JP6350632B2 - ペプチドの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、中間体の単離、精製操作を極力省略し、簡便な操作により高純度かつ高収率で目的とするペプチドを得ることが可能な工業的製造に適した方法に関する。
ペプチドの製造方法には、固相法と液相法の他に、近年、反応を均一な液相で行い、反応後に溶媒組成を変化させ単離・精製を濾過および洗浄だけで行える保護基(以下、アンカー基ともいう。)を用いた製造方法(以下、アンカー法ともいう。)が提案されてきた。アンカー法は、ペプチド合成等においてアミノ酸またはペプチドのC末端および/または側鎖の官能基を保護するためのアンカー基を形成する化合物(アンカー)として、溶媒組成の変化に応じて溶解状態と不溶化(沈殿)状態とが可逆的に変化する特定の化合物を用いるペプチドの製造方法である。ここで、アンカー基とは、該基が反応基質に結合することにより非極性溶媒に可溶化し、液相中の反応が可能であると共に、極性溶媒の添加により沈殿し、固液分離が可能となる保護基を意味し、反応性と後処理の簡便性を兼ね備えたものである。アンカーとは、アンカー基を形成するための化合物を意味する。
例えば、特許文献1および非特許文献1には、それぞれ3,4,5−トリ(n−オクタデシルオキシ)ベンジルアルコールをカルボキシ基等の保護化試薬とする手法が開示されている。また、特許文献2〜4には、それぞれ3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアルコール、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアルコール、トリチル型化合物等のアンカーが開示されている。
本発明者もアンカー法に使用可能なアンカーとして既に特定のジフェニルメタン化合物(特許文献5)およびフルオレン化合物(特許文献6)を開発してきた。
特開2000−44493号公報 国際公開第2006/104166号パンフレット 国際公開第2007/034812号パンフレット 国際公開第2007/122847号パンフレット 国際公開第2010/113939号パンフレット 国際公開第2010/104169号パンフレット
Bull.Chem.Soc.Jpn 74,733−738(2001)
上記アンカー法は、ペプチド合成等の有機合成方法において、後処理が簡便でスケールアップが可能である等、固相反応と液相反応の利点を兼備した有用な手法であり、工業的な観点からも注目されているが、ペプチド合成等の逐次的に多段階の合成反応を必要とする場合においては、次工程で望ましくない副反応を起こさないために、各工程で濃縮、貧溶媒による沈殿、濾過、洗浄および乾燥という単離・精製操作を繰り返す必要があり、操作工程数が多いため、多大な時間とコストを要することが工業化への障壁となっている。
また、上記トリチル型化合物(特許文献4)およびフルオレン化合物(特許文献6)以外のアンカーを使用する場合には、液相反応と同様、ペプチド合成においては、N末端の一時保護基の除去後に、濃縮、沈殿、濾過、洗浄および乾燥という単離・精製操作を行うとジケトピペラジンが副生するという問題点も有しており、特にC末端または2残基目にプロリンを有する配列を含む場合やC末端2残基がD体とL体アミノ酸など異なる光学活性アミノ酸の場合には、ジケトピペラジンの副生が顕著である。さらに、本発明者は、アンカー法においては、液相反応と異なり、ジケトピペラジン副生に伴い脱離したアンカー自体も、アンカー基で保護されたペプチドの単離工程で、目的物と共に沈殿するためペプチドの精製が困難であり、また脱離したアンカー由来のアミノ酸配列や鎖長の異なるペプチドも副生してくるため、目的物の収率低下や純度低下の原因となるという知見を得ている。
本発明は、以上のような従来のアンカー法によるペプチド合成特有の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の課題であったジケトピペラジンの副生を抑制すると共に、中間体の単離・精製操作を極力省略し、ワンポットで連続して行うことができる工程を組み込んだ、工業的にも有用なペプチドの製造方法を提供することである。
本発明者は、アミノ酸またはペプチドのN末端アミノ基の一時保護基として9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(以下、Fmoc基ともいう。)を有し、かつC末端カルボキシ基の保護基としてアンカーに由来するアンカー基を用いたペプチド鎖伸長工程において、Fmoc基を求核性のない有機塩基で除去後、酸で中和するだけで、一時保護基の脱保護工程から濃縮、沈殿、濾過、洗浄および乾燥という一連の単離・精製操作を省略して、続くN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドとの縮合反応まで連続してワンポットで行うことができることを見出した。また、当該製造方法により、従来のアンカー法によるペプチド合成反応において問題であったジケトピペラジンの副生を抑制することによりアンカー基の脱離を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の通りである。
[1] 以下の工程(1)を含む、ペプチドの製造方法;
(1)ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒に可溶で、かつ極性溶媒に不溶な分子量が300以上のアンカーに由来するアンカー基によりC末端のカルボキシ基が保護されたN−Fmoc C−保護アミノ酸またはN−Fmoc C−保護ペプチドのN末端のFmoc基を、ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒中で求核性のない有機塩基により除去してC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドを得た後、酸で中和し、中和後の反応液に、N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチド、縮合剤および縮合促進剤を添加し、C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドのN末端にN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドを縮合させて、N−Fmoc C−保護ペプチドを得る工程。
[2] 工程(1)の後に、極性溶媒でN−Fmoc C−保護ペプチドを沈殿させて、固液分離により取得する工程(2)をさらに含む、上記[1]に記載の方法。
[3] 工程(2)の後に、N−Fmoc C−保護ペプチドのN末端のFmoc基および/またはC末端のアンカー基を除去する工程(3)をさらに含む、上記[2]に記載の方法。
[4] アンカーが、下記式(I):
[式中、
は、水素原子であるか、あるいはRが下記式(a)で表される基である場合には、Rと一緒になって単結合を示して、環Aおよび環Bと共にフルオレン環を形成していてもよく;
p個のRは、独立してそれぞれ脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
pは、1〜4の整数を示し;
環Aは、p個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
は、水素原子、またはハロゲン原子により置換されていてもよいフェニル基を示し;かつ
は、水素原子、または式(a):
(式中、は結合位置を示し;
rは、0〜4の整数を示し;
r個のRは、独立してそれぞれ脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
は、水素原子を示すか、またはRと一緒になって単結合を示して、環Aおよび環Bと共にフルオレン環を形成していてもよく;かつ
環Bは、r個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示し;かつ
Yは、ヒドロキシ基、NHR(Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)、またはハロゲン原子を示す。]
で表される化合物である、上記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の方法。
[5] 式(I)で表される化合物が、
3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコール、
2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアルコール、
4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアルコール、
4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアルコール、
2−メトキシ−4−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアルコール、
4−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアルコール、
3,5−ジメトキシ−4−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアルコール、
2,4−ジ(ドデシルオキシ)ベンジルアルコール、
3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアミン、
ビス(4−ドコシルオキシフェニル)メタノール、
ビス(4−ドコシルオキシフェニル)メチルアミン、および
2−(12−ドコシルオキシ−ドデシルオキシ)−9−(3−フルオロフェニル)−9−ブロモフルオレンからなる群より選択される化合物である、上記[4]に記載の方法。
