JP6378730B2 - 発泡粒子成形体 - Google Patents
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Description
これらの使用に適した、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に代わる新たな発泡体として、柔軟性に優れたエチレン/α−オレフィン・マルチブロック共重合体を含む発泡体(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
また、エチレン/α-オレフィン共重合体の発泡粒子を型内成形するに際して、軽量で、融着性と表面性との両方に優れる発泡粒子成形体を得ることに関して、課題を残していた。特に厚みの厚薄を有するような成形体を得る金型で成形した場合は、両者を両立させることが難しかった。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕ポリエチレンブロックとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとのマルチブロック共重合体の架橋発泡粒子の発泡粒子成形体であって、前記発泡粒子成形体の密度が40〜150g/Lであり、前記発泡粒子成形体の熱キシレン抽出法によるゲル分率が30〜70重量%であり、前記発泡粒子成形体の引張伸びが120%以上であり、前記架橋発泡粒子の粒子重量が0.8〜8mgであり、前記発泡粒子成形体表面における、単位面積当たりの架橋発泡粒子の個数が、5〜30個/cm2である、発泡粒子成形体。
〔2〕前記発泡粒子成形体の平均気泡径が50〜200μmである、前記〔1〕に記載の発泡粒子成形体。
〔3〕前記架橋発泡粒子の粒子重量が1〜4mgである、前記〔1〕または〔2〕に記載の発泡粒子成形体。
〔4〕前記発泡粒子成形体の、成形体表面のタイプCデュロメータ硬さが15〜50である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1に記載の発泡粒子成形体。
〔5〕前記発泡粒子成形体が最小厚み5mm以下の薄肉部を有する、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1に記載の発泡粒子成形体。
〔6〕前記マルチブロック共重合体が、ポリエチレンブロックと、エチレン/1−オクテン共重合体ブロックとのマルチブロック共重合体である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1に記載の発泡粒子成形体。
以下、本発明の発泡成形体を構成する架橋発泡粒子、及び発泡粒子成形体について詳細に説明する。
本発明の発泡粒子成形体を構成する発泡粒子は、ポリエチレンブロックとエチレン/α−オレフィン共重合体ブロックとのマルチブロック共重合体(以下、単にマルチブロック共重合体ともいう)の架橋発泡粒子である。
上記マルチブロック共重合体は、ポリエチレンブロックとエチレン/α−オレフィン共重合体ブロックとを有する。マルチブロック共重合体は、たとえば、下記の式(1)によって表すことができる。
(AB)n (1)
(式中、nは1以上の整数であり、Aはハードブロックを表し、Bはソフトブロックを表す。)
前記マルチブロック共重合体の190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトは、好ましくは2〜10g/10分、より好ましくは3〜8g/10分、さらに好ましくは4〜7g/10分の範囲から選択することができる。メルトフローレイトが上記範囲内であれば、マルチブロック共重合体の架橋発泡粒子の融着性が良好であり、発泡粒子成形体の回復性も優れたものとなる。なお、このメルトフローレイトは、JIS K 7210−1(2014年)に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される、後述する架橋工程前のマルチブロック共重合体の値である。
