JP7335515B2 - ボンド磁石用コンパウンドの製造方法 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 〔集会名〕 2020BM シンポジウムプログラム「最先端磁性材料および高性能・高効率モータ技術の開発動向」(Webex上でのオンライン開催) 〔主催者名〕 日本ボンド磁性材料協会(JABM) 〔開催日〕 令和2年12月4日
本発明は、ボンド磁石用コンパウンドの製造方法に関する。
特許文献1には、熱可塑性樹脂とSmFeN粒子を溶融混練後、圧縮成形してコンパウンドを作製し、射出成形するボンド磁石の製造方法が開示されている。
一方、特許文献2には、NdFeB磁性粉末とエポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤としてアミン系硬化剤を用いたボンド磁石が開示されている。
SmFeN系異方性磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されると保磁力が向上することが
知られている。例えば特許文献3においては、SmFeN系異方性磁性粉末を含む水を溶
媒としたスラリーに対して、pH調整されたオルトリン酸を含むリン酸処理液を添加する
ことによりSmFeN系異方性磁性粉末の表面にリン酸塩を被覆する方法が開示されてい
る。
特許文献4においては、粒径の大きいSmFeN系異方性磁性粉末を含む有機溶媒を溶媒
としたスラリーに対して、pH調整されたリン酸処理液を添加した後、SmFeN系異方
性磁性粉末を粉砕することによりSmFeN系異方性磁性粉末の粒度調整をするとともに
、表面にリン酸塩を被覆する方法が開示されている。
特許文献5においては、リン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末に対して酸化
処理をすることよりリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末の保磁力が高くな
ることが開示されている。
特開2017-43804号公報 特開2010-232468号公報 特開2020-056101号公報 特開2017-210662号公報 特開2014-160794号公報
本発明は、熱可塑性樹脂を含むボンド磁石用コンパウンドの流動性を改善し、磁性粉末の高充填化が可能となるボンド磁石用コンパウンドと、磁気特性が向上したボンド磁石を提供することを目的とする。
本発明の一態様にかかるボンド磁石用コンパウンドの製造方法は、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、前記ボンド磁石用添加剤、磁性粉末、および、熱可塑性樹脂を混練してボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程とを含み、前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む。
本発明の一態様にかかるボンド磁石用コンパウンドの製造方法は、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、前記ボンド磁石用添加剤と熱可塑性樹脂を混練し、ボンド磁石用樹脂組成物を得る工程と、前記ボンド磁石用樹脂組成物および磁性粉末を混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程とを含み、前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む。
本発明の一態様にかかるボンド磁石の製造方法は、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、前記ボンド磁石用添加剤、磁性粉末、および、熱可塑性樹脂を混練してボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と、得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程とを含み、前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む。
本発明の一態様にかかるボンド磁石の製造方法は、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、前記ボンド磁石用添加剤と熱可塑性樹脂を混練し、ボンド磁石用樹脂組成物を得る工程と、前記ボンド磁石用樹脂組成物および磁性粉末を混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と、得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程とを含み、前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む。
上記態様によれば、熱可塑性樹脂を含むボンド磁石用コンパウンドの流動性を改善でき、磁性粉末の高充填化が可能となって、磁気特性が向上したボンド磁石を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳述する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための一例であり、本発明を以下のものに限定するものではない。なお、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本実施形態の第1のボンド磁石用コンパウンドの製造方法は、
熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
前記ボンド磁石用添加剤、磁性粉末、および、熱可塑性樹脂を混練してボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程とを含み、前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含むことを特徴とする。
熱可塑性樹脂を含むボンド磁石を作製する際に、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を混練したものを射出成形すると、熱硬化性樹脂の反応性基(例えばエポキシ樹脂の場合はグリジシル基)と熱可塑性樹脂の反応性基(例えばナイロン12の場合はアミド基)が反応することにより、樹脂の流動性が低下し成形性が悪くなることがあった。本実施形態の熱硬化性樹脂と熱硬化性樹脂の当量に対する当量の比が2以上11以下である硬化剤との硬化物は、熱硬化性樹脂の反応性基が硬化剤の反応性基(例えばDDS(ジアミノジフェニルスルホン)の場合はアミノ基)により十分に失活しているため、熱可塑性樹脂の反応性基との反応が起こりにくく樹脂の流動性の低下を抑制できるので、熱可塑性樹脂を含むボンド磁石の添加剤として用いることができる。また、本実施形態の熱可塑性樹脂を含むボンド磁石用添加剤により作製したボンド磁石用コンパウンドを用いてボンド磁石を射出成形により作製する場合、射出圧を下げることができるので、得られたボンド磁石の磁気特性が向上する。
熱硬化性樹脂は、熱硬化するものであれば特に限定されず、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、アクリル樹脂、アリルカーボネート樹脂などが挙げられる。中でも機械特性と耐熱性の点で、エポキシ樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂は、室温において液状のもの若しくは溶媒に溶解して液状になる固体が好ましい。また、エポキシ樹脂の場合は、硬化剤との反応性の点から、剛直な骨格と立体障害の少ない結晶構造を有し、分子量が小さく、流動性が高いものを選択することが好ましく、たとえばビフェニル型、ビスフェノールA型、ナフタレン型、アントラセン型のものなどが挙げられる。エポキシ樹脂としては、たとえばjER-YX4000、jER-828、jER-YX8800 、jER-YL6121HA、jER-YL6677、(三菱ケミカル株式会社製)、EPICLON-HP-4032D、HP-7200L、HP-7200、HP-7200H、HP-7200HH、HP-7200HHH、 HP-4700、HP-4770、HP-5000、HP-6000、HP-4710(DIC株式会社製)、YDC-1312、YSLV-70XY、YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)などを用いることができる。
硬化剤は、選択した熱硬化性樹脂を熱硬化するものであれば特に限定されず、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、たとえばアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤、ポリメルカプタン樹脂系硬化剤、ポリスルフィド樹脂系硬化剤、有機酸ヒドラジド系硬化剤などが挙げられる。アミン系硬化剤としては、ジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
硬化剤は、熱可塑性樹脂としてナイロン樹脂を用い、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、芳香族骨格を有するジアミン系硬化剤を用いることが好ましい。芳香族骨格を有するジアミン系硬化剤は、芳香族骨格を有することにより反応性基であるアミノ基周辺に立体障害が少ない化学構造であるため、エポキシ樹脂の反応性基であるグリジシル基に対し反応性が良く、またアミノ基がナイロン樹脂の反応性基であるアミド基に対し親和性が高いことによりナイロン樹脂の流動性が改善すると考えられる。このような硬化剤としては、上述のジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンの他に、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、ビスアニリンP、ビスアニリンM、ベンゾグアナミン、3,3’-ジニトロベンジジン、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)、o-トリジン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,3-フェニレンジアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-スルホニルジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンが挙げられる。
