JP6366218B2 - 磁性キャリア及び二成分系現像剤 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法を用いて静電荷像を顕像化するための画像形成方法に使用される磁性キャリア及びそれを用いた二成分系現像剤に関するものである。
近年、電子データから可変情報を簡単に印字できることから、軽印刷の領域であるオンデマンドプリンティング(POD)市場への電子写真方式の採用が拡大してきている。PODにおいては、従来から電子写真方式の画像形成に用いられている記録材(用紙)以外の記録材に印字することが求められている。そのような記録材の具体例としては、冊紙の表紙として用いられる厚紙、ポスター広告用の用紙、上質感のあるものとして用いられる光沢紙、ワックスやポリ乳酸ラテックスが塗工され、堅牢性のあるカードとして用いられるコート紙などが挙げられる。
これに伴って、二成分現像方式に用いられる磁性キャリアのさらなる性能の向上が求められている。近年では、磁性キャリアの比重や抵抗を下げるために、多孔質磁性コア粒子の空隙に樹脂を充填することが行われている。
特許文献1には、多孔質磁性コア粒子の空隙にシリコーン樹脂を充填することによって、低比重化を達成した樹脂充填型磁性キャリアが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載のキャリアは、低比重化によって、磁性キャリアの耐久性の向上は図られるが、現像性に劣り、ハーフトーン画像とソリッド画像の境界における白抜けのような画像欠陥を招く場合があった。また、現像性が不足することを補うために、交番バイアス電圧である現像バイアスのVpp(ピーク間電圧)を高く設定すると、現像剤担持体より磁性キャリアを通じて静電像に電荷が注入され、静電潜像担持体電位が等電位になる、いわゆるリークが生じる場合があった。
特許文献2には、現像性の向上とリークの抑制の両立のため、樹脂充填型磁性キャリア粒子表面の樹脂部分を最適に分布させ、多孔質磁性コア粒子のブレークダウンする寸前の電界強度を規定した磁性キャリアが記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の樹脂充填型磁性キャリアを用いた現像剤で、光沢紙への印字を多数枚行った場合、初期には十分な光沢度の画像が得られるものの、経時的に画像の光沢度が低下してしまう場合があった。これは、後に詳述する様に、磁性キャリアに含有されるシリコーン樹脂が削れてしまうことが原因であると考えられる。このような光沢度の低下は、オフィス内文書や図を印刷する場合には特に問題とならないが、PODのような高い光沢度が求められる場合には課題となる。
特許文献3には、多孔質磁性コア粒子の孔にシリコーン樹脂を充填した充填コア粒子の表面に、アクリル樹脂を被覆したキャリアが記載されている。しかしながら、シリコーン樹脂とアクリル樹脂とは親和性が悪いために、アクリル樹脂は磁性キャリア表面を疎らにしか覆うことができない。その結果、シリコーン樹脂が露出している部分が存在するため、多数枚印刷する場合においては、シリコーン樹脂が削れ、経時的に光沢度が低下してしまう。また、磁性キャリア表面に均一な被覆層が形成されないため、磁性キャリア表面に局所的に抵抗の低い部分が存在し、リークが生じる場合がある。さらに、磁性キャリア表面に、シリコーン樹脂が露出している部分とアクリル樹脂が被覆されている部分が混在するために、トナーの帯電量分布がブロードになり、かぶり、濃度ムラが生じる場合がある。
このように、PODに求められる高い光沢度を達成し、且つ磁性キャリアに求められるその他の性能も満足する磁性キャリアを得ることが課題となっている。
特許4001606号公報 特開2010−039133号公報 特開2010−256855号公報
本発明の目的は、高い光沢度が求められるPODへの長期使用においても、光沢度の低下を引き起こさず、且つリーク、かぶり、濃度ムラ、及びキャリア付着が抑制された磁性キャリアを提供することである。
本発明は、
多孔質磁性コア粒子及び該多孔質磁性コア粒子の孔に充填されているシリコーン樹脂を有する充填コア粒子と、
該充填コア粒子の表面を被覆しているビニル系樹脂と、
を有する磁性キャリア粒子の集合体である磁性キャリアであって、
下記方法で算出される該多孔質磁性コア粒子の積算細孔容積が、35.0mm/g以上95.0mm/g以下であり、
下記方法で算出される該充填コア粒子の積算細孔容積が、7.8mm/g以上12.8mm/g以下であり、
該充填コア粒子の体積分布基準50%粒径(D50)が、19.0μm以上69.0μm以下であり、
該磁性キャリアが、該充填コア粒子100.0質量部に対して1.2質量部以上3.0質量部以下の該ビニル系樹脂を有することを特徴とする磁性キャリアに関する。
[該多孔質磁性コア粒子の積算細孔容積は、約1.0gの該多孔質磁性コア粒子を対象として水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径0.1μm以上3.0μm以下の範囲におけるLog微分細孔容積を積分して、算出される。
又、該充填コア粒子の積算細孔容積は、約1.0gの該充填コア粒子を対象として水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径0.1μm以上3.0μm以下の範囲におけるLog微分細孔容積を積分して、算出される。]
また、本発明は、
磁性キャリア及びトナーを含む二成分系現像剤であって、
該トナーが、
結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー粒子と
無機微粉体と、
を有するトナーであり、
該磁性キャリアが、上記磁性キャリアである
こと特徴とする二成分系現像剤である。
本発明によれば、PODでの長期使用においても、光沢度の低下を引き起こさず、且つリーク、かぶり、濃度ムラ、及びキャリア付着の発生を抑制できる磁性キャリアを提供することができる。
多孔質磁性コア粒子及び磁性キャリアの比抵抗の測定装置の概略図。 (a):水銀圧入法により測定した多孔質磁性コア粒子の細孔分布の一例である。(b):記細孔分布において、細孔径が0.1μm以上6.0μm以下の範囲を拡大したものである。(c):水銀圧入法により測定した充填コア粒子の細孔分布において、細孔径が0.1μm以上6.0μm以下の範囲を拡大したものの一例である。 磁性キャリアのSEM画像から、輝度の高い部分を求める際の画像処理を説明するための図である。
本発明において、充填コア粒子とは、多孔質磁性コア粒子の孔に樹脂を充填した粒子を表す。また、磁性キャリアとは、充填コア粒子の表面を樹脂で被覆した粒子(磁性キャリア粒子)の集合体を表す。
上述のように、従来の磁性キャリアを用いて光沢紙への印字を多数枚行った場合、経時的に画像の光沢度が低下してしまうという課題があった。このことについて、本発明者等が検討したところ、光沢度が低下した画像中にSi元素が含まれていることを確認した。これは以下の様な理由であると考えられる。磁性キャリアの充填又は被覆に用いられているシリコーン樹脂が、長期間の使用によって削れ、シリコーン樹脂の微粉が発生する。そして、シリコーン樹脂の微粉が、現像されたトナーに混入し、トナー画像の定着が行われる際に、トナーに含有されるワックスの染み広がりを阻害し、光沢度を低下させる。
また、ワックスの染み広がりを阻害しにくいビニル系樹脂のみを磁性キャリアに用いた場合には、経時的な光沢度の低下は発生しなかった。このことから、磁性キャリアに由来するシリコーン樹脂の微粉が、画像の光沢度の低下に寄与していると考えられる。
なお、ビニル系樹脂がワックスの染み広がりを阻害しにくい理由は、ワックスとビニル系樹脂のSP値の差分が小さく、親和性が高いため、定着時に溶融混合されるためであると考えられる。一方、ワックスとシリコーン樹脂のSP値の差分は大きく、定着時に溶融混合されないため、ワックスの染み広がりがシリコーン樹脂にブロックされると考えられる。
このことから、経時的な光沢度の低下を防止するためには、磁性キャリアに含有されているシリコーン樹脂の削れを抑制することが重要である。そのための方法として、多孔質磁性コア粒子の孔を充填するための樹脂(以下、充填樹脂とも言う)がシリコーン樹脂である充填コア粒子の表面を被覆するための樹脂(以下、被覆樹脂とも言う)として、ビニル系樹脂を用いることが考えられる。しかし、単に充填コア粒子の表面をビニル系樹脂で被覆するだけでは、シリコーン樹脂とビニル系樹脂との親和性が悪いために、充填コア粒子が疎らにしか被覆されない。その結果、充填コア粒子のシリコーン樹脂が露出している部分が存在してしまう。被覆に用いるビニル系樹脂の量を増やしたり、多段階に分けて充填樹脂の被覆を行ったりしても、シリコーン樹脂の露出は改善されない。
また、充填樹脂及び被覆樹脂の両方にビニル系樹脂を用いる方法が考えられるが、ビニル系樹脂は、多孔質磁性コア粒子の孔への含浸性が低く、樹脂の充填が十分に行われない。そのため、充填コア粒子の細孔内部に空孔ができてしまい、磁性キャリアの抵抗が低くなり、リークが生じてしまう場合がある。
そこで、本発明者等は、シリコーン樹脂が磁性キャリア表面から露出せず、樹脂で均一に被覆されている磁性キャリアを得るために、鋭意検討を行った。その結果、多孔質磁性コア粒子及び充填コア粒子の細孔の状態をコントロールし、且つ被覆樹脂の量を制御することが重要であることを見出し、本発明に至った。
本発明の磁性キャリアは、充填樹脂として、シリコーン樹脂を用いる。シリコーン樹脂は、非常に含浸性に優れるため、多孔質磁性コア粒子の細孔内部にまで樹脂が充填される。そして、被覆樹脂として、ビニル系樹脂を用いる。本発明では、充填コア粒子の表面をビニル系樹脂で十分に被覆し、充填樹脂であるシリコーン樹脂の露出を防止するために、以下の様な特徴を有している。
すなわち、本発明の磁性キャリアは、水銀圧入法により測定される多孔質磁性コア粒子の細孔分布において、細孔径0.1μm以上3.0μm以下の範囲における積算細孔容積が、35.0mm/g以上95.0mm/g以下であり、水銀圧入法により測定される充填コア粒子の細孔分布において、細孔径0.1μm以上3.0μm以下の範囲における積算細孔容積が、3.0mm/g以上、15.0mm/g以下である。これによって、多孔質磁性コア粒子に樹脂を充填するための細孔が十分に存在する。また、充填コア粒子表面が細孔による凹凸のある形状を有しており、この充填コア粒子表面の凹凸によって、充填コア粒子に対するビニル系樹脂の被覆性を向上させることができる。