また、マルチブロック共重合体の融点は、110〜150℃であることが好ましく、115〜140℃であることがより好ましい。マルチブロック共重合体の融点が上記範囲であると、高温での圧縮永久歪みを小さくすることができる。マルチブロック共重合体の融点は、JISK 7121(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる吸熱ピークの頂点温度から求めることができる。なお、上記2回目のDSC曲線に複数の吸熱ピークが表れる場合は、最も面積の大きな吸熱ピークの頂点温度を融点とする。
前記マルチブロック共重合体には、本発明の目的効果を阻害しない範囲においてその他の添加剤を添加することができる。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、金属不活性剤、導電性フィラー、気泡調整剤等を挙げることができる。
これらの添加剤は、合計で前記マルチブロック共重合体100重量部に対して20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下がさらに好ましい。なお、これらの添加剤は、通常、必要最小限の量で使用される。また、これらの添加剤は、例えば、重合体粒子を製造する際、マルチブロック共重合体と共に押出機内に添加、混練することによって重合体粒子中に含有させることができる。
本発明の発泡粒子成形体を構成する架橋発泡粒子(以下、単に「発泡粒子」という場合がある。) の粒子重量は、0.8〜8mgである。発泡粒子の粒子重量が小さすぎると、発泡粒子内に十分な気泡構造が形成されなくなったり、発泡粒子の比表面積が大きくなり気泡内から気体が逸散し易く、発泡粒子を型内成形するとき、発泡粒子自体の二次発泡力が低下して二次発泡し難くなり、引張伸びが高く、発泡粒子同士の融着性に優れる発泡粒子成形体を得ることが困難となるおそれがある。また、得られる成形体が著しく収縮して金型の賦形性に劣る成形品となったりするおそれがある。かかる観点から、発泡粒子の粒子重量の下限は0.8mgであり、好ましくは1mgである。一方、発泡粒子の粒子重量が大きすぎると、発泡粒子の二次発泡性は向上するものの、金型への充填性が低下して、発泡粒子成形体の表面性が低下してしまうおそれがある。かかる観点から、発泡粒子の粒子重量の上限は8mgであり、好ましくは5mgであり、より好ましくは4mgであり、さらに好ましくは3mgである。
本発明の発泡粒子成形体の引張伸びは120%以上であることを要する。
本発明の発泡粒子成形体は、特に、耐久性に優れたものとなる。上記引張伸びが120%以上であれば、発泡粒子成形体の発泡粒子間の融着性が良好であり、特に成形体の内部の発泡粒子群まで融着していることを示唆し、シートクッション材、スポーツパッド材、靴底材等の用途に適用できる。上記観点から、引張伸びは、130%以上が好ましく、150%以上がより好ましい。なお、発泡粒子成形体の引張り伸びの上限は、概ね、500%であり、好ましくは400%であり、より好ましくは300%である。
本発明の発泡粒子成形体の密度(成形体密度)は、40〜150g/Lであり、好ましくは40〜145g/Lであり、より好ましくは45〜140g/Lであり、さらに好ましくは50〜130g/Lである。発泡粒子成形体の密度が上記範囲であると、軽量性、柔軟性に優れている発泡粒子成形体となる。前記発泡粒子成形体の密度(g/L)は、成形体の質量W(g)を体積V(L)で除すること(W/V)で求められる。なお、発泡粒子成形体の体積Vは、水没法により測定することができる。
本発明の発泡粒子成形体において、架橋発泡粒子成形体の熱キシレン抽出法によるゲル分率は30〜70重量%である。ゲル分率が30重量%未満では、発泡粒子成形体が著しく収縮し、表面性に優れる発泡粒子成形体を作製することが難しくなったり、所望の金型形状を得る賦形性に劣るものとなる。また架橋発泡粒子を型内成形して得られた発泡粒子成形体は、回復性が悪くなり所望の物性が得られ難くなる。一方、ゲル分率が70重量%を超えると、架橋発泡粒子同士の融着性が低くなるので、耐久性に優れた発泡粒子成形体を作製することが難しくなる。上記観点から、架橋発泡粒子のゲル分率は35〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは40〜55重量%である。なお、本発明において、ゲル分率は、樹脂発泡体の架橋状態を示す指標の一つであり、以下の方法で測定できる。
