JP2023067693A - 希土類磁石及びその製造方法 - Google Patents

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Hisashi Maehara
雅教 岡南
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Abstract

【課題】従来よりも磁化を一層向上することができる、希土類磁石及びその製造方法を提供する。【解決手段】本開示は、所定の磁性粉末及び改質材粉末を準備すること、前記磁性粉末と前記改質材粉末を混合して、混合粉末を得ること、前記混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得ること、及び前記磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得ること、を含み、前記磁性粉末が、第一粒子群及び第二粒子群を含み、前記第一粒子群の粒度分布D50が、d1μmで表され、かつ、前記第二粒子群の粒度分布D50が、d2μmで表され、前記d1及び前記d2が、0.350≦d2/d1≦0.500の関係を満足し、かつ、前記第一粒子群の総体積と前記第二粒子群の総体積との比が、9:1~4:1の範囲である、希土類磁石の製造方法及びそれで得られる希土類磁石である。【選択図】図6

Description

本開示は、希土類磁石の製造方法に関する。本開示は、特に、Sm、Fe、及びNを含有し、少なくとも一部がThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備える希土類磁石の製造方法に関する。
高性能希土類磁石としては、Sm-Co系希土類磁石及びNd-Fe-B系希土類磁石が実用化されているが、近年、これら以外の希土類磁石が検討されている。
例えば、Sm、Fe、及びNを含有する希土類磁石(以下、「Sm-Fe-N系希土類磁石」ということがある。)が検討されている。Sm-Fe-N系希土類磁石は、例えば、Sm、Fe、及びNを含有する磁性粉末(以下、「SmFeN粉末」ということがある。)を用いて製造される。
SmFeN粉末は、ThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備える。この磁性相は、Sm-Fe結晶にNが侵入型で固溶していると考えられている。そのため、SmFeN粉末は、熱によってNが乖離して分解され易い。このことから、Sm-Fe-N系希土類磁石は、SmFeN粉末を樹脂及び/又はゴム等を用いて成形して製造されることが多い。
それ以外のSm-Fe-N系希土類磁石の製造方法としては、例えば、特許文献1に開示されている製造方法が挙げられる。この製造方法は、SmFeN粉末と金属亜鉛を含有する粉末(以下、「金属亜鉛粉末」ということがある。)を混合し、その混合粉末を磁場中で成形し、その磁場成形体を焼結(液相焼結を含む)する。
また、SmFeN粉末の製造方法は、例えば、特許文献2及び3に開示されている。
国際公開第2015/199096号 特開2017-117937号公報 特開2020-102606号公報
磁場成形体の焼結方法には、大別して、無加圧焼結法と加圧焼結法がある。いずれの焼結法においても、磁場成形体を焼結することによって、高密度の希土類磁石(焼結体)が得られる。無加圧焼結法においては、焼結中の磁場成形体に圧力を付与しないため、高密度の焼結体を得るには、900℃以上の高温で6時間以上の長時間にわたり磁場成形体を焼結することが一般的である。一方、加圧焼結法においては、焼結中の磁場成形体に圧力を付与するため、600~800℃の低温でも0.1~5時間の短時間で磁場成形体を焼結しても、高密度の焼結体を得られることが一般的である。
SmFeN粉末と金属亜鉛粉末の混合粉末の磁場成形体を焼結する場合、SmFeN粉末の熱による分解を避けるため、加圧焼結を採用するが、通常の加圧焼結の焼結温度よりもさらに低温かつ短時間で焼結する。このような低温かつ短時間でも焼結が可能であるのは、焼結時に金属亜鉛粉末中の亜鉛成分が磁性粉末の表面に拡散して、焼結(固化)するためである。このように、磁場成形体中の金属亜鉛粉末は、バインダとしての機能を有する。また、磁場成形体中の金属亜鉛粉末は、SmFeN粉末、特にSmFeN粉末粒子表面のαFe相を改質し、そして、SmFeN粉末中の酸素を吸収して保磁力を向上させる、改質材としての機能も有する。以下、Sm-Fe-N系希土類磁石の製造時に用いられ、バインダとしての機能と、改質材としての機能の両方を有する粉末を、単に、「改質材粉末」ということがある。
磁性粉末を樹脂及び/又はゴム等を用いて成形する場合、及び、磁性粉末と改質材粉末の混合粉末を加圧焼結する場合のいずれも、磁化に寄与しない樹脂、及び改質材の含有割合の分だけ成形体(希土類磁石)の磁化が低下する。一方、磁性粉末を樹脂及び/又はゴム等を用いて成形する場合と比較して、磁性粉末と改質材粉末の混合粉末を加圧焼結する場合には、一般的に、高密度の成形体(希土類磁石)が得られ、その結果、高い磁化を得易い。しかし、磁性粉末がSmFeN粉末である場合、磁性粉末と改質材粉末の混合粉末を加圧焼結しても、改質材の含有割合から予測されるよりも磁化が低下し、所望の磁化が得られないことがあった。
これらのことから、従来よりも磁化を一層向上することができる、Sm-Fe-N系希土類磁石の製造方法が望まれている、という課題を、本発明者らは見出した。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本開示は、従来よりも磁化を一層向上することができる、Sm-Fe-N系希土類磁石の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ね、本開示の希土類磁石の製造方法を完成させた。本開示の希土類磁石の製造方法は、次の態様を含む。
〈1〉Sm、Fe、及びNを含有し、少なくとも一部がThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備える磁性粉末を準備すること、
金属亜鉛及び亜鉛合金の少なくともいずれかを含有する改質材粉末を準備すること、
前記磁性粉末と前記改質材粉末を混合して、混合粉末を得ること、
前記混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得ること、及び
前記磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得ること、
を含み、
前記磁性粉末が、第一粒子群及び第二粒子群を含み、
前記第一粒子群の粒度分布D50が、dμmで表され、かつ、前記第二粒子群の粒度分布D50が、dμmで表され、
前記d及び前記dが、0.350≦d/d≦0.500の関係を満足し、かつ、
前記第一粒子群の総体積と前記第二粒子群の総体積との比(前記第一粒子群の総体積:前記第二粒子群の総体積)が、9:1~4:1の範囲である、
希土類磁石の製造方法。
〈2〉前記dが3.0~3.7μmであり、かつ、前記dが1.4~1.8μmである、〈1〉項に記載の希土類磁石の製造方法。
〈3〉前記改質材粉末のD50が、0.1~12.0μmであり、前記改質材粉末中の亜鉛成分の含有割合が、前記混合粉末に対して1~30質量%である、〈1〉又は〈2〉項に記載の希土類磁石の製造方法。
〈4〉前記混合粉末を、10~1500MPaの圧力で圧縮成形する、〈1〉~〈3〉項のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
〈5〉前記磁場成形体を、100~2000MPaの圧力及び300~430℃の温度で、1~30分にわたり加圧焼結する、〈1〉~〈4〉項のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
〈6〉前記加圧焼結前に、予め、前記第二粒子群の粒子表面に、改質抑制被膜を形成すること、及び、
前記焼結体を熱処理して、前記第一粒子群の粒子表面の改質を進行させること、
をさらに含む、〈1〉~〈5〉項のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
〈7〉前記改質抑制被膜が、リン酸を含有する、〈6〉項に記載の希土類磁石の製造方法。
〈8〉前記焼結体を、350~410℃で熱処理する、〈6〉又は〈7〉項に記載の希土類磁石の製造方法。
〈9〉Sm、Fe、及びNを含有し、少なくとも一部がThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備える磁性粉末、及び
亜鉛成分を含有する、焼結体の希土類磁石であって、
前記磁性粉末が、第一粒子群及び第二粒子群を含み、
前記第一粒子群の粒度分布D50が、dμmで表され、かつ、前記第二粒子群の粒度分布D50が、dμmで表され、
前記d及び前記dが、0.350≦d/d≦0.500の関係を満足し、かつ、 前記第一粒子群の総体積と前記第二粒子群の総体積との比(前記第一粒子群の総体積:前記第二粒子群の総体積)が、9:1~4:1の範囲である、
希土類磁石。
本開示の製造方法によれば、第一粒子群の粒径に対する第二粒子の粒径の比と、第一粒子群の総体積と第二粒子群の総体積との比を、所定の範囲にすることで、焼結体(希土類磁石)の密度を向上することができる。その結果、従来よりも磁化を一層向上可能な、希土類磁石の製造方法を提供することができる。
図1は、本開示の製造方法で得た希土類磁石の組織の一例を示す模式図である。 図2は、従来の製造方法で得た希土類磁石の組織の一例を示す模式図である。 図3は、従来の製造方法で得た希土類磁石の組織の別の例を示す模式図である。 図4は、従来の製造方法で得た希土類磁石の組織のさらに別の例を示す模式図である。 図5は、d/dと密度の関係を示すグラフである。 図6は、d/dと残留磁化Brの関係を示すグラフである。 図7は、実施例1の試料のSEM像を示す。 図8は、比較例3の試料のSEM像を示す。 図9は、比較例6の試料のSEM像を示す。 図10は、高温での、低保磁力粉末の成形体の減磁曲線と、低保磁力粉末と高保磁力粉末の混合粉末の成形体の減磁曲線とを示すグラフである。 図11は、第二粒子群の粒子表面に改質抑制被膜を形成し、加圧焼結及び熱処理して得た希土類磁石の組織の一例を示す模式図である。 図12は、第二粒子群の粒子表面に改質抑制被膜を形成せず、加圧焼結及び熱処理して得た希土類磁石の組織の一例を示す模式図である。