[6] 求核性のない有機塩基が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンからなる群より選択される、上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の方法。
[7] 求核性のない有機塩基が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンである、上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の方法。
[8] 酸が、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸無水物、硫酸および塩化水素/エーテル溶液からなる群より選択される、上記[1]〜[7]のいずれか一つに記載の方法。
[9] 酸が、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素/ジエチルエーテル、および塩化水素/シクロペンチルメチルエーテルからなる群より選択される、上記[1]〜[7]のいずれか一つに記載の方法。
[10] 縮合促進剤が、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシ−1H−1,2,3−トリアゾール−5−カルボン酸エチルエステル、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート、またはO−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェートである、上記[1]〜[9]のいずれか一つに記載の方法。
[11] アミジン構造を有する複素環式化合物による脱保護工程を有することを特徴とする、連続的改良C末端固定化保護N末端伸長によるペプチドの製造方法。
[12] 保護基がFmoc基であることを特徴とする、上記[11]に記載の連続的改良C末端固定化保護N末端伸長によるペプチドの製造方法。
本発明のペプチドの製造方法によれば、アミノ酸またはペプチドのN末端アミノ基の一時保護基であるFmoc基の除去工程、中和工程、および続くN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドとの縮合工程を、中間体の単離・精製操作を行うことなく、連続してワンポットで行うことができるので、工業的製造に適した簡便かつ効率的なペプチドの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、従来ジケトピペラジンが副生するため、収率良く合成するのが困難であった特定の配列を含むペプチド鎖伸長工程において、不純物ペプチド化合物の副生は抑制され、高純度および高収率で目的とするペプチド化合物を製造することができる。
文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと同様または同等の任意の方法および材料は、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及したすべての刊行物および特許は、例えば、記載された発明に関連して使用されうる刊行物に記載されている、構築物および方法論を記載および開示する目的で、参照として本明細書に組み入れられる。
本発明の方法により製造されるペプチドの構成単位となるアミノ酸は、同一分子内にアミノ基とカルボキシ基を有する化合物であって、天然アミノ酸でも、非天然アミノ酸でもよく、またL体でも、D体でも、あるいはラセミ体でもよい。また、ペプチドは、そのアミノ酸配列に応じて、アミノ酸成分のアミノ基と、別のアミノ酸成分のカルボキシ基との脱水縮合工程(縮合工程)を繰り返すことにより合成される。以下、このペプチド結合の形成に関与する2つのアミノ酸成分の内、アミノ基を提供するものをアミン成分、カルボキシ基を提供するものを酸成分と称することがある。
本発明における縮合工程に使用される酸成分のN末端アミノ基の保護基は、Fmoc基である。
本明細書において、「N−Fmocアミノ酸」または「N−Fmocペプチド」とは、そのN末端アミノ基がFmoc基で保護されており、カルボキシ基が保護されていないアミノ酸またはペプチドを意味する。
本明細書において、「C−保護アミノ酸」または「C−保護ペプチド」とは、そのC末端カルボキシ基が、ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒に可溶で、かつ極性溶媒に不溶な分子量が300以上のアンカー(例えば、ベンジル化合物、ジフェニルメタン化合物、またはフルオレン化合物)と縮合して、アンカー基を形成することにより保護されており、N末端アミノ基が保護されていないアミノ酸またはペプチドを意味する。
本明細書において、「N−Fmoc C−保護アミノ酸」または「N−Fmoc C−保護ペプチド」とは、上記「C−保護アミノ酸」または「C−保護ペプチド」のN末端アミノ基が一時保護基であるFmoc基で保護されたものを意味する。
本発明におけるハロゲン系溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。ハロゲン系溶媒は、2種以上の混合溶媒でもよい。ハロゲン系溶媒の中では、クロロホルムおよびジクロロメタンが特に好ましい。
本発明におけるエーテル系溶媒としては、例えば、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル(以下、CPMEと称することもある。)、テトラヒドロフラン(以下、THFと称することもある。)等が挙げられる。エーテル系溶媒は、2種以上の混合溶媒でもよい。エーテル系溶媒の中でもCPMEおよびTHFが特に好ましい。
本発明における極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、水等、ならびにこれら2種以上の混合溶媒が挙げられる。中でも、メタノールまたはアセトニトリルが好適に使用される。本発明における極性溶媒としては、特に実用的観点からメタノールが好ましい。
本発明におけるハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒に可溶で、かつ極性溶媒に不溶な分子量が300以上のアンカーの一実施態様は、下記式(I)で表される化合物である。これらの中でも、分子量400以上のものが好ましい。
式(I):
[式中、
は、水素原子であるか、あるいはRが下記式(a)で表される基である場合には、Rと一緒になって単結合を示して、環Aおよび環Bと共にフルオレン環を形成していてもよく;
p個のRは、独立してそれぞれ脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
pは、1〜4の整数を示し;
環Aは、p個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
は、水素原子、またはハロゲン原子により置換されていてもよいフェニル基を示し;かつ
は、水素原子、または式(a):
(式中、は結合位置を示し;
rは、0〜4の整数を示し;
r個のRは、独立してそれぞれ脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
は、水素原子を示すか、またはRと一緒になって単結合を示して、環Aおよび環Bと共にフルオレン環を形成していてもよく;かつ
環Bは、r個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示し;かつ
Yは、ヒドロキシ基、NHR(Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)、またはハロゲン原子を示す。]
上記式(I)で表されるアンカーは、保護化を意図する化合物と結合する。すなわち、Yが、ヒドロキシ基、−NHR基、またはハロゲン原子であるアンカーは、アミノ酸またはペプチドのC末端等のカルボキシ基と縮合することにより、化合物を保護化する。
本明細書中、Rで示される「アルキル基」としては、直鎖または分岐鎖のC1−30アルキル基が挙げられ、好ましくはC1−10アルキル基、より好ましくはC1−6アルキル基である。好適な具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が挙げられ、特にメチル、エチルが好ましい。
本明細書中、Rで示される「アラルキル基」としては、C7−30アラルキル基が挙げられ、好ましくはC7−20アラルキル基、より好ましくはC7−16アラルキル基(C6−10アリール−C1−6アルキル基)である。好適な具体例としては、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、ナフチルメチル、1−ナフチルエチル、1−ナフチルプロピル等が挙げられ、特にベンジルが好ましい。
Rとしては、水素原子、C1−6アルキル基またはC7−16アラルキル基が好ましく、水素原子、メチル、エチルまたはベンジルがより好ましく、水素原子が特に好ましい。
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子である。本明細書中、Yで示される「ハロゲン原子」としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
本明細書中、RまたはRとして示される「脂肪族炭化水素基を有する有機基」とは、その分子構造中に脂肪族炭化水素基を有する1価の有機基である。
「脂肪族炭化水素基を有する有機基」における「脂肪族炭化水素基」とは、直鎖または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、炭素数5以上の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数5〜60の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数5〜30の脂肪族炭化水素基がさらに好ましく、炭素数10〜30の脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
