JP2023048129A - SmFeN系希土類磁石の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気特性が高いSmFeN系希土類磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】Sm、Fe、La、W、R(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)およびNを含むSmFeN系異方性磁性粉末を、樹脂で被覆された金属またはセラミックスのメディアを用いて分散し、分散されたSmFeN系異方性磁性粉末を得る工程と、前記分散されたSmFeN系異方性磁性粉末と改質材粉末を混合して、混合粉末を得る工程と、前記混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得る工程と、前記磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得る工程と、および、前記焼結体を熱処理する工程と、を含む、SmFeN系希土類磁石の製造方法に関する。
【選択図】 図1
【解決手段】Sm、Fe、La、W、R(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)およびNを含むSmFeN系異方性磁性粉末を、樹脂で被覆された金属またはセラミックスのメディアを用いて分散し、分散されたSmFeN系異方性磁性粉末を得る工程と、前記分散されたSmFeN系異方性磁性粉末と改質材粉末を混合して、混合粉末を得る工程と、前記混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得る工程と、前記磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得る工程と、および、前記焼結体を熱処理する工程と、を含む、SmFeN系希土類磁石の製造方法に関する。
【選択図】 図1
Description
本開示は、SmFeN系希土類磁石の製造方法に関する。
特許文献1には、溶媒中でセラミックスのメディアを用いてSmFeN系異方性磁性粉末を粉砕する製造方法が開示されている。しかしながら、硬いセラミックスのメディアを使用すると、チッピングによる微小粒子が生成し、粉砕後に得られたSmFeN系異方性磁性粉末の酸素含有量が増加し、磁気特性が低下することが考えられた。
特許文献2には、SmFeN系希土類磁石の製造方法として、SmFeN系異方性磁性粉末を6kOe以上の磁場中で予備圧縮した後、600℃以下の温度、1~5GPaの成形面圧で温間圧密成形することが開示されている。
本開示は、磁気特性が高いSmFeN系希土類磁石の製造方法を提供することを目的とする。
本開示の一態様にかかるSmFeN系希土類磁石の製造方法は、
Sm、Fe、La、W、R(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)およびNを含むSmFeN系異方性磁性粉末を、樹脂で被覆された金属またはセラミックスのメディアを用いて分散し、分散されたSmFeN系異方性磁性粉末を得る工程と、前記分散されたSmFeN系異方性磁性粉末と改質材粉末を混合して、混合粉末を得る工程と、前記混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得る工程と、前記磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得る工程と、および、前記焼結体を熱処理する工程と、を含む。
Sm、Fe、La、W、R(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)およびNを含むSmFeN系異方性磁性粉末を、樹脂で被覆された金属またはセラミックスのメディアを用いて分散し、分散されたSmFeN系異方性磁性粉末を得る工程と、前記分散されたSmFeN系異方性磁性粉末と改質材粉末を混合して、混合粉末を得る工程と、前記混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得る工程と、前記磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得る工程と、および、前記焼結体を熱処理する工程と、を含む。
本開示は、磁気特性が高いSmFeN系希土類磁石の製造方法を提供することができる。
以下、本開示の実施形態について詳述する。ただし、以下に示す実施形態は、本開示の技術思想を具体化するための一例であり、本開示を以下のものに限定するものではない。なお、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本実施形態のSmFeN系希土類磁石の製造方法は、Sm、Fe、La、W、R(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)およびNを含むSmFeN系異方性磁性粉末を、樹脂で被覆された金属またはセラミックスのメディアを用いて分散し、分散されたSmFeN系異方性磁性粉末を得る工程と、前記分散されたSmFeN系異方性磁性粉末と改質材粉末を混合して、混合粉末を得る工程と、前記混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得る工程と、前記磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得る工程と、および、前記焼結体を熱処理する工程と、を含むことを特徴とする。
Sm、Fe、La、W、R(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)およびNを含むSmFeN系異方性磁性粉末を、樹脂で被覆された金属またはセラミックスのメディアを用いて分散する。ここでいう分散とは、SmFeN系異方性磁性粉末に含まれる焼結により生じた凝集粒子や磁気凝集により生じた凝集粒子を、分け散らして単一からなる粒子とするか、数少ない粒子から構成されている粒子(以下、単粒子という)とすることを意味する。また、樹脂で被覆された金属またはセラミックスのメディアがSmFeN系異方性磁性粉末に衝突する場合、樹脂で被覆されていない金属またはセラミックスのメディアがSmFeN系異方性磁性粉末に衝突する場合と比較して衝突エネルギーが小さいので、粉砕よりも分散が起こりやすい。従来のように、SmFeN系異方性磁性粉末の粉砕が行われると、平均粒子径が大幅に小さくなるとともに、チッピングによる微小粒子も生成するため磁気特性の低下が起こりやすく、また、微小粒子および微小粒子を生成した元の部分では、活性の高い新生面ができるので、酸化が起こりやすく、酸素含有量が大きくなりやすい。一方で、本実施形態のように分散が行われると、生じた単粒子は、磁場中で配向しやすいので磁気特性が高くなり、また、微小粒子の生成にともなう新生面の発生を粉砕と比べて抑制できるので、酸素含有量が大きくなりにくいと考えられる。
分散工程で使用する分散装置としては、例えば振動ミルを使用する。振動ミル等の分散装置で使用するメディアは、金属コアと、それを被覆する樹脂とを有することができる。金属の材質としては、鉄、クロム鋼、ステンレス、スチールなどが挙げられる。また、振動ミル等の分散装置で使用するメディアは、セラミックコアと、それを被覆する樹脂を有することができる。セラミックスの材質としては、金属または非金属の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物などの無機化合物が挙げられ、より具体的には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、ガラスなどが挙げられる。これらの中では、高比重により分散能力が高いことと、高硬度により摩耗が少ないことと、摩耗により発生する鉄を含んだ摩耗粉は、SmFeN系異方性磁性粉末に対する影響が小さい点から鉄、クロム鋼が好ましい。すなわち、樹脂で被覆された鉄またはクロム鋼のメディアを分散装置で使用することが好ましい。被覆する樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂およびそれらの組み合わせが挙げられる。熱可塑性樹脂は、射出成形で形成することができ、熱硬化性樹脂と比較して流動性が高いため、熱硬化性樹脂で被覆する場合よりも膜厚を薄くすることができる。そのため、熱硬化性樹脂で被覆する場合よりもメディアの比重を増大させることができ、サイズを低減させることができる。熱可塑性樹脂として、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のナイロンを用いることが好ましい。ナイロンは、熱可塑性樹脂の中でも比較的柔らかく安価であるためである。例えばナイロンで被覆された鉄のメディアを分散装置で使用してよい。これにより、微粉の発生をより抑制しつつ、SmFeN系異方性磁性粉末を分散することができる。
分散工程で使用するメディアの比重は、4以上が好ましく、5以上がより好ましい。4未満では、分散時の衝突エネルギーが小さくなりすぎるため分散が起こりにくくなる傾向がある。上限は特に限定されないが、8以下が好ましく、7.5以下がより好ましい。分散工程で使用するメディアの比重は、6以上7.5以下であってもよい。樹脂で被覆された金属のメディアまたは樹脂で被覆されたセラミックスのメディアは、金属またはセラミックスのコアと、コアを被覆する樹脂膜とを有することができる。樹脂膜の厚みは、例えば0.1μm以上5mm以下とすることができる。これにより、メディアの直径の増大を抑えることができるため、SmFeN系異方性磁性粉末の分散に適しており、得られるSmFeN系異方性磁性粉末のσrを向上させることができる。
分散工程は、溶媒の存在下で行うこともできるが、溶媒中に含まれる成分(例えば水分など)によるSmFeN系異方性磁性粉末の酸化を抑制する点から溶媒の非存在下で行うことが好ましい。
