JP7335515B2 - ボンド磁石用コンパウンドの製造方法 - Google Patents
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Description
知られている。例えば特許文献3においては、SmFeN系異方性磁性粉末を含む水を溶
媒としたスラリーに対して、pH調整されたオルトリン酸を含むリン酸処理液を添加する
ことによりSmFeN系異方性磁性粉末の表面にリン酸塩を被覆する方法が開示されてい
る。
としたスラリーに対して、pH調整されたリン酸処理液を添加した後、SmFeN系異方
性磁性粉末を粉砕することによりSmFeN系異方性磁性粉末の粒度調整をするとともに
、表面にリン酸塩を被覆する方法が開示されている。
処理をすることよりリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末の保磁力が高くな
ることが開示されている。
熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
前記ボンド磁石用添加剤、磁性粉末、および、熱可塑性樹脂を混練してボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程とを含み、前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含むことを特徴とする。
なお、SmFeN系異方性磁性粉末については、特開平11-189811号公報に開示された方法により製造できる。NdFeB系磁性粉末については、国際公開2003/85147号公報に開示されたHDDR法により製造できる。SmCo系磁性粉末については、特開平08-260083号公報に開示された方法により製造できる。
磁性粉末は、必要に応じてシリカ処理を行ってもよい。磁性粉末にシリカ薄膜を形成することにより、耐酸化性を向上できる。シリカ薄膜は、例えば、アルキルシリケート、リン酸塩被覆磁性粉末、およびアルカリ溶液を混合することにより形成できる。
シリカ処理後の磁性粉末を、さらにシランカップリング剤で処理してもよい。シリカ薄膜が形成された磁性粉末をシランカップリング処理することで、シリカ薄膜上にカップリング剤膜が形成され、磁性粉末の磁気特性が向上するとともに、樹脂との濡れ性、磁石の強度を改善することができる。シランカップリング剤は、樹脂の種類に合わせて選定すればよく特に限定されないが、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチレンジシラザン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、オレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ポリエトキシジメチルシロキサン、ポリエトキシメチルシロキサン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、1,3,5-N-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、t-ブチルカルバメートトリアルコキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。シランカップリング剤の添加量は、磁性粉末100重量部に対して、0.2質量%以上0.8質量%以下が好ましく、0.25質量%以上0.6質量%以下がより好ましい。0.2質量%未満ではシランカップリング剤の効果が小さく、0.8質量%を超えると、磁性粉末の凝集により、磁性粉末や磁石の磁気特性を低下させる傾向がある。
熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
前記ボンド磁石用添加剤と熱可塑性樹脂を混練し、ボンド磁石用樹脂組成物を得る工程と、
前記ボンド磁石用樹脂組成物および磁性粉末を混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と
を含み、
前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含むことを特徴とする。
熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
前記ボンド磁石用添加剤、磁性粉末、および、熱可塑性樹脂を混練してボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と、
得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程と
を含み、前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含むことを特徴とする。
熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
前記ボンド磁石用添加剤と熱可塑性樹脂を混練し、ボンド磁石用樹脂組成物を得る工程と、
前記ボンド磁石用樹脂組成物および磁性粉末を混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と、
得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程と
を含み、前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含むことを特徴とする。
