JP2023128264A - 希土類磁石の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも磁化を一層向上することができ、かつ、外部磁場が印加されている環境下で、特に高温において、従来よりも減磁し難いSm-Fe-N系希土類磁石の製造方法を提供する。【解決手段】本開示の希土類磁石の製造方法は、第一粒子群(大粒子群)11の粒子表面に、第一被膜41を形成した第一被覆磁性粉末31と、第二粒子群(小粒子群)12の粒子表面に、第二被膜42を形成した第二被覆磁性粉末32との混合粉末の焼結体30を熱処理すること、を含む。第一被膜41は、所定量の亜鉛を含有する。そして、前記熱処理中に、第一被膜41によって、第一粒子群11の粒子表面の改質が進行し、かつ、第二被膜42によって、第二粒子群12の粒子表面が、隣接する第一被膜41で改質されることを抑制する。【選択図】図2

Description

本開示は、希土類磁石及びその製造方法に関する。本開示は、特に、Sm、Fe、及びNを含有し、少なくとも一部がThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備える希土類磁石の製造方法に関する。
高性能希土類磁石としては、Sm-Co系希土類磁石及びNd-Fe-B系希土類磁石が実用化されているが、近年、これら以外の希土類磁石が検討されている。
例えば、Sm、Fe、及びNを含有する希土類磁石(以下、「Sm-Fe-N系希土類磁石」ということがある。)が検討されている。Sm-Fe-N系希土類磁石は、例えば、Sm、Fe、及びNを含有する磁性粉末(以下、「SmFeN粉末」ということがある。)を用いて製造される。
SmFeN粉末は、ThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備える。この磁性相は、Sm-Fe結晶にNが侵入型で固溶していると考えられている。そのため、SmFeN粉末は、熱によってNが乖離して分解され易い。このことから、Sm-Fe-N系希土類磁石は、SmFeN粉末を樹脂及び/又はゴム等を用いて成形して製造されることが多い。
それ以外のSm-Fe-N系希土類磁石の製造方法としては、例えば、特許文献1に開示されている製造方法が挙げられる。この製造方法は、SmFeN粉末と金属亜鉛を含有する粉末(以下、「金属亜鉛粉末」ということがある。)を混合し、その混合粉末を磁場中で成形し、その磁場成形体を焼結(液相焼結を含む)する。
SmFeN粉末の製造方法は、例えば、特許文献2及び3に開示されている。
国際公開第2015/199096号 特開2017-117937号公報 特開2020-102606号公報
磁場成形体の焼結方法には、大別して、無加圧焼結法と加圧焼結法がある。いずれの焼結法においても、磁場成形体を焼結することによって、高密度の希土類磁石(焼結体)が得られる。無加圧焼結法においては、焼結中の磁場成形体に圧力を付与しないため、高密度の焼結体を得るには、900℃以上の高温で6時間以上の長時間にわたり磁場成形体を焼結することが一般的である。一方、加圧焼結法においては、焼結中の磁場成形体に圧力を付与するため、600~800℃の低温でも0.1~5時間の短時間で磁場成形体を焼結しても、高密度の焼結体を得られることが一般的である。
SmFeN粉末と金属亜鉛粉末の混合粉末の磁場成形体を焼結する場合、SmFeN粉末の熱による分解を避けるため、加圧焼結を採用するが、通常の加圧焼結の焼結温度よりもさらに低温かつ短時間で焼結する。このような低温かつ短時間でも焼結が可能であるのは、焼結時に金属亜鉛粉末中の亜鉛成分が磁性粉末の表面に拡散して、焼結(固化)するためである。このように、磁場成形体中の金属亜鉛粉末は、バインダとしての機能を有する。また、磁場成形体中の金属亜鉛粉末は、SmFeN粉末中のα-Fe相を改質するとともに、SmFeN粉末中の酸素を吸収して保磁力を向上させる、改質材としての機能も有する。以下、Sm-Fe-N系希土類磁石の製造時に用いられ、バインダとしての機能と、改質材としての機能の両方を有する粉末を、「改質材粉末」ということがある。
磁性粉末を樹脂及び/又はゴム等を用いて成形する場合、あるいは、磁性粉末と改質材粉末の混合粉末を加圧焼結する場合のいずれも、磁化に寄与しない樹脂及び改質材の含有割合の分だけ、成形体(希土類磁石)の磁化が低下する。一方、磁性粉末を樹脂及び/又はゴム等を用いて成形する場合と比較して、磁性粉末と改質材粉末の混合粉末、又は被覆磁性粉末を加圧焼結する場合には、一般的に、高密度の成形体(希土類磁石)が得られ、その結果、高い磁化を得易い。しかし、磁性粉末がSmFeN粉末である場合、磁性粉末と改質材粉末の混合粉末を加圧焼結しても、改質材の含有割合から予測されるよりも磁化が低下し、所望の磁化が得られないことがあった。
また、Sm-Fe-N系希土類磁石をはじめとする永久磁石がモータに使用される場合、永久磁石は周期的に変化する外部磁場環境下に配置される。そのため、永久磁石は外部磁場の影響を受ける。理想的な永久磁石では、モータ動作領域の外部磁場によって、磁化が低下しないが、実際の永久磁石では、モータ動作領域の外部磁場によって、磁化が低下する。モータ動作領域で、外部磁場に対して磁化の低下(減磁)が大きいと、モータのステータ側の電流制御が複雑になり、モータに接続するインバータの負荷が大きくなる。インバータの負荷を緩和するには、容量の大きなインバータが必要になり、経済性を損なう。このことは、モータが高出力で動作して、モータ内の永久磁石が高温になったときに顕著である。
これらのことから、従来よりも磁化を一層向上することができ、かつ、モータ動作領域で、特に高温において、従来よりも減磁し難いSm-Fe-N系希土類磁石の製造方法が望まれている、という課題を、本発明者らは見出した。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本開示は、従来よりも磁化を一層向上することができ、かつ、外部磁場が印加されている環境下で、特に高温において、従来よりも減磁し難いSm-Fe-N系希土類磁石の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ね、本開示の希土類磁石の製造方法を完成させた。本開示の希土類磁石の製造方法は、次の態様を含む。
〈1〉Sm、Fe、及びNを含有し、少なくとも一部がThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備える希土類磁石の製造方法であって、
第一粒子群及び第二粒子群を含む磁性粉末を準備すること、
前記磁性粉末の前記第一粒子群の粒子の表面に、第一被膜を形成して、第一被覆磁性粉末を得ること、
前記磁性粉末の前記第二粒子群の粒子の表面に、第二被膜を形成して、第二被覆磁性粉末を得ること、
前記第一被覆磁性粉末と前記第二被覆磁性粉末を混合して、混合粉末を得ること、
前記混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得ること、
前記磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得ること、及び
前記焼結体を熱処理すること、
を含み、
前記第一粒子群の粒度分布D50が、dμmで表され、かつ、前記第二粒子群の粒度分布D50が、dμmで表され、
前記d及び前記dが、0.350≦d/d≦0.500の関係を満足し、
前記第一粒子群の総体積と前記第二粒子群の総体積との比(前記第一粒子群の総体積:前記第二粒子群の総体積)が、9:1~4:1の範囲であり、
前記第一被膜が、亜鉛を含有し、前記第一被覆磁性粉末中の亜鉛成分の含有割合が、前記第一被覆磁性粉末と前記第二被覆磁性粉末の合計質量に対して、3.0質量%以上10.0質量%以下であり、かつ、
前記熱処理中に、前記第一被膜によって、前記第一粒子群の粒子の表面の改質が進行し、かつ、前記第二被膜によって、前記第二粒子群の粒子の表面が、隣接する前記第一被膜で改質されることを抑制する、
希土類磁石の製造方法。
〈2〉前記第二被膜が、リン酸を含有する、〈1〉項に記載の希土類磁石の製造方法。
〈3〉前記焼結体中の前記第一粒子群の粒子の表面の75%以上に、Fe-Zn合金相を形成するまで熱処理する、〈1〉又は〈2〉項に記載の希土類磁石の製造方法。
〈4〉前記熱処理を、350℃以上410℃以下で行う、〈1〉~〈3〉項のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
〈5〉前記熱処理を、3時間以上40時間以下にわたって行う、〈1〉~〈4〉項のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
〈6〉前記磁場成形体を、200MPa以上1500MPa以下の圧力及び300℃以上400℃以下の温度で、1分以上30分以下にわたり加圧焼結する、〈1〉~〈5〉項のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
本開示によれば、第一粒子群(大粒子群)と第二粒子群(小粒子群)を含む磁性粉末を用いて焼結体(希土類磁石)の密度を向上させるとともに、焼結体の熱処理時に、第一粒子群の粒子の表面の改質を進行させ、かつ、第二粒子群の粒子の表面の改質を抑制する。その結果、焼結体の密度向上により、磁化が向上し、かつ、第一粒子群と第二粒子群とで改質を制御し、第一粒子群と第二粒子群それぞれに起因する保磁力差の縮小により、特に高温で減磁し難いSm-Fe-N系希土類磁石の製造方法を提供することができる。
図1は、本開示の製造方法で得た希土類磁石の組織の一例を示す模式図である。 図2は、熱処理前の焼結体中の組織の一例を示す模式図である。 図3は、高温での、低保磁力粉末の成形体の減磁曲線と、低保磁力粉末と高保磁力粉末の混合粉末の成形体の減磁曲線とを示すグラフである。 図4は、ロータリーキルン炉を用いて、SmFeN粉末(第一粒子群)の粒子の表面に、亜鉛を含有する被膜(第一被膜)を形成する方法の一例を示す説明図である。 図5は、SmFeN粉末(第一粒子群)の粒子の表面に、亜鉛を含有する被膜(第一被膜)を蒸着法で形成する方法の一例を示す説明図である。 図6は、比較例1~2の試料の組織を示す模式図である。 図7は、比較例3~5の試料の組織を示す模式図である。 図8は、比較例7の試料の組織を示す模式図である。 図9は、比較例8~9の試料の組織を示す模式図である。
以下、本開示の希土類磁石の製造方法(以下、「本開示の製造方法」ということがある。)の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本開示の製造方法を限定するものではない。
本開示の製造方法で得られた希土類磁石が、従来の製造方法で得られた希土類磁石よりも、磁化が高く、かつ、特に高温で、減磁し難い理由は、理論に拘束されないが、図面を用いて、次のように説明することができる。
図1は、本開示の製造方法で得た希土類磁石の組織の一例を示す模式図である。図1に示したように、本開示の製造方法で得た希土類磁石90は、第一粒子群11と第二粒子群12を含むSmFeN粉末10を有する。第一粒子群11の粒子の表面には、改質相20が形成される。この改質相20によって、第一粒子群11の粒子同士、あるいは、第一粒子群11の粒子と第二粒子群12の粒子が結合され、希土類磁石90が形成される。
本開示の製造方法で得た希土類磁石90は、大粒径を有する第一粒子群11の各粒子の間に、小粒径を有する第二粒子群12の各粒子が存在する。これにより、希土類磁石90の密度が向上し、その結果、希土類磁石90の磁化が向上する。ここで、密度の向上には、第一粒子群11の粒径に対する第二粒子群12の粒径の比が所定の範囲であり、かつ、第一粒子群11の総体積と第二粒子群12の総体積との比が所定の範囲であることが必要である。
