以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明の階段構造を、鉄骨ラーメン構造を有する二階建てユニット式建物において具体化している。まず、ユニット式建物について、図1、図2を参照しつつ説明する。図1は建物10の概略図、図2は建物ユニット20の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、住宅等の建物10は、基礎11の上に設けられた一階部分12と、一階部分12の上に設けられた二階部分13とを有している。一階部分12が下階部に相当し、二階部分13が上階部に相当し、これら一階部分12と二階部分13とは上下に隣り合っている。一階部分12においては床面が一階床部12aにより形成され、二階部分13においては床面が二階床部13aにより形成されている。
建物10は、一階部分12と二階部分13とに跨って設けられた吹き抜け空間15と、この吹き抜け空間15に設けられた階段16とを有している。階段16は、複数の踏み板17と、複数の蹴込み板18とを有しており、一階部分12と二階部分13との行き来を可能にしている。複数の踏み板17には、二階床部13aに対して固定された上框17aが含まれている。上框17aは最上段の踏み板17であり、上框17aの上面は、二階床部13aの床面と同一平面を形成している。なお、二階部分13においては、二階床部13aが設置されていない非設置部分に吹き抜け空間15が配置されている。
建物10は、複数の建物ユニット20が組み合わされることで構築されており、一階部分12及び二階部分13は、いずれも複数の建物ユニット20を有している。各建物ユニット20は、全体として直方体状に形成されている。
図2に示すように、建物ユニット20は、四隅に配置された柱21と、柱21の上端部(上仕口)に連結された天井大梁22と、柱21の下端部(下仕口)に連結された床大梁23とを有しており、これら柱21、天井大梁22、床大梁23により直方体状の骨格(ユニット躯体)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、溝部開放側を互いに向き合わせるようにユニット内側に向けて配置されている。
建物ユニット20において長辺部(桁面)に沿って延び且つ相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく長辺部に沿って延び且つ相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25及び床小梁26は、それぞれ同一の間隔で且つ短辺側(妻側)の天井大梁22及び床大梁23と平行に延びている。天井小梁25及び床小梁26はそれぞれリップ溝形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材28が支持され、床小梁26によって床面材29が支持されている。
次に、階段16について図1、図3、図4を参照しつつ説明する。図3は階段16の構成を示す図、図4は階段16の縦断面図である。なお、図3においては、(a)に階段16の平面図を示し、(b)に階段16の分解平面図を示す。図4においては、(a)に図3(a)のA−A線断面図を示し、(b)に図3(a)のB−B線断面図を示す。
図3(a)に示すように、階段16は、昇降方向が真っ直ぐに延びている直階段部16aと、昇降方向が曲がっている廻り階段部16bとを有しており、平面視でJ字状の廻り階段とされている。この場合、直階段部16aは、一階床部12aから昇降方向に沿って上方に向けて延び、廻り階段部16bは、二階床部13aから昇降方向に沿って下方に向けて延びており、一階床部12aと二階床部13aとの中間位置で直階段部16aと廻り階段部16bとが接続されている。階段16においては、最下段の踏み板17bが直階段部16aに含まれており、上框17aが廻り階段部16bに含まれている。
建物10は、階段16の昇降方向に沿って延び壁部31,32を有している。壁部31、32は、一階床部12aから上方に向けて延びており、外壁部や間仕切壁部を構成している。壁部31,32は、階段16を挟んで互いに対向しており、階段16の各段は、これら壁部31,32に掛け渡された状態になっている。壁部31,32については、廻り階段部16bの外周側に外側壁部31が配置されており、廻り階段部16bの内周側に内側壁部32が配置されている。
図1、図3(b)に示すように、階段16は複数の階段ユニット35を有している。これら階段ユニット35は、いずれも踏み板17及び蹴込み板18を複数ずつ有しており、階段16の昇降方向に沿って並べられている。複数の階段ユニット35には、最下段の踏み板17bを有する第1階段ユニット35aと、昇降方向において第1階段ユニット35aの上方位置に設けられた第2階段ユニット35bとが含まれており、これら階段ユニット35a,35bは昇降方向において隣り合っている。なお、第1階段ユニット35aが下側階段ユニットに相当し、第2階段ユニット35bが上側階段ユニットに相当する。
