図1を参照して、この発明の一実施例である分岐サドル継手10は、ポリエチレンおよびポリプロピレン等の熱融着可能な合成樹脂によって形成される水道配水管の本管100から分岐管102を取り出す際に、本管100の外周面に電気融着接合されるEF(エレクトロフュージョン)サドル継手である。
なお、分岐サドル継手10は、基本的には水道配水管を不断水分岐するための継手であるが、不断水分岐に用いることに限定されず、たとえば、新規に敷設する水道配水管の断水状態での分岐や、下水管やガス管などの分岐に用いることも可能である。以下では、本管100の管径が100mmである水道配水管に対して分岐サドル継手10を適用する場合を想定して説明するが、分岐サドル継手10の各部の大きさは、接続する本管100および分岐管102の管径などに応じて適宜変更されることに留意されたい。
先ず、図1−図3を参照して、分岐サドル継手10の全体構成について説明する。図1−図3に示すように、分岐サドル継手10は、本管100と同種の熱融着可能な合成樹脂によって一体的に形成される、サドル部12、分岐部本体18および分岐管接続部20などを備える。この実施例では、サドル部12、分岐部本体18および分岐管接続部20のそれぞれは、ポリエチレンによって形成される。
サドル部12は、本管100の外径曲率と同じ内径曲率を有する半円筒状の板状体であり、その中央部には、平面視略真円形の分岐孔14が形成される。サドル部12の軸方向の長さは、たとえば160mmであり、その厚さは、たとえば10mmである。
サドル部12の裏面側、すなわち本管100との接合面側には、分岐孔14を中心にして渦巻き状または葛折り状などの任意の形状に配置された電熱線16が設けられる。電熱線16の両端部は、サドル部12の表面から突出して形成される電源接続端子(図示せず)に接続されており、この電源接続端子を通電コントローラに接続して電熱線16に電流を流すことによって、サドル部12と本管100との接合面が溶融される。
分岐孔14の周縁部には、サドル部12の径方向外側(つまり、図1でいう上側)に向けて立ち上がる短管状の分岐部本体18が一体的に形成される。分岐部本体18の内径は、たとえば55mmである。分岐部本体18の外面には、側方に突出する短管状の分岐管接続部20が一体的に形成され、この分岐管接続部20に継手などを介して分岐管102が接続される。
また、分岐部本体18の外面上部には、雄ねじ部22が形成され、この雄ねじ部22よりも上方には、ゴム輪24が装着される。そして、分岐部本体18の上端部には、分岐部本体18の上端開口26を塞ぐキャップ28が装着される。
キャップ28は、側壁30および天壁32を含み、ポリエチレン等の合成樹脂によって有頂円筒状に形成される。キャップ28の側壁30の内面下部には、分岐部本体18の雄ねじ部22と螺合する雌ねじ部34が形成される。また、側壁30の内面上部には、雌ねじ部34と上下に連続する非ねじ部36が形成される。非ねじ部36は、ねじが切られていない所謂ストレート部分であり、雌ねじ部34よりも内側に突き出して形成され、詳細は後に説明するように、分岐部本体18へ装着したキャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、分岐部本体18のゴム輪24に押し当てられる。すなわち、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときには、キャップ28内面と分岐部本体18外面との間隙がゴム輪24を介して密封され、これによって分岐部本体18の上端開口26からの漏水が止められる。さらに、キャップ28の側壁30の外面には、周方向に所定の間隔を隔てて、上下方向に延びる複数のリブ38が形成される。キャップ28の側壁30の上下方向の長さ(高さ寸法)は、たとえば45mmであり、その外径は、たとえば75mmである。
また、分岐部本体18の外面の周方向の一部には、略直方体形状の突出部40が一体的に形成される。突出部40は、分岐管接続部20から雄ねじ部22の下端にかけての高さ範囲内において、分岐部本体18の外面から径方向外側に向けて突き出して設けられる。
突出部40は、キャップ28のねじ締め作業を行う際に、キャップ28の下端とともにキャップ28のねじ締め状態を示す指標ないし基準となるベース部(表示手段)として機能する。詳細は後に説明するように、キャップ28が所定のねじ締め状態(つまりキャップ28の締め付けが十分な状態)に達したことが、この突出部40の上端(上面)とキャップ28の下端(側壁30の下面)との位置関係によって示される。
すなわち、突出部40を分岐管接続部20の管頂と一体的に形成しており、突出部40の上端の高さ位置は、突出部40の上下方向の長さによって決まるので、この実施例では、突出部40の上下方向の長さを所定の条件に基づいて定めることによって、分岐部本体18の雄ねじ部22に螺合させたキャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の下端が突出部40の上端に接触するようにしている。突出部40の上下方向の長さは、たとえば22mm−24mmに設定される。また、突出部40は、上述したキャップ28の側壁30の外面よりも外側に突き出すように形成されており、その水平方向の長さ(つまり、分岐部本体18の外面からの突出長さ)は、たとえば12mm−15mmである。
さらに、分岐部本体18の内面には、その全体に亘って雌ねじ部42が形成される。そして、分岐部本体18の内部には、雌ねじ部42を介して穿孔部品44が軸方向(分岐部本体18の軸方向)に移動可能に設けられる。
穿孔部品44としては、公知の構成のものを適宜用いることができる。ここでは、穿孔部品44の一例について簡単に説明しておく。穿孔部品44は、金属製のカッタ本体46および合成樹脂製のねじ本体48を含み、カッタ本体46およびねじ本体48はインサート成形等によって一体化される。カッタ本体46は、ステンレス鋼(たとえばSUS304)等の金属によって円筒状に形成され、その下端部は下方に向かって鋭利となる形状に形成される。また、カッタ本体46の上部は、ねじ本体48の壁内部に埋め込まれている。ねじ本体48は、ポリアセタール(POM)等の合成樹脂によって円筒状に形成され、その外面には、分岐サドル継手10の分岐部本体18の内面に形成されるねじ部が形成される。そして、ねじ本体48の上端部には、回転工具と係合する六角穴などの回転工具係合部(図示せず)が形成される。
以下、図1および図4を参照して、このような分岐サドル継手10を用いて、本管100から分岐を取り出す方法について説明する。
本管100から分岐を取り出す際には、先ず、本管100の所望位置に分岐サドル継手10を載置し、クランプ等の固定具(図示せず)を用いて、本管100外面とサドル部12内面とが密着するように固定する。そして、サドル部12内に埋設した電熱線16に通電して発熱させ、本管100外面とサドル部12内面とを融着接合する。また、分岐管接続部20には、分岐管102を接続する。
次に、回動工具(図示せず)の端部を穿孔部品44の回動工具係合部に挿し込んで、回転工具によってねじ本体48を回転させることにより、穿孔部品44を下方向に螺進させ、カッタ本体46によって本管100を穿孔していく。カッタ本体46が本管100の内面まで到達した後は、回動工具によってネジ本体48を逆回転させることにより、穿孔部品44を上方向に螺進させる。
