上述した従来のX線検査装置においては、基板上の配線パターンの像を利用しているため、検査対象部の周囲に配線パターンが存在しない場合には検査対象部の位置を決定することができない。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、検査対象部の像に基づいて検査対象部の位置を特定する技術の提供を目的とする。
前記目的を達成するため、X線検査装置は、所定方向に対して傾斜した角度でX線を検査対象部に照射して複数のX線画像を取得し、再構成演算を行う。そして、当該X線検査装置は、再構成演算によって得られた再構成情報に基づいて、所定方向に垂直な方向のX線画像のエッジ量を取得し、当該エッジ量の所定方向への変化に基づいて検査対象部の所定方向の端部の位置を取得する。
すなわち、所定方向に対して傾斜した角度でX線を検査対象部に照射して複数の撮影位置でX線画像を撮影して再構成演算を行った場合、検査対象部の外側においては、所定方向の端部から所定方向に広がるようにアーチファクトが発生する。しかし、所定方向に垂直な方向に広がるようなアーチファクトの発生は所定方向の発生に比べて少ない。従って、検査対象部の所定方向の端部付近において複数の位置で所定方向に垂直な方向に切断した断面のX線画像を再構成情報に基づいて生成した場合、断面が検査対象部を通るようなX線画像において検査対象部のエッジは明らかである。しかし、断面が検査対象部を通らないX線画像(アーチファクトを切断する断面のX線画像)において検査対象部のエッジは不明瞭である。
そこで、本発明の一実施形態にかかるX線検査装置においては、所定方向に垂直な方向へ切断した断面のX線画像におけるエッジ量に着目し、当該エッジ量の所定方向への変化を解析する構成とした。すなわち、検査対象部を切断する断面ではエッジが明らかであり、検査対象部を切断しない(アーチファクトを切断する)断面ではエッジが不明瞭であるため、所定方向にエッジが急変する位置を特定すれば、当該位置に基づいて検査対象部の所定方向の端部の位置を取得することができる。この構成によれば、検査対象部の像に基づいて検査対象部の位置を特定することができる。
ここで、X線画像取得手段においては、再構成演算が可能な複数のX線画像を取得することができればよい。すなわち、所定方向に対して傾斜した角度でX線を検査対象部に照射する構成において、複数の撮影位置でX線画像が撮影されれば良い。X線画像の撮影は、X線の出力範囲内に検査対象部を配置し、透過したX線を検出器によって撮影することによって行われればよい。X線画像の撮影に際しては、Xの照射範囲内に所望の検査対象部が含まれるように配設することができればよい。このためには、検査対象部を容易に移動できる構成を採用するのが好ましく、例えば、X−Yステージや回転ステージ等に検査対象部を載置する構成を採用することができる。
なお、X線は、所定方向に対して傾斜した角度で検査対象部に照射される。すなわち、所定方向に平行な回転軸とX線の照射方向とが当該傾斜した角度で交わる状態とされ、回転軸を中心にX線の照射方向が回転したとみなすことができるように、X線源と検出面とを複数の撮影位置に配置することによって撮影が行われる。この構成によれば、再構成情報を切断する位置を所定方向に変化させることで、異なる切断位置のX線画像を解析することが可能になる。なお、この場合の構成例としては、所定方向に垂直な方向にX−Yステージや回転ステージを配向させれば、検査対象部を含む基板の平面が所定方向に垂直となり、基板の厚さ方向が所定方向となるようにして検査対象部のX線画像を解析することが可能になる。
再構成演算手段は、複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行することにより、検査対象部の3次元構造に関する情報(再構成情報)を取得することができればよい。すなわち、再構成演算手段は、再構成情報に基づいて所定方向に垂直な方向に像を切断した断面のX線画像が取得できるように、当該再構成情報を生成することができればよい。なお、異なる方向から撮影したX線画像を用いれば、再構成演算手段によって再構成演算を実行することが可能であるが、この再構成演算を行う場合には、検査対象部に対して所定の対称性を有する位置からX線画像を撮影するのが好ましい。
このためには、検査対象部を配置する平面に対して所定の関係を持つ軸を中心にX線検出器の検出面を回転させたことを想定した場合の位置(以下、回転位置と呼ぶ)に検出面を配設する。より具体的には、検査対象部の移動平面(X−Yステージによる移動平面等)に対して垂直な軸を中心にした所定の半径の円周上に回転位置を想定すればよい。以上のように、検出面を複数の回転位置に配置すれば、回転対称性のある位置から検査対象部を撮影することができ、撮影したX線画像の回転対称性を考慮して3次元構造を解析することが可能になる。