「脂肪族炭化水素基を有する有機基」における「脂肪族炭化水素基」の部位は、特に限定されず、末端に存在しても(1価基)、それ以外の部位に存在してもよい(例えば2価基)。
「脂肪族炭化水素基」としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基等の1価基およびそれらから誘導される2価基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、アラキル基、ベヘニル基、オレイル基、イソステアリル基等の1価基およびそれらから誘導される2価基が挙げられる。
「脂肪族炭化水素基を有する有機基」中の「脂肪族炭化水素基」以外の部位は任意に設定することができる。例えば、リンカーとして−O−、−S−、−COO−、−OCONH−、および−CONH−、並びに、炭化水素基(1価基または2価基)等の部位を有していてもよい。「炭化水素基」としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基、単環式飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価基およびそれらから誘導される2価基が用いられる。「アルキル基」としては、例えば、C1−6アルキル基等が好ましく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。「アルケニル基」としては、例えば、C2−6アルケニル基等が好ましく、例えば、ビニル、1−プロペニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル等が挙げられる。「アルキニル基」としては、例えば、C2−6アルキニル基等が好ましく、例えば、エチニル、プロパルギル、1−プロピニル等が挙げられる。「シクロアルキル基」としては、例えば、C3−6シクロアルキル基等が好ましく、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。「アリール基」は、例えば、C6−14アリール基等が好ましく、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、2−アンスリル等が挙げられる。中でもC6−10アリール基がより好ましく、フェニルが特に好ましい。「アラルキル基」としては、例えば、C7−20アラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、ナフチルメチル、1−ナフチルエチル、1−ナフチルプロピル等が挙げられる。中でも、C7−16アラルキル基(C6−10アリール−C1−6アルキル基)がより好ましく、ベンジルが特に好ましい。当該「炭化水素基」は、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、オキソ基等から選択される置換基で置換されていてもよい。
上記式(I)中のOR基またはOR基を構成する「脂肪族炭化水素基を有する有機基」は、分岐等によって複数の「脂肪族炭化水素基」が存在してもよい。「脂肪族炭化水素基を有する有機基」中に「脂肪族炭化水素基」が複数存在する場合には、その各々は同一のものであっても異なるものであってもよい。
上記式(I)中のRまたはRとして示される「脂肪族炭化水素基を有する有機基」における、炭素数合計の下限は5が好ましく、10がより好ましく、12が更に好ましく、14が更に一層好ましく、16が殊更好ましく、20が特に好ましい。一方、RまたはRとして示される「脂肪族炭化水素基を有する有機基」における、炭素数合計の上限は、200が好ましく、150がより好ましく、120が更に好ましく、100が更に一層好ましく、80が殊更好ましく、60が特に好ましく、40が特に一層好ましく、30が最も好ましい。当該炭素数が大きいほど、ペプチド鎖が長鎖となった場合でも、式(I)で表される化合物の極性溶媒における結晶性が良好となる。
「OR」基または「OR」基の好適な具体例として、ドデシルオキシ、セチルオキシ、オクタデシルオキシ、ドコシルオキシ、ドコシルオキシ−ドデシルオキシ、トリアコンチルオキシ等が挙げられる。「OR」基または「OR」基は合計でpまたはr個存在し(pは1〜4の整数であり、rは0〜4の整数である。)、pは好ましくは2または3であり、rは好ましくは0〜2の整数である。
上記式(I)中の環Aまたは環B中に有していてもよい置換基の好適な具体例としては、C1−6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等のC1−4アルコキシ基)、1個以上のハロゲンで置換されていてもよいC1−6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等のC1−6アルキル基、トリフルオロメチル、トリクロロメチル等のハロゲン置換されたC1−6アルキル基)、またはハロゲン原子が挙げられ、中でもC1−6アルコキシ基が好ましい。
上記式(I)で表されるアンカーの好ましい態様としては、式(I)中、Yがヒドロキシ基であり;
が水素原子であり;
および/またはRが炭素数5〜60の脂肪族炭化水素基であり;
pが1〜3の整数であり;
rが0〜2の整数である化合物である。
上記式(I)で表されるアンカーの別の好ましい態様としては、式(I)中、
Yがヒドロキシ基であり;
、R、およびRが共に水素原子であり;
が炭素数5〜60の脂肪族炭化水素基であり;
pが1〜3の整数である化合物である。
上記式(I)で表されるアンカーの別の好ましい態様としては、式(I)中、
Yがヒドロキシ基であり;
、R、およびRが共に水素原子であり;
が炭素数10〜40のアルキル基であり;
pが2または3である化合物である。
上記式(I)で表されるアンカーの別の好ましい態様としては、式(I)中、
Yがヒドロキシ基であり;
、R、およびRが共に水素原子であり;
が炭素数12〜30のアルキル基であり;
pが2または3である化合物である。
上記式(I)で表されるアンカーの別の好ましい態様としては、式(I)中、
Yがヒドロキシ基であり;
、R、およびRが共に水素原子であり;
が炭素数12〜30のアルコキシ基を1〜3個有するベンジル基であり;
pが1〜3の整数である化合物である。
上記式(I)で表されるアンカーの別の好ましい態様としては、式(I)中、
Yがヒドロキシ基であり;
、R、およびRが共に水素原子であり;
が炭素数12〜30のアルコキシ基を1〜3個有するシクロヘキシルメチル基であり;
pが1〜3の整数である化合物である。
本発明におけるハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒に可溶で、かつ極性溶媒に不溶な分子量が300以上のアンカーの好ましい例としては、以下のアンカーが挙げられる。
3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコール、
2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアルコール、
4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアルコール、
4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアルコール、
2−メトキシ−4−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアルコール、
4−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアルコール、
3,5−ジメトキシ−4−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアルコール、
2,4−ジ(ドデシルオキシ)ベンジルアルコール、
3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアミン、
ビス(4−ドコシルオキシフェニル)メタノール、
ビス(4−ドコシルオキシフェニル)メチルアミン、および
2−(12−ドコシルオキシ−ドデシルオキシ)−9−(3−フルオロフェニル)−9−ブロモフルオレン。
前記アンカーの製造方法としては、特に限定されないが、自体公知の方法(特許文献1〜6、非特許文献1参照)またはこれらに準ずる方法に従って原料化合物から製造することができる。なお、原料化合物として使用する化合物、例えば、式(I)の基RまたはRに対応するハロゲン化物等は、市販品として入手可能であるか、あるいは、自体公知の方法またはこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
本発明に使用する酸成分およびアミン成分であるアミノ酸またはペプチドは、ペプチド結合の形成に関与するアミノ基またはカルボキシ基に加えて、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基等の脱水縮合反応に供される官能基を有する場合が多い。これらの官能基を、主鎖のペプチド結合を形成するアミノ基およびカルボキシ基と区別して、側鎖官能基と称する。側鎖官能基は、本発明の本質を損なわない限り、必ずしも保護する必要はないが、脱水縮合反応によるペプチド結合の形成、ならびにN末端アミノ基の脱保護反応時に、望ましくない副反応を防ぐために、適切な保護基により保護するのが好ましい。
