以下に、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態によると、電池用活物質が提供される。この電池用活物質は、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の活物質粒子を含む。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物におけるMo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素の含有量は、0.01atm%以上2atm%以下の範囲内にある。活物質粒子は、一次粒子のアスペクト比が1以上4未満の範囲内にある。活物質粒子の結晶子サイズは5nm以上90nm以下の範囲内にある。
ニオブチタン複合酸化物とは、Wadthley-Roth相と呼ばれる結晶構造を有するニオブ元素とチタン元素とを含む複合酸化物である。この複合酸化物においては、Nb元素及びTi元素から構成される金属イオンと酸素イオンとが形成する八面体が、頂点を共有しながらブロックを形成する。また、ニオブチタン複合酸化物の結晶構造では、辺共有構造、又はNb元素及びTi元素から構成される金属イオンと酸素イオンとが形成する四面体構造が、上記ブロックの間に挟まれて連結し、それが一つの軸方向に積層している。
ニオブチタン複合酸化物には、例えば、TiNb2O7、Ti2Nb10O29、TiNb14O37、TiNb24O62など複数の相が存在する。ニオブチタン複合酸化物がこれらの相のうちどの相を取るかは、複合酸化物におけるNb/Tiのモル比により選択される。
より好ましくは、Nb/Ti=2であるTiNb2O7相が含まれる複合酸化物であるとよい。複合酸化物TiNb2O7は、結晶構造が単斜晶系の空間群C2/mに帰属される。この結晶構造では、Nb元素及びTi元素から構成される金属イオンと酸素イオンとが形成する八面体が、頂点を共有しながら、縦3個×横3個でブロックを形成する。また、この結晶構造では、辺共有でブロックが連結した層が、b軸方向に重なった構造をとる。複合酸化物TiNb2O7は、ニオブチタン複合酸化物の中でも最も空隙の広い構造をとるため、リチウムイオンを吸蔵可能な容量である活物質容量が最も高いという特徴を有する。
一方、Nb/Ti=2以外で合成される複合酸化物は、TiNb2O7、Ti2Nb10O29、TiNb14O37、及びTiNb24O62の何れか2つ以上の相を含む混相状態となる可能性がある。TiNb2O7、Ti2Nb10O29、TiNb14O37、及びTiNb24O62の相は、TiNb2O7の相と比較して、容量が小さい一方でレート特性が大きいという特徴がある。このため、これらの混相を含むニオブチタン複合酸化物は、向上したレート特性を実現することができる。1≦Nb/Ti≦2である複合酸化物は、例えばルチル型TiO2とTiNb2O7との混相として得ることができる。ルチル型TiO2相がLiを吸蔵すると、吸蔵したLiの一部は例えば活物質が完全放電状態になってもルチル型TiO2相に残留することができる。この残留したLiは、ルチル型TiO2相、ひいては活物質全体の電気伝導性を高めることができる。よって、ルチル型TiO2とTiNb2O7との混相を含む活物質は、優れたレート特性を示すことができる非水電解質電池を実現することができる。
Ti/Nbの比は電池の設計及び用途に合わせて決定されるが、活物質容量を犠牲にしないという観点から、Ti/Nbの比は、1.5≦Nb/Ti<5であることが好ましい。
次に、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の一例であるTiNb2O7を、図面を参照しながらより詳細に説明する。
図1は、単斜晶型TiNb2O7の結晶構造を示す模式図である。図2は、図1の結晶構造を他の方向から見た模式図である。
図1に示すように、単斜晶型TiNb2O7の結晶構造では、金属イオン101と酸化物イオン102とが骨格構造部分103を構成している。なお、金属イオン101には、NbイオンとTiイオンとがNb:Ti=2:1の比でランダムに配置されている。この骨格構造部分103が三次元的に交互に配置されることで、図1に示すように、骨格構造部分103同士の間に空隙部分104が存在する。この空隙部分104が、リチウムイオンのホストとなる。この空隙部分104は、図1に示すように、結晶構造全体に対して大きな部分を占めることができる。加えて、この空隙部分104は、リチウムイオンが挿入されても安定的に構造を保つことができる。
リチウムイオンがこの空隙部分104に挿入されると、骨格構造部分103を構成する金属イオン101が3価に還元され、これによって結晶の電気的中性が保たれる。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物TiNb2O7は、Tiイオンが4価から3価へ還元されるだけでなく、Nbイオンが5価から3価へと還元される。そのおかげで、単斜晶型複合酸化物TiNb2O7は、4価カチオンであるTiイオンだけを含む化合物に比べて、活物質質量あたりの還元価数が大きい。その結果、単斜晶型複合酸化物TiNb2O7は、より多くのリチウムイオンが挿入されても結晶の電気的中性を保つことが可能である。このようにより多くのリチウムイオンを挿入することが可能であるため、単斜晶型複合酸化物TiNb2O7は、4価カチオンだけを含む酸化チタンのような化合物に比べて、エネルギー密度を高めることができる。
また、図1及び図2に示す結晶構造を有する単斜晶型複合酸化物TiNb2O7は、リチウムの拡散が速い2次元的なチャネルを有する複数の領域と、これらの領域を繋ぐリチウム経路とを有する。具体的には、図1において、領域105及び領域106が、それぞれ、[100]方向と[010]方向とに2次元的なチャネルを有する部分である。それぞれ図2に示すように、単斜晶型複合酸化物TiNb2O7の結晶構造には、[001]方向に空隙部分107が存在する。この空隙部分107は、リチウムイオンの導電に有利なトンネル構造を有しており、領域105と領域106とを繋ぐ[001]方向のリチウム経路となる。このリチウム経路107が存在することによって、リチウムイオンは領域105と領域106とを行き来することが可能となる。
このように、単斜晶型複合酸化物TiNb2O7の結晶構造では、リチウムイオンの等価的な挿入空間が大きく且つ構造的に安定である。加えて、単斜晶型複合酸化物TiNb2O7は、5価のカチオンを含まない化合物に比べて、エネルギー密度を高めることができる。更に、単斜晶型複合酸化物TiNb2O7の結晶構造には、リチウムイオンの拡散が速い2次元的なチャネルを有する領域105及び106とそれらを繋ぐ[001]方向のリチウム経路107とが存在するので、上記単斜晶型複合酸化物は、挿入空間へのリチウムイオンの挿入性及びこの挿入空間からのリチウムイオンの脱離性を向上させることができると共に、リチウムイオンの挿入及び脱離に寄与する空間を実効的に増加させることができる。これらの結果、単斜晶型複合酸化物TiNb2O7は、高い容量を提供することが可能である。具体的には、単斜晶型複合酸化物TiNb2O7の理論容量は387mAh/g程度であり、これはスピネル構造を有するチタン酸化物の2倍以上の値である。
そして、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、組成が異なっても、図1及び図2に示す結晶構造と類似した構造を有することができる。そのため、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、高い容量を提供することが可能である。
また、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、1.5V(対Li/Li+)程度のリチウム吸蔵電位を有する。それ故、このような複合酸化物を活物質として用いることにより、安定した繰り返し急速充放電が可能な電池を提供することが可能である。
以上のことから、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を含む活物質を用いることにより、優れた急速充放電性能と高いエネルギー密度を有する電池用活物質を提供することが可能である。
このような単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を十分な結晶性を有する活物質として得るためには、1100℃以上の高温で長時間にわたって焼成を行うことが必要であった。しかしながら、このような長時間の高温焼成は、生産性が劣るという問題があった。
この問題を解決するために、焼成に供する前駆体に、Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む化合物を焼結助剤として含ませるという方策がある。
一般に、Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む化合物は、低融点であることが知られている。このような低融点の化合物を原料に含めて焼成すると、その化合物が焼成の際に融点に達することで液相となる。この液相は、粒子間の密着性を向上させることができる。その結果、このような化合物を焼結助剤として用いることにより、低い温度での焼成が可能となる。
また、ニオブチタン複合酸化物において、Mo、V、Wなどの元素は、Nb及び/又はTiの元素の一部を置換することが可能である。このため、これらの元素は、ニオブチタン複合酸化物中に、残留したこれらの元素を含んだ異相が生じることを防ぐことができる。よって、Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むニオブチタン複合酸化物を含んだ活物質は、Liの吸蔵及び放出の際の体積膨張又は収縮に伴って生じる応力によって活物質の割れが発生することを抑制することができる。したがって、Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むニオブチタン複合酸化物を含んだ活物質粒子を含んだ非水電解質電池は、安定に充放電をすることが可能である。
一方、従来の方法では、Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む化合物を添加してこれを焼結助剤として機能させることにより、焼成温度を低めることが出来たものの、得られた活物質のレート特性及びサイクル特性は、このような焼結助剤を用いずに得られた活物質のそれらよりも低下する傾向があるという課題があった。
本発明者らは、鋭意検討した結果、この事象が以下に説明するものに起因することを見出した。
まず、Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む化合物を焼結助剤として添加して焼成を長時間実施すると、ニオブチタン複合酸化物において、結晶成長が一単軸方向へ進行してしまう。このように結晶が異方成長したニオブチタン複合酸化物には、鱗片状又は針状の粗大な結晶が含まれるようになる。その結果、このようにして得られたニオブチタン複合酸化物は、長軸/短軸比、すなわちアスペクト比が大きい複合酸化物粒子となってしまう。特に、このような一軸成長は、Liの拡散に最も有意な[010]方向で起こり易い。このため、複合酸化物粒子における一軸成長に伴うアスペクト比の増加は、Li固体内拡散距離の増加に直結する。
一方、ニオブチタン複合酸化物は、Liの吸蔵量が増加するに従い、固体内におけるLiイオンの拡散速度が低下する。このため、先に説明したように一軸成長により固体内拡散距離が増加したニオブチタン複合酸化物を電極に組み込んで作製した非水電解質電池においては、充電時に過電圧が発生し、電極への電気化学的な負荷が大きくなる。更に、固体内拡散距離が長いと、Liの吸蔵量及び放出量の低下に繋がる。そのため、固体内拡散距離が長いニオブチタン複合酸化物を電極に組み込んで作製した非水電解質電池は、乏しいレート特性を示す。さらに、固体内拡散距離が長いニオブチタン複合酸化物を電極に組み込んで作製した非水電解質電池は、負極への過電圧が増加することで、還元側での副反応を増長させ、サイクル特性が低下する。
以上の知見をもとに、本発明者らは鋭意研究をし、第1の実施形態に係る電池用活物質を実現した。
具体的には、第1の実施形態に係る電池用活物質が含む活物質粒子に関して、活物質粒子の一次粒子のアスペクト比は、1以上4未満の範囲内にある。また、活物質粒子の結晶子サイズは5nm以上90nm以下の範囲内にある。
活物質粒子の一次粒子のアスペクト比及び活物質粒子の結晶子が上記範囲内にあるニオブチタン複合酸化物の活物質粒子は、Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含んでいるが、結晶成長の際の活物質粒子内のLi固体内拡散距離の増加が抑えられている。また、このような活物質粒子を含む電池用活物質は、非水電解質電池に組み込んで使用した際、充電時の過電圧の発生や還元側での副反応を抑えることができる。これらの結果、第1の実施形態に係る電池用活物質は、入出力特性及びサイクル特性に優れた非水電解質電池を実現することができる。
一方、一次粒子のアスペクト比が4以上である活物質粒子は、Li固体内拡散距離が長過ぎる。そのため、このようなニオブチタン複合酸化物の活物質粒子を含んだ電池用活物質を組み込んだ非水電解質電池は、先に説明したように、過電圧の発生、Liの吸蔵量及び放出量の低下、及び還元側での副反応の増長などにより、レート特性及びサイクルが低下する。なお、アスペクト比は、長軸/短軸比であり、長軸が短軸より短くなることがないため、1未満の値を取ることはない。アスペクト比の好ましい範囲は、1以上3以下である。
また、活物質粒子の結晶子サイズが5nm未満である活物質粒子は、結晶子サイズが小さ過ぎる。このような活物質粒子では、活物質界面の影響により、Li挿入サイトが不安定となる。その結果、Liの吸蔵及び放出の際の結晶構造が安定せず、また副反応の増大に伴いサイクル特性が低下する。一方、結晶子サイズが90nm以上である活物質粒子は、Li固体内拡散距離が長過ぎる。そのため、このようなニオブチタン複合酸化物の活物質粒子を含んだ電池用活物質を組み込んだ非水電解質電池は、先に説明したように、過電圧の発生、Liの吸蔵量及び放出量の低下、及び還元側での副反応の増長などにより、レート特性及びサイクルが低下する。結晶子サイズの好ましい範囲は、10nm以上70nm以下である。
