JP2009102473A - ポリオレフィンを基材とする有機高分子材料及び金属イオンを含む有機溶媒の処理方法 - Google Patents
ポリオレフィンを基材とする有機高分子材料及び金属イオンを含む有機溶媒の処理方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 有機溶媒中の金属イオンを除去でき、再生可能なポリオレフィンを基材とする有機高分子材料とそれを用いた有機溶媒の処理方法を提供する。
【解決手段】 有機溶媒中の金属イオンを除去するポリオレフィンを基材とする有機高分子材料であって、該有機高分子材料が、前記ポリオレフィン基材の主鎖に直鎖ポリエーテルを含むグラフト側鎖を結合したものである有機高分子材料としたものであり、前記グラフト側鎖は、放射線グラフト重合により導入され、クロロメチルスチレンに分子量が160〜2000の直鎖ポリエーテルが共有結合したものであり、ポリオレフィン基材の形状は、不織布、短繊維、ネット又は粒子のいずれかでよく、また、上記有機高分子材料に金属イオンを含む有機溶媒を通液して金属イオンを除去し、該金属イオンを捕捉した該有機高分子材料に水を通液して再生する有機溶媒の処理方法とした。
【選択図】 なし
【解決手段】 有機溶媒中の金属イオンを除去するポリオレフィンを基材とする有機高分子材料であって、該有機高分子材料が、前記ポリオレフィン基材の主鎖に直鎖ポリエーテルを含むグラフト側鎖を結合したものである有機高分子材料としたものであり、前記グラフト側鎖は、放射線グラフト重合により導入され、クロロメチルスチレンに分子量が160〜2000の直鎖ポリエーテルが共有結合したものであり、ポリオレフィン基材の形状は、不織布、短繊維、ネット又は粒子のいずれかでよく、また、上記有機高分子材料に金属イオンを含む有機溶媒を通液して金属イオンを除去し、該金属イオンを捕捉した該有機高分子材料に水を通液して再生する有機溶媒の処理方法とした。
【選択図】 なし
Description
本発明は、有機合成、電子工業、医薬品工業等で用いられる有機溶媒の精製に係り、特に、極微量の金属イオンを含む有機溶媒を簡便にかつ安価に高純度の品質に精製できる金属イオン除去機能を持つポリオレフィンを基材とする有機高分子材料とそれを用いる有機溶媒の処理方法に関する。
ベンゼン、キシレン或いはトルエン等の水に不溶もしくは難溶である有機溶媒中の不純物であるイオン性物質(陽イオン及び陰イオン)を除去する方法として、例えばこれらの有機溶媒は水に不溶であることから、水で洗浄して有機溶媒よりも水に溶解しやすいイオンを水に抽出し、水相と有機溶媒相とを分離する精製を繰り返す操作(溶媒抽出法)で達成できる。しかし、アルコール、アセトニトリル或いはアセトンは水に容易に溶解するため、水相と有機溶媒相とを分離することができないことから前記のような水による抽出ができない。
このような水に容易に溶解する有機溶媒中のイオン性物質を除去するためには、従来モレキュラーシーブ、ゼオライト或いは有機イオン交換体もしくは無機イオン交換体で吸着もしくはイオン交換反応を利用してイオン性物質を除去していた。
また、工業的には例えば芳香族炭化水素或いは飽和炭化水素の留分の最終工程では、イオン交換能のある活性白土が用いられている。このように、水と分離ができない有機溶媒からのイオン除去技術として、イオン交換又は吸着が利用されてきた。
このような水に容易に溶解する有機溶媒中のイオン性物質を除去するためには、従来モレキュラーシーブ、ゼオライト或いは有機イオン交換体もしくは無機イオン交換体で吸着もしくはイオン交換反応を利用してイオン性物質を除去していた。
また、工業的には例えば芳香族炭化水素或いは飽和炭化水素の留分の最終工程では、イオン交換能のある活性白土が用いられている。このように、水と分離ができない有機溶媒からのイオン除去技術として、イオン交換又は吸着が利用されてきた。
イオン交換樹脂による脱塩方法は、例えば純水を製造する技術として広く一般に用いられている。イオン交換樹脂は水溶液ばかりでなく、有機溶媒にも用いることができる。
例えば、水の脱塩では、陽イオン交換樹脂の場合、水中の金属イオンが陽イオン交換樹脂と反応すると同時に、H+形に再生された陽イオン交換樹脂からはプロトン(H+イオン)が放出され、処理液は酸性となる。逆に、OH−形に再生された陰イオン交換樹脂では、水中の陰イオンが陰イオン交換樹脂と反応すると同時に、陰イオン交換樹脂から水酸化物イオン(OH―イオン)が放出され、処理液はアルカリ性となる。
従って、イオン交換樹脂を用いた脱塩処理では、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合して用いることで、陽イオン交換樹脂から放出されたプロトンと陰イオン交換樹脂から放出された水酸化物イオンとが反応して水となる。すなわち、イオン交換樹脂を用いて脱塩処理を行うには、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の両方の樹脂を用いなければならない。
例えば、水の脱塩では、陽イオン交換樹脂の場合、水中の金属イオンが陽イオン交換樹脂と反応すると同時に、H+形に再生された陽イオン交換樹脂からはプロトン(H+イオン)が放出され、処理液は酸性となる。逆に、OH−形に再生された陰イオン交換樹脂では、水中の陰イオンが陰イオン交換樹脂と反応すると同時に、陰イオン交換樹脂から水酸化物イオン(OH―イオン)が放出され、処理液はアルカリ性となる。
従って、イオン交換樹脂を用いた脱塩処理では、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合して用いることで、陽イオン交換樹脂から放出されたプロトンと陰イオン交換樹脂から放出された水酸化物イオンとが反応して水となる。すなわち、イオン交換樹脂を用いて脱塩処理を行うには、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の両方の樹脂を用いなければならない。
脱塩処理を行った後のイオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂にNa+イオンやCa2+イオン等が蓄積されているため、再生には高濃度の塩酸或いは硫酸を必要とする。同様に、Cl−イオンやSO4 2−イオン等が蓄積した陰イオン交換樹脂の再生には、高濃度の水酸化ナトリウム等のアルカリを必要とする。すなわち、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の両方の樹脂を用いる脱塩方法は、再生においてこのように陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂で再生に必要な薬品が全く異なるため、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合して用いる所謂混床式の脱塩方式では、再生を行う前に陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を分離しなければならず、作業工程が煩雑であった。更に、高濃度の再生廃液処理がコスト的に大きな負担となっていた。
