JP4056953B2 - 多孔フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

多孔フィルムおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多孔フィルムおよびその製造方法に関する。
従来より、多孔フィルムには、ポリエチレン樹脂と、その樹脂とほぼ同量である多量の炭酸カルシウム等の無機充填剤とが配合されたポリエチレン樹脂組成物が使用されている。このポリエチレン樹脂組成物のポリエチレン樹脂としては、線状低密度ポリエチレンが多く使用されている。
このような多量の炭酸カルシウム等の無機充填剤が配合されたポリエチレン樹脂組成物をフィルム成形し、多孔フィルムとした場合には、炭酸カルシウムの粒径や水分等の影響によって分散不良や樹脂の劣化が生じることがあった。その結果、フィルム成形に使用するダイリップなどに目やにと呼ばれる多量の析出物が発生し、これが多孔フィルム表面に取り込まれて、多孔フィルムの強度低下、あるいは多孔フィルムの表面荒れ等の発生による不良品が多発するという問題があった。また、この目やにを定期的に取り除く必要が生じるために、長時間の連続運転ができないという問題があった。
また、多孔フィルムの製造時には、多孔にするために延伸を行うが、この工程において、これらの樹脂焼けや目やに等が原因の一つとなってピンホールや延伸切れが発生し、その結果、均一な透気度を有する多孔フィルムが得られないという問題もあった。
さらに、炭酸カルシウム等の無機充填剤の分散が不良であったり、ポリエチレン樹脂組成物が延伸に適したものでない場合には、目やにとは別の原因でピンホール、延伸ムラ、延伸切れが発生したりするという問題もあった。
なお、上記目やにの発生が延伸性を阻害する可能性は考えられるものの、必ずしも目やにそのものが延伸性を悪化させるという因果関係は見出されておらず、延伸性の阻害の原因についてはいまだ充分に解明されていない。
そこで、目やにや樹脂やけ、低分子量成分のブリードアウト等の発生を抑制すべく、これまでに種々の試みがなされている。例えば、線状低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物にステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウムなどの脂肪酸金属塩を配合した樹脂組成物を用いることが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。特に、特許文献4において、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを用いたフィルム成形用樹脂組成物を用いることが提案されている。
また、線状低密度ポリエチレンを用いた多孔フィルムについては、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9などに記載されている。
特開昭58−219247号公報 特開昭59−036147号公報 特開昭59−062655号公報 特開平09−216973号公報 特開平01−185337号公報 特開平08−225680号公報 特開平11−189667号公報 特開2001−064426号公報 特開2002−003661号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法のように、従来一般的に使用されているステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩を添加しても、目やにの低減効果は十分に満足できるものではなかった。また、近年では、高速化による生産性の向上や、無機充填剤を多量に配合した上で延伸工程が伴っても高性能な多孔フィルムを製造できることが求められているが、特許文献4にはそれらの要求を満たす方法が示唆されておらず、それらの要求を満足することができなかった。さらに、特許文献5〜9に記載の発明でも、上記問題を解決するものはなかった。
また、多孔フィルムにおいては、柔軟性、通気性、透気性、耐溶剤性、耐薬品性に優れ、さらに、機械的強度(引裂強度、フィルムインパクト)、衛生性(ハロゲンフリー)、成形加工性等のバランスに優れたものが求められている。
本発明の目的は、無機充填剤を多量に添加しても、目やにや樹脂焼け等の発生を軽減することによってフィルム成形の長時間にわたる連続運転が可能であり、成形加工性(高速成形性、ネックイン等)、延伸性(逐次延伸性:延伸ムラがない、ピンホールがない)が良好で、柔軟性、通気性、透気性、耐溶剤性、耐薬品性に優れ、さらに、成形加工性、機械的性質、製品物性等のバランスに優れた多孔フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エチレン−α・オレフィン共重合体を主成分とする樹脂成分と多量の無機充填剤とのポリエチレン樹脂組成物に特定の化合物を配合すると、驚くべきことに、延伸性等の成形性等が抜群に向上することが解かり、以下の多孔フィルムおよびその製造方法を発明した。
すなわち、本発明の第1は、ポリエチレン樹脂組成物からなる多孔フィルムであって、
前記ポリエチレン樹脂組成物は、(a)密度が0.880〜0.945g/cm、(b)MFRが0.1〜50g/10分のエチレン−α・オレフィン共重合体(A)100〜50質量%と他のエチレン(共)重合体(B)0〜50質量%とを含む樹脂成分100質量部に対して30〜200質量部の無機充填剤(C)と、0.1〜5質量部の12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムおよび/または塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(D)とを含有するものであることを特徴とする多孔フィルムである。
本発明の第2は、透湿度が500〜20000g/(m2 ・24時間)であることを特徴とする多孔フィルムである。
本発明の第3は、前記エチレン−α・オレフィン共重合体が、さらに(c)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5、(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足することを特徴とする多孔フィルムである。
(式1)T75−T25≦−670×d+644
本発明の第4は、前記エチレン−α・オレフィン共重合体(A)が、さらに下記(e)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが下記(式2)の関係を満足すること特徴とする多孔フィルムである。
(式2) T75−T25≧−300×d+285
本発明の第5は、前記エチレン−α・オレフィン共重合体(A)が、さらに下記(f)および(g)の要件を満足するエチレン−α・オレフィン共重合体(A1)であることを特徴とする多孔フィルムである。
(f)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分量X(質量%)、密度dおよびメルトフローレート(MFR)が下記(式3)および(式4)の関係を満足すること
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合
X<2.0
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
(g)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在すること
本発明の第6は、前記エチレン−α・オレフィン共重合体(A)が、さらに下記(h)および(i)の要件を満足するエチレン−α・オレフィン共重合体(A2)であることを特徴とする多孔フィルムである。
(h)融点ピークを1ないし複数個を有すること、
(i)そのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足すること
(式5) Tml≧150×d−19
本発明の第7は、前記エチレン−α・オレフィン共重合体(A2)が、さらに下記(j)の要件を満足することを特徴とする多孔フィルムである。
(j)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式6)を満足すること
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
本発明の第8は、前記エチレン−α・オレフィン共重合体(A)が、少なくとも共役二重結合をもつ有機環状化合物と周期律表第4族の遷移金属化合物とを含む触媒の存在下で製造されたものであることを特徴とする多孔フィルムである。
本発明の第9は、前記他のエチレン(共)重合体(B)が、密度0.91〜0.94g/cm、MFR0.1〜50g/10分である低密度ポリエチレンであることを特徴とする多孔フィルムである。
本発明の第10は、前記無機充填剤が、炭酸カルシウム、硫酸バリウムから選ばれた少なくとも一種である特徴とする多孔フィルムである。
本発明の第11は、ポリエチレン樹脂組成物をフィルムに成形し、このフィルムを35〜110℃の温度で1.05〜3倍に延伸処理することを特徴とする多孔フィルムの製造方法であって、
前記ポリエチレン樹脂組成物は、(a)密度0.880〜0.945g/cm、(b)MFRが0.1〜50g/10分のエチレン−α・オレフィン共重合体(A)100〜50質量%と他のエチレン(共)重合体(B)0〜50質量%とを含む樹脂成分100質量部に対して30〜200質量部の無機充填剤(C)と、樹脂成分100質量部に対して0.1〜5質量部の12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(D)とを含有するものであることを特徴とする多孔フィルムの製造方法である。
本発明の第12は、前記延伸処理は、35〜60℃の温度で1.05〜2.0倍に延伸する第1工程と、60〜110℃の温度でさらに2倍以上に延伸する第2工程とを有することを特徴とする多孔フィルムの製造方法である。
