図1を参照して、この発明の一実施例である分岐サドル継手10は、ポリエチレンおよびポリプロピレン等の熱融着可能な合成樹脂によって形成される水道配水管の本管100から分岐管102を取り出す際に、本管100の外周面に電気融着接合されるEF(エレクトロフュージョン)サドル継手である。分岐サドル継手10は、基本的には水道配水管を不断水分岐するための継手であるが、不断水分岐に用いることに限定されず、たとえば、新規に敷設する水道配水管の断水状態での分岐や、下水管やガス管などの分岐に用いることも可能である。
以下、図1−図3を適宜参照して、分岐サドル継手10の全体構成について説明する。図1−図3に示すように、分岐サドル継手10は、本管100と同種の熱融着可能な合成樹脂によって一体的に形成される、サドル部12、分岐部本体14および分岐管接続部16などを備える。この実施例では、サドル部12、分岐部本体14および分岐管接続部16のそれぞれは、ポリエチレンによって形成される。
サドル部12は、本管100の外径曲率とほぼ同じ内径曲率を有する半円筒状の板状体であり、その中央部には、平面視略真円形の分岐孔18が形成される。サドル部12の内径は、たとえば85mmである。また、サドル部12の軸方向の長さは、たとえば160mmであり、その厚さは、たとえば8mmである。
サドル部12の内周面側、すなわち本管100との接合面側には、分岐孔18を中心にして渦巻き状または葛折り状などの任意の形状に配置された電熱線20が埋設される。電熱線20の両端部は、サドル部12の表面から突出して形成される電源接続端子22に接続されており、この電源接続端子22を電源に接続して電熱線20に電流を流すことによって、サドル部12および本管100の接合面の樹脂が加熱溶融される。
また、分岐孔18の周縁部には、サドル部12の径方向外側(上方)に向かって立ち上がる短管状の分岐部本体14が形成される。分岐部本体14の軸方向長さは、たとえば110mmであり、その内径は、たとえば30mmである。分岐部本体14の軸方向における略中央部には、側方に突出する短管状の分岐管接続部16が形成される。この分岐管接続部16には、継手などを介して分岐管102が接続される。分岐管接続部16の内径は、たとえば22mmである。
分岐部本体14の内周面には、その全体に雌ねじ部24が形成される。そして、分岐部本体14の内部には、穿孔カッタ26が軸方向(上下方向)に移動可能に設けられる。穿孔カッタ26としては、公知の穿孔カッタを適宜利用するとよい。一例として、穿孔カッタ26は、プラグ部28およびカッタ部30等を含み、その全体がステンレス鋼(たとえばSUS304)等の硬質な金属によって一体的に形成される。
プラグ部28は、円柱状または円筒状に形成され、その外周面には、分岐部本体14に形成される雌ネジ部24と螺合する雄ネジ部32が形成される。また、プラグ部の上端部には、回転工具と係合する六角穴などの回転工具係合部(図示せず)が形成される。回転工具を用いて穿孔カッタ26に回転力を与えると、穿孔カッタ26は、雌ネジ部24と雄ネジ部32との螺合によって分岐部本体14内を軸方向に移動する。つまり、分岐部本体14内において、穿孔カッタ26の軸方向位置は自由に調整できる。一方、カッタ部30は、円筒状に形成され、プラグ部28の下端外周縁から下方に突出するように形成される。カッタ部30の先端は、下方に向かって鋭利となる形状に形成される。
また、分岐部本体14の外周面上端部には、雄ねじ部34が形成される。雄ねじ部34よりも上方の分岐部本体14の外周面には、雄ねじ部34から段差状に少し縮径した非ねじ部が形成されており、この非ねじ部の中央部には、周溝36が形成される。周溝36には、Oリング(止水部材)38が装着される。
分岐部本体14の上端部には、その上端開口を封止するためのキャップ40が装着される。図1−図3と共に図4に示すように、キャップ40は、分岐部本体14などと同種の合成樹脂(この実施例ではポリエチレン)によって、側壁42および天壁44を含む有頂円筒状に形成される。キャップ40の側壁42の外周面には、周方向に所定の間隔を隔てて、上下方向に延びる複数のリブ46が形成される。キャップ40の上下方向の長さ(高さ寸法)は、たとえば45mmであり、その外径は、たとえば70mmである。
キャップ40の側壁42の内周面下部には、分岐部本体14の雄ねじ部34と螺合する雌ねじ部48が形成されており、キャップ40の雌ねじ部48を分岐部本体14の雄ねじ部34に螺合させてキャップ40を下方に締め込んでいくことによって、分岐部本体14の上端部にキャップ40が装着される。雄ねじ部34および雌ねじ部48のピッチ(ねじ山の軸方向間隔)は、たとえば3mmである。つまり、キャップ40は、周方向に一回転されると、軸方向に3mm移動する。
