以下、本発明の一実施形態を図1〜図15に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るレーザ装置1000の概略構成が示されている。
レーザ装置1000は、例えばレーザプリンタ、レーザディスプレイ、レーザプロジェクタ、レーザ計測器、レーザ加工装置、レーザ熱処理装置などの機器に用いられる。
近年、これらの機器の中でも、特にレーザ熱処理装置、レーザ加工装置等においては、高出力化(例えば数W〜10W程度)に加えて、出力の安定化が望まれている。
レーザ装置1000は、一例として、図1に示されるように、励起用半導体レーザ素子100、集光レンズ200、積層チップ300、波長変換素子500、複屈折フィルタ600、外部反射鏡700、これらが実装されるパッケージ(不図示)などを備えている。以下では、図1等に示されるXYZ3次元直交座標系を適宜用いて説明する。
励起用半導体レーザ素子100としては、一例として、出力が30W、発振波長が808nm帯の半導体レーザ(端面発光レーザ)が用いられている。励起用半導体レーザ素子100は、有効断面が楕円形のレーザ光(励起光)を出射する。ここで、「有効断面」とは、レーザ光の断面内で相対強度が20%〜80%の部分を意味する。ここでは、励起光の有効断面は、アスペクト比(長径と短径の比)が1に近いほど、すなわち円形に近いほど好ましい。
集光レンズ200は、励起用半導体レーザ素子100からのレーザ光(励起光)の光路上に配置されており、該レーザ光を集光する。
積層チップ300は、一例として、集光レンズ200を介したレーザ光(励起光)の光路上に配置されており、該レーザ光が照射されるレーザ媒質10と、該レーザ媒質10の−Z側に位置するヒートシンク12と、レーザ媒質10とヒートシンク12とを接合する接合部14とを有している。
積層チップ300は、後に詳しく説明するように、半導体製造工程等を用いて作製される。
レーザ媒質10は、一例として、XY平面に平行な正方形板状の外形を有しており、図2に示されるように、ヒートシンク12に接合部14を介して接合された反射鏡10aと、該反射鏡10aの+Z側に配置(積層)された活性層10bとを有する。反射鏡10a及び活性層10bは、例えばXY断面が一辺5mm程度の正方形となっている。ここでは、レーザ媒質10は、ヒートシンク12よりもXY断面の面積が小さくなっている。レーザ媒質10の厚さ(Z軸方向の寸法)は、一例として10μm以下とされている。
ここで、「レーザ媒質」は、レーザ発振器における発光領域を含む少なくとも一部を意味する。ここでは、レーザ媒質10は、レーザ発振器における発光領域としての活性層10bを含む一部である。
反射鏡10aは、一例として、Z軸方向に交互に積層された低屈折率層及び高屈折率層を含む分布ブラッグ反射鏡(DBR)である。詳述すると、反射鏡10aは、低屈折率層としてのAlAs層と、高屈折率層としてのAl0.1Ga0.9As層のペアを25ペア有しており、高反射率を実現できる。各屈折率層の光学的厚さは、一例として、レーザ媒質10を含むレーザ発振器の発振波長をλとして、λ/4とされている。
活性層10bは、量子井戸構造を有している。詳述すると、活性層10bは、圧縮歪みを有するように交互に積層された量子井戸層(例えばGaAs層)及び障壁層(例えばInGaAs層)を含み、内部の正味歪みが相殺された多層構造(例えば15層〜20層)を有している。
量子井戸層に、GaAs系の化合物半導体を使用する場合、組成及び膜厚の設計により、発振波長λを900nm〜1200nmに設定することができる。
また、化合物半導体の場合には、活性層10bにおける障壁層での光子吸収によりキャリアを発生させることで量子井戸層を励起することができる。すなわち、障壁層のバンドギャップエネルギよりも高いエネルギの光子が障壁層で吸収されれば、量子井戸層が励起される。そこで、励起用半導体レーザ素子100からの励起光の波長が、発振波長λ以下であれば、量子井戸層を励起することができる。
ここでは、活性層10bは、発振波長λが1060nmとなるように設計され、反射鏡10aは、1060nmで高反射率となるように設計されている。また、活性層10bの最も+Z側の層は、GaAsからなるキャッピング層となっている。
なお、活性層10bの材料としては、例えばAlGaAs系、AlGaInP系、GaInPAs系、GaInAs系などを用いることもできる。
ヒートシンク12は、一例として、Cu、SiC、ダイヤモンド又はこれらを組み合わせた材料からなる熱伝導性が高いXY断面が正方形の板状部材である。なお、ヒートシンク12としては、中空構造を有する部材であって、内部に水冷又は空冷などの冷却機能を有する部材であっても良い。このように、ヒートシンク12は、レーザ媒質10とは熱膨張率が異なる材料からなる。
接合部14は、レーザ媒質10とヒートシンク12との間に配置されており、XY断面の面積がレーザ媒質10と略同一であり、かつヒートシンク12よりも小さい(図2及び図3参照)。
接合部14は、XY平面に平行な円板形状の第1接合部材14aと、該第1接合部材14aを取り囲む板枠状の第2接合部材14bとを有する(図3参照)。換言すると、第2接合部材14bの中央に第1接合部材14aよりも僅かに大きい開口が形成され、該開口内に第1接合部材14aが位置している。
第1接合部材14aの中心のXY平面内の位置は、レーザ媒質10の中心のXY平面内の位置と略一致している。以下では、「中心のXY平面内の位置」を単に「中心位置」とも称する。
また、第1接合部材14aは、レーザ媒質10とヒートシンク12の並び方向(Z軸方向)から見てレーザ媒質10よりも小さい。すなわち、Z軸方向から見て、第1接合部材14aの外縁は、レーザ媒質10の外縁の内側にある。そこで、第1接合部材14a及び第2接合部材14bは、レーザ媒質10とヒートシンク12との間に位置している。