分散工程は、SmFeN系異方性磁性粉末の酸化を抑制する点から窒素ガス雰囲気やアルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気にて行うことが好ましい。窒素ガス雰囲気中の窒素の濃度は、90体積%以上であってよく、95体積%以上であることが好ましい。アルゴンガス雰囲気中のアルゴンの濃度は、90体積%以上であってよく、95体積%以上であることが好ましい。不活性ガス雰囲気は、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを2種類以上混合した雰囲気であってもよい。不活性ガス雰囲気中の不活性ガスの濃度は、90体積%以上であってよく、95体積%以上であることが好ましい。
樹脂で被覆された金属またはセラミックスのメディアの直径は、2mm以上100mm以下が好ましく、3mm以上15mm以下がより好ましく、3mm以上10mm以下がさらにより好ましい。2mm未満では、樹脂で被覆することが難しく、100mmを超えると、メディアが大きいため、粉末との接触が少なくなり、分散が起こりにくくなる傾向がある。
分散工程で振動ミルを使用する場合は、SmFeN系異方性磁性粉末とメディアを入れる容器の容積に対して、例えば、メディアの量を60体積%以上70体積%以下とし、SmFeN系異方性磁性粉末の量を3体積%以上25体積%以下とすることができ、4体積%以上20体積%以下が好ましい。
分散工程で使用するSmFeN系異方性磁性粉末は、例えば、特開2017-117937号公報や特開2021-055188号公報で開示された方法を参照して作製することができるが、以下にSmFeN系異方性磁性粉末の製造方法の一例について説明する。
分散工程で使用するSmFeN系異方性磁性粉末は、Sm、Fe、La、WおよびR(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)を含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、部分酸化物を得る前処理工程、
前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程、
前記合金粒子を窒化して窒化物を得る工程、および、
前記窒化物を洗浄してSmFeN系異方性磁性粉末を得る工程を含む製造方法により作製することができる。
前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程、
前記合金粒子を窒化して窒化物を得る工程、および、
前記窒化物を洗浄してSmFeN系異方性磁性粉末を得る工程を含む製造方法により作製することができる。
前処理工程で使用するSm、Fe、La、WおよびR(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)を含む酸化物は、Sm酸化物とFe酸化物とLa酸化物とW酸化物とR酸化物を混合することにより作製してもよいが、SmとFeとLaとWとRを含む溶液と沈殿剤を混合し、SmとFeとLaとWとRを含む沈殿物を得る工程(沈殿工程)、および、前記沈殿物を焼成することにより、SmとFeとLaとWとRを含む酸化物を得る工程(酸化工程)によって、製造することができる。
[沈殿工程]
沈殿工程では、Sm原料、Fe原料、La原料、W原料およびR原料を溶解して、Sm、Fe、La、WおよびRを含む溶液を調製する。Sm2Fe17N3を主相として得る場合、SmおよびFeのモル比(Sm:Fe)は1.5:17~3.0:17が好ましく、2.0:17~2.5:17がより好ましい。La、WおよびRを含むために残留磁束密度が高い磁性材料を得ることができる。La、W、Rの他に、Co、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luなどの原料を上述した溶液に加えても良い。
沈殿工程では、Sm原料、Fe原料、La原料、W原料およびR原料を溶解して、Sm、Fe、La、WおよびRを含む溶液を調製する。Sm2Fe17N3を主相として得る場合、SmおよびFeのモル比(Sm:Fe)は1.5:17~3.0:17が好ましく、2.0:17~2.5:17がより好ましい。La、WおよびRを含むために残留磁束密度が高い磁性材料を得ることができる。La、W、Rの他に、Co、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luなどの原料を上述した溶液に加えても良い。
Sm原料、Fe原料、La原料、W原料およびR原料としては、溶解できるものであれば限定されない。例えば、入手のしやすさの点で、Sm原料としては酸化サマリウムが、Fe原料としてはFeSO4が、La原料としてはLa2O3やLaCl3が、W原料としては、タングステン酸アンモニウムが、R原料としてはRの酸化物(酸化チタン、酸化ストロンチウム、酸化バリウム)や炭酸塩(炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム)、塩化物(塩化ストロンチウム、塩化バリウム)、硫酸塩(硫酸チタン)が挙げられる。SmとFeとLaとWとRを含む溶液の濃度は、Sm原料、Fe原料、La原料、W原料およびR原料が実質的に溶液に溶解する範囲で適宜調整することができる。
Sm、Fe、La、W及びRを含む溶液と沈殿剤を反応させることにより、Sm、Fe、La、W及びRを含む不溶性の沈殿物を得る。ここで、Sm、Fe、La、W及びRを含む溶液は、沈殿剤との反応時にSm、Fe、La、W及びRを含む溶液となっていればよく、例えば、Smを含む溶液、Feを含む溶液、Laを含む溶液、Wを含む溶液及びRを含む溶液をそれぞれ別々の溶液として調製し、各々の溶液を滴下して沈殿剤と反応させても良い。また、Sm、Fe、La、W及びRを含む溶液は、Sm及びFeを含む溶液と、La、W及びRを含む溶液をそれぞれ別々の溶液として調製し、各々の溶液を滴下して沈殿剤と反応させても良い。別々の溶液として調製する場合においても各原料が実質的に溶液に溶解する範囲で適宜調整する。沈殿剤としては、アルカリ性の溶液でSm、Fe、La、W及びRを含む溶液と反応して沈殿物が得られるものであれば限定されず、アンモニア水、苛性ソーダなどが挙げられ、苛性ソーダが好ましい。
沈殿反応は、沈殿物の粒子の性状を容易に調整できる点から、Sm、Fe、La、W及びRを含む溶液と、沈殿剤とを、それぞれ水などの溶媒に滴下する方法が好ましい。Sm、Fe、La、W及びRを含む溶液と沈殿剤の供給速度、反応温度、反応液濃度、反応時のpH等を適宜制御することにより、構成元素の分布が均質で、粒度分布が狭く、粉末形状の整った沈殿物が得られる。このような沈殿物を使用することによって、最終製品であるSmFeN系異方性磁性粉末の磁気特性が向上する。反応温度は、0℃以上50℃以下が好ましく、35℃以上45℃以下がより好ましい。反応液濃度は、金属イオンの総濃度として0.65mol/L以上0.85mol/L以下が好ましく、0.7mol/L以上0.85mol/L以下がより好ましい。反応pHは、5以上9以下が好ましく、6.5以上8以下がより好ましい。
沈殿工程で得られた粉末により、最終的に得られるSmFeN系異方性磁性粉末の粉末粒子径、粉末形状、粒度分布がおよそ決定される。得られた粉末の粒子径をレーザー回折式湿式粒度分布計により測定した場合、全粉末が0.05μm以上20μm以下、好ましくは0.1μm以上10μm以下の範囲にほぼ入るような大きさと分布であることが好ましい。
沈殿物を分離した後は、続く酸化工程の熱処理において残存する溶媒に沈殿物が再溶解して、溶媒が蒸発する際に沈殿物が凝集したり、粒度分布、粉末粒子径等が変化したりすることを抑制するために、分離物を脱溶媒しておくことが好ましい。脱溶媒する方法として具体的には、例えば溶媒として水を使用する場合、70℃以上200℃以下のオーブン中で5時間以上12時間以下の時間、乾燥する方法が挙げられる。
沈殿工程の後に、得られる沈殿物を分離洗浄する工程を含んでもよい。洗浄する工程は上澄み溶液の導電率が5mS/m2以下となるまで適宜行う。沈殿物を分離する工程としては、例えば、得られた沈殿物に溶媒(好ましくは水)を加えて混合した後、濾過法、デカンテーション法等を用いることができる。
[酸化工程]
酸化工程とは、沈殿工程で形成された沈殿物を焼成することにより、Sm、Fe、La、W及びRを含む酸化物を得る工程である。例えば、熱処理により沈殿物を酸化物に変換することができる。沈殿物を熱処理する場合、酸素の存在下で行われる必要があり、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。また、酸素存在下で行われる必要があるため、沈殿物中の非金属部分に酸素原子を含むことが好ましい。
酸化工程とは、沈殿工程で形成された沈殿物を焼成することにより、Sm、Fe、La、W及びRを含む酸化物を得る工程である。例えば、熱処理により沈殿物を酸化物に変換することができる。沈殿物を熱処理する場合、酸素の存在下で行われる必要があり、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。また、酸素存在下で行われる必要があるため、沈殿物中の非金属部分に酸素原子を含むことが好ましい。
酸化工程における熱処理温度(以下、酸化温度)は特に限定されないが、700℃以上1300℃以下が好ましく、900℃以上1200℃以下がより好ましい。700℃未満では酸化が不十分となり、1300℃を超えると、目的とするSmFeN系異方性磁性粉末の形状、平均粒子径および粒度分布が得られない傾向にある。熱処理時間も特に限定されないが、1時間以上3時間以下が好ましい。
得られる酸化物は、酸化物粒子内においてSm、Feの微視的な混合が充分になされ、沈殿物の形状、粒度分布等が反映された酸化物粒子である。
[前処理工程]
前処理工程とは、上述のSm、Fe、La、W及びRを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、酸化物の一部が還元された部分酸化物を得る工程である。
前処理工程とは、上述のSm、Fe、La、W及びRを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、酸化物の一部が還元された部分酸化物を得る工程である。
