以下、本発明のマスクブランクス、ネガ型レジスト膜付きマスクブランクス、位相シフトマスク、およびそれを用いるパターン形成体の製造方法について詳細に説明する。
A.マスクブランクス
本発明のマスクブランクスは、ArFエキシマレーザ露光光が適用されるハーフトーン型の位相シフトマスクを製造するために用いられるマスクブランクスであって、透明基板と、上記透明基板上に形成され、SixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)からなる光半透過膜と、を有し、上記光半透過膜は、ArFエキシマレーザ露光光の波長における消衰係数が0.2〜0.45の範囲内であり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における屈折率が2.3〜2.7の範囲内であり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光透過率が15%〜38%の範囲内であることを特徴とするものである。
図1は、本発明のマスクブランクスの一例を示す概略断面図である。図1に示されるマスクブランクス100は、ArFエキシマレーザ露光光が適用されるハーフトーン型の位相シフトマスクを製造するために用いられるマスクブランクスである。図1に示されるマスクブランクス100は、透明基板101と、上記透明基板101上に形成され、SixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)からなる単層構造の光半透過膜102と、を有する。上記光半透過膜102は、ArFエキシマレーザ露光光の波長における消衰係数が0.2〜0.45の範囲内であり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における屈折率が2.3〜2.7の範囲内であり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光透過率が15%〜38%の範囲内である。
本発明のマスクブランクスは、上記光半透過膜が、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光透過率として、15%〜38%の範囲内の高い光透過率を有する。このため、本発明のマスクブランクスから形成された位相シフトマスクを用い、パターンの境界において、位相効果による光の干渉により光強度をゼロにして、転写像のコントラストを向上させて、パターン形成体を製造する場合において、パターン形成体を製造する場合、上記光半透過膜が高い光透過率を有することにより、その位相効果をより顕著にすることができる。また、上記光半透過膜は、金属を含有しないために、ArFエキシマレーザ露光光が長時間照射されても、珪素(Si)の酸化膜が成長することはなく、パターン寸法が変化することを防止することができる。同様に、位相シフトマスクの洗浄工程においても、パターン寸法が変化することを防止することができる。したがって、本発明によれば、フォトリソグラフィにおいて、転写特性を優れたものとし、かつArFエキシマレーザ露光光照射耐性、および洗浄耐性を高くすることができる。
以下、本発明のマスクブランクスについて、マスクブランクスの部材と、マスクブランクスの構成とに分けて説明する。
1.マスクブランクスの部材
まず、本発明のマスクブランクスの部材について説明する。本発明のマスクブランクスは、透明基板と光半透過膜とを少なくとも有する。
(1)光半透過膜
本発明における光半透過膜は、後述する透明基板上に形成され、SixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)からなり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における消衰係数が0.2〜0.45の範囲内であり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における屈折率が2.3〜2.7の範囲内であり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光透過率が15%〜38%の範囲内のものである。
上記光半透過膜は単層構造でも複数層構造でもよいが、単層構造であることが好ましい。本発明の作用効果を容易に得ることができるからである。具体的には、より簡単な構造によって、上述の通り、転写特性を優れたものとし、かつArFエキシマレーザ露光光照射耐性、および洗浄耐性を高くすることができるからである。また、より簡単な構造によって、後述するように、微細パターン欠け耐性を高くすることができるからである。さらに、上記光半透過膜の加工がより簡易になるからである。
上記光半透過膜は、特に限定されるものではないが、上記Siの組成比xおよび上記Nの組成比yが、0.95≦x+y≦1を満足するものが好ましく、中でも、x+y=1を実質的に満足するものが好ましい。上記光半透過膜において、酸素(O)が多いと、上記消衰係数が低くなるため、上記光透過率が高くなる結果、上記屈折率が低くなる。これにより、180°の位相差を得るための上記光半透過膜の膜厚が厚くなるからである。ここで、上記Siの組成比xおよび上記Nの組成比yがx+y=1を実質的に満足するとは、実質的に酸素(O)を含有しないことを意味する。上記Siの組成比xおよび上記Nの組成比yがx+y=1を実質的に満足するx+yの範囲としては、0.97〜1.00の範囲内、中でも、0.98〜1.00の範囲内が好ましい。
以下に、上記光半透過膜において、上記Siの組成比xおよび上記Nの組成比yが、x+y=1を実質的に満足する場合、すなわち、酸素(O)が含まれていない場合が、中でも好ましい理由を、さらに詳細に説明する。表1に、上記光半透過膜における酸素(O)が含まれていないSixNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、およびx+y=1を満足する)からなる光半透過膜、上記光半透過膜における酸素(O)が含まれているSixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y<1を満足する)からなる光半透過膜、および従来のMoSiからなる光半透過膜の特性を示す。
表1に示されるように、上記SixNyからなる光半透過膜は、上記SixO1−x−yNyからなる光半透過膜と比較して、微細パターン欠け耐性が良好である。これは、上記SixO1−x−yNyからなる光半透過膜は、酸素(O)が含まれており、屈折率が低くなるため、180°の位相差を得るための膜厚が厚くなるのに対して、上記SixNyからなる光半透過膜は、酸素(O)が含まれておらず、屈折率が高くなるため、180°の位相差を得るための膜厚を薄くできるからである。また、上記MoSiからなる光半透過膜は、上記SixO1−x−yNyからなる光半透過膜よりも、180°の位相差を得るための膜厚が厚くなるから、微細パターン欠け耐性が悪い。
以下に、上記SixNyからなる光半透過膜の微細パターン欠け耐性が良好であることによって得られる作用効果ついてさらに説明する。一般的に、上記マスクブランクスから得られるハーフトーン型位相シフトマスクのマスクパターンをウエハに転写するウエハプロセスにおいて解像力を向上させるためには、光半透過膜の光透過率を高くする必要がある。そして、光半透過膜の光透過率を高くするためには、光半透過膜の酸素(O)の組成比を大きくする手段がとられる。しかしながら、光半透過膜の酸素(O)の組成比を大きくすることによって、上述の通り、光半透過膜の膜厚は増大することになる。
そして、光半透過膜の膜厚が増大すると、位相シフトマスクにおける光半透過膜パターンが微細化したときに、光半透過膜パターンのパターン倒れ等の問題が生じることになる。中でも、ウエハにおいて10nmノードのパターンを形成するような限界レベルの高解像を狙う場合に、上記パターン倒れ等の問題が顕著になる。特に、後述する「D.位相シフトマスクを用いるパターン形成体の製造方法」の項目に記載の通り、ネガティブトーン現像(Negative tone development)によって、上記位相シフトマスクのマスクパターンをウエハに転写するウエハプロセスにおいては、上記位相シフトマスクにおいて、コンタクトホールやライン等の微細パターンに対応する実際に解像される部分であるメインパターンとともに、メインパターンの近接に配置される実際には解像されない補助パターンを、光半透過膜から構成される凸状の微細パターンとして形成する必要がある。そして、補助パターンは、後述する「D.位相シフトマスクを用いるパターン形成体の製造方法」の項目に記載の通り、ウエハプロセスの先端技術において、60nm以下の寸法(幅または奥行き)を有する光半透過膜から構成される凸状の微細パターンとなる。このような補助パターンの微細パターンにおいて、上記パターン倒れ等の問題は特に顕著になる。
つまり、上記ウエハプロセスにおいて解像力を向上させるためには、光半透過膜の高透過率化が必要であるが、光半透過膜の高透過率化に伴い、光半透過膜の膜厚は増大するので、光半透過膜の高透過率化と、光半透過膜パターンが微細化した位相シフトマスクにおいて上記パターン倒れ等の問題が生じるのを回避するために必要となる光半透過膜の薄膜化とは、相反することになる。
これに対して、上述の通り、上記SixNyからなる光半透過膜は、酸素(O)が含まれていないため、屈折率が高く、上記SixO1−x−yNyからなる光半透過膜よりも膜厚を薄くできるから、微細パターン欠け耐性が良好である。また、上記SixNyからなる光半透過膜は、上記Siの組成比xおよび上記Nの組成比yを調整することによって、上記SixO1−x−yNyからなる光半透過膜と同様に高透過率化を実現する。
このため、上記SixNyからなる光半透過膜は、微細パターン欠け耐性が良好であるから、上記SixO1−x−yNyからなる光半透過膜よりも好適に、上記パターン倒れ等の問題を回避することができる。中でも、ウエハにおいて10nmノードのパターンを形成するような限界レベルの高解像を狙う場合に、上記SixO1−x−yNyからなる光半透過膜よりも好適に、上記パターン倒れ等の問題を回避することができる。これにより、上記SixNyからなる光半透過膜は、上記SixO1−x−yNyからなる光半透過膜では上記パターン倒れ等の問題が生じて不可能となる上記限界レベルの高解像を実現することができる。