硬化剤の配合量は、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比(熱硬化性樹脂の当量に対する硬化剤の当量の比)にて調整される。熱硬化性樹脂の反応性基数に対する硬化剤の反応性基数の比は2以上11以下であるが、2以上10以下が好ましく、2以上7以下がより好ましい。また、反応性基数の下限は、2.5を超えることが好ましく、3以上がより好ましい。該比が11を超えると、ボンド磁石の機械特性が低下し、2未満では、熱硬化性樹脂の反応性基に対する硬化剤の反応性基の比が小さいため、熱硬化性樹脂の反応性基が残留する。以降の工程にて熱可塑性樹脂と混練する場合に、熱可塑性樹脂の反応性基と残留した熱硬化性樹脂の反応性基が反応することにより、射出成形時に粘度上昇が起こりボンド磁石の成形性と得られた成形品の機械特性が、熱可塑性樹脂単独での成形性や機械特性よりも悪化する。ここで、熱硬化性樹脂種の当量とは1グラム当量の反応性基を含む樹脂のグラム数をいい、硬化剤種の当量とは、活性水素当量のことをいう。
硬化物は、前述の熱硬化性樹脂に硬化剤を配合し熱硬化することにより得ることができる。熱硬化する温度は、使用する熱硬化性樹脂の特性に合わせて設定できるが、硬化性の観点から60℃以上250℃以下が好ましく、180℃以上220℃以下がより好ましい。
硬化物は、必要に応じて粉砕することができる。硬化物を粉砕する方法は特に限定されず、サンプルミル、ボールミル、スタンプミル、乳鉢、ミキサー粉砕などを使用することができる。必要であれば、粉砕物を篩等で分級することもできる。粉砕物の平均粒径は、熱可塑性樹脂との相溶性の点より1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
ボンド磁石用添加剤は、熱硬化性樹脂および硬化剤とともに硬化促進剤を配合して硬化させることにより得ることもできる。硬化促進剤としては、たとえば、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7、1,5ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチル-4メチルイミダゾール、トリフェニルホスフィン、スルホニウム塩などが挙げられる。硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、一般的には熱硬化性樹脂と硬化剤の総量に対して、0.01質量%以上10質量%以下を添加する。
混練工程において、ボンド磁石用添加剤、磁性粉末、および、熱可塑性樹脂を溶融混練して、射出成形に使用するボンド磁石用コンパウンドを作製する。溶融混練機は特に限定されないが、単軸スクリュー混練機、二軸スクリュー混練機、ミキシングロール、ニーダ、バンバリーミキサ、噛み合わせ型二軸スクリュー押出機、非噛み合わせ二軸スクリュー押出機等を用いることができる。溶融混練温度は特に限定されず、使用する熱可塑性樹脂の特性に応じて設定できるが、180℃以上250℃以下が好ましい。
熱可塑性樹脂は、射出成形可能な樹脂であれば特に限定されないが、たとえばナイロン樹脂(ポリアミド);ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン;ポリエステル;ポリカーボネート(PC);ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリアセタール(POM);液晶ポリマー(LCP)などが挙げられる。ナイロン樹脂としては、6ナイロン、11ナイロン、12ナイロンのようなポリラクタム類、6,6ナイロン、6,10ナイロン、6,12ナイロンのようなジカルボン酸とジアミンとの縮合物、6ナイロン/6,6ナイロン、6ナイロン/6,10ナイロン、6ナイロン/12ナイロン、6ナイロン/6,12ナイロン、6ナイロン/6,10ナイロン/6,10ナイロン、6ナイロン/6,6ナイロン/6,12ナイロン、6ナイロン/ポリエーテルのような共重合ポリアミド類、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロンMXD6、芳香族ナイロン、非晶質ナイロン等が挙げられる。なかでも、吸水率の低さと成形性、機械特性との兼ね合いから、ナイロン樹脂が好ましく、特に12ナイロンが好ましい。
磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む。SmFeN系異方性磁性粉末としては、ThZn17型の結晶構造をもち、一般式がSmFe100-x-yで表される希土類金属サマリウムSmと鉄Feと窒素Nからなる窒化物が挙げられる。ここで、xは、8.1原子%以上10原子%以下、yは13.5原子%以上13.9原子%以下、残部が主としてFeとされることが好ましく、粒径分布は、減磁特性の角型性の点から、単分散であることが好ましい。SmFeN系異方性磁性粉末の表面へのリン酸塩の被覆形成方法は、後述する。
磁性粉末は、SmFeN系異方性磁性粉末に加えて、NdFeB系、SmCo系の希土類磁性粉末を含んでいてもよい。
なお、SmFeN系異方性磁性粉末については、特開平11-189811号公報に開示された方法により製造できる。NdFeB系磁性粉末については、国際公開2003/85147号公報に開示されたHDDR法により製造できる。SmCo系磁性粉末については、特開平08-260083号公報に開示された方法により製造できる。
磁性粉末は、必要に応じてリン酸処理を行っても良い。リン酸処理液を基本的には水中、またはイソプロパノールなどの有機溶媒中に溶解させ、必要に応じて硝酸イオン等の反応促進剤、Vイオン、Crイオン、Moイオン等の結晶微細化剤を添加したリン酸浴中に磁性粉末を投入し、希土類磁性粉末の表面にP-O結合を有する不動態膜を形成させる。 リン酸処理薬としては、例えば、オルトリン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム等のリン酸塩系、次亜リン酸系、次亜リン酸塩系、ピロリン酸系、ポリリン酸系等の無機リン酸、有機リン酸が挙げられる。
[シリカ処理工程]
磁性粉末は、必要に応じてシリカ処理を行ってもよい。磁性粉末にシリカ薄膜を形成することにより、耐酸化性を向上できる。シリカ薄膜は、例えば、アルキルシリケート、リン酸塩被覆磁性粉末、およびアルカリ溶液を混合することにより形成できる。
[シランカップリング処理工程]
シリカ処理後の磁性粉末を、さらにシランカップリング剤で処理してもよい。シリカ薄膜が形成された磁性粉末をシランカップリング処理することで、シリカ薄膜上にカップリング剤膜が形成され、磁性粉末の磁気特性が向上するとともに、樹脂との濡れ性、磁石の強度を改善することができる。シランカップリング剤は、樹脂の種類に合わせて選定すればよく特に限定されないが、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチレンジシラザン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、オレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ポリエトキシジメチルシロキサン、ポリエトキシメチルシロキサン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、1,3,5-N-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、t-ブチルカルバメートトリアルコキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。シランカップリング剤の添加量は、磁性粉末100重量部に対して、0.2質量%以上0.8質量%以下が好ましく、0.25質量%以上0.6質量%以下がより好ましい。0.2質量%未満ではシランカップリング剤の効果が小さく、0.8質量%を超えると、磁性粉末の凝集により、磁性粉末や磁石の磁気特性を低下させる傾向がある。
シリカ処理、或いはシランカップリング処理後のSmFeN系異方性磁性粉末は、常法により、ろ過、脱水、乾燥を行うことができる。
本実施形態の第1のボンド磁石用コンパウンドの製造方法において、ボンド磁石用コンパウンド中の磁性粉末の充填率は、75質量%以上96質量%以下が好ましく、90質量%以上95.5質量%以下がより好ましい。96質量%を超えると、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下し、75質量%未満では、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなる。
本実施形態の第1のボンド磁石用コンパウンド中のボンド磁石用添加剤の含有量は、0.1質量%以上4.2質量%以下が好ましく、0.3質量%以上3.5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上1.2質量%以下がさらに好ましい。ボンド磁石用添加剤の含有量が4.2質量%を超えると、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなり、0.1質量%未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下することがある。
