JP5447844B2 - 高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料と切削工具 - Google Patents
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本発明者等は、原料粉末のうちの結合材粉末に着目し、まず、結合相中でTiとAlの窒化物を形成する結合材粉末について、例えば、Tiの窒化物粉末粒子と、Al,AlとTiの合金,Alの酸化物およびTiとAlの窒化物のうちの1種または2種以上の粉末粒子を予めボールミルで混合後、成形し、真空雰囲気中で仮焼結を行い、仮焼結後に、粉末粒子の50%累積粒度が0.6〜0.9μmとなるように粉砕し、この粉砕した結合材粉末を、2〜10μm、好ましくは4〜8μmの平均粒径のcBN粉末に所定配合組成となるように配合し、ついで、従来法と同様にしてcBN焼結体を製造したところ、従来のcBN焼結体に比して、靭性の優れたcBN焼結体(以下、本発明cBN焼結体という)が得られることを見出したのである。
そして、40.5°≦2θ≦41.5°の回折角度範囲に出現する上記TiとAlとNの複合化合物の回折ピーク強度をIとし、また、cBN焼結体の硬質分散相形成成分であるcBN粒子について行ったX線回折におけるcBNの(111)面からの回折ピーク強度をI0としたとき、
0.15≦I/I0≦0.3
の関係を満足する場合に、cBN焼結体の結合相は優れた靭性を有し、その結果として、cBN焼結体全体としてすぐれた靭性を備えるようになり、このようなcBN焼結体によって切削工具を作製した場合には、高硬度鋼の断続切削加工に用いても、すぐれた耐チッピング性とすぐれた耐欠損性を示し、長期間の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮することを見出したのである。
さらに、上記の優れた靭性を有するcBN焼結体の表面に、Tiの窒化物層およびTiとAlの窒化物層のうちの1層または2層以上からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより切削工具を作製した場合には、より一段と優れた耐チッピング性、耐摩耗性を示すことを見出したのである。
「(1) 硬質分散相と結合相とを含有する組織を有する立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料において、
上記結合相形成成分として、少なくとも、Tiの窒化物粉末粒子と、Al,AlとTiの合金,Alの酸化物およびTiとAlの窒化物のうちの1種または2種以上の粉末粒子とを含有し、また、上記硬質分散相形成成分として、少なくとも、立方晶窒化ほう素を含有する配合組成を有し、
上記結合相を形成する粉末粒子の50%累積粒度は0.6〜0.9μmであって、さらに、上記立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料についてX線回折強度を測定した場合に、40.5°≦2θ≦41.5°の回折角度範囲にTiとAlとNの複合化合物の回折ピークが出現し、該TiとAlとNの複合化合物の回折ピーク強度をIとし、また、上記立方晶窒化ほう素の(111)面からの回折ピーク強度I0とした場合に、
0.15≦I/I0≦0.3
を満足することを特徴とする高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料。
(2) 前記(1)に記載の高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料からなる切削工具。
(3) 前記(1)に記載の高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料の表面に、Tiの窒化物層およびTiとAlの窒化物層のうちの1層または2層以上からなる硬質被覆層を蒸着形成したことを特徴とする高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具。」
に特徴を有するものである。
この発明では、原料粉末として、cBN粉末と結合材粉末を用いるが、特に、結合材粉末の調製が重要である。
即ち、cBN粉末と結合材粉末とを所定配合組成になるように混合するに先立って、結合材粉末を以下のようにして作製しておくことが必要であり、また、結合相中に存在するTiとNの含有比率が所定の割合となるように結合材粉末の配合を調製することが必要である。
本発明のcBN焼結体においては、結合相の主成分は、Tiの窒化物,TiとAlの化合物,Alの酸化物等であるが、これらの結合相形成成分であるTiの窒化物粉末粒子と、Al,AlとTiの合金,Alの酸化物およびTiとAlの窒化物のうちの1種または2種以上の粉末粒子とを、結合相中に存在するTiとNの含有比率が所定割合となるように配合(後記するように、TiとNの含有比率を組成式:TiNX(但し、Xは、原子比によるTiに対するNの含有割合)で表した場合、Xの値が0.90〜0.92となるように配合)し、予めボールミルにて混合し、これを成形し、成形体を真空雰囲気中で仮焼結し、仮焼結後の成形体を、50%累積粒度が0.6〜0.9μmの粉末粒子となるように粉砕し、この粉砕して得た結合材粉末を、cBN粉末とをボールミルにて混合し、結合材粉末とcBN粉末とから混合粉末を得て、この混合粉末を原料粉末として、以下は、通常と同じ工程(例えば、原料粉末の成形、900〜1300℃の範囲内の所定の温度で真空中での予備焼結、超高圧焼結装置内での1200〜1400℃の温度×5GPaの圧力下での焼結)を経て、本発明のcBN焼結体を作製する。
したがって、本発明では、粉砕して得た結合材粉末の50%累積粒度を0.6〜0.9μmとすることが必要である。
なお、50%累積粒度とは、レーザ回折/散乱式粒度径分布測定装置を用いて測定した粒度分布測定結果において、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、その粒子径を境にして、粒度が大きい側の体積と粒度が小さい側の体積とが等量となる粒子径のことである。
図1に示すように、本発明のcBN焼結体については、2θ=35°〜45°の回折角度範囲では、Tiの炭窒化物の回折ピーク(約42.2°,42.6°)およびcBNの(111)面の回折ピーク(約43.2°)に加えて、2θ=40.5°〜41.5°の範囲において、TiとAlとNの複合化合物の回折ピークが出現していた。
しかも、本発明のいずれのcBN焼結体においても、2θ=40.5°〜41.5°の範囲におけるTiとAlとNの複合化合物の回折ピーク強度をI、また、2θ=43.2°におけるcBNの(111)面の回折ピーク強度をI0とした時、I/I0の値は、常に0.15≦I/I0≦0.3を満足するものであった。
