JP6370542B2 - 製造時にpH調整剤としての塩を実質的に使用しない、乳成分含有コーヒー飲料又は紅茶飲料。 - Google Patents

製造時にpH調整剤としての塩を実質的に使用しない、乳成分含有コーヒー飲料又は紅茶飲料。 Download PDF

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本発明は、香り立ちが良好で風味豊かな、乳成分含有コーヒー飲料又は紅茶飲料に関する。詳細には、製造時にpH調整剤としての塩を実質的に使用しない場合であっても、殺菌処理及び長期保存下における上透き、沈殿又はリングの発生が有意に抑制され、品質保持及び安定性に優れるコーヒー飲料又は紅茶飲料に関する。
従来、乳成分を含むコーヒー飲料又は紅茶飲料は、殺菌時及び長期保存時下におけるタンパク質の凝集、沈殿等を防止するため重曹(炭酸水素ナトリウム)、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のpH調整剤としての塩を添加する必要がある。しかし、これら塩類は特有の塩味を有するため、pH調整剤として使用することで、コーヒー飲料や紅茶飲料の風味が大幅に低下する。また、コーヒー飲料や紅茶飲料の豊かな風味の要素としてコーヒー、紅茶本来の酸味及び香り立ちも欠かせない要素の一つであるが、重曹等の塩類の使用により当該酸味や芳香が失われ、キレ味が悪くなる、更には加熱殺菌時に当該塩類に由来する加熱臭が生じるという問題も有していた。
重曹を低減若しくは代替する技術としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性物質及び/又は塩基性アミノ酸を添加する技術(特許文献1)、リン酸3ナトリウム物質を用いる技術(特許文献2)等が知られている。しかし、これら重曹に代替可能なpH調整剤としての塩類や、塩基性物質及び/又は塩基性アミノ酸等を用いた場合であっても、飲料の風味の低下(酸味、芳香等が失われる)を回避することは依然としてできない。更に、特許文献1に記載の水酸化ナトリウム、カリウム等が劇物に指定されているのを初め、強塩基性物質は取り扱いに注意が必要となり使用勝手が悪いという問題点も有していた。
カラギナンは紅藻類海藻から抽出、精製される天然高分子であり、現在一般的に市場に流通しているカラギナンとして、λ(ラムダ)、κ(カッパ)及びι(イオタ)カラギナンが知られており、乳成分を含有するコーヒー飲料や紅茶飲料においてはλカラギナン及びιカラギナンが通常使用される。しかし、従来から市販されているこれらカラギナンを用いた場合は、製造時にpH調整剤としての塩を実質的に使用しなければ、殺菌処理時又は長期保存時に乳蛋白、コーヒー又は紅茶成分等が凝集・分離して飲料容器上部に上透き(飲料成分が分離し、飲料の表面付近が透明化する現象)が生じる、更には沈殿物、リング(乳成分が飲料の表面に浮上し、酷い場合には容器壁面に付着、固化する現象)等が発生して商品価値が低下する、高分子特有の粘性が発現してフレーバーリリースが低下する等の各種問題を抱えていた。
特に、コーヒーや紅茶本来の深みのある味わい、乳感やコクを増強するためにコーヒー、紅茶含量や乳成分含量を増加させた場合や、UHT殺菌処理を行った場合などに顕著に発生する上透き、沈殿物やリング等を抑制することが非常に難しい。また、飲料の処方や用いるカラギナンの種類によっては、当該上透き及び沈殿の抑制を目的としてカラギナン含量を増加するとかえって凝集物が発生し、大きなフロックを形成してしまうなど非常に使用勝手が悪いものであった。
特許第3702176号公報 特許第3622039号公報
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、製造時にpH調整剤としての塩を実質的に使用せずとも、殺菌処理及び長期保存下における上透き、沈殿及びリング等の発生が有意に抑制され、品質保持及び安定性に優れるコーヒー飲料又は紅茶飲料を提供することを目的とする。本発明はまた、高い安定性を有しつつも香り立ちが良好で風味豊かな、乳成分含有コーヒー飲料又は紅茶飲料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のごとき課題を解決すべく鋭意研究した結果、μ(ミュー)成分成分)及びν(ニュー)成分を有するカラギナンといった、特定のカラギナンを用いることで、製造時にpH調整剤としての塩を実質的に使用せずとも、殺菌処理及び長期保存下における上透き、沈殿、リング等の発生が有意に抑制され、高い安定性及び良好な香り立ち、風味を兼ね備えた乳成分を含有するコーヒー飲料又は紅茶飲料を提供できることを見出し本発明に至った。
本発明は以下の態様を有する、乳成分含有コーヒー飲料又は紅茶飲料に関する;
項1.μ成分及びν成分を有するカラギナンを含有し、製造時にpH調整剤としての塩を実質的に使用しない、乳成分含有コーヒー飲料又は紅茶飲料。
項2.UHT殺菌処理により殺菌される、項1に記載の乳成分含有コーヒー飲料又は紅茶飲料。