階段16は、複数の階段ユニット35に加えて、上框17aを含んで構成された上框ユニット37を有している。上框ユニット37は、上框17aに加えて、その上框17aから下方に向けて延びた蹴込み板18aを有しており、階段16の最上段を形成している。複数の階段ユニット35のうち、最上位のものが第3階段ユニット35cとされており、この第3階段ユニット35cは、昇降方向において上框ユニット37に隣り合っている。なお、上框ユニット37が上框部材に相当する。
階段16においては、第1階段ユニット35a及び第2階段ユニット35bが直階段部16aに含まれており、第3階段ユニット35c及び上框ユニット37が廻り階段部16bに含まれている。階段16において、複数の蹴込み板18には、最下段の踏み板17bから下方に向けて延びた蹴込み板18bが含まれているが、この蹴込み板18bは、最下段の踏み板17bとは異なり、第1階段ユニット35aに含まれておらず、第1階段ユニット35aに取り付けられたものである。
階段16は、複数の建物ユニット20に掛け渡された状態で設けられている。この場合、第2階段ユニット35bが、一階部分12において横並びに隣り合う建物ユニット20の境界部(ドッキングラインDL)を左右に跨ぐ位置に配置され、第3階段ユニット35cが、上下に隣り合う各階の建物ユニット20の境界部(スタッキングラインSL)を上下に跨ぐ位置に配置されている。第2階段ユニット35bは、1つの踏み板17がドッキングラインDLに重なる位置に配置され、第3階段ユニット35cは、1つの蹴込み板18がスタッキングラインSLに重なる位置に配置されている。
図4(a),(b)に示すように、階段ユニット35は、踏み板17及び蹴込み板18に加えて、踏み板17を支持する側桁等の側板部41,42を有している。側板部41,42は、踏み板17を挟んで一対設けられており、この一対の側板部41,42には、踏み板17の端部がそれぞれ固定されている。側板部41,42は、ささら桁のように階段状に形成されていることで、踏み板17が載せられた載置面を複数有している。踏み板17は、側板部41,42の上端部にも載せられており、この場合、側板部41,42の上端面が載置面とされている。
側板部41,42は、壁部31,32の壁面に重ねられた状態でその壁部31,32に対して固定されている。ここで、壁部31,32は、ユニット躯体等の建物躯体に対して固定された壁下地と、壁下地に取り付けられた一対の壁面材と、これら壁面材の間において壁下地に取り付けられた階段下地とをそれぞれ有している。壁下地は、上下一対のランナと、これらランナに掛け渡された複数のスタッドとを有しており、階段下地は、隣り合うスタッドに掛け渡された状態でこれらスタッドに固定されている。階段下地は、合板や長尺状の木材により形成されたバッキング材であり、一対の壁面材のうち階段16側の壁面材に重ねた状態で設けられている。この場合、側板部41,42は、ボルト等が側板部41,42及び壁面材を貫通して階段下地に打ち込まれていることで、壁部31,32に対して固定されている。
第1階段ユニット35a及び第2階段ユニット35bは、側板部41,42のうち、直階段部16aに配置された直側板部41を有しており、第3階段ユニット35cは、廻り階段部16bに配置された廻り側板部42を有している。廻り側板部42は、廻り階段部16bの奥行き方向(踏み板17の奥行き方向)に延びた形状になっている一方で、直側板部41は、直階段部16aの昇降方向に沿って延びた形状になっている。
直側板部41は、上端部から下方に向けて延びた側端部41aと、奥行き方向に延びる下端部41bと、昇降方向に沿って延びた下側傾斜端部41cとを有している。側端部41aは、直側板部41が有する一対の側端部のうち、階段奥側に配置された方の側端部であり、下端部41bは、階段手前側に配置された方の側端部から階段奥側に向けて延びている。下側傾斜端部41cは、下端部41bの階段奥側の端部から側端部41aの下端に向けて斜め上方に延びている。
壁部31,32には、壁厚み方向において階段下側に向けて突出した突出部材51,52が取り付けられている。突出部材51,52は、第1階段ユニット35aや第2階段ユニット35bを壁部31,32に固定する際に、これら階段ユニット35a,35bの各直側板部41が仮置きされる仮置き部になっている。このため、階段ユニット35a,35bが壁部31,32に固定された後には、直側板部41が突出部材51、52の上に載っていてもよく、直側板部41が突出部材51,52から上方に離間した位置に配置されていてもよい。本実施形態では、直側板部41が突出部材51,52の上に載っているものとして説明を行う。