上記の様な構成でビニル系樹脂の被覆性が向上する理由は、ビニル系樹脂の表面張力と、ビニル系樹脂と親和性の高い多孔質磁性コア粒子の接触面積に由来している。すなわち、充填コア粒子表面の凸部は、多孔質磁性コア粒子が露出している部分であり、ビニル系樹脂と親和性が高いために、ビニル系樹脂で被覆される。一方、充填コア粒子表面の凹部は、充填樹脂であるシリコーン樹脂が存在するので、この部分とビニル系樹脂との親和性は低い。しかし、凹部の壁面に多孔質磁性コア粒子の露出面が存在していれば、表面張力によって、ビニル系樹脂が充填コア粒子の凹部に浸透し、シリコーン樹脂が存在する部分も被覆される。
なお、多孔質磁性コア粒子及び充填コア粒子の細孔分布のうち、細孔径0.1μm以上3.0μm以下の範囲に着目する理由は、以下の様である。水銀圧入法による細孔分布の測定において、細孔分布の細孔径3.0μmよりも大きい領域では、粒子間の隙間が測定され、正確な細孔分布が測定されない。また、多孔質磁性コア粒子及び充填コア粒子において、3.0μmよりも大きい細孔は、通常、ほとんど存在しない。この様な理由で、積算細孔容積を算出する際の細孔径の上限を3.0μmとした。また、0.1μmより小さい細孔は、通常、ほとんど存在しないため、積算細孔容積を算出する際の細孔径の下限を0.1μmとした。
多孔質磁性コア粒子の積算細孔容積が35mm/g未満である場合、多孔質磁性コア粒子に充填される樹脂の量が十分でなく、多孔質磁性コア粒子に対する樹脂の量が少なくなるので、磁性キャリアとしての抵抗が低くなってしまう。その結果、リーク、かぶり、濃度ムラが生じる場合がある。また、多孔質磁性コア粒子の積算細孔容積が、95mm/gより大きい場合、多孔質磁性コア粒子内部に多量の樹脂が充填されてしまい、多孔質磁性コア粒子に対する樹脂量が過剰になってしまう場合がある。その結果、高抵抗な磁性キャリアとなり、現像性の悪化やキャリア付着が生じる場合がある。
充填コア粒子の積算細孔容積が、3.0mm/g未満である場合、充填コア粒子表面近傍に細孔がほとんど残っておらず、充填コア粒子の表面に、細孔による凹凸が十分に形成されていない。そのため、充填コア粒子表面は、充填樹脂であるシリコーン樹脂の部分が大半を占めており、ビニル系樹脂で十分に被覆することが困難となる。そのため、上述した様な、シリコーン樹脂が削れてしまうことによる、経時的な光沢度の低下が発生する場合がある。
充填コア粒子の積算細孔容積が、15.0mm/gより大きい場合、多孔質磁性コア粒子に樹脂が十分に充填されておらず、充填コア粒子が比較的深い凹部を有している。そのため、含浸性の低いビニル系樹脂で被覆を行っても、磁性キャリア粒子の内部に空隙が残った状態となり、磁性キャリアとしては、低抵抗になってしまう。その結果、現像時において、リーク、かぶり、濃度ムラが生じる場合がある。
多孔質磁性コア粒子の平均細孔径は、0.7μm乃至1.4μmが好ましく、0.9μm乃至1.3μmがさらに好ましい。平均細孔径が上記範囲内であると、多孔質磁性コア粒子の凹部の両サイドの面の距離が、ビニル系樹脂の表面張力が十分働く距離である。そのため、両サイドの多孔質磁性コア粒子の面が懸け橋となって、凹部にもビニル系樹脂が被覆される。さらに、平均細孔径が上記範囲内であると、シリコーン樹脂の充填も容易に行うことができ、多孔質磁性コア粒子内部にまで、しっかり樹脂を充填することができる。
本発明の磁性キャリアは、充填コア粒子の表面が、充填コア粒子100.0質量部に対して1.2質量部以上3.0質量部以下のビニル系樹脂で被覆されている。被覆樹脂の量が上記範囲内であれは、充填コア粒子の表面を被覆するのに十分な量であるため、磁性キャリア粒子表面からのシリコーン樹脂の露出を防止することが可能となる。そのため、上述した様な、経時的な光沢度の低下を抑制することができる。さらに、磁性キャリア粒子表面には、多孔質磁性コア粒子に由来する凹凸が残っているため、トナーへの十分な摩擦帯電がなされ、かぶりの発生を抑制することができる。ビニル系樹脂の被覆量が、充填コア粒子100.0質量部に対して1.2質量部未満である場合、充填コア粒子の被覆が十分に行われず、経時的な光沢度の低下が発生する場合がある。また、ビニル系樹脂の被覆量が、充填コア粒子100.0質量部に対して3.0質量部より大きい場合、製造工程で磁性キャリア粒子同士の融着が発生し易くなってしまう。また、現像後のカウンターチャージが残り易くなるため、二成分系現像剤としての現像性が低下する。
本発明の磁性キャリアは、コア粒子として、多孔質磁性コア粒子にシリコーン樹脂を充填した充填コア粒子を用い、被覆樹脂としてビニル系樹脂を用いることによって、リーク、かぶり、濃度ムラ、及びキャリア付着を効果的に抑制することができる。この様な樹脂の組み合わせが良い理由について、本発明者等は以下の様に考えている。
トナーの摩擦帯電量には、磁性キャリアが現像剤担持体上に磁気ブラシを形成し、現像バイアスが印加された際の、磁性キャリアの摩擦帯電付与性が寄与している。そして、磁性キャリアの摩擦帯電付与性は、被覆樹脂のコンデンサー能力及びコア粒子の抵抗に影響される。被覆樹脂のコンデンサー能力は、被覆樹脂の極性や被覆樹脂の膜厚に影響され、被覆樹脂の極性が高いほど、また被覆樹脂の膜厚が厚いほど、コンデンサー能力は高くなる。そして、被覆樹脂のコンデンサー能力が高いほど、磁性キャリアの摩擦帯電付与性が高まる。
一方、コア粒子の抵抗が高いほど、蓄積された電荷が漏えいしにくくなるので、磁性キャリアの摩擦帯電付与性は高くなる。しかしながら、コア粒子の抵抗を上げると、現像バイアスが印加された際に、コア粒子にかかる電圧が高くなる分、被覆樹脂にかかる電圧が低くなる。ここで、被覆樹脂のコンデンサー能力は、被覆樹脂にかかる電圧に比例する。そのため、コア粒子の抵抗が高いと、被覆樹脂にかかる電圧が低くなり、被覆樹脂のコンデンサー能力が低くなってしまう。その結果、磁性キャリアとしての摩擦帯電付与性が低下してしまう。
そこで、コア粒子として、低抵抗の多孔質磁性コア粒子にシリコーン樹脂を充填した充填コア粒子を用いると、蓄積された電荷の漏えいを抑制しつつ、被覆樹脂のコンデンサー能力の低下を抑えることができる。これは、被覆層に用いられるビニル系樹脂の静電容量が、シリコーン樹脂の静電容量より大きいことに由来する。この静電容量の差によって、磁性キャリアに現像バイアスが印加された場合に、シリコーン樹脂よりも、被覆樹脂であるビニル系樹脂膜に、より高い電圧が印加されるためである。さらに、シリコーン樹脂膜は絶縁体であるため、磁性キャリアに蓄積した電荷が、コア粒子を介して漏えいしにくくなっている。従って、コア粒子を多孔質磁性コア粒子にシリコーン樹脂が充填された充填コア粒子とし、被覆樹脂をビニル系樹脂とすることによって、帯電付与性に優れた磁性キャリアを得ることができる。
また、磁性キャリアを上記の様な構成とすることで、磁性キャリアを二成分系現像剤として用いた際の現像性を良好にすることができる。多孔質磁性コア粒子は凹凸を有しており、これによって本発明の磁性キャリアは、被覆樹脂と多孔質磁性コア粒子が直接接触する箇所が存在する。そのため、現像過程において、磁性キャリアからトナーが飛翔した際に、磁性キャリアに残されたカウンターチャージが、被覆樹脂と多孔質磁性コア粒子が直接接触する箇所を通じて緩和され易くなる。その結果、現像性が良好になる。
なお、バルク状フェライトコア粒子の表面を、ビニル系樹脂で被覆している磁性キャリアが、従来から多数提案されている。しかしながら、このような構成では、コア粒子の抵抗が低く、被覆樹脂で蓄積された電荷が漏えいし易いため、磁性キャリアの帯電付与性が低い。また、コア粒子の抵抗を上げた場合、被覆樹脂にかかる電圧が減少し、被覆樹脂のコンデンサー能力が低下するため、結果的に、帯電付与性の低い磁性キャリアとなってしまう。従って、バルク状フェライトコア粒子の表面を、ビニル系樹脂で被覆している磁性キャリアは、帯電付与性が十分ではなく、本発明の磁性キャリアほどの効果は得られない。特に、トナー消費が多い画像を連続して出力した場合、トナーへの摩擦帯電が十分になされず、トナー中の逆極性トナーの割合が多くなる場合がある。これにより、静電潜像担持体上に逆極性トナーが付着する、いわゆるかぶりが生じ易い。
本発明の磁性キャリアは、走査型電子顕微鏡により撮影した加速電圧が2.0kV時の該磁性キャリア粒子の反射電子像における、多孔質磁性コア粒子に由来する輝度の高い部分の比率Sが、3.0面積%以上8.0面積%以下であることが好ましい。Sは、4.0面積%以上7.0面積%以下であることがさらに好ましい。Sは、下式(1)から求められる。
=(磁性キャリア粒子1粒子上の多孔質磁性コア粒子に由来する輝度の高い部分の総面積/その粒子の全投影面積)×100 (1)
が上記範囲内であれば、磁性キャリア表面が、ビニル系樹脂で十分に被覆されており、且つ多孔質磁性コア粒子に由来する凹凸を有していることを意味する。また、充填されているシリコーン樹脂とビニル系樹脂の間で形成される被覆樹脂膜の面積を制御することを意味する。これによって、トナーに対して十分な摩擦帯電を付与することができる。
<多孔質磁性コア粒子の製造方法>
多孔質磁性コア粒子の材質としては、マグネタイト又はフェライトが好ましい。さらに、多孔質磁性コア粒子の構造を制御したり、抵抗を調整することが容易となるため、多孔質磁性コア粒子の材質は、フェライトであることがより好ましい。
フェライトは次の一般式で表される焼結体である。
(M1O)(M2O)(Fe
(式中、M1は1価、M2は2価の金属であり、x+y+z=1.0とした時、x及びyは、0≦x≦0.8、0≦y≦0.8であり、zは、0.2<z<1.0である。)
式中において、M1及びM2としては、Li、Fe、Mn、Mg、Sr、Cu、Zn、Caからなる群から選ばれる1種類以上の金属原子を用いることが好ましい。
フェライトは、Mn元素を含有する、Mn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Mn−Mg−Sr系フェライト、Li−Mn系フェライトであることがより好ましい。Mn元素を含有するフェライトは、多孔質構造や多孔質磁性コア粒子表面の凹凸状態を好適にするためにフェライト結晶の成長の速度をコントロールすることが容易であり、多孔質磁性コアの比抵抗と磁気力を好適にコントロールできる。
以下に、多孔質磁性コア粒子としてフェライトを用いる場合の製造工程を詳細に説明する。
・工程1(秤量・混合工程):
フェライトの原料を、秤量し、混合する。フェライト原料としては、以下のものが挙げられる。Li、Fe、Mn、Mg、Sr、Cu、Zn、Caの金属粒子、酸化物、水酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩。なお、配合する原料として、水酸化物や炭酸塩を用いた方が、酸化物を用いた場合に比べて細孔容積は大きくなりやすい。混合する装置としては、ボールミル、遊星ミル、ジオットミル、振動ミルが挙げられる。特にボールミルが混合性の観点から好ましい。具体的には、ボールミル中に、秤量したフェライト原料、ボールを入れ、0.1時間以上20.0時間以下、粉砕及び混合を行う。