以下、本開示の希土類磁石の製造方法(以下、単に「本開示の製造方法」ということがある。)の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本開示の製造方法を限定するものではない。
理論に拘束されないが、本開示の製造方法によって、従来よりも磁化が一層向上した希土類磁石を得られる理由について、従来の希土類磁石の製造方法(以下、単に「従来の製造方法」ということがある。)と比較しながら、図面を用いて説明する。
図1は、本開示の製造方法で得た希土類磁石の組織の一例を示す模式図である。図2は、従来の製造方法で得た希土類磁石の組織の一例を示す模式図である。図3は、従来の製造方法で得た希土類磁石の組織の別の例を示す模式図である。図4は、従来の製造方法で得た希土類磁石の組織のさらに別の例を示す模式図である。なお、図1~図4中の矢印は、磁気の配向方向を示す。
図1に示したように、本開示の製造方法で得た希土類磁石100は、SmFeN粉末粒子10が改質材20で結合されている。これは、上述したように、改質材20は、バインダとしての機能を有しているからである。そして、SmFeN粉末粒子10の表面は、改質相30で被覆されている。
図1に示したように、本開示の製造方法で得た希土類磁石100においては、SmFeN粉末粒子10は、大粒径を有する第一粒子群11と、小粒径を有する第二粒子群12を含む。第一粒子群11の各粒子の間に、第二粒子群12の各粒子が存在することによって、希土類磁石100の密度を高めることができ、その結果、磁化が向上する。例えば、図2に示したように、従来の製造方法で得た希土類磁石200の一例においては、SmFeN粉末粒子10が、実質的に第一粒子群11のみであるため、希土類磁石200の密度を高めることができず、その結果、磁化が向上しない。
また、図1に示したように、本開示の製造方法で得た希土類磁石100の密度を高めることができるのは、第一粒子群11の粒径に対する第二粒子群12の粒径の比が、所定の範囲である場合である。例えば、図3に示したように、従来の製造方法で得た希土類磁石200の別の例においては、第一粒子群11の粒径に対する第二粒子群12の粒径の比が大き過ぎることから、第一粒子群11の各粒子の間隔は離れてしまう。そのため、従来の製造方法で得た希土類磁石200では、その密度を高めることができず、その結果、磁化が向上しない。
また、本開示の製造方法で得た希土類磁石100の密度を高めるためには、第一粒子群11の粒径に対する第二粒子群12の粒径の比が所定の範囲であるだけでなく、第一粒子群11の総体積と第二粒子群12の総体積との比が所定の範囲である必要がある。これは、第二粒子群12の粒子がある程度以上存在すると、図1に示したように、第一粒子群11の各粒子の間隙が充分に充填される一方で、第二粒子群12の粒子が過剰に存在すると、図4に示したように、第一粒子群11の各粒子の間隙が拡大してしまうためである。そして、その拡大によって、従来の製造方法で得た希土類磁石200の密度を高めることができず、その結果、磁化が向上しない。
また、第一粒子群11のような大粒径のSmFeN粉末粒子と比較して、第二粒子群12のような小粒径のSmFeN粉末粒子は、その粒子残留磁化σrが小さい。これは、粒子表面は結晶構造が劣化しており、大粒径粒子と比較して、小粒径粒子は比表面積が大きいことから、第二粒子群12のような小粒径粒子は、その粒子残留磁化σrが劣化し易いためである。このような第二粒子群12が過剰に存在すると、希土類磁石全体の磁化の低下につながる。
これらのことから、本開示の製造方法では、第二粒子群12の粒子が過剰に存在することを回避して、磁化の低下を回避する。
理論に拘束されないが、上述したように、第一粒子群11及び第二粒子群12それぞれの粒子について、粒径の比と総体積の比の両方が、所定の範囲である必要があるのは、次のことに起因すると考えられる。Nd-Fe-B系希土類磁石の製造に用いる磁性粉末等と比較して、SmFeN粉末粒子の摩擦係数が非常に大きい。そのため、SmFeN粉末を成形するときに、その流動性が良好でなく、成形体(希土類磁石)の充填率を高め難いことに起因すると考えられる。なお、密度が高くなると、磁化が高まることは、残留磁化は、次式で表せることから理解できる。
残留磁化=飽和磁化×配向度×(密度/真密度)×磁性相率
これまで述べてきた知見等によって完成された、本開示の製造方法の構成要件を、次に説明する。
《製造方法》
本開示の製造方法は、磁性粉末準備工程、改質材粉末準備工程、混合工程、磁場成形工程、及び加圧焼結工程を含む。また、任意で、改質抑制被膜形成工程及び熱処理工程を含む。以下、各工程について説明する。
〈磁性粉末準備工程〉
磁性粉末(SmFeN粉末)を準備する。本開示の製造方法に用いる磁性粉末(SmFeN粉末)は、Sm、Fe、及びNを含有し、少なくとも一部がThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備えていれば、特に制限はない。磁性相の結晶構造としては、前述の構造のほかに、TbCu型の結晶構造を有する相等が挙げられる。なお、Smはサマリウム、Feは鉄、そして、Nは窒素である。また、Thはトリウム、Znは亜鉛、Niはニッケル、Tbはテルビウム、そして、Cuは銅である。
SmFeN粉末中には、例えば、組成式(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相を含有してもよい。本開示の製造方法で得られる希土類磁石(以下、「成果物」ということがある。)は、SmFeN粉末中の磁性相に由来して、磁化を発現する。なお、i、j、及びhは、モル比である。
SmFeN粉末中の磁性相には、本開示の製造方法の効果及び成果物の磁気特性を阻害しない範囲で、Rを含有していてもよい。このような範囲は、上記組成式のiで表される。iは、例えば、0以上、0.10以上、又は0.20以上であってよく、0.50以下、0.40以下、又は0.30以下であってよい。Rは、Sm以外の希土類元素及びZrから選ばれる1種以上である。本明細書で、希土類元素とは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuである。なお、Zrはジルコニウム、Scはスカンジウム、Yはイットリウム、Laはランタン、Ceはセリウム、Prはプラセオジム、Ndはネオジム、Pmはプロメチウム、Smはサマリウム、Euはユウロピウム、Gdはガドリニウム、Tbはテルビウム、Dyはジスプロシウム、Hoはホルミウム、Erはエルビウム、Tmはツリウム、Ybはイッテルビウム、そして、Luはルテチウムである。
(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17については、典型的には、Sm(Fe(1-j)Co17のSmの位置にRが置換しているが、これに限られない。例えば、Sm(Fe(1-j)Co17に、侵入型でRの一部が配置されていてもよい。
SmFeN粉末中の磁性相には、本開示の製造方法の効果及び成果物の磁気特性を阻害しない範囲で、Coを含有してもよい。このような範囲は、上記組成式で、jで表される。jは、0以上、0.10以上、又は0.20以上であってよく、0.52以下、0.40以下、又は0.30以下であってよい。
(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17については、典型的には、(Sm(1-i)Fe17のFeの位置にCoが置換しているが、これに限られない。例えば、(Sm(1-i)Fe17に、侵入型でCoの一部が配置されていてもよい。
SmFeN粉末中の磁性相は、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される結晶粒に、Nが侵入型で存在することによって、磁気特性の発現及び向上に寄与する。
(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17については、hは1.5~4.5をとり得るが、典型的には、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17である。hは、1.8以上、2.0以上、又は2.5以上であってもよく、4.2以下、4.0以下、又は3.5以下であってもよい。(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17全体に対する(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%がより一層好ましい。一方、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17のすべてが(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17でなくてもよい。(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17全体に対する(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17の含有量は、98質量%以下、95質量%以下、又は92質量%以下であってよい。
SmFeN粉末は、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相の他に、本開示の製造方法の効果及び成果物の磁気特性を実質的に阻害しない範囲で、酸素及びM並びに不可避的不純物元素を含有してもよい。成果物の磁気特性を確保する観点からは、SmFeN粉末全体に対する、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相の含有量は、80質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上であってよい。一方、SmFeN粉末全体に対して、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相の含有量を過度に高くしなくとも、実用上問題はない。したがって、その含有量は、97質量%以下、95質量%以下、又は93質量%以下であってよい。(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相の残部が、酸素及びMの含有量となる。また、酸素及びMの一部は、侵入型及び/又は置換型で、磁性相に存在していてもよい。
