JP7239608B2 - 改質リン酸タングステン酸ジルコニウム、負熱膨張フィラー及び高分子組成物 - Google Patents

改質リン酸タングステン酸ジルコニウム、負熱膨張フィラー及び高分子組成物 Download PDF

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Description

本発明は、改質リン酸タングステン酸ジルコニウム、それを用いた負熱膨張フィラー及び高分子組成物に関するものである。
一般的に、物質は、温度が上昇すると、熱膨張によって長さや体積が増大する性質を有する。一方で、熱の付与によって逆に体積が小さくなる性質を有する負の熱膨張を示す材料(以下、「負熱膨張材」ということもある。)が知られている。負の熱膨張を示す材料は、例えば他の材料とともに用いて、温度変化による材料の熱膨張による体積変化を抑制するために用いられる。
負の熱膨張を示す材料としては、例えば、β-ユークリプタイト、タングステン酸ジルコニウム(ZrW)、リン酸タングステン酸ジルコニウム(ZrWO(PO)、ZnCd1-x(CN)、マンガン窒化物、ビスマス・ニッケル・鉄酸化物等が知られている。
リン酸タングステン酸ジルコニウム粒子の線膨張係数は、0~400℃の温度範囲で-3.4~-3.0ppm/℃であり、負熱膨張性が大きいことが知られている。このリン酸タングステン酸ジルコニウム粒子と、正の熱膨張を示す材料(以下「正熱膨張材」ということもある。)とを併用することで、低熱膨張の材料を製造することができる(特許文献1~3参照)。また、正熱膨張材である樹脂等の高分子化合物と負熱膨張材とを併用することも提案されている(特許文献4~5)。
特開2005-35840号公報 特開2015-10006号公報 国際公開第2017/61403号パンフレット 特開2015-38197号公報 特開2016-113608号公報
しかし、リン酸タングステン酸ジルコニウムは、水に接触すると、構造中のジルコニウム、タングステン及びリンがイオンとして溶出してしまい、これに起因して負熱膨張材としての性能が低下したり、樹脂等の材料と混合した場合に成形品の性能が劣化したりする問題がある。
また、前記問題に加えて、リン酸タングステン酸ジルコニウムは、樹脂等の疎水性の高分子化合物との親和性が低いので、高分子化合物中に均一に分散させることが困難であり、その結果、所望の低熱膨張性材料を得ることが困難であった。
従って、本発明の目的は、リン酸タングステン酸ジルコニウム中のジルコニウムイオン、タングステンイオン及びリンイオンの水への溶出を抑制し、高分子化合物に含有させた負熱膨張フィラーとして好適に使用することができる改質リン酸タングステン酸ジルコニウム、それを用いた負熱膨張フィラー及び高分子組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、リン酸タングステン酸ジルコニウム粒子の表面を、脂肪酸又はその誘導体で被覆して改質することによって、水に接触した場合においても、ジルコニウムイオン、タングステンイオン及びリンイオンの溶出を効果的に抑制できることを見出した。また、改質したリン酸タングステン酸ジルコニウムは、樹脂等の高分子化合物中に均一に分散させて、負熱膨張フィラーを含む低熱膨張性材料を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明が提供する第1の発明は、リン酸タングステン酸ジルコニウム粒子の粒子表面が、脂肪酸又はその誘導体で被覆されている改質リン酸タングステン酸ジルコニウムであって、1gの該改質リン酸タングステン酸ジルコニウムを85℃の水70mLで1時間加熱処理し、次いで25℃に冷却して24時間静置したときの、該水中のジルコニウムイオン量が20μg以下であり、タングステンイオン量が400μg以下であり、且つリンイオン量が50μg以下である、改質リン酸タングステン酸ジルコニウム
また、本発明が提供する第2の発明は、第1の発明の改質リン酸タングステン酸ジルコニウムからなる負熱膨張フィラーである。
また、本発明が提供する第3の発明は、第2の発明の負熱膨張フィラーと、高分子化合物とを含有することを特徴とする高分子組成物である。
本発明の改質リン酸タングステン酸ジルコニウムによれば、水に接触した場合においても、ジルコニウムイオン、タングステンイオン及びリンイオンの溶出を効果的に抑制し、負熱膨張材としての優れた性能を発現させることができる。また、本発明の改質リン酸タングステン酸ジルコニウムは、樹脂等の高分子化合物に均一に分散させることができ、負熱膨張フィラーを含む低熱膨張性材料を首尾よく製造することができる。
図1は、リン酸タングステン酸ジルコニウム粒子試料1の形状を示す走査型電子顕微鏡の写真である。 図2は、リン酸タングステン酸ジルコニウム粒子試料2の形状を示す走査型電子顕微鏡の写真である。
以下、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明する。本発明の改質リン酸タングステン酸ジルコニウム(以下、これを「改質ZWP」ともいう。)は、リン酸タングステン酸ジルコニウム粒子(以下、これを「ZWP粒子」ともいう。)の表面が、脂肪酸又はその誘導体で被覆されているものである。つまり、本発明の改質リン酸タングステン酸ジルコニウムは、リン酸タングステン酸ジルコニウム粒子を芯材として、該粒子の表面に脂肪酸又はその誘導体からなる層が形成されている粒子からなる。以下の説明では、「L~M」(L及びMはそれぞれ任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「L以上M以下」を意味する。