特に、補助パターンが、ウエハプロセスの先端技術において、60nm以下の寸法(幅または奥行き)を有する光半透過膜から構成される凸状の微細パターンとなる場合に、上記SixNyからなる光半透過膜は、微細パターン欠け耐性が良好であるから、上記SixO1−x−yNyからなる光半透過膜よりも好適に、このような補助パターンの微細パターンにおいて、上記パターン倒れ等の問題を回避することができる。これにより、上記SixNyからなる光半透過膜は、上記SixO1−x−yNyからなる光半透過膜では上記パターン倒れ等の問題が生じて不可能となる高解像を実現することができる。
したがって、上記SixNyからなる光半透過膜は、上記SixO1−x−yNyからなる光半透過膜よりも、光半透過膜の高透過率化および薄膜化を好適に両立させることができ、微細パターン欠け耐性が良好なものとなるから、本発明における光半透過膜の中で最も高い解像力を実現することができる。
また、表1に示されるように、上記SixNyからなる光半透過膜は、上記SixO1−x−yNyからなる光半透過膜と比較して、マスクブランクスの外観品質も良好である。これは、上記SixNyからなる光半透過膜は、酸素(O)が含まれておらず、成膜時の外観品質の安定性が高いのに対して、SixO1−x−yNyからなる光半透過膜は、酸素(O)が含まれているため、成膜時に異物が発生しやすく、外観品質の安定性が低いからである。また、MoSiからなる光半透過膜は、現行においても、量産性があるので、マスクブランクスの外観品質は良好である。
さらに、表1に示されるように、上記SixNyからなる光半透過膜およびSixO1−x−yNyからなる光半透過膜は、両方とも、遷移金属を含んでいないので、上記MoSiからなる光半透過膜と比較して、耐薬品性が高いため洗浄耐性が良好であり、かつ露光光の照射による変質が起きにくいため露光光照射耐性が良好である。一方、MoSiからなる光半透過膜は、遷移金属を含んでいるので、多数回の洗浄で、寸法、位相差、透過率などが変動するため、洗浄耐性が悪く、かつ露光光の照射により、遷移金属が置き換わり、酸化が進み、寸法変動など発生してしまうため、露光光照射耐性が悪い。
また、上記光半透過膜は、特に限定されるものではないが、上記Siの組成比xおよび上記Nの組成比yがx=yを実質的に満足するものが好ましい。これにより、SiとNの緻密な膜が得られ、耐洗浄性、ArFエキシマレーザ露光光照射耐性等、各耐性の向上が期待できるからである。ここで、上記Siの組成比xおよび上記Nの組成比yがx=yを実質的に満足するとは、xとyの比が、x:y=0.4:0.6〜0.6:0.4の範囲内であることを意味する。
また、上記Siの組成比x、上記Oの組成比1−x−y、および上記Nの組成比yの調整は、後述するように、スパッタリング法等の従来公知の成膜方法により、上記光半透過膜を成膜する場合において、使用する装置、使用する材料、または成膜条件等を適宜選択することによって行うことができる。例えば、平行平板型DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、上記透明基板上に上記光半透過膜をスパッタリングにより成膜する場合には、ターゲット、ターゲットと上記透明基板との距離(TS距離)、ガス流量比、ガス圧、投入電力(パワー)、基板回転数等のスパッタプロセス条件、またはAr、N2、もしくはO2等のスパッタガスを適宜選択することによって行うことができる。
また、上記光半透過膜は、上記消衰係数が0.2〜0.45の範囲内のものであれば、特に限定されるものではないが、中でも、上記消衰係数が、0.20〜0.40の範囲内であるものが好ましく、特に、0.20〜0.35の範囲内であるものが好ましい。上記範囲に満たないと、上記光半透過膜において、上記光透過率が高くなり、上記消衰係数および上記屈折率が小さくなるため、ArFエキシマレーザ露光光の波長において所定の位相差を得るために必要な膜厚が厚くなってしまうからであり、上記範囲を超えると、上記光半透過膜において、上記光透過率が低くなり、ArFエキシマレーザー露光光の波長における所望の位相シフト効果が得られなくなってしまうからである。
また、上記消衰係数の値の調整は、上記Siの組成比x、上記Oの組成比1−x−y、および上記Nの組成比yを調整することによって行うことができる。
また、上記光半透過膜の上記消衰係数はジェー・エー・ウーラム社製エリプソメーターVUV−VASEで測定し、算出することができる。
また、上記光半透過膜は、上記屈折率が2.3〜2.7の範囲内のものであれば、特に限定されるものではないが、中でも、上記屈折率が、2.5〜2.7の範囲内であるものが好ましく、特に、2.6〜2.7の範囲内であるものが好ましい。上記範囲に満たないと、ArFエキシマレーザ露光光の波長において180°の位相差を得るための上記光半透過膜の膜厚が厚くなってしまうからである。
また、上記屈折率の値の調整は、上記Siの組成比x、上記Oの組成比1−x−y、および上記Nの組成比yを調整することによって行うことができる。
また、上記光半透過膜の上記屈折率はジェー・エー・ウーラム社製エリプソメーターVUV−VASEで測定し、算出することができる。また、上記屈折率の測定は、分光光度計で測定した反射率曲線からシミュレーションを用いて算出する方法で行うことができる。
また、上記光半透過膜は、上記光透過率が15%〜38%の範囲内のものであれば、特に限定されるものではないが、中でも、上記光透過率が、18%〜38%の範囲内であるものが好ましく、特に、20%〜38%の範囲内であるものが好ましい。上記範囲に満たないと、所望の位相シフト効果が得られなくなるからであり、上記範囲を超えると、光半透過膜の遮光性が必要以上に下がり、所望するパターンの転写特性に問題が生じるからである。
また、上記光透過率の値の調整は、上記Siの組成比x、上記Oの組成比1−x−y、および上記Nの組成比yを調整することによって行うことができる。
上記光半透過膜の上記光透過率、および上記透明基板のみを通過する波長が193nmのArFエキシマレーザ露光光と、上記透明基板および光半透過膜を通過する当該レーザ露光光との位相差等は、位相シフト量測定機(レーザーテック社製、MPM193)等を用いることで測定することができる。
さらに、上記光半透過膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、57nm〜67nmの範囲内であることが好ましい。57nm〜67nmの範囲内の膜厚であれば、従来の光半透過膜の膜厚よりも薄いため、エッチングにより半透過膜パターンを形成するのが容易になるからである。そして、エッチングに要する時間が短くて済むため、後述するように、透明基板にダメージが与えられることを防止するエッチングバリア層を、透明基板および光半透過膜の間に有しなかったとしても、エッチングにより半透過膜パターンを形成する時に、透明基板にダメージが与えられることを十分に回避することができるからである。
また、上記光半透過膜の膜厚は、中でも、57nm〜64nmの範囲内であることが好ましく、特に、57nm〜62nmの範囲内であることが好ましい。上記光半透過膜の膜厚がより薄い方が、上記光半透過膜から形成される後述する光半透過膜パターンにおいてパターン倒れ等の欠陥が発生することを抑制できるからであり、または上記光半透過膜の加工や光半透過膜パターンの修正をし易いからである。
また、上記光半透過膜の膜厚はジェー・エー・ウーラム社製エリプソメーターVUV−VASEで測定し、算出することができる。
また、上記光半透過膜は、特に限定されるものではないが、上記透明基板のみを通過する波長が193nmのArFエキシマレーザ露光光と、上記透明基板および光半透過膜を通過する当該レーザ露光光との位相差が、160°〜200°の範囲内であるものが好ましく、中でも、170°〜190°の範囲内であるものが好ましく、特に、177°であるものが好ましい。本発明のマスクブランクスから光半透過膜をエッチングすることにより位相シフトマスクを形成する時に、光半透過膜がエッチングされる部分において、透明基板がエッチングされて掘り込み部が形成されたとしても、位相シフトマスクにおいて、掘り込み部が形成された透過領域を通過する波長が193nmのArFエキシマレーザ露光光と、光半透過膜が残っている半透過領域を通過する当該レーザとの位相差を180°にすることができるからである。これにより、ハーフトーン型の位相シフトマスクを作製することができるからである。
(2)透明基板
本発明における透明基板としては、特に限定されるものではないが、例えば、露光光を高透過率で透過する光学研磨された合成石英ガラス、蛍石、フッ化カルシウム等を挙げることができ、中でも、通常、多用されており品質が安定し、短波長の露光光の透過率の高い合成石英ガラスが好ましい。
(3)遮光膜
本発明のマスクブランクスとしては、上記半透過膜および透明基板を有するものであれば、特に膜構成、材質、ArFエキシマーレーザー露光光の波長における光学濃度(OD値)など、限定されるものではないが、上記光半透過膜上に形成され、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光学濃度(OD値)が、上記光半透過膜と合わせて所望の光学濃度(OD値)となるよう調整した、遮光膜をさらに有するものが好ましい。
図2は、本発明のマスクブランクスの他の例を示す概略断面図である。図2に示されるマスクブランクス100は、透明基板101と、透明基板101上に形成され、SixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)からなる単層構造の光半透過膜102と、光半透過膜102上に形成され、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光学濃度(OD値)が、光半透過膜102と合わせて3以上となるような、単層構造の遮光膜103を有する。そして、遮光膜103が、ArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能および上記光半透過膜に対するエッチングバリア機能の全て機能を有している。