上述したように、SmFeN粉末10の各粒子は、第一粒子群11の粒子表面の改質相20によって結合している。第一粒子群11の粒子表面の改質相20は、加圧焼結前に第一粒子群11の粒子表面に形成された第一被膜に由来する。改質相20の形成について、図面を用いて説明する。
図2は、熱処理前の焼結体中の組織の一例を示す模式図である。熱処理前の焼結体30中には、第一被覆磁性粉末31と第二被覆磁性粉末32が存在する。第一被覆磁性粉末31においては、第一粒子群11の粒子の表面に、第一被膜41が存在する。第二被覆磁性粉末32においては、第二粒子群12の粒子の表面に、第二被膜42が存在する。
第一被膜41は亜鉛を含有するため、焼結体30の熱処理中に、第一粒子群11の粒子表面からFeが第一被膜41中に拡散する。そして、このFeと第一被膜41中のZnとが合金化して、第一被膜41中にFe-Zn合金相が形成される。このFe-Zn相が改質相20である。第一被膜41中に拡散するFeは、主として、第一粒子群11の粒子表面に存在するα-Fe相に由来する。α-Fe相は、SmFeN粉末で、ThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相の構成に寄与しなかったFeで構成されている。α-Fe相は軟磁性相であり、保磁力の低下の原因となる。そのため、α-Fe相を改質して、非磁性の改質相20(Fe-Zn相)を得ることによって、保磁力が向上する。
一方、第二被膜42は、焼結体30の熱処理中に、第二粒子群12の粒子表面のFeが、隣接する第一被膜41から拡散するZnによって、第二粒子群12の粒子表面に非磁性の改質相(Fe-Zn相)が形成されることを抑制する。すなわち、第二被膜42は、第一被膜41で、第二粒子群12の粒子表面が改質されることを抑制する。第二被膜42は、第二粒子群12の粒子表面の改質を抑制する物質を含有しており、このような物質については後述する。本開示の製造方法において、第一粒子群11の粒子表面を改質するのに対し、第二粒子群12の粒子表面の改質を抑制する理由は、次のとおりである。
磁性粉末中に、高保磁力を有する磁性粉末(以下、「高保磁力粉末」ということがある。)と低保磁力を有する磁性粉末(以下、「低保磁力粉末」ということがある。)が共存するとき、そのような磁性粉末の成形体の角形性、特に高温での角形性が低下することがある。これについて、図面を用いて、次のように説明することができる。なお、本明細書において、特に断りのない限り、磁気特性に関し、「高温」とは、100~200℃を意味し、角形性は、10%減磁Hで評価する。
図3は、高温での、低保磁力粉末の成形体の減磁曲線と、低保磁力粉末と高保磁力粉末の混合粉末の成形体の減磁曲線とを示すグラフである。図3から、低保磁力粉末と高保磁力粉末の混合粉末の成形体と比較して、低保磁力粉末の成形体は、保磁力には劣るが、角形性には優れることが理解できる。
SmFeN磁性粉末において、大粒径を有する磁性粉末は保磁力が低く、小粒径を有する磁性粉末は保磁力が高い。本開示の製造方法で用いる磁性粉末において、第一粒子群は低保磁力粉末に相当し、第二粒子群は高保磁力粉末に相当する。
図2に示したように、熱処理前の焼結体30においては、第一粒子群11の粒子表面には第一被膜41が存在し、第二粒子群12の粒子表面には第二被膜42が存在する。このような焼結体30を熱処理することによって、上述したように、第一粒子群11は改質され保磁力が向上し、第二粒子群12は第二被膜42によって改質が抑制され保磁力の向上が抑制される。これにより、熱処理後の焼結体30においては、第一粒子群11の保磁力と第二粒子群12の保磁力の差が拡大することを抑制でき、角形性を向上することができる。これらの結果、第一粒子群と第二粒子群とで焼結体の密度が向上し、磁化が向上した場合でも、角形性、特に高温での角形性が向上する。角形性が向上すれば、外部磁場が印加されている環境下で、減磁し難い。
これらのことから、本開示の製造方法で得られた希土類磁石90(熱処理後の焼結体30)は、第一粒子群11の粒子表面には改質相20が形成されているが、第二粒子群12の粒子表面には改質相20が実質的に形成されていない組織を有する。また、図1の例では、本開示の製造方法で得られた希土類磁石90(熱処理後の焼結体30)においては、第二粒子群12の粒子表面には、実質的に被膜が認められない。これは、熱処理前の焼結体30に存在していた第二被膜42は、熱処理時に改質抑制の機能を果たすと、典型的には、第二被膜42を構成している元素に分解し、その元素は、改質相20又は第二粒子群12の粒子表面に分散するためであると考えられるが、これに限られず、希土類磁石90(熱処理後の焼結体30)に、第二被膜42の一部又は全部が残留していてもよい。
これまで述べてきた知見等によって完成された、本開示の製造方法の構成要件を、次に説明する。
《希土類磁石の製造方法》
本開示の製造方法は、磁性粉末準備工程、第一被覆磁性粉末準備工程、第二被覆磁性粉末準備工程、混合工程、磁場成形工程、加圧焼結工程、及び熱処理工程を含む。以下、各工程について説明する。
〈磁性粉末準備工程〉
磁性粉末(SmFeN粉末)を準備する。本開示の製造方法に用いる磁性粉末(SmFeN粉末)は、Sm、Fe、及びNを含有し、少なくとも一部がThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備えていれば、特に制限はない。磁性相の結晶構造としては、前述の構造のほかに、TbCu型の結晶構造を有する相等が挙げられる。なお、Smはサマリウム、Feは鉄、そして、Nは窒素である。また、Thはトリウム、Znは亜鉛、Niはニッケル、Tbはテルビウム、そして、Cuは銅である。
SmFeN粉末中には、例えば、組成式(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相を含有してもよい。本開示の製造方法で得られる希土類磁石(以下、「成果物」ということがある。)は、SmFeN粉末中の磁性相に由来して、磁化を発現する。なお、i、j、及びhは、モル比である。
SmFeN粉末中の磁性相には、本開示の製造方法の効果及び成果物の磁気特性を阻害しない範囲で、Rを含有していてもよい。Rの含有範囲は、上記組成式のiで表される。iは、例えば、0以上、0.10以上、又は0.20以上であってよく、0.50以下、0.40以下、又は0.30以下であってよい。Rは、Sm以外の希土類元素及びZrから選ばれる一種以上の元素である。本明細書で、希土類元素とは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuである。なお、Zrはジルコニウム、Scはスカンジウム、Yはイットリウム、Laはランタン、Ceはセリウム、Prはプラセオジム、Ndはネオジム、Pmはプロメチウム、Smはサマリウム、Euはユウロピウム、Gdはガドリニウム、Tbはテルビウム、Dyはジスプロシウム、Hoはホルミウム、Erはエルビウム、Tmはツリウム、Ybはイッテルビウム、そして、Luはルテチウムである。
(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17については、典型的には、Sm(Fe(1-j)Co17のSmの位置にRが置換しているが、これに限られない。例えば、Sm(Fe(1-j)Co17に、侵入型でRの一部が配置されていてもよい。
SmFeN粉末中の磁性相には、本開示の製造方法の効果及び成果物の磁気特性を阻害しない範囲で、Coを含有してもよい。このような範囲は、上記組成式で、jで表される。jは、0以上、0.10以上、又は0.20以上であってよく、0.52以下、0.40以下、又は0.30以下であってよい。
(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17については、典型的には、(Sm(1-i)Fe17のFeの位置にCoが置換しているが、これに限られない。例えば、(Sm(1-i)Fe17に、侵入型でCoの一部が配置されていてもよい。
SmFeN粉末中の磁性相は、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される結晶粒に、Nが侵入型で存在することによって、磁気特性の発現及び向上に寄与する。
(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17については、hは1.5~4.5をとり得るが、典型的には、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17である。hは、1.8以上、2.0以上、又は2.5以上であってもよく、4.2以下、4.0以下、又は3.5以下であってもよい。(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17全体に対する(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%がより一層好ましい。一方、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17のすべてが(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17でなくてもよい。(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17全体に対する(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17の含有量は、98質量%以下、95質量%以下、又は92質量%以下であってよい。
SmFeN粉末は、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相の他に、本開示の製造方法の効果及び成果物の磁気特性を実質的に阻害しない範囲で、酸素及びM並びに不可避的不純物元素を含有してもよい。成果物の磁気特性を確保する観点からは、SmFeN粉末全体に対する、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相の含有量は、80質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上であってよい。一方、SmFeN粉末全体に対して、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相の含有量を過度に高くしなくとも、実用上問題はない。したがって、その含有量は、97質量%以下、95質量%以下、又は93質量%以下であってよい。(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相の残部が、酸素及びMの含有量となる。また、酸素及びMの一部は、侵入型及び/又は置換型で、磁性相に存在していてもよい。
上述のMとしては、Ga、Ti、Cr、Zn、Mn、V、Mo、W、Si、Re、Cu、Al、Ca、B、Ni、及びCから選ばれる一種以上の元素が挙げられる。不可避的不純物元素とは、原材料及び/又は磁性粉末を製造等するに際し、その含有を回避することができない、あるいは、回避するためには著しい製造コストの上昇を招くような不純物元素のことをいう。これらの元素は、置換型及び/又は侵入型で上述した磁性相に存在していてもよいし、上述した磁性相以外の相に存在していてもよい。あるいは、これらの相の粒界に存在していてもよい。なお、Gaはガリウム、Tiはチタン、Crはクロム、Znは亜鉛、Mnはマンガン、Vはバナジウム、Moはモリブデン、Wはタングステン、Siはシリコン、Reはレニウム、Cuは銅、Alはアルミニウム、Caはカルシウム、Bはホウ素、Niはニッケル、そして、Cは炭素である。