上述のMとしては、Ga、Ti、Cr、Zn、Mn、V、Mo、W、Si、Re、Cu、Al、Ca、B、Ni、及びCから選ばれる1種以上が挙げられる。不可避的不純物元素とは、原材料及び/又は磁性粉末を製造等するに際し、その含有を回避することができない、あるいは、回避するためには著しい製造コストの上昇を招くような不純物元素のことをいう。これらの元素は、置換型及び/又は侵入型で上述した磁性相に存在していてもよいし、上述した磁性相以外の相に存在していてもよい。あるいは、これらの相の粒界に存在していてもよい。なお、Gaはガリウム、Tiはチタン、Crはクロム、Znは亜鉛、Mnはマンガン、Vはバナジウム、Moはモリブデン、Wはタングステン、Siはシリコン、Reはレニウム、Cuは銅、Alはアルミニウム、Caはカルシウム、Bはホウ素、Niはニッケル、そして、Cは炭素である。
SmFeN粉末は、第一粒子群及び第二粒子群を含む。第一粒子群の粒子は大粒径を有しており、第二粒子群の粒子は小粒径を有している。第一粒子群及び第二粒子群それぞれの粒子の粒径は、粒度分布D50で代表することができる。第一粒子群の粒度分布D50はdμmで表され、第二粒子群の粒度分布D50はdμmで表される。そして、d及びdが、0.350≦d/d≦0.500の関係を満足する。前述の関係を満足することからd<dであること、すなわち、第一粒子群が大粒径を有しており、第二粒子群が小粒径を有していることは明らかである。
/dが、0.350以上、0.360以上、0.370以上、又は0.378以上、かつ、0.500以下、0.490以下、0.486以下、0.480以下、0.470以下、又は0.467以下であれば、第一粒子群の粒子間に、第二粒子群の粒子が有利に存在して、成形体(希土類磁石)の密度が高まり、その結果、磁化が向上する。
上述の関係を満足する限り、第一粒子群及び第二粒子群それぞれの粒子の粒径は、特に制限はないが、上述の関係を満足し易くするためには、d及びdそれぞれが、単独で、次の範囲であることが好ましい。dは、3.0μm以上、3.2μm以上、又は3.4μm以上であることが好ましく、3.7μm以下、3.6μm以下、又は3.5μm以下であってよい。dは、1.4μm以上又は1.5μm以上が好ましく、1.8μm以下、1.7μm以下、又は1.6μm以下が好ましい。
また、第一粒子群の総体積と第二粒子群の総体積との比、すなわち、(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)は、9:1~4:1の範囲である必要がある。(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)が9:1であるとは、例えば、SmFeN粉末の総体積に対して、第一粒子群の総体積が90%であり、第二粒子群の総体積が10%であることを意味する。また、(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)が4:1であるとは、例えば、SmFeN粉末の総体積に対して、第一粒子群の総体積が80%であり、第二粒子群の総体積が20%であることを意味する。
(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)が9:1であるか、第二粒子群の総体積がそれより多ければ、第一粒子群の各粒子の間に、第二粒子群の各粒子が有利に存在して、希土類磁石の密度が高まり、その結果、磁化が向上する。この観点からは、(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)は、8.8:1.2以上又は8.6:1.4以上であることが好ましい。
第二粒子群の粒子が過剰に存在すると、第一粒子群の各粒子の間隙が、反って拡大する。これを回避するためには、(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)が4:1であるか、第二粒子群の総体積がそれより少ない必要がある。また、第二粒子群のような小粒径のSmFeN粉末粒子は、その粒子の粒子残留磁化σrが小さいため、第二粒子群が過剰に存在すると、希土類磁石全体の磁化の低下につながる。このようなことから、第一粒子群の各粒子の間隔が拡大することを回避して、希土類磁石の密度の低下を抑制し、σrが小さい第二粒子群の数を少なくすることによって、希土類磁石の磁化が向上する。これらの観点からは、(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)は、8.2:1.8以下又は8.4:1.6以下であることが好ましい。
第一粒子群及び第二粒子群を含む磁性粉末は、典型的には、後述する製造方法で得られたSmFeN粉末を、第一粒子群及び第二粒子群に分級した後、再度、混合する。分級及び混合方法に、特に制限はなく、周知の方法を用いてよい。分級方法としては、例えば、篩分級及び風力分級等が挙げられ、これらを組み合わせてもよい。混合方法としては、例えば、アジテータ式ミキサー及びV型混合器等を用いて混合する方法が挙げられ、これらを組み合わせてもよい。
SmFeN粉末のD50は、SmFeN粉末の粒度分布から算出されるが、SmFeN粉末の粒度分布は、次のような方法で測定(調査)される。本明細書において、特に断りのない限り、SmFeN粉末の粒子の大きさ(粒径)に関する記載は、次の測定方法(調査方法)に基づくものとする。なお、D50は、メジアン径を意味する。
SmFeN粉末を樹脂埋めした試料を準備し、その試料の表面を研磨して、光学顕微鏡で観察する。そして、光学顕微鏡像に直線を引き、直線がSmFeN粒子(明視野)で区切られる線分の長さを測定し、線分の長さの度数分布から、SmFeN粉末の粒度分布を求めた。この方法で求めた粒度分布は、交線法又は乾式レーザ回折・散乱法で求めた粒度分布にほぼ等しい。
SmFeN粉末には、製造上の都合等から、微粉粒子が存在するが、d及びdが上述の関係を満足する限り、SmFeN粉末中の1.0μm以下の粒径を有する磁性粒子(微粉粒子)の割合に、特に制限はない。SmFeN粉末中の1.0μm以下の粒径を有する磁性粒子(微粉粒子)の割合は、成形体(希土類磁石)の機械的強度を確保する観点から可能な限り低い方が好ましい。SmFeN粉末中の全磁性粒子数に対して、微粉粒子の割合は、10.0%以下、8.0%以下、6.0%以下、又は4.0%以下が好ましい。SmFeN粉末の製造上の都合の観点等から、微粉粒子は皆無でなくてもよく、微粉粒子の割合の下限が、1.0%、2.0%、又は3.0%であっても、実用上問題ない。
本開示の製造方法では、SmFeN粉末に、後述する改質材粉末を混合する。SmFeN粉末中の酸素は、改質材粉末中の金属亜鉛又は亜鉛合金粉末に吸収されることで、成形体の磁気特性、特に保磁力を向上させることができる。SmFeN粉末中の酸素の含有量は、製造工程中で、改質材粉末が、SmFeN粉末中の酸素を吸収する量を考慮して決定すればよい。SmFeN粉末の酸素含有量は、SmFeN粉末全体に対して、低い方が好ましい。SmFeN粉末の酸素含有量は、SmFeN粉末全体に対して、2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がより一層好ましい。一方、SmFeN粉末中の酸素の含有量を極度に低減することは、製造コストの増大を招く。このことから、SmFeN粉末の酸素の含有量は、SmFeN粉末全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってよい。
SmFeN粉末は、これまで説明してきたことを満足すれば、その製造方法に特に制限はなく、市販品を用いてもよい。SmFeN粉末の製造方法としては、例えば、サマリウム酸化物及び鉄粉から還元拡散法でSm-Fe粉末を製造し、窒素と水素の混合ガス、窒素ガス、及びアンモニアガス等の雰囲気中で600℃以下の加熱処理をして、Sm-Fe-N粉末を得る方法等が挙げられる。あるいは、例えば、溶解法でSm-Fe合金を製造し、その合金を粗粉砕して得た粗粉砕粒を窒化し、それを所望の粒径になるまで、さらに粉砕する方法等が挙げられる。粉砕には、例えば、乾式ジェットミル、乾式ボールミル、湿式ボールミル、又は湿式ビーズミル等を用いることができる。これらを組み合わせて用いてもよい。
SmFeN粉末は、前述の製造方法の他に、例えば、SmとFeを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、部分酸化物を得る前処理工程、前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る還元工程、及び、前記合金粒子を窒素又はアンモニア含有雰囲気下、400℃以上470℃以下の第一温度で熱処理した後、480℃以上610℃以下の第二温度で熱処理して窒化物を得る窒化工程を含む製造方法により得られる。特に粒子径の大きい合金粒子、例えばLaを含む合金粒子では、窒化が酸化物粒子の内部にまで充分に進行しないことがあるが、二段階の温度で窒化すると、酸化物粒子の内部も充分に窒化され、粒度分布が狭く、高残留磁化の異方性のSmFeN粉末を得ることができる。
[酸化物準備工程]
後述の前処理工程で使用するSmとFeを含む酸化物は、例えば、Sm酸化物とFe酸化物を混合することにより作製してもよいが、SmとFeを含む溶液と沈殿剤を混合し、SmとFeとを含む沈殿物を得る工程(沈殿工程)、及び、前記沈殿物を焼成することにより、SmとFeを含む酸化物を得る工程(酸化工程)によって、製造することが好ましい。
[沈殿工程]