本発明の多孔フィルムは、炭酸カルシウム等の無機充填剤を多量に添加しても、フィルム成形時の目やにの発生が軽減し、連続成形ができ、飛躍的に生産性が向上する。また、無機充填剤の分散性が向上する上に、ピンホール、延伸切れが起こりにくく、成形加工性(ドローレゾナンス、ネックイン、逐次延伸性)が良好である。しかも、柔軟性、通気性、透湿性、耐溶剤性、耐薬品性に優れる。その結果、成形加工性、機械的性質(引裂強度、フィルムインパクト)、製品物性等のバランスに優れたものである。
本発明の多孔フィルムの製造方法によれば、上述したような優れた性能を有する多孔フィルムを製造できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の多孔フィルムは、エチレン−α・オレフィン共重合体(A)と他のエチレン(共)重合体とを含む樹脂成分に対して無機充填剤(C)と12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(D)とを含有するポリエチレン樹脂組成物からなるものである。なお、本発明において、フィルムとは、シートを含む。
本発明に係るエチレン−α・オレフィン共重合体(A)とは、エチレンと炭素数3〜20のα・オレフィンより選ばれた一種以上との共重合体である。この炭素数3〜20のα・オレフィンとしては、好ましくは炭素数3〜12のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、これらのα・オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
このエチレン−α・オレフィン共重合体(A)の(a)密度は、0.880〜0.945g/cm 、好ましくは0.900〜0.940g/cm 、より好ましくは0.905〜0.935g/cm の範囲である。密度がこの範囲にあると、炭酸カルシウムなどの無機充填剤の受容性に優れ、炭酸カルシウム等の無機充填剤を多量に配合しても強度の低下が小さい。また、密度が0.880g/cm 未満では、引裂強度、透湿性が悪化し、0.945g/cmを超えると、延伸むら、延伸きれ、ピンホールなどが生じたり、柔軟性が損なわれる虞が生じる。
エチレン−α・オレフィン共重合体(A)の(b)MFRは、0.1〜50g/10分、好ましくは0.3〜30g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲である。MFRが0.1g/10分未満では、成形加工性が劣り、50g/10分を超えると耐衝撃性、機械的強度などが低下する。
本発明に係るエチレン−α・オレフィン共重合体(A)は、特に下記(c)および(d)の要件を満足することが好ましい。
(c)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5、
(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線(図1参照)の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、(式1)T75−T25≦−670×d+644の関係を満足するものである。
上記(c)分子量分布Mw/Mnは、通常1.5〜4.5であり、好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.3〜3.5の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では、成形加工性が劣り、3.5を超えると、耐衝撃性が劣る。ここで、分子量分布Mw/Mnは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、この比Mw/Mnを求めることにより算出される。
また、エチレン−α・オレフィン共重合体(A)において、T75−T25と密度dが上記(式1)の関係を満足しない場合には、低温ヒートシール性が低くなりやすい。
上記TREFの測定方法は下記の通りである。まず、酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたオルソジクロロベンゼン(ODCB)に試料濃度が0.05質量%となるように試料を加え、135℃で加熱溶解する。この試料溶液5mlを、ガラスビーズを充填したカラムに注入し、0.1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着させる。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/時間の一定速度で昇温しながら、試料を順次溶出させる。この際、溶剤中に溶出する試料の濃度は、メチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1に対する吸収を赤外検出器で測定することにより連続的に検出される。この値から、溶液中のエチレン−α・オレフィン共重合体の濃度を定量分析し、溶出温度と溶出速度の関係を求める。
TREF分析によれば、極少量の試料で、温度変化に対する溶出速度の変化を連続的に分析出来るため、分別法では検出できない比較的細かいピークの検出が可能である。
さらにエチレン−α・オレフィン共重合体(A)は、下記(e)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが下記(式2)の関係を満足することが好ましい。
(式2) T75−T25≧−300×d+285
75−T25と密度dが上記(式2)の関係を満足する場合には、ヒートシール強度と耐熱性とがともに優れるものとなる。
本発明におけるエチレン−α・オレフィン共重合体(A)は、さらに後述の(f)および(g)の要件を満足する(A1)エチレン−α・オレフィン共重合体、または、さらに後述の(h)および(i)の要件を満足する(A2)エチレン−α・オレフィン共重合体のいずれかであることが好ましい。
(A1)エチレン−α・オレフィン共重合体の(f)25℃におけるODCB可溶分の量X(質量%)と密度dおよびMFRは、下記(式3)および(式4)の関係を満足しており、
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<2.0
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<9.8×10×(0.9300−d+0.008logMFR)+2.0
の関係を満足しており、好ましくは、
d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<1.0
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<7.4×10×(0.9300−d+0.008logMFR)+2.0
の関係を満足しており、さらに好ましくは、
d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<0.5
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<5.6×10×(0.9300−d+0.008logMFR)+2.0
の関係を満足している。
ここで、上記25℃におけるODCB可溶分の量Xは、下記の方法により測定される。試料0.5gを20mlのODCBにて135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却する。この溶液を25℃で一晩放置後、テトラフルオロエチレン製フィルターでろ過してろ液を採取する。試料溶液であるこのろ液を赤外分光器によりメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1付近の吸収ピーク強度を測定し、予め作成した検量線により試料濃度を算出する。この値より、25℃におけるODCB可溶分量が求まる。
25℃におけるODCB可溶分は、エチレン−α・オレフィン共重合体に含まれる高分岐度成分および低分子量成分であり、耐熱性の低下や成形体表面のべたつきの原因となり、衛生性の問題や成形体内面のブロッキングの原因となる。そのため、この含有量は少ないことが望ましい。また、ODCB可溶分の量は、共重合体全体のα・オレフィンの含有量および分子量、即ち、密度とMFRに影響される。従ってこれらの指標である密度およびMFRとODCB可溶分の量が上記の関係を満たすことは、共重合体全体に含まれるα・オレフィンの偏在が少ないことを示す。
また、エチレン−α・オレフィン共重合体(A1)は、(g)連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において、ピークが複数個存在するものである。この複数のピーク温度の高温側のピーク温度は85℃から100℃の間に存在することが特に好ましい。このピークが存在することにより、融点が高くなり、また結晶化度が上昇し、成形体の耐熱性および剛性が向上する。
ここで、エチレン−α・オレフィン共重合体(A1)は、図2に示されるように、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークが複数個の特殊なエチレン−α・オレフィン共重合体である。一方、図3のエチレン共重合体は、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークを1個有するエチレン−α・オレフィン共重合体であり、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン共重合体がこれに該当する。
本発明に係るエチレン−α・オレフィン共重合体(A2)は、エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数4〜12のα・オレフィン共重合体である。エチレン−α・オレフィン共重合体(A2)を構成するα・オレフィンとしては、炭素数が好ましくは5〜10のα・オレフィンであり、具体的には1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、これらのα・オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは3〜20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
エチレン−α・オレフィン共重合体(A2)は、図4に示すように、