マスクブランクスから形成される位相シフトマスクにおいては、大きい面積を有する光半透過膜パターンがある場合には、そのようなパターンを透過する露光光によって、転写像が不鮮明になる問題が生じることがある。そして、位相シフトマスにおいては、大きい面積を有する光半透過膜パターン上に遮光膜パターンを形成することにより、そのようなパターンを透過する不要な露光光を遮光することによって、このような問題を解消するようにしている。そして、本発明のマスクブランクスのように、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光半透過膜の光透過率が15%〜38%であり、一般的な光透過率の6%よりも特に大きい場合には、上述したような問題がより顕著に生じることになる。したがって、本発明によれば、上記遮光部をさらに有することによって、このような問題を回避する効果をより顕著に得ることができる。
上記遮光膜としては、上記光半透過膜上に形成され、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光学濃度(OD値)が、上記光半透過膜と合わせて所望の光学濃度(OD値)となるよう調整した、ものであれば特に限定されるものではない。上記遮光膜としては、マスクパターンをウエハに転写する時に位相シフトマスクとレンズ間での多重反射を防止する反射防止機能、および上記遮光膜をエッチングする時に上記光半透過膜にダメージが与えられることを好適に防止する上記光半透過膜に対するエッチングバリア機能を有するものが好ましい。中でも、描画時に電子線によって帯電するのを防止する導電機能を有するものが好ましい。
本発明のマスクブランクスにおいては、図2に示されるマスクブランクス100のように、上記遮光膜は、上記光半透過膜上に形成され、上記光半透過膜に対するエッチングバリア機能およびArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有する光吸収層を含む単層構造を有することが好ましい。これにより、より少ない工程で、必要な機能を備えたマスクを得ることが出来るからである。
図2に示されるマスクブランクス100のように、上記遮光膜が上記単層構造を有する場合には、上記遮光膜の材料は、特に限定されるものではないが、Cr、Ta、W、Mo等を挙げることができる。中でも、Cr等が好ましい。上記遮光膜をエッチングする時に使用する反応性エッチングガスの種類が、上記光半透過膜をエッチングする時に使用する反応性エッチングガスと異なるものとなるため、上記遮光膜が上述したエッチングバリア機能を有することが期待できるからである。
また、上記遮光膜が上記単層構造を有する場合には、上記遮光膜の厚さは、その材料の種類により異なるものであり、特に限定されるものではないが、30nm〜80nmの範囲内であることが好ましい。上記遮光膜のArFエキシマレーザ露光光の波長における光学濃度(OD値)を上記光半透過膜と合わせて3以上にし易く、かつ上記遮光膜をエッチングし易い膜厚だからである。
また、上記遮光膜の上記光半透過膜と合わせた光学濃度(OD値)は大塚電子社製MCPD3000、上記遮光膜の反射率は大塚電子社製MCPD7000で測定し、算出することができる。
図3は、本発明のマスクブランクスの他の例を示す概略断面図である。図3に示されるマスクブランクス100は、遮光膜103が、光半透過膜102上に形成された光吸収層103aと、光吸収層103a上に形成されたハードマスク層103bと、を含む2層構造を有する。そして、光吸収層103aが、ArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能および光半透過膜102に対するエッチングバリア機能の双方の機能を有している。また、ハードマスク層103bが、光吸収層103aに対するエッチングマスク機能を有している。
本発明のマスクブランクスにおいては、図3に示されるマスクブランクス100のように、上記遮光膜が、上記光半透過膜上に形成され、上述した光半透過膜に対するエッチングバリア機能およびArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有する光吸収層と、上記光吸収層上に形成され、上述した光吸収層に対するエッチングマスク機能を有するハードマスク層と、を含む2層構造を有することが好ましい。これにより、上記ハードマスク層をエッチングして形成したパターンを、上記光吸収層をエッチングする時のレジストパターンの代わりに用いることができるため、レジスト膜厚を薄くすることができる。これにより、上記遮光膜の微細なパターンを形成し易くなるからである。
より具体的には、図2に示されるマスクブランクス100のように、上記遮光膜が単層構造を有する場合には、単層構造の遮光膜は厚いために、厚いレジストパターンで遮光膜をエッチングして、遮光膜パターンを形成することになる。このため、レジストパターンのアスペクト比の関係から、遮光膜の微細なパターンを形成することは困難である。一方、上記遮光膜が図3に示されるような2層構造を有する場合には、上記ハードマスク層は上記単層構造の遮光膜よりも薄いために、上記単層構造の遮光膜のエッチングに用いたものよりも薄いレジストパターンで、上記ハードマスク層をエッチングして、ハードマスク層パターンを形成することができる。そして、そのパターンを、上記光吸収層をエッチングする時のレジストパターンの代わりに用いることができるため、レジスト膜厚を薄くすることができる。これにより、上記単層構造の遮光膜よりも、上記遮光膜の微細なパターンを形成し易くなるからである。
上記遮光膜が上記2層構造を有する場合には、上記ハードマスク層は、特に限定されるものではないが、上述した導電機能を有していてもよい。また、上記遮光膜が上記2層構造を有する場合には、上記ハードマスク層の材料は、上述した光吸収層に対するエッチングマスク機能を有するものであれば、特に限定されるものではないが、Si、SiN、SiON、SiO2、MoSi、Cr、CrO、CrON等を挙げることができる。中でも、Si、SiN、SiON、SiO2、MoSi等が好ましい。上記光吸収層の材料にCrを含む材料を使用した場合、上記光吸収層をエッチングする時に使用する反応性エッチングガスの種類が、上記ハードマスク層をエッチングする時に使用する反応性エッチングガスと異なるものとなるため、上記ハードマスク層をエッチングする時に上記光吸収層にダメージが与えられることを防止できるからである。
また、上記遮光膜が上記2層構造を有する場合には、上記光吸収層の材料は、上述した光半透過膜に対するエッチングバリア機能およびArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有するものであれば、特に限定されるものではないが、Cr、Si、SiO、SiON、MoSi等を挙げることができる。中でも、Crが好ましい。上記光吸収層をエッチングする時に使用する反応性エッチングガスの種類が、上記ハードマスク層をエッチングする時に使用する反応性エッチングガスと異なるものとなるため、上記ハードマスク層をエッチングする時に上記光吸収層にダメージが与えられることを防止できるからである。また、Crは消衰係数が高いので、より薄い膜厚の上記遮光膜によって、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光学濃度(OD値)を、上記光半透過膜と合わせて3以上にすることができるからである。
また、上記遮光膜が上記2層構造を有する場合には、上記ハードマスク層の厚さは、その材料の種類により異なるものであり、特に限定されるものではないが、4nm〜10nmの範囲内、中でも4nm〜7nmの範囲内、特に4nm〜6nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が薄いほうが精度良く加工することができるからである。
また、上記遮光膜が上記2層構造を有する場合には、上記光吸収層の厚さは、その材料の種類により異なるものであり、特に限定されるものではないが、30nm〜80nmの範囲内、中でも30nm〜70nmの範囲内、特に30nm〜60nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が薄い方が加工や不良パターンの修正がし易いからである。
図4は、本発明のマスクブランクスの他の例を示す概略断面図である。図4に示されるマスクブランクス100は、遮光膜103が、光半透過膜102上に形成されたエッチングバリア層103cと、エッチングバリア層103c上に形成された光吸収層103aと、光吸収層103a上に形成されたハードマスク層103bと、を含む3層構造を有する。そして、エッチングバリア層103cが光半透過膜102に対するエッチングバリア機能を有し、光吸収層103aがArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有し、ハードマスク層103bが光吸収層103aに対するエッチングマスク機能を有している。
図5は、本発明のマスクブランクスの他の例を示す概略断面図である。図5に示されるマスクブランクス100は、遮光膜103が、光半透過膜102上に形成されたエッチングバリア層103cと、エッチングバリア層103c上に形成された光吸収層103aと、光吸収層103a上に形成されたハードマスク層103bと、を含む3層構造を有する。そして、エッチングバリア層103cが光半透過膜102に対するエッチングバリア機能を有し、光吸収層103aがArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有し、ハードマスク層103bが光吸収層103aに対するエッチングマスク機能を有している。
