JP2004339591A - W−Ti−C系複合体及びその製造方法 - Google Patents

W−Ti−C系複合体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】硬度とヤング率の著しい低下を引き起こすCoを主要元素として添加せずに、高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等を有するW−Ti−C系複合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】WC相及び又はWC相とTiC相及び又は(Ti、W)C相を備えていることを特徴とするW−Ti−C系複合体及びW、WC、WCから選択した1種類以上の粉末とTi、TiC、(Ti、W)Cから選択した1種類以上の粉末とを混合して焼結することを特徴とするW−Ti−C系複合体の製造方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等を有するW−Ti−C系複合体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
IV、V、VI族遷移金属炭化物の特徴は、融点、硬度が高く、格子の結合力が強く、外力に対する変形抵抗が大きいことである。このため、化学的安定性に優れ、耐摩耗性を要求される部材に利用される。IV、V、VI族遷移金属炭化物の中でも、タングステンとチタンの炭化物は、超硬合金あるいはサーメットの原料として多く利用されている。
タングステンカーバイド(WC)は、含炭素量の異なるWCとWCがあり、他の遷移金属炭化物に比べ熱伝導率、弾性率が優れていることが知られている。しかし、WCはWCより硬度が高く、弾性率はWCより低いと一般に言われているが、詳しい性質が調べられていないの現状である。
【0003】
WCは硬さや炭化物の安定性を示す生成熱では、TiCやZrCに及ばないが、熱伝導率、弾性率、硬度が非常に優れるため、超硬合金として実用化され、切削工具、耐摩耗性材料、鉱山工具として多方面に使用されている。
チタンカーバイドは耐酸化性、耐食性に優れ、比重が小さく比較的安価であるなどの特徴を持つ。また、無機化合物中で、最も広い不定比性を示し、組成領域はC/Ti=0.50〜0.96まで変化し、炭素欠陥に酸素を取り込みやすく、諸性質は組成及び酸素量に依存すること、熱伝導率、弾性率が優れることが知られている。
【0004】
近年のWC−Co超硬合金の開発傾向は高硬度化である。通常、WC超硬合金はCoを添加し焼結を行うが、強度と破壊靭性値の上昇が見られる。すなわち、従来の方法では、WC粉末に2〜25wt%のCoを添加し、真空中又は不活性ガス雰囲気中、1300〜1500°Cで焼結することにより製造されている。また、焼結体の空孔等の欠陥を除くために、熱間静水圧プレス(HIP)を使用していた。このように、従来法ではCo添加なしでは、緻密な焼結体を製造することができなかった。また、Coを添加することにより、強度と破壊靭性値は向上するが、硬度、ヤング率及び耐食性が著しく損なわれるという欠点があった。そのため、Co添加量の低減とWC結晶粒の微細化が検討されている。
【0005】
一方、TiCはWC超硬合金に添加することにより、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性が増すことが知られている(非特許文献1参照)。また、TiCを主成分とするTiC基サーメットは、高速切断が可能、長寿命などの特長を活かして、主に鋼切削に使用されている。
しかし、タングステンカーバイド(WC)及びTiCはそれぞれ優れた特性を有しているが、TiCとWCは、いずれも難焼結体であるため焼結温度が著しく高くなり、製造が極めて難しいという問題がある。以上のことから、上記の特性を総合的に保有する材料が得られていないのが現状である。
【0006】
【非特許文献】
丸善株式会社発行(昭和61年2月20日発行)「超硬合金と焼結硬質材料(基礎と応用)」127〜133頁「超硬合金の性質」
【0007】
【発明が解決しょうとする課題】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、硬度とヤング率の著しい低下を引き起こすCoを主要元素として添加せずに、WCとTiCを複合化することにより、それぞれの優れた特性を合わせ持つ複合材料、すなわち高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等を有するW−Ti−C系複合体及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以上から、次の発明を提供するものである。
