JP2024028122A - 希土類磁性粉末の製造方法および希土類磁性粉末 - Google Patents

希土類磁性粉末の製造方法および希土類磁性粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】磁気特性が高い希土類磁性粉末の製造方法および希土類磁性粉末を提供する。【解決手段】Sm、FeおよびNを含むSmFeN系磁性粉末と、Znを含む改質材粉末とを混合し、熱処理する工程と、前記熱処理したSmFeN系磁性粉末を、樹脂で被覆された金属または樹脂で被覆されたセラミックスのメディアを用いて分散する工程と、を含む、希土類磁性粉末の製造方法に関する。【選択図】 なし

Description

本開示は、希土類磁性粉末の製造方法および希土類磁性粉末に関する。
特許文献1には、溶媒中でセラミックスのメディアを用いてSmFeN系異方性磁性粉末を粉砕する製造方法が開示されている。しかしながら、硬いセラミックスのメディアを使用すると、チッピングによる微小粒子が生成し、粉砕後に得られたSmFeN系異方性磁性粉末の酸素含有量が増加し、磁気特性が低下することが考えられる。
特許文献2には、SmFeN系希土類磁石の製造方法として、SmFeN系異方性磁性粉末を6kOe以上の磁場中で予備圧縮した後、600℃以下の温度、1~5GPaの成形面圧で温間圧密成形することが開示されている。
特開2015-195326号公報 国際公開第2015/199096号
本開示は、磁気特性が高い希土類磁性粉末の製造方法および希土類磁性粉末を提供することを目的とする。
本開示の一態様にかかる希土類磁性粉末の製造方法は、
Sm、FeおよびNを含むSmFeN系磁性粉末と、Znを含む改質材粉末とを混合し、熱処理する工程と、
前記熱処理したSmFeN系磁性粉末を、樹脂で被覆された金属または樹脂で被覆されたセラミックスのメディアを用いて分散する工程と、
を含む。
本開示の一態様にかかる希土類磁性粉末は、
Sm、Fe、および、Nを含むSmFeN系の希土類磁性粉末であって、
前記希土類磁性粉末は、前記希土類磁性粉末の全体に対して6質量%以上10質量%以下のZnを含み、体積基準による粒度分布の積算値が50%に相当する粒径であるD50が1μm以上4μm以下、残留磁化σrが120emu/g以上、角形比Hkが13000Oe以上である。
本開示によれば、磁気特性が高い希土類磁性粉末の製造方法および希土類磁性粉末を提供することができる。
実施例3において、改質材粉末と混合後、熱処理前の混合粉末のSEM画像である。 実施例3において、改質材粉末と混合後、熱処理前の混合粉末の拡大したSEM画像である。 実施例3で作製した希土類磁性粉末のSEM画像である。 実施例3で作製した希土類磁性粉末の拡大したSEM画像である。 実施例6で作製した希土類磁性粉末のSEM画像である。 実施例6で作製した希土類磁性粉末の拡大したSEM画像である。 実施例9で作製した希土類磁性粉末のSEM画像である。 実施例9で作製した希土類磁性粉末の拡大したSEM画像である。 実施例11で作製した希土類磁性粉末のSEM画像である。 実施例11で作製した希土類磁性粉末の拡大したSEM画像である。 実施例11で作製した希土類磁性粉末について、Sm、Zn、Pの偏在領域を示すSTEM-EDXマッピング分析結果である。 実施例11で作製した希土類磁性粉末について、Znの偏在領域を示すSTEM-EDXマッピング分析結果である。
以下、本開示の実施形態について詳述する。ただし、以下に示す実施形態は、本開示の技術思想を具体化するための一例であり、本開示を以下のものに限定するものではない。なお、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本実施形態の希土類磁性粉末の製造方法は、Sm、FeおよびNを含むSmFeN系磁性粉末と、Znを含む改質材粉末とを混合し、熱処理する工程と、前記熱処理したSmFeN系磁性粉末を、樹脂で被覆された金属または樹脂で被覆されたセラミックスのメディアを用いて分散する工程と、を含むことを特徴とする。熱処理する工程は、SmFeN系磁性粉末と改質材粉末とを混合する工程と、前記混合したSmFeN系磁性粉末を熱処理する工程とを含んでいてもよい。熱処理する工程において、混合と同時に熱処理を行ってもよい。
[混合工程]
SmFeN系磁性粉末と改質材粉末とを混合する混合工程では、Sm、FeおよびNを含むSmFeN系磁性粉末と、Znを含む改質材粉末を混合して、混合粉末を得る。改質材粉末には、Znが含まれていればよく、たとえば亜鉛、亜鉛合金などが挙げられる。改質材粉末中の亜鉛または亜鉛合金の含有量の下限は特に限定されず、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。また、改質材粉末の配合量は、残留磁化の点から、SmFeN系磁性粉末100質量部に対して2質量部以上20質量部以下が好ましく、5質量部以上10質量部以下が好ましい。
亜鉛合金をZn-Mで表すと、Mは、Zn(亜鉛)と合金化して、亜鉛合金の溶融開始温度を、Znの融点よりも降下させる元素及び不可避的不純物元素から選択することができる。これにより、得られる希土類磁性粉末を加圧焼結する場合には焼結性が向上する。Znの融点よりも降下させるMとしては、ZnとMとで共晶合金を形成する元素等が挙げられる。このようなMとしては、典型的には、Sn、Mg、及びAl並びにこれらの組み合せ等が挙げられる。Snはスズ、Mgはマグネシウム、そして、Alはアルミニウムである。これらの元素による融点降下作用、及び、成果物の特性を阻害しない元素についても、Mとして選択することができる。また、不可避的不純物元素とは、改質材粉末の原材料に含まれる不純物等、その含有を回避することが避けられない、あるいは、回避するためには著しい製造コストの上昇を招くような不純物元素のことをいう。
Zn-Mで表される亜鉛合金において、Zn及びMの割合(モル比)は、後述する熱処理工程における熱処理温度が適正になるように適宜決定すればよい。亜鉛合金全体に対するMの割合(モル比)は、例えば、0.05以上、0.10以上、又は0.20以上であってよく、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、又は0.30以下であってよい。
改質材粉末の粒径D50(メジアン径)は、特に限定されないが、0.1μm以上、0.5μm以上、1μm以上、又は2μm以上であってよく、12μm以下、11μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、又は4μm以下であってよい。粒径D50(メジアン径)は、例えば、乾式レーザー回折・散乱法によって測定される。
改質材粉末の酸素含有量が少ないと、SmFeN系磁性粉末中の酸素を多く吸収できる。この観点からは、改質材粉末の酸素含有量は、改質材粉末全体に対し、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。一方、改質材粉末の酸素の含有量を極度に低減することは、製造コストの増大を招く。このことから、改質材粉末の酸素の含有量は、改質材粉末全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってよい。
改質材粉末との混合方法は特に限定されず、乳鉢、マラーホイール式ミキサー、アジテータ式ミキサー、メカノフュージョン、V型混合器、及びボールミル等が挙げられる。これらの方法を組み合わせることもできる。なお、V型混合器は、2つの筒型容器をV型に連結した容器を備え、その容器を回転することにより、容器中の粉末が、重力と遠心力で集合と分離が繰り返され、混合される装置である。
[熱処理工程]
前記熱処理工程では、Znを含む改質材粉末とSmFeN系磁性粉末との混合粉末を熱処理する。熱処理により、SmFeN系磁性粉末がZnを含む層で被覆され、粒子表面で被膜状にFe-Zn合金相が形成される。SmFeN系磁性粉末の粒子と改質材粉末の粒子とをより一層強固に結合(以下、「固化」ということがある。)すると同時に、改質が促進される。熱処理温度が、350℃以上であれば、粒子のほぼ全体でFe-Zn合金相が形成され、固化及び改質ができる。熱処理温度は、360℃以上、370℃以上、又は380℃以上であってもよい。一方、熱処理温度の上限は、480℃以下が好ましく、440℃以下がより好ましい。480℃を超えると、Znが磁性粉末中に侵入し、磁気特性が低下することがある。後述する2段階での熱処理を行う場合は、第一温度が480℃を超えてもよい。