本発明のマスクブランクスにおいては、図4および図5に示されるマスクブランクス100のように、上記遮光膜が、上記光半透過膜上に形成され、上述した光半透過膜に対するエッチングバリア機能を有するエッチングバリア層と、上記エッチングバリア層上に形成され、上述したArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有する光吸収層と、上記光吸収層上に形成され、上述した光吸収層に対するエッチングマスク機能を有するハードマスク層と、を含む3層構造を有することが好ましい。これにより、上記ハードマスク層をエッチングして形成したパターンを、上記遮光膜が上記2層構造を有する場合と同様に、上記光吸収層をエッチングする時のレジストパターンの代わりに用いることができるからである。この結果、上記遮光膜の微細なパターンを形成し易くなるからである。
本発明のマスクブランクスにおいては、上記遮光膜が、上記単層構造または上記2層構造を有するよりも、上記3層構造を有することが好ましい。ArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有する層として、SixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)からなる光半透過膜と反応性の高いエッチングガスでエッチング可能な材料からなる光吸収層を用いることができるからである。これにより、ArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有する層の材料の選択の幅が広がり、上記遮光膜の膜厚をより薄くすることができるからである。また、ArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有する層および上記光半透過膜に対するエッチングバリア機能を有する層を、それぞれが互いに異なる材料からなる上記光吸収層および上記エッチングバリア層にそれぞれすることができるからである。これにより、上記光吸収層および上記エッチングバリア層を互いに異なるエッチングガスでそれぞれエッチングすることができるので、上記エッチングバリア層を、上記光吸収層をエッチングする時に上記光半透過膜にダメージが与えられることを好適に防止する上記光半透過膜に対するエッチングバリア機能を有するものにすることができるからである。
例えば、図4に示されるマスクブランクス100においては、ArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有する層として、SixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)からなる光半透過膜と反応性の高いエッチングガスでエッチング可能な材料であるMoSiからなる光吸収層103aを用いることができる。また、ArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有する層および上記光半透過膜に対するエッチングバリア機能を有する層を、MoSiからなる光吸収層103aおよびCrからなるエッチングバリア層103cにそれぞれすることができる。これにより、光吸収層103aおよびエッチングバリア層103cを互いに異なるフッ素系ガスおよび塩素系ガスでそれぞれエッチングすることができる。このため、エッチングバリア層103cを、光吸収層103aをエッチングする時に光半透過膜102にダメージが与えられることを好適に防止する上記光半透過膜に対するエッチングバリア機能を有するものとして用いることができる。
また、図5に示されるマスクブランクス100においては、ArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有する層として、SixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)からなる光半透過膜と反応性の高いエッチングガスでエッチング可能な材料であるSiからなる光吸収層103aを用いることができる。また、ArFエキシマレーザ露光光に対する光吸収機能を有する層および上記光半透過膜に対するエッチングバリア機能を有する層を、Siからなる光吸収層103aおよびCrからなるエッチングバリア層103cにそれぞれすることができる。これにより、光吸収層103aおよびエッチングバリア層103cを互いに異なるフッ素系ガスおよび塩素系ガスでそれぞれエッチングすることができる。このため、エッチングバリア層103cを、光吸収層103aをエッチングする時に光半透過膜102にダメージが与えられることを好適に防止する上記光半透過膜に対するエッチングバリア機能を有するものとして用いることができる。
上記遮光膜が上記3層構造を有する場合には、上記ハードマスク層は、特に限定されるものではないが、上述した導電機能を有していてもよい。また、上記遮光膜が上記3層構造を有する場合には、上記ハードマスク層の材料は、上述した光吸収層に対するエッチングマスク機能を有するものであれば、特に限定されるものではないが、Cr、CrO、CrON、SiN、SiON、SiO2等を挙げることができる。中でも、Crが好ましい。
また、上記遮光膜が上記3層構造を有する場合には、上記光吸収層の材料は、上述した光吸収機能を有するものであれば、特に限定されるものではないが、MoSi等の金属および珪素(Si)を含む材料、またはW、Ta等の金属もしくは珪素(Si)の単体を挙げることができる。中でも、珪素(Si)が特に好ましい。上記光吸収層をエッチングする時に使用する反応性エッチングガスの種類が、上記ハードマスク層をエッチングする時に使用する反応性エッチングガスと異なるものとなるため、上記ハードマスク層をエッチングする時に上記光吸収層にダメージが与えられることを防止できるからである。また、珪素(Si)単体は消衰係数が高いので、上記光吸収層が珪素(Si)単体から構成されることによって、上記遮光膜の膜厚をより薄くできるからである。
また、上記遮光膜が上記3層構造を有する場合には、上記エッチングバリア層の材料は、上述したエッチングバリア機能を有するものであれば、特に限定されるものではないが、Cr、CrON等を挙げることができる。上記エッチングバリア層をエッチングする時に使用する反応性エッチングガスの種類が、上記光吸収層をエッチングする時に使用する反応性エッチングガスと異なるものとなるため、上記光吸収層をエッチングする時に上記エッチングバリア層にダメージが与えられることを防止できるからである。例えば、フッ素系ガスによって上記光吸収層をエッチングする時に、上記エッチングバリア層にダメージが与えられることを防止でき、塩素系ガスによって上記エッチングバリア層をエッチングすることができる。また、上記エッチングバリア層をエッチングする時に使用する反応性エッチングガスの種類が、上記光半透過膜をエッチングする時に使用する反応性エッチングガスと異なるものとなるため、上記エッチングバリア層をエッチングする時に上記光半透過膜層にダメージが与えられることを防止できるからである。
また、上記遮光膜が上記3層構造を有する場合には、上記ハードマスク層の厚さは、その材料の種類により異なるものであり、特に限定されるものではないが、4nm〜10nmの範囲内、中でも4nm〜7nmの範囲内、特に4nm〜6nmの範囲内であることが好ましい。上述したエッチングマスク機能が十分機能し、かつ上記ハードマスク層をエッチングする時に上記光吸収層にダメージが与えられることを十分防止できるからである。
また、上記遮光膜が上記3層構造を有する場合には、上記光吸収層の厚さは、その材料の種類により異なるものであり、特に限定されるものではないが、20nm〜70nmの範囲内、中でも20nm〜60nmの範囲内、特に30nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。上述した光吸収機能が十分機能し、かつ上記光吸収層をエッチングする時に上記エッチングバリア層にダメージが与えられることを防止できるからである。また、上記光吸収層がSi単体から構成される場合、MoSiから構成される場合と比較し、Siは消衰係数が高いので、上記遮光膜の膜厚をより薄くできる。
さらに、上記遮光膜が上記3層構造を有する場合には、上記エッチングバリア層の厚さは、その材料の種類により異なるものであり、特に限定されるものではないが、2nm〜6nmの範囲内、特に2nm〜4nmの範囲内であることが好ましい。上述したエッチングバリア機能が十分機能するからである。
さらに、上記遮光膜としては、特に限定されるものではないが、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光学濃度(OD値)が、上記光半透過膜と合わせて3.0以上となるよう調整したものが好ましい。これにより、露光時に所望の部分に対して必要な遮光性を得ることができるからである。
(4)その他の部材
本発明のマスクブランクスとしては、上記半透過膜および透明基板を有するものであれば、特に限定されるものではなく、他にも必要な部材を適宜加えることができる。
本発明のマスクブランクスとしては、上記半透過膜、または上記遮光膜上にレジスト膜を有するものが好ましい。レジスト膜を新たに形成することなく、レジスト膜を露光した後、現像して、所定のレジストパターンを形成することができる。これにより、本発明のマスクブランクスから位相シフトマスクをより簡単に形成することができる。
2.マスクブランクスの構成
次に、本発明のマスクブランクスの構成ついて説明する。本発明のマスクブランクスは、上記光半透過膜が、上記透明基板上に形成されているものである。以下、本発明のマスクブランクスの構成および製造方法について説明する。
(1)マスクブランクスの構成
上記マスクブランクスは、特に限定されるものではないが、上記光半透過膜が、上記透明基板上に直接形成されたものが好ましい。
