JP6356435B2 - 高耐酸性表面処理酸化マグネシウム系熱伝導剤とそれを用いた樹脂組成物 - Google Patents

高耐酸性表面処理酸化マグネシウム系熱伝導剤とそれを用いた樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、耐水性及び耐酸性を向上させた表面処理酸化マグネシウム、及び該表面処理酸化マグネシウムを含有する熱伝導剤、その製造方法、並びに、該表面処理酸化マグネシウム又は該熱伝導剤を含有する樹脂組成物等に関する。
酸化マグネシウムは、耐熱性、熱伝導性、電気絶縁性に優れた化合物であり、ゴムの加硫の促進剤、塗料・インキ用顔料、又は医薬品等、様々な産業分野において広く使用されている。このような酸化マグネシウムの種々の用途の一つとして、放熱性フィラー等の熱伝導剤としての用途が提案されている(特許文献1〜4等)。
前記放熱性フィラーとしては、現在、アルミナや窒化アルミニウム等が一般的に使用されている。しかしながら、アルミナはモース硬度が高く、放熱シート等の製造過程において、混練機の摩耗が激しいという欠点があった。また、窒化アルミニウムは充填性が悪く、樹脂中への高充填が難しいという欠点や、窒化アルミニウムが高価であることから放熱部材が高価になってしまうという欠点もあった。そのため、従来の放熱性フィラーが有している欠点(混練機の摩耗性、樹脂中への充填性又は価格等)が改善された、新たな放熱性フィラーの開発が求められていた。
この点、酸化マグネシウム粒子は、モース硬度が低く、比重が軽い化合物であるため、取扱いに優れるという利点があり、さらに、電気抵抗値が高い素材であることから、電気電子分野において使用することにも適している。しかしながら、酸化マグネシウムは耐水性及び耐酸性に劣るという欠点を有している。そして、水と接触するような使用条件においては、酸化マグネシウムが水酸化マグネシウムに変質して膨張することによって、酸化マグネシウムを添加した製品の品質及び耐久性が低下するという問題もある。
このように、酸化マグネシウムは、高い熱伝導性及び高い電気抵抗値を有している一方、耐水性及び耐酸性に劣ることから、耐水性及び耐酸性の求められる用途には使用できない等、熱伝導剤としての用途に制限があった。
特許文献5及び6には、酸化マグネシウムを表面処理することで耐水性を向上させることができることが記載されているが、このようにして得られた酸化マグネシウムの耐酸性は満足できるものではなく、耐水性及び耐酸性の両方の特性が改善された酸化マグネシウムの開発が望まれていた。
特許第5163821号公報 国際公開第2011/007638号パンフレット 特開2011−020870号公報 特開2009−007215号公報 特開2007−070608号公報 特開2011−068757号公報
上記状況に鑑み、本発明は、耐水性及び耐酸性に優れた酸化マグネシウムを提供すること、並びに、該酸化マグネシウムを含有する熱伝導剤を提供することを課題とする。さらに、本発明は、該酸化マグネシウムを含有する樹脂組成物、放熱性グリース、放熱性塗料組成物等を提供することも課題とする。
上記課題を解決するため、本発明者等は鋭意研究を行った結果、酸化マグネシウムの表面処理を行った後に、約200℃〜約800℃で焼き付け処理を行うことで、酸化マグネシウムの耐水性及び耐酸性が予想外にも、格段に向上するという、本発明に特有の顕著にして有用な効果を奏するという新たな知見を得て、さらに検討を重ね、BET比表面積が0.05〜15m/g且つ、表面処理及び焼き付け処理後の酸化マグネシウムを、後記する条件の電位差滴定で測定したpHの値が約6〜約10となる酸化マグネシウムとすることで、さらに耐水性及び耐酸性が向上し、電気抵抗値の高い酸化マグネシウムが得られるという予期できない新知見を得て、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下に関する。
(1) BET比表面積が0.05〜15m/g、且つ、電位差滴定で測定したpH値が6〜10であり、耐水性及び耐酸性が改善された表面処理酸化マグネシウム。
(2) 表面処理した酸化マグネシウムを、200℃〜800℃で焼き付け処理することによって耐水性及び耐酸性を改善した、前記(1)に記載の表面処理酸化マグネシウム。
(3) 焼き付け処理をした表面処理酸化マグネシウムを、さらに表面処理することにより耐水性及び耐酸性を改善した、前記(2)に記載の表面処理酸化マグネシウム。
(4) 表面処理した酸化マグネシウムを、200℃〜800℃で焼き付け処理する工程を含む、酸化マグネシウムの耐水性及び耐酸性の改善方法。
(5) 焼き付け処理工程の後に、さらに表面処理工程を含む、前記(4)に記載の酸化マグネシウムの耐水性及び耐酸性の改善方法。
(6) 前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の表面処理酸化マグネシウムを含有する熱伝導剤。
(7) 前記(1)〜(3)いずれか1項に記載の表面処理酸化マグネシウムを含有する樹脂組成物。