・工程2(仮焼成工程):
粉砕、混合したフェライト原料を、加圧成型機等を用いてペレット化した後、大気中で焼成温度700℃以上1200℃以下の範囲で、0.5時間以上5.0時間以下、仮焼成を行う。焼成に用いられる炉としては、バーナー式焼成炉、ロータリー式焼成炉、電気炉が挙げられる。
・工程3(粉砕工程):
工程2で作製した仮焼フェライトを粉砕機で粉砕する。粉砕機としては、所望の粒径が得られれば特に限定されない。粉砕機としては、クラッシャーやハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ジオットミルが挙げられる。
仮焼フェライトの微粉砕品の粒径分布を制御することで、多孔質磁性コア粒子の細孔径分布や、磁性キャリアの表面の凹凸度合いを制御することができる。仮焼フェライトの微粉砕品の粒径分布を制御するためには、ボールミルやビーズミルで用いるボールやビーズの形状や素材、粉砕機の運転時間を制御することが好ましい。仮焼フェライトの粒径を小さくするためには、比重の大きいボールを用いたり、粉砕時間を長くすればよい。また、仮焼フェライトの粒度分布を広くするためには、比重の大きいボールを用い、粉砕時間を短くすることで得ることができる。また、粒径の異なる複数の仮焼フェライトを混合することでも分布の広い仮焼フェライトを得ることができる。ボールやビーズの素材としては、以下のものがあげられる。ソーダガラス(比重2.5g/cm)、ソーダレスガラス(比重2.6g/cm)、高比重ガラス(比重2.7g/cm)、石英(比重2.2g/cm)、チタニア(比重3.9g/cm)、窒化ケイ素(比重3.2g/cm)、アルミナ(比重3.6g/cm)、ジルコニア(比重6.0g/cm)、スチール(比重7.9g/cm)、ステンレス(比重8.0g/cm)。中でも、アルミナ、ジルコニア、ステンレスは、耐磨耗性に優れているために好ましい。ボールとしては、直径5mm以上60mm以下のものが好適に用いられる。また、ビーズとしては直径0.03mm以上5mm以下のものが好適に用いられる。また、ボールミルやビーズミルは、乾式より湿式の方が、粉砕品がミルの中で舞い上がることがなく粉砕効率が高い。このため、乾式より湿式の方がより好ましい。
・工程4(造粒工程):
仮焼フェライトの微粉砕品に対し、分散剤、水、バインダーを加え、フェライトスラリーとする。必要に応じて、孔調整剤を加えてもよい。孔調整剤としては、発泡剤や樹脂微粒子が挙げられる。バインダーとしては、ポリビニルアルコールが用いられる。工程3において、湿式で粉砕した場合は、フェライトスラリー中に含まれている水も考慮して、上記材料を加えることが好ましい。
得られたフェライトスラリーを、噴霧乾燥機を用い、温度100℃以上200℃以下の加温雰囲気下で、乾燥・造粒する。噴霧乾燥機としては、所望の粒径が得られれば特に限定されない。例えば、スプレードライヤーが使用できる。
・工程5(本焼成工程):
次に、造粒品を、600以上800℃以下の温度で脱バインダーを行った後、酸素濃度の制御がなされた雰囲気下で、温度800℃以上1300℃以下で1時間以上24時間以下、焼成を行う。加熱温度は、温度1000℃以上1200℃以下がより好ましい。昇温時間を短くし、降温時間を長くすることで、結晶成長の速度をコントロールし、所望の多孔質構造を得ることができる。焼成温度の保持時間は、3時間以上5時間以下であることが、所望の多孔質構造を得るために好ましい。焼成温度を上げたり、焼成時間を長くすることで、多孔質磁性コアの焼成が進む。その際、ロータリー式電気炉やバッチ式電気炉または連続式電気炉を使用することができる。焼成時において、窒素等の不活性ガスや水素や一酸化炭素等の還元性ガスを打ち込んで、酸素濃度の制御を行っても良い。あるいは、脱バインダーを行わずに、本焼成を行い、造粒時に添加したバインダーを炉内で分解させて、発生したガスにより炉内を還元性雰囲気にして、酸素濃度の制御を行っても良い。また、ロータリー式電気炉の場合、雰囲気や焼成温度を変更して、多数回焼成を行っても良い。
・工程6(選別工程):
焼成した粒子を解砕した後に、必要に応じて、磁力により低磁力品を分別し、分級や篩で篩分して粗大粒子や微粒子を除去してもよい。
・工程7(表面処理):
必要に応じて、表面を低温加熱することで酸化被膜処理を施し、抵抗調整を行うことができる。酸化被膜処理は、一般的なロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用い、300℃以上700℃以下で熱処理を行うことが好ましい。この処理によって形成された酸化被膜の厚さは、0.1nm以上5.0nm以下であることが好ましい。また、必要に応じて、酸化被膜処理の前に還元を行っても良い。
上記のようにして得られた多孔質磁性コア粒子の体積分布基準50%粒径(D50)は、18.0μm以上68.0μm以下であることが好ましい。多孔質磁性コア粒子のD50が上記の範囲内であれば、トナーへの摩擦帯電付与性を良好にし、ハーフトーン部の画質を満足し、カブリの抑制とキャリア付着の防止することができる。
多孔質磁性コア粒子は、後述する比抵抗測定法において、電界強度300V/cmにおける比抵抗が、5.0×10Ω・cm以上5.0×10Ω・cm以下であることが、現像性を高くできることから好ましい。
<充填コア粒子の製造方法>
多孔質磁性コア粒子の孔にシリコーン樹脂を充填させる方法としては、シリコーン樹脂を溶剤に希釈し、これを多孔質磁性コア粒子の孔に添加し、溶剤を除去する方法が挙げられる。ここで用いられる溶剤は、シリコーン樹脂を溶解できるものであればよい。有機溶剤として、トルエン、キシレン、セルソルブブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノールが挙げられる。多孔質磁性コア粒子の孔に、樹脂を充填する方法としては、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、及び流動床の如き塗布方法が挙げられ、その後、溶剤を揮発させる。
浸漬法としては、減圧状態でシリコーン樹脂と溶剤を混合したシリコーン樹脂溶液を多孔質磁性コア粒子の孔へ充填し、脱気や加温により溶剤を除去する方法が好ましい。脱気の速度や加温の温度で、溶剤除去スピードを制御することで、多孔質磁性コア粒子の孔へのシリコーン樹脂の含浸性をコントロールすることができる。減圧の程度としては、1.30×10Pa乃至9.30×10Paが好ましい。9.30×10Paを超えると減圧する効果がなく、1.30×10Pa未満では、充填工程中に樹脂溶液が沸騰しやすくなるため、充填されない部分が残る場合がある。
シリコーン樹脂を充填する工程は、複数回に分けて行うことが好ましい。1回の充填工程でシリコーン樹脂を充填することは可能であり、必ずしも複数回に分ける必要はない。しかし、シリコーン樹脂の種類によっては、一度に多量の樹脂を充填しようとした場合、合一粒子が発生する場合がある。合一粒子は機械的強度が弱く、現像機内の混合攪拌により容易に樹脂の剥離が生じ、充填コア粒子表面が露出する。そのため、磁性キャリアの電気抵抗が低下し、現像時にリークが発生する場合がある。一方、複数回に分けて樹脂の充填を行うことによって、合一粒子を防ぎつつ、過不足なく充填が行える。
シリコーン樹脂を充填した後、必要に応じて各種の方式によって加熱し、充填したシリコーン樹脂を多孔質磁性コア粒子に密着させる。加熱方式としては、外部加熱方式又は内部加熱方式のいずれでもよく、固定式又は流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉、マイクロウェーブ炉による焼付けが挙げられる。加熱温度は、充填するシリコーン樹脂によって異なるが、充分硬化が進む温度まで上げることにより、衝撃に対して強い磁性キャリアを得ることができる。酸化防止のため、窒素など不活性ガス気流中で処理することが好ましい。
充填するシリコーン樹脂の量は、本発明に用いられる充填コア粒子の積算細孔容積が、3.0mm/g以上15.0mm/g以下であることから、多孔質磁性コア粒子の細孔容積に対して、60体積%乃至90体積%であることが好ましい。ビニル系樹脂の被覆性の向上の観点から、70体積%乃至80体積%であることがより好ましい。また、本発明に用いられる多孔質磁性コア粒子の積算細孔容積が、35.0mm/g以上95.0mm/g以下であることから、充填するシリコーン樹脂量としては、多孔質磁性コア粒子100質量部に対して、3.0乃至10.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、6.0乃至8.0質量部である。
シリコーン樹脂溶液における樹脂固形分量は、6質量%以上25質量%以下であることが好ましい。シリコーン樹脂溶液における樹脂固形分量が上記範囲内であれば、樹脂溶液の粘度のハンドリング性が良いため、細孔への充填性が良好であり、溶媒の除去時間も長くならない。
多孔質磁性コア粒子の孔に充填するシリコーン樹脂としては特に限定されないが、含浸性の高いシリコーン樹脂が好ましい。含浸性の高いシリコーン樹脂を用いた場合には、多孔質磁性コア粒子の内部から樹脂が充填されることで、充填コア粒子表面近傍の細孔が残る。これによって、充填コア粒子表面が凹凸のある形状を有するため、上述した通りビニル系樹脂による被覆性が向上する。
上記の観点から、シリコーン樹脂は、ケイ素原子1個当たりに結合している有機基の平均数(R/Si比)が1.30以上1.50以下であることが好ましい。R/Si比が上記の範囲内であれば、シリコーン樹脂の含浸性が高く、多孔質磁性コア粒子内部から樹脂が充填され、ビニル系樹脂の被覆性を向上させることができる。ここで、有機基Rとは鎖式構造の鎖式炭化水素、あるいは、環構造の環式炭化水素を表している。ビニル系樹脂の被覆性が向上する原因は、R/Si比が上記の範囲内であれば、シリコーン樹脂が適当な量のシラノール基を含有しており、シリコーン樹脂の硬化性と、ビニル系樹脂との親和性が両立できるためである。一般的に、R/Si比が小さくなると、シラノール基が多くなり、シリコーン樹脂の硬化性が高まる。また、R/Si比が大きくなるとシラノール基が少なくなり、ビニル系樹脂との親和性が低くなる。ただし、R/Si比の調整によって、シリコーン樹脂のビニル系樹脂に対する親和性を高めても、充填コア粒子の積算細孔容積が適切な範囲でなければ、充填コア粒子をビニル樹脂で十分に被覆することはできない。
