JP6344975B2 - ダイヤモンド複合焼結体とその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、ダイヤモンド粉末は、難焼結性を有しており、高温での焼結を行おうとするとダイヤモンドから黒鉛への相変態(黒鉛化)が生じるため、ダイヤモンド粉末の焼結は、一般的に、ダイヤモンドが熱力学的に不安定でない圧力・温度条件で行われている。また、場合により、ダイヤモンド粉末に耐熱性金属、炭化物、窒化物、酸化物、硼化物を被覆し、超硬合金、サーメット、セラミックス等の結合材を用いることで、超高圧発生装置を用いずに、ダイヤモンド複合焼結体を製造することが行われている。
そして、上記結合材は、周期律表第1b、2a、3a、4a、5a、6a、7a、8族金属、希土類族金属、Si、B、Alの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物、炭窒化物、酸炭窒化物、硼化物、珪化物の内の選択された一種類以上の原料粉末から選択されることが提案されている。
そして、その製造方法としては、最高キープ温度1800℃以下、圧力5〜200MPa、焼結時間30分以内の通電加圧焼結が好適であるとされている。
また、硬質材料のマトリックス(硬質材料の50体積%以上を占める材料)がAl2O3、TiC、ZrO2、Si3N4、SiCのいずれか、もしくはそれらを複合化したセラミックスである場合には、優れた耐摩耗性、耐食性が期待されること、その内でもSiC、AlNは熱伝導率が高く、ダイヤモンドの非常に優れた熱伝導性を活かすことができるとされている。
また、前記特許文献2で提案されているダイヤモンド複合焼結体においては、ダイヤモンド粒子の含有量はわずか10体積%以上30体積%以下であるばかりか、結合材であるWC基超硬合金、サーメット、セラミックスの硬さに対して±15%の範囲内でしか硬さの変動がないため、ダイヤモンド複合焼結体の硬さはビッカース硬さでせいぜい20GPa程度であって、硬さが十分であるとはいえない。したがって、これを、例えば、切削工具として使用した場合には、ダイヤモンド工具のような強度と寿命を期待することはできない。
「(1)ダイヤモンド粒子表面に非晶質SiCが被覆されたダイヤモンド/SiCコンポジット粉末と、結合材としてのSiO2粉末との混合粉末を焼結してなるダイヤモンド複合焼結体であって、該複合焼結体に占めるダイヤモンド粒子の質量割合は40〜60質量%であり、また、該複合焼結体の相対密度は90%以上、ビッカース硬さは30GPa以上であり、さらに、Cu−Kα線でのX線回折測定において、2θ=26.4±0.5°に現れる黒鉛の(002)面の回折ピーク強度IGの、2θ=43.9±0.1°に現れるダイヤモンドの(111)面の回折ピーク強度IDに対する強度比IG/IDが0.014以下であるダイヤモンド複合焼結体。
(2)ダイヤモンド粒子表面に非晶質SiCを被覆してダイヤモンド/SiCコンポジット粉末を作製し、このダイヤモンド/SiCコンポジット粉末と結合材としてのSiO2粉末を混合し、この混合粉末を、加圧圧力:80〜120MPa、昇温速度:80〜130K/min、焼結温度:1750〜1900K、加熱時間:1〜10minの条件でパルス通電加圧焼結することを特徴とする前記(1)に記載のダイヤモンド複合焼結体の製造方法。」
に特徴を有するものである。
図1に示す回転化学蒸着装置において、電気炉の内部に石英室が設けられ、該石英室の内部には回転する反応装置が設けられ、該反応装置内部にダイヤモンド粒子が充填される。
反応装置内部に充填されたダイヤモンド粒子表面に、非晶質のSiCを被覆するに際しては、例えば、反応ガスとしてヘキサメチルジシラン、キャリアーガスとしてArガスからなる混合ガスを、電気炉で965〜1000Kに加熱した石英室内へ流量8〜9×10−7m3/secで導入し、反応装置を回転速度40〜50rpmで回転させながら、該反応装置内に充填された粒径2〜4μmのダイヤモンド粒子表面に230〜250分間非晶質のSiCを化学蒸着することによりダイヤモンド/SiCコンポジット粉末を作製することができる。
図2によれば、ダイヤモンド粒子表面に約26nmの膜厚の非晶質SiCが被覆形成されていることが観察される。また、TEMの電子線回折像によってSiCが非晶質であることを確認した。
後記する実施例からも明らかとなるが、コンポジット粉末を構成する成分である非晶質SiCと、結合材成分であるSiO2粉末との組み合わせによって、従来のダイヤモンド複合焼結体を作製する際に必要であった超高圧装置が不要となるばかりか、超高圧装置を用いずとも目標とする高硬度、高密度を備えるダイヤモンド複合焼結体を得ることが可能となった。
図3には、従来から知られているパルス通電加圧焼結(SPS)装置の一例の概略図を示す。