なお、第1接合部材14aは、円板形状に限らず、要は、Z軸に平行な軸(レーザ媒質10を含むレーザ発振器の発振方向に平行な軸)に関して対称な形状(軸対称な形状)を有していれば良い。「軸対称な形状」としては、円柱形状、楕円柱形状、略正N角柱形状(Nは5以上)、円錐台形状、楕円錐台形状、略正N角錐台形状(Nは5以上)、中心軸に直交する断面が略円形又は略正N角形(Nは5以上)で該中心軸方向の中間部がくびれた形状などが挙げられる。
特に、第1接合部材14aのZ軸に直交する任意の断面(XY断面)の形状は、略円形であることが好ましい。「略円形」とは、円形に加えて、例えば正N角形(Nは5以上)の各角部に丸みを持たせた形状、長径と短径の差が小さい楕円形等の円形に近似する形状を含む意味である。
第1接合部材14aの材料としては、例えば金属、合金等の熱伝導率が高い材料が好ましい。
第1接合部材14aは、レーザ媒質10における励起光が照射され発熱する発熱領域よりもXY断面の面積が大きく、該発熱領域の全域に接触している(図8参照)。この場合、発熱領域で発生した熱を第1接合部材14aを介してヒートシンク12に効率良く伝えることができる。
第2接合部材14bは、一例として、厚さ(Z軸方向の寸法)が第1接合部材14aと略同一である(図2及び図3参照)。第2接合部材14bは、後に詳述するように、第1接合部材14aを保護する機能を有する。
ここで、レーザ媒質10とヒートシンク12とを接合部14を介して接合するプロセス(接合プロセス)は、高温(例えば200℃程度)の温度環境下で行われる。この際、接合部14全体を応力歪みの吸収性(応力による変形し易さ)が低い材料(例えば金属等)で構成すると、レーザ媒質10とヒートシンク12との熱膨張率差による応力歪みが生じ、接合品質が劣化するおそれがある。
そこで、第2接合部材14bの応力歪みの吸収性は、第1接合部材14aの応力歪みの吸収性よりも高いことが好ましい。
この場合、接合部14では、第1接合部材14aにより熱伝達性を高めることができ、かつ第2接合部材14bにより接合品質の劣化を抑制でき、ひいては熱伝達性を安定して向上することができる。
ここで、仮に接合部全体を例えば金属等の耐腐食性の低い材料で構成すると、上記接合プロセスで行われるウエットエッチング時等に接合部材が損傷するおそれがある。
そこで、第2接合部材14bの材料としては、耐腐食性の観点から例えば樹脂を含むことが好ましい。すなわち、第2接合部材14bは、第1接合部材14aよりも耐腐食性が高いことが好ましい。
この場合、接合部14では、第1接合部材14aにより熱伝達性を高めることができ、かつ第2接合部材14bにより第1接合部材14aの損傷を防ぐことができる。
すなわち、接合部14では、第1接合部材14aと第2接合部材14bの特性を互いに補完し、レーザ装置の信頼性を向上させることができる。
波長変換素子500は、一例として、XY断面が一辺3mmの正方形であり、かつZ軸方向の長さが10mmの直方体形状のLBO(LiB3O5)結晶から成り、積層チップ300からの光の光路上(ここでは積層チップ300の+Z側)に配置されている。波長変換素子500の光を透過させる面には、1060nm及び530nmの波長の光を全透過させる、誘電体によるコーティングが施されている。
複屈折フィルタ600は、波長変換素子500を介した光の光路上(ここでは波長変換素子500の+Z側)に、XY平面に対して傾斜して配置されている。複屈折フィルタ600は、特定の波長(例えば1060nm及び530nmの波長)の光のみを透過させ、かつ透過させる光の偏向方向を調整する機能を有している。このため、波長変換素子500と複屈折フィルタ600を組み合わせることで、波長変換効率を向上させることができる。
外部反射鏡700は、反射鏡10a及び活性層10bと共に、レーザ発振器を構成している。外部反射鏡700は、複屈折フィルタ600を介した光の光路上(ここでは複屈折フィルタ600の+Z側)に配置されており、−Z側の面(入射面)が+Z側に凸となるように湾曲している。外部反射鏡700は、1060nmの波長の光に対しては、高反射であり、530nmの波長に光に対しては、約5%の透過率を有している。
以上のように構成されるレーザ装置1000では、励起用半導体レーザ素子100からのレーザ光によってレーザ媒質10の活性層10bが励起されて発光し、活性層10bで発生した光は、反射鏡10a及び外部反射鏡700間で反復的に反射されて増幅されることでレーザ発振が起こる。そして、波長変換素子500及び複屈折フィルタ600によって、波長変換された波長530nmの第二高調波が外部反射鏡700を透過する。すなわち、外部反射鏡700を透過した波長530nmの第二高調波が、レーザ装置1000からの出射される光(出射光)である。
このように、レーザ装置1000において、レーザ媒質10及び外部反射鏡700を含んで垂直外部共振器型面発光レーザ(Vertical External Cavity Surface Emitting Laser:VECSEL)が構成されている。
ここで、図4を参照して比較例の積層チップCについて説明する。積層チップCは、接合部が単一の接合部材から成る点を除いて、積層チップ300と実質的に同一の構成を有している。図4は、積層チップCのXY断面(図3に対応する図)である。詳述すると、積層チップCでは、正方形板状のレーザ媒質と該レーザ媒質よりも大きい四角形板状のヒートシンクとが該レーザ媒質と略同じ大きさの接合部材を介して接合されている。