ここで、部分酸化物とは、酸化物の一部が還元された酸化物をいう。部分酸化物の酸素濃度は特に限定されないが、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。10質量%を超えると、還元工程においてCaとの還元発熱が大きくなり、焼成温度が高くなることで異常な粒子成長をした粒子ができてしまう傾向がある。ここで、部分酸化物の酸素濃度は、非分散赤外吸収法(ND-IR)により測定することができる。
還元性ガスは、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)等の炭化水素ガス及びそれらの組み合わせなどから適宜選択されるが、コストの点で水素ガスが好ましく、ガスの流量は、酸化物が飛散しない範囲で適宜調整される。前処理工程における熱処理温度(以下、前処理温度)は、300℃以上950℃以下が好ましく、下限は400℃以上がより好ましく、750℃以上がさらに好ましい。上限は900℃未満がより好ましい。前処理温度が300℃以上であるとSm、Fe、La、W及びRを含む酸化物の還元が効率的に進行する。また950℃以下であると酸化物粒子が粒子成長、偏析することが抑制され、所望の粒子径を維持することができる。熱処理時間は、特に限定されないが、1時間以上50時間以下とすることができる。また、還元性ガスとして水素を用いる場合、使用する酸化物層の厚みを20mm以下に調整し、更に反応炉内の露点を-10℃以下に調整することが好ましい。
[還元工程]
還元工程とは、前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程であり、例えば部分酸化物をカルシウム融体またはカルシウムの蒸気と接触することで還元が行われる。熱処理温度は、磁気特性の点より、920℃以上1200℃以下が好ましく、950℃以上1150℃以下がより好ましく、1000℃以上1100℃以下がさらに好ましい。
還元工程とは、前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程であり、例えば部分酸化物をカルシウム融体またはカルシウムの蒸気と接触することで還元が行われる。熱処理温度は、磁気特性の点より、920℃以上1200℃以下が好ましく、950℃以上1150℃以下がより好ましく、1000℃以上1100℃以下がさらに好ましい。
還元工程における上述の熱処理とは別の熱処理として、950℃以上1150℃以下の第一温度で熱処理した後、第一温度よりも低い930℃以上1130℃以下の第二温度で熱処理してもよい。第一温度は、1000℃以上1100℃以下が好ましく、第二温度は、980℃以上1080℃以下が好ましい。第一温度と第二温度の温度差は、第二温度が第一温度よりも10℃以上60℃以下の範囲で低いことが好ましく、10℃以上30℃以下の範囲で低いことがより好ましい。第一温度による熱処理と第二温度による熱処理は連続で行っても良く、これらの熱処理間において、第二温度より低い温度での熱処理を含むこともできるが、生産性の点で、連続で行うことが好ましい。各熱処理時間は、還元反応をより均一に行う観点から、120分未満が好ましく、90分未満がより好ましく、熱処理時間の下限は10分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。
還元剤である金属カルシウムは、粒状又は粉末状の形で使用されるが、その平均粒子径は10mm以下が好ましい。これにより還元反応時における凝集をより効果的に抑制することができる。また、金属カルシウムは、反応当量(希土類酸化物を還元するのに必要な化学量論量であり、Fe成分が酸化物の形である場合には、これを還元するために必要な分を含む)の1.1~3.0倍量の割合で添加することが好ましく、1.5~2.5倍量がより好ましい。
還元工程では、還元剤である金属カルシウムとともに、必要に応じて崩壊促進剤を使用することができる。この崩壊促進剤は、後述する後処理工程に際して、生成物の崩壊、粒状化を促進させるために適宜使用されるものであり、例えば、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、酸化カルシウム等のアルカリ土類酸化物などが挙げられる。これらの崩壊促進剤は、サマリウム酸化物当り1質量%以上30質量%以下、好ましくは5質量%以上30質量%以下の割合で使用される。
[窒化工程]
窒化工程とは、還元工程で得られた合金粒子を窒化処理することにより、異方性の磁性粒子を得る工程である。上述の沈殿工程で得られる粒子状の沈殿物を用いていることから、還元工程にて多孔質塊状の合金粒子が得られる。これにより、粉砕処理を行うことなく直ちに窒素雰囲気下で熱処理して窒化することができるため、窒化を均一に行うことができる。
窒化工程とは、還元工程で得られた合金粒子を窒化処理することにより、異方性の磁性粒子を得る工程である。上述の沈殿工程で得られる粒子状の沈殿物を用いていることから、還元工程にて多孔質塊状の合金粒子が得られる。これにより、粉砕処理を行うことなく直ちに窒素雰囲気下で熱処理して窒化することができるため、窒化を均一に行うことができる。
合金粒子の窒化処理における熱処理温度(以下、窒化温度)は、好ましくは300~610℃、特に好ましくは400~550℃の温度とし、この温度範囲で雰囲気を窒素雰囲気に置換することにより行われる。熱処理時間は、合金粒子の窒化が充分に均一に行われる程度に設定されればよい。
合金粒子の窒化処理における熱処理温度は、400℃以上470℃以下の第一温度で熱処理した後、480℃以上610℃以下の第二温度で熱処理して窒化処理することもできる。第一温度で窒化することなく、第二温度の高温で熱処理すると、窒化が急激に進行することにより異常発熱が生じ、SmFeN系異方性磁性粉末が分解し、磁気特性が大きく低下することがある。また、窒化工程における雰囲気は窒化の進行をより遅くできることから、実質的に窒素含有雰囲気下であることが好ましい。
ここでいう実質的にとは、不純物の混入等に起因して不可避的に窒素以外の元素が含まれることを考慮して使用しており、例えば、雰囲気における窒素の割合が95%以上であり、97%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
窒化工程における第一温度は、400℃以上470℃以下が好ましく、410℃以上450℃以下がより好ましい。400℃未満では、窒化の進行が非常に遅く、470℃を超えると、発熱により過窒化または分解が起こりやすくなる傾向にある。第一温度での熱処理時間は、特に限定されないが、1時間以上40時間以下が好ましく、20時間以下がより好ましい。1時間未満では、窒化が十分に進行しない場合があり、40時間を超えると、生産性が悪くなる。
第二温度は、480℃以上610℃以下が好ましく、500℃以上550℃以下がより好ましい。480℃未満では、粒子が大きいと窒化が十分に進行しない場合があり、610℃を超えると、過窒化または分解が起こりやすい。第二温度での熱処理時間は、15分以上5時間以下が好ましく、30分以上2時間以下がより好ましい。15分未満では、窒化が十分に進行しない場合があり、5時間を超えると、生産性が悪くなる。
第一温度による熱処理と第二温度による熱処理は連続で行っても良く、これらの熱処理間において、第二温度より低い温度での熱処理を含むこともできるが、生産性の点で、連続で行うことが好ましい。
[後処理工程]
窒化工程後に得られる生成物には、磁性粒子に加えて、副生するCaO、未反応の金属カルシウム等が含まれ、これらが複合した焼結塊状態となっている場合がある。窒化工程後に得られる生成物を冷却水中に投入して、CaO及び金属カルシウムを水酸化カルシウム(Ca(OH)2)懸濁物としてSmFeN系異方性磁性粉末から分離することができる。さらに残留する水酸化カルシウムは、SmFeN系異方性磁性粉末を酢酸等で洗浄して充分に除去してもよい。生成物を水中に投入した際には、金属カルシウムの水による酸化及び副生CaOの水和反応によって、複合した焼結塊状の反応生成物の崩壊、すなわち微粉化が進行する。
窒化工程後に得られる生成物には、磁性粒子に加えて、副生するCaO、未反応の金属カルシウム等が含まれ、これらが複合した焼結塊状態となっている場合がある。窒化工程後に得られる生成物を冷却水中に投入して、CaO及び金属カルシウムを水酸化カルシウム(Ca(OH)2)懸濁物としてSmFeN系異方性磁性粉末から分離することができる。さらに残留する水酸化カルシウムは、SmFeN系異方性磁性粉末を酢酸等で洗浄して充分に除去してもよい。生成物を水中に投入した際には、金属カルシウムの水による酸化及び副生CaOの水和反応によって、複合した焼結塊状の反応生成物の崩壊、すなわち微粉化が進行する。
[アルカリ処理工程]
窒化工程後に得られる生成物をアルカリ溶液中に投入してもよい。アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液としては、たとえば水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などが挙げられる。なかでも、排水処理、高pHの点で、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。窒化工程後に得られる生成物のアルカリ処理において、酸素をある程度含有するSmリッチ層が残存して保護層として機能するため、アルカリ処理により酸素濃度が増大することを抑制している。
窒化工程後に得られる生成物をアルカリ溶液中に投入してもよい。アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液としては、たとえば水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などが挙げられる。なかでも、排水処理、高pHの点で、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。窒化工程後に得られる生成物のアルカリ処理において、酸素をある程度含有するSmリッチ層が残存して保護層として機能するため、アルカリ処理により酸素濃度が増大することを抑制している。
アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液のpHは特に限定されないが、9以上が好ましく、10以上がより好ましい。pHが9未満では、水酸化カルシウムになる際の反応速度が速く、発熱が大きくなるため、最終的に得られるSmFeN系異方性磁性粉末の酸素濃度が高くなる傾向がある。
アルカリ処理工程において、アルカリ溶液で処理した後に得られたSmFeN系異方性磁性粉末は、必要によりデカンテーションなどの方法で水分を低減することもできる。
[酸処理工程]
アルカリ処理工程の後に、さらに酸で処理する酸処理工程を含んでもよい。酸処理工程では、前述のSmリッチ層の少なくとも一部を除去して、磁性粉末全体中の酸素濃度を低減する。また、本発明の実施形態にある製造方法では、粉砕等を行わないため、SmFeN系異方性磁性粉末の平均粒子径が小さく、粒度分布が狭く、また粉砕等で生じる微粉を含まないため、酸素濃度の増加を抑制することが可能となる。
アルカリ処理工程の後に、さらに酸で処理する酸処理工程を含んでもよい。酸処理工程では、前述のSmリッチ層の少なくとも一部を除去して、磁性粉末全体中の酸素濃度を低減する。また、本発明の実施形態にある製造方法では、粉砕等を行わないため、SmFeN系異方性磁性粉末の平均粒子径が小さく、粒度分布が狭く、また粉砕等で生じる微粉を含まないため、酸素濃度の増加を抑制することが可能となる。
酸処理工程に用いる酸としては、特に限定されず、たとえば塩化水素、硝酸、硫酸、酢酸などが挙げられる。なかでも、不純物が残留しない点で、塩化水素、硝酸が好ましい。
酸処理工程に用いる酸の使用量は、SmFeN系異方性磁性粉末100質量部に対して3.5質量部以上13.5質量部以下が好ましく、4質量部以上10質量部以下がより好ましい。3.5質量部未満では、SmFeN系異方性磁性粉末表面の酸化物が残り、酸素濃度が高くなり、13.5質量部を超えると、大気に暴露した際に再酸化が起こりやすく、また、SmFeN系異方性磁性粉末を溶解するため、コストも高くなる傾向がある。酸の量をSmFeN系異方性磁性粉末100質量部に対して3.5質量部以上13.5質量部以下とすることにより、酸処理後に大気に暴露した際に再酸化が起こりにくい程度に酸化されたSmリッチ層がSmFeN系異方性磁性粉末表面を覆うことができるので、酸素濃度が低く、平均粒子径が小さく、粒度分布の狭いSmFeN系異方性磁性粉末が得られる。
酸処理工程において、酸で処理した後に得られたSmFeN系異方性磁性粉末は、必要によりデカンテーションなどの方法で水分を低減することもできる。
[脱水工程]
酸処理工程の後に、脱水処理する工程を含むことが好ましい。脱水処理によって、真空乾燥前の固形分中の水分を低減させ、真空乾燥前の固形分が水分をより多く含むことにより生じる乾燥時の酸化の進行を抑制することができる。ここで、脱水処理は、圧力や遠心力を加えることで、処理前の固形分に対して処理後の固形分に含まれる水分値を低減する処理のことを意味し、単なるデカンテーションや濾過や乾燥は含まない。脱水処理方法は特に限定されないが、圧搾、遠心分離などが挙げられる。
酸処理工程の後に、脱水処理する工程を含むことが好ましい。脱水処理によって、真空乾燥前の固形分中の水分を低減させ、真空乾燥前の固形分が水分をより多く含むことにより生じる乾燥時の酸化の進行を抑制することができる。ここで、脱水処理は、圧力や遠心力を加えることで、処理前の固形分に対して処理後の固形分に含まれる水分値を低減する処理のことを意味し、単なるデカンテーションや濾過や乾燥は含まない。脱水処理方法は特に限定されないが、圧搾、遠心分離などが挙げられる。
脱水処理後のSmFeN系異方性磁性粉末に含まれる水分量は特に限定されないが、酸化の進行を抑制する点から13質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
酸処理して得られたSmFeN系異方性磁性粉末、または、酸処理後、脱水処理して得られたSmFeN系異方性磁性粉末は、真空乾燥することが好ましい。乾燥温度は特に限定されないが、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。乾燥時間も特に限定されないが、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましい。
得られたSmFeN系異方性磁性粉末は、Sm、Fe、La、W、R(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)およびNを含み、平均粒子径が2.0μm以上4.0μm以下、残留磁化σrが152emu/g以上、酸素含有量が0.5質量%以下であることが好ましい。
SmFeN系異方性磁性粉末の平均粒子径は、例えば、磁気特性の点から2.0μm以上4.0μm以下とすることができ、好ましくは2.3μm以上3.5μm以下とすることができる。ここで、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて乾式条件で測定した粒子径を意味する。
SmFeN系異方性磁性粉末の粒径D10は、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。0.5μm未満では、SmFeN系異方性磁性粉末の磁化が大きく低下する傾向がある。ここで、D10とは、SmFeN系異方性磁性粉末の体積基準による粒度分布の積算値が10%に相当する粒径である。
SmFeN系異方性磁性粉末の粒径D50は、2.0μm以上3.5μm以下が好ましく、2.5μm以上3.2μm以下がより好ましい。2.0μm未満では、焼結磁石中のSmFeN系異方性磁性粉末の充填量が小さくなるため磁化が低下し、3.5μmを超えると、磁性粉末が凝集し磁気特性を低下する傾向がある。ここで、D50とは、SmFeN系異方性磁性粉末の体積基準による粒度分布の積算値が50%に相当する粒径である。
SmFeN系異方性磁性粉末の粒径D90は、3.5μm以上5.5μm以下が好ましく、4.0μm以上5.0μm以下がより好ましい。3.5μm未満では、焼結磁石中のSmFeN系異方性磁性粉末の充填量が小さくなるため磁化が低下し、5.5μmを超えると、焼結磁石の保磁力が低下する傾向がある。ここで、D90とは、SmFeN系異方性磁性粉末の体積基準による粒度分布の積算値が90%に相当する粒径である。
残留磁化σrは152emu/g以上であるが、153emu/g以上が好ましい。
SmFeN系異方性磁性粉末に含まれる酸素含有量は0.5質量%以下であるが、0.4質量%以下が好ましく、0.35質量%以下がより好ましい。0.5質量%を超えると、粒子表面に酸素が多く存在し、α-Feが生成する原因となる。なお酸素含有量の分析は、すべての工程終了後に得られたSmFeN系異方性磁性粉末を大気中に30分以上放置した後に行うものとする。
得られたSmFeN系異方性磁性粉末は、典型的には下記一般式
SmvFe(100-v―w-x-y-z)NwLaxWyRz
(式中、3≦v≦30、5≦w≦15、0.05≦x≦0.3、0.05≦y≦2.5、0.0001≦z≦0.3である。)
で表される。
SmvFe(100-v―w-x-y-z)NwLaxWyRz
(式中、3≦v≦30、5≦w≦15、0.05≦x≦0.3、0.05≦y≦2.5、0.0001≦z≦0.3である。)
で表される。
一般式において、vを3以上30以下と規定するのは、3未満では鉄成分の未反応部分(α-Fe相)が分離してSmFeN系異方性磁性粉末の保磁力が低下し、実用的な磁石ではなくなり、30を超えると、Smの元素が析出し、SmFeN系異方性磁性粉末が大気中で不安定になり、残留磁束密度が低下するからである。また、wを5以上15以下と規定するのは、5未満では、ほとんど保磁力が発現できず、15を越えるとSmや、鉄自体の窒化物が生成するからである。xを0.05以上0.3以下と規定するのは、0.05未満では添加の効果が十分ではなく、0.3を越えるとSmや、鉄自体の窒化物が生成し、磁化が大きく低下するからである。yを0.05以上2.5以下と規定するのは、0.05未満では添加の効果が十分ではなく、2.5を越えるとSmや、鉄自体の窒化物が生成し、磁化が大きく低下するからである。zを0.0001以上0.3以下と規定するのは、0.0001未満では添加の効果が十分ではなく、0.3を越えるとSmや、鉄自体の窒化物が生成し、磁化が大きく低下するからである。
Laの含有量は、残留磁束密度の点から、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.15質量%以上1質量%以下がより好ましい。
Wの含有量は、保磁力の点から、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.15質量%以上1質量%以下がより好ましい。
Rの含有量は、温度特性の点から、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
Nの含有量は、3.3質量%以上3.5質量%以下が好ましい。3.5質量%を超えると、過窒化となり、3.3質量%未満では、窒化不十分となりともに磁気特性が低下する傾向がある。
SmFeN系異方性磁性粉末の下記式
スパン=(D90-D10)/D50
(ここで、D10、D50、D90は、体積基準による粒度分布の積算値がそれぞれ10%、50%、90%に相当する粒子径である。)
で定義されるスパンは2以下であるが、1.8以下が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.3以下が特に好ましい。2を超えると、大きな粒子が存在しており、磁気特性が低下する傾向がある。
スパン=(D90-D10)/D50
(ここで、D10、D50、D90は、体積基準による粒度分布の積算値がそれぞれ10%、50%、90%に相当する粒子径である。)
で定義されるスパンは2以下であるが、1.8以下が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.3以下が特に好ましい。2を超えると、大きな粒子が存在しており、磁気特性が低下する傾向がある。