なお、熱キシレン抽出法によるゲル分率は、発泡粒子成形体の一部を切断した試験片約0.7gを秤量し、試料重量W1とし、秤量した試験片を150mlの丸底フラスコに入れ、100mlのキシレンを加え、マントルヒーターで加熱して6時間還流させた後、溶け残った残査を100メッシュの金網でろ過して分離し、80℃の減圧乾燥器で8時間以上乾燥し、この際に得られた乾燥物重量W2を測定し、この重量W2の試料重量W1に対する重量百分率[(W2/W1)×100](%)をゲル分率とする。
なお、発泡粒子成形体を構成する架橋発泡粒子のゲル分率も、同様の方法で発泡粒子をサンプルとして測定することができ、型内成形時に、ゲル分率が変化することはないので、発泡粒子と発泡粒子成形体の値はほぼ同一となる。
本発明の発泡粒子成形体においては、成形体表面における単位面積当たりの架橋発泡粒子の個数が、5〜30個/cm2である。単位面積当たりの架橋発泡粒子の個数が、30個/cm2超であると、成形キャビティーに充填されている状態において発泡粒子間の間隙が小さくなるため、型内成形時に発泡粒子群をスチームなどの加熱媒体で加熱し、発泡粒子が二次発泡して発泡粒子間の間隙が埋まる際に、加熱媒体で加熱を開始した早い段階で成形体表面部分の発泡粒子間の隙間が埋まってしまう。このため、成形金型内部の発泡粒子群まで加熱媒体が十分に供給されず、成形キャビティーの中心部分に存在する発泡粒子が二次発泡し難くなるので、成形体の内部の発泡粒子が融着していない状態となりやすく、発泡粒子成形体の引張り伸びが低下するおそれがある。一方、上記個数が5個/cm2未満である場合には、発泡粒子を型内成形して作製した発泡粒子成形体の成形体端部や角部分に発泡粒子の曲面が残り、発泡粒子成形体の表面に形成されるボイドが多くなったり、表面性や賦形性が低下したりするおそれがある。上記観点から、該個数は、6〜20個/cm2であることが好ましく、10〜18個/cm2であることがより好ましい。
なお、本発明においては、特定の粒子重量であり充填性と二次発泡力に優れる発泡粒子を用いると共に、成形体における表面の発泡粒子の個数を特定の範囲とすることにより、型内成形性を制御することで、内部融着性と表面性に優れる発泡粒子成形体が得られる。特に、特定の発泡粒子重量と特定の表面の発泡粒子の個数を満足することで、クラッキング等の成形条件を変えて成形体厚みを変化させた場合であっても、幅広い成形範囲で二次発泡性を発揮させることが可能となるので、厚みの厚薄に影響されず、表面性と融着性に優れる発泡粒子成形体が得られる。
なお、本発明において、架橋発泡粒子の個数は、以下の方法で測定した。
発泡粒子成形体の端部を除く部分の表面の5箇所以上において、100mm×100mmの正方形の範囲内に存在する発泡粒子の数をカウントした。この値を単位面積(cm2)当たりの値に換算することにより算出した。なお、上記範囲の線上に存在する気泡については、隣接する2辺に交差している発泡粒子のみをカウントし、他の2辺に交差する発泡粒子はカウントしなかった。
本発明の架橋発泡粒子成形体において、成形体の平均気泡径(a)は50〜200μmであることが好ましく、60〜180μmがより好ましく、70〜150μmがさらに好ましい。平均気泡径が上記の範囲であれば、発泡粒子成形体の圧縮物性が低下することなく、良好な発泡粒子成形体が得られる。
本発明において、前記の発泡粒子成形体の平均気泡径は、ASTM D3576−77に基づき、次のように測定される。
発泡粒子成形体の中心部分を略二分割し切断面を走査型電子顕微鏡にて写真を撮影する。得られた断面写真において、成形体中の切断面の中心付近から厚み方向と幅方向に等間隔に直線を引き、その直線と交わる気泡の数を全てカウントし、該直線の合計長さをカウントされた気泡数で除して得られた値を気泡の平均弦長とし、さらに0.616で除することにより、発泡粒子成形体の気泡径とする。この操作を少なくとも10個の箇所について行い、各発泡粒子成形体の気泡径の算術平均値を平均気泡径とする。