第1の実施形態に係る電池用活物質では、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物におけるMo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素の含有量は、0.01atm%以上2atm%以下である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物におけるMo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素の含有量が0.01atm%未満であるである電池用活物質は、焼成の際に焼結助剤として働くこれらの元素の添加量が少なかったことを意味する。そのため、このような電池用活物質は、高温で長時間の焼成に供さないと、ニオブチタン複合酸化物の結晶の緻密化が十分に進行せず、十分な結晶性を有する相を有する得ることができないことから、十分な容量を発揮することが困難である。また、上記元素の含有量が2atm%よりも大きい場合、これらの元素の含有量がニオブチタン複合酸化物中へのこれらの元素の固溶限界量を超えることから、異相が活物質粒子中に多く残留する状態となる。このように異相を含む活物質粒子を含んだ電池用活物質は、Liの吸蔵及び放出の際の体積膨張及び収縮に伴う応力によって活物質の割れが生じるおそれがあり、サイクル特性が低下する。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物におけるMo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素の含有量は、0.01atm%以上0.3atm%以下であることが好ましい。
また、第1の実施形態に係る電池用活物質材料に含まれる単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、O元素(酸素元素、以下同様)、Ti元素、Nb元素、並びにMo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素以外の更なる元素を含むこともできる。更なる元素としては、例えば、Ta、Fe、Bi、Sb、As、P、Cr、B、Na、Mg、Al及びSiを挙げることができる。これらの更なる元素は、化合物TiNb2O7のTi元素の一部及び/又はNb元素の一部と置換することにより、特性を向上出来ると期待出来る。
そのため、第1の実施形態に係る電池用活物質材料に含まれるニオブチタン複合酸化物は、一般式Ti1-a-cM1aM3cNb2-b-dM2bM4dO7(0≦a<1、0≦b<1、0<c+d<1)で表すことができる。この一般式におけるM1及びM3は、組成式TiNb2O7においてTi元素の一部と置換した元素を意味する。第1の実施形態に係る電池用活物質材料に含まれるニオブチタン複合酸化物の一般式におけるM2及びM4は、組成式TiNb2O7においてNb元素の一部と置換した元素を意味する。元素M1及び元素M2は、Nb、Ta、Fe、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、B、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種である。元素M1及び元素M2は、同じであっても良いし、互いに異なっていても良い。元素M3及び元素M4は、V、Mo及びWから選ばれる少なくとも1種である。元素M3及びM4は、同じであっても良いし、互いに異なっていても良い。
第1の実施形態に係る電池用活物質材料に含まれるニオブチタン複合酸化物は、化合物TiNb2O7におけるTi元素を元素M1、または元素M3に一部置換する及び/又はNb元素を元素M2、または元素M4に一部置換することでさらに電池特性を向上させることができることが期待できる。例えば、置換元素としてV、Ta、Bi、Sb、As、Pを用いる場合、Nb元素及びTi元素の一部を置換することができる。これらの元素は5価であるため、Ti元素の一部を置換されることで、化合物TiNb2O7の電子導電性を向上させることができる。これにより、容量及び急速充電性能を更に向上させることができると期待できる。Cr、Mo、Wといった6価の元素は、Ti元素及びNb元素の一部を置換することができる。これにより、化合物TiNb2O7の電子導電性の改善が期待できる。また、B、Na、Mg、又はSiなどの元素はTi元素より軽元素であることから、これら元素でTiの一部を置換することにより、容量をさらに向上させることができると予想される。Fe及びAlのような3価の元素は、Ti元素の一部を置換することができる。これにより、化合物TiNb2O7の電子導電性の改善が期待出来る。
化合物TiNb2O7においてNb元素の一部をTaに置換しても同等の特性を得ることができる。これは、TaはNbを含む鉱石であるコルンブ石中に含まれる材料であり、NbとTaとは、同様の物理的、化学的及び電気的な性質を有していることに起因する。
複合酸化物の調製中、原材料又は中間生成物に酸素欠損が生じることがある。また、原材料中に含まれていた不可避不純物及び調製中に混入した不純物などが、調製した複合酸化物中に存在することもある。そのため、上記ニオブチタン複合酸化物は、例えば上記不可避的要因により、一般式Ti1-a-cM1aM3cNb2-b-dM2bM4dO7(0≦a<1、0≦b<1、0<c+d<1)で表される化学量論比から外れた組成を有する酸化物を含むことがある。例えば、酸化物の調製中に生じる酸素欠損を原因として、一般式Ti1-a-cM1aM3cNb2-b-dM2bM4dO7(0≦a<1、0≦b<1、0<c+d<1)で表される組成を有する酸化物が調製されることがある。
第1の実施形態に係る電池用活物質が含む単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の粒子は、一次粒子及び一次粒子が凝集した二次粒子の少なくとも一方を含んでもよい。一次粒子は、例えば炭素含有層が表面の一部に被覆した状態で、炭素と複合化されていてもよい。二次粒子は、炭素と複合化されている一次粒子が凝集したものでもよい。或いは、二次粒子は、一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、この二次粒子の表面の一部に炭素含有層が被覆した状態で、炭素と複合化されていてもよい。
第1の実施形態に係る電池用活物質は、平均一次粒子径が0.01μm〜5μmの間にあることが好ましく、0.1μm〜3μmの間にあることがより好ましい。また、第1の実施形態に係る電池用活物質は、平均二次粒子径が1μm〜100μmの間にあることが好ましく、5μm〜30μmの間にあることがより好ましい。
第1の実施形態に係る電池用活物質は、例えば、以下に説明する液相合成法を利用した製造方法によって製造することができる。
液相合成法では、Nb元素とTi元素とが原子レベルで混合した状態で反応が進行するため、短い焼成時間で単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を得ることが可能である。更に、この例の製造方法では、焼成の際、600℃〜900℃以下の温度において、昇温速度を20℃/分以上として、急速加熱をする。このような製造方法では、結晶の異方成長及び粒成長を抑制することができ、結晶子サイズが5nm以上90nm以下の範囲内にあり且つ一次粒子のアスペクト比が1以上4未満の範囲内にある、小さな活物質を得ることができる。この製造方法は、具体的には以下のとおりである。なお、以下の製造方法の例の説明では、Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を、添加元素と呼ぶ。
まず、Ti化合物を溶解させた酸性溶液(A)と、Nb化合物を溶解させた酸性溶液(B)と、添加元素を含む酸性溶液(C)とを混合して混合溶液を調製する。各酸性溶液の出発原料は、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化物、硫化物、酸化物、塩、アルコキシド、有機物をそれぞれ純水、エタノール、酸などの適する溶媒に溶解させた溶液を用いることができる。なお、混合溶液中の各元素のモル比は、仕込み時のモル比であり、製造後の活物質における各元素の組成比とは異なる場合がある。
次に、上記のようにして調製した混合溶液に、pH調整剤としてのアルカリ溶液を混合することにより、共沈析出物を析出させる。pH調整剤は、アルカリ溶液が好ましく、pH8以上、より好ましくはpH12以上のものが好ましい。pHが大きい溶液の方が、少ない液量で共沈析出物を析出させることが可能であるため、好ましい。pH調整剤は、例えばアンモニア水を用いることができる。混合する方法としては、混合溶液にpH調整剤を滴下していく方法でもよいし、逆にpH調整剤に混合溶液を滴下する方法でもよい。液を滴下する方法、スピード、タイミング、溶液の温度などを調節することにより、析出物の凝集度と粒子形状とを制御することができる。より好ましくは、溶液温度を室温以下とし、混合溶液中に徐々にpH調整剤を少量ずつ加えていく方が、過度な凝集を抑制することができるという観点から好ましい。pH調整剤を添加することによって、Ti及びNbを含む混合液のpHをアルカリ側に調整する。pH調整は共沈析出物の析出の状況を監視しながら調整すればよいが、目安としてはpHを1〜10の範囲とし、好ましくはpHを6〜9の範囲とする。これによりTi、Nb及び添加元素を含む共沈析出物を析出させることができる。
また、pHを調整する工程の前後に、オートクレーブ容器による密閉加熱処理を実施することで、より微細な粒子を得ることができる。オートクレーブ容器による加熱処理温度は160℃以上200℃以下とし、焼成時間は5時間以上であることが好ましい。
次に、析出させた共沈析出物の洗浄を行う。洗浄するための溶液としては、例えば純水を用いることが好ましい。洗浄の目安として、洗浄後の廃液のpHが6〜8の範囲、より好ましくは中性に近くなるまで十分に行う。洗浄を十分に行った後、濾過及び乾燥を行うことで、前駆体粉末を得ることができる。
このようにして得られた前駆体は、NbとTiと添加元素とが均質に混合した析出物であり、より好ましくはアモルファスの複合水酸化物である。このようにTiとNbと添加元素とが均質に混合したアモルファス状の前駆体粉末とすることにより、焼成の際の反応性を高めることができる。それにより、このようなアモルファス状の前駆体粉末を焼成に供することで、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を、固相反応法等よりも、より低温、より短時間での焼成で得ることができる。つまり、この例の方法では、焼成工程での温度及び時間を抑制することができる。
濾過及び乾燥後の前駆体粉末は凝集していることがあり得る。また、原料の種類の影響により一次粒子の粒子サイズが不揃いの場合がある。その場合は、ボールミルやビーズミルなどの機械的粉砕法により粉砕させるのが好ましい。
次に、得られた前駆体粉末について焼成を実施する。焼成は、600℃〜900℃の範囲内の温度で行う。より好ましくは、700〜800℃の範囲内で行う。焼成時間は1分〜1時間とする。より好ましくは、焼成時間は30分〜1時間とする。このような条件で焼成することで、結晶性の高い単斜晶型ニオブチタン複合酸化物からなる相を形成させることができる。
更に、この焼成での昇温速度を20℃/分以上とする。このように昇温速度を早くすることで、高温での保持時間がより短時間となることから、結晶の異方成長を抑制することができ、一次粒子のアスペクト比が小さい粒子を得ることが可能である。
また、粒成長や粒子間のネッキングを抑制しながら結晶性を向上させるという観点から、600℃〜700℃の範囲内の温度で且つ第一の焼成よりも低い温度で、1分〜1時間のアニール工程を上記焼成の前後に付加することが出来る。このアニール工程においても、昇温速度を20℃/分以上とする。
焼成の雰囲気は、大気中、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中、又は真空雰囲気中のいずれでもよいが、酸化物を得るためには酸化性雰囲気が好ましく、具体的には大気雰囲気がよい。また、酸素濃度を故意に高めた大気雰囲気中で焼成してもよい。
焼成後の粉末は、粒子がネッキングしていたり、過度に粒子が成長したりしていることがあり得る。よって、ボールミルやビーズミルなどの機械的粉砕法により粉砕するとより微粒子を形成させることが出来るため好ましい。但し、機械粉砕を実施すると活物質の結晶性が損なわれる可能性がある。この場合は、再び600℃〜800℃の範囲内の温度で、1分〜1時間のアニール工程をこの粉砕工程の後に付加することにより改善することができるため好ましい。このアニール工程においても、昇温速度を20℃/min以上とすることで、結晶の異方成長を抑制させることができる。
また、焼成後の粉末に対して炭素を更に複合化させることもできる。炭素との複合方法は特に限定されるものでは無い。炭素源としては例えば糖類、ポリオレフィン類、ニトリル類、アルコール類、その他ベンゼン環を含む有機化合物などが挙げられる。また、遊星ボールミル等の機械的方法により、焼成後の粉末にカーボンブラックやグラファイトなどを担持させることも可能である。複合化は、例えば、焼成後の粉末と炭素源と混合した後、還元雰囲気下で焼成することで行うことができる。この焼成は、900℃以下の温度で行うことが好ましい。焼成温度が900℃超である場合、Nb元素の還元反応が進行して異相が析出する恐れがある。還元雰囲気としては、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの雰囲気がよい。
また、焼成後の粒子サイズが1μm以下である場合には、スプレードライなどの方法により造粒すると、電極作製工程におけるスラリーの分散性が向上し、塗液性が安定するため好ましい。
次に、電池用活物質中に含まれる元素の組成比の決定方法、活物質粒子の一次粒子のアスペクト比の算出方法、及び結晶子サイズの算出方法を説明する。
活物質粉末は、一般に知られる前処理方法により調整後に、各測定に供することが可能である
一方、電池に組み込まれている電池用活物質について測定を行う場合は、以下のようにして、電池から電池用活物質を取り出す。
まず、電池用活物質材料に含まれる活物質粒子の結晶状態を把握するために、ニオブチタン複合酸化物からリチウムイオンが完全に脱離した状態にする。例えば、負極に含まれる活物質粒子について測定を行う場合、電池を完全に放電状態にする。但し、放電状態でも残留したリチウムイオンが僅かに存在することがある。
次に、アルゴンを充填したグローブボックス中で電池を分解し、測定対象の活物質を含んだ電極を取り出す。次いで、取り出した電極を、電極を適切な溶媒で洗浄する。ここで使用する溶媒は、当該電池が非水電解質電池であれば、非水電解質の非水溶媒、例えばエチルメチルカーボネートなどを用いることが好ましい。
次に、洗浄した負極から、測定対象の活物質が含まれる層(例えば、後述する負極層)を剥離する。例えば、溶媒中で電極基板に超音波を照射することにより活物質を含む層を剥離することができる。
次に、活物質を含む層を大気中で短時間加熱する。この加熱は、例えば、500℃で1時間にわたって行う。この加熱によって、結着剤及び導電剤などの他の成分が除去される。一方、活物質を構成する元素のモル比は、加熱後も変化しない。加熱後の残渣を酸に溶解し、測定試料を調製する。この測定試料を各組成分析に供する。なお、SEM測定では、酸に溶解せず、粉末のまま観察を行う。
<組成比の決定方法>