項3.コーヒー飲料100g中におけるコーヒー含量が生豆換算で2.5g以上、かつ乳成分含量が牛乳換算で10質量%を超えるものである項1又は2に記載の乳成分含有コーヒー飲料。
項4.紅茶飲料100g中における紅茶含量が茶葉換算で0.2g以上、かつ乳成分含量が牛乳換算で10質量%を超えるものである項1又は2に記載の乳成分含有紅茶飲料。
製造時にpH調整剤としての塩を実質的に使用せずとも、殺菌処理及び長期保存下において上透き、沈殿、リング等の発生が有意に抑制され、品質保持及び安定性に優れる乳成分含有コーヒー飲料又は紅茶飲料を提供できる。本発明の飲料は、pH調整剤としての塩を実質的に使用しないため、コーヒー、紅茶本来の深みのある味わいや乳感、コクを有する。更には、本発明のコーヒー飲料又は紅茶飲料は、当該飲料の処方及び製造工程に制約を受けることなく、幅広い処方において高い安定性を有する。これにより、コーヒー、紅茶含量や乳成分含量を増加させた場合であっても沈殿の抑制効果に優れ、かつ風味の面においても極めて優れた品質を有する飲料を提供できる。
実験例1において、実施例1−3の乳成分含有コーヒー飲料を5℃で4週間保存した後の上透き及び沈殿の様子を示す写真である。 実験例1において、比較例1−1の乳成分含有コーヒー飲料を5℃で4週間保存した後の上透き及び沈殿の様子を示す写真である。 実験例2において、実施例2−2の乳成分含有コーヒー飲料を室温で2週間保存した後のリングの状態を示す写真である。 実験例2において、比較例2−1の乳成分含有コーヒー飲料を室温で2週間保存した後のリングの状態を示す写真である。 実験例9において、比較例9−1の乳成分含有コーヒー飲料を室温で4週間保存した後の、飲料成分の分離状態を示す写真である。
本発明の乳成分含有コーヒー又は紅茶飲料はμ成分及びν成分を有するカラギナンを含み、製造時にpH調整剤としての塩を実質的に使用しないことを特徴とする。
カラギナンは紅藻類海藻から抽出、精製される天然高分子であり、カラギナンの分子量は通常、100,000〜500,000である。D−ガラクトースと、3,6アンヒドロ−D−ガラクトースから構成される多糖類であるカラギナンの基本構造単位モノマーを下記(化1)に示した。カラギナンの種類は、この結合様式を変えることなく、硫酸基の位置、アンヒドロ糖の有無によって区別される(参照:特表2005−518463号公報)。各成分の基本構造について、(化2)に示した。
一般的に市場で流通しているカラギナンは、上記(化2)中、λ成分、ι成分及びκ成分を各々主成分とするλカラギナン、ιカラギナン及びκカラギナンである。
一方、本発明では上記(化2)で示す、μ成分及びν成分を有するカラギナンを用いることを特徴とする。μ成分及びν成分(化2)はそれぞれκ成分及びι成分の前駆体である。一般的に市場に流通しているκカラギナン及びιカラギナンは、各々μカラギナン及びνカラギナンをアルカリ処理して得られるカラギナンであり、通常、μ及びν成分をほとんど含まない。なお、本発明では、硫酸基含量が20〜40質量%のカラギナンを用いることが好ましい。
本発明では、好ましくはμ成分及びν成分を総量で8質量%以上、より好ましくは12質量%以上含有するカラギナンを用いる。μ成分及びν成分の上限は特に制限されないが、好ましくは50質量%である。μ成分及びν成分を有するカラギナン製剤として、「カラギニンHi−pHive(「Hi−pHive」はCPケルコ社の登録商標)」を商業上利用することが可能である。当該製品は、μ成分を2〜7質量%、ν成分を10〜17質量%含有するものである。なお、μ成分及びν成分を含有するカラギナンは、それ自体でゲルを形成しないという特徴を有している。
μ成分及びν成分以外のカラギナン成分は特に制限されない。例えば、κ成分、ι成分、λ成分が挙げられる。本発明で用いるμ成分及びν成分を有するカラギナンは、μ成分及びν成分以外の成分として、κ成分及び/又はι成分を含有していることが好ましい。
コーヒー飲料又は紅茶飲料中における、μ成分及びν成分を有するカラギナンの含量は、当該飲料のコーヒー含量、紅茶含量や乳含量等によって適宜調整できる。通常、0.001〜0.5質量%、好ましくは0.005〜0.3質量%、更に好ましくは0.01〜0.2質量%の範囲である。当該カラギナンの含量が0.001質量%を下回ると、殺菌処理及び長期保存下における上透き、沈殿やリング等の発生を十分に抑制できない場合があり、一方で0.5質量%を上回ると粘度が高くなり、工業的生産における作業性が低下したり、飲料の嗜好性が損なわれる場合がある。
特には、飲食品におけるμ成分含量が0.00002〜0.05質量%、好ましくは0.0001〜0.03質量%、更に好ましくは0.0002〜0.02質量%;ν成分含量が0.0001〜0.1質量%、好ましくは0.0005〜0.07質量%、更に好ましくは0.001〜0.05質量%となるように、μ成分及びν成分を有するカラギナンを添加することが望ましい。