さらに、本発明の発泡成形体の表面硬度は、タイプCデュロメータ硬さが15〜50であることが好ましい。タイプCデュロメータ硬さがこの範囲であれば、クッション性、弾性回復性に富む特性を備えて発泡成形体とすることができる。
本発明の発泡成形体は、発泡成形体の全体の厚みが薄肉の場合に止まらず、成形体において部分的に、最小厚み5mm以下の薄肉部、好ましくは3mm〜5mmの薄肉部を有する発泡成形体であっても、均一で優れた表面性を有する発泡粒子成形体とすることができる。
本発明の発泡粒子成形体の引張強さは0.3MPa以上であることが好ましい。本発明により得られる発泡粒子成形体は、成形体内部で発泡粒子同士が相互に強固に融着した成形体となり、成形体の引張り物性が特に向上する。上記引張強さが0.3MPa以上であれば、発泡粒子成形体の発泡粒子間の融着性が良好であることを示唆し、耐久性に優れ、シートクッション材、スポーツパッド材、靴底材等の用途に適用できる。上記観点から、引張強さは、0.4MPa以上がより好ましく、0.5MPa以上がさらに好ましく、0.6MPa以上が特に好ましい。なお、発泡粒子成形体の引張強さの上限は、概ね、1MPaであり、好ましくは0.9MPaである。
マルチブロック共重合体を押出機に供給し、混練して溶融混練物とし、該溶融混練物を押出機からストランド状に押出し、該ストランドを架橋発泡粒子とするのに適した大きさに切断する方法等、公知の造粒方法より、マルチブロック共重合体粒子(以下、「重合体粒子」ということがある)が製造される。例えば、前述の方法において、ストランド状に押出し成形された溶融混練物を水冷により冷却した後、所定の長さに切断することにより、目的の粒子重量の重合体粒子を得ることができる。
マルチブロック共重合体の溶融混練物が軟質であることから、ストランドカット法を用いた場合には、カットミスや切子が発生しやすくなるおそれがある。より小粒子化するという観点から、水中で切断するアンダーウォーターカット法(UWC)を用いることが好ましい。
また、気泡調整剤の平均粒子径は、0.01〜50μmが好ましく、0.1〜30μmであることがより好ましい。なお、該平均粒子径は、遠心沈降粒度測定法により測定することができる。
工程(B)では、重合体粒子を架橋剤と共に密閉容器で水などの分散媒体に分散させ、撹拌下で加熱して重合体粒子を軟化、架橋させ、発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得る。その後、発泡性粒子を発泡させて架橋発泡粒子を得る。
本発明の発泡粒子成形体に用いる架橋発泡粒子の製造に用いられる分散媒としては、重合体粒子を溶解しない分散媒であれば、特に限定されない。分散媒には、例えば、水、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。好ましい分散媒は水である。
上記分散媒に重合体粒子を分散させる。例えば、攪拌機を使用して上記分散媒に重合体粒子を分散させる。
工程(B)で使用する密閉容器は、密閉することができる容器であれば、特に限定されない。工程(B)において共重合体粒子は加熱され、密閉容器内の圧力が上昇するので、密閉容器は、工程(B)における圧力の上昇に耐えられることが必要である。密閉容器は、例えば、オートクレーブである。
工程(B)で重合体粒子を架橋するために、架橋剤を用いることができる。架橋剤は、予め分散媒に添加してもよく、重合体粒子を分散媒に分散させてから分散媒に添加しても良い。架橋剤は、上記マルチブロック共重合体を架橋させるものであれば、特に限定されない。架橋剤としては、ポリエチレン系樹脂を架橋させるために使用される、従来公知の有機過酸化物を使用することができ、例えば、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、等のパークミル系化合物、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等のパーブチル系化合物、tert-ヘキシルパーオキシベンゾエート等のパーヘキシル系化合物、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等のパーオクタ系化合物等が挙げられる。これらの中でも、パークミル系化合物、パーブチル系化合物が好ましく、ジクミルパーオキサイドがさらに好ましい。これらは、単独又は2種類以上組み合わせて使用することができる。架橋剤の配合量は、マルチブロック共重合体(重合体粒子)100重量部に対して、好ましくは0.1〜3.0重量部であり、より好ましくは0.2〜2.5重量部である。