側鎖官能基の保護基は、前述のアミン成分におけるC末端カルボキシ基の保護基と同様に、N末端アミノ基の保護基との組み合わせにおいて、一定の制約を受ける。すなわち、側鎖官能基の保護基は、N末端アミノ基の保護基であるFmoc基の除去条件においても除去されることなく、所望のアミノ酸配列が完成するまで保持される必要がある。尚、当該保護基は、脱水縮合反応によるペプチド結合の形成、並びに、N末端アミノ基の脱保護反応時に、側鎖官能基が望ましくない副反応を引き起こさなければ特に限定されない。
側鎖官能基の保護基としては、N末端アミノ基の保護基(一時保護基)であるFmoc基の脱保護条件において安定であれば、特に限定されず、例えば、ペプチド合成の基礎と実験、丸善株式会社出版(1985年)や、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている保護基を挙げることができる。
側鎖官能基がカルボキシ基である場合は、エステル型保護基、アミド型保護基、ヒドラジド型保護基等を挙げることができる。
エステル型保護基としては、置換若しくは無置換のアルキルエステル、置換若しくは無置換のアラルキルエステルが好ましく用いられる。置換若しくは無置換のアルキルエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、tert−ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、トリクロロエチルエステル、フェナシルエステル等が好ましく用いられる。置換若しくは無置換のアラルキルエステルとしては、ベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステル、p−メトキシベンジルエステル、ジフェニルメチルエステル、9−フルオレニルメチル(Fm)エステル、4−ピコリル(Pic)エステル等が好ましく用いられる。
アミド型保護基としては、無置換のアミド、N−メチルアミド、N−エチルアミド、N−ベンジルアミド等の1級アミド、N,N−ジメチルアミド、ピロリジニルアミド、ピペリジニルアミド等の2級アミド等が好ましく用いられる。
ヒドラジド型保護基としては、無置換のヒドラジド、N−フェニルヒドラジド、N,N’−ジイソプロピルヒドラジド等が好ましく用いられる。
中でも、Fmoc基の脱保護条件下で安定なt−ブチルエステル、置換若しくは無置換のベンジルエステル等のエステル型保護基が好ましく用いられ、置換若しくは無置換のベンジルエステルが、比較的合成が容易であることから、特に好ましく用いられる。
側鎖官能基がアミノ基である場合は、ウレタン型保護基、アシル型保護基、スルホニル型保護基等を挙げることができる。
ウレタン型保護基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基等が用いられ、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、Boc基等である。中でもBoc基は、穏和な酸性条件下で選択的に脱保護ができることから、特に好ましく用いられる。
アシル型保護基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基等が好ましく用いられる。
スルホニル型保護基としては、例えば、p−トルエンスルホニル(Ts)基、p−トリルメタンスルホニル基、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル基等が好ましく用いられる。
上記以外の側鎖官能基についても、同様にN末端アミノ基の保護基(一時保護基)であるFmoc基の脱保護条件において安定なものを選んで用いることができる。
側鎖官能基は目的のペプチド結合を形成した後に、必要に応じて脱保護すればよい。
次に、本発明の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、ペプチドの製造方法であって、以下の工程(1)を含むことを特徴とする。
(1)ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒に可溶で、かつ極性溶媒に不溶な分子量が300以上のアンカーに由来するアンカー基によりC末端のカルボキシ基が保護されたN−Fmoc C−保護アミノ酸またはN−Fmoc C−保護ペプチドのN末端のFmoc基を、ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒中で求核性のない有機塩基により除去してC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドを得た後、酸で中和し、中和後の反応液に、N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチド、縮合剤および縮合促進剤を添加し、C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドのN末端にN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドを縮合させて、N−Fmoc C−保護ペプチドを得る工程(N末端の脱保護工程およびそれに続く縮合工程)。
本発明の製造方法における工程(1)にて使用するN−Fmoc C−保護アミノ酸またはN−Fmoc C−保護ペプチドは、以下の工程(a)によって製造することができる。以下では、工程(1)の説明の前に、まず工程(a)から説明する。
工程(a)(C末端の保護工程)
本工程は、ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒に可溶で、かつ極性溶媒に不溶な分子量が300以上のアンカーをN−Fmocアミノ酸またはN−FmocペプチドのC末端と縮合させて、N−Fmoc C−保護アミノ酸またはN−Fmoc C−保護ペプチドを得る工程である。
本工程で使用するN−Fmocペプチドが、本工程で使用する溶媒に可溶である限り、N−Fmocペプチドのアミノ酸残基数の上限に特に限定は無いが、N−Fmocペプチドのアミノ酸残基数は、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。
縮合反応は、アンカー、N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドおよび触媒量のジメチルアミノピリジンを溶媒に溶解させ、縮合剤(および必要に応じて縮合促進剤)を加えた後、攪拌して行うことが好ましい。
本工程は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。当該溶媒における溶解度が高い程、優れた反応性が期待できるため、前記N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドの溶解度の高い溶媒を選択することが好ましい。具体的にはクロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、上記ハロゲン系溶媒やエーテル系溶媒に、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類を、本発明の製造方法で用いられる化合物が溶解し得る限り、適宜の割合で混合して用いてもよい。中でも、クロロホルム、ジクロロメタン、シクロペンチルメチルエーテルまたはテトラヒドロフランが好ましく、クロロホルムが特に好ましい。
本工程におけるN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドの溶液中の濃度は、溶解していれば特に限定されないが、好ましくは1〜30wt%である。
本工程におけるN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドの使用量は、前記アンカー1モルに対し、1〜10モル使用することができ、好ましくは1〜5モルである。
Yが、ヒドロキシ基の場合、反応に影響を及ぼさない溶媒中、ジメチルアミノピリジン触媒下、縮合剤、および必要に応じて縮合促進剤を添加することにより、エステル結合が形成される。
Yが、−NHR基の場合、縮合促進剤存在下、縮合剤を添加してアミド結合が形成される。
Yが、ハロゲン原子の場合、反応に影響を及ぼさない溶媒中、ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基を添加することにより、エステル結合が形成される。
縮合促進剤としては、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−1H−1,2,3−トリアゾール−5−カルボン酸エチルエステル(HOCt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)等が挙げられ、好ましくは、HOBtである。
縮合促進剤の使用量は、前記アンカー1モルに対して、好ましくは0.05〜1.5モルである。
縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBop)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5−クロロ−1H−ベンゾトリアゾリウム3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)等が挙げられる。
縮合剤の使用量は、前記アンカー1モルに対して、例えば1〜10モルであり、好ましくは1〜5モルである。
反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、好ましくは−10℃以上、より好ましくは0℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下である。反応時間は、例えば、1〜70時間である。
このようにして得られた反応混合物に含まれるN−Fmoc C−保護アミノ酸またはN−Fmoc C−保護ペプチドの単離は、反応溶媒を減圧濃縮後、前記した極性溶媒の添加により沈殿させ、沈殿物を固液分離(濾過)し、アセトニトリルで洗浄することにより行うことができる。本工程で使用する極性溶媒としては、例えば、メタノール、アセトニトリル等が挙げられ、好ましくはメタノールである。