有機溶媒の場合も同様の反応が起こり、有機溶媒中の陽イオンは陽イオン交換樹脂で処理し、陰イオンは陰イオン交換樹脂でそれぞれ処理しなければならない。陽イオンを除去した陽イオン交換樹脂からはプロトンが放出され、陰イオンを除去した陰イオン交換樹脂からは水酸化物イオンが放出されるため、有機溶媒を脱塩したことにより水が生成する。従って、イオン交換樹脂による有機溶媒の脱塩には、有機溶媒の純度を低下させる問題があった。
一方、モレキュラーシーブやゼオライトを用いる場合、イオン除去容量が小さいため頻繁に再生を行うか、或いは使い捨てとしているため、処理量が多い場合にはコスト的に大きな負担となるなどの問題があった。
特開平10−231334号公報
一方、モレキュラーシーブやゼオライトを用いる場合、イオン除去容量が小さいため頻繁に再生を行うか、或いは使い捨てとしているため、処理量が多い場合にはコスト的に大きな負担となるなどの問題があった。
本発明は、上記従来技術に鑑み、水に対する溶解性にかかわらず、多くの有機溶媒を対象として、有機溶媒中の極微量の金属イオンを除去することができ、しかも再生可能なポリオレフィンを基材とする有機高分子材料とそれを用いる金属イオンを含む有機溶媒の処理方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明では、有機溶媒中の金属イオンを除去するポリオレフィンを基材とする有機高分子材料であって、該有機高分子材料が、前記ポリオレフィン基材の主鎖に直鎖ポリエーテルを含むグラフト側鎖を結合したものである有機高分子材料としたものである。
前記有機高分子材料において、グラフト側鎖は、放射線グラフト重合を用いて前記ポリオレフィン基材の主鎖に導入され、前記ポリオレフィン基材の主鎖に導入されたグラフト側鎖は、クロロメチルスチレンに直鎖ポリエーテルが共有結合したものであり、前記直鎖ポリエーテルは、分子量が160〜2000のものがよく、また、前記ポリオレフィン基材は、不織布、短繊維、ネット又は粒子のいずれかを用いることができる。
また、本発明では、上記の有機高分子材料に、金属イオンを含む有機溶媒を通液して、該有機溶媒中の金属イオンを前記有機高分子材料に捕捉して除去し、次いで、該有機高分子材料に水を通液することによって、該有機高分子材料を再生する金属イオンを含む有機溶媒の処理方法としたものである。
前記有機高分子材料において、グラフト側鎖は、放射線グラフト重合を用いて前記ポリオレフィン基材の主鎖に導入され、前記ポリオレフィン基材の主鎖に導入されたグラフト側鎖は、クロロメチルスチレンに直鎖ポリエーテルが共有結合したものであり、前記直鎖ポリエーテルは、分子量が160〜2000のものがよく、また、前記ポリオレフィン基材は、不織布、短繊維、ネット又は粒子のいずれかを用いることができる。
また、本発明では、上記の有機高分子材料に、金属イオンを含む有機溶媒を通液して、該有機溶媒中の金属イオンを前記有機高分子材料に捕捉して除去し、次いで、該有機高分子材料に水を通液することによって、該有機高分子材料を再生する金属イオンを含む有機溶媒の処理方法としたものである。
本発明は、ポリオレフィンを基材とする有機高分子材料がグラフト重合体であり、側鎖であるグラフト鎖の一部もしくは全部が直鎖ポリエーテル構造を有しており、前記グラフト鎖のポリエーテル部位の分子量が、160以上2000以下である新規なポリオレフィンを基材とする有機高分子材料を提供するものである。
前記グラフト鎖は、ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール)等の直鎖状分子であり、このような側鎖がフレキシビリティを持っているため、クラウンエーテルのようにエーテル環のサイズにフィットする特定の陽イオンのみを選択的にゲストとして捕捉するのではなく、非選択的に金属イオンをその対イオン(陰イオン)とともに捕捉することができる。
前記グラフト鎖は、ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール)等の直鎖状分子であり、このような側鎖がフレキシビリティを持っているため、クラウンエーテルのようにエーテル環のサイズにフィットする特定の陽イオンのみを選択的にゲストとして捕捉するのではなく、非選択的に金属イオンをその対イオン(陰イオン)とともに捕捉することができる。
本発明の新規なポリオレフィンを基材とする有機高分子材料(例えばポリエーテル不織布)による有機溶媒中の金属イオンの除去には、有機溶媒は比誘電率の小さいものの方がイオンへの溶媒和が弱いため好ましいと言える。逆に比誘電率が大きな溶媒は、ポリエーテルからイオンを脱離でき、特に比誘電率が80である水では、容易に再生が可能となる。ポリエーテル不織布を再生するにあたって、高濃度の酸が不要であることは工業的に大きなメリットとなる。例えば、半導体工場の場合、ユースポイントではできる限り薬品を使用しないことが極めて重要である。LSI製造には金属イオンの抑制が不可欠であり、ウエハー表面の金属イオンの汚染は10−10atoms/cm2以下としており、薬品から持ち込まれる種々の不純物を抑えるためにも、薬品を使用しない再生法が極めて重要となる。
以上のように、本発明のポリエーテルを固定化した新規ポリオレフィンを基材とする有機高分子材料を用いれば、有機溶媒中の金属イオン(不純物)を容易に除去し、有機溶媒を高純度に精製することが可能であり、更に薬品を用いることなく再生を水で行うことにより、簡便な操作で有機高分子材料を繰り返し使用することができる。
以上のように、本発明のポリエーテルを固定化した新規ポリオレフィンを基材とする有機高分子材料を用いれば、有機溶媒中の金属イオン(不純物)を容易に除去し、有機溶媒を高純度に精製することが可能であり、更に薬品を用いることなく再生を水で行うことにより、簡便な操作で有機高分子材料を繰り返し使用することができる。
本発明は、水に対する溶解性にかかわらず、多くの有機溶媒を対象とし、有機溶媒中の金属イオンを除去するためのポリオレフィンを基材とする有機高分子材料を提供するものであり、即ち、直鎖ポリエーテル構造を持つ側鎖をポリオレフィン基材に固定化することで陽イオンである金属イオンを捕捉するイオノファーを形成し、有機溶媒中に溶解した金属イオンをイオノファーに配位結合させるのと同時に、カウンターアニオンをその周辺で捕らえる。このとき、イオン交換をせず陽イオンと陰イオンを同時にイオン対として分離除去するので、有機溶媒のpH変化を起こさない。
金属イオンとしては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、また有機溶媒としては比誘電率が40以下の極性溶媒或いは無極性溶媒が好ましい。但し、基材であるポリオレフィン及びポリエーテルの側鎖が溶解するような有機溶媒には適用することはできない。