また、キャップ40の側壁42の内周面上部には、雌ねじ部48から段差状に少し縮径した非ねじ部50が形成される。この非ねじ部50は、ねじが切られていない所謂ストレート部分であり、分岐部本体14にキャップ40が適切に装着されたときにOリング38に押し当てられ、周溝36との間でOリング38を圧縮する。このOリング28の圧縮によって、分岐部本体14外周面とキャップ40内周面との間隙が密封され、分岐部本体14の上端開口からの漏水が確実に止められる。
この際、キャップ40は、分岐部本体14の周溝36とキャップ40の非ねじ部50とによってOリング38が所定圧縮力で適切に圧縮され始めた止水始め状態(図7(b)参照)から、キャップ40の天壁44下面と分岐部本体14の上端とが当接してこれ以上の締め込みは不要となる締切状態(図8(b)参照)まで、適切に止水機能を発揮して分岐部本体14の上端開口からの漏水を防ぐ。つまり、キャップ40は、所定範囲の締め込み状態において分岐部本体14の上端開口を適切に止水する。この実施例では、キャップ40が適切に止水機能を発揮する締め込み状態の所定範囲は、キャップ14の軸方向に対する1.5mmの移動範囲、つまりキャップ40の周方向(回転方向)に対する180°(0.5回転)の回転範囲である。すなわち、キャップ40は、締切状態から−0.5回転までの範囲において、適切に止水機能を発揮する。なお、この所定範囲は、適宜設定変更可能であり、好ましくは締切状態から0〜−0.5回転の範囲内において設定される。
また、キャップ40の側壁42下端には、第1突起部52が一体的に形成される。第1突起部52は、側壁42の下端面42aから下方に突出すると共に、側壁42の外周面42b下端部から側方に突出するように形成され、キャップ40の周方向の略半周に亘って円弧状に延びる。この第1突起部52の下面(第1面)52aは、分岐部本体14の雄ねじ部34(キャップ40の雌ねじ部48)のねじ山の螺旋傾斜角度と同じ角度で一様に傾斜する傾斜面とされる。
下端面42aからの第1突起部52の突出高さ(下端面42aと下面52aとの距離)は、たとえば、キャップ40の回転方向における前端において4.5mmであり、キャップ40の回転方向における後端において2.9mmである。ここで、下端面42aから第1突起部52の突出高さは、適宜変更可能であり、たとえば第1突起部52の後端において下面52aと側壁42の下端面42aとが面一になるように第1突起部52を形成することもできる。ただし、第1突起部52の後端においても下端面42aから所定高さで突出するように、第1突起部52を形成することが好ましい。これによって、キャップ40を分岐部本体14に装着する際に、後述する第2突起部54の上面54aとキャップ40の下端面42aとがキャップ40装着時において近接状態となることを避けることができ、また、作業者が第1突起部52の後端を指先の触感で認識し易くなるからである。
また、外周面42bからの第1突起部52の突出高さは、たとえば5mmである。第1外周面42bからの突起部52の突出高さは、適宜変更可能であるが、少なくともリブ46の頂面と面一もしくはそれ以上の突出高さとされることが好ましい。これによって、作業者が第1突起部52を指先の触感で認識し易くなり、また、第1突起部52を上方から視認し易くなるからである。
さらに、第1突起部52の周方向長さ、つまり下面52aの周方向長さは、キャップ40が適切に止水機能を発揮する締め込み状態の所定範囲に応じた長さとされる。この実施例では、第1突起部52の周方向長さは、所定範囲である180°(0.5回転)の周方向長さに後述の第2突起部54の周方向長さを加えた長さとされる。第1突起部52の先端部(外周縁)における周方向長さは、たとえば141mmである。
図1−図3と共に図5に示すように、分岐部本体14の外周面には、第2突起部54が一体的に形成される。第2突起部54は、分岐管接続部16の分岐方向と同じ周方向位置に設けられ、分岐部本体14の外周面から側方に短円弧状に突出する。この第2突起部54の上面(第2面)54aは、第1突起部52の下面52aと対向し、第1突起部52の下面52aの傾斜角度(つまり分岐部本体14の雄ねじ部34のねじ山の螺旋傾斜角度)と同じ角度で一様に傾斜する傾斜面とされる。第2突起部54の先端部の周方向長さは、たとえば15mmである。また、分岐部本体14の外周面からの第2突起部54の突出高さは、キャップ40の外周面42bからの第1突起部52の突出高さに応じて設定され、第2突起部54の側面(外周面)は、第1突起部52の側面と面一となるようにされる。