本発明が対象とする「コーヒー飲料」は、コーヒー分を原料として使用し、加熱殺菌工程を経て製造される飲料製品のことをいう。製品の種類は特に限定されないが、1977年に認定された「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」の定義である「コーヒー」「コーヒー飲料」「コーヒー入り清涼飲料」が主に挙げられる。また、コーヒー分を原料とした飲料においても、乳固形分が3.0質量%以上のものは「飲用乳の表示に関する公正競争規約」の適用を受け、「乳飲料」として取り扱われるが、これは、本発明におけるコーヒー飲料に含まれるものとする。
本発明が対象とする「紅茶飲料」は、茶樹の芽葉を十分に自家酵素発酵させたものから抽出または浸出したもの(これらを濃縮又は粉末化したものを希釈したものを含む)を原料として使用し、加熱殺菌工程を経て製造される飲料製品のことをいう。
本発明において、「製造時にpH調整剤としての塩を実質的に使用しない」とは、飲料製造時に使用されるpH調整剤としての塩の添加量が0.03質量%以下、好ましくは0.01質量%以下であることをいう。「pH調整剤としての塩」とは、飲料のpHを調整するために用いられる塩であり、具体的には、重曹(炭酸水素ナトリウム)、クエン酸ナトリウム(クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム)、リン酸ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム)又はリン酸カリウム(リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム)、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、乳酸ナトリウム等を例示できる。
pH調整剤としての塩を実質的に使用しない場合には、乳成分含有コーヒー飲料、紅茶飲料の安定性が格段に低下するが、本発明によれば、飲料製造時にpH調整剤としての塩を実質的に使用しないにも関わらず、高い品質安定性を有する。これにより、高い安定性及び良好な香り立ち、風味を兼ね備えたコーヒー飲料又は紅茶飲料を提供することが可能となった。
本発明の乳成分含有コーヒー飲料又は紅茶飲料のpHは通常5.6〜6.7、好ましくは5.8〜6.5、更に好ましくは6.1〜6.4の範囲である。なお、本発明において飲料のpHは、殺菌前における飲料のpHを示す。
本発明のコーヒー飲料又は紅茶飲料は乳成分を含有する。
本発明で用いる乳成分は、特に制限されないが、例えば、乳又はその加工品(クリーム、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、練乳、バター、その他の加工乳)等が挙げられる。
飲料中における乳成分の含量が牛乳換算で10質量%を超える場合、特には20質量%以上まで増加した場合は、pH調整剤としての塩を実質的に使用しなければ、上透き、沈殿やリング等の発生が顕著となり、品質が安定した飲料を提供することが難しい。かかるところ、本発明のコーヒー飲料又は紅茶飲料は、乳成分含量が牛乳換算で10質量%を超える場合、特には20質量%以上まで増加した場合であっても、殺菌時又は長期保存時に生じる上透き、沈殿やリング等が顕著に抑制された、極めて安定性の高い飲料である。牛乳換算における乳成分含量の上限は特に制限がないが、60質量%を例示できる。
乳成分の含量は、タンパク質含量を基準に、牛乳の含量に換算される。例えば、乳成分として全脂粉乳を用いる場合は、全脂粉乳中に含まれるタンパク質と、牛乳中に含まれるタンパク質の含量が同等となるように、牛乳の含量を調整できる。通常、牛乳のタンパク質含量は3〜4質量%、全脂粉乳のタンパク質含量は24〜26質量%、脱脂粉乳のタンパク質含量は33〜35質量%である。
本発明の乳成分含有コーヒー飲料に用いられるコーヒーは、豆の種類、品質、焙煎方法、焙煎度合等によって特に制限されない。コーヒー豆から直接抽出されるものの他、インスタントコーヒー、コーヒーエキス等を用いても良い。豆の種類としてはアラビカ種、ロブスタ種、リベリア種等を例示できる。
本発明のコーヒー飲料中におけるコーヒー含量は特に制限されないが、例えばコーヒー飲料100g中におけるコーヒー含量が生豆換算で1〜15g、好ましくは2.5〜10gである。コーヒー本来の深みのある味わい等を増強するためには、コーヒー飲料100gにおけるコーヒー含量を生豆換算で好ましくは5g以上、より好ましくは6g以上、更に好ましくは7g以上まで増加させることが望ましい。一方で、生豆含量を増加させることで、上透き、沈殿やリング等の発生が顕著となり、安定性に優れたコーヒー飲料を提供することが非常に難しい。かかるところ、本発明では、特定のカラギナン(μ成分及びν成分を有するカラギナン)を用いることで、コーヒー飲料100g中におけるコーヒー含量が、生豆換算で7g以上であっても顕著に上透き、沈殿やリング等の発生が抑制された、安定性の高いコーヒー飲料を提供できる。
