゴム製の基材で形成されたものを採用することができる。
さらに、アッパープレート372は、凹み部内に、ダイヤフラム371およびロワープレート373が固定された状態で、ノズル32の旋回空間形成部32aの底面に接触するように、圧入、かしめ、あるいはネジ止め等の手段によって取り付けられている。
感温筒376は、金属(本実施形態ではアルミニウム合金)で形成された有底円筒状部材あるいはタンク状部材である。感温筒376の底面側はディフューザボデー33の上面側に固定されている。さらに、感温筒376の少なくとも一部は、吸引用通路13b内に配置されている。換言すると、感温筒376の少なくとも一部は、吸引用通路13bを横切るように配置されている。
さらに、感温筒376の内部空間は、アッパープレート372とダイヤフラム371によって形成された封入空間37aに連通している。従って、感温筒376の内部に形成される空間は、封入空間37aの一部である。さらに、感温筒376は、封入空間形成部である。
ここで、前述の如く、封入空間37aのうち、アッパープレート372とダイヤフラム371によって形成された空間では、感温媒体の圧力をダイヤフラム371に作用させることができる。従って、アッパープレート372とダイヤフラム371によって形成された空間は圧力応答空間371aである。また、アッパープレート372は応答空間形成部である。
一方、封入空間37aのうち、感温筒376の内部空間では、感温筒376の少なくとも一部が吸引用通路13b内に配置されているので、吸引冷媒の有する熱を感温媒体に伝達させることができる。従って、感温筒376の内部空間は感温空間372aである。また、感温筒376は感温空間形成部である。
さらに、アッパープレート372とダイヤフラム371によって形成された空間(すなわち、圧力応答空間371a)と、感温筒376の内部空間(すなわち、感温空間372a)は、キャピラリチューブ377を介して連通している。キャピラリチューブ377は、冷媒が感温空間372aと圧力応答空間371aとの間を流通する際の流通抵抗を生じさせる絞り部を構成している。
また、本実施形態では、応答空間形成部であるアッパープレート372が、ノズル32に接触するように取り付けられている。さらに、ノズル32には、放熱器12から流出した高圧冷媒が流通する冷媒流入通路31eが形成されている。このため、圧力応答空間371aは、その内部の感温媒体に、吸引冷媒の有する熱よりも高圧冷媒の有する熱が伝達され易い位置に配置されている。
一方、感温空間形成部である感温筒376は、その底面がディフューザボデー33の上面側に固定され、少なくとも一部が吸引用通路13b内に配置されている。このため、感温空間372aは、その内部の感温媒体に、高圧冷媒の有する熱よりも吸引冷媒の有する熱が伝達され易い位置に配置されている。
そのため、本実施形態では、ボデー30のうち感温空間372aの配置される部位の最高温度が、ボデー30のうち圧力応答空間371aが配置される部位の最低温度よりも、低くなっている。
続いて、ダイヤフラム371の下方側には、図3に示すように、ダイヤフラム371の変位を通路形成部材35へ伝達する伝達部材としてのプレート375および複数の作動棒374が配置されている。プレート375は、平板円環状の金属部材で形成されている。プレート375は、ダイヤフラム371の下方側の面の全周に亘って接触するように配置されている。
複数の作動棒374は、プレート375の底面に接触するオフセット部とディスク35bの上面に接触する軸部とを有する金属部材である。オフセット部は、軸部よりも中心軸CL側に形成されている。軸部は、中心軸CL方向に延びる円柱状に形成されており、ロワープレート373およびディフューザボデー33に形成された貫通穴に挿入されている。この貫通穴と軸部との隙間には、シール部材としてのO−リングが配置されており、これらの部材の隙間から冷媒が漏れることはない。
なお、図3では、図示の明確化のため、作動棒374のオフセット部を省略して、作動棒374を円柱状(棒状)に示している。また、複数の作動棒374は、ダイヤフラム371の変位を通路形成部材35へ適切に伝達するために、中心軸CL周りに等角度間隔で配置されていることが望ましい。具体的には、3本の作動棒374を採用して、中心軸CL周りに120°間隔で配置すればよい。
また、前述の如く、通路形成部材35は、シャフト35aおよびディスク35bとともに、第1コイルバネ333および第2コイルバネ334の合計荷重を受けている。従って、通路形成部材35は、作動棒374から受ける荷重と第1コイルバネ333および第2コイルバネ334の合計荷重が釣り合うように変位する。
より具体的には、蒸発器14出口側冷媒の温度(過熱度SH)が上昇すると、封入空間37aに封入された感温媒体の飽和圧力が上昇し、封入空間37a内の内圧から導入空間37b内の内圧を差し引いた圧力差が大きくなる。これにより、ダイヤフラム371が吸引空間30c側へ変位して、通路形成部材35が作動棒374から受ける荷重が増加する。