更に詳細には、有機溶媒中の正電荷をもつ金属イオン及びその対イオンで負の電荷をもつ陰イオンを同時に捕捉して除去処理を行うポリオレフィンを基材とする有機高分子材料であって、該有機高分子材料がグラフト重合体であり、側鎖であるグラフト鎖の一部もしくは全部がポリエーテル構造を有しており、グラフト側鎖が、紫外線などによる光照射、又は、プラズマ、コロナ放電或いは放射線グラフト重合法を用いてポリオレフィン基材の有機高分子材料の主鎖に導入されており、グラフト側鎖のポリエーテル部位の分子量が、160〜2000である有機高分子材料である。
金属イオンとしては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、また有機溶媒としては比誘電率が40以下の極性溶媒或いは無極性溶媒が好ましい。但し、基材であるポリオレフィン及びポリエーテルの側鎖が溶解するような有機溶媒には適用することはできない。
更に詳細には、有機溶媒中の正電荷をもつ金属イオン及びその対イオンで負の電荷をもつ陰イオンを同時に捕捉して除去処理を行うポリオレフィンを基材とする有機高分子材料であって、該有機高分子材料がグラフト重合体であり、側鎖であるグラフト鎖の一部もしくは全部がポリエーテル構造を有しており、グラフト側鎖が、紫外線などによる光照射、又は、プラズマ、コロナ放電或いは放射線グラフト重合法を用いてポリオレフィン基材の有機高分子材料の主鎖に導入されており、グラフト側鎖のポリエーテル部位の分子量が、160〜2000である有機高分子材料である。
また、前記有機高分子材料が、ポリオレフィンを基材とする不織布、短繊維、ネット及び粒子であり、充填材等として使用することが容易な形状であれば良い。有機溶媒と前記有機高分子材料を充分に接触させるためには、できる限り該有機高分子材料の比表面積が大きいほど有利である。従って、前記充填材の形状は、有機溶媒が充分に接触でき充填筒に均一に充填できれば良い。充填筒は、通常用いられるカラム構造で出口部に充填材である前記不織布、短繊維及び粒子がカラムから流出しないようネットもしくは多孔板等でトラップできるものが好ましい。
具体的には、有機高分子材料に金属イオン及びその対イオンである陰イオンを同時に捕捉する機能を付加するためには、例えば、ポリオレフィンを基材とする有機高分子材料である不織布などに、種々の金属イオンと配位する配位子を有するグラフト側鎖を共有結合させることにより達成される。配位子としては直鎖ポリエーテルが最も好ましい。また、直鎖ポリエーテルの末端に第1、2、3級アミノ基のいずれかを直鎖ポリエーテルに導入してもよい。このようなグラフト側鎖を共有結合させた不織布などの有機高分子材料をカラムに充填することで、溶媒中の金属イオンが配位結合或いはイオン−双極子相互作用で有機高分子材料に捕捉され、溶媒中から分離される。この時、金属イオンの対イオンである陰イオンも配位結合した金属イオンの近傍に静電気的にイオン対として捕捉されるため
、金属イオンと陰イオンが同時に溶媒中から分離される。
、金属イオンと陰イオンが同時に溶媒中から分離される。
従来、有機合成の分野で用いられる環状のエーテル化合物であるクラウンエーテルやアザクラウンエーテル類が、陽(金属)イオンをその空洞内に取り込み金属イオンのホスト(イオノファー)として働くことで、それと同時に、対イオンである裸の陰イオンの求核性を高めその反応を加速することは公知の現象であった
。
このような環状エーテル類は、その環状分子の空洞の大きさにより、取り込むことができる金属イオンの大きさが限られており、その安定性も環状のエーテル化合物により異なる。例えば、よく使われる金属イオンをゲストとするエーテル環の大きさは、12員環から20数員環であるが、最もよく使われるのは、リチウムイオンをゲストとする12−クラウン−4、またナトリウムや、カリウムイオンをゲストとする18−クラウン−6などが知られている。また、エーテル環を構成する酸素と捕捉される金属イオンの結合は配位結合で、その結合の強さは錯結合定数によって表され、溶媒、温度、金属イオンの種類によって決まるものである。即ち、環状分子の空洞の大きさにより、捕捉されるゲストとしての金属イオンが必然的に決定されるため、選択性が極めて高い反応である。
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このような環状エーテル類は、その環状分子の空洞の大きさにより、取り込むことができる金属イオンの大きさが限られており、その安定性も環状のエーテル化合物により異なる。例えば、よく使われる金属イオンをゲストとするエーテル環の大きさは、12員環から20数員環であるが、最もよく使われるのは、リチウムイオンをゲストとする12−クラウン−4、またナトリウムや、カリウムイオンをゲストとする18−クラウン−6などが知られている。また、エーテル環を構成する酸素と捕捉される金属イオンの結合は配位結合で、その結合の強さは錯結合定数によって表され、溶媒、温度、金属イオンの種類によって決まるものである。即ち、環状分子の空洞の大きさにより、捕捉されるゲストとしての金属イオンが必然的に決定されるため、選択性が極めて高い反応である。
そこで、このエーテル環を直鎖状にすることで、そのエーテル鎖に自由度を持たせ、金属イオンの大きさによらず、エーテル鎖の酸素と金属イオンの配位結合を利用し、金属イオンをゲストとして捕捉すると同時に、対イオンである陰イオンも同時にエーテル鎖に固定化することを着想した。これにより、各種金属イオンは、その原子の大きさにかかわらずフレキシブルなエーテル鎖と配位結合することができる。そして、本発明は、エーテル鎖を含む有機高分子の一端をポリエチレン不織布等の基材に共有結合で固定し、別の一端を自由端とすることで、金属イオンと対イオンである陰イオンを同時に有機溶媒から分離することが可能な新しい除去機能を有する有機高分子材料となしえたものである。
これまでにもポリオレフィンを基材としエーテル鎖をグラフト重合により基材に固定化する方法が検討されている。例えば、前記した特許文献1は、ポリエチレンオキシドグラフト共重合体の製造方法であって、基材であるポリオレフィン、ラジカル開始剤、末端がアルキル基であるポリエチレンオキシド鎖及びラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物を溶融混練して1段階で共重合する方法が開示されている。
前記特許文献1は、その発明が属する技術分野に示されているように、ポリオレフィン樹脂本来の性質である成形性及び成形品外観を保持しつつ、水に対する濡れ性を大幅に改良したポリエチレンオキシドグラフト共重合体の製造方法に関するものであり、優れた濡れ性を備えていることから、防曇性、帯電防止性等を必要とする分野に利用することができる、いわばポリオレフィン樹脂の表面特性の改善に関する技術である。
これに対して、本発明は、p−クロロメチルスチレン(CMS)等を基材のポリオレフィンに放射線グラフト重合してグラフト側鎖を基材に導入し(step-1)、このグラフト側鎖にポリエーテルを結合させる(step-2)方法であって、反応工程は2段階で行われる。従って合成方法そのものが前記特許文献1と異なっている。更に、これまで述べたように、本発明は有機溶媒から金属イオンを除去する材料及び処理方法に関する発明であり、前記特許文献1にはこの点に関する記載はなく、技術的に示唆する記載もない。