本発明の乳成分含有紅茶飲料に用いられる紅茶は、茶葉の種類、品質等によって特に制限されない。茶葉から直接抽出されるものの他、インスタント紅茶、紅茶エキス等を用いても良い。茶葉の種類としては、アッサム、ダージリン、ニルギリ、ウバ、ヌワラエリア、キャンディ、ディンブラ産等を例示できる。
本発明の紅茶飲料中における紅茶含量は特に制限されないが、例えば、紅茶飲料100g中における茶葉換算で0.1〜10g、好ましくは0.2〜4gである。紅茶本来の深みのある味わい等を増強するためには、紅茶飲料100g中における紅茶含量を茶葉換算で2g以上まで増加させることが好ましい。一方で、茶葉換算で2g以上まで増加させると、上透き、沈殿やリング等が顕著に発生し、安定性に優れた紅茶飲料を提供することが非常に難しい。かかるところ、本発明では、特定のカラギナン(μ成分及びν成分を有するカラギナン)を用いることで、紅茶飲料100g中における紅茶含量が茶葉換算で2g以上であっても、顕著に上透き、沈殿やリング等の発生が抑制された、安定性の高い紅茶飲料を提供できる。
本発明の乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法に特に制限はないが、例えば以下の方法を例示できる;
製法I:焙煎したコーヒー豆に5〜15倍量の水(80〜100℃)を加えて濾過抽出を行い、コーヒー抽出液を得る。別途、イオン交換水に本発明のカラギナン(μ成分及びν成分を有するカラギナン)、必要に応じて乳化剤、糖類等を加えて60〜80℃に加温して乳化剤溶液を調製する。乳化剤溶液に乳成分、コーヒー抽出液を加えた原料液を調製する。原料液を60〜80℃に加温し、均質化処理、殺菌処理を行ってコーヒー飲料を調製する。
製法II:焙煎したコーヒー豆に5〜15倍量の水(80〜100℃)を加えて濾過抽出を行い、コーヒー抽出液を得る。別途、イオン交換水に本発明のカラギナン(μ成分及びν成分を有するカラギナン)、乳成分、必要に応じて乳化剤、糖類等を加えて60〜80℃に加温して乳化剤溶液を調製する。乳化剤溶液にコーヒー抽出液を加えた原料液を調製する。原料液を60〜80℃に加温し、均質化処理、殺菌処理を行ってコーヒー飲料を調製する。
本発明の乳成分を含有する紅茶飲料の製造方法に特に制限はないが、例えば以下の方法を例示できる;
茶葉に10〜30倍量の水(80〜100℃)を加えて濾過抽出を行い、紅茶抽出液を得る。別途、イオン交換水に本発明のカラギナン(μ成分及びν成分を有するカラギナン)、必要に応じて乳化剤、糖類等を加えて60〜80℃に加温して乳化剤溶液を調製する。乳化剤溶液に乳成分、紅茶抽出液等を加えた原料液を調製する。原料液を60〜80℃に加温し、均質化処理、殺菌処理を行って紅茶飲料を調製する。
コーヒー飲料又は紅茶飲料の均質化処理条件としては、ホモジナイザーによる均質化(例.10〜20MPa)を例示できる。殺菌処理条件としては、例えば120〜145℃で1〜60秒間のUHT殺菌が挙げられる。特にUHT殺菌処理は、レトルト殺菌と比較して殺菌による風味劣化が少ないという利点を有する。一方で、UHT殺菌はレトルト殺菌と比較してより高温で殺菌する為、熱によるたん白質の凝集や乳化皮膜の破壊によって沈殿やリングの発生頻度が増大するが、本発明ではUHT殺菌を行った場合であっても、高い安定性を有するコーヒー飲料、及び紅茶飲料を提供できる。
本発明の乳成分含有コーヒー飲料又は紅茶飲料は、その他本発明の影響を阻害しない範囲において乳化剤を併用することができる。例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル)、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、サポニン、ポリソルベート等である。好ましくはショ糖脂肪酸エステルである。
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の「部」「%」は、それぞれ「質量部」「質量%」、文中「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
実験例1 乳成分含有コーヒー飲料の調製(1)
表1及び表2の処方に従って乳成分含有コーヒー飲料を調製した。
(コーヒー抽出液の調製)
粗挽きしたコーヒー豆(アラビカ種、L値20)に6倍量の熱湯を加え、濾過を行なった。得られた抽出液をコーヒー抽出液とした(コーヒー抽出液のBrix4.9〜5.3度、pH5.3程度)。
(乳成分含有コーヒー飲料の調製)
イオン交換水を撹拌しながら砂糖及びカラギナンの粉体混合物を添加して75℃にて10分間撹拌し、冷却した。次いで牛乳を添加し、撹拌しながらコーヒー抽出液を添加した。全量が100質量部となるようにイオン交換水にて全量を補正後、75℃にてホモゲナイザーにて均質化処理(一段階目:10MPa、二段階目:5MPa)を行い、129℃8秒の条件でUHT殺菌処理後、無菌的にペットボトル容器に充填して乳成分含有コーヒー飲料を調製した(コーヒー飲料のpH6.3〜6.4)。