シリコーン樹脂としては、市販品として、以下のものが挙げられる。信越化学社製のKR251、KR255東レ・ダウコーニング社製のSR2440、SR2441。
シリコーン樹脂を充填する際には、シランカップリング剤をシリコーン樹脂を溶解した溶液中に含有させておくことが好ましい。シリコーン樹脂に対して、シランカップリング剤は相溶性が良好であり、シランカップリング剤を用いることにより、多孔質磁性コア粒子とシリコーン樹脂との濡れ性及び密着性がより高まる。そのため、シリコーン樹脂が、多孔質磁性コア粒子の内部から充填され、充填コア粒子表面近傍に細孔を適度に残すことができる。その結果、充填コア粒子表面は凹凸のある形状を有しているため、上述した通りビニル系樹脂による被覆性が向上する。
用いられるシランカップリング剤としては特に限定されないが、官能基が存在することで、ビニル系樹脂との親和性も良好になることから、アミノシランカップリング剤が特に好ましい。アミノシランカップリング剤が、多孔質磁性コア粒子とシリコーン樹脂との濡れ性及び密着性がより高め、更にビニル系樹脂との親和性を良好にする理由は、以下のように考えられる。アミノシランカップリング剤は、無機物と反応する部分と、有機物と反応する部分を有しており、一般的に、アルコキシ基が無機物と、アミノ基を有する官能基が有機物と反応すると考えられている。よって、アミノシランカップリング剤のアルコキシ基が、多孔質磁性コア粒子の部分と反応することで、濡れ性及び密着性を高め、アミノ基を有する官能基は、シリコーン樹脂側に配向することで、ビニル系樹脂との親和性を高めると考えられる。
添加するシランカップリング剤の量は、シリコーン樹脂100質量部に対して、1.0乃至20.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、5.0乃至10.0質量部である。
本発明に用いられる充填コア粒子は、体積分布基準50%粒径(D50)が19.0μm以上69.0μm以下であることが好ましい。充填コア粒子のD50が上記範囲内であれば、キャリア付着やトナースペントが抑制される。
本発明に用いられる充填コア粒子は、後述する比抵抗測定法において、電界強度1000V/cmにおける比抵抗が、1.0×10Ω・cm以上1.0×10Ω・cm以下であることが好ましい。充填コア粒子の電界強度1000V/cmにおける比抵抗が上記範囲内であれば、適度な量の樹脂が充填されており、リークの発生等が抑制され、好適な現像性を有する。
<磁性キャリアの製造方法>
充填コア粒子の表面をビニル系樹脂で被覆する方法としては、特に限定されないが、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、乾式法、及び流動床の如き塗布方法により処理する方法が挙げられる。中でも、低抵抗な多孔質磁性コア粒子の特徴を生かすためには、被覆層の薄い部分と厚い部分の割合を制御することができる浸漬法がより好ましい。
被覆するビニル系樹脂溶液の調製としては、充填工程と同様の方法が用いられる。被覆工程時の造粒を制御するためには、被覆する樹脂溶液中の樹脂濃度、被覆する装置内の温度、溶剤を除去する際の温度や減圧度、樹脂被覆工程の回数などを調整する。
被覆層に用いられるビニル系樹脂としては特に限定されないが、分子構造中に環式炭化水素基を有するビニル系モノマーと他のビニル系モノマーとの共重合体であることが好ましい。該ビニル系樹脂を被覆することで、高温高湿環境下における、帯電量の低下を抑制することができる。その原因は、以下のように考えられる。ビニル系樹脂を充填コア粒子の表面に被覆する場合、ビニル系樹脂を有機溶剤中に溶解させた樹脂溶液と、充填コア粒子とを混合し、脱溶媒する工程を経る。その際、環式炭化水素基が被覆樹脂層の表面に配向しながら溶媒が除去されていき、溶媒除去後の磁性キャリアの表面には、高疎水性の環式炭化水素基が配向された状態で被覆樹脂層が形成されていると考えられる。
環式炭化水素基の具体例としては、炭素数3以上10以下の環式炭化水素基が挙げられる。具体的には、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、イソボニル基、ノルボニル基、ボロニル基が挙げられる。その中でも、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基が好ましい。また、構造上安定であることにより充填コア粒子との密着性が高いという観点からシクロヘキシル基が特に好ましい。
また、ガラス転移温度(Tg)を調整するために、さらにその他のモノマーをビニル系樹脂の構成成分として含有させてもよい。ビニル系樹脂の構成成分として用いられるその他のモノマーとしては、公知のモノマーが用いられるが、例えば次のようなものが挙げられる。スチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルケトン。
さらに、被覆層に用いられるビニル系樹脂が、グラフト重合体であることが、多孔質磁性コア粒子との濡れ性がさらに良化し、均一なビニル系被覆層が形成されるため好ましい。グラフト重合体を得るには、幹鎖を形成後グラフト重合する方法や、モノマーとしてマクロモノマーを用いて共重合する方法がある。その中でも、マクロモノマーを共重合して用いる方法が、枝鎖の分子量を容易にコントロールできるために好ましい。
用いられるマクロモノマーとしては特に限定されないが、多孔質磁性コア粒子との濡れ性がさらに良化することから、メチルメタクリレートマクロモノマーが好ましい。上記の環式炭化水素基が被覆樹脂層の表面に配向することに対して、疎水性が大きく異なるマクロモノマーは充填コア粒子に配向することに由来する。そして、マクロモノマーは重合体の末端に反応性の官能基を有するオリゴマー分子を有していることから、多孔質磁性コア粒子との濡れ性に作用していると考える。
上記マクロモノマーを重合する際に使用する量は、ビニル系樹脂の幹鎖の共重合体100質量部に対して、マクロモノマーに由来する枝鎖部分が10乃至50質量部であることが好ましく、20乃至40質量部がより好ましい。
また、被覆樹脂に、導電性を有する粒子や荷電制御性を有する粒子や材料を含有させて用いてもよい。導電性を有する粒子としては、カーボンブラック、マグネタイト、グラファイト、酸化亜鉛、酸化錫が挙げられる。導電性を有する粒子の添加量としては、被覆樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが磁性キャリアの抵抗を調整するためには好ましい。荷電制御性を有する粒子としては、有機金属錯体の粒子、有機金属塩の粒子、キレート化合物の粒子、モノアゾ金属錯体の粒子、アセチルアセトン金属錯体の粒子、ヒドロキシカルボン酸金属錯体の粒子、ポリカルボン酸金属錯体の粒子、ポリオール金属錯体の粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂の粒子、ポリスチレン樹脂の粒子、メラミン樹脂の粒子、フェノール樹脂の粒子、ナイロン樹脂の粒子、シリカの粒子、酸化チタンの粒子、アルミナの粒子など挙げられる。荷電制御性を有する粒子の添加量としては、被覆樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上50.0質量部以下であることが摩擦帯電量を調整するためには好ましい。
本発明の磁性キャリアは、体積分布基準50%粒径(D50)が20.0μm以上70.0μm以下であることが、キャリア付着を抑制したり、トナースペントを抑制し、長期間の使用においても安定して用いることができるため好ましい。
本発明の磁性キャリアは、後述する比抵抗測定法において、電界強度1000V/cmにおける比抵抗が、5.0×10Ω・cm以上5.0×10Ω・cm以下であることが、現像性を高くできることから好ましい。
<トナーの製造方法>
次に、二成分系現像剤に磁性キャリアと共に含有されるトナーについて説明する。
トナーに用いられるトナー粒子を製造する方法としては、以下の方法が挙げられる。結着樹脂、着色剤、ワックスを溶融混練し、混練物を冷却後、粉砕及び分級する粉砕法;結着樹脂と着色剤とを溶剤中に溶解または分散させた溶液を水系媒体中に導入し懸濁造粒させ、該溶剤を除去することによってトナー粒子を得る懸濁造粒法;モノマーに着色剤等を均一に溶解または分散したモノマー組成物を分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に分散し、重合反応を行いトナー粒子を作製する懸濁重合法;高分子分散剤を水系有機溶剤中に溶解し、モノマーが重合することで溶媒不溶の粒子を生成してトナー粒子を得る分散重合法;水溶性極性重合開始剤存在下で直接重合しトナー粒子を生成する乳化重合法;少なくとも重合体微粒子及び着色剤微粒子を凝集して微粒子凝集体を形成する工程と該微粒子凝集体中の微粒子間の融着を起こさせる熟成工程を経て得られる乳化凝集法。粉砕法によってトナーを製造する場合、粉砕後、あるいは粉砕・分級後に、トナーの表面を機械的、熱的な処理により改質することで小粒子の低減を行うことができる。
トナーに含有される結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリエステル、ポリスチレン;ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン誘導体の重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体の如きスチレン共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂;脂肪族多価アルコール、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアルコール類及びジフェノール類から選択されるモノマーを構造単位として有するポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂、ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂。
結着樹脂は、トナーの保存性と低温定着性を両立するために、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布のピーク分子量(Mp)が2000以上50000以下、数平均分子量(Mn)が1500以上30000以下、重量平均分子量(Mw)が2000以上1000000以下、ガラス転移点(Tg)が40℃以上80℃以下であることが好ましい。