熱処理時間は特に限定されないが、10時間以上が好ましく、15時間以上がより好ましい。一方、熱処理時間の上限について、SmFeN系磁性粉末中の磁性相は、ThZn17型及び/又はThNi17型の結晶構造を有しており、熱処理時間が40時間で、Fe-Zn合金相の形成が飽和する。経済性(短時間化)の観点から、熱処理時間は、40時間以下、35時間以下、30時間以下、25時間以下、又は24時間以下であることが好ましい。
SmFeN系磁性粉末として、リン酸処理したものを使用する場合には、リンの被覆層がFe-Zn合金層の形成を抑制することがある。そのため、Fe-Zn合金層の形成を促し、角形比Hkが高い希土類磁性粉末を得るために、熱処理温度は、前述した熱処理温度よりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましい。
磁性粉末の酸化を抑制するため、真空中又は不活性ガス雰囲気中で熱処理することが好ましい。ここで、不活性ガス雰囲気には、窒素ガス雰囲気を含む。窒素ガス雰囲気中の窒素の濃度は、90体積%以上であってよく、95体積%以上であることが好ましい。上述した熱処理条件を満足する熱処理を行うことにより、正常な磁性相とFe-Zn合金相とを適切に生成することができ、FeとZnとが過剰に相互拡散することを抑制することができる。
熱処理工程において、SmFeN系磁性粉末と改質材粉末とが混合された混合粉末を第一温度で熱処理した後に、第一温度よりも低い第二温度で混合粉末を熱処理することもできる。熱処理温度は高温であるほどSmFeN系磁性粉末のFeと改質材粉末のZnの反応を促進することができるが、一方で高温であるほどSmFeN系磁性粉末のより内部にまでZnが入りやすい。SmFeN系磁性粉末の内部にZnが入るほど、得られる希土類磁性粉末の磁気特性は低下する傾向にある。第一温度の熱処理と第二温度の熱処理を行うことにより、FeとZnの反応を促進し、且つ、得られる希土類磁性粉末の磁気特性の低下を抑制することができる。第一温度での熱処理を経た混合粉末は、改質材粉末が粉末の状態で残っていてもよく、残っていなくてもよい。第二温度での熱処理の熱処理温度と時間は前述した通りである。第一温度は、第二温度よりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましい。第一温度は、Znの融点(419℃)以上であることが好ましい。第一温度は、420℃以上500℃以下であってよく、440℃以上500℃以下であることが好ましい。これにより、ZnとFeの反応を促進することができる。リン酸処理工程を経た磁性粉末を熱処理する場合は、第一温度は480℃以上500℃以下であってもよい。第二温度は、第一温度よりも低く、且つ、350℃以上480℃以下であってよく、380℃以上480℃以下であることが好ましい。これにより、得られる希土類磁性粉末の磁気特性の低下を抑制することができる。第一温度での熱処理の熱処理時間は、第二温度での熱処理の熱処理時間よりも短いことが好ましい。これにより、得られる希土類磁性粉末の磁気特性の低下をより確実に抑制することができる。第一温度での熱処理の熱処理時間は、1分以上とすることができ、3分以上が好ましい。第一温度での熱処理の熱処理時間の上限は、1時間未満とすることができ、30分未満が好ましい。第二温度での熱処理の熱処理時間は、第一温度での熱処理の熱処理時間よりも長く、且つ、1時間以上とすることができ、10時間以上が好ましい。第二温度での熱処理の熱処理時間の上限は、30時間未満とすることができ、24時間未満が好ましい。
熱処理は、磁性粉末が固化したり、SmFeNの結晶が歪んで磁気特性が低下しないように、圧力を印加しない状態で行うことが好ましい。
[分散工程]
前記分散工程では、Sm、FeおよびNを含むSmFeN系磁性粉末を、樹脂で被覆された金属または樹脂で被覆されたセラミックスのメディアを用いて分散する。このようなメディアで分散処理を行うことにより、Znを含む改質材粉末による被覆層の剥離を抑制することができる。ここでいう分散とは、SmFeN系磁性粉末に含まれる熱処理により生じた凝集粒子や磁気凝集等により生じた凝集粒子が、分かれて単一からなる粒子であるか、数少ない粒子から構成されている粒子になることを意味する。本実施形態によると、樹脂で被覆された金属または樹脂で被覆されたセラミックスのメディアがSmFeN系磁性粉末に衝突する場合は、樹脂で被覆されていない金属または樹脂で被覆されていないセラミックスのメディアがSmFeN系磁性粉末に衝突する場合と比べて衝突エネルギーが小さいので、粉砕よりも分散が起こりやすい。従来のように、SmFeN系磁性粉末の粉砕が行われると、チッピングにより生成する微小粒子が酸化劣化することによるSmFeN系磁性粉末の磁気特性の低下が起こる。また、微小粒子を含むSmFeN系磁性粉末を用いてSmFeN系希土類磁石を作製することにより、磁場中で圧縮成形する際に、微小粒子が十分に配向せず、SmFeN系希土類磁石の磁気特性の低下が起こると考えられる。一方で、本実施形態のように、SmFeN系磁性粉末の分散が行われると、微小粒子と凝集粒子が少ないSmFeN系磁性粉末が得られるので、微小粒子が酸化劣化することによるSmFeN系磁性粉末の磁気特性の低下を抑制することでき、また、磁場中で圧縮成形する場合でも十分に配向するのでSmFeN系希土類磁石の磁気特性が高くなりやすいと考えられる。
分散工程で使用する分散装置としては、例えば振動ミルを使用する。振動ミル等の分散装置で使用するメディアは樹脂で被覆された金属であってよく、その金属の材質としては、鉄、クロム鋼、ステンレス、スチールなどが挙げられる。また、振動ミル等の分散装置で使用するメディアは樹脂で被覆されたセラミックスであってよく、そのセラミックスの材質としては、金属または非金属の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物などの無機化合物が挙げられ、より具体的には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、ガラスなどが挙げられる。これらの中では、高比重により分散能力が高いことと、高硬度により摩耗が少ないことと、摩耗により発生する鉄を含んだ摩耗粉は、SmFeN系磁性粉末に対する影響が小さい点から、鉄、クロム鋼が好ましい。すなわち、樹脂で被覆された鉄またはクロム鋼のメディアを分散装置で使用することが好ましい。被覆する樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂及びそれらの組み合わせが挙げられる。熱可塑性樹脂は、射出成形で形成することができ、熱硬化性樹脂と比較して流動性が高いため、熱硬化性樹脂で被覆する場合よりも膜厚を薄くすることができる。そのため、熱硬化性樹脂で被覆する場合よりもメディアの比重を増大させることができ、サイズを低減させることができる。熱可塑性樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のナイロンを用いることが好ましい。ナイロンは、熱可塑性樹脂の中でも比較的柔らかく安価であるためである。例えばナイロンで被覆された鉄のメディアを分散装置で使用してよい。これにより、微粉の発生をより抑制しつつ、SmFeN系磁性粉末を分散することができる。
分散工程で使用する金属またはセラミックスのメディアの比重は、4以上が好ましく、5以上がより好ましい。4未満では、分散時の衝突エネルギーが小さくなりすぎるため分散が起こりにくくなる傾向がある。上限は特に限定されないが、8以下が好ましく、7.5以下がより好ましい。分散工程で使用するメディアの比重は、6以上7.5以下であってもよい。樹脂で被覆された金属または樹脂で被覆されたセラミックスのメディアは、言い換えると、メディアは、金属またはセラミックスの芯と、芯を被覆する樹脂膜とを有するといえる。樹脂膜の厚みは、例えば0.1μm以上5mm以下とすることができる。これにより、メディアの直径の増大を抑えることができるため、SmFeN系磁性粉末の分散に適しており、得られるSmFeN系磁性粉末のσrを向上させることができる。