(h)融点ピークを1ないし複数個有し、
(i)そのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足するものである。
(式5) Tml≧150×d−19
融点Tm1と密度dが上記(式5)の関係を満足すると、耐熱性が向上するものとなる。
また、エチレン−α・オレフィン共重合体(A2)の中でも、さらに下記(j)の要件を満足するエチレン−α・オレフィン共重合体が好適である。
(j)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式6)の関係を満足する。
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
MTとMFRが上記(式6)の関係を満足することにより、フィルム成形等の成形加工性がより良好なものとなる。
ここで、エチレン−α・オレフィン共重合体(A2)は、図4に示されるように、TREFピークが1つであるものの、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン共重合体は上記(式4)を満足せず、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン共重合体とは区別されるものである。
本発明に係るエチレン−α・オレフィン共重合体(A)は、前記のパラメーターを満足すれば触媒、製造方法等に特に限定されるものではないが、好ましくは少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表第4族の遷移金属化合物とを含む触媒の存在下にエチレンを重合、またはエチレンとα・オレフィンとを共重合させて得られる直鎖状のエチレン−α・オレフィン共重合体(A)であることが望ましい。このような直鎖状のエチレン−α・オレフィン共重合体(A)は、分子量分布および組成分布が狭いため、機械的特性に優れ、かつ延伸性、ヒートシール性、ブロッキング性等に優れ、しかも耐熱性の良い重合体である。
エチレン−α・オレフィン共重合体(A)を製造する際の触媒としては特に特定されないが、特にシングルサイト系触媒が好ましい。シングルサイト系触媒としては、従来の典型的なメタロセン触媒やCGC(Constrained Geometry Catalyst)触媒などによって製造してもよいが、少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表4族の遷移金属化合物を含むシングルサイト系触媒が好ましい。該シングルサイト系触媒としては特に以下のa1〜a4の化合物を混合して得られる触媒が望ましい。
エチレン−α・オレフィン共重合体(A)の製造に供せられるa1〜a4の化合物を混合して得られる触媒について以下に詳述する。
a1:一般式Me (OR 4−p−q−rで表される化合物(式中Meはジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、RおよびRはそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、Rは、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体、Xはハロゲン原子を示し、p、qおよびrはそれぞれ0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である)
a2:一般式Me (OR z−m−nで表される化合物(式中Meは周期律表1、2、12、13族元素、RおよびRはそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、Xはハロゲン原子または水素原子(ただし、Xが水素原子の場合はMeは周期律表13族元素の場合に限る)を示し、zはMeの価数を示し、mおよびnはそれぞれ0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである)
a3:共役二重結合を持つ有機環状化合物
a4:Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物および/またはホウ素化合物
以下、さらに詳説する。
上記触媒成分a1の一般式Me (OR 4−p−q−rで表される化合物の式中、Meはジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、これらの遷移金属の種類は限定されるものではなく、複数を用いることもできるが、ジルコニウムが含まれることが特に好ましい。RおよびRはそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。Rは、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体を示す。Xはフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示す。p、qおよびrはそれぞれ、0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である。
上記触媒成分a1の一般式で示される化合物(I)の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、特にテトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのZr(OR)化合物が好ましく、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。また、前記2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体の具体例としては、テトラ(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、トリ(2,4−ペンタンジオナト)クロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジクロライドジルコニウム、(2,4−ペンタンジオナト)トリクロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジベンジルジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジネオフイルジルコニウム、テトラ(ジベンゾイルメタナト)ジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム等が挙げられる。
上記触媒成分a2の一般式Me (OR z−m−nで表される化合物の式中Meは周期律表1、2、12、13族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。RおよびRはそれぞれ炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8の炭化水素基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。Xはフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、Xが水素原子の場合はMeはホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表13族元素の場合に限るものである。また、zはMeの価数を示し、mおよびnはそれぞれ、0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。
上記触媒成分a2の一般式で示される化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
上記触媒成分a3の共役二重結合を持つ有機環状化合物は、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上持ち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜20である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上持ち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜20である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造を持つものが望ましい。
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
SiR4−L
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
上記成分a3の有機環状炭化水素化合物の具体例として、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、プロピルシクロペンタジエン、ブチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、1−メチル−3−エチルシクロペンタジエン、1−メチル−3−プロピルシクロペンタジエン、1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエン、1,2,4−トリメチルシクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、ベンゾインデン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレン、1H−シクロペンタ[l]フェナントレンのような炭素数5〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシラン、またはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられるまた、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
これらの配位子となる化合物は単独でもよいが、複数を組み合わせて用いてもよい。また、これらを配位子として有する錯体または触媒を複数組み合わせてもよい。