工程(1)(N末端の脱保護工程およびそれに続く縮合工程)
本工程は、N−Fmoc C−保護アミノ酸またはN−Fmoc C−保護ペプチドのN末端のFmoc基を求核性のない有機塩基で処理することにより除去してC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドを得、次いで中和した後、単離・精製操作を行うことなく、C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドとを脱水縮合させる工程である。
本工程で使用するN−Fmoc C−保護ペプチドが、本工程で使用する溶媒に可溶である限り、N−Fmoc C−保護ペプチドのアミノ酸残基数の上限に特に限定は無いが、N−Fmoc C−保護ペプチドのアミノ酸残基数は、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。また、本工程で使用するC−保護ペプチドが、本工程で使用する溶媒に可溶である限り、C−保護ペプチドのアミノ酸残基数の上限に特に限定は無いが、C−保護ペプチドのアミノ酸残基数は、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下ある。
以下では、工程(1)を、工程(1−1)(N末端の脱保護工程)および工程(1−2)(縮合工程)に分けて説明する。
工程(1−1)(N末端の脱保護工程)
Fmoc基の除去(脱保護)は、ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒中で、求核性のない有機塩基で処理することにより行われる。脱保護は、その反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。
求核性のない塩基としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、および1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)等が挙げられ、DBUおよびDBNが好ましく、DBUがより好ましい。
ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒は、いずれも、2種以上の混合溶媒であってもよい。ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒は、好ましくはクロロホルム、ジクロロメタン、THFまたはCPMEである。
当該脱保護工程において、Fmoc基の除去の際に汎用されるジメチルアミン、ジエチルアミン、ピペリジン、モルホリン等の求核性を有する有機塩基(2級アミン類)をクロロホルム等の非極性有機溶媒中で使用した場合には、反応を完結させるために大過剰量の有機塩基を要する。また、求核性塩基を使用すると、次の縮合工程において、酸成分がアミド化されるという副反応も起こる。これに対し、前記求核性のない塩基を本工程に使用すれば、ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒中でも、脱保護反応が完結する。求核性のない塩基の使用量は、反応基質(N−Fmoc C−保護アミノ酸またはN−Fmoc C−保護ペプチド)に対して、好ましくは0.8当量以上、より好ましくは1当量以上であり、好ましくは5当量以下、より好ましくは3当量以下である。
本工程において、ワンポット化を実現するためには、次のC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドとの縮合反応において、悪影響(新たに加える酸成分であるN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチド自体のN末端の脱保護等の副反応)を及ぼす有機塩基を除去する必要がある。そこで、本工程においては、脱保護工程後の反応液に酸の添加を行う中和工程を組み込むことが必須である。
中和工程に使用する酸としては、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸無水物、硫酸、塩化水素/エーテル溶液等が挙げられる。中でも、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素/ジエチルエーテルおよび塩化水素/シクロペンチルメチルエーテルが好ましい。
酸の使用量は、求核性のない有機塩基1モルに対して、好ましくは0.5モル以上、より好ましくは0.9モル以上であり、好ましくは1.1モル以下、より好ましくは1.0モル以下である。
工程(1−1)の反応の温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、好ましくは−10℃以上、より好ましくは0℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下である。工程(1−1)の反応の時間は、例えば、1〜70時間である。
工程(1−2)(縮合工程)
本工程は、工程(1−1)における中和工程後の反応液に、直接N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチド、縮合剤および縮合促進剤を添加することにより、C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドのN末端にN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドを縮合させて、N−Fmoc C−保護ペプチドを得る工程である。
本工程は、前記工程(a)に記載の縮合剤、縮合促進剤等を使用し、ペプチド化学の分野において一般的に用いられるペプチド合成条件下で行われる。本工程において、特に好ましい縮合剤、および縮合促進剤の組合せは、N−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)である。
縮合促進剤の使用量は、前記C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチド1モルに対して、好ましくは0.05モル以上、より好ましくは0.9モル以上であり、好ましくは1.5モル以下、より好ましくは1.1モル以下である。
本発明の製造方法は、工程(1)の後に、極性溶媒でN−Fmoc C−保護ペプチドを沈殿させて、固液分離により取得する工程(2)(沈殿工程)をさらに含んでいてもよい。以下、工程(2)について説明する。
工程(2)(沈殿工程)
本工程は、上記工程(1)で得られた縮合物(N−Fmoc C−保護ペプチド)を単離するために、該縮合物が溶解している溶媒を変化させ(例、溶媒組成の変更、溶媒の種類の変更)、沈殿させる工程である。すなわち、縮合物が溶解するような条件下にて反応を行った後、溶媒置換することによって縮合物を沈殿化および固液分離、続くスラリー洗浄により不純物を淘汰する。溶媒置換の前に、溶媒留去などを行ってもよい。置換溶媒としては、メタノールやアセトニトリル等の極性溶媒を用いる。すなわち化合物が溶解するような条件下にて反応を行い、反応後、溶媒置換としては、例えば溶解にはハロゲン系溶媒等を用いて、沈殿化にはメタノールやアセトニトリル等の極性溶媒を用いる。
上記工程(1)および(2)を2回以上繰り返して、ペプチド鎖を伸長させたN−Fmoc C−保護ペプチドを取得してもよい。ペプチド鎖を伸長させたN−Fmoc C−保護ペプチドが、工程(1)で使用する溶媒に可溶である限り、ペプチド鎖を伸長させたN−Fmoc C−保護ペプチドのアミノ酸残基数の上限に特に限定は無いが、このアミノ酸残基数は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは50以下である。
本発明のペプチドの製造方法は、工程(2)の沈殿工程の後に、N−Fmoc C−保護ペプチドのN末端のFmoc基および/またはC末端のアンカー基を除去する工程(3)をさらに含むことができる。N末端のFmoc基の除去は、例えば、上記した工程(1)に準じて行われる。
C末端のアンカー基の除去は、上記工程(2)の沈殿工程の後、N末端のFmoc基の除去に続き、またはFmoc基の除去に先立って行われる。これによりペプチドのC末端が−COOH(例えば、前記式(I)のYが、ヒドロキシ基またはハロゲン原子の場合)、または−CONHR(例えば、前記式(I)のYがNHR基の場合)である最終目的物であるペプチドが得られる。
前記式(I)のYが、ヒドロキシ基またはハロゲン原子であるアンカー由来のアンカー基を選択的に除去する場合には、脱保護は好適には酸処理により行われる。脱保護に使用する酸としては、トリフルオロ酢酸(以下、TFAという。)、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられ、中でも、TFAが好ましい。脱保護に使用する溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンまたはこれらの混合溶媒等が挙げられる。脱保護に使用する酸の濃度は、例えば、0.1w/v%〜5w/v%である。
前記式(I)のYが、ヒドロキシ基、−NHR基、またはハロゲン原子である芳香族化合物(アンカー)由来のアンカー基を、ペプチド中の他の側鎖の保護基と同時に除去することも可能である。その場合には、当該分野、特にペプチド合成、において行われている慣用の方法が用いられるが、酸などを加える方法が好適に採用される。酸としてTFA、塩酸、硫酸、メシル酸、トシル酸、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等が使用される。中でもTFAが特に好ましい。酸の使用量は、用いる酸の種類によって適宜設定され、アンカー基を除去するのに適当な量が用いられる。酸の使用量は、N−Fmoc C−保護ペプチド1モルに対して、好ましくは3モル以上、より好ましくは5モル以上であり、好ましくは100モル以下、より好ましくは50モル以下である。これらの使用とともに、更なる強酸源として、トリフルオロメタンスルホン酸や、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、BF・エーテラートなどを加えることもできる。
