以下、図面を参照して本発明による洗浄液の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。
本実施形態の洗浄液は、インクジェット記録装置のインクをクリーニングするために好適に用いられる。本実施形態の洗浄液は、主成分としての2−ピロリドンと、ジオール類およびグリコール類のうちの少なくとも一方とを含有する。
2−ピロリドンは、インクの顔料を分散させる機能を有している。2−ピロリドンは、特に、水性顔料インクを好適に分散させる。洗浄液が2−ピロリドンを含有することにより、インクが洗浄液に一旦分散した後、時間の経過に伴ってインク中の水分が乾燥しても、インクの分散している洗浄液の流動性が低下することを抑制できる。
なお、インクは一般に、揮発性の高い水および界面活性剤を含有する。このため、インク付着部材を洗浄する洗浄液に、インクと同様に水および界面活性剤を含有させて、洗浄液にインクを溶解させることがある。しかしながら、このような洗浄液をインクジェット記録装置内に長時間収納すると、洗浄液内の成分が揮発してしまい、洗浄液の特性が変化してしまうことがある。これに対して、本実施形態の洗浄液では、揮発性の低い2−ピロリドンを主成分として含有していることにより、インクジェット記録装置内に長時間洗浄液を収納しても、洗浄液の特性の変化を抑制できる。
上述したように、2−ピロリドンはインクを分散させやすい。ただし、2−ピロリドンの凝固点は約25℃であり、洗浄液中の2−ピロリドンの濃度が高すぎると、洗浄液の凝固点が低くなってしまい、洗浄液の使用可能な温度範囲が制限されてしまうことがある。また、濃度100%の2−ピロリドンを洗浄液として用いると、洗浄液の相溶性が高くなりすぎるため、洗浄液を収納する収納容器が溶解してしまうことがある。
このため、本実施形態の洗浄液は、主成分である2−ピロリドン以外に、ジオール類およびグリコール類のうちの少なくとも一方を含有している。
なお、洗浄液の含有するジオール類および/またはグリコール類の凝固点は、2−ピロリドンよりも低いことが好ましい。この場合、洗浄液の凝固点を2−ピロリドンの凝固点よりも低くでき、洗浄液の使用可能な温度範囲を拡大できる。
また、本実施形態の洗浄液は、2−ピロリドン以外にジオール類および/またはグリコール類を含有するため、洗浄液中の2−ピロリドン濃度が高くなりすぎることを防ぐことができ、洗浄液を収納する収納容器の材料の自由度を向上させることができる。
本実施形態の洗浄液において2−ピロリドンの質量濃度はジオール類の質量濃度よりも高く、また、2−ピロリドンの質量濃度はグリコール類の質量濃度よりも高い。さらに、本実施形態の洗浄液は、2−ピロリドン、ジオール類およびグリコール類以外の他の化合物を含有してもよいが、2−ピロリドンの質量濃度は他の化合物の質量濃度よりも高い。このように、洗浄液中の2−ピロリドンの質量濃度は、洗浄液中の他の化合物の質量濃度よりも高い。例えば、洗浄液中の2−ピロリドンの含有量は、洗浄液の広い使用温度範囲および高い分散安定性を実現するために、40質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
なお、本実施形態の洗浄液において2−ピロリドンの質量濃度は必ずしも50質量%以上でなくてもよく、2−ピロリドンの質量濃度は50質量%未満であってもよい。例えば、ジオール類の含有量およびグリコール類の含有量の和は、洗浄液の50質量%を超えてもよい。このように、本実施形態の洗浄液が2−ピロリドンを主成分として含有していることにより、洗浄液のインク分散安定性を向上できる。
本実施形態の洗浄液の含有するジオール類および/またはグリコール類は、比較的低い揮発性を示す。このため、本実施形態の洗浄液を収納容器に長期間収納させても、洗浄液の特性の変化を抑制できる。
なお、洗浄液の含有するジオール類および/またはグリコール類として、低い粘度を示す化合物を用いることが好ましい。一般には、グリコール類は、ジオール類よりも低い粘度を示す。
例えば、ジオール類は、1,3−プロパンジオール(1,3−PG)、1,2−プロパンジオール、ブタンジオール、および、2−メチル−2,4−ペンタンジオールである。これらの化合物のうち、1,3−プロパンジオール、および、1,2−プロパンジオールが特に好ましい。1,3−プロパンジオール、および、1,2−プロパンジオールは比較的低い粘度を示すため、2−ピロリドンの含有量を比較的多くできるからである。
例えば、グリコール類は、グリコールエーテル化合物である。一例として、グリコール類は、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、および、トリエチレングリコールモノメチルエーテルである。これらの化合物のうち、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが特に好ましい。トリエチレングリコールモノブチルエーテルは比較的低い表面張力を示すため、2−ピロリドンの含有量を比較的多くできるからである。
洗浄液の用途によっては、洗浄液は界面活性剤を含有してもよい。ただし、本実施形態の洗浄液は界面活性剤を含有しないことが好ましい。特に、インク付着部材に鋭利な加圧部材を加圧してインクを取り除く場合、インク付着部材に付与される洗浄液が界面活性剤を含有すると、インクが加圧部材をすり抜けてしまうことがある。一般に、界面活性剤は低い表面張力を示すためである。これに対して、洗浄液が界面活性剤を含有しないことにより、インクの加圧部材のすり抜けを抑制できる。
また、インクが界面活性剤を含有している場合、インクが揮発すると、インクの粘度が増大してしまい、インクを取り除きにくくなる。洗浄液は界面活性剤を含有しないことにより、インクの粘度増大を抑制できる。
なお、上述したように、本実施形態の洗浄液は、2−ピロリドンだけでなく、ジオール類およびグリコール類の少なくとも一方を含有している。例えば、2−ピロリドンの表面張力は約50mN/mであるが、ジオール類およびグリコール類には、表面張力30〜50mN/mを示す種々の化合物があり、選択するジオール類およびグリコール類に応じて、表面張力を容易に調整できる。
一般に、インクジェット記録装置の記録ヘッドはインクをパージした後、ブレードによってワイピングされる。本実施形態の洗浄液は、記録ヘッドのワイピングを行うブレードに直接付与されてもよい。ただし、本実施形態の洗浄液は、ブレードに付着したインクを受け取るクリーニング部材に付与されてクリーニング部材の洗浄に用いられることが好ましい。