従って、蒸発器14出口側冷媒の温度(過熱度SH)が上昇すると、通路形成部材35は、最小通路面積部30mにおける通路断面積を拡大させる方向(図2では、下方側)に変位する。
一方、蒸発器14出口側冷媒の温度(過熱度SH)が低下すると、封入空間37aに封入された感温媒体の飽和圧力が低下し、封入空間37a内の内圧から導入空間37b内の内圧を差し引いた圧力差が小さくなる。これにより、ダイヤフラム371が封入空間37a側へ変位して、通路形成部材35が作動棒374から受ける荷重が減少する。
従って、蒸発器14出口側冷媒の温度(過熱度SH)が低下すると、通路形成部材35は、最小通路面積部30mにおける通路断面積を縮小させる方向(図2では、上方側)に変位する。
つまり、本実施形態の駆動機構37は、機械的機構で構成されており、蒸発器14出口側冷媒の過熱度SHに応じて、ダイヤフラム371が通路形成部材35を変位させる。そして、蒸発器14出口側冷媒の過熱度SHが予め定めた基準過熱度KSHに近づくように、最小通路面積部30mにおける通路断面積を調整している。
なお、基準過熱度KSHは、バネ受け部35cの取付位置を調整して第1コイルバネ333および第2コイルバネ334の合計荷重を調整することによって、変更することができる。
次に、図2に示すように、ディフューザボデー33の下方側には、ロワーボデー34が配置されている。ロワーボデー34は、円筒状の金属部材で形成されている。ロワーボデー34は、ボデー30の内部に、ディフューザ通路13cから流出した冷媒の気液を分離する気液分離空間30fを形成するものである。
ロワーボデー34は、ハウジングボデー31の下方側から内部に圧入されることによって、ハウジングボデー31に固定されている。ロワーボデー34の外周側とハウジングボデー31の内周側との間には、図示しないシール部材としてのO−リングが配置されており、これらの部材の隙間から冷媒が漏れることはない。
気液分離空間30fは、略円筒状の回転体形状の空間として形成されている。気液分離空間30fの中心軸は、通路形成部材35の中心軸CLと同軸上に配置されている。気液分離空間30fでは、ディフューザ通路13cから流出した冷媒が中心軸周りに旋回することで生じる遠心力の作用によって冷媒の気液を分離している。
気液分離空間30fの内容積は、サイクルに負荷変動が生じてサイクルを循環する冷媒循環流量が変動しても、実質的に余剰冷媒を溜めることができない程度の容積になっている。ロワーボデー34の軸中心部には、気液分離空間30fに対して同軸上に配置されて、上方側へ向かって延びる円筒状のパイプ34aが設けられている。
このため、気液分離空間30fにて分離された液相冷媒は、パイプ34aの外周側に一時的に滞留して、液相冷媒流出口31cから流出する。また、パイプ34aの内部には、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒をハウジングボデー31の気相冷媒流出口31dへ導く気相冷媒流出通路31gが形成されている。
次に、エジェクタ13の液相冷媒流出口31cには、図1に示すように、蒸発器14の冷媒入口側が接続されている。蒸発器14は、エジェクタ13にて減圧された低圧冷媒と送風ファン14aから車室内へ送風される送風空気とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。
送風ファン14aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。蒸発器14の出口側には、エジェクタ13の冷媒吸引口31bが接続されている。さらに、エジェクタ13の気相冷媒流出口31dには圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、図示しない制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この制御装置は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。そして、上述の各種電気式のアクチュエータ11、12d、14a等の作動を制御する。
また、制御装置には、内気温センサ、外気温センサ、日射センサ、蒸発器温度センサ、吐出圧力センサ等の複数の空調制御用のセンサ群が接続され、これらのセンサ群の検出値が入力される。
より具体的には、内気温センサは、車室内温度を検出する内気温検出手段である。外気温センサは、外気温を検出する外気温検出手段である。日射センサは、車室内の日射量を検出する日射量検出手段である。蒸発器温度センサは、蒸発器14の吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度検出手段である。吐出圧力センサは、放熱器12出口側冷媒の圧力を検出する出口側圧力検出手段である。
さらに、制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種操作スイッチからの操作信号が制御装置へ入力される。操作パネルに設けられた各種操作スイッチとしては、車室内空調を行うことを要求する空調作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