SmFeN粉末は、第一粒子群及び第二粒子群を含む。第一粒子群の粒子は大粒径を有し、第二粒子群の粒子は小粒径を有する。第一粒子群及び第二粒子群それぞれの粒子の粒径は、粒度分布D50で代表することができる。第一粒子群の粒度分布D50はdμmで表され、第二粒子群の粒度分布D50はdμmで表される。そして、d及びdが、0.350≦d/d≦0.500の関係を満足する。前述の関係を満足することからd<dであること、すなわち、第一粒子群が大粒径を有しており、第二粒子群が小粒径を有していることは明らかである。
/dが、0.350以上、0.360以上、0.370以上、又は0.378以上、かつ、0.500以下、0.490以下、0.486以下、0.480以下、0.470以下、又は0.467以下であれば、第一粒子群の粒子間に、第二粒子群の粒子が有利に存在して、成形体(希土類磁石)の密度が高まり、その結果、磁化が向上する。
上述の関係を満足する限り、第一粒子群及び第二粒子群それぞれの粒子の粒径は、特に制限はないが、上述の関係を満足し易くするためには、d及びdそれぞれが、単独で、次の範囲であることが好ましい。dは、3.0μm以上、3.2μm以上、又は3.4μm以上であることが好ましく、3.7μm以下、3.6μm以下、又は3.5μm以下であることが好ましい。dは、1.4μm以上又は1.5μm以上が好ましく、1.8μm以下、1.7μm以下、又は1.6μm以下が好ましい。
また、第一粒子群の総体積と第二粒子群の総体積との比、すなわち、(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)は、9:1~4:1の範囲である必要がある。(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)が9:1であるとは、例えば、SmFeN粉末の総体積に対して、第一粒子群の総体積が90%であり、第二粒子群の総体積が10%であることを意味する。また、(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)が4:1であるとは、例えば、SmFeN粉末の総体積に対して、第一粒子群の総体積が80%であり、第二粒子群の総体積が20%であることを意味する。
(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)が9:1であるか、第二粒子群の総体積がそれより多ければ、第一粒子群の各粒子の間に、第二粒子群の各粒子が有利に存在して、希土類磁石の密度が高まり、その結果、磁化が向上する。この観点からは、(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)は、8.8:1.2以上又は8.6:1.4以上であることが好ましい。
第二粒子群の粒子が過剰に存在すると、第一粒子群の各粒子の間隙が、反って拡大する。これを回避するためには、(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)が4:1であるか、第二粒子群の総体積がそれより少ない必要がある。また、第二粒子群のような小粒径のSmFeN粉末粒子は、その粒子の粒子残留磁化σが小さいため、第二粒子群が過剰に存在すると、希土類磁石全体の磁化の低下につながる。このようなことから、第一粒子群の各粒子の間隔が拡大することを回避して、希土類磁石の密度の低下を抑制し、σが小さい第二粒子群の数を少なくすることによって、希土類磁石の磁化が向上する。これらの観点からは、(第一粒子群の総体積):(第二粒子群の総体積)は、8.2:1.8以下又は8.4:1.6以下であることが好ましい。
第一粒子群及び第二粒子群を含む磁性粉末は、典型的には、後述する製造方法で得られたSmFeN粉末を、第一粒子群及び第二粒子群に分級する。分級方法に、特に制限はなく、周知の方法を用いてよい。分級方法としては、例えば、篩分級及び風力分級等が挙げられ、これらを組み合わせてもよい。
SmFeN粉末のD50は、SmFeN粉末の粒度分布から算出されるが、SmFeN粉末の粒度分布は、次のような方法で測定(調査)される。本明細書において、特に断りのない限り、SmFeN粉末の粒子の大きさ(粒径)に関する記載は、次の測定方法(調査方法)に基づくものとする。なお、D50は、メジアン径を意味する。
SmFeN粉末を樹脂埋めした試料を準備し、その試料の表面を研磨して、光学顕微鏡で観察する。そして、光学顕微鏡像に直線を引き、直線がSmFeN粒子(明視野)で区切られる線分の長さを測定し、線分の長さの度数分布から、SmFeN粉末の粒度分布を求めた。この方法で求めた粒度分布は、交線法又は乾式レーザ回折・散乱法で求めた粒度分布にほぼ等しい。
SmFeN粉末には、製造上の都合等から、微粉粒子が存在する場合があるが、d及びdが上述の関係を満足する限り、SmFeN粉末中の1.0μm以下の粒径を有する磁性粒子(微粉粒子)の割合に、特に制限はない。SmFeN粉末中の1.0μm以下の粒径を有する磁性粒子(微粉粒子)の割合は、成形体(希土類磁石)の機械的強度を確保する観点から可能な限り低い方が好ましい。SmFeN粉末中の全磁性粒子数に対して、微粉粒子の割合は、10.0%以下、8.0%以下、6.0%以下、又は4.0%以下が好ましい。SmFeN粉末の製造上の都合の観点等から、微粉粒子は皆無でなくてもよく、微粉粒子の割合の下限が、1.0%、2.0%、又は3.0%であっても、実用上問題ない。また、微粉粒子が存在する場合でも、焼結体を熱処理することによって、微粉粒子に由来する微細なFe-Zn合金相が概ね認められなくなる。その理由は、次のとおりであると考えられる。SmFeN粉末中の微粉粒子では、焼結体の熱処理中に、その粒子表面だけでなく、その粒子のほぼ全体で、Fe-Zn合金相が形成される。これは、微粉粒子においては、ThZn17型及び/又はThNi17型等の結晶構造が完全でない部分の割合が大きいためである。そして、微粉粒子に由来するFe-Zn合金相の多くは、第一粒子群の粒子表面に形成された改質相(Fe-Zn合金相)と一体化される。
SmFeN粉末中の酸素は、保磁力低下の原因となる。保磁力の低下は、大粒径を有する磁性粉末で問題となることが多い。本開示の製造方法では、第一粒子群(大粒径を有する磁性粉末)を改質する。改質中に、第一被膜中の亜鉛に酸素を吸収させることによって、保磁力の低下を抑制することができる。SmFeN粉末中の酸素の含有量は、第一被膜中の亜鉛がSmFeN粉末中の酸素を吸収する量を考慮して決定すればよい。SmFeN粉末の酸素含有量は、SmFeN粉末全体に対して、低い方が好ましい。SmFeN粉末の酸素含有量は、SmFeN粉末全体に対して、2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がより一層好ましい。一方、SmFeN粉末中の酸素の含有量を極度に低減することは、製造コストの増大を招く。このことから、SmFeN粉末の酸素の含有量は、SmFeN粉末全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってよい。
SmFeN粉末は、これまで説明してきたことを満足すれば、その製造方法に特に制限はなく、市販品を用いてもよい。SmFeN粉末の製造方法としては、例えば、サマリウム酸化物及び鉄粉から還元拡散法でSm-Fe粉末を製造し、窒素と水素の混合ガス、窒素ガス、及びアンモニアガス等の雰囲気中で600℃以下の加熱処理をして、Sm-Fe-N粉末を得る方法等が挙げられる。あるいは、例えば、溶解法でSm-Fe合金を製造し、その合金を粗粉砕して得た粗粉砕粒を窒化し、それを所望の粒径になるまで、さらに粉砕する方法等が挙げられる。粉砕には、例えば、乾式ジェットミル、乾式ボールミル、湿式ボールミル、又は湿式ビーズミル等を用いることができる。これらを組み合わせて用いてもよい。
SmFeN粉末は、前述の製造方法の他に、例えば、SmとFeを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、部分酸化物を得る前処理工程、前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る還元工程、及び、前記合金粒子を窒素又はアンモニア含有雰囲気下、400℃以上470℃以下の第一温度で熱処理した後、480℃以上610℃以下の第二温度で熱処理して窒化物を得る窒化工程を含む製造方法により得られる。特に粒子径の大きい合金粒子、例えばLaを含む合金粒子では、窒化が酸化物粒子の内部にまで充分に進行しないことがあるが、二段階の温度で窒化すると、酸化物粒子の内部も充分に窒化され、粒度分布が狭く、高残留磁化の異方性のSmFeN粉末を得ることができる。
[酸化物準備工程]
後述の前処理工程で使用するSmとFeを含む酸化物は、例えば、Sm酸化物とFe酸化物を混合することにより作製してもよいが、SmとFeを含む溶液と沈殿剤を混合し、SmとFeとを含む沈殿物を得る工程(沈殿工程)、及び、前記沈殿物を焼成することにより、SmとFeを含む酸化物を得る工程(酸化工程)によって、製造することが好ましい。
[沈殿工程]
沈殿工程では、強酸性の溶液にSm原料、Fe原料を溶解して、SmとFeを含む溶液を調製する。SmFe17を主相として得る場合、SmおよびFeのモル比(Sm:Fe)は1.5:17~3.0:17が好ましく、2.0:17~2.5:17がより好ましい。La、W、Co、Ti、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及び/又はLu等の原料を上述した溶液に加えても良い。残留磁束密度の点で、Laを含むことが好ましい。保磁力と角型比の点で、Wを含むことが好ましい。温度特性の点で、Co及び/又はTiを含むことが好ましい。
Sm原料、Fe原料としては、強酸性の溶液に溶解できるものであれば限定されない。例えば、入手のし易さの点で、Sm原料としては酸化サマリウムが、Fe原料としてはFeSOが挙げられる。SmとFeを含む溶液の濃度は、Sm原料とFe原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整することができる。酸性溶液としては溶解性の点で硫酸などが挙げられる。
SmとFeを含む溶液と沈殿剤を反応させることにより、SmとFeを含む不溶性の沈殿物を得る。ここで、SmとFeを含む溶液は、沈殿剤との反応時にSmとFeを含む溶液となっていればよく、たとえばSmとFeを含む原料を別々の溶液として調製し、各々の溶液を滴下して沈殿剤と反応させても良い。別々の溶液として調製する場合においても各原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整する。沈殿剤としては、アルカリ性の溶液でSmとFeを含む溶液と反応して沈殿物が得られるものであれば限定されず、アンモニア水、苛性ソーダなどが挙げられ、苛性ソーダが好ましい。
沈殿反応は、沈殿物の粒子の性状を容易に調整できる点から、SmとFeを含む溶液と、沈殿剤を、それぞれ水などの溶媒に滴下する方法が好ましい。SmとFeを含む溶液と沈殿剤との供給速度、反応温度、反応液濃度、反応時のpH等を適宜制御することにより、構成元素の分布が均質で、粒度分布が狭く、粉末形状の整った沈殿物が得られる。このような沈殿物を使用することによって、最終製品であるSmFeN粉末の磁気特性が向上する。反応温度は、0℃以上50℃以下とすることができ、35℃以上45℃以下が好ましい。反応液濃度は、金属イオンの総濃度として0.65mol/L以上0.85mol/L以下が好ましく、0.7mol/L以上0.85mol/L以下がより好ましい。反応pHは、5以上9以下が好ましく、6.5以上8以下がより好ましい。