さらに、第2突起部54の上面54aは、キャップ40が所定範囲の締め込み状態となったときに、第1突起部52の下面52aと近接状態となる配置高さ(高さ位置)に設けられる。
ここで、この発明における近接状態とは、第1面(第1突起部52の下面)52aと第2面(第2突起部54の上面)54aとが接触する状態、または軽く接触するかしないかという程度の近接距離にある状態を言い、少なくとも第1面52aと第2面54aとの距離が分岐部本体14の雄ねじ部34(雌ねじ部48)のピッチ(3mm)よりも小さくなる状態を言う。好ましくは、近接状態における第1面52aと第2面54aとの距離は、0〜1mmである。この実施例では、近接状態における第1面52aと第2面54aとの距離は、第1面52aと第2面54aとの接触による摩擦抵抗の発生を防止しつつ、第1面52aおよび第2面54aに指先で触れたときに接触状態と同視し得る距離である、0.5mmに設定される。
続いて、このような分岐サドル継手10を用いて、不断水分岐によって本管100から分岐を取り出す管の分岐方法について説明する。
先ず、本管100に対して分岐サドル継手10を電気融着接合する。具体的には、本管100の所望の位置に分岐サドル継手10を載置し、クランプ等の固定具(図示せず)を使用して、本管100外周面とサドル部12内周面とが密着するように固定する。そして、サドル部12内に埋設した電熱線20に通電して発熱させ、本管100外周面とサドル部12内周面とを融着接合する。また、分岐管接続部16に対して分岐管102を接続する。
次に、穿孔カッタ26を用いて本管100を穿孔する。具体的には、プラグ部28の回転工具係合部に回転工具の端部を挿し込んで、回転工具によって穿孔カッタ26を回転させることにより穿孔カッタ26を下降させる。そして、カッタ部30の先端部が本管100の内周面に到達するまで、カッタ部30によって本管100を穿孔する。本管100の穿孔後は、穿孔カッタ26が本管100から分岐管102に流れ込む水と干渉しないように、回転工具を用いて穿孔カッタ26を逆回転させることによって上昇させ、分岐部本体14の上端部内に穿孔カッタ26を配置する(図1参照)。
その後、キャップ40を分岐部本体14の上端部に装着して分岐部本体14の上端開口を封止する。キャップ40を分岐部本体14に適切に装着することによって、キャップ40の内周面と分岐部本体14の外周面との間隙がOリング38によって止水され、分岐部本体14の上端開口からの漏水が防止される。
ここで、図6−図8を参照して、分岐部本体14の上端部にキャップ40を締め込んで装着するときの様子について具体的に説明する。
キャップ40の締め込み作業(装着作業)を行うときには、キャップ40の雌ねじ部48を分岐部本体14の雄ねじ部34を螺合させ、第2突起部54の上面54aと側壁42の下端面42aおよび第1突起部52の下面52aとの間隔を指先で触ったり目視したりして確認しながら、キャップ40を締め込んで下方に螺進させていく。
この際、図6に示すように、キャップ40の締め込みが不十分な場合、すなわち分岐部本体14の周溝36とキャップ40の非ねじ部50との間でOリング38が適切に圧縮されていない状態においては、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとは、近接状態にならない。つまり、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが3mm以上離れる状態(雄ねじ部34の1ピッチ以上離れる状態)、或いは、第1突起部52と第2突起部54とが同一垂直軸上にない状態(第1突起部52の周方向範囲内に第2突起部54が収まらない状態)となる。作業者は、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが近接状態にないことを指先の触感または目視によって確認することで、キャップ40の締め込みがまだ不十分であることを知ることができる。
一方、図7および図8に示すように、キャップ40が所定範囲の締め込み状態にある場合、すなわち分岐部本体14の周溝36とキャップ40の非ねじ部50との間でOリング38が所定圧縮力で適切に圧縮されている状態においては、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが、近接状態になる。作業者は、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが近接状態にあることを指先の触感または目視によって確認することで、キャップ40が所定範囲の締め込み状態にある、つまりキャップ40が適切に装着されていることを知ることができる。以下、キャップ40が所定範囲の締め込み状態にあるときの様子について、より詳しく説明する。
