JP6349943B2 - 化合物の精製方法、及び高分子化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
モノマーの製造過程に由来する酸、アルカリ、金属等が不純物としてポリマー中に含まれ、ポリマーを精製してもこれらの不純物を充分に除去できないことが、フォトリソグラフィー性能が低下する一因と考えられる。特にポリマー中の金属不純物は、わずかな量でも、フォトリソグラフィー性能のみならず、製造される半導体デバイスの性能や安定性を低下させる懸念がある。
また、モノマーが低沸点の化合物である場合は、蒸留操作により、金属不純物の少ない化合物を留出させる方法を用いることもできる。
しかし、モノマーが親水性の化合物である場合は、分液操作時に、モノマー及び金属不純物が共に水相に分配されるため、分液操作による金属含有量の低減は困難である。モノマーが揮発しにくい親水性化合物である場合や熱分解しやすい親水性化合物である場合は、蒸留操作も適用できない。
[1]下記工程(I)及び工程(II)を含む、200℃且つ大気圧の条件下で液体状または固体状である親水性化合物の精製方法。
工程(I):Na、Ca、Fe及びZnのうちの少なくとも1種の金属を含有する200℃且つ大気圧の条件下で液体状または固体状である親水性化合物を、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が50質量ppb以下である水酸基を有する溶剤に溶解し、得られた溶液と、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂とを接触させる工程。
工程(II):前記工程(I)の後、晶析を行い、前記親水性化合物を回収する工程。
[2]前記親水性化合物が、下記一般式(B)で表される化合物である、[1]記載の精製方法。
[4]前記工程(II)において、前記晶析が、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が50ppb以下である水酸基を有する溶剤を用いて行われる、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の精製方法。
[5]下記工程(α)及び工程(β)を含む、高分子化合物の製造方法。
(α)少なくとも下記工程(i)及び工程(ii)を経ることにより、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が100質量ppb以下である下記一般式(B)で表される化合物を得る工程。
(i)Na、Ca、Fe及びZnのうちの少なくとも1種の金属を含有する下記一般式(B)で表される化合物を、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が50質量ppb以下である水酸基を有する溶剤に溶解し、得られた溶液と、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂とを接触させる工程。
(ii)前記工程(i)の後、晶析を行い、前記一般式(B)で表される化合物を回収する工程。
(β)前記工程(α)で得られた、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が100質量ppb以下である前記一般式(B)で表される化合物を含むモノマー成分を、酸触媒の存在下、重縮合反応させて高分子化合物を得る工程。
本発明の精製方法は、下記工程(I)及び工程(II)を含む。
工程(I):Na、Ca、Fe及びZnのうちの少なくとも1種の金属を含有する親水性且つ沸点200℃以上の化合物を、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が50質量ppb以下である水酸基を有する溶剤に溶解し、得られた溶液を、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂と接触させる工程。
工程(II):前記工程(I)の後、晶析を行い、前記親水性且つ沸点200℃以上の化合物を回収する工程。
200℃且つ大気圧の条件下で液体状または固体状である親水性化合物(以下、低揮発性親水性化合物ともいう。)における「親水性」とは、25℃の水と質量割合1対1で混合しても分離せずに相溶することを意味する。
低揮発性親水性化合物は、非水溶性の溶媒(例えば、消防法の危険物第4類の非水溶性の化合物)に溶解しないことが好ましい。
低揮発性親水性化合物は蒸留操作による精製が難しいことから、本発明の精製方法の有用性が高い。
200℃且つ大気圧の条件下で液体状または固体状である化合物としては、沸点が200℃以上の化合物、沸点を有しない化合物等が挙げられる。
