JP6387702B2 - 多板摩擦締結要素 - Google Patents
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Description
前記複数の第1摩擦プレートは、前記第1部材に形成されたスプライン歯にスプライン嵌合される。
前記複数の第2摩擦プレートは、前記第2部材に形成されたスプライン歯にスプライン嵌合され、隣接する前記第1摩擦プレートの間に配置される。
前記ピストン部材は、前記第1摩擦プレート及び前記第2摩擦プレートが交互に配置されたプレート群の端部位置に設けられ、プレート摺動面を圧接する締結力を与える。
この多板摩擦締結要素において、前記第2摩擦プレートの隣接するプレート隙間空間のそれぞれに弾性体を介装する。
前記弾性体は、その周長がプレート円周長の半分を超えていて、且つ、隣接する前記第2摩擦プレートを引き離すスプリング荷重の作用点が、前記第2摩擦プレートの対向するスプライン歯部である形状にする。
前記弾性体は、金属線材により構成され、前記第2部材に形成されたスプライン歯の歯面と、前記第1摩擦プレートの外周端面と、隣接する前記第2摩擦プレートのスプライン歯部の軸方向対向面と、によって円周方向に形成されるプレート隙間空間に沿って位置決め配置する。
前記弾性体を、金属線材の軸線周り方向に捩りを加えたときの反発力を利用してスプリング荷重を発生するトーションバースプリングとする。
前記トーションバースプリングは、円形断面による針金状線材により形成され、前記プレート隙間空間に円周方向に沿って配置される捩り線材部と、軸方向に対向する前記スプライン歯部のうち一方の歯部にスプリング荷重を付与する第1接触線材部と、軸方向に対向する前記スプライン歯部のうち他方の歯部にスプリング荷重を付与する第2接触線材部と、を一体に有する。
すなわち、隣接する第2摩擦プレートを引き離すスプリング荷重の作用点が、第2摩擦プレートのスプライン歯部である形状としている。このため、第2摩擦プレートのプレート本体部に、スプリング荷重を与えるための径方向のスペースの確保が不要になる。
そして、第2摩擦プレートの隣接するプレート隙間空間に弾性体を介装するだけの構成としている。このため、第2摩擦プレートの単体に弾性体を固定する必要なく、ユニットへ組み付けるとき、第1摩擦プレートと第2摩擦プレートと弾性体を、所定の順序にしたがって組み付ける作業を繰り返すだけで良い。この組み付け作業に際し、弾性体の周長を、プレート円周長の半分を超える長さとしていることで、組み付けられた弾性体が脱落することなく、プレート隙間空間に保持される。よって、プレート単体での製造性が容易になるし、ユニットへの組み付け性が容易になる。
この結果、径方向のスペースを不要にしながら、プレート単体での製造性や組み付け性を容易にすることができる。
加えて、使っていないプレート隙間空間に沿って位置決め配置することで、弾性体の搭載性を向上させることができるし、弾性体をトーションバースプリングとし、ピストン部材からリターンスプリングを廃止することで、リターンスプリングを設置するスペースを不要にすることができる。さらに、トーションバースプリングは、捩り線材部と第1接触線材部と第2接触線材部とを一体に有することで、小スペースに配置できる針金状線材としながら、大きなスプリング荷重により高い分離力を発生するトーションバースプリングとすることができる。
実施例1における湿式多板クラッチC(多板摩擦締結要素の一例)の構成を、「全体構成」、「要部構成」に分けて説明する。
図1は、実施例1の湿式多板クラッチCの全体断面図を示す。以下、図1に基づき、全体構成を説明する。
図2〜図4は、実施例1の湿式多板クラッチCの隣接するドリブンプレート4に介装されたトーションバースプリング6を示す。以下、図2〜図4に基づき、要部構成を説明する。
実施例1の湿式多板クラッチCにおける作用を、「技術背景」、「湿式多板クラッチCの特徴作用」、「湿式多板クラッチCの他の特徴作用」に分けて説明する。
フリクションロスを低減する為にドリブンプレート間に弾性体を設け、ドライブプレートのスペースを均一に確保する技術が既に提案されている。提案されている技術のうち、図5に示すように、単体のドリブンプレートにリベット留めした板バネやゴムを溶着した弾性体機能を有したドリブンプレートとするものを、比較例1とする(例えば、特開昭60−78115号公報等を参照)。