これまでにもポリオレフィンを基材としエーテル鎖をグラフト重合により基材に固定化する方法が検討されている。例えば、前記した特許文献1は、ポリエチレンオキシドグラフト共重合体の製造方法であって、基材であるポリオレフィン、ラジカル開始剤、末端がアルキル基であるポリエチレンオキシド鎖及びラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物を溶融混練して1段階で共重合する方法が開示されている。
前記特許文献1は、その発明が属する技術分野に示されているように、ポリオレフィン樹脂本来の性質である成形性及び成形品外観を保持しつつ、水に対する濡れ性を大幅に改良したポリエチレンオキシドグラフト共重合体の製造方法に関するものであり、優れた濡れ性を備えていることから、防曇性、帯電防止性等を必要とする分野に利用することができる、いわばポリオレフィン樹脂の表面特性の改善に関する技術である。
これに対して、本発明は、p−クロロメチルスチレン(CMS)等を基材のポリオレフィンに放射線グラフト重合してグラフト側鎖を基材に導入し(step-1)、このグラフト側鎖にポリエーテルを結合させる(step-2)方法であって、反応工程は2段階で行われる。従って合成方法そのものが前記特許文献1と異なっている。更に、これまで述べたように、本発明は有機溶媒から金属イオンを除去する材料及び処理方法に関する発明であり、前記特許文献1にはこの点に関する記載はなく、技術的に示唆する記載もない。
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。
本発明では、放射線照射で生成したポリエチレン基材のラジカルとp−クロロメチルスチレン(CMS)のビニル基が反応してグラフト重合体を作り、次のステップで化1に示すようにメチル基のC1を引き抜いて直鎖ポリエーテルを導入する反応によって、直鎖ポリエーテル基を有する高分子不織布を作ることができる。ここで用いた重合法について以下に説明する。
グラフト重合は接木という意味があるように、基材となる高分子材料の形状にあまり制限を受けずに特定の機能を接木のように付与できるので、新しい機能性材料の開発に有効な合成手法である。例えば、基材としてポリエチレン樹脂でできた不織布に、γ線や電子線、紫外線などの照射、又は、プラズマ、コロナ放電、更にはラジカル発生剤などによって、基材の表面やその内部にラジカルを生成させ、機能性部位を有するモノマー(機能性モノマー)を脱酸素条件下で反応させることによって、グラフト重合物を得ることができる。更に、実用化技術としては、プラズマ、紫外線照射あるいはコロナ放電等よりも、放射線照射の方が基材への損傷が低いため、放射線グラフト重合法が適している。
本発明では、放射線照射で生成したポリエチレン基材のラジカルとp−クロロメチルスチレン(CMS)のビニル基が反応してグラフト重合体を作り、次のステップで化1に示すようにメチル基のC1を引き抜いて直鎖ポリエーテルを導入する反応によって、直鎖ポリエーテル基を有する高分子不織布を作ることができる。ここで用いた重合法について以下に説明する。
例えば、ポリエチレン基材に対し、γ線の照射量を100〜250kGy又は、電子線ならば、150〜300keVを照射する。これにより、ポリエチレン基材の表面もしくは内部にはラジカルが生成する。ラジカルが生成した基材と機能性モノマーを反応させるが、最適な反応温度はモノマーによって異なり、40〜100℃の間でグラフト重合反応が進行する。ポリオレフィン基材には、ポリエチレンのほかにポリプロピレンなどがあり、更には異なる2種類の基材から成る芯鞘構造の紡糸でできた不織布あるいは織布においてもグラフト重合が可能である。
基材となるポリオレフィン材料の形状は、前記の不織布あるいは織布に限らず、短繊維、粒子、ネット、などが利用できる。
本発明で好ましく用いることができる代表的な機能性モノマーとしては、酸性の官能基を有するアクリル酸、そしてそのエステル(例えばアクリル酸グリシジルエステルなど)があり、また塩基性を有するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドや、ビニル基の他にメチルクロリドのような二次反応(ポリエーテルの導入)が期待できる官能基を持つCMSなどがある。
基材となるポリオレフィン材料の形状は、前記の不織布あるいは織布に限らず、短繊維、粒子、ネット、などが利用できる。
本発明で好ましく用いることができる代表的な機能性モノマーとしては、酸性の官能基を有するアクリル酸、そしてそのエステル(例えばアクリル酸グリシジルエステルなど)があり、また塩基性を有するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドや、ビニル基の他にメチルクロリドのような二次反応(ポリエーテルの導入)が期待できる官能基を持つCMSなどがある。
例えば、基材であるポリエチレン不織布にCMSをグラフト重合した材料では、グラフト率(グラフト後の重量増加分/グラフト前の基材重量)が40%から140%のものを用いた場合、直鎖ポリエーテルとして連続して結合しているオキシエチレン部位(OCH2CH2)nのnが大きいほど有機溶媒中の陽イオンとの相互作用は強くなる傾向があるが、nが45(平均分子量2000)以上ではポリエーテル鎖が長いため、グラフト側鎖上のCMSへの導入が困難となり、ポリエーテルの導入密度が低下する傾向にあった。
そこで、有機溶媒中の陽イオンと直鎖ポリエーテルとの相互作用について調べた。不織布上に導入された直鎖ポリエーテルと金属イオンの相互作用を直接調べることが、測定技術上困難であることから、表1に示した直鎖ポリエーテルの単体を用いた。
そこで、有機溶媒中の陽イオンと直鎖ポリエーテルとの相互作用について調べた。不織布上に導入された直鎖ポリエーテルと金属イオンの相互作用を直接調べることが、測定技術上困難であることから、表1に示した直鎖ポリエーテルの単体を用いた。
直鎖ポリエーテルとしてのオキシエチレン部位の長さnと有機溶媒中のイオン(Na+)との相互作用の関係を調べた。表1に示すようにオキシエチレン部位の数nが3〜45で、末端がCH3でありもう一方がOHであるポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEGME)を用いて、有機溶媒中のNa+イオン濃度を変え1H−NMRスペクトルを測定した。
注)表1の分子量で、Fwは化学式量でありMnは数平均分子量である。
有機溶媒としては、全ての水素を重水素に置換した2−プロパノール−d8(IPA−d8)、アセトニトリル(CD3CN)及び重水(D2O)を用い、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準としてケミカルシフトを求めた。Na+イオン濃度の調整は、各溶媒にNaClO4を添加して行った。
