以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、あくまで一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
ダンパ装置100は、例えば、入力側となるエンジンの出力軸と、出力側となるトランスミッションの入力軸との間に設けられ、これら出力軸と入力軸との間の捩れによって生じるトルク変動や捩り振動等を緩和する。ダンパ装置100は、トルク変動吸収装置とも称されうる。なお、ダンパ装置100は、エンジンとトランスミッションとの間には限らず、他の二つの回転要素間、例えば、エンジンとモータジェネレータとの間に設けることが可能であるし、ハイブリッド自動車等の種々の車両や、回転要素を有した機械等に設けることが可能である。
ダンパ装置100は、図1,2に示される回転軸Ax回りに回転可能に設けられている。回転軸Axは、回転中心の一例である。回転軸Axは、例えば、エンジンの出力軸およびトランスミッションの入力軸と略一致している。なお、以下の説明では、軸方向は回転軸Axの軸方向、径方向は回転軸Axの径方向、周方向は回転軸Axの周方向を示す。また、図中、軸方向の一方側を矢印Xで示し、径方向の外側を矢印Rで示し、周方向の一方側を矢印Cで示す。
図2に示されるように、ダンパ装置100は、例えば、ダンパ部101と、リミッタ部102と、を有する。ダンパ部101は、ダンパ装置100のうち径方向(R方向)の内側に位置され、リミッタ部102は、ダンパ部101よりも径方向の外側に位置されている。ダンパ部101は、軸方向(X方向)に薄い扁平な円盤状に構成され、リミッタ部102は、円環状に構成されている。
ダンパ部101は、例えば、第一の回転部材1と、第二の回転部材2と、弾性部材としての第一の弾性部材4と、を有する。また、リミッタ部102は、例えば、第一の回転部材1と、第三の回転部材3と、摩擦部材45,46と、を有する。第一の回転部材1、第二の回転部材2、および第三の回転部材3は、それぞれ、回転軸Ax回りに回転可能に設けられている。ダンパ部101では、例えば、第一の回転部材1と第二の回転部材2との回転軸Ax回りの相対的な回転に伴って第一の弾性部材4が弾性的に伸縮することにより、トルク変動を緩和することができる。また、リミッタ部102では、例えば、第一の回転部材1と第三の回転部材3との回転軸Ax回りの相対的な回転に伴って摩擦部材45,46が第一の回転部材1および第三の回転部材3のうち少なくとも一方と摺動することにより、第一の回転部材1と第三の回転部材3との間で、過大なトルクの伝達を遮断することができる。
図1,2に示されるように、第一の回転部材1、第二の回転部材2、および第三の回転部材3は、それぞれ、回転軸Ax回りの円環状に構成されるとともに、径方向(R方向)および周方向(C方向)に沿って広がった板状に、構成されている。本実施形態では、例えば、第三の回転部材3は、不図示のフライホイール等の回転要素を介して、エンジンの出力軸に接続され、第一の回転部材1は、第二の回転部材2を介して、トランスミッションの入力軸に接続される。
図2に示されるように、第一の回転部材1は、複数のサイドプレート11,12と、ライニングプレート13と、を有する。本実施形態では、例えば、二つのサイドプレート11,12が、第一の回転部材1のうち径方向(R方向)の内側に位置され、ライニングプレート13が、サイドプレート11,12の径方向の外側に位置されている。
サイドプレート11は、サイドプレート12の軸方向(X方向)の一方側、すなわち図2の左側に位置されている。サイドプレート11,12は、それぞれ、回転軸Ax回りの円環状かつ板状に構成されている。サイドプレート11,12は、少なくとも部分的に、互いに軸方向に間隔をあけて位置されている。サイドプレート11とサイドプレート12とは、それぞれを軸方向に貫通したリベット等の結合具C1によって、互いに結合されている。よって、サイドプレート11とサイドプレート12とは、回転軸Ax回りに一体に回転する。
また、図1に示されるように、サイドプレート11,12には、それぞれ、周方向(C方向)に互いに間隔をあけて複数の開口部11a,12aが設けられている。開口部11a,12aは、例えば、サイドプレート11,12を軸方向(X方向)に沿って貫通するとともに、周方向に沿って延びた長穴である。開口部11aと開口部12aとは、回転軸Axの軸方向に互いに重なり合って位置され、それぞれの周方向の一方側の縁部と他方側の縁部との間に第一の弾性部材4が配置されている。