電池用活物質の組成及び活物質に含まれる元素の含有量は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光法及び不活性ガス融解−赤外線吸収法によって同定することができる。
具体的には、まず、測定対象の活物質をアルカリ溶解又は酸分解により溶解させて、測定試料を調製する。電池に含まれていた活物質について分析する場合、先のように活物質を含む相を加熱して残った残渣を酸に溶解することで、測定試料を調製する。調製の際、測定試料中の活物質の溶解量(濃度)を把握しておく。
以上のようにして調製した測定試料に対して、ICP発光分光法による分析を行い、測定試料中の単位重量あたりの各金属元素の濃度を測定する。この測定結果から、活物質に含まれる金属元素の組成比を算出することができる。
また、活物質に含有されるO元素の含有量は、不活性ガス融解−赤外線吸収法により、活物質の単位重量あたりの濃度を算出することが出来る。
上記の方法により得られた結果から、活物質について、単位重量あたりのTi元素、Nb元素、Mo、W又はVの少なくとも1種の元素、その他の置換元素、及びO元素の物質量を算出することができる。そして、これらの物質量から、活物質における各元素について組成比(モル比)を算出することが可能である。
ニオブチタン複合酸化物におけるMo、W及びVからなる群より選択される少なくとも1種の含有量は、上記の方法により算出された、活物質についての単位重量あたりのMo、W又はVの少なくとも1種の元素の物質量を、Ti元素、Nb元素、Mo、W又はVの少なくとも1種の元素、その他の置換元素、及びO元素の合計の物質量で除することにより、モル比の割合(単位:atm%)として算出することができる。
また、測定対象の活物質がニオブチタン複合酸化物の相とこれ以外の相との混相を含む場合、上記のモル比の割合が厳密に測れないという問題がある。活物質が複数の相を含む場合は、例えば、以下のようにして、ニオブチタン複合酸化物の相の組成比を決定することができる。
まず、活物質を、広角X線散乱測定に供する。広角X線散乱測定については、後述する。ここで行う広角X線散乱測定は、リートベルト解析を行うことができる結果が得られる条件で行う。このような広角X線散乱測定により得られた結果を、リートベルト解析に供する。この結果から、活物質に含まれている各相の組成比を分離する。
一方で、活物質をEDX分析などの分析に供し、ニオブチタン複合酸化物以外の相に含まれるTi元素、Nb元素、Mo、W又はVの少なくとも1種の元素、その他の置換元素、及びO元素の各構成元素を定量する。これにより、ニオブチタン複合酸化物以外の相についての、単位重量あたりの各構成元素の物質量を算出することができる。
先に定量した単位重量の活物質に含まれる各元素の物質量から、ニオブチタン複合酸化物以外の相についての、単位重量当たりに含まれる各構成元素の物質量を除することにより、活物質に含まれるニオブチタン複合酸化物について、単位重量あたりの各構成元素の物質量を算出することができる。そして、この結果から、ニオブチタン複合酸化物におけるMo、W又はVの少なくとも1種の元素の含有量を決定することができる。
<活物質粒子の一次粒子のアスペクト比の算出方法>
活物質粒子の一次粒子のアスペクト比は、一次粒子の最も粒子径の短い方向、すなわち短軸の粒子径をAとし、最も粒子径の長い方向、すなわち長軸の粒子径をBとして、粒子径Bの粒子径Aに対する比B/Aとして定義する。第1の実施形態に係る電池用活物質が含む活物質粒子は、一次粒子のアスペクト比が1以上4未満であり、アスペクト比4以上の粒子を多く含まないことが好ましい。
一次粒子のアスペクト比は、SEM像から、そこに含まれるもっともアスペクト比が高い一次粒子を1つ選択する。凝集していたり、ネッキングにより接合した粒子複数の粒子は、それぞれ独立した一次粒子とみなすこととする。次に、最も粒子径の短い方向における粒子径をAとし、最も粒子径の長い方向における粒子径をBとして、比B/Aを算出することで定義することとする。同様の操作を無作為に選出した30枚の画像から算出し、その平均値をもって、活物質粒子の一次粒子のアスペクト比と定義する。SEMの測定条件は、例えば実施例において説明する条件である。
<活物質粒子の結晶子サイズの算出方法>
活物質粒子の結晶子サイズは、活物質粒子についての広角X線回折法で得られるX線回折パターンからピークの半値幅を求め、以下に示すシェラーの式を用いて結晶子径(結晶子サイズ)を算出することができる。
ピークの半値幅は、スペクトルをフィッティングさせることにより得られる値を用いる。スペクトルのフィッティングは、以下のように行なう。まず、バックグラウンドの除去、Kα1ピークとKα2ピークとの分離、及びスムージングによる前処理を実施する。次に、前処理後のスペクトルについて、二次微分法によるピークサーチを実施する。次に、ピークサーチによって選出したピークから形成されるピークプロファイルを前処理後のスペクトルから差し引くことにより、バックグラウンドプロファイルを得る。このようにして得られたバックグラウンドプロファイルを多項式によりフィッティングさせる。ピークサーチによって選出したピークから形成されるピークプロファイルとバックグラウンドの情報とを用いて、前処理後のスペクトルと最小二乗法によるプロファイルフィッティングを実施することにより、ピーク情報とバックグラウンドの情報の各変数を最適化させる。なお、ピークのフィッティング関数は分割型擬Voigt関数を用いる。この方法は、例えば解析ソフト「Rigaku PDXL2 ver.2.1」を用いて自動プロファイル処理を実施することにより、一連の操作を自動的に実施することが出来る。上記の方法によって、各ピークの半値幅を求めることができる。
ここで、K:シェラー定数、λ:Cu‐Kα線の波長(=0.15406nm)、βe:回折ピークの半値幅、βo:半値幅の補正幅である。
算出に使用する回折ピークは、空間群C2/mに属する単斜晶型ニオブチタン複合酸化物TiNb2O7の結晶構造の(110)面に対応する、2θ=23.9317°±0.2°の範囲に得られるピークとすることとする。シェラー定数は、K=0.94とする。また、上記の条件における半値幅の補正値はY=0とする。しかしながら、測定系が異なる場合は半値幅が異なることが考えられる。この場合は、標準試料を用いてこの補正値を算出することで、正確な値を求めることができる。
次に、活物質粒子の結晶子サイズを決定するために行う、電池用活物質についての広角X線回折測定を説明する。
まず、測定に供する試料に含まれる活物質粒子を、凝集が十分に解かれるまで粉砕する。目安としては、平均粒子径が20μm以下となることが好ましい。平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置によって求めることができる。
次に、粉砕した試料を、ホルダー部分を有するガラス試料板のホルダー部分に充填する。試料台としては、例えば深さ0.2mmのホルダー部分を有するガラス試料板を用いることができる。ホルダー部分に試料を充填した後、この試料をガラス板を使用して十分に押し付けて、その表面を平滑化する。このようにして試料が充填されたガラス試料板を、粉末X線回折に設置し、Cu-Kα線を用いてX線回折法による測定を行う。
測定装置、測定条件としては、例えば以下の形で実施する。
X線回折装置:株式会社リガク社製 SmartLab
X線源:CuKα線
出力 :40kV,200mA
パッケージ測定名称:汎用測定(集中法)
入射並行スリット開口角:5°
入社長手制限スリット長さ:10mm
受光PSA:無し
受光並行スリット開口角:5°
単色化法:Kβフィルター法
測定モード:連続
入射スリット幅:0.5°
受光スリット幅:20mm
測定範囲(2θ):5〜70°
サンプリング幅(2θ):0.01°
スキャン速度:20°/分。
測定対象たる活物質が非水電解質電池の電極材料に含まれている場合は、まず、先に説明した手順により、非水電解質電池から電極を取り出し、取り出して洗浄した電極を、粉末X線回折装置のホルダーの面積とほぼ同じ面積に切断し、測定試料とする。
得られた測定試料を、ガラスホルダーに直接貼り付けて測定を行う。この際、集電体箔、導電助剤、バインダーといった合剤のピークを、XRDを用いてあらかじめ測定し、これらに由来するピーク位置を把握しておく。活物質粒子と重なるピークがある場合は、それらの活物質粒子以外のピークを分離する必要がある。基板のピークと活物質のピークとが重なる場合、基板から活物質が含まれる層(例えば、後述する電極層)を剥離して測定に供することが望ましい。これは、ピーク強度を定量的に測定する際、重なったピークを分離するためである。
以上のようにして、電池に含まれている活物質の広角X線回折測定を行うことができる。
リートベルト用データを収集するには、ステップ幅が回折ピークの最小半値幅の1/3〜1/5となるようにし、最強度反射のピーク位置における強度が5000cps以上となるように適宜、測定時間又はX線強度を調整する。
第1の実施形態によると、電池用活物質が提供される。この電池用活物質は、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の活物質粒子を含む。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物におけるMo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素の含有量は、0.01atm%以上2atm%以下の範囲内にある。活物質粒子は、一次粒子のアスペクト比が1以上4未満の範囲内にある。活物質粒子の結晶子サイズは5nm以上90nm以下の範囲内にある。この電池用活物質は、結晶成長の際の活物質粒子内のLi固体内拡散距離の増加が抑えられているので、非水電解質電池に組み込んで使用した際、充電時の過電圧の発生や還元側での副反応を抑えることができる。その結果、第1の実施形態に係る電池用活物質は、入出力特性及びサイクル特性に優れた非水電解質電池を実現することができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態によると、非水電解質電池が提供される。この非水電解質電池は、負極と、正極と、非水電解質とを具備する。負極は、第1の実施形態に係る電池用活物質を含む。
第2の実施形態に係る非水電解質電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。正極、負極及びセパレータは、電極群を構成することができる。非水電解質は、電極群に保持され得る。
また、第2の実施形態に係る非水電解質電池は、電極群及び非水電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
さらに、第2の実施形態に係る非水電解質電池は、正極に電気的に接続された正極端子及び負極に電気的に接続された負極端子を更に具備することができる。正極端子の少なくとも一部及び負極端子の少なくとも一部は、外装部材の外側に延出し得る。
以下、正極、負極、非水電解質、セパレータ、外装部材、正極端子及び負極端子について詳細に説明する。
1)正極
正極は、集電体と、正極層(正極活物質含有層)とを含むことができる。正極層は、集電体の片面若しくは両面に形成され得る。正極層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
正極活物質としては、例えば、酸化物、硫化物及びポリマーなどを用いることができる。
使用することのできる酸化物及び硫化物としては、例えば、リチウムを吸蔵及び放出をすることができる化合物である、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が挙げられる。上記の式において、0<x≦1であり、0<y≦1である。活物質として、これらの化合物を単独で用いてもよく、或いは、複数の化合物を組合せて用いてもよい。
ポリマーは、例えばポリアニリンやポリピロールのような導電性ポリマー材料、又はジスルフィド系ポリマー材料を用いることができる。イオウ(S)、フッ化カーボンもまた活物質として使用できる。
より好ましい正極活物質の例には、正極電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoyO2)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が含まれる。上記の式において、0<x≦1であり、0<y≦1である。
中でも、常温溶融塩を含む非水電解質を用いる場合には、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物を用いることが、サイクル寿命の観点から好ましい。これは、正極活物質と常温溶融塩との反応性が少なくなるためである。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋めるために配合され、正極活物質と導電剤を結着することができる。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムが含まれる。
導電剤は、集電性能を高め、且つ正極活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために必要に応じて配合される。導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛のような炭素質物が含まれる。
正極層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80重量%以上98重量%以下、2重量%以上20重量%以下の割合で配合することが好ましい。
結着剤は、2重量%以上の量にすることにより十分な電極強度が得られる。また、20重量%以下にすることにより電極の絶縁体の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77重量%以上95重量%以下、2重量%以上20重量%以下、及び3重量%以上15重量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤は、3重量%以上の量にすることにより上述した効果を発揮することができる。また、15重量%以下にすることにより、高温保存下での正極導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu、Siのような元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下、より好ましくは15μm以下にすることが望ましい。アルミニウム箔の純度は99重量%以上が好ましい。アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は、1重量%以下にすることが好ましい。