突出部材51,52は、木材等により形成された直方体状の部材であり、一側面が壁部31,32の壁面に重ねられた状態で、ボルト等が突出部材51,52を貫通して階段下地に打ち込まれていることで、壁部31,32に対して固定されている。つまり、突出部材51,52は、直側板部41と同様に壁部31,32の階段下地に固定されている。壁厚み方向において、突出部材51,52の厚み寸法(壁部31,32からの突出部材51,52の突出寸法)は、直側板部41の厚み寸法(壁部31,32からの直側板部41の突出寸法)より小さくされている。これにより、突出部材51,52は、直側板部41より階段下側に突出しないようになっている。突出部材51,52は、水平方向に延びる上面を有しており、この上面に直側板部41が載せられている。
なお、図4(a),(b)においては、側板部41,42及び突出部材51,52について、ボルト等による固定位置を黒丸にて図示している。
突出部材51,52のうち上側突出部材51には、直側板部41の上部が載せられており、上側突出部材51より低い位置に配置された下側突出部材52には、直側板部41の下部が載せられている。第2階段ユニット35bに対しては、上側突出部材51及び下側突出部材52の両方が設けられており、第2階段ユニット35bは、これら突出部材51,52の両方に載せられている。一方、第1階段ユニット35aに対しては、下側突出部材52が設けられておらず、第1階段ユニット35aは、上側突出部材51に載せられている。なお、第1階段ユニット35aが載せられた上側突出部材51は、第2階段ユニット35bが載せられた下側突出部材52より低い位置に配置されている。また、突出部材51,52は、直階段部16aの昇降方向に沿って並べられている。
直側板部41は、上側突出部材51に上方から引っ掛かっている引っ掛け部53を有している。引っ掛け部53は、直側板部41の下側傾斜端部41cが階段手前側(昇降方向に直交する方向)に向けて凹むことで形成されており、この凹みを凹部54と称した場合、凹部54は略三角形状になっている。この場合、凹部54の内周面のうち天井面が、引っ掛け部53の下面53aになっており、この下面53aは、直側板部41の側端部41aから階段手前側に向けて水平方向に延びている。直側板部41においては、凹部54の上方部分が引っ掛け部53になっており、下面53aが上側突出部材51に引っ掛けられる引っ掛け面に相当する。
階段ユニット35a,35bにおいては、それぞれの最上位の踏み板17と上から二番目の踏み板17との間の高さ位置に引っ掛け部53の下面53aが配置されている。この場合、凹部54の内周面のうち側面は、引っ掛け部53の下面53aから下方に向けて鉛直方向に延びていることで、上から二番目の踏み板17を上下に跨いだ状態になっている。この側面の下端は、直側板部41の下側傾斜端部41cの上端に接続されており、この接続部分は、上から二段目の踏み板17と三段目の踏み板17の間の高さ位置に配置されている。なお、凹部54は、下側傾斜端部41cより高い位置に配置されていることになる。
突出部材51,52は、直階段部16aの昇降方向に直交する方向において、直側板部41の下側傾斜端部41cよりも階段奥側に突出しない状態で設けられている。この場合、下側傾斜端部41cの端面の延長線(図4(a)の仮想線)を想定すると、この延長線よりも高い位置(階段手前側)に突出部材51,52が配置されていることになる。これにより、上側突出部材51は、凹部54内に収納されたような状態になっている。
第2階段ユニット35bの直側板部41は、第1階段ユニット35aの直側板部41から上方及び階段奥側の両方に離間した位置に配置されている。このため、これら階段ユニット35a,35bの各直側板部41のうち一方を設置した後、他方をその引っ掛け部53を上側突出部材51に引っ掛けた状態で階段奥行き方向に移動させても、直側板部41同士が干渉してしまうということを回避できる。なお、第2階段ユニット35bの直側板部41の下端部は、第1階段ユニット35aの最上位の踏み板17の上面と同じ高さ位置又はそれより高い位置に配置されている。
第2階段ユニット35bにおいては、直側板部41の下端部41bが下側突出部材52の上に載せられている。その一方で、第1階段ユニット35aにおいては、直側板部41の下端部41bが一階床部12aの上に載せられている。なお、第1階段ユニット35aの直側板部41にとっては、上側突出部材51及び一階床部12aが仮置き部になっており、この直側板部41は、一階床部12aから上方に離間した位置に配置されていてもよいが、本実施形態では、直側板部41が一階床部12aの上に載っているものとして説明を行う。
階段16の下方には、階段下空間57が形成されている。階段16が吹き抜け空間15に設置されているため、階段下空間57は、吹き抜け空間15に含まれていることになる。階段下空間57には、倉庫やトイレ等の非居室空間が設けられている。非居住空間は、天井面材を含んで構成された天井部を有しており、壁部31,32には、天井面材を支持する野縁58が取り付けられている。野縁58は、木材等により形成された長尺部材であり、壁幅方向において壁部31,32の壁面に沿って延びた状態で、壁部31,32に固定されている。