本発明における光半透過膜のように、光透過率が大きい光半透過膜においては、その屈折率が小さくなる傾向がある。このため、ハーフトーン型位相シフトマスクにおいて、適切な位相シフトを実現するために、このような光半透過膜が形成された部分と露光光が透過する部分との間に180°の位相差を形成しようとすると、その光半透過膜の膜厚を厚くする必要があった(特許文献1、2、および8)。そして、光半透過膜の膜厚を厚くする場合においては、光半透過膜をエッチングする時に、透明基板にダメージを与えないように、透明基板上にエッチングバリア層を形成することがある(特許文献1および2)。エッチングバリア層としては、光半透過膜とのエッチング選択性を上げるため、光半透過膜のエッチング種(例えば、CF4、SF6ガス等)ではエッチングされない層を形成する。しかしながら、このようなエッチングバリア層を形成する場合において、例えば、特許文献1においては、実施例からわかるように、Ta−Hf膜を形成し、Cl系のガスでエッチングするため、エッチングプロセスが複数回となり複雑となる上、Cl系のガスでエッチングし難く、形状およびユニフォーミティが悪くなるといった問題があった。また、特許文献2においては、エッチングバリア層を、Zr、Hfとする構造も記載されているが、同様に、エッチングプロセスが複数回必要となり、エッチングし難いことによる同様の問題があった。
しかしながら、本発明によれば、上記光半透過膜が、従来の光半透過膜の膜厚よりも薄いため、エッチングにより半透過膜パターンを形成するのが容易になる。これにより、エッチングに要する時間が短くて済むため、上記エッチングバリア層を上記透明基板および上記光半透過膜の間に有しなかったとしても、エッチングにより半透過膜パターンを形成する時に、上記透明基板にダメージが与えられることを十分に回避することができる。このため、上記マスクブランクスは、上記光半透過膜が、上記透明基板上に直接形成されたものとなる。これにより、上述のように、上記エッチングバリア層を形成する必要はないから、エッチングプロセスを複数回行う必要がなくなるために、エッチングプロセスが複雑とはならず、上記エッチングバリア層のエッチングが困難であるために、上記光半透過膜や上記透明基板の形状が悪くなったり、上記光半透過膜の形状の均一性が悪くなったりすることを防止することができるからである。
(2)マスクブランクスの製造方法
本発明のマスクブランクスの製造方法は、所望のマスクブランクスを得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。本発明のマスクブランクスの製造方法の一例においては、まず、上記透明基板を準備する。次に、上記透明基板上に、スパッタリング法等の従来公知の成膜方法により、上記光半透過膜を形成する。次に、上記光半透過膜上に、スパッタリング法等の従来公知の成膜方法により、上記遮光膜を形成する。上記遮光膜が上記2層構造を有する場合には、上記光半透過膜上にスパッタリング法等の従来公知の成膜方法により上記光吸収層を形成した後に、上記光吸収層上にスパッタリング法等の従来公知の成膜方法により上記ハードマスク層を形成する。上記遮光膜が上記3層構造を有する場合には、上記光半透過膜上にスパッタリング法等の従来公知の成膜方法により上記エッチングバリア層を形成して、上記エッチングバリア層上にスパッタリング法等の従来公知の成膜方法により上記光吸収層を形成した後に、上記光吸収層上にスパッタリング法等の従来公知の成膜方法により上記ハードマスク層を形成する。これにより、本発明のマスクブランクスが得られる。
また、上記マスクブランクスの製造方法において、上記光半透過膜を形成する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記光半透過膜を、スパッタターゲットには珪素(Si)からなるターゲットを用い、スパッタリングガスを適宜選択することによって、上記光半透過膜を構成するSixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)の組成比が所望の比率となるような成膜条件でスパッタリングにより成膜する方法が挙げられる。そして、このような方法としては、中でも、スパッタターゲットには珪素(Si)からなるターゲットを用い、窒素を含むが、酸素を含まないスパッタリングガスを使用して、酸素(O)が含まれていないSixNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、およびx+y=1を満足する)からなる光半透過膜を成膜する方法が好ましい。上記光半透過膜の中でも優れた特性を有する当該光半透過膜を成膜することができるからである。なお、酸素(O)が含まれていないSixNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、およびx+y=1を満足する)からなる光半透過膜、すなわち珪素と窒素とからなる光半透過膜とは、スパッタターゲットには珪素(Si)からなるターゲットを用い、窒素を含むが、酸素を含まないスパッタリングガスを使用して、酸素を含まない雰囲気で成膜される光半透過膜を意味する。
B.ネガ型レジスト膜付きマスクブランクス
次に、本発明のネガ型レジスト膜付きマスクブランクスについて説明する。本発明のネガ型レジスト膜付きマスクブランクスは、上記マスクブランクスと、上記マスクブランクス上に形成されたネガ型レジスト膜と、を有することを特徴とするものである。
図6は、本発明のネガ型レジスト膜付きマスクブランクスの一例を示す概略断面図である。図6に示されるネガ型レジスト膜付きマスクブランクス110は、ArFエキシマレーザ露光光が適用されるハーフトーン型の位相シフトマスクを製造するために用いられるネガ型レジスト膜付きマスクブランクスである。ネガ型レジスト膜付きマスクブランクス110は、透明基板101と、透明基板101上に形成され、SixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)からなる単層構造の光半透過膜102と、光半透過膜102上に形成され、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光学濃度(OD値)が、光半透過膜102と合わせて3以上となるような、単層構造の遮光膜103と、を有するマスクブランクス100を有する。また、ネガ型レジスト膜付きマスクブランクス110は、マスクブランクス100上に形成されたネガ型レジスト膜111を有する。
後述する「D.位相シフトマスクを用いるパターン形成体の製造方法」の項目に記載の通り、光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクを使用して、コンタクトホールやライン等の微細パターンをウエハに転写する場合には、ネガティブトーン現像(Negative tone development)によって、サイドローブ現象を簡単に回避して、コンタクトホールやライン等の微細パターンをウエハに転写することができる。
そして、ネガティブトーン現像(Negative tone development)によって、コンタクトホールやライン等の微細パターンをウエハに転写する場合には、ハーフトーン型位相シフトマスクにおいて、コンタクトホールやライン等の微細パターンに対応する光半透過膜から構成される凸状の微細パターンを形成する必要がある。
本発明によれば、上記ネガ型レジスト膜のパターンを用いて光半透過膜をエッチングすることにより、上記光半透過膜から構成される凸状の微細パターンを形成することによって、後述するネガ型の位相シフトマスクを製造することができる。このため、後述するネガ型の位相シフトマスクを製造する場合に、上記ネガ型レジスト膜付きマスクブランクスにおけるネガ型レジスト膜において露光する範囲は、上記光半透過膜から構成される凸状の微細パターンに対応する非常に狭い範囲となる。よって、より短い時間で後述するネガ型の位相シフトマスクを製造することができる。
上記ネガ型レジスト膜を形成するのに用いるネガ型レジスト組成物としては、特に限定されるものではないが、例えば、住友化学株式会社製 NEB-22A、ならびに信越化学工業製 SEBN-1637、 SEBN-1702、 およびSEBN-2014等を挙げることができる。中でも、信越化学工業製 SEBN-2014等が好ましい。より微細なパターンを形成するのに適しているからである。
また、上記ネガ型レジスト膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、50nm〜150nmの範囲内であることが好ましい。中でも、80nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。マスク上にパターンを形成する際、十分なエッチングバリア機能を有しつつ、微細なパターンを形成することができるからである。
さらに、上記ネガ型レジスト膜を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、スピンコートによる塗布等を挙げることができる。
C.位相シフトマスク
次に、本発明の位相シフトマスクについて説明する。本発明の位相シフトマスクは、ArFエキシマレーザ露光光が適用されるハーフトーン型の位相シフトマスクであって、透明基板と、上記透明基板上に形成され、SixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)からなる光半透過膜パターンと、を有し、上記光半透過膜パターンは、ArFエキシマレーザ露光光の波長における消衰係数が0.2〜0.45の範囲内であり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における屈折率が2.3〜2.7の範囲内であり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光透過率が15%〜38%の範囲内であることを特徴とするものである。