正極は、例えば正極活物質、結着剤及び必要に応じて配合される導電剤を適当な溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを正極集電体に塗布し、乾燥して正極層を形成した後、プレスを施すことにより作製される。正極はまた、正極活物質、結着剤及び必要に応じて配合される導電剤をペレット状に形成して正極層とし、これを集電体上に形成することにより作製されてもよい。
2)負極
負極は、集電体と、負極層(負極活物質含有層)とを含むことができる。負極層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。負極層は、負極活物質と、任意に導電剤及び結着剤とを含むことができる。
第1の実施形態に係る電池用活物質は、負極活物質として、負極層に含めることができる。
第1の実施形態に係る電池用活物質は、先に説明したように、結晶成長の際の活物質粒子内のLi固体内拡散距離の増加が抑えられている。そのため、第1の実施形態に係る電池用活物質を含んだ負極を具備した非水電解質電池は、優れた入出力特性及びサイクル特性を示すことができる。
負極層は、負極活物質として、第1実施形態に係る活物質を単独で含んでいてもよいが、他の負極活物質を更に含んでいてもよい。他の負極活物質としては、アナターゼ型二酸化チタンTiO2、単斜晶子型β型二酸化チタンTiO2(B)、ラムスデライト型チタン酸リチウムLi2Ti3O7、スピネル型チタン酸リチウムLi4Ti5O12、酸化ニオブなどを用いることができる。これらの酸化化合物は、第1の実施形態に係る電池用活物質に含まれる化合物と比重なども近く、混合及び分散が容易であるため、好適に用いることができる。
導電剤は、負極活物質の集電性能を高め、且つ負極活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために必要に応じて配合される。導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等の炭素質物が含まれる。
結着剤は、分散された負極活物質の間隙を埋めるために配合され、負極活物質と導電剤を結着することができる。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴムが含まれる。
負極層中の負極活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ、68重量%以上96重量%以下、2重量%以上30重量%以下及び2重量%以上30重量%以下の範囲で配合されていることが好ましい。導電剤の量が2重量%以上であると、負極層の集電性能が良好である。また、結着剤の量が2重量%以上であると、負極層と集電体の結着性が十分で、優れたサイクル特性を期待できる。一方、非水電解質電池を高容量化するために、結着剤は30重量%以下であることが好ましい。
負極集電体は、負極活物質のリチウムの吸蔵及び放出電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。負極集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Siのような元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは5〜20μmであることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、負極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
負極は、例えば負極活物質、導電剤及び結着剤を、汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを集電体に塗布し、乾燥し、負極層を形成した後、プレスを施すことにより作製される。負極はまた、負極活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成して負極層とし、これを集電体上に形成することにより作製されてもよい。
3)非水電解質
非水電解質は、例えば、電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される液状非水電解質、又は、液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質であってよい。
液状非水電解質は、電解質を0.5モル/L以上2.5モル/L以下の濃度で有機溶媒に溶解することが好ましい。
電解質の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、又はこれらの混合物が含まれる。電解質は高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネートのような環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)のような鎖状カーボネート、テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)のような環状エーテル、ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)のような鎖状エーテル、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、及びスルホラン(SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独又は混合溶媒の形態で用いることができる。
高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)が含まれる。
或いは、非水電解質は、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、無機固体電解質等を用いてもよい。
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15〜25℃)で液体として存在しうる化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩が含まれる。一般に、非水電解質電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
高分子固体電解質は、電解質を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する固体物質である。
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、又はポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布から形成されてよい。中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であるため、安全性を向上できる。
5)外装部材
外装部材は、厚さ0.5mm以下のラミネートフィルム又は厚さ1mm以下の金属製容器が用いることができる。ラミネートフィルムの厚さは0.2mm以下であることがより好ましい。金属製容器は、厚さ0.5mm以下であることがより好ましく、厚さ0.2mm以下であることがさらに好ましい。
外装部材の形状は、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、ボタン型等が挙げられる。外装部材は、電池寸法に応じて、例えば携帯用電子機器等に積載される小型電池用外装部材、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池用外装部材が挙げられる。
ラミネートフィルムは、樹脂層間に金属層を挟み込んだ多層フィルムが用いられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って外装部材の形状に成形することができる。
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。合金中に鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は1重量%以下にすることが好ましい。これにより、高温環境下での長期信頼性、放熱性を飛躍的に向上させることができる。
次に、第2の実施形態に係る非水電解質電池を、図面を参照してより具体的に説明する。
図3は、第2の実施形態に係る一例の扁平型非水電解質電池の断面図である。図4は、図3のA部の拡大断面図である。
図3及び図4に示す非水電解質電池10は、図3に示す袋状外装部材2と、図3及び図4に示す電極群1と、図示しない非水電解質とを具備する。電極群1及び非水電解質は、外装部材2内に収納されている。非水電解質は、電極群1に保持されている。
袋状外装部材2は、2枚の樹脂層とこれらの間に挟まれた金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
図3に示すように、電極群1は、扁平状の捲回電極群である。扁平状の捲回電極群1は、図4に示すように、外側から負極3、セパレータ4、正極5、及びセパレータ4の順で積層した積層物を渦巻状に捲回し、プレス成型することにより形成される。
負極3は、負極集電体3aと負極層3bとを含む。負極層3bには、第1の実施形態に係る電池用活物質が含まれる。最外殻の負極3は、図4に示すように負極集電体3aの内面側の片面のみに負極層3bを形成した構成を有する。その他の負極3は、負極集電体3aの両面に負極層3bが形成されている。
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極層5bとを含む。
図3に示すように、捲回電極群1の外周端近傍において、負極端子6が最外殻の負極3の負極集電体3aに接続され、正極端子7が内側の正極5の正極集電体5aに接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。
図3及び図4に示した非水電解質電池10は、例えば、以下の手順で作製することができる。まず、電極群1を作製する。次いで、電極群1を袋状外装部材2内に封入する。この際、負極端子6及び正極端子7は、それぞれの一端が外装部材2の外側にはみ出すようにする。次に、外装部材2の周縁を、一部を残してヒートシールする。次に、ヒートシールしなかった部分から、例えば液状非水電解質を袋状外装部材2の開口部から注入する。最後に開口部をヒートシールすることにより、捲回電極群1及び液状非水電解質が密封される。
第2実施形態に係る非水電解質電池は、図3及び図4に示す例の非水電解質電池に限らず、例えば図5及び図6に示す構成の電池であってもよい。
図5は、第2の実施形態に係る他の例の非水電解質電池を模式的に示す部分切欠斜視図である。図6は、図5のB部の拡大断面図である。
図5及び図6に示す非水電解質電池10は、図5及び図6に示す電極群11と、図5に示す外装部材12と、図示しない非水電解質とを具備する。電極群11及び非水電解質は、外装部材12内に収納されている。非水電解質は、電極群11に保持されている。
外装部材12は、2枚の樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
電極群11は、図6に示すように、積層型の電極群である。積層型電極群11は、図6に示すように、正極13と負極14とをその間にセパレータ15を介在させながら交互に積層した構造を有する。
電極群11は、複数の正極13を含んでいる。複数の正極13は、それぞれが、正極集電体13aと、正極集電体13aの両面に担持された正極層13bとを備える。また、電極群11は、複数の負極14を含んでいる。複数の負極14は、それぞれが、負極集電体14aと、負極集電体14aの両面に担持された負極層14bとを備える。各負極14の負極集電体14aは、一辺が負極14から突出している。突出した負極集電体14aは、帯状の負極端子16に電気的に接続されている。帯状の負極端子16の先端は、外装部材12から外部に引き出されている。また、図示しないが、正極13の正極集電体13aは、負極集電体14aの突出辺と反対側に位置する辺が正極13から突出している。正極13から突出した正極集電体13aは、帯状の正極端子17に電気的に接続されている。帯状の正極端子17の先端は、負極端子16とは反対側に位置し、外装部材12の辺から外部に引き出されている。
第2の実施形態に係る非水電解質電池は、第1の実施形態に係る電池用活物質を含む負極を具備する。その結果、第2の実施形態に係る非水電解質電池は、優れた入出力特性及びサイクル特性を示すことができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第2の実施形態に係る非水電解質電池を具備する。
第3の実施形態に係る電池パックは、先に説明した第2実施形態に係る非水電解質電池(単電池)を1個又は複数個具備することができる。第3の実施形態に係る電池パックに含まれ得る複数の非水電解質電池は、互いに電気的に直列又は並列に接続されて、組電池を構成することもできる。第3の実施形態に係る電池パックは、複数の組電池を含んでいてもよい。
次に、第3の実施形態に係る一例の電池パックを図面を参照しながら説明する。
図7は、第3の実施形態に係る一例の電池パックの分解斜視図である。図8は、図7の電池パックの電気回路を示すブロック図である。
図7及び図8に示す電池パック20は、複数の単電池21を具備する。複数の単電池21は、図3及び図4を参照しながら説明した扁平型非水電解質電池10である。
複数の単電池21は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ22で締結することにより組電池23を構成している。これらの単電池21は、図8に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板24は、負極端子6及び正極端子7が延出する組電池23の側面と対向して配置されている。プリント配線基板24には、図8に示すようにサーミスタ25、保護回路26および外部機器への通電用端子27が搭載されている。なお、プリント配線基板24が組電池23と対向する面には、組電池23の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
正極側リード28は、組電池23の最下層に位置する正極端子7に接続され、その先端はプリント配線基板24の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード30は、組電池23の最上層に位置する負極端子6に接続され、その先端はプリント配線基板24の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29及び31は、プリント配線基板24に形成された配線32及び33を通して、保護回路26に接続されている。