なお、本実施形態の制御装置は、その出力側に接続された各種の制御対象機器の作動を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、制御装置のうち、各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の制御手段を構成している。
例えば、本実施形態では、圧縮機11の吐出容量制御弁の作動を制御することによって、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が吐出能力制御手段を構成している。もちろん、吐出能力制御手段を制御装置に対して、別体の制御装置で構成してもよい。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図4のモリエル線図を用いて説明する。まず、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)されると、制御装置が圧縮機11の電動モータ、冷却ファン12d、送風ファン14a等を作動させる。これにより、圧縮機11が冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。
圧縮機11から吐出された高温高圧冷媒(図4のa点)は、放熱器12の凝縮部12aへ流入し、冷却ファン12dから送風された外気と熱交換し、放熱して凝縮する。凝縮部12aにて凝縮した冷媒は、レシーバ部12bにて気液分離される。レシーバ部12bにて気液分離された液相冷媒は、過冷却部12cにて冷却ファン12dから送風された外気と熱交換し、さらに放熱して過冷却液相冷媒となる(図4のa点→b点)。
放熱器12の過冷却部12cから流出した過冷却液相冷媒は、エジェクタ13の減圧用空間30bの内周面と通路形成部材35の外周面との間に形成されるノズル通路13aにて等エントロピ的に減圧されて噴射される(図4のb点→c点)。この際、減圧用空間30bの最小通路面積部30mにおける通路断面積は、蒸発器14出口側冷媒(図4のh点)の過熱度が基準過熱度KSHに近づくように調整される。
さらに、ノズル通路13aから噴射された噴射冷媒の吸引作用によって、蒸発器14から流出した冷媒(図4のh点)が、冷媒吸引口31bおよび吸引用通路13bを介して吸引される。ノズル通路13aから噴射された噴射冷媒および吸引用通路13bを介して吸引された吸引冷媒は、ディフューザ通路13cへ流入して合流する(図4のc点→d点、h1点→d点)。
ここで、本実施形態の吸引用通路13bの最下流部は、冷媒流れ方向に向かって通路断面積が徐々に縮小する形状に形成されている。このため、吸引用通路13bを通過する吸引冷媒は、その圧力を低下させながら(図4のh点→h1点)、流速を増加させる。これにより、吸引冷媒と噴射冷媒との速度差を縮小し、ディフューザ通路13cにて吸引冷媒と噴射冷媒が混合する際のエネルギ損失(混合損失)を減少させている。
ディフューザ通路13cでは冷媒通路断面積の拡大により、冷媒の運動エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒が混合されながら混合冷媒の圧力が上昇する(図4のd点→e点)。ディフューザ通路13cから流出した冷媒は気液分離空間30fにて気液分離される(図4のe点→f点、e点→g点)。
気液分離空間30fにて分離された液相冷媒は、エジェクタ13から蒸発器14へ至る冷媒流路を流通する際に圧力損失を伴って蒸発器14へ流入する(図4のg点→g1点)。蒸発器14へ流入した冷媒は、送風ファン14aによって送風された送風空気から吸熱して蒸発する(図4のg1点→h点)。これにより、送風空気が冷却される。
一方、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒は気相冷媒流出口31dから流出して、圧縮機11へ吸入され再び圧縮される(図4のf点→a点)。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、以上の如く作動して、車室内へ送風される送風空気を冷却することができる。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、ディフューザ通路13cにて昇圧された冷媒を圧縮機11へ吸入させている。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10によれば、蒸発器における冷媒蒸発圧力と圧縮機吸入冷媒の圧力が略同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも、圧縮機11の消費動力を低減させて、サイクルの成績係数(COP)を向上させることができる。