その結果を図1〜図3に示す。図中「Mn750 5mmol/l 2−プロパノール−d8」とは、表1のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEGME)の数平均分子量Mnが750の化合物を示し、その濃度が5mmol/lであることを示している。また、その時の溶媒が2−プロパノール−d8であることを示している。
また、図中1H―NMRスペクトルの右にNa/O値を示しているが、Na/Oは各PEGMEの酸素原子数と溶媒中のNa+イオン数の比率Na/Oである。
その結果を図1〜図3に示す。図中「Mn750 5mmol/l 2−プロパノール−d8」とは、表1のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEGME)の数平均分子量Mnが750の化合物を示し、その濃度が5mmol/lであることを示している。また、その時の溶媒が2−プロパノール−d8であることを示している。
また、図中1H―NMRスペクトルの右にNa/O値を示しているが、Na/Oは各PEGMEの酸素原子数と溶媒中のNa+イオン数の比率Na/Oである。
各PEGMEの酸素原子数と溶媒中のNa+イオン数の比率Na/Oを変えた場合、Na/Oが大きくなるにしたがってPEGMEのプロトンのシグナルが低磁場側にシフトした。例えば、図1に示す溶媒が2−プロパノール−d8(IPA−d8)の場合では、3.62ppmのピークが3.71ppmに低磁場シフトし、溶媒がアセトニトリルである図2の場合では、3.55ppmが3.62ppmに低磁場シフトした。
これは、Na+イオンの添加により、オキシエチレン部位のプロトンの化学的環境が変ったことを意味し、Na+イオンとオキシエチレン部位の双極子モーメントを持つ酸素にイオンー双極子相互作用が働き、Na+イオンがオキシエチレン部位に配位したことを示唆している。
これは、Na+イオンの添加により、オキシエチレン部位のプロトンの化学的環境が変ったことを意味し、Na+イオンとオキシエチレン部位の双極子モーメントを持つ酸素にイオンー双極子相互作用が働き、Na+イオンがオキシエチレン部位に配位したことを示唆している。
ここでNa/Oがゼロの時、すなわちNa+イオン濃度が0の時、PEGMEのオキシエチレン部位のプロトンシグナルをゼロとし、Na/Oが大きくなるにしたがって低磁場シフトしたシグナルとの差をシフト幅として、Na/Oとシフト幅の関係を求めた。その結果を図3に示した。図3から、溶媒中のNa+イオンが多くなるにしたがってシフト幅が一定値に近づき、オキシエチレン部位の酸素との相互作用で配位するNa+イオンが飽和していくものと思われる。
前記の「低磁場側にシフトする」を以下に説明する。まず、ケミカルシフトとは、例えば外部から磁場を分子に与え、更にある周波数の電磁波を与えた時に分子のH原子が共鳴する現象(核磁気共鳴)を利用して共鳴周波数を測定し、テトラメチルシラン(TMS、Si(CH3)4)を基準にしてNMR装置の磁場で規格化した場合の磁場の変位(単位:ppm)を言う。即ち図1や図2の横軸を示し、TMSのケミカルシフトを0として右から左へ行くほどTMSからの共鳴する周波数のずれ(=磁場のずれ)が大きくなり、「低磁場側にシフトした」と表現される。
金属イオンが存在すると、エーテルの酸素(双極子モーメントを持つ)と相互作用が働くことによって、エーテル分子中のH原子の核外電子状態(化学環境)が変るため、ケミカルシフトが起こり、この事例では低磁場側に大きくシフトしていく。
前記の「低磁場側にシフトする」を以下に説明する。まず、ケミカルシフトとは、例えば外部から磁場を分子に与え、更にある周波数の電磁波を与えた時に分子のH原子が共鳴する現象(核磁気共鳴)を利用して共鳴周波数を測定し、テトラメチルシラン(TMS、Si(CH3)4)を基準にしてNMR装置の磁場で規格化した場合の磁場の変位(単位:ppm)を言う。即ち図1や図2の横軸を示し、TMSのケミカルシフトを0として右から左へ行くほどTMSからの共鳴する周波数のずれ(=磁場のずれ)が大きくなり、「低磁場側にシフトした」と表現される。
金属イオンが存在すると、エーテルの酸素(双極子モーメントを持つ)と相互作用が働くことによって、エーテル分子中のH原子の核外電子状態(化学環境)が変るため、ケミカルシフトが起こり、この事例では低磁場側に大きくシフトしていく。
したがって、シフト幅が大きければオキシエチレン部位の酸素と溶媒中の陽イオンとの相互作用は強く、より高い頻度でNa+イオンが配位していると考えられる。また、Na/O比が0.5でほぼ平衡に達していることから、Na+イオンとポリエーテル鎖の酸素との比が1:2で飽和するものと推定できる。
更に、図3から、同じ溶媒中ではオキシエチレン部位の数nの大きい方がシフト幅が大きいと言える。しかし、溶媒がアセトニトリル(CD3CN)の場合のように、オキシエチレン部位の数nが16(分子量750)とnが45(分子量2000)を比較すると、シフト幅の大きさはほぼ同じであった。このためポリエーテル鎖の長さは、nが16程度まではシフト幅が大きくなるが、それ以上ではシフト幅はほぼ変らずnに影響されなくなる。従って、nが45、ポリエーテルの分子量で2000よりも大きい場合では、かえってシフト幅が減少する傾向にあることから、これ以上の長いポリエーテル鎖を主鎖に固定化する必要はないと思われる。また、nが2以下ではNMRのシフト幅が更に小さくなることは容易に推定がつき、陽イオンとの相互作用は大幅に低下するものと思われる。
更に、図3から、同じ溶媒中ではオキシエチレン部位の数nの大きい方がシフト幅が大きいと言える。しかし、溶媒がアセトニトリル(CD3CN)の場合のように、オキシエチレン部位の数nが16(分子量750)とnが45(分子量2000)を比較すると、シフト幅の大きさはほぼ同じであった。このためポリエーテル鎖の長さは、nが16程度まではシフト幅が大きくなるが、それ以上ではシフト幅はほぼ変らずnに影響されなくなる。従って、nが45、ポリエーテルの分子量で2000よりも大きい場合では、かえってシフト幅が減少する傾向にあることから、これ以上の長いポリエーテル鎖を主鎖に固定化する必要はないと思われる。また、nが2以下ではNMRのシフト幅が更に小さくなることは容易に推定がつき、陽イオンとの相互作用は大幅に低下するものと思われる。
また、2−プロパノール−d8(IPA−d8)よりもアセトニトリル(CD3CN)ではシフト幅が小さく、直鎖ポリエーテルとNa+イオンとの相互作用が強くないことが推定できる。更に重水(D2O)では低磁場シフトはほとんど見られず、直鎖ポリエーテルと重水中のNa+イオンとの相互作用はあまり見られない。一般的に溶媒とイオンとの相互作用により、溶媒中のイオンは溶媒和されている。この溶媒和の強さは、溶媒の比誘電率ε及びイオンの結晶半径rからBornの式で溶媒和エネルギーΔGとして求められる。
例えば、Na+イオンの結晶半径は0.95x10−10mであり、各溶媒の比誘電率は、2−プロパノール(18)、アセトニトリル(37)、水(80)であるから、溶媒和エネルギーは、2−プロパノール(−690kJ/mol)、アセトニトリル(−711kJ/mol)、水(−722kJ/mol)となる。
