JP5447844B2 - 高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料と切削工具 - Google Patents

高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料と切削工具 Download PDF

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Description

この発明は、高靭性を有する立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料と切削工具に関し、特に、立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料が高靭性を有することから、これから作製した切削工具を、高硬度被削材の断続切削条件下で用いた場合であっても、すぐれた耐欠損性を示し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料とこれから作製した切削工具に関する。
従来、耐摩耗性が必要とされる切削工具用材料としては、高硬度であるという点から立方晶窒化ほう素(以下、cBNという)基超高圧焼結材料(以下、cBN焼結体という)が用いられているが、例えば、特許文献1に示されるように、cBNを体積比で80〜40%含有し、残部が周期律表第IVa、Va、VIa族遷移金属の炭化物、窒化物、硼化物、珪化物もしくはこれらの混合物または相互固溶体化合物を主体としたもの、さらにこれらにAlおよび/またはSiを添加したものからなる焼結体が知られているが、これを高硬度鋼の切削における切削工具材料として用いた場合には、耐欠損性、耐摩耗性が不十分であるという問題点があった。
このような問題を解決するため、例えば、特許文献2に示されるように、cBNを25〜47体積%含み、また、結合材粉末として、Tiの炭化物,窒化物,炭窒化物および硼化物よりなる群から選択された1種または2種以上と、Al,AlとTiの合金,Alの窒化物,TiとAlの窒化物,Alの硼化物よりなる群から選択された1種または2種以上とを含み、かつ、Tiの炭窒化物および硼化物は合計で40〜70体積%であり、前記Tiの炭窒化物中の炭素と窒素の比が60:40〜30:70であり、Alの硼化物および窒化物は合計で2〜20体積%であり、前記cBN粒子が結合相を介して相互に接合された切削工具用cBN焼結体が知られている。
また、例えば、特許文献3に示すように、連続結合相、硬質分散相、連続結合相−硬質分散相の間に介在する中間密着相の3相組織を備え、かつ質量%で、上記連続結合相形成成分として、窒化チタンおよび/または炭窒化チタン:20〜37%、上記中間密着相形成成分として、TiとAlの金属間化合物:3〜8%、TiとAlとNの複合化合物:5〜10%、炭化タングステン:5〜15%、上記硬質分散相形成成分として、立方晶窒化ほう素:残り(ただし、45〜55%含有)からなる配合組成を有する切削工具用cBN焼結体が知られている。
特開昭53−77811号公報 特開平10−114575号公報 特開2003−145319号公報
近年の切削装置の高性能化および高出力化はめざましく、また切削加工の省力化および省エネ化に対する要求も強く、これに伴い、切削加工は高速化、高能率化の傾向にあるが、上記従来のcBN焼結体からなる切削工具においては、例えば高硬度焼入れ鋼などの難削材の乾式断続切削に用いると、結合相、連続結合相自体の靭性が十分でないばかりか、結合相、連続結合相を構成するTiN、TiCN等に対するcBN粒子の密着性が十分でないため、切刃にチッピング(微小欠け)が発生するようになることから、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、靭性の優れた切削工具用cBN焼結体を開発すべく、研究を行った結果、以下の知見を得た。
従来のcBN焼結体の製造に際しては、原料粉末として、平均粒径が0.5〜4μmのcBN粉末と結合材粉末とを用い、これらを所定の配合組成になるように配合した後、例えば、ボールミルで湿式混合し、乾燥後、これを成形体にプレス成形し、この成形体を予備焼結し、ついで超高圧焼結装置内で焼結することにより製造していた。
本発明者等は、原料粉末のうちの結合材粉末に着目し、まず、結合相中でTiとAlの窒化物を形成する結合材粉末について、例えば、Tiの窒化物粉末粒子と、Al,AlとTiの合金,Alの酸化物およびTiとAlの窒化物のうちの1種または2種以上の粉末粒子を予めボールミルで混合後、成形し、真空雰囲気中で仮焼結を行い、仮焼結後に、粉末粒子の50%累積粒度が0.6〜0.9μmとなるように粉砕し、この粉砕した結合材粉末を、2〜10μm、好ましくは4〜8μmの平均粒径のcBN粉末に所定配合組成となるように配合し、ついで、従来法と同様にしてcBN焼結体を製造したところ、従来のcBN焼結体に比して、靭性の優れたcBN焼結体(以下、本発明cBN焼結体という)が得られることを見出したのである。
さらに、本発明者等は、上記本発明cBN焼結体について、X線回折を行った。X線源としてCuKα線源を用いた。X線の波長は1.54Åである。X線回折の結果、従来のcBN焼結体においては見られなかった回折角度2θ(但し、40.5°≦2θ≦41.5°)の回折角度範囲に、TiとAlとNの複合化合物の回折ピークが新たに出現していることを確認したのである。