反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、0℃〜50℃が好ましく、0℃〜30℃がより好ましい。反応時間は、例えば0.5〜24時間である。
上記工程(a)、工程(1)および工程(3)における反応の進行の確認は、いずれも一般的な液相有機合成反応と同様の方法を適用できる。すなわち、薄層シリカゲルクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を用いて反応を追跡することができる。
以下、実施例に沿って本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。また、本明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、各表示は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。
実施例で使用したアンカーは、自体公知の方法(前記特許文献1〜6、非特許文献1参照)またはこれに準ずる方法、あるいは下記参考例1またはこれに準ずる方法に従って、公知(または市販品)の原料化合物から製造することができる。
参考例1:4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアルコールの合成
(i)3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコール(83.0g,90.8mmol)をクロロホルム(830ml)に溶解し、0℃で塩化チオニル(21.6g,0.182mol)を加えて1.5時間室温で攪拌した。溶媒を留去し、残渣をアセトニトリル(800ml)で晶析して3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルクロリドを湿晶として93.6gを得た。
(ii)3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルクロリド(93.6g,wet,<90.8mmol)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(15.2g,0.10mol)、炭酸カリウム(31.4g,0.23mol)をDMF(830ml)に懸濁し、80℃で一晩攪拌した。反応液をクロロホルム(1600ml)に溶解し、1N塩酸(800ml)で3回、5wt%炭酸水素ナトリウム水溶液(800ml)で1回、20wt%食塩水(800ml)で1回洗浄した。溶媒を留去し、残渣をメタノール(800ml)で晶析し、アセトニトリル(800ml)で洗浄して、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンズアルデヒド(93.5g,89.2mmol,収率98%)を得た。
(iii)4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンズアルデヒド(93.5g,89.2mmol)をTHF−メタノール(1870ml+94ml)に溶解し、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(4.05g,107mmol)を加えた。室温で1.5時間攪拌した後、0℃で0.2N塩酸(100ml)を加えて反応を停止した。溶媒を半分程度留去し、クロロホルム(2400ml)に溶解して0.1N塩酸(1200ml)で2回、5wt%炭酸水素ナトリウム水溶液(1200ml)で1回、20wt%食塩水(1200ml)で1回洗浄した。溶媒を留去し、残渣をメタノール(900ml)で晶析し、アセトニトリルで洗浄して4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアルコール(92.4g,88.0mmol,収率97%(vs 3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコール))を得た。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ0.88(9H,t,J=6.3Hz,C1734Me),1.15−1.40(84H,br,C3’,4’,5’−OC−C14 28 −CH),1.40−1.55(6H,br,C3’,4’,5’−OC−C −C1531),1.70−1.85(6H,m,C3’,4’,5’−OCH−C −C1633),2.18(1H,t,J=6.3Hz,O),3.79(3H,s,C4−OMe),3.90−4.03(6H,m,C3’,4’,5’−O−C −C1735),4.65(2H,d,J=6.6Hz,Ar−C −OH),4.97(2H,s,Ar−O−C −Ar),6.47(1H,dd,J=2.1,8.1Hz,C5−),6.53(1H,d,J=2.4Hz,C3−),6.60(2H,s,C2’,6’−),7.19(1H,d,J=8.1Hz,C6−
実施例1:脱保護工程(Fmoc基の除去工程)、中和工程およびFmoc−Tyr(t−Bu)−OHとの脱水縮合工程を連続してワンポットで行うFmoc−Leu−OBzl(3,4,5−OC1837)からのジペプチド(Fmoc−Tyr(t−Bu)−Leu−OBzl(3,4,5−OC1837))の合成
3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコール(以下、Bzl(3,4,5−OC1837)−OHと表記することもある。)(3.0g, 3.28mmol)とFmoc−Leu−OH(1.3当量)をクロロホルム中に溶解させ、氷冷下でEDC・HCl(1.4当量)、ジメチルアミノピリジン(0.1当量)を加えて攪拌した。反応完結後、溶媒を留去してMeOH(45ml)を加えて攪拌後、沈殿物をろ過し、アセトニトリルで洗浄し乾燥させた。
得られたFmoc−Leu−OBzl(3,4,5−OC1837)をクロロホルムに溶解させ、氷冷下でDBU(1.0当量)を加えて攪拌した。脱保護反応完結後、HCl/CPME溶液をDBUに対して0.95当量加えた後、HOBt(1.0当量)、Fmoc−Tyr(tBu)−OH(1.1当量)を加え、EDC・HCl(1.2当量)を添加して攪拌した。縮合反応完結後、溶媒を留去してMeOH(45ml)を加えて攪拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OC1837)(4.04g,3.19mmol,収率97%)を得た。
TOF−MS(+)=1468.1
なお、実施例1で使用した測定機器およびその条件は以下の通りである。
測定機器:Waters社製 LCT Premier XE
キャピラリー電圧:3000V
サンプルコーン電圧:86V
ディソルレーション温度:350℃
ソース部温度:120℃
LC部
溶媒:トリフルオロ酢酸水溶液(トリフルオロ酢酸濃度:0.05v/v%)−MeCNとTHFとの混合溶媒(MeCN濃度:0.05v/v%)
カラム:AQUITY BEH C18 1.7μm 2.1×50mm
温度:40℃
流速:0.7ml/min
波長:220nm
注入量:2μl
実施例2:脱保護工程(Fmoc基の除去工程)、中和工程およびFmoc−Ala−OHとの脱水縮合工程を連続してワンポットで行うFmoc−Pro−Gly−OBzl(3,4,5−OC1837)からのトリペプチド(Fmoc−Ala−Pro−Gly−OBzl(3,4,5−OC1837))の合成
実施例1と同様の方法により得られたFmoc−Pro−Gly−OBzl(3,4,5−OC1837)(400mg)を、クロロホルム(5ml)に溶解させ、氷冷下でDBU(1.0当量)を加えて攪拌した。脱保護反応完結後、HCl/CPME溶液をDBUに対して0.97当量加え、HOBt(1.0当量)、Fmoc−Ala−OH(1.1当量)およびEDC・HCl(1.2当量)添加して攪拌した。縮合反応が完結後、溶媒を留去してMeOH(5ml)を加えて攪拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることによりFmoc−Ala−Pro−Gly−OBzl(3,4,5−OC1837)(415mg)を得た。得られた固形物中のBzl(3,4,5−OC1837)−OHの量は、実施例1と同じ条件で測定したところ、目的物の0.9mol%であった。
TOF−MS(+)=1361.5
実施例3:脱保護工程(Fmoc基の除去工程)、中和工程およびFmoc−Gly−OHとの脱水縮合工程を連続してワンポットで行うFmoc−Cys(Trt)−Tyr(t−Bu)−O−アンカー基からのトリペプチド(Fmoc−Gly−Cys(Trt)−Tyr(t−Bu)−O−アンカー基)の合成
4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアルコール(以下、HO−Bzl(2−TOB−4−OMe)と表記することもある。)を出発原料とした以外は、実施例1と同様の方法により得られたFmoc−Cys(Trt)−Tyr(tBu)−OBzl(2−TOB−4−OMe)(9.0g(4.90mmol))を、クロロホルム(90ml)に溶解させ、氷冷下でDBU(870mg,1.2当量)を加えて攪拌した。脱保護反応完結後、メタンスルホン酸(522mg,DBUに対して0.95当量)を加え、HOBt(640mg,1.0当量)、Fmoc−Gly−OH(1.56g,1.1当量)、およびEDC・HCl(1.11g,1.2当量)を添加して攪拌した。縮合反応が完結後、溶媒を留去してMeOH(90ml)を加えて攪拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることによりFmoc−Gly−Cys(Trt)−Tyr(tBu)−OBzl(2−TOB−4−OMe)(9.04g,4.77mmol,収率99%)を得た。得られた固形物中の分解したBzl(2−TOB−4−OMe)−OHの量は、実施例1と同じ条件で測定したところ、目的物の1mol%であった。