分散工程は、溶媒の存在下で行うこともできるが、溶媒中に含まれる成分(例えば水分など)によるSmFeN系磁性粉末の酸化を抑制する点から、溶媒の非存在下で行うことが好ましい。
分散工程は、SmFeN系磁性粉末の酸化を抑制する点から、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを用いた不活性ガス雰囲気にて行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気が窒素ガス雰囲気である場合、窒素ガス雰囲気中の窒素の濃度は、90体積%以上であってよく、95体積%以上であることが好ましい。不活性ガス雰囲気がアルゴンガス雰囲気である場合、アルゴンガス雰囲気中のアルゴンの濃度は、90体積%以上であってよく、95体積%以上であることが好ましい。不活性ガス雰囲気は、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを2種類以上混合した雰囲気であってもよい。不活性ガス雰囲気中の不活性ガスの濃度は、90体積%以上であってよく、95体積%以上であることが好ましい。
メディアの直径は、2mm以上100mm以下が好ましく、3mm以上15mm以下がより好ましく、3mm以上10mm以下がさらに好ましい。2mm未満では、樹脂で被覆することが難しく、100mmを超えると、メディアが大きいため、粉末との接触が少なくなり、分散が起こりにくくなる傾向がある。
分散工程で振動ミルを使用する場合は、SmFeN系磁性粉末とメディアを入れる容器の容積に対して、例えば、メディアの量を60体積%以上70体積%以下とし、SmFeN系磁性粉末の量を3体積%以上20体積%以下とすることができ、5体積%以上20体積%以下が好ましい。
Znを含む改質材粉末は、添加した改質材粉末の全てがSmFeN系磁性粉末を被覆する必要はない。得られた希土類磁性粉末中にZnを含む改質材粉末が粒子として残留していても良い。
混合工程で使用するSmFeN系磁性粉末は、例えば、特開2017-117937号公報や特開2021-055188号公報に開示された方法を参照して作製することができる。以下にSmFeN系磁性粉末の製造方法の一例について説明する。
混合工程で使用するSmFeN系磁性粉末は、SmとFeを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、部分酸化物を得る前処理工程、前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程、前記合金粒子を窒化して窒化物を得る工程、および、前記窒化物を洗浄してSmFeN系磁性粉末を得る工程を含む製造方法により作製することができる。混合工程で使用するSmFeN系磁性粉末は、分散工程を経た粉末であってもよい。すなわち、混合工程で使用するSmFeN系磁性粉末の製造方法は、混合前の分散工程を有していてもよい。混合前の分散工程は、上述の分散工程と同様の手法を用いてよい。
前処理工程で使用するSmとFeを含む酸化物は、Sm酸化物とFe酸化物を混合することにより作製してもよいが、SmとFeを含む溶液と沈殿剤を混合し、SmとFeとを含む沈殿物を得る工程(沈殿工程)、および、前記沈殿物を焼成することにより、SmとFeを含む酸化物を得る工程(酸化工程)によって、製造することができる。
[沈殿工程]
沈殿工程では、強酸性の溶液にSm原料、Fe原料を溶解して、SmとFeを含む溶液を調製する。SmFe17を主相として得る場合、SmおよびFeのモル比(Sm:Fe)は1.5:17~3.0:17が好ましく、2.0:17~2.5:17がより好ましい。La、W、Co、Ti、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luなどの原料を上述した溶液に加えても良い。残留磁束密度の点で、Laを含むことが好ましい。保磁力と角形比の点で、Wを含むことが好ましい。温度特性の点で、R(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)を含むことが好ましい。
Sm原料、Fe原料としては、強酸性の溶液に溶解できるものであれば限定されない。例えば、入手のしやすさの点で、Sm原料としては酸化サマリウムが、Fe原料としてはFeSOが挙げられる。SmとFeを含む溶液の濃度は、Sm原料とFe原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整することができる。酸性溶液としては溶解性の点で硫酸などが挙げられる。
SmとFeを含む溶液と沈殿剤を反応させることにより、SmとFeを含む不溶性の沈殿物を得る。ここで、SmとFeを含む溶液は、沈殿剤との反応時にSmとFeを含む溶液となっていればよく、たとえばSmを含む原料とFeを含む原料を別々の溶液として調製し、各々の溶液を滴下して沈殿剤と反応させても良い。別々の溶液として調製する場合においても各原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整する。沈殿剤としては、アルカリ性の溶液でSmとFeを含む溶液と反応して沈殿物が得られるものであれば限定されず、アンモニア水、苛性ソーダなどが挙げられ、苛性ソーダが好ましい。
沈殿反応は、沈殿物の粒子の性状を容易に調整できる点から、SmとFeを含む溶液と、沈殿剤とを、それぞれ水などの溶媒に滴下する方法が好ましい。SmとFeを含む溶液と沈殿剤の供給速度、反応温度、反応液濃度、反応時のpH等を適宜制御することにより、構成元素の分布が均質で、粒度分布が狭く、粉末形状の整った沈殿物が得られる。このような沈殿物を使用することによって、最終製品であるSmFeN系磁性粉末の磁気特性が向上する。反応温度は、0℃以上50℃以下が好ましく、35℃以上45℃以下がより好ましい。反応液濃度は、金属イオンの総濃度として0.65mol/L以上0.85mol/L以下が好ましく、0.7mol/L以上0.85mol/L以下がより好ましい。反応pHは、5以上9以下が好ましく、6.5以上8以下がより好ましい。
SmとFeを含む溶液は、磁気特性の点で、さらにLa、W、R(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)からなる群から選ばれる1種以上の金属を含むことが好ましい。例えば、残留磁束密度の点で、Laを含むことが好ましく、保磁力と角形比の点で、Wを含むことが好ましく、温度特性の点で、Rを含むことが好ましい。La原料としては、強酸性の溶液に溶解できるものであれば限定されず、例えば、入手のしやすさの点で、La、LaClなどが挙げられる。Sm原料とFe原料とともに、La原料、W原料、R原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整し、酸性溶液としては溶解性の点で硫酸が挙げられる。W原料としては、タングステン酸アンモニウムが挙げられ、Co原料としては、硫酸コバルトが挙げられ、Ti原料としては硫酸チタニアが挙げられる。
SmとFeを含む溶液が、さらにLa、WおよびR(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)からなる群から選ばれる1種以上の金属を含む場合、Sm、Feと、La、WおよびRからなる群から選ばれる1種以上を含む不溶性の沈殿物を得る。ここで、該溶液は、沈殿剤との反応時にLa、WおよびRからなる群から選ばれる1種以上を含んでいればよく、例えば各原料を別々の溶液として調製し、各々の溶液を滴下して沈殿剤と反応させても良いし、SmとFeを含む溶液と一緒に調整しても良い。
沈殿工程で得られた粉末により、最終的に得られるSmFeN系磁性粉末の粉末粒子径、粉末形状、粒度分布がおよそ決定される。得られた粉末の粒子径をレーザー回折式湿式粒度分布計により測定した場合、全粉末が0.05μm以上20μm以下、好ましくは0.1μm以上10μm以下の範囲にほぼ入るような大きさと分布であることが好ましい。