その後、穿孔部品44を分岐部本体18の最上部まで移動させると、分岐孔14、分岐部本体18および分岐管接続部20を介して本管100内と分岐管102内とが連通し、本管100内を流れる流体が分岐管102内に供給される。最後に、分岐部本体20の上端部にキャップ28を装着して、キャップ28のねじ締め作業(締め込み作業)を行う。
キャップ28のねじ締め作業を行うときには、図4(a)に示すように、キャップ28の側壁30の内面下部の雌ねじ部34を分岐部本体18の外面上部の雄ねじ部22に螺合させる。そして、キャップ28の下端と突出部40の上端との間隔をたとえば目視や指先で触るなどして確認しながら、キャップ28を下方向に螺進させ、キャップ28の下端が突出部40の上端に接触するまでキャップ28を下降させる。
図4(b)に示すように、キャップ28の下端が突出部40の上端に接触した状態、つまりキャップ28が所定のねじ締め状態に達すると、キャップ28と分岐部本体18との間隙がゴム輪24を介して密封される。これによって、分岐部本体18の上端開口26からの漏水が確実に止められるので、キャップ28のねじ締め作業を終了する。
ここで、キャップ28の下端と突出部40の上端とが接触しているか否かは、薄板状のバーコードカード(図示せず)をこの間に差し込むことによって確認するとよい。バーコードカードは、たとえば、厚み0.5mm、縦54mm、横85mmの矩形薄板状に形成され、1つの分岐サドル継手10につき1枚のバーコードカードが添付される。そして、キャップ28の下端と突出部40の上端との間に、バーコードカードを差し込むことができれば、キャップ28の下端と突出部40の上端とが接触していないと判断し、バーコードカードを差し込むことができなければ、キャップ28の下端と突出部40の上端とが接触していると判断するとよい。本管100に対する分岐サドル継手10の施工は、掘削溝内で行われるので、キャップ28の下端と突出部40の上端とが接触しているか否かを横からの目視で確認するのは困難な場合があるが、バーコードカードを用いることによって、これを容易に確認できる。
なお、バーコードカードの代わりに、定規などの適宜の薄板状部材を用いてキャップ28の下端と突出部40の上端とが接触しているか否かを確認してもよい。また、このようなバーコードカード等の薄板状部材による接触状態の確認方法は、後述する他の実施例における部材同士の接触状態の確認作業に適宜用いることができる。たとえば、後述するリング部材50や外嵌部材64の突出部74の上端とキャップ28の下端との接触状態の確認に用いることもできる。
以上のように、この実施例では、キャップ28のねじ締め作業を行うときに、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したこと、つまりキャップ28の締め込みが完了したことが、キャップ28の下端と突出部(ベース部)40の上端との位置関係によって示される。
すなわち、キャップ28のねじ締め作業を行うときに、分岐部本体18の外面から外側に突き出して設けられた突出部(ベース部)40の上端の高さ位置を基準として、キャップ28の下端の高さ位置を確認しながらキャップ28のねじ締め作業を行うことにより、分岐部本体18の上端開口26の止水性が確保されたことを容易に確認することが可能である。
したがって、この実施例によれば、キャップ28のねじ締めを適切に行うことができ、上述した特許文献1のように、曖昧な基準でキャップのねじ締めを行う場合と比較して、分岐部本体18の上端開口26からの漏水を確実に防止することができる。
なお、上述の実施例では、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の下端と突出部40の上端とが接触するようにしたが、これに限定される必要はない。
キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを、あくまでキャップ28の下端および突出部(ベース部)40の高さ位置に対応付けて示すことができるのであればよく、図5に示すように、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の下端と突出部40の上端とが一定間隔Lを隔てた位置関係になるようにしてもよい。
図5に示す実施例では、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときにキャップ28の下端と突出部40の上端とが隔てる間隔Lが、たとえば5mm−10mmに設定され、好適には、作業者等が指先を差し込むことができる程度の大きさにされる。この場合には、作業者等はキャップ28の下端と突出部40の上端との間隔をたとえば目視や指先で触るなどして確認しながらキャップ28のねじ締めを行うようにし、キャップ28の下端と突出部40の上端とが間隔Lを隔てた位置関係になるまでキャップ28を下降させるようにする。
図5に示す実施例においても、突出部(ベース部)40の上端の高さ位置を基準として、キャップ28の下端の高さ位置を確認しながらキャップ28のねじ締め作業を行うことにより、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したこと、つまりキャップの締め込みが完了して分岐部本体18の上端開口26の止水性が確保されたことを容易に確認することができる。
さらに、図5に示す実施例では、キャップ28が所定のねじ締め状態に達した後でも、キャップ28をさらにねじ締めする(増し締めを行う)ことができるので、たとえばキャップ28をその下端が突出部40の上端に接触するまで増し締めするようにすれば、その増し締めした距離にガタ(寸法公差)を吸収させることが可能である。したがって、寸法公差などにあまり影響を受けずに止水性を確保することが可能になり、厳密な寸法精度を要求せずに分岐サドル継手10を製造できるようになる。
また、上述の各実施例では、突出部(ベース部)40を分岐部本体18の外面の周方向の一部から外側に突き出すようにしたが、これに限定される必要はない。分岐部本体18の外面にその全周に亘って外側に突き出す形状の突出部40を形成するようにしてもよい。
さらにまた、必ずしもベース部を分岐部本体18の外面および分岐管接続部20の管頂と一体的に形成する必要はない。
図6に示すこの発明の他の実施例の分岐サドル継手10では、分岐部本体18とは別体で設けたリング部材50がベース部(表示手段)として用いられる。以下、図6に示す実施例について説明するが、図1に示す実施例と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
図6および図7を参照して、リング部材50は、鉄やSUSなどの金属やポリエチレンなどの合成樹脂などからなり、中央に開口52を有するドーナツリング状に形成される。リング部材50の内径(つまり、開口52の径)は、分岐部本体18の外径よりもやや大きく設定され、たとえば58mmである。また、リング部材50の外径は、キャップ28の外径よりも大きく設定され、たとえば100mmである。
リング部材50は、分岐部本体18の外面に外嵌し、かつその下端を分岐管接続部20の管頂(上端)に係止させることによって、分岐管接続部20から雄ねじ部22の下端にかけての高さ範囲内において、分岐部本体18の外面よりも外側に突き出すように設けられる。したがって、リング部材50は、上述した突出部40と同様に、キャップ28のねじ締め作業を行う際に、キャップ28の下端とともにキャップ28のねじ締め状態を示す指標となるベース部として機能し、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことが、このリング部材50の上端(上面)とキャップ28の下端との位置関係によって示される。
