JP2004115921A - Sm−Fe−N系合金粉末及びその製造方法 - Google Patents

Sm−Fe−N系合金粉末及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 微粉砕などの機械的応力を加えることなくSm−Fe−N系の合金粉末を製造し、合金粉末の粒径と粒子形状の最適化を行うことにより、高い磁気性能をもつ合金粉末を得る。
【解決手段】 Sm−Fe−N系合金粉末であって、合金粉末の平均粒径は0.5〜10μmの範囲であり、円形度係数は78%以上であることを特徴とする。但し、円形度係数は、次のように定義された値である。
定義式:円形度係数=(4πS/L)×100%
 S=(粒子投影面積)
 L=(粒子像の周)
【選択図】 図2

Description

 本発明は、希土類元素のSm、遷移金属のFe、及び窒素系合金粉末に係り、特に、粒子形状が球状であり、磁気特性に優れた該合金粉末に関する。
 希土類−遷移金属系磁性材料はその高い磁気特性の為に、フェライト等に比べて非常に高価であるにも関わらず近年高い需要を示している。その中でも特にNd系磁石はSm系磁石に比べて磁気特性が高く、価格も安いことから希土類磁石の主流となっている。
 一方、R−Fe系合金に窒化を施したR−Fe−N系合金粉末は、キュリー点が150℃以上も上昇し、R−Fe−B系よりもさらに保磁力が高くなる可能性があること、磁気特性の温度変化が小さく安定していること、および高耐候性があることなど、優れた特性を示すことが見いだされ、開発が進められている。
 しかし、R−Fe−N系合金には、優れた点も多いが欠点もあることがわかった。すなわち、異方性磁界が高いものの所望の保磁力が得られにくいことであり、充分な保磁力を得るには微粉砕するか、Znなどの金属をバインダーとする金属ボンド磁石としなければならない。しかし、微粉砕は酸化や歪みなどの影響で他の磁気特性が低下するという問題が生ずる。また、金属バインダーは通常のボンド磁石に使用されるプラスチックと比較して相当高価であるから、現実的な方法ではない。
 磁性合金粉末には、固有の単磁区粒径があり、磁性粉末の粒径をこの単磁区粒径に近づけることでその保磁力が最大となることが知られている。希土類元素−遷移金属系磁性材料では単磁区粒径は数μmである。そこで、磁性材料としての合金粉末には、磁気特性の向上のためには微細な粒子を製造する技術が不可欠となる。
 これに対し、希土類酸化物粉末と遷移金属粉末を混合し、これをカルシウム蒸気中で加熱することで希土類酸化物を還元して遷移金属中に拡散させる還元拡散法が知られている。
特開昭61−295308号公報 特開平5−148517号公報 特開平5−279714号公報 特開昭6−81010号公報
 還元拡散法は安価な希土類酸化物を使用することや、合金が還元と同時にできるという利点があり、永久磁石用のSmCo金属間化合物又はSm−Co合金の製造では広くこの方法が用いられる。
 この還元拡散法において、粒子サイズが数μm以下の希土類の酸化物を原料に使用することで、得られる磁性粉末の粒子サイズは幾分小さくなったが、単磁区粒径に相当する微細な磁性体粉末を得るにはまだ十分な方法とはいえなかった。それは原料の鉄族金属の粒径が希土類元素酸化物に比べかなり大きいことに起因する。
 また、この焼結した粉末を窒化した後、単磁区粒子径まで微粉砕し、保磁力が出るようにしてからボンド磁石とすると、微粒子であるので充填率が低く成形体に占める磁石粉末の割合が制限されるため、得られたボンド磁石の残留磁化が低くなる。さらに、このボンド磁石を磁場配向させるとき、粉砕後の微粉粒子の形状がいびつであると、磁場中にて微粉粒子を磁化容易方向に整列させて成形をする成形工程において、その整列度合い、配向度を悪化させる問題がある。
 従って本発明の目的は、微粉砕などの機械的応力を用いることなくSm−Fe−N系の合金粉末の磁性材料を製造する方法を提供し、さらに、合金粉末の粒径と粒子形状の最適化を行うことにより高い磁気性能をもつ合金粉末を得ることを目的とする。
 本発明者等は、上記した問題を解決するために、粉砕工程を経ずに得られるSm−Fe−N系の合金粉末の粒径及び粒子形状の磁気特性に及ぼす影響について鋭意研究した結果、最適な粒径範囲と、粒子形状を見いだすことに成功した。
 すなわち、本発明のSm−Fe−N系合金粉末は、希土類元素のSmと、遷移元素のFeと、及び窒素からなる合金粉末であって、合金粉末の平均粒径は0.5〜10μmの範囲であり、針状度係数は75%以上であることを特徴とする。但し、針状度係数は、次のように定義された値である。
定義式:針状度係数(%)=(b/a)×100%
 a=粒子像の最長径
 b=aに垂直な最大径
 また、本発明は、次式で定義される円形度係数を用いて表すことができる。すなわち、本発明のSm−Fe−N系合金粉末は、希土類元素のSmと、遷移元素のFeと、及び窒素からなる合金粉末であって、合金粉末の平均粒径は0.5〜10μmの範囲であり、円形度係数は78%以上であることを特徴とする。但し、円形度係数は、次のように定義された値である。
定義式:円形度係数=(4πS/L)×100%
 S=(粒子投影面積)
 L=(粒子像の周)
 本発明によれば、以下のような効果を奏する。本発明の合金粉末は特定の粒子形状を有しているため、残留磁化および保磁力ともに顕著な向上が認められる。この理由は、粉砕などの機械的な応力をかけることなく、単磁区粒子径の微粉が得られるため、磁気特性を大きく左右する表面の歪やクラック、傷などが減少した結果、および球形粒子のため磁場配向が容易になった結果によると考えられる。