沈殿物を分離した後は、続く酸化工程の熱処理において残存する溶媒に沈殿物が再溶解して、溶媒が蒸発する際に沈殿物が凝集したり、粒度分布、粉末粒子径等が変化したりすることを抑制するために、分離物を脱溶媒しておくことが好ましい。脱溶媒する方法として具体的には、例えば溶媒として水を使用する場合、70℃以上200℃以下のオーブン中で5時間以上12時間以下の時間、乾燥する方法が挙げられる。
沈殿工程の後に、得られる沈殿物を分離洗浄する工程を含んでもよい。洗浄する工程は上澄み溶液の導電率が5mS/m以下となるまで適宜行う。沈殿物を分離する工程としては、例えば、得られた沈殿物に溶媒(好ましくは水)を加えて混合した後、濾過法、デカンテーション法等を用いることができる。
[酸化工程]
酸化工程とは、沈殿工程で形成された沈殿物を焼成することにより、SmとFeとを含む酸化物を得る工程である。例えば、熱処理により沈殿物を酸化物に変換することができる。沈殿物を熱処理する場合、酸素の存在下で行われる必要があり、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。また、酸素存在下で行われる必要があるため、沈殿物中の非金属部分に酸素原子を含むことが好ましい。
酸化工程における熱処理温度(以下、酸化温度)は特に限定されないが、700℃以上1300℃以下が好ましく、900℃以上1200℃以下がより好ましい。700℃未満では酸化が不十分となり、1300℃を超えると、目的とするSmFeN系磁性粉末の形状、平均粒子径および粒度分布が得られない傾向にある。熱処理時間も特に限定されないが、1時間以上3時間以下が好ましい。
得られる酸化物は、酸化物粒子内においてSm、Feの微視的な混合が充分になされ、沈殿物の形状、粒度分布等が反映された酸化物粒子である。
[前処理工程]
前処理工程とは、上述のSmとFeを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、酸化物の一部が還元された部分酸化物を得る工程である。
ここで、部分酸化物とは、酸化物の一部が還元された酸化物をいう。部分酸化物の酸素濃度は特に限定されないが、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。10質量%を超えると、還元工程においてCaとの還元発熱が大きくなり、焼成温度が高くなることで異常な粒子成長をした粒子ができてしまう傾向がある。ここで、部分酸化物の酸素濃度は、非分散赤外吸収法(ND-IR)により測定することができる。
還元性ガスは、水素(H)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)等の炭化水素ガス及びそれらの組み合わせなどから適宜選択されるが、コストの点で水素ガスが好ましく、ガスの流量は、酸化物が飛散しない範囲で適宜調整される。前処理工程における熱処理温度(以下、前処理温度)は、300℃以上950℃以下が好ましく、下限は400℃以上がより好ましく、750℃以上がさらに好ましい。上限は900℃未満がより好ましい。前処理温度が300℃以上であるとSmとFeを含む酸化物の還元が効率的に進行する。また950℃以下であると酸化物粒子が粒子成長、偏析することが抑制され、所望の粒子径を維持することができる。熱処理時間は、特に限定されないが、1時間以上50時間以下とすることができる。また、還元性ガスとして水素を用いる場合、使用する酸化物層の厚みを20mm以下に調整し、更に反応炉内の露点を-10℃以下に調整することが好ましい。
[還元工程]
還元工程とは、前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程であり、例えば部分酸化物をカルシウム融体またはカルシウムの蒸気と接触することで還元が行われる。熱処理温度は、磁気特性の点より、920℃以上1200℃以下が好ましく、950℃以上1150℃以下がより好ましく、980℃以上1100℃以下がさらに好ましい。
還元工程における上述の熱処理とは別の熱処理として、1000℃以上1090℃以下の第一温度で熱処理した後、第一温度よりも低い980℃以上1070℃以下の第二温度で熱処理してもよい。第一温度は、1010℃以上1080℃以下が好ましく、第二温度は、990℃以上1060℃以下が好ましい。第一温度と第二温度の温度差は、第二温度が第一温度よりも15℃以上60℃以下の範囲で低いことが好ましく、15℃以上30℃以下の範囲で低いことがより好ましい。第一温度による熱処理と第二温度による熱処理は連続で行っても良く、これらの熱処理間において、第二温度より低い温度での熱処理を含むこともできるが、生産性の点で、連続で行うことが好ましい。各熱処理時間は、還元反応をより均一に行う観点から、120分未満が好ましく、90分未満がより好ましく、熱処理時間の下限は10分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。
還元剤である金属カルシウムは、粒状又は粉末状の形で使用されるが、その平均粒子径は10mm以下が好ましい。これにより還元反応時における凝集をより効果的に抑制することができる。また、金属カルシウムは、反応当量(希土類酸化物を還元するのに必要な化学量論量であり、Fe成分が酸化物の形である場合には、これを還元するために必要な分を含む)の1.1~3.0倍量の割合で添加することが好ましく、1.5~2.5倍量がより好ましい。
還元工程では、還元剤である金属カルシウムとともに、必要に応じて崩壊促進剤を使用することができる。この崩壊促進剤は、後述する後処理工程に際して、生成物の崩壊、粒状化を促進させるために適宜使用されるものであり、例えば、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、酸化カルシウム等のアルカリ土類酸化物などが挙げられる。これらの崩壊促進剤は、サマリウム酸化物当り1質量%以上30質量%以下、好ましくは5質量%以上30質量%以下の割合で使用される。
[窒化工程]
窒化工程とは、還元工程で得られた合金粒子を窒化処理することにより、異方性の磁性粒子を得る工程である。上述の沈殿工程で得られる粒子状の沈殿物を用いていることから、還元工程にて多孔質塊状の合金粒子が得られる。これにより、粉砕処理を行うことなく直ちに窒素雰囲気中で熱処理して窒化することができるため、窒化を均一に行うことができる。
合金粒子の窒化処理における熱処理温度(以下、窒化温度)は、好ましくは300~610℃、特に好ましくは400~550℃の温度とし、この温度範囲で雰囲気を窒素雰囲気に置換することにより行われる。熱処理時間は、合金粒子の窒化が充分に均一に行われる程度に設定されればよい。
合金粒子の窒化処理における熱処理温度は、400℃以上470℃以下の第一温度で熱処理した後、480℃以上610℃以下の第二温度で熱処理して窒化処理することもできる。第一温度で窒化することなく、第二温度の高温で熱処理すると、窒化が急激に進行することにより異常発熱が生じ、SmFeN系磁性粉末が分解し、磁気特性が大きく低下することがある。また、窒化工程における雰囲気は窒化の進行をより遅くできることから、実質的に窒素含有雰囲気下であることが好ましい。
ここでいう実質的にとは、不純物の混入等に起因して不可避的に窒素以外の元素が含まれることを考慮して使用しており、例えば、雰囲気における窒素の割合が95%以上であり、97%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
窒化工程における第一温度は、400℃以上470℃以下が好ましく、410℃以上450℃以下がより好ましい。400℃未満では、窒化の進行が非常に遅く、470℃を超えると、発熱により過窒化または分解が起こりやすくなる傾向にある。第一温度での熱処理時間は、特に限定されないが、1時間以上40時間以下が好ましく、20時間以下がより好ましい。1時間未満では、窒化が十分に進行しない場合があり、40時間を超えると、生産性が悪くなる。