(8) 酸化マグネシウムを表面処理する工程、及び表面処理した酸化マグネシウムを200℃〜800℃で焼き付け処理する工程を含む、耐水性及び耐酸性が改善された酸化マグネシウムの製造方法。
(9) 得られる酸化マグネシウムが、BET比表面積が0.05〜15m/g、且つ、電位差滴定で測定したpHが6〜10である、前記(8)に記載の製造方法。
本発明の表面処理酸化マグネシウムは、耐水性及び耐酸性が非常に優れていることから、本発明によれば、耐候性等の耐久性を要求される用途において、好適に使用することができる表面処理酸化マグネシウムを提供することができる。また、本発明によれば、前記表面処理酸化マグネシウムを含有する熱伝導剤、樹脂組成物、放熱性グリース、放熱性塗料組成物等を提供することができる。さらに、本発明の表面処理酸化マグネシウム、並びにこれを含有する熱伝導剤は、耐水性及び耐酸性が高いことに加え、熱伝導率及び電気抵抗値も高いことから、本発明によれば、例えば、電気電子分野において、優れた放熱性フィラーとして使用できる熱伝導剤を提供できる。
本発明のひとつの態様は、耐水性及び耐酸性が改善された表面処理酸化マグネシウムに関する。
また、本発明の別のひとつの態様は、耐水性及び耐酸性が改善された表面処理酸化マグネシウムを含有する熱伝導剤に関する。本発明の熱伝導剤は、表面処理酸化マグネシウムのみからなっていてもよく、表面処理酸化マグネシウムに加えて、表面処理酸化マグネシウム以外の成分を含有していてもよい。本発明の前記表面処理酸化マグネシウムを含有する熱伝導剤は、好ましいことに、熱伝導率及び電気抵抗値が高く、さらに、耐水性及び耐酸性に優れている。
本発明の表面処理酸化マグネシウムは、酸化マグネシウムを表面処理した後に、さらに焼き付け処理する工程を含む製造方法により製造することができる。
以下、本発明について詳しく説明する。
まず、本発明の表面処理酸化マグネシウムの製造に用いる酸化マグネシウムについて、説明する。
前記酸化マグネシウムは、BET比表面積が、通常約0.05〜約15m/g、得られる表面処理酸化マグネシウムの物性を向上させる観点から、好ましくは約0.1〜約10m/gである。
また、前記酸化マグネシウムの純度は、得られる表面処理酸化マグネシウムが所望の物性となれば特に限定されないが、通常、約90%以上、前記表面処理酸化マグネシウムを所望の物性にする観点から、好ましくは95%以上である。
本発明に用いる前記酸化マグネシウムの製造方法は、得られる酸化マグネシウムが上記の物性となれば、特に限定されず、公知方法、自体公知の方法又はそれらに準じる方法に従ってよい。具体的には、例えば、水酸化マグネシウムを、電気炉で焼成温度約800℃〜約2500℃、好ましくは焼成温度約1000℃〜約2000℃で焼成することにより製造することができる。
次に、酸化マグネシウムの表面処理について説明する。
本発明において、前記酸化マグネシウムを表面処理する方法は、特に限定されず、公知方法、自体公知の方法又はそれらに準じる方法に従ってよい。本発明のひとつの態様において、酸化マグネシウムの表面処理は、具体的には、酸化マグネシウムに表面処理剤を添加し、その後に、酸化マグネシウムと表面処理剤の混合物を加熱処理することで行う。
本発明のひとつの態様において、表面処理剤の添加量は、酸化マグネシウムの重量に対して約0.5〜約10重量%、耐水性及び耐酸性を向上させる観点から、好ましくは、約0.5〜約8重量%、より好ましくは約1〜約5重量%である。
本発明のひとつの態様において、前記酸化マグネシウムの表面処理工程において、表面処理剤を添加する際、酸化マグネシウムを撹拌しながら添加することが好ましい。撹拌しながら表面処理剤を添加することで、酸化マグネシウムの表面を、好ましくは均一に処理することができる。表面処理剤を添加する際の温度、圧力は特に限定されないが、例えば、約80〜約350℃、約0〜約1MPaで行ってもよい。また、表面処理剤の添加は、空気雰囲気下であっても、窒素などの不活性ガス雰囲気下であってもよい。これらの条件は所望により、適宜選択してよい。
前記表面処理剤添加後の加熱処理工程は、酸化マグネシウムの表面処理を十分に行うことができれば特に限定されないが、例えば、約80℃〜約350℃、好ましくは約100℃〜約300℃の条件で行なってもよい。加熱処理時間は、特に限定されないが、例えば、約1分〜約90分、好ましくは約5分〜約60分としてもよい。加熱処理をする際の圧力は、特に限定されないが、約0〜約5MPa、好ましくは約0〜約1MPaとしてもよい。上記の条件とすることで、本発明で好適に用いることができる表面処理酸化マグネシウムが得られる。また、前記加熱処理工程において、攪拌はしてもしなくてもよいが、所望の物性の表面処理酸化マグネシウムを調製する観点から、好ましくは攪拌を行う。
前記表面処理剤は、無機化合物又は有機化合物の表面処理剤のいずれも用いることができる。
