JP5389714B2 - エンジンのフライホイール装置 - Google Patents

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本発明は、エンジンのクランク軸の軸端に連結されるドライブプレートにマスリングを複数のボルトにより連結してなり、エンジンの始動装置より駆動されるリングギヤを前記マスリングに隣接して設けたエンジンのフライホイール装置の改良に関する。
かゝるエンジンのフライホイール装置は、例えば下記特許文献1に開示されているように、既に知られている。
特開2005−188661号公報
従来のかゝるフライホイール装置では、マスリング及びリングギヤを個別に製作し、そのマスリングと、これにボルトにより締結されるドライブプレートとの間にリングギヤを挟持、固定していたので、部品点数及び製作工程が多く、コストの低減を困難にしていた。またマスリング及びリングギヤの軸方向での隣接配置では、フライホイール装置の軸方向幅を増加させるので、そのコンパクト化を妨げることになる。
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、部品点数及び製作工程が少なくて安価であり、しかもコンパクトなエンジンのフライホイール装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、エンジンのクランク軸の軸端に連結されるドライブプレートにマスリングを複数のボルトにより連結してなり、エンジンの始動装置より駆動されるリングギヤを前記マスリングに隣接して設けたエンジンのフライホイール装置であって、前記マスリングと、このマスリングにそれを挟むようにして各外周部を複数のリベットにより連結する一対のホルダプレートと、前記マスリングと同軸状に配置される出力ハブを備えて前記両ホルダプレート間にそれらと相対回転可能に配置されるドリブンプレートと、前記ホルダプレート及びドリブンプレート間に介装されるトルクダンパとでフライホイール組立体を構成したものにおいて、両側面を互いに平行な平坦面とした前記マスリングと、そのマスリングの外周に配置される前記リングギヤとを同一素材により一体に形成し、互いに同一形状とした前記両ホルダプレートには、軸方向で互いに反対方向に突出する環状の位置決め突起を前記マスリングよりも径方向内方側でそれぞれ一体に形成する一方、前記ドライブプレートには、そのドライブプレートと隣接する一方のホルダプレートの前記位置決め突起と嵌合することで前記フライホイール組立体及びドライブプレート相互を同軸状に位置決めし得る環状の位置決め凹部を形成し、前記位置決め突起に対応して前記両ホルダプレートの内側面に形成される環状凹部の相互間に、前記マスリングの内周端が臨む環状スペースを形成すると共に、その環状スペースよりも径方向内方側に前記ドリブンプレートを配置し、前記マスリングには、前記一方のホルダプレートとそのホルダプレートの外側面に重ねた前記ドライブプレートとを、該マスリングのねじ孔に螺合する前記複数のボルトにより締結すると共に、前記リベット及びボルトを、同一円周上に配置したことを徴とする。尚、前記ボルトは、後述する本発明の実施形態中の第2ボルト22に対応する。
本発明よれば、マスリング及びドライブプレートの一体化により部品点数の削減をもたらし、たリングギヤ及びマスリングの硬化処理を一挙に行うことができる等、製作工程の簡素化をたらし、コストの低減を図ることができる。しかもリングギヤはマスリングの外周に形成されるので、マスリングによるフライホイール装置の横幅の増加はなく、フライホイール装置のコンパクト化を図ることができる。
また複数のリベット及びボルトを同一円周上に配置することで、それらのためのリベット孔やねじ孔、ボルトをホルダプレートやマスリングに同一円周上で容易に加工することができ、加工性が良好である。また一方のホルダプレートは、リベットのみならず、ドライブプレートの締結用のボルトによってもマスリングに連結されるので、ホルダプレートとマスリングとの連結が強化される。
更にマスリングの両側面を互いに平行な平坦面とした上で、互いに同一形状とした両ホルダプレートに、軸方向で互いに反対方向に突出する環状の位置決め突起をマスリングよりも径方向内方側でそれぞれ一体に形成する一方、ドライブプレートには、そのドライブプレートと隣接する一方のホルダプレートの前記位置決め突起と嵌合することでフライホイール組立体及びドライブプレート相互を同軸状に位置決めし得る環状の位置決め凹部を形成したので、ホルダプレートの量産性が向上し、コストの低減に寄与し得るばかりか、両ホルダプレートにより挟持されるマスリングは両側面が平坦な単純形状のものとすることができて製作コストの低減を図ることができる。しかも、一対のホルダプレートに前記位置決め突起がそれぞれ形成されることで、両ホルダプレートの何れもドライブプレートと位置決め連結可能であり、誤組み立ての心配がない。