 また、本発明の合金粒子を用いてボンド磁石等の成形体を作る場合、成形体の残留磁化が向上する。それは、合金粒子を磁場中にて磁化容易方向に整列させて成形を行なう工程において、球状粒子の合金粉末を使用することにより、その整列度合いが大きく向上するからである。
 本発明の粒子を得るために水中で不溶性の塩を析出させる沈殿法を適用した場合、合金粉末を構成する元素が原料段階ですでに均質に混合されているので、得られる合金も均質なものが得やすい。従って材料固有の物性を引き出すことが可能となる。
 通常の溶融法により希土類元素と繊維金属のインゴットを作りそれを粉砕する合金粉末の製造方法では、均質な合金を得るために数十時間におよぶ熱処理を必要とすることが多いが、沈殿法によれば熱処理時間は長くても2時間である。熱処理時間が短くなることで、球状の製品を容易に得ることができる。
沈澱工程で得られる沈殿物粒子の粒子形状は最終製品の合金粉末に継承され、沈澱物粒子の形状をコントロールすることで、粒子形状が整った分散した合金粉末が得られ、その結果、高い磁気性能の磁性材料を得ることができる。
 SmFe17の組成の希土類−遷移金属系の強磁性材料合金粉末について、粒子径及び粒子形状と、代表的な磁気特性である、残留磁化(σr)及び保磁力(iHc)との関係について、数多くの水準の合金粉末を調製して測定した。その結果を図3〜図5にプロットした。これらの図は個々の測定点はプロットしていないが、図中の曲線は約100点ほどの測定点を基に描いた。
 <平均粒径と保磁力の関係> 合金粒子の平均粒径として、フィッシャーサブシーブサイザー(F.S.S.S.)を用いて、空気透過法により比表面積を測定し、一次粒子の粒径の平均値を求めこれを合金粒子の大きさの指標とした。図3に粒子形状がほぼ球である(針状度係数が95%)球状の粒子の平均粒径(Da)と保磁力の関係について示している。この図より、SmFe17粒子は1〜2μm付近で最も保磁力が高くなり19kOeの値を示している。この付近で保磁力が最も高くなるのは、この粒径がSmFe17合金粒子の単磁区粒径にほぼ近似していることによると推定できる。しかし、平均粒径がこれよりも小さくなると保磁力は急に低下する。平均粒径が0.7μm付近で保磁力は17kOe、平均粒径が0.6μm付近で保磁力は15kOe、0.5μm付近で10kOe程度の保磁力を示す。逆に、2μm付近より大きくても保磁力は急に低下する。平均粒径が4μmで、10kOe程度であり、10μmまで大きくなると、保磁力は1kOe以下まで低下する。従って、球状粒子の粒径の比較的実用性のある範囲は、保磁力が10kOe程度より高くなる0.5μm〜4μmの範囲であり、好ましい平均粒径範囲は保磁力が15kOe程度より高くなる0.6μm〜3.5μmであり、最も好ましい平均粒径範囲は保磁力が17kOe程度より高くなる0.7μm〜3μmである。
 <針状度係数と残留磁化、保磁力との関係>針状度係数は、次のようにして測定した。
定義式:針状度係数(%)=(b/a)×100%
 a=粒子像の最長径
 b=aに垂直な最大径
測定のためには、先ず合金粒子を薄く広げた測定試料を作製する。この試料はできるだけ粒子が重ならないように薄く広げる。測定試料を倍率4000倍のSEMで粒子像の写真をとり、その粒子像をスキャナーでコンピュータに取り込み、粒子像の分離抽出を行い、100個の粒子像データを取り込む。そして、各々の粒子像についてコンピュータによりa(粒子像の最長径)及びb(aに垂直な最大径)を求め、針状度係数を算出し、100個の平均をとり、針状度係数とした。針状度係数は式をみても分かるように、100%に近付くほど球形に近くなる。
 平均粒径が1.5μmである種々の水準の針状度係数の合金粉末について、数多くのデータに基づき残留磁化と針状度係数の関係について図4にプロットした。この図はその典型的データであり、実際にはある程度の幅を持つ。針状度係数が70%以下では、残留磁化は87emu/gでほぼ一定であるが、75%を超えると、89emu/gと残留磁化の改善がみられる。針状度係数が80%で102emu/g、針状度係数が85%で125emu/g、針状度係数が90%で133emu/g、針状度係数が95%で138emu/gと球形に近付くに従い、残留磁化が大幅に改善される。これらの結果より、針状度係数の増加の効果が残留磁化の増加に影響するのは75%以上であり、好ましい針状度係数は80%以上であり、より好ましいのは85%以上であり、最も好ましいのは90%以上である。
 平均粒径が1.5μmである種々の水準の針状度係数の合金粉末について、数多くのデータに基づき保磁力と針状度係数の関係について図5にプロットした。この図はその典型的データであり、実際にはある程度の幅を持つ。針状度係数が70%以下では、保磁力は5.8kOe以下であるが、75%を超えると、8.2kOeと保磁力の改善がみられる。針状度係数が80%で12.8kOe、針状度係数が85%で15.2、針状度係数が90%で17.3kOe、針状度係数が95%で18.6kOeと球形に近付くに従い、保磁力が大幅に改善される。これらの結果より、針状度係数の増加の効果が保磁力の増加に影響するのは75%以上であり、好ましい針状度係数は80%以上であり、より好ましいのは85%以上であり、最も好ましいのは90%以上である。