架橋剤の配合量が上記範囲であると、適度なゲル分率を有する架橋粒子が得られ、架橋粒子が十分に発泡することができるとともに、発泡の際に、気泡を形成する気泡壁が発泡に十分耐えることができる強度を有するものとなる。
架橋反応は、分散媒中に分散した重合体粒子を構成するマルチブロック共重合体が軟化し、架橋剤が実質的に分解する温度以上、具体的には有機過酸化物の1時間半減期温度以上で、かつマルチブロック共重合体の融点以上の温度で行われることが好ましい。この温度にて1分〜200分保持し、架橋反応を行うことが好ましい。
密閉容器内の分散媒に架橋粒子を発泡させる発泡剤を添加し、軟化状態の架橋粒子に発泡剤を含浸させることが好ましい。発泡剤を含浸させる温度は、架橋粒子が軟化状態となる温度以上の温度であれば、特に限定されないが、例えば、100〜180℃の範囲であることが好ましく、130〜170℃であることがより好ましく、140〜165℃であることがさらに好ましい。
使用する発泡剤は、上記架橋粒子を発泡させるものであれば特に限定されない。発泡剤には、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、酸素、ネオン等の無機物理発泡剤、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素、クロロフロロメタン、トリフロロメタン、1,1−ジフロロエタン、1,1,1,2−テトラフロロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等の有機物理発泡剤が挙げられる。これらの中でもオゾン層の破壊がなく、かつ安価な無機物理発泡剤が好ましく、窒素、空気、及び二酸化炭素がより好ましく、特に二酸化炭素が好ましい。これらは、単独又は2種類以上組み合わせて使用することができる。発泡剤の配合量は、目的とする発泡粒子の見掛け密度、マルチブロック共重合体の種類、発泡剤の種類等を考慮して決定されるが、通常、マルチブロック共重合体100重量部に対して、有機物理発泡剤で2〜20重量部を用いることが好ましく、無機物理発泡剤で0.5〜20重量部を用いることが好ましい。なお、上記の架橋、含浸、発泡工程は単一の密閉容器における一連の工程として行うことが好ましい。
発泡剤が含浸し、加熱されている発泡性架橋粒子を、密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出して架橋発泡粒子を作製する。具体的には、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、発泡剤を含有する発泡性架橋粒子を分散媒とともに密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出して発泡性架橋粒子を発泡させる(「ダイレクト発泡法」という)ことによって、架橋発泡粒子を作製する。
本発明に用いられる架橋発泡粒子において、平均気泡径(a)は50〜200μmとすることができ、60〜180μmがより好ましく、70〜160μmがさらに好ましい。平均気泡径が上記の範囲であれば、成形時に気泡が破れて連続気泡化することがなく、また、融着性が低下することがなく、良好な発泡粒子成形体が得られる。
なお、平均気泡径は、次のようにして求められる。まず、発泡粒子成形体の中心部分を略二分割し切断面を走査型電子顕微鏡にて写真を撮影する。次いで、得られた断面写真において、発泡粒子切断面の中心付近から8方向に等間隔に直線を引き、その直線と交わる気泡の数を全てカウントし、該直線の合計長さをカウントされた気泡数で除して得られた値を気泡の平均弦長とし、さらに0.616で除することにより、発泡粒子の気泡径とする。この操作を少なくとも10個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の気泡径の算術平均値を平均気泡径とする。