第二温度は、480℃以上610℃以下が好ましく、500℃以上550℃以下がより好ましい。480℃未満では、粒子が大きいと窒化が十分に進行しない場合があり、610℃を超えると、過窒化または分解が起こりやすい。第二温度での熱処理時間は、15分以上5時間以下が好ましく、30分以上2時間以下がより好ましい。15分未満では、窒化が十分に進行しない場合があり、5時間を超えると、生産性が悪くなる。
第一温度による熱処理と第二温度による熱処理は連続で行っても良く、これらの熱処理間において、第二温度より低い温度での熱処理を含むこともできるが、生産性の点で、連続で行うことが好ましい。
[後処理工程]
窒化工程後に得られる生成物には、磁性粒子に加えて、副生するCaO、未反応の金属カルシウム等が含まれ、これらが複合した焼結塊状態となっている場合がある。窒化工程後に得られる生成物を冷却水中に投入して、CaO及び金属カルシウムを水酸化カルシウム(Ca(OH))懸濁物としてSmFeN系磁性粉末から分離することができる。さらに残留する水酸化カルシウムは、SmFeN系磁性粉末を酢酸等で洗浄して充分に除去してもよい。生成物を水中に投入した際には、金属カルシウムの水による酸化及び副生CaOの水和反応によって、複合した焼結塊状の反応生成物の崩壊、すなわち微粉化が進行する。
[アルカリ処理工程]
窒化工程後に得られる生成物をアルカリ溶液中に投入してもよい。アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液としては、たとえば水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などが挙げられる。なかでも、排水処理、高pHの点で、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。窒化工程後に得られる生成物のアルカリ処理において、酸素をある程度含有するSmリッチ層が残存して保護層として機能するため、アルカリ処理により酸素濃度が増大することを抑制している。
アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液のpHは特に限定されないが、9以上が好ましく、10以上がより好ましい。pHが9未満では、水酸化カルシウムになる際の反応速度が速く、発熱が大きくなるため、最終的に得られるSmFeN系磁性粉末の酸素濃度が高くなる傾向がある。
アルカリ処理工程において、アルカリ溶液で処理した後に得られたSmFeN系磁性粉末は、必要によりデカンテーションなどの方法で水分を低減することもできる。
[酸処理工程]
後処理工程またはアルカリ処理工程の後に、さらに酸で処理する酸処理工程を含んでもよい。酸処理工程では、前述のSmリッチ層の少なくとも一部を除去して、磁性粉末全体中の酸素濃度を低減する。また、本実施形態にある製造方法では、粉砕等を行わないため、SmFeN系磁性粉末の平均粒子径が小さく、粒度分布が狭く、また粉砕等で生じる微粉を含まないため、酸素濃度の増加を抑制することが可能となる。
酸処理工程に用いる酸としては、特に限定されず、たとえば塩化水素、硝酸、硫酸、酢酸などが挙げられる。なかでも、不純物が残留しない点で、塩化水素、硝酸が好ましい。
酸処理工程に用いる酸の使用量は、SmFeN系磁性粉末100質量部に対して3.5質量部以上13.5質量部以下が好ましく、4質量部以上10質量部以下がより好ましい。3.5質量部未満では、SmFeN系磁性粉末表面の酸化物が残り、酸素濃度が高くなり、13.5質量部を超えると、大気に暴露した際に再酸化が起こりやすく、また、SmFeN系磁性粉末を溶解するため、コストも高くなる傾向がある。酸の量をSmFeN系磁性粉末100質量部に対して3.5質量部以上13.5質量部以下とすることにより、酸処理後に大気に暴露した際に再酸化が起こりにくい程度に酸化されたSmリッチ層がSmFeN系磁性粉末表面を覆うようにすることができるので、酸素濃度が低く、平均粒子径が小さく、粒度分布の狭いSmFeN系磁性粉末が得られる。
酸処理工程において、酸で処理した後に得られたSmFeN系磁性粉末は、必要によりデカンテーションなどの方法で水分を低減することもできる。
[脱水工程]
酸処理工程の後に、脱水処理する工程を含むことが好ましい。脱水処理によって、真空乾燥前の固形分中の水分を低減させ、真空乾燥前の固形分が水分をより多く含むことにより生じる乾燥時の酸化の進行を抑制することができる。ここで、脱水処理は、圧力や遠心力を加えることで、処理前の固形分に対して処理後の固形分に含まれる水分値を低減する処理のことを意味し、単なるデカンテーションや濾過や乾燥は含まない。脱水処理方法は特に限定されないが、圧搾、遠心分離などが挙げられる。
脱水処理後のSmFeN系磁性粉末に含まれる水分量は特に限定されないが、酸化の進行を抑制する点から13質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
酸処理して得られたSmFeN系磁性粉末、または、酸処理後、脱水処理して得られたSmFeN系磁性粉末は、真空乾燥することが好ましい。乾燥温度は特に限定されないが、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。乾燥時間も特に限定されないが、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましい。
[リン酸処理工程]
後処理工程、アルカリ処理工程、または、酸処理工程の後に、希土類磁性粉末をリン酸で処理する工程を含んでいてもよい。希土類磁性粉末をリン酸処理することで、希土類磁性粉末の表面にP-O結合を有する不動態膜が形成される。希土類磁性粉末をPとOを含む膜で被覆することによって、加工中の大気による酸化劣化を低減することができ、ボンド磁石成形時の酸化劣化(たとえばPPS樹脂では末端にはSOが存在し、成形温度は340℃と高温である)を低減することができる。
リン酸処理工程では、リン酸処理薬と希土類磁性粉末を反応させる。リン酸処理薬としては、例えば、オルトリン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム等のリン酸塩系、次亜リン酸系、次亜リン酸塩系、ピロリン酸、ポリリン酸系等の無機リン酸、有機リン酸及びそれらの塩が挙げられる。これらのリン酸源を基本的には水中、またはIPAなどの有機溶媒中に溶解させ、必要に応じて硝酸イオン等の反応促進剤、Vイオン、Crイオン、Moイオン等の結晶微細化剤を添加したリン酸浴中に磁性粉末を投入し、希土類磁性粉末の表面にP-O結合を有する不動態膜を形成させる。
リン酸処理後、常圧下または真空下で乾燥することが好ましい。リン酸で被覆するだけでなく、乾燥により化学結合させることで、保磁力が向上する。また、乾燥により、リンが化学結合するため、SmFeN系磁性粉末を熱処理する工程において、改質材粉末に含まれるZnからZnOが生成することを抑制することができる。乾燥温度は、140℃以上が好ましい。
本実施形態の希土類磁性粉末は、Sm、Fe、および、Nを含むSmFeN系の希土類磁性粉末であって、前記希土類磁性粉末は、前記希土類磁性粉末の全体に対して6質量%以上10質量%以下のZnを含み、体積基準による粒度分布の積算値が50%に相当する粒径であるD50が1μm以上4μm以下、残留磁化σrが120emu/g以上、角形比Hkが13000Oe以上であることを特徴とする。前記希土類磁性粉末は、たとえば前述した本実施形態の希土類磁性粉末の製造方法により作製することができる。ここで、SmFeN系の希土類磁性粉末は、異方性であっても良い。
Sm、Fe、および、Nを含むSmFeN系の希土類磁性粉末については、前述した通りである。Sm、Fe、および、N以外に、前述したようにLa、WおよびR(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)を含むことが好ましい。
Znの含有量は、6質量%以上10質量%以下とすることができるが、8質量%以上10質量%以下が好ましい。6質量%未満では、SmFeN磁性粉末を被覆するZn量が少なくなるため保磁力や角形比の向上が小さくなり、10質量%を超えると、被覆するZnが過剰になるため磁化が低下する傾向がある。