表面処理剤として用いる有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、各種界面活性剤、(反応性)シリコーンオイル、シリコンポリマー、リン酸エステル等が挙げられる。
これらの表面処理剤は単独で、又は2種以上を組合せて用いてもよい。また、表面処理剤は、得られる熱伝導剤の耐水性及び耐酸性を向上させる観点から、好ましくはシランカップリング剤、シリコンポリマー、アルミニウム系カップリング剤、シリコーンオイルを用いる。
より具体的には、上記表面処理剤として、例えば、下記のものを用いてもよい。
ステアリン酸、エルカ酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘン酸等の炭素数10以上の高級脂肪酸類または、前記高級脂肪酸のアルカリ金属塩;ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールの硫酸エステル塩;ポリエチレングリコールエーテルの硫酸エステル塩、アミド結合硫酸エステル塩、エステル結合硫酸エステル塩、エステル結合スルホネート、アミド結合スルホン酸塩、エーテル結合スルホン酸塩、エーテル結合アルキルアリールスルホン酸塩、エステル結合アルキルアリールスルホン酸塩、アミド結合アルキルアリールスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤類;オルトリン酸とオレイルアルコール、ステアリルアルコール等のモノまたはジエステルまたは両者の混合物であって、それらの酸型またはアルカリ金属塩またはアミン塩等のリン酸エステル類;γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)]アンモニウムクロライド、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトエトキシ)シラン等のシランカップリング剤;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルフォスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス−(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤類;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤類、トリフェニルホスファイト、ジフェニル・トリデシルホスファイト、フェニル・ジトリデシルホスファイト、トリ・ノニルフェニルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)−ジトリデシルホスファイト、トリラウリルチオホスファイト等、あるいは、グリセリンモノステアレート、又は、グリセリンモノオレエート等の多価アルコールと脂肪酸のエステル等。
続いて、酸化マグネシウムを表面処理剤で表面処理した後の焼き付け処理工程について説明する。本発明の最大の特徴は、この焼き付け処理工程にある。酸化マグネシウムを表面処理剤で表面処理した後に、さらに焼き付け処理を行うことで、酸化マグネシウムの耐水性及び耐酸性が格段に向上するという、驚くべき有用な新知見を得て、さらに検討を重ねることで、本発明がなされた。すなわち、この新知見によって、高い熱伝導率及び高い電気抵抗値を有し、さらに耐水性及び耐酸性にも優れた酸化マグネシウムを提供することができるようになったのである。
前記焼き付け処理の温度は、酸化マグネシウムの耐水性及び耐酸性が向上すれば特に限定されないが、例えば、通常約200〜約800℃、好ましくは約250℃〜約750℃、より好ましくは約250〜約700℃としてよい。焼き付け処理の時間は、酸化マグネシウムの耐水性及び耐酸性が向上すれば特に限定されないが、例えば、通常約10分〜約3時間、好ましくは約15分〜約2.5時間、より好ましくは約20分〜約2時間としてよい。焼き付け処理の際の圧力は特に限定されないが、製造効率の観点から、常圧で行うことが好ましい。また、空気雰囲気下、又は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下のいずれで行ってもよい。さらに、焼き付け処理は、所望により、攪拌又は混合を実施しながら行ってもよい。焼き付け処理後の冷却方法は特に限定されないが、例えば、自然冷却により酸化マグネシウムの冷却を行ってもよい。
具体的には、例えば、上記の様にして表面処理剤で表面処理した酸化マグネシウムを、電気炉等で空気雰囲気下、約200〜約800℃で約10分〜約3時間処理することで焼き付け処理を行ってもよい。より詳しい条件は、後記する実施例の記載を参考にできる。
本発明のひとつの好ましい態様において、上記のようにして焼き付け処理を行った表面処理酸化マグネシウムに対して、さらに表面処理剤で表面処理をしてもよい。焼き付け処理後の酸化マグネシウムをさらに表面処理することで、驚くべきことに、さらに酸化マグネシウムの耐水性及び耐酸性が向上するという有用な新知見を、本発明者らは本発明の検討において得た。この焼き付け処理後の表面処理も、本発明の重要な特徴のひとつである。前記表面処理剤、表面処理方法は上記と同様であってよい。