更にまた前記位置決め突起に対応して両ホルダプレートの内側面に形成される環状凹部の相互間に、マスリングの内周端が臨む環状スペースを形成すると共に、その環状スペースよりも径方向内方側にドリブンプレートを配置したので、マスリングの上記スペース側へのマスの増加が可能であり、即ち、フライホイール装置の仕様変更により、マスリングのマスを増加する必要がある場合には、マスリングを、その内周端側を図2に符号5′で示すように延長させたものと交換するだけで済み、ホルダプレートの形状及び構造の変更を行う必要がないことから、フライホイール装置の仕様変更に安価に対応可能となる。
本発明の実施形態に係るエンジンのフライホイール装置の正面図。 図1の2−2線拡大断面図。 図1の3−3線拡大断面図。 図2の4−4線断面図。 図4に対応する作動説明図。 図2の6矢視図。 フライホイール装置の組立順序説明図。
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
図1〜図3及び図7において、エンジンのクランク軸1の動力は、本発明のフライホイール装置Fを介して、クラッチ又は変速機に連なる出力軸2へと伝達される。そのフライホイール装置Fは、フライホイール組立体3と、これをクランク軸1に連結するドライブプレート4とよりなっている。
上記フライホイール組立体3は、マスリング5と、このマスリング5にそれを挟むようにして各外周部を連結する一対のホルダプレート6,6と、マスリング5と同軸状に配置される出力ハブ7aを備えてホルダプレート6,6間にそれらと相対回転可能に配置されるドリブンプレート7と、両ホルダプレート6,6及びドリブンプレート7間に介装されるトルクダンパ8とで構成され、また上記マスリング5と両ホルダプレート6,6とでマス側回転体10が構成される。
マスリング5は鍛造、プレス、焼結又は鋳造により成形されるもので、両側面が互いに平行な平坦面になっており、外周にはエンジンの始動装置により駆動されるリングギヤ12が一体に形成される。このようにマスリング5とリングギヤ12の一体化により部品点数の削減を図ることができ、コストの低減に寄与し得る。マスリング5とリングギヤ12の一体成形には鍛造又はプレスを用いると良い。
マスリングには、その両側面に開口する複数の内側リベット孔13a,13a…及びねじ孔14,14…が同一円周15で交互に並ぶように設けられる。一方、両ホルダプレート6,6は鋼板をプレス成形したもので、これらホルダプレート6,6には、これをマスリング5に同軸状に重ねたとき、上記内側リベット孔13a,13a…と整合する複数の外側リベット孔13b,13b…と、上記ねじ孔14,14…と整合する複数の内側ボルト通し孔16a,16a…とが設けられる。而して、マスリング5の両側面にホルダプレート6,6を重ね、内側リベット孔13a,13a…と外側リベット孔13b,13b…とを一致させてそれらにリベット17,17…を挿通し、そのリベット17,17…の先端部をかしめれば、ホルダプレート6,6及びマスリング5を同軸状に一体的に連結してなるマス側回転体10を構成することができる。このマス側回転体10には、これを取り付けるクランク軸1の特性に対応した慣性モーメントが付与される。
一方、ドライブプレート4は、その中心部が複数の第1ボルト20,20…によりクランク軸1の軸端に固着される。このドライブプレート4の外周部には、これを後述の位置決め手段21により位置決めしながら一方のホルダプレート6に重ねたとき、前記内側ボルト通し孔16a,16a…と整合する複数の外側ボルト通し孔16b,16b…が設けられており、この外側ボルト通し孔16b,16b…及び内側ボルト通し孔16a,16a…に挿通した第2ボルト22,22…をねじ孔14,14…に螺合、緊締することにより、ドライブプレート4を、一方のドライブプレート4を挟持しつゝマスリング5に締結することができる。その際、第2ボルト22,22…の、マスリング5外側面より突出した先端部は、上記挟持側とは反対側のホルダプレート6,6の内側ボルト通し孔16a,16a…に受容される。またドライブプレート4には、前記リベット17,17…の各膨大端部1aを受容する複数の逃げ孔23,23…が設けられる。したがって、ドライブプレート4は、前記リベット17,17…に干渉されることなく、ホルダプレート6,6への密着が可能である。
かくして複数のリベット17,17…及び第2ボルト22,22…は同一円周15上に交互に配置されることになり、このような配置によれば、内側リベット孔13a、外側リベット13b、ねじ孔14、内側ボルト通し孔16a、外側ボルト通し孔16bを、ホルダプレート6,6やマスリング5、ドライブプレート4に同一円周15上で容易に加工することができ、加工性が良好である。またドライブプレート4側の一方のホルダプレート6は、リベット17,17…のみならず、ドライブプレート4の締結用の第2ボルト22,22…によってもマスリング5に連結されるので、上記一方のホルダプレート6とマスリング5との連結が強化される。