1.WC相及び又はWC相とTiC相及び又は(Ti、W)C相を備えていることを特徴とするW−Ti−C系複合体
2.WCに対するTiのモル比が0.2以下であることを特徴とする上記1記載のW−Ti−C系複合体
3.WCに対するTiのモル比が0.1以下であることを特徴とする上記1記載のW−Ti−C系複合体
4.WCに対するTiのモル比が0.05以下であることを特徴とする上記1記載のW−Ti−C系複合体
5.V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素を0.001〜20wt%含有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のW−Ti−C系複合体
6.V、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素の炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物の1種類以上を0.001〜30wt%含有することを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のW−Ti−C系複合体
【0009】
さらに、次の発明を提供する。
7.W、WC、WCから選択した1種類以上の粉末とTi、TiC、(Ti、W)Cから選択した1種類以上の粉末とを混合して焼結することを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のW−Ti−C系複合体の製造方法
8.C粉を混合して焼結することを特徴とする上記7記載のW−Ti−C系複合体の製造方法
9.W−Ti−C系複合体の製造に際し、WC及び又はWCとTiの固相置換反応による物質移動を利用してWC及び又はWC粉末の焼結を促進させることを特徴とする上記7又は8記載のW−Ti−C系複合体の製造方法
10.ホットプレス又は通電加圧焼結法により焼結することを特徴とする上記7〜9のいずれかに記載のW−Ti−C系複合体の製造方法
11.焼結温度1400〜2000°C、加圧力20MPa以上で焼結することを特徴とする上記7〜10のいずれかに記載のW−Ti−C系複合体の製造方法
12. 焼結温度1650〜1900°C、加圧力30MPa以上で焼結することを特徴とする上記7〜10のいずれかに記載のW−Ti−C系複合体の製造方法
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法により、WC相及び又はWC相とTiC相及び又は(Ti、W)C相を備えており、ビッカース硬さ20GPa以上及びヤング率600GPa以上を有するW−Ti−C系複合体を得ることができる。
W−Ti−C系複合体の組織の中で、実際にWC相、WC相、TiC相、(Ti、W)C相が観察でき、通常WCのマトリックス相中に(Ti、W)C相、及びTiC相が点在する組織を有する。なお、(Ti、W)C相はTiCにWCが固溶したものである。
これによって、Coなどの金属添加剤を必要とせず、高温中での化学反応による物質の移動を利用しているため、焼結むらの少ない緻密な焼結体が得られるという特徴を有している。
【0011】
本明細書において記述する各種の化合物は、表示されている化合比の10%以内の不定比化合物を含むものである。
W−Ti−C系複合体におけるWに対するTiのモル比が0.2以下、好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下であることが望ましい。これによって、高硬度及び高ヤング率特性を更に向上させることができる。
また、TiCを含有することによって、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性を向上させる効果を有する。
本発明の複合体は、例えば切削工具、ターゲット材、引抜きダイス、粉末冶金用金型、ノズル、メカニカルシール、軸受部品、射出成型用金型、ボールペン用ボール、電極、自動車部品などに使用できる。
【0012】
好適な高硬度及び高ヤング率特性を維持するために、本発明のW−Ti−C系複合体の相は、モル分率で0.7〜0.98のWC相、WC相、(Ti、W)C相を有することが望ましい。
(Ti、W)C相におけるTiCへのWCの固溶量はWCに対するTi量が少ないほど大きくなり、WC固溶量が多くなるほど(Ti、W)C組織にクラックが多く発生する傾向がある。なお、本発明の後述する通電加圧焼結では、全ての試料について1800°C以上で緻密な試料が得られた。