この場合、積層チップCでは、図5に示されるように、接合部材のXY断面(正方形断面)内において、中心から一辺までの距離Aと、中心から各角までの距離Bとが異なるため、レーザ媒質とヒートシンクとの熱膨張率差により生じる応力歪の大きさが該接合部材のXY断面内で不均一となり異方性を有することとなる。
この結果、図6に示されるように、積層チップCには、対角線に沿って接合品質が不均一な領域が発生してしまう。この状態は、超音波映像装置などを用いて、接合界面の情報を得ることにより確認できる。
積層チップCに接合品質が不均一な領域が存在すると、接合部材のXY断面内でレーザ媒質からヒートシンクへ向かう熱の分布が均一にならないため、該XY断面内で温度ムラが生じ、熱の集中による局所的な剥離や破壊を招くおそれがある。特に積層チップCにおける励起光が照射される中央部付近が対角線の交点と重なるために、接合品質の不均一化の影響は顕著に現れる。
これに対して、本実施形態では、図7に示されるように、レーザ媒質10の中心位置に一致する第1接合部材14aの中心位置と、任意の外周位置とのXY断面内の距離R(第1接合部材14aの半径)は、一定であり、レーザ媒質10とヒートシンク12との熱膨張率差により生じる応力歪の大きさに異方性は生じない。
また、第2接合部材14bの材料として、第1接合部材14aとレーザ媒質10との接合完了後に、室温(例えば15℃)又は低温(室温よりも低い温度)で固化できる樹脂などを用いることで、生じる応力歪を低減でき、高い接合品質で接合することができる。
次に、第1及び第2接合部材14a、14bと発熱領域との関係について、図8を参照して詳細に説明する。
レーザ媒質10に対して励起光を照射し、レーザ発振させると、発熱領域で発熱が起こる。そこで、上述の如く、この発熱領域で発生した熱を効率的にヒートシンクへ逃がすために第1接合部材14aが発熱領域の全域に隣接して(対向して)設けられている。
ここで、第1接合部材14aは発熱領域以上の大きさにすることが望ましい。図8から分かるように、本実施形態のレーザ装置1000のような外部励起方式の高出力レーザ装置では、励起光がレーザ媒質10の一部(例えば中央部)に照射されるため、熱伝導性に優れる第1接合部材14aの大きさをレーザ媒質10の発熱領域以上の大きさに設定することが好ましい。すなわち、第1接合部材14aは、レーザ媒質10よりも小さくても発熱領域以上の大きさであれば、レーザ媒質10側からヒートシンク12側へ熱を伝えることに関して、何ら不都合はない。
そこで、本実施形態では、第1接合部材14aをレーザ媒質10よりも小さくし、第1接合部材14aの周囲であってレーザ媒質10とヒートシンク12との間に第2接合部材14bを設けて、第1接合部材14aを効果的に保護することとしている。
以上のように構成されるレーザ装置1000は、励起用半導体レーザ素子100、集光レンズ200、積層チップ300、波長変換素子500、複屈折フィルタ600及び外部反射鏡700が、図1に示される位置関係となるように、パッケージ(不図示)に実装されて、製造される。
以下に、積層チップ300の実施例及び変形例を説明する。
《実施例1》
実施例1では、ヒートシンクとして熱伝導性に優れたダイヤモンドが用いられている。ダイヤモンドの熱伝導率は、概ね1000W/(m・K)以上であり、熱膨張率は、1×10−6〜2.5×10−6(/K)である。
レーザ媒質は、半導体基板上に化合物半導体がエピタキシャル成長されて成る扁平な積層体が分割された各チップ状体(積層構造体)から、熱伝導率があまり高くない半導体基板を除去して作製されている。ここでは、半導体基板として、例えば厚さ500μmのGaAs基板が用いられている。
詳述すると、先ず、分子線エピタキシャル成長法(MBE法)によって、GaAs基板上に、活性層、半導体多層膜反射鏡を順次積層し、積層体を作製する。なお、分子線エピタキシャル成長法(MBE法)に代えて、金属有機化学気相成長法(MOCVD)を用いても良い。
半導体多層膜反射鏡は、複数の化合物半導体層で構成される分布ブラック反射鏡(DBR:Distributed Bragg Reflection)からなり、活性層及び外部反射鏡と共にレーザ発振器を構成する。ここでは、AlAs層及びAl0.1Ga0.9As層のペアを25層形成したものを用いている。
活性層は、圧縮して歪ませたInGaAs層(障壁層)とGaAs層(量子井戸層)との多層(ここでは15層)構造とされ、構造内の正味歪みを相殺するように構成されている。
また、活性層は、発振波長が1060nmとなるように設計され、半導体多層膜反射鏡は、1060nmで高反射率となるように設計されている。
このように層構成の設計により発振波長を選択できることが、レーザ媒質に半導体のエピタキシャル多層構造を用いる利点である。
次いで、上記積層体を、ダイシングソーを用いて、5mm×5mmの正方形の複数のチップ状体に分割する(図9(A)参照)。なお、図9(A)では、一のチップ状体のみが図示されている。
ここで、扁平な積層体を複数のチップ状体に分割する手法は、ダイシングソーを用いる方法以外にスクライバーを用いる方法もあるが、いずれにしても分割されたチップ状体は分割装置の機構上、材料利用の効率向上の理由によりチップ状体の平面形状は矩形になるのが一般的である。
従って、円形となるようにチップ分割を行うことや、矩形にチップ分割した後に円形に加工することは工程が複雑になり、コスト面でも非常に不利になることから現実的ではない。
そこで、第1の接合部材14aのZ軸に直交する任意の断面の形状を略円形とすることで、平面形状が矩形のレーザ媒質であっても、該レーザ媒質と第1接合部材との接合界面に発生する応力歪に異方性が生じることを防止することができる。