ワックスは、結着樹脂100質量部あたり0.5質量部以上20.0質量部以下使用されることが高光沢度の画像を提供できるために好ましい。また、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度としては45℃以上140℃以下であることが好ましい。トナーの保存性とホットオフセット性を両立できるためである。
ワックスとしては、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニルエステルワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。中でも、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックスが、高光沢度の画像を提供できるため好ましい。
トナーに含有される着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。マゼンタ用着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。シアン用着色剤としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、7、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66;C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチルを1乃至5個置換した銅フタロシアニン顔料が挙げられる。イエロー用着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物が挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
着色剤の使用量は、磁性体を用いる場合以外は、結着樹脂100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上30.0質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上20.0質量部以下である。
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。荷電制御剤の添加量は結着樹脂100質量部に対し0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
トナーには、流動性向上のため、外添剤が添加されていることが好ましい。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粉体が好ましい。無機微粉体は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができる。
粉砕法によるトナー製造手順について説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、結着樹脂、着色剤及びワックス、必要に応じて荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(三井鉱山社製)が挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に着色剤等を分散させる。その溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(三井鉱山社製)が挙げられる。
更に、溶融混練することによって得られる着色された樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルの如き粉砕機で粗粉砕した後、更に、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)の如き分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。
また、必要に応じて、粉砕後に、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック社製)を用いて、球形化処理の如きトナー粒子の表面改質処理を行うこともできる。
二成分系現像剤としては、トナーと磁性キャリアの混合比率が磁性キャリア100質量部に対してトナーを2質量部以上15質量部以下とすることが好ましく、4質量部以上12質量部以下がより好ましい。上記範囲とすることで、トナーの飛散を低減し、長期に渡って摩擦帯電量が安定する。
本発明に係る各種物性の測定について以下に説明する。
<磁性キャリア、充填コア粒子、多孔質磁性コア粒子の体積分布基準50%粒径(D50)の測定方法>
粒度分布測定は、レーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置「マイクロトラックMT3300EX」(日機装社製)にて測定を行った。
体積分布基準50%粒径(D50)の測定には、乾式測定用の試料供給機「ワンショットドライ型サンプルコンディショナーTurbotrac」(日機装社製)を装着して行った。Turbotracの供給条件として、真空源として集塵機を用い、風量約33リットル/sec、圧力約17kPaとした。制御は、ソフトウェア上で自動的に行う。粒径は体積基準の累積値である50%粒径(D50)を求める。制御及び解析は付属ソフト(バージョン10.3.3−202D)を用いて行う。測定条件は下記の通りである。
SetZero時間 :10秒
測定時間 :10秒
測定回数 :1回
粒子屈折率 :1.81
粒子形状 :非球形
測定上限 :1408μm
測定下限 :0.243μm
測定環境 :約23℃/50%RH
<磁性キャリアの電界強度1000V/cmにおける比抵抗、充填コア粒子の電界強度1000V/cmにおける比抵抗、多孔質磁性コア粒子の電界強度300V/cmにおける比抵抗の測定>
磁性キャリアの電界強度1000V/cmにおける比抵抗、充填コア粒子の電界強度1000V/cmにおける比抵抗、多孔質磁性コア粒子の電界強度300V/cmにおける比抵抗は、図1に概略される測定装置を用いて測定される。
抵抗測定セルAは、断面積2.4cmの穴の開いた円筒状のPTFE樹脂容器1、下部電極(ステンレス製)2、支持台座(PTFE樹脂製)3、上部電極(ステンレス製)4から構成される。支持台座3上に円筒状のPTFE樹脂容器1を載せ、試料(磁性キャリア、充填コア粒子、多孔質磁性コア粒子)5を厚さ約1mmになるように充填し、充填された試料5に上部電極4を載せ、試料の厚みを測定する。図1(a)に示すように、試料が無いときの間隙をd1とし、図1(b)に示すように、厚さ約1mmとなるように試料を充填したときの間隙d2とすると、試料の厚みdは下記式で算出される。
d=d2−d1
この時、試料の厚みが0.95mm以上1.04mmとなるように試料の質量を適宜変えることが重要である。
電極間に直流電圧を印加し、そのときに流れる電流を測定することによって磁性キャリア、多孔質磁性コア粒子の比抵抗を求めることができる。測定には、エレクトロメーター6(ケスレー6517A ケスレー社製)及び制御用にコンピュータ7を用いる。
制御用コンピュータにナショナルインスツルメンツ社製の制御系と制御ソフトウェア(LabVEIW ナショナルインスツルメンツ社製)を用いて制御を行う。測定条件として、試料と電極との接触面積S=2.4cm、試料の厚み0.95mm以上1.04mm以下になるように実測した値dを入力する。また、上部電極の荷重270g、最大印加電圧1000Vとする。
電圧の印加条件は、制御用コンピュータとエレクトロメーター間の制御にIEEE−488インターフェースを用いて、エレクトロメーターの自動レンジ機能を利用し、1V(2V)、2V(2V)、4V(2V)、8V(2V)、16V(2V)、32V(2V)、64V(2V)、128V(2V)、256V(2V)、512V(2V)、1000Vの電圧を1秒間ずつ印加するスクリーニングを行う。その際に最大1000V(例えば、1.00mmの試料厚みの場合は、電界強度としては、10000V/cm)まで印加可能かどうかをエレクトロメーターが判断し、過電流が流れる場合、「VOLTAGE SOURCE OPERATE」が点滅する。すると印加電圧を下げて、印加可能な電圧をさらにスクリーニングし、印加電圧の最大値を自動的に決める。その後、本測定を行う。その最大電圧値を5分割した電圧を各ステップとして30秒間保持させた後の電流値から抵抗値を測定する。例えば、最大印加電圧が1000Vの場合には、200V(第1ステップ)、400V(第2ステップ)、600V(第3ステップ)、800V(第4ステップ)、1000V(第5ステップ)、1000V(第6ステップ)、800V(第7ステップ)、600V(第8ステップ)、400V(第9ステップ)、200V(第10ステップ)と最大印加電圧の1/5である200V刻みで電圧を上げた後下げていくような順で印加し、それぞれのステップで30秒保持後の電流値から抵抗値を測定する。
実施例1に用いられる磁性キャリアの場合には、スクリーニング時には、1V(2V)、2V(2V)、4V(2V)、8V(2V)、16V(2V)、32V(2V)、64V(2V)、128V(2V)、256V(2V)の直流電圧を1秒間ずつ磁性キヤリアに印加し、「VOLTAGE SOURCE OPERATE」の表示が128Vまでは、点灯し、256Vで「VOLTAGE SOURCE OPERATE」の表示が点滅した。次に直流電圧181V(27.5V)では点灯し、直流電圧215V(≒27.7V)で点滅、さらに、最大印加可能な電圧を収束させて、直流電圧197V(27.6V)で点灯した。その結果、最大印加電圧が197V(27.6V)となった。197Vの1/5の値の39.4V(第1ステップ)、197Vの2/5の値の78.8V(第2ステップ)、197Vの3/5の値の118.2V(第3ステップ)、197Vの4/5の値の157.6V(第4ステップ)、197Vの5/5の値の197.0V(第5ステップ)、5/5の値の197.0V(第6ステップ)、197Vの4/5の値の157.6V(第7ステップ)、197Vの3/5の値の118.2V(第8ステップ)、197Vの2/5の値の78.8V(第9ステップ)、197Vの1/5の値の39.4V(第10ステップ)の順で直流電圧を印加する。そこで得られる電流値をコンピュータにより処理することで、試料厚み1.04mmと、電極面積とから電界強度及び比抵抗を算出して、グラフにプロットする。その場合、最大印加電圧から電圧を下げていく5点をプロットする。そして、電界強度1000V/cmあるいは電界強度300V/cmにおける比抵抗を読み取る。