SmとFeを含む溶液は、磁気特性の点で、さらにLa、W、Co、及びTiからなる群から選ばれる1種以上の金属を含むことが好ましい。例えば、残留磁束密度の点で、Laを含むことが好ましく、保磁力と角型比の点で、Wを含むことが好ましく、温度特性の点で、Co及び/又はTiを含むことが好ましい。La原料としては、強酸性の溶液に溶解できるものであれば限定されず、例えば、入手のしやすさの点で、La、LaClなどが挙げられる。Sm原料とFe原料とともに、La原料、W原料、Co原料、Ti原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整し、酸性溶液としては溶解性の点で硫酸が挙げられる。W原料としては、タングステン酸アンモニウムが挙げられ、Co原料としては、硫酸コバルトが挙げられ、チタン原料としては硫酸チタニアが挙げられる。
SmとFeを含む溶液が、さらにLa、W、Co、及びTiからなる群から選ばれる1種以上の金属を含む場合、Sm、Feと、La、W、Co、及びTiからなる群から選ばれる1種以上を含む不溶性の沈殿物を得る。ここで、該溶液は、沈殿剤との反応時にLa、W、Co、及びTiからなる群から選ばれる1種以上を含んでいればよく、例えば各原料を別々の溶液として調製し、各々の溶液を滴下して沈殿剤と反応させてもよいし、SmとFeを含む溶液と一緒に調整してもよい。
沈殿工程で得られた粉末により、最終的に得られるSmFeN粉末の粉末粒子径、粉末形状、粒度分布がおよそ決定される。得られた粉末の粒子径をレーザ回折式湿式粒度分布計により測定した場合、全粉末が0.05μm以上20μm以下、好ましくは0.1μm以上10μm以下の範囲にほぼ入るような大きさと分布であることが好ましい。
沈殿物を分離した後は、続く酸化工程の熱処理において残存する溶媒に沈殿物が再溶解して、溶媒が蒸発する際に沈殿物が凝集したり、粒度分布、粉末粒子径等が変化したりすることを抑制するために、分離物を脱溶媒しておくことが好ましい。脱溶媒する方法として具体的には、例えば溶媒として水を使用する場合、70℃以上200℃以下のオーブン中で5時間以上12時間以下の時間、乾燥する方法が挙げられる。
沈殿工程の後に、得られる沈殿物を分離洗浄する工程を含んでもよい。洗浄する工程は上澄み溶液の導電率が5mS/m以下となるまで適宜行う。沈殿物を分離する工程としては、例えば、得られた沈殿物に溶媒(好ましくは水)を加えて混合した後、濾過法、デカンテーション法等を用いることができる。
[酸化工程]
酸化工程とは、沈殿工程で形成された沈殿物を焼成することにより、SmとFeとを含む酸化物を得る工程である。例えば、熱処理により沈殿物を酸化物に変換することができる。沈殿物を熱処理する場合、酸素の存在下で行われる必要があり、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。また、酸素の存在下で行われる必要があるため、沈殿物中の非金属部分に酸素原子を含むことが好ましい。
酸化工程における熱処理温度(以下、「酸化温度」ということがある。)は特に限定されないが、700℃以上1300℃以下が好ましく、900℃以上1200℃以下がより好ましい。700℃未満では酸化が不十分となり、1300℃を超えると、目的とするSmFeN粉末の形状、平均粒子径および粒度分布が得られない傾向にある。熱処理時間も特に限定されないが、1時間以上3時間以下が好ましい。
得られる酸化物は、酸化物粒子内においてSm及びFeの微視的な混合が充分になされ、沈殿物の形状、粒度分布等が反映された酸化物粒子である。
[前処理工程]
前処理工程とは、上述のSmとFeを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、酸化物の一部が還元された部分酸化物を得る工程である。
ここで、部分酸化物とは、酸化物の一部が還元された酸化物をいう。部分酸化物の酸素濃度は特に限定されないが、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。10質量%を超えると、還元工程においてCaとの還元発熱が大きくなり、焼成温度が高くなることで異常な粒子成長をした粒子ができてしまう傾向がある。ここで、部分酸化物の酸素濃度は、非分散赤外吸収法(ND-IR)により測定することができる。
還元性ガスは、水素(H)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)等の炭化水素ガスなどから適宜選択されるが、コストの点で水素ガスが好ましく、ガスの流量は、酸化物が飛散しない範囲で適宜調整される。前処理工程における熱処理温度(以下、前処理温度)は、300℃以上950℃以下が好ましく、下限は400℃以上がより好ましく、750℃以上がさらに好ましい。上限は900℃未満がより好ましい。前処理温度が300℃以上であるとSmとFeを含む酸化物の還元が効率的に進行する。また950℃以下であると酸化物粒子が粒子成長、偏析することが抑制され、所望の粒子径を維持することができる。熱処理時間は、特に限定されないが、1時間以上50時間以下とすることができる。また、還元性ガスとして水素を用いる場合、使用する酸化物層の厚みを20mm以下に調整し、更に反応炉内の露点を-10℃以下に調整することが好ましい。
[還元工程]
還元工程とは、前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程であり、例えば部分酸化物をカルシウム融体またはカルシウムの蒸気と接触することで還元が行われる。熱処理温度は、磁気特性の点より、920℃以上1200℃以下が好ましく、950℃以上1150℃以下がより好ましく、980℃以上1100℃以下がさらに好ましい。
還元剤である金属カルシウムは、粒状又は粉末状の形で使用されるが、その粒子径は10mm以下が好ましい。これにより還元反応時における凝集をより効果的に抑制することができる。また、金属カルシウムは、反応当量(希土類酸化物を還元するのに必要な化学量論量であり、Fe成分が酸化物の形である場合には、これを還元するために必要な分を含む)の1.1~3.0倍量の割合で添加することが好ましく、1.5~2.5倍量がより好ましい。
還元工程では、還元剤である金属カルシウムとともに、必要に応じて崩壊促進剤を使用することができる。この崩壊促進剤は、後述する後処理工程に際して、生成物の崩壊、粒状化を促進させるために適宜使用されるものであり、例えば、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、酸化カルシウム等のアルカリ土類酸化物などが挙げられる。これらの崩壊促進剤は、サマリウム酸化物当り1質量%以上30質量%以下、好ましくは5質量%以上30質量%以下の割合で使用される。
[窒化工程]
窒化工程とは、還元工程で得られた合金粒子を、窒素またはアンモニア含有雰囲気下、400℃以上470℃以下の第一温度で熱処理した後、480℃以上610℃以下の第二温度で熱処理して窒化処理することにより、異方性の磁性粒子を得る工程である。上述の沈殿工程で得られる粒子状の沈殿物を用いていることから、還元工程にて多孔質塊状の合金粒子が得られる。これにより、粉砕処理を行うことなく直ちに窒素雰囲気中で熱処理して窒化することができるため、窒化を均一に行うことができる。第一温度で窒化することなく、第二温度の高温で熱処理すると、窒化が急激に進行することにより異常発熱が生じ、SmFeNが分解し、磁気特性が大きく低下することがある。また、窒化工程における雰囲気は窒化の進行をより遅くできることから、実質的に窒素含有雰囲気下であることが好ましい。ここでいう実質的にとは、不純物の混入等に起因して不可避的に窒素以外の元素が含まれることを考慮して使用しており、例えば、雰囲気における窒素の割合が95%以上であり、97%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
窒化工程における第一温度は、400℃以上470℃以下であるが、410℃以上450℃以下が好ましい。400℃未満では、窒化の進行が非常に遅く、470℃を超えると、発熱により過窒化または分解が起こりやすくなる。第一温度での熱処理時間は、特に限定されないが、1時間以上40時間以下が好ましく、20時間以下がより好ましい。1時間未満では、窒化が十分に進行しない場合があり、40時間を超えると、生産性が低下する。
第二温度は、480℃以上610℃以下であるが、500℃以上550℃以下が好ましい。480℃未満では、粒子が大きいと窒化が十分に進行しない場合があり、610℃を超えると、過窒化または分解が起こりやすい。第二温度での熱処理時間は、15分以上5時間以下が好ましく、30分以上2時間以下がより好ましい。15分未満では、窒化が十分に進行しない場合があり、5時間を超えると、生産性が低下する。
第一温度による熱処理と第二温度による熱処理は連続で行っても良く、これらの熱処理間において、第二温度より低い温度での熱処理を含むこともできるが、生産性の点で、連続で行うことが好ましい。
[後処理工程]
窒化工程後に得られる生成物には、磁性粒子に加えて、副生するCaO、未反応の金属カルシウム等が含まれ、これらが複合した焼結塊状態となっている場合がある。窒化工程後に得られる生成物を冷却水中に投入して、CaO及び金属カルシウムを水酸化カルシウム(Ca(OH))懸濁物として分離することができる。さらに残留する水酸化カルシウムは、磁性粉末を酢酸等で洗浄して充分に除去してもよい。生成物を水中に投入した際には、金属カルシウムの水による酸化及び副生CaOの水和反応によって、複合した焼結塊状の反応生成物の崩壊、すなわち微粉化が進行する。
[アルカリ処理工程]
窒化工程後に得られる生成物をアルカリ溶液中に投入してもよい。アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液としては、たとえば水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などが挙げられる。なかでも、排水処理、高pHの点で、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。生成物のアルカリ処理により、酸素をある程度含有するSmリッチ層が残存して保護層として機能するため、アルカリ処理による酸素濃度が増大することを抑制している。
アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液のpHは特に限定されないが、9以上が好ましく、10以上がより好ましい。pHが9未満では、水酸化カルシウムになる際の反応速度が速く、発熱が大きくなるため、最終的に得られるSmFeN粉末の酸素濃度が高くなる傾向がある。
アルカリ処理工程において、アルカリ溶液で処理した後に得られたSmFeN粉末は、必要によりデカンテーションなどの方法で水分を低減することもできる。
[酸処理工程]
アルカリ処理工程の後に、さらに酸で処理する酸処理工程を含んでもよい。酸処理工程では、前述のSmリッチ層の少なくとも一部を除去して、SmFeN粉末全体中の酸素濃度を低減する。また、本発明の実施形態にある製造方法では、粉砕等を行わないため、SmFeN粉末の平均粒子径が小さく、粒度分布が狭く、また粉砕等で生じる微粉を含まないため、酸素濃度の増加を抑制することが可能となる。
酸処理工程に用いる酸としては、特に限定されず、たとえば塩化水素、硝酸、硫酸、酢酸などが挙げられる。なかでも、不純物が残留しない点で、塩化水素、硝酸が好ましい。