本発明の発泡成形体に用いられる架橋発泡粒子の見掛け密度は、50〜200g/Lが好ましく、より好ましくは55〜180g/Lであり、さらに好ましくは60〜160g/Lである。架橋発泡粒子の見掛け密度を上記範囲にすることにより、目的の成形体密度の発泡粒子成形体が得られる。
前記見掛け密度は、エタノールの入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに500個以上の架橋発泡粒子(発泡粒子群の重量Wt)を、金網などを使用して沈めて、エタノールの液位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積にてメスシリンダーに入れた発泡粒子群の重量を割り算することにより求めることができる。
また、本発明の発泡成形体に用いられる架橋発泡粒子の嵩密度(g/L)は、30〜125g/Lが好ましく、より好ましくは33〜110g/Lであり、さらに好ましくは35〜100g/Lである。本発明でいう嵩密度(g/L)は、空のメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに500個以上の架橋発泡粒子を入れたときにメスシリンダーの目盛りが示す容積にて、メスシリンダーに入れた発泡粒子群の重量を割り算することにより求めることができる。
本発明の発泡粒子成形体は、ポリエチレンブロックとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとのマルチブロック共重合体の架橋発泡粒子を型内成形することにより得ることができる。
発泡粒子成形体は、従来公知の方法により、架橋発泡粒子を成形型内に充填し、スチーム等の加熱媒体を用いて加熱成形することにより得ることができる。具体的には、架橋発泡粒子を成形型内に充填した後、成形型内にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、架橋発泡粒子を加熱して発泡させ、相互に融着させて型内の成形空間の形状が賦形された発泡粒子成形体を得ることができる。また、本発明における型内成形は、架橋発泡粒子を空気等の加圧気体により予め加圧処理して発泡粒子内の圧力を高めて、発泡粒子内の圧力を0.01〜0.2MPa(G)(Gはゲージ圧を意味する)に調整した後、大気圧下又は減圧下で架橋発泡粒子を成形型キャビティー内に充填して型閉めを行った後、ついで型内にスチーム等の加熱媒体を供給して架橋発泡粒子を加熱融着させる加圧成形法(例えば、特公昭51−22951号公報)により成形することが好ましい。また、圧縮ガスにより大気圧以上に加圧したキャビティー内に、当該圧力以上に加圧した発泡粒子を充填した後、キャビティー内にスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる圧縮充填成形法(特公平4−46217号公報)により成形することもできる。その他に、特殊な条件にて得られる二次発泡力の高い発泡粒子を、大気圧下又は減圧下で雌雄一対の成形型のキャビティー内に充填した後、次いでスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる常圧充填成形法(特公平6−49795号公報)又は上記の方法を組み合わせた方法(特公平6−22919号公報)などによっても成形することができる。
実施例、比較例に使用した架橋発泡粒子、発泡粒子成形体について、以下の評価を実施した。なお、成形体評価の際には、養生等が終了した発泡粒子成形体を、23℃、湿度50%の条件下、24時間放置した後のサンプルについて、測定等を行った。
(架橋発泡粒子の重量)
粒子重量は、100個の粒子を無作為に選び、選んだ100個の粒子の重量[mg]を測定し、100で除した値の平均の粒子重量[mg]として算出した。
(架橋発泡粒子の見掛け密度)
前述の測定方法により測定した。
(架橋発泡粒子、発泡粒子成形体の平均気泡径)
前述の測定方法により発泡粒子、発泡粒子成形体について測定を行い、算術平均値を求めた。
(架橋発泡粒子及び成形体のゲル分率)
前述の熱キシレン抽出法により測定した。
(発泡粒子成形体の成形体密度)