 <円形度係数と残留磁化、保磁力との関係> 針状度係数により粒子形状の球体との近さ或いは隔たりを表すことができるが、最近のコンピュータ技術を用いた画像解析が安価に行うことができるようになり、次の式で定義する円形度係数が容易に測定できる。
定義式:円形度係数=(4πS/L)×100%
 S=(粒子投影面積)
 L=(粒子像の周)
測定のための試料の作製の方法、及びスキャナーによる粒子像のコンピュータへの取り込みは針状度係数を測定する場合と同じである。円形度係数は式をみても分かるように、針状度係数同様100%に近付くほど球形に近くなる。
 平均粒径が1.5μmである種々の水準の円形度係数の合金粉末について、数多くのデータに基づき残留磁化と円形度係数の関係について図6にプロットした。この図はその典型的データであり、実際にはある程度の幅を持つ。円形度係数が70%以下では、残留磁化は87emu/g以下であるが、78%を超えると、89emu/gと残留磁化の改善がみられる。円形度係数が80%で94emu/g、円形度係数が85%で115emu/g、円形度係数が90%以上で140emu/gと、球形に近付くに従い残留磁化が大幅に改善される。これらの結果より、円形度係数の増加の効果が残留磁化の増加に影響するのは78%以上であり、好ましい円形度係数は80%以上であり、より好ましいのは85%以上であり、最も好ましいのは90%以上である。
 平均粒径が1.5μmである種々の水準の円形度係数の合金粉末について、数多くのデータに基づき保磁力と円形度係数の関係について図7にプロットした。この図はその典型的データであり、実際にはある程度の幅を持つ。保磁力については、この図より、針状度係数が70%以下では、保磁力は5.8kOeで一定であるが、78%を超えると、8.2kOeと保磁力の改善がみられる。円形度係数が80%で10.8kOe、円形度係数が85%で15.5、円形度係数が90%で18.4kOe、円形度係数が95%で20.0kOeと球形に近付くに従い、保磁力が大幅に改善される。これらの結果より、円形度係数の増加の効果が保磁力の増加に影響するのは78%以上であり、好ましい円形度係数は80%以上であり、より好ましいのは85%以上であり、最も好ましいのは90%以上である。
 この針状度係数は粒子の巨視的な形状を評価するものであり粒子投影図が円状か、楕円状か、また、粒子が凝集しているか等をみることができる。粒子が楕円状、特に2個以上の粒子が凝集した場合、そのネック部に逆磁区が発生しやすくなり、保磁力の低下を招く。さらに単磁区粒子になれず、残留磁化も低下してしまう。また磁石粉末をボンド磁石とする際、粒子が球状でない場合充填率が上がらない、磁場配向性を悪化させるなどの問題が生じる。
 円形度係数は粒子の微視的な形状を評価するものであり、粒子表面に突起物、凹凸、微小粒子の付着がないか等を判断することができる。粒子表面の突起物や凹凸部分には逆磁区が発生しやすく、保磁力低下の原因となりうる。さらに表面に微小な粒子の付着があれば単磁区粒子にならず残留磁化も低下してしまう。また磁石粉末をボンド磁石とする際、粒子表面に突起物や凹凸があると粒子同士が競合い、粒子に応力がかかりやすくなる。このため保磁力の低下、充填率が上がらない、などの問題が生じる。
 よって針状度係数、円形度係数を測定することによって粒子の巨視的、微視的形状を数値化でき、かつ磁気特性と粒子形状との関係を調べることができる。
 また、本発明のSmFe17合金球状粒子は、平均粒径が0.6〜10μmの範囲であり、針状度係数が、80%以上とすることで、保磁力は12.5kOe以上、残留磁化は100emu/g以上とすることができる。
 さらに、本発明のSmFe17合金球状粒子は、平均粒径が0.7〜4μmの範囲であり、針状度係数が、85%以上とすることで、保磁力は15kOe以上、残留磁化は125emu/g以上とすることができる。
 最も好ましい範囲として、本発明のSmFe17合金球状粒子は、平均粒径が0.7〜4μmの範囲であり、針状度係数が、90%以上とすることで、保磁力は17kOe以上、残留磁化は130emu/g以上とすることができる。
 このように、SmFe17合金粉末の磁気特性はその平均粒径、粒子の形状に大きく依存することが分かる。このような球形粒子を得る方法として、特開平6−151127号公報には、原料となる鉄粉としてカルボニル鉄粉を使用し、希土類元素の還元に用いる還元拡散法の温度を650〜880℃の範囲とすることにより、球形の粒子を得ることができたとしている。しかし、粒子に丸みはあるものの、粒子の独立性が悪く、ひょうたん型、合体型の粒子が生じるため、針状度係数の測定では70%未満の粒子しか得られない。また、粒子径は使用するカルボニル鉄粉の粒径に大きく依存するため、粒径のコントロールは思うようにできない。単磁区粒径程度の合金粉末を得ようとすると、どうしても粉砕に頼らざるを得ない。
 粒子が球形状のものが得られるという点では、成分元素を溶融した溶湯をガスアトマイズすることで、球状の合金粉末が得られることは知られている。(特公昭7−50648号公報)しかし、その平均粒径は単磁区粒子径よりも10倍以上も大きく、充填率や磁場配向に関しては問題がないものの、粒子が大きすぎて多磁区構造となるから、保磁力が著しく低くなる。
 上記した球状のSmFe17合金粉末を得るための好ましい方法について以下に説明する。しかし、本発明の特定の球状粒子を得る方法として以下の方法に限定するものではない。