触媒成分a4のAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物とは、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムオキシ化合物が得られ、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有する。また、変性有機アルミニウムオキシ化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
触媒成分a4のホウ素化合物としてはボレート又はボランが用いられる。ボレートの具体例としては、トリブチルアンモニウムテトラキス(o−フルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラキス(p−フルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラキス(m−フルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラキス(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(o−フルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(p−フルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(m−フルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(o−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(p−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(m−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラキス(o−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラキス(p−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラキス(m−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラキス(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。好ましくは、トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
また、ボラン化合物の具体例としては、トリス(o−フルオロフェニル)ボラン、トリス(p−フルオロフェニル)ボラン、トリス(m−フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが挙げられ、好ましくはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが挙げられる。
上記触媒はa1〜a4を混合接触させて使用しても良いが、好ましくは無機物担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)に担持させて使用することが望ましい。
該無機物担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)とは、炭素質物、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体として好ましいものは金属酸化物(単独酸化物または複酸化物)である。
無機物担体としては、具体的には、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO−Al、SiO−V、SiO−TiO、SiO−MgO、SiO−Cr等が挙げられる。これらの中でもSiOおよびAlからなる群から選択された少なくとも一種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、粒子状ポリマー担体としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
上記無機物担体および/または粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物などに接触処理させた後に成分a5として用いることもできる。
上記エチレン−α・オレフィン共重合体(A)の製造は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で行われ、具体的には、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。また、一段重合法、多段重合法のいずれであってもよい。
重合条件としては特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低中圧法の場合、通常常圧〜7MPa Gauge(70kgf/cmG)、好ましくは常圧〜2MPa Gauge(20kgf/cmG)であり、高圧法の場合通常150MPa Gauge(1500kgf/cmG)以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。
また、重合は一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法などに特に限定されるものではない。特に好ましい製造方法としては、特開平5−132518号公報に記載の方法が挙げられる。
エチレン−α・オレフィン共重合体(A)は、上述の触媒成分の中に塩素等のハロゲンを含まない触媒を使用して製造することにより、ハロゲン濃度としては多くとも10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは実質的に含まない(ND:2ppm以下)ものとすることが可能である。
このような塩素等のハロゲンフリーのエチレン−α・オレフィン共重合体(A)を用いることにより、従来のようなハロゲン中和剤を使用する必要がなくなり、化学的安定性、衛生性が優れる多孔フィルムを提供することができる。
以上のようなエチレン−α・オレフィン共重合体(A)は、無機充填剤(C)の高充填が可能であり、しかも無機充填剤(C)を高充填してもフィルム強度の低下が少ないという性質を有しているので、本発明の多孔フィルムに使用される。
本発明に係る他のエチレン(共)重合体(B)としては、高圧ラジカル重合法によって得られるエチレン(共)重合体(B1〜B3)、低・中・高圧重合によって得られる高密度ポリエチレン(B4)、エチレン−α・オレフィン共重合体(A)とは異なる他のエチレン−α・オレフィン共重合体(直鎖状低密度ポリエチレン(B5)、超低密度ポリエチレン(B6))、エチレン−α・オレフィン共重合体ゴム(B7)等が挙げられる。
上記高圧ラジカル重合法によって得られるエチレン(共)重合体としては、高圧ラジカル重合法による低密度ポリエチレン(LDPE、B1)、エチレン−ビニルエステル共重合体(B2)、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体(B3)などが挙げられる。これら高圧ラジカル重合法エチレン(共)重合体は、圧力50〜350MPa Gauge(500〜3500kgf/cmG)の範囲、重合温度は100〜400?の範囲、チューブ状リアクター、オートクレーブリアクターを使用して、有機または無機のパーオキサイド等の遊離基発生剤の存在下で重合されて得られたものである。
[低密度ポリエチレン(B1)]
低密度ポリエチレン(B1)のMFRは、通常0.1〜50g/10分、さらに好ましくは0.3〜30g/10分、より好ましくは0.4〜20g/10分の範囲である。この範囲であれば、メルトテンションが適切な範囲となり、成形加工性が向上する。
また、密度は通常0.91〜0.94g/cm 、さらに好ましくは0.915〜0.935g/cmより好ましくは0.918〜0.928g/cmの範囲である。この範囲であれば、ドローダウン性、ドローレゾナンス、延伸性等の成形性を安定的に保持することが可能となる。
[エチレン−ビニルエステル共重合体(B2)]
エチレン−ビニルエステル共重合体(B2)とは、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレンを主成分とする、エチレンとプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。中でも、特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。また、エチレン50〜99.5質量%、ビニルエステル0.5〜50質量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5質量%からなる共重合体が好ましい。特に、ビニルエステルの含有量は3〜30質量%、好ましくは5〜25質量%の範囲である。エチレン−ビニルエステル共重合体(B2)のMFRは、0.1〜50g/10分、さらに好ましくは0.3〜30g/10分の範囲、より好ましくは0.5〜20g/10分である。
[エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体(B3)]
エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体(B3)としては、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステル共重合体等が挙げられる。α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして、無水マレイン酸や、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に、(メタ)アクリル酸エステルを含有する場合、その含有量は3〜30質量%、好ましくは5〜25質量%の範囲である。エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体(B3)のMFRは通常0.1〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜30g/10分、より好ましくは0.5〜20g/10分である。