エッジ量取得手段は、再構成演算によって得られた再構成情報に基づいて、所定方向に垂直な方向のX線画像のエッジ量を取得することができればよい。すなわち、エッジ量取得手段は、再構成情報に基づいて所定方向の任意の位置についての断面のX線画像を取得し、任意の位置の断面画像に基づいてエッジ量(断面内で隣接する画素同士の階調値変化が大きいほど大きい値になる特徴量)を取得することができるように構成されていれば良い。そして、エッジ量の所定方向への変化に基づいて検査対象部の所定方向の端部を特定できるようにするため、エッジ量取得手段においては、任意の断面のエッジ量を取得できる構成において、少なくとも、検査対象部の端部付近の複数の位置(検査対象部の所定方向の端部を含むとともに所定方向に沿って並ぶ複数の位置)における断面のエッジ量を取得すれば良い。なお、エッジ量は、公知の各種のフィルタ(例えば、Sobelフィルタ,Prewittフィルタ,Robertsフィルタ,Laplacianフィルタ等)で取得することができる。むろん、エッジ量の抽出に際しては、一旦、ぼかし処理を行ってノイズやアーチファクトの影響を低減するなどの前処理を行ってもよい。
端部位置取得手段は、エッジ量の所定方向への変化に基づいて検査対象部の所定方向の端部の位置を取得することができればよい。すなわち、検査対象部の像の所定方向への変化の中でエッジ量の変化に着目すれば、検査対象部の所定方向の端部(または端部付近)でエッジ量が急激に変化するため、当該急激な変化が発生する位置に基づいて検査対象部の端部の位置を取得することができればよい。
エッジ量の変化は、所定方向について解析されれば良い。すなわち、所定方向に傾斜した角度でX線を検査対象に照射して複数のX線画像を取得した場合、検査対象部の外側においては、所定方向の端部から所定方向に広がるようにアーチファクトが発生するが、所定方向に垂直な方向の端部から所定方向に垂直な方向に広がるようなアーチファクトの発生は所定方向の発生に比べて少ない。そこで、アーチファクトの有無に起因するエッジ量の変化によって検査対象部の所定方向の端部を特定することができるように、所定方向へのエッジ量の変化が取得されれば良い。
このような変化を解析するための具体例として、端部位置取得手段が、エッジ量の所定方向についての微分値のピーク位置に基づいて検査対象部の所定方向の端部の位置を取得する構成を採用しても良い。すなわち、エッジ量の絶対値は、X線の照射範囲内での強度分布の変動や、X線の照射角度等によって変動し得るため、例えば、エッジ量の絶対値と閾値とを比較する構成によって、検査対象部の像であるか否かを判定することは困難である。
しかし、エッジ量の絶対値が位置によって変動するとしても、検査対象部の像とアーチファクトとの境界においては、エッジ量が急峻に変化することは確実である。従って、エッジ量の所定方向についての微分値を取得すれば、エッジ量が急峻に変化する位置を微分値のピーク位置として特定することができる。そこで、当該ピーク位置に基づいて検査対象部の所定方向の端部の位置を取得すれば、X線の強度が位置によって変動する場合であっても、確実に検査対象部の所定方向の端部の位置を取得することができる。なお、微分値のピーク位置は、所定方向における微分値が極大値または極小値となる位置である。
エッジ量の所定方向への変化に基づいて検査対象部の所定方向の端部の位置を取得するための構成としては、種々の構成を採用可能である。例えば、エッジ量の所定方向についての微分値のピーク位置を取得し、ピーク位置自体を検査対象部の所定方向の端部の位置として取得しても良いが、ピーク位置を補正した位置を検査対象部の所定方向の端部の位置として取得しても良い。
後者としては、端部位置取得手段が、ピーク位置から検査対象部の方向にオフセットした位置を端部の位置として取得する構成を採用しても良い。すなわち、アーチファクトは、検査対象部の端部から所定方向に広がるように発生するため、検査対象部の所定方向の端部から検査対象部の外部に向けて所定方向に沿ってエッジ量が急激に変化するものの、当該変化は所定方向の端部よりもわずかに外側で発生することが多い。そこで、ピーク位置から検査対象部の方向(検査対象部の内側に向けた方向)にオフセットをすれば、ピーク位置に基づいて、検査対象部の所定方向の端部の位置を正確に特定することができる。