また、本発明の別のひとつの態様において、焼き付け処理をした前記酸化マグネシウムをさらに表面処理した後、再び焼き付け処理を行ってもよい。このように表面処理及び焼き付け処理を繰り返すことで、酸化マグネシウムの耐水性及び耐酸性をさらに向上させることができる。なお、表面処理剤の種類、表面処理条件、焼き付け処理条件は各回により異なっていてもよく、同じであってもよい。
本発明のひとつの態様において、酸化マグネシウムの表面処理及び焼き付け処理工程を行う回数は、酸化マグネシウムの耐水性及び耐酸性が向上すれば、特に制限されないが、通常1〜5回、製造効率の観点から、好ましくは1〜3回、より好ましくは1〜2回である。
上記の様にして焼き付け処理を行って得られる表面処理酸化マグネシウム、又は、焼き付け処理後にさらに表面処理を行って得られる表面処理酸化マグネシウムは、BET比表面積が、通常約0.05〜約15m/g、耐水性及び耐酸性を向上させる観点から、好ましくは約0.1〜約10m/gである。
本発明において、BET比表面積の測定方法は、通常この分野で用いられる方法であればよく、特に限定されない。いずれの測定方法により得られた値であっても、上記範囲に入れば本発明の技術的範囲内である。BET比表面積の測定方法は、具体的には、例えば、前処理として窒素ガス雰囲気下で加熱処理した測定試料(酸化マグネシウム)を、BET比表面積測定装置にて窒素ガス吸着法で測定してもよい。前処理は、例えば、窒素ガス雰囲気下、約130℃で約30分間としてもよい。
また、本発明において、焼き付け処理後、又は焼き付け処理後にさらに表面処理して得られる表面処理酸化マグネシウムは、下記の条件による電位差滴定で測定したpHの値が、通常pH約6〜約10、耐水性及び耐酸性の観点から、好ましくはpH約6〜約9、より好ましくは約6〜約8である。
<電位差滴定条件>
湿潤剤として0.1重量%のトリトンX−100、及び、電解質として0.1重量%の過塩素酸リチウムを含有した混合水溶液100mLに対し、測定試料(酸化マグネシウム粉末)1.0gを添加して、ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて800rpmで10分間分散処理して懸濁液を調製する。この懸濁液を25℃で、窒素ガスでバブリングしながら、自動滴定装置(京都電子工業化株式会社製、型番:AT−400)を用いて、0.1Mの硝酸水溶液を0.1mL/分の速度で前記懸濁液(100mL)に滴下する。0.1Mの硝酸水溶液を1mL滴下した時点(滴下開始から10分後)での、前記懸濁液(液温約25℃)のpHを、自動滴定装置のガラス電極を用いて測定し、得られた値を「電位差滴定で測定したpH値」とする。
なお、この酸−塩基反応は下記式(i)の通りであり、MgO粒子表面の表面処理剤は、この反応を妨害する形で滴定曲線に反映される。
式(i) MgO+2HNO→Mg(NO+H
本発明の前記焼き付け処理して得られる、又は焼き付け処理後にさらに表面処理して得られる表面処理酸化マグネシウムは、熱伝導率が通常、約45W/m・K以上、好ましくは約55W/m・K以上であり、より好ましくは約60W/m・K以上である。
なお、本発明において、前記熱伝導率はJIS R1611に従って測定することができる。具体的には、熱伝導率測定装置(例えば、NETZSCH:LFA−457)を用いて、レーザーフラッシュ法で測定することができる。この場合、LDPE樹脂100重量部に対して、本発明の表面酸化処理マグネシウムを300重量部配合して作成した樹脂シートを測定し、その測定値が、通常約1.6W/m・K以上、約2.1W/m・K未満であり、好ましくは、約1.7W/m・K以上であり、より好ましくは約1.8W/m・K以上である。
また、本発明の前記焼き付け処理して得られる、又は焼き付け処理後にさらに表面処理して得られる表面処理酸化マグネシウムの耐水性及び耐酸性は、例えば、1998JIS K6911に記載された方法に従って測定する体積固有抵抗値又は1998JIS K7114に記載された方法に従って測定する重量減少率によって確認することができる。具体的な測定方法については、後記する実施例の記載を参考にすることができる。
本発明の好ましいひとつの態様において、本発明の前記焼き付け処理して得られる、又は焼き付け処理後にさらに表面処理して得られる表面処理酸化マグネシウムを、LDPE樹脂100重量部に対し、300重量部配合したLDPE樹脂は、前記体積固有抵抗値が約1×1014(Ω・cm)以上であることが好ましく、約5×1014(Ω・cm)がより好ましく、約1×1015(Ω・cm)がさらに好ましい。また、前記重量減少率は、約10%以下であることが好ましく、約5%以下であることがより好ましく、約3%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の別の好ましいひとつの態様において、本発明の前記焼き付け処理して得られる、又は焼き付け処理後にさらに表面処理して得られる表面処理酸化マグネシウムは、耐水性に優れることから、高温多湿(例えば、約40℃、相対湿度約90%)の条件で、長時間(例えば、約96時間)放置しても、体積固有抵抗値の減少がほとんどないか、あってもわずかである。