TOF−MS(+)=1893.2
実施例4:脱保護工程(Fmoc基の除去工程)、中和工程、およびFmoc−Pro−OHとの脱水縮合工程を連続してワンポットで行い、さらに、Fmoc−Ala−OHによるペプチド鎖伸長工程もワンポットで行うことによるFmoc−Gly−O−アンカー基からのトリペプチド(Fmoc−Ala−Pro−Gly−O−アンカー基)の合成
2−(12−ドコシルオキシ−ドデシルオキシ)−9−(3−フルオロフェニル)−9−ブロモフルオレン1.0gとFmoc−Gly−OH(2当量)をクロロホルムに溶解させ、ジイソプロピルエチルアミン(2当量)を加えて60℃で攪拌した。反応完結後、溶媒を留去してメタノール5ml加えて攪拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し減圧乾燥させた。その固体をクロロホルムに溶解させて氷冷下でDBU(1.5当量)を加えて脱Fmoc化させた。反応完結後にHCl/CPME溶液をDBUに対して0.95当量加え、HOBt(1.0当量)、Fmoc−Pro−OH(1.1当量)を添加して、EDC・HCl(1.2当量)添加して攪拌した。縮合反応が完結後、溶媒を留去してメタノール5ml加えて攪拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させてFmoc−Pro−Gly−O−アンカー基を1.28g得た。この固形物1gを更に上記と同様の操作により脱Fmoc化、続く縮合反応に付すことによりFmoc−Ala−Pro−GlyO−アンカー基を1.04g得た。得られた固形物中の分解した2−(12−ドコシルオキシ−ドデシルオキシ)−9−(3−フルオロフェニル)−9−フルオレノールの量は、実施例1と同じ条件で測定したところ、目的物の0.2面積%であった。
TOF−MS(+)=1232.5
実験例1:Fmoc−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OC1837)の脱保護反応(Fmoc基の除去)におけるジケトピペラジン副生に及ぼす各種有機塩基および溶媒の影響
実験方法
実施例1で得られたジペプチド(Fmoc−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OC1837))をクロロホルムまたはCPMEに溶解させて、各種塩基を用いて2.5時間、脱保護反応に付した後、ジケトピペラジン副生に伴い分解して生成する3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコールの量を、目的物の収量に対する相対的な比率としてHPLCにより測定した。
実験結果
有機塩基として求核性のないDBUを使用した場合、エーテル系溶媒であるTHF、ハロゲン系溶媒であるクロロホルムのいずれの溶媒中でも、アンカー基の脱離はほとんどみられず、ジケトピペラジン副生を抑えることができた。一方、求核性を有するジエチルアミンまたはピペリジンを使用した場合には、アンカー基の脱離量が顕著に増加したことから、ジケトピペラジンが大量に副生することが分かった。
実験例2:Fmoc−Ala−Pro−Gly−OBzl(3,4,5−OC1837)合成反応におけるジケトピペラジンの副生についての本発明のワンポット合成法(A法:実施例2)と従来の逐次合成法(B法、C法)との比較
実験方法
下記のB、C各方法によりトリペプチド(Fmoc−Ala−Pro−Gly−OBzl(3,4,5−OC1837))を製造した場合のジケトピペラジンの副生率を、脱離したアンカー量の測定から算出し、比較した。
B法:A法と同様の条件下、DBU(1当量)/ジエチルアミン(15当量)によりFmoc−Pro−Gly−O−アンカー基のN末端のFmoc基を除去し、反応終了後、DBUに対して0.95当量の塩化水素/CPMEにて中和し、濃縮および沈殿化操作を行った。その後、沈殿物を溶解させてFmoc−Alaとの縮合工程に付すことにより、トリペプチドを単離した。
C法:A法と同様の条件下、ジエチルアミン(50当量)によりFmoc−Pro−Gly−O−アンカー基のN末端のFmoc基を除去し、反応終了後、濃縮および沈殿化操作を行った。その後、沈殿物を溶解させてFmoc−Alaとの縮合工程に付すことにより、トリペプチドを単離した。
実験結果
Fmoc基の除去の際、DBUを使用するA法に比べ、ジエチルアミンを用いた場合(C法)においては、ハロゲン系溶媒中で反応を完結させるために、過剰量の塩基を要した。そして、上記C法のみならず、ジベンゾフルベンを捕捉するためにジエチルアミンを用いた場合(B法)においても、Fmoc基の除去後に濃縮および沈殿工程を行ったにも拘らず、表2に示されるようにジケトピペラジンの副生に起因するアンカー基の脱離を抑制することはできなかった。
以上のように、Fmoc基の脱保護剤として汎用されている求核性を有する有機塩基であるジエチルアミンまたはピペリジンを用いた場合には、求核性のない有機塩基であるDBUと比較して、ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒中では、過剰量の有機塩基を使用しても脱保護速度が遅く、また続く縮合工程で酸成分と反応してアミドを形成するという副反応も起こるため、目的物の収率が低下することが分かった。さらに、ジエチルアミンまたはピペリジンを用いた場合には、脱保護反応中のジケトピペラジンの副生を抑えられないことが分かった。これらの結果から、Fmoc基の除去には求核性がなく塩基性が高いDBU等の有機塩基を0.8〜5当量程度使用するのが最適であり、さらに中和工程を組み込むことにより、続く縮合工程まで連続してワンポットで行うことができ、かつジケトピペラジンの副生を抑制できることが明らかになった。
本発明のペプチドの製造方法によれば、アミノ酸またはペプチドのN末端アミノ基の一時保護基であるFmoc基の除去工程、中和工程、および続くN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドとの縮合工程を、途中に単離・精製操作を行うことなく、連続してワンポットで行うことができるので、工業的製造に適した簡便かつ効率的なペプチドの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、ジケトピペラジンの副生を抑制できるので、配列を問わず、純度良く目的とするペプチド化合物を製造することができる。
本発明のペプチドの製造方法の特徴を表す、別の表現方法について以下に示す。
「固定化保護基」を「(脱保護工程)および(縮合工程)で影響を受けず、(最終脱保護工程)で脱保護される保護基」とし、通常の「保護基」を「(縮合工程)で影響を受けず、(脱保護工程)では脱保護される保護基」と定義する。
また、「C末端固定化保護N末端伸長法によるペプチドの製造方法」を「C末端固定化保護されたN末端保護アミノ酸またはペプチドのN末端脱保護工程(脱保護工程)と、新規N末端保護アミノ酸またはペプチドと縮合させる工程(縮合工程)とを繰り返して、N末端方向にペプチド鎖を伸長させるペプチドの製造方法」と定義すると、F−moc法やBoc法がこれに含まれ、F−moc法が好ましい。
ここに、「連続的改良C末端固定化保護N末端伸長法」を「(脱保護工程)と(縮合工程)の間は、途中で抽出・沈殿化等により精製させることなく溶液中で連続的に行い、(縮合工程)終了後に、(沈殿化工程)により精製させることを特徴とする、C末端固定化保護N末端伸長法」と定義すれば、本発明のペプチドの製造方法を以下のように表現することもできる。
〔1〕アミジン構造を有する複素環式化合物による脱保護工程を有することを特徴とする、連続的改良C末端固定化保護N末端伸長によるペプチドの製造方法。
〔2〕アミジン構造を有する複素環式化合物が1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする、〔1〕記載の連続的改良C末端固定化保護N末端伸長によるペプチドの製造方法。
〔3〕脱保護工程後に、酸による中和工程を更に有することを特徴とする、〔1〕または〔2〕記載の連続的改良C末端固定化保護N末端伸長によるペプチドの製造方法。
〔4〕縮合工程後に、沈殿化工程を有することを特徴とする、〔3〕記載の連続的改良C末端固定化保護N末端伸長によるペプチドの製造方法。
〔5〕保護基がFmoc基であることを特徴とする、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項記載の連続的改良C末端固定化保護N末端伸長によるペプチドの製造方法。
〔6〕最終脱保護工程を有することを特徴とする、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項記載の連続的改良C末端固定化保護N末端伸長によるペプチドの製造方法。
本発明のペプチドの製造方法は、更に以下のように詳細に表現することもできる。
(第一工程:C末端固定化保護工程)
N末端保護アミノ酸またはペプチドのC末端に、固定化保護基を反応させ、C末端固定化保護されたN末端保護アミノ酸またはペプチドを製造する工程。
(第二工程:脱保護工程)
C末端固定化保護されたN末端保護アミノ酸またはペプチドのN末端保護基を脱保護して、C末端固定化保護されたアミノ酸またはペプチドを製造する工程。
(第三工程:縮合工程)