マス側回転体10及びドライブプレート4間には、それらを相互に同軸状に位置決めする位置決め手段21が設けられ、これについて次に説明する。
両ホルダプレート6,6には、それぞれの外側方に突出してマスリング5の半径方向内側に位置する環状の位置決め突起25がプレス成形され、この環状の位置決め突起25はマスリング5と同軸状に配置される。一方、両ドライブプレート4には、上記両ホルダプレート6,6の位置決め突起25の何れとも嵌合することで、マス側回転体10及びドライブプレート4を相互に同軸状に位置決めし得る環状の位置決め凹部26が形成される。こうして前記位置決め手段21が構成される。
このように、互いに嵌合して位置決め手段21を構成する環状の位置決め突起25及び位置決め凹部26は、互いに対向するホルダプレート6,6及びドライブプレート4にそれぞれプレス成形されるので、両ホルダプレート6,6により挟持されるマスリングは両側面が平坦な単純形状のものとすることができ、またマスリングは勿論、両ホルダプレートにも面倒な切削加工を施す必要がなく、製作コストの低減を図ることができる。
しかも、一対のホルダプレート6,6に前記位置決め突起25がそれぞれ形成されることで、両ホルダプレート6,6の何れもドライブプレート4と位置決め連結することが可能であり、誤組み立ての心配がない。
図2に示すように、両ホルダプレート6,6の内側面には、上記位置決め突起25に対応した環状凹部27が必然的に形成され、これら環状凹部27間のスペース28に前記マスリング5の内周端が臨むことになる。またこれら環状凹部27より半径方内方に前記ドリブンプレート7は配置され、マスリング5の上記スペース28側へのマスの増加が可能になっている。したがって、フライホイール装置Fの仕様変更により、マスリング5のマスを増加する必要がある場合には、マスリング5を、その内周端側を図2に符号5′で示すように延長させたものと交換するだけで済み、ホルダプレート6,6の形状及び構造の変更を行う必要がない。これによりフライホイール装置Fの仕様変更に安価に対応することができる。
次に、図2、図4及び図5により前記トルクダンパ8について説明する。
トルクダンパ8は、ばねダンパ30と摩擦ダンパ31とからなっている。ばねダンパ30は、ドリブンプレート7に設けられてその周方向に並ぶ複数のばね保持孔32と、これらばね保持孔32にそれぞれ保持されてドリブンプレート7の周方向に配置される複数のコイルばね33と、これらコイルばね33の、ばね保持孔32から突出した両側部を収容保持すべく両ホルダプレート6,6にそれぞれ形成される複数のばね収容凹部34とで構成され、クランク軸1にトルク変動が発生したとき、ホルダプレート6,6及びドリブンプレート7間の相対回動、即ちばね収容凹部34及びばね保持孔32間の相対回動(図5参照)に伴なうコイルばね33の圧縮変形により上記トルク変動を緩和することができる。図示例では、コイルばね33に二重ばねを使用しているが、一重ばねでもよい。
摩擦ダンパ31は、出力ハブ7aの半径方向外側において一方のホルダプレート6とドリブンプレート7との間に介装される合成樹脂製の第1摩擦板35と、他方のホルダプレート6とドリブンプレート7との間に介装される合成樹脂製の第2摩擦板36と、その他方のホルダプレート6と第2摩擦板36との間に縮設される皿ばね37とで構成される。第1及び第2摩擦板35,36はそれぞれ内周側にボス35a,36aを有しており、これらボス35a,36aが対応するホルダプレート6,6の内周端部にスプライン38を介して嵌合し、第1及び第2摩擦板35,36とホルダプレート6,6とがそれぞれ一体回転し得るようになっている。また両摩擦板35,36は、皿ばね37のセット荷重をもってドリブンプレート7の両側面に圧接するようになっている。したがって、ホルダプレート6,6及びドリブンプレート7間に相対回動が生じると、両摩擦板35,36及びドリブンプレート7間に摩擦が発生し、その摩擦により前記コイルばね33の振動を減衰することができる。このようなばねダンパ30と摩擦ダンパ31との協働により、クランク軸1のトルク変動を効果的に緩和することができる。
両ホルダプレート6,6間のスペースには潤滑用のグリース39が充填される。このグリース39の遠心力による漏れ防止のために、マスリング5の両側面に環状のシール溝40が形成され、それらにホルダプレート6,6の内側面に密接するOリング41が装着される。