そして、40.5°≦2θ≦41.5°の回折角度範囲に出現する上記TiとAlとNの複合化合物の回折ピーク強度をIとし、また、cBN焼結体の硬質分散相形成成分であるcBN粒子について行ったX線回折におけるcBNの(111)面からの回折ピーク強度をIとしたとき、
0.15≦I/I≦0.3
の関係を満足する場合に、cBN焼結体の結合相は優れた靭性を有し、その結果として、cBN焼結体全体としてすぐれた靭性を備えるようになり、このようなcBN焼結体によって切削工具を作製した場合には、高硬度鋼の断続切削加工に用いても、すぐれた耐チッピング性とすぐれた耐欠損性を示し、長期間の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮することを見出したのである。
さらに、上記の優れた靭性を有するcBN焼結体の表面に、Tiの窒化物層およびTiとAlの窒化物層のうちの1層または2層以上からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより切削工具を作製した場合には、より一段と優れた耐チッピング性、耐摩耗性を示すことを見出したのである。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 硬質分散相と結合相とを含有する組織を有する立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料において、
上記結合相形成成分として、少なくとも、Tiの窒化物粉末粒子と、Al,AlとTiの合金,Alの酸化物およびTiとAlの窒化物のうちの1種または2種以上の粉末粒子とを含有し、また、上記硬質分散相形成成分として、少なくとも、立方晶窒化ほう素を含有する配合組成を有し、
上記結合相を形成する粉末粒子の50%累積粒度は0.6〜0.9μmであって、さらに、上記立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料についてX線回折強度を測定した場合に、40.5°≦2θ≦41.5°の回折角度範囲にTiとAlとNの複合化合物の回折ピークが出現し、該TiとAlとNの複合化合物の回折ピーク強度をIとし、また、上記立方晶窒化ほう素の(111)面からの回折ピーク強度Iとした場合に、
0.15≦I/I≦0.3
を満足することを特徴とする高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料。
(2) 前記(1)に記載の高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料からなる切削工具。
(3) 前記(1)に記載の高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料の表面に、Tiの窒化物層およびTiとAlの窒化物層のうちの1層または2層以上からなる硬質被覆層を蒸着形成したことを特徴とする高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具。」
に特徴を有するものである。
以下に、本発明について詳細に説明する。
この発明では、原料粉末として、cBN粉末と結合材粉末を用いるが、特に、結合材粉末の調製が重要である。
即ち、cBN粉末と結合材粉末とを所定配合組成になるように混合するに先立って、結合材粉末を以下のようにして作製しておくことが必要であり、また、結合相中に存在するTiとNの含有比率が所定の割合となるように結合材粉末の配合を調製することが必要である。
本発明のcBN焼結体においては、結合相の主成分は、Tiの窒化物,TiとAlの化合物,Alの酸化物等であるが、これらの結合相形成成分であるTiの窒化物粉末粒子と、Al,AlとTiの合金,Alの酸化物およびTiとAlの窒化物のうちの1種または2種以上の粉末粒子とを、結合相中に存在するTiとNの含有比率が所定割合となるように配合(後記するように、TiとNの含有比率を組成式:TiN(但し、Xは、原子比によるTiに対するNの含有割合)で表した場合、Xの値が0.90〜0.92となるように配合)し、予めボールミルにて混合し、これを成形し、成形体を真空雰囲気中で仮焼結し、仮焼結後の成形体を、50%累積粒度が0.6〜0.9μmの粉末粒子となるように粉砕し、この粉砕して得た結合材粉末を、cBN粉末とをボールミルにて混合し、結合材粉末とcBN粉末とから混合粉末を得て、この混合粉末を原料粉末として、以下は、通常と同じ工程(例えば、原料粉末の成形、900〜1300℃の範囲内の所定の温度で真空中での予備焼結、超高圧焼結装置内での1200〜1400℃の温度×5GPaの圧力下での焼結)を経て、本発明のcBN焼結体を作製する。
上記粉砕して得た結合材粉末の50%累積粒度が0.6μm未満では、結合材粉末が過粉砕され、結合相の表面積が大きくなり超高圧焼結時に結合材粉末とcBN粉末からなる反応生成物(TiB,AlN)が多量に発生し、その反応生成物の過度の発生はcBN焼結体及びcBN工具の靭性を低下させる要因となる。一方、50%累積粒度が0.9μmを超えると、結合材粉末の粉砕が不十分なため結合相の表面積が小さくなり、超高圧焼結時に結合材粉末とcBN粉末からなる反応生成物(TiB,AlN)が少量しか発生せず、そのため、結合相・cBNの界面の結合力が弱くなり、また、粉砕が不十分なためにcBN−cBN間に結合材が充填されず、結果として、cBN焼結体及びcBN工具の靭性を低下させる要因となる