(乳成分含有コーヒー飲料の安定性評価)
調製した乳成分含有コーヒー飲料について保存安定性評価を行なった。
乳成分含有コーヒー飲料を調製後、5℃で4週間保存した際の上透き及び沈殿の評価を表2に示す。
注1)「カラギニンHi−pHive*」(μ成分を2〜7質量%、ν成分を10〜17質量%含有するカラギナン100質量%製剤)を使用。本製剤は、μ成分及びν成分以外に、κ成分及びι成分を含有する。
<上透きの評価基準>
5℃で4週間保存経過後に、飲料の成分が分離し、飲料上部の液面付近が透明化することを上透きとして評価し、上透きの多いものから、++++(極めて多い)>+++(かなり多い)>++(多い)>+(少ない)>±(僅かに存在)>−(なし)の順で評価した。
<沈殿物の評価基準>
5℃で4週間保存経過後、容器底部に沈んでいる固形物の量を沈殿物として評価し、沈殿量が多いものから++++(極めて多い)>+++(かなり多い)>++(多い)>+(少ない)>±(僅かに存在)>−(なし)の順で評価した。
表2から明らかなように、μ成分及びν成分を有するカラギナンを用いたコーヒー飲料(実施例1−1〜1−3)は、製造時にpH調整剤としての塩を添加せず、かつUHT殺菌により殺菌処理されているにも関わらず、顕著にコーヒー飲料の上透き及び沈殿が抑制されていた。また、いずれもコーヒー本来の豊かな風味、酸味や香り立ちを有するコーヒー飲料であった(実施例1−1〜1−3)。
更に、実施例1−1〜1−3の乳成分含有コーヒー飲料を常温で2週間保存した後の状態も、上透きがなく、かついずれも生じた沈殿は僅か若しくは沈殿が生じず、本発明の乳成分含有コーヒー飲料の安定性が高いことが確認できた。
実施例1−3の乳成分含有コーヒー飲料を5℃で4週間保存した後の上透き及び沈殿の様子を図1に、比較例1−1の乳成分含有コーヒー飲料を5℃で4週間保存した後の上透き及び沈殿の様子を図2に示す。図から明らかなように、比較例1−1の乳成分含有コーヒー飲料は飲料成分が不均一となり、飲料底部が白くなり、一方で飲料上部はコーヒー成分が浮上し暗い色調となり、さらに飲料表面(飲み口付近)が透明化してしまっている。さらに、飲料容器底部に沈殿物が固化、付着し、商品価値が著しく低いものとなっている。一方、実施例1−3の乳成分含有コーヒー飲料は飲料全体が均一であり上透きもなく、かつ沈殿物もなく商品価値の高いコーヒー飲料であることが分かる。
実験例2 乳成分含有コーヒー飲料の調製(2)
実験例1で用いた乳成分含有コーヒー飲料100g中におけるコーヒー含量を生豆換算で8.8gに増加した以外は、実験例1と同様にして表1及び表3の処方に従って乳成分含有コーヒー飲料を調製した(コーヒー飲料のpH6.2〜6.3)。
<リングの評価基準>
表3に示す保存期間経過後、飲料表面に浮上した乳成分をリングとして評価し、リングが厚いものから++++(極めて多い)>+++(かなり多い)>++(多い)>+(少ない)>±(僅かに存在)>−(なし)の順で評価した。
カラギナン無添加区の比較例2−1は5℃で4週間保存した場合に上透き及び沈殿の発生が顕著となり、室温(28〜30℃)で2週間保存した場合は、上透き現象は生じなかったものの、沈殿及びリングが発生し、特にリングが顕著に発生した(非常に分厚いリングが発生した)。
μ成分及びν成分を有するカラギナンを用いた乳成分含有コーヒー飲料(実施例2−1〜2−3)は製造時にpH調整剤としての塩を添加していないにも関わらず、5℃4週間保存時に生じる上透き及び沈殿の発生、並びに室温2週間保存時におけるリング及び沈殿の発生が顕著に抑制されていた。実施例2−1及び2−2の乳成分含有コーヒー飲料はリングが発生していたが、その厚さは比較例2−1と比較して非常に薄いものとなった。実施例2−2の乳成分含有コーヒー飲料を室温で2週間保存した後のリングの状態を図3に、比較例2−1の乳成分コーヒー飲料を室温で2週間保存した後のリングの状態を図4に示した。図3及び4を比較して明らかなように、実施例2−2の乳成分含有コーヒー飲料は、リングが顕著に抑制されていることが見て取れる。更には実施例2−1及び2−2の乳成分コーヒー飲料において発生したリングは、軽く振とうするのみで容易に再分散可能であり、商品価値に何ら問題のないものであった。加えて、実施例2−1〜2−3の飲料はいずれもコーヒー本来の豊かな風味、酸味や香り立ちを有するコーヒー飲料であった。
乳成分含有コーヒー飲料に一般的に用いられているιカラギナンを用いた場合は、カラギナン含量が0.05質量%では十分に上透き及び沈殿等を抑制することができず(比較例2−2)、カラギナン含量を0.1質量%まで増加すると全体的に凝集し、飲料成分の分離・沈殿が酷く、飲料として適さない状態になった。
実験例3 乳成分含有コーヒー飲料の調製(3)
実験例2で用いた乳成分含有コーヒー飲料(実施例2−1〜2−3)のコーヒー含量を、コーヒー飲料100g中における生豆換算で10.8質量%に増加した以外は、実験例1と同様にして表1の処方に従って乳成分含有コーヒー飲料(pH6.1)を調製した(実施例3−1〜3−3)。