NMRのシフト幅は、溶媒和エネルギーが小さい順に大きい。即ち、NMRのシフト幅の大きさはIPA>アセトニトリル>水の順となり、陽イオンが強く溶媒和されるほど、ポリエーテルとの相互作用が阻害される傾向にある。従って、比誘電率の小さい溶媒に対して、ポリエーテルのイオン除去が有効であり、水によってポリエーテルからイオンを脱離できることを示唆している。
表2に示すオキシエチレン部位のnが3で、両末端がメチル(CH3)であるトリエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDM)CH3(OCH2CH2)3OCH3を用いて、Ca2+イオンとの相互作用を調べた。
2−プロパノール−d8にCa(ClO4)2を添加して2−プロパノール−d8(IPA−d8)中のCa2+濃度を変えた時の1H−NMRスペクトルを測定した。
表2に示すオキシエチレン部位のnが3で、両末端がメチル(CH3)であるトリエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDM)CH3(OCH2CH2)3OCH3を用いて、Ca2+イオンとの相互作用を調べた。
2−プロパノール−d8にCa(ClO4)2を添加して2−プロパノール−d8(IPA−d8)中のCa2+濃度を変えた時の1H−NMRスペクトルを測定した。
Ca(ClO4)2を添加しない時のTEGDMのオキシエチレン部位のプロトンシグナルをゼロとして、Ca/Oが大きくなるにしたがって低磁場シフトしたシグナルとの差をシフト幅とし、Ca/Oの比とシフト幅の関係を求めた。その結果を図4に示す。
Na+と比較してCa2+は、シフト幅が非常に大きいことが分かる。これは、同じNa/Oに対してオキシエチレン部位の酸素原子とCa2+イオンとのイオン−双極子相互作用が1価のイオンより強く起こるため、オキシエチレン部位のプロトン(H)の化学的環境が大きく変り、NMRのケミカルシフトが大きく現れたためである。
溶媒のCa2+イオンの濃度が高い程、シフト幅は大きくなるが、シフト幅はNaの場合と同様にCa/O値が0.5以上でほぼ平衡値となった。オキシエチレン部位の酸素との相互作用で配位するCa2+イオンは、Na+イオンと同様の配位数で配位している可能性を示唆している。
Na+と比較してCa2+は、シフト幅が非常に大きいことが分かる。これは、同じNa/Oに対してオキシエチレン部位の酸素原子とCa2+イオンとのイオン−双極子相互作用が1価のイオンより強く起こるため、オキシエチレン部位のプロトン(H)の化学的環境が大きく変り、NMRのケミカルシフトが大きく現れたためである。
溶媒のCa2+イオンの濃度が高い程、シフト幅は大きくなるが、シフト幅はNaの場合と同様にCa/O値が0.5以上でほぼ平衡値となった。オキシエチレン部位の酸素との相互作用で配位するCa2+イオンは、Na+イオンと同様の配位数で配位している可能性を示唆している。
以下、添付の図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
実施例1
ポリエチレン(繊維径20〜30μm)の熱融着不織布(目付け60〜70g/m2)20cm×30cmの大きさ3枚を窒素雰囲気でγ線160kGy照射した。次に、CMS100%に浸漬して、基材重量の200%分含浸させ、含浸気相グラフト重合を行った。50℃、3時間反応させた後、不織布を取り出し、トルエン、アセトンで順に洗浄し、真空乾燥後、重量増加率としてグラフト率を測定した。この時のグラフト率は108%であった(不織布A)。
500mlナスフラスコに表1のn=3であるトリエチレングリコールモノメチルエーテルを1.76g(10.2mmol)とり、これに蒸留して脱水したテトラヒドロフラン(THF)150ml、NaH0.5gを加え、アルゴン(Ar)置換して15分間撹拌した。これにCMSをグラフトした不織布Aを3g(CMS:10.2mmol)加えAr置換して24時間還流(60〜70℃)した。反応後の不織布をTHF、純水で洗浄した(不織布B)。
実施例1
ポリエチレン(繊維径20〜30μm)の熱融着不織布(目付け60〜70g/m2)20cm×30cmの大きさ3枚を窒素雰囲気でγ線160kGy照射した。次に、CMS100%に浸漬して、基材重量の200%分含浸させ、含浸気相グラフト重合を行った。50℃、3時間反応させた後、不織布を取り出し、トルエン、アセトンで順に洗浄し、真空乾燥後、重量増加率としてグラフト率を測定した。この時のグラフト率は108%であった(不織布A)。
500mlナスフラスコに表1のn=3であるトリエチレングリコールモノメチルエーテルを1.76g(10.2mmol)とり、これに蒸留して脱水したテトラヒドロフラン(THF)150ml、NaH0.5gを加え、アルゴン(Ar)置換して15分間撹拌した。これにCMSをグラフトした不織布Aを3g(CMS:10.2mmol)加えAr置換して24時間還流(60〜70℃)した。反応後の不織布をTHF、純水で洗浄した(不織布B)。
反応後得られた不織布Bを、イオン交換水→0.5mol/L塩酸→イオン交換水の順番で洗浄し、イオン交換水が酸性を示さなくなるまで洗浄した。図5はCMSをグラフト重合したポリエチレン不織布A(上部スペクトル)とCMSにトリエチレングリコールモノメチルエーテルを導入した不織布B(下部スペクトル)を示す。本不織布(不織布B)は、図5に示すように赤外線吸収スペクトルで1510cm−1に芳香環の吸収が、1100cm−1付近にエーテルの吸収があり、CMSにトリエチレングリコールモノメチルエーテルが共有結合で導入されたことが確認された(図5下部のスペクトル)。
実施例2
実施例1で得られたn=3のポリエーテル不織布(不織布B)と同様の反応条件で、表1に示したn=16のポリエーテル不織布(不織布C)を作製した。即ち、ナスフラスコに表1のn=16であるポリエチレングリコールモノメチルエーテルをとり、これに蒸留して脱水したテトラヒドロフラン(THF)にNaHを加え、アルゴン(Ar)置換して15分間撹拌した。これにCMSをグラフトした不織布Aを加えAr置換して24時間還流(60〜70℃)した。反応後の不織布をTHF、純水で洗浄した(不織布C)。更に得られた不織布Cを、イオン交換水→0.5mol/L塩酸→イオン交換水の順番で洗浄し、イオン交換水が酸性を示さなくなるまで洗浄した。
実施例1で得られたn=3のポリエーテル不織布(不織布B)と同様の反応条件で、表1に示したn=16のポリエーテル不織布(不織布C)を作製した。即ち、ナスフラスコに表1のn=16であるポリエチレングリコールモノメチルエーテルをとり、これに蒸留して脱水したテトラヒドロフラン(THF)にNaHを加え、アルゴン(Ar)置換して15分間撹拌した。これにCMSをグラフトした不織布Aを加えAr置換して24時間還流(60〜70℃)した。反応後の不織布をTHF、純水で洗浄した(不織布C)。更に得られた不織布Cを、イオン交換水→0.5mol/L塩酸→イオン交換水の順番で洗浄し、イオン交換水が酸性を示さなくなるまで洗浄した。