次いで、図9(A)に示されるチップ状体を、半導体多層反射鏡の−Z側の面を接合面として第1接合部材及び第2接合部材を介して、ヒートシンクに接合する。この接合方法を以下に説明する。
ここでは、第1接合部材の材料として平均粒径が約10nmの銀(Ag)の微粒子を含有する材料が用いられている。ディスペンサーを用いて、ヒートシンクに銀の微粒子を含有する接合材料を滴下し、その上にチップ状体を半導体多層膜反射鏡をヒートシンク側に向けた状態で載せ、該チップ状体にヒートシンクに向けて例えば50gの荷重をゆっくりかけて、銀の微粒子を含有する接合材料を押し広げることにより、チップ状体とヒートシンクとを第1接合部材を介して接合し、第1接合体を作製する(図9(B)参照)。なお、銀の微粒子を含有する接合材料が押し広げられたときに該接合材料が最終的にチップ状体の外形寸法よりも小さくなるように、事前の実験で銀の微粒子を含有する接合材料の滴下量と荷重の大きさの条件が設定されている。なお、平均粒径が約10nmの銀の微粒子は、例えば200℃程度で溶融し、焼結する。
その後、第1接合体をオーブンに入れて、室温から200℃まで、1時間で昇温、200℃を1時間維持というプログラムで熱処理を行う。この熱処理後、室温まで自然冷却し、オーブンから第1接合体を取り出す。
続いて、低粘度のエポキシ樹脂からなる第2接合部材を、第1接合体の第1接合部材の周囲に浸透させるように充填し、固化させることで、第1接合部材を介して接合されたチップ状体とヒートシンクとを第2接合部材を介して接合し、第2接合体を作製する(図9(C)参照)。
次に、以下のようにして、第2接合体からGaAs基板を除去する。
アンモニア水と過酸化水素水を1:20の容量比で混合したエッチング液EL1を温度20℃に設定し、ウェットエッチングによりGaAs基板を除去する。この際、エッチングの終点は、GaAs基板が完全になくなったときに現れる活性層が呈する鏡面を目視で確認できた時点とする。
ここで、第1接合部材の材料である銀の微粒子を含有する材料は、エッチング液EL1に溶解するため、第1接合部材がエッチング液EL1に曝されることを避ける必要がある。そこで、第1接合部材の保護部材として機能するのが、第1接合部材の周囲に配置された第2接合部材である。実施例1では、第2の接合部材の材料として低粘度のエポキシ樹脂を用いている。低粘度のエポキシ樹脂はエッチング液EL1に対して充分な耐性があるのでエッチング液EL1によって第1接合部材が損傷するのを確実に防止できる。
結果として、積層チップが得られる(図9(D)参照)。
ここで、一般に、レーザ媒質として、複数の半導体層が積層された積層体を用いる場合は、その厚さが10μm以下という非常に薄いものとなるため、応力歪の影響を受けやすい。この場合、放熱特性が劣化するために発振特性の低下や破壊といった種々の問題が発生する。
このような場合であっても、実施例1によれば、応力歪に異方性が生じることを防止でき、上記問題の発生を防止できる。
以下の実施例では、実施例1と異なる点を主に説明する。
《実勢例2》
実施例2では、積層チップの第1接合部材の材料としてIn(インジウム)が用いられている。ここでは、チップ状体とヒートシンクとの間に配置される第1接合部材は、チップ状体とヒートシンクとが互いに近づく向きに加圧されて接合されたときの形状が、直径6mm、厚さが1.5μmの円板形状とされている。なお、チップ状体とヒートシンクとを第1接合部材を介して、荷重250g、温度180度の条件で接合すると、第1接合部材が直径6mm、膜厚1.5μmの円板形状になることを事前の実験で確認している。
そして、第1接合部材は、成膜後の形状(最終的な形状)が直径2.1mm、膜厚を3μmの円板形状となるように、真空蒸着法を用いてダイヤモンドからなるヒートシンクの表面に成膜される。このとき、第1接合部材の形状を略円形とするために、φ2.1mmの孔を明けたステンシルマスクを用いたいわゆるマスクデポの手法が用いられる。
以上のようにして、インジウム製の第1接合部材が成膜されたダイヤモンド製のヒートシンク上にチップ状体を載せて250gの荷重をかけた状態で還元性雰囲気の中で温度を200℃にしてインジウムを溶解させ、冷却することで、チップ状体とヒートシンクとを第1接合部材を介して接合する。
そして、第1接合部材による接合完了後に、低粘度のシリコーン樹脂からなる第2接合部材を第1接合部材の周囲に浸透させた後に固化することで、チップ状体とヒートシンクとを第2接合部材を介して接合する。
その後、実施例1の場合と同様にGaAs基板を除去することで、積層チップが得られる。
ここで、第1接合部材の材料であるインジウムは、エッチング液EL1に僅かに溶解するため、インジウムがエッチング液に曝されることを避ける必要がある。そこで、第1接合部材の保護部材として機能するのが、第1接合部材の周囲に配置された第2接合部材である。実施例3では、第2の接合部材の材料として低粘度のシリコーン樹脂を用いている。低粘度のシリコーン樹脂はエッチング液EL1に対して充分な耐性があるのでエッチング液EL1によって第1接合部材が損傷するのを確実に防止できる。
《実施例3》
実施例3では、実施例2と同様に第1接合部材の材料としてインジウムが用いられている。
実施例3では、実施例2と同様にして、図9(C)に示される第2接合体を作製した後、該第2接合体からGaAs基板を除去する。この際、硫酸と過酸化水素水と純水を、1:8:1の容量比で混合したエッチング液EL2を温度20℃に設定して、ウェットエッチングにより、第2接合体からGaAs基板を除去する。