本発明のひとつの好ましい態様において、本発明の前記焼き付け処理して得られる、又は焼き付け処理後にさらに表面処理して得られる表面処理酸化マグネシウムは、BET比表面積が約0.05〜約15m/g、且つ、電位差滴定で測定したpHが約6〜約10であり、より好ましくは、BET比表面積が約0.1〜約10m/g、且つ、電位差滴定で測定したpHが約6〜約9である。このような表面処理酸化マグネシウムは、耐水性及び耐酸性に格段に優れる。
また、本発明のひとつの態様において、前記熱伝導剤は、前記表面処理酸化マグネシウムに加えて、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂等の樹脂;エラストマー、ゴム等;アルミ、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、白金、金、銀などの金属、およびこれらの合金;酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、酸化アルミ、窒化アルミ、酸化チタン、窒化チタン、炭化チタン等のセラミック等を含有していてもよい。前記熱伝導剤の用途に応じて、所望の物性を達成させるために、これらを適宜選択してよい。
本発明のひとつの態様においては、前記熱伝導剤を、放熱性フィラーとして使用してもよい。放熱性フィラーとして使用する場合、前記熱伝導剤と樹脂とを混合して樹脂組成物を製造することができる。このような樹脂組成物も本発明の一つである。この場合、使用する樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチル、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、液晶樹脂(LCP)、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と前記熱伝導剤とを溶融状態で混練することによって得られた熱成型用の樹脂組成物;熱硬化性樹脂と前記熱伝導剤とを混練後、加熱硬化させることによって得られた樹脂組成物;等のいずれの形態であってもよい。
本発明の樹脂組成物中の前記熱伝導剤の配合量は、目的とする熱伝導率や樹脂組成物の硬度等、樹脂組成物の性能に合わせて任意に決定することができる。前記熱伝導剤の放熱性能を充分に発現させるためには、樹脂組成物中の固形分全量に対して10〜90体積%含有する事が好ましい。前記配合量は所望の放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、30体積%以上含有することが好ましく、50体積%以上とすることが更に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、用途によって樹脂成分を自由に選択してもよい。例えば、熱源と放熱板の間に装着し密着させる場合には、シリコーン樹脂やアクリル樹脂のような接着性が高く硬度の低い樹脂を選択すればよい。
本発明の樹脂組成物が熱成型用の樹脂組成物である場合、熱可塑性樹脂と前記熱伝導剤を、例えば、スクリュー型二軸押出機を用いた溶融混練によって、樹脂組成物をペレット化し、その後射出成型等の任意の成形方法によって所望の形状に成型する方法等によって目的とする樹脂組成物を製造することができる。
本発明の樹脂組成物が熱硬化性樹脂と前記熱伝導剤とを混練後、加熱硬化させることによって得られた樹脂組成物である場合、例えば、加圧成形等によって成形するものであることが好ましい。このような樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物をトランスファー成型により成型し、製造することができる。
本発明の熱伝導剤は、高い熱伝導性を有するので、高い放熱性を要求される分野において有用である。例えば、発熱性の高い半導体素子、抵抗などの封止用樹脂、あるいは軸受けなどの高い摩擦熱が発生する部品;発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、多極ロッド、電気部品キャビネット、ソケット、リレーケースなどの電気機器部品用途;センサー、LEDランプ、コネクター、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、ハードディスクドライブ部品(ハードディスクドライブハブ、アクチュエーター、ハードディスク基板など)、DVD部品(光ピックアップなど)、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などの電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などの家庭用若しくは事務用電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどの機械関連部品;顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの光学機器若しくは精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品に適用できる。