SmFeN系異方性磁性粉末の円形度の平均値が、0.50以上が好ましく、0.70以上がより好ましく、0.75以上が特に好ましい。円形度が0.50を下回った場合、流動性が悪くなることで、磁場成形時に粒子間で応力がかかるため磁気特性が低下する。円形度の測定には、走査電子顕微鏡(SEM)を用い、住友金属テクノロジーの粒子解析Ver.3を画像解析ソフトとして用いる。3000倍で撮影したSEM画像を画像処理で二値化し、粒子1個に対して、円形度を求める。本発明で規定する円形度とは、1000個~10000個程度の粒子を計測して求めた円形度の平均値を意味する。一般的に粒子径が小さい粒子が多くなるほど円形度は高くなるため、1μm以上の粒子について円形度の測定を行った。円形度の測定においては定義式:円形度=(4πS/L2)を用いる。但し、Sは、粒子の二次元投影面積、Lは二次元投影周囲長である。
[改質材粉末との混合工程]
混合工程では、分散されたSmFeN系異方性磁性粉末と改質材粉末を混合して、混合粉末を得る。改質材粉末としては、亜鉛、亜鉛合金又はそれらの組み合わせが挙げられる。改質材粉末の配合量は、残留磁化の点からSmFeN系異方性磁性粉末に対して、上限は、例えば15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下がより好ましい。下限は、例えば1質量%以上とすることができる。
混合工程では、分散されたSmFeN系異方性磁性粉末と改質材粉末を混合して、混合粉末を得る。改質材粉末としては、亜鉛、亜鉛合金又はそれらの組み合わせが挙げられる。改質材粉末の配合量は、残留磁化の点からSmFeN系異方性磁性粉末に対して、上限は、例えば15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下がより好ましい。下限は、例えば1質量%以上とすることができる。
亜鉛合金をZn-M2で表すと、M2は、Zn(亜鉛)と合金化して、亜鉛合金の溶融開始温度を、Znの融点よりも降下させる元素及び不可避的不純物元素から選択することができる。これにより、後述する加圧焼結工程で、焼結性が向上する。Znの融点よりも降下させるM2としては、ZnとM2とで共晶合金を形成する元素等が挙げられる。このようなM2としては、典型的には、Sn、Mg、及びAl並びにこれらの組み合せ等が挙げられる。Snはスズ、Mgはマグネシウム、そして、Alはアルミニウムである。これらの元素による融点降下作用、及び、成果物の特性を阻害しない元素についても、M2として選択することができる。また、不可避的不純物元素とは、改質材粉末の原材料に含まれる不純物等、その含有を回避することが避けられない、あるいは、回避するためには著しい製造コストの上昇を招くような不純物元素のことをいう。
Zn-M2で表される亜鉛合金において、Zn及びM2の割合(モル比)は、焼結温度が適正になるように適宜決定すればよい。亜鉛合金全体に対するM2の割合(モル比)は、例えば、0.05以上、0.10以上、又は0.20以上であってよく、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、又は0.30以下であってよい。
改質材粉末の粒径D50(メジアン径)は、特に限定されないが、0.1μm以上、0.5μm以上、1μm以上、又は2μm以上であってよく、12μm以下、11μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、又は4μm以下であってよい。粒径D50(メジアン径)は、例えば、乾式レーザー回折・散乱法によって測定される。
改質材粉末の酸素含有量が少ないと、SmFeN粉末中の酸素を多く吸収できて好ましい。この観点からは、改質材粉末の酸素含有量は、改質材粉末全体に対し、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がより一層好ましい。一方、改質材粉末の酸素の含有量を極度に低減することは、製造コストの増大を招く。このことから、改質材粉末の酸素の含有量は、改質材粉末全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってよい。
改質材粉末との混合方法は特に限定されず、乳鉢、マラーホイール式ミキサー、アジテータ式ミキサー、メカノフュージョン、V型混合器、及びボールミル等が挙げられる。これらの方法を組み合わせることもできる。なお、V型混合器は、2つの筒型容器をV型に連結した容器を備え、その容器を回転することにより、容器中の粉末が、重力と遠心力で集合と分離が繰り返され、混合される装置である。
[磁場成形工程]
磁場成形工程では、混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得る。磁場配向により、磁場成形体に配向性を付与することができ、SmFeN系希土類磁石に異方性を付与して残留磁化を向上させることができる。 磁場成形方法は、周囲に磁場発生装置を設置した成形型を用いて、混合粉末を圧縮成形する方法等、周知の方法が適用できる。成形圧力は、10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、50MPa以上、100MPa以上、又は150MPa以上であってよく、1500MPa以下、1000MPa以下、又は500MPa以下であってよい。印加する磁場の大きさは、500kA/m以上、1000kA/m以上、1500kA/m以上、又は1600kA/m以上であってよく、20000kA/m以下、15000kA/m以下、10000kA/m以下、5000kA/m以下、3000kA/m以下、又は2000kA/m以下であってよい。磁場の印加方法としては、電磁石を用いた静磁場を印加する方法、及び交流を用いたパルス磁場を印加する方法等が挙げられる。
磁場成形工程では、混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得る。磁場配向により、磁場成形体に配向性を付与することができ、SmFeN系希土類磁石に異方性を付与して残留磁化を向上させることができる。 磁場成形方法は、周囲に磁場発生装置を設置した成形型を用いて、混合粉末を圧縮成形する方法等、周知の方法が適用できる。成形圧力は、10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、50MPa以上、100MPa以上、又は150MPa以上であってよく、1500MPa以下、1000MPa以下、又は500MPa以下であってよい。印加する磁場の大きさは、500kA/m以上、1000kA/m以上、1500kA/m以上、又は1600kA/m以上であってよく、20000kA/m以下、15000kA/m以下、10000kA/m以下、5000kA/m以下、3000kA/m以下、又は2000kA/m以下であってよい。磁場の印加方法としては、電磁石を用いた静磁場を印加する方法、及び交流を用いたパルス磁場を印加する方法等が挙げられる。
[加圧焼結工程]
加圧焼結工程では、磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得る。加圧焼結の方法は、特に限定されず、例えば、キャビティを有するダイスと、キャビティの内部を摺動可能なパンチを準備し、キャビティの内部に磁場成形体を挿入し、パンチで磁場成形体に圧力を付加しつつ、磁場成形体を焼結する方法等が挙げられる。磁場成形体に圧力を付与しつつ、磁場成形体を焼結(以下、「加圧焼結」ということがある。)できるように、加圧焼結条件を適宜選択することができる。焼結温度が300℃以上であれば、磁場成形体中で、SmFeN系異方性磁性粉末の粒子表面のFeと改質材粉末(たとえば金属亜鉛)とが僅かに相互拡散して、焼結に寄与する。焼結温度は、例えば、310℃以上、320℃以上、340℃以上、又は350℃以上であってよい。一方、焼結温度が400℃以下であれば、SmFeN系異方性磁性粉末の粒子表面のFeと改質材粉末とが過剰に相互拡散することはなく、後述する熱処理工程に支障を生じたり、得られた焼結体の磁気特性に悪影響を及ぼしたりすることはない。これらの観点からは、焼結温度は、400℃以下、390℃以下、380℃以下、又は370℃以下であってよい。
加圧焼結工程では、磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得る。加圧焼結の方法は、特に限定されず、例えば、キャビティを有するダイスと、キャビティの内部を摺動可能なパンチを準備し、キャビティの内部に磁場成形体を挿入し、パンチで磁場成形体に圧力を付加しつつ、磁場成形体を焼結する方法等が挙げられる。磁場成形体に圧力を付与しつつ、磁場成形体を焼結(以下、「加圧焼結」ということがある。)できるように、加圧焼結条件を適宜選択することができる。焼結温度が300℃以上であれば、磁場成形体中で、SmFeN系異方性磁性粉末の粒子表面のFeと改質材粉末(たとえば金属亜鉛)とが僅かに相互拡散して、焼結に寄与する。焼結温度は、例えば、310℃以上、320℃以上、340℃以上、又は350℃以上であってよい。一方、焼結温度が400℃以下であれば、SmFeN系異方性磁性粉末の粒子表面のFeと改質材粉末とが過剰に相互拡散することはなく、後述する熱処理工程に支障を生じたり、得られた焼結体の磁気特性に悪影響を及ぼしたりすることはない。これらの観点からは、焼結温度は、400℃以下、390℃以下、380℃以下、又は370℃以下であってよい。
焼結圧力については、焼結体の密度を高めることができる焼結圧力を、適宜選択することができる。焼結圧力は、典型的には、100MPa以上、200MPa以上、400MPa以上、600MPa以上、800MPa以上、又は1000MPa以上であってよく、2000MPa以下、1800MPa以下、1600MPa以下、1500MPa以下、1300MPa以下、又は1200MPa以下であってよい。
焼結時間は、SmFeN系異方性磁性粉末の粒子表面のFeと改質材粉末の金属亜鉛とが僅かに相互拡散するよう、適宜決定することができる。なお、焼結時間には、熱処理温度に達するまでの昇温時間は含まない。焼結時間は、例えば、1分以上、2分以上、又は3分以上であってよく、30分以下、20分以下、10分以下、又は5分以下であってよい。