SmFeN系の希土類磁性粉末の平均粒子径は、2.5μm以上5μm以下が好ましく、2.6μm以上4.5μm以下がより好ましい。2.5μm未満では、表面積が大きいので酸化が起こりやすく、5μmを超えると、SmFeN系磁性粉末が多磁区構造になることで、磁気特性が低下する傾向がある。
SmFeN系の希土類磁性粉末の粒径D10は、0.5μm以上3μm以下が好ましく、1μm以上2μm以下がより好ましい。0.5μm未満では、ボンド磁石として使用する場合、ボンド磁石中のSmFeN系磁性粉末の充填量が小さくなるため磁化が低下し、一方で3μmを超えると、ボンド磁石の保磁力が低下する傾向がある。ここで、D10とは、SmFeN系磁性粉末の体積基準による粒度分布の積算値が10%に相当する粒径である。
SmFeN系の希土類磁性粉末の粒径D50は、1μm以上4μm以下であるが、1.5μm以上3.5μm以下が好ましく、2μm以上3.5μm以下がより好ましい。1μm未満では、表面積が大きいので酸化が起こりやすく、4μmを超えると、SmFeN系磁性粉末が多磁区構造になることで、磁気特性が低下する。ここで、粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて乾式条件で測定し、SmFeN系磁性粉末の体積基準による粒度分布の積算値が50%に相当する粒径をD50とする。
SmFeN系の希土類磁性粉末の粒径D90は、3μm以上7μm以下が好ましく、4.5μm以上6.5μm以下がより好ましい。3μm未満では、ボンド磁石として使用する場合、ボンド磁石中のSmFeN系磁性粉末の充填量が小さくなるため磁化が低下し、7μmを超えると、ボンド磁石の保磁力が低下する傾向がある。ここで、D90とは、SmFeN系磁性粉末の体積基準による粒度分布の積算値が90%に相当する粒径である。
平均粒子径、D10、D50、D90は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて乾式条件で測定した値である。
SmFeN系の希土類磁性粉末の下記式
スパン=(D90-D10)/D50
(ここで、D10、D50、D90は、体積基準による粒度分布の積算値がそれぞれ10%、50%、90%に相当する粒子径である。)
で定義されるスパンは、1.6以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましい。1.6を超えると、大きな粒子が存在しており、磁気特性が低下する傾向がある。
SmFeN系の希土類磁性粉末の円形度の平均値は、0.50以上が好ましく、0.70以上がより好ましく、0.75以上が特に好ましい。円形度が0.50を下回った場合、流動性が悪くなることで、磁場成形時に粒子間で応力がかかるため磁気特性が低下する。円形度の測定には、走査電子顕微鏡(SEM)を用い、住友金属テクノロジーの粒子解析Ver.3を画像解析ソフトとして用いる。3000倍で撮影したSEM画像を画像処理で二値化し、粒子1個に対して、円形度を求める。本開示で規定する円形度とは、1000個~10000個程度の粒子を計測して求めた円形度の平均値を意味する。一般的に粒子径が小さい粒子が多くなるほど円形度は高くなるため、1μm以上の粒子について円形度の測定を行った。円形度の測定においては定義式:円形度=(4πS/L)を用いる。但し、Sは、粒子の二次元投影面積、Lは二次元投影周囲長である。
残留磁化σrは120emu/g以上であるが、125emu/g以上が好ましい。
角形比Hkは13000Oe以上であるが、15000Oe以上が好ましい。ここで、角形比Hkは、減磁曲線において残留磁束密度の90%に対応する磁場である。
保磁力iHcは25000Oe以上が好ましく、28000Oe以上がより好ましい。
本実施形態の希土類磁性粉末は、Sm、FeおよびNを含む主相と、前記主相を覆う被覆層と、を有し、前記被覆層において、Znが前記主相の側に偏在しており、前記被覆層は、Znを含むZn含有領域と、前記Zn含有領域よりも外側に位置しておりPを含むP含有領域とを有することが好ましい。
このような特異な形態の希土類磁性粉末は、たとえば前述した本実施形態の希土類磁性粉末の製造方法により作製することができる。SmFeN系磁性粉末として、リン酸処理したものを使用した場合、Znを含む改質材粉末と混合、熱処理すると、SmFeN系磁性粉末の被覆層として、リン酸処理により形成されたP含有領域と、Znを含むZn含有領域が形成されるが、リン酸処理により形成されたP含有領域は、Znを含むZn含有領域よりも外側に位置するという特異な構造を有する。改質材に含まれるZnは、熱処理によってP含有領域を貫通して、SmFeN系磁性粉末中のFeと反応し、Fe-Zn合金層が形成されると考えられる。
Zn含有領域の厚さは、特に限定されないが、1nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上50nm以下がより好ましい。P含有領域の厚さは、特に限定されないが、1nm以上50nm以下が好ましく、5nm以上30nm以下がより好ましい。
本実施形態におけるSmFeN系磁性粉末は、典型的には下記一般式
SmFe(100-v―w-x-y-z)La
(式中、3≦v≦30、3≦w≦15、0≦x≦0.5、0≦y≦2.5、0≦z≦0.3である。)
で表される。
一般式において、vを3以上30以下と規定するのは、3未満では鉄成分の未反応部分(α-Fe相)が分離してSmFeN系磁性粉末の保磁力が低下し、実用的な磁石ではなくなり、30を超えると、Smの元素が析出し、SmFeN系磁性粉末が大気中で不安定になり、残留磁束密度が低下する。また、wを3以上15以下と規定するのは、3未満では、ほとんど保磁力が発現できず、15を超えるとSmや、鉄自体の窒化物が生成するからである。xは0以上0.5以下であるが、0.05以上0.5以下が好ましい。0.05未満では添加の効果が十分ではなく、0.5を超えるとSmや、鉄自体の窒化物が生成し、磁化が大きく低下する。yは0以上2.5以下であるが、0.05以上2.5以下が好ましい。0.05未満では添加の効果が十分ではなく、2.5を超えるとSmや、鉄自体の窒化物が生成し、磁化が大きく低下する。zは0以上0.3以下であるが、0.0001以上0.3以下が好ましい。0.0001未満では添加の効果が十分ではなく、0.3を超えるとSmや、鉄自体の窒化物が生成し、磁化が大きく低下する。
Laの含有量は、残留磁束密度の点から、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.15質量%以上1質量%以下がより好ましい。
Wの含有量は、保磁力の点から、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.15質量%以上1質量%以下がより好ましい。
Rの含有量は、温度特性の点から、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
Nの含有量は、3.3質量%以上3.5質量%以下が好ましい。3.5質量%を超えると、過窒化となり、3.3質量%未満では、窒化不十分となり、ともに磁気特性が低下する傾向がある。
本実施形態の希土類磁性粉末は、高い残留磁化と角形比Hkを有するため、例えば、焼結磁石やボンド磁石として使用することができる。なかでも、希土類磁性粉末の残留磁化σr、保磁力iHcおよび角形比Hkが高く、Znがバインダとして機能し、金属バインダを別途配合する必要がないので、焼結磁石により適している。
ボンド磁石は、本実施形態の希土類磁性粉末と、樹脂とにより作製される。前記希土類磁性粉末を含むことで、高い磁気特性を発現する。
ボンド磁石に含まれる樹脂は、熱硬化性樹脂であっても、熱可塑性樹脂であってもよいが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等を挙げることができる。ボンド磁石に使用する希土類磁性粉末と樹脂の質量比(樹脂/希土類磁性粉末)は、0.10~0.15であることが好ましく、0.11~0.14であることがより好ましい。