図7は、本発明の位相シフトマスクの一例を示す概略断面図である。図7に示される位相シフトマスク200は、ArFエキシマレーザ露光光が適用されるハーフトーン型の位相シフトマスクである。図7に示される位相シフトマスク200は、透明基板201と、上記透明基板201上に形成され、SixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)からなる単層構造の光半透過膜パターン202と、を有する。上記光半透過膜パターン202は、ArFエキシマレーザ露光光の波長における消衰係数が0.2〜0.45の範囲内であり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における屈折率が2.3〜2.7の範囲内であり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光透過率が15%〜38%の範囲内である。
本発明の位相シフトマスクは、上記光半透過膜パターンが、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光透過率として、15%〜38%の範囲内の高い光透過率を有する。このため、本発明の位相シフトマスクを用い、パターンの境界において、位相効果による光の干渉により光強度をゼロにして、転写像のコントラストを向上させて、パターン形成体を製造する場合、上記光半透過膜パターンが高い光透過率を有することにより、その位相効果をより顕著にすることができる。また、上記光半透過膜パターンは、金属を含有しないために、ArFエキシマレーザ露光光が長時間照射されても、珪素(Si)の酸化膜が成長することはなく、パターン寸法が変化することを防止することができる。同様に、位相シフトマスクの洗浄工程においても、パターン寸法が変化することを防止することができる。したがって、本発明によれば、フォトリソグラフィにおいて、転写特性を優れたものとし、かつArFエキシマレーザ露光光照射耐性、および洗浄耐性を高くすることができる。
以下、本発明の位相シフトマスクについて、位相シフトマスクの部材と、位相シフトマスクの構成とに分けて説明する。
1.位相シフトマスクの部材
まず、本発明の位相シフトマスクの部材について説明する。本発明の位相シフトマスクは、透明基板と光半透過膜パターンとを少なくとも有する。
(1)光半透過膜パターン
本発明における光半透過膜パターンは、後述する透明基板上に形成され、SixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)からなり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における消衰係数が0.2〜0.45の範囲内であり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における屈折率が2.3〜2.7の範囲内であり、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光透過率が15%〜38%の範囲内のものである。
本発明における光半透過膜パターンの構成は、パターン状に形成されている点を除いて、上記「A.マスクブランクス 1.マスクブランクスの部材 (1)光半透過膜」の項目に記載の本発明における光半透過膜の構成と同様である。このため、ここでの説明は省略する。
(2)透明基板
本発明における透明基板の構成は、パターン状に形成されている点を除いて、上記「A.マスクブランクス 1.マスクブランクスの部材 (2)透明基板」の項目に記載の本発明における光半透過膜の構成と同様である。このため、ここでの説明は省略する。
(3)遮光膜パターン
本発明の位相シフトマスクとしては、上記透明基板と光半透過膜パターンを有するものであれば、特に膜構成、材質、ArFエキシマーレーザー露光光の波長における光学濃度(OD値)など、限定されるものではないが、上記光半透過膜パターン上に形成され、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光学濃度(OD値)が、上記光半透過膜パターンと合わせて所望の光学濃度(OD値)となるよう調整した、遮光膜パターンをさらに有するものが好ましい。
本発明における遮光膜パターンの構成は、パターン状に形成されている点を除いて、上記「A.マスクブランクス 1.マスクブランクスの部材 (3)遮光膜」の項目に記載の本発明における遮光膜の構成と同様である。このため、ここでの説明は省略する。
(4)その他の部材
本発明の位相シフトマスクとしては、上記半透過膜および透明基板を有するものであれば、特に限定されるものではなく、他にも必要な部材を適宜加えることができる。
2.位相シフトマスクの構成
次に、本発明の位相シフトマスクの構成ついて説明する。本発明の位相シフトマスクは、上記光半透過膜パターンが、上記透明基板上に形成されているものである。以下、本発明の位相シフトマスクの構成および製造方法について説明する。
位相シフトマスクの構成
上記位相シフトマスクは、特に限定されるものではないが、上記位相シフトマスクが、ネガ型の位相シフトマスクであるものが好ましい。
ここで、「ネガ型の位相シフトマスク」とは、ウエハプロセスにおけるネガ型レジストプロセス又はネガティブトーン現像プロセスに用いられる位相シフトマスクであって、ポジ型レジストを用いるウエハプロセスに用いられる位相シフトマスクと比べて、白黒を反転したパターンデータを用いて光半透過膜パターンが形成された位相シフトマスクを指す。
後述する「D.位相シフトマスクを用いるパターン形成体の製造方法」の項目に記載の通り、光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクを使用して、例えば、コンタクトホールやライン等の微細パターンをウエハに転写する場合には、ネガティブトーン現像(Negative tone development)によって、サイドローブ現象を簡単に回避して、コンタクトホールやライン等の微細パターンをウエハに転写することができる。
本発明によれば、上記光半透過膜パターンは、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光透過率が15%〜38%の範囲内であり、従来よりも高いものである。このため、ネガティブトーン現像(Negative tone development)においては、コンタクトホールやライン等の微細パターンに対応する部分の遮光部のエッジにおける位相効果がより大きくなる。これにより、ネガティブトーン現像(Negative tone development)によって、コンタクトホールやライン等の微細パターンを従来よりも容易にウエハに転写することができる。
また、後述する「D.位相シフトマスクを用いるパターン形成体の製造方法」の項目に記載の通り、光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクを使用して、コンタクトホールやライン等の微細パターンをウエハに転写する場合、ハーフトーン型位相シフトマスクにおいて、そのような微細パターンに対応する実際に解像される部分であるメインパターンとともに、メインパターンの近接に配置される実際には解像されない補助パターンを、光半透過膜によって形成することによって、デフォーカス時のパターン寸法(CD)の変動を軽減する方法が知られている。
そして、光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクのマスクパターンをウエハに転写するウエハプロセスの先端技術においては、上述したメインパターンの寸法(幅または奥行き)が250nm〜300nmとなるような光半透過膜パターンの形成が求められている。さらに、この場合には、上述した補助パターンの寸法(幅または奥行き)は、大きすぎると解像されてしまうので、60nm以下にする必要がある。
また、本発明のように、上記位相シフトマスクが、ネガ型の位相シフトマスクである場合には、上述したメインパターンおよび補助パターンを、光半透過膜から構成される凸状の微細パターンとして形成する必要がある。このため、上述した補助パターンは、60nm以下の寸法(幅または奥行き)を有する光半透過膜から構成される凸状の微細パターンとなる。そして、従来、光半透過膜の膜厚は厚いものであったために、補助パターンとして、60nm以下の寸法(幅または奥行き)を有する光半透過膜から構成される凸状の微細パターンを形成した場合には、補助パターンのパターン倒れ等の問題が生じるおそれがあった。しかしながら、本発明によれば、上記光半透過膜の膜厚を、従来の光半透過膜の膜厚よりも薄い57nm〜67nmの範囲内にすることができる。このため、本発明によれば、先端技術のウエハプロセスにおいても、補助パターンのパターン倒れ等の問題を回避することができる。
本発明の位相シフトマスクの構成は、特に記載した点を除いて、上記「A.マスクブランクス 2.マスクブランクスの構成 (1)マスクブランクスの構成」の項目に記載の本発明のマスクブランクスの構成と同様である。このため、ここでの説明は省略する。
(2)位相シフトマスクの製造方法
本発明の位相シフトマスクの製造方法は、所望の位相シフトマスクを得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。位相シフトマスクの製造方法の一例においては、まず、本発明のマスクブランクスとして、上記遮光膜を有するマスクブランクスを準備する。次に、上記遮光膜上に電子線レジストを塗布し、電子線描画装置によってパターン露光し、レジスト専用の現像液により現像し、所望形状のレジストパターンを形成する。次に、当該所望形状のレジストパターンをマスクとして、ドライエッチング装置によって、所望のガスを用い、上記遮光膜をドライエッチングして、上記遮光膜を後述する光半透過膜パターンの形状に加工する。次に、後述する光半透過膜パターンの形状に加工された遮光膜をマスクとして、上記光半透過膜をドライエッチングして、光半透過膜パターンを形成する。次に、上記光半透過膜パターンの形状に加工された遮光膜上に電子線レジストを塗布し、電子線描画装置によって、パターン露光し、レジスト専用の現像液により現像し、所望形状のレジストパターンを形成する。次に、当該所望形状のレジストパターンをマスクとしてドライエッチング装置によって、所望のガスを用い、上記光半透過膜パターンの形状に加工された遮光膜をドライエッチングして、遮光膜パターンを形成する。これにより、本発明の位相シフトマスクが得られる。