野縁58は、天井面材を支持する機能に加えて、第3階段ユニット35cを壁部31,32に固定する際に、この第3階段ユニット35cの廻り側板部42が仮置きされる仮置き部としての機能を有している。ここで、第1階段ユニット35a及び第3階段ユニット35cの各直側板部41についてと同じように、第3階段ユニット35cの廻り側板部42は、野縁58の上に載っていてもよく、野縁58から上方に離間していてもよい。本実施形態では、廻り側板部42が野縁58の上に載っているものとして説明を行う。
なお、壁部31,32からの野縁58の突出寸法は、廻り側板部42の厚み寸法以下とされており、壁厚み方向において野縁58が廻り側板部42より突出しないようになっている。
階段16においては、蹴込み板18が上下の踏み板17に掛け渡された状態で設けられている。最上段と最下段との間の中間段においては、上下の踏み板17のうち、上の踏み板17の下面には溝部59が形成されており、蹴込み板18は、その上端部が溝部59に嵌め込まれた状態で下方に向けて延びている。この場合、蹴込み板18の上端部は溝部59の内周面に接着剤等により接合されている。蹴込み板18は、下の踏み板17の階段奥側に配置されており、蹴込み板18においては、その下端部が下の踏み板17より下方に突出しない状態で、その板面が下の踏み板17の奥側端面に重ねられている。この場合、ビス等が階段奥側から蹴込み板18を貫通して踏み板17の奥側端面に打ち込まれていることで、蹴込み板18の下端部が下の踏み板17に固定されている。
これに対して、最上段及び最下段において、上框17a及び踏み板17bに対する蹴込み板18a,18bの上端部の固定構成は、他の段(中間段)における踏み板17に対する蹴込み板18の上端部の固定構成と同じになっている一方で、蹴込み板18a,18bの下端部の固定構成が中間段とは異なっている。
ここでは、最上段及び最下段における蹴込み板18a,18bの取り付け構造について、図5、図6を参照しつつ説明する。図5は階段16の最下段の構成を示す図、図6は階段16の最上段の構成を示す図である。なお、図5においては、(a)に最下段の踏み板17b周辺の縦断面図を示し、(b)に最下段の踏み板17bに対する蹴込み板18bの取り付け手順を説明するための図を示す。図6においては、(a)に上框17a周辺の縦断面図を示し、(b)に上框17aに対する蹴込み板18aの取り付け手順を説明するための図を示す。また、図5(a)、図6(a)においては、巾木64を二点鎖線にて図示している。
図5(a)、図6(a)に示すように、一階床部12a及び二階床部13aは床面材29を有しており、床面材29は、合板等の床下地面材61と、フローリング材等の床仕上面材62とをそれぞれ有している。床仕上面材62は床下地面材61の上面に重ねられている。なお、床面材29は、床下地面材61及び床仕上面材62のうち少なくとも床仕上面材62さえ有していればよい。
階段16の各段においては、蹴込み板18の裏面に重ねられた重ね部材63が踏み板17の下方に設けられている。重ね部材63は、木材等により形成された直方体状の部材であり、踏み板17の下面に対して固定されている。重ね部材63は、蹴込み板18の裏面のうち上部に重ねられており、階段奥側への蹴込み板18の移動を規制している。
壁部31,32の階段側壁面には、巾木64が取り付けられている。巾木64は、一階床部12a及び二階床部13aの床面に沿って延びているとともに、踏み板17の上面及び蹴込み板18の手前側面に沿って延びている。
図5(a)に示すように、階段16の最下段において、蹴込み板18bの奥側には、その蹴込み板18bを一階床部12aに固定する床側下地66が設けられている。床側下地66は、木材等により長尺状に形成されており、一階床部12aに沿って蹴込み板18bの幅方向に沿って延びている。床側下地66は、重ね部材63の下方位置に配置されており、蹴込み板18bの裏面に接着剤等により接合されている。蹴込み板18bは、ビス67が床側下地66を貫通して床面材29に打ち込まれていることで、一階床部12aに対して固定されている。
ビス67は、鉛直方向に対して先端が階段手前側に向くように斜め下方に打ち込まれている。床側下地66は、ビス67が打ち込まれた打ち込み面66aを有しており、打ち込み面は、ビス67の打ち込み方向に対して直交していることで階段奥側の斜め上方を向いている。床側下地66においては、打ち込み面66aの上端部から階段手前側に向けて上面が延びており、打ち込み面66aの下端部から側面が下方に向けて延びている。