[高密度ポリエチレン(B4)]
高密度ポリエチレン(B4)は、密度0.94〜0.97g/cmのエチレン単独重合体もしくはエチレンと少量のα・オレフィンとの共重合体であって、チーグラー系触媒等を用いた高・中・低圧法スラリー法、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等の単段重合法、多段重合法で製造されたものである。
高密度ポリエチレン(B4)のMFRは、通常0.1〜50g/10分、好ましくは0.3〜30g/10分、さらに好ましくは5〜20g/10分の範囲である。
高密度ポリエチレン(B4)を構成するα・オレフィンとしては、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12の範囲のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等を挙げることができる。
[直鎖状低密度ポリエチレン(B5)]
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、B5)は、密度が通常0.91〜0.94g/cm、好ましくは0.91〜0.935g/cmの範囲のエチレン−α・オレフィン共重合体であり、MFRは通常0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、より好ましくは0.1〜50g/10分の範囲のものである。ここで、直鎖状低密度ポリエチレン(B5)を構成するα・オレフィンとしては、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12の範囲のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等を挙げることができる。
上記の直鎖状低密度ポリエチレン(B5)は、上述のエチレン−α・オレフィン共重合体(A)で規定される特定のパラメーターを満たさないものであり、従来公知のチーグラー系触媒あるいはフィリップス触媒(以下、両者を含めてチーグラー型触媒と記す)、あるいはメタロセン系触媒を用いて重合されるエチレン−α・オレフィン共重合体が挙げられる。
[超低密度ポリエチレン(B6)]
超低密度ポリエチレン(VLDPE、B6)とは、密度が0.88〜0.91g/cm、好ましくは0.89〜0.905g/cmの範囲のエチレン−α・オレフィン共重合体であり、LLDPEとエチレン−α・オレフィン共重合体ゴム(EPR、EPDM)の中間の性状を示すポリエチレンである。また、MFRは通常0.1〜50g/10分、好ましくは0.3〜30g/10分、より好ましくは0.5〜20g/10分の範囲である。また、超低密度ポリエチレン(VLDPE)は、示差走査熱量測定法(DSC)による最大ピーク温度(Tm)が60℃以上、好ましくは100℃以上、かつ沸騰n−ヘキサン不溶分10質量%以上の性状を有する特定のエチレン−α・オレフィン共重合体であり、少なくともチタンおよび/またはバナジウムを含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合され、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が示す高結晶部分とエチレン−α・オレフィン共重合体ゴムが示す非晶部分とを合わせ持つ樹脂である。このような超低密度ポリエチレン(VLDPE)は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の特徴である機械的強度、耐熱性等と、エチレン−α・オレフィン共重合体ゴムの特徴であるゴム状弾性、耐低温衝撃性などがバランスよく共存しているものである。
上記超低密度ポリエチレン(B6)を構成するα・オレフィンとしては、炭素数が3〜12、好ましくは3〜10のものであり、具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
[エチレン−α・オレフィン共重合体ゴム(B7)]
エチレン−α・オレフィン共重合体ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、エチレン−ブテン−1共重合体ゴム等が挙げられる。
上記他のエチレン(共)重合体(B)は、例えば、成形性と機械的強度を向上させるために低密度ポリエチレン(B1)と直鎖状低密度ポリエチレン(B5)との複数のエチレン(共)重合体(B)を配合しても良い。また、高圧ラジカル法エチレン(共)重合体、とりわけ低密度ポリエチレン(B1)は、ポリエチレン樹脂組成物の成形加工性が向上し高速成形性等の性能が付与できることから、特に配合されることが好ましい。
上述したエチレン−α・オレフィン共重合体(A)と他のエチレン(共)重合体(B)とで樹脂成分を構成する。この樹脂成分においては、エチレン−α・オレフィン共重合体(A)が100〜50質量%、他のエチレン(共)重合体(B)が0〜50質量%、好ましくはエチレン−α・オレフィン共重合体(A)が95〜65質量%、他のエチレン(共)重合体(B)が5〜35質量%、より好ましくはエチレン−α・オレフィン共重合体(A)が90〜70質量%、他のエチレン(共)重合体(B)が10〜30質量%である。(B)成分は任意成分であるが、(B)成分が上記範囲で配合されていれば、成形加工性が大幅に向上する。
[無機充填剤(C)]
無機充填剤(C)としては、例えば、シリカ、マイカ、タルク、珪藻土、クレー、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコン、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アスベスト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属粉、ガラス繊維、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。これら無機充填剤は、目的、用途等により適宜選択されるが、安価で多孔フィルムの物性を高くできる点で、特に炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が好ましい。また炭酸カルシウムは、軽質、重質のいずれでもよいが、好ましくは重質炭酸カルシウムが好ましい。
無機充填剤(C)の平均粒径は、通常20μm以下であり、好ましくは0.3〜10μm、より好ましくは0.5〜5μmの範囲である。粒径が20μmより大きいとフィルムの機械的強度が低下する傾向にあり、特に多孔フィルムを製造する際に延伸切れを起こしやすく、また、得られたフィルムの孔径が大きくなり、透気度の調整がうまく制御できず多孔フィルムとしての機能が劣ったものとなる。
また、無機充填剤(C)は、樹脂成分への分散性を良くするために表面があらかじめ処理されたものが好ましい。表面処理剤としては、高級脂肪酸およびその金属塩、あるいは酸アミド、チタネート系カップリング剤、ワックス、オイルなどが挙げられる。これらの中でも、高級脂肪酸によって表面処理された無機充填剤が分散性の点で好ましい。
無機充填剤(C)の水分は0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であることが望ましい。
上記無機充填剤(C)の配合量は、樹脂成分100質量部に対して30〜200質量部、好ましくは50〜150質量部、さらに好ましくは70〜120質量部である。この範囲にすることで、多孔フィルムの通気性および透湿性が高くなる。なお、無機充填剤(C)が200質量部を超えると、フィルムの成形性不良、機械的強度が低下し、延伸時には延伸切れ等が生じる傾向にある。30質量部未満では、多孔フィルムの通気性、透湿性が不十分となる虞が生じる。
本発明に係る12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(D)は、複分解沈殿法、乾式直接法等で製造されたものである。また、表面処理型12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムなどを使用することもできる。なお、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムにおける塩基性とは、カルボン酸である12ヒドロキシステアリン酸と金属であるマグネシウムとの塩において、金属の当量がカルボン酸の当量より過剰であることを意味する。
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(D)の配合量は、成形加工性を考慮した場合、樹脂成分100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜4質量部、より好ましくは0.2〜3質量部である。12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムの配合量が0.1質量部未満では、目やにの発生抑制効果に乏しく、5質量部を超える量を配合してもそれ以上の効果の向上はみられない。
上述した(A)〜(D)成分を含むポリエチレン樹脂組成物の中でも、最も好ましい配合は、エチレン−α・オレフィン共重合体(A)70〜90質量%と低密度ポリエチレン(B1)10〜30質量%との樹脂成分100質量部に対して、炭酸カルシウム(C)80〜150質量部および12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム0.1〜3質量部を配合したものである。このようなポリエチレン樹脂組成物は、理由は明確ではないが、フィルム成形時の目やにの防止および延伸時の延伸切れや延伸ムラ、ピンホール等の延伸性の改良という相乗的効果を特に発揮するものである。