前述の測定方法により測定した。
(発泡粒子成形体表面における架橋発泡粒子の個数)
前述の測定方法により測定した。
マルチブロック共重合体の曲げ弾性率は、JIS K 7171(2016年)に記載の測定法に準拠して測定した。測定は、80×10×4mmの試験片を作成し、10kgのロードセルを使用して、支点間距離64mm、曲げ速度2mm/minの条件下で3点曲げを行った。曲げ弾性率は、変位0.5〜1.0mm間の勾配より算出した。
(発泡粒子成形体の引張強さ、引張伸び)
まず、JIS K6767(1999年)に準拠し、発泡粒子成形体からバーチカルスライサーを用いて、全ての面が切り出し面となるよう(表皮部分を除いた)切り出し片を作製し、糸鋸を用いてダンベル状1号形(測定部の長さ40mm、幅10mm、厚み10mm)に切り抜き、試験片とした。なお、成形体厚みが10mm以下の場合には、その成形体厚みの試験片を作成した。試験片を500mm/分の試験速度で引張試験を実施し、その間の最大荷重および切断時の標線間距離を測定し、引張り時の最大引張応力を引張強さとし、破断時の伸びを引張伸びとした。
表面外観の評価として、発泡粒子成形体の中央部から100mm×100mmの範囲を試験片として切り出し、試験片の角から対角線上に線を引き、その線上の1mm2の大きさ以上のボイド(間隙)の数を数え、以下のように評価した。
ボイドの数が5個未満:A
ボイドの数が5個以上10個未満:B
ボイドの数が10個以上:C
(発泡粒子成形体の回復性)
型内成形で用いた平板形状の金型の寸法に対応する発泡粒子成形体における端部(端より10mm内側)と中心部(縦方向、横方向とも2等分する部分)の厚みを計測した。次いで、発泡粒子成形体の厚み比
(成形体中心部の厚み/成形体端部の厚み×100(%)) を算出し、以下のように評価した。
厚み比が95%以上の場合:A
厚み比が90%以上95%未満:B
厚み比が90%未満:C
(発泡成形体の表面硬度)
なお、タイプCデュロメータ硬さは、JIS K 7312(1996年)で規定されたデュロメータC(高分子計器株式会社製、商品名Askerゴム硬度計C型)を定圧荷重器(高分子計器株式会社製CL−150L)に取り付け測定することができる。発泡粒子成形体の両表面について成形体の端部を除く任意の箇所各10箇所ずつ測定し、算術平均値を求めた。
<マルチブロック共重合体の粒子の作製>
密度887g/L、融点120℃、メルトフローレイト5.4g/10分(190℃、荷重2.16kg)、タイプAデュロメータ硬さ86、曲げ弾性率28MPa、のポリエチレンブロックとエチレン/α−オレフィン共重合体ブロックとを有するエチレン/α-オレフィン・マルチブロック共重合体(ダウ ケミカル社製、 INFUSE 9530)を100重量部に、気泡調整剤としてホウ酸亜鉛(富田製薬(株)製、ホウ酸亜鉛2335、平均粒子径6μm)を1000ppm添加して押出機に投入し、溶融混練してφ1.1mmのダイから水中に押し出し、アンダーウォーターカット法にて粒子重量が1.6mgとなるようにカットして造粒し、重合体粒子を得た。
得られた重合体粒子1kgを分散媒である水3リットル、分散剤としてカオリンを3g、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.04g、架橋剤としてジクミルパーオキサイドを重合体粒子100重量部に対して0.8重量部、発泡剤として二酸化炭素(ドライアイス)7重量部を容積5Lの密閉容器内に仕込み、撹拌下で架橋温度及び発泡温度である160℃まで昇温し、30分保持した。その後、二酸化炭素にて背圧を加えて容器内圧力が4.0MPa(G)で一定になるように調整しつつ、表1に示す温度に分散媒の温度(発泡温度)にて、発泡剤が含浸された粒子を分散媒とともに大気圧下に放出して、発泡粒子を得た。
得られた架橋発泡粒子を密閉容器に投入し、0.2MPa(G)の圧縮空気で12時間加圧して架橋発泡粒子内に0.10MPa(G)の内圧を付与し、取り出した後、縦250mm、横200mm、厚み4mmの平板形状の金型において、成形型を完全に閉鎖させないで前記金型の開き部分を7.6mm(金型開き部分の体積を380cm3)として前記架橋発泡粒子を充填した後、型締めしてクラッキングを190%とした状態で、水蒸気で加熱後、冷却して金型より成形体を取り出す型内成形を行い、さらに該発泡粒子成形体を60℃に調整されたオーブン内で12時間養生した後に取り出し、発泡粒子成形体を得た。得られた成形体の成形体密度、ゲル分率、表面性、及び表面硬度等を評価した。これらの結果を各種条件等と合わせて表1に示す。
