JP6364223B2 - ポリアセタール樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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[1]ポリアセタール樹脂(A)と、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して1.0質量部超25.0質量部以下の結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B)とを含み、
前記結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B)が、層状構造及び/又はカードハウス構造を備え、トバモライトである、ポリアセタール樹脂組成物。
[2][1]に記載のポリアセタール樹脂組成物を含む成形品。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)と、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して1.0質量部超25.0質量部以下の結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B)とを含む。
本実施形態で用いるポリアセタール樹脂(A)は、公知のポリアセタール樹脂であってもよく、特に限定されるものではない。
ポリアセタールホモポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られるポリアセタールホモポリマーが代表例として挙げられる。また、ポリアセタールホモポリマーとして、例えば、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーも用いることができる。ここで、ホルムアルデヒドの環状オリゴマーとしては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等が挙げられる。
本実施形態で用いる結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B)としては、特に限定されないが、例えば、ウォラストナイト系、トバモライト系、ジャイロライト系等が挙げられ、そして、ウォラストナイト系としては、ゾノライト、ネコ石、オケナイト、フォシャジャイト、ヒルブランダイトが挙げられ、トバモライト系としては、トバモライト(9Å、11Å、14Å等)、C・S・H(I)、C・S・H(II)が挙げられ、ジャイロライト系としては、ジャイロライト、トラスコット石、Z−phaseが挙げられる。本実施形態で用いる結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B)としては、工業利用性の観点から、ゾノライト、トバモライトであることが好ましく、入手の容易さの観点から、トバモライトであることが更に好ましい。
結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B)の平均粒子径を前記範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、容器回転式圧縮剪断型ミル法、及び磁器乳鉢で粉砕する方法等が挙げられる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、上記ポリアセタール樹脂(A)、結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B)と共に、他の無機充填剤、有機充填剤、並びに有機化剤で処理した無機充填剤粉体を用いてもよい。また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、更に他の特性を付与するため、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤、例えば、酸化防止剤、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤や熱安定剤等の安定剤、帯電防止剤、離型(潤滑)剤等を添加してもよい。更に、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に適当な公知の添加剤、例えば、ポリオレフィン樹脂、摺動剤、顔料等を必要に応じて配合することができる。
他の無機充填剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、タルク、ガラス繊維、炭素繊維、窒化硼素、ハイドロタルサイト、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等が挙げられる。
有機充填剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、セルロース、ポリウレタン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
有機化剤で処理した無機充填剤粉体としては、特に限定されないが、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等が挙げられる。
酸化防止剤としてはヒンダートフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられ、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。
本実施形態で用いるギ酸捕捉剤としては、特に限定されないが、例えば、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、メラミンとホルムアルデヒドとの縮合物等)が挙げられる。
アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミン等が挙げられる。
〔(M2+)1-X(M3+)X(OH)2〕X +〔(An-)x/n・mH2O〕X -
・・・(1)
[式中、M2+は2価金属、M3+は3価金属、An-はn価(nは1以上の整数)のアニオン表し、Xは0<X≦0.33であり、mは正の数を表す。]
上記一般式(1)において、M2+の例としては、特に限定されないが、例えば、Mg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等が挙げられ、M3+の例としては、特に限定されないが、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+等が挙げられ、An-の例としては、特に限定されないが、例えば、OH-、F-、Cl-、Br-、NO3 -、CO3 2-、SO4 2-、Fe(CN)6 3-、CH3COO-、シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等が挙げられ、特に、CO3 2-、OH-であることが好ましい。
上記一般式(1)で表されるハイドロタルサイト類の具体例としては、特に限定されないが、例えば、Mg0.75Al0.25(OH)2(CO3)0.125・0.5H2Oで示される天然ハイドロタルサイト、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3等で示される合成ハイドロタルサイトが挙げられる。