すなわち、図6に示す実施例では、リング部材50の下端を分岐管接続部20の管頂に係止させて分岐管接続部20の管頂と等しい高さに保持するようにしているので、リング部材50の上端の高さ位置は、リング部材50の上下方向の長さによって決まる。そして、リング部材50の上下方向の長さを所定の条件に基づいて定めることによって、分岐部本体18の雄ねじ部22に螺合させたキャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の下端がリング部材50の上端に接触するようにしている。リング部材50の上下方向の長さは、たとえば22mm−24mmに設定される。
このような分岐サドル継手10を用いて、本管100から分岐を取り出す際には、先ず、上述と同じ要領で、分岐サドル継手10のサドル部12内面と本管100外面とを融着接合するとともに、本管100を穿孔し、本管100内と分岐管102内とを連通させる。
次に、図8(a)に示すように、リング部材50の開口52に分岐部本体18を挿通させることによって、分岐部本体18にリング部材50を外嵌させ、そのリング部材50を分岐管接続部20の管頂に係止させてその高さ位置に保持する。
それから、図8(b)に示すように、分岐部本体20の上端部にキャップ28を装着して、キャップ28のねじ締め作業を行う。すなわち、キャップ28の側壁30の内面下部の雌ねじ部34を分岐部本体18の外面上部の雄ねじ部22に螺合させる。そして、キャップ28の下端とリング部材50の上端との間隔をたとえば目視や指先で触るなどして確認しながら、キャップ28を下方向に螺進させ、キャップ28の下端がリング部材50の上端に接触するまでキャップ28を下降させる。
図8(c)に示すように、キャップ28の下端がリング部材50の上端に接触する状態、つまりキャップ28が所定のねじ締め状態に達すると、キャップ28と分岐部本体18との間隙がゴム輪24を介して密封される。これによって、分岐部本体18の上端開口26の止水性が確保されるので、キャップ28のねじ締め作業を終了する。
図6に示す実施例においても、図1に示す実施例と同様に、キャップ28のねじ締め作業を行うときに、リング部材(ベース部)50の上端の高さ位置を基準として、キャップ28の下端の高さ位置を確認しながらキャップ28のねじ締め作業を行うことにより、分岐部本体18の上端開口26の止水性が確保されたことを容易に確認することが可能である。
その上、分岐部本体18とは別体で設けたリング部材50をベース部として利用するようにしているので、分岐部本体18を特殊な形状に成形する必要がない。すなわち、分岐部本体18を成形するために新しい成形金型を製作する必要がなく、従来の成形金型を使用することができるので、その分だけ製造コストを低減させることができる。
さらにまた、この分岐サドル継手10をたとえば不断水分岐する場合にのみ使用するなど、作業条件に応じて分岐サドル継手の使い分けをすることも可能である。
なお、図6に示す実施例においても、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の下端とリング部材50の上端とが一定間隔を隔てた位置関係になるようにしてもよい。
さらに、図9に示すこの発明のさらに他の実施例の分岐サドル継手10では、キャップ28に切り欠き部54を形成するようにしている。以下、図9に示す実施例について説明するが、図6に示す実施例と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
図9および図10を参照して、キャップ28の周方向の一部には、切り欠き部54が形成される。切り欠き部54は、キャップ28の下端から上方向に延びるようにキャップ28の下端部を矩形に切り欠いた形状をしており、その上下方向の長さは、たとえば15mmであり、その幅方向の長さは、たとえば10mmである。
また、図示は省略しているが、分岐部本体18の雄ねじ部22は、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときの高さ位置に関連付けした所定の高さ範囲が他の部分とは異なった色に着色されており、目視によって判別し易いようにされている。
さらに、リング部材50の上下方向の長さ(つまり、リング部材50の上端の高さ位置)は、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の下端とリング部材50の上端とが一定間隔L(図12参照)を隔てた位置関係になるように、所定の条件に基づいて定められる。図9に示す実施例では、リング部材50の上下方向の長さが、15mm−20mmに設定され、間隔Lが、5mm−10mmに設定される。
このような分岐サドル継手10では、図11(a)および(b)に示すように、分岐部本体18の上端部にキャップ28を装着すると、切り欠き部54を介して分岐部本体18の外面上部の雄ねじ部22が外部に露出する。このため、切り欠き部54を介して雄ねじ部22を目視し、切り欠き部54と雄ねじ部22を着色した範囲とを照らし合わせることによって、キャップ28が所定のねじ締め状態に達するまでに必要なねじ締め回数(残りねじ締め回数)を把握することが可能である。ただし、指先で触るなどして残りねじ締め回数を把握するようにしてもよい。
そして、キャップ28のねじ締め作業を行うときには、作業者等は、キャップ28の下端とリング部材50の上端との間隔をたとえば目視や指先で触るなどして確認するとともに、切り欠き部54を介して把握した残りねじ締め回数を目安にキャップ28のねじ締めを行うとよい。そして、図12(a)および(b)に示すように、キャップ28の下端とリング部材50の上端とが間隔Lを隔てた位置関係になるまで、つまりキャップ28が所定のねじ締め状態に達するまでキャップ28を下降させることによって、キャップ28のねじ締め作業を終了する。
図9に示す実施例によれば、残りねじ締め回数を目安にキャップ28のねじ締め作業を行うことができるので、キャップ28のねじ締めをより適切に行うことができる。
なお、図9に示す実施例においても、分岐部本体18に外嵌させたリング部材50をベース部として用いる代わりに、分岐部本体18の外面と一体的に形成した突出部40をベース部として用いるようにしてもよい。リング部材50に代えて、分岐部本体18の外面と一体的に形成した突出部40をベース部として用いてもよいことは、これ以降の他の実施例においても同様である。
また、キャップ28に切り欠き部54を形成する代わりに、キャップ28の材料としてポリカーボネートやアクリルや透明塩化ビニルのような光透過性材料(透明樹脂)を採用するようにしても、図9に示す実施例と同じように、残りねじ締め回数を目安にキャップ28のねじ締め作業を行うことが可能であるので、キャップ28のねじ締めをより適切に行うことができる。
さらにまた、上述の各実施例では、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを、キャップ28の下端とベース部40,50の上端との位置関係によって表示したが、これに加えて(または代えて)、他の表示手段を用いてキャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを作業者等に示すようにしてもよい。