図1〜図29を参照して、本実施形態の洗浄液を好適に使用するインクジェット式のプリンター100(インクジェット記録装置)を説明する。図1に示すように、プリンター100は、プリンター本体1の内部下方に給紙カセット2aが配置されている。給紙カセット2aの内部には、記録媒体の一例である用紙Pが収容されている。給紙カセット2aの用紙搬送方向下流側、すなわち図1における給紙カセット2aの左側の上方には給紙装置3aが配置されている。この給紙装置3aにより、用紙Pは図1において給紙カセット2aの左上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。給紙カセット2aはプリンター本体1の正面側から水平に引き出して用紙Pを補充することが可能である。
プリンター本体1の左側面外部には手差し給紙トレイ2bが備えられている。手差し給紙トレイ2bには給紙カセット2a内の用紙Pとは異なるサイズの用紙や、屈曲した搬送経路を通過することが困難な記録媒体、1枚ずつ手で送り込みたい記録媒体などが載置される。手差し給紙トレイ2bの用紙搬送方向下流側、すなわち図1における手差し給紙トレイ2bの右側には給紙装置3bが配置されている。この給紙装置3bにより、手差し給紙トレイ2b上の用紙は図1において右方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。
また、プリンター100はその内部に第1用紙搬送路4aを備えている。第1用紙搬送路4aは、給紙カセット2aに対してはその給紙方向である左上方に位置し、手差し給紙トレイ2bに対してはその右方に位置する。給紙カセット2aから送り出された用紙Pは第1用紙搬送路4aによりプリンター本体1の側面に沿って垂直上方に搬送され、手差し給紙トレイ2bから送り出された用紙は略水平右方に向けて搬送される。
用紙搬送方向に対し第1用紙搬送路4aの下流端にはレジストローラー対13が備えられている。さらに用紙搬送方向に対してレジストローラー対13の下流側直近には第1ベルト搬送部5および記録部9が配置されている。給紙カセット2a(または手差し給紙トレイ2b)から送り出された用紙Pは第1用紙搬送路4aを通ってレジストローラー対13に到達する。レジストローラー対13は用紙Pの斜め送りを矯正しつつ記録部9が実行するインク吐出動作とのタイミングを計り、第1ベルト搬送部5に向かって用紙Pを送り出す。
また、記録部9は、記録ヘッドの乾燥や目詰まりによるインクの吐出不良を防止するために、長期間停止後の印字開始時は全ての記録ヘッドの吐出ノズルから、また印字動作の合間にはインク吐出量が規定値以下の吐出ノズルから、ノズル内の粘度が高くなったインクを吐出するパージを実行して、次の印字動作に備える。
用紙搬送方向に対し第1ベルト搬送部5の下流側(図1の右側)には第2ベルト搬送部12が配置されている。記録部9にてインク画像が記録された用紙Pは第2ベルト搬送部12へと送られ、第2ベルト搬送部12を通過する間に用紙P表面に吐出されたインクが乾燥される。
用紙搬送方向に対し第2ベルト搬送部12の下流側であってプリンター本体1の右側面近傍にはデカーラー部14が備えられている。第2ベルト搬送部12にてインクが乾燥された用紙Pはデカーラー部14へと送られ、用紙幅方向に並んだ複数のローラーを用いて用紙Pに生じたカールが矯正される。
用紙搬送方向に対しデカーラー部14の下流側(図1の上方)には第2用紙搬送路4bが備えられている。デカーラー部14を通過した用紙Pは両面記録を行わない場合、第2用紙搬送路4bから排出ローラー対を介してプリンター100の右側面外部に設けられた用紙排出トレイ15に排出される。
プリンター本体1の上部であって記録部9および第2ベルト搬送部12の上方には両面記録を行うための反転搬送路16が備えられている。両面記録を行う場合には第一面への記録が終了して第2ベルト搬送部12およびデカーラー部14を通過した用紙Pが第2用紙搬送路4bを通って反転搬送路16へと送られる。反転搬送路16へ送られた用紙Pは、続いて第二面の記録のために搬送方向が切り替えられ、プリンター本体1の上部を通過して左側に向かって送られ、第1用紙搬送路4a、およびレジストローラー対13を経て第二面を上向きにした状態で再度第1ベルト搬送部5へと送られる。
また、第2ベルト搬送部12の下方にはワイプユニット19およびキャップユニット30が配置されている。ワイプユニット19は、上述したパージを実行する際に記録部9の下方に水平移動し、記録ヘッドの吐出ノズルから吐出されたインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。キャップユニット30は、記録ヘッドのインク吐出面をキャッピングする際に記録部9の下方に水平移動し、さらに上方に移動して記録ヘッドの下面に装着される。
記録部9は図2および図3に示すように、ヘッドハウジング10と、ヘッドハウジング10に保持されたラインヘッド11C、11M、11Y、および11Kを備えている。これらのラインヘッド11C〜11Kは、駆動ローラー6および従動ローラー7を含む複数のローラーに張架された第1搬送ベルト8の搬送面に対して所定の間隔(例えば1mm)が形成されるような高さに支持され、用紙搬送方向と直交する用紙幅方向(図2の上下方向)に沿って複数(ここでは3個)の記録ヘッド17a〜17cが千鳥状に配列されている。ラインヘッド11C〜11Kは、搬送される用紙Pの幅以上の記録領域を有しており、第1搬送ベルト8上を搬送される用紙Pに対して、印字位置に対応した吐出ノズル18からインクを吐出できるようになっている。
図5に示すように、記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面F(図4参照)には吐出ノズル18が多数配列されたノズル領域Rが設けられている。なお、記録ヘッド17a〜17cは同一の形状および構成であるため、図4および図5では記録ヘッド17a〜17cを一つの図で示している。また、図2および図3に示すように、同一のラインヘッド11C〜11Kを構成する3個の記録ヘッド17a〜17cは、各記録ヘッド17a〜17cに設けられた吐出ノズル18の一部が用紙搬送方向に重複するように端部をオーバーラップさせて配置されている。
各ラインヘッド11C〜11Kを構成する記録ヘッド17a〜17cには、それぞれインクタンク20(図6参照)に貯留されている4色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)のインクがラインヘッド11C〜11Kの色毎に供給される。