ここで、第1接合部材の材料であるインジウムは、エッチング液EL2に溶解するため、インジウムがエッチング液EL2に曝されることを避ける必要がある。そこで、第1接合部材の保護部材として機能するのが、第1接合部材の周囲に配置された第2接合部材である。実施例3では、第2の接合部材の材料として低粘度のシリコーン樹脂を用いている。低粘度のシリコーン樹脂はエッチング液EL2に対して充分な耐性があるのでエッチング液EL2によって第1接合部材が損傷するのを確実に防止できる。
《変形例1》
実施例1〜3では、第1接合部材の材料(接合材料)をディスペンサーで滴下して、チップ状体とヒートシンクとを互いに近づく向きに加圧することにより第1接合部材を押し広げて略円形の形状に形成する方法について説明したが、変形例1では、さらに容易で確実に略円形の第1接合部材を形成する方法について説明する。
なお、変形例1では、第2接合部材に関する説明を省略するが、実施例1〜3とは異なり、チップ状体とヒートシンクとを銀の焼結体を含む材料からなる第1接合部材を介して(第2接合部材を用いずに)接合することで積層チップが作製される。なお、チップ状体とヒートシンクとを第1接合部材に加えて第2接合部材を介して接合しても良い。
変形例1では、図10(A)及び図10(B)に示されるように、チップ状体に対して、貴金属を含む材料からなるメタライズ層1を円形に形成する。このような円形のメタライズ層1は、実施例2で説明したように、円形の開口部を設けたステンシルマスクを用いたいわゆるマスクデポの手法で容易に形成できる。
また、変形例1では、図11(A)に示されるように、ヒートシンクに対して、貴金属を含む材料からなるメタライズ層2を形成し、該メタライズ層2上に、第1接合部材の材料(接合材料)をディスペンサーで滴下する(図11(B)参照)。
なお、ヒートシンク上に形成されるメタライズ層2は、必ずしも円形である必要はなく、図11(A)に示されるように、ヒートシンクの表面全体に、すなわち正方形に形成しても良い。
そして、図11(C)に示されるように、メタライズ層1が形成されたチップ状体を、接合材料が載るメタライズ層2が形成されたヒートシンクに対して、メタライズ層1が接合材料に対向する状態で一定の荷重をかけて接合する。
この結果、メタライズ層1と第1接合部材がセルフアライン的に位置及び形状が概ね整合した状態で形成される。
このような利点を最大限に得るために、メタライズ層1が形成されたチップ状体がヒートシンクに対して押し付けられることにより第1接合部材が広がる際の大きさ、形状が円形のメタライズ層1とほぼ同じになるように、事前の実験で第1接合部材の材料の量、及び荷重について確認しておくことが望ましい。
しかしながら、このセルフアライン効果は必ずしも厳密に守られる必要はない。例えば図12に示される変形例2では、メタライズ層1の両側に第1接合部材の材料(接合材料)がはみだしている。そこで、レーザ媒質とメタライズ層1からはみ出した接合材料との界面領域を接合領域1とし、メタライズ層1の−Z側にある円形の接合材料とメタライズ層1との界面領域を接合領域2とする。
一般に、銀の焼結体を含む接合材料は、貴金属と強固な接合状態を形成するが、それ以外の材料との接合は強度的に弱いという特徴がある。つまり、接合領域1での接合強度と接合領域2での接合強度には大きな差があり、接合領域1での接合強度≪接合領域2での接合強度という関係になる。
本実施形態の大きな目的である、接合によって引き起こされる応力歪の異方性を解消する必要性が最も高いのは、略円形に形成されたメタライズ層1と第1接合部材との接合であるので、第1接合部材におけるメタライズ層1とメタライズ層2との間の部分が異方性を生じる形状でなければ、上記目的は充分に達成できる。
なお、メタライズ層1に直接接合されていない接合領域1は、副次的な接合領域であるため、応力歪の発生原因となる可能性は小さく、系全体の接合品質の向上に寄与する。
以上の説明から分かるように、円形のメタライズ層を用いると、滴下する接合材料の量に対する厳密な制御が不要となるため、製造プロセスが簡便になることに加え、高品質の接合状態を実現できる。
以下に、メタライズ層の構成について説明する。
ところで、銀の焼結体を含む接合材料は、その接合強度が接合界面(接合される面)の状態に大きく依存し、例えばAuなどの貴金属にしか接合されない性質を有している。従って、メタライズ層の最表層はAu層(Auからなる層)であることが望ましい。
しかしながら、Au層は形成方法によらず下地との密着性が悪いという問題がある。そこで、例えばCr、Tiなどからなる密着層(下地との密着性が良い層)を先に形成し、その上にAu層を形成することが好ましい。
しかしながら、レーザ媒質とヒートシンクとの接合時に200℃程度の熱処理が行われると、Au層と密着層の材料(例えばCr、Tiなど)との合金化が起こり、最表層が純粋なAu層ではなくなるため、接合強度が低下してしまう。
そこで、Au層と密着層との間にPt層(Ptからなる層)を介在させることが有効である。PtはAuと密着層とが反応することを防止する、いわゆるブロッキング層として機能する。
結果として、メタライズ層の層構成としては、Au(表層)/Pt(中間層)/Cr(下層)、又はAu(表層)/Pt(中間層)/Ti(下層)が好適であり、特に、Au(表層)/Pt(中間層)/Ti(下層)が最適である。
このようなメタライズ層は、スパッタリング法やEB蒸着法などの一般的に使用されている手法により、容易に形成できるものである。
以上説明したように、本実施形態のレーザ装置1000は、レーザ媒質10とヒートシンク12とが接合部14を介して接合されたレーザ装置であって、接合部14は、レーザ媒質10とヒートシンク12の並び方向から見てレーザ媒質10よりも小さい第1接合部材14aと、第1接合部材14aの周囲を囲んで配置された第2接合部材14bとを含むため、第1接合部材14aと第2接合部材14bの特性を互いに補完することができる。