低揮発性親水性化合物は、融点が100℃以上であることが好ましく、150℃以上が特に好ましい。
酸素原子を含む2価の基としては、炭化水素基の炭素原子間に酸素原子を含む基(エーテル基、ポリエーテル基)等が挙げられる。
R1、R2はそれぞれ独立して、2価の炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましく、エチレン基が特に好ましい。
酸素原子を含む1価の基としては、−R4−OH(R4は炭化水素基を表す。)等の水酸基を含む基等が挙げられる。R4における炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
R3は、水酸基を含む基であることが好ましく、−R4−OHがより好ましく、−CH2−CH2−OHが特に好ましい。
例えば前記金属を含有する化合物(B)は、市販品として入手可能であり、特開平8−325245号公報に記載の方法等によって製造することもできる。
化合物(B)は、不純物として、Na、Ca、Fe及びZnのうちの少なくとも1種の金属を含有する。
工程(I)では、まず、Na、Ca、Fe及びZnのうちの少なくとも1種の金属を含有する低揮発性親水性化合物を、水酸基を有する溶剤に溶解して溶液とする。
水酸基を有する溶剤としては、例えば、水(超純水)、メタノール、エタノール等のアルコール類が挙げられる。これらの溶剤は、いずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
水酸基を有する溶剤中の各金属の含有量が前記の上限値以下であると、低揮発性親水性化合物中の各金属を効果的に低減できる。そのため、例えば低揮発性親水性化合物がフォトリソグラフィー用高分子化合物の原料として用いられるモノマーである場合、該モノマーを用いて製造される高分子化合物は、前記各金属の含有量が少なく、フォトリソグラフィー工程に使用したときに良好なフォトリソグラフィー性能を奏することができる。
陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂についてはそれぞれ後で詳しく説明する。
作業性等の観点から、(1)の方法が好ましい。
陽イオン交換樹脂の使用量は、溶液中の低揮発性親水性化合物(100質量%)に対し、99〜0.1質量%が好ましく、80〜0.1質量%がより好ましい。
陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂それぞれの使用量が前記の範囲の下限値以上であると、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の除去効果に優れ、上限値以下であると、収率、安定性、製造コスト等に優れる。
前記溶液と各イオン交換樹脂とを接触させる時間は、特に限定されないが、精製効率向上等の観点から、20分以上が好ましく、40時間以上がさらに好ましい。
なお、前記の時間は、(1)の方法の場合は混合樹脂と接触させる時間であり、(2)又は(3)の方法の場合は、陰イオン交換樹脂と接触させる時間と、陽イオン交換樹脂と接触させる時間との合計である。
Na、Ca、Fe、Znそれぞれの含有量が前記の上限値以下である低揮発性親水性化合物は、フォトリソグラフィー材料等として有用である。
前記溶液と接触させる各イオン交換樹脂の使用量、接触させる際の温度および時間等によって、工程(II)で回収される低揮発性親水性化合物中の各金属の含有量を調整できる。
陰イオン交換樹脂としては、強塩基性陰イオン交換樹脂(I型、II型)、弱塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。
強塩基性陰イオン交換樹脂の含水率は75%以下であることが好ましく、70%以下がより好ましい。
強塩基性陰イオン交換樹脂の見掛け密度は650〜750g/Lであることが好ましい。
弱塩基性陰イオン交換樹脂の含水率は70%以下であることが好ましく、60%以下がより好ましい。
弱塩基性陰イオン交換樹脂の見掛け密度は300〜700g/Lであることが好ましい。
強塩基性陰イオン交換樹脂の市販品としては、例えばオルガノ株式会社製の「アンバーライトIRA400」、「オルライト DS−2」、「オルライト DS−5」;和光純薬工業株式会社製の「ダウエックス SBR−P C(OH)」、「ダウエックス MSA−2」;三菱化学株式会社製の「ダイヤイオン PAシリーズ」、「ダイヤイオン HPA25」「ダイヤイオン SAシリーズ」等が挙げられる。
弱塩基性陰イオン交換樹脂の市販品としては、例えばオルガノ株式会社製の「アンバーリスト B20−HG・Dry」、「アンバーライトIRA96」、「オルライト DS−6」、;和光純薬工業株式会社製の「ダウエックス 66」;三菱化学株式会社製の「ダイヤイオン WA10」、「ダイヤイオン WA20シリーズ」、「ダイヤイオン WA30」等が挙げられる。
陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。
強酸性陽イオン交換樹脂の含水率は70%以下であることが好ましく、60%以下がより好ましい。
強酸性陽イオン交換樹脂の見掛け密度は550〜900g/Lであることが好ましい。
弱酸性陽イオン交換樹脂の含水率は70%以下であることが好ましく、60%以下がより好ましい。
弱酸性陽イオン交換樹脂の見掛け密度は600〜700g/Lであることが好ましい。
強酸性陽イオン交換樹脂の市販品としては、例えばオルガノ株式会社製の「アンバーリスト 15JS−HG・Dry」、「アンバーライトIR120B」、「オルライト DS−1」、「オルライト DS−4」;和光純薬工業株式会社製の「ダウエックス HCR−S」、「ダウエックス HCR−W2(H)」;三菱化学株式会社製の「ダイヤイオン SKシリーズ」、「ダイヤイオン UBKシリーズ」「ダイヤイオン PKシリーズ」等が挙げられる。
弱酸性陽イオン交換樹脂の市販品としては、例えばオルガノ株式会社製の「アンバーライトIRC76」三菱化学株式会社製の「ダイヤイオン WKシリーズ」、「ダイヤイオン WK40L」等が挙げられる。
工程(I)の後、晶析を行い、低揮発性親水性化合物を回収する。
晶析方法としては、液相から結晶を析出させ、これにより特定成分を結晶として分離又は濃縮する方法であればよく、公知の晶析方法を用いることができる。
水酸基を有する溶剤としては、例えば、水(超純水)、メタノール、エタノール等のアルコール類が挙げられる。これらの溶剤は、いずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
水酸基を有する溶剤中のNa、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量は、30質量ppb以下であることがより好ましい。
(II−1)工程(I)にて陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂と接触させた溶液を冷却することにより低揮発性親水性化合物を晶析させる方法。
(II−2)新たに、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が50質量ppb以下である水酸基を有する溶剤を用いて低揮発性親水性化合物を晶析させる方法。
生産性の観点から、(II−1)の方法が好ましい。
(II−2)の方法は、例えば、以下の手順で行うことができる。
工程(I)にて陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂と接触させた溶液の溶剤を、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が50質量ppb以下である水酸基を有する溶剤に置換し、得られた溶液を冷却することにより低揮発性親水性化合物を晶析させる。
溶液を冷却する際の好ましい条件は、(II−1)の方法の場合と同様である。
新たに用いる水酸基を有する溶剤は、工程(I)で用いたものと同じでもよく異なってもよい。例えば低揮発性親水性化合物の溶解性がより低いものを用いることができる。
得られた懸濁液から、低揮発性親水性化合物の結晶を回収する。低揮発性親水性化合物の結晶の回収は、ろ過等の公知の固液分離操作によって行うことができる。
低揮発性親水性化合物の結晶の回収後、必要に応じて、乾燥等を行ってもよい。
本発明の精製方法によれば、精製しようとする化合物を、水等の水酸基を有する溶剤に溶解し、得られた溶液を陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂と接触させた後、晶析する簡単な操作で、水酸基を有する溶剤に溶解するような親水性化合物中のNa、 Ca、Fe、Znの各金属の含有量を低減することができる。
本発明の精製方法は、親水性化合物が低揮発性である場合や熱分解性しやすい(例えば200℃以下の温度で分解する)場合にも適用できる。
例えば化合物(B)は、フォトリソグラフィー用高分子化合物の製造にモノマーとして用いられるが、Na、 Ca、Fe、Znのうちの少なくとも1種の金属を不純物として含む場合が多い。化合物(B)は、親水性且つ低揮発性であるため、従来の一般的なモノマーの精製方法では、各金属の含有量を、例えば100質量ppb以下にまで低減することは難しい。そのため、これを用いて得られる高分子化合物は、Na、 Ca、Fe、Znのうちの少なくとも1種の金属を不純物として含み、また、該高分子化合物の精製によって各金属の含有量を低減することも難しい。該高分子化合物をフォトリソグラフィーに用いた場合、Na、 Ca、Fe、Znの各金属によってフォトリソグラフィー性能等が低下する。