床側下地66は、階段奥側の上角部及び下角部が面取りされた形状になっており、縦断面六角形とされている。この場合、床側下地66は、打ち込み面66aの下方に配置され、斜め下方を向いている下斜面66bを有している。
最下段の蹴込み板18bと床側下地66とは、互いに接合されることでユニット化されており、このユニット化したものを蹴込みユニット68と称する。蹴込みユニット68は、蹴込み板18bが踏み板17bに対して固定されることで第1階段ユニット35aに取り付けられる。ここで、第1階段ユニット35aの直側板部41は、床仕上面材62の上に載せられており、この床仕上面材62により直側板部41の高さ位置が設定されていることになる。階段下空間57には、床仕上面材62が設置されていない非設置部分が形成されており、床仕上面材62は、階段16の手前側(例えば廊下側)から蹴込み板18bの下側に入り込んだ状態になっているものの、直側板部41の下端部41bより階段奥側には延びていない。
図6(a)に示すように、二階床部13aは、床下地面材61及び床仕上面材62に加えて、床大梁23の上に載せられた床下地としての根太71を有しており、床下地面材61は、根太71を介して床大梁23の上に載せられている。階段16の最上段において上框17aは、床下地面材61及び床仕上面材62に横並びに配置されており、床下地面材61と共に根太71の上に載せられている。上框17aは、床下地面材61から階段手前側に向けて突出した状態で設けられており、その突出部分に蹴込み板18aが取り付けられている。最上段において重ね部材63は、根太71と蹴込み板18aとの間に挟まった状態になっており、ビス等により根太71に固定されている。
上框17aは、床下地面材61に向けて突出した突出部72を有しており、床仕上面材62は、この突出部72と床下地面材61との境界部を跨いだ状態で設けられている。上框17aは、ビス等により根太71や重ね部材63に固定されている。このビス等は、上框17aにおいて突出部72の付け根部分を貫通して根太71及び重ね部材63の少なくとも一方に打ち込まれている。
最上段の蹴込み板18aは、上から二段目の踏み板17c(以下、下側踏み板17cという)に、固定具としてのビス74により固定されている。蹴込み板18aは、下側踏み板17cの階段奥側に配置されており、下側踏み板17cの奥側端面に重ねられた状態になっている。蹴込み板18aの裏面には、板状の蹴込み下地75が接着剤等により接合され、下側踏み板17cの下面には、断面三角形の踏み下地76が接着剤等により接合されている。蹴込み板18aは、ビス74が踏み下地76、下側踏み板17c及び蹴込み板18aを貫通して蹴込み下地75に打ち込まれていることで、下側踏み板17cに取り付けられている。
蹴込み下地75は、合板等により形成されており、蹴込み板18aの裏面に重ねられている。蹴込み下地75は、上框17aに固定された重ね部材63から下方に離間した位置に設けられており、蹴込み下地75の下端部は、蹴込み板18aの下端部と同じ高さ位置に配置されている。
蹴込み板18aは、下側踏み板17cより下方に向けて延出した延出部分78を有しており、下側踏み板17cの下側には、この下側踏み板17cと延出部分78とにより入隅部分が形成されている。踏み下地76は、この入隅部分に設けられており、下側踏み板17cの下面及び蹴込み板18aの手前側面の両方に重ねられている。
ビス74は、鉛直方向に対して先端が階段奥側に向くように斜め上方に打ち込まれている。踏み下地76は、ビス74が打ち込まれた打ち込み面76aを有しており、打ち込み面76aは、ビス74の打ち込み方向に対して直交していることで階段手前側の斜め下方を向いている。この場合、打ち込み面76aは、延出部分78と下側踏み板17cとに掛け渡された状態になっている。踏み下地76は、接着剤等により下側踏み板17cの下面に接合されている一方で、ビス74により蹴込み板18aに固定されている。また、この場合、ビス74の頭部74aは、踏み下地76の下側に配置されており、打ち込み面76aに対して下から引っ掛かった状態になっている。
なお、踏み下地76が斜め下地に相当し、踏み下地76の打ち込み面76aが斜め面に相当する。
次に、階段16の構築手順について説明する。まず、工場において建物ユニット20を製造する。ここでは、図1において、複数の階段ユニット35のうち、ドッキングラインDLを跨ぐ第2階段ユニット35b、スタッキングラインSLを跨ぐ第3階段ユニット35cを除く階段ユニット35を、工場において建物ユニット20に取り付ける。
第1階段ユニット35aが取り付けられる建物ユニット20Aに対しては、蹴込みユニット68も取り付けられる。建物ユニット20Aにおいては、壁部31,32及び一階床部12aを構築した後、壁部31,32に突出部材51,52を取り付け、第1階段ユニット35aの直側板部41の引っ掛け部53を上側突出部材51に引っ掛けた状態で、その直側板部41の下端部41bを一階床部12aの上に載置する。この状態で、上下方向や左右方向について第1階段ユニット35aの位置合わせを行い、直側板部41を壁部31,32に対して固定する。