各記録ヘッド17a〜17cは、外部コンピューター等から受信した画像データに応じて、第1搬送ベルト8の搬送面に吸着保持されて搬送される用紙Pに向かって吐出ノズル18からインクを吐出する。これにより、第1搬送ベルト8上の用紙Pにはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが重ね合わされたカラー画像が形成される。
また、記録ヘッド17a〜17cの乾燥や目詰まりによるインクの吐出不良を防止するために、長期間停止後の印字開始時は全ての記録ヘッド17a〜17cの吐出ノズル18から、また印字動作の合間にはインク吐出量が規定値以下の記録ヘッド17a〜17cの吐出ノズル18から、ノズル内の粘度が高くなったインクを吐出するパージを実行して、次の印字動作に備える。
なお、記録ヘッド17a〜17cからのインクの吐出方式としては、例えば、図示しないピエゾ素子を用いてインクを押し出すピエゾ方式や、発熱体によって気泡を発生させ、圧力をかけてインクを吐出するサーマルインクジェット方式など、各種方式を適用することができる。
続いて、印字時におけるインクタンク20から記録ヘッド17a〜17cへのインクの供給、およびパージ時における記録ヘッド17a〜17cからのインクの排出について説明する。なお、各色のインクタンク20と記録ヘッド17a〜17cとの間に、それぞれ図6に示すインク流路が設けられているが、ここでは任意の1色におけるインク流路について説明する。
図6に示すように、インクタンク20と記録ヘッド17a〜17cとの間には、シリンジポンプ21が配置されている。インクタンク20とシリンジポンプ21とはチューブ部材から成る第1供給路23によって連結され、シリンジポンプ21と記録ヘッド17a〜17c内の吐出ノズル18とはチューブ部材から成る第2供給路25によって連結されている。
第1供給路23には流入側弁27が設けられており、第2供給路25には流出側弁29が設けられている。流入側弁27を開閉することにより第1供給路23内のインクの移動が許容または規制され、流出側弁29を開閉することにより第2供給路25内のインクの移動が許容または規制される。
シリンジポンプ21は、シリンダー21aとピストン21bとを備えている。シリンダー21aは、第1供給路23および第2供給路25に接続されており、第1供給路23を通じてインクタンク20内のインク22がシリンダー21aに流入するようになっている。また、シリンダー21aから第2供給路25を通じてインクが排出され、排出されたインクは記録ヘッド17a〜17cに供給され、吐出ノズル18からインク吐出面Fのノズル領域Rに吐出されるようになっている。
ピストン21bは、駆動装置(図示せず)によって上下に移動可能となっている。ピストン21bの外周には、Oリングのようなパッキン(不図示)が装着されており、シリンダー21aからのインクの漏れを防ぐと共に、ピストン21bがシリンダー21aの内周面に沿って滑らかに摺動できるようになっている。
通常時(印字時)は、図6に示すように、流入側弁27および流出側弁29は共に開放状態であり、ピストン21bを予め設定された位置で停止させておくことにより、シリンダー21a内には略一定量のインクが充填されている。そして、シリンダー21aと記録ヘッド17a〜17cとの間の表面張力(メニスカス)によって、インク22がシリンダー21aから記録ヘッド17a〜17cへと供給される。
図7に示すように、記録部9の下方には、用紙搬送方向(矢印A方向)と平行な両端部に沿って2本のガイドレール60a、60bが固定されている。ガイドレール60a、60bには一対のガイド板61a、61bが固定されており、ガイド板61a、61bの下端部にはキャップユニット30の側端縁が支持されている。また、ガイドレール60a、60bにはキャリッジ71が摺動可能に支持されており、キャリッジ71上にワイプユニット19が載置されている。
キャップユニット30は、記録部9の真下の第1の位置と第1の位置から水平方向(矢印A方向)に退避した第2の位置(図7の位置)との間を往復移動可能であり、第1の位置において上方に移動して記録ヘッド17a〜17cにキャップをするように構成されている。
具体的には図8に示すように、キャップユニット30は、板金製のキャップトレイ30aと、キャップトレイ30aの上面に配置される凹状の12個のキャップ部30bと、4個の高さ方向位置決め突起30cとを含んでいる。
キャップ部30bは、記録ヘッド17a〜17cに対応する位置に配置されている。これにより、第1の位置においてキャップユニット30が上方に移動することによって、各キャップ部30bが各記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fのキャップを行う。高さ方向位置決め突起30cは、記録ヘッド17a〜17cのキャップを行うためにキャップユニット30を記録部9側に上昇させたとき、記録部9のヘッドハウジング10に当接することでキャップ部30bとインク吐出面Fとの接触状態を一定に保持する。
また、キャップユニット30の下面には図9に示すように、後述するクリーニング機構80がネジ止めされている。
図7に示すように、ワイプユニット19は、記録部9の真下の第1の位置と第1の位置から水平方向(矢印A方向)に退避した第2の位置との間を往復移動可能であり、第1の位置において上方に移動して後述するワイピング動作を行うように構成されている。
具体的には、ガイドレール60a、60bの外側には、キャリッジ71を矢印AA′方向に移動させるための駆動モーター72と、駆動モーター72およびキャリッジ71のラック歯71aに係合するギア列(図示せず)と、これらを覆うカバー部材73と、が取り付けられている。駆動モーター72が正回転することにより、ギア列が回転し、キャリッジ71およびワイプユニット19が第2の位置から第1の位置に移動する。なお、駆動モーター72およびギア列等によって、ワイプユニット19を水平方向に移動させるワイプ移動機構が構成されている。
また、キャリッジ71の四隅には図10および図11に示すように、ワイプユニット19を下面側から支持するとともに揺動(起立または倒伏)可能な支持アーム74が設けられている。矢印AA′方向に隣り合う支持アーム74同士は、回転軸75により連結されている。また、キャリッジ71の外側には、支持アーム74を揺動させるためのワイプ昇降モーター76と、ワイプ昇降モーター76および回転軸75のギアに係合するギア列(図示せず)と、が取り付けられている。ワイプ昇降モーター76が正回転することにより、ギア列等が回転し、回転軸75が回動することによって、支持アーム74が揺動(起立)する。これにより、ワイプユニット19が上昇する。なお、ワイプ昇降モーター76、ギア列、回転軸75および支持アーム74等によって、ワイプユニット19を上下方向(矢印BB′方向)に移動させるワイプ昇降機構が構成されている。また、キャリッジ71の内面には上下方向に延びるガイド溝71bが形成されており、ワイプユニット19はガイド溝71bに沿って昇降する。