サーミスタ25は、単電池21の温度を検出し、その検出信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34a及びマイナス側配線34bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ25による検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件の他の例は、単電池21の過充電、過放電及び過電流等が検出された場合である。この過充電等の検出は、個々の単電池21もしくは組電池23全体について行われる。個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、又は正極電位若しくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図7及び図8に示す電池パック20の場合、単電池21それぞれに電圧検出のための配線35を接続し、これら配線35を通して検出信号が保護回路26に送信される。
正極端子7及び負極端子6が突出する側面を除く組電池23の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート36がそれぞれ配置されている。
組電池23は、各保護シート36及びプリント配線基板24と共に収納容器37内に収納される。すなわち、収納容器37の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート36が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池23は、保護シート36及びプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。蓋38は、収納容器37の上面に取り付けられている。
なお、組電池23の固定には粘着テープ22に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮チューブを周回させた後、熱収縮チューブを熱収縮させて組電池を結束させる。
図7及び図8では、複数の単電池21を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続してもよい。あるいは、直列接続と並列接続とを組合せてもよい。組み上がった電池パックをさらに直列又は並列に接続することもできる。
また、第3の実施形態に係る電池パックの態様は、用途により適宜変更される。第3の実施形態に係る電池パックは、大電流を取り出したときにサイクル特性が優れていることが要求される用途に好適に用いられる。具体的には、デジタルカメラの電源として、又は、例えば二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、及び、アシスト自転車の車載用電池として用いられる。特に、車載用電池として好適に用いられる。
第3の実施形態に係る電池パックは、第2の実施形態に係る非水電解質電池を具備する。その結果、第3の実施形態に係る電池パックは、優れた入出力特性及びサイクル特性を示すことができる。
[実施例]
以下、実施例に基づいて上記実施形態をさらに詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は以下に記載される実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、以下の手順により、実施例1の活物質を合成した。
まず、出発原料として、Tiのモル濃度が1.28mol/Lの硫酸チタニル希硫酸溶液と、Nbのモル濃度が0.5mol/Lの塩化ニオブのエタノール溶液と、Moのモル濃度が0.5mоl/Lの塩化モリブデンのエタノール溶液とを準備した。
次に、これらの溶液を混合し、水酸化物等の異物の析出が無い透明な混合溶液を得た。混合は、モル比Ti:Nb:Moが1.0:2.18:0.05となるように行った。
次に、この混合溶液に撹拌しながらアンモニア水を滴下することで、溶液のpHを8に調整した。アンモニア水の滴下により、混合溶液に白色沈殿物が生じた。この沈殿物を、混合溶液から取出し、純水で洗浄し、濾過して回収した。次いで、このようにして回収した沈殿物を、80℃のヒーターで乾燥させた。その後、遊星ボールミルにより、沈殿物の凝集を解砕した。その後、この沈殿物に対して、900℃で30分にわたって、大気中の条件で焼成を行った。この際、昇温速度は30℃/分とした。その後、焼成によって得られた生成物を遊星ボールミルにより粉砕して、粉末を得た。この粉末を、実施例1の活物質とした。
実施例1の活物質を少量測り取り、酸溶解及びアルカリ溶解を実施して、測定溶液を調製した。この測定溶液を用いて、ICP分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製SPS-3520UV)を行い、実施例1の活物質についての単位重量当たりのTi、Nb及びMoの各元素の物質量を算出した。一方、実施例1の活物質を更に少量測り取って更なる測定溶液を調製し、これを不活性ガス-赤外吸収法(LECO社製TC-600)による分析に供することで、実施例1の活物質についての単位重量あたりのO元素の物質量を算出した。これらの結果から、実施例1の活物質についての単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.086atm%、Nb=19.976atm%、Mo=0.012atm%、O=69.926atm%であることが分かった。
また、実施例1の活物質を粉末について、広角X線回折測定を実施した。スペクトルを図9に示す。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、解析ソフト「Rigaku PDXL2 ver.2.1」を用いて自動プロファイル処理を実施することによりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例1の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが30.1nmであることが分かった。
また、実施例1の活物質について、SEM像を撮影した。装置は株式会社日立ハイテクノロジーズ社製SU−8020を用いた。具体的には、サンプル台にカーボンテープを貼り、その上に面貌の先で採取した粉末を軽く載せた後圧着させ、エアーを吹きかけて余分に乗った粉末を吹き飛ばすことで測定試料とした。観察条件は、加速電圧3kV、プローブ条件10μA、倍率2万倍の条件とした。代表的なSEM像を図10に示す。このSEM像から、最もアスペクト比の高い一次粒子を選択した。アスペクト比は、一次粒子の最も粒子径の短い方向の粒子径をAとし、最も長い方向の粒子径をBとした際の比B/Aである。図10のSEM像において最もアスペクト比が高い粒子のアスペクト比は1.40であった。同様の操作を30枚のSEM像を用いて実施し、これらの平均を、実施例1の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比として算出した(少数点第三位を四捨五入して算出)。その結果、実施例1の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比は、1.52であることが分かった。
(実施例2)
実施例2では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Moを1.02:2.13:0.10としたこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例2の活物質を合成した。
実施例2の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.261atm%、Nb=19.587atm%、Mo=0.26atm%、O=69.892atm%であることが分かった。
また、実施例2の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01−077−1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例2の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが、32.1nmであることが分かった。
また、実施例2の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例2の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.55であることが分かった。
(実施例3)
実施例3では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Moを1.05:2.07:0.15としたこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例3の活物質を合成した。
実施例3の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.435atm%、Nb=18.883atm%、Mo=1.113atm%、O=69.569atm%であることが分かった。
また、実施例3の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例3の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが38.9nmであることが分かった。
また、実施例3の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例3の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.63であることが分かった。
(実施例4)
実施例4では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Moを1.05:2.07:0.20としたこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例4の活物質を合成した。
実施例4の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.348atm%、Nb=18.725atm%、Mo=1.94atm%、O=68.986atm%であることが分かった。
また、実施例4の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01−077−1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いてにより結晶子サイズを算出した。その結果、実施例4の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが42.3nmであることが分かった。
また、実施例4の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例4の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.71であることが分かった。
(実施例5)
実施例5では、焼成温度を800℃としたこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例5の活物質を合成した。
実施例5の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.261atm%、Nb=19.587atm%、Mo=0.26atm%、O=69.892atm%であることが分かった。
また、実施例5の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例5の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが20.6nmであることが分かった。
また、実施例5の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例5の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.42であることが分かった。
(実施例6)
実施例6では、焼成温度を700℃としたこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例6の活物質を合成した。
実施例6の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.261atm%、Nb=19.587atm%、Mo=0.26atm%、O=69.892atm%であることが分かった。
また、実施例6の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例6の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが10.1nmであることが分かった。
また、実施例6の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例6の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.21であることが分かった。
(実施例7)
実施例7では、焼成の際の昇温速度を40℃/分としたこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例7の活物質を合成した。
実施例7の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.261atm%、Nb=19.587atm%、Mo=0.26atm%、O=69.892atm%であることが分かった。 また、実施例7の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01−077−1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例7の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが30.2nmであることが分かった。
また、実施例7の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSREM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例7の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.21であることが分かった。
(実施例8)
実施例8では、焼成の際の昇温速度を25℃/分としたこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例8の活物質を合成した。
実施例8の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.261atm%、Nb=19.587atm%、Mo=0.26atm%、O=69.892atm%であることが分かった。