その後、蹴込みユニット68を第1階段ユニット35aの踏み板17b及び一階床部12aに取り付ける。ここでは、図5(b)に示すように、蹴込みユニット68を蹴込み板18bの下端部を階段手前側に引いた状態で傾け、その状態で、蹴込み板18bの上端部を踏み板17bの溝部59に入り込む位置に配置する。そして、蹴込みユニット68を蹴込み板18bの上端部を中心に回動させるように、蹴込み板18bの上端部を溝部59内に押し込みながら、蹴込み板18bの下端部を床側下地66ごと階段奥側に向けて移動させ、蹴込み板18bが重ね部材63に重なる状態に移行させる。なお、蹴込み板18bの上端部や溝部59内には、あらかじめ接着剤等を塗布しておく。
この場合、床側下地66に下斜面66bが形成されているため、床側下地66が一階床部12aの床面に沿って滑りやすくなっており、それによって、蹴込みユニット68を回動させるようにして踏み板17bの下方位置に配置することが容易になっている。
蹴込みユニット68を踏み板17bの下方位置に配置した後、階段奥側からビス67を床側下地66を通じて一階床部12aに打ち込むことで、蹴込みユニット68を一階床部12aに対して固定する。
各建物ユニット20を製造した後、これら建物ユニット20をトラック等により建築現場に運搬し、その建築現場に設置する。図1に示すように、一階部分12においては、建物ユニット20Aの隣に建物ユニット20Bを設置し、これら建物ユニット20A,20BのドッキングラインDLを跨ぐ位置に第2階段ユニット35bを設置する。この場合、第2階段ユニット35bの設置位置に合わせて、建物ユニット20A,20Bには工場にて突出部材51,52を取り付けておき、第2階段ユニット35bの直側板部41の引っ掛け部53を上側突出部材51に引っ掛けた状態で、その直側板部41の下端部を下側突出部材52の上に載せる。この状態で、上下方向や左右方向について、第1階段ユニット35aに対する第2階段ユニット35bの位置合わせを行い、直側板部41を壁部31,32に対して固定する。
また、一階部分12の建物ユニット20Bの上に、二階部分13の建物ユニット20Cを設置し、これら建物ユニット20B,20CのスタッキングラインSLを跨ぐ位置に第3階段ユニット35cを設置する。この場合、第3階段ユニット35cの廻り側板部42を野縁58の上に載せ、この状態で、上下方向や左右方向について第3階段ユニット35cの位置合わせを行い、廻り側板部42を壁部31,32に対して固定する。
第3階段ユニット35cを設置した後、上框ユニット37を二階床部13a及び下側踏み板17cに取り付ける。ここで、二階床部13aにおいては、床仕上面材62を設置していない非設置部分を工場にて上框17aの隣接位置に形成しておき、図6(b)に示すように、上框ユニット37の蹴込み板18aを平面視で根太71(重ね部材63)と下側踏み板17cとの間に上方から挿し入れるようにしながら、上框17aを根太71の上に載せる。
その後、上框17aを根太71に対して固定し、床仕上面材62を上框17aの突出部72及び床下地面材61の上に設置する。また、下側踏み板17cの下側からビス74を踏み下地76、下側踏み板17c及び蹴込み板18aを貫通させて蹴込み下地75に打ち込むことで、蹴込み板18aを下側踏み板17cに固定する。
ここで、上框17aの下方位置においては、一階部分12の建物ユニット20Bの天井大梁22と二階部分13の建物ユニット20Cの床大梁23とが上下に重ねて配置されており、これら大梁22,23は、上框17aの下方位置にあることに起因して蹴込み板18aに接近した位置に配置されている。この場合、上框17aの下方位置に作業スペースを確保することができないことに起因して、階段16の中間段のようにビス等を蹴込み板18aを貫通させて下側踏み板17cに打ち込むことは困難であるが、下側踏み板17cの下方には大梁22,23等の障害物が存在しないため、下側踏み板17cの下方スペースを作業スペースとして利用することで、ビス74により蹴込み板18aを下側踏み板17cに対して容易に固定することができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
階段16において、下側踏み板17cを貫通して最上段の蹴込み板18aにビス74が打ち込まれているため、下側踏み板17cに対する蹴込み板18aの固定作業を、下側踏み板17cの下方スペースにて行うことができる。このため、蹴込み板18aが二階部分13の床大梁23及び一階部分12の天井大梁22に接近した位置に配置されていても、ビス74を用いて蹴込み板18aを下側踏み板17cに容易に固定することができる。
蹴込み板18aの階段奥側に配置された蹴込み下地75にビス74が打ち込まれているため、ビス74が蹴込み板18aから抜けにくい構成を実現できる。これにより、下側踏み板17cに対する蹴込み板18aの固定状態を適正に保つことができる。