また、本実施形態では、第1接合部材14aの熱伝導率は、第2接合部材14bの熱伝導率よりも高く、第2接合部材14bの応力歪みの吸収性は、第1接合部材14aの応力歪みの吸収性よりも高い。この場合、第2接合部材14bにより接合品質を向上でき、第1接合部材14aによりレーザ媒質10からヒートシンク12への熱伝達性を向上できる。この結果、高出力のレーザ光を長期に亘って安定して得ることができる。
また、本実施形態では、第2接合部材14bは、第1接合部材14aよりも耐腐食性が高い。この場合、第2接合部材14bにより第1接合部材14aを保護でき、第1接合部材14aによりレーザ媒質10からヒートシンク12への熱伝達性を向上できる。この結果、高出力のレーザ光を長期に亘って安定して得ることができる。
また、本実施形態では、第1接合部材14aの上記並び方向に平行な軸に直交する任意の断面が略円形である。
この場合、レーザ媒質10とヒートシンク12とを第1接合部材14aを介して接合するとき、レーザ媒質10とヒートシンク12との熱膨張率差に起因する応力歪みが生じるがこの応力歪みには異方性がないため(この応力歪みは等方的であるため)、第1接合部材14aによる接合品質を良好に保つことができる。この結果、レーザ媒質10で発生した熱を第1接合部材14aを介してヒートシンク12に安定して伝えることができ、装置の放熱性を向上させることができる。
すなわち、本実施形態では、熱膨張率が互いに異なるレーザ媒質10とヒートシンク12とが接合部を介して接合されるレーザ装置において、応力歪の異方性が生じることを防止し、高い接合品質を得ることができるので、高い放熱特性を有する高出力レーザ装置を実現できる。なお、高出力レーザ装置において、この放熱対策が不十分であると、発振波長のシフト、出力の低下及び長期信頼性に悪影響を及ぼす。
特に半導体基板上に複数の半導体層がエピタキシャル成長された積層体から半導体基板が除去された、膜厚が10μm以下の薄膜状のレーザ媒質10であっても、応力歪の異方性を解消できるので、長期信頼性に優れた高出力レーザ装置を実現することができる。
結果として、レーザ装置1000では、信頼性を向上できる。
一方、例えば特許文献1に開示されているレーザ装置では、レーザ媒質とヒートシンクとを接合する接合部材の形状が略円形でないため、接合部に生じる応力歪みには異方性があり、クラック等が発生し、装置の放熱性が低下するおそれがある。すなわち、接合部材の形状により、接合部材に生じる応力歪に異方性があるため、接合品質が劣化し、装置の放熱性が低下するおそれがある。特に、レーザ媒質として、半導体基板上に複数の半導体層をエピタキシャル成長させた多層構造体を用いる場合には、最悪の場合、破壊に至るという深刻な問題がある。
すなわち、本実施形態では、レーザ媒質とヒートシンクとの熱膨張率差によって生じる応力歪みは、接合中心から接合周辺部までの距離がほぼ等しくなるために応力歪みに異方性が生じることを防止できる。そのため、接合領域において応力が局所的に集中することによって引き起こされる接合のムラや局所的な剥離、破壊などが発生することはなく、高い放熱特性が得られ、ひいては高出力のレーザ光を安定して得ることができる。
また、樹脂製の第2接合部材14bの応力歪みの吸収性(応力による変形し易さ)は、金属製の第1接合部材14aの応力歪の吸収性よりも高いため、第2接合部材14bが接合部14の周囲部を構成しても、第2接合部材14bにクラックや剥離などが生ずることが防止され、接合部14の中央部を構成する第1接合部材14aを確実に保護でき、ひいてはレーザ媒質10とヒートシンク12とを安定して強固に接合できる。
また、第1接合部材14aが金属(例えば銀、インジウム等)からなる場合、レーザ媒質10で発生した熱を効率良くヒートシンク12に伝えることができる。
また、第2接合部材14bが樹脂からなる場合、第1接合部材14a及び第2接合部材14bの腐食を防止することができる。
また、例えば第1接合部材14aの材料が比較的低温で溶融するもの(例えば銀の焼結体、インジウム等)である場合、レーザ媒質10とヒートシンク12とを第1接合部材14aを介して比較的低温で接合可能であるため、レーザ媒質10とヒートシンク12との熱膨張率差によって第1接合部材14aに生じる応力歪をより小さくできる。
また、第1接合部材14aの材料である金属がインジウムである場合、容易に入手できる。
また、接合部が、レーザ媒質10と第1接合部材14aとの間に配置された貴金属を含む材料からなる円形のメタライズ層1(円板部材)を含む場合、レーザ媒質10と第1接合部材との密着性を向上でき、第1接合部材をセルフアラインで略円形に容易に形成することができる。
また、円形のメタライズ層1(円板部材)が、レーザ媒質10側から第1接合部材14a側にかけて順に積層されたTi層又はCr層、Pt層、Au層を含む場合、Tiがレーザ媒質に密着する密着層として機能し、Ptがブロッキング層として機能するため、最表層であるAu層の品質が保たれ、より高い接合品質が得られる。
また、レーザ装置1000では、レーザ媒質10に励起光を照射する、励起用半導体レーザ素子100及び集光レンズ200を含む照射系が設けられている。この場合、励起用半導体レーザ素子100のスペック(例えば発振波長、動作電流等)の選択の自由度が高く、所望の出力の励起光を容易に得ることができる。
また、第1接合部材は、発光領域の全域(少なくともレーザ媒質10における上記励起光が照射される全領域)に対向しているため、該発熱領域で発生した熱を極めて効率良くヒートシンク12に逃がすことができる。