これらのポリエーテル不織布(不織布B及び不織布C)をそれぞれ直径6mmのミニカラムに、高さ70mm(不織布の重量0.55〜0.60g、約1.98cm3)充填し、KClO4を溶解した2−プロパノール溶液を1ml/min(SV=30h−1)でそれぞれのミニカラムに通液した。
その結果を図6に示す。図中、図6の縦軸は不織布B又は不織布Cの通液試験におけるそれぞれの原液初期濃度(C0)とそれぞれの処理液の濃度(C)の相対濃度(C/C0)であり、横軸はミニカラムに充填したポリエーテル不織布の空隙体積(Bed Volume)に対する処理溶媒量の通液量(Bed Volumeの何倍量か)である。n=3の場合、ミニカラムに充填したポリエーテル不織布Bの空隙体積に対する処理溶媒量の比で20倍量の通液で原液濃度を越えるK+イオンのリークがあった。しかし、n=16の不織布Cの場合は約150倍量の通液でもほとんどK+イオンのリークが認められなかった。従って、nが2以下ではポリエーテル不織布の脱塩能力は期待できないと判断した。
その結果を図6に示す。図中、図6の縦軸は不織布B又は不織布Cの通液試験におけるそれぞれの原液初期濃度(C0)とそれぞれの処理液の濃度(C)の相対濃度(C/C0)であり、横軸はミニカラムに充填したポリエーテル不織布の空隙体積(Bed Volume)に対する処理溶媒量の通液量(Bed Volumeの何倍量か)である。n=3の場合、ミニカラムに充填したポリエーテル不織布Bの空隙体積に対する処理溶媒量の比で20倍量の通液で原液濃度を越えるK+イオンのリークがあった。しかし、n=16の不織布Cの場合は約150倍量の通液でもほとんどK+イオンのリークが認められなかった。従って、nが2以下ではポリエーテル不織布の脱塩能力は期待できないと判断した。
実施例3
実施例2と同様に、n=16のポリエーテル不織布(不織布C)を直径6mmのミニカラムに、高さ70mm(不織布の重量0.56g、1.98cm3)充填し、KClO4を溶解した2−プロパノール溶液を1ml/min(SV=3Oh−1)でミニカラムに通液し、再生処理後に再度通液した。
その結果を図7に示す。KClO4を溶解した2−プロパノール1回目の通液テストでは、通液量がBed Volumeに対して350倍量までK+イオンの処理液へのリークがなく、それ以降は徐々にK+イオンのリークが増加し、1300倍量で相対濃度C/C0で0.45まで上昇した。1回目のKClO4を溶解した2−プロパノール通液テスト後、KClO4を溶解しない2−プロパノールを2倍量通液し、次に2−プロパノールに替えて純水をミニカラムに通水した。ミニカラム出口水のK+イオンを測定したところ、高濃度のK+イオンが検出され、水によるK+イオンの総溶出量は約3.2mgであった。従って、ポリエーテル不織布の捕捉したK+イオンが、水によってポリエーテル不織布から脱離(水による再生)したことが確認された。
実施例2と同様に、n=16のポリエーテル不織布(不織布C)を直径6mmのミニカラムに、高さ70mm(不織布の重量0.56g、1.98cm3)充填し、KClO4を溶解した2−プロパノール溶液を1ml/min(SV=3Oh−1)でミニカラムに通液し、再生処理後に再度通液した。
その結果を図7に示す。KClO4を溶解した2−プロパノール1回目の通液テストでは、通液量がBed Volumeに対して350倍量までK+イオンの処理液へのリークがなく、それ以降は徐々にK+イオンのリークが増加し、1300倍量で相対濃度C/C0で0.45まで上昇した。1回目のKClO4を溶解した2−プロパノール通液テスト後、KClO4を溶解しない2−プロパノールを2倍量通液し、次に2−プロパノールに替えて純水をミニカラムに通水した。ミニカラム出口水のK+イオンを測定したところ、高濃度のK+イオンが検出され、水によるK+イオンの総溶出量は約3.2mgであった。従って、ポリエーテル不織布の捕捉したK+イオンが、水によってポリエーテル不織布から脱離(水による再生)したことが確認された。
更に、この再生されたポリエーテル不織布(不織布C)を2−プロパノールで洗浄した後、KClO4を溶解した2−プロパノールの2回目の通液テストを行った。その結果を図7に示す。1回目の破過曲線と2回目の破過曲線では、やや2回目の方のK+リークが大きいが1回目と同様の傾向を示しており、2回目の通液テストにおいてもK+イオンがポリエーテル不織布で充分に捕捉できている。
したがって、ポリエーテル不織布は有機溶媒中のK+イオンを捕捉し、有機溶媒からK+イオンを除去することが可能であり、更にK+イオンを多量に捕捉して性能が低下したポリエーテル不織布を水で再生できることが検証され、繰り返し使用可能であることが明らかとなった。
したがって、ポリエーテル不織布は有機溶媒中のK+イオンを捕捉し、有機溶媒からK+イオンを除去することが可能であり、更にK+イオンを多量に捕捉して性能が低下したポリエーテル不織布を水で再生できることが検証され、繰り返し使用可能であることが明らかとなった。
実施例4
実施例3と同様にn=16のポリエーテル不織布(不織布C)を直径6mmのミニカラムに、高さ70mm(不織布の重量0.56g、1.98cm3)充填し、KClO4を溶解した2−プロパノール溶液を1ml/min(SV=30h−1)でミニカラムに通液した。
その結果を図8に示す。通液量がBed Volumeに対して約50倍量までミニカラム処理液にはK+イオンのリークはほとんどなかった。更に2−プロパノール溶液を通液した後、約25倍量の純水をミニカラムに通水したところ、高濃度のK+イオンが溶出した。
KClO4を溶解した2−プロパノール溶液を通液することによるポリエーテル不織布のK+イオン総捕捉量は約26.6μgであった。また、純水によるポリエーテル不織布からのK+イオン総溶出量は約29.3μgであった。総捕捉量と総溶出量は良く一致しており、純水でほぼ完全にポリエーテル不織布を再生できることが分かった。
実施例3と同様にn=16のポリエーテル不織布(不織布C)を直径6mmのミニカラムに、高さ70mm(不織布の重量0.56g、1.98cm3)充填し、KClO4を溶解した2−プロパノール溶液を1ml/min(SV=30h−1)でミニカラムに通液した。
その結果を図8に示す。通液量がBed Volumeに対して約50倍量までミニカラム処理液にはK+イオンのリークはほとんどなかった。更に2−プロパノール溶液を通液した後、約25倍量の純水をミニカラムに通水したところ、高濃度のK+イオンが溶出した。
KClO4を溶解した2−プロパノール溶液を通液することによるポリエーテル不織布のK+イオン総捕捉量は約26.6μgであった。また、純水によるポリエーテル不織布からのK+イオン総溶出量は約29.3μgであった。総捕捉量と総溶出量は良く一致しており、純水でほぼ完全にポリエーテル不織布を再生できることが分かった。
実施例5
実施例3と同様にn=16のポリエーテル不織布(不織布C)を直径6mmのミニカラムに、高さ70mm(不織布の重量0.56g、1.98cm3)充填し、Ca(ClO4)2を溶解した2−プロパノール溶液を1ml/min(SV=30h−1)でミニカラムに通液した。その結果を図9に示す。