D.位相シフトマスクを用いるパターン形成体の製造方法
次に、本発明の位相シフトマスクを用いるパターン形成体の製造方法について説明する。本発明の位相シフトマスクを用いるパターン形成体の製造方法は、上記マスクブランクスから形成された位相シフトマスクを用いるパターン形成体の製造方法であって、上記位相シフトマスクを用いて、ネガティブトーン現像によって、レジストパターンを形成する工程を有することを特徴とするものである。
図8は、本発明の位相シフトマスクを用いるパターン形成体の製造方法の一例を示す概略工程図である。本発明の位相シフトマスクを用いるパターン形成体の製造方法は、まず、被加工基板301に直接又は中間介在層302を介してポジ型レジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜303を形成する(図8(a))。次に、本発明のマスクブランクスから形成された位相シフトマスク200を用いて、レジスト膜303を露光する(図8(b))。次に、有機溶剤によって、露光されたレジスト膜303を現像することにより、レジスト膜303の未露光部分303aを溶解して除去したレジストパターン403を形成する(図8(c))。これにより、位相シフトマスク200を用いて、ネガティブトーン現像によって、レジストパターン403を形成する。
ポジティブトーン現像(Positive tone development)によって、光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクを使用して、例えば、コンタクトホールをウエハに転写する場合、コンタクトホールのエッジは、位相効果によりシャープに形成することができる。しかしながら、コンタクトホールのエッジから距離が離れるにしたがって、位相効果が小さくなる。このため、光半透過膜において露光光が遮光されるべき部分でも露光光が透過することにより、コンタクトホールが形成される部分以外のレジスト膜が感光してしまうサイドローブ現象が生じることがある。そして、このようなサイドローブ現象を防止する方法としては、光半透過膜上において、露光光が遮光されるべき部分では露光光が透過することがないように、遮光膜を設ける方法がある。しかしながら、この方法においては、コンタクトホールのエッジにおける位相効果を維持しつつサイドローブ現象を防止するには、コンタクトホールのエッジから所定の距離の位置に遮光膜を配置する必要がある。具体的には、光近接効果補正(OPC処理)を行った上で一定のルールに基づき遮光膜を正確な位置に配置する必要がある。このため、複雑なデータ処理を行う必要があり、ハーフトーン型位相シフトマスクを製造するのが容易ではなかった。
一方、ネガティブトーン現像(Negative tone development)によって、光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクを使用して、例えば、コンタクトホールをウエハに転写する場合、露光光が照射される部分のレジスト組成物が溶解しにくくなる。このため、ハーフトーン型位相シフトマスクにおいて、コンタクトホールに対応する部分は、光半透過膜から構成される露光光を遮光する遮光部となる。そして、その遮光部のサイズは、ウエハ上のサイズで、数10nmしかない。したがって、コンタクトホールに対応する部分の遮光部においては、露光光が透過しても、エッジにおける位相効果によって露光光が干渉して打ち消し合う結果、露光光の強度がゼロとなる。よって、その遮光部によって露光光が遮光されるべき部分のレジスト組成物が、露光されることはない。このため、上述したようなサイドローブ現象を簡単に回避して、コンタクトホールをウエハに転写することができるハーフトーン型位相シフトマスクを容易に製造することができる。
本発明によれば、上記光半透過膜は、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光透過率が15%〜38%の範囲内であり、従来よりも高いものである。このため、ネガティブトーン現像(Negative tone development)においては、コンタクトホールのような微細なパターンに対応する部分の遮光部のエッジにおける位相効果がより大きくなる。これにより、ネガティブトーン現像(Negative tone development)によって、コンタクトホールのような微細なパターンを従来よりも容易にウエハに転写することができる。
また、光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクを使用して、コンタクトホールやライン等の微細パターンをウエハに転写する場合、ハーフトーン型位相シフトマスクにおいて、そのような微細パターンに対応する実際に解像される部分であるメインパターンとともに、メインパターンの近接に配置される実際には解像されない補助パターンを、光半透過膜によって形成する方法が知られている。この方法によれば、補助パターンの位相効果により、露光裕度を向上させ、Profile(NILS)を良化することができるので、デフォーカス時のパターン寸法(CD)の変動を軽減することができる。
そして、光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクのマスクパターンをウエハに転写するウエハプロセスの先端技術において、上述したコンタクトホールやライン等の微細パターンをウエハに転写する場合には、ハーフトーン型位相シフトマスクにおいて、上述したメインパターンの寸法(幅または奥行き)が250nm〜300nmとなるような光半透過膜パターンの形成が求められている。さらに、この場合には、上述した補助パターンの寸法(幅または奥行き)は、大きい程、デフォーカス時のパターン寸法(CD)の変動をより大きく軽減することができるものの、大きすぎると解像されてしまうので、60nm以下にする必要がある。
さらに、ポジティブトーン現像(Positive tone development)によって、光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクのマスクパターンをウエハに転写するウエハプロセスにおいては、上述したメインパターンおよび補助パターンを、光半透過膜の一部を抜いた凹状の微細パターンとして形成する。これに対して、ネガティブトーン現像(Negative tone development)によって、光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクのマスクパターンをウエハに転写するウエハプロセスにおいては、上述したメインパターンおよび補助パターンを、光半透過膜から構成される凸状の微細パターンとして形成する必要がある。このため、上述した補助パターンは、60nm以下の寸法(幅または奥行き)を有する光半透過膜から構成される凸状の微細パターンとなる。
そして、従来、光半透過膜の膜厚は厚いものであったために、補助パターンとして、60nm以下の寸法(幅または奥行き)を有する光半透過膜から構成される凸状の微細パターンを形成した場合には、補助パターンのパターン倒れ等の問題が生じるおそれがあった。しかしながら、本発明によれば、上記光半透過膜の膜厚を、従来の光半透過膜の膜厚よりも薄い57nm〜67nmの範囲内にすることができる。このため、本発明によれば、先端技術のウエハプロセスにおいても、補助パターンのパターン倒れ等の問題を回避することができる。
本発明において、レジストパターンを形成するのに用いるレジスト組成物は、ネガティブトーン現像(Negative tone development)によって、レジストパターンを形成することができるものであれば、特に限定されるものではない。レジストパターンを形成するのに用いるレジスト組成物としては、ポジ型レジスト組成物およびネガ型レジスト組成物のどちらでもよいが、ポジ型レジスト組成物が好ましい。ポジ型レジスト組成物の方が、ネガ型レジスト組成物よりも、解像性が高いからである。
また、ポジ型レジスト組成物としては、特に限定されるものではないが、例えば、東京応化工業(株)製TOK 6063等を挙げることができる。
さらに、ポジ型レジスト組成物用いる場合には、ポジ型レジスト組成物を有機溶剤現像することにより、露光部分を有機溶剤と反応させてその溶解速度を低下させて、未露光部分を溶解して除去することによって、レジストパターンを形成する。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
まず、光学研磨した6インチ角、0.25インチ厚の透明な合成石英基板(透明基板)上に、平行平板型DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、光半透過膜を、ターゲットには珪素(Si)を用い、窒素ガス、酸素ガス流入条件を調整することによって、光半透過膜を構成するSixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)の組成比が所望の比率となるような成膜条件でスパッタリングにより成膜する。
これにより、Ar−Fエキシマレーザー露光光の波長における透過率38%の光半透過膜を得ることができる。
次に、光半透過膜上に、平行平板型DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、遮光膜をスパッタリングにより成膜する。これにより、マスクブランクスを作製できる。ターゲットにはCrを用い、成膜条件を調整することで、所望組成の遮光膜を成膜する。これにより、Ar−Fエキシマレーザー露光光の波長における光学濃度(OD値)が、光半透過膜と合わせて3となる遮光膜を得ることができる。
次に、遮光膜上に電子線レジストを塗布し、電子線描画装置によってパターン露光し、レジスト専用の現像液により現像し、所望形状のレジストパターンを形成する。次に、当該所望形状のレジストパターンをマスクとして、ドライエッチング装置によって、塩素系ガスを用い、遮光膜をドライエッチングして、遮光膜を後述する光半透過膜パターンの形状に加工する。