本発明は、上記W−Ti−C系複合体に、さらに副添加元素としてV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素を0.001〜20wt%含有させることができる。
これらの元素を添加することにより液相焼結することが可能となり、通常使用する温度よりもさらに100°C〜550°C程度焼結温度を下げることができる。例えば、1400〜1900°Cの低温で緻密化が可能で、強度及び破壊靭性値を大幅に上昇させることができる。
【0013】
これによって、例えば破壊靭性値を10から20MPa・m1/2程度向上させることができる。これらの副添加元素はW−Ti−C系複合体の相のなかで、粒間結合相のような形態として存在する。
しかし、硬度及びヤング率が低下するので上限を20wt%とするのが望ましい。また、0.001wt%未満では添加の効果がないので、上記の目的で添加する場合には、0.001wt%以上とするのが望ましい。
なお、本発明においては、あくまでWC相及び又はWC相とTiC相及び又は(Ti、W)C相からなる組織を中心相とするものであり、上記添加元素は用途に応じて付加的に添加するものである。
【0014】
本発明は、さらに副添加物としてV、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素の炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物の1種類以上を0.001〜30wt%含有させることができる。
これらの副添加物はW−Ti−C系複合体の相のなかで、WCや粒間結合相金属中に固溶し、あるいは分散粒子のような形態として存在する。
これらは、焼結時のWC、WC、(Ti、W)C等の結晶粒の成長を抑制することができ、微細組織を持った焼結体を製造することができる。
その結果、強度、硬度、破壊靭性値をさらに向上させることができる。0.001wt%未満では添加の効果が認められず、30wt%を超えると強度、硬度、破壊靭性値が低下し、好ましくないので、上限は30wt%とすることが望ましい。
【0015】
本発明のWC相、WC相、TiC相、(Ti、W)C相等を備えている高硬度及び高ヤング率特性を有するW−Ti−C系複合体は、W、WC、WCから選択した1種類以上の粉末とTi、TiC、(Ti、W)Cから選択した1種類以上の粉末とを混合して焼結することによって効率的に製造できる。
本発明は、特にWC及び又はWCとTiの固相置換反応による物質移動を利用するものであり、これによってWC及び又はWC粉末の焼結を促進させることができる。
この場合、原料粉末であるW、WC、WCから選択した1種類以上の粉末とTi、TiC、(Ti、W)Cにおいて、Wに対するTiのモル比が0.2以下、好ましくは0.1、さらに好ましくは0.05以下に調節した混合粉末を使用するのが良い。
W:WC:WCはそれぞれ0〜100モル%の間で、また同様にTi:TiC:(Ti、W)Cはそれぞれ0〜100モル%の間で選択できる。さらに、これらにC粉を混合し、あるいはTiを付加的に添加して製造することもできる。
【0016】
焼結に際しては、同様に副添加元素としてV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素を0.001〜20wt%の添加及び又はV、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素の炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物の1種類以上を0.001〜30wt%の粉末を混合して焼結することができる。
【0017】
焼結の具体的手段として、ホットプレス又は通電加圧焼結法(放電プラズマ焼結法)による焼結を使用することができる。
特に、通電加圧焼結法は、型の中に充填した粉末に加圧しながらパルス状の電流を流して試料と型のみを加熱するものであり、炉内全部を加熱するホットプレスよりも省エネルギーであり、また急速昇温が可能であるという特徴を有している。この通電加圧焼結法によれば、極めて短時間で難焼結材料の緻密化が可能である。
【0018】
焼結温度1400〜2000°C、加圧力20MPa以上で焼結する。特に、焼結温度1650〜1900°C、加圧力30MPa以上で焼結することが望ましい。なお、この際の焼結温度は、ホットプレス又は通電加圧焼結法で使用するグラファイト型の表面の温度である。
また、保持時間は1分以上好ましくは5分以上で焼結することが望ましい。通電加圧焼結法を用いると極めて短時間に高温を得ることができるので、製品を得るまでの時間を大幅に短縮できるという特長を有する。