上框17aと蹴込み板18aとが一体化されることで上框ユニット37が形成されているため、上框17aを根太71の上に載せるという容易な作業により、上框17a及び蹴込み板18aの両方の高さ位置を設定することができる。しかも、蹴込み板18aの下端部が下側踏み板17cの階段奥側に配置されているため、蹴込み板18aが下側踏み板17cの上面に引っ掛かって上框17aが根太71から上方に離間してしまうということがない。したがって、上框17aと下側踏み板17cとの上下の離間距離に合わせて蹴込み板18aの高さ寸法を正確に設定するという手間を省くことができる。
蹴込み板18aが下側踏み板17cより下方に延びているため、蹴込み板18aを挟んで下側踏み板17cとは反対側から、下側踏み板17cに対する蹴込み板18aの固定作業を行う場合、仮に床大梁23及び天井大梁22が存在しなかったとしても、蹴込み板18aの裏に隠れて下側踏み板17cを視認しにくい状態になることが懸念される。これに対して、下側踏み板17cの下方スペースにおいて固定作業を行う場合は、ビス74の打ち込み対象である蹴込み板18a及び下側踏み板17cの両方を確実に視認できるため、固定作業が容易になる。
ビス74が打ち込まれている踏み下地76の打ち込み面76aが、ビス74の打ち込み方向に対して直交する方向に延びているため、この打ち込み面76aによりビス74の打ち込み方向を案内することができる。したがって、作業者はビス74の打ち込み作業を適正に行うことができる。
上框ユニット37の固定対象である第3階段ユニット35cがスタッキングラインSLを上下に跨ぐ位置に配置されるため、第3階段ユニット35cの設置及びその第3階段ユニット35cに対する上框ユニット37の固定を建築現場で行わざるを得ない。このため、ビス74が下側踏み板17cの下側から打ち込まれるという構成は、下側踏み板17cに対して蹴込み板18aを固定する際に、建築現場において床大梁23及び天井大梁22が支障になりにくいという点で有効である。
上框ユニット37には側板部42が含まれていないため、側板部42を有する階段ユニット35に比べて、上框ユニット37を小型化できる。このため、蹴込み板18aを平面視で床大梁23(二階床部13aの床面材29)と下側踏み板17cとの間の隙間に挿し込むという作業を、上框ユニット37が側板部42を有することに起因して大型化した構成に比べて、容易に行うことができる。
壁部31,32に上側突出部材51が取り付けられているため、この上側突出部材51に第1階段ユニット35a及び第2階段ユニット35bを引っ掛けることが可能になっている。このため、階段ユニット35a,35bを壁部31,32に取り付ける際に、直側板部41の引っ掛け部53を上側突出部材51に引っ掛けておき、その状態で直側板部41の位置を微調整することで、階段ユニット35a,35bの位置決め作業を容易化できる。
上側突出部材51が直側板部41の下側傾斜端部41cの延長線から階段奥側に突出していないため、階段ユニット35a,35bを設置する際に上側突出部材51が支障になることや、階段下空間57において上側突出部材51が邪魔になることを抑制できる。この効果は、下側突出部材52についても同様に奏することができる。また、壁部31,32からの突出部材51,52の突出寸法が、壁部31,32からの直側板部41の突出寸法以下とされているため、上記効果を高めることができる。
直側板部41の上端部に引っ掛け部53が設けられているため、階段ユニット35a,35bの荷重が上側突出部材51にかかりやすくなっている。このため、作業者は、引っ掛け部53を上側突出部材51に引っ掛けた状態で、階段ユニット35a,35bの位置の微調整を行いやすくなる。しかも、直側板部41の下端部を下側突出部材52に載せることで、階段ユニット35a,35bの位置合わせ作業を更に容易化できる。
第1階段ユニット35a及び第2階段ユニット35bの各直側板部41は、上下方向に互いに離間しているため、それぞれの直側板部41の位置を上下左右に微調整した場合に、それら直側板部41が互いに干渉しないようになっている。したがって、階段ユニット35a,35bの位置合わせを適正に行うことができる。
階段ユニット35a,35bにおいては、引っ掛け部53が最上位の踏み板17の直下に配置されているため、最上位の踏み板17と引っ掛け部53の下面53a(上側突出部材51)という2箇所を同時に視認することが容易になっている。このため、階段ユニット35a,35bを設置する際に最上位の踏み板17を高さ位置の基準とすることで、階段ユニット35a,35bの位置合わせの制度を高めることができる。