したがって、本発明では、粉砕して得た結合材粉末の50%累積粒度を0.6〜0.9μmとすることが必要である。
なお、50%累積粒度とは、レーザ回折/散乱式粒度径分布測定装置を用いて測定した粒度分布測定結果において、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、その粒子径を境にして、粒度が大きい側の体積と粒度が小さい側の体積とが等量となる粒子径のことである。
そして、上記で作製した本発明のcBN焼結体について、X線回折を行った。参考のため、従来方法により製造した従来cBN焼結体(例えば、特許文献2記載のもの)についても、X線回折を行った。X線源としてCuKα線源を用いた。X線の波長は1.54Åである。
図1に示すように、本発明のcBN焼結体については、2θ=35°〜45°の回折角度範囲では、Tiの炭窒化物の回折ピーク(約42.2°,42.6°)およびcBNの(111)面の回折ピーク(約43.2°)に加えて、2θ=40.5°〜41.5°の範囲において、TiとAlとNの複合化合物の回折ピークが出現していた。
しかも、本発明のいずれのcBN焼結体においても、2θ=40.5°〜41.5°の範囲におけるTiとAlとNの複合化合物の回折ピーク強度をI、また、2θ=43.2°におけるcBNの(111)面の回折ピーク強度をIとした時、I/Iの値は、常に0.15≦I/I≦0.3を満足するものであった。
これに対して、上記従来cBN焼結体については、図2に示すように、2θ=35°〜45°の回折角度範囲では、Tiの炭窒化物の回折ピーク(約42.2°,42.6°)、cBNの(111)面の回折ピーク(約43.2°)は本発明cBN焼結体と同様に観察されるものの、2θ=40.5°〜41.5°の範囲において、TiとAlとNの複合化合物の回折ピークは観察されなかった。
そして、本発明のcBN焼結体と従来cBN焼結体について、切削工具を作製し、高硬度鋼の乾式断続切削試験を行い、その衝撃回数による欠損の有無を調査し、靭性評価を行ったところ、後記する表4に示すように、従来cBN焼結体においては、180秒の切削時間ですべて欠損を発生し工具寿命に至ったが、本発明のcBN焼結体においては、180秒以上(本発明被覆チップ7では300秒以上)の切削が可能であり、本発明のcBN焼結体が、従来cBN焼結体に比して靭性に優れることは明らかである。
また、表4の乾式断続切削試験結果からも分かるように、本発明のcBN焼結体は、結合相中のTiとNの含有割合によっても衝撃特性(靭性)が変化するが、cBN焼結体の結合相中のTiとNの含有割合を、
組成式:TiN(但し、Xは、原子比によるTiに対するNの含有割合)
で表した場合、X=0.90〜0.92の範囲で、極めて優れた衝撃特性(靭性)を示す。
そして、X=0.90〜0.92の範囲である場合に、TiとAlとNの複合化合物の回折ピーク強度Iと、cBNの(111)面の回折ピーク強度Iは、2θ=40.5°〜41.5°において0.15≦I/I≦0.3の関係を満足する。
なお、本発明のcBN焼結体に含有される個々の成分の作用効果を述べれば、以下のとおりである。
Tiの窒化物は、焼結性を向上させると共に、結合相の強度を向上させる作用があるが、その配合割合が16体積%未満では所望の強度を確保することが困難となり、一方その配合割合が26体積%を越えると耐摩耗性が低下傾向を示すようになることから、その配合割合は16〜26体積%とすることが望ましい。
Al,AlとTiの合金,Alの酸化物およびTiとAlの窒化物のうちの1種または2種以上の成分は、焼結時に優先的に反応して、結合相中にTiとAlとNの複合化合物を形成するとともに、TiB、AlNを形成し、硬質分散相であるcBN表面に凝集することから、焼結後のcBN焼結体は、Al,AlとTiの合金,Alの酸化物およびTiとAlの窒化物のうちの1種または2種以上の成分とTiとAlとNの複合化合物と、硬質分散相のcBNの間に、TiB、AlNが介在し、結合相の靭性を向上させる。しかもこのTiとAlとNの複合化合物相は、Tiの窒化物、TiB、AlNおよびcBNのいずれとも強固に密着接合する性質をもつことから、結合相と硬質分散相の密着性が著しく向上し、この結果、靭性、耐チッピング性の向上に寄与する。
cBN硬質分散相を構成するcBNは、その配合割合が65体積%未満では所望のすぐれた耐欠損性を確保することができず、一方その配合割合が75体積%を越えると、相対的に結合材の体積が減少することで、cBN粒子−cBN粒子間に隙間が生じ、その結果、チッピングが発生し易くなることから、その割合は65〜75体積%とすることが望ましい。
本発明の高靭性cBN焼結体を切削工具として用いる場合には、cBN焼結体を予備焼結(例えば、真空中、900〜1300℃で1時間保持)した後、例えば、超硬合金チップと重ね合わせた状態で、超高圧焼結装置内で高温高圧条件下(例えば、1200〜1400℃×5GPa)で焼結することによって作製することができる。
また、切削工具の耐熱性、耐チッピング性、耐摩耗性をより向上させるためには、cBN焼結体表面に、例えば、Tiの窒化物層およびTiとAlの窒化物層のうちの1層または2層以上を蒸着し、表面が硬質被覆層で被覆形成された切削工具を作製すればよい。