以上の方法によって、優れた高硬度及び高ヤング率特性を有するWC相及び又はWC相とTiC相及び又は(Ti、W)C相を備えているW−Ti−C系複合体を製造することができる。
【0019】
【実施例】
次に、実施例に基づいて説明する。なお、本実施例は下記の試験等に基づいて、より好適な実施の一例を提示するものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。したがって、本発明の技術思想に含まれる変形、他の実施例又は態様は、全て本発明に含まれる。
【0020】
(実施例及び比較例)
原料粉末として、Ti粉末(平均粒径1.5μm、純度99%)及びWC粉末(平均粒径0.71μm、純度99.5%)を使用した。WCは不定比性を有しW1.006Cであった。
以上の粉末を用いて、TiとWCが化学量論的に反応する(1−x)WC+xTi→xWC+xTiC+(1−3x)WC(但し、x=0〜0.333)を想定して秤量し、乳鉢で入念に混合した。
xの比率を変えて試料を作製した。なお、この場合、x=0は比較例として挙げたものである。
この混合粉末を外径50mm、内径20mm、高さ40mmのグラファイト型に充填し、断熱のためにその周囲をグラファイトウールで囲んだ。
【0021】
焼結は、通電加圧焼結装置を用い、圧力50MPa、昇温速度50°C・min−1、焼結温度1800°C、保持時間20min、真空下の条件で実施した。この際、焼結温度はグラファイト型の表面を放射温度計で測定した。得られた焼結体の生成物(反応生成物)と組織は、X線回折装置と走査型電子顕微鏡(SEM)と電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて調べた。焼結体の密度はアルキメデス法を用いて測定した。
【0022】
焼結体の機械的性質の評価は、ヤング率、ポアソン比、ビッカース硬さ、破壊靭性値の測定によって行った。なお、ヤング率は高温動弾性率測定装置、探触子5MHzを用い、超音波パルス法により縦波の音速と横波の音速を測定して求めた。
ビッカース硬さ及び破壊靭性値はビッカース硬さ計を用い、硬さは9.8N、15sの条件で測定し、破壊靭性値はJISR1607に基づき、9.8N、15sの条件でIF法により求めた。
【0023】
焼結体の反応生成物の、X線回折最強ピークの相対強度比Ix/ΣIxと原料粉末中のTiの割合xとの関係を図1に示す。
図1に示す通り、原料粉末中のTi量(x)が増えるとともに、生成するWC量が減少し、WC、TiC、(Ti、W)C量が増加した。特に、WCの増加が著しい。いずれの場合も未反応のWはなかった。
図2は、かさ密度及び開気孔率とTi量(x)との関係を示すが、この図2に示すように、かさ密度は原料粉末中のTi量が増え生成するWC量が減少するとともに低くなり、その差が大きくなった。
すなわち、かさ密度は原料粉末中のTi量(x)が少ないほど高くなる。このような密度低下は固溶に依存するよりも、気孔率や(Ti、W)Cのクラックに依存していると考えられる。
また、Ti量が増加すると(Ti、W)Cの格子定数が減少し、TiCへのWC固溶量が減少していくが、開気孔率は増加していく。このことからTiCへのWC固溶量が緻密化に影響していると考えられる。開気孔率はTi量x=0.2まで増加し、その後減少に転じた。
【0024】
原料粉末中のTi量xとヤング率とポアソン比の関係を図3に示す。図3から明らかなように、ヤング率はWCのみ(比較例)の場合に最大値702GPaで、WC量が減少するとともに小さくなり、Ti量が0.333の時に最小値372GPaであった。また、ポアソン比は0.17から0.23の間であった。
ビッカース硬さと破壊靭性値を図4と図5に示す。原料粉末中のTi量xが増え、生成するWC量が減少するとともに、ビッカース硬さと破壊靭性値は減少し、WCのみの時に最大値を示し、それぞれ25.3GPaと5.9MPam1/2、Ti量が0.333の時に、それぞれ最小値17.5GPaと3.1MPam1/2であった。
【0025】
上記1〜5図を見る限り、Wに対するTiのモル比は小さい方が良い(Ti量が少ない方が良い)が、WC及び又はWCとTiの固相置換反応による物質移動を利用することによって焼結性を向上させるものであるから、少量であってもTiの存在は極めて重要である。少なくともモル分率で0.001は必要であり、好ましくは0.01以上とするのが良い。
TiC及びWCはいずれも難焼結体であるため焼結温度が高くなるという問題がある。しかし、本発明においてはWC又はWCとTiとの反応焼結を伴うことにより、焼結温度の低下と反応による組織の微細化が達成できるという著しい効果を有する。