本実施形態の第1および第2のボンド磁石用コンパウンドの製造方法において、磁性粉末に含まれるSmFeN系異方性磁性粉末は、特に限定されないが、例えばSmとFeを含む溶液と沈殿剤を混合し、SmとFeとを含む沈殿物を得る工程(沈殿工程)、
前記沈殿物を焼成してSmとFeを含む酸化物を得る工程(酸化工程)、
前記酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理して部分酸化物を得る工程(前処理工程)、
前記部分酸化物を還元する工程(還元工程)、および
還元工程で得られた合金粒子を窒化処理する工程(窒化工程)
を含む方法によって製造されたものを好適に使用できる。
沈殿工程では、強酸性の溶液にSm原料、Fe原料を溶解して、SmとFeを含む溶液を調製する。Sm2Fe17N3を主相として得る場合、SmおよびFeのモル比(Sm:Fe)は1.5:17~3.0:17が好ましく、2.0:17~2.5:17がより好ましい。La、W、Co、Ti、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luなどの原料を前述した溶液に加えても良い。
酸化工程とは、沈殿工程で形成された沈殿物を焼成することにより、SmとFeとを含む酸化物を得る工程である。例えば、熱処理により沈殿物を酸化物に変換することができる。沈殿物を熱処理する場合、酸素の存在下で行われる必要があり、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。また、酸素存在下で行われる必要があるため、沈殿物中の非金属部分に酸素原子を含むことが好ましい。
前処理工程とは、SmとFeを含む酸化物を、還元性ガス雰囲気下で熱処理することにより、酸化物の一部が還元された部分酸化物を得る工程である。
還元工程とは、前記部分酸化物を、還元剤の存在下、920℃以上1200℃以下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程であり、例えば部分酸化物をカルシウム融体またはカルシウムの蒸気と接触することで還元が行われる。熱処理温度は、磁気特性の点より950℃以上1150℃以下が好ましく、980℃以上1100℃以下がより好ましい。熱処理時間は、還元反応をより均一に行う観点から、120分未満が好ましく、90分未満がより好ましく、熱処理時間の下限は10分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。
窒化工程とは、還元工程で得られた合金粒子を窒化処理することにより、異方性の磁性粒子を得る工程である。前述の沈殿工程で得られる粒子状の沈殿物を用いていることから、還元工程にて多孔質塊状の合金粒子が得られる。これにより、粉砕処理を行うことなく直ちに窒素雰囲気中で熱処理して窒化することができるため、窒化を均一に行うことができる。
スパン=(D90-D10)/D50
は、保磁力の点から2以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。
本実施形態の磁性粉末は表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む。表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末は、SmFeN系異方性磁性粉末を含むスラリーに対して、pH調整されたリン酸処理液を添加することによって作製できる。
リン酸処理工程では、SmFeN系異方性磁性粉末、溶媒、およびリン酸化合物を混合して表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を得る。リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末は、SmFeN系異方性磁性粉末に含まれる金属成分(例えば鉄やサマリウム)とリン酸化合物に含まれるリン酸成分とが反応することによりリン酸塩(例えばリン酸鉄、リン酸サマリウム)がSmFeN系異方性磁性粉末の表面において析出することによって形成される。中でも溶媒を水とすることによって、溶媒を有機溶媒とする場合と比べて、粒径が小さいリン酸塩が析出するので、被覆部が緻密なリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末が得られ、保磁力(iHc)が向上すると考えられる。以下溶媒を水とした場合について説明する。
リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末は、必要に応じて酸化処理を行ってもよい。リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末を酸化処理することにより、リン酸塩により被覆されている母材のSmFeN系異方性磁性粉末の表面が酸化されて酸化鉄層が形成され、リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末の耐酸化性が向上する。また、酸化することにより、ボンド磁石作製時にリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末が高温に曝された際に、SmFeN粒子表面での好ましくない酸化還元反応、分解反応や変質が生じることを抑制することができ、結果として磁気特性、特に固有保磁力(iHc)の高い磁石を得ることができる。
リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末におけるリン酸塩含有量の下限が0.1質量%以上であればよく、0.55質量%以上であることが好ましく、0.75質量%以上であることが特に好ましく、リン酸塩含有量の上限は4.5質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。リン酸塩含有量が0.1質量%未満の場合、リン酸塩による被覆の効果が小さくなる傾向があり、4.5質量%を超えると、リン酸塩被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末同士が凝集して保磁力が低下する傾向がある。なお、磁性粉末のリン酸塩含有量は、ICP発光分光分析法(ICP-AES)を用いて測定されるPO4分子換算量で表す。
エポキシ樹脂:ビフェニルタイプ(エポキシ当量186g/eq)
硬化剤:DDS(ジアミノジフェニルスルホン)(活性水素当量62.0g/eq)
硬化促進剤:TPP(トリフェニルホスフィン)
熱可塑性樹脂:ポリアミド12(ダイセル・エボニック社製ZZ3000P)
(SmFeN系異方性磁性粉末の作製)
純水2.0kgにFeSO4・7H2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm2O3 0.49kgと70%硫酸0.74kgとを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFe硫酸溶液とした。
温度が40℃に保たれた純水20kg中に、調製したSmFe硫酸溶液全量を反応開始から70分間で攪拌しながら滴下し、同時に15%アンモニア液を滴下させ、pHを7~8に調整した。これにより、SmFe水酸化物を含むスラリーを得た。得られたスラリーをデカンテーションにより純水で洗浄した後、水酸化物を固液分離した。分離した水酸化物を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。
沈殿工程で得られた水酸化物を大気中1000℃で1時間、焼成処理した。冷却後、原料粉末として赤色のSmFe酸化物を得た。
SmFe酸化物100gを、嵩厚10mmとなるように鋼製容器に入れた。容器を炉内に入れ、100Paまで減圧した後、水素ガスを導入しながら、前処理温度の850℃まで昇温し、そのまま15時間保持した。非分散赤外吸収法(ND-IR)(株式会社堀場製作所製EMGA-820)により酸素濃度を測定したところ、5質量%であった。これにより、Smと結合している酸素は還元されず、Feと結合している酸素のうち、95%が還元される黒色の部分酸化物を得たことがわかった。
前処理工程で得られた部分酸化物60gと平均粒径約6mmの金属カルシウム19.2gとを混合して炉内に入れた。炉内を真空排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入した。1045℃まで上昇させて、45分間保持することにより、Fe-Sm合金粒子を得た。
引き続き、炉内温度を100℃まで冷却した後、真空排気を行い、窒素ガスを導入しながら、温度を450℃まで上昇させて、そのまま23時間保持して、磁性粒子を含む塊状生成物を得た。
窒化工程で得られた塊状の生成物を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを10回繰り返した。次いで99.9%酢酸2.5gを投入して15分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返し行い、続いて脱水と乾燥後、機械的解砕処理を行うことでSmFeN系異方性磁性粉末(平均粒径3μm)を得た。
[リン酸処理工程1]
リン酸処理液として、85%オルトリン酸:リン酸二水素ナトリウム:モリブデン酸ナトリウム2水和物=1:6:1の重量比で混合し、純水と希塩酸でpHを2.5、PO4濃度を20質量%に調整したものを準備した。製造例1で得られたSmFeN系異方性磁性粉末1000gを塩化水素:70gの希塩酸中で1分間攪拌して表面酸化膜や汚れ成分を除去した後、上澄み液の導電率が100μS/cm以下になるまで排水と注水を繰り返し、SmFeN系異方性磁性粉末を10質量%含むスラリーを得た。得られたスラリーを撹拌しながら、準備したリン酸処理液100gを処理槽中に全量投入した。リン酸処理反応スラリーのpHは5分かけて2.5から6に上昇した。15分攪拌した後に吸引濾過、脱水し、真空乾燥することでリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
リン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末、エチルシリケート40、および12.5重量%のアンモニア水を、それぞれ97.8:1.8:0.4の重量比で、ミキサーで混合した。混合物を真空中200℃で加熱して、粒子表面にシリカ薄膜が形成されたSmFeN系異方性磁性粉末を得た。
シリカ薄膜が形成されたSmFeN系異方性磁性粉末と、12.5重量%のアンモニア水
をミキサー内で混合した後、50重量%の3-アミノプロピルトリエトキシシランのエタ
ノール溶液をミキサーにて混合した。シリカ薄膜が形成されたSmFeN系異方性磁性粉
末と12.5重量%のアンモニア水と50重量%の3-アミノプロピルトリエトキシシラ
ンのエタノール溶液の重量比は、それぞれ99:0.2:0.8であった。その混合物を
100℃の窒素雰囲気下で10時間乾燥し、シランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末を得た。
[リン酸処理工程2]