実施例1−1において、縦250mm、横200mm、厚み20mmの平板形状の金型に、成形型を完全に閉鎖させないで前記金型の開き部分を4mm(金型の開き部分の体積200cm3)として前記架橋発泡粒子を充填した後、型締めをしてクラッキングを20%とした状態で成形し、また成形圧を下げた他は、実施例1−1と同様にして、平板状発泡粒子成形体を得た。これらの結果を、成形条件等と共に表1に示す。
発泡粒子重量と、成形体表面の発泡粒子個数を満足し、良好な2次発泡性と成形性を有することから、クラッキングが20%であっても、融着性と表面性の両方を満足する発泡粒子成形体が得られた。
実施例1−1の架橋発泡粒子を製造する際、φ1.3mmのダイを用いて粒子重量が5.0mgとなるように調製した他は、成形金型の厚みを4mmとして実施例1−1と同様とした実施例2−1、及び成形金型の厚みを20mmとして実施例1−2と同様とした実施例2−2により得られた発泡粒子成形体について、評価した。結果を表1に示す。
架橋発泡粒子を製造する際、φ0.6mmのダイを用い粒子重量が0.4mgとなるように調製した他は、実施例1−1及び1−2と同様の条件で、発泡粒子成形体を得た。
比較例1−1においては、目的の発泡倍率を有する成形体を得ることができず、特に成形体内部の融着が低下して融着性に劣るものであり、成形体の引張り伸びも120%以下であった。比較例1−2においては、成形体表面の発泡粒子の個数が満足しないことに起因して、融着性に劣り、且つ発泡粒子重量が小さく、発泡粒子の比表面積が大きいことが起因して、回復性も劣ることから、良好な発泡粒子成形体を得ることが困難であった。
架橋発泡粒子を製造する際、φ1.6mmのダイを用いて樹脂粒子重量が10.0mgとなるように調製した他は実施例1−1及び1−2と同様の条件で発泡粒子成形体を得て、評価した。
比較例2−1においては、発泡粒子重量が大きすぎることに起因して、充填性が低下し、薄肉の成形体を得ることができなかった。比較例2−2においては、融着性は改善されているものの、成形体の端部において発泡粒子の曲面が残ってしまい、賦形性が低下し、また、成形体表面にはボイドが存在しており、表面性が低下し、良好な発泡粒子成形体を得ることができなかった。
Claims (6)
- ポリエチレンブロックとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとのマルチブロック共重合体の架橋発泡粒子の発泡粒子成形体であって、前記発泡粒子成形体の密度が40〜150g/Lであり、前記発泡粒子成形体の熱キシレン抽出法によるゲル分率が30〜70重量%であり、前記発泡粒子成形体の引張伸びが120%以上であり、前記架橋発泡粒子の粒子重量が0.8〜8mgであり、前記発泡粒子成形体表面における、単位面積当たりの架橋発泡粒子の個数が、5〜30個/cm2である、発泡粒子成形体。
- 前記発泡粒子成形体の平均気泡径が50〜200μmである、請求項1に記載の発泡粒子成形体。
- 前記架橋発泡粒子の粒子重量が1〜4mgである、請求項1または2に記載の発泡粒子成形体。
- 前記発泡粒子成形体の、成形体表面のタイプCデュロメータ硬さが15〜50である、請求項1〜3のいずれか1項に記載発泡粒子成形体。
- 前記発泡粒子成形体が最小厚み5mm以下の薄肉部を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発泡粒子成形体。
- 前記マルチブロック共重合体が、ポリエチレンブロックとエチレン/1−オクテン共重合体ブロックとのマルチブロック共重合体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発泡粒子成形体。
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