ピーク位置からのオフセット量は、種々の手法によって特定することが可能である。例えば、統計等によって予め特定された固定量であっても良いし、各種の要素によって変動する量であっても良い。後者としては、例えば、X線の照射範囲内での検査対象部の位置やX線の所定方向に対する傾斜角、検査対象部に対するX線の照射角、検査対象部の所定方向の端部から所定方向に広がるアーチファクトの範囲(所定方向の長さ)等に基づいて変動させることが可能である。
本発明のX線検査装置においては、検査対象部の所定方向の端部の位置を利用して良否判定を実行可能であることが好ましい。この良否判定としては、ボイドの形状や位置、検査対象部の断層像、断面積、形状、はんだ付けにおけるブリッジや接触不良の有無等を検査する構成を採用可能である。この良否判定に際しては、検査を行うための検査位置、例えば、検査対象となる断層面の位置、はんだ付けにおけるブリッジや接触不良の有無を検査する対象となる位置等を特定する必要がある。そこで、X線検査装置は、検査対象部の所定方向の端部の位置に基づいて検査に関連する位置(例えば、ボイドの位置)を特定して良否判定を行う。
なお、X線検査装置においては、検査対象部の端部付近の複数の位置の断面のX線画像のエッジ量に基づいて検査対象部の所定方向の端部を特定するため、検査対象部の像に基づいて所定方向の端部を特定していることになる。従って、X線検査装置における解析において検査対象部以外の像(例えば、配線パターンの像)を参照することなく、検査対象部の所定方向の端部を特定することができる。
従って、検査対象部以外の像が撮影されないような状況であっても検査対象部の良否判定を行うことができる。このような状況としては、例えば、配線パターンが形成される前の基板や基板のコア材に対する検査が行われる状況が想定される。より具体的には、これらの基板や基板のコア材に対して形成されたスルーホールの内壁がメッキされる場合やスルーホールの内部がメッキ充填される場合等が挙げられる。
これらの場合において、スルーホール内のメッキが適正に機能するためには、当該メッキの部分において既定の電気伝導率が確保され、また、ボイド等が存在しないこと等が必要とされ、基板における配線パターンが形成される前にメッキの良否が判定されることが好ましい。このような場合であっても、X線検査装置においてスルーホール内のメッキを検査対象部とすれば、当該検査対象部の所定方向の端部(例えば、充填スルーホールであれば充填によって形成される円柱の円状の端面)の位置を取得することができる。
従って、X線検査装置において、当該検査対象部の所定方向の端部の位置に基づいて、ボイドの有無を検査する検査範囲やボイドの位置等を特定することで良否判定を正確に実行することができる。例えば、検査対象部の所定方向の端部より外側の位置にはボイドが存在し得ないが、当該外側の位置においては検査対象部に近いほどアーチファクトにより像が不明瞭となっている。従って、当該外側の位置が検査対象とされた場合、アーチファクトとボイドとが区別できなくなることによってボイドが存在すると誤判定される場合が多い。この場合、良品が不良品と判定されることになる。しかし、所定方向の端部が正確に特定されていれば、検査対象部の外側において存在し得ないボイドを存在すると誤判定することはなく、正確に良否判定を行うことができる。
また、検査対象部内のボイドは、基板の使用過程で移動し得るため、既定以上の大きさのボイドが所定方向の端部から既定距離以下の範囲に存在すると、基板の使用過程でボイドが検査対象部の端部に露出し、接触不良や変形の原因となる。従って、所定方向の端部が正確に特定されていれば、X線検査装置は、既定以上の大きさのボイドが所定方向の端部から既定距離以下の範囲に存在する場合に正確に不良であると判定することができる。
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法やプログラムにおいても本発明を適用可能である。以上のようなX線検査装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。むろん、発明の実施態様がソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。また、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。一次複製品、二次複製品などの複製段階についても同等である。その他、供給装置として通信回線を利用して行う場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態であってもよい。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)X線検査装置の構成:
(2)X線検査処理:
(3)他の実施形態:
(1)X線検査装置の構成:
図1は本発明の一実施形態にかかるX線検査装置の概略ブロック図である。X線検査装置は、X線撮像機構部10と制御部20とを備えている。X線撮像機構部10は、X線発生器11とX線検出器12とを備えている。X線撮像機構部10は、検査対象部を含む部品WとX線発生器11とX線検出器12とが所定の相対位置関係となった状態で、X線発生器11によって部品WにX線を照射させる。
X線発生器11は、X線を出力するX線出力部11aを備えており、所定の強度でX線を部品Wに照射することができる。X線検出器12は、X線の強度を検出する検出面12aを備えており、部品Wを透過したX線の透過量を反映したX線画像を撮影することができる。すなわち、X線検出器12は、検出面12aの各位置におけるX線の透過量の画像を示すX線画像データ26bを生成する。
本実施形態において部品Wはメッキ充填されたスルーホールを有する基板(または基板のコア材)であり、部品Wは図示しない搬送機構によって所定の平面に沿って搬送される。すなわち、未検査の部品Wが所定の平面に沿って搬入され、X線の照射範囲に配置され、検査された後に再度搬送機構によって搬出される。本実施形態においては、X線発生器11とX線検出器12と部品Wとの相対位置関係を変化させる図示しない位置決め機構が備えられている。すなわち、位置決め機構は、X線の照射範囲内で部品Wを所定の平面(X−Y平面と呼ぶ)に沿って2次元的に移動させることが可能であるとともに、検査対象部とX線出力部11aと検出面12aとの少なくとも1個の位置を移動させる移動機構を備えており、再構成演算を実施するためのX線画像を取得できるように検査対象部とX線出力部11aと検出面12aとの相対位置関係を調整可能である。
図2Aは、X線が部品Wに照射される様子を示す模式図であり、同図においては、横方向がX−Y平面に平行な方向であり、上下方向がX−Y平面に垂直なZ方向である。同図2Aにおいては、部品Wに含まれる検査対象部Waとその周囲に存在するX線発生器11のX線出力部11aおよびX線検出器12の検出面12aを模式的に示している。本実施形態における検査対象部Waは、部品Wとしての基板に形成された円柱状のスルーホールをメッキで充填することによって形成された電気伝導体であり、円柱状の外形である。
本実施形態において、位置決め機構は、検査対象部WaとX線出力部11aと検出面12aの相対的な位置関係が回転軸Aに対して回転するように変動させる。すなわち、本実施形態においては、検査対象部WaとX線出力部11aと検出面12aとの少なくとも1個が移動可能に構成されており、位置決め機構は、X線出力部11aと検出面12aとが回転軸Aに対して実質的に回転方向R、R'のように回転するように位置を変更させることができる。例えば、図2Aに示すように、X線出力部11aと検出面12aとの双方が回転移動されても良いし、X線出力部11aが固定され、その出力範囲において検出面12aと部品Wが回転されても良いし、X線出力部11aと検出面12aとが固定されX線出力部11aの出力範囲において部品Wが回転されてもよい。
各部の相対位置関係がどのように変動するとしても、X線出力部11aは、所定の立体角の範囲にX線を出力可能であり、検査対象部Waを通るX線の光軸は軸Aに対して所定角度だけ傾斜している。そして、円柱状の検査対象部Waはその軸がZ方向に平行に配向され、この状態でX線画像が撮影されることによって検査対象部Waに対する検査が行われる。すなわち、本実施形態においてX線発生器11は、所定方向であるZ軸方向に対して傾斜した角度でX線を検査対象部Waに対して照射するように構成されている。さらに、X線の出力方向がZ軸方向に傾斜した状態で、A軸周りの回転角が異なる複数の撮影位置で撮影が行われる。図2Aに示す実線と破線は、回転角が180°異なる2カ所の撮影位置を模式的に示している。
次に制御部20について説明する。制御部20は、発生器制御部21と検出器制御部22と位置決め機構制御部23と入力部24と出力部25とメモリ26とCPU27とを備えている。メモリ26はデータを記憶可能な記憶媒体であり、プログラムデータ26aとX線画像データ26bとが記憶される。CPU27は、プログラムデータ26aを読み出して実行することにより、後述する各種処理のための演算を実行する。なお、メモリ26はデータを記憶することができればよく、RAMやEEPROM,HDD等種々の記憶媒体を採用可能である。