尚、比抵抗、電界強度は、下記式にて求められる。
比抵抗(Ω・cm)=(印加電圧(V)/測定電流(A))×S(cm)/d(cm)
電界強度(V/cm)=印加電圧(V)/d(cm)
<多孔質磁性コア粒子及び充填コア粒子の積算細孔容積及び平均細孔径の測定>
多孔質磁性コア粒子及び充填コア粒子の積算細孔容積は、水銀圧入法により測定される。測定原理は、以下の通りである。本測定では、水銀に加える圧力を変化させ、その際の細孔中に進入した水銀の量を測定する。細孔内に水銀が侵入し得る条件は、圧力P、細孔直径D、水銀の接触角と表面張力をそれぞれθとσとすると、力の釣り合いからPD=−4σcosθで表せる。接触角と表面張力を定数とすれば、圧力Pとそのとき水銀が侵入し得る細孔直径Dは反比例することになる。このため、圧力Pとそのときに侵入する液量Vを、圧力を変えて測定し得られる、P−V曲線の横軸Pを、そのままこの式から細孔直径に置き換え、細孔分布を求めて、0.1μm以上3.0μm以下の細孔径の範囲における微分細孔容積を積分し、細孔容積(図2(b)中塗り部分)を算出する。測定装置としては、ユアサアイオニクス社製 全自動多機能水銀ポロシメータPoreMasterシリーズ・PoreMaster−GTシリーズや、島津製作所社製 自動ポロシメータオートポアIV 9500 シリーズ等を用いて測定することができる。本願では、株式会社 島津製作所のオートポアIV9520を用いて、下記条件・手順で測定を行った。
測定条件「測定環境:20℃」「測定セル:試料体積 5cm、圧入体積 1.1cm、用途 粉体用」「測定範囲:2.0psia(13.8kPa)以上59989.6psia(413.7Mpa)以下」「測定ステップ:80ステップ(細孔径を対数で取ったときに等間隔になるようにステップを刻む)」「圧入体積:25%以上70%以下になるように調節」「低圧パラメータ;排気圧力:50μmHg、排気時間:5.0min、水銀注入圧力:2.0psia(13.8kPa)、平衡時間:5secs」「高圧パラメータ;平衡時間:5secs」「水銀パラメータ;前進接触角:130.0degrees、後退接触角:130.0degrees、表面張力;485.0mN/m(485.0dynes/cm)、水銀密度;13.5335g/mL」
(測定手順)
(1)約1.0gの多孔質磁性コア粒子または充填コア粒子を秤量し、試料セルに入れる。そして、秤量値を入力する。
(2)低圧部で2.0psia(13.8kPa)以上45.8psia(315.6kPa)以下の範囲を測定。
(3)高圧部で45.9psia(316.3kPa)以上59989.6psia(413.6Mpa)以下の範囲を測定。
(4)水銀注入圧力及び水銀注入量から、細孔分布及び平均細孔径を算出する。ここで、平均細孔径とは、付属ソフトで解析し算出された値であり、0.1μm以上3.0μm以下の細孔径の範囲に指定した場合のメディアン細孔直径(容積基準)の値である。
(2)、(3)、(4)は、装置付属のソフトウェアにて、自動で行った。上記の様にして計測した細孔分布の一例を図2に示す。図2(a)は、多孔質磁性コア粒子の細孔分布の全測定領域を示しており、図2(b)は、多孔質磁性コア粒子の細孔分布のうち、細孔径0.1μm以上6.0μm以下の範囲の部分を切り出した図を示している。0.1μm以上3.0μm以下の細孔径の範囲における積算細孔容積は、付属のソフトウェアを用いて、0.1μm以上3.0μm以下の細孔径の範囲のLog微分細孔容積を積分することで、算出する。さらに、平均細孔径も算出する。なお、図2(b)では、0.1μm以上3.0μm以下の細孔径の範囲における細孔容積を黒塗りで表している。図2(c)は、充填コア粒子の細孔径分布において、細孔径0.1μm以上6.0μm以下の範囲の部分を切り出した図を示している。図2(c)では、0.1μm以上3.0μm以下の細孔径の範囲における細孔容積を黒塗りで表している。
<多孔質磁性コア粒子に由来する輝度の高い部分の比率S
磁性キャリア粒子表面上の多孔質磁性コア粒子に由来する輝度の高い部分の比率Sは、走査電子顕微鏡による反射電子像の観察と、続く画像処理により求めることができる。
磁性キャリア粒子表面の多孔質磁性コア粒子に由来する輝度の高い部分の比率Sの測定は、走査電子顕微鏡(SEM)、S−4800(日立製作所社製)を用いて行う。多孔質磁性コア粒子に由来する部分の面積割合は、加速電圧2.0kVのときの、主に反射電子を可視化した像の画像処理から算出される。
具体的には、電子顕微鏡観察用の試料台上にカーボンテープで磁性キャリア粒子を一層になるように固定し、白金による蒸着は行わずに、以下の条件にて、走査電子顕微鏡S−4800(日立製作所社製)で観察する。フラッシング操作を行ってから観察を行う。
SignalName=SE(U,LA80)
AcceleratingVoltage=2000Volt
EmissionCurrent=10000nA
WorkingDistance=6000um
LensMode=High
Condencer1=5
ScanSpeed=Slow4(40秒)
Magnification=600
DataSize=1280×960
ColorMode=Grayscale
反射電子像は、走査電子顕微鏡S−4800の制御ソフト上で‘コントラスト5、ブライトネス−5’に明るさを調整し、キャプチャスピード/積算枚数‘Slow4を40秒’、画像サイズ1280×960pixelsの8bitの256階調グレースケール画像として磁性キャリアの投影像を得る(図3(a))。画像上のスケールから、1pixelの長さは0.1667μm、1pixelの面積は0.0278μmとなる。
続いて、得られた反射電子による投影像を用いて、磁性キャリア粒子50個について金属酸化物に由来する部分の面積割合(面積%)を算出する。解析する磁性キャリア粒子50個の選択方法の詳細は後述する。金属酸化物に由来する部分の面積%は、画像処理ソフトImage−Pro Plus5.1J(MediaCybernetics社製)を使用する。
まず、図3(a)の画像下部の文字列は画像処理に不必要であり、不要な部分を削除し1280×895のサイズに切り出す(図3(b))。
次に、磁性キャリア粒子の部分を抽出し、抽出された磁性キャリア粒子部分のサイズをカウントする。具体的には、まず、解析する磁性キャリア粒子を抽出するため、磁性キャリア粒子と背景部分を分離する。Image−Pro Plus5.1Jの「測定」−「カウント/サイズ」を選択する。「カウント/サイズ」の「輝度レンジ選択」で、輝度レンジを50〜255の範囲に設定して、背景として写りこんでいる輝度の低いカーボンテープ部分を除外し、磁性キャリア粒子の抽出を行う(図3(c))。カーボンテープ以外の方法で磁性キャリア粒子を固定した際には、必ずしも背景が輝度の低い領域とならない、あるいは、部分的に磁性キャリア粒子と同じような輝度となる可能性は皆無ではない。しかし、磁性キャリア粒子と背景の境界については、反射電子観察像から容易に区別できる。抽出を行う際、「カウント/サイズ」の抽出オプションで、4連結を選択し、平滑度5を入力、穴埋めるにチェックを入れ、画像の全ての境界(外周)上に位置する粒子や他の粒子と重なっている粒子については、計算から除外するものとする。次に「カウント/サイズ」の測定項目で、面積とフェレ径(平均)を選択し、面積の選別レンジを最小300pixel、最大10000000pixelとする。また、フェレ径(平均)は、後述する磁性キャリアの体積分布基準50%粒径(D50)の測定値の±25%径の範囲になるよう選別レンジを設定し、画像解析する磁性キャリア粒子を抽出する(図3(d))。抽出された粒子群から一粒子を選択し、その粒子に由来する部分の大きさ(pixel数)を(その粒子の全投影面積)を求める。
次に、Image−Pro Plus5.1Jの「カウント/サイズ」の「輝度レンジ選択」で、輝度レンジを140〜255の範囲に設定して、キャリア粒子上の輝度の高い部分の抽出を行う(図3(e))。面積の選別レンジを最小10pixel、最大10000pixelとする。
そして、先ほど選択した粒子について、磁性キャリア粒子表面の多孔質磁性コア粒子に由来する輝度の高い部分の大きさ(pixel数)(磁性キャリア粒子1粒子上の多孔質磁性コア粒子に由来する輝度の高い部分の総面積)を求める。さらに、多孔質磁性コア粒子に由来する輝度の高い部分の比率は、(磁性キャリア粒子1粒子上の多孔質磁性コア粒子に由来する輝度の高い部分の総面積/その粒子の全投影面積)×100で求める。
次いで、抽出された粒子群の各粒子に対して、選択される磁性キャリア粒子の数が50となるまで同様の処理を行う。一視野中の粒子の数が50に満たない場合には、別視野の磁性キャリア粒子投影像について同様の操作を繰り返す。多孔質磁性コア粒子に由来する輝度の高い部分の比率Sは、これらの粒子の多孔質磁性コア粒子に由来する輝度の高い部分の比率の平均とする。
<トナーの結着樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定方法>
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。試料としては、樹脂、または、トナーを用いる。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置 :HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム :Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
流速 :1.0ml/min
オーブン温度 :40.0℃
試料注入量 :0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<シリコーン樹脂のR/Si比の測定方法>
上述したシリコーン樹脂のR/Si比の測定は、硬化前のシリコーン樹脂を分析することによって行われる。硬化させた後のシリコーン樹脂のNMR測定は困難であるため、溶媒を除去した硬化前のシリコーン樹脂を測定する。
具体的な測定方法は、以下の様である。多孔質磁性コア粒子の充填に用いるシリコーン樹脂溶液の溶媒を減圧で留去し、二昼夜真空乾燥させる。こうして得られた樹脂固形分を重ジクロロメタンに溶解させる。こうして得られた樹脂溶液を、Si−NMR(ブルカー製ACP−300)を用いて測定する。得られたSi−NMRスペクトルから、−19.0乃至−25.0ppmのピークをD単位のSi、−63.0乃至−71.0ppmのピークをT単位のSiと帰属した。R/Siの算出方法は以下の通りである。D単位のSiの量をdとすると、D単位のSiに結合するR量は2dとなる。また、T単位のSiの量をtとすると、T単位のSiに結合するR量はtとなる。よって、R/Siは、下記式で算出することが可能である。