希土類磁性粉末と樹脂を、例えば混練機を用いて、280~330℃で混合する。得られた組成物を熱処理しながら配向磁場で磁化容易磁区を揃える工程(配向工程)、次いで着磁磁場でパルス着磁する工程(着磁工程)により、ボンド磁石を得ることができる。
配向工程における熱処理温度は、例えば90~200℃が好ましく、100~150℃がより好ましい。配向工程における配向磁場の大きさは、例えば720kA/mとすることができる。また、着磁工程における着磁磁場の大きさは、例えば1500~2500kA/mとすることができる。
焼結磁石は、例えば特開2017-055072号公報に示されるように、SmFeN系磁性粉末を酸素濃度が0.5体積ppm以下の雰囲気中、300℃より高く600℃未満の温度、および1000MPa以上1500MPa以下の圧力下で焼結することにより作製される。
焼結磁石は、例えば国際公開2015/199096号公報に示されるように、SmFeN系磁性粉末を6kOe以上の磁場中で予備圧縮した後、600℃以下の温度、1~5GPaの成形面圧で温間圧密成形することにより作製される。
焼結磁石は、例えば特開2016-082175号公報に示されるように、1~5GPaの成形面圧で冷間圧密成形した後、350~600℃の温度で、1~120分加熱することにより作製される。なお、該公報では、SmFeN系磁性粉末と金属バインダを含む混合物を使用しているが、本実施形態の希土類磁性粉末は、Znを含むため、金属バインダを使用することなく、前述の条件で焼結磁石を作製することができる。
以下、実施例について説明する。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
[評価]
SmFeN系磁性粉末の各金属の含有量、平均粒子径、粒度分布、窒素含有量、酸素含有量、残留磁化σrは、以下の方法で評価した。
<各金属の含有量>
SmFeN系の希土類磁性粉末のZnの含有量は、塩酸溶解してICP-AES法(装置名:Optima8300)により測定した。
<平均粒子径および粒度分布>
SmFeN系磁性粉末の平均粒子径および粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日本レーザー株式会社のHELOS&RODOS)により測定した。
<残留磁化σr、保磁力iHcおよび角形比Hk>
得られたSmFeN系の希土類磁性粉末を、パラフィンワックスと共に試料容器に詰め、ドライヤーにてパラフィンワックスを溶融させた後、16kA/mの配向磁場にてその磁化容易磁区を揃えた。この磁場配向した試料を32kA/mの着磁磁場でパルス着磁し、最大磁場16kA/mのVSM(振動試料型磁力計)を用いて、残留磁化σr、保磁力iHc、角形比Hkを測定した。ここで、角形比Hkは、減磁曲線において残留磁束密度の90%に対応する磁場である。
<STEM-EDXマッピング>
実施例10で作製した希土類磁性粉末を、エポキシ樹脂に分散させて固化した後、クロスセクションポリッシャにて断面出しを行って測定用断面サンプルを得た。得られたサンプルについて、走査透過型電子顕微鏡(STEM;JEOL社製)/エネルギー分散型X線分析装置(EDX;JEOL社製)にてSTEM像(加速電圧200kV)を測定した。
製造例1
[沈殿工程]
純水2.0kgにFeSO・7HO 5.0kgを混合溶解した。さらにSm 0.49kg、La 0.035kg、酸化チタン0.006kg、70%硫酸0.74kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLaTi硫酸溶液とした。
温度が40℃に保たれた純水20kg中に、調製したSmFeLaTi硫酸溶液全量を反応開始から70分間で攪拌しながら滴下し、同時に15質量%アンモニア液と13質量%のタングステン酸アンモニウム溶液0.190kgを滴下させ、pHを7~8に調整した。これにより、SmFeLaWTi水酸化物を含むスラリーを得た。デカンテーションにより純水で洗浄した後、水酸化物を固液分離した。分離した水酸化物を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。
[酸化工程]
沈殿工程で得られた水酸化物を大気中1000℃で1時間、焼成処理した。冷却後、原料粉末として赤色のSmFeLaWTi酸化物を得た。
[前処理工程]
SmFeLaWTi酸化物100gを、嵩厚10mmとなるように鋼製容器に入れた。容器を炉内に入れ、100Paまで減圧した後、水素ガスを導入しながら、前処理温度の850℃まで昇温し、そのまま15時間保持した。非分散赤外吸収法(ND-IR)(株式会社堀場製作所製のEMGA-820)により酸素濃度を測定したところ、5質量%であった。これにより、Smと結合している酸素は還元されず、Feと結合している酸素のうち、95%が還元される黒色の部分酸化物を得たことがわかった。
[還元工程]
前処理工程で得られた部分酸化物60gと平均粒子径約6mmの金属カルシウム19.2gとを混合して炉内に入れた。炉内を真空排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入した。1060℃まで上昇させて、45分間保持することにより、SmFeLaWTi合金粒子を得た。
[窒化工程]
引き続き、炉内温度を100℃まで冷却した後、真空排気を行い、窒素ガスを導入しながら、第一温度の430℃まで上昇させて、3時間保持した。続いて第二温度の520℃まで上昇させて1時間保持した後、冷却して磁性粒子を含む塊状生成物を得た。
[後処理工程]
窒化工程で得られた塊状生成物を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを10回繰り返した。次いで99.9%酢酸2.5gを投入して15分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。固液分離した後、80℃で真空乾燥を3時間行い、粉末を得た。
[酸処理工程]
後処理工程で得られた粉末100質量部に対して、塩化水素として4.3質量部となるように、6%塩酸水溶液を添加して、1分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。固液分離した後、80℃で真空乾燥を3時間行い、酸処理した粉末を得た。
[混合前の分散工程]
振動ミルに用いる容器の容積に対して、酸処理工程で酸処理した粉末が5体積%、メディア(鉄芯ナイロンメディア、直径10mm、被覆部ナイロンのビッカース定数7、比重7.48、ナイロン層厚み1~3mm程度)が60体積%となるように酸処理した粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、30分間分散し、SmFeN系の異方性磁性粉末を得た。得られたSmFeN系の異方性磁性粉末のSm、Fe、La、W、Ti、Nの含有量は、それぞれ22.3質量%、71.5質量%、0.48質量%、0.64質量%、0.13質量%、3.3質量%であった。
製造例2
混合前の分散工程を行わない以外は製造例1と同様にして、製造例2のSmFeN系の異方性磁性粉末を得た。
製造例3(リン酸処理した磁性粉末)
混合前の分散工程までは製造例1と同様に製造した後、表面処理工程を行い、製造例3のSmFeN系の異方性磁性粉末を得た。
[表面処理工程]
混合前の分散工程で得られた磁性粉末を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返してスラリーを得た。得られたスラリーに対して、リン酸溶液を、磁性粒子固形分に対してPOとして1wt%分投入した。5分攪拌後、固液分離した後190℃で真空乾燥を3時間行い、リン酸処理した製造例3のSmFeN系の異方性磁性粉末を得た。
実施例1~11
[混合工程と熱処理工程]
製造例1~3で作製した磁性粉末184gと金属亜鉛粉末16gを使用し、振動ミルにより混合し混合粉末を得た。得られた混合粉末を、竪型炉を用い表1に示した熱処理条件のもと熱処理した。なお、使用した金属亜鉛粉末のD50は0.5μmであり、金属亜鉛粉末の純度は99.9質量%であった。
なお、実施例3~6および11では、2段階で熱処理した。
[分散工程]