位置決め機構制御部23は、検査対象部WaのX線画像を撮影する撮影位置となるように、検査対象部WaとX線出力部11aと検出面12aとの少なくとも1個の位置を調整する。発生器制御部21は、X線発生器11を制御し、X線発生器11から部品Wに対してX線を照射させる。検出器制御部22は、X線検出器12が検出したX線の強度、すなわち透過量の画像を示すX線画像データ26bを取得する。X線画像データ26bは複数の画素の階調値によって構成される画像データであり、各画素の階調値はX線検出器12が検出したX線の強度を示す。検出器制御部22は、X線検出器12からX線画像データ26bを取得し、メモリ26に記憶する。出力部25は部品Wの検査結果等を表示するディスプレイであり、入力部24は利用者の入力を受け付ける操作入力機器である。
CPU27は、部品Wに含まれる検査対象部Waの良否判定を行うために、プログラムデータ26aに基づいてX線画像取得部27aと再構成演算部27bとエッジ量取得部27cと端部位置取得部27dと良否判定部27eとの各機能を実行する。X線画像取得部27aは、X軸方向に対して傾斜した角度でX線を検査対象部Waに照射して撮影した複数のX線画像を取得する機能をCPU27に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、CPU27は、X線画像取得部27aの処理により、発生器制御部21,検出器制御部22,位置決め機構制御部23に対して所定の指示を出力し、再構成演算を実行するためのX線画像データ26bを取得する処理をCPU27に実行させる。
再構成演算部27bは、複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行する処理をCPU27に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、CPU27は、再構成演算部27bの処理により、X線画像データ26bに基づいて再構成演算を実行する。この結果、X,Y,Z軸で構成される3次元空間内で再構成情報が定義された状態、すなわち、3次元空間内の座標毎にX線の吸収量に対応した値が定義された状態となる。以後、特定の平面内での再構成情報を当該平面で再構成情報を切断した断面のX線画像と呼ぶ。
このように生成された再構成情報は、検査対象部WaのX線の吸収量に応じた階調値を3次元空間内の座標毎に示しているため、当該階調値に基づいて検査対象部Waの3次元構造を解析することができる。しかし、本実施形態のように複数のX線画像データ26bに基づいて生成された再構成情報において、アーチファクトが発生することを避けることはできない。
当該アーチファクトは種々の要素を反映した強度で発生するが、本実施形態のようにZ軸方向に傾斜した角度でX線が検査対象部Waに照射される構成においては、Z軸方向の端部から検査対象部Waの外側においてZ軸方向に広がるアーチファクトが発生する。すなわち、図2Aに示す領域Za,Zbにおいては、検査対象部Waが存在しないにもかかわらず、再構成情報において検査対象部Waの像と区別することが困難なアーチファクトが発生する。
図2Bは、再構成情報の実例を示す図である。図2Bの左側の画像は再構成情報に基づいてZ軸方向に平行な方向に検査対象部Waを切断した断面のX線画像Izの例を示している。当該X線画像Izで示されるように、検査対象部WaのZ軸方向に垂直な端部(側面方向)付近においては境界が明瞭である。一方、検査対象部WaのZ軸方向の端部付近においては、上下方向(Z軸方向に沿って外側に広がる方向)において境界が不明瞭である。従って、Z軸方向の端部から検査対象部Waの外側においてZ軸方向に広がるアーチファクトが発生している。
図2Bに示すX線画像Izにおいては、Z方向の位置Z2が検査対象部WaのZ軸方向の端部である。しかし、上述のようにアーチファクトが形成されていると、Z軸方向に平行な方向に検査対象部Waを切断した断面のX線画像Izを解析しても、検査対象部WaのZ軸方向の端部を特定することは困難である。
しかし、再構成情報に基づいてZ軸方向に垂直な方向に検査対象部Waを切断した断面のX線画像を解析すると、検査対象部WaのZ軸方向の端部を特定することができる。図2Bにおいては、右側に、再構成情報に基づいてZ軸方向に垂直な方向に検査対象部Waを切断した断面のX線画像Ixy1〜Ixy3を示している。なお、X線画像Ixy1〜Ixy3の切断位置は、図2Bに示すZ方向の位置Z1〜Z3である。これらのX線画像Ixy1〜Ixy3に示されるように、位置Z1,Z2において検査対象部Waの像のエッジは明瞭であるが、位置Z3において中央部に存在するアーチファクトのエッジは不明瞭である。従って、Z方向に垂直な方向の断面のX線画像におけるエッジ量がZ方向に変化する様子を解析すれば、検査対象部WaのZ方向の端部を取得することができる。