ワイプユニット19は、図12および図13に示すように、複数のワイパー(ワイプブレード)35a〜35cが固定された略矩形状のワイパーキャリッジ31と、ワイパーキャリッジ31を支持する支持フレーム40とで構成されている。
支持フレーム40の上面の対向する端縁にはレール部41a、41bが形成されており、ワイパーキャリッジ31の四隅に設けられたコロ36がレール部41a、41bに当接することで、ワイパーキャリッジ31は支持フレーム40に対し矢印CC′方向に摺動可能に支持される。
支持フレーム40の外側には、ワイパーキャリッジ31を水平方向(矢印CC′方向)に移動させるためのワイパーキャリッジ移動モーター45と、ワイパーキャリッジ移動モーター45およびワイパーキャリッジ31のラック歯(図示せず)に係合するギア列(図示せず)と、が取り付けられている。ワイパーキャリッジ移動モーター45が正逆回転することにより、ギア列が正逆回転し、ワイパーキャリッジ31が水平方向(矢印CC′方向)に往復移動する。なお、ワイパーキャリッジ移動モーター45およびギア列等によって、ワイパー35a〜35cを記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fに沿って移動させるワイプスライド機構が構成されている。
ワイパー35a〜35cは、各記録ヘッド17a〜17cの吐出ノズル18から吐出されたインクを拭き取るための例えばEPDMからなるゴム製の部材である。ワイパー35a〜35cは、吐出ノズル18のノズル面が露出するノズル領域R(図5参照)の外側の拭き取り開始位置に略垂直方向から圧接され、ワイパーキャリッジ31の移動によりノズル領域Rを含むインク吐出面Fを所定方向(図12の矢印C方向)に拭き取る。
4枚のワイパー35aは略等間隔で配置されており、同様に、4枚のワイパー35bおよび4枚のワイパー35cもそれぞれ略等間隔で配置されている。ワイパー35a、35cは、それぞれ各ラインヘッド11C〜11Kを構成する左右の記録ヘッド17a、17c(図3参照)に対応する位置に配置されている。また、ワイパー35bは、各ラインヘッド11C〜11Kを構成する中央の記録ヘッド17b(図3参照)に対応する位置に配置されており、ワイパー35a、35cに対しワイパーキャリッジ31の移動方向(矢印CC′方向)と直交する方向に所定距離だけずらして固定されている。
なお、ワイパー35a〜35cの周辺には、クリーニング機構80の後述するレバー86に係合する係合片47(図20参照)が設けられている。
支持フレーム40の上面の4箇所には高さ方向位置決め突起46が設けられている。高さ方向位置決め突起46は、ワイパー35a〜35cによる記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fの拭き取り動作を行うために支持フレーム40を記録部9側に上昇させたとき、記録部9のヘッドハウジング10に当接することでワイパー35a〜35cとインク吐出面Fとの接触状態を一定に保持する。
支持フレーム40の上面には、ワイパー35a〜35cによってインク吐出面Fから拭き取られ後述するクリーニング機構80によって集められた廃インクを回収するためのインク回収トレイ44が配置されている。インク回収トレイ44の略中央部には、インク排出孔(図示せず)が形成されており、インク排出孔を挟んで両側のトレイ面44a、44bは、インク排出孔に向かって下り勾配となっている。ワイパー35a〜35cによってインク吐出面Fから拭き取られ、トレイ面44a、44bに落下した廃インクはインク排出孔(図示せず)に向かって流れる。その後、インク排出孔に連結されたインク回収路48(図25参照)を通って廃インク回収タンク49(図25参照)に回収される。
クリーニング機構80は図9、図14、図15に示すように、キャップユニット30の下面にネジ止めされる12個の本体部81と、クリーニング部材82と、保湿部材83と、クリーニングブレード84と、収納容器91と、吸収体92とを含んでいる。
本体部81は、ワイパー35(35a〜35c)に対応する位置に配置されている。
クリーニング部材82は、4個の本体部81に対して1個ずつ設けられているとともに、本体部81に回転可能に支持されている。クリーニング部材82は、ローラー部材であり、ワイパー35の先端面35d(図26参照)に付着したインク22が転写されるように構成されている。クリーニング部材82としては、例えば、鋼材ローラーの表面をニッケルめっき処理したもの、ステンレスローラー、アルミローラーまたはアルミローラーの表面をアルマイト処理したもの、が用いられる。また、図14に示すように、クリーニング部材82の回転軸85の一方端部には、ワンウェイクラッチ(図示せず)を介して、回転軸85を一方向にのみ回転させるレバー86が下方に突出するように設けられている。回転軸85が回転することにより、クリーニング部材82の外周面(転写面)が移動(回転)する。なお、ワイプスライド機構、係合片47およびレバー86によって、ワイパー35の先端面35dがクリーニング部材82の転写面の清浄な部分に当接するように転写面を移動(回転)させる転写面移動機構が構成されている。
保湿部材83は図15に示すように、クリーニングブレード84の上流側(クリーニング部材82の回転方向上流側)に配置されている。保湿部材83は、吸液性が良好な材料(例えば、多孔質体または不織布)により形成されており、蒸発しにくい乾燥抑制剤(保湿液(例えば、グリセリン))を含浸している。保湿部材83がクリーニング部材82の転写面に接触して乾燥抑制剤を塗布することにより、クリーニング部材82の転写面に転写されたインク22の乾燥が抑制される。
また、本実施形態の洗浄液は収納容器91内に収納されている。収納容器91の開口部は吸収体92と接触している。吸収体92はクリーニング部材82と接触している。収納容器91に収納された洗浄液は、吸収体92を介してクリーニング部材82に到達する。
収納容器91および吸収体92は、図15に示すように、クリーニングブレード84の上流側(クリーニング部材82の回転方向上流側)に配置されている。吸収体92がクリーニング部材82の転写面に接触してクリーニング部材82に洗浄液を塗布する。
クリーニングブレード84は、クリーニング部材82の転写面に接触するように配置されており、クリーニング部材82の転写面に転写されたインク22を除去する。これにより、ワイパー35の先端面35dを転写面の清浄な部分に当接させることができる。