改質ZWPに含まれる脂肪酸又はその誘導体は、ZWP粒子の表面全体を満遍なく連続して被覆していてもよく、或いは該粒子表面の一部のみを被覆していてもよい。前者の場合、改質ZWPは、ZWP粒子の表面全域が脂肪酸又はその誘導体によって完全に被覆されて、該粒子の表面が露出していない状態になっている。後者の場合、改質ZWPは、その表面が下地であるリン酸タングステン酸ジルコニウムからなる部位と、脂肪酸又はその誘導体からなる部位とから構成される。脂肪酸又はその誘導体がZWP粒子の表面の一部のみを被覆している場合、被覆部位が連続していてもよく、海島状に不連続に被覆していてもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。
本発明に用いられる原料のリン酸タングステン酸ジルコニウムは、下記一般式(1)で表されるものである。
Zr(WO4(PO・・・(1)
(式中、xは、1.7≦x≦2.3、好ましくは1.8≦x≦2.2であり、yは、0.85≦y≦1.15、好ましくは0.90≦y≦1.10であり、zは、1.7≦z≦2.3、好ましくは1.8≦z≦2.2である。)
本発明に用いられる脂肪酸は、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖のモノ又はポリカルボン酸であることが好ましく、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖のモノカルボン酸であることが更に好ましく、飽和又は不飽和の直鎖モノカルボン酸であることが一層好ましい。脂肪酸は、その炭素数が好ましくは7以上である。また、誘導体とは、前記脂肪酸の塩又はアミドを指す。
本発明に用いられる脂肪酸又はその誘導体は、脂肪酸の炭素数が好ましくは7~23であり、更に好ましくは10~20である。このような脂肪酸又はその誘導体としては、例えばカプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸、又はこれらの金属塩若しくはアミド等が挙げられる。脂肪酸の金属塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Zr、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag等の遷移金属、及びAl、Zn等の遷移金属以外の他の金属の塩が挙げられ、好ましくはAl、Zn、W、V等の多価金属塩である。脂肪酸金属塩は、金属の価数に応じて、モノ体、ジ体、トリ体、テトラ体等であり得る。脂肪酸金属塩は、これらの任意の組み合わせであってもよい。このような構成となっていることによって、水へのイオンの溶出を抑制して負熱膨張材としての性能を高めることができるとともに、樹脂等の正熱膨張材中に均一に分散させやすくすることができる。
本発明の改質ZWPは、前記脂肪酸又はその誘導体の被覆量(存在量)が、ZWP粒子に対し、好ましくは0.05質量%~30質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%、更に好ましくは0.2質量%~5.0質量%である。被覆量がこのような範囲であることによって、改質ZWPからのジルコニウムイオン、タングステンイオン及びリンイオンの溶出を効果的に抑制し、負熱膨張材としての性能を高めることができる。また、改質ZWPの疎水性が高くなり、負熱膨張フィラーとして用いたときに、樹脂等の正熱膨張材への分散性が良好となる。
正熱膨張材に対する分散性や充填特性を向上させる観点から、原料となるZWP粒子には、前記一般式(1)に含まれる元素であるP、W、Zr及びO以外の元素(以下、これを「副成分元素」ともいう。)が含有されていることが好ましい。
副成分元素としては、例えば、Li、Na、K等のアルカリ金属元素、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属元素、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta等の遷移金属元素、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Yb等の希土類元素、Al、Zn、Ga、Cd、In、Sn、Pb、Bi等の遷移金属以外の他の金属元素、B、Si、Ge、Sb、Te等の半金属元素、S等の非金属元素、F、Cl、Br、I等のハロゲン元素等が挙げられる。これらの元素は、前記粒子中に1種又は2種以上含まれていてもよい。これらのうち、正熱膨張材に対する分散性や充填特性を一層向上させる観点から、前記粒子は、Mg、Al及びVの少なくとも一種の副成分元素を含むことが好ましく、これに加えて、正熱膨張材の熱膨張係数を抑制しやすくする観点から、副成分元素としてMg及びAlの双方が含まれていることが更に好ましい。