また、本発明の熱伝導剤は、耐水性、耐酸性及び電気絶縁性にも優れている。
本発明の別のひとつの態様において、前記熱伝導剤を鉱油又は合成油を含有する基油と混合した放熱性グリースとして使用してもよい。
本発明の放熱性グリース中の前記熱伝導剤の配合量は、目的とする熱伝導率に合わせて任意に決定することができる。前記熱伝導剤の放熱性能を充分に発現させるためには、放熱性グリース全量に対して、前記熱伝導剤を10〜90体積%以上含有することが好ましい。前記配合量は所望の放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、30体積%以上含有することが好ましく、50体積%以上とすることが更に好ましい。
上記基油は、特に限定されないが、鉱油、合成油、シリコーンオイル、フッ素系炭化水素油等があげられ、これらの各種油性材料を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。合成油としては特に炭化水素油がよい。合成油としては、α−オレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、トリメリット酸エステル、ポリフェニルエーテル、又はアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
本発明の放熱性グリースは、所望により界面活性剤を含有させてもよい。前記界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤が好ましい。非イオン系界面活性剤の配合により、熱伝導率のさらなる向上を図り、稠度を好適に制御することができる。
前記非イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエチレンジアミン、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ペンタエリトリットモノ脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンセスキ脂肪酸エステル、又はソルビタントリ脂肪酸エステルが挙げられる。
非イオン系界面活性剤の添加の効果は親水性と親油性のバランスを示すHLB(親水親油バランス)、及びその配合量によって異なる。本発明のひとつの態様において、非イオン系界面活性剤は、室温においても良好な稠度を得るために、HLBが9以下の液状界面活性剤を用いることが好ましい。また、高放熱性グリース等の電気絶縁性や電気抵抗の低下を重視しない用途では、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤も好適に使用できる。
本発明の前記放熱性グリースは、前記熱伝導剤及び基油等の成分をドウミキサー(ニーダー)、ゲートミキサー、プラネタリーミキサー、3本ロールミルなどの混合機器を用いて混合することによって調製することができる。
本発明のひとつの態様において、前記放熱性グリースは、発熱体や放熱体に塗布することによって使用してもよい。発熱体としては、例えば、一般の電源;電源用パワートランジスタ、パワーモジュール、サーミスタ、熱電対、温度センサなどの電子機器;LSI、CPU等の集積回路素子などの発熱性電子部品などが挙げられる。放熱体としては、例えば、ヒートスプレッダ、ヒートシンク等の放熱部品;ヒートパイプ、放熱板などが挙げられる。塗布は、例えば、スクリーンプリントによって行うことができる。スクリーンプリントは、例えば、メタルマスクもしくはスクリーンメッシュを用いて行うことができる。本発明の放熱性グリースを発熱体及び放熱体の間に介在させて塗布することにより、上記発熱体から上記放熱体へ効率よく熱を伝導させることができるので、上記発熱体から効果的に熱を取り除くことができる。
また、本発明のさらに別のひとつの態様において、前記熱伝導剤を、樹脂溶液又は分散液中に分散させて塗料組成物を製造してもよい。この場合、使用する樹脂は硬化性を有するものであっても、硬化性を有さないものであってもよい。上記樹脂として具体的には、上述した樹脂組成物において使用することができる樹脂として例示した樹脂を挙げることができる。塗料は、有機溶剤を含有する溶剤系のものであっても、水中に樹脂が溶解又は分散した水系のものであってもよい。
上記塗料組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ディスパーやビーズミル等を使用し、必要とする原料及び溶剤を混合・分散することによって製造することができる。