本実施形態の第1のボンド磁石用コンパウンド中の熱可塑性樹脂の含有量は、2.5質量%以上25質量%以下が好ましく、3.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が25質量%を超えると、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなり、2.5質量%未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下する。
本実施形態の第1のボンド磁石用コンパウンドにおいて、磁性粉末100重量部に対するボンド磁石用添加剤の重量部は、0.1重量部以上5.6重量部以下が好ましく、0.31重量部以上4.67重量部以下がより好ましく、0.52重量部以上1.6重量部以下がさらに好ましい。ボンド磁石用添加剤が5.6重量部を超えると、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなり、0.1重量部未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下することがある。
本実施形態の第1のボンド磁石用コンパウンドにおいて、磁性粉末100重量部に対する熱可塑性樹脂の重量部は、2.6重量部以上33重量部以下が好ましく、3.6重量部以上14重量部以下がより好ましい。熱可塑性樹脂の重量部が33重量部を超えると、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなり、2.6重量部未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下する。
本実施形態の第2のボンド磁石用コンパウンドの製造方法は、
熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
前記ボンド磁石用添加剤と熱可塑性樹脂を混練し、ボンド磁石用樹脂組成物を得る工程と、
前記ボンド磁石用樹脂組成物および磁性粉末を混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と
を含み、
前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含むことを特徴とする。
ボンド磁石用添加剤を得る工程、該工程で使用する熱硬化性樹脂、硬化剤および磁性粉末は、前述した通りである。
ボンド磁石用樹脂組成物を得る混練工程、該工程で使用する熱可塑性樹脂は、前述した通りである。熱硬化樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤との硬化物と、熱可塑性樹脂とを、磁性粉末と混練する前に事前に溶融混練することによって溶融混練物を得る。得られた混練物において、熱可塑性樹脂と硬化物は事前に溶融混練した物であれば、完全相溶、部分相溶または非相溶であっても良いが、中でも完全相溶が好ましい。
硬化物と熱可塑性樹脂が充分に混練されることによって得られたボンド磁石用樹脂組成物では、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合、融点と結晶化温度が低くなる。その結果、ボンド磁石用コンパウンドの射出圧も低下して、得られたボンド磁石の配向率と磁気特性が向上し、保磁力も向上する。融点は、熱可塑性樹脂の融点よりも3.0℃以上低くなることが好ましく、4.5℃以上低くなることがより好ましい。また、結晶化温度は、熱可塑性樹脂の結晶化温度よりも2.0℃以上低くなることが好ましく、3.0℃以上低くなることがより好ましい。
熱可塑性樹脂としてポリアミド12を用いた場合、ボンド磁石用樹脂組成物の融点(ピークトップ)は160℃以上177℃以下が好ましく、170℃以上175℃以下がより好ましい。また、融解ピークのピークトップと終融点との差は5.0℃を超えることが好ましく、5.5℃を超えることがより好ましい。さらに、融解ピークの熱量は50mJ/mg以上が好ましく、55mJ/mg以上がより好ましい。
ボンド磁石用添加剤の配合量は、ボンド磁石用添加剤および熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物中、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上20質量%以下がより好ましい。50質量%を超えると、磁性粉末の充填率が低下し、5質量%未満では、溶融混練物の融点および結晶化温度の低下効果が小さく、ボンド磁石成形時の射出圧を十分に低下させることができなくなる。
ボンド磁石用コンパウンドを得る工程、該工程で使用する磁性粉末は、前述した通りである。
本実施形態の第2のボンド磁石用コンパウンドの製造方法において、ボンド磁石用コンパウンド中の磁性粉末の充填率は、75質量%以上96質量%以下が好ましく、90質量%以上95.5質量%以下がより好ましい。96質量%を超えると、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下し、75質量%未満では、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなる。
本実施形態の第2のボンド磁石用コンパウンド中のボンド磁石用樹脂組成物の含有量は、2.5質量%以上25質量%以下が好ましく、3.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。ボンド磁石用樹脂組成物の含有量が25質量%を超えると、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなり、2.5質量%未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下する。
本実施形態の第2のボンド磁石用コンパウンドにおいて、磁性粉末100重量部に対するボンド磁石用樹脂組成物の重量部は、2.6重量部以上33重量部以下が好ましく、3.6重量部以上14重量部以下がより好ましい。ボンド磁石用樹脂組成物の重量部が33重量部を超えると、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなり、2.6重量部未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下する。
本実施形態のボンド磁石用コンパウンドは、前述の製造方法により得られる。
本実施形態の第1のボンド磁石の製造方法は、
熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
前記ボンド磁石用添加剤、磁性粉末、および、熱可塑性樹脂を混練してボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と、
得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程と
を含み、前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含むことを特徴とする。
本実施形態の第2のボンド磁石の製造方法は、
熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
前記ボンド磁石用添加剤と熱可塑性樹脂を混練し、ボンド磁石用樹脂組成物を得る工程と、
前記ボンド磁石用樹脂組成物および磁性粉末を混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と、
得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程と
を含み、前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含むことを特徴とする。
これらの2つのボンド磁石の製造方法において、ボンド磁石用添加剤を得る工程、ボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程は前述した通りである。
射出成形工程では、ボンド磁石用コンパウンドを射出成形し、射出成形物を得る。射出成形機のシリンダー温度は、ボンド磁石用コンパウンドが溶融する温度範囲であれば良く、磁性粉末の熱による磁気劣化を抑制する点から260℃以下が好ましい。射出圧は溶融したコンパウンドが射出できる圧力であればよいが、例えば射出成形機のシリンダー温度を230℃とし直径10mm厚み7mmのキャビィティーに射出成形する場合、成形性の観点より250MPa未満で完充填できることが好ましい。
本実施形態の第1のボンド磁石は、たとえば前述の本実施形態の第1のボンド磁石の製造方法により得られ、ボンド磁石用添加剤、磁性粉末及び熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする。第1のボンド磁石は、ボンド磁石用添加剤を含む流動性の高いボンド磁石用コンパウンドを用いることにより、低い射出圧によって作製されるので、射出成形による磁性粉末の磁気劣化が抑制されており、ボンド磁石の磁気特性が改善する。
本実施形態の第1のボンド磁石において、ボンド磁石中の磁性粉末の充填率は、75質量%以上96質量%以下が好ましく、90質量%以上95.5質量%以下がより好ましい。96質量%を超えると、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下し、75質量%未満では、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなる。
本実施形態の第1のボンド磁石において、ボンド磁石中のボンド磁石用添加剤の含有量は、0.1質量%以上4.2質量%以下が好ましく、0.3質量%以上3.5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上1.2質量%以下がさらに好ましい。ボンド磁石用添加剤の含有量が4.2質量%を超えると、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなり、0.1質量%未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下することがある。