本発明のcBN焼結体は、結合相中に、0.15≦I/I≦0.3の回折ピーク強度比を満足するTiとAlとNの複合化合物相が形成されていることによって、結合相の靭性が向上し、その結果として、すぐれた靭性を有するcBN焼結体を得ることができ、また、このcBN焼結体を切削工具として用いた場合には、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性を示すため、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮する切削工具を得ることができる。
本発明のcBN焼結体のX線回折チャートを示す。 従来のcBN焼結体のX線回折チャートを示す。
発明の実施の形態
以下、本発明について、実施例により具体的に説明する。
原料粉末のうちの結合材粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の所定の平均粒径を有する表1に示されるTiの窒化物粉末、Al粉末、AlとTiの合金粉末、Alの酸化物粉末およびTiとAlの窒化物粉末を用意し、表1に示される配合割合に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後プレス成形し、この成形体を真空中、900〜1300℃の範囲内の温度で仮焼結し、仮焼結後の成形体を、表1に示すように50%累積粒度が0.6〜0.9μmの粉末粒子となるように粉砕した。
ついで、硬質分散相形成成分であるもう一つの原料粉末である表2に示す平均粒径2〜10μm(好ましくは、4〜8μm)のcBN粉末を、上記粉砕した結合材粉末と、表2に示す所定配合割合になるように配合して本発明原料粉末を作製した後、表2に示す条件でボールミルで混合し、100MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった成形体にプレス成形し、この成形体を真空中、900〜1300℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で予備焼結した。
ついでこれを別途用意した直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもった超硬合金チップ(組成:WC−8%Co)と重ね合わせた状態で超高圧焼結装置に装入し、1200〜1400℃の範囲内の所定温度に5GPaの圧力下で30分保持の条件で焼結して本発明cBN焼結体1〜8を作製するとともに、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研削し、アーク放電によるワイヤカットを施すことにより前記超硬合金で裏打された本発明のcBN焼結体製切削チップ(以下、本発明チップという)1〜8を作製した。
比較のために、表1に示される配合組成の結合材粉末に対して、表1に示す所定配合割合になるように平均粒径0.5〜8μmのcBN粉末と混合して比較例原料粉末を作製し、表2に示す条件でボールミルで混合し、100MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった成形体にプレス成形し、この成形体を真空中、900〜1300℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で予備焼結し、ついでこれを別途用意した直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもった超硬合金チップ(組成:WC−8%Co)と重ね合わせた状態で超高圧焼結装置に装入し、1200〜1400℃の範囲内の所定温度に5GPaの圧力下で30分保持の条件で焼結して比較例cBN焼結体1〜8を作製するとともに、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研削し、アーク放電によるワイヤカットを施すことにより前記超硬合金で裏打された比較例のcBN焼結体製切削チップ(以下、比較例チップという)1〜8をそれぞれ製造した。
上記の本発明チップ1〜8および比較例チップ1〜8のcBN焼結体についてX線回折を行い、40.5°≦2θ≦41.5°の回折角度範囲で出現するTiとAlとNの複合化合物の回折ピーク強度Iを測定するとともに、43.2°の回折角度に出現するcBNの(111)面からの回折ピーク強度Iを測定し、I/Iの値を求めた。X線源としてCuKα線源を用いた。X線の波長は1.54Åである。
、図1に、本発明チップ(本発明cBN焼結体)1のX線回折チャートを示し、図2には、比較例チップ(比較例cBN焼結体)1のX線回折チャートを示す。
また、表3にI,I,I/Iの値を示す。
Figure 0005447844
Figure 0005447844
Figure 0005447844
上記の各チップを、超硬合金本体(組成:WC−10重量%Co)の切刃先端部に形成した切り込み段部にろう付けすることによりJIS・TNMA160408に規定する形状をもったスローアウエイ型切削工具を作製した。