本発明の精製方法によれば、化合物(B)におけるNa、 Ca、Fe、Znの各金属の含有量を100質量ppb以下にまで低減できる。Na、 Ca、Fe、Znの各金属の含有量が100質量ppb以下である化合物(B)は、フォトリソグラフィー材料として有用である。化合物(B)中のNa、 Ca、Fe、Znの各金属の含有量は、50質量ppb以下がより好ましい。
本発明の高分子化合物の製造方法は、下記工程(α)及び工程(β)を含む。
(α)少なくとも下記工程(i)及び工程(ii)を経ることにより、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が100質量ppb以下である化合物(B)を得る工程。
(i)Na、Ca、Fe及びZnのうちの少なくとも1種の金属を含有する化合物(B)を、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が50質量ppb以下である水酸基を有する溶剤に溶解し、得られた溶液と、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂とを接触させる工程。
(ii)前記工程(i)の後、晶析を行い、前記化合物(B)を回収する工程。
(β)前記工程(α)で得られた、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が100質量ppb以下である化合物(B)を含むモノマー成分を、酸触媒の存在下、重縮合反応させて高分子化合物を得る工程。
化合物(B)は、本発明の精製方法の説明で挙げたものと同様である。
工程(α)において、工程(i)及び工程(ii)はそれぞれ、前述の工程(I)及び工程(II)と同様にして行うことができる。
工程(α)は、必要に応じて、工程(i)及び工程(ii)以外の他の工程を含んでもよい。
工程(β)で用いる酸触媒としては、特に制限されない。例えばシュウ酸、無水マレイン酸、マレイン酸等のカルボン酸及びその無水物、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸及びその無水物、硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられる。これらの中でも、スルホン酸及びその無水物が好ましく、スルホン酸がより好ましい。スルホン酸及びその無水物は強酸性であり、反応性が高く、しかも縮重合の阻害となる水分の含有量が少ないため、酸触媒として好適である。
これら酸触媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
他のモノマーとしては、化合物(B)と重縮合反応し得るものであればよく、製造する高分子化合物に応じて公知のモノマーを用いることができる。
これらの中では、エッチング速度等に優れ、半導体リソグラフィー技術への適用に最適である点で、ポリエステル系高分子化合物が好ましい。
高分子化合物をリソグラフィー用高分子化合物として用いる場合には、溶液重合法が好ましく用いられる。
この例においては、2以上の水酸基を有するモノマーの少なくとも一部が、工程(α)で得られた、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が100質量ppb以下である化合物(B)である。
特に、反射防止膜性能に優れる高分子化合物が得られる点で、グリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリルが好ましい。また、これらは非芳香族の特徴を併せ持つので、エッチングレートを向上させることができる。
架橋剤付加反応の効率的な進行と分子量の精密な制御の両方の観点から、架橋剤付加反応は、50℃以下で行われるのが好ましく、より好ましくは15〜30℃であり、さらに好ましくは18〜22℃である。
本発明の高分子化合物の製造方法によれば、工程(α)にて、化合物(B)を、水等の水酸基を有する溶剤に溶解し、得られた溶液を陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂と接触させた後、晶析する簡単な操作で、親水性且つ低揮発性である化合物(B)中のNa、Ca、Fe、Znの各金属の含有量を低減することができる。Na、Ca、Fe、Znの各金属の含有量が低減された化合物(B)をモノマーとして用いることで、工程(α)を経ない場合に比べて、Na、 Ca、Fe、Znの各金属の含有量の少ない高分子化合物を得ることができる。例えば、Na、 Ca、Fe、Znの各金属の含有量の含有量が50質量ppb以下の高分子化合物を得ることが可能である。高分子化合物中のNa、 Ca、Fe、Znの各金属の含有量は、30質量ppb以下がより好ましい。