 <合金粉末の好ましい調製方法> 本発明の合金粉末は、希土類元素としてSm、遷移金属としてFeを酸に溶解し、Sm及びFeイオンと不溶性の塩を生成する物質を溶液中で反応させ沈殿させ、該沈殿物を焼成して金属酸化物とし、得られた金属酸化物を還元して合金粉末を得る方法を採用することで好ましく得ることができる。
 また、本発明の合金粉末は、粒子中構成元素の分布が均質で、粒度分布がシャープで、粒子形状が球状である沈殿物粒子からなる沈殿物を、焼成して金属酸化物を得、該金属酸化物を還元雰囲気で加熱する工程を含むことで好ましく得ることができる。
 この製造方法の中で、特に沈殿物粒子を得る工程が最も重要である。沈殿物粒子の形状がそのまま、それを酸化した金属酸化物と、及びそれを還元した合金粉末の粒径及び粒子形状に継承されるからである。従って、沈殿物粒子の形状をできる限り球形に近づけることが重要となる。
 上述した本発明の合金粉末粒子を得るためには、沈殿物粒子は外観がほぼ球形をしており、平均粒径は0.05〜20μmであり、全粒子径が0.1〜20μmの範囲にある粒子径と粒度分布を有する沈殿物粒子とすることが好ましい。
 このような沈殿物粒子を得るには、構成成分の陽イオンであるSm及びFeは、水中で均一に混合する。これら金属元素を共通にイオン化して溶解するには、好ましい酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸があり、上述の金属イオンを高濃度に溶解することができる。また、これらSm、Feの塩化物、硫酸塩、硝酸塩を水に溶解することでも可能である。また、溶解液は水溶液だけに限らず、金属アルコキシド等の形の有機金属を有機溶媒、例えば、アルコール、アセトン、シクロヘキサン、テトラハイドロフラン等の有機溶媒に溶解した溶液であってもよい。
 上記したSm、Feイオンを溶解した溶液から、これらイオンと不溶性の塩を生成する物質として、水酸化物イオン、炭酸イオン、蓚酸イオン等の陰イオン(非金属イオン)が好ましく使用することができる。すなわち、これらのイオンを供給することができる物質の溶液なら使用することができる。例えば、水酸化物イオンを供給する物質としてアンモニア、苛性ソーダ等、炭酸イオンを供給する物質として、重炭酸アンモニウム、重炭酸ソーダ等、蓚酸イオンを供給するものとしては、蓚酸が使用可能である。金属アルコキシドを有機溶媒に溶解した液の場合、水を添加することで、金属水酸化物の形で沈殿を析出可能である。これ以外にも、金属イオンと反応して不溶性の塩を生成する物質なら本発明に適用可能である。また、水酸化物の不溶性の塩を生成する方法として、ゾルゲル法が好ましく使用することができる。
 金属イオンと非金属イオンとの反応を制御することにより、沈殿物粒子内の構成元素の分布が均質で、粒度分布のシャープな、粒子形状の整った、理想的な合金粉末原料を得ることができる。このような原料を使用することが最終製品である合金粉末(磁性材料)の磁気特性を向上する。この沈殿反応の制御には、金属イオンと非金属イオンの供給速度、反応温度、反応液濃度、反応液の撹拌状態、反応時のpH等を適当に設定することで行うことができる。これらの条件の設定には、まず、沈殿物の収率を最良にするように選択し、沈殿物粒子の独立性(粒子形状)、沈殿物粒子の粒度分布がシャープであることなどを顕微鏡観察しながら各条件を決定する。また、原料として、どのような化学種を選択し、どのような沈殿反応を適用するかによって、沈殿物の形態は大きく変化することはいうまでもない。この沈殿工程により、最終の磁性材料としての合金粉末の粒子径、粒子形、粒度分布がおよそ決定される。前述したように、粒子性能は磁性材料に密接に反映される点で、この沈殿反応の制御は非常に重要となる。このようにして得られる沈殿物粒子中には希土類元素と遷移金属元素が十分に混合された状態で存在する。
 本発明において、沈殿反応から得られる沈殿物を焼成してSmとFeの金属酸化物を生成するが、通常、沈殿物は焼成前に脱溶媒したものを焼成する。この工程において十分に脱溶媒しておくと、焼成が容易であるからである。また、沈殿物が高温度において溶媒への溶解度が大きくなるような場合、特に十分に脱溶媒しておく必要がある。沈殿物粒子が溶解して、粒子が凝集し、粒度分布、粒子径に悪影響を及ぼすからである。
 沈殿物の焼成時は、金属イオンと非金属イオンからなる不溶性の塩が加熱された結果、非金属イオンが分解して金属酸化物を生成する。従って、この焼成は酸素リッチな条件で焼成されることが好ましい。また、非金属イオンの構成元素に酸素を含むものを選択することが好ましい。そのようなものには、水酸イオン、重炭酸イオン、蓚酸イオン、クエン酸イオン等がある。逆に硫化物イオン等は、これら金属を共通して沈殿を引き起こすイオンではあるが、イオンの構成に酸素を含まないから、酸化物に分解しがたく適当ではない。また、燐酸イオン、硼酸イオン、珪酸イオン等も、希土類元素イオン、遷移金属イオンと不溶性の塩を生成する物質であるが、それぞれ燐酸塩、硼酸塩、珪酸塩は、後の焼成で容易に酸化物を生成するものではなく、本発明に適用するのは困難である。従って、本発明を構成する沈殿反応に好ましく適用することができる非金属イオンは、水酸イオン、炭酸イオン、蓚酸イオン等の加熱すると容易に酸化物を生成することができる無機塩と、加熱すると容易に燃焼する不溶性の有機塩である。たた、不溶性の有機塩がアルコキシドのように水で加水分解し、水酸化物を生成するような場合は、一旦水酸化物としてそれを加熱することが好ましい。