また、励起光の有効断面が略円形である場合、上記発熱領域の形状(略円形)と第1接合部の形状(略円形)とを合致させることができ、発熱領域で発生した熱を第1接合部材を介してより効率良くヒートシンク12に伝えることができる。
また、レーザ媒質10は、ヒートシンク12に接合部14を介して接合された反射鏡10aと、該反射鏡10aの接合部14とは反対側に配置され、上記励起光が入射される活性層10bとを含むため、活性層10bと反射鏡10aの設計次第で容易に所望の発振波長を得ることができる。
また、上記照射系は、上記励起光の光源としての励起用半導体レーザ素子100を含むため、レーザ媒質10に必要なスペクトルのみを照射でき無駄がないため、励起効率が良く、熱の発生が小さい。
また、レーザ媒質10は、基板と、該基板上に積層された活性層10bと、該活性層10b上に積層された反射鏡10aとを含む積層体から基板をウエットエッチングにより除去して得られる。この場合、第1接合部材14aを第2接合部材14bによってエッチング液から保護することができる。
また、レーザ装置1000では、活性層10bの反射鏡10aとは反対側に外部反射鏡700が配置され、反射鏡10a、活性層10b及び外部反射鏡700によりレーザ発振器が構成されている。この場合、例えば、活性層10bと外部反射鏡700との間に波長変換素子500や複屈折フィルタ600を配置できる等設計の自由度を向上させることができる。
また、本実施形態のレーザ装置1000の製造方法は、基板上に活性層10bを積層し、該活性層10b上に反射鏡10aを積層し、チップ状体(積層構造体)を作製する工程と、該チップ状体の反射鏡10aとヒートシンク12とを第1接合部材14aを介して接合して第1接合体を作製する工程と、該第1接合体の第1接合部材14aの周囲に第2接合部材14bを配置し、第1接合体の反射鏡10aとヒートシンク12とを第2接合部材14bを介して接合して第2接合体を作製する工程と、該第2接合体から基板(例えばGaAs基板)をウエットエッチングにより除去する工程と、を含む。
この場合、チップ状体とヒートシンク12とが第1接合部材14a及び第2接合部材14bを介して接合された後にチップ状体の基板がウエットエッチングにより除去されるため、第1接合部材14aを損傷させることなく、レーザ媒質10とヒートシンク12とが第1接合部材14a及び第2接合部材14bを介して接合された積層チップ300を作製できる。
この結果、信頼性のより高いレーザ装置1000を製造できる。
また、第2接合部材14bは、ウエットエッチングに用いられるエッチング液に対する耐性が第1接合部材14aよりも高い材料からなるため、第1接合部材14aをエッチング液からより確実に保護することができる。
また、本実施形態のレーザ装置1000の製造方法は、レーザ媒質10に貴金属を含む材料からなる円形のメタライズ層1を形成する工程と、レーザ媒質10に形成されたメタライズ層1とヒートシンク12との間に接合材料を配置した状態で、レーザ媒質10及びヒートシンク12を互いに近づく向きに加圧し、レーザ媒質10とヒートシンク12とを接合する工程と、を含む。
この場合、メタライズ層1とヒートシンク12とを容易かつ確実に略円形の接合部材を介して接合することができる。
この結果、信頼性のより高いレーザ装置1000を製造できる。
なお、上記実施形態において、積層チップの接合部は、少なくとも第1接合部材を有していれば良い。例えば、第2接合部材は必ずしも設けられなくても良い。また、例えば、第1接合部材の周囲に設けられた第2接合部材の周囲に、少なくとも1つの接合部材を更に設けても良い。すなわち、接合部は、同心に配置された径が異なる複数の円環状の層の各層を形成するように配置された3つ以上の接合部材を含んでいても良い。
なお、上記実施形態では、第1接合部材の材料として、例えばAg(融点962℃)、In(融点157℃)が用いられているが、これに限らず、要は、金属を含む材料を用いることが好ましい。
例えば、第1の接合部材の材料として、比較的低温で溶融する材料を用いることが好ましい。
また、例えば、第1接合部材の材料として、Au、Cu、Fe、Al等の熱伝導率が高い金属を含む材料を用いても良い。
また、例えば、第2接合部材の材料として、例えば熱伝導性フィラーが添加された樹脂を用いても良い。この場合、熱伝導性及び応力歪みの吸収性の双方を高めることができる。
また、上記実施形態では、第2接合部材の樹脂材料として、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられているが、これに限られず、例えばメラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂等の他の樹脂であっても良い。
また、レーザ媒質10の層構成は、上記実施形態で説明したものに限らず、適宜変更可能である。例えば、活性層10bと反射鏡10aとの間に中間層を設けても良い。
また、上記実施形態では、レーザ媒質として、活性層及び反射鏡が積層されたチップ状体が用いられているが、これに限らず、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、チタン・サファイアレーザ、非線形光学結晶(例えばLBO)波長変換レーザなどの固体レーザであっても良い。この場合、励起用の光源としてランプ、フラッシュランプ、半導体レーザ、アルゴンレーザ等を適宜選択して用いることができる。
また、上記実施形態では、レーザ媒質として、活性層及び反射鏡が積層されたチップ状体(レーザ発振器の一部)が用いられているが、これに限らず、例えば半導体レーザ(レーザ発振器としての端面発光レーザや面発光レーザ)を用いても良い。この場合、電流励起となるため、励起用の光源は、必要ない。この場合も、上記実施形態と同様の効果が得られる。レーザ媒質として面発光レーザを用いる場合も、上記実施形態と同様に、基板上に反射鏡、活性層、別の反射鏡を積層してレーザ発振器を作製した後、ウエットエッチングにより基板を除去することができる。