本実施形態で用いる耐候(光)安定剤は、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤並びにヒンダードアミン系光安定剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
蓚酸アリニド系紫外線吸収剤の例としては、特に限定されないが、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。好ましくは2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾールである。これらの蓚酸アリニド系紫外線吸収剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
帯電防止剤としては、特に限定されないが、例えば、導電性カーボンブラック、金属粉末又は繊維等が挙げられる。
離型(潤滑)剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール、脂肪酸及びそれらのエステル、ポリオキシアルキレングリコール、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、シリコーン等が挙げられ、特に、炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジヘプタデシレートが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)で示されるオレフィン系不飽和化合物のホモポリマー若しくはコポリマー、又はその変性体が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、特に、ポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブテンコポリマーが好ましい。
特に、ポリオレフィン樹脂の配合割合が、ポリアセタール樹脂(A)100量部に対して0.1〜10質量部である場合、摺動性、衝撃性、剛性をバランスよく得ることができ、外観性の良好な成形加工が可能となる。
摺動剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコールと脂肪酸とのエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、及びポリオキシアルキレングリコール化合物等が挙げられる。
1価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール等の飽和又は不飽和アルコールが挙げられる。
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸が挙げられる。本実施形態で用いる脂肪酸には、上記脂肪酸の混合物、及び上記脂肪酸を成分として含有する天然物、ヒドロキシ基で置換された上記脂肪酸も含めてよい。
特に、アルコールとジカルボン酸とのエステルとしては、炭素数10以上のアルコールとジカルボン酸とのエステルが好ましい。
第1のグループの化合物としては、特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールをモノマーとする重縮合物が挙げられ、具体的には、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのブロックポリマー等が挙げられる。これらの化合物の重合度は、5〜1,000であることが好ましく、10〜500であることがより好ましい。
第2のグループの化合物は、第1のグループの化合物と脂肪族アルコールとのエーテル化物であり、具体的には、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコールオレイルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜50)、ポリエチレングリコールセチルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜50)、ポリエチレングリコールステアリルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜30)、ポリエチレングリコールラウリルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜30)、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜30)、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイド重合度2〜100)、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(エチレンオキサイド重合度4〜50)等が挙げられる。
第3のグループの化合物は、第1のグループの化合物と高級脂肪酸とのエステルであり、具体的には、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート(エチレンオキサイド重合度2〜30)、ポリエチレングリコールモノステアレート(エチレンオキサイド重合度2〜50)、ポリエチレングリコールモノオレート(エチレンオキサイド重合度2〜50)等が挙げられる。
顔料としては、特に限定されないが、例えば、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。無機系顔料としては、樹脂の着色に一般的に使用されているものが挙げられる。無機系顔料としては、特に限定されないが、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。有機系顔料としては、特に限定されないが、例えば、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料等が挙げられる。
ホルムアルデヒド反応性窒素を含むポリマー又は化合物としては、特に限定されないが、例えば、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらのポリマー(例えば、ナイロン6/6,6/6,10、ナイロン6/6,12等)が挙げられる。
ここで、アミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、イソフタル酸ジアミド等の多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。
アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ジアミノ−sym−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン等が挙げられる。
アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミン等が挙げられる。
アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとの縮合物等が挙げられる。
尿素誘導体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物等が挙げられ、ここで、N−置換尿素の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アーリル置換尿素等が挙げられ、尿素縮合体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、尿素とホルムアルデヒドとの縮合体等が挙げられ、ヒダントイン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられ、ウレイド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アラントイン等が挙げられる。
ヒドラジン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ヒドラジド化合物が挙げられ、ここで、ヒドラジド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸ジヒドラジドを挙げることができ、更に具体的には、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等が挙げられる。
イミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドが挙げられる。
これらのホルムアルデヒド反応性窒素原子を含むポリマー又化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、上述した(A)、(B)の成分及びその他の成分を混合し、混練機を用いて混練することによって、製造することができる。
混練機としては、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられ、特に、生産性の観点から、押出機が好ましく、安定な大量生産性の観点から、単軸又は二軸の押出機が更に好ましい。
混練温度は、ベースとなるポリアセタール樹脂の好ましい加工温度に従って定められてよく、例えば、140〜260℃としてよく、180〜230℃とすることが好ましい。
各成分を混練機に加える順序は、特に限定されず、例えば、1種ずつ又は複数種まとめて混練機に加えてよく、また、複数種の成分からなる混合物を予め調製してもよい。
本実施形態の成形品は、上述した本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を含む。
前述の通り、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、機械的特性をバランスよく備え、更に高温成形での変色性を抑制し、成形品の外観性に優れるという効果を有し、更に、耐モールドデポジット性や耐クリープ性能にも優れる。このように、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、優れた耐熱エージング性を有するため、本実施形態の成形品は、様々な用途の成形品とすることができる。
−ポリアセタール樹脂(A)−
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)の温度を80℃に調整した。
該重合機に、モノマーとしてトリオキサンを4kg/時間、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/時間(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)、連鎖移動剤としてメチラールを690mg/時間(トリオキサン1molに対して0.20×10-3mol)を連続的に添加した。
更に前記重合機に、重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートを
153.4mg/時間(トリオキサン1molに対して1.5×10-5mol)連続的に添加した。こうして、連続式で重合反応を行った。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入して、重合触媒を失活させた。得られたポリアセタールコポリマーを、遠心分離機を用いてろ過し、乾燥させた。乾燥後のポリアセタールコポリマーを、ベント付きの2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中で溶融状態となっているポリアセタールコポリマーに、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して0.5質量部の水を添加し、押出機の条件を温度200℃、滞留時間7分として、ポリアセタールコポリマーの不安定末端部分(−(OCH2)n−OH)の分解除去を行った。該不安定末端部分が分解除去されたポリアセタールコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下で脱揮され、押出機のダイス部からストランドとして押し出され、ペレタイズされた。得られたペレットを、ポリアセタール樹脂(A−1)とした。
二酸化ケイ素(株式会社ニッチツ社製、商品名:精製珪石粉ハイシリカF3)と、酸化カルシウム(河合石灰工業株式会社製、商品名:生石灰特号)とを水に分散させてスラリーを形成した後、オートクレーブを用いて、190℃の飽和水蒸気下で15時間養生することによって、トバモライトを調製した。ここで、二酸化ケイ素に対する酸化カルシウムのモル割合は0.83とし、二酸化ケイ素と酸化カルシウムとからなる全固形分に対する水の重量割合は1.5とした。得られたトバモライトを、磁器乳鉢(株式会社石川工場製、商品名:石川式攪拌擂潰機16号)を用いて粉砕した。粉砕したトバモライトを結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)として用いた。
結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)の平均粒子径は、45μmであった。また、結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)を、走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、層状構造及びカードハウス構造の混合物であることが確認された。
また、ウォラストナイト(巴工業(株)社製、商品名:NYAD1250、繊維長=9μm、繊維径=3μm、アスペクト比=3)を結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−2)として用いた。
X−1:炭酸カルシウム(白石工業(株)社製、商品名:Brilliant−15、一次粒子:150nm)
X−2:ガラス強化繊維(セントラルグラスファイバー(株)社製、商品名:ECS03−631K、カット長=3mm、繊維径=13μm)
X−3:タルク(日本タルク(株)社製、商品名:MS、粒子径(D50)=14μm)
(1)機械的特性