本発明の高分子化合物の製造方法により得られる高分子化合物は、フォトリソグラフィー工程に用いられるフォトリソグラフィー用高分子化合物として好適である。
フォトリソグラフィー用高分子化合物としては、レジスト膜の形成に用いられるレジスト用高分子化合物、レジスト膜の上層に形成される反射防止膜(TARC)又はレジスト膜の下層に形成される反射防止膜(BARC)の形成に用いられる反射防止膜用高分子化合物、ギャップフィル膜の形成に用いられるギャップフィル膜用高分子化合物、トップコート膜の形成に用いられるトップコート膜用高分子化合物等が挙げられる。
リソグラフィー用高分子化合物のZ平均分子量(Mz)は1,000〜400,000が好ましく、2,000〜100,000がより好ましい。
なお、特段の断りがない限り、各例における「%」、「ppb」はそれぞれ「質量%」、「質量ppb」を表すものとする。
各例で用いた超純水、高純度メタノールはそれぞれ、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が30ppb以下に低減された、半導体用のものである。
各例で用いた測定方法を以下に示す。
化合物(低揮発性親水性化合物、高分子化合物)中のNa、Ca、Fe、Znの各金属の含有量(金属不純物濃度)は、次のようにして求めた。
化合物の乾粉1.5gを、蒸留精製したN−メチル−2−ピロリドンで100倍希釈して測定サンプルを調製した。
測定サンプルを、高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer):Agilent Technologies製7500cs)により、Na、Ca、Fe、Znの金属分析を行い、測定サンプル中の各金属のイオンの濃度を測定した。その結果から、化合物(固形分)中の金属不純物濃度を求めた。
高分子化合物の質量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)は、GPC(Gel Permeation Chromatography:東ソー株式会社製、「HLC8220GPC」)により、ポリスチレン換算で求めた。測定条件は以下の通りである。
・測定サンプル:乾粉50mg/溶離液5mL。
・溶離液:1.7mMリン酸/THF。
・分離カラム:昭和電工株式会社製の「Shodex GPC K−805L」。
・測定温度:40℃。
・検出器:示差屈折率検出器。
1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(以下、THEICと略す。)の市販品(製品名:THEIC−G、四国化成、沸点なし、引火点227℃、融点133〜138℃)(60.00g,0.231mol)に、超純水(36.00g)を加え、60℃にて完全に溶解した。得られた溶液に、あらかじめ超純水にて洗浄した陰イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst B20−HG・Dry)(1.2g)及び陽イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst 15JS−HG・Dry)(1.2g)を加え、60℃にて1時間攪拌した。この後、ろ過にて陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を除去し、ろ液を20℃/時間の速度で5℃まで冷却することで、晶析を行った。この後、ろ過を行って、析出した結晶を回収し、50℃で減圧乾燥した。これにより、THEICの精製品(36.1g、収率60.2%)を得た。
実施例1において、陰イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst B20−HG・Dry)及び陽イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst 15JS−HG・Dry)の使用量をそれぞれ0.6gに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ってTHEICの精製品(37.2g、収率62.0%)を得た。
THEICの市販品(製品名:THEIC−G、四国化成)(60.00g,0.231mol)に、高純度メタノール(168.00g)を加え、60℃にて完全に溶解した。得られた溶液に、あらかじめ高純度メタノールにて洗浄した陰イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst B20−HG・Dry)(1.2g)及び陽イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst 15JS−HG・Dry)(1.2g)を加え、60℃にて1時間攪拌した。この後、ろ過にて陽イオンと陰イオン混合交換樹脂を除去し、ろ液を20℃/時間の速度で5℃まで冷却することで、晶析を行った。この後、ろ過を行って、析出した結晶を回収し、50℃で減圧乾燥した。これにより、THEICの精製品(39.1g、収率65.0%)を得た。