図7は、分岐部本体14の周溝36とキャップ40の非ねじ部50とによってOリング38が所定圧縮力で適切に圧縮され始めた止水始め状態を示す。このとき、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが近接状態(この実施例では0.5mmの距離)となる。また、この実施例では、止水始め状態において、第1突起部52のキャップ40の回転方向における前端の位置と第2突起部54のキャップ40の回転方向における前端の位置とが一致するようされる。作業者は、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが近接状態であって、かつ、第1突起部52および第2突起部54の前端どうしの位置が一致していること、つまり上方から見て第2突起部54が第1突起部52の下に完全に隠れた状態になったことを確認することで、キャップ40が所定範囲の締め込み状態に入ったことを容易に知ることができる。
図7の状態からキャップ40の締め込みがさらに進むと、図1および図3に示す状態を経て、図8に示す状態となる。この間、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとは、一定の近接状態を保ったままとなる。
ここで、仮に、第1突起部52の下面52aおよび第2突起部54の上面54aを互いに水平面とした場合には、キャップ40の締め込みが進むに従い、第1突起部52の下面52aが第2突起部54の上面54aに近づいていく。そして、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが当接した時点で、それ以上の締め込み(キャップ40の下降)は不可能となる。これに対して、この実施例では、第1突起部52の下面52aおよび第2突起部54の上面54aが、分岐部本体14の雄ねじ部34のねじ山の螺旋傾斜角度と同じ角度で一様に傾斜する傾斜面とされることから、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが近接状態になった後も、一定の近接状態を保ったままキャップ40の締め込みを進めることができる。第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが一定の近接状態を保ったままキャップ40の締め込みを進めることができるので、この一定の近接状態を指標として利用するによって、キャップ40が所定範囲の締め込み状態にあることを容易に示すことが可能となる。
図8は、キャップ40が、天壁44下面と分岐部本体14の上端とが当接してこれ以上の締め込みは不要となる締切状態に達した様子を示す。このとき、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとは、一定の近接状態のままである。また、この実施例では、キャップ40の締切状態において、第1突起部52のキャップ40の回転方向における後端の位置と第2突起部54のキャップ40の回転方向における後端の位置とが一致するようされる。作業者は、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが近接状態であって、かつ、第1突起部52および第2突起部54の後端どうしの位置が一致していることを指先の触感または目視によって確認することで、キャップ40が締切状態に達したことを容易に知ることができる。これにより、必要以上の無理なキャップ40の締め込みが防止され、無理な締め込みによって分岐サドル継手10が破損されてしまうことが防止される。
なお、キャップ40の締め込み作業を行う場合には、基本的には締切状態まで、すなわち、分岐部本体14の周溝36とキャップ40の非ねじ部50との間でOリング38が所定圧縮力で適切に圧縮されると共に、キャップ40の天壁44下面と分岐部本体14の上端とが当接して、最も止水機能が高い状態となる締切状態までキャップ40を締め込むことが好ましい。しかし、内水圧の影響によってキャップ40の締め込みに大きな力が必要となった等の何らかの理由で、キャップ40を締切状態まで完全に締め付けることができない場合がある。この場合でも、作業者は、キャップ40が所定範囲の締め込み状態に達していることを確認することによって、安心してキャップ40の締め込み作業を終了できる。