 この焼成の要点は非金属イオンを分解して金属酸化物を得ることであるから、焼成温度もそのような分解反応が起こる温度以上の温度で焼成する。従って、焼成温度は金属イオンの種類、非金属イオンの種類に応じて変化するが、800〜1300℃の温度で数時間焼成するのが適当であり、より好ましくは900〜1100℃の範囲で焼成する。この場合、炉の雰囲気は送風機等を用いて空気を十分に送入するか、酸素を炉内に導入して焼成することが好ましい。
 この焼成により、粒子内に希土類元素と遷移金属元素の微視的な混合がなされた金属酸化物を得ることができる。この酸化物粒子は上記した沈殿物粒子の形状分布をそのまま継承した粒子性能が極めて良好な酸化物である。
 金属酸化物から合金粉末を得るには、基本的に還元反応を適用する。ここで、一口に金属酸化物と称しても、本金属酸化物は、希土類元素のSmと遷移元素のFeの酸化物である。Feの還元電位は標準水素電極に対し、−0.447vであり、これに対し、Smは、−2.30vと非常に卑なる元素であり、言い換えれば、還元しにくい元素である。
 従って、Feの金属への還元にはH、CO、CH等炭化水素ガスによる還元性ガスによる還元のような、通常の還元性ガスを炉内に導入し還元雰囲気を形成して加熱することで十分可能である。この還元反応時、遷移金属酸化物粉末に含まれる酸素はH2OあるいはCOの形で徐々に除去される。この場合の加熱温度は300〜900℃の範囲に設定する。この範囲よりも低温では遷移金属酸化物の還元は起こりにくく、この範囲より高温では、還元は起こるが、酸化物粒子が高温により粒子成長と偏析を起こし、所望の粒子径から逸脱してしまうからである。従って、加熱温度は400〜800℃の範囲がより好ましい。
 また、上述した沈殿反応から得られる沈殿物を使用する方法以外に、構成元素の酸化物微粒子を十分に混合する方法も適用することもできる。すなわち、平均粒径が5μm未満であるSmと、平均粒径が2μm未満の鉄酸化物を混合し、これを一旦還元性ガス中で300〜900℃の温度で加熱して鉄酸化物を金属鉄に還元する方法である。
 この方法は沈殿反応の方法によるほど構成元素の混合レベルは高くないが、出発原料に金属鉄を使用した場合に比べると、かなり均一な混合を行うことができる。その理由は次の3点に集約される。
(1)金属鉄を出発原料とする場合、混合レベルを向上させるには、大前提として平均粒径10μm以下の金属鉄粉末を使用する必要があり、この要件を満たすのは現在のところ、カルボニル鉄粉末しか見あたらない。ところが工業的に得られるカルボニル鉄粉末は、最小でも平均粒径が4μm程度である。ところが一般的なSm粉末の平均粒径は1μm前後であり、カルボニル鉄粉の4分の1(体積では1/64)である。こうした状況下で均一な混合は困難である。
(2)カルボニル鉄粉末は真球状の外観を持ち、しかも表面が平滑なので流動性が良いが、Sm粉末は不定形状の外観を持ち比較的流動性が悪い。また、カルボニル鉄粉の嵩密度は3から4であるのに対し、Sm粉末は0.9と比較的小さい。従って両粉末を機械的に混合しようとしても満足すべき結果を得られない。
(3)酸化物粉末同士を混合する場合は、粒子径、流動性、見かけ比重とも同程度の原料を工業的に調達することが可能なので、比較的均一な混合が可能である。
 原料として酸化物同士を混合して得た混合物を一旦還元性ガス中で、還元することにより、上述の沈殿反応による場合と同様、金属Caあるいは水素化Caによる還元拡散工程に供することができる。
 金属酸化物の中のSmの酸化物成分は、上記した還元性ガス雰囲気下の加熱では還元できない。この希土類元素の還元の方法を限定することはないが、対象の希土類元素よりも還元電位の低い元素の金属を混合して加熱することで可能となる。例えば、アルカリ金属としてLiは−3.04、Naは−2.71、Kは−2.93v、Rbは2.98v、Csは−2.92v、アルカリ土類金属の中でもMgは−2.372v、Caは−2.87v、Srは−2.89v、Baは−2.912v、の還元電位をもち、該金属酸化物に混合して不活性ガス中で加熱することで、粒子中の希土類元素を金属に還元することができる。取り扱いの安全性及びコストの点から金属カルシウムの使用が最も好適である。
 還元剤としてカルシウムの応用について、希土類コバルト磁石については、還元拡散法と称される合金粉末の製法が適用され実用化されている。この還元拡散法を適用することが本発明においても最も好ましい。すなわち、還元性ガスによる還元で得られた遷移金属元素を金属状態にまで還元した微細金属と希土類元素酸化物との混合状態にある粉末に金属カルシウム、或いは水酸化カルシウムを添加し、不活性ガス雰囲気もしくは真空中で加熱することにより、希土類酸化物をカルシウム融体もしくはその蒸気と接触し、希土類酸化物を金属に還元する。この還元反応により、希土類元素と遷移金属元素の合金ブロックを得ることができる。
 前記したアルカリ金属、アルカリ土類金属の還元剤は、粒状または粉末状の形で使用されるが、特にコストの点から粒度4メッシュ以下の粒状金属カルシウムが好適である。これらの還元剤は、反応当量(希土類酸化物を還元するのに必要な化学量論量であり、遷移金属を酸化物の形で使用した場合には、これを還元するに必要な分を含む)の1.1〜3.0倍量、好ましくは1.5〜2.0倍量の割合で使用される。