たとえば、図13に示すこの発明のさらに他の実施例の分岐サドル継手10では、キャップ28の下端に第1突起部56を形成するとともに、リング部材50の上端に第2突起部58を形成し、それらを相互に干渉させるようにしている。以下、図13に示す実施例について説明するが、図6に示す実施例と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
図13および図14を参照して、キャップ28の側壁30の下端には、周方向に一定間隔で並ぶ複数の第1突起部56が一体的に形成される。第1突起部56は、キャップ28の下面から下方に突出し、下方に向かって鋭利となる円錐ないし四角錐形状を有する。第1突起部56の先端角は、たとえば30−60°であり、その上下方向の長さは、たとえば5mmである。
また、リング部材50の上面には、放射状に並ぶ複数の第2突起部58が一体的に形成される。第2突起部58は、リング部材50の開口52から外縁にかけて直線状に延びる突条であり、リング部材50の上面から上方向に突出する。第2突起部58は、たとえば断面三角形状を有しており、その先端角は、たとえば60°であり、その上下方向の長さは、たとえば2mmである。
さらに、リング部材50の上下方向の長さ(つまり、リング部材50の上端の高さ位置)は、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の下端つまり第1突起部56の下端と、リング部材50の上端つまり第2突起部58の上端とが接触するように、所定の条件に基づいて定められる。
このような分岐サドル継手10では、キャップ28が所定のねじ締め状態に達すると、キャップ28の第1突起部56の下端がリング部材50の第2突起部58の上端に接触する。このとき、キャップ28の第1突起部56の下端を先鋭化させている(つまり、リング部材50の第2突起部58との接触部分の厚みを薄くしている)ことにより、第1突起部56の下端と第2突起部58の上端との接触によってはキャップ28の回転が係止されない。すなわち、キャップ28の第1突起部56の下端が第2突起部58の上端と接触したときに、第1突起部56の下端が弾性変形するので、第1突起部56の下端を一定間隔に並んだ各第2突起部58の上端に衝突させながら、キャップ28をさらにねじ締めすることが可能である。
そして、第1突起部56と第2突起部58とが接触した状態でキャップ28をねじ締めすると、キャップ28の第1突起部56の下端が各第2突起部58の上端に衝突したときに弾性変形し、かつ各第2突起部58の上端を乗り越えたときに復元する(元の形状に復元しようとする)ことによって、キャップ28の回転に合わせて細かい振動などの節度感(クリック感)が発生したり、「カタカタ」といった衝突音が発生したりする。したがって、そのような節度感や衝突音などの通知信号によって、作業者等はキャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを知ることができる。
図13に示す実施例では、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことが、キャップ28の下端とリング部材50の上端との位置関係によって示されるとともに(またはそれに代えて)、キャップ28の第1突起部56の下端がリング部材50の第2突起部58の上端と衝突して変形することによって発生した、節度感や衝突音などの通知信号によって通知される。
したがって、節度感や音などの通知信号が通知されるまでキャップ28のねじ締め作業を行うようにすることで、キャップ28のねじ締めをより適切に行うことができる。
さらに、たとえば目視できないような暗い作業条件であったとしても、作業者等は節度感や音などの通知信号を指標としてキャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを知ることが可能であるので、作業条件などにあまり左右されずに作業を行うことができる。
なお、図13に示す実施例では、キャップ28の第1突起部56の下端を第2突起部58の上端との接触によって弾性変形させたが、これに限定される必要はなく、第2突起部58の上端を先鋭化させて、第2突起部58の上端をキャップ28の第1突起部56の下端との接触によって弾性変形させるようにしてもよいし、第1突起部56の下端および第2突起部58の上端を共に先鋭化させて、それらを互いの接触によって共に弾性変形させるようにしてもよい。
また、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを通知する(明示的に示す)表示手段は、必ずしも節度感や音などの通知信号である必要はない。これに代えて、他の表示手段によって作業者等に明示的に示すようにしてもよい。
たとえば、図示は省略するが、第1突起部56および第2突起部58の一方を他方よりも軟質な材料によって形成しておき、それらが接触した後キャップ28をさらにねじ締めすることによって、一方を他方に喰い込ませるようにしてもよい。この場合にも、一方が他方に喰い込むことによって生じた形状変化を目視または指先で触るなどして確認する、または喰い込みによるアンカ効果でキャップ28をねじ締めすることができなくなることによって、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを知ることができる。
また、たとえば、図15に示すこの発明のさらに他の実施例の分岐サドル継手10のように、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の外面よりも外側に突き出すインジケータ部60をキャップ28に形成することもできる。以下、図15に示す実施例について説明するが、図6に示す実施例と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
図15および図16を参照して、キャップ28の下側には、周方向に一定間隔を隔てて複数(この実施例では4つ)のインジケータ部60が形成される。インジケータ部60は、その内面側(キャップ28の中央側)から押圧されることによって外面側(キャップ28の外縁側)に変形可能とされる。たとえば、インジケータ部60は、キャップ28の側面30の下面からやや外側に傾いて下方に突き出す半楕円形の板状に形成される。そして、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことが、このインジケータ部60が外向きに変形する(倒れる)ことによって示される。インジケータ部60は、外向きに変形したときに側壁30の外面よりも外側に突き出す大きさに設定されており、その上下方向の長さは、たとえば10mmである。
さらに、リング部材50の上下方向の長さ(つまり、リング部材50の上端の高さ位置)は、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28のインジケータ部60がリング部材50に接触し、かつリング部材50からの反力を受けたインジケータ部62が外向きに変形するように、所定の条件に基づいて定められる。リング部材50の上下方向の長さは、たとえば20mm−25mmに設定される。