これによって、硬度とヤング率の著しい低下を引き起こすCoを主要元素として添加せずに、高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等を有するW−Ti−C系複合体を製造することが可能となった。
【0026】
次に、好適な条件と考えられる0.95WC−0.05Tiについて、上記と同様な焼結条件で、焼結温度を変化させ、X線回折最強ピークの相対強度比Ix/ΣIx、かさ密度及び開気孔率、ヤング率及びポアソン比、ビッカース硬さ、破壊靭性値の測定結果を、それぞれ図6〜図10に示す。
【0027】
図6に示すように、焼結温度の高温(2000°C)側ではWCと(Ti、W)C量は徐々に増加する。一方WCは減少する傾向にある。TiC量には変化がない。また、未反応のWは認められなかった。
かさ密度は、図7に示すように1600°Cから急速に大きくなり、1800°C〜1900°Cで最大値15gcm−3に達した。開気孔率は焼結温度の上昇と共に減少し、1800°C以上で0wt%となった。
【0028】
図8に示すように、ヤング率は焼結温度の上昇と共に急上昇し、1800°Cでピークに達し、その後高温側に移行してもヤング率は低下する傾向を持つ。またポアソン比は焼結温度の上昇とともに緩やかに低下する。
ビッカース硬さは図9に示すように、焼結温度の上昇と共に高くなり、1800°Cでピーク(2540Hv)となり、その後焼結温度を上げると低下する傾向を示した。この1800°C以上での硬度低下は粒成長が原因と考えられる。
破壊靭性値もまた、ビッカース硬さと同様の傾向を持ち、図10に示すように焼結温度の上昇と共に高くなり、1800°Cでピーク(5.3MPam1/2)となり、その後焼結温度を上げると急速に低下する傾向を示した。
以上から、機械的性質は1800°Cで焼成した試料が最も優れた特性を示していることが分かる。
【0029】
すなわち、最適焼結温度は混合原料粉末の組成によって、適正な焼結密度、硬度、ヤング率、破壊靭性値等を勘案して、適宜選択することができる。
また、特にデータとしては示さないが、焼結温度は副添加元素としてV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素を0.001〜20wt%を添加することにより、350°C〜550°C程度低減できる。
さらに、副添加物としてV、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素の炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物の1種類以上を0.001〜30wt%含有させることにより、焼結時のWC、WC、(Ti、W)Cの結晶粒の成長を抑制することができ、微細組織を持った焼結体を製造することができる。その結果、強度、硬度、破壊靭性値をさらに向上させることができる。
【0030】
本発明の実施例では、Ti粉末とWC粉末を通電加圧焼結法によって、WC相、WC相、TiC相及び又は(Ti、W)C相を備えたW−Ti−C系複合体の製造例を示し、その特性を詳細に示した。
しかし、煩雑となるため実施例として示さないが、Ti粉末とWC粉末以外の組合せにおいて、W、WC、WCから選択した1種類以上の粉末とTi、TiC、(Ti、W)Cから選択した1種類以上の粉末とを任意に組合せて混合し、これらを焼結することによっても同様の結果を得ることができる。
基本的には、Wに対するTiのモル比を適宜選択し、好適にはWに対するTiのモル比が0.2以下、好ましくは0.1以下、さららに好ましくは0.05以下とし、そして焼結温度を適宜制御することにより、WC相、WC相、TiC相及び又は(Ti、W)C相を備えたW−Ti−C系複合体を製造することが可能である。
【0031】
具体的には、例えば0.95WC−0.05Tiについて、1600°C、1800°C、2000°Cの各温度で、20分間、50MPa、真空中で反応焼結を行った結果、この反応焼結体の微細焼結組織は、WC相、WC相、TiC相、(Ti、W)C相を有していた。
WC−Tiの組合せにおいて、上記以外にも0.925WC−0.075Ti(x=0.075)、0.9WC−0.1Ti(x=0.1)及び0.8WC−0.2Ti(x=0.2)の全ての組成において、同様に反応生成物としてWC相、WC相、TiC相及び又は(Ti、W)C相が確認できた。
【0032】
このような製造条件は、Co金属の添加剤を主要成分として使用しないことが大きな特長となっている。そして、これはCoの使用による硬度、ヤング率及び耐食性が著しく損なわれるという従来技術の欠点無くすためである。