下記の実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械(株)社製、IS−100GN)を、シリンダー温度:205℃、金型温度:90℃、射出圧力:100MPa、射出時間:35秒、冷却時間:15秒の射出条件で用いて、射出成形することによって、ISO準拠の試験片(ダンベル)を作製した。作製した試験片について、ISO527に準拠して、引張伸度及び引張弾性率を測定した。なお、引張伸度は、下記式より算出した。
引張伸度(%)=破断までの伸び(mm)/チャック間(=115mm)×100
シリンダー温度を220℃とした以外は、上記「(1)機械的特性」の場合と同様に、ISO準拠の試験片を作製した。作製した試験片について、D65の光源、及び色彩色差計(コニカミノルタ社製、商品名:CR−200)を用いて、黄度(b値)を測定した。
シリンダー温度を205℃とした場合の黄度(b値)と比較して、シリンダー温度を220℃とした場合の黄度(b値)の変化量が小さいほど、高温成形による黄色味の程度が小さく、高温成形での変色性が良好である(熱による色調特性に優れる)と判定した。判定は下記判定基準に従って3段階で行った。
<判定基準「黄度(b値)の変化量:判定」にて示す)>
0.5未満:○、0.5以上1.5未満:△、1.5以上:×
下記の実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を、上記「(1)熱水浸漬後の機械的特性」の場合と同様に、射出成形することによって、平板(130mm×110mm×3mm)の試験片を作製した。作製した試験片について、表面の外観を目視で判定した。判定は下記判定基準に従って3段階で行った。判断基準として、ベースであるポリアセタール樹脂の表面の外観と比較した、光沢、ジェッティング、フローマーク等を用いた。
<判定基準「外観:判定」にて示す)>
表面全体で光沢があり且つジェッティングやフローマークが見られない:○
表面全体で光沢があり、表面一部でジェッティングやフローマークが見られる:△
表面全体で光沢がなく且つジェッティングやフローマークが見られる:×
上記の方法で得られたポリアセタール樹脂(A−1)100質量部と、上記の方法で得られた結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)2質量部とを、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合することによって、混合物を得た。この混合物を、ベント付き2軸押出機(L/D=30、スクリュー径:30mm、設定温度:200℃)に、該押出機のメインフィード口からフィードし、その後、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬することによって、ポリアセタール樹脂組成物を得た。得られたポリアセタール樹脂組成物の機械的特性、高温成形での変色性、成形品の外観性について評価を行った。評価結果を表1に示す。
結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)の配合割合を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造し、得られたポリアセタール樹脂組成物の特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)の代わりに結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−2)を用い、その配合割合を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造し、得られたポリアセタール樹脂組成物の特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)を用いなかった以外は、実施例1と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造し、得られたポリアセタール樹脂組成物の特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)の配合割合を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造し、得られたポリアセタール樹脂組成物の特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)の配合割合を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造しようとしたところ、試料の発泡分解によりポリアセタール樹脂組成物が得られなかった。
結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)を用いず、炭酸カルシウム(X−1)を用い、各成分の配合割合を表1に示す通りにした以外は、実施例1と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造し、得られたポリアセタール樹脂組成物の特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)を用いず、ガラス強化繊維(X−2)を用い、各成分の配合割合を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造し、得られたポリアセタール樹脂組成物の特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)を用いず、タルク(X−3)を用い、各成分の配合割合を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にポリアセタール樹脂組成物を製造し、得られたポリアセタール樹脂組成物の特性の評価を行った。該評価結果を表1に示す。
実施例1〜4で得られたポリアセタール樹脂組成物と、比較例1〜7で得られたポリアセタール樹脂組成物とを比較することによって、結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−1)(トバモライト)や結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B−2)(ウォラストナイト)の所定の配合割合での添加により、引張弾性率が向上されると共に、引張伸度の低下が抑制され、機械的特性のバランスが良好となり、また、高温成形での変色性が抑制され、成形品の外観性が良好となることが確認された。
Claims (2)
- ポリアセタール樹脂(A)と、
ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して1.0質量部超25.0質量部以下の結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B)とを含み、
前記結晶質ケイ酸カルシウム水和物(B)が、層状構造及び/又はカードハウス構造を備え、トバモライトである、ポリアセタール樹脂組成物。 - 請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物を含む成形品。
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