調製された乳成分含有コーヒー飲料(実施例3−1〜3−3)は、乳成分が牛乳換算で28質量%、かつコーヒー含量が生豆換算で10.8質量%であるにも関わらず、5℃で4週間保存経過後及び室温で2週間保存経過後も、十分に飲料の沈殿及びリングの発生が抑制されていた。更に、いずれの飲料も、コーヒー本来の豊かな風味、酸味や香り立ちを有しており、非常に商品価値の高いものであった。
実験例4 乳成分含有コーヒー飲料の調製(4)
表4及び表5に示す処方に従って、乳成分含有コーヒー飲料を調製した。
(コーヒー抽出液の調製)
粗挽きしたコーヒー豆(アラビカ種、L値20)に6倍量の熱湯を加え、濾過を行なった。得られた抽出液をコーヒー抽出液とした(コーヒー抽出液のBrix5.0度、pH5.3)。
(乳成分含有コーヒー飲料の調製)
イオン交換水を撹拌しながら砂糖及びカラギナンの粉体混合物を添加して75℃にて10分間撹拌した。次いで牛乳を添加し、撹拌しながらコーヒー抽出液を添加した。全量が100質量部となるようにイオン交換水にて全量を補正後、75℃にてホモゲナイザーにて均質化処理(一段階目:10MPa、二段階目:5MPa)を行い、129℃8秒の条件でUHT殺菌処理後、無菌的にペットボトル容器に充填して乳成分含有コーヒー飲料を調製した(コーヒー飲料のpH6.1)。
(乳成分含有コーヒー飲料の安定性評価)
調製した乳成分含有コーヒー飲料について保存安定性評価を行なった。
乳成分含有コーヒー飲料を調製後、5℃で4週間保存した場合のリング、上透き及び沈殿の評価を表5に示す。
カラギナン無添加区の比較例4−1は、分厚いリングが発生し、かつ飲料全体の分離が進んで全体的に飲料が透明化する現象が生じていた。更には沈殿物が容器底部に付着していた。一方、μ成分及びν成分を有するカラギナンを用いた実施例4−1の飲料は、重曹を使用しないにも関わらず、リング、上透き及び沈殿の発生が顕著に抑制されていた。カラギナン無添加区の比較例4−1を室温で2週間保存した場合には、乳化状態が不安定化した。具体的には、脂肪分の大半が飲料上部に浮上し、厚いリングを形成し、それ以外の部分はブラックコーヒーのような透明感のある状態となり、商品価値がないものであった。かかるところ、μ成分及びν成分を有するカラギナンを用いた実施例4−1の飲料は、製造時にpH調整剤としての塩を添加していないにも関わらず、リング、上透き及び沈殿の発生が顕著に抑制されていた。更には、コーヒー本来の豊かな風味、酸味や香り立ちを有しており、商品価値が非常に高いものであった。
実験例5 乳成分含有紅茶飲料の調製(1)
表6の処方に基づき、乳成分を含有する紅茶飲料(アップルミルクティー)を調製した。
(紅茶抽出液の調製)
茶葉(ウバ)に20倍量の熱湯を加え、2分間浸漬抽出し、濾過を行なった。得られた抽出液を紅茶抽出液とした(紅茶抽出液のBrix1.8〜2.0、pH4.9)。
(乳成分含有紅茶飲料の調製)
イオン交換水を撹拌しながら砂糖、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル)及びカラギナンの粉体混合物を添加し、75℃にて10分間撹拌し、冷却した。次いで牛乳を添加し、撹拌しながら紅茶抽出液、果汁及びクエン酸を添加した。香料を添加し、全量が100質量部となるようにイオン交換水にて全量を補正後、75℃にてホモゲナイザーにて均質化処理(一段階目:10MPa、二段階目:5MPa)を行った。140℃30秒の条件でUHT殺菌処理後、無菌的にペットボトル容器に充填して乳成分含有紅茶飲料(実施例5−1)を調製した(紅茶飲料のpH6.1)。
μ成分及びν成分を有するカラギナンを用いた実施例5−1の紅茶飲料は、製造時にpH調整剤としての塩を添加していないにも関わらず、殺菌直後の凝集および保存時のリング、上透き及び沈殿の発生が顕著に抑制されていた。更には、紅茶本来の豊かな風味、酸味や香り立ちを有していた。更には、従来のミルクティーと比較して酸味が強く、フルーツの風味が立つ、従来なかったフレーバーミルクティーとなり、商品価値が非常に高いものであった。
実験例6 乳成分含有紅茶飲料の調製(2)
表7の処方に基づき、乳成分を含有する紅茶飲料(バナナミルクティー)を調製した。
(紅茶抽出液の調製)
茶葉(ウバ)に20倍量の熱湯を加え、2分間浸漬抽出し、濾過を行なった。得られた抽出液を紅茶抽出液とした(紅茶抽出液のBrix1.8、pH4.9)。
(乳成分含有紅茶飲料の調製)
果糖ぶどう糖液糖、イオン交換水を撹拌しながら砂糖及びカラギナンの粉体混合物を添加し、75℃にて10分間撹拌し、冷却した。次いで牛乳を添加し、撹拌しながら紅茶抽出液、果汁、及びクエン酸を添加した。香料を添加し、全量が100質量部となるようにイオン交換水にて全量を補正後、75℃にてホモゲナイザーにて均質化処理(一段階目:10MPa、二段階目:5MPa)を行った。129℃8秒の条件でUHT殺菌処理後、無菌的にペットボトル容器に充填して乳成分含有紅茶飲料(実施例6−1)を調製した(紅茶飲料のpH6.1)。