図3の装置では、パルス電源、油圧プレス等の加圧機構、雰囲気制御できる真空排気系を備えるとともに、粉体を装填し、加圧し、パルスを印加するために、焼結ダイ、上部ダイパンチ、下部ダイパンチ、上部パンチ電極、下部パンチ電極を備える。
このことから、本発明においては、通常の焼結温度より高温で焼結を行った場合でも、黒鉛の(002)面のX線回折ピークは現れず、ダイヤモンドの黒鉛化が抑制された高密度で高硬度のダイヤモンド複合焼結体を得ることができる。
また、本発明によるダイヤモンド複合焼結体の製造方法は、ダイヤモンド粉末の原料として、ダイヤモンド/SiCコンポジット粉末を用いたことにより、ダイヤモンドの黒鉛化が抑制され、高温度で焼結することが可能となり、従来使用していた超高圧装置を必要とせずに、目標とする高硬度、高密度を備え、かつ、ダイヤモンドの黒鉛化が抑制され、X線回折で黒鉛の(002)面の回折ピークが観察されないダイヤモンド複合焼結体を製造することが可能となった。
図2には、本発明のダイヤモンド/SiCコンポジット粉末のTEM像の一例を示すが、図2によれば、ダイヤモンド粒子表面に約26nmの膜厚の非晶質SiCが被覆形成されていることが観察される。また、TEMの電子線回折像によってSiCが非晶質であることを確認した。
次いで、上記本発明混合粉末1〜3を、図3に示すパルス通電加圧焼結(SPS)装置の型内に充填し、装置内を真空(0.1Pa未満)に引き、昇温速度:100K/minで、焼結温度:1823Kあるいは1873Kに昇温・加熱し、上部ダイパンチ及び下部ダイパンチで100MPaの加圧力を付加した状態で10分間焼結することによって、表1に示す成分割合を有する本発明ダイヤモンド複合焼結体1〜3を作製した。
表1に、算出した相対密度(%)の値を示す。
表1に、測定したビッカース硬さHv(GPa)の値を示す。
ここで、測定したダイヤモンドの(111)面の回折ピーク強度として2θ=43.9±0.1°の範囲内の最大カウント数をID、また、黒鉛の(002)面の回折ピーク強度として2θ=26.4±0.5°の範囲内の最大カウント数をIGとした場合に、IG/IDの値が0.014を超える場合に「黒鉛有り」と判定し、IG/IDの値が0.014以下である場合には「黒鉛無し」と判定した。
表1に、黒鉛の存在の有無の判定結果を示す。
即ち、比較例の混合粉末1〜5においては、ダイヤモンド粉末としてダイヤモンド/SiCコンポジット粉末を使用していない。
上記比較例の混合粉末1〜5を、図3に示すパルス通電加圧焼結(SPS)装置により、実施例の場合と同じ条件(但し、焼結温度は、1773K,1823K,1873K,1923K,1973K)で焼結して、比較例ダイヤモンド複合焼結体1〜5を作製した。
即ち、比較例ダイヤモンド焼結体6においては、ダイヤモンド粉末としてダイヤモンド/SiCコンポジット粉末を使用しておらず、また、焼結に際して結合材を使用していない。
表1にその結果を示す。
なお、ダイヤモンド粒子のみをパルス通電加圧焼結(SPS)した比較例ダイヤモンド焼結体6は、相対密度が54.50%、ビッカース硬さHvは6.7GPaであって、本発明ダイヤモンド複合焼結体1〜3に比して、緻密性および硬さが大きく劣るものであった。
したがって、本発明のダイヤモンド複合焼結体は、高熱発生を伴う切削加工、例えば、切削条件の高速化による高能率加工、アルミニウム複合材等の共削り加工、Ti合金等の難削材加工への適用や、高硬度と緻密性を必要とする鉱山用掘削、石油掘削井戸の穿孔などの掘削工具用材料において、大きな効果が発揮されることが期待される。
Claims (2)
- ダイヤモンド粒子表面に非晶質SiCが被覆されたダイヤモンド/SiCコンポジット粉末と、結合材としてのSiO2粉末との混合粉末を焼結してなるダイヤモンド複合焼結体であって、該複合焼結体に占めるダイヤモンド粒子の質量割合は40〜60質量%であり、また、該複合焼結体の相対密度は90%以上、ビッカース硬さは30GPa以上であり、さらに、Cu−Kα線でのX線回折測定において、2θ=26.4±0.5°に現れる黒鉛の(002)面の回折ピーク強度IGの、2θ=43.9±0.1°に現れるダイヤモンドの(111)面の回折ピーク強度IDに対する強度比IG/IDが0.014以下であるダイヤモンド複合焼結体。
- ダイヤモンド粒子表面に非晶質SiCを被覆してダイヤモンド/SiCコンポジット粉末を作製し、このダイヤモンド/SiCコンポジット粉末と結合材としてのSiO2粉末を混合し、この混合粉末を、加圧圧力:80〜120MPa、昇温速度:80〜130K/min、焼結温度:1750〜1900K、加熱時間:1〜10minの条件でパルス通電加圧焼結することを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド複合焼結体の製造方法。
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