次に、後述する光半透過膜パターンの形状に加工された遮光膜をマスクとして、ドライエッチング装置によって、フッ素系ガスを用い、光半透過膜をドライエッチングして、光半透過膜パターンを形成する。次に、光半透過膜パターンの形状に加工された遮光膜上に電子線レジストを塗布し、電子線描画装置によって、パターン露光し、レジスト専用の現像液により現像し、所望形状のレジストパターンを形成する。次に、当該所望形状のレジストパターンをマスクとしてドライエッチング装置によって塩素系ガスを用い、光半透過膜パターンの形状に加工された遮光膜をドライエッチングして、遮光膜パターンを形成する。これにより、位相シフトマスクを作製できる。
[実施例2]
まず、実施例1と同様に、光半透過膜を、光半透過膜を構成するSixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)の組成比が所望の比率となるような成膜条件でスパッタリングにより成膜する。これにより、Ar−Fエキシマレーザー露光光の波長における透過率15%の光半透過膜を得ることができる。
次に、実施例1と同様に、半透過膜上に、遮光膜をスパッタリングにより成膜する。これにより、マスクブランクスを作製できる。次に、実施例1と同様に、光半透過膜パターンおよび遮光膜パターンを形成する。これにより、位相シフトマスクを作製できる。
[実施例3]
まず、実施例1と同様に、光半透過膜を、光半透過膜を構成するSixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)の組成比が所望の比率となるような成膜条件でスパッタリングにより成膜する。これにより、Ar−Fエキシマレーザー露光光の波長における透過率20%の光半透過膜を得ることができる。
次に、実施例1と同様に、半透過膜上に、遮光膜をスパッタリングにより成膜する。これにより、マスクブランクスを作製できる。次に、実施例1と同様に、光半透過膜パターンおよび遮光膜パターンを形成する。これにより、位相シフトマスクを作製できる。
[実施例4]
まず、実施例1と同様に、光半透過膜を、光半透過膜を構成するSixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)の組成比が所望の比率となるような成膜条件でスパッタリングにより成膜する。これにより、Ar−Fエキシマレーザー露光光の波長における透過率25%の光半透過膜を得ることができる。
次に、実施例1と同様に、半透過膜上に、遮光膜をスパッタリングにより成膜する。これにより、マスクブランクスを作製できる。次に、実施例1と同様に、光半透過膜パターンおよび遮光膜パターンを形成する。これにより、位相シフトマスクを作製できる。
[実施例5]
まず、実施例1と同様に、光半透過膜を、光半透過膜を構成するSixO1−x−yNy(xおよびyは、0<x≦1、0<y≦1、および0<x+y≦1を満足する)の組成比が所望の比率となるような成膜条件でスパッタリングにより成膜する。これにより、Ar−Fエキシマレーザー露光光の波長における透過率30%の光半透過膜を得ることができる。
次に、実施例1と同様に、半透過膜上に、遮光膜をスパッタリングにより成膜する。これにより、マスクブランクスを作製できる。次に、実施例1と同様に、光半透過膜パターンおよび遮光膜パターンを形成する。これにより、位相シフトマスクを作製できる。
[比較例1]
まず、光学研磨した6インチ角、0.25インチ厚の透明な合成石英基板(透明基板)上に、平行平板型DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、光半透過膜を、ターゲットにはMo、珪素(Si)を用い、ガス流入条件を調整することによって、組成比が所望の比率となるような成膜条件でスパッタリングにより成膜する。
これにより、Ar−Fエキシマレーザー露光光の波長における透過率6%の光半透過膜を得ることができる。
次に、実施例1と同様に、半透過膜上に、遮光膜をスパッタリングにより成膜する。これにより、マスクブランクスを作製できる。次に、実施例1と同様に、光半透過膜パターンおよび遮光膜パターンを形成する。これにより、位相シフトマスクを作製できる。
なお、上記実施例1〜5においては、遮光膜がCr系単体の膜であることを前提としたが、図3および図4のように、遮光膜が2層または3層といった複数の膜である場合は、それぞれの膜をエッチングするように適宜エッチングガス、エッチング条件等を選択することにより上記同様の位相差シフトマスクを作製できる。
[評価1]
実施例1〜5および比較例1の位相シフトマスクについて、ArFエキシマレーザ露光光の波長における光半透過膜の消衰係数、屈折率、および光透過率、透明基板において光半透過膜が削除された透過領域を通過する波長が193nmのArFエキシマレーザ露光光と、光半透過膜が残っている半透過領域を通過する当該ArFエキシマレーザ露光光との間において、180°の位相差を得るための光半透過膜の膜厚、露光裕度の最大値(max EL)、ならびにフォーカス裕度の最大値(max DoF)を評価した。具体的には、下記のシミュレーション評価条件によって、評価した。
<シミュレーション評価条件>
・NA: 1.35
・sigma: c-quad 0.95/0.80-30deg
・polarization:X/Y
・Target: 60nm HOLE (NTD)
・Pitch: 180, 240, 300nm
その評価結果を下記の表2に示した。
[評価2]
図9は、光透過率に対応するOPCバイアス値のシミュレーションの結果を表したグラフを示した図である。
図9から、1x nodeに適当な照明系において、光半透過膜の光透過率が15%以上である位相シフトマスクのOPCバイアス値が、比較例1の光半透過膜の光透過率が6%である位相シフトマスクよりも小さいことが分かる。
[評価3]
図10は、シミュレーターにより取得したウエハ上の露光光強度分布のXY画像および露光光の強度を表したグラフを示した図である。図10においては、下段に、異なるピッチの位相シフトマスクごとに計算したウエハ上の露光光強度分布のXY画像を示し、上段に、光半透過膜を通過していない露光光の強度を1.0として、下段に示した露光光強度分布のXY画像の横軸方向の各位置において位相シフトマスクを通過した露光光の強度を表したグラフを示した。
図10から、それぞれのピッチにおいて、光半透過膜の光透過率が38%である位相シフトマスクを想定して計算した画像のコントラストが、光半透過膜の光透過率が6%である位相シフトマスクを想定して計算した画像のコントラストよりも高くなっていることが分かる。
[評価4]
図11−1〜図11−3は、実施例1および比較例1の位相シフトマスクにおけるパターン転写時のフォーカス裕度および露光裕度の関係を、シミュレーションの結果にて表したグラフを示した図である。図11−1〜図11−3においては、HOLE pitchが180nm、240nm、および300nmの位相シフトマスクについて、それぞれ、横軸をフォーカス裕度(DOF:Depth of Focus)、縦軸を露光裕度(EL:Exposure Latitude)とするグラフを示した。また、DOFが0nmの場合におけるEL(%)を表3に、ELが10%の場合におけるDOF(nm)を表4に示した。
図11−1、表3、および表4から、ピッチが180nmの場合には、DOFが0nmの場合におけるELは、光透過率38%の計算結果の方が、光透過率6%の計算結果よりも56%程度大きく、ELが10%の場合におけるDOFは、光透過率38%の計算結果の方が、光透過率6%の計算結果よりも63%程度大きいことが分かる。また、図11−2、表3、および表4から、ピッチが240nmの場合においても、DOFが0nmの場合におけるELは、光透過率38%の計算結果の方が、光透過率6%の計算結果よりも65%大きく、ELが10%の場合におけるDOFは、光透過率38%の計算結果の方が、光透過率6%の計算結果よりも70%大きいことが分かる。さらに、図11−3、表3、および表4から、ピッチが300nmの場合においても、DOFが0nmの場合におけるELは、光透過率38%の計算結果の方が、光透過率6%の計算結果よりも66%大きく、ELが10%の場合におけるDOFは、光透過率38%の計算結果の方が、光透過率6%の計算結果よりも71%大きいことが分かる。
したがって、光透過率38%の計算結果の方が、光透過率6%の計算結果よりもDOFおよびELの両方が高いことが分かる。
[評価5]
図12は、光半透過膜の光透過率が38%である位相シフトマスクおよび光半透過膜の光透過率が6%である位相シフトマスクを想定して計算した、ウエハ転写空間光学像のコントラストを表したグラフを示した図である。図12においては、横軸をウエハに形成されるパターンのピッチ、縦軸を画像コントラストとするグラフを示した。
図12から、ウエハに形成されるパターンのピッチのそれぞれにおいて、光半透過膜の光透過率が38%である位相シフトマスクの方が、光半透過膜の光透過率が6%である位相シフトマスクよりも画像コントラストが大きいことが分かる。つまり、画像コントラストが大きいので、露光量が変化(空間像でスライスレベルが変化)しても、ウエハに形成されるパターン寸法の変化量が少なくて済むこと(ELが大きいこと)が示されている。
[評価6]
図13は、光半透過膜の光透過率が38%である位相シフトマスクおよび光半透過膜の光透過率が6%である位相シフトマスクを想定して計算した、OPCバイアスを表したグラフを示した図である。図13においては、横軸をウエハに形成されるパターンのピッチ、縦軸をOPCバイアスを伴う位相シフトマスクのパターン寸法(CD)とするグラフを示した。
図13から、ウエハに形成されるパターンのピッチのそれぞれにおいて、光半透過膜の光透過率が38%である位相シフトマスクの方が、光半透過膜の光透過率が6%である位相シフトマスクよりもOPCバイアスを伴うマスクのパターン寸法が小さいことが分かる。つまり、OPCバイアスが小さいために、より微細なパターンをウエハに形成することができるようになるので、ウエハに形成するパターンの設計における自由度が高くなることが示されている。