優れた負熱膨張性を有し、且つ正熱膨張材への分散性及び充填特性に優れたものとする観点から、ZWP粒子における副成分元素の含有量は、ZWP粒子に対して、好ましくは0.1質量%~3質量%であり、更に好ましくは0.2質量%~2質量%である。副成分元素が2種類以上含まれる場合は、副成分元素の含有量は、副成分元素の合計質量に基づいて算出する。また、改質ZWPにおける副成分元素の含有量は、上述と同様の範囲とすることができる。副成分元素の含有量は、例えば蛍光X線分析装置等の測定装置を用いて、粉末プレス法、溶融ガラスビード法等の方法で測定することができる。
負熱膨張性、並びに正熱膨張材への分散性及び充填特性を一層優れたものとする観点から、副成分元素としてMg及びAlの双方を含む場合、ZWP粒子中のAl元素の含有量は、好ましくは100ppm~6000ppm、更に好ましくは1000ppm~5000ppmである。また、実用的な線膨張係数を有し、更に分散性及び充填特性に優れたものになる観点から、Mg元素の含有量は、ZWP粒子に対して、好ましくは0.1質量%~3質量%、更に好ましくは0.22質量%~2質量%である。
改質ZWPの粒子形状は、特に制限されるものではなく、例えば、球状、粒状、板状、鱗片状、ウィスカー状、棒状、フィラメント状、1若しくは2以上の稜線を有する不規則な砕石状(以下、これを「破砕状」ともいう。)、又はこれらの組み合わせであってもよい。
本発明の改質ZWPは、これを樹脂等の正熱膨張材と混合させる場合、改質ZWPと正熱膨張材との密着性を向上させる目的で、後述するシランカップリング剤で更に被覆処理されることが好ましい。すなわち、本発明の改質ZWPは、前記脂肪酸又はその誘導体に加えて、シラン化合物で被覆されていることが好ましい。シラン化合物は、Siの原子に直接結合したアルキル基又はアミノ基を有する有機シランの化合物であり、有機シランを含むシランカップリング剤の加水分解生成物や脱水縮合生成物等が含まれる。前記脂肪酸又はその誘導体に加えて、シラン化合物で被覆されていることによって、疎水性がより高く、且つ緻密な被覆層をZWP粒子の表面に形成することができる。その結果、改質ZWPからのイオンの溶出が一層低減されるとともに、改質ZWPを樹脂等の正熱膨張材に効果的且つ均一に分散させることができる。
改質ZWPのシラン化合物による被覆形態は、例えば、(a)ZWP粒子の表面全体を満遍なく被覆した前記脂肪酸若しくはその誘導体の層上に、該層の表面全体を満遍なく被覆したシラン化合物の層が存在する形態、(b)ZWP粒子の表面全体を満遍なく被覆した前記脂肪酸若しくはその誘導体の層上に、該層の表面の一部のみを被覆したシラン化合物の層が存在する形態、(c)ZWP粒子の表面の一部のみを被覆した前記脂肪酸若しくはその誘導体の層上に、該層を含むZWP粒子の表面全体を満遍なく被覆したシラン化合物の層が存在する形態、(d)ZWP粒子の表面の一部のみを被覆した前記脂肪酸若しくはその誘導体の層と、該粒子の表面の一部のみを被覆したシラン化合物の層がZWP粒子の表面にそれぞれ存在する形態、(e)前記脂肪酸若しくはその誘導体及びシラン化合物の混合物からなる層がZWP粒子の表面全体を満遍なく被覆する形態、又は(f)前記脂肪酸若しくはその誘導体及びシラン化合物の混合物からなる層がZWP粒子の表面の一部のみを被覆する形態が挙げられる。
詳細には、前記形態(a)及び(c)の場合、改質ZWPは、ZWP粒子の表面全域がシラン化合物によって完全に被覆されて、該粒子の表面及び前記脂肪酸又はその誘導体の層の表面が露出していない状態になっている。前記形態(b)の場合、改質ZWPは、その表面が前記脂肪酸又はその誘導体からなる部位と、シラン化合物からなる部位とから構成される。前記形態(d)の場合、改質ZWPの表面が、前記脂肪酸又はその誘導体からなる部位及びシラン化合物からなる部位とから構成されており、これらの構成態様によっては、更に下地であるリン酸タングステン酸ジルコニウムからなる部位が存在する。前記形態(e)の場合、改質ZWPは、ZWP粒子の表面全域が前記脂肪酸又はその誘導体及びシラン化合物の混合物によって完全に被覆されて、該粒子の表面が露出していない状態になっている。前記形態(f)の場合、改質ZWPは、その表面が下地であるリン酸タングステン酸ジルコニウムからなる部位と、前記脂肪酸又はその誘導体及びシラン化合物の混合物からなる部位とから構成される。シラン化合物がZWP粒子又は脂肪酸層の表面の一部のみを被覆している場合、被覆部位が連続していてもよく、海島状に不連続に被覆していてもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。
改質ZWPのシラン化合物の被覆量(存在量)は、ZWP粒子に対し、好ましくは0.05質量%~30質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%、更に好ましくは0.2質量%~5質量%である。被覆量がこのような範囲であることによって、改質ZWPからのジルコニウムイオン、タングステンイオン及びリンイオンの溶出をより一層抑制し、負熱膨張材としての性能を更に高めることができる。また、改質ZWPの疎水性が更に高くなるので、改質ZWPを負熱膨張フィラーとして用いたときに、樹脂等の正熱膨張材への分散性が良好となる。