沈殿工程では、強酸性の溶液にSm原料、Fe原料を溶解して、SmとFeを含む溶液を調製する。SmFe17を主相として得る場合、SmおよびFeのモル比(Sm:Fe)は1.5:17~3.0:17が好ましく、2.0:17~2.5:17がより好ましい。La、W、Co、Ti、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及び/又はLu等の原料を上述した溶液に加えても良い。残留磁束密度の点で、Laを含むことが好ましい。保磁力と角形比の点で、Wを含むことが好ましい。温度特性の点で、Co及び/又はTiを含むことが好ましい。
Sm原料、Fe原料としては、強酸性の溶液に溶解できるものであれば限定されない。例えば、入手のし易さの点で、Sm原料としては酸化サマリウムが、Fe原料としてはFeSOが挙げられる。SmとFeを含む溶液の濃度は、Sm原料とFe原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整することができる。酸性溶液としては溶解性の点で硫酸などが挙げられる。
SmとFeを含む溶液と沈殿剤を反応させることにより、SmとFeを含む不溶性の沈殿物を得る。ここで、SmとFeを含む溶液は、沈殿剤との反応時にSmとFeを含む溶液となっていればよく、たとえばSmとFeを含む原料を別々の溶液として調製し、各々の溶液を滴下して沈殿剤と反応させても良い。別々の溶液として調製する場合においても各原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整する。沈殿剤としては、アルカリ性の溶液でSmとFeを含む溶液と反応して沈殿物が得られるものであれば限定されず、アンモニア水、苛性ソーダなどが挙げられ、苛性ソーダが好ましい。
沈殿反応は、沈殿物の粒子の性状を容易に調整できる点から、SmとFeを含む溶液と、沈殿剤を、それぞれ水などの溶媒に滴下する方法が好ましい。SmとFeを含む溶液と沈殿剤との供給速度、反応温度、反応液濃度、反応時のpH等を適宜制御することにより、構成元素の分布が均質で、粒度分布が狭く、粉末形状の整った沈殿物が得られる。このような沈殿物を使用することによって、最終製品であるSmFeN粉末の磁気特性が向上する。反応温度は、0℃以上50℃以下とすることができ、35℃以上45℃以下が好ましい。反応液濃度は、金属イオンの総濃度として0.65mol/L以上0.85mol/L以下が好ましく、0.7mol/L以上0.85mol/L以下がより好ましい。反応pHは、5以上9以下が好ましく、6.5以上8以下がより好ましい。
SmとFeを含む溶液は、磁気特性の点で、さらにLa、W、Co、及びTiからなる群から選ばれる1種以上の金属を含むことが好ましい。例えば、残留磁束密度の点で、Laを含むことが好ましく、保磁力と角形比の点で、Wを含むことが好ましく、温度特性の点で、Co及び/又はTiを含むことが好ましい。La原料としては、強酸性の溶液に溶解できるものであれば限定されず、例えば、入手のしやすさの点で、La、LaClなどが挙げられる。Sm原料とFe原料とともに、La原料、W原料、Co原料、Ti原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整し、酸性溶液としては溶解性の点で硫酸が挙げられる。W原料としては、タングステン酸アンモニウムが挙げられ、Co原料としては、硫酸コバルトが挙げられ、チタン原料としては硫酸チタニアが挙げられる。
SmとFeを含む溶液が、さらにLa、W、Co、及びTiからなる群から選ばれる1種以上の金属を含む場合、Sm、Feと、La、W、Co、及びTiからなる群から選ばれる1種以上を含む不溶性の沈殿物を得る。ここで、該溶液は、沈殿剤との反応時にLa、W、Co、及びTiからなる群から選ばれる1種以上を含んでいればよく、例えば各原料を別々の溶液として調製し、各々の溶液を滴下して沈殿剤と反応させてもよいし、SmとFeを含む溶液と一緒に調整してもよい。
沈殿工程で得られた粉末により、最終的に得られるSmFeN粉末の粉末粒子径、粉末形状、粒度分布がおよそ決定される。得られた粉末の粒子径をレーザ回折式湿式粒度分布計により測定した場合、全粉末が0.05μm以上20μm以下、好ましくは0.1μm以上10μm以下の範囲にほぼ入るような大きさと分布であることが好ましい。
沈殿物を分離した後は、続く酸化工程の熱処理において残存する溶媒に沈殿物が再溶解して、溶媒が蒸発する際に沈殿物が凝集したり、粒度分布、粉末粒子径等が変化したりすることを抑制するために、分離物を脱溶媒しておくことが好ましい。脱溶媒する方法として具体的には、例えば溶媒として水を使用する場合、70℃以上200℃以下のオーブン中で5時間以上12時間以下の時間、乾燥する方法が挙げられる。
沈殿工程の後に、得られる沈殿物を分離洗浄する工程を含んでもよい。洗浄する工程は上澄み溶液の導電率が5mS/m以下となるまで適宜行う。沈殿物を分離する工程としては、例えば、得られた沈殿物に溶媒(好ましくは水)を加えて混合した後、濾過法、デカンテーション法等を用いることができる。
[酸化工程]
酸化工程とは、沈殿工程で形成された沈殿物を焼成することにより、SmとFeとを含む酸化物を得る工程である。例えば、熱処理により沈殿物を酸化物に変換することができる。沈殿物を熱処理する場合、酸素の存在下で行われる必要があり、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。また、酸素の存在下で行われる必要があるため、沈殿物中の非金属部分に酸素原子を含むことが好ましい。
酸化工程における熱処理温度(以下、「酸化温度」ということがある。)は特に限定されないが、700℃以上1300℃以下が好ましく、900℃以上1200℃以下がより好ましい。700℃未満では酸化が不十分となり、1300℃を超えると、目的とするSmFeN粉末の形状、平均粒子径および粒度分布が得られない傾向にある。熱処理時間も特に限定されないが、1時間以上3時間以下が好ましい。
得られる酸化物は、酸化物粒子内においてSm及びFeの微視的な混合が充分になされ、沈殿物の形状、粒度分布等が反映された酸化物粒子である。
[前処理工程]
前処理工程とは、上述のSmとFeを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、酸化物の一部が還元された部分酸化物を得る工程である。
ここで、部分酸化物とは、酸化物の一部が還元された酸化物をいう。部分酸化物の酸素濃度は特に限定されないが、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。10質量%を超えると、還元工程においてCaとの還元発熱が大きくなり、焼成温度が高くなることで異常な粒子成長をした粒子ができてしまう傾向がある。ここで、部分酸化物の酸素濃度は、非分散赤外吸収法(ND-IR)により測定することができる。
還元性ガスは、水素(H)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)等の炭化水素ガスなどから適宜選択されるが、コストの点で水素ガスが好ましく、ガスの流量は、酸化物が飛散しない範囲で適宜調整される。前処理工程における熱処理温度(以下、前処理温度)は、300℃以上950℃以下が好ましく、下限は400℃以上がより好ましく、750℃以上がさらに好ましい。上限は900℃未満がより好ましい。前処理温度が300℃以上であるとSmとFeを含む酸化物の還元が効率的に進行する。また950℃以下であると酸化物粒子が粒子成長、偏析することが抑制され、所望の粒子径を維持することができる。熱処理時間は、特に限定されないが、1時間以上50時間以下とすることができる。また、還元性ガスとして水素を用いる場合、使用する酸化物層の厚みを20mm以下に調整し、更に反応炉内の露点を-10℃以下に調整することが好ましい。
[還元工程]
還元工程とは、前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程であり、例えば部分酸化物をカルシウム融体またはカルシウムの蒸気と接触することで還元が行われる。熱処理温度は、磁気特性の点より、920℃以上1200℃以下が好ましく、950℃以上1150℃以下がより好ましく、980℃以上1100℃以下がさらに好ましい。
還元剤である金属カルシウムは、粒状又は粉末状の形で使用されるが、その粒子径は10mm以下が好ましい。これにより還元反応時における凝集をより効果的に抑制することができる。また、金属カルシウムは、反応当量(希土類酸化物を還元するのに必要な化学量論量であり、Fe成分が酸化物の形である場合には、これを還元するために必要な分を含む)の1.1~3.0倍量の割合で添加することが好ましく、1.5~2.5倍量がより好ましい。
還元工程では、還元剤である金属カルシウムとともに、必要に応じて崩壊促進剤を使用することができる。この崩壊促進剤は、後述する後処理工程に際して、生成物の崩壊、粒状化を促進させるために適宜使用されるものであり、例えば、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、酸化カルシウム等のアルカリ土類酸化物などが挙げられる。これらの崩壊促進剤は、サマリウム酸化物当り1質量%以上30質量%以下、好ましくは5質量%以上30質量%以下の割合で使用される。
[窒化工程]
窒化工程とは、還元工程で得られた合金粒子を、窒素またはアンモニア含有雰囲気下、400℃以上470℃以下の第一温度で熱処理した後、480℃以上610℃以下の第二温度で熱処理して窒化処理することにより、異方性の磁性粒子を得る工程である。上述の沈殿工程で得られる粒子状の沈殿物を用いていることから、還元工程にて多孔質塊状の合金粒子が得られる。これにより、粉砕処理を行うことなく直ちに窒素雰囲気中で熱処理して窒化することができるため、窒化を均一に行うことができる。第一温度で窒化することなく、第二温度の高温で熱処理すると、窒化が急激に進行することにより異常発熱が生じ、SmFeNが分解し、磁気特性が大きく低下することがある。また、窒化工程における雰囲気は窒化の進行をより遅くできることから、実質的に窒素含有雰囲気下であることが好ましい。ここでいう実質的にとは、不純物の混入等に起因して不可避的に窒素以外の元素が含まれることを考慮して使用しており、例えば、雰囲気における窒素の割合が95%以上であり、97%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