上記放熱性塗料組成物中の前記熱伝導剤の配合量は、目的とする熱伝導率に合わせて任意に決定することができる。前記熱伝導剤の放熱性能を充分に発現させるためには、塗料組成物全量に対して10〜90体積%以上含有することが好ましい。前記配合量は所望の放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、30体積%以上含有することが好ましく、50体積%以上とすることが更に好ましい。
本発明の前記熱伝導剤は、ゴムの加硫促進剤、塗料・インキ用顔料、医薬品等の分野においても好適に使用することができる。
次に、実験例、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
なお、本実施例において、酸化マグネシウムをMgOとも表記する。
<シート成形条件>
(1)LDPE樹脂100質量部、ならびに、測定試料(後記する実施例1〜3及び比較例1〜4の酸化マグネシウム又は酸化アルミニウム)300質量部の条件で、ラボブラストミルを用いて160℃で15分間混練した。
(2)その後、得られた混練物を160℃で3分間、30MPaでプレス成形を行い、厚さ2mmのシートを得た。適宜、シートを切り出し、2mm×縦13mm×横13mm、又は、厚さ2mm×縦3mm×横3mmのシートを得た。
なお、シートの厚みはデジタルシクネスゲージDES−3010(メーカー:Niigataseiki)を用いて4点で厚み測定を行い、その平均値とした。
上記方法により作製したシートは、後記する体積固有抵抗、重量減少率、熱伝導率の測定に供した。
<体積固有抵抗の測定>
上記の方法で作製した厚さ2mm×縦13mm×横13mmのシートを、固有抵抗測定電極(型番:16008A、HEWLETT PACKARD社製)と、ハイレジスタンスメーター(型番:4329A、YOKOGAWA HEWLETT PACKARD社製)とを用いて500Vの電圧をかけ、1分間充電した後の体積抵抗値を測定し、体積固有抵抗値(ρ)に換算した。体積固有抵抗値(ρ)は、ρ=接触面積/厚み×体積固有値の式から求めた。
<重量減少率の測定>
JIS K7114に従って測定を行った。
(1)上記の方法で作製した厚さ2mm×縦3mm×横3mmのシートの重量を精密天秤(DRAGON 204、メトラー・トレド社製)にて測定した(得た値をW1とした。)。
(2)次に、シートを40℃の10%(w/w)希釈硫酸中に24時間浸漬した。
(3)その後、シートの洗浄を行い、40℃で24時間シートを乾燥した。
なお、上記シートの洗浄は、25℃の水にシートを浸漬し、10分間の超音波洗浄をかけるという操作を6回繰り返すことにより実施した。水は、洗浄を1回行う毎に取り替えた。また、シートの乾燥は、乾燥機に入れて、送風することによって行った。
(4)乾燥後のシートの重量を測定した(得た値をW2とした。)。
(5)重量減少率は下記式(I)によって算出した
式(I) 重量減少率(%)=(W2/W1)×100
<熱伝導率の測定>
上記の方法で作製したシートを直径2cmの円状に加工して、JIS R1611に従って、熱伝導率測定装置(NETSCH:LFA−457)を用いて、レーザーフラッシュ法で測定した。
<電位差滴定>
湿潤剤として0.1重量%のトリトンX−100と、電解質として0.1重量%の過塩素酸リチウムと含有した混合水溶液を100mL採取し、これにMgO粉末1.0gを添加して、ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて800rpmで10分間分散処理して懸濁液を調製した。この懸濁液を25℃で窒素ガスをバブリングしながら、自動滴定装置(京都電子工業化株式会社製AT−400)を用いて、前記懸濁液に対して0.1Mの硝酸水溶液を0.1mL/分の速度で滴下し、ガラス電極を用いて温度25℃での滴定溶液中のpHを測定することにより滴定曲線を得た。また、0.1M硝酸水溶液を1mL滴下した直後(滴下開始から10分後)のpHを求めた。
<実施例1>
3μmの水酸化マグネシウムを電気炉で、焼成温度1050℃で2時間焼成して酸化マグネシウムを作製した。得られた酸化マグネシウムのBET比表面積は5.3m/gであった(以降、本明細書において、焼成温度約1000℃〜約2000℃で焼成して得られ、BET比表面積が約0.05〜約15m/gである酸化マグネシウムを、低活性酸化マグネシウムといい、低活性MgOとも表記する。)。その後、ヘンシェルミキサーに入れ、常圧、150℃で撹拌させながら、反応性シリコーンオイル(信越化学工業製:AFP−1)を、酸化マグネシウムの重量に対して2重量%となるように添加した。
添加終了後、常圧、150℃〜170℃の条件で30分間攪拌を行って表面処理を行った。