リン酸タングステン酸ジルコニウム粒子の表面を脂肪酸又はその誘導体で被覆した本発明の改質リン酸タングステン酸ジルコニウムによれば、水に接触した場合であっても、リン酸タングステン酸ジルコニウムからのジルコニウム、タングステン及びリンのイオン溶出を効果的に抑制することができ、負熱膨張材としての優れた性能を発現させることができる。また、本発明の改質リン酸タングステン酸ジルコニウムは、脂肪酸に由来する疎水基を有しているので、樹脂等の疎水性の高分子化合物に均一に分散させることができ、その結果、低熱膨張性の材料を首尾よく製造することができる。更に、改質ZWPの粒子どうしの凝集を抑制できるという利点もある。
以下に、本発明の改質ZWPの好適な製造方法を説明する。改質ZWPの製造方法は、ジルコニウム源、タングステン源及びリン源を反応させてZWP粒子を得る工程、及び得られたZWP粒子の表面を脂肪酸又はその誘導体で被覆処理する工程の2つに大別される。
まず、ジルコニウム源、タングステン源及びリン源を反応させてZWP粒子を得る。本発明に用いられるZWP粒子の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば、(i)リン酸ジルコニウム、酸化タングステン及びMgO等の反応促進剤を湿式ボールミルで混合して得られた混合物を焼成する方法(例えば、特開2005-35840号公報参照)、(ii)塩化ジルコニウム等のジルコニウム源、タングステン酸アンモニウム等のタングステン源及びリン酸アンモニウム等のリン源を湿式混合し、得られた混合物を焼成する方法(例えば、特開2015-10006号公報参照)、(iii)酸化ジルコニウム、酸化タングステン及びリン酸二水素アンモニウムを含む混合物を焼成する方法(例えば、Materials Research Bulletin、44(2009)、p.2045-2049参照)、或いは、(iv)タングステン化合物と、リンとジルコニウムとを含む無定形の化合物との混合物を反応前駆体として、該反応前駆体を焼成する方法(例えば、国際公開第2017/061402号パンフレット参照)等が挙げられる。
改質ZWPを正熱膨張材に対するフィラーとして用いる際の取扱いを容易にする観点から、ZWP粒子は、そのBET比表面積が好ましくは0.1m/g~50m/g、更に好ましくは0.1m/g~20m/gである。また、改質ZWPのBET比表面積は、上述と同様の範囲とすることができる。BET比表面積は、例えばBET比表面積測定装置(カンタクロームインスツルメンツ株式会社製、AUTOSORB-1)を用いて測定することができる。
同様の観点から、ZWP粒子は、その平均粒子径が好ましくは0.02μm~50μm、更に好ましくは0.5μm~30μmである。また、改質ZWPの平均粒子径は、上述と同様の範囲とすることができる。平均粒子径は、任意の100個の粒子を走査型電子顕微鏡を用いて観察し、そのときの粒子の最大長さの算術平均値として求めることができる。
ZWP粒子の粒子形状は、特に制限されるものではなく、例えば、球状、粒状、板状、鱗片状、ウィスカー状、棒状、フィラメント状、破砕状、又はこれらの組み合わせであってもよい。
上述した粒子径や比表面積、粒子形状等の諸特性を工業的に有利な方法で制御しやすく、且つ負熱膨張性に優れた改質ZWPを得る観点から、ZWP粒子の製造方法として、前記方法(iv)で製造されたZWP粒子を用いることが好ましい。
次いで、上述の方法で得られたZWP粒子の表面を脂肪酸又はその誘導体で被覆処理する。本工程は、湿式法又は乾式法で行うことができる。
脂肪酸又はその誘導体の被覆処理を湿式法によって行う場合、例えば前記脂肪酸又はその誘導体を所望の濃度で含む分散液にZWP粒子を浸漬してスラリーとし、該スラリーを噴霧乾燥するか、又は該スラリーを固液分離して、得られた固形分を乾燥することによって、目的とする改質ZWPを得ることができる。分散液における前記脂肪酸又はその誘導体の濃度は、改質ZWPにおける脂肪酸又はその誘導体の被覆量が上述した範囲となるように適宜調整すればよい。
脂肪酸又はその誘導体の被覆処理を乾式法によって行う場合、例えばZWP粒子と、固体の前記脂肪酸又はその誘導体とを、ヘンシェルミキサー、気流式粉砕機等の混合装置を用いて混合するか、又は、ZWP粒子と、前記脂肪酸又はその誘導体を溶剤で希釈した希釈液とを混合し、その後、必要に応じて加熱乾燥することによって、目的とする改質ZWPを得ることができる。乾式法においては、ZWP粒子と、前記脂肪酸又はその誘導体との混合物をそのまま用いて改質ZWPを製造するので、前記脂肪酸又はその誘導体の仕込み量と、被覆量とは、略一致する。
このように製造された本発明の改質ZWPは、水の存在下であっても、改質ZWPからのイオン溶出が抑制され、負熱膨張材として好適に用いられるものである。本発明の改質ZWPは、1gの改質ZWPを85℃の水70mLで1時間加熱処理し、次いで25℃まで冷却して24時間静置したときの、該水中に溶出するジルコニウム(Zr)イオン量は、その質量として、好ましくは20μg以下、更に好ましくは10μg以下であり、タングステン(W)イオン量が好ましくは400μg以下、更に好ましくは300μg以下であり、且つリン(P)イオン量が好ましくは100μg以下、更に好ましくは50μg以下である。これらのイオン量は、イオンの価数によらず、Zr,W,Pの各元素の総イオン量が上述の範囲以下であればよい。各イオン量は、例えばICP発光分光装置を用いて測定することができる。