リン酸処理液として、85%オルトリン酸:リン酸二水素ナトリウム:モリブデン酸ナトリウム2水和物=1:6:1の重量比で混合し、純水と希塩酸でpHを2、PO4濃度を20質量%に調整したものを準備した。製造例1で得られたSmFeN系異方性磁性粉末1000gを塩化水素:70gの希塩酸中で1分間攪拌して表面酸化膜や汚れ成分を除去した後、上澄み液の導電率が100μS/cm以下になるまで排水と注水を繰り返し、SmFeN系異方性磁性粉末を10質量%含むスラリーを得た。得られたスラリーを撹拌しながら、準備したリン酸処理液100gを処理槽中に全量投入した後、6重量%の塩酸を随時投入することでリン酸処理反応スラリーのpHを2.5±0.1の範囲にて制御し30分間維持した。続いて吸引濾過、脱水し、真空乾燥することでリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
得られたリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末1000gを窒素とエアーの混合ガス(酸素濃度4%、5L/min)雰囲気下で室温から徐々に昇温し、最高温度170℃で8時間の熱処理を実施し、酸化処理されたSmFeN系異方性磁性粉末を得た。
酸化処理されたSmFeN系異方性磁性粉末、エチルシリケート40、および12.5重量%のアンモニア水を、それぞれ97.8:1.8:0.4の重量比で、ミキサーで混合した。混合物を真空中200℃で加熱して、粒子表面にシリカ薄膜が形成されたSmFeN系異方性磁性粉末を得た。
シリカ薄膜が形成されたSmFeN系異方性磁性粉末と、12.5重量%のアンモニア水
をミキサー内で混合した後、50重量%3-アミノプロピルトリエトキシシランのエタノ
ール溶液をミキサーにて混合した。シリカ薄膜が形成されたSmFeN系異方性磁性粉末
と12.5重量%のアンモニア水と50重量%の3-アミノプロピルトリエトキシシラン
のエタノール溶液の重量比は、それぞれ99:0.2:0.8であった。その混合物を1
00℃の窒素雰囲気下で10時間乾燥し、シランカップリング処理されたSmFeN系異
方性磁性粉末を得た。
(ボンド磁石用添加剤の作製)
アセトン100重量部に対して、エポキシ樹脂12重量部、硬化剤8.8重量部、硬化促進剤0.4重量部を溶解し混合した。アセトンを揮発させた後、棚段乾燥機にて窒素雰囲気下200℃で6時間硬化処理した。得られた硬化物をミキサーにより粉砕し、目開き500μmの篩にて分級し、ボンド磁石用添加剤を作製した。
(ボンド磁石用樹脂組成物の作製)
ポリアミド12が100重量部に対して、17.4重量部の製造例4で得られたボンド磁石用添加剤を二軸混練機にて210℃環境下で溶融混練し、ボンド磁石用樹脂組成物を得た。
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例2で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、1.27重量部の製造例4で作製したボンド磁石用添加剤、および、7.19重量部のポリアミド12を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
得られたボンド磁石用コンパウンドを、シリンダー温度230℃、金型温度90℃、射出
圧186MPaにて射出成形し、直径10mm厚み7mmのボンド磁石を得た。
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例2で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、8.46重量部の製造例5で作製したボンド磁石用樹脂組成物を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
得られたボンド磁石用コンパウンドを用いて実施例1と同様にしてボンド磁石を得た。なお、射出成形時の射出圧は144MPaであった。
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例2で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、7.89重量部の製造例5で作製したボンド磁石用樹脂組成物を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
得られたボンド磁石用コンパウンドを用いて実施例1と同様にしてボンド磁石を得た。なお、射出成形時の射出圧は241MPaであった。
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例3で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、8.46重量部の製造例5で作製したボンド磁石用樹脂組成物を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
得られたボンド磁石用コンパウンドを用いて実施例1と同様にしてボンド磁石を得た。なお、射出成形時の射出圧は115MPaであった。
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例3で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、7.89重量部の製造例5で作製したボンド磁石用樹脂組成物を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
得られたボンド磁石用コンパウンドを用いて実施例1と同様にしてボンド磁石を得た。なお、射出成形時の射出圧は230MPaであった。
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例2で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、8.27重量部のポリアミド12を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