μ成分及びν成分を有するカラギナンを用いた実施例6−1の紅茶飲料は、製造時にpH調整剤としての塩を添加していないにも関わらず、殺菌直後の凝集および保存時のリング、上透き及び沈殿の発生が顕著に抑制されていた。更には、紅茶本来の豊かな風味、酸味や香り立ちを有していた。
実験例7 乳成分含有コーヒー飲料の調製(5)
表8及び表9に示す処方に従って、乳成分含有コーヒー飲料を調製した。
(コーヒー抽出液の調製)
粗挽きしたコーヒー豆(アラビカ種、L値18)に6倍量の熱湯を加え、濾過を行なった。得られた抽出液をコーヒー抽出液とした(コーヒー抽出液のBrix5.5度、pH5.3)。
(乳成分含有コーヒー飲料の調製)
イオン交換水を撹拌しながら砂糖及びカラギナンの粉体混合物を添加して75℃にて10分間撹拌した。次いで牛乳を添加し、撹拌しながらコーヒー抽出液を添加した。全量が100質量部となるようにイオン交換水にて全量を補正後、75℃でホモゲナイザーにて均質化処理(一段階目:10MPa、二段階目:5MPa)を行った。129℃8秒の条件でUHT殺菌処理後、無菌的にペットボトル容器に充填して乳成分含有コーヒー飲料を調製した(コーヒー飲料のpH6.2〜6.3)。
(乳成分含有コーヒー飲料の安定性評価)
調製した乳成分含有コーヒー飲料について保存安定性評価を行なった。
乳成分含有コーヒー飲料を調製後、5℃で4週間保存した場合、及び室温(25℃)で2週間保存した場合のリング、上透き及び沈殿の評価を表9に示す。
カラギナン無添加区の比較例7−1はリング、上透きが発生し、特に沈殿が多数発生し、商品価値が著しく低いものであった。一方、μ成分及びν成分を有するカラギナンを用いた乳成分含有コーヒー飲料(実施例7−1〜7−3)は製造時にpH調整剤としての塩を添加していないにも関わらず、安定性が高い飲料であった。特に、5℃4週間保存時に生じる上透き及び沈殿の発生、並びに室温2週間保存時における沈殿の発生が顕著に抑制されていた。実施例7−1〜7−3の乳成分含有コーヒー飲料はリングが発生していたが、その厚さは比較例7−1と比較して薄く、容器を軽く振とうするのみで容易に再分散でき、商品価値に何ら問題のないものであった。更に、実施例7−1〜7−3の飲料はいずれもコーヒー本来の豊かな風味、酸味や香り立ちを有するコーヒー飲料であった。
カラギナンとしてκカラギナンを用いた飲料(比較例7−1及び7−2)は、調製直後は凝集物が形成していないように確認されたが、保存日数の経過と共に凝集物が形成、増加し、5℃保存で4週間経過時及び室温保存で2週間経過時には飲料全体に渡って凝集物が生じ、飲料成分の分離、沈殿が酷く、飲料として適さなかった。
実験例8 乳成分含有コーヒー飲料の調製(6)
表10に示す処方に従って、乳成分含有コーヒー飲料を調製した。
(コーヒー抽出液の調製)
粗挽きしたコーヒー豆(アラビカ種、L値20)に6倍量の熱湯を加え、濾過を行なった。得られた抽出液をコーヒー抽出液とした(コーヒー抽出液のBrix5.0度、pH5.3)。
(乳成分含有コーヒー飲料の調製)
イオン交換水を撹拌しながら砂糖及びカラギナンの粉体混合物を添加して75℃にて10分間撹拌した。次いで全脂粉乳又は脱脂粉乳を添加し、撹拌しながらコーヒー抽出液を添加した。全量が100質量部となるようにイオン交換水にて全量を補正後、75℃でホモゲナイザーにて均質化処理(一段階目:10MPa、二段階目:5MPa)を行った。129℃8秒の条件でUHT殺菌処理後、無菌的にペットボトル容器に充填して乳成分含有コーヒー飲料を調製した(コーヒー飲料のpH6.1)。なお、実施例8−1〜8−6及び比較例8−1〜8−2の飲料におけるコーヒー含量は、飲料100g中7.2g(生豆換算)であり、乳成分含量は牛乳換算で20質量%である。
(乳成分含有コーヒー飲料の安定性評価)
調製した乳成分含有コーヒー飲料について保存安定性評価を行なった。
乳成分含有コーヒー飲料を調製後、5℃で4週間保存した場合、及び室温(25℃)で2週間保存した場合のリング、上透き及び沈殿の評価を表11に示す。
乳成分として全脂粉乳及び脱脂粉乳を用いた場合も、乳成分として牛乳を用いた場合と同様に、μ成分及びν成分を有するカラギナンを用いることで、リングや沈殿の発生を有意に抑制できた。更に、実施例8−1〜8−6の飲料はいずれもコーヒー本来の豊かな風味、酸味や香り立ちを有するコーヒー飲料であった。
実験例9 乳成分含有コーヒー飲料の調製(7)
表12に示す処方に従って、乳成分含有コーヒー飲料を調製した。
(コーヒー抽出液の調製)
粗挽きしたコーヒー豆(アラビカ種、L値20)に6倍量の熱湯を加え、濾過を行なった。得られた抽出液をコーヒー抽出液とした(コーヒー抽出液のBrix4.4度、pH5.2)。
(乳成分含有コーヒー飲料の調製)