このような分岐サドル継手10では、キャップ28のねじ締め作業を行うときに、図17(a)に示すように、キャップ28のインジケータ部60の下端とリング部材50の上端とが接触した後、さらにねじ締めを行うと、リング部材50からの反力によってインジケータ部60に対して外向きの押圧力が作用する。
そして、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときには、図17(b)に示すように、リング部材50から受けた押圧力によってインジケータ部60が外向きに倒れるように変形し、インジケータ部60がキャップ28の外面よりも外側に突き出す。作業者等は、キャップ28の外面よりも外側にインジケータ部60が突き出したことを目視または指先で触るなどして確認することによって、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを知ることができる。
図15に示す実施例では、キャップ28のねじ締め作業を行うときに、インジケータ部60が変形してキャップ28の外面よりも外側に突き出すことによって、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことが明示的に示されるので、より適切にキャップ28をねじ締めすることが可能である。
さらに、たとえば上方からしか目視できないような作業条件であったとしても、図18に示すように、作業者等はキャップ28の外面よりも外側に突き出したインジケータ部60を指標としてキャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを知ることが可能であるので、作業条件などにあまり左右されずに作業を行うことができる。
なお、図15に示す実施例では、キャップ28の下側にインジケータ部60を形成したが、これに限定される必要はなく、インジケータ部の数や形状、設置する位置などは適宜変更するようにしてもよい。
たとえば、図19に示すこの発明のさらに他の実施例の分岐サドル継手10のように、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の外面よりも外側に突き出すインジケータ部62をリング部材50の上側に形成することもできる。以下、図19に示す実施例について説明するが、図15に示す実施例と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
図19に示すように、リング部材50は、分岐サドル継手10のキャップ28と同程度かそれよりも軟質な素材からなり、ドーナツリング状に形成される。リング部材50の外径は、キャップ28の外径と等しいかそれよりもやや小さくなるように設定され、たとえば70mmである。
リング部材50の上面には、上方向に向けて突き出すインジケータ部62が形成される。インジケータ部62は、その内面側(リング部材50の中央側)から押圧力を受けることによって外面側(リング部材50の外縁側)に変形可能である。たとえば、インジケータ部62は、周方向の全周に亘るリング状に形成され、外側面62bがリング部材50の外面から連続するように立ち上がり、かつ内側面62aがリング部材50の上面から外向きに傾斜して立ち上がる断面三角形状を有している。そして、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことが、このインジケータ部60が外向きに変形する(倒れる)ことによって示される。インジケータ部62は、外向きに変形したときにキャップ28の側壁30の外面よりも外側に突き出す大きさに設定されており、その上下方向の長さは、たとえば5mmである。
さらに、リング部材50の上下方向の長さ(つまり、リング部材50の上端の高さ位置)は、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の下端がインジケータ部62に接触し、かつキャップ28の推進力を受けたインジケータ部62が外向きに変形するように、所定の条件に基づいて定められている。リング部材50の上下方向の長さは、たとえば20mm−25mmに設定される。
このような分岐サドル継手10では、キャップ28のねじ締め作業を行うときに、図19(a)に示すように、キャップ28の側壁30の下端とリング部材50の上端つまりインジケータ部62の上端とが接触した後、さらにねじ締めを行うと、キャップ28が下方向に螺進する推進力によってインジケータ部62の内側面62aに対して外向きの押圧力が作用する。
そして、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときには、図19(b)に示すように、リング部材50から受けた押圧力によってインジケータ部62が外向きに倒れるように変形し、インジケータ部62がキャップ28の側壁30の外面よりも外側に突き出す。作業者等は、キャップ28の側壁30の外面よりも外側にインジケータ部62が突き出したことを目視または指先で触るなどして確認することによって、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを知ることができる。
図19に示す実施例においても、図15に示す実施例と同じように、インジケータ部62が変形してキャップ28の外面よりも外側に突き出すことによって、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことが明示的に示される。このため、より適切にキャップ28をねじ締めすることが可能であり、また、作業条件などにあまり左右されずに作業を行うことが可能になる。
なお、図13に示す実施例では、キャップ28の第1突起部56や第2突起部58をインジケータ部として機能させ、そのうちの一方を変形させかつ他方と協働させることによって節度感や音などの通知信号を発生させるようにした。また、図15および図18に示す実施例では、インジケータ部60,62を変形させてキャップ28の側壁30の外面よりも外側に突き出すようにした。しかしながら、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときのインジケータ部の挙動はこれに限定される必要はない。
たとえば、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、変形したインジケータ部が外向きに折れるようにしてもよい。このとき、インジケータ部が折れることによってキャップ28やリング部材(ベース部)50から分断されるようにしてもよい。また、たとえば、キャップ28に形成したインジケータ部と、ベース部に形成したインジケータ部とがそれぞれ変形し、それらが互いに干渉して所定の挙動を示すようにしてもよい。
要は、インジケータ部は、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに変形して所定の挙動を示すことによって、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを作業者等に通知する(明示的に示す)ことができるものであればよい。
ところで、上述の各実施例ではいずれも、分岐部本体18の上端部に直接的にキャップ28を装着するようにしたが、これに限定される必要はない。