焼結時間が経過したら、焼結体を冷却して、焼結を終了する。冷却速度は、速い方が、焼結体の酸化等を抑制することができる。冷却速度は、例えば、0.5℃/秒以上200℃/秒以下であってよい。焼結雰囲気については、磁場成形体及び焼結体の酸化を抑制するため、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気には、窒素ガス雰囲気を含む。
[熱処理工程]
熱処理工程では、焼結体を熱処理する。熱処理により、SmFeN系異方性磁性粉末の粒子に関し、粒子表面で被膜状にFe-Zn合金相が形成され、SmFeN系異方性磁性粉末の粒子と改質材粉末の粒子とをより一層強固に結合(以下、「固化」ということがある。)すると同時に、改質が促進される。熱処理温度が、350℃以上であれば、粒子のほぼ全体でFe-Zn合金相が適切に形成され、固化及び改質ができる。熱処理温度は、360℃以上、370℃以上、又は380℃以上であってもよい。
熱処理工程では、焼結体を熱処理する。熱処理により、SmFeN系異方性磁性粉末の粒子に関し、粒子表面で被膜状にFe-Zn合金相が形成され、SmFeN系異方性磁性粉末の粒子と改質材粉末の粒子とをより一層強固に結合(以下、「固化」ということがある。)すると同時に、改質が促進される。熱処理温度が、350℃以上であれば、粒子のほぼ全体でFe-Zn合金相が適切に形成され、固化及び改質ができる。熱処理温度は、360℃以上、370℃以上、又は380℃以上であってもよい。
SmFeN系異方性磁性粉末中の磁性相は、Th2Zn17型及び/又はTh2Ni17型の結晶構造を有しており、熱処理時間が40時間で、Fe-Zn合金相の形成が飽和する。経済性(短時間化)の観点から、熱処理時間は、40時間以下、35時間以下、30時間以下、25時間以下、又は24時間以下であることが好ましい。焼結体の酸化を抑制するため、真空中又は不活性ガス雰囲気中で焼結体を熱処理することが好ましい。ここで、不活性ガス雰囲気には、窒素ガス雰囲気を含む。焼結体の熱処理は、加圧焼結に用いた型内で行ってもよいが、熱処理中は焼結体に圧力を印加しない。これにより、上述した熱処理条件を満足すれば、正常な磁性相とFe-Zn合金相が適切に生成され、FeとZnとが過剰に相互拡散することはない。
以下、実施例について説明する。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
[評価]
SmFeN系異方性磁性粉末の各金属の含有量、平均粒子径、粒度分布、窒素含有量、酸素含有量、残留磁化σrは、以下の方法で評価した。
SmFeN系異方性磁性粉末の各金属の含有量、平均粒子径、粒度分布、窒素含有量、酸素含有量、残留磁化σrは、以下の方法で評価した。
<各金属の含有量>
SmFeN系異方性磁性粉末の各金属(Sm、Fe、W等)の含有量は、塩酸溶解してICP-AES法(装置名:Optima8300)により測定した。
SmFeN系異方性磁性粉末の各金属(Sm、Fe、W等)の含有量は、塩酸溶解してICP-AES法(装置名:Optima8300)により測定した。
<平均粒子径および粒度分布>
SmFeN系異方性磁性粉末の平均粒子径および粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日本レーザー株式会社のHELOS&RODOS)により測定した。
SmFeN系異方性磁性粉末の平均粒子径および粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日本レーザー株式会社のHELOS&RODOS)により測定した。
<円形度>
円形度係数は、SmFeN系異方性磁性粉末を3000倍で撮影したSEM画像について画像処理ソフト(住友金属テクノロジー株式会社粒子解析Ver3)により二値化して計算した。
円形度係数は、SmFeN系異方性磁性粉末を3000倍で撮影したSEM画像について画像処理ソフト(住友金属テクノロジー株式会社粒子解析Ver3)により二値化して計算した。
<窒素含有量および酸素含有量>
SmFeN系異方性磁性粉末の窒素含有量および酸素含有量は、熱伝導度法(株式会社堀場製作所製のEMGA-820)により測定した。
SmFeN系異方性磁性粉末の窒素含有量および酸素含有量は、熱伝導度法(株式会社堀場製作所製のEMGA-820)により測定した。
<残留磁化σr、保磁力iHcおよび角形比Hk>
得られたSmFeN系異方性磁性粉末を、パラフィンワックスと共に試料容器に詰め、ドライヤーにてパラフィンワックスを溶融させた後、16kA/mの配向磁場にてその磁化容易磁区を揃えた。この磁場配向した試料を32kA/mの着磁磁場でパルス着磁し、最大磁場16kA/mのVSM(振動試料型磁力計)を用いて、残留磁化σr、保磁力iHc、角形比Hkを測定した。
得られたSmFeN系異方性磁性粉末を、パラフィンワックスと共に試料容器に詰め、ドライヤーにてパラフィンワックスを溶融させた後、16kA/mの配向磁場にてその磁化容易磁区を揃えた。この磁場配向した試料を32kA/mの着磁磁場でパルス着磁し、最大磁場16kA/mのVSM(振動試料型磁力計)を用いて、残留磁化σr、保磁力iHc、角形比Hkを測定した。
製造例1
[沈殿工程]
純水2.0kgにFeSO4・7H2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm2O3 0.49kg、La2O3 0.035kg、酸化チタン0.006kg、70%硫酸0.74kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLaTi硫酸溶液とした。
[沈殿工程]
純水2.0kgにFeSO4・7H2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm2O3 0.49kg、La2O3 0.035kg、酸化チタン0.006kg、70%硫酸0.74kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLaTi硫酸溶液とした。
温度が40℃に保たれた純水20kg中に、調製したSmFeLaTi硫酸溶液全量を反応開始から70分間で攪拌しながら滴下し、同時に15質量%アンモニア液と13質量%のタングステン酸アンモニウム溶液0.190kgを滴下させ、pHを7~8に調整した。これにより、SmFeLaWTi水酸化物を含むスラリーを得た。デカンテーションにより純水で洗浄した後、水酸化物を固液分離した。分離した水酸化物を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。
[酸化工程]
沈殿工程で得られた水酸化物を大気中1000℃で1時間、焼成処理した。冷却後、原料粉末として赤色のSmFeLaWTi酸化物を得た。
沈殿工程で得られた水酸化物を大気中1000℃で1時間、焼成処理した。冷却後、原料粉末として赤色のSmFeLaWTi酸化物を得た。
[前処理工程]
SmFeLaWTi酸化物100gを、嵩厚10mmとなるように鋼製容器に入れた。容器を炉内に入れ、100Paまで減圧した後、水素ガスを導入しながら、前処理温度の850℃まで昇温し、そのまま15時間保持した。非分散赤外吸収法(ND-IR)(株式会社堀場製作所製のEMGA-820)により酸素濃度を測定したところ、5質量%であった。これにより、Smと結合している酸素は還元されず、Feと結合している酸素のうち、95%が還元される黒色の部分酸化物を得たことがわかった。
SmFeLaWTi酸化物100gを、嵩厚10mmとなるように鋼製容器に入れた。容器を炉内に入れ、100Paまで減圧した後、水素ガスを導入しながら、前処理温度の850℃まで昇温し、そのまま15時間保持した。非分散赤外吸収法(ND-IR)(株式会社堀場製作所製のEMGA-820)により酸素濃度を測定したところ、5質量%であった。これにより、Smと結合している酸素は還元されず、Feと結合している酸素のうち、95%が還元される黒色の部分酸化物を得たことがわかった。
[還元工程]
前処理工程で得られた部分酸化物60gと平均粒子径約6mmの金属カルシウム19.2gとを混合して炉内に入れた。炉内を真空排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入した。1060℃まで上昇させて、45分間保持することにより、SmFeLaWTi合金粒子を得た。
前処理工程で得られた部分酸化物60gと平均粒子径約6mmの金属カルシウム19.2gとを混合して炉内に入れた。炉内を真空排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入した。1060℃まで上昇させて、45分間保持することにより、SmFeLaWTi合金粒子を得た。
[窒化工程]
引き続き、炉内温度を100℃まで冷却した後、真空排気を行い、窒素ガスを導入しながら、第一温度の430℃まで上昇させて、3時間保持した。続いて第二温度の520℃まで上昇させて1時間保持した後、冷却して磁性粒子を含む塊状生成物を得た。
引き続き、炉内温度を100℃まで冷却した後、真空排気を行い、窒素ガスを導入しながら、第一温度の430℃まで上昇させて、3時間保持した。続いて第二温度の520℃まで上昇させて1時間保持した後、冷却して磁性粒子を含む塊状生成物を得た。
[後処理工程]
窒化工程で得られた塊状の生成物を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを10回繰り返した。次いで99.9%酢酸2.5gを投入して15分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。固液分離した後、80℃で真空乾燥を3時間行い、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
窒化工程で得られた塊状の生成物を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを10回繰り返した。次いで99.9%酢酸2.5gを投入して15分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。固液分離した後、80℃で真空乾燥を3時間行い、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