ライニングプレート13は、例えば、回転軸Ax回りの円環状かつ板状に構成されている。図2の上側および下側にも示されるように、ライニングプレート13の径方向(R方向)の外側の部分は、摩擦部材45と摩擦部材46との間に挟まれている。また、ライニングプレート13の径方向の内側の部分は、結合具C1によってサイドプレート11,12とともに結合されている。よって、ライニングプレート13は、サイドプレート11,12と一体に回転する。サイドプレート11,12およびライニングプレート13は、例えば、金属材料で構成されうる。また、ライニングプレート13は、例えば、ステンレス鋼等のサイドプレート11,12とは異なる金属材料で構成されうる。
第二の回転部材2は、ハブ部材21を有する。図3にも示されるように、ハブ部材21は、例えば、筒状部21aと、突出部21bと、を有している。筒状部21aは、ハブ部材21のうち径方向(R方向)の内側に位置され、突出部21bは、筒状部21aの径方向の外側に位置されている。
筒状部21aは、例えば、回転軸Ax回りの円筒状に構成されている。筒状部21aは、例えば、圧入やスプライン結合等によって、トランスミッションの入力軸と結合され、当該入力軸と一体に回転する。
突出部21bは、筒状部21aの軸方向(X方向)の略中央部から径方向(R方向)の外側に突出している。突出部21bは、サイドプレート11とサイドプレート12との間に位置されている。
また、図1に示されるように、突出部21bには、周方向(C方向)に互いに間隔をあけて複数の開口部21cが設けられている。開口部21cは、例えば、突出部21bの径方向の外側に向けて開放された切欠部である。図2にも示されるように、開口部21cとサイドプレート11,12の開口部11a,12aとは、互いに軸方向(X方向)に重なり合っている。開口部21cには、周方向の一方側の縁部と他方側の縁部との間に第一の弾性部材4が配置されている。
ハブ部材21は、サイドプレート11,12と回転軸Ax回りに相対的に回転可能である。ただし、ハブ部材21とサイドプレート11,12との相対的な回転は、例えば、不図示のストッパ同士が当接すること等によって、所定の角度範囲内に限定されている。ハブ部材21は、例えば、金属材料によって構成されうる。
図1,2に示される第一の弾性部材4は、例えば、金属材料で構成され、周方向(C方向)に略沿って延びたコイルスプリングである。第一の弾性部材4は、周方向に略沿って弾性的に伸縮する圧縮ばねとして機能する。また、図1に示されるように、第一の弾性部材4の周方向の両側の端部には、支持部材10が設けられている。支持部材10は、例えば、リテーナである。支持部材10は、例えば、第一の弾性部材4をより安定的に支持したり、第一の弾性部材4をより安定的に弾性変形させたり、第一の弾性部材4とサイドプレート11,12およびハブ部材21との直接的な接触を抑制したり、といった機能を有することができる。支持部材10は、例えば、合成樹脂材料によって構成されうる。
図1に示されるように、第一の弾性部材4および支持部材10は、互いに軸方向(X方向)に重なり合った開口部11a,12aおよび開口部21c内に収容され、サイドプレート11,12とハブ部材21とに接続されている。このような構成で、開口部11a,12aの周方向(C方向)の一方側の縁部と開口部21cの周方向の他方側の縁部とが互いに近付く方向に相対的に回転すると、それら縁部によって第一の弾性部材4が弾性的に縮む。逆に、開口部11a,12aおよび開口部21c内で弾性的に縮んだ状態で、開口部11a,12aの周方向の一方側の縁部と開口部21cの周方向の他方側の縁部とが互いに遠ざかる方向に相対的に回転すると、第一の弾性部材4は弾性的に伸びる。すなわち、第一の弾性部材4は、第一の回転部材1と第二の回転部材2との間に挟まれ、回転軸Ax回りの相対的な回転に伴って略周方向に沿って弾性的に伸縮する。第一の弾性部材4は、弾性的に縮むことによりトルクを圧縮力として蓄え、弾性的に伸びることにより圧縮力をトルクとして放出する。第一の弾性部材4は、このように、第一の回転部材1と第二の回転部材2との間に位置され、第一の回転部材1と第二の回転部材2とに周方向に略沿って挟まれて、周方向に略沿って弾性的に伸縮する。ダンパ部101は、この第一の弾性部材4の伸縮によってトルク変動を緩和することができる。