C末端固定化保護されたアミノ酸またはペプチドに対して、新規N末端保護アミノ酸またはペプチドと縮合させ、C末端固定化保護された伸長されたN末端保護ペプチドを製造する工程。
(第四工程:沈殿化工程)
C末端固定化保護された伸長されたN末端保護ペプチドを、極性溶媒中で沈殿化させ、C末端固定化保護された伸長されたN末端保護ペプチドを精製させる工程。
(第五工程:最終脱保護工程)
C末端固定化保護された伸長されたN末端保護ペプチド、または、C末端固定化保護された伸長されたペプチドの、C末端固定化保護を脱保護して、伸長されたペプチドを製造する工程。
上記、第二工程、第三工程、第四工程を1つのセットとして繰り返し行われるので、本発明のペプチドの製造方法は、具体的には以下のような2ケースが含まれる。ただし、mは、自然数を表し、(・・・)×m回によりカッコ内の工程をm回繰り返すことを意味する。
(ケース1)第一工程⇒(第二工程⇒第三工程⇒第四工程)×m回⇒第五工程
(ケース2)第一工程⇒(第二工程⇒第三工程⇒第四工程)×m回⇒第二工程⇒第五工程
本願は、日本に出願された特願2011−122798号を基礎としており、その内容は本願明細書に全て包含される。

Claims (7)

  1. 以下の工程(1);
    (1)分子量が300以上のアンカーによりC末端のカルボキシ基が保護されたN−Fmoc C−保護アミノ酸またはN−Fmoc C−保護ペプチドのN末端のFmoc基を、ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒中で求核性のない有機塩基により除去してC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドを得た後、酸で中和し、中和後の反応液に、N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチド、縮合剤および縮合促進剤を添加し、C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドのN末端にN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドを縮合させて、N−Fmoc C−保護ペプチドを得る工程
    を含み、
    分子量が300以上のアンカーが、下記式(I):
    [式中、
    は、水素原子であるか、あるいはRが下記式(a)で表される基である場合には、Rと一緒になって単結合を示して、環Aおよび環Bと共にフルオレン環を形成していてもよく;
    p個のRは、独立してそれぞれ、炭素数10〜30の脂肪族炭化水素基を示し;
    pは、1〜4の整数を示し;
    環Aは、p個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
    は、水素原子、またはハロゲン原子により置換されていてもよいフェニル基を示し;かつ
    は、水素原子、または式(a):
    (式中、は結合位置を示し;
    rは、0〜4の整数を示し;
    r個のRは、独立してそれぞれ、炭素数10〜30の脂肪族炭化水素基を示し;
    は、水素原子を示すか、またはRと一緒になって単結合を示して、環Aおよび環Bと共にフルオレン環を形成していてもよく;かつ
    環Bは、r個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示し;かつ
    Yは、ヒドロキシ基、NHR(Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)、またはハロゲン原子を示す。]
    で表される化合物である、ペプチドの製造方法。
  2. 式(I)中のYがヒドロキシ基であり、Rが水素原子であり、pが1〜3の整数であり、かつrが0〜2の整数である、請求項1に記載の方法。
  3. 式(I)中のR および 共に水素原子である、請求項2に記載の方法。
  4. 以下の工程(1);
    (1)分子量が300以上のアンカーによりC末端のカルボキシ基が保護されたN−Fmoc C−保護アミノ酸またはN−Fmoc C−保護ペプチドのN末端のFmoc基を、ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒中で求核性のない有機塩基により除去してC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドを得た後、酸で中和し、中和後の反応液に、N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチド、縮合剤および縮合促進剤を添加し、C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドのN末端にN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドを縮合させて、N−Fmoc C−保護ペプチドを得る工程
    を含み、
    分子量が300以上のアンカーが、下記式(I):
    [式中、
    は、水素原子を示し;
    p個のR は、独立してそれぞれ、炭素数10〜40のアルキル基を示し;
    pは、2または3を示し;
    環Aは、p個のOR に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC 1−6 アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC 1−6 アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
    は、水素原子を示し;
    は、水素原子を示し;かつ
    Yは、ヒドロキシ基を示す。]
    で表される化合物である、ペプチドの製造方法。
  5. 式(I)中のR が炭素数12〜30のアルキル基である、請求項4に記載の方法。
  6. 以下の工程(1);
    (1)分子量が300以上のアンカーによりC末端のカルボキシ基が保護されたN−Fmoc C−保護アミノ酸またはN−Fmoc C−保護ペプチドのN末端のFmoc基を、ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒中で求核性のない有機塩基により除去してC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドを得た後、酸で中和し、中和後の反応液に、N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチド、縮合剤および縮合促進剤を添加し、C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドのN末端にN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドを縮合させて、N−Fmoc C−保護ペプチドを得る工程
    を含み、
    分子量が300以上のアンカーが、下記式(I):
    [式中、
    は、水素原子を示し;
    p個のR は、独立してそれぞれ、炭素数12〜30のアルコキシ基を1〜3個有するベンジル基を示し;
    pは、1〜3の整数を示し;
    環Aは、p個のOR に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC 1−6 アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC 1−6 アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
    は、水素原子を示し;
    は、水素原子を示し;かつ
    Yは、ヒドロキシ基を示す。]
    で表される化合物である、ペプチドの製造方法。
  7. 以下の工程(1);
    (1)分子量が300以上のアンカーによりC末端のカルボキシ基が保護されたN−Fmoc C−保護アミノ酸またはN−Fmoc C−保護ペプチドのN末端のFmoc基を、ハロゲン系溶媒またはエーテル系溶媒中で求核性のない有機塩基により除去してC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドを得た後、酸で中和し、中和後の反応液に、N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチド、縮合剤および縮合促進剤を添加し、C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドのN末端にN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドを縮合させて、N−Fmoc C−保護ペプチドを得る工程
    を含み、
    分子量が300以上のアンカーが、下記式(I):
    [式中、
    は、水素原子を示し;
    p個のR は、独立してそれぞれ、炭素数12〜30のアルコキシ基を1〜3個有するシクロヘキシルメチル基を示し;
    pは、1〜3の整数を示し;
    環Aは、p個のOR に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC 1−6 アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC 1−6 アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
    は、水素原子を示し;
    は、水素原子を示し;かつ
    Yは、ヒドロキシ基示す。]
    で表される化合物である、ペプチドの製造方法。
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