次に、本実施形態のプリンター100における記録ヘッド17a〜17cの回復動作について説明する。
ワイプユニット19により記録ヘッド17a〜17cの回復処理を行う場合、図16に示すように記録部9の下面に対向配置されている第1ベルト搬送部5を降下させる。そして、図17に示すように、キャップユニット30を第2の位置に残した状態でワイプ移動機構によりワイプユニット19を第2の位置から第1の位置に移動させる。
そして、ワイピング動作に先立って、記録ヘッド17a〜17cにより印字が行われていない状態において、流入側弁27(図6参照)を閉じ、シリンジポンプ21(図6参照)を加圧することにより、シリンダー21a内のインク22が第2供給路25を通って記録ヘッド17a〜17cに供給される。供給されたインク22は吐出ノズル18から強制的に排出(パージ)される。このパージ動作により、吐出ノズル18内の増粘インク、異物や気泡が排出され、記録ヘッド17a〜17cを回復することができる。
次いで、インク吐出面Fに排出されたインク22を拭き取るワイピング動作を行う。具体的には、図18に示すように、ワイプ昇降機構によりワイプユニット19を上昇させることによって、ワイパー35a〜35cを、記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fの拭き取り開始位置に圧接する。
そして、ワイパーキャリッジ移動モーター45(図12参照)によってワイパーキャリッジ31を矢印C方向に水平移動させることにより、図19に示すようにワイパー35a〜35cが記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fに吐出されたインク22を拭き取る。
ワイパー35a〜35cが記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fの下流側端部まで移動した後、ワイプ昇降機構によりワイパーキャリッジ31を下降させる。これにより、ワイパー35a〜35cを記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fから下方に退避させる。
その後、ワイプ移動機構によりワイプユニット19を第1の位置から第2の位置に移動させる。これにより、図20に示すように、ワイパー35(35a〜35c)は、クリーニング機構80のクリーニング部材82の真下の位置に配置される。
そして、図21に示すように、ワイプ昇降機構によりワイプユニット19が上昇されることによって、ワイパー35がクリーニング部材82の転写面(外周面)に対して略垂直に接触する。
その後、図22に示すように、ワイプ昇降機構によりワイプユニット19が下降されることによって、ワイパー35がクリーニング部材82の転写面から離間する。このようにして、ワイパー35の先端面35dのインク22の少なくとも一部がクリーニング部材82の転写面に転写される。
次に、図23に示すように、ワイパーキャリッジ移動モーター45(図12参照)により、ワイパー35が水平方向(図23の右方向)に移動される。このとき、ワイプユニット19の係合片47がクリーニング機構80のレバー86に係合して、クリーニング部材82が反時計回り方向に回転することによって、クリーニング部材82の転写面の清浄な部分が最下部に位置される。
そして、図24に示すように、ワイパーキャリッジ移動モーター45により、ワイパー35がクリーニング部材82の下方に戻される。なお、レバー86は図示しない付勢部材により時計回り方向に付勢されているので、レバー86も元の位置に戻る。
その後、図21に示すようにワイプ昇降機構によりワイパー35がクリーニング部材82の転写面に対して略垂直に接触される。このとき、ワイパー35の先端面35dが転写面の清浄な部分に当接する。そして、図22に示すようにワイプ昇降機構によりワイパー35がクリーニング部材82の転写面から離間される。また、図23および図24に示すように、ワイパー35が水平方向に往復移動され、クリーニング部材82が回転される。
このようにワイパー35をクリーニング部材82の転写面に対して略垂直に接離させることが10〜50回程度繰り返される。これにより、図25に示すように、ワイパー35の先端面35dのインク22がクリーニング部材82に転写しなくなるまで除去される。
また、クリーニング部材82が回転することにより、クリーニング部材82の転写面に、保湿部材83によって乾燥抑制剤が塗布され、かつ、吸収体92によって洗浄液が塗布されるとともに、クリーニングブレード84により転写面のインク22が回収される。また、クリーニングブレード84により集められた廃インクは、インク回収トレイ44に回収され、インク回収路48を介して廃インク回収タンク49に回収される。
なお、上記した回復動作では、ワイパー35の先端面35dだけをクリーニング部材82の転写面に接触させているが、図26に示すようにワイパー35の側面35eの先端面35d近傍のインク22も表面張力によってクリーニング部材82の転写面に転写される。このため、図27に示すように、ワイパー35の先端面35dから所定の距離L=約0.5mm以内の部分のインク22は除去される。
その結果、図28に示すように、次回の回復処理時にワイパー35の側面35eのインク22が記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fに付着するのを抑制することができる。
次に、本実施形態のプリンター100における記録ヘッド17a〜17cにキャップユニット30を装着する動作について説明する。
キャップユニット30により記録ヘッド17a〜17cにキャップを行う場合、図16に示すように記録部9の下面に対向配置されている第1ベルト搬送部5を降下させる。そして、図29に示すように、ワイプユニット19上にキャップユニット30を配置した状態で、ワイプ移動機構によりワイプユニット19およびキャップユニット30を第2の位置から第1の位置に移動させる。その後、ワイプ昇降機構によりワイプユニット19およびキャップユニット30を上昇させることによって、キャップユニット30を記録ヘッド17a〜17cに装着する。
本実施形態では、上記のように、転写面移動機構(ワイパーキャリッジ移動モーター45、係合片47、レバー86等)により、ワイパー35の先端面35dが転写面の清浄な部分に当接するように転写面を移動させる。これにより、クリーニング部材82の転写面からワイパー35にインク22が逆戻りするのを抑制することができる。