図2の上側および下側に示されるように、第三の回転部材3は、例えば、サポートプレート31と、カバープレート32と、プレッシャプレート33と、を有する。サポートプレート31は、第三の回転部材3のうち軸方向(X方向)の一方側に位置され、カバープレート32は、サポートプレート31の軸方向の他方側に位置され、プレッシャプレート33は、サポートプレート31とカバープレート32との間に位置されている。本実施形態では、例えば、リミッタ部102は、軸方向の他方側から軸方向の一方側に向かって、カバープレート32、摩擦部材46、ライニングプレート13、摩擦部材45、プレッシャプレート33、弾性部材としての第三の弾性部材47、およびサポートプレート31を有する。これらカバープレート32、摩擦部材46、ライニングプレート13、摩擦部材45、プレッシャプレート33、第三の弾性部材47、およびサポートプレート31は、軸方向に互いに密着した状態で重なっている。第三の回転部材3および第三の弾性部材47は、摩擦部材46、ライニングプレート13、ならびに摩擦部材45を、径方向(R方向)の外側から回り込む状態で、軸方向に挟み、弾性的に押圧している。
サポートプレート31、カバープレート32、およびプレッシャプレート33は、それぞれ、回転軸Ax回りの円環状かつ板状に構成されている。図2の上側に示されるように、サポートプレート31とカバープレート32とは、それぞれの開口部31a,32aを軸方向(X方向)に貫通する結合具C2によって互いに結合されている。よって、サポートプレート31とカバープレート32とは、回転軸Ax回りに一体に回転する。なお、サポートプレート31とカバープレート32とは、結合具C2、あるいはその他の結合具を介して、フライホイール等の回転要素に結合されうる。
また、図2の下側に示されるように、プレッシャプレート33は、径方向(R方向)の外側の端部から、軸方向(X方向)の他方側に突出した突出部33aを有する。突出部33aは、カバープレート32に設けられた開口部32cに挿入されている。図1にも示されるように、突出部33aと開口部32cの縁部とは、周方向(C方向)に互いに引っ掛かっている。よって、プレッシャプレート33は、カバープレート32、およびサポートプレート31と回転軸Ax回りに一体に回転する。サポートプレート31、カバープレート32、およびプレッシャプレート33は、例えば、金属材料で構成されうる。
摩擦部材45,46は、例えば、回転軸Ax回りの円環状かつ板状に構成されている。図2に示されるように、本実施形態では、プレッシャプレート33とライニングプレート13との間に摩擦部材45が設けられ、カバープレート32とライニングプレート13との間に摩擦部材46が設けられている。
また、図2の下側に示されるように、摩擦部材45には、プレッシャプレート33に設けられた突出部33bが挿入される開口部45aが設けられている。また、摩擦部材46には、カバープレート32に設けられた突出部32bが挿入される開口部46aが設けられている。開口部45aの縁部と突出部33b、および開口部46aの縁部と突出部32bとは、それぞれ、周方向(C方向)に互いに引っ掛かっている。よって、摩擦部材45,46は、第三の回転部材3と回転軸Ax回りに一体に回転する。摩擦部材45,46は、例えば、ガラス繊維材料や合成ゴム等を含有した合成樹脂材料等で構成されうる。
第三の弾性部材47は、サポートプレート31とプレッシャプレート33との間に位置され、これらサポートプレート31およびプレッシャプレート33に、互いに軸方向(X方向)に離間する方向の弾性力を与えている。第三の弾性部材47は、摩擦部材45、ライニングプレート13、および摩擦部材46を間に挟んだ状態で、プレッシャプレート33をカバープレート32に押し付けている。すなわち、第三の弾性部材47の弾性力による荷重によって、摩擦部材45,46とライニングプレート13とのそれぞれの間で摩擦力が生じている。本実施形態では、これらの摩擦力としての最大静止摩擦力を超えるトルク差となるまで、第三の回転部材3と第一の回転部材1とは滑らない。第三の弾性部材47は、例えば、金属材料で構成された円環状のコーンスプリングで構成されうる。第三の弾性部材47は、板ばねとも称されうる。