上述した改質ZWPの各種物性は、例えば上述した物性及び形状を有するZWP粒子を用い、前記脂肪酸又はその誘導体との反応量を適宜調整することによって達成することができる。
湿式法及び乾式法のいずれの方法で被覆処理を行った場合であっても、被覆処理後に加熱処理を更に行うことが好ましい。加熱処理の温度は、好ましくは70℃~230℃、更に好ましくは100℃~210℃であり、加熱処理する時間は、好ましくは30分以上、更に好ましくは1時間~10時間である。また、加熱処理における雰囲気は、真空、不活性ガス雰囲気或いは大気雰囲気のいずれであってもよい。加熱処理を施すことによって、ZWP粒子の表面に存在する前記脂肪酸又はその誘導体が緻密な構造となり、水の存在下での改質ZWPからのイオン溶出が一層抑制される。その結果、負熱膨張性に優れた改質ZWPを得ることができる。
加熱処理を行う場合、加熱処理の温度は、前記脂肪酸又はその誘導体の融点以上であり、且つ前記脂肪酸又はその誘導体の分解点より低い温度であることが特に好ましい。このような加熱温度で処理することによって、ZWP粒子の表面に存在する被覆層が一層緻密な構造となり、水の存在下での改質ZWPからのイオン溶出がより一層抑制される。
本発明において、シランカップリング剤による被覆処理を行って、シラン化合物で被覆された改質ZWP(以下、これを「Si処理改質ZWP」ともいう。)は、以下の方法(A)又は(B)によって製造することができる。いずれの方法であっても、本発明の効果は十分に奏される。
方法(A)は、原料となるZWP粒子を、脂肪酸又はその誘導体で被覆処理し、次いで、シランカップリング剤で被覆処理して、Si処理改質ZWPとするものである。本方法では、前記形態(a)ないし(d)のうちいずれかの形態を有する改質ZWPが好適に製造される。
詳細には、方法(A)は、上述のようにZWP粒子を前記脂肪酸又はその誘導体で被覆処理し、次いで、シランカップリング剤による被覆処理を湿式又は乾式で行う。
シランカップリング剤の被覆処理を湿式法によって行う場合は、後述するシランカップリング剤を所望の濃度で含む分散液に、前記脂肪酸又はその誘導体で被覆処理されたZWP粒子を浸漬してスラリーとし、該スラリーを噴霧乾燥するか、或いは該スラリーを固液分離して固形分を乾燥して、シランカップリング剤を加水分解及び縮合させる。これによって、目的とするSi処理改質ZWPを得ることができる。分散液におけるシランカップリング剤の濃度は、改質ZWPにおけるシラン化合物の被覆量が上述した範囲となるように適宜調整すればよい。
シランカップリング剤の被覆処理を乾式法によって行う場合、例えば前記脂肪酸又はその誘導体で被覆処理されたZWP粒子と、シランカップリング剤とを、ヘンシェルミキサー、気流式粉砕機等の混合装置を用いて混合するか、又は、前記脂肪酸又はその誘導体で被覆処理されたZWP粒子と、シランカップリング剤を溶剤で希釈した希釈液とを混合し、その後、必要に応じて上述した条件で加熱処理して、シランカップリング剤を加水分解及び縮合させる。これによって、目的とするSi処理改質ZWPを得ることができる。乾式法においては、前記脂肪酸又はその誘導体で被覆処理されたZWP粒子と、シランカップリング剤との混合物をそのまま用いて改質ZWPを製造するので、シラン化合物の被覆量は、シランカップリング剤の仕込み量から理論的に算出された値と略一致する。
また方法(B)は、原料であるZWP粒子を、脂肪酸又はその誘導体で被覆処理するとともに、シランカップリング剤で被覆処理して、Si処理改質ZWPとするものである。つまり、ZWP粒子に対する各被覆処理を一度の工程で行うものである。本方法では、前記形態(e)又は(f)の形態を有する改質ZWPが好適に製造される。
脂肪酸又はその誘導体による処理と、シランカップリング剤による処理とを湿式法によって行う場合は、前記脂肪酸又はその誘導体及びシランカップリング剤をそれぞれ所望の濃度で含む分散液に、ZWP粒子を浸漬してスラリーとし、該スラリーを噴霧乾燥するか、或いは該スラリーを固液分離して固形分を乾燥して、シランカップリング剤を加水分解及び縮合させる。これによって、目的とするSi処理改質ZWPを得ることができる。分散液における前記脂肪酸又はその誘導体及びシランカップリング剤の濃度は、改質ZWPにおける前記脂肪酸又はその誘導体及びシラン化合物の被覆量がそれぞれ上述した範囲となるように適宜調整すればよい。
脂肪酸又はその誘導体による処理と、シランカップリング剤による処理とを乾式法によって行う場合、例えばZWP粒子、前記脂肪酸またはその誘導体及びシランカップリング剤を、ヘンシェルミキサー、気流式粉砕機等の混合装置を用いて一度に混合するか、又は、ZWP粒子と、前記脂肪酸又はその誘導体及びシランカップリング剤をともに溶剤で希釈した希釈液とを混合し、その後、必要に応じて加熱等の乾燥を行って、シランカップリング剤を加水分解及び縮合させる。これによって、目的とするSi処理改質ZWPを得ることができる。乾式法においては、記脂肪酸又はその誘導体で被覆処理されたZWP粒子とシランカップリング剤との混合物をそのまま用いて改質ZWPを製造するので、シラン化合物の被覆量は、シランカップリング剤の仕込み量から理論的に算出された値と略一致する。