得られたボンド磁石用コンパウンドを用いて実施例1と同様にしてボンド磁石を得た。なお、射出成形時の射出圧は235MPaであった。
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例2で作製したシランカップリング処理されたSmFeN系異方性磁性粉末100重量部に対し、7.7重量部のポリアミド12を混練し、二軸混練機にて210℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
得られたボンド磁石用コンパウンドを用いて実施例1と同様に行ったところ、射出金型内に完充填できず、成形品を得ることができなかった。
<残留磁束密度、保磁力および配向率>
製造例2および製造例3で得られたシランカップリング処理されたSmFeN系磁性粉末を、パラフィンワックスと共に試料容器に詰め、ドライヤーにてパラフィンワックスを溶融した後、2Tの配向磁場にてその磁化容易磁区を揃えた。この磁場配向した試料を6Tの着磁磁場でパルス着磁し、最大磁場2TのVSM(振動試料型磁力計 理研電子製;型式:BHV-55)を用いて磁気特性(残留磁化σr、固有保磁力iHc)を測定した。結果を表1に示す。なお、残留磁化σr(単位:emu/g)に計算式(Br=4×π×ρ×σr、ρ:密度=7.66g/cm3)を用いて残留磁束密度Br(単位:T)を算出した。
製造例2および製造例3で得られたリン酸塩被覆SmFeN系異方性磁性粉末中のP濃度を、ICP発光分光分析法(ICP-AES)を用いて測定し、PO4分子量に換算してPO4付着量を求めた。結果を表1に示す。
実施例および比較例で作製したボンド磁石について、BHトレーサーを用いて残留磁束密度Br(T)と保磁力iHc(kA/m)を測定した。配向率は、以下の式:
配向率(%)=Br(T)/(SmFeN系磁性粉末の体積充填率(vol%)÷100×シランカップリングSmFeN系磁性粉末の残留磁束密度(T))×100
により算出した。
Claims (8)
- 熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
前記ボンド磁石用添加剤、磁性粉末、および、熱可塑性樹脂を混練してボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と
を含み、
前記磁性粉末は、SmFeN系異方性磁性粉末、水、およびリン酸化合物を含むスラリーに無機酸を随時添加して、スラリーのpHを1以上4.5以下に調整しながら表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む、
ボンド磁石用コンパウンドの製造方法。 - 熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
前記ボンド磁石用添加剤と熱可塑性樹脂を混練し、ボンド磁石用樹脂組成物を得る工程と、
前記ボンド磁石用樹脂組成物および磁性粉末を混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と
を含み、
前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む、
ボンド磁石用コンパウンドの製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂がナイロン樹脂である請求項1又は2に記載のボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
- 前記磁性粉末は、粒径分布が単分散のものである請求項1~3のいずれか1項に記載のボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法により得られたボンド磁石用コンパウンド。
- 熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
前記ボンド磁石用添加剤、磁性粉末、および、熱可塑性樹脂を混練してボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と、
得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程と
を含み、
前記磁性粉末は、SmFeN系異方性磁性粉末、水、およびリン酸化合物を含むスラリーに無機酸を随時添加して、スラリーのpHを1以上4.5以下に調整しながら表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む、
ボンド磁石の製造方法。 - 熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程と、
前記ボンド磁石用添加剤と熱可塑性樹脂を混練し、ボンド磁石用樹脂組成物を得る工程と、
前記ボンド磁石用樹脂組成物および磁性粉末を混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得る混練工程と、
得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程と
を含み、
前記磁性粉末は、表面にリン酸塩が被覆されたSmFeN系異方性磁性粉末を含む、
ボンド磁石の製造方法。 - 請求項6又は7に記載の製造方法により得られたボンド磁石。
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