本実施形態の第1のボンド磁石において、ボンド磁石中の熱可塑性樹脂の含有量は、2.5質量%以上25質量%以下が好ましく、3.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が25質量%を超えると、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなり、2.5質量%未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下する。
本実施形態の第1のボンド磁石において、磁性粉末100重量部に対するボンド磁石用添加剤の重量部は、0.1重量部以上5.6重量部以下が好ましく、0.31重量部以上4.67重量部以下がより好ましく、0.52重量部以上1.6重量部以下がさらに好ましい。ボンド磁石用添加剤が5.6重量部を超えると、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなり、0.1重量部未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下することがある。
本実施形態の第1のボンド磁石において、磁性粉末100重量部に対する熱可塑性樹脂の重量部は、2.6重量部以上33重量部以下が好ましく、3.6重量部以上14重量部以下がより好ましい。熱可塑性樹脂の重量部が33重量部を超えると、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなり、2.6重量部未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下する。
本実施形態の第1のボンド磁石における配向率は特に限定されないが、98%以上が好ましく、99%以上がより好ましい。
本実施形態の第1のボンド磁石における残留磁束密度は、特に限定されないが、0.75T以上が好ましく、0.8T以上がより好ましい。本実施形態のボンド磁石用添加剤を使用することによって、高い残留磁束密度を達成することができる。
本実施形態の第1のボンド磁石における保磁力は特に限定されないが、1100kA/m以上が好ましく、1200kA/m以上がより好ましく、1450kA/m以上が特に好ましい。。本実施形態のボンド磁石用添加剤を使用することによって、高い保磁力を達成することができる。
本実施形態の第1のボンド磁石は、ボンド磁石用添加剤、磁性粉末及び熱可塑性樹脂を混練することにより作製されるため、ボンド磁石用添加剤と磁性粉末とがそれぞれ独立して存在することになる。
本実施形態の第2のボンド磁石は、たとえば前述の本実施形態の第2のボンド磁石の製造方法により得られ、ボンド磁石用樹脂組成物と、磁性粉末とを含むことを特徴とする。第2のボンド磁石は、ボンド磁石用樹脂組成物を含む流動性の高いボンド磁石用コンパウンドを用いることにより、低い射出圧によって作製されるので、射出成形による磁性粉末の磁気劣化が抑制されており、ボンド磁石の磁気特性が改善する。
本実施形態の第2のボンド磁石において、ボンド磁石中の磁性粉末の充填率は、75質量%以上96質量%以下が好ましく、90質量%以上95.5質量%以下がより好ましい。96質量%を超えると、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下し、75質量%未満では、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなる。
本実施形態の第2のボンド磁石において、ボンド磁石中のボンド磁石用樹脂組成物の含有量は、2.5質量%以上25質量%以下が好ましく、3.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。ボンド磁石用樹脂組成物の含有量が25質量%を超えると、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなり、2.5質量%未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下する。
本実施形態の第2のボンド磁石において、磁性粉末100重量部に対するボンド磁石用樹脂組成物の重量部は、2.6重量部以上33重量部以下が好ましく、3.6重量部以上14重量部以下がより好ましい。ボンド磁石用樹脂組成物の重量部が33重量部を超えると、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなり、2.6重量部未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下する。
本実施形態の第2のボンド磁石における配向率は特に限定されないが、98%以上が好ましく、99%以上がより好ましい。
本実施形態の第2のボンド磁石における残留磁束密度は、特に限定されないが、0.75T以上が好ましく、0.8T以上がより好ましい。熱硬化性樹脂と硬化剤との硬化物と、熱可塑性樹脂との溶融混練物を含有する本実施形態のボンド磁石用樹脂組成物を使用することによって、高い残留磁束密度を達成することができる。
本実施形態の第2のボンド磁石における保磁力は特に限定されないが、1150kA/m以上が好ましく、1200kA/m以上がより好ましく、1450kA/m以上が特に好ましい。熱硬化性樹脂と硬化剤との硬化物と、熱可塑性樹脂との溶融混練物を含有する本実施形態のボンド磁石用樹脂組成物を使用することによって、高い保磁力を達成することができる。
本実施形態の第2のボンド磁石は、ボンド磁石用樹脂組成物及び磁性粉末を混練することにより作製されるため、ボンド磁石用樹脂組成物と磁性粉末とがそれぞれ独立して存在することになる。
<SmFeN系異方性磁性粉末>
本実施形態の第1および第2のボンド磁石用コンパウンドの製造方法において、磁性粉末に含まれるSmFeN系異方性磁性粉末は、特に限定されないが、例えばSmとFeを含む溶液と沈殿剤を混合し、SmとFeとを含む沈殿物を得る工程(沈殿工程)、
前記沈殿物を焼成してSmとFeを含む酸化物を得る工程(酸化工程)、
前記酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理して部分酸化物を得る工程(前処理工程)、
前記部分酸化物を還元する工程(還元工程)、および
還元工程で得られた合金粒子を窒化処理する工程(窒化工程)
を含む方法によって製造されたものを好適に使用できる。
[沈殿工程]
沈殿工程では、強酸性の溶液にSm原料、Fe原料を溶解して、SmとFeを含む溶液を調製する。SmFe17を主相として得る場合、SmおよびFeのモル比(Sm:Fe)は1.5:17~3.0:17が好ましく、2.0:17~2.5:17がより好ましい。La、W、Co、Ti、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luなどの原料を前述した溶液に加えても良い。
Sm原料、Fe原料としては、強酸性の溶液に溶解できるものであれば限定されない。例えば、入手のしやすさの点で、Sm原料としては酸化サマリウムが、Fe原料としてはFeSOが挙げられる。SmとFeを含む溶液の濃度は、Sm原料とFe原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整することができる。酸性溶液としては溶解性の点で硫酸が挙げられる。
SmとFeを含む溶液と沈殿剤を反応させることにより、SmとFeを含む不溶性の沈殿物を得る。ここで、SmとFeを含む溶液は、沈殿剤との反応時にSmとFeを含む溶液となっていればよく、たとえばSmとFeを含む原料を別々の溶液として調製し、各々の溶液を滴下して沈殿剤と反応させても良い。別々の溶液として調製する場合においても各原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整する。沈殿剤としては、アルカリ性の溶液でSmとFeを含む溶液と反応して沈殿物が得られるものであれば限定されず、アンモニア水、苛性ソーダなどが挙げられ、苛性ソーダが好ましい。
沈殿反応は、沈殿物の粒子の性状を容易に調整できる点から、SmとFeを含む溶液と、沈殿剤とを、それぞれ水などの溶媒に滴下する方法が好ましい。SmとFeを含む溶液と沈殿剤との供給速度、反応温度、反応液濃度、反応時のpH等を適宜制御することにより、構成元素の分布が均質で、粒度分布のシャープな、粉末形状の整った沈殿物が得られる。このような沈殿物を使用することによって、最終製品である磁性粉末の磁気特性が向上する。反応温度は、0~50℃とすることができ、35~45℃であることが好ましい。反応液濃度は、金属イオンの総濃度として0.65mol/L~0.85mol/Lとすることが好ましく、0.7mol/L~0.84mol/Lとすることがより好ましい。反応pHは、5~9とすることが好ましく、6.5~8とすることがより好ましい。
沈殿工程で得られた異方性磁性粉末粒子により、最終的に得られる磁性粉末の粉末粒径、粉末形状、粒度分布がおよそ決定される。得られた粒子の粒径をレーザー回折式湿式粒度分布計により測定した場合、全粉末が、0.05~20μm、好ましくは0.1~10μmの範囲にほぼ入るような大きさと分布であることが好ましい。また、異方性磁性粉末粒子の平均粒径は、粒度分布における小粒径側からの体積累積50%に相当する粒径として測定され、0.1~10μmの範囲内にあることが好ましい。
沈殿物を分離した後は、続く酸化工程の熱処理において残存する溶媒に沈殿物が再溶解して、溶媒が蒸発する際に沈殿物が凝集したり、粒度分布、粉末粒径等が変化したりすることを抑制するために、分離物を脱溶媒しておくことが好ましい。脱溶媒する方法として具体的には、例えば溶媒として水を使用する場合、70~200℃のオーブン中で5~12時間乾燥する方法が挙げられる。