また、上記実施形態では、基板上に活性層を積層し、該活性層上に反射鏡を積層して得られたチップ状体から基板を除去しているが、これに限られない。例えば、基板上に反射鏡を積層し、該反射鏡上に活性層を積層し、チップ状体を作製し、該チップ状体の基板を接合部14を介してヒートシンク12に接合しても良い。
また、上記実施形態のレーザ媒質10は、XY断面形状が正方形とされているが、これに限らず、例えば、正方形以外のN角形状(Nは3以上)、円形状、楕円形状等の他の形状であっても良い。
また、上記実施形態では、接合部の外形は、正方形板状であるが、これに限らず、例えば円板状、楕円板状、正方形以外のN角形板状(Nは3以上)等の他の形状であっても良い。
また、上記実施形態のヒートシンク12は、XY断面形状が四角形とされているが、これに限らず、例えば、四角形以外のN角形状(Nは3以上)、円形状、楕円形状等の他の形状であっても良い。
また、上記実施形態では、レーザ媒質10の活性層10bを励起する励起用光源として、端面発光型の励起用半導体レーザ素子100が用いられているが、これに限らず、例えば面発光レーザ(VCSEL)等の他のレーザを用いても良い。励起用光源として面発光レーザを用いると、有効断面が略円形の励起光を容易に得ることができる。
また、上記実施形態のレーザ装置1000は、励起用半導体レーザ素子、集光レンズ、波長変換素子、複屈折フィルタ、外部反射鏡を備えているが、これらの少なくとも1つを備えていなくても良い。すなわち、本発明のレーザ装置は、レーザ媒質と、ヒートシンク(放熱部材)と、レーザ媒質とヒートシンクとを接合する接合部とを備えていれば良い。
また、上記実施形態では、レーザ媒質10が気体雰囲気に露出しているが、例えば化学蒸着法(CVD法)により、レーザ媒質10の少なくとも一部にSiN、SiO2、SiON等からなる光学的に透明な膜を成膜しても良い。この場合、レーザ媒質10を気体雰囲気から遮蔽でき、パッシベーション性能を向上させることができる。
なお、以上説明した本実施形態のレーザ装置の各構成部材の具体的な材料、形状、寸法等は、例示であって、適宜変更可能である。
《レーザアニール装置》
一例として図13(A)及び図13(B)にレーザ加工機としてのレーザアニール装置1500の概略構成が示されている。このレーザアニール装置1500は、光源1010、光学系1020、テーブル装置1030、及び不図示の制御装置などを備えている。
光源1010は、上記レーザ装置1000を複数有し、複数のレーザ光を射出することができる。光学系1020は、光源1010から射出された複数のレーザ光を対象物Pの表面に導光する。テーブル装置1030は、対象物Pが載置されるテーブルを有している。該テーブルは、少なくともY軸方向に沿って移動することができる。
例えば、対象物Pがアモルファスシリコン(a−Si)の場合、レーザ光が照射されると、アモルファスシリコン(a−Si)は、温度が上昇し、その後、徐々に冷却されることによって結晶化し、ポリシリコン(p−Si)になる。
この場合、レーザアニール装置1500は、光源1010が上記レーザ装置1000を有しているため、アニール処理を効率的に行うことができる。
《レーザ切断機》
一例として図14にレーザ加工機としてのレーザ切断機2000の概略構成が示されている。このレーザ切断機2000は、光源2010、光学系2100、対象物Pが載置されるテーブル2150、テーブル駆動装置2160、操作パネル2180及び制御装置2200などを備えている。
光源2010は、上記レーザ装置1000を有し、制御装置2200の指示に基づいてレーザ光を射出する。光学系2100は、光源2010から射出されたレーザ光を対象物Pの表面近傍で集光させる。テーブル駆動装置2160は、制御装置2200の指示に基づいて、テーブル2150をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動させる。
操作パネル2180は、作業者が各種設定を行うための複数のキー、及び各種情報を表示するための表示器を有している。制御装置2200は、操作パネル2180からの各種設定情報に基づいて、光源2010及びテーブル駆動装置2160を制御する。
この場合、レーザ切断機2000は、光源2010が上記レーザ装置1000を有しているため、切断処理を効率的に行うことができる。
なお、レーザ切断機2000は、複数の光源2010を有しても良い。
また、レーザ装置1000は、レーザアニール装置及びレーザ切断機以外のレーザ光を利用する装置にも好適である。例えば、表示装置の光源に用いても良い。
《レーザ・ディスプレイ装置》
図15には、表示装置としてのレーザ・ディスプレイ装置3000の概略構成が示されている。
このレーザ・ディスプレイ装置3000は、レーザ装置1000を含む光源ユニット3001と、光源ユニット3001からのレーザ光を表示情報に応じて変調し、該変調されたレーザ光をスクリーン3010に向けて出力するための光学系3003と、光源ユニット3001及び光学系3003を制御する制御装置3005とを備えている。
このレーザ・ディスプレイ装置3000は、レーザ装置1000を有しているため、表示される画像品質を向上させることができる。
なお、空間を貫くレーザ光によって映像表現を行うレーザ・ディスプレイ装置であっても、前記光源ユニット3001を備えるレーザ・ディスプレイ装置であれば、表示される画像品質を向上させることができる。