窒化工程における第一温度は、400℃以上470℃以下であるが、410℃以上450℃以下が好ましい。400℃未満では、窒化の進行が非常に遅く、470℃を超えると、発熱により過窒化または分解が起こりやすくなる。第一温度での熱処理時間は、特に限定されないが、1時間以上40時間以下が好ましく、20時間以下がより好ましい。1時間未満では、窒化が十分に進行しない場合があり、40時間を超えると、生産性が低下する。
第二温度は、480℃以上610℃以下であるが、500℃以上550℃以下が好ましい。480℃未満では、粒子が大きいと窒化が十分に進行しない場合があり、610℃を超えると、過窒化または分解が起こりやすい。第二温度での熱処理時間は、15分以上5時間以下が好ましく、30分以上2時間以下がより好ましい。15分未満では、窒化が十分に進行しない場合があり、5時間を超えると、生産性が低下する。
第一温度による熱処理と第二温度による熱処理は連続で行っても良く、これらの熱処理間において、第二温度より低い温度での熱処理を含むこともできるが、生産性の点で、連続で行うことが好ましい。
[後処理工程]
窒化工程後に得られる生成物には、磁性粒子に加えて、副生するCaO、未反応の金属カルシウム等が含まれ、これらが複合した焼結塊状態となっている場合がある。窒化工程後に得られる生成物を冷却水中に投入して、CaO及び金属カルシウムを水酸化カルシウム(Ca(OH))懸濁物として分離することができる。さらに残留する水酸化カルシウムは、磁性粉末を酢酸等で洗浄して充分に除去してもよい。生成物を水中に投入した際には、金属カルシウムの水による酸化及び副生CaOの水和反応によって、複合した焼結塊状の反応生成物の崩壊、すなわち微粉化が進行する。
[アルカリ処理工程]
窒化工程後に得られる生成物をアルカリ溶液中に投入してもよい。アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液としては、たとえば水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などが挙げられる。なかでも、排水処理、高pHの点で、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。生成物のアルカリ処理により、酸素をある程度含有するSmリッチ層が残存して保護層として機能するため、アルカリ処理による酸素濃度が増大することを抑制している。
アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液のpHは特に限定されないが、9以上が好ましく、10以上がより好ましい。pHが9未満では、水酸化カルシウムになる際の反応速度が速く、発熱が大きくなるため、最終的に得られるSmFeN粉末の酸素濃度が高くなる傾向がある。
アルカリ処理工程において、アルカリ溶液で処理した後に得られたSmFeN粉末は、必要によりデカンテーションなどの方法で水分を低減することもできる。
[酸処理工程]
アルカリ処理工程の後に、さらに酸で処理する酸処理工程を含んでもよい。酸処理工程では、前述のSmリッチ層の少なくとも一部を除去して、SmFeN粉末全体中の酸素濃度を低減する。また、本発明の実施形態にある製造方法では、粉砕等を行わないため、SmFeN粉末の平均粒子径が小さく、粒度分布が狭く、また粉砕等で生じる微粉を含まないため、酸素濃度の増加を抑制することが可能となる。
酸処理工程に用いる酸としては、特に限定されず、たとえば塩化水素、硝酸、硫酸、酢酸などが挙げられる。なかでも、不純物が残留しない点で、塩化水素、硝酸が好ましい。
酸処理工程に用いる酸の使用量は、SmFeN粉末100質量部に対して3.5質量部以上13.5質量部以下が好ましく、4質量部以上10質量部以下がより好ましい。3.5質量部未満では、SmFeN粉末の表面の酸化物が残り、酸素濃度が高くなり、13.5質量部を超えると、大気に暴露した際に再酸化が起こりやすく、また、SmFeN粉末を溶解するため、コストも高くなる傾向がある。酸の量をSmFeN粉末100質量部に対して3.5質量部以上13.5質量部以下とすることにより、酸処理後に大気に暴露した際に再酸化が起こりにくい程度に酸化されたSmリッチ層がSmFeN粉末表面を覆うようにすることができるので、酸素濃度が低く、平均粒子径が小さく、粒度分布の狭いSmFeN粉末が得られる。
酸処理工程において、酸で処理した後に得られたSmFeN粉末は、必要によりデカンテーションなどの方法で水分を低減することもできる。
[脱水工程]
酸処理工程の後に、脱水処理する工程を含むことが好ましい。脱水処理によって、真空乾燥前の固形分中の水分を低減させ、真空乾燥前の固形分が水分をより多く含むことにより生じる乾燥時の酸化の進行を抑制することができる。ここで、脱水処理は、圧力や遠心力を加えることで、処理前の固形分に対して処理後の固形分に含まれる水分値を低減する処理のことを意味し、単なるデカンテーションや濾過や乾燥は含まない。脱水処理方法は特に限定されないが、圧搾、遠心分離などが挙げられる。
脱水処理後のSmFeN粉末に含まれる水分量は特に限定されないが、酸化の進行を抑制する点から13質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
酸処理して得られたSmFeN粉末、又は、酸処理後、脱水処理して得られたSmFeN粉末は、真空乾燥することが好ましい。乾燥温度は特に限定されないが、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。乾燥時間も特に限定されないが、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましい。
〈改質材粉末準備工程〉
改質材粉末を準備する。本開示の製造方法で用いる改質材粉末は、金属亜鉛又は亜鉛合金の少なくともいずれかを含有する。金属亜鉛とは、合金化されていない亜鉛のことを意味する。改質材粉末中の亜鉛成分によって、SmFeN粉末の粒子を結合及び改質する。
SmFeN粉末粒子では、その表面でFe-Zn合金相が形成される。SmFeN粉末の粒子の表面には、ThZn17型及び/又はThNi17型等の結晶構造が完全でない部分があり、その部分にはα-Fe相が存在しており、保磁力の低下の原因となる。このα-Fe相が金属亜鉛及び/又は亜鉛合金の亜鉛成分とFe-Zn合金相を形成し、保磁力の低下を抑制する。すなわち、Fe-Zn合金相が改質相として作用する。SmFeN粉末の粒子と改質材粉末の粒子との間で、FeとZnが相互に拡散して、Fe-Zn合金相が形成される。そのため、SmFeN粉末粒子を強固に結合することができる。すなわち、改質材粉末は、バインダとして機能する。
改質材粉末中の亜鉛成分の含有割合が、混合粉末に対して、1質量%以上であれば、均質なFe-Zn合金相(改質相)が形成されるため、保磁力が向上し、バインダとしての機能も有利に発揮することができる。この観点からは、改質材粉末中の金属亜鉛の含有割合は、混合粉末に対して、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってもよい。
一方、改質材粉末中の亜鉛成分の含有割合が、混合粉末に対して、30質量%以下であれば、改質材粉末の使用による磁化の低下を抑制することができる。この観点からは、改質材粉末中の亜鉛成分の含有割合は、混合粉末に対して、28質量%以下、26質量%以下、24質量%以下、又は22質量%以下であってもよい。
亜鉛合金をZn-Mで表すと、Mは、Zn(亜鉛)と合金化して、亜鉛合金の溶融開始温度を、Znの融点よりも降下させる元素及び不可避的不純物元素を選択してもよい。これにより、後述する加圧焼結工程で、焼結性が向上する。Znの融点よりも降下させるMとしては、ZnとMとで共晶合金を形成する元素等が挙げられる。このようなMとしては、典型的には、Sn、Mg、及びAl並びにこれらの組み合せ等が挙げられる。Snはスズ、Mgはマグネシウム、そして、Alはアルミニウムである。これらの元素による融点降下作用、及び、成果物の特性を阻害しない元素についても、Mとして選択することができる。また、不可避的不純物元素とは、改質材粉末の原材料に含まれる不純物等、その含有を回避することができない、あるいは、回避するためには著しい製造コストの上昇を招くような不純物元素のことをいう。
Zn-Mで表される亜鉛合金において、Zn及びMの割合(モル比)は、焼結温度が適正になるように適宜決定すればよい。亜鉛合金全体に対するMの割合(モル比)は、例えば、0.05以上、0.10以上、又は0.20以上であってよく、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、又は0.30以下であってよい。
改質材粉末は、金属亜鉛及び/又は亜鉛合金の他に、本発明の効果を損なわない限りにおいて、任意で、バインダ機能及び/又は改質機能並びにその他の機能を有する物質を含有してもよい。その他の機能としては、例えば、耐食性の向上機能等が挙げられる。
改質材粉末の粒径は、特に制限されないが、第一粒子群のSmFeN粉末の粒径よりも細かい方が好ましく、第二粒子群のSmFeN粉末の粒径よりも細かい方がより好ましい。これにより、SmFeN粉末の粒子間に、改質材粉末の粒子が行き渡り易い。改質材粉末の粒径は、例えば、D50(メジアン径)で、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、又は0.4μm以上であってよく、12.0μm以下、11.0μm以下、10.0μm以下、9.0μm以下、8.0μm以下、7.0μm以下、6.0μm以下、5.0μm以下、4.0μm以下、2.0μm以下、1.0μm以下、又は0.5μm以下であってよい。また、改質材粉末の粒径D50(メジアン径)は、例えば、乾式レーザ回折・散乱法によって測定される。