また、多孔フィルムをなすポリエチレン樹脂組成物においては、さらにリン系酸化防止剤が0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜1質量%、およびフェノール系酸化防止剤が0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜1質量%含まれているとよい。これらの酸化防止剤が含まれていれば連続運転性を飛躍的に向上させることができる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスファイトジエチルエステル、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)ジフォスフォスピロウンデカン、ビス(ステアリル)ジフォスフォスピロウンデカン、環状ネトペンタンテトライルビス(ノニルフェニルホスファイト)、ビス(ノニルフェニルフェノキシ)ジフォスフォスピロウンデカン、3,4,5,6−ジベンゾ−1,2−オキサホスファン−2−オキシド、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル−2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチル−フェニル]エチルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)ジフォスフォスピロウンデカン、トリラウリルトリチオホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールアルキル(C12〜C15)ホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)−ジ−トリデシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、トリス−(モノ&ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、フェニル−ビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ラウリルチオ)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−4−n−オクタデシルオキシカルボニルエチル−フェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジーフォスフォナイト、テトラキス[2,6−ジ−t−ブチル−4−(2,4’−ジ−t−ブチルフェニルオキシカルボニル)−フェニル]−4,4’−ビフェニレン−ジーフォスフォナイト)、トリセチルトリチオホスファイト、ジ−t−ブチルフェニル−m−クレジルフォスフォナイトとビフェニルとの縮合物、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジフォスフォナイト、サイクリックブチルエチルプロパンジオール−2,4,6−トリ−ブチルフェニルホスファイト、トリス−[2−(2,4,8,10−テトラブチル−5,7−ジオキサ−6−ホスホ−ジベンゾ−{a,c}シクロヘプテン−6−イルーオキシ)エチル]アミン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、3,9− ビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノキシ}−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
これらの中でも、連続運転性の向上効果に優れることから、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジフォスフォナイト、およびビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチル−フェニル]エチルホスファイトの中から選ばれる2種を併用して用いることが特に好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、トコフェロール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)、ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシフェニル)プロピオネート](別名はテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)、ビス[3,3−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブタン酸]グリコールエステル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−6−[[3−(1,1−(ジメチルエチル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メチル]−4−メチルフェニル]エステル、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、2−[1−(2−ハイドロオキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
これらの中でも、連続運転性の向上効果に優れることから、オクタデシルジブチルヒドロキシハイドロシアナメイト(イルガノックス1076:チバスペシャルケミカルズ社製)、ペンタエリスリトールテトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)等が好適に用いられる。
さらに、ポリエチレン樹脂組成物には、本発明の特性を本質的に損なわない範囲でひまし油、ワックス等の延伸助剤、帯電防止剤、防曇剤、有機あるいは無機顔料、紫外線吸収剤、分散剤などの公知の添加剤を添加することができる。
また、ポリエチレン樹脂組成物の溶融張力は、1.5g以上、好ましくは5〜20gの範囲であることが好ましい。溶融張力が1.5g未満では、ドローレゾナンスが起き、延伸むらとなる虞が生じる。
本発明の多孔フィルムは、上述したポリエチレン樹脂組成物からなるものである。この多孔フィルムは、透湿度が好ましくは500〜20000g/(m2 ・24時間)の範囲、より好ましくは1500〜15000g/m2 ・24時間、さらに好ましく3000〜10000g/m2 ・24時間の範囲で用途により調整されることが望ましい。
また、本発明の多孔フィルムの引張破壊強さ(MD/CD)は、通常20〜50MPa/4〜20MPa、好ましくは25〜40MPa/5〜18MPa、より好ましくは28〜38MPa/6〜16MPaの範囲である。ここで、MDとは、縦軸方向のことであり、CDとは横軸方向のことである。
また、本発明の多孔フィルムの引張破壊伸び(MD/CD)は、通常100〜200%/350〜700%、好ましくは120〜190%/400〜600%、より好ましくは140〜180%/420〜580%の範囲である。
本発明の多孔フィルムは、紙おむつ等の衛生用品、ハウスラップ等に活用される。ここで、ハウスラップ用フィルムとは、住宅の結露防止のために住宅の壁面、天井、床等に施工されるフィルムである。また、衛生用品とは、上記多孔フィルムを含有するシートから形成されたものであり、一般的には、例えば、織布、スパンボンド等の不織布などの集積体からなる通気性基材と、高吸水剤および前記多孔フィルムを含むバックシートとから形成されるたものである。高吸収剤としては、でんぷん系、セルロース系、ポリアクリル酸系、ポバール系、ポリオキシエチレン系等の合成ポリマー系の吸水性ポリマーが挙げられる。
<製造方法>
本発明の多孔フィルムの製造方法は、ポリエチレン樹脂組成物をフィルムに成形し、これを延伸処理する。
〔フィルム成形〕
フィルムを溶融成形する際、多孔フィルムになるポリエチレン樹脂組成物をあらかじめ溶融混練しておくことが好ましい。その方法は種々あるが、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、あるいは加圧ニーダーで溶融混練する方法、連続押出機を用いる方法などが挙げられる。これらの中でも、連続操作であり、生産性が高い連続押出機を用いる方法が好ましい。連続押出機としてはフルフライトスクリューの押出機を用いてもよいが、混練が不十分となる場合があるので、ニーディング機構を備えた押出機や多軸押出機を用いることが望ましい。
溶融混練した後、フィルム状に成形する。フィルムの成形方法は特に限定されず、円形ダイを使用したインフレーション成形法、あるいはTダイを使用したTダイ成形法などから適宜選択できるが、連続的に多孔フィルムを製造する場合にはTダイ法が望ましい。
好ましいフィルム成形方法の具体例について説明する。まず、所定量のエチレン−α・オレフィン共重合体(A)、他のエチレン(共)重合体(B)、炭酸カルシウム粉末、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを押出機で練り込み、ポリエチレン樹脂組成物のペレットを作製する。または、好ましくはエチレン−α・オレフィン共重合体(A)のペレットと、エチレン−α・オレフィン共重合体(A)または他のエチレン(共)重合体(B)、炭酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム等からなるマスターバッチのペレットとを作製する。次いで、前記ペレットに、必要に応じて安定剤などを添加し、これらを混合機(ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンミキサー、タンブラーミキサーなど)で混合した後、Tダイ成形法によって20〜150μmの厚みのフィルムを成形する。
〔延伸成形〕
上記フィルムを延伸する方法は一般的に大きく分けて一軸延伸法と二軸延伸法があるが、本発明ではいずれの方法も可能である。一軸延伸法は通常ロール延伸法などが用いられる。このような延伸法を採用する場合には、フィルムのネッキング現象をなるべく抑えることが好ましく、そのためにロール間隔を可及的に近接させたり、ピンチロールや静電気によりフィルムの幅方向の収縮を抑えるなどの対策をとる場合がある。
また、二軸延伸法には大別して一段式と二段式があるが、いずれの方法も用いることができる。延伸の方式もテンター式やチューブラー式など種々あるが、本発明においては特に限定されず採用できる。