図20に示すこの発明のさらに他の実施例の分岐サドル継手10のように、分岐部本体18の上端部に外嵌部材64を介してキャップ28が装着することもできる。つまり、分岐部本体18の外面に形成されるねじ部は、別部材によって形成されていても構わない。以下、図20に示す実施例について説明するが、上述の各実施例と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
図20および図21を参照して、外嵌部材64は、鉄やSUSなどの金属やポリエチレンなどの合成樹脂などからなり、中央に開口68が形成された円筒形状を有する本体66を含む。本体66の内面には、その全長に亘って雌ねじ部70が形成され、この雌ねじ部70が分岐部本体18の外面上部に形成された雄ねじ部22と螺合する。本体66の内径は、分岐部本体18の外径と等しくなるように設定され、たとえば55mmである。
また、本体66の外面上部には、雄ねじ部72が形成され、この雄ねじ部72がキャップ28の側壁30の内面下部に形成された雌ねじ部34と螺合する。そして、外嵌部材64の外面の雄ねじ部72に螺合させたキャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の非ねじ部36が分岐部本体18のゴム輪24に押し当てられる。これにより、キャップ28と分岐部本体18との間隙がゴム輪24を介して密封され、分岐部本体18の上端開口26の止水性が確保される。
さらに、本体66の外面下部には、その全周に亘って本体66の外面から突き出す鍔状の突出部74が一体的に形成される。突出部74の外径は、キャップ28の側壁30の外径よりも大きくなるように設定され、たとえば80mmである。突出部74は、キャップ28のねじ締め作業を行う際に、キャップ28の下端とともにキャップ28のねじ締め状態を示す基準となるベース部(表示手段)として機能する。そして、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことが、この突出部74の上面(上端)とキャップ28の下端との位置関係によって示される。
すなわち、図20に示す実施例では、外嵌部材64を分岐部本体18の雄ねじ部22に螺合させる高さ位置と突出部74の上下方向の長さとを(つまり、突出部74の高さ位置を)所定の条件に基づいて定めることによって、外嵌部材64の外面の雄ねじ部72に螺合させたキャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の下端が突出部74の上端に接触するようにされる。外嵌部材64は、分岐管接続部20からたとえば20mmの高さ位置に固定され、突出部74の上下方向の長さは、たとえば3mm−7mmに設定される。
このような分岐サドル継手10を用いて、本管100から分岐を取り出す際には、先ず、上述と同じ要領で、分岐サドル継手10のサドル部12内面と本管100外面とを融着接合するとともに、本管100を穿孔し、本管100内と分岐管102内とを連通させる。
それから、図22(a)に示すように、分岐部本体18の上端部に外嵌部材64を装着する。すなわち、開口68に分岐部本体18を挿通させるとともに、雌ねじ部70を分岐部本体18の雄ねじ部22に螺合させることによって、外嵌部材64を分岐部本体18の上端部の所定位置に固定する。
続いて、図22(b)に示すように、キャップ28の雌ねじ部34を外嵌部材64の雄ねじ部72に螺合させる。そして、キャップ28の下端と外嵌部材64の突出部74の上端との間隔をたとえば目視や指先で触るなどして確認しながら、キャップ28のねじ締め作業を行い、キャップ28の下端が外嵌部材64の突出部74の上端に接触するまでキャップ28を下降させる。
図22(c)に示すように、キャップ28の下端が外嵌部材64の突出部74の上端に接触する状態、つまりキャップ28が所定のねじ締め状態に達すると、キャップ28と分岐部本体18との間隙がゴム輪24を介して密封される。これによって、分岐部本体18の上端開口26の止水性が確保されるので、キャップ28のねじ締め作業を終了する。
図20に示す実施例においても、分岐部本体18の外面よりも外側に突き出した設けられた外嵌部材64の突出部74の上端の高さ位置を基準として、キャップ28の下端の高さ位置を確認しながらキャップ28のねじ締め作業を行うことにより、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを容易に確認することができる。したがって、キャップ28のねじ締めを適切に行うことができる。
さらに、図20に示す実施例によれば、分岐部本体18とは別部材として成形した外嵌部材64を介してキャップ28を装着するようにしているので、外嵌部材64を分岐部本体18と異なった素材によって形成することが可能である。したがって、たとえば外嵌部材64をポリエチレンなどの合成樹脂ではなくそれよりも摩擦係数の小さい金属などによって形成するようにすれば、キャップ28をねじ締めするときに必要な力(回転トルク)が低減されるので、その分だけ作業性を向上させることができる。
なお、図20に示す実施例においても、必ずしもキャップ28が所定のねじ締め状態に達したときにキャップ28の下端が外嵌部材64の突出部74の上端に接触するように突出部74の高さ位置を定める必要はなく、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の下端と外嵌部材64の突出部74の上端とが一定間隔を隔てた位置関係になるようにしてもよい。
さらに、図20に示す実施例においても、外嵌部材64の本体66に突出部74を一体的に形成する代わりに、本体66の外面下部に係止部を形成し、その係止部に別体であるリング部材を係止させるようにしてもよい。この場合には、係止部に係止させたリング部材が、キャップ28の下端とともにキャップ28のねじ締め状態を示す基準となるベース部として機能する。
さらにまた、キャップ28の側壁30の下側や外嵌部材64の突出部74(ないし係止部に係止したリング部材)の上側にインジケータ部を形成し、そのインジケータ部の変形時の挙動によって、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを作業者等に通知できるようにしてもよい。
さらに、上述の各実施例ではいずれも、分岐部本体18(または外嵌部材64)にキャップ28を装着するときに、作業者等の手作業によってキャップ28のねじ締め作業を行うことを前提として説明したが、図23に示すような専用のキャップ装着治具76を利用してのねじ締め作業を行うようにしてもよい。
図23および図24を参照して、キャップ装着治具76は、鉄やSUSなどの金属からなり、装着部78および2つの把持部80を備える。装着部78は、キャップ28の最大外径(つまり、リブ38の外径)に合わせた内径を有するドーナツ板状に形成され、その内縁に周方向に所定間隔を隔てた爪部78aを有する。そして、キャップ装着治具76を使用してキャップ28をねじ締めする(回転させる)ときには、キャップ28のリブ38を爪部78aに係止させることによって、キャップ装着治具76の回転力をキャップ28に作用させる。
また、装着部78の外側には、装着部78を挟んで対向するように2つの把持部80が設けられる。把持部80は、円筒状に形成され、装着部78の径方向に延びる。把持部80は、溶接などの適宜の方法で装着部78の外縁に固着される。