 この還元剤による還元は、当然遷移金属元素を還元することも可能である。それで、遷移金属酸化物を還元性ガスの還元をせずに、直接Ca等の還元剤による還元を実施できないことはない。しかし、その場合、Caの必要量が過多となり、Caによる還元反応時の発熱により粒子が粗大化するのみならず、最悪の場合は爆発的な反応により生成物が炉内に飛散する危険がある。従って、還元拡散による希土類元素の還元の前には遷移金属の大半を還元して金属化しておくことが好ましい。従って、還元拡散工程前の遷移金属の酸素の除去率は40%以上あることが望ましい。なぜなら40%を越える酸素を除去するには次工程で使用する還元剤が大量に必要となり不経済であるばかりでなく、合金粉末粒子の形状も分散した整った形のものが得られなくなるからである。ここで酸素の除去率とは、遷移金属の酸化物中に存在する酸素全量に対する還元除去した酸素量の百分率である。
 本発明においては、還元剤とともに、必要に応じて崩壊促進剤を使用することができる。この崩壊促進剤は、後述する湿式処理に際して、生成物の崩壊、粒状化を促進させるために適宜使用されるものであり、例えば特開昭63−105909号公報に開示されている塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、及び酸化カルシウム等がある。これらの崩壊促進剤は、希土類源として使用される希土類酸化物当り1〜30重量%、特に5〜30重量%の割合で使用される。
 本発明においては、上述した原料粉末と還元剤、及び必要により使用される崩壊促進剤とを混合し、該混合物を窒素以外の不活性雰囲気、例えばアルゴンガス中で加熱を行うことにより還元を行う。また還元のために行われる加熱処理温度は700〜1200℃、特に800〜1100℃の範囲とすることが好適であり、加熱処理時間は特に制約されないが、還元反応を均一に行うためには、通常、10分〜10時間の範囲の時間で行うことができ、10分〜2時間の範囲で行うのがより好ましい。この還元反応により多孔質塊状の希土類−遷移金属系合金が得られる。
 Sm−Fe−N系合金粉末を得るには、同じ炉内で引き続き窒素ガス、或いは、加熱により分解して窒素を供給しうる化合物ガスを導入することで窒化することができる。還元拡散工程で希土類−遷移金属系合金が多孔質塊状で得られるため、粉砕を行うことなく直ちに窒素雰囲気中で熱処理を行うことができ、これにより窒化が均一に行われ、Sm−Fe−N合金を得る。この窒化処理は、上記還元のための加熱温度領域から降温させて、300〜600℃、特に400〜550℃の温度とし、この温度範囲で雰囲気を窒素雰囲気に置換することにより行われる。例えば、この窒化処理温度が 300℃未満であると、前記工程で得られた反応生成物であるSm−Fe系合金中への窒素の拡散が不十分となり、窒化を均一且つ有効に行うことが困難となる。さらに窒化温度が600℃を超えると、Sm−Fe系合金が希土類−窒素系化合物と、α−鉄等の遷移金属とに分解するため、得られる合金粉末の磁気特性が著しく低下するという不都合を生じる。上記熱処理時間は、窒化が十分に均一に行われる程度に設定されるが、一般にこの時間は、4〜12時間程度である。
 このとき、反応生成物は、副生するCaN、CaO、未反応の過剰カルシウム及び生成合金粉末の混合物であって、これらが複合した焼結塊状態である。従って、次にこの生成混合物を冷却水中に投入して、CaN、CaO及び金属カルシウムをCa(OH)懸濁物として合金粉末から分離する。さらに残留するCa(OH)は、合金粉末を酢酸或いは塩酸で洗浄して除去する。生成物の多孔質塊状の希土類−遷移金属系合金を水中に投入した際には、金属カルシウムの水による酸化及び副生CaOの水和反応によって、複合して焼結塊状の生成混合物の崩壊、すなわち微粉化が進行する。
 崩壊によって生成したスラリーを撹拌後、デカンテーションによって、上部のアルカリ金属等の水酸化物を除去し、注水−撹拌−デカンテーションの操作を繰り返すことにより、該水酸化物を得られた合金粉末から除去することができる。また、一部残留した水酸化物は、酢酸あるいは塩酸等の酸を用いて、pH3〜6、好ましくはpH4〜5の範囲で酸洗浄することによって完全に除去される。このような湿式処理終了後は、例えば水洗後、アルコールあるいはアセトン等の有機溶剤で洗浄、脱水した後、真空乾燥することで、希土類−遷移金属の合金粉末が製造される。
 以下、本発明の実施例について永久磁石材料であるSm−Fe−N合金粉末の製造例を基に説明する。
 <1.沈澱反応> 反応タンクに純水30リットル投入し、その中に97%HSOを520g加え、Smを484.8g仕込み溶解し、25%アンモニア水を加えてpHを中性付近に調整する。この水溶液にFeSO・7HOを5200gを加えて完全に溶解しメタル液とした。別のタンクに純水を12リットルに重炭酸アンモニウム2524gと25%アンモニア水を1738gを混合した炭酸イオン溶解液を調製した。反応タンクを撹拌しながら、炭酸イオン溶解液を徐々に添加し、全量添加した最終のpHが8.0±0.5になるように、アンモニア水を添加した。攪拌を止め静置すると、生成物は容器底部に沈殿してくる。このときに得られた沈殿物を一部採って、顕微鏡観察すると、粒のそろった球状の粒子であった。フィッシャーサブシーブサイザー(FSSS)による平均粒径は1.4μmであった。
 <2.ろ過洗浄> 沈澱生成物を濾紙上にとり、上部よりイオン交換水を供給しながら吸引する。ろ液の電気導電率が50μS/mを下回るまでこのデカンテーションを続ける。洗浄され、吸引濾過して得られる沈殿物ケーキを80℃の乾燥機中で乾燥する。