(a) 爪状のスプライン歯部の1歯ずつに、弾性体を取り付ける必要があり、多大な製造工数が必要であるというように、単体での製造性が悪い。
(b) スプライン歯部のそれぞれに取り付ける弾性体が、図5のL1に示すように、ドリブンプレートの本体部の位置まで至ると、摺動面のスペースを犠牲にする。
(c) 合成ゴム等の有機物を素材とする弾性体を用いる場合には、クラッチが発熱した場合、その高熱に耐えられない。特に、ハイブリッド車両の駆動系に用いられるクラッチであって、車両発進時に滑り締結される発進クラッチとして用いる場合、クラッチ発熱量が大きく、適用することができない。
(a) サブ組み立て時の組み付け性が困難となる。つまり、クラッチ組み立てする前にドライブプレートを挟み込んだドリブンプレートを弾性体で結合しなければならず、事前の組立て性が悪い。
(b) 1巻きのウェーブスプリングで荷重を出す構造となっており、図6のL2に示すように、径方向にスペースが必要である。このため、図7に示すように、ドリブンプレートの本体部の一部がウェーブスプリングで占有され、摺動面のスペースを犠牲にする。
(c) 1巻きのウェーブスプリングは、完全な円環ではないため、ピストンをリターンできるほどの分離力がなく、リターンスプリングのスペースが必要である。
実施例1では、ドリブンプレート4の隣接するプレート隙間空間Sのそれぞれにトーションバースプリング6を介装している。このトーションバースプリング6は、その周長がプレート円周長の全周であり、且つ、隣接するドリブンプレート4を引き離すスプリング荷重の作用点が、ドリブンプレート4の対向するスプライン歯部4aである形状としている。
実施例1では、トーションバースプリング6を、金属線材により構成し、プレート隙間空間Sに沿って位置決め配置する構成とした。ここで、プレート隙間空間Sは、クラッチドラム2に形成されたスプライン歯2aの歯面と、ドライブプレート3の外周端面と、隣接するドリブンプレート4のスプライン歯部4aの軸方向対向面と、によって円周方向に形成される。
すなわち、湿式多板クラッチにおいて使っていないスペースであるプレート隙間空間Sを利用し、トーションバースプリング6が位置決め配置される。
したがって、使っていないプレート隙間空間Sを利用することで、弾性体であるトーションバースプリング6の搭載性を向上させることができる。
すなわち、弾性体を捩りバネ構成とすることで、小さいスペースに設けることを可能としながら大きな反力を発生させることができる。言い換えると、トーションバースプリング6が持つ高い分離力により、リターンスプリング機能を持たせることができる。
したがって、クラッチピストン5からリターンスプリングを廃止することで、リターンスプリングを設置するスペースを不要にすることができる。
すなわち、トーションバースプリング6が一体構造であるため、捩り線材部6aでの捩り反力が、第1接触線材部6bと第2接触線材部6cからのスプリング荷重に効率的に変換される。そして、このスプリング荷重を、軸方向に隣接するスプライン歯部4aとスプライン歯部4a’を引き離すように付与することができる。
したがって、小スペースに配置できる針金状線材としながら、大きなスプリング荷重により高い分離力を発生するトーションバースプリング6とすることができる。
すなわち、交互位置に配置された第1接触線材部6bと第2接触線材部6cからスプリング荷重が、等間隔で均等に付与される。
したがって、軸方向に隣接するドリブンプレート4に対する分離力の周方向分布を均等化し、解放時の引き摺りを安定して防止することができる。
実施例1の湿式多板クラッチCにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
第1部材(クラッチハブ1)に形成されたスプライン歯1aにスプライン嵌合される複数の第1摩擦プレート(ドライブプレート3)と、
第2部材(クラッチドラム2)に形成されたスプライン歯2aにスプライン嵌合され、隣接する第1摩擦プレート(ドライブプレート3)の間に配置される複数の第2摩擦プレート(ドリブンプレート4)と、