延伸処理は35℃以上110℃以下、好ましくは40℃以上105℃以下の温度で行う。延伸処理時の温度が35℃未満では、延伸むらが生じて良好なフィルムが得られない。また、110℃を超えると、延伸は良好に行えるが、得られたフィルムの多孔性が劣ったものになる。
一般に、ポリエチレンなどの合成樹脂の延伸温度は、合成樹脂の融点の近辺で行われ、あまり低温で延伸すると延伸むらが生ずる。このため、液状の化合物を添加して延伸性を向上させているのが現状であるが、本発明においては、上記のように低温で、かつ液状の化合物を添加しなくとも延伸が可能であり、好ましい多孔フィルムが得られる点に大きな特徴がある。
延伸倍率については、多孔フィルムに要求される機械的物性値と通気性、透湿性のバランスにより適宜決定される。高い通気性を要求される用途に対しては2〜6倍程度の高延伸倍率で行うことが望ましい。しかし、この場合フィルムの引裂強度が損なわれる場合があり、特に、一軸延伸で行うと縦裂けしやすいフィルムが得られる場合があるため、予熱後、1.05〜3倍程度の低倍率で行うことが好ましい。このような倍率の場合、一般の方法では延伸むらを生ずるのに対し、本発明では容易に延伸でき、延伸むらを生じないので特性の優れたフィルムを得ることができる。
また、透湿度の点で、延伸処理は、35〜60℃の温度で1.05〜2.0倍に延伸する第1工程と、60〜110℃の温度で2倍以上所望の最終倍率に延伸する第2工程とを有することが好ましい。このような処理方法を採用すれば、透湿度、透気度を容易に調整できる。
得られた多孔フィルムはそのまま使用することができるが、アニーリングしてもよい。アニーリングした場合には後収縮を抑えることもできる。アニーリングの温度は延伸温度とエチレン−α・オレフィン共重合体(A)と高圧ラジカル法エチレン重合体との樹脂組成の融点との間が好ましい。具体的にはアニーリング温度は40〜110℃の範囲が好ましい。
次に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本実施例において、各物性の測定は以下の試験方法により行った。
[密度]
JIS K6922−2に準拠した。
[MFR]
JIS K6922−2に準拠した。
[DSCによるTmlの測定]
厚さ0.2mmのシートを熱プレスで成形し、シートから約5mgの試料を打ち抜いた。この試料を230℃で10分保持後、2℃/分にて0℃まで冷却した。その後、再び10℃/分で170℃迄昇温し、現れた最高温ピークの頂点の温度を最高ピーク温度Tmlとした。
[Mw/Mn]
GPC(ウォータース社製150C型)を用い、溶媒として135℃のODCBを使用した。カラムは東ソーのGMH 時間−H(S)を使用した。
[TREF]
カラムを140℃に保って試料を注入し、0.1℃/分で25℃まで降温し、ポリマーをガラスビーズ上に沈着させた後、カラムを下記条件にて昇温して各温度で溶出したポリマー濃度を赤外検出器で検出した。
溶媒:ODCB、流速:1ml/分、昇温速度:50℃/時間、検出器:赤外分光器(波長2925cm−1)、カラム:0.8cmφ×12cmL(ガラスビーズを充填)、試料濃度:1mg/ml
[メルトテンション(MT)]
溶融させたポリマーを一定速度で延伸したときの応力をストレインゲージにて測定することにより決定した。測定試料としては造粒してペレットにしたものを用い、東洋精機製作所製MT測定装置を使用して測定した。使用するオリフィスは穴径2.09mmφ、長さ8mmのものであり、測定条件は樹脂温度190℃、押出速度20mm/分、巻取り速度15m/分とした。
[ハロゲン濃度]
蛍光X線法により測定し、10ppm以上の塩素が検出された場合はこれをもって分析値とした。10ppmを下回った場合は、ダイアインスツルメンツ(株)製TOX−100型塩素・硫黄分析装置にて測定した。なお、2ppm以下についてはNDとし、実質的には含まれないものとした。
[透湿度]
JIS K7129に準拠した。
[透気度]
JIS P8117に準拠した。
[引張破壊強さ]
ASTM D 882−64Tに準拠した。
[引張破壊伸び]
ASTM D 882−64Tに準拠した。
以下に、使用した各成分を示す。
[シングルサイト触媒によるエチレン−α・オレフィン共重合体(A1)の製造]
[固体触媒の調製]
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラエトキシジルコニウム(Zr(OEt) )22gおよびインデン75gおよびメチルブチルシクロペンタジエン88gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度2.5mmol/ml)を3200ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(グレース社製、#952、表面積300m/g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度65℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン−1−ヘキセン共重合体(A1)(sLLDPEと略す)を得た。このsLLDPEの各物性値を表1に示す。
[シングルサイト触媒によるエチレン−α・オレフィン共重合体(A2)の製造]
[固体触媒の調製]
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラブトキシジルコニウム(Zr(OBu)4 )22gおよびインデン40gおよびメチルプロピルシクロペンタジエン21gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度2.5mmol/ml)を2000ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(グレース社製、#952、表面積300m /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度80℃、全圧20kgf/cmGでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、2種のエチレン1−ヘキセン共重合体(A2)(sLLDPEと略す)を得た。このsLLDPEの各物性値を表1に示す。
Figure 0004056953
[チーグラー系触媒によるエチレン−α・オレフィン共重合体(A)の製造]
触媒として、四塩化チタン、トリエチルアルミニウム及び塩化マグネシウムを含む触媒を用い、連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度70℃、全圧2MPa Gauge(20kgf/cmG)でエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン−1−ヘキセン共重合体(A)(zLLDPEと略す)を得た。この共重合体のMFRは3.4g/10分、密度が0.918g/cmであった。
[他のエチレン(共)重合体(B)]
(B1)高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(LDPE(1))
密度=0.920g/cm、MFR=0.5g/10分、
商品名:JF120N 日本ポリオレフィン株式会社製
[無機充填剤]
・炭酸カルシウム(CaCO
商品名:SST40(同和カルファイン(株)製)、平均粒径:1.1μm
[滑剤]
・ステアリン酸リチウム(LiSt)
商品名:LiSt 日東化成工業株式会社製
・ステアリン酸カルシウム(CaSt)
商品名:CaSt 日東化成工業株式会社製
・ステアリン酸マグネシウム
商品名:MgSt 日東化成工業株式会社製
・12−ヒドロキシステアリン酸リチウム(12(OH)LiSt)
商品名:LS−6 日東化成工業株式会社製
・12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(12(OH)CaSt)
商品名:CS−6 日東化成工業株式会社製
・12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(12(OH)MgSt)
商品名:MS−6、日東化成工業株式会社製
[酸化防止剤]
・フェノール系酸化防止剤
化学名:オクタデシルジブチルヒドロキシハイドロシアナメイト
商品名:イルガノックス1076 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製
・リン系酸化防止剤
化学名:トリス(2,4−ジ−ターシャリィ−ブチルフェニル)フォスファイト
商品名:イルガフォス168 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製
以下本発明の組成物の目やにの評価を行った。
[目やに評価:実験例1〜9]
[コンパウンド、フィルム成形]
予め、神戸製鋼製同方向二軸押出機(KTX−30)を用いて、シリンダー設定温度C〜C:150℃、C〜C:160℃、C〜C:170℃、C〜C:230℃、ダイス温度:230℃、押出量20kg/時間で表2に示す各種ポリエチレン樹脂組成物のペレットを得た。そして、このペレットを、下記のTダイ装置を用いて、押出温度230℃および250℃で、表2に示す押出量(5kg/時間、10kg/時間)で連続5時間押出した。この際のダイリップの目やにの付着状態を観察して以下のように評価した。その結果を表2に示す。
[押出条件]
Tダイ装置:ユニプラス製30φTダイ成形機 L/D=24、スクリュー圧縮比=2.8、シングルフライトスリーステージ ダイ300mm巾、リップギャップ=0.8mm、
[目やに評価基準]
ランクI:目視で確認できず。
ランクII:1mm未満の軽微な付着が確認された。
ランクIII:1〜2mm程度の付着が確認された。
ランクIV:3〜5mm程度の付着が確認された。
ランクV:6〜8mm、部分的に10mm程度の付着が確認された。
(実験例9)
なお、シングルサイト触媒によるエチレン-α-オレフィン共重合体(A1)の代わりにエチレン−α・オレフィン共重合体(A2)を用いたこと以外は実験例1〜8と同様にしてフィルムを成形し、評価した。その結果を表2に示す。
Figure 0004056953