2価であるCa2+は、1価のイオンよりも良く捕捉される傾向にあり、通液量がBed Volumeに対して約550倍量までほとんどCa2+イオンのリークはなかった。実施例4と同様に、通液テストを行った後、純水をミニカラムに通水し、ミニカラムからの溶出水のCa2+を測定した。その結果を図9に示す。純水を通水することで、容易にCa2+も再生することができた。
捕捉量はポリエーテル不織布が2−プロパノール溶液から除去した量で26.6μg、溶出量は水で再生されてポリエーテル不織布から溶離した量29.3μgでほぼ一致している。
実施例3と同様にn=16のポリエーテル不織布(不織布C)を直径6mmのミニカラムに、高さ70mm(不織布の重量0.56g、1.98cm3)充填し、Ca(ClO4)2を溶解した2−プロパノール溶液を1ml/min(SV=30h−1)でミニカラムに通液した。その結果を図9に示す。
2価であるCa2+は、1価のイオンよりも良く捕捉される傾向にあり、通液量がBed Volumeに対して約550倍量までほとんどCa2+イオンのリークはなかった。実施例4と同様に、通液テストを行った後、純水をミニカラムに通水し、ミニカラムからの溶出水のCa2+を測定した。その結果を図9に示す。純水を通水することで、容易にCa2+も再生することができた。
捕捉量はポリエーテル不織布が2−プロパノール溶液から除去した量で26.6μg、溶出量は水で再生されてポリエーテル不織布から溶離した量29.3μgでほぼ一致している。
実施例6
1価のイオンK+と2価のイオンであるCa2+が混在する2成分系での各イオンの挙動について調べた。実施例3と同様にn=16のポリエーテル不織布(不織布C)を直径6mmのミニカラムに、高さ70mm(不織布の重量0.56g、1.98cm3)充填し、KClO4及びCa(ClO4)2を溶解した2−プロパノール溶液を1ml/min(SV=30h−1)でミニカラムに通液した。その結果を図10に示す。
通液量がBed Volumeで約150倍量までK+イオンとCa2+イオンの両者とも良く除去されており処理液へのリークは見られないが、150倍量以降ではK+イオンが徐々にリークしてきた。しかし、Ca2+イオンは約280倍量までほとんどリークは見られなかった。従って、K+イオンよりもCa2+イオンの方が捕捉しやすいと言える。このCa2+イオンの方が1価イオンより捕捉しやすいと言う傾向は、図4のNMRケミカルシフト幅の大きさからも推定できる(1価イオンのK+よりも2価イオンのCa2+方のシフト幅が大きい)。
1価のイオンK+と2価のイオンであるCa2+が混在する2成分系での各イオンの挙動について調べた。実施例3と同様にn=16のポリエーテル不織布(不織布C)を直径6mmのミニカラムに、高さ70mm(不織布の重量0.56g、1.98cm3)充填し、KClO4及びCa(ClO4)2を溶解した2−プロパノール溶液を1ml/min(SV=30h−1)でミニカラムに通液した。その結果を図10に示す。
通液量がBed Volumeで約150倍量までK+イオンとCa2+イオンの両者とも良く除去されており処理液へのリークは見られないが、150倍量以降ではK+イオンが徐々にリークしてきた。しかし、Ca2+イオンは約280倍量までほとんどリークは見られなかった。従って、K+イオンよりもCa2+イオンの方が捕捉しやすいと言える。このCa2+イオンの方が1価イオンより捕捉しやすいと言う傾向は、図4のNMRケミカルシフト幅の大きさからも推定できる(1価イオンのK+よりも2価イオンのCa2+方のシフト幅が大きい)。
実施例7
実施例3と同様にn=16のポリエーテル不織布(不織布C)を直径6mmのミニカラムに、高さ70mm(不織布の重量0.56g、1.98cm3)充填し、KClを溶解した2−プロパノール溶液を通液した。その結果を図11に示す。
K+イオンよりもCl―イオンのリークが先に起きているが、Cl―イオンもポリエーテル不織布で除去されている。従って、陽イオンがポリエーテル不織布に捕捉され、その陽イオンの近傍に陰イオンが固定されて陽イオンと陰イオンの両方が同時に除去されていることが分かった。
実施例3と同様にn=16のポリエーテル不織布(不織布C)を直径6mmのミニカラムに、高さ70mm(不織布の重量0.56g、1.98cm3)充填し、KClを溶解した2−プロパノール溶液を通液した。その結果を図11に示す。
K+イオンよりもCl―イオンのリークが先に起きているが、Cl―イオンもポリエーテル不織布で除去されている。従って、陽イオンがポリエーテル不織布に捕捉され、その陽イオンの近傍に陰イオンが固定されて陽イオンと陰イオンの両方が同時に除去されていることが分かった。
Claims (6)
- 有機溶媒中の金属イオンを除去するポリオレフィンを基材とする有機高分子材料であって、該有機高分子材料が、前記ポリオレフィン基材の主鎖に直鎖ポリエーテルを含むグラフト側鎖を結合したものであることを特徴とする有機高分子材料。
- 前記グラフト側鎖が、放射線グラフト重合を用いて前記ポリオレフィン基材の主鎖に導入されることを特徴とする請求項1に記載の有機高分子材料。
- 前記ポリオレフィン基材の主鎖に導入されたグラフト側鎖は、クロロメチルスチレンに直鎖ポリエーテルが共有結合したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子材料。
- 前記ポリオレフィン基材は、形状が不織布、短繊維、ネット又は粒子のいずれかであることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の有機高分子材料。
- 前記直鎖ポリエーテルは、分子量が160〜2000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機高分子材料。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機高分子材料に、金属イオンを含む有機溶媒を通液して、該有機溶媒中の金属イオンを前記有機高分子材料に捕捉して除去し、次いで、該有機高分子材料に水を通液することによって、該有機高分子材料を再生することを特徴とする金属イオンを含む有機溶媒の処理方法。
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2007
- 2007-10-22 JP JP2007273463A patent/JP2009102473A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2015214521A (ja) * | 2014-05-13 | 2015-12-03 | 三菱レイヨン株式会社 | 化合物の精製方法、高分子化合物の製造方法、及びフォトリソグラフィー材料 |
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