また、本発明チップ1,3,4,5,7および比較例チップ2,4,5,7については、これをアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、通常のアークイオンプレーティング装置内に装着し、カソード電極(蒸発源)として金属Tiを装着し、まず装置内を排気して0.5Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記工具に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、一方カソード電極の前記金属Tiとアノード電極との間には100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記チップ表面をTiボンバート洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して5Paの反応雰囲気とすると共に、前記工具に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、一方カソード電極とアノード電極との間には100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記本発明チップ1,3,4,5,7および比較例チップ2,4,5,7の表面に、所望の平均層厚のTiの窒化物層およびTiとAlの窒化物層のうちの1層または2層以上からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明被覆チップ1,3,4,5,7および比較例被覆チップ2,4,5,7を作製した。
上記の各チップ、各被覆チップを用いて、被削材:浸炭焼き入れ鋼(JIS・SCM415、硬さ:HRC62)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、切削速度:150m/min、切り込み:0.2mm、送り:0.2mm/revの条件で難削材の乾式断続切削試験を行い、切刃が欠損するまでの切削時間を測定した。
この測定結果を表4に示した。
Figure 0005447844
表3,4に示される結果から、本発明cBN焼結体は、結合相中に、0.15≦I/I≦0.3の回折ピーク強度比を満足するTiとAlとNの複合化合物相が形成されていることによって、結合相の靭性が向上し、その結果として、すぐれた靭性を有するcBN焼結体を得ることができ、また、このcBN焼結体から作製した本発明チップ、本発明被覆チップを切削工具として用いた場合には、高硬度鋼の乾式断続切削加工において、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性を示すため、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮する切削工具が得られることがわかる。
一方、結合相中に、0.15≦I/I≦0.3の回折ピーク強度比を満足するTiとAlとNの複合化合物相が形成されていない比較例cBN焼結体は、その靭性が十分でないため、比較例cBN焼結体から作製した比較例チップ、比較例被覆チップにあっては、いずれも刃先のチッピング、欠損の発生により工具寿命が短命であることが明らかである。
この発明のcBN焼結体は、靭性に優れかつ高硬度であることから、フライス工具、バイト、エンドミル、カッター、ドリル等の各種切削工具として用いることが可能である。

Claims (3)

  1. 硬質分散相と結合相とを含有する組織を有する立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料において、
    上記結合相形成成分として、少なくとも、Tiの窒化物粉末粒子と、Al,AlとTiの合金,Alの酸化物およびTiとAlの窒化物のうちの1種または2種以上の粉末粒子とを含有し、また、上記硬質分散相形成成分として、少なくとも、立方晶窒化ほう素を含有する配合組成を有し、
    上記結合相を形成する粉末粒子の50%累積粒度は0.6〜0.9μmであって、さらに、上記立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料についてX線回折強度を測定した場合に、40.5°≦2θ≦41.5°の回折角度範囲にTiとAlとNの複合化合物の回折ピークが出現し、該TiとAlとNの複合化合物の回折ピーク強度をIとし、また、上記立方晶窒化ほう素の(111)面からの回折ピーク強度Iとした場合に、
    0.15≦I/I≦0.3
    を満足することを特徴とする高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料。
  2. 請求項1に記載の高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料からなる切削工具。
  3. 請求項1に記載の高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料の表面に、Tiの窒化物層およびTiとAlの窒化物層のうちの1層または2層以上からなる硬質被覆層を蒸着形成したことを特徴とする高靭性立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具。
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