沈殿工程の後に、得られる沈殿物を分離洗浄する工程を含んでもよい。洗浄する工程は上澄み溶液の導電率が5mS/m以下となるまで適宜行う。沈殿物を分離する工程としては、例えば、得られた沈殿物に溶媒(好ましくは水)を加えて混合した後、濾過法、デカンテーション法等を用いることができる。
[酸化工程]
酸化工程とは、沈殿工程で形成された沈殿物を焼成することにより、SmとFeとを含む酸化物を得る工程である。例えば、熱処理により沈殿物を酸化物に変換することができる。沈殿物を熱処理する場合、酸素の存在下で行われる必要があり、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。また、酸素存在下で行われる必要があるため、沈殿物中の非金属部分に酸素原子を含むことが好ましい。
酸化工程における熱処理温度(以下、酸化温度)は特に限定されないが、700~1300℃が好ましく、900~1200℃がより好ましい。700℃未満では酸化が不十分となり、1300℃を超えると、目的とする磁性粉末の形状、平均粒径および粒度分布が得られない傾向にある。熱処理時間も特に限定されないが、1~3時間が好ましい。
得られる酸化物は、酸化物粒子内においてSm、Feの微視的な混合が充分になされ、沈殿物の形状、粒度分布等が反映された酸化物粒子である。
[前処理工程]
前処理工程とは、SmとFeを含む酸化物を、還元性ガス雰囲気下で熱処理することにより、酸化物の一部が還元された部分酸化物を得る工程である。
ここで、部分酸化物とは、酸化物の一部が還元された酸化物をいう。酸化物の酸素濃度は特に限定されないが、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。10質量%を超えると、還元工程においてCaとの還元発熱が大きくなり、焼成温度が高くなることで異常な粒子成長をした粒子ができてしまう傾向がある。ここで、部分酸化物の酸素濃度は、非分散赤外吸収法(ND-IR)により測定することができる。
還元性ガスは水素(H)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)等の炭化水素ガスなどから適宜選択されるが、コストの点で水素ガスが好ましく、ガスの流量は、酸化物が飛散しない範囲で適宜調整される。前処理工程における熱処理温度(以下、前処理温度)は、300℃以上950℃以下の範囲とし、好ましくは400℃以上、より好ましくは750℃以上であり、好ましくは900℃未満である。前処理温度が300℃以上であるとSmとFeを含む酸化物の還元が効率的に進行する。また950℃以下であると酸化物粒子が粒子成長、偏析することが抑制され、所望の粒径を維持することができる。また、還元性ガスとして水素を用いる場合、使用する酸化物層の厚みを20mm以下に調整し、更に反応炉内の露点を-10℃以下に調整することが好ましい。
[還元工程]
還元工程とは、前記部分酸化物を、還元剤の存在下、920℃以上1200℃以下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程であり、例えば部分酸化物をカルシウム融体またはカルシウムの蒸気と接触することで還元が行われる。熱処理温度は、磁気特性の点より950℃以上1150℃以下が好ましく、980℃以上1100℃以下がより好ましい。熱処理時間は、還元反応をより均一に行う観点から、120分未満が好ましく、90分未満がより好ましく、熱処理時間の下限は10分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。
金属カルシウムは、粒状又は粉末状の形で使用されるが、その粒子径は10mm以下が好ましい。これにより還元反応時における凝集をより効果的に抑制することができる。また、金属カルシウムは、反応当量(Sm酸化物を還元するのに必要な化学量論量であり、Feが酸化物の形である場合には、これを還元するに必要な分を含む)の1.1~3.0倍量の割合で添加することができ、1.5~2.0倍量が好ましい。
還元工程では、還元剤である金属カルシウムとともに、必要に応じて崩壊促進剤を使用することができる。この崩壊促進剤は、後述する水洗工程に際して、生成物の崩壊、粒状化を促進させるために適宜使用されるものであり、例えば、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、酸化カルシウム等のアルカリ土類酸化物などが挙げられる。これらの崩壊促進剤は、Sm源として使用されるSm酸化物当り1~30質量%、好ましくは5~28質量%の割合で使用される。
[窒化工程]
窒化工程とは、還元工程で得られた合金粒子を窒化処理することにより、異方性の磁性粒子を得る工程である。前述の沈殿工程で得られる粒子状の沈殿物を用いていることから、還元工程にて多孔質塊状の合金粒子が得られる。これにより、粉砕処理を行うことなく直ちに窒素雰囲気中で熱処理して窒化することができるため、窒化を均一に行うことができる。
合金粒子の窒化処理における熱処理温度(以下、窒化温度)は、好ましくは300~600℃、特に好ましくは400~550℃の温度とし、この温度範囲で雰囲気を窒素雰囲気に置換することにより行われる。熱処理時間は、合金粒子の窒化が充分に均一に行われる程度に設定されればよい。
窒化工程後に得られる生成物には、磁性粒子に加えて、副生するCaO、未反応の金属カルシウム等が含まれ、これらが複合した焼結塊状態となっている場合がある。そこで、その場合は、この生成物を冷却水中に投入して、CaO及び金属カルシウムを水酸化カルシウム(Ca(OH))懸濁物として磁性粒子から分離することができる。さらに残留する水酸化カルシウムは、磁性粒子を酢酸等で洗浄して充分に除去してもよい。
前述の製造方法により得られるSmFeN系異方性磁性粉末は、ThZn17型の結晶構造をもち、一般式がSmFe100-x-yで表される希土類金属サマリウムSmと鉄Feと窒素Nからなる窒化物である。ここで、xは、8.1原子%以上10原子%以下、yは13.5原子%以上13.9原子%以下、残部が主としてFeとされることが好ましい。
SmFeN系異方性磁性粉末の平均粒径は、2μm以上5μm以下が好ましく、2.5μm以上4.8μm以下がより好ましい。2μm未満では、ボンド磁石中の磁性粉末の充填量が小さくなるため磁化が低下し、5μmを超えると、ボンド磁石の保磁力が低下する傾向がある。ここで、平均粒径は、レーザー回折式粒径分布測定装置を用いて乾式条件で測定した粒径である。
SmFeN系異方性磁性粉末の粒径D10は、1μm以上3μm以下が好ましく、1.5μm以上2.5μm以下がより好ましい。1μm未満では、ボンド磁石中の磁性粉末の充填量が小さくなるため磁化が低下し、一方で3μmを超えると、ボンド磁石の保磁力が低下する傾向がある。ここで、D10とは、SmFeN系異方性磁性粉末の体積基準による粒度分布の積算値が10%に相当する粒径である。
SmFeN系異方性磁性粉末の粒径D50は、2.5μm以上5μm以下が好ましく、2.7μm以上4.8μm以下がより好ましい。2.5μm未満では、ボンド磁石中の磁性粉末の充填量が小さくなるため磁化が低下し、5μmを超えると、ボンド磁石の保磁力が低下する傾向がある。ここで、D50とは、SmFeN系異方性磁性粉末の体積基準による粒度分布の積算値が50%に相当する粒径である。
SmFeN系異方性磁性粉末の粒径D90は、3μm以上7μm以下が好ましく、4μm以上6μm以下がより好ましい。3μm未満では、ボンド磁石中の磁性粉末の充填量が小さくなるため磁化が低下し、7μmを超えると、ボンド磁石の保磁力が低下する傾向がある。ここで、D90とは、SmFeN系異方性磁性粉末の体積基準による粒度分布の積算値が90%に相当する粒径である。
SmFeN系異方性磁性粉末の下記で定義されるスパン:
スパン=(D90-D10)/D50
は、保磁力の点から2以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。
SmFeN系異方性磁性粉末の円形度は特に限定されないが、0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。0.5未満では、流動性が悪くなることで、成形時に粒子間で応力がかかるため磁気特性が低下する。ここで、円形度の測定には、3000倍で撮影したSEM画像を画像処理で二値化し、粒子1個に対して、円形度を求める。本発明で規定する円形度とは、1000個~10000個程度の粒子を計測して求めた円形度の平均値を意味する。一般的に粒径が小さい粒子が多くなるほど円形度は高くなるため、1μm以上の粒子について円形度の測定を行う。円形度の測定においては定義式:円形度=(4πS/L2)を用いる。但し、Sは、粒子の二次元投影面積、Lは二次元投影周囲長である。
<リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末の製造方法>
本実施形態の磁性粉末は表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む。表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末は、SmFeN系異方性磁性粉末を含むスラリーに対して、pH調整されたリン酸処理液を添加することによって作製できる。
[リン酸処理工程]
リン酸処理工程では、SmFeN系異方性磁性粉末、溶媒、およびリン酸化合物を混合して表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を得る。リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末は、SmFeN系異方性磁性粉末に含まれる金属成分(例えば鉄やサマリウム)とリン酸化合物に含まれるリン酸成分とが反応することによりリン酸塩(例えばリン酸鉄、リン酸サマリウム)がSmFeN系異方性磁性粉末の表面において析出することによって形成される。中でも溶媒を水とすることによって、溶媒を有機溶媒とする場合と比べて、粒径が小さいリン酸塩が析出するので、被覆部が緻密なリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末が得られ、保磁力(iHc)が向上すると考えられる。以下溶媒を水とした場合について説明する。