<多孔質磁性コア粒子1の製造例>
・工程1(秤量・混合工程):
Fe 61.9質量部
MnCO 31.0質量部
Mg(OH) 6.5質量部
SrCO 0.6質量部
上記組成比となるように上記フェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕、混合を行った。
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物を、ローラーコンパクターによって、約1mm角のペレットにした。このペレットに対して、目開き3mmの振動篩を用いて、粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した。その後、バーナー式焼成炉を用い、大気中で、温度950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)(MgO)(SrO)(Fe
上記式において、a=0.349、b=0.144、c=0.005、d=0.502
・工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのステンレスビーズを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。そのスラリーを、直径1/16インチのステンレスビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100質量部に対して、1.0質量部のポリカルボン酸アンモニウム(分散剤)、2.0質量部のポリビニルアルコール(バインダー)を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、室温から温度1150℃まで3時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、8時間をかけて、温度80℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)35.1μmの多孔質磁性コア粒子1を得た。D50、電界強度300V/cmにおける比抵抗、及び細孔容積、平均細孔径を表1に示す。
<多孔質磁性コア粒子2〜14の製造例>
多孔質磁性コア粒子の製造例1において、製造条件を表1に示すように変更し、それ以外は多孔質磁性コア粒子の製造例1と同様にして多孔質磁性コア粒子2〜14を得た。多孔質磁性コア粒子2〜14のD50、電界強度300V/cmにおける比抵抗、0.1μm以上3.0μm以下の細孔径の範囲における細孔容積、平均細孔径を表1に示す。なお、表1において、PVAはポリビニルアルコールを表す。
<シリコーン樹脂1の調製>
ポリジメチルシロキサン(平均重合度55) 5.0質量部
メチルトリクロロシラン 25.0質量部
水 40.0質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
上記材料のうち、水、メチルイソブチルケトンを、還流冷却管、滴下ロート、及び撹拌器を備えた反応容器に、二層を形成しないよう激しく撹拌しておき、ポリジメチルシロキサンを加えてさらに撹拌し、氷浴中に入れた。反応容器内の混合物の温度が10℃となったところで、メチルトリクロロシランを滴下ロートからゆっくり滴下した。この際、反応混合物の温度は17℃まで上昇した。滴下終了後、有機層が中性になるまで洗浄し、次いで有機層を乾燥剤を用いて乾燥した。乾燥剤を除去した後、溶媒を減圧で留去し、二昼夜真空乾燥を行いシリコーン樹脂1を得た。このシリコーン樹脂1のNMRスペクトルから求めたR/Siは1.4であった。
<シリコーン樹脂2〜7の調製>
シリコーン樹脂1の調製において、用いる材料を表2に示したように変更し、それ以外はシリコーン樹脂1の調製と同様にしてシリコーン樹脂2〜7を調製した。
<シリコーン樹脂溶液1の調製>
シリコーン樹脂1 19.6質量部
トルエン 78.4質量部
3−アミノプロピルトリメトキシシラン 2.0質量部
を1時間混合し、シリコーン樹脂溶液1を得た。
<シリコーン樹脂溶液2〜10の調製>
シリコーン樹脂溶液1の調製において、用いる材料を表3に示したように変更し、それ以外はシリコーン樹脂溶液1の調製と同様にしてシリコーン樹脂溶液2〜10を調製した。
<ビニル系樹脂1の調製>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量部
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量部
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量部
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量部
メチルエチルケトン 31.3質量部
上記材料を、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした。その後、80℃まで加温し、2.0質量部のアゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してビニル系樹脂1を得た。
<ビニル系樹脂2〜4の調製>
ビニル系樹脂1の調製において、用いる材料を表4に示すように変更し、それ以外はビニル系樹脂1の調整と同様にしてビニル系樹脂2〜4を調製した。
<ビニル系樹脂溶液1の調製>
ビニル系樹脂1 10.0質量部
トルエン 90.0質量部
を1時間混合し、ビニル系樹脂溶液1を得た。
<ビニル系樹脂溶液2〜8の調製>
ビニル系樹脂溶液1の調製において、表5に示したように変更し、それ以外はビニル系樹脂溶液1の調製と同様にしてビニル系樹脂溶液2〜8を調製した。
<磁性キャリア1の製造>
(樹脂充填工程)
100.0質量部の多孔質磁性コア粒子1を混合撹拌機(ダルトン社製の万能撹拌機NDMV型)の撹拌容器内に入れ、60℃に温度を保ち、2.3kPaまで減圧しながら窒素を導入した。そして、減圧下で、シリコーン樹脂溶液1を、多孔質磁性コア粒子1に対して樹脂成分が7.5質量部となるように滴下した。滴下終了後、2時間そのまま撹拌を続けた。その後、70℃まで温度を上げ、減圧下で溶剤を除去して、多孔質磁性コア粒子1の粒子内にシリコーン樹脂組成物を充填した。
冷却後、得られた粒子を回転可能な混合容器内にスパイラル羽根を有する混合機(杉山重工業社製のドラムミキサーUD−AT型)に移し、窒素雰囲気、常圧下で、2℃/分の昇温速度で、220℃に昇温した。この温度で60分間加熱撹拌を行い、樹脂を硬化させた。その後、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口150μmの篩で分級して、充填コア粒子1を得た。充填コア粒子1のD50、電界強度1000V/cmにおける比抵抗、0.1μm以上3.0μm以下の細孔径の範囲における細孔容積を表7に示す。
(樹脂被覆工程)
引き続き、減圧下(1.5kPa)、温度60℃で維持されている遊星運動型混合機(ホソカワミクロン社製のナウタミキサVN型)にビニル系樹脂溶液1を充填コア粒子1の100質量部に対して樹脂成分として2.0質量部になるように投入した。投入の仕方として、1/3の量の樹脂溶液を投入し、20分間トルエン除去及び塗布操作を行った。次いで、さらに1/3の量の樹脂溶液を投入し、20分間トルエン除去及び塗布操作を行い、さらに1/3の量の樹脂溶液を投入し、20分間トルエン除去及び塗布操作を行った。その後、ビニル樹脂で被覆された充填コア粒子を回転可能な混合容器内にスパイラル羽根を有する混合機(杉山重工業社製のドラムミキサーUD−AT型)に移し、混合容器を1分間に10回転させて撹拌しながら、窒素雰囲気下に温度200℃で2時間熱処理した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。得られた磁性キャリアの物性を表7に示す。
上記の様にして得られた磁性キャリアは、樹脂被覆工程に用いられたビニル系樹脂溶液の樹脂成分の量と、実際に磁性キャリアを被覆しているビニル系樹脂の量がほぼ等しい。このことを検証するために、以下の様な操作を行った。
一定量のキャリアをクロロホルムに浸し、超音波をかけることで、被覆樹脂を溶出させた。この操作を数回行い、得られた磁性キャリアを乾燥させた。そして、乾燥後のキャリア質量から、実効被覆樹脂量を算出した。磁性キャリア1の実効被覆樹脂量は、充填コア粒子1に対して2質量%であった。
<磁性キャリア2〜34の製造>
磁性キャリア1製造例のうち、用いる材料を表6に示すように変更し、それ以外は磁性キャリア1の製造と同様にして磁性キャリア2〜34を作製した。得られた磁性キャリアの物性を表7に示す。
<非晶性ポリエステル樹脂1の製造例>
・テレフタル酸: 299質量部
・無水トリメリット酸: 19質量部
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:
747質量部
・チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート): 1質量部
冷却管、攪拌機及び窒素導入管を備えた反応槽中に、上記の材料を添加した。その後、温度200℃に加熱し、窒素を導入し且つ生成する水を除去しながら10時間反応させた。その後、10mmHgに減圧し、1時間反応を行い、重量平均分子量(Mw)6000である非晶性ポリエステル樹脂1を得た。
<非晶性ポリエステル樹脂2の製造例>
・テレフタル酸: 332質量部
・ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
996質量部
・チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート): 1質量部
冷却管、攪拌機及び窒素導入管を備えた反応槽中に、上記の材料を添加した。その後、220℃に加熱し、窒素を導入し且つ生成する水を除去しながら10時間反応させた。さらに、無水トリメリット酸96質量部を加え、温度180℃に加熱し、2時間反応させ、重量平均分子量(Mw)84000である非晶性ポリエステル樹脂2を得た。
<トナー1の製造例>
・非晶性ポリエステル樹脂1: 80質量部
・非晶性ポリエステル樹脂2: 20質量部
・パラフィンワックス(融点:75℃): 7質量部
・シアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)): 5質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物: 1質量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)でよく混合した後、温度130℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、高圧気体を用いた衝突式気流粉砕機を用いて微粉砕した。
次に、得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した風力分級機(エルボジェットラボEJ−L3、日鉄鉱業社製)で分級しで微粉及び粗粉を同時に分級除去し、さらに機械的表面改質装置(ファカルティ F−300、ホソカワミクロン(株)社製)を用いて表面改質を行った。その際、分散ローターの回転数を7500rpm、分級ローターの回転数を9500rpmとし、投入量を1サイクルあたり250gとし、表面改質時間(=サイクルタイム、原料供給が終了してから排出弁が開くまでの時間)を30secとし、トナー粒子1を得た。
次いで、100質量部のトナー粒子1に、ルチル型酸化チタン(体積平均粒径:20nm、表面処理剤:n−デシルトリメトキシシラン)1.0質量部、シリカA(気相酸化法により作製、体積平均粒径:40nm、表面処理剤:シリコーンオイル)2.0質量部、シリカB(ゾルゲル法により作製、体積平均粒径:140nm、表面処理剤:シリコーンオイル)2.0質量部を加え、5リットルヘンシェルミキサーを用い、周速30m/sで15分間混合を行った。その後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去し、トナー1を得た。
<トナー2の製造例>
トナー1の製造において、非晶性ポリエステル樹脂1の添加量を80質量部から60質量部に変更し、非晶性ポリエステル樹脂2の添加量を20質量部から40質量部に変更し、パラフィンワックスの添加量を7質量部から3質量部に変更した。それ以外は、トナー1の製造例と同様にしてトナー2を製造した。
上記の様にして作製した磁性キャリアとトナーを、表8に示す様にして組み合わせ、二成分系現像剤を作製した。二成分系現像剤は、磁性キャリア92.0質量部に対してトナー8.0質量部を加え、V型混合機で5分間混合することで得た。
<実施例1>
以下の様にして、二成分系現像剤1の評価を行った。評価機として、キヤノン製デジタル商業印刷用プリンターimagePRESS C7010VP改造機を用い、シアン位置の現像器に二成分系現像剤1を入れ、耐久画像出力試験を行った。なお、上記評価機の改造点は、以下の様である。現像器内部で過剰になった磁性キャリアを現像器から排出する機構を取り外し、現像剤担持体には周波数2.0kHz、Vpp1.3kVの交流電圧と直流電圧VDCを印加した。耐久画像出力評価時の直流電圧VDCは、FFh画像(ベタ画像)のトナーの紙上への載り量が0.55mg/cmとなるように調整した。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFhが256階調の256階調目(ベタ部)である。
耐久画像出力試験としては、常温常湿環境下(温度23℃/湿度50%RH環境下、以下「N/N」)において、A4用紙に画像比率5%のFFh出力の帯チャートをプリントし、これを10,000枚出力した。なお、A4用紙は、PODスーパーグロス170(王子製紙社製、坪量128g/cm、厚さ0.17mm)を用いた。
以下の評価方法に基づいて評価を行った。結果を表9に示す。
[光沢度]
耐久試験前後の定着画像の光沢度の差を評価した。定着画像の光沢度は、JIS Z 8741に準じて、ハンディ光沢度計グロスメーターPG−3D(日本電色工業製)を用いて60°測定角型を選択して評価した。なお、光沢度は、測定画像の中央部及び四隅の5点平均値である。光沢度評価用画像は、VDCを調整し、A4紙全面にFFh画像を形成し、定着温度は180℃に設定した。また、定着画像を作成するための用紙は、市販のA4サイズの光沢紙「PODスーパーグロス170(王子製紙社製)(坪量128g/cm、厚さ0.17mm)」を用いた。
A:耐久試験前後の光沢度差が5.0%未満である。
B:耐久試験前後の光沢度差が5.0%以上10.0%未満である。
C:耐久試験前後の光沢度差が10.0%以上15.0%未満である。
D:耐久試験前後の光沢度差が15.0%以上である。
[カブリ]
耐久後のカブリを評価した。Vback150VになるようにVDCを調整し、00h画像を1枚出力し、紙上の平均反射率Dr(%)をリフレクトメーター(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」)によって測定した。また、画像を出力していない紙上の反射率Ds(%)を測定した。カブリ(%)は下記式から算出した。
カブリ(%)=Dr(%)−Ds(%)
A:カブリが0.5%未満である。
B:カブリが0.5%以上1.0%未満である。
C:カブリが1.0%以上2.0%未満である。
D:カブリが2.0%以上である。
[キャリア付着]
耐久後のキャリア付着を評価した。Vback100VになるようにVDCを調整し、00h画像を出力し、静電潜像担持体上に透明な粘着テープを密着させてサンプリングした。そして、1cm×1cm中の静電潜像担持体上に付着していた磁性キャリア粒子の個数をカウントすることで、1cm当りの付着キャリア粒子の個数を算出した。
A:1cm当りの付着キャリア粒子の個数が3個以下である。
B:1cm当りの付着キャリア粒子の個数4個以上10個以下である。
C:1cm当りの付着キャリア粒子の個数11個以上20個以下である。
D:1cm当りの付着キャリア粒子の個数21個以上である。
[リーク試験(白ポチ)]
耐久後のリークを評価した。VDCを調整し、A4普通紙上にベタ(FFh)画像を5枚連続して出力した。出力したベタ画像において、直径が1mm以上の白く抜けている点(白ポチ)の個数をカウントした。そして、5枚のベタ画像の白ポチの合計個数を算出した。
A:白ポチの合計個数が0個である。
B:白ポチの合計個数1個以上9個以下である。
C:白ポチの合計個数10個以上19個以下である。
D:白ポチの合計個数20個以上である。
[濃度ムラ]
耐久後の濃度ムラを評価した。VDCを調整し、A4紙全面に90h画像を出力した。90h画像について、任意の5箇所の画像濃度を測定し、画像濃度の最大値と最小値との差を求めた。画像濃度は、X−Riteカラー反射濃度計(Color reflection densitometer X−Rite 404A)で測定し、以下の基準により評価した。
A:画像濃度の最大値と最小値との差が0.04未満である。
B:画像濃度の最大値と最小値との差が0.04以上0.08未満である。
C:画像濃度の最大値と最小値との差が0.08以上0.12未満である。
D:画像濃度の最大値と最小値との差が0.12以上である。
<実施例2〜28、比較例1〜7>
二成分系現像剤2〜35を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表8に示す。尚、実施例25及び26は参考例1及び2とする。
1 樹脂容器
2 下部電極
3 支持台座
4 上部電極
5 試料
6 エレクトロメーター
7 制御コンピュータ
A 抵抗測定セル
d サンプル高さ
d1 サンプルがない状態の高さ
d2 サンプルが入った状態の高さ

Claims (6)

  1. 多孔質磁性コア粒子及び該多孔質磁性コア粒子の孔に充填されているシリコーン樹脂を有する充填コア粒子と、
    該充填コア粒子の表面を被覆しているビニル系樹脂と、
    を有する磁性キャリア粒子の集合体である磁性キャリアであって、
    下記方法で算出される該多孔質磁性コア粒子の積算細孔容積が、35.0mm/g以上95.0mm/g以下であり、
    下記方法で算出される該充填コア粒子の積算細孔容積が、7.8mm/g以上12.8mm/g以下であり、
    該充填コア粒子の体積分布基準50%粒径(D50)が、19.0μm以上69.0μm以下であり、
    該磁性キャリアが、該充填コア粒子100.0質量部に対して1.2質量部以上3.0質量部以下の該ビニル系樹脂を有することを特徴とする磁性キャリア。
    [該多孔質磁性コア粒子の積算細孔容積は、約1.0gの該多孔質磁性コア粒子を対象として水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径0.1μm以上3.0μm以下の範囲におけるLog微分細孔容積を積分して、算出される。
    又、該充填コア粒子の積算細孔容積は、約1.0gの該充填コア粒子を対象として水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径0.1μm以上3.0μm以下の範囲におけるLog微分細孔容積を積分して、算出される。]
  2. 前記ビニル系樹脂が、
    分子構造中に環式炭化水素基を有するビニル系モノマーと、
    該分子構造中に環式炭化水素基を有するビニル系モノマー以外のビニル系モノマーと、の共重合体である請求項1に記載の磁性キャリア。
  3. 前記ビニル系樹脂が、
    シクロヘキシルメタクリレートモノマーと、
    メチルメタクリレートマクロモノマー及びスチレンマクロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーとの共重合体である請求項1又は2に記載の磁性キャリア。
  4. 前記ビニル樹脂は、分子中に脂環式炭化水素基を有するビニルモノマーと
    片末端にメタクリロイル基を有するメチルメタクリレートマクロモノマーとの共重合体である請求項2に記載の磁性キャリア。
  5. 前記シリコーン樹脂における、ケイ素原子1個当たりに結合している有機基(R)の平均数(R/Si比)が、1.30以上1.50以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
  6. 磁性キャリア及びトナーを含む二成分系現像剤であって、
    該トナーが、
    結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー粒子と、
    無機微粉体と
    を有するトナーであり、
    該磁性キャリアが、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁性キャリアである
    ことを特徴とする二成分系現像剤。
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