リミッタ部102では、ダンパ部101と、リミッタ部102のダンパ部101とは反対側とのトルクの差の値が、設定範囲内の閾値より小さい状態では、第三の弾性部材47の弾性的な押圧力によってリミッタ部102では滑りが生じず、ダンパ部101とリミッタ部102とを含むダンパ装置100が一体的に回転する。換言すれば、ダンパ部101と、リミッタ部102のダンパ部101とは反対側とのトルクの差の値が閾値より大きい状態では、リミッタ部102で第三の弾性部材47の弾性的な押圧力による摩擦力を超えた滑りが生じる。リミッタ部102は、このようにトルクリミッタとして機能し、設定値を超える過大なトルクの伝達が抑制される。
また、図3に示されるように、本実施形態では、例えば、サイドプレート12とハブ部材21の筒状部21aとの間には、第一の摺動部材5が設けられ、サイドプレート11と筒状部21aとの間には、第一の摺動部材7が設けられている。図4に示されるように、第一の摺動部材5は、例えば、筒状部51と、複数の第一の突出部52と、複数の第二の突出部55と、を有している。また、図6に示されるように、第一の摺動部材7は、例えば、筒状部71と、複数の第一の突出部72と、複数の第二の突出部75と、を有している。
筒状部51および筒状部71は、例えば、回転軸Ax回りの円筒状に構成されている。図3に示されるように、筒状部51,71の内周面と筒状部21aの外周面とは、それぞれ、僅かな隙間をあけて互いに対向している。また、本実施形態では、例えば、筒状部51の内周面と筒状部21aの外周面との間の隙間は、筒状部71の内周面と筒状部21aの外周面との間の隙間よりも大きく設定されている。これにより、サイドプレート11,12の径方向(R方向)の互いの位置ずれ等が吸収されやすくなり、ひいてはサイドプレート11,12をハブ部材21に組み付ける作業が、より容易に、より円滑に、あるいはより精度よく行われうる。
また、図3の右下側に示されるように、第一の突出部52は、筒状部51の軸方向(X方向)の一方側の端部から、径方向(R方向)の外側に突出している。また、図3の左上側に示されるように、第一の突出部72は、筒状部71の軸方向(X方向)の他方側の端部から、径方向の外側に突出している。図4,6に示されるように、複数の第一の突出部52、および複数の第一の突出部72は、それぞれが周方向(C方向)に沿って延びた円弧状に構成されるとともに、径方向および周方向に沿って広がった板状、すなわちその法線方向が回転軸Axと平行な板状に、構成されている。本実施形態では、例えば、三つの第一の突出部52が、周方向(C方向)に互いに等間隔で設けられ、三つの第一の突出部72が、周方向に互いに等間隔で設けられている。
そして、図4に示されるように、本実施形態では、第一の突出部52のそれぞれの周方向の両側の端部によって、第一の引掛部53,54が設けられている。また、図6に示されるように、本実施形態では、第一の突出部72のそれぞれの周方向の両側の端部によって、第一の引掛部73,74が設けられている。第一の引掛部53,73は、第一の突出部52,72のうち周方向の一方側、すなわちC方向側の端部に位置され、第一の引掛部54,74は、第一の突出部52,72のうち周方向の他方側の端部に位置されている。第一の引掛部53,54,73,74は、端部や、縁部、端面等とも称されうる。図4に示されるように、周方向に隣接した二つの第一の突出部52のうち一つの第一の引掛部53と、二つの第一の突出部52のうちもう一つの第一の引掛部54とは、周方向に互いに間隔をあけて対向している。また、図6に示されるように、周方向に隣接した二つの第一の突出部72のうち一つの第一の引掛部73と、二つの第一の突出部72のうちもう一つの第一の引掛部74とは、周方向に互いに間隔をあけて対向している。