酸処理工程に用いる酸の使用量は、SmFeN粉末100質量部に対して3.5質量部以上13.5質量部以下が好ましく、4質量部以上10質量部以下がより好ましい。3.5質量部未満では、SmFeN粉末の表面の酸化物が残り、酸素濃度が高くなり、13.5質量部を超えると、大気に暴露した際に再酸化が起こりやすく、また、SmFeN粉末を溶解するため、コストも高くなる傾向がある。酸の量をSmFeN粉末100質量部に対して3.5質量部以上13.5質量部以下とすることにより、酸処理後に大気に暴露した際に再酸化が起こりにくい程度に酸化されたSmリッチ層がSmFeN粉末表面を覆うようにすることができるので、酸素濃度が低く、平均粒子径が小さく、粒度分布の狭いSmFeN粉末が得られる。
酸処理工程において、酸で処理した後に得られたSmFeN粉末は、必要によりデカンテーションなどの方法で水分を低減することもできる。
[脱水工程]
酸処理工程の後に、脱水処理する工程を含むことが好ましい。脱水処理によって、真空乾燥前の固形分中の水分を低減させ、真空乾燥前の固形分が水分をより多く含むことにより生じる乾燥時の酸化の進行を抑制することができる。ここで、脱水処理は、圧力や遠心力を加えることで、処理前の固形分に対して処理後の固形分に含まれる水分値を低減する処理のことを意味し、単なるデカンテーションや濾過や乾燥は含まない。脱水処理方法は特に限定されないが、圧搾、遠心分離などが挙げられる。
脱水処理後のSmFeN粉末に含まれる水分量は特に限定されないが、酸化の進行を抑制する点から13質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
酸処理して得られたSmFeN粉末、又は、酸処理後、脱水処理して得られたSmFeN粉末は、真空乾燥することが好ましい。乾燥温度は特に限定されないが、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。乾燥時間も特に限定されないが、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましい。
〈第一被覆磁性粉末準備工程〉
SmFeN粉末の第一粒子群の粒子表面に第一被膜を形成して、第一被覆磁性粉末を得る。第一被膜は、典型的には、亜鉛を含有する。亜鉛を含有する被膜とは、金属亜鉛を含有する被膜及び亜鉛合金を含有する被膜の少なくともいずれかを意味する。金属亜鉛とは、合金化していない亜鉛を意味する。
第一粒子群の粒子表面に、第一被膜を形成することができれば、その形成方法は特に制限されない。後述する熱処理工程で、第一被覆磁性粉末の粒子表面の第一被膜によって、第一粒子群の粒子表面と第一被膜との界面近傍は改質され、上述した改質相が形成される(図1、参照)。第一被覆磁性粉末を得る段階では、第一粒子群の粒子表面と第一被膜との界面近傍は、改質されていてもよいし、改質されていなくてもよい。典型的には、第一被覆磁性粉末を得る段階では、第一粒子群の粒子表面と第一被膜との界面近傍は、改質されていない。
本開示の製造方法では、第一粒子群の粒子粉末と亜鉛を含有する粉末とを単純に混合するのではなく、第一粒子群の粒子表面に、亜鉛を含有する第一被膜を形成した第一被覆磁性粉末を得て、その第一被覆磁性粉末を、磁場成形、加圧焼結、そして熱処理する。そのため、第一被覆磁性粉末中の亜鉛成分の含有割合が比較的低くても、図1に示したような改質相が得られる。これは、単純混合の場合と比較して、本開示の製造方法では、第一被膜を形成するため、亜鉛成分が有利に、第一粒子群の粒子表面に接触するためである。
具体的には、第一被覆磁性粉末中の亜鉛成分の含有割合が、第一被覆磁性粉末と第二被覆磁性粉末の合計質量に対して、3.0質量%以上、3.5質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であれば、図1に示したように、第一粒子群の粒子表面の大部分が改質相で覆われ、減磁を抑制できる。すなわち、第一粒子群の粒子表面には、改質相としてのFe-Zn合金相が被膜状に有利に形成される。
一方、第一被覆磁性粉末中の亜鉛成分の含有割合が、第一被覆磁性粉末と第二被覆磁性粉末の合計質量に対して、10.0質量%以下であれば、亜鉛成分の使用による磁化の低下を抑制することができる。この観点からは、第一被覆磁性粉末中の亜鉛成分の含有割合は、第一被覆磁性粉末と第二被覆磁性粉末の合計質量に対して、10.0質量%未満、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、又は6.0質量%以下であってもよい。
第一被膜の形成方法としては、例えば、ロータリーキルン炉を用いる方法及び蒸着法等が挙げられる。これらの方法それぞれについて、第一被膜が亜鉛を含有する被膜である場合を例にして、簡単に説明する。
[ロータリーキルン炉を用いる方法]
図4は、ロータリーキルン炉を用いて、SmFeN粉末(第一粒子群)の粒子表面に、亜鉛を含有する被膜(第一被膜)を形成する方法の一例を示す説明図である。「ロータリーキルン炉を用いる方法」についての以下の説明に関し、特に説明のない限りは、「SmFeN粉末」は、第一粒子群の粒子粉末を意味する。
ロータリーキルン炉100は、攪拌ドラム110を備える。攪拌ドラム110は、材料格納部120、回転軸130、攪拌板140を有している。回転軸130には、電動機等の回転手段(図示しない)が連結されている。
材料格納部120に、SmFeN粉末150と亜鉛を含有する粉末160を装入する。その後、攪拌ドラム110を回転しながら、材料格納部120をヒータ(図示しない)で加熱する。
亜鉛を含有する粉末160の融点よりも低い温度に材料格納部120を加熱すれば、SmFeN粉末150の粒子の表面に、亜鉛を含有する粉末160の亜鉛成分が固相拡散する。その結果、SmFeN粉末150の粒子の表面に、亜鉛を含有する被膜を形成する。亜鉛を含有する粉末160の融点以上に材料格納部120を加熱すれば、亜鉛を含有する粉末160の融液を得て、その融液とSmFeN粉末150とが接触し、その状態で材料格納部120を冷却すれば、SmFeN粉末150の粒子の表面に、亜鉛を含有する被膜を形成する。
ロータリーキルン炉の操作条件は、所望の被膜を得られるよう、適宜決定すればよい。
材料格納部の加熱温度は、亜鉛を含有する粉末の融点をTとしたとき、例えば、(T-50)℃以上、(T-40)℃以上、(T-30)℃以上、(T-20)℃以上、(T-10)℃以上、又はT℃以上であってよく、(T+50)℃以下、(T+40)℃以下、(T+30)℃以下、(T+20)℃以下、又は(T+10)℃以下であってよい。なお、亜鉛を含有する粉末が金属亜鉛を含有する粉末である場合、Tは亜鉛の融点である。また、亜鉛を含有する粉末が亜鉛合金を含有する粉末である場合、Tは亜鉛合金の融点である。
攪拌ドラムの回転速度(回転数)は、例えば、5rpm以上、6rpm以上、10rpm以上、又は20rpm以上であってよく、200rpm以下、100rpm以下、又は50rpm以下であってよい。回転時の雰囲気は、粉末及び形成した被膜等の酸化を防止するため、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気には、窒素ガス雰囲気も含まれる。攪拌ドラムの回転時間(被覆処理時間)は、所望の亜鉛を含有する被膜を形成するよう、適宜決定することができる。攪拌ドラムの回転時間(被覆処理時間)は、例えば、1分以上、5分以上、10分以上、15分以上、30分以上、45分以上、又は60分以上であってよく、240分以下、210分以下、180分以下、150分以下、120分以下、又は90分以下であってよい。
SmFeN粉末粒子の表面に亜鉛を含有する被膜を形成した後、被覆磁性粉末の粒子同士が結合している場合には、その結合体を粉砕してもよい。粉砕方法は、特に限定されず、例えば、ボールミル、ジョークラッシャー、ジェットミル、及びカッターミル並びにこれらの組合せを用いて粉砕する方法等が挙げられる。
[蒸着法]
図5は、SmFeN粉末(第一粒子群)の粒子表面に、亜鉛を含有する被膜(第一被膜)を蒸着法で形成する方法の一例を示す説明図である。「蒸着法」についての以下の説明に関し、特に説明のない限りは、「SmFeN粉末」は、第一粒子群の粒子粉末を意味する。
SmFeN粉末150を第1容器181に格納し、亜鉛を含有する粉末160を第2容器182に格納する。第1容器181を第1熱処理炉171に格納し、第2容器182を第2熱処理炉172に格納する。第1熱処理炉171と第2熱処理炉172を、連結路173で連結する。第1熱処理炉171及び第2熱処理炉172並びに連結路173は、気密性を備えており、第2熱処理炉172には、真空ポンプ180を連結する。
真空ポンプ180で第1熱処理炉171及び第2熱処理炉172並びに連結路173の内部を減圧した後、これらの内部を加熱する。そうすると、第2容器182に格納した亜鉛を含有する粉末160から亜鉛を含有する蒸気が発生する。亜鉛を含有する蒸気は、図5の実線矢印で示したように、第2容器182の内部から、第1容器181の内部に移動する。
第1容器181の内部に移動した亜鉛を含有する蒸気は、冷却されて、SmFeN粉末150の粒子表面に被膜を形成(蒸着)する。
第1容器181を回転容器とすることにより、ロータリーキルン炉のようにすることができ、SmFeN粉末150の粒子表面に形成される被膜の被覆百分率を一層高めることができる。被覆百分率については後述する。
図5に示した方法で被膜を形成する場合の諸条件は、所望の被膜を得られるよう、適宜決定すればよい。
第1熱処理炉の温度(SmFeN粉末の加熱温度)は、例えば、120℃以上、140℃以上、160℃以上、180℃以上、200℃以上、又は220℃以上であってよく、300℃以下、280℃以下、又は260℃以下であってよい。
第2熱処理炉の温度(亜鉛を含有する粉末の加熱温度)は、亜鉛を含有する粉末の融点をTとしたとき、例えば、T℃以上、(T+20)℃以上、(T+40)℃以上、(T+60)℃以上、(T+80)℃以上、(T+100)℃以上、又は(T+120)℃以上であってよく、(T+200)℃以下、(T+180)℃以下、(T+160)℃以下、又は(T+140)℃以下であってよい。なお、亜鉛を含有する粉末が金属亜鉛を含有する粉末である場合、Tは亜鉛の融点である。また、亜鉛を含有する粉末が亜鉛合金を含有する粉末である場合、Tは亜鉛合金の融点である。第2容器には亜鉛を含有するバルク材を格納してもよいが、第2容器の装入物を迅速に溶融し、その融液から亜鉛を含有する蒸気を発生させる観点からは、第2容器には亜鉛を含有する粉末を格納することが好ましい。
第1熱処理炉及び第2熱処理炉は、亜鉛を含有する蒸気の発生を促進し、かつ、粉末及び形成した被膜等の酸化を防止するため、減圧雰囲気とする。雰囲気圧力としては、例えば、1×10-5MPa以下が好ましく、1×10-6MPa以下がより好ましく、1×10-7MPa以下がより一層好ましい。一方、過度に減圧しなくても、実用上問題はなく、前述した雰囲気圧力を満足すれば、雰囲気圧力は1×10-8MPa以上であってよい。
第1容器が回転容器である場合には、その回転速度(回転数)は、例えば、5rpm以上、10rpm以上、又は20rpm以上であってよく、200rpm以下、100rpm以下、又は50rpm以下であってよい。
蒸着法においても、SmFeN粉末粒子の表面に亜鉛を含有する被膜を形成した後、被覆磁性粉末の粒子同士が結合している場合には、その結合体を粉砕してもよい。粉砕方法は、特に限定されず、例えば、ボールミル、ジョークラッシャー、ジェットミル、及びカッターミル並びにこれらの組合せを用いて粉砕する方法等が挙げられる。
[亜鉛成分の被覆率]
SmFeN粉末粒子(第一粒子群)の粒子表面に、第一被膜をいずれかの方法で形成して、第一被覆磁性粉末を得る場合においても、第一被覆磁性粉末における、亜鉛成分の被覆率は高い方が好ましい。亜鉛成分の被覆率が高いと、後述する熱処理工程後に、希土類磁石中の第一粒子群の粒子表面に形成された改質相の被覆率が高くなり、保磁力が有利に向上するためである。次に、亜鉛成分の被覆率の求め方について説明する。