さらに、装着部78の上方には、係止部82が設けられる。係止部82は、下向きに開いた略コ字形状の板状に形成され、溶接などの適宜の方法で装着部78の上面に固着される。そして、キャップ装着治具76を使用してキャップ28をねじ締めするときには、キャップ28に装着した装着部78をキャップ28の側壁30の高さ範囲内に保持できるように、キャップ28の天壁32に係止部82が係止される。
このようなキャップ装着治具76を用いてキャップ28のねじ締め作業を行う場合には、先ず、キャップ装着治具76をキャップ28に装着する。すなわち、キャップ28の隣り合うリブ38どうしの間に爪部78aを差し込むようにして装着部78をキャップ28の側壁30に外嵌させるとともに、係止部82をキャップ28の天壁32上に載置する。
次に、キャップ28のねじ締め作業を行う。すなわち、把持部80のそれぞれを両手で把持し、キャップ装着治具76を回転させる。すると、キャップ装着治具78に与えた回転力がキャップ28に作用して、キャップ28が分岐部本体18の雄ねじ部22(または外嵌部材64の雄ねじ部72)に螺合されて、下方向に螺進する。
このようにすれば、キャップ28を装着する作業をより容易に行うことができる。特に、不断水分岐を行う場合などには、キャップ28をねじ締めするためにより強い回転力が必要となるため、キャップ装着治具76を用いてキャップ28のねじ締め作業を行うようにすれば、作業性が向上する。
さらに、上述の各実施例ではいずれも、分岐部本体の外面よりも外側に突き出して設けられるベース部40,50,74をキャップ28のねじ締め状態を示す基準として利用したが、これに限定される必要はない。キャップ28の側壁30を下方に延出させて、そのキャップ28の下端とともに分岐管接続部20の管頂(上端)をベース部としてキャップ28のねじ締め状態を示す基準として利用するようにしてもよい。
また、必ずしもキャップ28のねじ締め状態を示す基準としてキャップ28の下端の高さ位置を利用する必要もなく、キャップ28の他の部位を基準としてもよい。
なお、キャップ28の下端および分岐管接続部20の上端の高さ位置を指標としてキャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを確認する場合には、キャップ28の下端と分岐管接続部20の管頂との正確な間隔を判断するために、図25に示すような補助治具84を使用してキャップ28のねじ締め作業を行うようにしてもよい。
図25および図26を参照して、補助治具84は、矩形の板状に形成される本体86を含み、本体86の下部には、分岐管接続部20の外形に沿う半円形状に形成された切り欠き部88が形成される。補助治具84は、その切り欠き部88に分岐管接続部20を沿わせることによって、分岐サドル継手10に対して固定的に配置される。そして、補助治具84の本体86の上下方向の長さは、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに本体86の上端(上面)にキャップ28の下端が接触するように所定の値に定められる。本体86の上下方向の長さは、たとえば22mm−24mmである。
このような補助治具84を用いてキャップ28のねじ締め作業を行う場合には、切り欠き部88に分岐管接続部20の外面を沿わせるようにして補助治具84を分岐管接続部20上に載置して、補助治具84の本体86を分岐管接続部20とキャップ28との間に配置する。そして、補助治具84を用いて、キャップ28の下端と分岐管接続部20の上端との間隔を確認しながら、キャップ28のねじ締め作業を行い、図26に示すように、キャップ28の下端と補助治具84の本体86の上端(上面)とが接触するまでキャップ28を下降させる。
なお、補助治具は必ずしもその本体を分岐管接続部20とキャップ28との間に配置するものである必要はなく、図27に示すように、キャップ28の天壁32上に配置するものであってよい。
図27および図28を参照して、補助治具90は、全体として略L字状に形成され、上下方向に延びる四角柱形状の第1本体92と、第1本体92の上端から直角方向に延びる四角柱形状の第2本体96とを含む。また、第1本体92の下端部には、分岐管接続部20の外形に沿うように湾曲する形状の切り欠き部94が形成される。補助治具90は、第2本体96をキャップ28の天壁32上に載置することによって、分岐サドル継手10に対して固定的に配置される。また、第1本体92の上下方向の長さは、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに切り欠き部94に分岐管接続部20が嵌まるように、所定の値に定められる。第1本体92の上下方向の長さは、たとえば65mmである。
このような補助治具90を用いてキャップ28のねじ締め作業を行う場合には、補助治具90の第2本体96をキャップ28の天壁32上に載置して、第1本体92を分岐管接続部20の上方に配置する。そして、キャップ28の下端と分岐管接続部20の上端との間隔を補助治具90を用いて確認しながら、キャップ28のねじ締め作業を行い、図28に示すように、第1本体92の切り欠き部94と分岐管接続部20とが接触するまでキャップ28を下降させる。
このように、図25の補助治具84や図27の補助治具90を指標として、下降するキャップ28の下端の高さ位置を確認しながらねじ締め作業を行うことにより、作業者等は、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを正確に判断できる。したがって、上述の各実施例と同様に、作業者等の裁量によって曖昧な基準でキャップのねじ締めを行う場合と比較して、キャップ28のねじ締めを適切に行うことができる。
さらに、このような補助治具84,90は、従来の分岐サドル継手と組み合わせて使用することができるので、余分なコストを必要とせず、しかも、何度でも利用することができるので、経済性に優れる。
さらにまた、上述の各実施例ではいずれも、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したことをキャップ28の下端の高さ位置に対応付けて示したり、インジケータ部56,58,60,62の挙動によって示したりしたが、それらに加えて、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときの回転向きを示す表示部98を設けるようにしてもよい。
図29に示すように、表示部98は、たとえば、丸印や矢印などで示される目印であって、シールを張り付けたり直接印字したりすること等によって、キャップ28の天壁32上面や側壁30外面などの外部から視認し易い位置に設けられる。そして、たとえば表示部98の周方向位置(向き)を分岐管接続部20の向きに合わせることによって、キャップ28が所定のねじ締め状態であることが示される。したがって、作業者は、表示部98を参考にしてキャップ28のねじ締め作業を行うことによって、キャップ28の締め込み不足や過剰の締め込みを起こすことなく、より適切にキャップ28を分岐部本体18に装着できる。
ただし、表示部98の周方向位置は、目視での確認だけでなく、触感で確認できるようにしてもよい。図示は省略するが、たとえば、キャップ28の側壁30に設けられる複数のリブ38の内の1つを、その他のリブ38の形状と違う形状にしておき、これを表示部98として利用してもよい。具体的には、1つのリブ38の太さを他のものと違う太さに変更する、或いは、1つのリブ38の外面に細溝(縦筋や横筋など)や小突起を形成したり、角部を面取り加工したりするなどして、表示部98として利用するリブ38と他のリブ38とを触感で区別できるようにしておくとよい。また、リブ38とは別に、キャップ28の天壁32上面や側壁30外面などに触感で認識できる突起等を設けてこれを表示部98としてもよい。このように、表示部98の位置を触感で確認できるようにすることによって、表示部98を視認し難い場合にも、適切に対応できる。