また、ワイプ昇降機構(支持アーム74、回転軸75、ワイプ昇降モーター76等)により、ワイパー35をクリーニング部材82の転写面に対して接離させることを複数回繰り返す。これにより、ワイパー35の先端面35dのインク22を確実に除去することができるので、次回の回復処理時にワイパー35に付着したインク22が記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fに付着するのを抑制することができる。その結果、記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fが汚れるのを抑制することができる。なお、ワイパー35をクリーニング部材82の転写面に対して接離させることを1回だけ行ったとしても、ワイパー35の先端面35dにはインク22が残ってしまう。
また、ワイパー35をクリーニング部材82の転写面に対して略垂直に接離させる。これにより、ワイパー35の先端面35dのインク22をクリーニング部材82に転写できるだけでなく、ワイパー35の側面35eの先端面35d近傍のインク22も表面張力によってクリーニング部材82に転写させることができる。このため、次回の回復処理時にワイパー35の側面35eのインク22が記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fに付着するのを抑制することができるので、記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fが汚れるのを抑制することができる。
また、上記のように、クリーニング部材82の転写面に転写されたインク22を除去するクリーニングブレード84を設けることによって、クリーニング部材82の転写面を清浄にすることができるので、転写面からワイパー35にインク22が逆戻りするのを容易に抑制することができる。また、ローラー部材からなるクリーニング部材82を用いることによって、クリーニング部材82の交換頻度を抑えることができる。
また、上記のように、クリーニング機構80は、転写面のインク22が乾燥するのを抑制するための乾燥抑制剤をクリーニングブレード84の上流側においてクリーニング部材82の転写面に塗布する保湿部材83を含む。これにより、転写面のインク22が乾燥するのを抑制することができるので、クリーニングブレード84により転写面のインク22を除去できなくなるのを抑制することができる。
また、上記のように、クリーニング機構80は、転写面のインク22の除去を容易にするための洗浄液をクリーニングブレード84の上流側においてクリーニング部材82の転写面に塗布する収納容器91および吸収体92を含む。これにより、クリーニング部材82の転写面のインク22の除去を容易にできるので、クリーニング部材82の転写面にインク22が付着され続けることを抑制できる。
また、上記のように、ワイプスライド機構(ワイパーキャリッジ移動モーター45等)によりワイパー35を往復移動させることによって、係合片47がレバー86に係合して回転軸85が一方向に回転する。これにより、クリーニング部材82の転写面を容易に移動させることができる。
また、上記のように、ワイパー35の先端面35dのインク22をクリーニング部材82に転写する転写動作を第2の位置(退避位置)において行うことにより、転写動作を印字動作中に行うことができる。これにより、転写動作を実行する時間を十分に確保することができるので、ワイパー35の先端面35dおよびその近傍のインク22が十分に除去されるまで転写動作を行うことができる。
また、上記のように、クリーニング機構80は、キャップユニット30の下面に取り付けられている。これにより、クリーニング機構80およびキャップユニット30を配置するための空間を省スペース化することができる。
また、上記のように、転写面が移動されていないとき(クリーニング部材82が回転していないとき)に、ワイパー35の先端面35dがクリーニング部材82の転写面に当接される。これにより、ワイパー35の先端面35dを転写面に安定して確実に当接させることができる。また、ワイパー35およびクリーニング部材82の摩耗を抑制することができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上記実施形態では、図15に示したようにクリーニングブレード84を、クリーニング部材82の回転方向(反時計回り方向)に対してカウンター方向で接触するように配置した例について説明したが、本発明はこれに限らず、図30に示した本発明の第1変形例のように、クリーニングブレード84を、クリーニング部材82の回転方向(反時計回り方向)に対してトレール方向で接触するように配置してもよい。
また、上記実施形態では、クリーニング部材82をローラー部材により形成した例について示したが、本発明はこれに限らない。図31に示した本発明の第2変形例のように、クリーニング部材82をベルト部材により形成してもよい。この場合、クリーニング部材82の内周面に配置されるローラー87のいずれかに、ローラー87を一方向にのみ回転させるレバー86を設けてもよい。なお、クリーニング部材82としては、例えば、ポリエステルベルト、ゴムベルト、ニッケル電鋳ベルト、を用いてもよい。
また、図32に示した本発明の第3変形例のように、クリーニング機構80を、クリーニング部材82が巻装された送出しローラー(送出し部材)88と、送出しローラー88から送り出されたクリーニング部材82を巻き取る巻取りローラー(巻取り部材)89とを含むように構成してもよい。この場合、レバー86を巻取りローラー89に設ければよい。本発明の第3変形例のように構成した場合であっても、送出しローラー88から供給される清浄な転写面にワイパー35を当接させることができるとともに、クリーニング部材82のうちのワイパー35からインク22が転写された部分を巻取りローラー89により巻き取ることができるので、クリーニング部材82の転写面からワイパー35にインク22が逆戻りするのを容易に抑制することができる。なお、クリーニング部材82としては、不織布等を用いることができる。また、本発明の第3変形例のように構成した場合、保湿部材83およびクリーニングブレード84は設ける必要がない。
また、上記実施形態では、レバー86および係合片47を設け、ワイパー35の水平移動に連動してクリーニング部材82の転写面を移動(回転)させる例について示したが、本発明はこれに限らず、駆動モーターを別途設け、その駆動力によりクリーニング部材82の転写面を移動させてもよい。ただし、この場合も、ワイパー35の先端面35dがクリーニング部材82の転写面に当接する際には、転写面を移動させないことが望ましい。