TiCの存在は、むしろ耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性を向上させるものであり、さらに焼結温度をより低温側にし、かつ焼結むらの少ない緻密な焼結体を得ることができるという効果を生み出すものである。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、Coなどの金属添加剤を主要成分として使用せず、高温中での化学反応による物質の移動を利用することにより焼結むらの少ない緻密な焼結体が得られるという著しい特徴を有し、高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等を有するW−Ti−C系複合体が得られるという効果を有する。
また、比較的低温で焼結が可能であり、高い焼結密度、微細な結晶粒、ビッカース硬さ20GPa以上、ヤング率600GPa以上、高い破壊靭性値を達成することができるという優れた特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】X線回折最強ピークの相対強度比Ix/ΣIxと原料粉末中のチタンの割合xとの関係を示す図である。
【図2】原料粉末中のチタンの割合xとかさ密度及び開気孔率の関係を示す図である。
【図3】原料粉末中のチタンの割合xとヤング率及びポアソン比の関係を示す図である。
【図4】原料粉末中のチタンの割合xとビッカース硬さとの関係を示す図である。
【図5】原料粉末中のチタンの割合xと破壊靭性値との関係を示す図である。
【図6】焼結温度とX線回折最強ピークの相対強度比Ix/ΣIxとの関係を示す図である。
【図7】焼結温度とかさ密度及び開気孔率の関係を示す図である。
【図8】焼結温度とヤング率及びポアソン比の関係を示す図である。
【図9】焼結温度とビッカース硬さとの関係を示す図である。
【図10】焼結温度と破壊靭性値との関係を示す図である。

Claims (12)

  1. WC相及び又はWC相とTiC相及び又は(Ti、W)C相を備えていることを特徴とするW−Ti−C系複合体。
  2. WCに対するTiのモル比が0.2以下であることを特徴とする請求項1記載のW−Ti−C系複合体。
  3. WCに対するTiのモル比が0.1以下であることを特徴とする請求項1記載のW−Ti−C系複合体。
  4. WCに対するTiのモル比が0.05以下であることを特徴とする請求項1記載のW−Ti−C系複合体。
  5. V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素を0.001〜20wt%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のW−Ti−C系複合体。
  6. V、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素の炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物の1種類以上を0.001〜30wt%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のW−Ti−C系複合体。
  7. W、WC、WCから選択した1種類以上の粉末とTi、TiC、(Ti、W)Cから選択した1種類以上の粉末とを混合して焼結することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のW−Ti−C系複合体の製造方法。
  8. C粉を混合して焼結することを特徴とする請求項7記載のW−Ti−C系複合体の製造方法。
  9. W−Ti−C系複合体の製造に際し、WC及び又はWCとTiの固相置換反応による物質移動を利用してWC及び又はWC粉末の焼結を促進させることを特徴とする請求項7又は8記載のW−Ti−C系複合体の製造方法。
  10. ホットプレス又は通電加圧焼結法により焼結することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のW−Ti−C系複合体の製造方法。
  11. 焼結温度1400〜2000°C、加圧力20MPa以上で焼結することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のW−Ti−C系複合体の製造方法。
  12. 焼結温度1650〜1900°C、加圧力30MPa以上で焼結することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のW−Ti−C系複合体の製造方法。
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