また、本実施形態のエジェクタ13によれば、旋回空間30aにて冷媒を旋回させることで、旋回空間30a内の旋回中心側の冷媒圧力を、飽和液相冷媒となる圧力、あるいは、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生じる)圧力まで低下させることができる。これにより、旋回中心軸の外周側よりも内周側に気相冷媒が多く存在するようにして、旋回空間30a内の旋回中心線近傍はガス単相、その周りは液単相の二相分離状態とすることができる。
このように二相分離状態となった冷媒がノズル通路13aへ流入することで、ノズル通路13aの先細部131では、円環状の冷媒通路の外周側壁面から冷媒が剥離する際に生じる壁面沸騰および円環状の冷媒通路の中心軸側の冷媒のキャビテーションによって生じた沸騰核による界面沸騰によって冷媒の沸騰が促進される。これにより、ノズル通路13aの最小通路面積部30mへ流入する冷媒が、気相と液相が均質に混合した気液混合状態となる。
そして、最小通路面積部30mの近傍で気液混合状態の冷媒の流れに閉塞(チョーキング)が生じ、このチョーキングによって音速に到達した気液混合状態の冷媒が末広部132にて加速されて噴射される。このように、壁面沸騰および界面沸騰の双方による沸騰促進によって、気液混合状態の冷媒を音速となるまで効率よく加速できることで、ノズル通路13aにおけるエネルギ変換効率を向上させることができる。
また、本実施形態のエジェクタ13では、駆動機構37を備えているので、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて通路形成部材35を変位させて、ノズル通路13aの通路断面積(最小通路面積部30mにおける通路断面積)、およびディフューザ通路13cの通路断面積を調整することができる。
これにより、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて、内部に形成された冷媒通路(具体的には、ノズル通路13a、およびディフューザ通路13c)の通路断面積を精度良く変化させて、エジェクタ13を適切に作動させることができる。
より詳細には、本実施形態のエジェクタ13では、感温筒376の少なくとも一部を吸引用通路13b内に配置することによって、感温空間372aを、その内部の感温媒体に(高圧冷媒の有する熱よりも)吸引冷媒の有する熱が伝達されやすい位置に配置している。一方、駆動機構37のアッパープレート372をノズル32に接触するように配置することによって、圧力応答空間371aを、その内部の感温媒体に(吸引冷媒の有する熱よりも)高圧冷媒の有する熱が伝達されやすい位置に配置している。
これにより、感温空間372aの配置される部位の最高温度が、圧力応答空間371aの配置される部位の最低温度よりも低くなるようにしている。従って、圧力応答空間371a内の感温媒体の温度帯を、感温空間372a内の感温媒体の温度帯よりも高くすることができる。そして、圧力応答空間371a内の感温媒体を気相単相とし、感温空間372a内の感温媒体を気液二相とすることができる。
さらに、気相単相の流体(感温媒体)の温度変化に対する圧力変化度合は、気液二相の流体(感温媒体)の温度変化に対する圧力変化度合に対して極めて小さい。従って、封入空間37a全体の感温媒体の圧力を、感温空間372a内の感温媒体の圧力と同様に変化させることができる。つまり、封入空間37a全体の感温媒体の圧力を、吸引冷媒の温度に応じて速やかに、かつ、精度良く変化させることができる。
その結果、本実施形態のエジェクタ13では、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて、内部に形成された冷媒通路の通路断面積を精度良く変化させて、エジェクタ13を適切に作動させることができる。
ところで、本実施形態のエジェクタ13では、サイクルの起動時のような過渡作動時であっても、吸引冷媒の温度変化に応じて冷媒通路の通路断面積が瞬時に変化してしまう。従って、過渡作動時に、例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力の増加度合に対して、ノズル通路13aの通路断面積等の増加度合が不必要に大きくなってしまう。
このように、ノズル通路13aの通路断面積等の増加度合が不必要に大きくなってしまうと、エジェクタ式冷凍サイクル10の過渡作動時に、サイクルを循環する冷媒の循環冷媒流量にハンチング現象が生じ、サイクルの作動が不安定になってしまうおそれがある。
これに対して、本実施形態のエジェクタ13によれば、感温空間372aと圧力応答空間371aと感温空間372aとを連通させる連通路をキャピラリチューブ377で構成している。
このため、吸引冷媒の温度に応じて感温空間372a内の圧力が速やかに変化しても、感温空間372a内の圧力変化よりも、圧力応答空間371a内の圧力変化を遅らせることができる。従って、感温空間372a内の圧力変化に対して、通路形成部材35の変位を遅らせることができる。