前記方法(B)で得られたSi処理改質ZWPは、湿式法及び乾式法のいずれの方法で被覆処理を行った場合であっても、被覆処理後に加熱処理を更に行うことが好ましい。加熱処理の温度は、好ましくは70℃~230℃、更に好ましくは100℃~210℃であり、加熱処理する時間は、好ましくは30分以上、更に好ましくは1時間~10時間である。また、加熱処理における雰囲気は、真空、不活性ガス雰囲気或いは大気雰囲気のいずれであってもよい。加熱処理を施すことによって、ZWP粒子の表面に存在する被覆層が緻密な構造となり、水の存在下での改質ZWPからのイオン溶出がより一層抑制される。その結果、負熱膨張フィラーとしての性能に一層優れた改質ZWPを得ることができる。
Si処理改質ZWPの製造の際に加熱処理を行う場合、加熱処理の温度は、前記脂肪酸又はその誘導体の融点以上であり、且つ前記脂肪酸又はその誘導体の分解点より低い温度であることが特に好ましい。このような加熱温度で処理することによって、ZWP粒子の表面に存在する被覆層が一層緻密な構造となり、水の存在下での改質ZWPからのイオン溶出がより一層抑制される。
前記シランカップリング剤としては、疎水性のものが好ましく、例えば、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ユレイドプロピルトリエトトキシシラン、アミノフッ素シラン等が挙げられる。
以上の工程を経て得られた本発明の改質ZWPは、これをそのまま粉末等の乾燥状態で、又は該粉末を溶媒に分散させた湿潤状態で、低熱膨張性材料を製造するための負熱膨張フィラーとして好適に用いることができる。
また、本発明の負熱膨張フィラーは、該負熱膨張フィラーと高分子化合物とを混合することによって、高分子組成物を製造することができる。この高分子組成物は、改質ZWPが備える高い負熱膨張性に起因して、熱膨張率が抑制された材料となる。
本発明の高分子組成物に用いられる高分子化合物としては、特に制限されるものではないが、好ましくは正熱膨張性を有する樹脂等である。このような樹脂としては、例えばゴム、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)及びポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は複数組み合わせて用いることができる。
高分子組成物中の負熱膨張フィラーの含有量は、用いる高分子化合物の種類や、製造する材料の用途や目的に応じて適宜変更することができるが、高分子組成物に対して、好ましくは1体積%~90体積%である。同様に、高分子組成物中の高分子化合物の含有量は、高分子組成物に対して、好ましくは10体積%~99体積%である。
高分子組成物は、負熱膨張フィラー及び高分子化合物に加えて、添加剤を更に含有させることができる。添加剤としては、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離剤、染料、顔料を含む着色剤、難燃剤、架橋剤、軟化剤、分散剤、硬化剤、重合開始剤、無機充填剤等が挙げられる。添加物の含有量は、高分子組成物に対して、好ましくは10体積%~90体積%である。
本発明の高分子組成物は、公知の方法によって製造することができる。例えば、高分子化合物として硬化性樹脂を用いる場合、負熱膨張フィラー、硬化性樹脂(或いはプレポリマー)及び必要に応じて添加物を同時に混合して、成形体とする方法や、樹脂成分の一種にあらかじめ負熱膨張フィラー及び必要に応じて添加剤と混合して混合物とし、次いで、該混合物を硬化性樹脂(或いはプレポリマー)と混合して成形体とする方法等が挙げられる。
また、高分子化合物として熱可塑性樹脂を用いる場合、負熱膨張フィラーと熱可塑性樹脂とをエクストルーダーで溶融混合して成形体とする方法や、負熱膨張フィラーと熱可塑性樹脂とを固体状態で混合した混合物を射出成形機を用いて成形体とする方法等が挙げられる。
このように製造された本発明の高分子組成物は、負熱膨張フィラーとして用いられる改質ZWPが備える高い負熱膨張性によって、熱膨張率が効果的に抑制され、熱による変形が生じづらい材料となる。また、負熱膨張フィラーとして用いられる改質ZWPからのイオンの溶出が少ないので、特に、電子部品の封止材料等の精密機器の材料として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<リン酸タングステン酸ジルコニウム粒子(ZWP粒子)の調製>
(1.ZWP粒子試料1)
市販の三酸化タングステン(WO;平均粒子径1.2μm)15質量部をビーカーに入れ、更に純水84質量部を添加し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1質量部添加し、分散液とした。この分散液を室温(25℃)でスリーワンモーター攪拌機を用いて120分間撹拌して、三酸化タングステンを含む15質量%スラリーを調製した。スラリー中の固形分の平均粒子径は1.2μmであった。
次いで、スラリー中のZr:W:Pのモル比が2.00:1.00:2.00となるように、水酸化ジルコニウムと85質量%リン酸水溶液とを室温(25℃)でスラリーに添加し、反応液とした。この反応液を用いて、室温(25℃)で2時間、撹拌下で反応させた。反応終了後の反応液の全量を、200℃で24時間、大気下で乾燥を行って、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体についてX線回折分析を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された。