また、実施例8の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例8の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが32.6nmであることが分かった。
また、実施例8の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例8の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が2.65であることが分かった。
(実施例9)
実施例9では、焼成の際の昇温速度を20℃/分としたこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例9の活物質を合成した。
実施例9の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.261atm%、Nb=19.587atm%、Mo=0.26atm%、O=69.892atm%であることが分かった。
また、実施例9の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例9の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが29.5nmであることが分かった。
また、実施例9の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例9の活物質が含む活物質粒子の一次粒子の一次粒子のアスペクト比が3.82であることが分かった。
(実施例10)
実施例10では、以下の手順により、実施例10の活物質を合成した。
まず、出発原料としてTiのモル濃度が1.28mol/Lの硫酸チタニル希硫酸溶液と、Nbのモル濃度が0.5mol/Lの塩化ニオブのエタノール溶液と、Wのモル濃度が0.5mоl/Lの塩化タングステンのエタノール溶液とを準備した。
次に、これらの溶液を混合し、水酸化物等の異物の析出が無い透明な混合溶液を得た。混合は、モル比Ti:Nb:Wが1.0:2.18:0.02となるように行った。
次に、この混合溶液に攪拌しながらアンモニア水を滴下することで、溶液のpHを8に調整した。アンモニア水の滴下により、混合溶液に白色沈殿物が生じた。この沈殿物を、混合溶液から取出し、純水で洗浄し、濾過して回収した。次いで、このようにして回収した沈殿物を、80℃のヒーターで乾燥させた。その後、遊星ボールミルにより、沈殿物の凝集を解砕した。その後、この沈殿物に対して、900℃で30分にわたって、大気中の条件で焼成を行った。この際、昇温速度は30℃/分とした。その後、焼成によって得られた生成物を遊星ボールミルにより粉砕して、粉末を得た。この粉末を実施例10の活物質とした。
実施例10の活物質を少量測り取り、酸溶解及びアルカリ溶解を実施して、測定溶液を調製した。この測定溶液を用いて、ICP分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製SPS-3520UV)を行い、実施例10の活物質についての単位重量当たりのTi、Nb及びWの各元素の物質量を算出した。一方、実施例10の活物質を更に少量測り取って更なる測定溶液を調製し、これを不活性ガス-赤外吸収法(LECO社製TC-600)による分析に供することで、実施例10の活物質についての単位重量たたりのO元素の物質量を算出した。これらの結果から、実施例10の活物質についての単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.09atm%、Nb=19.978atm%、W=0.011atm%、O=69.921atm%であることが分かった。
また、実施例10の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01−077−1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例10の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが29.5nmであることが分かった。
また、実施例10の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例10の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.58であることが分かった。
(実施例11)
実施例11では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Wを1.04:2.1:0.05としたこと以外は実施例10と同様の方法により、実施例11の活物質を合成した。
実施例11の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.47atm%、Nb=19.161atm%、W=0.26atm%、O=69.899atm%であることが分かった。
また、実施例11の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01−077−1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて結晶子サイズを算出した。その結果、実施例11の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが31.9nmであることが分かった。
また、実施例11の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例11の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.62であることが分かった。
(実施例12)
実施例12では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Wを1.04:2.1:0.05としたこと以外は実施例10と同様の方法により、実施例12の活物質を合成した。
実施例12の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.36atm%、Nb=18.752atm%、W=1.80atm%、O=69.088atm%であることが分かった。
また、実施例12の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例12の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが34.7nmであることが分かった。
また、実施例12の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例12の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.83であることが分かった。
(実施例13)
実施例13では、以下の手順により、実施例13の活物質を合成した。
まず、出発原料としてTiのモル濃度が1.28mol/Lの硫酸チタニル希硫酸溶液と、Nbのモル濃度が0.5mol/Lの塩化ニオブのエタノール溶液と、Vのモル濃度が0.5mоl/Lの三塩化酸化バナジウムのエタノール溶液とを準備した。
次に、これらの溶液を混合し、水酸化物等の異物の析出が無い混合溶液を得た。混合は、モル比Ti:Nb:Vが1.0:2.15:0.06となるように行った。
次に、攪拌しながら、この混合溶液にアンモニア水を滴下することで、溶液のpHを8に調整した。アンモニア水の滴下により、混合溶液に白色沈殿物が生じた。
なお、出発原料である三塩化酸化バナジウムは水との反応性が高いことから、以上に説明した出発原料の混合から白色沈殿の生成までは、−30℃dpの露点状況下で実施した。
この沈殿物を、混合溶液から取出し、純水で洗浄し、濾過して回収した。次いで、このようにして得られた沈殿物を80℃のヒーターで乾燥させた。その後、遊星ボールミルにより、沈殿物の凝集を解砕した。その後、この沈殿物に対して、900℃で30分にわたって、大気中の条件で焼成を行った。この際、昇温速度30℃/分とした。その後、焼成によって得られた生成物を、遊星ボールミルにより粉砕して、粉末を得た。この粉末を実施例13の活物質とした。
実施例13の活物質を少量測り取り、酸溶解及びアルカリ溶解を実施して、測定溶液を調製した。この測定溶液を用いて、ICP分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製SPS-3520UV)を行い、実施例13の活物質についての単位重量当たりのTi、Nb及びWの各元素の物質量を算出した。一方、実施例13の活物質を更に少量測り取って更なる測定溶液を調製し、これを不活性ガス-赤外吸収法(LECO社製TC-600)による分析に供することで、実施例13の活物質についての単位重量たたりのO元素の物質量を算出した。これらの結果から、実施例13の活物質についての単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=9.99atm%、Nb=19.987atm%、V=0.013atm%、O=70.01atm%であることが分かった。
また、実施例13の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01−077−1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例13の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが31.6nmであることが分かった。
また、実施例13の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例13の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.32であることが分かった。
(実施例14)
実施例14では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Vを1.0:2.12:0.10としたこと以外は実施例13と同様の方法により、実施例14の活物質を合成した。
実施例14の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.02atm%、Nb=19.4atm%、V=0.60atm%、O=69.98atm%であることが分かった。
また、実施例14の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例14の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが33.3nmであることが分かった。
また、実施例14の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例14の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.44であることが分かった。
(実施例15)
実施例15では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Vを1.0:2.0:0.15としたこと以外は実施例13と同様の方法により、実施例15の活物質を合成した。
実施例15の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=9.907atm%、Nb=18.823atm%、V=1.922atm%、O=69.348atm%であることが分かった。
また、実施例15の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、実施例15の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが43.1nmであることが分かった。
また、実施例15の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、実施例15の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.59であることが分かった。
(比較例1)
比較例1では、以下に説明する固相法により、比較例1の活物質であるTiNb2O7を合成した。
まず、酸化チタンの粉末、酸化ニオブの粉末及び酸化モリブデンの粉末を準備した。これらの粉末をモル比Ti:Nb:Moが1.05:1.9:0.08となるように秤量した。これらの粉末を遊星ボールミルにより湿式混合して、混合物を得た。溶媒としてはエタノールを用いた。得られた混合物を、取り出して、80℃のヒーターで乾燥させて、混合物から溶媒を蒸発させた。その後、混合物を、大気雰囲気下で、1000℃で12時間にわたり、仮焼成に供した。次いで、仮焼成物を自然冷却した。その後、仮焼成物を、再度、遊星ボールミルに入れ、粉砕及び混合に供し、前駆体を得た。この前駆体を、1000℃で12時間にわたって熱処理に供した。その後、焼成物を、再度遊星ボールミルで粉砕し、粗粒を解砕した。かくして、比較例1の活物質の粉末を得た。
比較例1の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.498atm%、Nb=18.996atm%、Mo=0.520atm%、O=69.986atm%であることが分かった。
また、比較例1の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルを図11に示す。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例1の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが85.3nmであることが分かった。
また、比較例1の活物質について、観察倍率を5000倍としたこと以外は実施例1と同様にして、30枚のSEM像を撮影した。代表的なSEM像を図12に示す。ここから、最も粒子径が大きな一次粒子を選択し、アスペクト比を算出したところ、4.13であった。同様の操作を30枚のSEM像を用いて実施し、これらの平均を、比較例1の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比として算出した(少数点第三位を四捨五入して算出)。その結果、比較例1の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が4.50であることが分かった。
(比較例2)
比較例2では、酸化モリブデン粉末の代わりに酸化タングステン粉末を使用したこと、酸化チタンの粉末と、酸化ニオブの粉末と、酸化タングステンの粉末とをモル比Ti:Nb:Wが1.05:1.9:0.05となるように秤量したこと以外は比較例1と同様の方法により、比較例2の活物質を合成した。