 <3.大気焼成> 乾燥されたケーキをアルミナのるつぼに入れ、1100℃の大気中で3時間焼成する。
 <4.粒度調整> 焼成物を手でほぐした後、ハンマーミルで粉砕する。この金属酸化物粉末の粒子径はフィッシャーサブシーブサイザー(FSSS)による平均粒径は1.3μmであった。
 <5.水素還元> 粉砕粉末を鋼製のトレーに充填し、それを管状炉に入れ、純度100%の水素を20リットル/分で流通させながら700℃で10時間の熱処理を施した。得られた黒色粉末の酸素濃度は7.2wt%であった。
 <6.還元拡散反応及び窒化反応> 前工程で得られた黒色粉末1000gと粒状Ca350.7gを混合し、鋼製のトレーに入れてアルゴンガス雰囲気炉にセットする。炉内を真空排気した後、アルゴンガスを通じながら1000℃、1時間加熱する。次いで、加熱を止め、引き続いてアルゴンガス中で450℃まで冷却し、以後この温度で一定に保持する。その後、炉内を再び真空排気した後、窒素ガスを導入する。大気圧以上の圧力で窒素ガスを通じながら5時間加熱した後、加熱を停止し放冷する。
 <7.水洗> 得られた窒化した合金粉末をイオン交換水5リットルに投入し、これにより、反応生成物が直ちに崩壊し、合金粉末とCa成分との分離が始まる。水中での撹拌、静置、上澄み液の除去を5回繰り返し、最後に2wt%酢酸水溶液5リットル中で洗浄し、Ca成分の分離が完了する。これを真空乾燥することでSmFe17合金粉末を得る。
 <8.特性評価> 得られた粉末は分散性が良く、電子顕微鏡による観察でも球状の形状を持つものであった。粉末の平均粒径はFSSSによる測定で2.5μmであり、針状度係数は83%、円形度係数は87%であった。粉末の磁気特性はσr120emu/g、iHc15.8kOeであった。また粉末に含まれる酸素の濃度は0.25wt%であり、EPMAによる断面観察ではSmとFeの偏析は確認できなかった。またCu−Kαを線源とするX線回折によれば主相であるSm−Fe合金の他には何も観察されず、特に純鉄成分であるα−Feは痕跡すら発見できなかった。
 <1.沈澱反応> 硝酸サマリウム六水和物Sm(NO・6HOを513.4g、硝酸鉄9水和物Fe(NO3)・9HOを3432.3g秤量し、 攪拌しながら10リットルのイオン交換水に同時に投入する。完全に溶けたことを確認の後、攪拌を続けながら尿素(NHCOを2992.5g投入する。攪拌を続けながら液温を80℃まで上昇させる。この時尿素はアンモニアと炭酸ガスに加水分解し金属分は均一反応により沈澱する。
 <2.ろ過洗浄> 沈澱生成物を濾紙上にとり、上部よりイオン交換水を供給しながら吸引する。ろ液の比抵抗が50μS/mを下回るまでこの操作を続ける。洗浄されたケーキは80℃の乾燥機中で乾燥する。
 <3.大気焼成> 乾燥されたケーキをアルミナのるつぼに入れ、1100℃の大気中で3時間焼成する。
 <4.粒度調整> 焼成物を手でほぐした後、ハンマーミルで粉砕する。この粉末の粒子径はフィッシャーサブシーブサイザーで1.3ミクロンであった。
 <5.水素還元> 粉砕粉末を鋼製のトレーに入れ、純度100%の水素が20リットル/分で流通している管状炉に置き、700℃、10時間の熱処理を施した。得られた黒色粉末の酸素濃度は7.2wt%であった。
 <6.還元拡散反応> 前工程で得られた黒色粉末のうち1000gと粒径6mm以下の粒状Ca350.7gを混合し、鋼製のトレーに入れて不活性ガス雰囲気炉にセットする。炉内を真空排気した後、アルゴンガスを通じながら1000℃、1時間加熱する。次いで、加熱を止め、引き続いてアルゴンガス中で450℃まで冷却して以後この温度で一定に保持する。その後、炉内を再び真空排気した後、窒素ガスを導入する。大気圧以上の圧力で窒素ガスを通じながら5時間加熱した後、加熱を停止し放冷する。
 <7.水洗> 得られた反応生成物をイオン交換水5リットルに投入し、これにより、反応生成物が直ちに崩壊し、合金粉末とCa成分との分離が始まる。水中での撹拌、静置、上澄み液の除去を5回繰り返し、最後に2wt%酢酸水溶液5リットル中で洗浄し、Ca成分の分離が完了する。これを真空乾燥することでSmFe17合金粉末を得る。
 <8.特性> 得られた粉末は分散性が良く、電子顕微鏡による観察でも球状の形状を持つものであった。粉末の粒径はフィッシャーサブシーブサイザーで2.8ミクロンであった。粉末の磁気特性はσrは140emu/g、iHcは18kOeであった。また、粉末に含まれる酸素の濃度は0.25wt%であり、EPMAによる断面観察ではSmとFeの偏析は確認できなかった。またCu−Kαを線源とするX線回折によれば主相であるSm−Fe合金の他には何も観察されず、特に純鉄成分であるαーFeは痕跡すら発見できなかった。
 平均粒径1.5μm、純度99.9%の酸化鉄(Fe)粉末135.7gと、平均粒径1.0μm、純度99.9%の酸化サマリウム粉末(Sm)粉末34.9gを水中で2時間ボールミルした。スラリーから固形分を分離乾燥後、サンプルミルで解砕して混合粉末を得た。尚、ここで使用した酸化鉄粉末および酸化サマリウム粉末は実施例1と全く同じものである。得られた混合粉末を軟鋼製のトレーに入れて、水素気流中600℃の還元処理を行う。水素流通量は2L/分であり、処理時間は5時間である。酸素分析の結果、酸化鉄成分の酸素除去率は89.5%であった。なお酸化サマリウム中の酸素は水素ガスでは還元することはできない。還元処理された混合粉末に粒状の金属カルシウム44.50gを加えて充分混合の上、軟鋼製のるつぼに投入する。これを電気炉に挿入以後は実施例1と全く同じ工程を経て、Sm・Fe・N合金粉末粉末を得る。