続いて、得られた反応前駆体を950℃で2時間、大気中で焼成を行い、焼成品として白色のZWP粒子試料1を得た。得られたZWP粒子試料1についてX線回折分析を行ったところ、該試料1は、単相のZr(WO)(POであった。ZWP粒子試料1の平均粒子径及びBET比表面積を表1に示す。また、走査型電子顕微鏡観察を行った結果、得られたZWP粒子試料1の粒子形状は、図1に示すように破砕状であった。
(2.ZWP粒子試料2)
市販の三酸化タングステン(WO;平均粒子径1.2μm)15質量部をビーカーに入れ、更に純水84質量部を添加し、分散液とした。この分散液を室温(25℃)で120分間撹拌して、三酸化タングステンを含む15質量%スラリーを調製した。スラリー中の固形分の平均粒子径は1.2μmであった。
次いで、スラリー中のZr:W:P:Mgのモル比が2.00:1.00:2.00:0.1となるように、水酸化ジルコニウムと、85質量%リン酸水溶液と、水酸化マグネシウムとを室温(25℃)でスラリーに添加し、反応液とした。この反応液を80℃に昇温して4時間撹拌下に反応を行った。その後、反応終了後の反応液に、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1質量部添加し、これを攪拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズをメディア攪拌型ビーズミル(アシザワファインテック社製、LMZ2)に供給し、2000rpmで15分間湿式粉砕を行った。湿式粉砕後の反応液中の固形分の平均粒子径は0.3μmであった。
続いて、湿式粉砕後の反応液を、220℃に設定したスプレードライヤーに、2.4L/hの供給速度で供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体についてX線回折分析を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された。
最後に、得られた反応前駆体を960℃で2時間、大気中で焼成し、焼成品として白色のZWP粒子試料2を得た。得られたZWP粒子試料2をX線回折分析したところ
、該試料2は単相のZr(WO)(POであった。ZWP粒子試料2の平均粒子径及びBET比表面積を表1に示す。また、走査型電子顕微鏡観察を行った結果、得られたZWP粒子試料2の粒子形状は、図2に示すように球状であった。
Figure 0007239608000001
(実施例1)
50gのZWP粒子試料1と、0.25g(0.5質量%)のステアリン酸(融点:62℃~72℃)とを、気流式粉砕機(セイシン企業製、A-Oジェットミル)で粉砕混合して粉体混合物とし、該混合物を100℃で30分加熱処理して、ZWP粒子の表面が脂肪酸で被覆された改質ZWPを得た。この改質ZWPは、破砕状の粒子であった。気流式粉砕機の条件は、粉体供給速度:3g/分、プッシャー圧:0.6MPa、ジェット圧:0.6MPaとした。
(実施例2)
ZWP粒子試料1とステアリン酸との粉体混合物を200℃で30分加熱処理したほかは実施例1と同様の方法で行い、ZWP粒子の表面が脂肪酸で被覆された改質ZWPを得た。この改質ZWPは、破砕状の粒子であった。
(実施例3)
50gのZWP粒子試料1と、0.25g(0.5質量%)のステアリン酸(融点:62℃~72℃)と、0.25g(0.5質量%)のシランカップリング剤(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)とを気流式粉砕機(セイシン企業製、A-Oジェットミル)で粉砕混合して粉体混合物とし、該混合物を200℃で30分加熱処理して、ZWP粒子の表面が脂肪酸及びシラン化合物で被覆された改質ZWPを得た。気流式粉砕機の条件は、実施例1と同様とした。この改質ZWPは、破砕状の粒子であった。
(実施例4)
50gのZWP粒子試料2と、0.25g(0.5質量%)のステアリン酸(融点:62℃~72℃)と、0.25g(0.5質量%)のシランカップリング剤(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を加えて、20000rpmで1分間、混合機(ラボ用ミキサー:Labo Milser)で混合して粉体混合物とし、該混合物を200℃で30分加熱処理して、ZWP粒子の表面が脂肪酸及びシラン化合物で被覆された改質ZWPを得た。この改質ZWPは、球状の粒子であった。
(実施例5)
50gのZWP粒子試料1と、0.25g(0.5質量%)のステアリン酸亜鉛(融点:128℃~140℃)を前記気流式粉砕機で粉砕混合して粉体混合物とし、該混合物を200℃で30分加熱処理して、ZWP粒子の表面が脂肪酸誘導体で被覆された改質ZWPを得た。気流式粉砕機の条件は、実施例1と同様とした。この改質ZWPは、破砕状の粒子であった。
(比較例1及び2)
ZWP粒子試料1のみを比較例1とし、ZWP粒子試料2のみを比較例2とした。つまり、各比較例は、ZWP粒子のみを用いており、該粒子表面が脂肪酸及びその誘導体並びにシラン化合物で被覆されていないものである。
(比較例3)