イオン交換水を撹拌しながら砂糖及びカラギナンの粉体混合物を添加して75℃にて10分間撹拌した。次いで牛乳を添加し、撹拌しながらコーヒー抽出液及びコーヒー濃縮液を添加した。全量が100質量部となるようにイオン交換水にて全量を補正後、75℃でホモゲナイザーにて均質化処理(一段階目:10MPa、二段階目:5MPa)を行った。129℃8秒の条件でUHT殺菌処理後、無菌的にペットボトル容器に充填して乳成分含有コーヒー飲料を調製した(コーヒー飲料のpH5.7)。
(乳成分含有コーヒー飲料の安定性評価)
調製した乳成分含有コーヒー飲料について保存安定性評価を行なった。
乳成分含有コーヒー飲料を調製後、5℃で4週間保存した場合、及び室温(20℃程度)で2週間保存した場合のリング、上透き及び沈殿の評価を表13に示す。
カラギナン不使用の比較例9−1は、飲料成分が完全に分離し、商品価値のないものであった(図5)。かかるところ、μ成分及びν成分を有するカラギナンを用いた実施例9−1のコーヒー飲料は、pH調整剤としての塩を使用しないにも関わらず、リング、上透き及び沈殿が顕著に抑制され、安定性が高いコーヒー飲料であった。更には、実施例9−1の飲料は、コーヒー本来の豊かな風味、酸味や香り立ちを有するコーヒー飲料であった。
実験例10 乳成分含有コーヒー飲料の調製(8)
表14及び表15に示す処方に従って、乳成分含有コーヒー飲料を調製した。
(コーヒー抽出液の調製)
粗挽きしたコーヒー豆(アラビカ種、L値18)に6倍量の熱湯を加え、濾過を行なった。得られた抽出液をコーヒー抽出液とした(コーヒー抽出液のBrix5.8度、pH5.3)。
(乳成分含有コーヒー飲料の調製)
イオン交換水を撹拌しながら砂糖、カラギナン及び乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル)の粉体混合物を添加して75℃にて10分間撹拌した。次いで牛乳を添加し、撹拌しながらコーヒー抽出液を添加した。全量が100質量部となるようにイオン交換水にて全量を補正後、75℃でホモゲナイザーにて均質化処理(一段階目:10MPa、二段階目:5MPa)を行った。129℃8秒の条件でUHT殺菌処理後、無菌的にペットボトル容器に充填して乳成分含有コーヒー飲料を調製した(コーヒー飲料のpH6.3〜6.4、飲料におけるコーヒー含量は、飲料100g中7.5g(生豆換算))。
(乳成分含有コーヒー飲料の安定性評価)
調製した乳成分含有コーヒー飲料について保存安定性評価を行なった。
乳成分含有コーヒー飲料を調製後、5℃で4週間保存した場合、及び室温(25℃)で2週間保存した場合のリング、上透き及び沈殿の評価を表15に示す。
実施例10−1〜10−3の乳成分含有コーヒー飲料は、牛乳含量が40質量%と高く、更にpH調整剤としての塩を添加していないにも関わらず、保存時に生じるリング、上透き及び沈殿が顕著に抑制されていた。また、実施例10−1〜10−3の飲料はいずれもコーヒー本来の豊かな風味、酸味や香り立ちを有するコーヒー飲料であった。
実験例11 乳成分含有紅茶飲料の調製(3)
表16及び表17の処方に基づき、乳成分を含有する紅茶飲料(ミルクティー)を調製した。
(紅茶抽出液の調製)
茶葉(ウバ)に20倍量の熱湯を加え、2分間浸漬抽出し、濾過を行なった。得られた抽出液を紅茶抽出液とした(紅茶抽出液のBrix3.0、pH4.9)。
(乳成分含有紅茶飲料の調製)
イオン交換水を撹拌しながら砂糖、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル)及びカラギナンの粉体混合物を添加し、75℃にて10分間撹拌し、冷却した。次いで牛乳を添加し、撹拌しながら紅茶抽出液を添加した。全量が100質量部となるようにイオン交換水にて全量を補正後、75℃にてホモゲナイザーにて均質化処理(一段階目:10MPa、二段階目:5MPa)を行った。129℃8秒の条件でUHT殺菌処理後、無菌的にペットボトル容器に充填して乳成分含有紅茶飲料(実施例11−1)を調製した(紅茶飲料のpH6.1〜6.2)。
μ成分及びν成分を有するカラギナンを用いた実施例11−1〜11−3の紅茶飲料は、製造時にpH調整剤としての塩を添加していないにも関わらず、殺菌直後の凝集および保存時のリング、上透き及び沈殿の発生が有意に抑制されていた。更には、紅茶本来の豊かな風味、酸味や香り立ちを有していた。


Claims (4)

  1. μ成分及びν成分を有するカラギナンを含有し、製造時にpH調整剤としての塩を実質的に使用しない、pH6.1〜6.7の乳成分含有コーヒー飲料又は紅茶飲料。
  2. UHT殺菌処理により殺菌される、請求項1に記載の乳成分含有コーヒー飲料又は紅茶飲料。
  3. コーヒー飲料100g中におけるコーヒー含量が生豆換算で2.5g以上、かつ乳成分含量が牛乳換算で10質量%を超えるものである請求項1又は2に記載の乳成分含有コーヒー飲料。
  4. 紅茶飲料100g中における紅茶含量が茶葉換算で0.2g以上、かつ乳成分含量が牛乳換算で10質量%を超えるものである請求項1又は2に記載の乳成分含有紅茶飲料。
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