改質材粉末の酸素含有量が少ないと、SmFeN粉末中の酸素を多く吸収できて好ましい。この観点からは、改質材粉末の酸素含有量は、改質材粉末全体に対し、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がより一層好ましい。一方、改質材粉末の酸素の含有量を極度に低減することは、製造コストの増大を招く。このことから、改質材粉末の酸素の含有量は、改質材粉末全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってよい。
〈混合工程〉
SmFeN粉末と改質材粉末を混合して、混合粉末を得る。混合方法に、特に制限はない。混合方法としては、乳鉢、マラーホイール式ミキサー、アジテータ式ミキサー、メカノフュージョン、V型混合器、及びボールミル等を用いて混合する方法が挙げられる。これらの方法を組み合わせてもよい。なお、V型混合器は、2つの筒型容器をV型に連結した容器を備え、その容器を回転することにより、容器中の粉末が、重力と遠心力で集合と分離が繰り返され、混合される装置である。
〈磁場成形工程〉
混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得る。これにより、磁場成形体に配向性を付与することができ、成形体(希土類磁石)に異方性を付与して残留磁化を向上させることができる。
磁場成形方法は、周囲に磁場発生装置を設置した成形型を用いて、混合粉末を圧縮成形する方法等、周知の方法でよい。成形圧力は、例えば、10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、50MPa以上、100MPa以上、又は150MPa以上であってよく、1500MPa以下、1000MPa以下、又は500MPa以下であってよい。前述の成形圧力を印加する時間は、例えば、0.5分以上、1分以上、又は3分以上であってよく、10分以下、7分以下、又は5分以下であってよい。印加する磁場の大きさは、例えば、500kA/m以上、1000kA/m以上、1500kA/m以上、又は1600kA/m以上であってよく、20000kA/m以下、15000kA/m以下、10000kA/m以下、5000kA/m以下、3000kA/m以下、又は2000kA/m以下であってよい。磁場の印加方法としては、電磁石を用いた静磁場を印加する方法、及び交流を用いたパルス磁場を印加する方法等が挙げられる。また、混合粉末の酸化を抑制するため、磁場成形は、不活性ガス雰囲気中で行われることが好ましい。不活性ガス雰囲気には、窒素ガス雰囲気が含まれる。
〈加圧焼結工程〉
磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得る。加圧焼結の方法は、特に限定されず、周知の方法を適用することができる。加圧焼結方法としては、例えば、キャビティを有するダイスと、キャビティの内部を摺動可能なパンチを準備し、キャビティの内部に磁場成形体を挿入し、パンチで磁場成形体に圧力を付加しつつ、磁場成形体を焼結する方法等が挙げられる。この方法の場合、典型的には、高周波誘導コイルを用いてダイスを加熱する。あるいは、放電プラズマ焼結(SPS)法を用いてもよい。
磁場成形体に圧力を付与しつつ、磁場成形体を焼結(以下、「加圧焼結する」ということがある。)できるように、加圧焼結条件を適宜選択すればよい。
焼結温度が300℃以上であれば、磁場成形体中で、SmFeN粉末の粒子表面のFeと改質材粉末の金属亜鉛とが僅かに相互拡散して、焼結に寄与する。この観点からは、焼結温度は、例えば、310℃以上、320℃以上、340℃以上、又は350℃以上であってよい。一方、焼結温度が430℃以下であれば、SmFeN粉末の粒子表面のFeと改質材粉末の金属亜鉛とが過剰に相互拡散することはなく、後述する熱処理工程に支障を生じたり、得られた焼結体の磁気特性に悪影響を及ぼしたりすることはない。これらの観点からは、焼結温度は、420℃以下、410℃以下、400℃以下、390℃以下、380℃以下、370℃以下、又は360℃以下であってよい。
焼結圧力については、焼結体の密度を高めることができる焼結圧力を、適宜選択すればよい。焼結圧力は、典型的には、100MPa以上、200MPa以上、400MPa以上、600MPa以上、800MPa以上、又は1000MPa以上であってよく、2000MPa以下、1800MPa以下、1600MPa以下、1500MPa以下、1300MPa以下、又は1200MPa以下であってよい。
焼結時間は、SmFeN粉末の粒子表面のFeと改質材粉末とが僅かに相互拡散するよう、適宜決定すればよい。焼結時間には、熱処理温度に達するまでの昇温時間は含まない。焼結時間は、例えば、1分以上、2分以上、又は3分以上であってよく、30分以下、20分以下、10分以下、又は5分以下であってよい。
焼結時間が経過したら、焼結体を冷却して、焼結を終了する。冷却速度は、速い方が、焼結体の酸化等を抑制することができる。冷却速度は、例えば、0.5~200℃/秒であってよい。
焼結雰囲気については、磁場成形体及び焼結体の酸化を抑制するため、アルゴンガス雰囲気等の不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気には、窒素ガス雰囲気を含む。
上述したように、加圧焼結によって、SmFeN粉末粒子表面のFeと改質材粉末とが僅かに相互拡散するが、任意で、その僅かな相互拡散部の一部を進行させて、改質を進行させてもよい。その際には、改質抑制被膜形成工程及び熱処理工程を行う。以下、改質抑制被膜形成工程及び熱処理工程について説明する。
〈改質抑制被膜形成工程〉
加圧焼結前に、予め、第二粒子群の粒子表面に、改質抑制被膜を形成する。これにより、第二粒子群の粒子表面の改質を抑制することができる。改質抑制被膜の形成は、加圧焼結前であればよく、典型的には、SmFeN粉末と改質材粉末の混合前である。
第二粒子群の粒子表面の改質を抑制する理由について、次に説明する。
加圧焼結で得られた焼結体を、さらに熱処理することによって、SmFeN粉末粒子表面のFeと改質材粉末の相互拡散が進行し、改質が進行して、保磁力向上に寄与する。熱処理工程の詳細については後述する。
本開示の製造方法で用いるSmFeN粉末は、大粒径を有する第一粒子群と小粒径を有する第二粒子群を含む。これにより、焼結体の密度が向上し、その結果、磁化が向上する。このようにして得られた焼結体を熱処理すると、第二粒子群の粒子は、比表面積が大きいため、改質が進行し易く、第二粒子群の粒子中の磁性相の一部も改質されてしまうことがある。そうすると、焼結体の密度が向上しても、磁化が幾分低下してしまうことがある。そこで、加圧焼結前に、予め、第二粒子群の粒子表面に、改質抑制被膜を形成して、第二粒子群の粒子表面の改質を抑制することが好ましい。これにより、第二粒子群の粒子中の磁性相の一部も改質されてしまうことを回避でき、その結果、磁化が幾分低下することを回避できる。
上述したように、第一粒子群及び第二粒子群は、SmFeN粉末を分級して得られる。このとき、第一粒子群と比較して、第二粒子群は、高い保磁力を有しているため、第二粒子群は、第一粒子群ほど、改質しなくてもよい。そのため、第二粒子群の粒子表面の改質を抑制することは好都合である。
また、磁性粉末中に、高保磁力を有する磁性粉末(以下、「高保磁力粉末」ということがある。)と低保磁力を有する磁性粉末(以下、「低保磁力粉末」ということがある。)が共存しているとき、そのような磁性粉末の成形体の角形性、特に高温での角形性が低下することがある。これについて、図面を用いて、次のように説明することができる。なお、本明細書において、特に断りのない限り、磁気特性に関し、「高温」とは、100~200℃を意味し、角形性は、10%減磁Hkで評価する。
図10は、高温での、低保磁力粉末の成形体の減磁曲線と、低保磁力粉末と高保磁力粉末の混合粉末の成形体の減磁曲線とを示すグラフである。図10から、低保磁力粉末と高保磁力粉末の混合粉末の成形体と比較して、低保磁力粉末の成形体は、保磁力には劣るが、角形性には優れることが理解できる。
上述したように、第一粒子群は低保磁力粉末に相当し、第二粒子群は高保磁力粉末に相当する。第二粒子群に改質抑制被膜を形成すると、第二粒子群がさらに高い保磁力を有するようになることを抑制できる。このことから、第一粒子群の保磁力と第二粒子群の保磁力の差が拡大することを抑制でき、角形性を向上することができる。その結果、第一粒子群と第二粒子群とで焼結体の密度を向上させることによって、磁化を向上させた場合でも、角形性を向上させることができ、一層好ましい。
改質抑制被膜は、第二粒子群の粒子中の磁性相及び第二粒子群の粒子表面のFeと、改質材粉末との相互拡散を抑制することができ、かつ、本開示の製造方法で得られる希土類磁石の磁気特性に悪影響を及ぼすことがなければ、特に制限はない。このような改質抑制被膜は、典型的には、リン酸を含有するが、これに限られない。
改質抑制被膜が、リン酸を含有する被膜である場合には、改質抑制被膜中のリン酸含有割合は、改質抑制被膜全体に対して、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。また、改質抑制被膜が、リン酸を含有する被膜である場合には、その厚さは5nm以上、10nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上、又は50nm以上であってよく、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、又は60nm以下であってよい。
第二粒子群にリン酸を含有する被膜を形成する方法に、特に制限はないが、例えば、次の方法が挙げられる。
第二粒子群の粒子にリン酸処理することで、第二粒子群の粒子表面にP-O結合を有する不動態膜を形成する。リン酸処理工程では、リン酸処理薬と第二粒子群の粒子を反応させる。リン酸処理薬としては、例えば、オルトリン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム等のリン酸塩系、次亜リン酸系、次亜リン酸塩系、ピロリン酸、ポリリン酸系等の無機リン酸、有機リン酸が挙げられる。これらのリン酸源を基本的には水中、またはIPNなどの有機溶媒中に溶解させ、必要に応じて硝酸イオン等の反応促進剤、Vイオン、Crイオン、Moイオン等の結晶微細化剤を添加したリン酸浴中に第二粒子群の粒子を投入し、第二粒子群の粒子表面にP-O結合を有する不動態膜を形成する。