実施例3において、陰イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst B20−HG・Dry)及び陽イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst 15JS−HG・Dry)の使用量をそれぞれ0.6gに変更した以外は、実施例3と同様の操作を行ってTHEICの精製品(41.2g、収率68.7%)を得た。
THEICの市販品(製品名:THEIC−G、四国化成)(60.00g,0.231mol)に、高純度メタノール(168.00g)を加え、60℃にて完全に溶解した。得られた溶液を20℃/時間の速度で5℃まで冷却することで、晶析を行った。この後、ろ過を行って、析出した結晶を回収し、50℃で減圧乾燥した。これにより、THEICの精製品(45.1g、収率75.0%)を得た。
THEICの市販品(製品名:THEIC−G、四国化成)(60.00g,0.231mol)に、超純水(36.00g)を加え、60℃にて完全に溶解した。得られた溶液に、あらかじめ超純水にて洗浄した陽イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst 15JS−HG・Dry)(0.6g)を加え、60℃にて1時間攪拌した。この後、ろ過にて陽イオン交換樹脂を除去し、ろ液を20℃/時間の速度で5℃まで冷却することで、晶析を行った。この後、ろ過を行って、析出した結晶を回収し、50℃で減圧乾燥した。これにより、THEICの精製品(38.8g、収率64.7%)を得た。
THEICの市販品(製品名:THEIC−G、四国化成)(60.00g,0.231mol)に、超純水(36.00g)を加え、60℃にて完全に溶解した。得られた溶液に、あらかじめ超純水にて洗浄した陰イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst B20−HG・Dry)(0.6g)を加え、60℃にて1時間攪拌した。この後、ろ過にて陰イオン混合交換樹脂を除去し、ろ液を20℃/時間の速度で5℃まで冷却することで、晶析を行った。この後、ろ過を行って、析出した結晶を回収し、50℃で減圧乾燥した。これにより、THEICの精製品(38.5g、収率64.2%)を得た。
また、各例での陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂の使用量(THEIC原料に対する割合(%))、各例で使用した溶剤の種類を表1に併記した。
実施例1で得たTHEICの精製品(33.56g,0.129mol)、2,3−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(31.50g,0.129mol)、p−トルエンスルホン酸−水和物(pTSA)(1.303g,6.85mmol)、及びアニソール(39.80g)を三口フラスコに充填し、Dean−Starkトラップを用いて脱水及び脱メタノール反応を行いながら130℃で8時間重合した。その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン(0.693g,6.85mmol)を加えて反応を停止させた。
得られた重合溶液をテトラヒドロフラン(THF)(49.7g)で希釈し、希釈液を得た。この希釈液をヘキサン(290.0g)と2−プロパノール(IPA)(870.0g)の混合物(貧溶媒)に加えて再沈殿し、下記式(2)で表される構造単位を有するポリエステル系高分子化合物1(質量平均分子量(Mw):6300、Z平均分子量(Mz):12500、収率:約50%)を得た。
実施例3で得たTHEICの精製品(33.56g,0.129mol)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル(29.45g,0.129mol)、pTSA(1.303g,6.85mmol)、及びアニソール(39.80g)を三口フラスコに充填し、Dean−Starkトラップを用いて脱水及び脱エタノール反応を行いながら135℃で10時間重合した。その後、THF(44.7g)で希釈して、テトラメトキシグリコールウリル(TMGU)(12.81g,40.24mmol)添加し、20℃で5.5時間反応させた後、トリエチルアミン(0.693g,6.85mmol)を加えて反応を停止させた。