第一被覆磁性粉末において、亜鉛成分の被覆率は、第一粒子群の粒子表面全体に対して、亜鉛成分が被覆している割合(百分率)である。亜鉛成分の被覆率(%)は、次のようにして求める。「亜鉛成分の被覆率」についての以下の説明に関し、特に説明のない限りは、「SmFeN粉末」は、第一粒子群の粒子粉末を意味する。
X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて、第一被覆磁性粉末に関し、SmFeN粉末(第一粒子群)及び第一被膜の構成元素について、組成情報を取得する。そして、次の式で、亜鉛成分の被覆率(%)を算出する。
亜鉛成分の被覆率(%)=〔(第一被膜の構成元素それぞれについての組成情報の合計)/{(SmFeN粉末(第一粒子群)の構成元素それぞれについての組成情報の合計)+(第一被膜の構成元素それぞれについての組成情報の合計)}〕×100
SmFeN粉末が、例えば、Sm、Fe、及びNからなる場合には、SmFeN粉末の構成元素それぞれについての組成情報の合計は、Sm、Fe、及びNそれぞれについての組成情報の合計を意味する。SmFeN粉末が、Sm、Fe、及びN以外の元素を含有する場合でも、Sm、Fe、及びN以外の元素の含有割合は小さい。したがって、SmFeN粉末が、Sm、Fe、及びN以外の元素を含有する場合でも、SmFeN粉末の構成元素それぞれについての組成情報の合計は、Sm、Fe、及びNそれぞれについての組成情報の合計で近似してよい。また、第一被膜が、例えば、金属亜鉛の場合には、第一被膜の構成元素それぞれについての組成情報の合計は、Znについての組成情報を意味する。第一被膜が、例えば、亜鉛合金の場合には、第一被膜の構成元素それぞれについての組成情報の合計は、Znと合金元素それぞれについての組成情報の合計を意味する。亜鉛合金が、例えば、Zn-Al合金である場合には、第一被膜の構成元素それぞれについての組成情報の合計は、Zn及びAlそれぞれについての組成情報の合計を意味する。
例えば、Znについての組成情報とは、第一被覆磁性粉末のXPSスペクトルを測定し、得られたXPSスペクトルのピーク強度から求めたZnの存在質量を意味する。SmFeN粉末が、例えば、Sm、Fe、及びNからなり、第一被膜が、例えば、亜鉛の場合には、亜鉛成分の被覆率(%)は、次のように算出される。
亜鉛成分の被覆率(%)=(Znの存在質量)/(Sm、Fe、N、及びZnの存在質量の合計)×100
このようにして求めた亜鉛成分の被覆率は、80%以上、83%以上、90%以上、又は94%以上が好ましく、100%が理想である。
SmFeN粉末の粒子は非常に硬い。これに比較して、亜鉛を含有する粉末の粒子は、一般的に軟質である。このことから、SmFeN粉末と亜鉛を含有する粉末を混合しただけで、SmFeN粉末の粒子表面に、変形した亜鉛を含有する粉末の粒子が付着し、第一被膜を形成する場合がある。しかし、混合しただけでは、安定して亜鉛成分の被覆率を80%以上にすることは難しい。そのため、第一被覆磁性粉末の準備に際しては、上述したような、ロータリーキルン炉を用いる方法又は蒸着法等を採用することが好ましい。
上述したように、第一被膜は、典型的には、亜鉛を含有する被膜であり、亜鉛を含有する被膜とは、金属亜鉛を含有する被膜及び亜鉛合金を含有する被膜の少なくともいずれかを意味する。亜鉛合金をZn-Mで表すと、Mは、Zn(亜鉛)と合金化して、亜鉛合金の溶融開始温度を、Znの融点よりも降下させる元素及び不可避的不純物元素を選択してもよい。これにより、後述する加圧焼結工程で、焼結性が向上し、また、後述する熱処理工程で、改質性が向上する。亜鉛合金の溶融開始温度を、Znの融点よりも降下させるMとしては、ZnとMとで共晶合金を形成する元素等が挙げられる。このようなMとしては、典型的には、Sn、Mg、及びAl並びにこれらの組み合せ等が挙げられる。Snはスズ、Mgはマグネシウム、そして、Alはアルミニウムである。これらの元素による融点降下作用、及び、成果物の特性を阻害しない元素についても、Mとして選択することができる。また、不可避的不純物元素とは、亜鉛を含有する粉末の原材料に含まれる不純物等、その含有を回避することができない、あるいは、回避するためには著しい製造コストの上昇を招くような不純物元素のことをいう。
Zn-Mで表される亜鉛合金において、Zn及びMの割合(モル比)は、焼結温度及び/又は焼結体の熱処理温度が適正になるように適宜決定すればよい。亜鉛合金全体に対するMの割合(モル比)は、例えば、0.05以上、0.10以上、又は0.20以上であってよく、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、又は0.30以下であってよい。
上述の「ロータリーキルン炉を用いる方法」及び「蒸着法」で使用する、亜鉛を含有する粉末は、金属亜鉛及び/又は亜鉛合金のほかに、本発明の効果を損なわない限りにおいて、任意で、バインダ機能及び/又は改質機能並びにその他の機能を有する物質を含有してもよい。その他の機能としては、例えば、耐食性の向上機能等が挙げられる。
亜鉛を含有する粉末の粒径は、特に制限されないが、SmFeN粉末の粒径よりも細かい方が好ましい。これにより、特にロータリーキルン炉を用いる場合、SmFeN粉末の粒子間に、亜鉛を含有する粉末の粒子が行き渡り易い。亜鉛を含有する粉末の粒径は、例えば、D50(メジアン径)で、0.1μm以上、0.5μm以上、又は1.0μm以上であってよく、12.0μm以下、11.0μm以下、10.0μm以下、9.0μm以下、8.0μm以下、7.0μm以下、6.0μm以下、5.0μm以下、4.0μm以下、又は2.0μm以下であってよい。また、亜鉛を含有する粉末の粒径D50(メジアン径)は、例えば、乾式レーザ回折・散乱法によって測定される。
また、特にロータリーキルン炉を用いる場合、亜鉛を含有する粉末の酸素含有量が少ないと、SmFeN粉末中の酸素を多く吸収できて好ましい。この観点からは、亜鉛を含有する粉末の酸素含有量は、亜鉛を含有する粉末全体に対し、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がより一層好ましい。一方、改質材粉末の酸素の含有量を極度に低減することは、製造コストの増大を招く。このことから、亜鉛を含有する粉末の酸素の含有量は、亜鉛を含有する粉末全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってもよい。
〈第二被覆磁性粉末準備工程〉
SmFeN粉末の第二粒子群の粒子表面に、第二被膜を形成して、第二被覆磁性粉末を得る。第二被膜は、第二粒子群の粒子表面が、隣接する第一被膜で改質されることを抑制でき、かつ、本開示の製造方法で得られる希土類磁石の磁気特性に悪影響を及ぼすことがなければ、特に制限はない。このような第二被膜は、例えば、リン酸を含有するが、これに限られない。
第二被膜が、リン酸を含有する被膜である場合には、第二被膜中のリン酸含有割合は、第二被膜全体に対して、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以であってよく、100質量%であってもよい。また、第二被膜が、リン酸を含有する被膜である場合には、その厚さは5~100nmであってよい。
第二粒子群の粒子表面に、第二被膜を形成することができれば、その形成方法は特に限定されない。
第二粒子群の粒子表面に、第二被膜として、リン酸を含有する被膜を形成する場合、その形成方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
第二粒子群の粒子にリン酸処理することで、第二粒子群の粒子表面にP-O結合を有する不動態膜を形成する。リン酸処理工程では、リン酸処理薬と第二粒子群の粒子を反応させる。リン酸処理薬としては、例えば、オルトリン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム等のリン酸塩系、次亜リン酸系、次亜リン酸塩系、ピロリン酸、ポリリン酸系等の無機リン酸、有機リン酸が挙げられる。これらのリン酸源を基本的には水中、またはIPNなどの有機溶媒中に溶解させ、必要に応じて硝酸イオン等の反応促進剤、Vイオン、Crイオン、Moイオン等の結晶微細化剤を添加したリン酸浴中に第二粒子群の粒子を投入し、第二粒子群の粒子表面にP-O結合を有する不動態膜を形成する。
〈混合工程〉
第一被覆磁性粉末と第二被覆磁性粉末を混合して、混合粉末を得る。混合方法に、特に制限はなく、例えば、アジテータ式ミキサー及びV型混合器等を用いて混合する方法が挙げられ、これらを組み合わせてもよい。
〈磁場成形工程〉
混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得る。これにより、磁場成形体に配向性を付与することができ、成果物(希土類磁石)に異方性を付与して残留磁化を向上させることができる。
磁場成形方法は、周囲に磁場発生装置を設置した成形型を用いて、混合粉末を圧縮成形する方法等、周知の方法でよい。成形圧力は、例えば、10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、50MPa以上、100MPa以上、又は150MPa以上であってよく、1500MPa以下、1000MPa以下、又は500MPa以下であってよい。前述の成形圧力を印加する時間は、例えば、0.5分以上、1分以上、又は3分以上であってよく、10分以下、7分以下、又は5分以下であってよい。印加する磁場の大きさは、例えば、500kA/m以上、1000kA/m以上、1500kA/m以上、又は1600kA/m以上であってよく、20000kA/m以下、15000kA/m以下、10000kA/m以下、5000kA/m以下、3000kA/m以下、又は2000kA/m以下であってよい。磁場の印加方法としては、電磁石を用いた静磁場を印加する方法、及び交流を用いたパルス磁場を印加する方法等が挙げられる。また、混合粉末の酸化を抑制するため、磁場成形は、不活性ガス雰囲気中で行われることが好ましい。不活性ガス雰囲気には、窒素ガス雰囲気が含まれる。
〈加圧焼結工程〉
磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得る。加圧焼結の方法は、特に限定されず、周知の方法を適用することができる。加圧焼結方法としては、例えば、キャビティを有するダイスと、キャビティの内部を摺動可能なパンチを準備し、キャビティの内部に磁場成形体を挿入し、パンチで磁場成形体に圧力を付加しつつ、磁場成形体を焼結する方法等が挙げられる。この方法の場合、典型的には、高周波誘導コイルを用いてダイスを加熱する。あるいは、放電プラズマ焼結(SPS)法を用いてもよい。
磁場成形体に圧力を付与しつつ、磁場成形体を焼結(以下、「加圧焼結する」ということがある。)できるように、加圧焼結条件を適宜選択すればよい。
焼結温度が300℃以上であれば、磁場成形体中で、第一被覆磁性粉末と第二被覆磁性粉末の混合粉末の焼結が有利に進行する。この観点からは、焼結温度は、例えば、310℃以上、320℃以上、340℃以上、又は350℃以上であってもよい。一方、焼結温度が430℃以下であれば、第一被覆磁性粉末の第一粒子群の粒子表面のFeと、第一被覆磁性粉末の第一被膜中の亜鉛成分とが、過剰に相互拡散することはない。その結果、後述する熱処理工程に支障を生じたり、得られた焼結体の磁気特性に悪影響を及ぼしたりすることはない。この観点からは、焼結温度は、420℃以下、410℃以下、400℃以下、390℃以下、380℃以下、370℃以下、又は360℃以下であってよい。加圧焼結時に、混合粉末を比較的短時間で焼結し、かつ、第一被覆磁性粉末の第一粒子群の粒子表面のFeと、第一被覆磁性粉末の第一被膜中の亜鉛成分との相互拡散をできるだけ少なくする観点からは、焼結温度は、350℃以上、360℃以上、又は370℃以上であってよく、400℃以下、390℃以下、又は380℃以下であってよい。