〈熱処理工程〉
加圧焼結前に、予め、第二粒子群の粒子表面に、改質抑制被膜を形成(以下、単に、「第二粒子群の粒子表面に改質抑制被膜を形成」ということがある。)した場合には、加圧焼結後の焼結体を熱処理して、焼結体中の第一粒子群の粒子表面の改質を進行させる。これについて、図面を用いて説明する。
図11は、本開示の製造方法において、第二粒子群の粒子表面に改質抑制被膜を形成し、加圧焼結及び熱処理して得た希土類磁石の組織の一例を示す模式図である。図12は、第二粒子群の粒子表面に改質抑制被膜を形成せず、加圧焼結及び熱処理して得た希土類磁石の組織の一例を示す模式図である。図11及び図12の組織を、図1の組織と比較しながら説明する。
図1の組織と比較して、図11及び図12の組織のいずれも、第一粒子群11の粒子表面の改質相30が、やや厚い。これは、図1の組織を有する希土類磁石を得るには、焼結体を熱処理していないのに対し、図11及び図12の組織を有する希土類磁石を得るには、焼結体に熱処理をしており、その熱処理によって、第一粒子群11の粒子表面の改質が進行しているためである。第一粒子群11の粒子は、比表面積が比較的小さいため、熱処理によって改質が過剰に進行することはなく、熱処理しない場合と比較して、改質相30がやや厚くなるに留まる。
図1の組織と比較して、図11の組織では、第二粒子群12の粒子表面の改質相30の厚さが、ほぼ同一であるのに対し、図12の組織では、第二粒子群12の粒子表面の改質相30が厚い。これは、図11の組織を有する希土類磁石を得るのには、第二粒子群12の粒子表面に改質抑制被膜を形成しているのに対し、図12の組織を有する希土類磁石を得るのには、第二粒子群12の粒子表面に改質抑制被膜を形成していないためである。これにより、図11の組織を有する希土類磁石を得る際、焼結体の熱処理中に、第二粒子群12の粒子表面の改質がほとんど進行しないのに対して、図12の組織を有する希土類磁石を得る際には、焼結体の熱処理中に、第二粒子群12の粒子表面の改質が進行し易いためである。図11の組織では、第二粒子群12の粒子表面の改質の進行が抑制されていることから、角形性が向上する。そのため、第二粒子群12の粒子表面に改質抑制被膜を形成することが好ましい。
理論に拘束されないが、加圧焼結後の焼結体の熱処理中に、第二粒子群の粒子表面に形成した改質抑制被膜は、改質抑制被膜を構成する元素に分解され、これらの元素が、改質相中に存在すると考えられる。このことから、改質相は、Fe-Zn合金相中に、上述の改質抑制被膜に由来する元素が存在している相であると考えられる。
加圧焼結後の焼結体の熱処理条件は、SmFeN粉末粒子表面、特に、第一粒子群の粒子表面を改質可能な条件を適宜決定すればよい。熱処理温度は、例えば、350℃以上、360℃以上、370℃以上、又は380℃以上であってよく、410℃以下、400℃以下、又は390℃以下であってよい。熱処理時間は、6時間以上、12時間以上、又は18時間以上であってよく、48時間以下、42時間以下、36時間以下、30時間以下、又は24時間以下であってよい。
上述の熱処理条件で、加圧焼結後の焼結体を熱処理すると、第一粒子群の粒子表面の改質相の厚さは、例えば、20~50nm程度である。これは、第一粒子群の粒子表面には、改質抑制被膜を形成しないためである。また、上述の熱処理条件で、加圧焼結後の焼結体を熱処理すると、第二粒子群の粒子表面の改質相の厚さは、改質抑制被膜を形成しない場合には20~50nm程度であり、改質抑制被膜を形成する場合には1~20nm程度である。
焼結体の酸化を抑制するため、真空中又は不活性ガス雰囲気中で焼結体を熱処理することが好ましい、不活性ガス雰囲気には、窒素ガス雰囲気を含む。焼結体の熱処理は、加圧焼結に用いた成形型内で、加圧焼結に続いて行ってもよいが、その場合には、熱処理中は焼結体に圧力を負荷しない。加圧焼結に用いた成形型とは、例えば、キャビティを有するダイスである。上述した熱処理条件を満足すれば、正常な磁性相が分解してα-Fe相を生成し、その生成の結果、FeとZnとが過剰に相互拡散することはない。熱処理を真空中で行う場合には、雰囲気の絶対圧は、1×10-7Pa以上、1×10-6Pa以上、又は1×10-5Pa以上であってよく、1×10-2Pa以下、1×10-3Pa以下、又は1×10-4Pa以下であってよい。
これまで説明してきた本開示の製造方法で得られた希土類磁石について、以下に説明する。
《希土類磁石》
本開示の製造方法で得た希土類磁石(以下、「本開示の希土類磁石」ということがある。)は、Sm、Fe、及びNを含有し、少なくとも一部がThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備える。磁性相の組成等は、「〈磁性粉末準備工程〉」で説明したとおりである。
本開示の希土類磁石は、SmFeN粉末と、金属亜鉛及び亜鉛合金の少なくともいずれかを含有する改質材粉末との混合粉末を用いて得られる。そのため、本開示の希土類磁石は、改質材粉末に由来する亜鉛成分を含有する。そして、上述したように、SmFeN粉末の粒子の一部と、改質材粉末の亜鉛成分の一部とは、相互に拡散して、Fe-Zn合金相を形成する。本明細書では、特に断りのない限り、「亜鉛成分」の含有量は、Zn(亜鉛元素)の含有量(含有割合)を意味する。本開示の希土類磁石の亜鉛成分は、改質材粉末の金属亜鉛に由来し、亜鉛成分の含有量の範囲は、1~30質量%であることが好ましい。
《変形》
これまで説明してきたこと以外でも、本開示の製造方法は、特許請求の範囲に記載した内容の範囲内で種々の変形を加えることができる。
例えば、SmFeN粉末中の微粉粒子の一部を、磁場成形前に、予め除去しておいてもよい。微粉粒子除去操作(微粉粒子除去方法)に、特に制限はない。微粉除去操作(微粉除去方法)としては、サイクロン(登録商標)分級装置を用いる方法、ふるいを用いる方法、磁場を利用する方法、及び静電気を利用する方法等が挙げられる。これらの組合せであってもよい。微粉粒子除去によって、成形体(希土類磁石)の密度を一層高め、磁化をさらに高めることができる。
以下、本開示の製造方法を実施例及び比較例により、さらに具体的に説明する。なお、本開示の製造方法は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
《試料の準備》
実施例1~8及び比較例1~7の試料を次の要領で準備した。
〈実施例1~8及び比較例1~5〉
純水2.0kgにFeSO・7HO 5.0kgを混合溶解した。さらにSm 0.49kg、70%硫酸 0.74kg、La 0.035kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLa硫酸溶液とした。
[沈殿工程]
温度が40℃に保たれた純水20kg中に、調製したSmFeLa硫酸溶液全量を反応開始から70分間で攪拌しながら滴下し、同時に15%アンモニア液を滴下させ、pHを7~8に調整した。これにより、SmFeLa水酸化物を含むスラリーを得た。得られたスラリーをデカンテーションにより純水で洗浄した後、水酸化物を固液分離した。分離した水酸化物を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。
[酸化工程]
沈殿工程で得られた水酸化物を大気中1000℃で1時間、焼成処理した。冷却後、原料粉末として赤色のSmFeLa酸化物を得た。
[前処理工程]
SmFeLa酸化物100gを、嵩厚10mmとなるように鋼製容器に入れた。容器を炉内に入れ、100Paまで減圧した後、水素ガスを導入しながら、前処理温度の850℃まで昇温し、そのまま15時間保持した。非分散赤外吸収法(ND-IR)(株式会社堀場製作所製のEMGA-820)により酸素濃度を測定したところ、5質量%であった。これにより、Smと結合している酸素は還元されず、Feと結合している酸素のうち、95%が還元される黒色の部分酸化物を得たことがわかった。
[還元工程]
前処理工程で得られた部分酸化物60gと平均粒子径約6mmの金属カルシウム19.2gとを混合して炉内に入れた。炉内を真空排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入した。1090℃まで上昇させて、45分間保持し、その後、冷却してSmFe粉末粒子を得た。
[窒化工程]
引き続き、炉内温度を100℃まで冷却した後、真空排気を行い、窒素ガスを導入しながら、第一温度の430℃まで上昇させて、3時間保持した。続いて第二温度の500℃まで上昇させて1時間保持した後、冷却して磁性粒子を含む塊状の生成物を得た。
[後処理工程]
窒化工程で得られた塊状の生成物を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを10回繰り返した。次いで99.9%酢酸2.5gを投入して15分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。
[酸処理工程]
後処理工程で得られた粉末100質量部に対して、塩化水素として4.3質量部となるように、6%塩酸水溶液を添加して、1分間、撹拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。固液分離した後80℃で真空乾燥を3時間行い、Sm9.2Fe77.113.59La0.11を組成とするSmFeN粉末を得た。
SmFeN粉末をパラフィンワックスと共に試料容器に詰め、ドライヤーにてパラフィンワックスを溶融させた後、16kA/mの配向磁場にてその磁化容易軸を揃えた。この磁場配向した試料を32kA/mの着磁磁場でパルス着磁し、最大磁場16kA/mのVSM(振動試料型磁力計)を用いて、室温にて磁気特性を測定したところ、残留磁化1.44T、保磁力750kA/mであった。