その結果、過渡作動時等に、ノズル通路13aの通路断面積の増加度合が不必要に大きくなってしまうことを抑制することができる。さらに、絞り部であるキャピラリチューブ377の仕様を変更することで、吸引冷媒の温度変化に対して冷媒通路の通路断面積を変化させる際の応答性を調整することもできる。
すなわち、本実施形態のエジェクタ13によれば、過渡作動時であっても、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて、内部に形成された冷媒通路(具体的には、ノズル通路13a、およびディフューザ通路13c)の通路断面積を適切に変更させることができる。
また、本実施形態の駆動機構37では、感温空間372aが配置される部位は、圧力応答空間371aが配置される部位よりも低くなっている。
従って、圧力応答空間371a内の感温媒体が凝縮してしまっても、圧力応答空間371aにて凝縮した冷媒を重力の作用によって感温空間372a側へ流入させやすい。このため、より一層、圧力応答空間371a内の感温媒体を気相単相とし、感温空間372a内の感温媒体を気液二相としやすい。
また、本実施形態の駆動機構37では、ノズル通路13aの通路断面積を縮小させる側に付勢する荷重をかける第1コイルバネ333、およびノズル通路13aの通路断面積を拡大させる側に付勢する荷重をかける第2コイルバネ334を有している。
これによれば、通路形成部材35に荷重をかける弾性部材の合計バネ定数が第1コイルバネ333のバネ定数と第2コイルバネ334のバネ定数との合算値となる。従って、第1コイルバネ333のバネ定数を増大させることなく、通路形成部材35を含む振動系の固有振動数を高い値に設定することができる。その結果、通路形成部材35を含む振動系が車両振動に共振してしまうことを抑制することができる。
さらに、駆動機構37がノズル通路13aの通路断面積を拡大させる際に必要な駆動力は、第1コイルバネ333による荷重と第2コイルバネによる荷重との差分となる。従って、通路形成部材35を含む振動系の固有振動数を高い値に設定しても、駆動機構37がノズル通路13aの通路断面積を拡大させる際に必要な駆動力は増大しない。
このため、駆動機構37の駆動力を増大させるために、封入空間37aの内の感温媒体の封入量を増量させる必要もない。その結果、吸引冷媒の温度に応じて、感温媒体の圧力を、より一層、速やかに、かつ、精度良く変化させることができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対してエジェクタ13の感温筒の構成を変更した例を説明する。具体的には、本実施形態の感温筒376aは、図5に示すように、比較的径の細い配管を螺旋状に曲げて、その先端部を閉塞させることによって形成されている。その他のエジェクタ13およびエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は第1実施形態と同様である。なお、図5は、第1実施形態の図4に対応する図面である。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ13においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、感温筒376aを螺旋状に形成しているので、感温媒体と吸引冷媒との熱交換面積を増加させることができる。その結果、吸引冷媒の温度に応じて、感温空間内の感温媒体の圧力を、より一層、速やかに、かつ、精度良く変化させることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態で説明した圧力応答空間371aおよび感温空間372aは、次のように定義してもよい。例えば、上述の実施形態では、絞り部としてキャピラリチューブ377を採用している。従って、キャピラリチューブ377よりもダイヤフラム371側の空間を圧力応答空間371aと定義し、キャピラリチューブ377よりもダイヤフラム371の反対側の空間を感温空間372aと定義してもよい。
また、感温空間372aと圧力応答空間371aとを連通させる連通路として通常の冷媒配管を採用し、絞り部として、この冷媒配管に配置されたオリフィスを採用してもよい。この場合は、オリフィスの最小通路断面積部よりもダイヤフラム371側を圧力応答空間371aと定義し、オリフィスの最小通路断面積部よりもダイヤフラム371の反対側の空間を感温空間372aと定義してもよい。
また、中心軸CLに垂直な断面で、ダイヤフラム371の形状に適合する形状に形成された空間を圧力応答空間371aと定義し、これ以外の封入空間37aを感温空間372aと定義してもよい。
また、中心軸CLに垂直な断面において、ダイヤフラム371を変位させるための圧力応答空間371aの断面積は、感温空間372aの断面積よりも大きくなる。そこで、連通路の両端側の2つの空間のうち、中心軸CLに垂直な断面が大きい方を圧力応答空間371aと定義し、小さい方を感温空間372aと定義してもよい。