これに対して、上記従来cBN焼結体については、図2に示すように、2θ=35°〜45°の回折角度範囲では、Tiの炭窒化物の回折ピーク(約42.2°,42.6°)、cBNの(111)面の回折ピーク(約43.2°)は本発明cBN焼結体と同様に観察されるものの、2θ=40.5°〜41.5°の範囲において、TiとAlとNの複合化合物の回折ピークは観察されなかった。
組成式:TiNX(但し、Xは、原子比によるTiに対するNの含有割合)
で表した場合、X=0.90〜0.92の範囲で、極めて優れた衝撃特性(靭性)を示す。
そして、X=0.90〜0.92の範囲である場合に、TiとAlとNの複合化合物の回折ピーク強度Iと、cBNの(111)面の回折ピーク強度I0は、2θ=40.5°〜41.5°において0.15≦I/I0≦0.3の関係を満足する。
Tiの窒化物は、焼結性を向上させると共に、結合相の強度を向上させる作用があるが、その配合割合が16体積%未満では所望の強度を確保することが困難となり、一方その配合割合が26体積%を越えると耐摩耗性が低下傾向を示すようになることから、その配合割合は16〜26体積%とすることが望ましい。
また、切削工具の耐熱性、耐チッピング性、耐摩耗性をより向上させるためには、cBN焼結体表面に、例えば、Tiの窒化物層およびTiとAlの窒化物層のうちの1層または2層以上を蒸着し、表面が硬質被覆層で被覆形成された切削工具を作製すればよい。
ついで、硬質分散相形成成分であるもう一つの原料粉末である表2に示す平均粒径2〜10μm(好ましくは、4〜8μm)のcBN粉末を、上記粉砕した結合材粉末と、表2に示す所定配合割合になるように配合して本発明原料粉末を作製した後、表2に示す条件でボールミルで混合し、100MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった成形体にプレス成形し、この成形体を真空中、900〜1300℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で予備焼結した。
ついでこれを別途用意した直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもった超硬合金チップ(組成:WC−8%Co)と重ね合わせた状態で超高圧焼結装置に装入し、1200〜1400℃の範囲内の所定温度に5GPaの圧力下で30分保持の条件で焼結して本発明cBN焼結体1〜8を作製するとともに、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研削し、アーク放電によるワイヤカットを施すことにより前記超硬合金で裏打された本発明のcBN焼結体製切削チップ(以下、本発明チップという)1〜8を作製した。
、図1に、本発明チップ(本発明cBN焼結体)1のX線回折チャートを示し、図2には、比較例チップ(比較例cBN焼結体)1のX線回折チャートを示す。
また、表3にI,I0,I/I0の値を示す。
また、本発明チップ1,3,4,5,7および比較例チップ2,4,5,7については、これをアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、通常のアークイオンプレーティング装置内に装着し、カソード電極(蒸発源)として金属Tiを装着し、まず装置内を排気して0.5Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記工具に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、一方カソード電極の前記金属Tiとアノード電極との間には100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記チップ表面をTiボンバート洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して5Paの反応雰囲気とすると共に、前記工具に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、一方カソード電極とアノード電極との間には100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記本発明チップ1,3,4,5,7および比較例チップ2,4,5,7の表面に、所望の平均層厚のTiの窒化物層およびTiとAlの窒化物層のうちの1層または2層以上からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明被覆チップ1,3,4,5,7および比較例被覆チップ2,4,5,7を作製した。
この測定結果を表4に示した。
一方、結合相中に、0.15≦I/I0≦0.3の回折ピーク強度比を満足するTiとAlとNの複合化合物相が形成されていない比較例cBN焼結体は、その靭性が十分でないため、比較例cBN焼結体から作製した比較例チップ、比較例被覆チップにあっては、いずれも刃先のチッピング、欠損の発生により工具寿命が短命であることが明らかである。
Claims (3)
- 硬質分散相と結合相とを含有する組織を有する立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料において、
上記結合相形成成分として、少なくとも、Tiの窒化物粉末粒子と、Al,AlとTiの合金,Alの酸化物およびTiとAlの窒化物のうちの1種または2種以上の粉末粒子とを含有し、また、上記硬質分散相形成成分として、少なくとも、立方晶窒化ほう素を含有する配合組成を有し、
上記結合相を形成する粉末粒子の50%累積粒度は0.6〜0.9μmであって、さらに、上記立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料についてX線回折強度を測定した場合に、40.5°≦2θ≦41.5°の回折角度範囲にTiとAlとNの複合化合物の回折ピークが出現し、該TiとAlとNの複合化合物の回折ピーク強度をIとし、また、上記立方晶窒化ほう素の(111)面からの回折ピーク強度I0とした場合に、
0.15≦I/I0≦0.3
を満足することを特徴とする高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料。 - 請求項1に記載の高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料からなる切削工具。
- 請求項1に記載の高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料の表面に、Tiの窒化物層およびTiとAlの窒化物層のうちの1層または2層以上からなる硬質被覆層を蒸着形成したことを特徴とする高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具。
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