また、図4に示される複数の第二の突出部55は、筒状部51の軸方向(X方向)の他方側、すなわち第一の突出部52とは反対側の端部から、径方向(R方向)の外側に突出している。また、図6に示される複数の第二の突出部75は、筒状部71の軸方向の一方側、すなわち第一の突出部72とは反対側の端部から、径方向の外側に突出している。図4,6に示されるように、複数の第二の突出部55,75は、それぞれ、周方向(C方向)に互いに等間隔で設けられている。図1の中心部側に示されるように、複数の第二の突出部55は、それぞれ、サイドプレート12の内周部に設けられた複数の凹部12bに挿入されている。第二の突出部55と凹部12bの縁部とは、それぞれ、周方向(C方向)に互いに引っ掛かっている。また、本実施形態では、複数の第二の突出部75についても、それぞれ、サイドプレート11の内周部に設けられた不図示の複数の凹部に挿入されている。そして、第二の突出部75と凹部の縁部とは、それぞれ、周方向に互いに引っ掛かっている。よって、第一の摺動部材5,7は、第一の回転部材1と回転軸Ax回りに一体に回転する。第一の摺動部材5,7は、例えば、合成樹脂材料で構成されている。
また、図3に示されるように、本実施形態では、例えば、第一の摺動部材5とハブ部材21の突出部21bとの間には、第二の摺動部材6が設けられ、第一の摺動部材7と突出部21bとの間には、第三の摺動部材8が設けられている。図5に示されるように、第二の摺動部材6は、例えば、ベース部61と、複数の第二の引掛部62と、複数の突出部63と、を有している。
ベース部61は、例えば、回転軸Ax回りの円環状かつ板状に構成されている。図3に示されるように、ベース部61は、第一の摺動部材5の第一の突出部52とハブ部材21の突出部21bとの間に挟まれている。また、図5に示されるように、ベース部61には、周方向(C方向)に互いに間隔をあけて複数の凹部61aが設けられている。凹部61aは、開口部の一例である。凹部61aは、ベース部61の径方向の内側に向けて開放されている。本実施形態では、例えば、三つの凹部61aが、周方向に互いに等間隔で設けられている。
複数の第二の引掛部62は、それぞれ、凹部61aの底部に設けられている。よって、本実施形態では、例えば、三つの第二の引掛部62が、周方向(C方向)に互いに等間隔で設けられている。図3の右上側に示されるように、第二の引掛部62は、ベース部61から軸方向(X方向)の他方側、すなわち図3の右側に突出している。そして、図8に示されるように、複数の第二の引掛部62は、それぞれ、第一の摺動部材5の第一の引掛部53と第一の引掛部54との間の開口部に挿入されている。図3にも示されるように、第二の引掛部62と第一の引掛部53,54とは、周方向に互いに面している。第二の引掛部62は、突出部や、張出部等とも称されうる。
また、図5に示されるように、本実施形態では、例えば、三つの突出部63が、周方向(C方向)に互いに等間隔で設けられている。図3の右下側に示されるように、突出部63は、ベース部61の径方向の外側の端部から、軸方向(X方向)の他方側、すなわち図3の右側に突出している。複数の突出部63は、それぞれ、サイドプレート12に設けられた開口部12cに挿入されている。
また、突出部63は、それぞれの軸方向の他方側の端部から、径方向の外側に突出した爪部63aを有している。爪部63aは、サイドプレート12の軸方向の他方側で、当該サイドプレート12の少なくとも一部と軸方向に重なっている。爪部63aは、引掛部や、抜止部等とも称されうる。本実施形態によれば、例えば、爪部63aによって、サイドプレート12や、第一の摺動部材5、第二の弾性部材9、第二の摺動部材6等が軸方向に一体化された状態で、ハブ部材21に組み付けられることができる。よって、例えば、ダンパ装置100の製造に要する手間が減りやすい。第二の摺動部材6は、例えば、金属材料で構成されている。
また、図7に示されるように、第三の摺動部材8は、例えば、ベース部81と、複数の第三の引掛部82と、を有している。ベース部81は、例えば、回転軸Ax回りの円環状かつ板状に構成されている。図3に示されるように、ベース部81は、第一の摺動部材7の第一の突出部72とハブ部材21の突出部21bとの間に挟まれている。また、図7に示されるように、ベース部81には、周方向(C方向)に互いに間隔をあけて複数の凹部81aが設けられている。凹部81aは、開口部の一例である。凹部81aは、ベース部81の径方向の内側に向けて開放されている。本実施形態では、例えば、三つの凹部81aが、周方向に互いに等間隔で設けられている。