得られた重合溶液を、ヘキサン(290.0g)とIPA(870.0g)との混合物(貧溶媒)に加えて再沈殿し、下記式(4)で表される構造単位及び下記式(5)で表される構造単位を有する、側鎖に架橋剤が付加されたポリエステル系高分子化合物3(質量平均分子量(Mw):7500、Z平均分子量(Mz):14200、収率:約40%)を得た。
実施例5において、THEICの精製品の代わりにTHEICの市販品(製品名:THEIC−G、四国化成)を使用した以外は、実施例5と同様の操作を行なってポリエステル系高分子化合物(質量平均分子量(Mw):6400、Z平均分子量(Mz):12600、収率:約50%)を得た。
実施例6において、THEICの精製品の代わりにTHEICの市販品(製品名:THEIC−G、四国化成)を使用した以外は、実施例6と同様の操作を行なってポリエステル系高分子化合物(質量平均分子量(Mw):7600、Z平均分子量(Mz):14400、収率:約40%)を得た。
また、各例で用いたTHEICの精製の有無を表2に併記した。
一方、溶液を陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂とを接触させずにそのまま晶析を行った比較例1、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂のいずれか一方のみに接触させた比較例2〜3では、処理前に比べてNa、Ca、Fe、Znの各金属の含有量は低減されたが、その低減効果は実施例1〜4に比べて劣っており、Na、Ca、Fe、Znの全ての含有量を100ppb以下にすることはできなかった。
一方、THEICの未精製品を用いた比較例4〜5では、高分子化合物中のNa、Ca、Fe、Znの全ての含有量を50ppb以下にできなかった。このような高分子化合物は、例えば、フォトリソグラフィー用に使用した場合、フォトリソグラフィー性能を充分に発現しないことが懸念される。
実施例5〜6及び比較例4〜5の各例では、重合後に再沈殿を行っているが、Na、Ca、Fe、Znの各金属の含有量に上記のような違いが見られた。
Claims (4)
- 下記工程(I)及び工程(II)を含む、200℃且つ大気圧の条件下で液体状または固体状である親水性化合物の精製方法であって、
前記親水性化合物が、下記一般式(B)で表される化合物である、精製方法。
2価の基を表し、R 3 は、1価の炭化水素基、又は酸素原子を含む1価の基を表す。)
工程(I):Na、Ca、Fe及びZnのうちの少なくとも1種の金属を含有する200℃且つ大気圧の条件下で液体状または固体状である親水性化合物を、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が50質量ppb以下である水酸基を有する溶剤に溶解し、得られた溶液と、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂とを接触させる工程。
工程(II):前記工程(I)の後、晶析を行い、前記親水性化合物を回収する工程。 - 前記工程(I)において、前記水酸基を有する溶剤中のNa、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が30質量ppb以下である、請求項1に記載の精製方法。
- 前記工程(II)において、前記晶析が、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が50ppb以下である水酸基を有する溶剤を用いて行われる、請求項1〜2のいずれか一項に記載の精製方法。
- 下記工程(α)及び工程(β)を含む、高分子化合物の製造方法。
(α)少なくとも下記工程(i)及び工程(ii)を経ることにより、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が100質量ppb以下である下記一般式(B)で表される化合物を得る工程。
(i)Na、Ca、Fe及びZnのうちの少なくとも1種の金属を含有する下記一般式(B)で表される化合物を、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が50質量ppb以下である水酸基を有する溶剤に溶解し、得られた溶液と、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂とを接触させる工程。
(ii)前記工程(i)の後、晶析を行い、前記一般式(B)で表される化合物を回収する工程。
(β)前記工程(α)で得られた、Na、Ca、Fe及びZnの各金属の含有量が100質量ppb以下である前記一般式(B)で表される化合物を含むモノマー成分を、酸触媒の存在下、重縮合反応させて高分子化合物を得る工程。
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