 得られた粉末は分散性が良く、電子顕微鏡による観察でも球状の形状を持つものであった。粉末の粒径はフィッシャーサブシーブサイザーで2.0μmであり、針状度係数は78%、円形度係数は81%であった。粉末の磁気特性はσr102emu/g、iHc12kOeであった。また粉末に含まれる酸素の濃度は0.15wt%であり、EPMAによる断面観察ではSmとFeの偏析は確認できなかった。またCuーKαを線源とするX線回折によれば主相であるSm−Fe合金の他には何も観察されず、特に純鉄成分であるαーFeは痕跡すら発見できなかった。
 [比較例1] 金属Smと金属鉄を原子比2対17の割合で溶融した。溶融物を水冷された銅鋳型に流し込んでSmFe17合金を得た。得られたインゴットをジョークラッシャで粗粉砕した後、均質化を目的としてアルゴン中1100℃で40時間の熱処理を施した。得られた合金を鋼球のボールミルにより2時間粉砕した。さらにこの粉末を窒素100%、450℃で5時間の熱処理を施した。得られた粉末は分散性が悪い凝集状態であり、電子顕微鏡による観察でも角張った形状を持つものであった。粉末の平均粒径はFSSSによる測定で10μmであり、針状度係数は64%、円形度係数は67%であった。粉末の磁気特性は残留磁化σrは85emu/g、保磁力iHcは8.2kOeであった。また粉末に含まれる酸素の濃度は0.6wt%であり、EPMAによる断面観察ではSmとFeの偏析が確認できた。またCu−Kαを線源とするX線回折によればα−Feによる明瞭なピークが観察された。
針状度係数を定義する径と式を表す図 円形度係数を定義する粒子の投影面積と粒子の周を表す図 SmFe17合金粉末の保磁力と平均粒径の関係を示す特性図 SmFe17合金粉末の残留磁化と針状度係数の関係を示す特性図 SmFe17合金粉末の保磁力と針状度係数の関係を示す特性図 SmFe17合金粉末の残留磁化と円形度係数の関係を示す特性図 SmFe17合金粉末の保磁力と円形度係数の関係を示す特性図

Claims (11)

  1.  Sm−Fe−N系合金粉末であって、合金粉末の平均粒径は0.5〜10μmの範囲であり、針状度係数は75%以上であることを特徴とする。但し、針状度係数は、次のように定義された値である。
    定義式:針状度係数(%)=(b/a)×100%
     a=粒子像の最長径
     b=aに垂直な最大径
  2.  Sm−Fe−N系合金粉末であって、合金粉末の平均粒径は0.5〜10μmの範囲であり、円形度係数は78%以上であることを特徴とする。但し、円形度係数は、次のように定義された値である。
    定義式:円形度係数=(4πS/L)×100%
     S=(粒子投影面積)
     L=(粒子像の周)
  3.  平均粒径が0.6〜10μmの範囲であり、針状度係数が、80%以上とすることで、保磁力は12.5kOe以上、残留磁化は100emu/g以上であることを特徴とする請求項1に記載のSm−Fe−N系合金粉末。
  4.  平均粒径が0.6〜10μmの範囲であり、針状度係数が、85%以上とすることで、保磁力は15kOe以上、残留磁化は125emu/g以上であることを特徴とする請求項1に記載のSm−Fe−N系合金粉末。
  5.  平均粒径が0.6〜10μmの範囲であり、針状度係数が、90%以上とすることで、保磁力は17kOe以上、残留磁化は130emu/g以上であることを特徴とする請求項1に記載のSm−Fe−N系合金粉末。
  6.  平均粒径が0.6〜10μmの範囲であり、円形度係数が、80%以上とすることで、保磁力は10・8kOe以上、残留磁化は94emu/g以上であることを特徴とする請求項2に記載のSm−Fe−N系合金粉末。
  7.  平均粒径が0.6〜10μmの範囲であり、円形度係数が、85%以上とすることで、保磁力は15.5kOe以上、残留磁化は115emu/g以上であることを特徴とする請求項2に記載のSm−Fe−N系合金粉末。
  8.  平均粒径が0.6から10μmの範囲であり、円形度係数が、90%以上とすることで、保磁力は18.4kOe以上、残留磁化は140emu/g以上であることを特徴とする請求項2に記載のSm−Fe−N系合金粉末。
  9.  希土類元素としてSm、遷移金属としてFeを酸に溶解し、Sm及びFeイオンと不溶性の塩を生成する物質を溶液中で反応させ沈殿させ、該沈殿物を焼成して金属酸化物とし、得られた金属酸化物を還元し、窒化して合金粉末を得るSm−Fe−N系合金粉末の製造方法。
  10.  粒子中構成元素の分布が均質で、粒度分布がシャープで、粒子形状が球状である沈殿物粒子からなる沈殿物を使用することを特徴とする請求項9に記載のSm−Fe−N系合金粉末の製造方法。
  11.  平均粒径が5μm未満であるSmと、平均粒径が2μm未満の鉄酸化物を混合し、これを一旦還元性ガス中で300〜900℃の温度で加熱して鉄酸化物を金属鉄に還元し、次に金属Caにあるいは水素化Caと混合して加熱する還元拡散工程を備えることを特徴とする請求項9に記載のSm−Fe−N系合金粉末。
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