[酸処理工程]
後処理工程で得られた粉末100質量部に対して、塩化水素として4.3質量部となるように、6%塩酸水溶液を添加して、1分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。固液分離した後、80℃で真空乾燥を3時間行い、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
後処理工程で得られた粉末100質量部に対して、塩化水素として4.3質量部となるように、6%塩酸水溶液を添加して、1分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。固液分離した後、80℃で真空乾燥を3時間行い、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
製造例2
[沈殿工程]
純水2.0kgにFeSO4・7H2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm2O3 0.49kg、La2O3 0.035kg、炭酸ストロンチウム0.010kg、70%硫酸0.74kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLaSr硫酸溶液とした。
[沈殿工程]
純水2.0kgにFeSO4・7H2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm2O3 0.49kg、La2O3 0.035kg、炭酸ストロンチウム0.010kg、70%硫酸0.74kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLaSr硫酸溶液とした。
温度が40℃に保たれた純水20kg中に、調製したSmFeLaSr硫酸溶液全量を反応開始から70分間で攪拌しながら滴下し、同時に15質量%アンモニア液と13質量%のタングステン酸アンモニウム溶液0.190kgを滴下させ、pHを7~8に調整した。これにより、SmFeLaWSr水酸化物を含むスラリーを得た。デカンテーションにより純水で洗浄した後、水酸化物を固液分離した。分離した水酸化物を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。
酸化工程、前処理工程、還元工程、窒化工程、後処理工程、酸処理工程は、製造例1と同様に行った。
製造例3
[沈殿工程]
純水2.0kgにFeSO4・7H2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm2O3 0.49kg、La2O3 0.035kg、炭酸バリウム0.014kg、70%硫酸0.74kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLaBa硫酸溶液とした。
[沈殿工程]
純水2.0kgにFeSO4・7H2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm2O3 0.49kg、La2O3 0.035kg、炭酸バリウム0.014kg、70%硫酸0.74kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLaBa硫酸溶液とした。
温度が40℃に保たれた純水20kg中に、調製したSmFeLaBa硫酸溶液全量を反応開始から70分間で攪拌しながら滴下し、同時に15質量%アンモニア液と13質量%のタングステン酸アンモニウム溶液0.190kgを滴下させ、pHを7~8に調整した。これにより、SmFeLaWBa水酸化物を含むスラリーを得た。デカンテーションにより純水で洗浄した後、水酸化物を固液分離した。分離した水酸化物を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。
酸化工程、前処理工程、還元工程、窒化工程、後処理工程、酸処理工程は、製造例1と同様に行った。
製造例4
[沈殿工程]
純水2.0kgにFeSO4・7H2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm2O3 0.49kg、La2O3 0.035kg、70%硫酸0.74kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLa硫酸溶液とした。
[沈殿工程]
純水2.0kgにFeSO4・7H2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm2O3 0.49kg、La2O3 0.035kg、70%硫酸0.74kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLa硫酸溶液とした。
温度が40℃に保たれた純水20kg中に、調製したSmFeLa硫酸溶液全量を反応開始から70分間で攪拌しながら滴下し、同時に15質量%アンモニア液を滴下させ、pHを7~8に調整した。これにより、SmFeLa水酸化物を含むスラリーを得た。デカンテーションにより純水で洗浄した後、水酸化物を固液分離した。分離した水酸化物を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。
[酸化工程]
沈殿工程で得られた水酸化物を大気中1000℃で1時間、焼成処理した。冷却後、原料粉末として赤色のSmFeLa酸化物を得た。
沈殿工程で得られた水酸化物を大気中1000℃で1時間、焼成処理した。冷却後、原料粉末として赤色のSmFeLa酸化物を得た。
[前処理工程]
SmFeLa酸化物100gを、嵩厚10mmとなるように鋼製容器に入れた。容器を炉内に入れ、100Paまで減圧した後、水素ガスを導入しながら、前処理温度の850℃まで昇温し、そのまま15時間保持した。非分散赤外吸収法(ND-IR)(株式会社堀場製作所製のEMGA-820)により酸素濃度を測定したところ、5質量%であった。これにより、Smと結合している酸素は還元されず、Feと結合している酸素のうち、95%が還元される黒色の部分酸化物を得たことがわかった。
SmFeLa酸化物100gを、嵩厚10mmとなるように鋼製容器に入れた。容器を炉内に入れ、100Paまで減圧した後、水素ガスを導入しながら、前処理温度の850℃まで昇温し、そのまま15時間保持した。非分散赤外吸収法(ND-IR)(株式会社堀場製作所製のEMGA-820)により酸素濃度を測定したところ、5質量%であった。これにより、Smと結合している酸素は還元されず、Feと結合している酸素のうち、95%が還元される黒色の部分酸化物を得たことがわかった。
[還元工程]
前処理工程で得られた部分酸化物60gと平均粒子径約6mmの金属カルシウム19.2gとを混合して炉内に入れた。炉内を真空排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入した。1045℃の第一温度まで上昇させて、45分間保持し、その後、1000℃の第二温度に冷却して30分間保持することにより、SmFeLa合金粒子を得た。
前処理工程で得られた部分酸化物60gと平均粒子径約6mmの金属カルシウム19.2gとを混合して炉内に入れた。炉内を真空排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入した。1045℃の第一温度まで上昇させて、45分間保持し、その後、1000℃の第二温度に冷却して30分間保持することにより、SmFeLa合金粒子を得た。
[窒化工程]
引き続き、炉内温度を100℃まで冷却した後、真空排気を行い、窒素ガスを導入しながら、第一温度の430℃まで上昇させて、3時間保持した。続いて第二温度の500℃まで上昇させて1時間保持した後、冷却して磁性粒子を含む塊状生成物を得た。
引き続き、炉内温度を100℃まで冷却した後、真空排気を行い、窒素ガスを導入しながら、第一温度の430℃まで上昇させて、3時間保持した。続いて第二温度の500℃まで上昇させて1時間保持した後、冷却して磁性粒子を含む塊状生成物を得た。
[後処理工程]
窒化工程で得られた塊状の生成物を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを10回繰り返した。次いで99.9%酢酸2.5gを投入して15分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。固液分離した後、80℃で真空乾燥を3時間行い、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
窒化工程で得られた塊状の生成物を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを10回繰り返した。次いで99.9%酢酸2.5gを投入して15分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。固液分離した後、80℃で真空乾燥を3時間行い、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
製造例5
[沈殿工程]
純水2.0kgにFeSO4・7H2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm2O3 0.49kg、La2O3 0.035kg、70%硫酸0.74kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLa硫酸溶液とした。
[沈殿工程]
純水2.0kgにFeSO4・7H2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm2O3 0.49kg、La2O3 0.035kg、70%硫酸0.74kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLa硫酸溶液とした。