リン酸処理工程では、SmFeN系異方性磁性粉末、水、およびリン酸化合物を含むスラリーを作製する。スラリーの作製方法は特に限定されないが、例えば、水を溶媒としてSmFeN系異方性磁性粉末とリン酸化合物を含むリン酸水溶液とを混合することによって得られる。スラリー中のSmFeN系異方性磁性粉末の含有量は、例えば1質量%以上50質量%以下であり、生産性の点から5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。スラリー中のリン酸成分(PO)の含有量は、PO換算量で、例えば0.01質量%以上10質量%以下であり、金属成分とリン酸成分との反応性や生産性の点から0.05質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
リン酸水溶液はリン酸化合物と水を混合することによって得られる。リン酸化合物としては、例えば、オルトリン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素アンモニウム、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムなどのリン酸塩系、次亜リン酸系、次亜リン酸塩系、ピロリン酸系、ポリリン酸系などの無機リン酸等、有機リン酸が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、被覆部の耐水性、耐食性や磁性粉末の磁気特性を向上する目的で、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、バナジン酸塩、クロム酸塩などのオキソ酸塩等、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウムなどの酸化剤等、EDTAなどのキレート剤等を添加剤として用いることができる。
リン酸水溶液におけるリン酸の濃度(PO換算量)は、例えば5質量%以上50質量%以下であり、リン酸化合物の溶解度、保存安定性や化成処理のし易さの点から10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。リン酸水溶液のpHは、例えば1以上4.5以下であり、リン酸塩の析出速度を制御しやすい点から1.5以上4以下であることが好ましい。pHは希塩酸、希硫酸などにより調整できる。
リン酸処理工程においては、無機酸を添加してスラリーのpHを1以上4.5以下に調整することが好ましい。pHを1以上4.5以下に調整した場合には、調整しない場合と比べて、リン酸塩の析出量を多くすることができ、被覆部の厚みが厚いリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末が得られるので、保磁力(iHc)が向上すると考えられる。調整するpH範囲はpH1以上4.5以下が好ましく、pH1.6以上3.9以下がより好ましく、pH2以上3以下がさらに好ましい。添加する無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、ほう酸、フッ化水素酸が挙げられる。リン酸処理工程中は、上記pHの範囲となるように、無機酸を随時添加する。廃液処理の観点から無機酸を使用するが、目的に応じて有機酸を併用することができる。有機酸としては酢酸、蟻酸、酒石酸等が挙げられる。
リン酸処理工程において、無機酸を添加してスラリーのpHを1以上4.5以下に調整した場合には、調整は10分間以上行うことが好ましく、被覆部の厚さが薄い部分を減らす観点から30分間以上行うことがより好ましい。pH維持の初期はpHの上昇が早いためにpH制御用の無機酸の投入間隔が短いが、被覆が進むとともに次第にpH変動が緩やかになり、無機酸の投入間隔が長くなることから反応終点が判断できる。
[リン酸処理後の酸化工程]
リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末は、必要に応じて酸化処理を行ってもよい。リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末を酸化処理することにより、リン酸塩により被覆されている母材のSmFeN系異方性磁性粉末の表面が酸化されて酸化鉄層が形成され、リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末の耐酸化性が向上する。また、酸化することにより、ボンド磁石作製時にリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末が高温に曝された際に、SmFeN粒子表面での好ましくない酸化還元反応、分解反応や変質が生じることを抑制することができ、結果として磁気特性、特に固有保磁力(iHc)の高い磁石を得ることができる。
酸化処理は、リン酸処理後のSmFeN系異方性磁性粉末を、酸素含有雰囲気下で熱処理することにより行う。反応雰囲気は窒素、アルゴンなどの不活性ガス中に酸素を含むことが好ましい。酸素濃度は3%以上21%以下が好ましく、3.5%以上10%以下がより好ましい。酸化反応中は磁性粉末1kgに対して2L/分以上10L/分以下の流速でガスを交換することが好ましい。
酸化処理時の温度は150℃以上250℃以下が好ましく、170℃以上230℃以下がより好ましい。150℃未満では酸化鉄層の生成が不十分であり、耐酸化性が小さくなる傾向がある。250℃を超えると酸化鉄層が過剰に形成し、保磁力が低下する傾向がある。反応時間は3時間以上10時間以下が好ましい。
リン酸処理後のSmFeN系異方性磁性粉末は、必要に応じて上述のシリカ処理やシランカップリング処理を行ってもよい。
リン酸処理工程後、酸化工程後、シリカ処理、或いはシランカップリング処理後のSmFeN系異方性磁性粉末は、常法により、ろ過、脱水、乾燥を行うことができる。
<リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末>
リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末におけるリン酸塩含有量の下限が0.1質量%以上であればよく、0.55質量%以上であることが好ましく、0.75質量%以上であることが特に好ましく、リン酸塩含有量の上限は4.5質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。リン酸塩含有量が0.1質量%未満の場合、リン酸塩による被覆の効果が小さくなる傾向があり、4.5質量%を超えると、リン酸塩被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末同士が凝集して保磁力が低下する傾向がある。なお、磁性粉末のリン酸塩含有量は、ICP発光分光分析法(ICP-AES)を用いて測定されるPO分子換算量で表す。
リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末は、DSCにおける発熱開始温度が、90℃以上であればよく、120℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。DSCにおける発熱開始温度はリン酸塩被覆の緻密さ、厚み、および耐酸化性等の総合的な評価であり、90℃以上であるときに高い保磁力が得られる。なお、DSCにおける発熱開始温度は、例えば、リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末を20mg計量し、高温型示差走査熱分析装置(DSC6300、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、エアー雰囲気(200mL/min)、室温から400℃(昇温速度:20℃/min)、リファレンス:アルミナ(20mg)の測定条件でDSC分析を行うことにより測定できる。発熱開始温度が高いことは、酸化による発熱が起こりにくいことから、リン酸被覆がより緻密に形成されていることを意味する。
リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末は、XRD回折パターンにおいて、αFeの(110)面の回折ピーク強度(I)とSmFeN系異方性磁性粉末の(300)面のピーク強度(II)との比(I)/(II)が3×10-2以下であることが好ましく、2.5×10-2以下であることがより好ましく、1.0×10-2以下であることが特に好ましい。αFeの(110)面の回折ピーク強度(I)は、不純物であるαFeの存在量を表しており、前述した比(I)/(II)が2.5×10-2以下であるときに、高い保磁力が得られる。なお、XRD回折パターンにおける回折ピーク強度は、例えばリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末を粉末X線結晶回折装置(リガク製、X線波長:CuKa1)にてXRDパターンを測定し、α-Feの(110)面の回折ピーク強度をSmFe17の(300)面のピーク強度で除した値をα-Feピークハイト比として求めることができる。α-Feピークハイト比が低いことは不純物であるα-Feの含有量が低いことを意味する。
リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末は、炭素含有量が1000ppm以下であることが好ましく、800ppm以下であることがより好ましい。炭素含有量は、リン酸塩中の有機不純物量を示しており、炭素含有量が1000ppmを超えるとボンド磁石を作製する過程において、リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末が高温にさらされることで有機不純物が分解し被覆部に欠陥が生じるため、保磁力が低下する傾向がある。ここで、炭素含有量は、TOC法によって測定することができる。
リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末の、リン酸塩被覆部の厚みは特に限定されないが、リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末の保磁力の点から10nm以上200nm以下が好ましい。なお、リン酸塩被覆部の厚みは、リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末の断面において、EDXによるライン分析によって組成分析を行うことにより測定できる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
実施例および比較例では、下記の材料を使用した。
エポキシ樹脂:ビフェニルタイプ(エポキシ当量186g/eq)
硬化剤:DDS(ジアミノジフェニルスルホン)(活性水素当量62.0g/eq)
硬化促進剤:TPP(トリフェニルホスフィン)
熱可塑性樹脂:ポリアミド12(ダイセル・エボニック社製ZZ3000P)
製造例1
(SmFeN系異方性磁性粉末の作製)
純水2.0kgにFeSO・7HO 5.0kgを混合溶解した。さらにSm 0.49kgと70%硫酸0.74kgとを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFe硫酸溶液とした。
[沈殿工程]
温度が40℃に保たれた純水20kg中に、調製したSmFe硫酸溶液全量を反応開始から70分間で攪拌しながら滴下し、同時に15%アンモニア液を滴下させ、pHを7~8に調整した。これにより、SmFe水酸化物を含むスラリーを得た。得られたスラリーをデカンテーションにより純水で洗浄した後、水酸化物を固液分離した。分離した水酸化物を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。
[酸化工程]
沈殿工程で得られた水酸化物を大気中1000℃で1時間、焼成処理した。冷却後、原料粉末として赤色のSmFe酸化物を得た。
[前処理工程]
SmFe酸化物100gを、嵩厚10mmとなるように鋼製容器に入れた。容器を炉内に入れ、100Paまで減圧した後、水素ガスを導入しながら、前処理温度の850℃まで昇温し、そのまま15時間保持した。非分散赤外吸収法(ND-IR)(株式会社堀場製作所製EMGA-820)により酸素濃度を測定したところ、5質量%であった。これにより、Smと結合している酸素は還元されず、Feと結合している酸素のうち、95%が還元される黒色の部分酸化物を得たことがわかった。
[還元工程]
前処理工程で得られた部分酸化物60gと平均粒径約6mmの金属カルシウム19.2gとを混合して炉内に入れた。炉内を真空排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入した。1045℃まで上昇させて、45分間保持することにより、Fe-Sm合金粒子を得た。
[窒化工程]
引き続き、炉内温度を100℃まで冷却した後、真空排気を行い、窒素ガスを導入しながら、温度を450℃まで上昇させて、そのまま23時間保持して、磁性粒子を含む塊状生成物を得た。
[水洗工程]
窒化工程で得られた塊状の生成物を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを10回繰り返した。次いで99.9%酢酸2.5gを投入して15分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返し行い、続いて脱水と乾燥後、機械的解砕処理を行うことでSmFeN系異方性磁性粉末(平均粒径3μm)を得た。
製造例2
[リン酸処理工程1]
リン酸処理液として、85%オルトリン酸:リン酸二水素ナトリウム:モリブデン酸ナトリウム2水和物=1:6:1の重量比で混合し、純水と希塩酸でpHを2.5、PO濃度を20質量%に調整したものを準備した。製造例1で得られたSmFeN系異方性磁性粉末1000gを塩化水素:70gの希塩酸中で1分間攪拌して表面酸化膜や汚れ成分を除去した後、上澄み液の導電率が100μS/cm以下になるまで排水と注水を繰り返し、SmFeN系異方性磁性粉末を10質量%含むスラリーを得た。得られたスラリーを撹拌しながら、準備したリン酸処理液100gを処理槽中に全量投入した。リン酸処理反応スラリーのpHは5分かけて2.5から6に上昇した。15分攪拌した後に吸引濾過、脱水し、真空乾燥することでリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
[シリカ処理工程]
リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末、エチルシリケート40、および12.5重量%のアンモニア水を、それぞれ97.8:1.8:0.4の重量比で、ミキサーで混合した。混合物を真空中200℃で加熱して、粒子表面にシリカ薄膜が形成されたSmFeN系異方性磁性粉末を得た。
[シランカップリング処理工程]
シリカ薄膜が形成されたSmFeN系異方性磁性粉末と、12.5重量%のアンモニア水
をミキサー内で混合した後、50重量%の3-アミノプロピルトリエトキシシランのエタ
ノール溶液をミキサーにて混合した。シリカ薄膜が形成されたSmFeN系異方性磁性粉
末と12.5重量%のアンモニア水と50重量%の3-アミノプロピルトリエトキシシラ
ンのエタノール溶液の重量比は、それぞれ99:0.2:0.8であった。その混合物を
100℃の窒素雰囲気下で10時間乾燥し、シランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末を得た。
製造例3
[リン酸処理工程2]
リン酸処理液として、85%オルトリン酸:リン酸二水素ナトリウム:モリブデン酸ナトリウム2水和物=1:6:1の重量比で混合し、純水と希塩酸でpHを2、PO濃度を20質量%に調整したものを準備した。製造例1で得られたSmFeN系異方性磁性粉末1000gを塩化水素:70gの希塩酸中で1分間攪拌して表面酸化膜や汚れ成分を除去した後、上澄み液の導電率が100μS/cm以下になるまで排水と注水を繰り返し、SmFeN系異方性磁性粉末を10質量%含むスラリーを得た。得られたスラリーを撹拌しながら、準備したリン酸処理液100gを処理槽中に全量投入した後、6重量%の塩酸を随時投入することでリン酸処理反応スラリーのpHを2.5±0.1の範囲にて制御し30分間維持した。続いて吸引濾過、脱水し、真空乾燥することでリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
[リン酸処理後の酸化工程]
得られたリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末1000gを窒素とエアーの混合ガス(酸素濃度4%、5L/min)雰囲気下で室温から徐々に昇温し、最高温度170℃で8時間の熱処理を実施し、酸化処理されたSmFeN系異方性磁性粉末を得た。
[シリカ処理工程]
酸化処理されたSmFeN系異方性磁性粉末、エチルシリケート40、および12.5重量%のアンモニア水を、それぞれ97.8:1.8:0.4の重量比で、ミキサーで混合した。混合物を真空中200℃で加熱して、粒子表面にシリカ薄膜が形成されたSmFeN系異方性磁性粉末を得た。
[シランカップリング処理工程]
シリカ薄膜が形成されたSmFeN系異方性磁性粉末と、12.5重量%のアンモニア水
をミキサー内で混合した後、50重量%3-アミノプロピルトリエトキシシランのエタノ
ール溶液をミキサーにて混合した。シリカ薄膜が形成されたSmFeN系異方性磁性粉末
と12.5重量%のアンモニア水と50重量%の3-アミノプロピルトリエトキシシラン
のエタノール溶液の重量比は、それぞれ99:0.2:0.8であった。その混合物を1
00℃の窒素雰囲気下で10時間乾燥し、シランカップリング処理されたSmFeN系異
方性磁性粉末を得た。
製造例4
(ボンド磁石用添加剤の作製)
アセトン100重量部に対して、エポキシ樹脂12重量部、硬化剤8.8重量部、硬化促進剤0.4重量部を溶解し混合した。アセトンを揮発させた後、棚段乾燥機にて窒素雰囲気下200℃で6時間硬化処理した。得られた硬化物をミキサーにより粉砕し、目開き500μmの篩にて分級し、ボンド磁石用添加剤を作製した。
製造例5
(ボンド磁石用樹脂組成物の作製)
ポリアミド12が100重量部に対して、17.4重量部の製造例4で得られたボンド磁石用添加剤を二軸混練機にて210℃環境下で溶融混練し、ボンド磁石用樹脂組成物を得た。
実施例1
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例2で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、1.27重量部の製造例4で作製したボンド磁石用添加剤、および、7.19重量部のポリアミド12を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
(ボンド磁石の作製)
得られたボンド磁石用コンパウンドを、シリンダー温度230℃、金型温度90℃、射出
圧186MPaにて射出成形し、直径10mm厚み7mmのボンド磁石を得た。
実施例2
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例2で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、8.46重量部の製造例5で作製したボンド磁石用樹脂組成物を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
(ボンド磁石の作製)
得られたボンド磁石用コンパウンドを用いて実施例1と同様にしてボンド磁石を得た。なお、射出成形時の射出圧は144MPaであった。