振動ミルに用いる容器の容積に対して、熱処理したSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(鉄芯ナイロンメディア、直径10mm、被覆部ナイロンのビッカース定数7、比重7.48、ナイロン層厚み1~3mm程度)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、30分間分散し、希土類磁性粉末を得た。
得られた希土類磁性粉末について、上述した方法により、平均粒子径、粒度分布、残留磁化σr、保磁力iHc、角形比Hkを測定した結果と、Zn分析値を表1に示す。また、実施例3、6、9、11で作製した希土類磁性粉末について、走査電子顕微鏡(SU3500、株式会社日立ハイテク 5kV 5000倍)で撮影した。その結果を図2A~図5Bに示す。また、実施例3における混合工程により得られた混合粉末について、走査電子顕微鏡(SU3500、株式会社日立ハイテク 5kV 5000倍)で撮影した。その結果を図1A及び図1Bに示す。
参考例1~3
製造例1~3で作製した磁性粉末をそれぞれ参考例1~3の希土類磁性粉末とした。参考例1~3の希土類磁性粉末について、上述した方法により、残留磁化σr、保磁力iHc、角形比Hkを測定した結果を表2に示す。
参考例4
メディアとしてクロム鋼球(SUJ2、直径 2.3mm、ビッカース定数760、比重7.77)を用いた以外は、実施例11と同様にして、参考例4の希土類磁性粉末を得た。得られた希土類磁性粉末について、上述した方法により、残留磁化σr、保磁力iHc、角形比Hkを測定した結果と、Zn分析値を表3に示す。
Figure 2024028122000001
Figure 2024028122000002
Figure 2024028122000003
図2A~図5Bに示す実施例3、6、9、11で作製した希土類磁性粉末のSEM画像において、10μm以上の大きな粒子が一部、存在していた。これは、磁性粉末を被覆することなく残存したZn粒子である。図2A~図5Bのいずれも、図1A及び図1Bに示す混合粉末のSEM画像と比較して、Zn粒子の数の減少やサイズの縮小が見られた。
図6Aと図6Bに、実施例11で作製した希土類磁性粉末のSTEM-EDXマッピング分析結果の写真を示す。P含有領域がZn含有領域の外側に位置している。Zn含有領域の厚さは約10nmであった。
本開示は以下の形態を含む。
(項1)Sm、FeおよびNを含むSmFeN系磁性粉末と、Znを含む改質材粉末とを混合し、熱処理する工程と、前記熱処理したSmFeN系磁性粉末を、樹脂で被覆された金属または樹脂で被覆されたセラミックスのメディアを用いて分散する工程と、を含む、希土類磁性粉末の製造方法。
(項2)前記分散する工程において、溶媒の非存在下で分散する項1に記載の希土類磁性粉末の製造方法。
(項3)前記メディアの比重が4以上である項1または2に記載の希土類磁性粉末の製造方法。
(項4)前記熱処理する工程において、前記SmFeN系磁性粉末と前記改質材粉末とが混合された混合粉末を第一温度で熱処理した後に、前記第一温度よりも低い第二温度で前記混合粉末を熱処理する項1~3のいずれかに記載の希土類磁性粉末の製造方法。
(項5)前記熱処理する工程において、前記SmFeN系磁性粉末は、さらに、La、WおよびR(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)を含む項1~4のいずれかに記載の希土類磁性粉末の製造方法。
(項6)さらに、Sm、Fe、La、WおよびR(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)を含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、部分酸化物を得る前処理工程、前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程、前記合金粒子を窒化して窒化物を得る工程、および、前記窒化物を洗浄して、前記熱処理する工程において用いるSmFeN系磁性粉末を得る工程を含む項5に記載の希土類磁性粉末の製造方法。
(項7)Sm、Fe、および、Nを含むSmFeN系の希土類磁性粉末であって、前記希土類磁性粉末は、前記希土類磁性粉末の全体に対して6質量%以上10質量%以下のZnを含み、体積基準による粒度分布の積算値が50%に相当する粒径であるD50が1μm以上4μm以下、残留磁化σrが120emu/g以上、角形比Hkが13000Oe以上である希土類磁性粉末。
(項8)角形比Hkが15000Oe以上である項7に記載の希土類磁性粉末。
(項9)さらに、La、WおよびR(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)を含む項7または8に記載の希土類磁性粉末。
(項10)Sm、FeおよびNを含む主相と、前記主相を覆う被覆層と、を有し、前記被覆層において、Znが前記主相の側に偏在しており、前記被覆層は、Znを含むZn含有領域と、前記Zn含有領域よりも外側に位置しておりPを含むP含有領域とを有する項7~9のいずれかに記載の希土類磁性粉末。
1:主相
2:Zn含有領域
3:P含有領域

Claims (10)

  1. Sm、FeおよびNを含むSmFeN系磁性粉末と、Znを含む改質材粉末とを混合し、熱処理する工程と、
    前記熱処理したSmFeN系磁性粉末を、樹脂で被覆された金属または樹脂で被覆されたセラミックスのメディアを用いて分散する工程と、
    を含む、希土類磁性粉末の製造方法。
  2. 前記分散する工程において、溶媒の非存在下で分散する請求項1に記載の希土類磁性粉末の製造方法。
  3. 前記メディアの比重が4以上である請求項1または2に記載の希土類磁性粉末の製造方法。
  4. 前記熱処理する工程において、前記SmFeN系磁性粉末と前記改質材粉末とが混合された混合粉末を第一温度で熱処理した後に、前記第一温度よりも低い第二温度で前記混合粉末を熱処理する請求項1または2に記載の希土類磁性粉末の製造方法。
  5. 前記熱処理する工程において、前記SmFeN系磁性粉末は、さらに、La、WおよびR(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)を含む請求項1または2に記載の希土類磁性粉末の製造方法。
  6. さらに、
    Sm、Fe、La、WおよびR(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)を含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、部分酸化物を得る前処理工程、
    前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程、
    前記合金粒子を窒化して窒化物を得る工程、および、
    前記窒化物を洗浄して、前記熱処理する工程において用いるSmFeN系磁性粉末を得る工程
    を含む請求項5に記載の希土類磁性粉末の製造方法。
  7. Sm、Fe、および、Nを含むSmFeN系の希土類磁性粉末であって、
    前記希土類磁性粉末は、前記希土類磁性粉末の全体に対して6質量%以上10質量%以下のZnを含み、体積基準による粒度分布の積算値が50%に相当する粒径であるD50が1μm以上4μm以下、残留磁化σrが120emu/g以上、角形比Hkが13000Oe以上である希土類磁性粉末。
  8. 角形比Hkが15000Oe以上である請求項7に記載の希土類磁性粉末。
  9. さらに、La、WおよびR(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)を含む請求項7または8に記載の希土類磁性粉末。
  10. Sm、FeおよびNを含む主相と、
    前記主相を覆う被覆層と、を有し、
    前記被覆層において、Znが前記主相の側に偏在しており、
    前記被覆層は、Znを含むZn含有領域と、前記Zn含有領域よりも外側に位置しておりPを含むP含有領域とを有する請求項7または8に記載の希土類磁性粉末。
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