エッジ量取得部27cは、再構成演算によって得られた再構成情報に基づいて、所定方向に垂直な方向のX線画像のエッジ量を取得する処理をCPU27に実行させるプログラムである。本実施形態において、CPU27は、エッジ量がZ方向に変化する様子を解析するため、エッジ量取得部27cの処理により、再構成情報に基づいて、検査対象部WaのZ軸方向の端部を含む所定範囲において、Z軸方向の位置が異なる複数個の切断位置に置いてZ軸方向に垂直な方向に再構成情報を切断した断面のX線画像を取得する。そして、CPU27は、各X線画像の各画素においてエッジ抽出フィルタを適用し、エッジ量(エッジ量の総和)を取得する。なお、エッジ量は所定の手法で規格化されることが好ましい。規格化としては、種々の手法を採用可能であり、例えば、各X線画像の画素数を同一にする手法や、単位面積当たりのエッジ量や単位画素当たりのエッジ量を取得する手法等が挙げられる。
端部位置取得部27dは、エッジ量の所定方向への変化に基づいて検査対象部の所定方向の端部の位置を取得する処理をCPU27に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、CPU27は、端部位置取得部27dの処理により、上述の複数の断面のX線画像のエッジ量が急変するZ軸方向の位置を特定し、当該位置に基づいて検査対象部WaのZ方向の端部の位置を取得する。この構成によれば、検査対象部Waの像に基づいて検査対象部Waの端部の位置を特定することができる。従って、配線パターンが形成されていない基板や基板のコア材においてメッキで充填されたスルーホール等を検査対象部Waとした場合であっても、正確に検査対象部WaのZ軸方向の端部の位置を特定することができる。
良否判定部27eは、検査対象部Waの所定方向の端部の位置に基づいて検査範囲を特定し、検査対象部Waの良否を判定する機能をCPU27に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、CPU27は、良否判定部27eの処理により、検査対象部WaのZ軸方向の端部よりも内側の像に基づいてボイドの有無を特定し、既定以上の大きさのボイドがZ軸方向の端部から既定距離以下の範囲に存在する場合に、検査対象部Waが不良であると判定する。当該条件に合致しない場合、CPU27は検査対象部Waが不良でないと判定する。
(2)X線検査処理:
図3Aは、X線検査処理を示すフローチャートである。当該X線検査処理は、検査対象の部品WがX線の照射範囲に搬送された後に実行される。X線検査処理において、CPU27は、X線画像取得部27aの処理により、CT撮影処理を行う(ステップS100)。すなわち、CPU27は、X線画像取得部27aの処理により、発生器制御部21,検出器制御部22,位置決め機構制御部23に対して所定の指示を出力し、Z軸方向に傾斜した角度でX線が検査対象部Waに照射されるように、各部の配置を調整する。さらに、CPU27は、X線画像取得部27aの処理により、発生器制御部21に対して所定の指示を出力して所定の出力でX線を出力させ、検出器制御部22に対して所定の指示を出力してX線画像データ26bを取得する。さらに、CPU27は、以上のようにX線画像データ26b撮影する処理を、軸Aを回転軸とした回転を行った後の複数の撮影位置で実行し、複数の撮影位置で撮影したX線画像データ26bをメモリ26に記録する。
次に、CPU27は、再構成演算部27bの処理により、再構成演算処理を実行する(ステップS110)。再構成演算は、検査対象部Waの3次元構造を再構成することができれば良く、種々の処理を採用可能である。例えば、フィルタ補正逆投影法を採用可能である。この処理においてCPU27は、まず、複数のX線画像のいずれかに対してフーリエ変換を実施し、フーリエ変換で得られた結果に対して周波数空間でフィルタ補正関数を乗じる。さらに、この結果に対して逆フーリエ変換を実施することで、フィルタ補正を行った画像を取得する。尚、このフィルタ補正関数は、画像のエッジを強調するための関数等を採用可能である。