第1摩擦プレート(ドライブプレート3)及び第2摩擦プレート(ドリブンプレート4)が交互に配置されたプレート群の端部位置に設けられ、プレート摺動面を圧接する締結力を与えるピストン部材(クラッチピストン5)と、
を備えた多板摩擦締結要素(湿式多板クラッチC)において、
第2摩擦プレート(ドリブンプレート4)の隣接するプレート隙間空間のそれぞれに弾性体(トーションバースプリング6)を介装し、
弾性体(トーションバースプリング6)は、その周長がプレート円周長の半分を超えていて、且つ、隣接する第2摩擦プレート(ドリブンプレート4)を引き離すスプリング荷重の作用点が、第2摩擦プレート(ドリブンプレート4)の対向するスプライン歯部4aである形状にした(図1)。
このため、径方向のスペースを不要にしながら、プレート単体での製造性や組み付け性を容易にすることができる。
このため、(1)の効果に加え、使っていないプレート隙間空間Sを利用することで、弾性体(トーションバースプリング6)の搭載性を向上させることができる。
このため、(2)の効果に加え、ピストン部材(クラッチピストン5)からリターンスプリングを廃止することで、リターンスプリングを設置するスペースを不要にすることができる。
このため、(3)の効果に加え、小スペースに配置できる針金状線材としながら、大きなスプリング荷重により高い分離力を発生するトーションバースプリング6とすることができる。
このため、(4)の効果に加え、軸方向に隣接するドリブンプレート4に対する分離力の周方向分布を均等化し、解放時の引き摺りを安定して防止することができる。
1 クラッチハブ(第1部材)
1a スプライン歯
2 クラッチドラム(第2部材)
2a スプライン歯
3 ドライブプレート(第1摩擦プレート)
3a スプライン歯部
3b クラッチフェーシング
4 ドリブンプレート(第2摩擦プレート)
4a スプライン歯部
4b プレート本体部
5 クラッチピストン(ピストン部材)
6 トーションバースプリング(弾性体)
6a 捩り線材部
6b 第1接触線材部
6c 第2接触線材部
Claims (2)
- 動力伝達経路に対向配置される第1部材及び第2部材と、
前記第1部材に形成されたスプライン歯にスプライン嵌合される複数の第1摩擦プレートと、
前記第2部材に形成されたスプライン歯にスプライン嵌合され、隣接する前記第1摩擦プレートの間に配置される複数の第2摩擦プレートと、
前記第1摩擦プレート及び前記第2摩擦プレートが交互に配置されたプレート群の端部位置に設けられ、プレート摺動面を圧接する締結力を与えるピストン部材と、
を備えた多板摩擦締結要素において、
前記第2摩擦プレートの隣接するプレート隙間空間のそれぞれに弾性体を介装し、
前記弾性体は、その周長がプレート円周長の半分を超えていて、且つ、隣接する前記第2摩擦プレートを引き離すスプリング荷重の作用点が、前記第2摩擦プレートの対向するスプライン歯部である形状にし、
前記弾性体は、金属線材により構成され、前記第2部材に形成されたスプライン歯の歯面と、前記第1摩擦プレートの外周端面と、隣接する前記第2摩擦プレートのスプライン歯部の軸方向対向面と、によって円周方向に形成されるプレート隙間空間に沿って位置決め配置し、
前記弾性体を、金属線材の軸線周り方向に捩りを加えたときの反発力を利用してスプリング荷重を発生するトーションバースプリングとし、
前記トーションバースプリングは、円形断面による針金状線材により形成され、前記プレート隙間空間に円周方向に沿って配置される捩り線材部と、軸方向に対向する前記スプライン歯部のうち一方の歯部にスプリング荷重を付与する第1接触線材部と、軸方向に対向する前記スプライン歯部のうち他方の歯部にスプリング荷重を付与する第2接触線材部と、を一体に有する
ことを特徴とする多板摩擦締結要素。 - 請求項1に記載された多板摩擦締結要素において、
前記トーションバースプリングは、前記第2摩擦プレートの隣接するスプライン歯部を円周方向に繋ぐ位置に前記捩り線材部を配置し、前記捩り線材部に対して周方向に交互位置に前記第1接触線材部と前記第2接触線材部を配置した
ことを特徴とする多板摩擦締結要素。
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