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、上框17aが床大梁23の上に設けられていたが、上框17aは、床小梁26の上に設けられていてもよい。例えば、図7(a)に示すように、床小梁26の上に床下地面材61及び上框17aの両方が載せられた構成とする。この構成では、床小梁26が床下地に相当するものである。また、床大梁23は、柱21や天井大梁22の上に設けられていてもよい。
(2)上記実施形態では、踏み下地76が断面三角形とされていたが、踏み下地76は、打ち込み面76aを有していれば断面三角形でなくてもよい。例えば、図7(b)に示すように、踏み下地76が床側下地66と同様に断面六角形とされていてもよい。この場合、断面六角形の同一部材を踏み下地76及び床側下地66のいずれとしても使用することが可能になるため、コスト負担を低減できる。また、踏み下地76においては、全体の大きさが同じであれば、角の数が多いほど打ち込み面76aが小さくなるため、ビス74の打ち込み位置の精度を高めることができる。
また、床側下地66が、打ち込み面66aを有していれば断面六角形でなくてもよい。この場合、断面三角形の同一部材を踏み下地76及び床側下地66のいずれとしても使用することが可能になる。
(3)上記実施形態では、上框ユニット37の蹴込み板18aを下側踏み板17cに固定するビス74が斜め上方に向けて打ち込まれていたが、ビス74は、鉛直方向に延びていてもよく、水平方向に延びていてもよい。例えば、蹴込み板18a及び蹴込み下地75が下側踏み板17cの上側に配置されている構成では、ビス74が下側踏み板17cを貫通して蹴込み下地75の下端面に鉛直上向きに打ち込まれていても、蹴込み板18aが蹴込み下地75を介して下側踏み板17cに固定されたことになる。また、下側踏み板17cが、下方に向けて突出した凸部を有し、この凸部に蹴込み板18aが重ねられている構成では、ビス74が凸部を貫通して蹴込み板18a及び蹴込み下地75に水平方向に打ち込まれていても、蹴込み板18aが下側踏み板17cの凸部に対して固定されたことになる。
(4)上記実施形態では、上框ユニット37に蹴込み下地75が含まれていたが、蹴込み板18aが十分に高い強度を有していれば、蹴込み下地75は設けられていなくてもよい。例えば、蹴込み板18aが合板等のバッキング材により形成されている構成では、ビス74が蹴込み下地75に打ち込まれていなくても、そのビス74が蹴込み板18aから抜けにくい構成を実現できる。
(5)上記実施形態では、上框ユニット37の蹴込み板18aを下側踏み板17cに固定する固定具がビス74とされていたが、この固定具は、釘やステープル等であってもよい。
(6)上記実施形態では、階段ユニット35a,35bの直側板部41の上端部に引っ掛け部53が設けられていたが、引っ掛け部53は、直階段部16aの昇降方向において直側板部41の中間部分や下端部に設けられていてもよい。つまり、凹部54が直側板部41の中間部分や下端部に設けられていてもよい。この場合、引っ掛け部53の下面53aは、直側板部41の側端部41aから階段手前側に向けて延びているのではなく、下側傾斜端部41cの中間位置から階段手前側に向けて延びていることになる。
(7)上記実施形態では、上側突出部材51が、直側板部41の下側傾斜端部41cの延長線から下方に突出した位置に設けられていたが、上側突出部材51は、下側傾斜端部41cの延長線から下方や側方に突出していてもよい。
(8)上記実施形態では、壁部31,32からの突出部材51,52の突出寸法が、直側板部41の厚み寸法以下とされていたが、この突出寸法は、直側板部41の厚み寸法より大きくされていてもよい。つまり、突出部材51,52が直側板部41よりも壁部31,32から離間する側に突出していてもよい。
(9)上記実施形態では、凹部54が水平方向及び下方の両方に向けて開放されていたが、凹部54は、水平方向及び下方のうち一方にだけ向けて開放されていてもよい。また、凹部54は、直側板部41を厚み方向に貫通していなくてもよく、少なくとも壁部31,32の壁面側に向けて開放されていればよい。いずれの場合でも、上側突出部材51が凹部54内に入り込んだ状態になることで、引っ掛け部53が上側突出部材51に上から引っ掛かることになる。
(10)上記実施形態では、直階段部16aの階段ユニット35a,35bが下側傾斜端部41cを有していたが、廻り階段部16bの第3階段ユニット35cが下側傾斜端部41cを有していてもよい。つまり、第3階段ユニット35cの廻り側板部42に引っ掛け部53が設けられていてもよい。
(11)上記実施形態では、直階段部16aが一階床部12aから上方に向けて延び、廻り階段部16bが二階床部13aから下方に向けて延びていたが、直階段部16aが二階床部13aから下方に向けて延びていてもよく、廻り階段部16bが一階床部12aから上方に向けて延びていてもよい。つまり、上框17aが直階段部16aに含まれていてもよく、最下段の蹴込み板18bが廻り階段部16bに含まれていてもよい。