続いて、フィルタ補正後の画像を、それが投影された軌跡に沿って3次元空間へ逆投影する。すなわち、X線検出器12の検出面12aにおけるある位置の像に対応する軌跡は、X線発生器11の焦点とこの位置とを結ぶ直線であるので、この直線上に画像を逆投影する。以上の逆投影を複数のX線画像のすべてについて行うと、3次元空間上で検査対象部Waが存在する部分のX線吸収係数分布が強調され、検査対象部Waの3次元形状を示す再構成情報が得られる。
次に、CPU27は、エッジ量取得部27cおよび端部位置取得部27dの処理により、検査対象部WaのZ軸方向の端部を取得する(ステップS120)。すなわち、CPU27は、エッジ量取得部27cの処理により、再構成情報から、検査対象部WaのZ軸方向の端部を含む所定範囲を特定する。また、CPU27は、当該所定範囲の再構成情報に基づいて、X−Y平面に平行な所定の面積の断面のX線画像であって、Z軸方向の位置が異なる複数のX線画像を取得する。そして、CPU27は、所定のエッジ抽出フィルタで各X線画像のエッジ量を取得する。
さらに、CPU27は、端部位置取得部27dの処理により、エッジ量のZ軸方向についての微分値を取得する。当該微分値の大きさ(絶対値の大きさ)は、エッジ量のZ軸方向についての変化量の大きさに対応しているため、CPU27は、微分値が極大値または極小値となるZ軸方向の位置を特定することにより、エッジ量のZ軸方向の変化量が最大となるZ軸方向の位置を特定する。
図3Bは、Z軸方向の位置毎のエッジ量とエッジ量の微分値との例を示す図である。図3Bにおいては、横軸がZ軸方向の位置(μm)、左側の縦軸がエッジ量、右側の縦軸が微分値であり、実線の曲線がエッジ量、一点鎖線の曲線が微分値である。同図3Bにおいては、破線の矢印で検査対象部Waの端部から端部までの範囲Rを示しており、当該範囲Rにおいて実線の曲線で示されるように、エッジ量の変化は緩やかである。一方、範囲Rの外側において、エッジ量の変化は急峻である。ただし、アーチファクトの影響により範囲Rの外側のエッジ量はZ軸方向の変化に応じて急激に変化する傾斜した曲線となる。このため、図3Bにおいて一点鎖線の曲線で示されるように微分値には、範囲Rの外側において検査対象部Waの端部の極めて近くにピーク(極大値または極小値)が存在する。
従って、エッジ量の微分値のピーク位置が検査対象部WaのZ軸方向の端部の位置であるとみなすことも可能であるが、本実施形態においてCPU27は、当該ピーク位置が検査対象部Waの端部からわずかに外側になることに着目し、より正確に検査対象部Waの端部の位置を取得するための処理を行う。具体的には、図3Bに示すように、微分値のピーク位置P1は、範囲Rよりも距離L1だけ検査対象部Waの外側であり、微分値のピーク位置P2は、範囲Rよりも距離L2だけ検査対象部Waの外側である。
そこで、CPU27は、端部位置取得部27dの処理により、ピーク位置のZ軸方向の位置から検査対象部Waの方向(検査対象部Waの内側に向けた方向)にオフセットした位置を端部の位置として取得する。すなわち、CPU27は、ピーク位置P1から距離L1だけ検査対象部Waの内側にオフセットした位置P1eを検査対象部Waの端部の位置として取得する。また、CPU27は、ピーク位置P2から距離L2だけ検査対象部Waの内側にオフセットした位置P2eを検査対象部Waの端部の位置として取得する。なお、オフセット量は予め決められていれば良く、本実施形態においては、検査対象部Waの下側(図3Bで示す位置P1e側)と検査対象部Waの上側(図3Bで示す位置P2e側)のそれぞれについてオフセット量が統計的に決められている。すなわち、端部の位置が判明しているサンプルで複数回計測した結果から予めオフセット量が特定されている。
なお、本実施形態においては、エッジ量のZ軸方向への変化を微分値によって特定しているため、検査対象部Waの端部を確実に特定することができる。すなわち、エッジ量の絶対値は、X線の照射範囲内での強度分布の変動や、X線の照射角度等によって変動し得る。例えば、図3Bにおいて実線で示す実例においては検査対象部Waの上下の端部でエッジ量の絶対値が大きく異なり、このようなX線の強度分布を反映し、位置P1eの外側におけるエッジ量と、位置P2eの内側におけるエッジ量とが同等の大きさになっている。従って、エッジ量の絶対値と閾値とを比較する構成によって、検査対象部の像であるか否かを判定することは困難である。しかし、本実施形態においては、エッジ量のZ軸方向の微分値に基づいて検査対象部WaのZ軸方向の端部が特定されるため、X線の強度が位置によって変動する場合であっても、確実に検査対象部のZ軸方向の端部の位置を取得することができる。