図1に示すように、上記のように位置決め突起25、ばね収容凹部34、外側リベット孔13b,13b…及び内側ボルト通し孔16a,16a…を有する各ホルダプレート6は、その直径線Lで仕切られる一半部6aと他半部6bとが直径線Lに関して対称になるように形成される。こうすることで一対のホルダプレート6,6には互換性が付与される。したがって、同一形状の2枚のホルダプレート6,6を、それぞれの位置決め突起25を外側に向けて配置することにより、一対のホルダプレート6,6を構成することができ、ホルダプレート6,6の量産性が向上し、コストの低減に寄与し得る。
図2及び図6に示すように、ドリブンプレート7の出力ハブ7aは、出力軸2がスプライン嵌合するスプライン孔44を持っており、このスプライン孔44には、潤滑と振動抑制のためのグリースが塗布され、そのグリースの流出を防ぐべく、出力軸2の挿入側と反対側の出力ハブ7aの端部外周面にキャップ45が嵌合される。出力ハブ7aの上記端部外周面には、逆テーパの底面を持つ係止凹部46が周方向複数箇所に設けられ、これら係止凹部46に係合する係止爪44aがキャップ45に部分的にかしめ形成される。このようにスプライン孔44内のグリースを保持するキャップ45は、出力ハブ7aの端部外周面に嵌合して固定されるので、このキャップ45の存在にも拘らず、出力ハブ7aの軸方向全長をスプライン孔44の有効長さとすることができ、出力ハブ7a及び出力軸2のスプライン嵌合長さを充分に得て、スプライン孔44の負荷容量を増大させることができる。
フライホイール装置Fの組み立てに当たっては、図7に示すように、一方でフライホイール組立体3を組み立て、他方でドライブプレート4を第1ボルト20,20…によりクランク軸1に取り付け、そしてドライブプレート4にフライホイール組立体3を第2ボルト22,22…により連結する。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
F・・・・・・フライホイール装置
1・・・・・・クランク軸
3・・・・・・フライホイール組立体
4・・・・・・ドライブプレート
5・・・・・・マスリング
6・・・・・・ホルダプレート
7・・・・・・ドリブンプレート
7a・・・・・ドリブンプレートの出力ハブ
8・・・・・・トルクダンパ
15・・・・・円周
17・・・・・リベット
22・・・・・ボルト(第2ボルト)
25・・・・・位置決め突起
26・・・・・位置決め凹部
27・・・・・環状凹部
28・・・・・スペース
39・・・・・グリース
41・・・・・シール部材(Oリング)

Claims (1)

  1. エンジンのクランク軸(1)の軸端に連結されるドライブプレート(4)にマスリング(5)を複数のボルト(22)により連結してなり、エンジンの始動装置より駆動されるリングギヤ(12)を前記マスリング(5)に隣接して設けたエンジンのフライホイール装置であって、
    前記マスリング(5)と、このマスリング(5)にそれを挟むようにして各外周部を複数のリベット(17)により連結する一対のホルダプレート(6,6)と、前記マスリング(5)と同軸状に配置される出力ハブ(7a)を備えて前記両ホルダプレート(6,6)間にそれらと相対回転可能に配置されるドリブンプレート(7)と、前記ホルダプレート(6,6)及びドリブンプレート(7)間に介装されるトルクダンパ(8)とでフライホイール組立体(3)を構成したものにおいて、
    両側面を互いに平行な平坦面とした前記マスリング(5)と、そのマスリング(5)の外周に配置される前記リングギヤ(12)とを同一素材により一体に形成し
    互いに同一形状とした前記両ホルダプレート(6,6)には、軸方向で互いに反対方向に突出する環状の位置決め突起(25)を前記マスリング(5)よりも径方向内方側でそれぞれ一体に形成する一方、前記ドライブプレート(4)には、そのドライブプレート(4)と隣接する一方のホルダプレート(6)の前記位置決め突起(25)と嵌合することで前記フライホイール組立体(3)及びドライブプレート(4)相互を同軸状に位置決めし得る環状の位置決め凹部(26)を形成し、
    前記位置決め突起(25)に対応して前記両ホルダプレート(6,6)の内側面に形成される環状凹部(27)の相互間に、前記マスリング(5)の内周端が臨む環状スペース(28)を形成すると共に、その環状スペース(28)よりも径方向内方側に前記ドリブンプレート(7)を配置し、
    前記マスリング(5)には、前記一方のホルダプレート(6)とそのホルダプレート(6)の外側面に重ねた前記ドライブプレート(4)とを、該マスリング(5)のねじ孔(14)に螺合する前記複数のボルト(22)により締結すると共に、前記リベット(17)及びボルト(22)を、同一円周(15)上に配置したことを特徴とするエンジンのフライホイール装置。
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