比較例2の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.508atm%、Nb=19.02atm%、W=0.490atm%、O=69.982atm%であることが分かった。
また、比較例2の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例2の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが90.5nmであることが分かった。
また、比較例2の活物質について、比較例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例2の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が4.23であることが分かった。
(比較例3)
比較例3では、酸化モリブデンの粉末の代わりに酸化バナジウムの粉末を使用したこと、及び酸化チタンの粉末と、酸化ニオブの粉末と、酸化タバナジウムの粉末とをモル比Ti:Nb:Vが1.0:1.95:0.10となるように秤量したこと以外は比較例1と同様の方法により、比較例3の活物質を合成した。
比較例3の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=9.968atm%、Nb=19.49atm%、V=0.510atm%、O=70.032atm%であることが分かった。
また、比較例3の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例3の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが88.9nmであることが分かった。
また、比較例3の活物質について、比較例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例3の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が4.81であることが分かった。
(比較例4)
比較例4では、焼成温度を1000℃としたこと以外は、実施例2と同様の方法により活物質を合成した。
比較例4の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.261atm%、Nb=19.587atm%、Mo=0.26atm%、O=69.892atm%であることが分かった。
また、比較例4の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例4の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが92.1nmであることが分かった。
また、比較例4の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例4の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が3.84であることが分かった。
(比較例5)
比較例5では、焼成温度を600℃としたこと以外は実施例2と同様の方法により、比較例5の活物質を合成した。
比較例5の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.261atm%、Nb=19.587atm%、Mo=0.26atm%、O=69.892atm%であることが分かった。
また、比較例5の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例5の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが4.84nmであることが分かった。
また、比較例5の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例5の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.12であることが分かった。
(比較例6)
比較例6では、焼成の際の昇温温度を5℃/分としたこと以外は実施例2と同様の方法により、比較例6の活物質を合成した。
比較例6の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.261atm%、Nb=19.587atm%、Mo=0.26atm%、O=69.892atm%であることが分かった。
また、比較例6の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例6の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが56.1nmであることが分かった。
また、比較例6の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例6の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が4.21であることが分かった。
(比較例7)
比較例7では、焼成の際の昇温温度を5℃/分としたこと、及び焼成温度を1000℃/分としたこと以外は実施例2と同様の方法により、比較例7の活物質を合成した。
比較例7の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.261atm%、Nb=19.587atm%、Mo=0.26atm%、O=69.892atm%であることが分かった。
また、比較例7の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例7の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが85.4nmであることが分かった。
また、比較例7の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例7の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が4.88であることが分かった。
(比較例8)
実施例8では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Moを1.03:2.02:0.4としたこと以外は実施例1と同様の方法により、比較例8の活物質を合成した。
比較例8の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.327atm%、Nb=18.686atm%、Mo=0.214atm%、O=68.843atm%であることが分かった。
また、比較例8の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルのピークの一部はC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致した。しかしながら、異相のピークが確認された。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例8の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが51.5nmであることが分かった。
また、比較例8の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例8の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.96であることが分かった。
(比較例9)
比較例9では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Moを1.03:2.02:0.03としたこと以外は実施例1と同様の方法により、比較例9の活物質を合成した。
得比較例9の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.0atm%、Nb=20.0atm%、Mo=0.006atm%、O=69.994%となった。
また、比較例9の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例9の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが29.9nmであることが分かった。
また、比較例9の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例9の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.21であることが分かった。
(比較例10)
比較例10では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Wを1.0:2.1:0.4としたこと以外は実施例10と同様の方法により、比較例10の活物質を合成した。
比較例10の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.339atm%、Nb=18.708atm%、W=2.028atm%、O=68.925atm%であることが分かった。
また、比較例10の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルのピークの一部はC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致した。しかしながら、異相のピークが確認された。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例10の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが50.9nmであることが分かった。
また、比較例10の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例10の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.77であることが分かった。
(比較例11)
比較例11では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Wを1.0:2.15:0.1としたこと以外は実施例10と同様の方法により、比較例11の活物質を合成した。
比較例11の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=9.999atm%、Nb=19.998atm%、W=0.008atm%、O=69.994atm%であることが分かった。
また、比較例11の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例11の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが28.4nmであることが分かった。
また、比較例11の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例11の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.15であることが分かった。
(比較例12)
比較例12では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Vを1.0:2.15:0.4としたこと以外は実施例13と同様の方法により、比較例12の活物質を合成した。
比較例12の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=9.798atm%、Nb=19.596atm%、V=2.018atm%、O=68.587atm%となった。
また、比較例12の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例12の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが56.8nmであることが分かった。
また、比較例12の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例12の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.82であることが分かった。
(比較例13)
比較例13では、出発原料を混合して混合溶液を得る際、モル比Ti:Nb:Vを1.0:2.15:0.03としたこと以外は実施例13と同様の方法により、比較例13の活物質を合成した。
比較例13の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.0atm%、Nb=20.0atm%、V=0.003atm%、O=69.997atm%であることが分かった。
また、比較例13の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例13の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが28.9nmであることが分かった。
また、比較例13の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例13の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.11であることが分かった。
(比較例14)
比較例14では、出発原料として塩化モリブデンのエタノール溶液を用いなかったことと、出発原料の混合の際に、モル比Ti:Nbを1.0:2.15としたこと以外は実施例1と同様の方法により、比較例14の活物質を合成した。
比較例14の活物質について、実施例1と同様の方法で、単位重量あたりに含まれる各構成元素のモル割合を算出したところ、Ti=10.0atm%、Nb=20.0atm%、O=70.0atm%となった。
また、比較例14の活物質について、実施例1と同様にして、広角X線回折測定を実施した。スペクトルの全ピークはC2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)と一致し、異相のピークが見られないことを確認した。得られたスペクトルについて、実施例1と同様の方法によりフィッティングを実施した。C2/mの空間群に属する単斜晶型TiNb2O7(PDF:01-077-1374)の(110)面に帰属されるピークの半値幅より、先に説明したようにシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出した。その結果、比較例14の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズが20.1nmであることが分かった。