上述のように、この実施例では、キャップ40が所定範囲の締め込み状態において分岐部本体14の上端開口を適切に止水する。そして、キャップ40が所定範囲の締め込み状態にあること、つまりキャップ40の締め込み状態が適切に止水機能が発揮される適正範囲内にあることが、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが一定の近接状態を保つことによって示される。したがって、作業者は、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとの間隔を指先で触ったり目視したりして確認しながらキャップ40の締め込み作業を行うことによって、キャップ40の締め込みが十分であるか否かを容易に判断することができる。
特に、キャップ40が所定範囲の締め込み状態にあることを第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが一定の近接状態を保つことによって示すので、目視による確認が難しい暗部などでの作業であったとしても、作業者は、指先の触感でキャップ40が所定範囲の締め込み状態に達したことを知ることができる。つまり、作業条件などにあまり左右されずに、キャップの締め込み作業を適切に行うことができる。
また、この実施例では、分岐管接続部16の分岐方向と同じ周方向位置に第2突起部54を設けている。これは、分岐管接続部16の分岐方向には、分岐管102を配管するための溝が既に掘削されており、他の周方向位置と比較して分岐サドル継手10の周囲に広い空間が形成されていることが通常であるからである。つまり、分岐管接続部16の分岐方向には、分岐部本体14に装着するキャップ40を側方から覗き込むことが可能な空間があるので、分岐管接続部16の分岐方向と同じ周方向位置に第2突起部54を設けておくことによって、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが近接状態にあるか否かを、側方からの目視によっても確認し易くなる。ただし、第2突起部54を設ける周方向位置は、適宜変更可能である。
さらに、この実施例では、第2突起部54の上面(第2面)54aが、第1突起部52の下面(第1面)52aの傾斜角度と同じ角度で一様に傾斜する傾斜面とされる。これによって、第2突起部54の上面54a全体が、第1突起部52の下面52aと一様に近接状態となることが可能になり(つまり第2突起部54の上面54と第1突起部52の下面52aとが広範囲において一様の近接状態となることが可能となり)、作業者の指先の触感または目視による近接状態の確認が容易となる。
以上のように、この実施例によれば、キャップ40が所定範囲の締め込み状態にあることが、第1突起部52の下面(第1面)52aと第2突起部54の上面(第2面)54aとが一定の近接状態を保つことによって示される。したがって、作業者の力加減に依存した曖昧な基準でキャップ40の締め込み作業を行うことと比較して、キャップ40の締め込み作業を適切に行うことができ、キャップ40の締め込み不足や過剰の締め込みが防止できる。
なお、上述の実施例では、止水始め状態において、第1突起部52のキャップ40の回転方向における前端の位置と第2突起部54のキャップ40の回転方向における前端の位置とを一致させるようしたが、止水始め状態を示す第1突起部52と第2突起部54との周方向の位置関係は、適宜変更可能である。たとえば、止水始め状態において、第1突起部52のキャップ40の回転方向における前端の位置と第2突起部54のキャップ40の回転方向における後端或いは中央部の位置とを一致させるようしてもよい。同様に、締切状態を示す第1突起部52と第2突起部54との周方向の位置関係も、適宜変更可能である。たとえば、締切状態において、第1突起部52のキャップ40の回転方向における後端の位置と第2突起部54のキャップ40の回転方向における前端或いは中央の位置とを一致させるようしてもよい。
また、上述の実施例では、第2突起部54の周方向長さを15mmとしたが、これに限定されない。第2突起部54の周方向長さは、たとえば、第1突起部52と同等の180°(半周)程度の周方向長さにしてもよいし、5mm程度の短い周方向長さにしてもよい。また、第2突起部54の上面(第2面)54aは、必ずしも第1突起部52の下面(第1面)52aの傾斜角度と同じ角度で傾斜する必要もない。たとえば、図9(a)に示すように、第2突起部54の周方向長さを短くする場合などには、第2突起部54の上面54aを水平面としてもよい。さらに、第2突起部54の形状は、適宜変更可能である。たとえば、図9(b)に示すように、第2突起部54は、上面54aが湾曲面となる断面円形の突起であってもよい。