温度が40℃に保たれた純水20kg中に、調製したSmFeLa硫酸溶液全量と、18質量%のタングステン酸アンモニウム溶液0.14kgを反応開始から70分間で攪拌しながら滴下し、同時に15質量%アンモニア液を滴下させ、pHを7~8に調整した。これにより、SmFeLaW水酸化物を含むスラリーを得た。デカンテーションにより純水で洗浄した後、水酸化物を固液分離した。分離した水酸化物を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。
最後の酸処理工程を行わなかったこと以外、酸化工程、前処理工程、還元工程、窒化工程、後処理工程は、製造例1と同様に行った。
実施例1
[分散工程]
振動ミルに用いる容器の容積に対して、製造例1で得られたSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(鉄芯ナイロンメディア、直径10mm、被覆部ナイロンのビッカース定数7、比重7.48、ナイロン層厚み1~3mm程度)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
[分散工程]
振動ミルに用いる容器の容積に対して、製造例1で得られたSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(鉄芯ナイロンメディア、直径10mm、被覆部ナイロンのビッカース定数7、比重7.48、ナイロン層厚み1~3mm程度)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
実施例2
[分散工程]
振動ミルに用いる容器の容積に対して、製造例2で得られたSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(鉄芯ナイロンメディア、直径10mm、被覆部ナイロンのビッカース定数7、比重7.48、ナイロン層厚み1~3mm程度)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
[分散工程]
振動ミルに用いる容器の容積に対して、製造例2で得られたSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(鉄芯ナイロンメディア、直径10mm、被覆部ナイロンのビッカース定数7、比重7.48、ナイロン層厚み1~3mm程度)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
実施例3
[分散工程]
振動ミルに用いる容器の容積に対して、製造例3で得られたSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(鉄芯ナイロンメディア、直径10mm、被覆部ナイロンのビッカース定数7、比重7.48、ナイロン層厚み1~3mm程度)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
[分散工程]
振動ミルに用いる容器の容積に対して、製造例3で得られたSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(鉄芯ナイロンメディア、直径10mm、被覆部ナイロンのビッカース定数7、比重7.48、ナイロン層厚み1~3mm程度)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
比較例1
振動ミルに用いる容器の容積に対して、製造例4で得られたSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(クロム鋼球;SUJ2、直径2.3mm、ビッカース定数760、比重7.77)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
振動ミルに用いる容器の容積に対して、製造例4で得られたSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(クロム鋼球;SUJ2、直径2.3mm、ビッカース定数760、比重7.77)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
比較例2
振動ミルに用いる容器の容積に対して、製造例5で得られたSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(クロム鋼球;SUJ2、直径2.3mm、ビッカース定数760、比重7.77)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
振動ミルに用いる容器の容積に対して、製造例5で得られたSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(クロム鋼球;SUJ2、直径2.3mm、ビッカース定数760、比重7.77)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
比較例3
振動ミルに用いる容器の容積に対して、製造例4で得られたSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(ナイロン製、直径10mm、ビッカース定数7、比重1.13)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
振動ミルに用いる容器の容積に対して、製造例4で得られたSmFeN系異方性磁性粉末が5体積%、メディア(ナイロン製、直径10mm、ビッカース定数7、比重1.13)が60体積%となるようにSmFeN系異方性磁性粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、SmFeN系異方性磁性粉末を得た。
実施例1~3、比較例1~3で得られたSmFeN系異方性磁性粉末について、上述した方法により、平均粒子径、粒度分布、円形度、残留磁化σr、保磁力iHc、角形比Hk、酸素濃度および窒素濃度を測定した結果を表1に示し、各金属の含有量を測定した結果を表2、組成式を表3に示す。また、実施例1~3、比較例1、2で得られた磁性粉末について、走査電子顕微鏡(SU3500、日立ハイテクノロジーズ 5KV 5000倍)で撮影した。その結果を図1~5に示す。
ナイロン樹脂で被覆された鉄芯をメディアとして用いて分散した実施例1~3においては、樹脂で被覆されていないクロム鋼球をメディアとして用いて分散した比較例1、2やナイロン樹脂をメディアとして用いて分散した比較例3と比べて、残留磁束密度が高くなった。また、比較例1および比較例2では、図4および図5に示すように、磁性粉末の微小粒子が多いのに対して、実施例1~3では、図1から図3に示すように比較的少なかった。
(SmFeN系希土類磁石の作製)
実施例1~3、比較例1~3で得られたSmFeN系異方性磁性粉末を用いて以下の手順にてSmFeN系希土類磁石の作製を行った。
実施例1~3、比較例1~3で得られたSmFeN系異方性磁性粉末を用いて以下の手順にてSmFeN系希土類磁石の作製を行った。
[改質材粉末との混合工程]
改質材粉末として、金属亜鉛粉末を準備した。金属亜鉛粉末のD50は0.5μmであった。また、金属亜鉛粉末の純度は99.9質量%であった。
改質材粉末として、金属亜鉛粉末を準備した。金属亜鉛粉末のD50は0.5μmであった。また、金属亜鉛粉末の純度は99.9質量%であった。
実施例1~3、比較例1~3で得られたSmFeN系異方性磁性粉末と改質材粉末を混合して、混合粉末を得た。混合粉末に対する金属亜鉛の混合量は、5質量%であった。
[磁場成形工程]
混合粉末を磁場中で圧縮成形し磁場成形体を得た。圧縮成形の圧力は50MPaであっ
た。印加した磁場は1600kA/mであった。
混合粉末を磁場中で圧縮成形し磁場成形体を得た。圧縮成形の圧力は50MPaであっ
た。印加した磁場は1600kA/mであった。
[加圧焼結工程]
磁場成形体を加圧焼結し、焼結体を得た。加圧焼結の条件は、焼結温度400℃、焼結圧力1500MPa、焼結時間5分間であった。
磁場成形体を加圧焼結し、焼結体を得た。加圧焼結の条件は、焼結温度400℃、焼結圧力1500MPa、焼結時間5分間であった。
[熱処理工程]
焼結体を熱処理し、SmFeN系希土類磁石を得た。熱処理の条件は、真空雰囲気にて、熱処理温度380℃、熱処理時間24時間であった。
焼結体を熱処理し、SmFeN系希土類磁石を得た。熱処理の条件は、真空雰囲気にて、熱処理温度380℃、熱処理時間24時間であった。
得られたSmFeN系希土類磁石について、磁気特性を測定した。磁気特性は振動試料型磁力計(VSM)を用いて、室温で測定した。結果を表4に示す。
表4より、ナイロン樹脂で被覆された鉄芯をメディアとして用いて分散した実施例1~3では、樹脂で被覆されていないクロム鋼球をメディアとして用いて分散した比較例1、2や、ナイロン樹脂をメディアとして用いて分散した比較例3と比べて、SmFeN系希土類磁石の残留磁化および保磁力が高くなることを確認できた。
Claims (2)
- Sm、Fe、La、W、R(RはTi、BaおよびSrからなる群から選択される少なくとも1種)およびNを含むSmFeN系異方性磁性粉末を、樹脂で被覆された金属またはセラミックスのメディアを用いて分散し、分散されたSmFeN系異方性磁性粉末を得る工程と、
前記分散されたSmFeN系異方性磁性粉末と改質材粉末を混合して、混合粉末を得る工程と、
前記混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得る工程と、
前記磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得る工程と、および、前記焼結体を熱処理する工程と、を含む、SmFeN系希土類磁石の製造方法。 - 前記分散されたSmFeN系異方性磁性粉末は、平均粒子径が2.0μm以上4.0μm以下、残留磁化σrが152emu/g以上、酸素含有量が0.5質量%以下である請求項1に記載のSmFeN系希土類磁石の製造方法。
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