焼結圧力については、焼結体の密度を高めることができる焼結圧力を、適宜選択すればよい。焼結圧力は、典型的には、100MPa以上、200MPa以上、400MPa以上、500MPa以上、600MPa以上、800MPa以上、又は1000MPa以上であってよく、2000MPa以下、1800MPa以下、1600MPa以下、1500MPa以下、1300MPa以下、又は1200MPa以下であってよい。前述の範囲で、圧力が高いほど焼結体の密度向上に有利であるが、焼結時に磁場成形体中の粒子同士の接触頻度が増加し、焼結体自体及び/又は焼結体中の粒子に割れ及び/又は変形が生じ易く、その結果、焼結体自体及び/又は焼結体中の粒子に歪が残留し易い。焼結体の密度向上は残留磁化の向上に寄与するが、焼結体自体及び/又は焼結体中の粒子に歪が残留すると、飽和磁化が低下し、それによって残留磁化が低下する。これらのことから、焼結圧力は、200MPa以上、400MPa以上、500MPa以上、600MPa以上、800MPa以上、又は1000MPa以上、かつ、1500MPa以下、1300MPa以下、又は1200MPa以下が好ましい。
焼結時間は、第一被覆磁性粉末の第一粒子群の粒子表面のFeと、第一被覆磁性粉末の第一被膜中の亜鉛成分とが過剰に相互拡散することを回避しつつ、磁場成形体中の混合粉末を焼結できるよう、焼結温度等との関係を考慮して適宜決定すればよい。焼結時間には、熱処理温度に達するまでの昇温時間は含まない。焼結時間は、例えば、1分以上、2分以上、又は3分以上であってよく、30分以下、20分以下、10分以下、又は5分以下であってよい。焼結時間が前述の範囲であるとき、焼結温度を、亜鉛の融点以下、すなわち、300℃以上、310℃以上、320℃以上、340℃以上、又は350℃以上、かつ、400℃以下、390℃以下、380℃以下、370℃以下、又は360℃以下にすることにより、SmFeN粒子表面に亜鉛成分が過剰に拡散することを回避でき、その結果、残留磁化の低下を抑制できる。
焼結時間が経過したら、焼結体を冷却して、焼結を終了する。冷却速度は、速い方が、焼結体の酸化等を抑制することができ、また、焼結体中の磁性相の粗大化を抑制することができる。冷却速度は、例えば、0.5℃/秒以上、1℃/秒以上、又は10℃/秒以上であってよく、200℃/秒以下、150℃/秒以下、100℃/秒以下、又は50℃/秒以下であってよい。
焼結雰囲気については、磁場成形体及び焼結体の酸化を抑制するため、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気には、アルゴンガス雰囲気及び窒素ガス雰囲気を含む。あるいは、真空中で焼結してもよい。
〈熱処理工程〉
焼結体を熱処理する。これにより、熱処理中に、焼結体中の第一被覆磁性粉末において、第一被膜によって、第一粒子群の粒子表面の改質が進行し、かつ、焼結体中の第二被覆磁性粉末において、第二被覆によって、第二粒子群の粒子表面が、隣接する第一被膜で改質されることを抑制する。
改質の進行により、第一粒子群の粒子表面に、被膜状の改質相(Fe-Zn合金相)が形成され、第一粒子群の粒子同士をより一層強固に結合する(以下、これを「固化する」又は「固化」ということがある。)と同時に、改質が促進する。このとき、第一粒子群の粒子同士の固化により、第一粒子群の間に存在する第二粒子群の粒子も、第一粒子群の粒子と強固に結合する。
第一粒子群及び第二粒子群が微粉粒子を含む場合には、その微粉粒子のほぼ全体で、Fe-Zn合金相が形成され、そのFe-Zn合金相の多くは、第一粒子群の粒子表面に形成された被膜状の改質相(Fe-Zn合金相)と一体化される。
上述したように、本開示の製造方法では、第一被覆磁性粉末において改質が進行しても、第二被覆磁性粉末においては、第二粒子群の粒子表面が、第二被膜によって、隣接する第一被膜で改質されることを抑制する。これにより、第一粒子群の保磁力向上が進行し、第二粒子群の保磁力向上が抑制される。第一粒子群は、大粒径を有しているため、改質なしでは保磁力が低いのに対して、第二粒子群は、小粒径を有しているため、改質なしでも保磁力が高い。第一粒子群の保磁力の向上が進行し、第二粒子群の保磁力の向上が抑制されることにより、第一粒子群と第二粒子群で、保磁力の差が小さくなり、角形性、特に高温での角形性が向上する(図3、参照)。その結果、熱処理後の焼結体(本開示の製造方法で得た希土類磁石)は、外部磁場が印加されている環境下で、特に高温において、減磁し難い。
熱処理に関しては、第一粒子群の粒子表面の全てを改質相で被覆するまで、すなわち、第一粒子群の粒子表面の100%を改質相で被覆する(改質相被覆率100%)まで熱処理することが理想である。しかし、第一粒子群の粒子表面の75%以上、76%以上、80%以上、又は90%以上を改質相で被覆することを目安に熱処理すればよい。これにより、実用上有利な高温減磁特性が得られる。改質相被覆率の測定方法は、次のとおりである。本明細書において、特に断りのない限り、改質相被覆率に関する記載は、次の測定方法(調査方法)に基づくものとする。
熱処理後の焼結体の断面を研磨して、その研磨面を、Fe及びZnのそれぞれについて成分分析(面分析)して、Feマッピング画像及びZnマッピング画像を取得する。Feマッピング画像とZnマッピング画像を重ね合わせて、統合マッピング画像を取得する。統合マッピング画像において、SmFeN粉末(第一粒子群)の領域を同定し、SmFeN粉末(第一粒子群)の外周長さLを測定する。統合マッピング画像において、SmFeN粉末(第一粒子群)の外周のうち、Fe検出領域とZn検出領域で挟まれている部分の長さLと、Fe検出領域と非検出領域で挟まれている部分の長さLを測定する。非検出領域とは、Fe及びZnのいずれについても検出されない領域を意味する。そして、次の式(1)から改質相被覆率(%)を算出する。
改質相被覆率(%)=L/(L+L)×100 ・・・式(1)
上記の式(1)において、(L+L)は、断面における、第一粒子群の粒子表面の全周長さを意味し、そして、Lは、第一粒子群の粒子表面の被覆長さ(改質相長さ)を意味する。
図1に示したように、熱処理後の焼結体(本開示の製造方法で得られた希土類磁石90)は、第一粒子群11の粒子表面には改質相20が形成されているが、第二粒子群12の粒子表面には改質相20が実質的に形成されていない組織を有する。図1では、便宜的に改質相被覆率が100%の例を示しているが、これに限られず、上述の改質相被覆率であってもよい。
また、図1の例では、熱処理後の焼結体(本開示の製造方法で得られた希土類磁石90)において、第二粒子群12の粒子表面には、実質的に被膜が認められないが、これに限られない。すなわち、熱処理前の焼結体に存在していた第二被膜42は、典型的には、第二被膜42を構成している元素に分解し、その元素は、改質相20又は第二粒子群12の粒子表面に分散すると考えられるが、これに限られない。このことから、熱処理後の焼結体(本開示の製造方法で得られた希土類磁石90)においては、第二粒子群の粒子表面の一部又は全部に、第二被膜が残留していてもよい。
熱処理温度としては、例えば、350℃以上であれば、上述の改質相を得ることができる。この観点からは、熱処理温度は、360℃以上、370℃以上、又は380℃以上であってもよい。一方、熱処理温度が、410℃以下であれば、FeとZnとが過剰に相互拡散することはない。ただし、熱処理温度が410℃では、固化及び改質並びに微粉粒子の無害化が達成できるものの、クニックが発生することから、熱処理温度は、400℃以下又は390℃以下であることが好ましい。なお、クニックとは、磁化-磁場曲線(M-H曲線)の保磁力を示す領域以外の領域において、磁場の僅かな減少に対して、磁化が急激に低下することをいう。
熱処理時間に特に制限はないが、熱処理温度をx℃及び熱処理時間をy時間として、次の式(2)及び式(3)を用いて、熱処理時間を決定してもよい。
y≧-0.32x+136 ・・・式(2)
350≦x≦410 ・・・式(3)
上式(2)及び式(3)は、実験によって確認されたものであり、固化及び上述の改質相の形成に関し、熱処理温度が高いほど熱処理時間は短いことを、具体的に示すものである。
改質相被覆率を可能な限り向上する観点からは、上述の式(2)は、y≧-0.32x+137がより好ましく、y≧-0.32x+140がより一層好ましく、y≧-0.32x+145がさらに一層好ましい。
上述の改質相は、第一被覆磁性粉末において、第一粒子群の粒子表面に存在するα-Fe相と、第一被膜中の亜鉛成分とが合金化して形成される。改質相を形成するため、熱処理時間は、典型的には、3時間以上、4時間以上、5時間以上、8時間以上、10時間以上、12時間以上、15時間以上、17時間以上、又は20時間以上であってよい。一方、第一粒子群の粒子表面に存在するα-Fe相の量は限られており、また、第一被膜中の亜鉛成分が第一粒子群の粒子に拡散する深さも限られている。そのため、過剰に長時間にわたって熱処理しても、改質相の形成は飽和する。この観点から、熱処理時間y(時間)は、40時間以下、35時間以下、30時間以下、25時間以下、又は24時間以下であることが好ましい。
焼結体の酸化を抑制するため、真空中又は不活性ガス雰囲気中で焼結体を熱処理することが好ましい。不活性ガス雰囲気には、窒素ガス雰囲気を含む。焼結体の熱処理は、加圧焼結に用いた型内で行ってもよいが、その場合には、熱処理中は焼結体に圧力を負荷しない。上述した熱処理条件を満足すれば、正常な磁性相が分解してα-Fe相を生成し、その生成の結果、FeとZnとが過剰に相互拡散することを抑制することができる。熱処理を真空中で行う場合には、雰囲気の絶対圧は、1×10-7Pa以上、1×10-6Pa以上、又は1×10-5Pa以上であってよく、1×10-2Pa以下、1×10-3Pa以下、又は1×10-4Pa以下であってよい。
《変形》
これまで説明してきたこと以外でも、本開示の製造方法は、特許請求の範囲に記載した内容の範囲内で種々の変形を加えることができる。
例えば、第一粒子群及び/又は第二粒子群が微粉粒子を含む場合、磁場成形前に、第一粒子群及び第二粒子群のD50が上述した範囲を満足する限りにおいて、微粉粒子の一部又は全部を、予め除去しておいてもよい。微粉粒子除去操作(微粉粒子除去方法)に、特に制限はない。微粉除去操作(微粉除去方法)としては、遠心力場分級装置を用いる方法、ふるいを用いる方法、磁場を利用する方法、及び静電気を利用する方法等が挙げられる。これらの組合せであってもよい。微粉粒子除去によって、成形体(希土類磁石)の密度を一層高め、磁化及び機械的強度をさらに高めることができる。
以下、本開示の製造方法を実施例及び比較例により、さらに具体的に説明する。なお、本開示の製造方法は、以下の実施例で用いた条件に限定されない。
《試料の準備》
実施例1~8及び比較例1~9の試料を次の要領で準備した。
〈実施例1~8及び比較例1~6〉
純水2.0kgにFeSO・7HO 5.0kgを混合溶解した。さらにSm 0.49kg、70%硫酸 0.74kg、La 0.035kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFeLa硫酸溶液とした。
[沈殿工程]