また、表示部98の位置を分岐管接続部20の向きに合わせる代わりに、ベース部(突出部40、リング部材50および外嵌部材64の突出部74)などに対して、目印、突起または溝などの第2表示部(図示せず)を設けておき、この第2表示部の位置に表示部98の位置を合わせることによって、キャップ28が所定のねじ締め状態であることを示してもよい。
さらに、図示は省略するが、表示部98は必ずしもキャップ28が所定のねじ締め状態に達したときの回転向きをピンポイントで(単点で)示すものである必要はなく、キャップ28によって止水性が確保される回転範囲を示すものであってもよい。この場合には、一例として、キャップ28の側壁30に設けられるリブ38の内の所定範囲に含まれるリブ38の形状を、所定範囲外のリブ38の形状と違う形状にしておき、所定範囲内のリブ38を表示部98として利用するとよい。
また、上述の各実施例では、キャップ28が所定のねじ締め状態に達したとき、つまりキャップ28の締め込み作業が終了したときに、キャップ28の天壁32下面と分岐部本体18の上端との間に所定間隔の隙間を設けるようにしたが、これに限定されない。キャップ28が所定のねじ締め状態に達したときに、キャップ28の天壁32下面と分岐部本体18の上端とを接触ないし密着させるようにすることもできる。これによって、分岐部本体18の上端開口26からの漏水をより確実に止めることができる。
この際、キャップ28の下端とベース部40,50,74の上端との接触によってキャップ28が所定のねじ締め状態に達したことを示す場合には、キャップ28の下端とベース部40,50,74の上端との接触と、キャップ28の天壁32下面と分岐部本体18の上端との接触とを同時に生じさせる必要がある。どちらか一方が先に接触すると、もう一方が接触しないからである。しかしながら、分岐サドル継手10の寸法には公差(許容差)がある、つまり分岐サドル継手10には成形上の個体差が存在する。このため、全ての製品において正確に、キャップ28の下端とベース部40,50,74の上端との接触と、キャップ28の天壁32下面と分岐部本体18の上端との接触とを同時に生じさせることは難しい。
そこで、この発明のさらに他の実施例として、ベース部40,50,74の上端またはキャップ28の下端に対して、公差を吸収するための易変形部40aを設けることもできる。以下、図30−図32を参照して、公差吸収用の易変形部40aを備える分岐サドル継手10の一例について説明するが、上述の各実施例と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
図30および図31に示すように、分岐部本体18の外面には、雄ねじ部22の下方において、周方向に延びる鍔状の突出部40が一体的に形成される。突出部40の上下方向の長さは、たとえば5mmであり、その水平方向の長さは、たとえば15mmである。
また、突出部40の上端には、放射状に延びる複数(この実施例では4つ)の易変形部40aが形成される。易変形部40aは、突出部40の内縁から外縁まで直線状に延びる突起であり、ポリエチレン等の軟質材によって形成される。この易変形部40aは、射出成形または切削加工などによって突出部40と予め一体的に成形されてもよいし、接着または融着などによって突出部40と後付けで一体化されてもよい。また、易変形部40aは、製造時においては三角形状の断面を有する(図32(a)参照)。突出部40の先端角は、たとえば60°であり、その上下方向の長さは、たとえば0.5−1.5mmである。
そして、突出部40の高さ位置は、目標寸法として、分岐部本体18の上端から突出部40の易変形部40aの先端ないし中央部までの上下方向の長さが、キャップ28の天壁32下面から側壁30下端までの上下方向の長さと一致するように設定される。
このような分岐サドル継手10では、製品として出荷する前、或いは施工現場での使用前には、製品の品質検査としてキャップ28の締め込みチェックが行われる。この締め込みチェックでは、キャップ28を所定のねじ締め状態まで締め込んだときに、キャップ28の下端と突出部40の上端とが接触し、かつ、キャップ28の天壁32下面と分岐部本体18の上端とが接触する状態となるか否かが検査される。
ここで、突出部40が易変形部40aを有さない場合には、公差によって上記の一方が接触しない場合がある。これに対して、図30に示す実施例では、突出部40の易変形部40aにキャップ28の下端が押し当てられたときに、易変形部40aが変形する(潰れる)ことによって、公差が吸収される(図32(b)参照)。すなわち、突出部40が易変形部40aを有することによって、キャップ28の下端と突出部40の上端とが接触する状態に幅を持たせることができる(易変形部40aの潰れ代が調整代となる)ので、この幅(調整代)の分だけ公差を吸収できる。
なお、キャップ28の締め込みチェックでは、図32(b)に示すように易変形部40aが変形しており、かつ、キャップ28の天壁32下面に分岐部本体18との接触跡が形成されている場合に、検査合格とされる。これによって、キャップ28を所定のねじ締め状態まで締め込んだときに、キャップ28の下端と突出部40の上端とが接触し、かつ、キャップ28の天壁32下面と分岐部本体18の上端とが接触する状態となることが証明されるからである。
そして、検査合格した分岐サドル継手10が施工現場で使用される。施工現場では、作業者等は、上述の図1に示す実施例と同様にして、キャップ28の側壁30の下端と突出部40の易変形部40aの上端とが接触する図32(b)に示す状態までキャップ28を締め込むだけでよい。キャップ28の下端が突出部40(易変形部40a)の上端に接触した状態、つまりキャップ28が所定のねじ締め状態に達した状態においては、キャップ28と分岐部本体18との間隙がゴム輪24を介して密封され、かつ、キャップ28の天壁32下面と分岐部本体18の上端とが接触する状態となる。これによって、分岐部本体18の上端開口26からの漏水がより確実に防止される。
図30に示す実施例によれば、突出部(ベース部)40が易変形部40aを有することによって、キャップ28の下端と突出部40の上端とが接触する状態に幅を持たせることができるので、公差を吸収できる。したがって、キャップ28を所定のねじ締め状態まで締め込んだときに、確実に、キャップ28の下端と突出部40の上端とを接触させ、かつ、キャップ28の天壁32下面と分岐部本体18の上端とを接触させる状態とすることができる。
なお、図30に示す実施例では、分岐部本体18に一体的に形成される突出部40に対して易変形部40aを設けるようにしたが、公差吸収用の易変形部40aは、リング部材50および外嵌部材64の突出部74の上端、或いはキャップ28の下端に対して設けることもできる。
また、易変形部40aの形状は適宜変更可能である。たとえば、易変形部40aは、ベース部40,50,74の上端またはキャップ28の下端に分散して形成される、円錐状や半球状の突起であってもよい。
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。