(2)上述の実施形態では、封入空間形成部の応答空間形成部としてアッパープレート372を採用し、ノズル32(具体的には、旋回空間形成部32aの底面)に接触するように取り付けた例を説明したが、応答空間形成部はこれに限定されない。例えば、応答空間形成部をノズル32(具体的には、旋回空間形成部32aの底面)に形成された溝部あるいは穴部によって構成してもよい。
また、感温空間形成部として感温筒376、376aを採用した例を説明したが、感温空間形成部はこれに限定されない。例えば、感温空間形成部をディフューザボデー33の上面に形成された溝部あるいは穴部によって構成してもよい。さらに、ディフューザボデー33を介して、ディフューザ通路13cを流通する冷媒と感温空間372a内の感温媒体との熱交換を抑制するために、ディフューザボデーを樹脂にて形成してもよい。
(3)エジェクタ13は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
例えば、上述の実施形態では、気液分離部が一体的に形成されたエジェクタ13について説明したが、気液分離部はエジェクタに対して別部材で構成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、圧力応動部として、ゴム製のダイヤフラム371を採用した例を説明したが、圧力応動部として、金属(例えば、SUS304等)の薄板で形成されたものを採用してもよい。
また、エジェクタ13に、ディフューザ通路13cを流れる冷媒の旋回流れを促進する旋回促進手段を追加してもよい。
これによれば、ディフューザ通路13c内に螺旋状の冷媒流路を形成することができるので、ディフューザ通路13c内の冷媒流路が短くなってエジェクタ13の昇圧性能が低下してしまうことを抑制できる。さらに、気液分離空間30fへ流入する冷媒の旋回流れを促進させて、気液分離空間30fにおける気液分離性能を向上させることができる。
このような旋回促進手段としては、通路形成部材35およびディフューザボデー33のディフューザ通路を形成する部位に整流板を配置することによって構成してもよいし、当該部位に溝部を設けることによって構成してもよい。
また、ハウジングボデー31の気液分離空間30fの底面を形成する部位に、気液分離空間30fと気相冷媒流出通路31gとを連通させるオイル戻し穴を形成してもよい。そして、このオイル戻し穴を介して、液相冷媒に溶け込んだ冷凍機油を、圧縮機11の吸入側へ戻すようにすればよい。
(4)エジェクタ式冷凍サイクル10を構成する各構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
例えば、上述の実施形態では、圧縮機11として、エンジン駆動式の可変容量型圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機11として、電磁クラッチの断続により圧縮機の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機を採用してもよい。さらに、固定容量型圧縮機構と電動モータとを備え、電力を供給されることによって作動する電動圧縮機を採用してもよい。電動圧縮機では、電動モータの回転数を調整することによって、冷媒吐出能力を制御することができる。
また、上述の実施形態では、放熱器12として、サブクール型の熱交換器を採用した例を説明したが、凝縮部12aのみからなる通常の放熱器を採用してもよい。さらに、通常の放熱器とともに、この放熱器にて放熱した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を蓄える受液器(レシーバ)を一体化させたレシーバ一体型の凝縮器を採用してもよい。
また、上述の実施形態では、冷媒としてR134aを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、HFO系冷媒(R1234yf、HFO−1234ze、HFO−1234zd)、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用することができる。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。さらに、冷媒として二酸化炭素を採用して、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成してもよい。
(5)上述の実施形態では、本発明に係るエジェクタ式冷凍サイクル10を、車両用空調装置に適用した例を説明したが、エジェクタ式冷凍サイクル10の適用はこれに限定されない。例えば、据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用してもよい。
また、上述の実施形態では、本発明に係るエジェクタ13を備えるエジェクタ式冷凍サイクル10の放熱器12を冷媒と外気とを熱交換させる室外側熱交換器とし、蒸発器14を送風空気を冷却する利用側熱交換器としている。これに対して、蒸発器14を外気等の熱源から吸熱する室外側熱交換器として用い、放熱器12を空気あるいは水等の被加熱流体を加熱する利用側熱交換器として用いてもよい。