複数の第三の引掛部82は、それぞれ、凹部81aの底部に設けられている。よって、本実施形態では、例えば、三つの第三の引掛部82が、周方向(C方向)に互いに等間隔で設けられている。図3の左下側に示されるように、第三の引掛部82は、ベース部81から軸方向(X方向)の一方側、すなわち図3の左側に突出している。そして、図9に示されるように、複数の第三の引掛部82は、それぞれ、第一の摺動部材7の第一の引掛部73と第一の引掛部74との間の開口部に挿入されている。第三の引掛部82と第一の引掛部73,74とは、周方向に互いに面している。第三の引掛部82は、突出部や、張出部等とも称されうる。第三の摺動部材8は、例えば、金属材料で構成されている。
また、図3に示されるように、本実施形態では、例えば、サイドプレート12と第一の摺動部材5の第一の突出部52との間に、弾性部材としての第二の弾性部材9が設けられている。第二の弾性部材9は、サイドプレート12と第一の摺動部材5とに、互いに軸方向(X方向)に離間する方向の弾性力を与えている。具体的には、第二の弾性部材9は、第一の摺動部材5を第二の摺動部材6に押し付け、ひいては第一の摺動部材5を介して第二の摺動部材6をハブ部材21に押し付けている。さらに、第二の弾性部材9は、サイドプレート12を介してサイドプレート11を第一の摺動部材7に押し付け、ひいてはサイドプレート11を介して第一の摺動部材7を第三の摺動部材8に押し付けるとともに、第三の摺動部材8をハブ部材21に押し付けている。第二の弾性部材9は、例えば、金属材料で構成された円環状のコーンスプリングである。第二の弾性部材9は、板ばねとも称されうる。
そして、本実施形態では、例えば、第一の摺動部材5,7、第二の摺動部材6、第三の摺動部材8、および第二の回転部材2の材質や、面粗度、接触面積等の設定によって、第二の摺動部材6と第二の回転部材2との間の摩擦抵抗が、第二の摺動部材6と第一の摺動部材5との間の摩擦抵抗よりも大きくなるとともに、第三の摺動部材8と第二の回転部材2との間の摩擦抵抗が、第三の摺動部材8と第一の摺動部材7との間の摩擦抵抗よりも大きくなるよう、構成されている。これにより、第一の回転部材1と第二の回転部材2とが相対的に回転した場合に、第一の摺動部材5と第二の摺動部材6との間、および第一の摺動部材7と第三の摺動部材8との間のそれぞれで滑りやすくしている。また、本実施形態では、例えば、第一の摺動部材5,7は、第二の摺動部材6および第三の摺動部材8に対して、図8,9に示される中立位置P0と、図10,11に示される第一の位置P1と、図12,13に示される第二の位置P2と、の間で移動可能、すなわち相対回転可能に構成されている。
図8,9に示されるように、第一の摺動部材5,7が中立位置P0にある状態は、例えば、第一の回転部材1と第二の回転部材2との間にトルク差が生じていない状態である。この状態では、図8に示される第一の引掛部53,54と第二の引掛部62とが周方向に互いに離間し、図9に示される第一の引掛部73,74と第三の引掛部82とが周方向に互いに離間している。また、本実施形態では、例えば、中立位置P0における第一の引掛部53と第二の引掛部62との間のクリアランスと、第一の引掛部73と第三の引掛部82との間のクリアランス、および第一の引掛部54と第二の引掛部62との間のクリアランスと、第一の引掛部74と第三の引掛部82との間のクリアランスとは、それぞれ、略同じ大きさに設定されている。
図10,11に示されるように、第一の摺動部材5,7が第一の位置P1にある状態は、例えば、第一の回転部材1が、第二の回転部材2に対して、周方向の一方側、すなわちC方向に所定角度、例えば0.05ラジアン回転した状態である。中立位置P0と第一の位置P1との間では、上述した摩擦抵抗の差によって、第一の回転部材1および第一の摺動部材5,7が、第二の回転部材2、第二の摺動部材6、および第三の摺動部材8に対して、周方向の一方側へ一体に回転する。これにより、第一の摺動部材5と第二の摺動部材6とが互いに擦れるとともに、第一の摺動部材7と第三の摺動部材8とが互いに擦れて、第一の摩擦抵抗トルクが生じる。第一の摩擦抵抗トルクは、第一の摺動トルク等とも称されうる。