なお、ステップS120を実行する前に、必要に応じてCPU27が所定の前処理を実行しても良い。例えば、再構成情報に含まれる検査対象部Waの像の位置が予め特定されていない場合、再構成情報に基づいて検査対象部Waの位置を特定する処理(例えば、メッキの像の重心位置を特定する処理)等を行ってもよい。また、部品Wが撓むなどの要因によって検査対象部Waの円柱軸がZ軸方向に対して傾いている場合、当該円柱軸がZ軸方向に平行になるように再構成情報の座標を補正する処理等を行ってもよい。
以上のようにして検査対象部WaのZ軸方向の端部の位置が取得されると、CPU27は、良否判定部27eの処理により、良否判定処理を行う(ステップS130)。すなわち、CPU27は、良否判定部27eの処理により、検査対象部WaのZ軸方向の端部よりも内側の像に基づいてボイドの有無を特定し、既定以上の大きさのボイドがZ軸方向の端部から既定距離以下の範囲に存在する場合に、検査対象部Waが不良であると判定する。当該条件に合致しない場合、CPU27は検査対象部Waが不良でないと判定する。
なお、本実施形態のように、検査対象部Waが正確に特定されると、良否判定の精度を向上させることができる。すなわち、検査対象部WaのZ軸方向の端部より外側の位置にはボイドが存在し得ないが、当該外側の位置においては検査対象部Waに近いほどアーチファクトにより像が不明瞭となっており、ボイドの誤検出が誘発されやすい。しかし、本実施形態においてCPU27は、アーチファクトの影響を受けない部位のエッジ量からアーチファクトの影響を受ける部位のエッジ量への変化に基づいて検査対象部Waの端部を特定しているため、Z軸方向の端部が正確に特定される。従って、CPU27は、検査対象部Waの外側を検査範囲とすることはなく、この結果、検査対象部Waの外側において存在し得ないボイドを存在すると誤判定することが防止され、正確に良否判定を行うことができる。
さらに、検査対象部Wa内のボイドは、基板の使用過程で移動し得るため、既定以上の大きさのボイドがZ軸方向の端部から既定距離以下の範囲に存在すると、基板の使用過程でボイドが検査対象部Waの端部に露出し、接触不良や変形の原因となる。このような判定を行うため際に、検査対象部WaのZ軸方向の端部の位置が不正確であると、ボイドと当該端部との距離が不正確になり、誤判定が発生する。しかし、本実施形態においては、Z軸方向の端部が正確に特定されているため、正確に良否判定を行うことができる。
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、エッジ量の所定方向への変化に基づいて検査対象部の所定方向の端部の位置を取得する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、検査対象部はメッキによって充填されたスルーホールに限定されず、BGAにおけるバンプ、C4方式で利用されるバンプ等であっても良いし、リード部品を実装するためのはんだ等であっても良い。また、良否判定のための処理は、上述の例に限定されない。例えば、ボイドと所定方向の端部との距離ではなく、ボイドと検査対象部の重心との距離等に基づいて良否判定が行われてもよい。
さらに、上述の実施形態においてオフセット量は、検査対象部Waの上側と下側とのそれぞれについて予め決められた固定値であったが、各種の要素によって変動する値であっても良い。例えば、X線の照射範囲内の位置毎にオフセット量が予め統計等によって特定され、CT撮影処理の際に検査対象部Waが配置される照射範囲内の位置によってオフセット量が特定されても良い。また、X線の所定方向に対する傾斜角毎にオフセット量が予め統計等によって特定され、CT撮影処理の際のX線出力部11aや検出面12a等の相対位置関係によって決定されるX線の傾斜角によってオフセット量が特定されても良い。
さらに、X線の検査対象部Waに対する照射角(例えば、円柱軸に対する角度)毎にオフセット量が予め統計等によって特定され、CT撮影処理の際に検査対象部Waを通過するX線の検査対象部Waに対する照射角によってオフセット量が特定されても良い。さらに、検査対象部Waの所定方向の端部から所定方向に広がるアーチファクトの範囲毎にオフセット量が予め統計等によって特定され、再構成演算が行われた後の再構成情報において検査対象部Waの像の周囲に発生しているアーチファクトの範囲によってオフセット量が特定されても良い。いずれにしても、各種の要素に応じてオフセット量が特定されることにより、検査対象部Waの端部の位置が正確に特定される。さらに、上述の実施形態においては、X線を利用しているが、検査対象を透過する他の放射線、例えば、ガンマ線等が利用されてもよい。