50gのZWP粒子試料1と、0.25g(0.5質量%)のシランカップリング剤(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)とを用い、加熱処理を行わなかったほかは、実施例3と同様に改質ZWPを得た。本比較例は、脂肪酸又はその誘導体を用いておらず、ZWP粒子の表面をシラン化合物のみで被覆したものである。この改質ZWPは、破砕状の粒子であった。
<物性の評価>
(粉体の熱膨張係数の評価)
実施例及び比較例で得られた粒子について、昇温機能が付いたXRD装置(リガク社 Ultima IV)にて、昇温速度20℃/分で、25℃から目標温度を100℃として昇温させ、目標温度に到達してから10分後に、試料のa軸、b軸、c軸に対する格子定数を測定した。次いで、目標温度を200℃、300℃、及び400℃として順次昇温させ、上述した方法と同様に、それぞれの温度における試料のa軸、b軸、c軸に対する格子定数を測定した。得られた格子体積変化(直方体)を線換算して、熱膨張係数(ppm/℃)を求めた(J. Mat. Sci.,(2000)35、p.2451-2454参照)。その結果を表2に示す。
(溶出イオン量の評価)
実施例及び比較例で得られた粒子1gを純水70mLに添加して試験液とし、該試験液を85℃で1時間加熱処理した後、室温(25℃)まで冷却し、純水で試験液が100mLになるように調整した。この試験液を24時間静置後、該試験液をろ過により固液分離し、ろ液100mL当たりの総Zrイオン量、総Wイオン量及び総Pイオン量をICP発光分光装置で測定した。その結果を表2に示す。
Figure 0007239608000002
表2に示すように、各実施例の改質ZWPは、比較例の粒子と比較して、同じレベルの負の熱膨張係数を有しつつ、粒子からのイオン溶出が抑制されていることが判る。特に、加熱処理の温度が高い実施例2及び5や、シラン化合物で更に被覆した実施例3及び4は、粒子からのイオン溶出が顕著に抑制されていることも判る。
(実施例6ないし10)
実施例1ないし5で得られた改質ZWPを負熱膨張フィラーとして用い、高分子組成物を製造した。詳細には、5.8gの負熱膨張フィラーと、高分子化合物として4.2gのエポキシ樹脂(三菱化学 jER807、エポキシ当量160~175)とを、真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV-310)を用いて、回転速度2000rpmで混合して、30体積%のペーストを作製した。
次いで、前記ペーストに硬化剤(四国化成製 キュアゾール)を100μL加えて、前記真空ミキサーを用いて、回転速度1500rpmで混合して、150℃で1時間にわたり硬化させて、目的とする高分子組成物を得た。得られた高分子組成物の断面を走査型電子顕微鏡像で観察したところ、いずれの実施例も、負熱膨張フィラーである改質ZWPが高分子組成物中に均一に分散していることが確認できた。
(参考例1)
改質ZWPに代えて、3.3gの球状溶融シリカ(平均粒子径10μm、線膨張係数5×10-7/℃)を負熱膨張フィラーとして用いて、30体積%のペーストを作製したほかは、実施例6と同様の方法で、目的とする高分子組成物を得た。得られた高分子組成物の断面を走査型電子顕微鏡像で観察したところ、球状溶融シリカ粒子が高分子組成物中に均一に分散していることが確認できた。
<組成物の熱膨張係数の評価>
実施例及び参考例で得られた高分子組成物を5mm×5mm×10mmの直方体状に切り出し、測定サンプルとした。この測定サンプルを熱機械分析装置(TMA; NETZSCH社製、4000SE)を用いて、昇温速度1℃/分で30℃~120℃の線膨張係数を測定した。その結果を表3に示す。
Figure 0007239608000003
表3に示すように、本発明の改質ZWPを負熱膨張フィラーとして用いた各実施例の高分子組成物は、線膨張係数が低く、熱による変形が起こりにくい材料であることが判る。

Claims (6)

  1. リン酸タングステン酸ジルコニウム粒子の表面が、脂肪酸又はその誘導体で被覆されている、改質リン酸タングステン酸ジルコニウムであって、
    前記粒子のBET比表面積が0.1m /g~20m /gであり、
    前記粒子の平均粒子径が0.5μm~30μmであり、
    前記脂肪酸又はその誘導体の被覆量が、前記粒子に対して0.2質量%~5.0質量%であり、
    1gの該改質リン酸タングステン酸ジルコニウムを85℃の水70mLで1時間加熱処理し、次いで25℃に冷却して24時間静置したときの、該水中のジルコニウムイオン量が20μg以下であり、タングステンイオン量が400μg以下であり、且つリンイオン量が50μg以下である、改質リン酸タングステン酸ジルコニウム。
  2. 前記粒子は副成分元素を更に含有する、請求項に記載の改質リン酸タングステン酸ジルコニウム。
  3. 前記脂肪酸又はその誘導体が、炭素数7以上の脂肪酸又はその誘導体である、請求項1又は2に記載の改質リン酸タングステン酸ジルコニウム。
  4. シラン化合物で被覆されている、請求項1ないしの何れか1項に記載の改質リン酸タングステン酸ジルコニウム。
  5. 請求項1ないしの何れか一項に記載の改質リン酸タングステン酸ジルコニウムからなる負熱膨張フィラー。
  6. 請求項に記載の負熱膨張フィラーと、高分子化合物とを含有する高分子組成物。
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