また、図10,11に示されるように、第一の摺動部材5,7が第一の位置P1にある状態では、第一の引掛部53と第二の引掛部62とが互いに当接するとともに、第一の引掛部73と第三の引掛部82とが互いに当接する。よって、第一の摺動部材5,7が第一の位置P1にある状態からさらに周方向の一方側へ回転する場合には、第二の引掛部62および第三の引掛部82が周方向の一方側へ押されることで、第一の回転部材1、第一の摺動部材5,7、第二の摺動部材6、および第三の摺動部材8が、第二の回転部材2に対して、周方向の一方側へ一体に回転する。これにより、第二の摺動部材6と第二の回転部材2とが互いに擦れるとともに、第三の摺動部材8と第二の回転部材2とが互いに擦れて、第一の摩擦抵抗トルクよりも大きな第二の摩擦抵抗トルクが生じる。第二の摩擦抵抗トルクは、第二の摺動トルク等とも称されうる。
図12,13に示されるように、第一の摺動部材5,7が第二の位置P2にある状態は、例えば、第一の回転部材1が、第二の回転部材2に対して、周方向の他方側、すなわちC方向の反対方向に所定角度、例えば0.05ラジアン回転した状態である。中立位置P0と第二の位置P2との間では、上述した摩擦抵抗の差によって、第一の回転部材1および第一の摺動部材5,7が、第二の回転部材2、第二の摺動部材6、および第三の摺動部材8に対して、周方向の他方側へ一体に回転する。これにより、第一の摺動部材5と第二の摺動部材6とが互いに擦れるとともに、第一の摺動部材7と第三の摺動部材8とが互いに擦れて、第一の摩擦抵抗トルクが生じる。
また、図12,13に示されるように、第一の摺動部材5,7が第二の位置P2にある状態では、第一の引掛部54と第二の引掛部62とが互いに当接するとともに、第一の引掛部74と第三の引掛部82とが互いに当接する。よって、第一の摺動部材5,7が第二の位置P2にある状態からさらに周方向の他方側へ回転する場合には、第二の引掛部62および第三の引掛部82が周方向の他方側へ押されることで、第一の回転部材1、第一の摺動部材5,7、第二の摺動部材6、および第三の摺動部材8が、第二の回転部材2に対して、周方向の他方側へ一体に回転する。これにより、第二の摺動部材6と第二の回転部材2とが互いに擦れるとともに、第三の摺動部材8と第二の回転部材2とが互いに擦れて、第一の摩擦抵抗トルクよりも大きな第二の摩擦抵抗トルクが生じる。このように、本実施形態によれば、第一の摺動部材5,7、第二の摺動部材6、および第三の摺動部材8によって、摩擦抵抗トルクの大きさを異ならせることができる。よって、例えば、コントロールプレートが必要な従来の構成と比べて、ダンパ装置100の部品点数が減りやすくなり、ひいてはダンパ装置100の製造に要する手間や費用が低減されたり、ダンパ装置100が軸方向(X方向)により小型に構成されたりする場合がある。
また、図3に示されるように、本実施形態では、例えば、第二の摺動部材6と第二の回転部材2とが互いに擦れる二つの面61b,21d、および第三の摺動部材8と第二の回転部材2とが互いに擦れる二つの面81b,21eのそれぞれに、表面処理が施されている。具体的には、例えば、面61b,81bには、リン酸亜鉛等の3d遷移金属酸化物により構成された皮膜層が形成され、面21d,21eには、ショットブラスト等によって凹凸部が形成された後、その凹凸部に沿って酸化鉄等の3d遷移金属酸化物により構成された皮膜層が形成されている。本実施形態によれば、このような摺動面の組み合わせによって、例えば、第二の摺動部材6と第二の回転部材2との間の摩擦抵抗や、第三の摺動部材8と第二の回転部材2との間の摩擦抵抗の経時変化を減らすことができ、ひいては摩擦抵抗がより長期に亘って安定しやすい場合がある。
なお、図8,9に示されるように、本実施形態では、例えば、中立位置P0における第一の引掛部53と第二の引掛部62との間のクリアランスと、第一の引掛部73と第三の引掛部82との間のクリアランスとが略同じ大きさに設定されたが、これには限定されず、互いに異なる大きさに設定されてもよい。これにより、第一の回転部材1が、第二の回転部材2に対して、周方向の一方側に回転する角度区間において、例えば、三つ以上の互いに異なる摩擦抵抗トルクを生じさせることも可能となる。なお、第一の引掛部54と第二の引掛部62との間のクリアランスと、第一の引掛部74と第三の引掛部82との間のクリアランスとについても、同様である。