また、比較例14の活物質について、実施例1と同様の観察条件で、30枚のSEM像を撮影した。これらのSEM像から、実施例1と同様の方法により、平均アスペクト比(少数点第三位を四捨五入して算出)を導出した。その結果、比較例14の活物質が含む活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が1.21であることが分かった。
[試験用電池の作製]
以上のようにして合成した各活物質を用いて、以下の手順に従い、実施例1〜15及び比較例1〜14の各試験用電池を作製した。なお、以下では、実施例1の試験用電池の作製手順を例に挙げて説明するが、他の試験用電池も同じ手順で作製した。
<負極の作製>
実施例1の活物質100質量%、導電助剤としてのアセチレンブラック10質量%及びカーボンナノファイバー10質量%、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)10質量%を分散溶媒としてのN‐メチルピロリドン(NMP)に加えて混合することによって、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さ12μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した。この際、集電体の一部には、スラリーを塗布しなかった。次に、塗膜を乾燥させ、次いでプレスした。かくして実施例1の電極を作製した。電極目付は60±2g/m2(集電体含まず)とした。実施例1の負極は、負極集電体と、それに担持された負極層とを具備していた。また、負極集電体は、表面に負極層を担持していない負極タブを含んでいた。
<正極の作製>
正極活物質としてのLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2粉末100質量%、導電助剤としてのアセチレンブラック10質量%及びカーボンナノファイバー10質量%、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)10質量%をN‐メチルピロリドン(NMP)を加えて混合することによって、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さ12μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した。この際、集電体の一部には、スラリーを塗布しなかった。次に、塗膜を乾燥させ、次いでプレスした。かくして、正極を作製した。正極の目付(g/m2)(集電体含まず)は、正極充電容量A(mAh/g)の負極充電容量B(mAh/g)に対する比がA/B=1.0±0.05となるように調整をした。作製した正極は、正極集電体と、それに担持された正極層とを具備していた。また、正極集電体は、表面に正極層を担持していない正極タブを含んでいた。
<電極群の作製>
以上のようにして作製した負極及び正極を用いて、以下の手順で、図13に示す電極群を作製した。なお、図13に示す電極群は、実施例1の試験用電池の電極群の一部である。
まず、帯状のセルロースセパレータ4を準備した。このセパレータ4を、図13に示すように九十九折りにした。次に、九十九折りしたセパレータ4の最上層に、一枚の負極3を積層した。次いで、セパレータ4が向き合って形成された空間に、正極5及び負極3を交互に挿入した。ここで、正極集電体5aの正極タブ5cと負極集電体3aの負極タブ3cとは、セパレータ4から同じ方向に突出するようにした。また、図13に示すように、負極3、セパレータ4、及び正極5の積層方向において、正極タブ5c同士及び負極タブ3c同士は重なり合い、正極タブ5cと負極タブ3cとは重なり合わないようにした。
次に、重なり合った複数の負極タブ3cを互いに溶接すると共に、これらを負極端子に接続した。同様に、重なり合った複数の正極タブ5cを互いに溶接すると共に、これらを正極端子に接続した。
<非水電解質の調製>
プロピレンカーボネート:ジエチルカーボネートの体積割合が1:2である混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させた。かくして、非水電解質を調製した。
<電池の作製>
先のようにして得られた電極群2を、ラミネートフィルムの外装部材に収納した。この際、負極端子及び正極端子が外装部材の外側に延出するようにした。次に、ラミネートフィルムの周囲を一部を残して溶接した。次に、ラミネートフィルムの溶接しなかった部分(注液孔)を通して、外装部材内に先に調製した非水電解質を入れた。次に、注液孔を溶接して、容量が1.0Ahである実施例1の非水電解質電池を作製した。
[試験]
以上のように作製した各電池について、以下の手順で、レート試験及びサイクル試験を行った。
(レート試験)
まず、各電池を、1Cのレートで電池電圧が3.0Vに達するまで定電流充電し、次いで3.0Vの定電圧充電で電流値が0.05Cとなるまで充電した。次に、この電池を0.2Cのレートで電池電圧が1.5Vに達するまで放電した。この放電で得られた放電量を0.2C放電量として記録した。
次に、各電池を、1Cのレートで電池電圧が3.0Vに達するまで定電流充電し、次いで3.0Vの定電圧充電で電流値が0.05Cとなるまで充電した。次に、この電池を5Cのレートで電池電圧が1.5Vに達するまで放電した。この放電で得られた放電量を5C放電量として記録した。
各電池の5C放電量の0.2C放電量に対する比を、レート特性の指標としての5C/0.2C容量比として算出した。
(サイクル試験)
レート試験後、各電池を以下の手順でサイクル試験に供した。まず、各電池を1Cのレートで電池電圧が3.0Vに達するまで定電流充電し、次いで3.0Vの定電圧充電で電流値が0.05Cとなるまで充電した。次に、電池を25℃高温槽で静置した。次に、この電池を5Cのレートで電池電圧が1.5Vに達するまで放電した。以上の充電−静止−放電を1サイクルとした。サイクルの合間には、10分間の静置を行った。サイクル試験では、以上のサイクルを1000サイクル行った。また、サイクル試験は温度25℃で一定の条件下で行った。
1000サイクル目の放電によって放電できた放電量の1サイクル目の放電によって放電できた放電量に対する比を、サイクル寿命特性の指標としてのサイクル容量維持率として算出した。
[結果]
まず、各実施例及び各比較例における活物質の合成条件を、以下の表1にまとめる。
次に、各実施例及び各比較例の活物質が含む活物質粒子の結晶子サイズ及び一次粒子のアスペクト比、並びに各実施例及び各比較例の試験用電池の5C/0.2C容量比及びサイクル容量維持率を、以下の表2にまとめる。
[考察]
まず、実施例1〜18は全て液相合成により活物質を合成した例である。一方、比較例1〜3は固相合成で活物質を合成した例である。比較例1〜3の固相合成では、長時間の焼成を必要とした。そのため、比較例1〜3の活物質粒子は、表1から明らかなように、結晶子サイズ及び一次粒子のアスペクト比が大きかった。実際、図12に示した比較例1の活物質についての代表的なSEM像から明らかなように、比較例1の活物質は、スケールを付けたアスペクト比の大きな活物質粒子を含んでいた。一方、実施例1〜18では、焼成の際の昇温速度を20℃/分以上とした。液相法による合成により、Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む化合物を焼結助剤として用いても、結晶子サイズ及び一次粒子のアスペクト比が増大することを抑制することができた。このため、実施例1〜18の試験用電池は、負極における活物質中のLiの拡散距離の増加を抑制することができ、その結果、5C/0.2C容量比及びサイクル容量維持率が、比較例1〜3のそれらよりも改善されていた。
また、実施例1〜4、並びに比較例8及び9では、添加元素をMoとし、ニオブチタン複合酸化物における添加元素の含有量を変化させている。表2に示したこれらの結果から、ニオブチタン複合酸化物におけるMoの含有量が0.01atom%以上2atom%以下の範囲内にある実施例1〜4の試験用電池は、Moの含有量が多過ぎる比較例8の試験用電池及びMoの含有量が少な過ぎる比較例9の試験用電池よりも、5C/0.2C容量比及びサイクル容量維持率が改善されていることがわかる。これは、実施例1〜4の活物質では、焼成の際に焼結助剤としてMoを含む化合物を含ませて、Nb及び/又はTiの一部がMo元素に置換されたニオブチタン複合酸化物を合成したが、表2に示したように結晶子サイズ及び一次粒子のアスペクト比の増大を抑制することができたことによる結果である。
一方、比較例8の活物質では、ニオブチタン複合酸化物におけるMoの含有量が2.00atm%を越えており、これはニオブチタン複合酸化物におけるMoの固溶限界量を超えたと考えられる。そのため、比較例8の活物質が含むニオブチタン複合酸化物の活物質粒子は、異相が活物質中に多く残留する状態であった。このことは、比較例8の活物質についての広角X線回折測定結果からも裏付けられている。このように異相を含む活物質粒子を含んだ比較例8の活物質では、Liの吸蔵及び放出の際の体積膨張及び収縮に伴う応力によって活物質の割れが発生したため、サイクル特性が低下したと考えられる。
また、比較例9の活物質では、ニオブチタン複合酸化物におけるMoの含有量が0.01atm%を下回っており、焼結助剤としてのMoの存在量が少なかったと考えられる。そのため、比較例9の活物質では、焼成の際に緻密化が十分に進行せず、十分な結晶性を有する相を得ることができなかったと考えられる。そのせいで、比較例9の試験用電池は、レート特性及びサイクル寿命特性に劣っていたと考えられる。
実施例10〜12並びに比較例10及び11の結果から、添加元素をWにした場合もMoと同様の傾向があることが分かる。また、実施例13〜15並びに比較例12及び13の結果から、添加元素をVにした場合もMoと同様の傾向があることが分かる。
比較例14の活物質は、出発原料に、Mo、W及びVの何れも添加せずに合成したものである。比較例14の活物質は、焼結助剤となる原料を用いずに合成したために、焼成温度が900℃にもかかわらず結晶性が低かった。このため、比較例14の試験用電池は、比較例14の活物質においてバルクのLiの拡散が阻害されてしまい、実施例1の試験用電池よりも、5C/0.2C容量比及びサイクル容量維持率が低かったと考えられる。
実施例5及び6並びに比較例4及び5では、実施例1から焼成温度を変化させた。実施例5及び6では、出発原料にMoを含む化合物を含ませることにより、この化合物が焼結助剤として働いた。そのため、実施例5及び6の活物質は焼成温度をそれぞれ800℃及び700℃まで下げて合成したが、実施例5及び6の試験用電池は、実施例1のそれに比べて、5C/0.2C容量比及びサイクル容量維持率は下がらなかった。一方、焼成温度が1000℃を超えた比較例4では、得られた活物質粒子の結晶子サイズが大きくなり過ぎていたため、活物質粒子におけるLiの拡散距離が増加し、その結果、比較例4の試験用電池のレート特性が低下したと考えられる。一方、比較例5の活物質は、焼成温度が低過ぎたために、得られた活物質粒子の結晶子サイズが小さ過ぎたと考えられる。比較例5の活物質は、活物質粒子の結晶子サイズが小さ過ぎたために活物質界面の影響によりLi吸蔵サイトが不安定となり、さらには副反応が増加したと考えられる。これらのせいで、比較例5の試験用電池はサイクル特性に乏しかったと考えられる。
実施例7〜9並びに比較例6及び7は、実施例1から昇温速度を変化させた例である。比較例6及び7の活物質は、焼成の際の昇温速度が低過ぎたため、得られた活物質粒子の一次粒子のアスペクト比が4を超えていた。そのため、比較例6及び7の試験用電池は、負極における活物質中のLiの拡散距離が増加したと考えられる。その結果、比較例6及び7の試験用電池は、サイクル特性が乏しかったと考えらえる。
以上に説明した少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、電池用活物質が提供される。この電池用活物質は、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の活物質粒子を含む。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物におけるMo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素の含有量は、0.01atm%以上2atm%以下の範囲内にある。活物質粒子は、一次粒子のアスペクト比が1以上4未満の範囲内にある。活物質粒子の結晶子サイズは5nm以上90nm以下の範囲内にある。この電池用活物質は、結晶成長の際の活物質粒子内のLi固体内拡散距離の増加が抑えられているので、非水電解質電池に組み込んで使用した際、充電時の過電圧の発生や還元側での副反応を抑えることができる。その結果、この電池用活物質は、入出力特性及びサイクル特性に優れた非水電解質電池を実現することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] Mo、V及びWからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の活物質粒子を含み、
前記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物における前記少なくとも1種の元素の含有量は、0.01atm%以上2atm%以下の範囲内にあり、
前記活物質粒子は、一次粒子のアスペクト比が1以上4未満の範囲内にあり、結晶子サイズが5nm以上90nm以下の範囲内にある電池用活物質。
[2] 前記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、一般式:Ti 1-a-c M1 a M3 c Nb 2-b-d M2 b M4 d O 7 で表され、前記一般式において、0≦a<1、0≦b<1、0<c+d<1であり、前記元素M1及びM2は、Nb、Ta、Fe、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、B、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記元素M1及びM2は、同じであっても良いし、互いに異なっていても良く、前記元素M3及び元素M4は、V、Mo及びWから選ばれる少なくとも1種であり、前記元素M3及びM4は、同じであっても良いし、互いに異なっていても良い[1]に記載の電池用活物質。
[3] [1]又は[2]に記載の電池用活物質を含む負極と、
正極と、
非水電解質と
を具備する非水電解質電池。
[4] [3]に記載の非水電解質電池を含む電池パック。
[5] 複数の前記非水電解質電池を具備し、前記複数の非水電解質電池が電気的に直列及び/又は並列に接続されている[4]に記載の電池パック。