上述のようにして得たSmFeN粉末を分級し、第一粒子群の粉末及び第二粒子群の粉末を得た。そして、第一粒子群の粉末と第二粒子群の粉末を、N型混合器を用いて混合して、磁性粉末を得た。第一粒子群及び第二粒子群それぞれの粒度分布は表1に示すとおりであった。第一粒子群の総体積と第二粒子群の総体積との比(第一粒子群の総体積:第二粒子群の総体積)は表1-1に示すとおりであった。表1-1には、第一粒子群及び第二粒子群それぞれの、粒子残留磁化σrを併記した。
改質材粉末として、金属亜鉛粉末を準備した。金属亜鉛粉末のD50は0.5μmであった。また、金属亜鉛粉末の純度は99.5質量%であった。
磁性粉末(第一粒子群の粉末と第二粒子群の粉末)と改質材粉末を混合して、混合粉末を得た。また、混合粉末全体に対する金属亜鉛の混合量は、5質量%であった。
混合粉末を磁場中で圧縮成形し磁場成形体を得た。圧縮成形の圧力は50MPaであった。この圧力の印加時間は1分であった。印加した磁場は1600kA/mであった。また、圧縮成形は、窒素雰囲気中で行った。
磁場成形体を加圧焼結した。実施例1~6及び比較例1~5の試料については、高周波誘導コイルを用いて、アルゴンガス雰囲気中(97000Pa)で加圧焼結を行った。実施例7~8の試料については、放電プラズマ加熱(SPS法)を用いて、窒素ガス雰囲気中(10000Pa)で加圧焼結を行った。いずれの試料においても、焼結温度は380℃、焼結圧力は1000MPa、そして、焼結圧力の印加時間は5分であった。
〈比較例6~7〉
磁性粉末として、第一粒子群の粉末のみを用い、第二粒子群の粉末を用いなかったこと以外、実施例1と同様に比較例6の試料を、実施例3と同様に比較例7の試料を、それぞれ準備した。
〈実施例9〉
第二粒子群の粒子表面にリン酸を含有する被膜を形成し、加圧焼結後の焼結体を熱処理したこと以外、実施例4と同様に実施例9の試料を準備した。リン酸を含有する被膜の形成は、SmFeN粉末(第一粒子群の粉末と第二粒子群の粉末)と改質材粉末の混合前に行った。すなわち、SmFeN粉末を第一粒子群と第二粒子群に分級し、第二粒子群の粒子表面にリン酸を含有する被膜を形成し、分級したままの第一粒子群の粉末、リン酸を含有する被膜を形成した第二粒子群の粉末、及び改質材粉末を混合した。
リン酸を含有する被膜の形成は、リン酸処理工程前に、準備工程として、分散工程及び表面処理工程を行った。分散工程及び表面処理工程並びにリン酸処理工程の詳細は次のとおりである。
[分散工程]
振動ミルに用いる容器の容積に対して、第二粒子群の粉末が5体積%、メディア(鉄芯ナイロンメディア、直径10mm、被覆部ナイロンのビッカース定数7、比重7.48g/cm3)が60体積%となるように、第二粒子群の粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、中間粉末を得た。
[表面処理工程]
得られた中間粉末を純水に投入し、1分間攪拌した。このスラリーに、酸溶液を入れエッチングを行なった。酸溶液は、塩酸溶液を用いた。攪拌をしながら、中間粉末100gに対して、50g以上の5%塩酸を添加した。そして、pH=3以上になったのを確認し、スラリーの電気伝導率が100μS/cm以下になるまでデカントを行った。
[リン酸処理工程]
得られたスラリーに対して、リン酸溶液を加えた。リン酸溶液を、第二粒子群の粒子の固形分に対して、POとして1質量%分投入した。5分間にわたり攪拌し、固液分離した後、120℃で真空乾燥を3時間行い、リン酸を含有する被膜を形成した第二粒子群の粉末を得た。
加圧焼結後の焼結体を、表2-1及び表2-2に示す条件で熱処理した。表2-1には、第一粒子群及び第二粒子群それぞれの、粒子残留磁化σ及び粒子保磁力Hcを併記した。また、表2-1では、「リン酸を含有する被膜」を「リン酸被膜」と表記した。
〈実施例10〉
第二粒子群の粒子表面にリン酸を含有する被膜を形成しなかったこと以外、実施例9と同様に実施例10の試料を準備した。
《評価》
各試料について、密度及び磁気特性を測定した。密度は、アルキメデス法で測定した。磁気特性は振動試料型磁力計(VSM)を用いて測定した。実施例1、比較例3、及び比較例6の試料については、試料の断面を研磨し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、その研磨面を組織観察した。
評価結果を、表1-1~表1-2、表2-1~表2-2、及び図5~9に示す。図5は、d/dと密度の関係を示すグラフである。図6は、d/dと残留磁化Brの関係を示すグラフである。図7は、実施例1の試料のSEM像を示す。図8は、比較例3の試料のSEM像を示す。図9は、比較例6の試料のSEM像を示す。
Figure 2023067693000002
Figure 2023067693000003
Figure 2023067693000004
Figure 2023067693000005
表1-1及び表1-2並びに図5及び図6に示すように、d及びdが所定の関係を満足し、かつ、第一粒子群の総体積:第二粒子群の総体積が所定の範囲である実施例1~8の試料は、密度が高く、その結果、残留磁化に優れることを理解できる。
一方、比較例1及び比較例2の試料においては、第一粒子群の総体積:第二粒子群の総体積が所定の範囲であっても、d/dが所定の関係を満足しないため、密度が低く、その結果、残留磁化が低い。比較例3~5の試料においては、d/dが所定の関係をみたすものの、第一粒子群の総体積:第二粒子群の総体積が所定の範囲でないため、密度が低く、その結果、残留磁化が低い。また、比較例6及び比較例7の試料においては、第一粒子群の粉末のみを用い、第二粒子群の粉末を用いなかったことから、密度が低く、その結果、残留磁化が低い。
また、例えば、実施例1の試料の密度が、比較例3及び比較例6の試料の密度よりも高いことは、実施例1の試料のSEM像(図7)の暗い部分(空隙)が、比較例3及び比較例6の試料のSEM像(図8及び図9)の暗い部分よりも少ないことからも理解できる。
実施例9及び実施例10については、d及びdが所定の関係を満足し、かつ、第一粒子群の総体積:第二粒子群の総体積が所定の範囲であるため、密度が高く、その結果、残留磁化に優れることを理解できる。また、実施例9では、第二粒子群の粒子表面にリン酸を含有する被膜を形成したのに対し、実施例10では、第二粒子群の粒子表面にリン酸を含有する被膜を形成しなかった。そのため、実施例10の試料と比較して、実施例9の試料は、120℃でのHkが大きく、高温での角形性に優れることを理解できる。
以上の結果から、本開示の希土類磁石の製造方法及びそれで得られる希土類磁石の効果を確認できた。
10 SmFeN粉末粒子(磁性粒子)
11 第一粒子群
12 第二粒子群
20 改質材
30 改質相
100 本開示の製造方法で得た希土類磁石
200 従来の製造方法で得た希土類磁石

Claims (9)

  1. Sm、Fe、及びNを含有し、少なくとも一部がThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備える磁性粉末を準備すること、
    金属亜鉛及び亜鉛合金の少なくともいずれかを含有する改質材粉末を準備すること、
    前記磁性粉末と前記改質材粉末を混合して、混合粉末を得ること、
    前記混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得ること、及び
    前記磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得ること、
    を含み、
    前記磁性粉末が、第一粒子群及び第二粒子群を含み、
    前記第一粒子群の粒度分布D50が、dμmで表され、かつ、前記第二粒子群の粒度分布D50が、dμmで表され、
    前記d及び前記dが、0.350≦d/d≦0.500の関係を満足し、かつ、
    前記第一粒子群の総体積と前記第二粒子群の総体積との比(前記第一粒子群の総体積:前記第二粒子群の総体積)が、9:1~4:1の範囲である、
    希土類磁石の製造方法。
  2. 前記dが3.0~3.7μmであり、かつ、前記dが1.4~1.8μmである、請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
  3. 前記改質材粉末のD50が、0.1~12.0μmであり、前記改質材粉末中の亜鉛成分の含有割合が、前記混合粉末に対して1~30質量%である、請求項1又は2に記載の希土類磁石の製造方法。
  4. 前記混合粉末を、10~1500MPaの圧力で圧縮成形する、請求項1~3のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
  5. 前記磁場成形体を、100~2000MPaの圧力及び300~430℃の温度で、1~30分にわたり加圧焼結する、請求項1~4のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
  6. 前記加圧焼結前に、予め、前記第二粒子群の粒子表面に、改質抑制被膜を形成すること、及び、
    前記焼結体を熱処理して、前記第一粒子群の粒子表面の改質を進行させること、
    をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
  7. 前記改質抑制被膜が、リン酸を含有する、請求項6に記載の希土類磁石の製造方法。
  8. 前記焼結体を、350~410℃で熱処理する、請求項6又は7に記載の希土類磁石の製造方法。
  9. Sm、Fe、及びNを含有し、少なくとも一部がThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備える磁性粉末、及び
    亜鉛成分を含有する、焼結体の希土類磁石であって、
    前記磁性粉末が、第一粒子群及び第二粒子群を含み、
    前記第一粒子群の粒度分布D50が、dμmで表され、かつ、前記第二粒子群の粒度分布D50が、dμmで表され、
    前記d及び前記dが、0.350≦d/d≦0.500の関係を満足し、かつ、
    前記第一粒子群の総体積と前記第二粒子群の総体積との比(前記第一粒子群の総体積:前記第二粒子群の総体積)が、9:1~4:1の範囲である、
    希土類磁石。
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