本実施形態の洗浄液によれば、記録ヘッドのノズル面を清掃するためのワイプブレードのクリーニング性能を、長期にわたって維持することができ、ノズル面の高いクリーニング性を実現できる。また、本実施形態の洗浄液によれば、記録ヘッドのノズル面にキャップ当接をするキャップ機構の場合、キャップ性能を確保することができる。
さらに、本実施形態の洗浄液によれば、キャップ性能を満足することができるので、長期保管された場合の吐出復帰性の向上を得ることができ、敷いては復帰するためのパージ用インクの量を減らすことができる。
以下に、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
[実施例1]
(顔料分散液Aの作製)
顔料分散樹脂A(質量平均分子量(Mw):20000、酸価:100)6.0質量部と、イオン交換水とを混合し、70℃で加熱して、顔料分散樹脂Aの分散液を得た。続いて、顔料分散樹脂Aの分散液84.5質量部と、顔料(シアンP.B−15:3)15質量部と、1,2−オクタンジオール0.5質量部とを容量0.6Lの反応容器に投入し、イオン交換水を用いて全量100質量部に調製した。その後、反応容器の内容物を加熱した。さらに、メディア型分散機(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製「DYNO(登録商標)−MILL」)を用いて、反応容器の内容物を分散させた。その結果、顔料分散体Aを含む顔料分散液Aが得られた。
(インクA)
40質量部の顔料分散液Aと、トリエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部と、2−ピロリドン10質量部と、グリセリン7質量部と、1,3−プロパンジオール13質量部とを反応容器に投入し、イオン交換水を用いて全量を100質量部に調製した。攪拌機(アズワン株式会社製「スリーワンモーター BL−600」)を用いて、回転数400rpmの条件で攪拌して反応容器内の内容物を均一に混合し、混合液を作製した。続けて、孔径5μmのフィルターを用いて、混合液をろ過した。その結果、インクAが得られた。
(実施例1の洗浄液)
40質量部の2−ピロリドン(2−Py)(三菱化学株式会社製)、30質量部の1,3−プロパンジオール、および、30質量部のトリエチレングリコールモノブチルエーテル(東邦化学工業株式会社製)を混合して実施例1の洗浄液を調製した。
[流動性テスト]
直径5cmのシャーレに3gのインクAと実施例1の洗浄液1gを入れ、60℃の環境下において1週間放置した。その後、温度を25℃に変更した後、シャーレを傾けて洗浄液の流動性を評価した。
○(良好) : 洗浄液は流動した。
×(不良) : 洗浄液は流動しなかった。
[実施例2]
2−ピロリドンの含有量を40質量部から50質量部に変更し、1,3−プロパンジオールの含有量を30質量部から25質量部に変更し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量を30質量部から25質量部に変更した点を除いて、実施例1と同様に実施例2の洗浄液を調製した。その後、実施例1と同様に、実施例2の洗浄液の流動性を評価した。
[比較例1]
2−ピロリドンの含有量を40質量部から30質量部に変更し、1,3−プロパンジオールの含有量を30質量部から35質量部に変更し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量を30質量部から35質量部に変更した点を除いて、実施例1と同様に比較例1の洗浄液を調製した。その後、実施例1と同様に、比較例1の洗浄液の流動性を評価した。
表1に、実施例1、2の洗浄液および比較例1の洗浄液の流動性テストの結果を示す。表1において、1,3−プロパンジオールを(A)と示し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを(a)と示している。
表1から理解されるように、実施例1および2の洗浄液のいずれも、2−ピロリドンの質量濃度が1,3−プロパンジオールの質量濃度およびトリエチレングリコールモノブチルエーテルの質量濃度よりも高く、実施例1および2の洗浄液の主成分は2−ピロリドンであり、一週間放置しても、実施例1、2の洗浄液は流動した。これに対して、比較例1の洗浄液では、1,3−プロパンジオールおよびトリエチレングリコールモノブチルエーテルの質量濃度が最も高く、比較例1の洗浄液の主成分は1,3−プロパンジオールおよびトリエチレングリコールモノブチルエーテルであり、一週間放置すると、比較例1の洗浄液は流動しなかった。
[実施例3]
2−ピロリドンの含有量を40質量部から60質量部に変更し、1,3−プロパンジオールの含有量を30質量部から20質量部に変更し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量を30質量部から20質量部に変更した点を除いて、実施例1と同様に実施例3の洗浄液を調製した。その後、実施例1と同様に、実施例3の洗浄液の流動性を評価した。
[実施例4]
1,3−プロパンジオールを1,2−プロパンジオール(三菱化学株式会社製)に変更し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルをジエチレングリコールモノブチルエーテル(東邦化学工業株式会社製)に変更した点を除いて、実施例3と同様に実施例4の洗浄液を調製した。その後、実施例1と同様に、実施例4の洗浄液の流動性を評価した。
[実施例5]
1,3−プロパンジオールをブタンジオール(三菱化学製)に変更し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルをトリエチレングリコール(東邦化学工業株式会社製)に変更した点を除いて、実施例3と同様に実施例5の洗浄液を調製した。その後、実施例1と同様に、実施例5の洗浄液の流動性を評価した。
[実施例6]
1,3−プロパンジオールを2−メチル−2,4−ペンタンジオール(三井化学株式会社製)に変更し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルをトリエチレングリコールモノメチルエーテル(東邦化学工業株式会社製)に変更した点を除いて、実施例3と同様に実施例6の洗浄液を調製した。その後、実施例1と同様に、実施例6の洗浄液の流動性を評価した。
[実施例7]
1,3−プロパンジオールの含有量を20質量部から40質量部に変更し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを含有させなかった点を除いて、実施例3と同様に実施例7の洗浄液を調製した。その後、実施例1と同様に、実施例7の洗浄液の流動性を評価した。