実施例3
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例2で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、7.89重量部の製造例5で作製したボンド磁石用樹脂組成物を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
(ボンド磁石の作製)
得られたボンド磁石用コンパウンドを用いて実施例1と同様にしてボンド磁石を得た。なお、射出成形時の射出圧は241MPaであった。
実施例4
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例3で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、8.46重量部の製造例5で作製したボンド磁石用樹脂組成物を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
(ボンド磁石の作製)
得られたボンド磁石用コンパウンドを用いて実施例1と同様にしてボンド磁石を得た。なお、射出成形時の射出圧は115MPaであった。
実施例5
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例3で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、7.89重量部の製造例5で作製したボンド磁石用樹脂組成物を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
(ボンド磁石の作製)
得られたボンド磁石用コンパウンドを用いて実施例1と同様にしてボンド磁石を得た。なお、射出成形時の射出圧は230MPaであった。
比較例1
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例2で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、8.27重量部のポリアミド12を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
(ボンド磁石の作製)
得られたボンド磁石用コンパウンドを用いて実施例1と同様にしてボンド磁石を得た。なお、射出成形時の射出圧は235MPaであった。
比較例2
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例2で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、7.7重量部のポリアミド12を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
(ボンド磁石の作製)
得られたボンド磁石用コンパウンドを用いて実施例1と同様に行ったところ、射出金型内に完充填できず、成形品を得ることができなかった。
実施例および比較例で得られたボンド磁石の残留磁束密度Brと保磁力iHcおよび配向率を以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
(磁粉の残留磁束密度(Br)、保磁力(iHc))
<残留磁束密度、保磁力および配向率>
製造例2および製造例3で得られたシランカップリング処理されたSmFeN系磁性粉末を、パラフィンワックスと共に試料容器に詰め、ドライヤーにてパラフィンワックスを溶融した後、2Tの配向磁場にてその磁化容易磁区を揃えた。この磁場配向した試料を6Tの着磁磁場でパルス着磁し、最大磁場2TのVSM(振動試料型磁力計 理研電子製;型式:BHV-55)を用いて磁気特性(残留磁化σr、固有保磁力iHc)を測定した。結果を表1に示す。なお、残留磁化σr(単位:emu/g)に計算式(Br=4×π×ρ×σr、ρ:密度=7.66g/cm)を用いて残留磁束密度Br(単位:T)を算出した。
(PO付着量)
製造例2および製造例3で得られたリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末中のP濃度を、ICP発光分光分析法(ICP-AES)を用いて測定し、PO分子量に換算してPO付着量を求めた。結果を表1に示す。
(ボンド磁石の残留磁束密度(Br)、保磁力(iHc))
実施例および比較例で作製したボンド磁石について、BHトレーサーを用いて残留磁束密度Br(T)と保磁力iHc(kA/m)を測定した。配向率は、以下の式:
配向率(%)=Br(T)/(SmFeN系磁性粉末の体積充填率(vol%)÷100×シランカップリングSmFeN系磁性粉末の残留磁束密度(T))×100
により算出した。
Figure 0007335515000001
表1より、実施例では、磁性粉末の体積充填率が同じ各比較例と比較した場合に、射出圧が低くなっており、ボンド磁石用コンパウンドの流動性が改善することを確認できた。また、ボンド磁石用コンパウンドの流動性が改善した結果、ボンド磁石中の保磁力が高くなることを確認できた。
ポリアミド12、ポリアミド12と製造例2で作製したボンド磁石用添加剤を下記表2の割合で混合した粉末混合物、製造例3で作製したボンド磁石用樹脂組成物のDSC測定を行った。DSC測定は、示差走査熱量計を用い、10℃/分で210℃まで昇温後、5℃/分で30℃まで降温することで測定した。融解ピークと結晶化ピークの値等を表2に示す。
Figure 0007335515000002
事前に硬化物とポリアミド12を溶融混練したボンド磁石用樹脂組成物では、ポリアミド12単独と比べて融点が約5℃、結晶化温度は約3℃低下した。融点と結晶化温度の低下により、射出成形時の金型内での樹脂の冷却固化が遅くなり、ボンド磁石用コンパウンドの流動性を改善するものと推定される。
本発明のボンド磁石用コンパウンドの製造方法によれば、流動性が大きく改善されたボンド磁石用コンパウンドを得ることができ、得られたボンド磁石の保磁力も改善することができる。得られたボンド磁石は、複合材料及びボンド磁石として、モーター等の用途に好適に適用することができる。

Claims (8)

  1. 熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
    前記ボンド磁石用添加剤、磁性粉末、および、熱可塑性樹脂を混練してボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と
    を含み、
    前記磁性粉末は、SmFeN系異方性磁性粉末、水、およびリン酸化合物を含むスラリーに無機酸を随時添加して、スラリーのpHを1以上4.5以下に調整しながら表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む、
    ボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
  2. 熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
    前記ボンド磁石用添加剤と熱可塑性樹脂を混練し、ボンド磁石用樹脂組成物を得る工程と、
    前記ボンド磁石用樹脂組成物および磁性粉末を混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と
    を含み、
    前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む、
    ボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂がナイロン樹脂である請求項1又は2に記載のボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
  4. 前記磁性粉末は、粒径分布が単分散のものである請求項1~3のいずれか1項に記載のボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法により得られたボンド磁石用コンパウンド。
  6. 熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
    前記ボンド磁石用添加剤、磁性粉末、および、熱可塑性樹脂を混練してボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と、
    得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程と
    を含み、
    前記磁性粉末は、SmFeN系異方性磁性粉末、水、およびリン酸化合物を含むスラリーに無機酸を随時添加して、スラリーのpHを1以上4.5以下に調整しながら表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む、
    ボンド磁石の製造方法。
  7. 熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
    前記ボンド磁石用添加剤と熱可塑性樹脂を混練し、ボンド磁石用樹脂組成物を得る工程と、
    前記ボンド磁石用樹脂組成物および磁性粉末を混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と、
    得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程と
    を含み、
    前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む、
    ボンド磁石の製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載の製造方法により得られたボンド磁石。
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