以上のように、本実施形態では、例えば、ダンパ装置100は、回転軸Ax(回転中心)回りに回転可能な第一の回転部材1と、回転軸Ax回りに回転可能な第二の回転部材2と、第一の回転部材1と第二の回転部材2との相対的な回転により弾性変形する第一の弾性部材4と、第一の回転部材1と回転軸Ax回りに一体的に回転可能に設けられ、第一の引掛部53,54を有した第一の摺動部材5と、第一の引掛部53,54と回転軸Axの周方向(C方向)に引掛可能な第二の引掛部62を有し、第一の引掛部53,54と第二の引掛部62とが周方向に互いに引っ掛かった状態では、第一の摺動部材5および第一の回転部材1と回転軸Ax回りに一体的に回転して第二の回転部材2と擦れるとともに、第一の引掛部53,54と第二の引掛部62とが周方向に互いに離間した状態では、第二の回転部材2と回転軸Ax回りに一体的に回転して第一の摺動部材5と擦れる、第二の摺動部材6と、を備え、第二の摺動部材6と第二の回転部材2との間の摩擦抵抗が、第二の摺動部材6と第一の摺動部材5との間の摩擦抵抗よりも大きい。よって、本実施形態によれば、例えば、第二の摺動部材6と第二の回転部材2とが互いに擦れる場合と、第二の摺動部材6と第一の摺動部材5とが互いに擦れる場合とで、摩擦抵抗トルクの大きさを異ならせることができる。すなわち、従来のようなコントロールプレートが無くても、第一の回転部材1と第二の回転部材2との相対回転角度に応じて摩擦抵抗トルクの大きさが異なるよう構成することができる。よって、例えば、ダンパ装置100の部品点数が減ってダンパ装置100の製造に要する手間や費用が低減されたり、ダンパ装置100が軸方向(X方向)により小型に構成されたりという効果が得られうる。
また、本実施形態では、例えば、第二の摺動部材6および第二の回転部材2が金属材料で構成され、第一の摺動部材5が合成樹脂材料で構成される。よって、本実施形態によれば、例えば、金属と金属とによる摺動箇所と、金属と樹脂とによる摺動箇所とを設けることができ、これにより、異なる大きさの摩擦抵抗トルクを生じさせることが可能なダンパ装置100が、比較的容易に実現されうる。
また、本実施形態では、例えば、第二の摺動部材6と第二の回転部材2とが互いに擦れる二つの面61b,21dのうち少なくとも一方に、表面処理が施される。よって、本実施形態によれば、例えば、表面処理が施された面61b,21dによって、第二の摺動部材6と第二の回転部材2との間の摩擦抵抗の経時変化が減りやすい。
また、本実施形態では、例えば、第一の回転部材1と第一の摺動部材5との間に設けられ、第一の摺動部材5を第二の摺動部材6に押し付けるとともに第二の摺動部材6を第二の回転部材2に押し付ける第二の弾性部材9、を備える。よって、本実施形態によれば、例えば、第二の弾性部材9によって、第二の摺動部材6と第一の摺動部材5との間の摩擦抵抗、および第二の摺動部材6と第二の回転部材2との間の摩擦抵抗が、より効果的に得られやすい。
また、本実施形態では、例えば、第二の回転部材2の、軸方向(X方向)の両側に二つの第一の摺動部材5,7が設けられ、第二の回転部材2の、第二の摺動部材6とは軸方向の反対側の第一の摺動部材7の第一の引掛部73,74と周方向(C方向)に引掛可能な第三の引掛部82を有し、第一の引掛部73,74と第三の引掛部82とが周方向に互いに引っ掛かった状態では、第一の摺動部材7および第一の回転部材1と回転軸Ax回りに一体的に回転して第二の回転部材2と擦れるとともに、第一の引掛部73,74と第三の引掛部82とが周方向に互いに離間した状態では、第二の回転部材2と回転軸Ax回りに一体的に回転して第一の摺動部材7と擦れる、第三の摺動部材8、をさらに備え、第三の摺動部材8と第二の回転部材2との間の摩擦抵抗が、第三の摺動部材8と第一の摺動部材7との間の摩擦抵抗よりも大きい。よって、本実施形態によれば、例えば、第三の摺動部材8と第二の回転部材2とが互いに擦れる場合と、第三の摺動部材8と第一の摺動部材7とが互いに擦れる場合とで、摩擦抵抗トルクの大きさを異ならせることができる。よって、例えば、コントロールプレートが必要な従来の構成と比べて、ダンパ装置100の部品点数がより低減されうる。
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。本発明は、上記実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成(技術的特徴)によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)を得ることが可能である。また、各構成要素のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。