[実施例8]
1,3−プロパンジオールを含有させず、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量を20質量部から40質量部に変更した点を除いて、実施例3と同様に実施例8の洗浄液を調製した。その後、実施例1と同様に、実施例8の洗浄液の流動性を評価した。
表2に、実施例3−8の洗浄液の流動性テストの結果を示す。表2のジオール類において、1,3−プロパンジオールを(A)と示し、1,2−プロパンジオールを(B)と示し、ブタンジオールを(C)と示し、2−メチル−2,4−ペンタンジオールを(D)と示している。また、表2のグリコール類において、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを(a)と示し、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを(b)と示し、トリエチレングリコールを(c)と示し、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを(d)と示している。
表2から理解されるように、実施例3−7の洗浄液は、2−ピロリドンに加えて、ジオール類として、1,3−プロパンジオール(1,3−PG)、1,2−プロパンジオール、ブタンジオール、および、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのいずれを含有しており、実施例3−7の洗浄液は流動した。また、実施例3−6、8の洗浄液は、2−ピロリドンに加えて、グリコール類として、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、および、トリエチレングリコールモノメチルエーテルのいずれかを含有しており、実施例3−6、8の洗浄液は流動した。
[実施例9]
2−ピロリドンの含有量を30質量部から85質量部に変更し、1,3−プロパンジオールの含有量を30質量部から7.5質量部に変更し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量を30質量部から7.5質量部に変更した点を除いて、実施例1と同様に実施例9の洗浄液を調製した。その後、実施例1と同様に、実施例9の洗浄液の流動性を評価した。
[低温保存性テスト]
直径5cmのシャーレにインク3gと実施例9の洗浄液1gを入れ、0℃の環境下において3日間放置した。その後、洗浄液の凍結または固化の有無を確認した。
○(良好) : 洗浄液は凍結または固化していなかった。
△(普通) : 洗浄液は凍結または固化していた。
[実施例10]
2−ピロリドンの含有量を30質量部から90質量部に変更し、1,3−プロパンジオールの含有量を30質量部から5質量部に変更し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量を30質量部から5質量部に変更した点を除いて、実施例1と同様に実施例10の洗浄液を調製した。その後、実施例9と同様に、実施例10の洗浄液の流動性および低温保存性を評価した。
[実施例11]
2−ピロリドンの含有量を30質量部から95質量部に変更し、1,3−プロパンジオールの含有量を30質量部から2.5質量部に変更し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量を30質量部から2.5質量部に変更した点を除いて、実施例1と同様に実施例11の洗浄液を調製した。その後、実施例9と同様に、実施例11の洗浄液の流動性および低温保存性を評価した。
表3に、実施例9−11の流動性テストおよび低温保存性テストの結果を示す。表3において、1,3−プロパンジオールを(A)と示し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを(a)と示している。
表3から理解されるように、実施例9−11の洗浄液の主成分は2−ピロリドンであり、実施例9−11の洗浄液は、一週間放置しても流動した。なお、実施例9および10の洗浄液のいずれも、2−ピロリドンの質量濃度が90質量%以下であり、2−ピロリドンの質量濃度が高すぎないため、低温下で保存しても洗浄液は固化しなかった。これに対して、実施例11の洗浄液は、2−ピロリドンの質量濃度が95質量%以下であり、2−ピロリドンの質量濃度が比較的高いため、低温下で3日間保存すると洗浄液は固化してしまった。
[すり抜けテスト]
SUSで構成されたローラー状のクリーニング部材と、クリーニング部材の表面と接触するクリーニングブレードとを用意した。実施例3の洗浄液をクリーニング部材に流しながら、クリーニング部材に付着したインクがクリーニングブレードをすり抜けるか否か目視にて確認した。
○(良好):クリーニングブレードをすり抜けたインクが確認されなかった。
△(普通):クリーニングブレードをすり抜けたインクが確認された。
[実施例12]
2−ピロリドンの含有量を60質量部から59.5質量部に変更し、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)を0.5質量部含有させた点を除いて、実施例3と同様に実施例12の洗浄液を調製した。その後、実施例3と同様に、実施例12の洗浄液の流動性およびクリーニングブレードのすり抜けの有無を評価した。
[実施例13]
2−ピロリドンの含有量を60質量部から59質量部に変更し、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)を1.0質量部含有させた点を除いて、実施例3と同様に実施例13の洗浄液を調製した。その後、実施例11と同様に、実施例13の洗浄液の流動性およびクリーニングブレードのすり抜けの有無を評価した。
表4に、実施例3、12−13の洗浄液の流動性テストおよびすり抜けテストの結果を示す。表4において、1,3−プロパンジオールを(A)と示し、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを(a)と示している。
表4から理解されるように、実施例3、12−13の洗浄液の主成分は2−ピロリドンであり、実施例3、12−13の洗浄液は、一週間放置しても流動した。なお、実施例3の洗浄液は、界面活性剤として機能するオルフィンE1010を含有しなかったため、クリーニングブレードをすり抜けたインクは確認できなかった。これに対して、実施例12、13の洗浄液は、界面活性剤として機能するオルフィンE1010を含有しており、クリーニングブレードをすり抜けたインクが確認された。