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを0.1〜0.5質量部含有していた実験例6〜8は、目やにの発生が抑えられていた。また、実験例9も実験例7と同等の効果を示した。
[延伸状態評価:実験例10〜15]
次いで、以下のようにしてポリエチレン樹脂組成物の延伸状態を観察し、評価した。
まず、エチレン−α・オレフィン共重合体(A1)80質量部、低密度ポリエチレン(LDPE)20質量部に炭酸カルシウム100質量部、フェノール系酸化防止剤として、イルガノックス1076を0.1質量部、リン系酸化防止剤としてイルガフォス168を0.2質量部および表3に示す各種滑剤0.3質量部を配合したポリエチレン樹脂組成物を得た。そして、下記のTダイ装置を用い、延伸倍率を変えて延伸性を観察し、延伸状態を評価した。その結果を表3に示す。
[押出条件]
Tダイ装置:ユニプラス製30φTダイ成形機 L/D=24、
スクリュー圧縮比=2.8、シングルフライトスリーステージ ダイ300mm巾、
リップギャップ=0.8mm、成形温度:250℃、厚み:140μm
[延伸条件]
延伸装置:岩本製作所製二軸延伸試験機
延伸温度:40℃、延伸速度:100mm/秒
予熱時間:60秒、アニール時間:30秒、
冷却時間:20秒(23℃ブロア冷却)
(実験例15)
なお、シングルサイト触媒によるエチレン-α-オレフィン共重合体(A1)の代わりにエチレン−α・オレフィン共重合体(A2)を用いたこと以外は実施例10〜14と同様にしてフィルムを延伸倍率3.5倍で延伸し、評価した。その結果を表3に示す。
[延伸評価]
10回延伸させ、延伸が成功した回数で評価した。すなわち、0では全て延伸に失敗したということであり、延伸性に乏しく、10では全て延伸に成功したということであり、延伸性に優れている。
この結果より、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを配合したものは高い延伸倍率で延伸できることが示された。
Figure 0004056953
[多孔フィルムの製造:実験例16〜17]
上記エチレン−α・オレフィン共重合体(A1)の実験例13の配合において滑剤としてステアリン酸リチウム(LiSt)を用いたポリエチレン樹脂組成物(実験例16)および、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(12(OH)MgSt)を用いたポリエチレン樹脂組成物(実験例17)を延伸して多孔フィルムを製造し、その物性を調べた。その結果を表4に示す。
[実験例18〜19]
実験例16,17のエチレン−α・オレフィン共重合体(A1)をそれぞれzLLDPE(エチレン−α・オレフィン共重合体(A))に代えたこと以外は実験例14,15と同様にして多孔フィルムを製造し、評価した。その評価結果を表4に示す。
Figure 0004056953
[評価結果]
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを配合した本発明の多孔フィルム(実験例17、実験例19)は、延伸性、柔軟性いずれも優れたものであった。また、実験例17と19を比較すると、シングルサイト触媒により得たエチレン−α・オレフィン共重合体(A1)を用いた多孔フィルム(実験例17)は、エチレン−α・オレフィン共重合体(A)を用いた多孔フィルム(実験例19)に比していずれの物性も良好であった。
一方、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを配合していなかった実験例16、実験例18は延伸性、柔軟性が低かった。
本発明に係る(c)〜(d)の要件を満足するエチレン−α・オレフィン共重合体(A)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。 本発明に係るエチレン−α・オレフィン共重合体(A1)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。 一般のメタロセン系触媒によるエチレン−α・オレフィン共重合体の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。 本発明に係るエチレン−α・オレフィン共重合体(A2)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。

Claims (12)

  1. ポリエチレン樹脂組成物からなる多孔フィルムであって、
    前記ポリエチレン樹脂組成物は、(a)密度が0.880〜0.945g/cm、(b)MFRが0.1〜50g/10分のエチレン−α・オレフィン共重合体(A)100〜50質量%と他のエチレン(共)重合体(B)0〜50質量%とを含む樹脂成分100質量部に対して30〜200質量部の無機充填剤(C)と、0.1〜5質量部の12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムおよび/または塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(D)とを含有するものであることを特徴とする多孔フィルム。
  2. 透湿度が500〜20000g/(m2 ・24時間)であることを特徴とする請求項1に記載の多孔フィルム。
  3. 前記エチレン−α・オレフィン共重合体が、さらに(c)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5、(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の多孔フィルム。
    (式1)T75−T25≦−670×d+644
  4. 前記エチレン−α・オレフィン共重合体(A)が、さらに下記(e)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが下記(式2)の関係を満足すること特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔フィルム。
    (式2) T75−T25≧−300×d+285
  5. 前記エチレン−α・オレフィン共重合体(A)が、さらに下記(f)および(g)の要件を満足するエチレン−α・オレフィン共重合体(A1)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔フィルム。
    (f)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分量X(質量%)、密度dおよびメルトフローレート(MFR)が下記(式3)および(式4)の関係を満足すること
    (式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合
    X<2.0
    (式4)d−0.008logMFR<0.93の場合
    X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
    (g)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在すること
  6. 前記エチレン−α・オレフィン共重合体(A)が、さらに下記(h)および(i)の要件を満足するエチレン−α・オレフィン共重合体(A2)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔フィルム。
    (h)融点ピークを1ないし複数個を有すること、
    (i)そのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足すること
    (式5) Tml≧150×d−19
  7. 前記エチレン−α・オレフィン共重合体(A2)が、さらに下記(j)の要件を満足することを特徴とする請求項6に記載の多孔フィルム。
    (j)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式6)を満足すること
    (式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
  8. 前記エチレン−α・オレフィン共重合体(A)が、少なくとも共役二重結合をもつ有機環状化合物と周期律表第4族の遷移金属化合物とを含む触媒の存在下で製造されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の多孔フィルム。
  9. 前記他のエチレン(共)重合体(B)が、密度0.91〜0.94g/cm、MFR0.1〜50g/10分の低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の多孔フィルム。
  10. 前記無機充填剤(C)が、炭酸カルシウム、硫酸バリウムから選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の多孔フィルム。
  11. ポリエチレン樹脂組成物をフィルムに成形し、このフィルムを35〜110℃の温度で1.05〜3倍に延伸処理する多孔フィルムの製造方法であって、
    前記ポリエチレン樹脂組成物は、(a)密度0.880〜0.945g/cm、(b)MFRが0.1〜50g/10分のエチレン−α・オレフィン共重合体(A)100〜50質量%と他のエチレン(共)重合体(B)0〜50質量%とを含む樹脂成分100質量部に対して30〜200質量部の無機充填剤(C)と、0.1〜5質量部の12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムおよび/または塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(D)とを含有するものであることを特徴とする多孔フィルムの製造方法。
  12. 前記延伸処理は、35〜60℃の温度で1.05〜2.0倍に延伸する第1工程と、60〜110℃の温度でさらに2倍以上に延伸する第2工程とを有することを特徴とする請求項11に記載の多孔フィルムの製造方法。
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