その後、電気炉で、表面処理をした酸化マグネシウムを焼成温度400℃で1時間焼き付け処理を行い、焼き付け処理をした表面処理酸化マグネシウムを作製した。焼き付け処理は、攪拌又は混合なしで、大気中で焼成させることによって行った。また、焼成後、酸化マグネシウムの冷却は電気炉中で、自然冷却で行なった。
<実施例2>
焼き付け処理後の酸化マグネシウムを、さらにヘンシェルミキサー中で反応性シリコーンオイル(AFP−1)を、酸化マグネシウムの重量に対して2重量%添加して、150℃で、30分間撹拌する以外は、実施例1と同様にして表面処理酸化マグネシウムを作製した。
<実施例3>
水酸化マグネシウムを焼成温度1600℃で10時間焼成して得られた、BET比表面積0.7m/gの低活性酸化マグネシウムを用いた以外は、実施例2と同様にして表面処理酸化マグネシウムを作製した。
<比較例1>
3μmの水酸化マグネシウムを焼成温度1050℃で2時間焼成して、低活性酸化マグネシウムを作製した。本比較例1においては、表面処理は行わず、無処理の低活性酸化マグネシウムとした。
<比較例2>
水酸化マグネシウムの焼成温度を900℃とする以外は、実施例2と同様にして焼き付け処理をした表面処理酸化マグネシウムを作製した。なお、水酸化マグネシウムを焼成し得られた(表面処理前の)酸化マグネシウムのBET比表面積は、20m/gであり、以降、本比較例2で得られた表面処理前の酸化マグネシウムを中活性酸化マグネシウムといい、中活性MgOとも表記する。
<比較例3>
比較例1で得た低活性酸化マグネシウムをヘンシェルミキサーに入れ、撹拌させながら、反応性シリコーンオイル(信越化学工業社製:AFP−1)を、酸化マグネシウムの重量に対して2重量%添加した。添加終了後、150℃で30分間表面処理を行って表面処理酸化マグネシウムを作製した。
<比較例4>
市販のBET比表面積が0.2m/gの球状酸化アルミニウムを用いた。
<試験例1>重量減少率
上記の方法で作製したシートについて、JIS K7114に従って重量減少率を測定した。
結果を表1に示す。
<試験例2>吸湿前後の体積固有抵抗値の比較
(1)上記の方法により作製したシートを、温度30℃、相対湿度50%の雰囲気下で3時間放置した後、体積固有抵抗を測定した。
(2)その後、該シートを温度40℃、相対湿度90%の雰囲気下で96時間放置した(吸湿処理)後、再び体積固有抵抗値を測定し、吸湿前後の抵抗値の値を比較した。
結果を表1に示す。
<試験例3>電位差滴定によるpHの測定
実施例1〜3及び比較例1〜4で得た酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムについて、電位差測定を実施し、各試料のpHを測定した。
結果を表1に示す。
<試験例4>熱伝導率
実施例1〜3及び比較例1〜4で得た酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムについて、熱伝導率の測定を実施した。
結果を表1に示す。
本発明の実施品である実施例1〜3の表面処理酸化マグネシウムは、体積固有抵抗及び熱伝導率が高く、重量減少率の低い結果であった。また、本発明の実施例品である実施例1〜3は、吸湿前後の体積固有抵抗値がほぼ変化がなかった。このことから、本発明の表面処理酸化マグネシウムは、耐水性及び耐酸性が高く、優れた熱伝導剤であることが示された。
本発明によれば、耐候性等の耐久性を要求される用途においても、好適に使用することができる酸化マグネシウム、該酸化マグネシウムを含有する熱伝導剤、樹脂組成物、放熱性グリース、放熱性塗料組成物等を提供することができる。さらに、本発明によれば、耐水性及び耐酸性が高く、且つ熱伝導率及び電気抵抗値も高い優れた安価な熱伝導剤を提供することができる。

Claims (7)

  1. BET比表面積が0.05〜15m/g、且つ、電位差滴定で測定したpH値が6〜10であり、シリコーンオイル及びシリコンポリマーから選択された少なくとも1種を含む表面処理剤とする、表面処理酸化マグネシウム。
  2. BET比表面積が0.05〜0.7m/g又は5.3〜15m/gである、請求項1に記載の表面処理酸化マグネシウム。
  3. 電位差滴定で測定したpH値が6〜9.7である、請求項1又は2に記載の表面処理酸化マグネシウム。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理酸化マグネシウムを含有する熱伝導剤。
  5. 請求項1〜3いずれか1項に記載の表面処理酸化マグネシウムを含有する樹脂組成物。
  6. 酸化マグネシウムをシリコーンオイル及びシリコンポリマーから選択された少なくとも1種を含む表面処理剤で表面処理する工程、及び表面処理した酸化マグネシウムを200℃〜800℃で焼き付け処理する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化マグネシウムの製造方法。
  7. 焼き付け処理工程の後に、さらに表面処理工程を含む、請求項に記載の製造方法。
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