温度が40℃に保たれた純水20kg中に、調製したSmFeLa硫酸溶液全量を反応開始から70分間で攪拌しながら滴下し、同時に15%アンモニア液を滴下させ、pHを7~8に調整した。これにより、SmFeLa水酸化物を含むスラリーを得た。得られたスラリーをデカンテーションにより純水で洗浄した後、水酸化物を固液分離した。分離した水酸化物を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。
[酸化工程]
沈殿工程で得られた水酸化物を大気中1000℃で1時間、焼成処理した。冷却後、原料粉末として赤色のSmFeLa酸化物を得た。
[前処理工程]
SmFeLa酸化物100gを、嵩厚10mmとなるように鋼製容器に入れた。容器を炉内に入れ、100Paまで減圧した後、水素ガスを導入しながら、前処理温度の850℃まで昇温し、そのまま15時間保持した。非分散赤外吸収法(ND-IR)(株式会社堀場製作所製のEMGA-820)により酸素濃度を測定したところ、5質量%であった。これにより、Smと結合している酸素は還元されず、Feと結合している酸素のうち、95%が還元される黒色の部分酸化物を得たことがわかった。
[還元工程]
前処理工程で得られた部分酸化物60gと平均粒子径約6mmの金属カルシウム19.2gとを混合して炉内に入れた。炉内を真空排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入した。1090℃まで上昇させて、45分間保持し、その後、冷却してSmFe粉末粒子を得た。
[窒化工程]
引き続き、炉内温度を100℃まで冷却した後、真空排気を行い、窒素ガスを導入しながら、第一温度の430℃まで上昇させて、3時間保持した。続いて第二温度の500℃まで上昇させて1時間保持した後、冷却して磁性粉末粒子を含む塊状の生成物を得た。
[後処理工程]
窒化工程で得られた塊状の生成物を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを10回繰り返した。次いで99.9%酢酸2.5gを投入して15分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。
[酸処理工程]
後処理工程で得られた粉末100質量部に対して、塩化水素として4.3質量部となるように、6%塩酸水溶液を添加して、1分間、攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。固液分離した後80℃で真空乾燥を3時間行い、Sm9.2Fe77.113.59La0.11を組成とするSmFeN粉末を得た。
SmFeN粉末をパラフィンワックスと共に試料容器に詰め、ドライヤーにてパラフィンワックスを溶融させた後、16kA/mの配向磁場にてその磁化容易軸を揃えた。この磁場配向した試料を32kA/mの着磁磁場でパルス着磁し、最大磁場16kA/mのVSM(振動試料型磁力計)を用いて、室温にて磁気特性を測定したところ、残留磁化1.44T、保磁力750kA/mであった。
上述のようにして得たSmFeN粉末を分級し、第一粒子群の粉末及び第二粒子群の粉末を得た。第一粒子群及び第二粒子群それぞれの粒度分布(D50)は、表1-1に示すとおりであった。また、第一粒子群の総体積と第二粒子群の総体積との比(第一粒子群の総体積:第二粒子群の総体積)は、表1-1に示すとおりであった。なお、表1-1には、第一粒子群及び第二粒子群それぞれの、粒子残留磁化σ及び粒子保磁力Hを併記した。
図4に示した方法で、第一粒子群の粒子表面に第一被膜を形成して、第一被覆磁性粉末を得た。第一被膜が亜鉛を含有する被膜であるように、亜鉛を含有する粉末として、金属亜鉛粉末を準備した。金属亜鉛粉末のD50は0.5μmであった。また、金属亜鉛粉末の純度は99.5質量%であった。
第一被覆磁性粉末と第二被覆磁性粉末の合計質量に対する亜鉛成分含有割合、すなわち、第一粒子群の粒子粉末とともに、ロータリーキルン炉に装入した金属亜鉛粉末の配合量は、第一被覆磁性粉末と第二被覆磁性粉末の合計質量に対して、表1-1に示すとおりであった。また、ロータリーキルン炉での処理条件は、次のとおりであった。雰囲気は窒素ガス雰囲気であり、処理温度は380℃であり、処理時間は1分であり、そして、攪拌ドラムの回転数は6rpmであった。このようにして得られた被覆磁性粉末粒子の亜鉛成分被覆率を表1-1に併記した。
第二粒子群の粒子表面に、第二被膜として、リン酸を含有する被膜を形成し、第二被覆磁性粉末を準備した。リン酸を含有する被膜の形成は、リン酸処理工程前に、準備工程として、分散工程及び表面処理工程を行った。分散工程及び表面処理工程並びにリン酸処理工程の詳細は次のとおりである。
[分散工程]
振動ミルに用いる容器の容積に対して、第二粒子群の粉末が5体積%、メディア(鉄芯ナイロンメディア、直径10mm、被覆部ナイロンのビッカース定数7、比重7.48g/cm3)が60体積%となるように、第二粒子群の粉末とメディアを容器に入れた。振動ミルにより、窒素雰囲気下、60分間分散し、中間粉末を得た。
[表面処理工程]
得られた中間粉末を純水に投入し、1分間攪拌した。このスラリーに、酸溶液を入れエッチングを行なった。酸溶液は、塩酸溶液を用いた。攪拌をしながら、中間粉末100gに対して、50g以上の5%塩酸を添加した。そして、pH=3以上になったのを確認し、スラリーの電気伝導率が100μS/cm以下になるまでデカントを行った。
[リン酸処理工程]
得られたスラリーに対して、リン酸溶液を加えた。リン酸溶液を、第二粒子群の粒子の固形分に対して、POとして1質量%分投入した。5分間にわたり攪拌し、固液分離した後、120℃で真空乾燥を3時間行い、リン酸を含有する被膜を形成した第二被覆磁性粉末を得た。
第一被覆磁性粉末と第二被覆磁性粉末を混合し、混合粉末を得た。混合粉末を磁場中で圧縮成形し磁場成形体を得た。圧縮成形の圧力は50MPaであった。この圧力の印加時間は1分であった。印加した磁場は1600kA/mであった。また、圧縮成形は、窒素雰囲気中で行った。
磁場成形体を加圧焼結した。高周波誘導コイルを用いて、アルゴンガス雰囲気中(97000Pa)で加圧焼結を行った。焼結温度は380℃、焼結圧力は500MPa、そして、焼結圧力の印加時間は5分であった。
焼結体を真空中(10-2Pa)で熱処理した。熱処理温度は380℃、そして、熱処理時間は24時間であった。
〈比較例7〉
第一粒子群の粒子表面の亜鉛成分被覆率が72%であること、第二粒子群の粒子表面に第二被膜を形成しなかったこと、そして、第二粒子群のσが141emu/gであること以外、実施例3と同様に、比較例7の試料を準備した。
〈比較例8〉
磁性粉末が、第一粒子群のみを含み、第二粒子群を含まないこと以外、実施例1と同様に、比較例8の試料を準備した。
〈比較例9〉
磁性粉末が、第一粒子群のみを含み、第二粒子群を含まないこと以外、実施例3と同様に、比較例9の試料を準備した。
《評価》
各試料について、改質相被覆率及び磁気特性を測定した。磁気特性は、室温及び120℃で、振動試料型磁力計(VSM)を用いて測定した。減磁は、120℃において、残留磁化Bから10%磁化が減少したときの磁場Hで評価した。また、熱処理後の焼結体の密度を、アルキメデス法で測定した。
評価結果を表1-1~表1-2に示す。表1-2において、残留磁化及び保磁力は室温での測定結果である。
表1-1及び表1-2から、全ての実施例の試料において、残留磁化が0.9T以上であり、120℃でのHが700kA/m以上であった。このことから、本開示の製造方法で得られた希土類磁石は、磁化に優れ、外部磁場が印加されている環境下で、特に高温において、減磁し難いことが理解できる。
これに対し、比較例1~2の試料では、d/dが大きく、図6に示したように、第二粒子群12の粒径が大きいことから、密度が低下し、磁化が低い。比較例3~5の試料では、第一粒子群11と第二粒子群12の総体積比が適正でなく、図7に示したように、第二粒子群12の体積が過剰であることから、密度が低下し、磁化が低い。比較例6の試料では、第一被覆磁性粉末中の亜鉛含有割合が低いことから、第一粒子群の粒子表面の改質が充分でなく、Hが低い。比較例7の試料では、第二粒子群の粒子表面に第二被膜を形成しなかったことから、図8に示したように、第二粒子群の粒子表面に厚い改質相20が形成され、改質が過剰であるため、Hkが低い。比較例8~9の試料では、図9に示したように、第一粒子群11のみを含み、第二粒子群12を含まないため、密度が低く、磁化が低い。
以上の結果から、本開示の希土類磁石の製造方法の効果を確認できた。
10 SmFeN粉末
11 第一粒子群
12 第二粒子群
20 改質相
30 焼結体
31 第一被覆磁性粉末
32 第二被覆磁性粉末
41 第一被膜
42 第二被膜
90 希土類磁石
100 ロータリーキルン炉
110 攪拌ドラム
120 材料格納部
130 回転軸
140 攪拌板
150 SmFeN粉末
160 亜鉛を含有する粉末
171 第1熱処理炉
172 第2熱処理炉
173 連結路
180 真空ポンプ
181 第1容器
182 第2容器

Claims (6)

  1. Sm、Fe、及びNを含有し、少なくとも一部がThZn17型及びThNi17型のいずれかの結晶構造を有する磁性相を備える希土類磁石の製造方法であって、
    第一粒子群及び第二粒子群を含む磁性粉末を準備すること、
    前記磁性粉末の前記第一粒子群の粒子の表面に、第一被膜を形成して、第一被覆磁性粉末を得ること、
    前記磁性粉末の前記第二粒子群の粒子の表面に、第二被膜を形成して、第二被覆磁性粉末を得ること、
    前記第一被覆磁性粉末と前記第二被覆磁性粉末を混合して、混合粉末を得ること、
    前記混合粉末を磁場中で圧縮成形して、磁場成形体を得ること、
    前記磁場成形体を加圧焼結して、焼結体を得ること、及び
    前記焼結体を熱処理すること、
    を含み、
    前記第一粒子群の粒度分布D50が、dμmで表され、かつ、前記第二粒子群の粒度分布D50が、dμmで表され、
    前記d及び前記dが、0.350≦d/d≦0.500の関係を満足し、
    前記第一粒子群の総体積と前記第二粒子群の総体積との比(前記第一粒子群の総体積:前記第二粒子群の総体積)が、9:1~4:1の範囲であり、
    前記第一被膜が、亜鉛を含有し、前記第一被覆磁性粉末中の亜鉛成分の含有割合が、前記第一被覆磁性粉末と前記第二被覆磁性粉末の合計質量に対して、3.0質量%以上10.0質量%以下であり、かつ、
    前記熱処理中に、前記第一被膜によって、前記第一粒子群の粒子表面の改質が進行し、かつ、前記第二被膜によって、前記第二粒子群の粒子表面が、隣接する前記第一被膜で改質されることを抑制する、
    希土類磁石の製造方法。
  2. 前記第二被膜が、リン酸を含有する、請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
  3. 前記焼結体中の前記第一粒子群の粒子の表面の75%以上に、Fe-Zn合金相を形成するまで熱処理する、請求項1又は2に記載の希土類磁石の製造方法。
  4. 前記熱処理を、350℃以上410℃以下で行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
  5. 前記熱処理を、3時間以上40時間以下にわたって行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
  6. 前記磁場成形体を、200MPa以上1500MPa以下の圧力及び300℃以上400℃以下の温度で、1分以上30分以下にわたり加圧焼結する、請求項1~5のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
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