さらに、上述の実施例では、キャップ40の下端に第1突起部52を設け、分岐部本体14の外周面に第2突起部54を設けたが、これらの配置は逆でもよい。すなわち、図10および図11に示すように、分岐部本体14の外周面に対して、所定範囲に応じた周方向長さを有しかつ分岐部本体14の雄ねじ部34のねじ山の螺旋傾斜角度と同じ角度で一様に傾斜する第1面(上面)52aを有する第1突起部52を設け、キャップ40の下端に対して、第1突起部52の第1面52aと対向する第2面(下面)54aを有する第2突起部54を設けるようにしてもよい。このように第1突起部52および第2突起部54の配置を逆にしても、上述の実施例と同様の作用効果を奏し、キャップ40の締め込み作業を適切に行うことができ、キャップ40の締め込み不足や過剰の締め込みが防止できる。
さらにまた、図12に示すように、この発明の他の実施例として、第1突起部52に対して、キャップ40が締切状態に達したことを第2突起部54と当接することによって示すストッパ60を設けるようにしてもよい。たとえば、図12(a)に示すように、ストッパ60は、断面矩形の突起であって、第1突起部52のキャップ40の回転方向における後方側端部から下方に突出するように形成される。ストッパ60の下方への突出高さは、雄ねじ部34のピッチよりも小さく設定される。これは、キャップ40が所定範囲の締め込み状態になる前に、ストッパ60と第2突起部54とが衝突してしまうことを避けるためである。また、たとえば、図12(b)に示すように、ストッパ60は、第1突起部52の下面52aの傾斜角度を変更することによって形成することもできる。
このようなストッパ60は、キャップ40が締切状態に達したときに第2突起部54と当接することによって、キャップ40のそれ以上の回転を阻止する、或いは、キャップ40の回転抵抗(締付トルク)を大きくして作業者にキャップ40が締切状態に達したことを気付かせるので、キャップ40の過度の締め込みがより確実に防止される。なお、第1突起部52を分岐部本体14の外周面に設ける場合には、ストッパ60は、第1突起部52のキャップ40の回転方向における前方側端部に設けられる。
また、図示は省略するが、分岐部本体14の雄ねじ部34およびキャップ40の雌ねじ部48の少なくとも一方に対して、軸方向に延びる1または複数の水抜溝を形成することもできる。水抜溝は、たとえば、雄ねじ部34または雌ねじ部48の周方向の一部が切り欠かれることによって形成される。このような水抜溝を形成することによって、キャップ40の締め込み作業時において穿孔カッタ26上方への漏水が多い場合でも、キャップ40内から外部に適切に水を排出することができる。したがって、キャップ40内に水が充満してキャップ40の締め込みに必要な締付トルクが上昇してしまうことを防止できる。
また、上述の実施例では、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが近接状態にあるか否かを、指先で直接触って確認するようにしたが、薄板状のバーコードカード(図示せず)をこの間に差し込むことによって確認することもできる。バーコードカードの厚みは、雄ねじ部34のピッチよりも小さく、かつ近接状態における第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとの距離よりも大きい厚みとされる。たとえば、バーコードカードは、厚み1.0mm、縦54mm、横85mmの矩形薄板状に形成され、1つの分岐サドル継手10につき1枚のバーコードカードが添付される。そして、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとの間に、バーコードカードを差し込むことができれば、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが近接状態にないと判断し、バーコードカードを差し込むことができなければ、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが近接状態にあると判断するとよい。これによって、第1突起部52の下面52aと第2突起部54の上面54aとが近接状態にあるか否かを確実に判断できる。なお、バーコードカードの代わりに、定規などの適宜の薄板状部材を用いてもよい。
さらに、上述の各実施例では、分岐部本体14の外周面に形成した周溝36に装着した1つのOリング38を用いて、キャップ40が所定範囲の締め込み状態において止水性能を発揮するようにしたが、キャップ40が所定範囲の締め込み状態において止水性能を発揮する態様については、特に限定されず、適宜な態様を採用可能である。
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。また、傾斜角度などが「同じ」とは、厳密に同じという意味だけでなく、この発明の作用効果を奏しうる範囲内において、誤差程度の違いがある「ほぼ同じ」という意味も含む概念として使用している。